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柯佳嬿~古都の花嫁

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かねてから交際していた謝坤達(シェ・クンダー)と、北海道にスキー旅行の際、プロポーズされ、
その丁度一年後の2017年12月、正式に婚姻届けを出した台湾の女優・柯佳嬿(アリス・クー)。(→参照
その後は安定した夫婦関係がメディアに漏れ伝わっていたので、
すっかり忘れていたが、間も無くお式を挙げるという。
挙式に合わせ、公開されたのが、華人のお約束、コダワリの結婚写真!


(↑)上の画像からもなんとなく想像が付くように、撮影場所は日本の京都。

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撮影は、蘇益良(スー・イーリャン)。
画像右から3番目の白Tの男性。
中華圏の雑誌や広告を中心に活躍する著名フォトグラファーで、
周杰倫(ジェイ・チョウ)や徐若瑄(ビビアン・スー)も、結婚写真を撮ってもらっているし、
台湾芸能人が「記念写真は是非彼に!」と切望するフォトグラファーなのであろう。
柯佳嬿と謝坤達も、そんな台湾明星御用フォトグラファーと共に、京都に撮影のための小旅行を決行。
元々あちらの人は、日本人と比べ、結婚写真への思い入れがずっと強いと見受けるが、
特に芸能人ともなると、メイクさんとか、色々スタッフを引き連れ、海外遠征までするから、
結婚写真の撮影も、かなり大掛かりになりますね。



撮影は、京都の中でも主に鴨川周辺で行われた模様。

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柯佳嬿のお召し物は、台湾のブライダルブランドMS IDEASの提供で、計3着。


室内撮影もあり。

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ステンドグラスが印象的なお店なので、
京都のレトロカフェ巡りが好きな人なら、すぐに場所を特定できるのでは。


撮ったお写真は、挙式の招待状にも使われております。

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なお、このお式は、2018年9月15日(土曜)、台北萬豪酒店(台北マリオットホテル)で開催。
新郎も新婦も、あまり大きなお仕事には関わっていないので、
煌びやかなスタア軍団との交流があるとは考えにくいけれど、
台北週末弾丸小旅行のついでに、もう誰でもいいから芸能人を見たい!という人は、
その日、萬豪酒店のお車寄せで張っていれば、確実に誰かしらをパパラッチできると思います。
(あまり派手にやると捕獲or追い出されるので、気を付けましょう。)

ちょっと残念なのは、柯佳嬿が、昨年、契約満期に伴い、事務所を移籍してしまったことだ。
以前の事務所だったら、先輩に、私が溺愛する張震(チャン・チェン)もいて、
共演はしていなくても、2013年、張震の披露宴には、柯佳嬿も出席していた。(→参照
事務所が変わってしまった今、たとえ義理堅い張震でも、これまであまり接点の無かった元同僚のお式に、
5年前のお返しで、出席するだろうか。
元の事務所関係で、来てもおかしくないのは、共演している張榕容(チャン・ロンロン)くらいかしら。




話は前後するけれど、蘇益良による芸能人の結婚写真、
前出の周杰倫はドイツ、徐若瑄はオーストラリアで撮影されている。

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私個人的には、今回の柯佳嬿の京都のが一番好き。
場所が日本だから、贔屓したくなるとか、そんな気持ちは別に全然なく、
写真に雰囲気があるし、柯佳嬿&謝坤達夫婦のホッコリした個性に合っているように感じるの。
この写真に影響され、京都に結婚写真を撮りに来る台湾人カップルが増えるかも知れませんね。




柯佳嬿は、18歳の時に衝撃的に結婚→そして案の定2年ポッキリで離婚しているため、今回は再婚。
謝坤達とは波長が合っているようだし、今度こそ幸せな家庭を築けると良いですね。末永くお幸せに♪

映画『夏、19歳の肖像』

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【2017年/中国/105min.】
中国・月海市。
19歳の大学生・康喬は、夏休み、バイクで事故を起こし、右足を損傷し、入院。
友人の朱莉と趙毅がしばしば見舞いに来てはくれるけれど、身動きがとれず、時間を持て余すばかり。
ふと窓の外に目をやると、病院の真向かいに建つ家の2階に、美しい女性の姿。
この女性にみるみる惹かれていった康喬は、
来る日も来る日も、病室から望遠鏡で彼女の様子を覗くように。
そんなある晩、いつものように向かいの家を覗いていると、あの女性が包丁で父親を刺殺。
そして、降りしきる雨の中、彼女と母親が、
家の隣りの工事現場に、大きなポリ袋を埋めるところを目撃してしまう。
半ば強引に退院した康喬は、それでも止まぬあの女性への想いから、彼女の身辺を探り、
名前が夏穎穎であること、リサーチ会社・新瑞集團に勤めていることを知り、徐々に接近。
ところがである、そんな康喬の携帯に“小白”と名乗る人物から、
まるで康喬の一挙一動を監視しているかのような不気味なメッセージが届くようになる。
一体誰が?康喬は、自分の周囲にいる友人たちをも疑うようになり…。


台湾の“ちょう・えいきち”こと張榮吉(チャン・ロンジー)監督、
『光にふれる』(2012年)、『共犯』(2014年)に続くこの長編監督作品第3弾は中国映画。


原作は、日本の作家・島田荘司、1985年の同名小説<夏、19歳の肖像>。
私は、その原作小説未読で、内容をまったく知らず。
中華圏には、日本のミステリー小説を好んで読む層がいると言われている。
あちらで人気のある日本のミステリー作家というと、東野圭吾を真っ先に思い浮かべるが、
島田荘司はどれ程度知られているのだろうか。
監督の陳思誠(チェン・スーチェン)も、日本のミステリー小説ファンであることをなんとなく察したのだが、
実際、昨年、お忍びで来日の際には…

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島田荘司と接触している。
島田荘司の微博を見ると、かなりの仲良しっぷりが伝わってくる。
妻夫木聡も出演している『僕はチャイナタウンの名探偵』続編で、アドバイザー的な事をしているようだし、
今後もずっとサポートしていくとのこと。
さらに、陳思誠監督が、島田荘司の小説を映像化する話もあるらしく、
島田荘司は、主演女優に、陳思誠監督の妻・佟麗婭(トン・リーヤー)を希望している。
(陳思誠の浮気に端を発した離婚の噂についても、島田センセは「そんな事はない」と言及しているが、
夫婦の問題ばかりは、当人じゃないと、分からないかも知れませんね~。)

早々に話が反れちゃったけれど、話を戻して『夏、19歳の肖像』。
この映画は、中国では2017年5月に公開されているが、張榮吉監督の地元・台湾では恐らくまだ未公開。
日本の方が先に公開なんて珍しい。原作が日本の小説だから、配給が付き易かったのかしら。



本作品は、19歳の大学生・康喬が、
覗きで一方的に恋をした女性・夏穎穎が、父親を殺害する現場を目撃してしまうが、
それでも夏穎穎への想いは抑え切れず、どんどん彼女に接近し、
そのせいで何者かに監視され、不可解な闇に飲み込まれていく様子を描くひと夏の青春ミステリー映画

青春+犯罪+ミステリーという事で、張榮吉監督の前作『共犯』との繋がりを感じる。
…が、張榮吉監督自身には、この手の作品を撮り続けたいという意思は別に無く、
これは、映画制作会社の方から持ち込まれた企画だったらしい。
『共犯』が有ったからこそ、映画会社は、この企画を、張榮吉監督にオファーしたのかも知れませんね。

映画に描かれる大きな謎は2ツ。
一つは、夏穎穎が父親殺害に至った理由や背景。
もう一つは、康喬に不気味なメッセージを送り続けてくる“小白”の正体と、康喬を監視する理由。
2ツとも、オチを知ると、あぁなるほどね、と思えるのだが、
タネ明かしが台詞によるあっ気ない説明で済んでしまうのは、ミステリーとしての物足りなさをやや感じる。
出来れば、もうひとヒネリある、もっと巧妙なタネ明かしをして欲しかった。

だが、完全な“ミステリー映画”に分類せず、ミステリー仕立ての青春恋物語だと捉えれば、OK。
19歳の男の子が、ミステリアスで綺麗なお姉さんに片想いし、
例え彼女が犯した罪を知っていても、ズブズブにのめり込んでいってしまう青さよ…。


物語の舞台、月海は、中国の南方という設定の架空の都市だが、
実際の撮影場所は全て台湾で、出演者も、脇に多くの台湾人俳優が使われている。
私は、物語の冒頭、主人公の康喬が、北方の故郷を離れて、南方で進学した旨を説明するモノローグを聞き、
中国語の訛りが違う大陸の俳優と台湾の俳優を、同じ都市に暮らす住民にして不自然にならぬよう、
主人公・康喬は北から来た人、舞台となる都市は南方と設定し、台湾で撮影することにしたのだと想像した。
が、張榮吉監督の説明によると、夏を描く物語にも拘わらず、クランクインが冬だったため、
冬でも比較的温暖な台湾南部で撮影するという必然が大きな要因だったらしい。
あと、外観などは、南部だけではなく、台北でも撮影。




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出演は、19歳の大学生・康喬に黃子韜(ファン・ズータオ)
康喬が惹かれていく謎めいた女性・夏穎穎に楊采(ヤン・ツァイユー)
康喬の女友達で医学部の学生・朱莉に李夢(リー・モン)
夏穎穎の父親・夏坤に張國柱(チャン・グオチュウ)
病院近くにあるRカフェのオーナー張偉に莫子儀(モー・ズーイー)等々…。


元EXOの“TAOタオ”こと黃子韜を映画で見るのは、『レイルロード・タイガー』(2016年)に続き、これが2度目。
『レイルロード・タイガー』では、脇の一キャストにすぎなかったが、今回は堂々の主演である。
映画館では、黃子韜のファンらしき女性をかなり見掛けた。
この作品が、日本に結構早く入ってきたのは、原作が日本の小説だからだけではなく、
黃子韜ファンを当て込んだのも一因だろうか。

本作品では、黃子韜をたっぷり拝めるので、そんなファンの皆々さまも納得であろう。
正直言って、『レイルロード・タイガー』では特別良いと思わなかったのだけれど、
この『夏、19歳の肖像』で見たら、なかなか。
私の好みかどうかは別として、
韓国の姜棟元(カン・ドンウォン)と中国の陳翔(チェン・シャン)を足したような顔立ちで、
人気になるのが分る気がした。

原作者の島田荘司も黃子韜のことを“TAOちゃん”と呼び、相当気に入っている様子。
キャスティングには口を出さなかったようで、初対面は、台南の撮影現場を訪問した時。
黃子韜は、会って開口一番、日本語で「わぁ~、カッコイイ」と言ったそうで、
島田センセ曰く、「そういう気を使える子なんです」と。
その後も、黃子韜は、自分の言葉で喋りたいがゆえ、通訳を制し、
島田荘司に色んな事を直接英語で話してきたという。
島田荘司の帰国後も、自分のインスタで…

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“『夏、19歳の肖像』島田先生、わざわざここまで来て頂いてありがとうございます”と日本語のメセージ。
中国って、見た目がトンがっていても、中身は素朴で、年上にやたら優しい若いコが多いのよねぇ。
TAOちゃんも、まさにそんなタイプのジジババ殺し…!
島田荘司も、黃子韜の人懐っこい可愛さにすっかりやられたようで、
彼のために何でもして上げたいと思わせる生まれながらのスタアだと言っておられ、
次回、自分の小説がまた映像化される際の出演者に、前述の佟麗婭と共に、この黃子韜を希望している。


夏穎穎役の楊采は、『芳華-Youth-』(2017年)でブレイクした若手女優の一人。
島田荘司は彼女のことを“ORAさん”と呼び、スタイルが良く、知的で演技も上手いと、やはり褒めておられる。
私は、『芳華』で楊采で見た時、石原さとみに似ていると思ったのだが、
この『夏、19歳の肖像』で再見しても、やはり石原さとみが重なった。
私は、そもそも石原さとみの顔が好きではないので、この楊采にも、今一ビビッと来るものは無く…。
何より、“綺麗なお姉さん”と言うより、康喬と同世代の女の子に見えてしまった事に、物足りなさを感じた。
(1992年生まれの楊采は、1993年生まれの黃子韜と、実際、ほぼ同世代。)
もう少し大人の女優を起用した方が、役に説得力が出ただろうし、
康喬の青い純粋さがより際立ったと思うのよねぇ…。


李夢は、初めて見たのが、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『罪の手ざわり』(2013年)だったという事もあり、
娯楽作品より文芸作品で好まれる実力派のイメージが強い。
今回演じた朱莉は、主演アイドルの添え物程度の役なのかと思ったら、
実は、ミステリーの核になる女性だったので、
やはり李夢は、同世代のアイドル女優たちとは違う、ひとクセある役をやってくれる!と少し嬉しくなった。
但し、この朱莉という女性は、原作小説には存在せず、映画用に作られらオリジナルキャラクターみたい。
映画を観る限り、物語を左右する重要な役である。
この女性が存在しない原作小説では、物語にどう収拾をつけるのかと、疑問が湧いた。
ちなみに、この李夢、昨年2017年の東京・中国映画週間にやって来たので、私もナマ見ました。(→参照


台湾の張國柱は、夏穎穎の父親・夏坤役。
夏坤は、張國柱が得意とするセレブな男性である。
…が、早々に、娘に殺されちゃう。
あらら、張國柱、あっと言う間に出演終了!と思ったら「・・・・。」 以下自粛。
この夏坤の妻役で出ているのも台湾の女優で、
私が“社会の底辺に生きるウラブレた女を演じさせたら台湾一”と思っている柯淑勤(コー・シュウチン)。
今回は、下流ではなく上流夫人なのね、…と思っていたら、
彼女もまたB面がある役で、実のところ、柯淑勤の得意分野であった。


台湾の俳優で、もう一人注目すべきは、月海病院近くのRカフェのオーナー張偉役で出演している莫子儀。
この映画に莫子儀が出ているなどという情報は、どこにも流れていなかったので、
スクリーンの中に莫子儀を見付け、ちょっぴり得した気分に。




張榮吉監督作品では、デビュー作の『光にふれる』が好きで、
次の『共犯』は、全然悪くはないけれど、『光にふれる』を超えることはなかった。
3作目のこの『夏、19歳の肖像』も同じ。
私にとっては、『光にふれる』超えをしない範囲で、全然悪くない作品。
近年、台湾は、俳優のみならず、裏方さんの映画監督も、大陸進出がどんどん進んでいるけれど、
ハッキリ言って、成功したのって、陳正道(レスト・チェン)監督くらいではないだろか。
大陸進出で成功しなかった他の監督たちの作品は、
台湾の良さも、大陸の良さも両方失われた、どっちつかずの中途半端な物になってしまっている印象。
小規模にコツコツやってきた人に、いきなり大金を渡したら、
オノレの道を見失い、迷走してしまった…、という印象の作品も多々あり。
まぁ、今は過渡期で、両岸のそういうズレは、時間をかけ、徐々にスリ合わさっていくのだろうけれど。
その点、張榮吉監督のこの『夏、19歳の肖像』は、
大陸のスーパーアイドルを起用した中国映画でありながら、
作風に台湾の小品っぽいさり気なさも出ていて、なかなかであった。
但し、前述のように、“ミステリー映画”と捉えて鑑賞すると、物足りなさあり。


本編とは関係の無い部分では、映画会社のロゴが出るオープニングが長-いっ…!
ちょっと前に観た『ワンス・アポン・ア・タイム 闘神』ほどではないけれど、
この『夏、19歳の肖像』も、6社分くらいは、ロゴが出たのでは…?
昔は、MGMのライオンとか、松竹の富士山とか、
あと中華系だったら、バン!バン!バーン!と“G”の字が出る嘉禾(ゴールデン・ハーベスト)とか、
それを見ただけで、「あっ、〇〇社」と判るロゴが色々あったけれど、
複数のロゴがあんなに延々と出続けたら、一個も記憶に残らない。
今後の映画界は、こういう傾向になっていくのでしょうか。


あと、日本側のお仕事に関しても言及しておくと、
コレ、中国語映画の現代モノには珍しく、日本語字幕の人名がちゃんと“漢字+片仮名ルビ”表記なの。
これ、もし、“カン・チャオ”、“チャン・イー”、“ジュウ・リー”、“ジョウ・ミン”なんて片仮名の羅列にされたら、
分りにくくて、混乱したに違いない。
無意味な慣例に囚われず、漢字表記を採用した配給会社、ぐっじょぶ。
他の配給会社も、見習って。

ドラマの美食(グルメ):『月に咲く花の如く』編

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チャンネル銀河で放送中の大陸ドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』、評判いいみたいですね。
ドラマの中にしばしば登場する“甑糕(ナツメ餅)”については、以前こちらに記した通り。
第2弾の今回は、(↓)こちら。

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葫蘆雞(ひょうたん鶏)。
私の思い違いでなければ、このお料理が最初に出て来るのは、
吳家西院・吳蔚武のお嬢様、吳漪が作って、主人公・周瑩に振る舞った第13話。

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成り行きでなったとはいえ、一応良家の若奥様にもかかわらず、
立ちっ放しで、手掴みで食らい付き、そして、思わず笑みが漏れてしまうほど美味。
「吳聘兄さんは、私が作った葫蘆雞が、一番の好物なのヨ」と吳漪から聞くと、
周瑩は、自分も吳聘のために手作りしたくて、
武術のレッスンとの交換条件で、吳漪から葫蘆雞の作り方を教わるという約束を取り付ける。

★ 葫蘆雞

今は亡き吳家東院の御曹司・吳聘も大好物だったという“葫蘆雞(ひょうたん鶏)”とは、如何なるお料理か。

葫蘆雞は、陝西西安に伝わる伝統の名物料理。
『月に咲く花の如く』は、実在の女富商・周瑩(1868-1908)が暮らした陝西を舞台にしたドラマなので、
“甑糕(ナツメ餅)”もそうだったように、登場するお料理の多くは陝西名物。

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特徴は、煮る、蒸す、揚げるという3ツの工程で作ること。
鶏を丸々一羽使ったお料理で、形がひょうたん(葫蘆)に似ていることから、“葫蘆雞”と呼ばれる。
(無理矢理ひょうたん、って気もするが…。)


葫蘆雞の起源は唐朝。
かの玄宗の時代、禮部尚書だった韋陟(697-761)の屋敷の厨房で生まれたという。
この韋陟は、とても贅沢な人で、食への探求心も強く、
ある時、家の料理人に、パリッ&ふっくら食感の鶏肉料理を作ってみよと命じたところ、
一人目の料理人は、先に蒸して後で揚げるという方法をとったが、肉質が固くなってしまい、
韋陟のお怒りに触れ、ムチ打ちの刑であの世行き。
二人目の料理人は、煮る、蒸す、揚げるという方法で作り、韋陟が求める食感はクリアしたものの、
3ツもの工程を経た鶏は、骨と身がバラバラになってしまい、
見た目がよろしくないとの事で、またまた韋陟のお怒りに触れ、やはり無残にも打たれ死に。
三人目の料理人は、失敗した前の二人を教訓に、
まず鶏をヒモで縛り上げてから、煮る、蒸す、揚げるの方法で調理し、
見事食感が良く、形もひょうたんのように綺麗な鶏肉料理を完成。
今度こそ韋陟も満足し、以降、このような調理方法で作られる鶏肉料理は“葫蘆雞”と呼ばれるようになり、
後世に受け継がれていったとのこと。


昔は、料理人も命懸け…(汗)。
美食家の御主人サマに仕えると大変です。
二人が命を落とし、ようやく完成した葫蘆雞、今では簡単にレシピも手に入るので、
お料理上手な人はきっと自分で作れるだろうけれど、
日本だと、普通の家庭では、鶏を丸々一羽買って来て調理する習慣が無いから、どうでしょうねぇ…。
西安では、この葫蘆雞を提供するお店が多いようなので、
興味のあるドラマファンは、西安旅行の際に吳聘の好物を試してみるのも良いですね。




『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』に出てくる“甑糕(ナツメ餅)”については、こちらから。

『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』に出てくる中医薬、“血竭”や“阿膠”については、こちらから。

大陸ドラマ『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』①

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紀元前338年、秦國。
孝公が崩御し、太子・嬴駟が即位。
かつて、厳格な商鞅の変法により、鼻を削ぎ落されるという重罰を受け、
怨みを募らせていた太子傅の嬴虔は、商鞅に謀反の罪を着せ、捕え、車裂きの刑に処す。

その頃、楚國では、太子令・唐昧が、御女星の南に強い光を放つ覇星が現れるのを目にする。
「楚の後宮で覇星がお生まれになるはず」という報告を受けた威王は、
早速後宮を調べさせると、莒姬の媵妾である向氏が身籠っていると判明。
商鞅の死で、最大の敵・秦の法が廃れ、国力が衰えるであろう今、
楚に覇星が降臨し、我々が天下の覇者となる!と意気揚々の威王は、身重の向氏を夫人に封じる。
突然の出来事に、気が気でないのは威后。
その覇星が生まれたら、必ずや、我が子・羋槐を脅かす存在になると案じた威后は、
女医・摯を脅し、向夫人の子を処分するよう命じるも、
莒姬の機転で、数ヶ月後、向夫人は無事に元気な子を出産。

ところが、生まれてきたのは男児ではなく、なんの役にも立たない女児。
「強い殺気を持つ覇星が女児だと禍幅は不明だが、
天の意思は変えられない、命に逆らえば害が及ぶであろう」と唐昧。
威后は、その言葉を都合よく解釈し、天命に任せるべきだと、生まれたばかりの乳飲み子を池に流し、
威王もまたこれを黙認する。
暗闇の中、奪われた初めての子を必死で探す向夫人。
すると、どこからともなく赤子の泣き声が。そう、子は死なずに生きていたのだ。
その子の強運に顔をほころばす威王は、今宵の美しい月にちなみ、公主に“月”と名付ける…。



2018年4月、衛星劇場で再放送が始まった大陸ドラマ『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』が、
約5ヶ月後の9月初旬、全81話の放送を終了。

これ以上視聴可能チャンネルを増やしたら廃人道まっしぐらだから、
衛星劇場には手を出さない!と決めていた私だが、
『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る、長林軍~瑯琊榜之風起長林』観たさに、
自分に課した掟を破り、衛星劇場を契約。
ちょうど同時期、もう一本の興味あるドラマ、こちらの『羋月』も再放送が始まったので、並行して視聴。
タイプの異なるドラマを2本、バランスよく観ることができ、結果、衛星劇場を入れたことに悔いナシ。

『羋月』は長い歴史ドラマゆえ、登場人物多数。
それら登場人物を、史実と照らし合わせ記していたら、結構な長さになってしまったので、
本ドラマに関しては、2部構成に分け記載。

『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』①
概要、物語、主人公などについて

その他の登場人物や音楽などについて

★ 概要

本ドラマは、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』を大ヒットさせた
監督・鄭曉龍(ジョン・シャオロン)×女優・孫儷(スン・リー)が、再びタッグを組んで挑んだ歴史超大作。
原作は、蔣勝男(ジャン・ションナン)の同名小説<羋月傳(元のタイトルは<大秦宣太后>)>。
脚本は、鄭曉龍の妻・王小平(ワン・シャオピン)。


…が、この原作と脚本が問題になり、裁判沙汰に。
と言っても、近年よく耳にするパクリ問題とは少々質が違う。
発端は、原作者・蔣勝男の不満。
蔣勝男は、2008年から小説<大秦宣太后>の構想を練り、2009年ネット上で発表を開始。
あくまでも、ネット上での発表が進行中の状態で、出版には至っていない2012年、
ドラマ制作者側から、共同で脚本にし、ドラマ化する打診があり、これに応じ契約成立。
パクリ予防を理由に、ネットでの発表や、出版を禁じられた蔣勝男は、ひたすら自著の脚本化に集中するが、
ドラマの宣伝が始まると、脚本家として、降って湧いたように“王小平”の名が出てきて、
最終的には、その王小平が、“總劇本(脚本総括)”という位置付けに。
そんなの話が違うでしょ!と、原作者・蔣勝男は制作者側を訴えるが、
請求した賠償金が1元ポッキリである事からも、お金より気持ちの問題で、
正式に謝罪して、自分の脚本を採用し、名前をきちんとクレジットしてくれればOKだったのであろう。

ところが、これに、制作者側が反撃。
採用となった王小平が執筆した脚本は、50%近くが、王小平による創作なので、
王小平を“總劇本”と位置付けることに何ら問題は無い、
逆に、誹謗中傷されたとして、名誉棄損で原作者の蔣勝男を訴え、勝訴。
しかも、その後出版された蔣勝男の小説<羋月傳>が、
ドラマ『羋月傳』の脚本を盗作した疑いがあるとして、
著作権侵害も訴えたようだが、結局どうなったのでしょう。
なんかもうよく分りませんわ…。

ちなみに、原作者は“勝男(カツオ)”という勇ましい名前だし、
脚本家は、小平(とう・しょうへい)と同じ“小平”という名前だが、共に女性です。

★ 宣太后 羋氏

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このドラマの主人公・羋月は、歴史上実在した羋氏(?-紀元前265)がモデル。
日本では一般的に秦の“宣太后”として知られる人物。
日本で最も有名な秦代の権力者と言えば、始皇帝嬴政(紀元前259-紀元前210)であろう。
宣太后は、その始皇帝の高祖母(祖父母の祖母)、つまり、始皇帝は宣太后の玄孫ということになる。

彼女の早年の素性に関しては、“羋(び)”姓の女性であったという事はハッキリしていても、
下の名前、生年月日、父母について等は、正式な記載が残っておらず、不明。
中国で、周代にはすでに確認されている非常に古い楚の国姓“羋”を名乗っていることから、
楚國の出身であったと認識されている。
その羋氏は、秦の惠文王の妃嬪になると、八子に封じられ、“羋八子”と呼ばれるように。
当時、秦の後宮は、上から順に、皇后→夫人→美人→良人→八子→七子→長使→少使の8階級。
この事からも、惠文王存命中の羋八子は、特別地位の高い女性ではなかったことが判る。
それでも、惠文王との間に、稷、公子芾、公子悝という三人の子を出産。

惠文王の死で、惠文后が産んだ嬴蕩が王位を継ぎ、武王となると、
羋氏が産んだ嬴稷(紀元前325-紀元前251)は、人質として燕に送られてしまうが、
力自慢の武王が、持ち上げた大きな鼎を落として、脛骨骨折と失血で死ぬという、まさかの珍事が起き、
羋氏&嬴稷母子の命運は急転直下。
武王に子が無かったため、羋氏は異父弟・魏冉の助けを借り、燕にいた息子・嬴稷を秦に戻し、
反対勢力を抑え込み、紀元前306年、我が子・嬴稷に王位を継がせ、昭襄王にすることに成功。
同時に、昭襄王の母である羋氏には、“太后”の称号が使われ、“宣太后”と称されるように。
宣太后羋氏は、中国史上初めて“太后”という称号を使った女性と見做されている。

即位した当時の昭襄王は、まだ若年。
そこで、母である宣太后が摂政し、異父弟・魏冉、同母弟・羋戎、下の息子・公子芾&公子悝で、
ガッチリ脇をガード。
齊、趙、韓、魏、楚といった周辺国の力を衰退させ、
さらに、鬱陶しい遊牧民族・義渠対策として、宣太后は義渠王と私通!
義渠王との間に、二人もの子を産み、紀元前272年、安心させた義渠王を、秦に招き入れ、甘泉宮にて殺害。
頭もカラダもフルに使い、秦が強国となる礎を築いたのが宣太后。
彼女の功績は、巴蜀を抑えた張儀や司馬錯と比べても遜色が無いと評価する学者もいるほど
やり手の女性政治家だったと言えそう。


このドラマ『羋月傳』で残念なのは、日本公開にあたり、
歴史上そのような重要な人物である羋氏を、勝手に“ミーユエ”などと表記してしまったことである。
邦題が原題と掛け離れると、ファンから苦情が出るし、
かと言って、“羋”の字はもはや中国でもレアな漢字なので、日本ならなおの事タイトルに使いづらい。
邦題を『ミーユエ』にしたのは、苦肉の策だったのかも知れない。
でもね、ドラマ本編の日本語字幕で、
主人公の親族が全員“羋(び)”姓なのに、主人公だけ“ミー”にしちゃうって、どういう事ヨ?!
しかも下の名前も、他の兄弟たちは“姝(しゅ)”、“茵(いん)”、“戎(じゅ)”、“冉(ぜん)”といった具合なのに、
一番簡単な漢字“月”という名の主人公だけ片仮名で“ユエ”…。
さらに、その主人公、八子に封じられると、いきなり“ミー”から親族と同じ“羋”にシレーッと改姓。
ナンなの、この統一感の無い日本語字幕。
最初から最後まで“羋月(び・げつ)”で良かった。
私は、字幕を担当した翻訳者を責めているのではありません。
歴史上実在の重要人物を、“ミーユエ”と表記するよう指示した側の馬鹿さ加減に、呆れるのです。

なお、この羋氏は、なにぶん紀元前の女性なので、肖像画は残っていない。
上の画像は、2016年、咸陽の兩寺渡公園に設置された秦代の著名人20名の銅像の内、宣太后の物。

★ 物語

楚國で、威王の公主として生まれながら、母親・向氏の身分が低かったため、大変な苦労をするも、
嫡公主である異母姉・羋姝が、秦國の王・嬴駟に輿入れする際、
羋姝の媵妾(正室が子を産めなかった場合、代わりに子を産む女性)として秦へ渡り、
聡明さで秦王の寵愛を受け、嬴稷という男児をもうけたがゆえ、権力闘争の渦に巻き込まれるが、
やがて、その子・嬴稷が王位を継ぐと、宣太后の地位につき、
国と息子を守るため、政治的手腕を遺憾なく発揮し、
その後超大国に成長する秦の礎を築く宣太后羋月の生涯をドラマティックに描く伝記ドラマ



前述のように、羋氏が歴史の表舞台に登場するのは、息子・嬴稷が昭襄王に即位してからであり、
彼女の出自や前半生については、分かっていない。
よって、本ドラマでも、主人公・羋月の前半生は、ほとんどがフィクション。
しかし、羋月自身の生き様がフィクションでも、
背景には、要所要所で楚や秦に起きた史実が織り込まれ、
あの時代を生きた実在の有名人たちも多数登場するので、歴史の流れを楽しくお勉強できる。

そのようなドラマで、軸となっているのが、異母姉妹・羋月&羋姝の愛憎劇。
実際の羋氏には、羋姝などという異母姉もいなければ、その羋姝と共に秦王に嫁いだなどという事実は無い。
羋姝は、惠文王嬴駟の王后で、武王嬴蕩の生母である、俗に魏夫人と呼ばれる惠文后がモデル。
楚で羋月と一緒に育った異母姉という設定にし、仲良しだった二人が、いかに対立していったかを描くことで、
男性中心で小難しくなりがちな秦の歴史を、女性目線の昼ドラ風に観易くしている。

★ 人物相関図

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登場人物は、実在も架空も入り混じり、非常に多く、人物相関図には載り切らない。
印象的な人物をさらに絞りに絞って、以下、個別にチェック。

★ キャスト その①:主人公・羋月

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孫儷(スン・リー):羋月(?-紀元前265)

女優としての地位を確固たるものとした『宮廷の諍い女』の鄭曉龍と、本作品で再びタッグを組んだ孫儷。
『宮廷の諍い女』で演じた甄嬛と同様に、
このドラマでも、主人公・羋月の少女時代から晩年までを、演じきっている。
聡明で怖い物知らずな少女が、
大国を牛耳るほどに成長する内面の変化を上手く表現する孫儷の演技力には、当然見入るが、
単純な見た目の七変化もまた、見どころの一つ。

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この他にも、陸史劇のお約束、“まったく男性に見えない男装”も披露。
息子・嬴稷の王位継承に伴い、宣太后に即位すると一気に化粧が濃くなるのは、
『宮廷の諍い女』で、お寺から後宮に舞い戻った時の甄嬛を彷彿。
決意の勝負メイク!って事なのでしょうね~。
晩年の描写は駆け足なので、最後の2話で、羋月、ドッと老け込みます。


また、遊牧民族の義渠王翟驪とただならぬ関係をもつため、
秦の太后でありながら、なんともエスニックなお嫁サマ姿も。

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史実では、二人がこのようなお式を挙げたという記載は残されていない。
このシーン、私は、単純に、とても少数民族っぽい衣装だなぁ~と思ったくらいだけれど、
あちらでは、まるで『ゲーム・オブ・スローンズ』のカール・ドロゴ(馬王)とデナーリス・ターガリエン(龍母)!
と馬鹿ウケする人も多いようだ。

ドラマの中の羋月は、この義渠王に大変な恩義を感じており、また、本当に愛しているがゆえ、
義渠王と、彼を受け入れられない息子・嬴稷との板挟みで、悩む。
実際の羋氏は、一体どういうつもりで義渠王と関係していたのでしょうねぇ~?!
現代人の感覚では、自国を救うための謀略でも、純粋な愛情でも、
太后レベルの女性が、よそ者の男と肉体関係をもち、身籠るなんて、あまり好ましく思われないだろうが、
貞操観念や道徳観なんて、ほんの数十年でも激変するから、
紀元前ならなおの事想像がしにくく、宣太后羋氏の本心などもはや知る由もない。



続いて、その他の登場人物や音楽等については、こちらの『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』②へ。

大陸ドラマ『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』②

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2018年4月、衛星劇場で再放送が始まった大陸ドラマ『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』が、
約5ヶ月後の9月初旬、全81話の放送を終了。

登場人物を、史実と照らし合わせ記していたら、結構な長さになってしまったので、2部構成に分け記載。

概要、物語、主人公などについて

『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』②
その他の登場人物や音楽などについて

★ キャスト その②:楚國の御実家

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趙文瑄(ウィンストン・チャオ):楚威王(?-紀元前329)

父・宣王から王位を継ぎ、在位中に楚の領土を拡大した名君。
(…が、その後王位を継いだ息子の懷王羋槐がとんだ暗君で、秦の策略に振り回され、楚を弱体化。)
ドラマでは、実際の息子・羋槐以外にも、羋茵、羋姝、羋月、羋戎ら多くの子をもつ父。
母親の身分が低いため疎まれ、ろくなお嬢様教育も受けられず、公主にしては無作法に育った羋月を、
活発で聡明な子と溺愛する。(だから余計に、威后が、羋月を脅威と感じ、イジメをエスカレートさせる。)
演じているのは、お馴染み趙文瑄。
かつては、孫文orゲイの印象が強かった趙文瑄、近年は、皇族王族の役が多く、板に付いております。



姜宏波(チアン・ホンポー):楚威后(?-?)

楚の威王の王后で、懷王羋槐の生母である威后に関しては、史書に記載が無いため、詳細不明。
本ドラマでは、羋槐と羋姝の生母で、羋姝の将来を案じるが余り、その妨げになりかねない羋月を忌み嫌い、
徹底的に潰しにかかる、ドラマ前半一の悪役。
羋姝が秦に輿入れすると、母親でもさすがに娘の嫁ぎ先にまでくっ付いて行くことはできないので、
出番がドッと減るけれど、代わりに、自分の侍女・玳瑁を、羋姝に付けて秦へ送り込む。

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威后から“羋姝サマ護衛”のミッションを受けた李蓓蕾(リー・ベイレイ)扮するその玳瑁が、
これまた非常に面倒なオバちゃん。
威后&羋姝に対する忠誠心が強いだけに、厄介です。

威后に扮する姜宏波は、私、久し振りに見ました。私にとっての姜宏波と言えば…

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姜文(チアン・ウェン)監督作品『鬼が来た』(2000年)の魚兒である。
第53回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、日本で香川照之が実力派と認められるようになった作品。
1973年生まれで、当時まだ二十代だった姜宏波も、今では四十代半ば。
今回、ドラマで久し振りに見たら、若い頃よりよほど洗練された美しい熟女になったと感じた。
でもね、綺麗だけれど、イヤな女。もっとも、それは、子を想う余りの母の暴走なのだけれど。




劉濤(リウ・タオ)羋姝(?-305年)

羋姝は、惠文王嬴駟の王后にして武王嬴蕩の生母、俗に魏夫人と呼ばれる惠文后をモデルにした人物。
楚の威后が産んだ公主で、羋月の異母姉という設定は、フィクションだが、
この羋姝と羋月の愛憎劇は、羋姝が死ぬまで、本ドラマの軸になっており、
羋姝は、羋月に次ぐ準主役と言っても良い、非常に重要な人物。
大陸に留まらず、中華圏全域で人気者に。
その『琅琊榜』の後に公開となったこの『羋月』では、
「あの凛とした霓凰郡主が、なんか凄い事にになってしまった…!」と
羋姝の凄まじい顔がネット上に出回っていたので、
私も、ドラマを観る前から、この羋姝が悪役であることは察していた。

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修羅・劉濤4連発(笑)。キョーレツ。

ところが、いざドラマを観始めると、羋姝は心優しい公主で、
皆から疎まれている羋月にも、嘘偽りの無い心で接し、姉妹の情を交わしている善人。
羋姝がブラック化していくのは、秦に輿入れして暫く経ってから。
秦王嬴駟が羋月を大切にすることで、抑えようとしても抑えきれない嫉妬心が生まれ、
その後、自分は嬴蕩を、羋月は嬴稷を出産すると、聡明な嬴稷を脅威と感じるようになり、悪の道まっしぐら。
自分の母親・威后と同じで、我が子可愛さの母心が、女性から理性を失わせちゃうんですよねぇ。
そもそも羋月に対し優しかったのは、心のどこかで“羋月より自分の方が上”という意識があったからで、
羋月が自分の地位を脅かす存在に成長すると、心の余裕を失い、優しい自分でいられなくなってしまう。
人は下克上をなかなか受け入れられない生き物なのです。
善人が急に悪人に変わったら不自然だが、
このドラマでは、優しかった羋姝が、徐々に悪に染まっていく段階が丁寧に描かれているし、
劉濤も微妙な心の動きを上手く表現している。

★ キャスト その③:羋月が愛した男たち

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劇中、羋月は、タイプの異なる3人の男性と恋愛関係に。皆さまのお好みは、どの殿方でしょうか。

黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン:春申君黃歇(紀元前314?-紀元前238)

黃歇は“戦国四公子”の一人に挙げられる有能な楚の政治家。
彼の前半生については具体的に分っていない。
ドラマの中では、屈原(紀元前343-紀元前278)の弟子という設定だが、
実際にはそのような記載は残っておらず、ましてや羋月の初恋のお相手という設定は、信憑性に乏しい。
羋八子が太后に昇格した紀元前306年、彼女は30歳前後だったと推測され、
紀元前314年生まれと言い伝えられている黃歇より約20歳年上である事からも、
“初恋のお相手”というには、現実的には、無理がある。
でも、このドラマでは、止む無い事情で結婚にこそ至らなかったが、
羋月と強い縁で繋がり、別れと再会を繰り返しながら、ずっと彼女を支える男性となる。

演じているのは、私mango一押しの黃軒!黃軒が出演しているのも、私がこのドラマを観たかった一因。
戦国の世においても、武闘派ではなく、温厚で知性派の黃歇は、
文学青年チックな雰囲気を醸す黃軒にぴったり。
アフレコも、声優を使わず、本人が行っているので、黃軒の地声を聞くことができます。

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黃軒は、自分の登場シーンのみならず、実は2番目の黃歇の声も吹き替えている。
2番目の黃歇”とは、最初に出て来る子役から黃軒へ橋渡しする、第4話に登場する成長期の黃歇のことね。
自分自身で演じている黃歇の時より、若干マイルドな声で喋っているように聞こえる。
黃軒、吹き替え作業も上手いです。
恐らく、意識していないと、2番目の黃歇の声にまで気付かないと思うので、
黃軒ファンの皆さまは、注意して聞いてみて下さいね~。

さらに正確に言うと、このドラマで、黃軒は一人二役を演じている。
二役目は、最終回に登場する魏丑夫(?-?)。宣太后羋氏、晩年の情夫と言い伝えられている若き男性。
ドラマでは、魏丑夫があまりにも黃歇に似ているため、宣太后の目に留まり、側で仕えさせるという設定。


ドラマの中の黃軒自身に不満は無いが、日本側が“ホアン・シュアン”の誤表記で紹介してしまっているのが、
ただただ残念でならない。間違うことは仕方が無いが、間違ったら訂正しなさいヨ。
間違ったまま拡散しちゃっているじゃないのよ。無責任(怒)。

“ホアン・シュアン”にされてしまった黃軒(ホアン・シュエン)については、こちらの“大陸男前名鑑:黃軒”を。



方中信(アレックス・フォン):秦惠文王嬴駟(紀元前356-紀元前311)

秦の惠文王嬴駟に、惠文后という王后と羋八子という側室がいたのは事実だが、
その両者が、楚からやって来た異母姉妹というのはフィクション。
演じているのは、お馴染みの香港明星・方中信。
かつて香港映画では、ちょっと情けない感じの二番手三番手を演じることが多かった方中信だけれど、
ドラマ『ラストロマンス 金大班~金大班』辺りから、大陸では、渋い男性を演じるようになり、
今ではこのような君主役もすっかりマッチ。
姉・羋姝の夫である嬴駟を奪う気など毛頭なく、黃歇を想い続けていた羋月が、
それでも嬴駟を敬愛してしまうのが、理解できる素敵な紳士を演じている。



高雲翔(ガオ・ユンシャン):義渠王翟驪(?-?)

歴史上、羋氏が義渠王と私通し、子を二人産み、それでも最終的に彼を殺したのは事実だが、
義渠王の氏名など具体的な事は、残された記載が無く、不明。
羋氏と義渠王の間にできた二子についても不明だが、羋氏と惠文王の間にできた子の一人・公子芾が、
このドラマでは、羋月と義渠王との間にできた子という設定に変えられている。
この義渠王は、羋月が愛した男性の中で、たった一人ワイルドな遊牧民族で、異質。
私、本来、俺について来い!タイプの男性には興味が無いのだけれど、
『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』でも、皇族の男性主人公二人があまりにも不甲斐ないため、
脇役の瓦剌(オイラト)の首長・也先に惹かれちゃったのよねぇー。
大柄な高雲翔はゴーカイな“草原の民”系の扮装がよく似合う。
『皇貴妃の宮廷~多情江山』で演じた順治福臨が比較にならないほど素敵。
なのに、なのに、その高雲翔は、2018年3月、オーストラリアで、
現地の華人女性に性的暴行を働いた容疑で、裁判沙汰になり、俳優活動は事実上停止状態。
高雲翔がもし日本人だったら、この『羋月傳』も日本で放送中止になっていたでしょう。

★ キャスト その④:その他

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祖峰(ズー・フォン):屈原(紀元前343?-紀元前278?)

屈原は、楚の名門公族の出身にして、楚の有能な政治家。
懷王羋槐に重用されるも、楚を思っての諫言を受け入れてもらえず、国の将来に絶望し、入水自殺。
この屈原の亡骸が、魚に食われてしまわぬよう、
人々が魚のエサ代わりとなる粽(ちまき)を川に投げ込んだのが、
端午節に粽を食べる風習になったと言い伝えられている。
そう、私にとっての屈原は“粽の人”なのだ。
ただ、“粽の人”として、単独で存在していたため、
中国史上どの時代のどの国にどう組み込まれる人物なのか、ろくに分っていなかった。
このドラマを観たことで、歴史上の屈原の立ち位置を、ようやくハッキリ理解した。
但し、前述のように、本ドラマで描かれている屈原と黃歇の師弟関係の設定は、恐らくフィクション。
演じている祖峰は、私が好きなオッサン俳優の一人。
黃歇役の黃軒と屈原役の祖峰のコンビなんて、映画ファン的には、贅沢な組み合わせ。



趙立新(チャオ・リーシン)張儀(?-紀元前310)

張儀は、秦の惠文王に重用された魏國出身の政治家。蘇秦と並ぶ縦横家の代表的人物。
諸国を遊説するも、誰からもなかなか取り合ってもらえず、
楚にやって来て、相国の宴席に出た際には、名玉・和氏璧を盗んだ疑いまでかけられ屈辱を味わう始末。
そのエピソード自体は史実で、ドラマだと、さらに張儀は、ちょうどその頃、羋月に出逢う。
弾き出された者同士、互いに才を認め合い、意気投合し、以降、長期に渡り、友情で結ばれる。
弁は立つけれど胡散臭く、君子と呼ぶにはやや徳に欠け、多少ガメツい部分もあるこの男を、
滝藤賢一似の(?)趙立新が飄々と演じ、憎めないキャラになっている。
『射英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー~射英雄傳』で演じた洪七公に通じる役かも。
他の出演作では、ガラリとタイプの異なる役を演じている『芳華 Youth』(2017年)が、日本で公開待機中。
こちらは、本ドラマで黃歇役の黃軒が主演する映画で、お勧め。



張鈞涵(チャン・ジュンハン):魏冉(?-?)

魏冉は、羋氏の同母異父の弟で、賢かったため、惠文王嬴駟に取り立てられ、国政に関わるようになり、
甥っ子・嬴稷が若くして昭襄王に即位すると、姉と共に秦の実権を握り、宰相、相国に登り詰める人物。
ドラマでは、母親の向氏が、楚威后から追い出され、粗末な小屋で悲惨な生活をしていた時に、
家主である魏甲という下劣な男に強姦されてできた子という設定。
張鈞涵が演じているのだけれど、顔の雰囲気が…

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『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』の禁軍大統領・蒙摯を彷彿させるコッテリ系。
見続けている内にクセになる濃さ。



巴圖(バートゥ):秦武王嬴蕩(紀元前329-紀元前307)

嬴蕩は、惠文王と惠文后の間に生まれた息子で、父王の死に伴い、即位し武王に。
実際の武王は、秦を弱体化させたことは事実でも、
まったく功績が無かった訳ではなく、多少はお仕事をしたようだが、
このドラマだと、いばり散らすだけで無能なお山の大将キャラ。
見た目も分かり易く、王族感ゼロで、ジャイアン的。“秦の内山信二”って感じ。
もうね、子供の頃から一貫して“秦の内山クン”なの。

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こんな田舎のガキ大将みたいな子、今どきよく探してきましたね。
この子役の実の両親も、まさか我が子に王族役、
しかも、方中信と劉濤の間から生まれた子の役でオファーが来るなんて考えてもみなかったであろう。
(でも、慣れると、ぶちゃいくで可愛いく見えてくる。)
こんな不肖の嬴蕩だけれど、羋姝ママにとっては、可愛いい我が子だから、
盲目になって息子の将来を切り開こうと奔走し、
その甲斐あって、嬴蕩は王位継承に成功するのだが、在位期間は4年ポッキリ。
誰かに王位を奪われたのではない。本人が突如死んでしまったのだ。死因は…

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力自慢の嬴蕩が、持ち上げた大きな鼎を落とし、脛骨骨折と失血で、まさかのあの世逝き。
これ、冗談みたいだが、史実である。最期まで“秦の内山クン”らしい伝説を残して下さいました。
青年・嬴蕩を演じている巴圖は二世俳優で、宋丹丹(ソン・タンタン)と英達(イン・ダー)の息子。



朱一龍(チュー・イーロン):秦昭襄王嬴稷(紀元前325-紀元前251)

嬴稷は、惠文王と羋八子の間に生まれた子。
人質として燕に出されていたが、
異母兄・武王が、鼎を使った力比べで珍死したため、秦に戻され王位を継承。
以後56年もの長きに渡り、王位につき、秦を治めていた君主。
本ドラマでは、異母兄・嬴蕩とは対照的に、幼少期から非常に聡明で徳のある人物。
ところが、燕から秦に戻り、王位を継承し、俳優も子役から大人にバトンタッチした途端、
あんなに利発だった嬴稷が、ママの情人・義渠王に嫉妬するだけで、
覇気も知性も感じられない冴えない青年になっていたから、ガックリ…。
その青年の俳優とは、最近、webドラマ『鎮魂~Guardian』で一気にブレイクの朱一龍。
『鎮魂』を観ていないので何とも言えないけれど、
その3年前のドラマ『羋月』で嬴稷を演じる朱一龍を見ても、今の彼の人気の理由は分かりにくい。
俳優は、役によって、イメージが随分変わりますからね~。

★ キャスト その⑤:番外編~司馬錯

秦を中心にした古代中国で活躍した実在の著名人がわんさか登場する本ドラマ。
秦の将軍・司馬錯(?-?)もそんな一人で、充分な有名人だけれど、ドラマの中での扱いは、決して大きくない。
それでも、この司馬錯、私の脳裏にはシッカリと焼き付いた。 だって…

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WOW!リヴィング・テラコッタ・ウォリアー…!!まるでナマ身の兵馬俑!
演じているのは、李君峰(リー・ジュンフェン)
秦代の物語に、“兵馬俑顔”の俳優を将軍役で起用するなんて、
キャスティング担当さんの遊び心(?)に感心しきり。
「兵馬俑の兵俑の顔は一体一体皆違う、兵の出身地などによっても違う顔の特徴をきちんと再現している」
などとよく言われるが、今回、このドラマで、李君峰扮する司馬錯を見て、
紀元前の大昔、本当にこういう将軍がこの地に生きていたのだと、歴史のロマンを感じた。

★ 兵馬俑

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で、ドラマの終盤は、その兵馬俑である。
晩年、宣太后羋氏は、死んだら楚國へ帰りたいと、故郷へ思いを馳せるようになる。
当時の秦では、皇族が死んだ場合、副葬品として、
あの世でもお世話をする侍女などを模した俑を一緒に埋葬するのが当たり前。
でも、亡くなった宣太后の魂を故郷まで送り届けるには、随行する兵馬の俑も必要。
「なんで侍女の俑しかないのじゃ。兵馬の俑が無いのなら、そうじゃ、作れば良いではないか!」
宣太后サマの一声で、秦の工房が兵馬俑作りに着手、…というのが、このドラマでの、兵馬俑の起源。
実際には、誰が言い出しっぺだったのか不明だけれど、
その後の秦で、始皇帝嬴政崩御の際、多くの兵馬俑が埋葬された事実は、現代人の我々も知るところ。

さらに、ドラマの中の宣太后は、秦の皇族を埋葬する場所として、ある山を指定。
そして、その山を、愛した義渠王翟驪にちなみ、“驪山(りざん)”と命名。
驪山は、実際、秦の始皇帝陵がある陝西省の山である。
前述のように、宣太后羋氏が私通した義渠王の名前は歴史的記載が無く不明だが、
このドラマで、彼を“翟驪”と名付けたのは、ここに繋げるためだったのですね。

★ テーマ曲

テーマ曲は3曲。
オープニングは一貫して陳思思(チェン・スースー)が歌う<滿月>
エンディングは、前半が、霍尊(フォ・ズン)の<伊人如夢>で、
後半が、阿魯阿卓(アールーアージュオ)の<西風>

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この中で、霍尊だけ、2015年の東京・中国映画週間のオープニングセレモニーで見たことがあり、
親しみを感じるので、ここには、その霍尊の<伊人如夢>を。
霍尊は、声が綺麗で、歌唱力があり、ナマ歌も良かったですヨ。
ちなみに、その年の中国映画週間には、
本ドラマで、武王に嫁ぐ魏の公主・魏頤を小憎らしく演じる馬思純(マー・スーチュン)も来日。
(ドラマのオープニングには、“サンドラ・マー”とクレジットされている。
確かに馬思純の英語名は“Sandra”という事になってはいるが、日本では使われているのを見たことが無い。
黃軒の誤表記もだけれど、このドラマで、キャスト名を担当した人って、一体何で調べたのだか…。)







“秦”と言えば、ほぼ全て“始皇帝嬴政”に集約されてしまっている私の乏しい知識で、
このドラマを観て、本当に楽しめるのか?
そもそも、紀元前なんて大昔の話が面白いのか…?
そのような疑問を抱きつつ、ドラマを観始めたのだが、いやいや、充分楽しめた。
漫画<キングダム>で秦の歴史に嵌る若者が多いように、
羋月という女性の一代記として描かれたこのドラマを観ると、
歴史に疎い人でも、楽しみながら、自然と秦の時代を学ぶことができる。
2ツ目の疑問“紀元前なんて大昔の話が面白いのか”に関しては、
日本人の私は、紀元前と聞いただけで、
漠然と『はじめ人間ギャートルズ』のような、腰ミノ巻いた原始人を思い浮かべてしまうのが、問題なのよね。
大陸では、秦の時代にすでにかなり進んだ文明があったわけで、
そこで繰り広げられる凄まじい権力闘争や人間ドラマは、現代人にも充分興味深いものなのだ。

同じ秦を描くドラマで、評判の良い『大秦帝国』シリーズ未見であることが、悔やまれる。
特に、シリーズ2作目の『大秦帝国 縦横 強国への道~大秦帝國之縱』と、
シリーズ3作目の『昭王 大秦帝国の夜明け~大秦帝國之崛起』は、本ドラマと時代が重なるはずである。
幸い、『昭王』は、最近、チャンネル銀河で放送が始まったので、観始めた。
あくまでも現時点での推測に過ぎないが、
『大秦帝国』シリーズは、より史実に沿った教科書のようなドラマで、
『羋月』の方は、10%の史実を90%の虚構で盛った娯楽要素の強い大河ドラマ風女の一代記という印象。
かの<三国志>に例えるなら、『昭王』が正史で、『羋月』が演義という感じ。
だから、まず『大秦帝国』シリーズで、秦の時代をしっかりお勉強してから、
次いで『羋月』を観たら、史実からのアレンジをより楽しめたのではないかと思う。
まぁ、鑑賞の順番を今更悔いても、どうせ手遅れなのだけれど…。
両作品では、重なる登場人物が多いので、
その人物に対する解釈の違いや、俳優の演技を比べながら観るのも、良いですよね。

過ぎゆく夏を惜しみつつクリオロのカラマンシー(+映画とかドラマとか諸々)

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2018年9月8日(土曜)、第75回ヴェネツィア国際映画祭閉幕。
最高賞・金獅子賞は、アルフォンソ・キュアロン監督の『Roma』が受賞。
今年は、アジア勢が振るわなかった。
私も今ひとつ気分が盛り上がらず、あまり動向を追っていなかったのだけれど…

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オリゾンティ部門で脚本賞を受賞したチベットの萬瑪才旦(ペマツェテン)監督最新作、
『撞死了一隻羊~Jinpa』は気になっている一本。
萬瑪才旦監督は、過去に、『オールド・ドッグ~老狗』(2011年)と『タルロ~塔洛』(2015年)が
東京フィルメックスで受賞している“フィルメックス所縁の監督さん”なので、
この新作も今年11月開催のフィルメックスで上映してくれるかも?とちょっと期待。
…で、私と同じような期待を抱いている人が絶対に沢山いて、
たとえ本当に上映されても、チケットが取りづらくなっちゃうのよねぇ、きっと。
新作『撞死了一隻羊』は、王家衛(ウォン・カーウァイ)プロデュースの澤東電影制作なので、
(こんな言い方をすると怒る人もいるだろうが…)“王家衛ブランド”で、萬瑪才旦監督がメジャー入りし、
普通の映画館で正式に公開という運びになってくれれば、観に行き易くなり、なお有り難い。



日本の映画祭所縁の監督作品と言えば、こちらも。
第30回東京国際映画祭で、最優秀芸術貢献賞と主演男優賞をダブル受賞した
董越(ドン・ユエ)監督作品『迫り来る嵐』
日本の配給会社アットエンタテインメントが買い付けたという話は、すでに数ヶ月前に漏れ伝わってきたが、
その後公開についての詳細がまったく出て来なかったので、気になっていた。
そうしたら、最近になって、ようやく情報解禁。
日本版ポスターと一緒に、
2019年1月5日(土曜)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開と発表。
是非もう一度観たいと思っていた作品なので、間も無くの正式一般公開はまことに嬉しいのだけれど、
またまた日本のポスター問題が…。

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左から順に、中国版、フランス版、そしてオチ担当の日本版。
日本版は、これが最終決定版なのでしょうか(そうじゃないと信じたい…)。
なんか日本版だけ、B級ホラーっぽいというか、火スぺ風というか、安っぽさが否めないのよねぇ…。
董越監督も、フランス版は気に入っているようで、素敵だとコメントしているが、
日本版に関しては、ノーコメント。見て見ぬフリをしたくなる気持ちは、痛いほど分かります。
デザインの分野でも、日本の衰退っぷりは著しく、もー本当にイヤになる…。
悪足掻きせず、いっそ中国版のポスターをそのまま使わせてもらえば良かったのに。
この映画は、東京国際映画祭ダブル受賞というオマケ付きなので、
映画ファンは働きかけなど無くても、勝手に映画館へ観に行ってくれるでしょうが、
もっと広く一般に訴えるには、ポスターのデザインの良し悪しは、結構重要だと思います。

でも、邦題を、映画祭の時の物から変えずに、『迫り来る嵐』のままにした点は、評価したい。
あんまりコロコロ変えられると情報が錯綜するし、変えてより良くなったケースも少ない。
最近だと、張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督の『相愛相親(そうあいそうしん)』が『妻の愛、娘の時』になり、
わざわざ変えたメリットがまったく感じられなかった(映画自体はとても良い、お勧め)。

ポスターはこのようにダサい『迫り来る嵐』ですが、
『薄氷の殺人』(2014年)等が好きな人なら恐らく気に入るであろう中国産ミステリー映画なので、
来年一月公開の際にはどうぞ。
董越監督は、多分プロモーションのために改めて来日するのでしょうけれど、
主演男優賞受賞の段奕宏(ドアン・イーホン)にも是非再来日して欲しい。もう一度ナマ段奕宏を見たい!



ドラマでは、やっぱり気になる『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』。
同じ時代を扱った『延禧攻略~Story of Yanxi Palace』が先に公開され、思わぬ大ヒットとなったため、
後発の『如懿傳』は圧倒的不利にも思えたけれど、
結局のところ、『如懿傳』は『如懿傳』で盛り上がっているではないか。
ドラマが話題になるにつれ、出演者への注目も高まり、メディアに取り上げられる機会が増えている。
語られ易いのは、やはり美男美女。
例えば、『扶搖~Legend of Fuyao』ではサイテー男だったのに
『如懿傳』では“最帥太監(最もカッコイイ太監)”!と一気にお株が上がった俳優が(↓)こちら。

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そう、黃明(ホアン・ミン)。
『金蘭良縁~金玉良緣』や『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』などでお馴染みのあの黃明。
いやいや、私の注目ポイントはそこじゃなくて、
この黃明、実は昨2017年6月、芸名を“黃宥明(ホアン・ヨウミン”に改名しておられた。
本人は改名の理由を具体的には語っていないけれど、
以前から「あの黃曉明(ホアン・シャオミン)から一字欠けた名前」などとカラカワレたり、
美男子で、話題作への出演もそこそこ有るのに、今一爆発的人気に繋がらないため、
運気向上の期待を込めて改名した、…なんて憶測もあるみたい。
でも、それで“最もイケている太監”の称号を得て、話題になっているのだから、改名した甲斐ありましたね。

この『如懿傳』で黃明改め黃宥明は、乾隆帝お付きの太監・李玉を演じており、
その李玉の弟子・進忠を演じているのが、(↓)こちら。

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『開封府 北宋を包む青い天~開封府傳奇』の“劉復”こと蔣雪鳴(ジャン・シュエミン)。

(↓)こちら、先日行われた『如懿傳』のイベントでの蔣雪鳴。

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蔣雪鳴クンもどんどんメジャー街道を突き進んでおります。
劉復の活躍、嬉しいですよ。


『如懿傳』、主人公・如懿を演じる周迅(ジョウ・シュン)も、もちろん注目。

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周迅は大好きな女優さん。周迅自身が、とても魅力的だし、お写真も素敵。

(↓)こんなお支度中の周迅も。

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今どきは、清代のドラマを撮る時、長~いスカルプチュアだかチップだかを貼って爪を作るのですね。
日本の時代劇には絶対に無いタイプのお洒落。



ドラマと言えば…

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衛星劇場の『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~瑯琊榜之風起長林』が、
本日ついに(…と言うか、あっと言う間の)最終回。
先週放送の第48話は、鳥肌モノであった。
残り2話も一気に観たいけれど、観たらもう次が無いと思うと淋しいし、どうしましょ…。
今日にせよ、今日以降にせよ、観終わったら、当ブログにて、また思いの丈を綴らせていただきます。
(相当な長文になってしまいそうな予感…。)




お菓子は、ケーキを一個だけ。
夏の限定商品なので、そろそろ食べ納め。

★ クリオロ:カラマンシー

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大きさは、直径約7センチ、高さ約4センチ。
チョコレートのカップの中に、ジュレ・カラマンシーを隠したムース・ココを詰め、
上にタピオカを混ぜたカラマンシー・ソースを流したケーキ。




こちら、クリオロ(公式サイト)“カラマンシー”
夏の限定品のはずだが、新宿高島屋のパティシェリアのコーナーでは、“NEW”の札と共に販売されていた。
クリオロのお店では夏中あって、高島屋には、8月末、ようやく入ってきたみたい。
販売予定は、9月29日(土曜)まで。


以前、同じくクリオロの夏の限定品で“ココ”というケーキがあった。
とても気に入っていたのだが、見掛けなくなったので、ちょっとガッカリしていたら、
アレンジされ、“カラマンシー”として登場。

“ココ”も“カラマンシー”も、基本の形は同じで、チョコレートのカップにココナッツのムースを詰めた物。
“ココ”では、そこに添えるフルーツに、マンゴーとパッションフルーツを使用していたが、
“カラマンシー”は、その名の通り、カラマンシーを使用。

カラマンシーは、東南アジア発の柑橘。
私は、フレッシュなカラマンシーは食べた記憶が無く、恐らく加工品でしか味を知らないのだけれど、
かなり酸味の強い柑橘という印象がある。

このケーキでは、そのカラマンシーをジュレにして、ムース・ココの中に隠している。
ジュレと言っても、プリンプリンに固めておらず、中からトロリと流れ出るユルさ。
ジュレと言うより、むしろソースに近い感じ。
味はやはり酸味が強く、スッキリ爽やか。

外側のカップは、ホワイトチョコレートがベースなので、まろやかな甘さ。
メインのムース・ココは、ふわっと軽い食感。


見た目よし、味よし。
チョコの甘さと、カラマンシーの酸味のバランスがとても良い。
販売期間中に、最低限あともう一度は是非買いたい。

ちなみに、店名だが、“エコール・クリオロ”から“クリオロ”に変わっていた。
改名してすでに2年も経つそう。気付きませんでした…。
そもそも、なぜ元の名は“エコール・クリオロ”だったのだろうか。
もしかして、お菓子教室からスタートしたから“École(学校)”で、
お店の方が忙しくなったから、シンプルに“クリオロ”にしたとか…?

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』①

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梁の都・金陵城。
梁帝・蕭歆は、北の国境・甘州附近で、大渝が怪しい動きをしているとの報告を受ける。
梁帝の兄である長林王・蕭庭生は、これを侵攻の前兆と判断、
西の軍を動員し、いち早く大渝を征圧すべきと考え、梁帝に兵符を求め、
梁帝もまたこれに即座に応え、長林王に兵符を託す。
長林王は、早速、長男の蕭平章に、甘州左路を守るよう命じる。

梁帝がいとも簡単に長林王に兵符を渡したことに、不安を覚える朝臣たち。
今や長林王府の軍功と名声は著しく、梁帝の厚い信任を得ているのは、誰の目にも明らか。
內閣首輔・荀白水は、まだ10歳の甥である太子の将来を案ずるも、
梁帝に進言するわけにもいかず、悶々とするばかり。
そんな荀首輔に、軍の物資輸送を任されている中書令の宋浮が言う、
禍の芽を摘み取ることが忠臣の務めである、と。

父からの命を受け、甘州へ向かう途中、琅琊閣に立ち寄った長林王府の世子・蕭平章は、
自分の問いに対する老閣主からの答えを受け取る。
そこに書かれていたのは、「面立ち 心より生まれ 局面は心が左右する 
国境での戦いは危険が待ち受けよう」という厳しいもの。

何も知らずに、兄の来訪を無邪気に喜ぶのは、弟の蕭平旌。
蕭平旌は、将家の息子でありながら、縛られる事を嫌い、
修行と称し、琅琊閣で自由気ままに生きる長林王府の次男坊。
蕭平章は、久し振りに再会した弟に、「平旌、お前ももう直21歳。将には誰しも国を守る責務がある。
私がいつまでも無事とは保証できん。国境が安定したら、金陵に戻れ」と優しく諭し、
慌ただしく任地へ向かって行く。

3ヶ月後の甘州。
もう長いこと都からの兵糧も途絶え、絶体絶命の危機に追い詰められている蕭平章率いる長林軍。
それでも、この苦境に屈せず、士気を鼓舞する蕭平章だが、致命的な傷を負ってしまう。
その頃、琅琊閣の平旌は、「大同府で補給船3艘が左水路で謎の沈没」という不可解な報告書を目にする。
船の沈没場所は、明らかに甘州へ続く水路。
胸騒ぎがした平旌は、琅琊閣を飛び出し、ついに下山する…。



2018年3月末、衛星劇場でスタートした大陸ドラマ、
『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』が、
約半年後の9月初旬、全50話の放送終了。

今さら言うまでもなく、中華ドラマニアの皆さまなら御存知でしょうが、
私は、これ以上視聴可能チャンネルを増やし、廃人道まっしぐらになることを恐れ、
これまで長年「衛星劇場は契約しない!」と心に決めていたのだが、
『琅琊榜<弐>』は、制作発表の時からずっと気になっていたドラマなので、
自らに課した掟を破り、遂に入れてしまいました、衛星劇場…。
まぁ、結果的にとても楽しめたので、悔いはナシ。
最近、長いドラマに慣れっ子になってるので、50話なんてあっと言う間であった。



あれこれ思いの丈を書き綴っていたら止まらなくなり、
思いの外長くなってしまったので(これでもすでにかなり削除した)、
この『琅琊榜<弐>』に関しては、以下の3部構成で掲載いたします。

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』①
概要、物語、キャストなどについて

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』②
その他のキャストについて

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』③
吹き替え、所作、音楽などについて

★ 概要

世に、大陸ドラマの著しい進化を見せ付けたエポックメイキング的作品とも称せる前作、
女性作家・海宴(ハイイェン)の脚本を、
孔笙(コン・ション)と李雪(リー・シュエ)が共同監督、
そして侯鴻亮(ホウ・ホンリャン)がプロデュースした東陽正午陽光(Daylight Entertainment)制作のドラマ。


“『琅琊榜』の続編”という位置づけではあるが、メインキャストは一新。

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前作では、胡歌(フー・ゴー)扮する主人公・宗主梅長蘇が、あまりにも強い印象を残したため、
“梅長蘇不在の『琅琊榜』は、『琅琊榜』に非ず!”という前作のファンも多いであろう。
私個人的には、梅長蘇のインパクトが絶大だからこそ、
その梅長蘇を出して、続編をつくることは危険であり、それで前作を超える作品にするのは、困難だと感じる。
また、胡歌も、一つの成功にシガミ付きたくない、
梅長蘇のイメージに囚われずに、前進したいという気持ちがあったのではないだろうか。
胡歌は、若い内にアイドル的な人気を得た人だが、非常にプロ意識の高い俳優である。

メインキャストが一新された続編『琅琊榜<弐>』では、
制作発表当初、前作に、南楚の公主・宇文念役でチラリと出演した喬欣(チャオ・シン)のみ
続編にも連投と報道されていた。
が、いざ蓋を開けると、多くの前作出演俳優が、所々に顔を出している。
基本的には、前作で善人だった人が続編では悪人、前作で悪人だった人は続編では善人。
そういう前作からの転生キャストを見付けるのも、続編を観る一つの楽しみになることでしょう。

★ 物語

物語を簡単に言ってしまうと、
人の野心や猜疑心は絶えることがなく、(ネガティヴな意味で)歴史は繰り返す!
そして、それでも、崇高な魂は消えず、受け継がれる!という胸が熱くなる歴史人間ドラマ


舞台は、前作『琅琊榜』同様、架空の王朝“梁”。
時代背景は、前作の“その後”。
武靖帝(靖王・蕭景琰の諡)から皇位を継いだ嫡男・蕭歆が天下を治めている時代。
前作と続編を繋ぐ人物・庭生に注目すると、
前作初登場シーンで11歳だった彼が、続編冒頭では恐らく62歳前後と推測されているので、
前作の約50年後を描いているのが、この『琅琊榜<弐>』と言えよう。

前作の最後で、靖王が新皇帝に即位し、清廉な名君のもと、安定した平和な国になったであろう梁だが、
約50年後の続編冒頭では、前作で復讐の要因となった赤焰軍の案件を彷彿させる出来事が起きる。
狙われるのは、著しい軍功と忠誠心で、梁帝からの信用も厚い長林王府。
当人に野心など微塵も無く、真っ白な忠臣であったとしても、
軍功を立てれば立てる程、梁帝から信頼されればされる程、その存在がある者たちにとっての脅威となり、
長林王府は追い詰められていく。
そして、いざ本当の敵が現れても、時すでに遅し。
真の忠臣・長林王府はすでに潰され、国を守れる者はすでに梁にはおらず…。
歴史上何度も繰り返されてきた野心と猜疑心によるこのような権力闘争を、
長林王府の栄枯盛衰と、長林王府次子・蕭平旌の成長記を軸に描いているのが、このドラマ。


ここで今一度“長林”についておさらい。
前作『琅琊榜』ファンの皆さまは覚えていらっしゃいますよね?
最終回、皇帝に即位した靖王・蕭景琰が、新たに編成した軍に自ら命名したのが“長林軍”。

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長林軍の“林”は、蕭景琰の朋友・林殊(=宗主・梅長蘇)の“林”、
“長”は、梅長蘇の“長”、もしくは、“長在(ずっと存在する)”を意味しているといった説あり。
いずれにせよ、長林軍は林殊/梅長蘇の化身であり、
蕭景琰が永遠に友を想う気持ちが込められているのであろう。

続編で語られる蕭庭生を中心とした長林王府は、
まさに、そんな蕭景琰と宗主の魂をしっかりと受け継いだ王府なの。
前作のファンは、もうそれだけでジーンと来ちゃうでしょう…?!
理不尽な苦難に遭い、世子・平章が亡くなり、父王・庭生も亡くなり、次子・平旌だけが残されても、
長林の魂は消えず、また、長い時をかけ築き上げられた長林の信用に人々はついて来て、
絶望的状況に陥った国が復興していく様子を描く、前向きで力強い感動作。


あと、これ、最後まで観ると、血に関係無く、誰しもが善にも悪にも成り得る表裏一体の存在である事を、
蕭平旌と蕭元啟という光と影のような対照的な二人の青年の歩みを通し描いている物語だとも感じる。

★ 人物相関図

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一応、人物相関図を載せておく。
簡単すぎて、見ても見なくても、あまり関係ないとは思いますが…。

★ 大梁歴代皇帝

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前作から続編へと続く、梁の国の歴代皇帝も、即位の順に載せておく。
蕭選→蕭景琰→蕭歆→蕭元時ね。

★ キャスト:その①~長林の魂を受け継ぐ者・長林王

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孫淳(スン・チュン):長林王・蕭庭生

蕭庭生は、前作と続編を繋ぐ軸となる人物。
実父である祁王・蕭景禹が、謀反の罪を着せられ、死に追い遣られたため、
罪人の子として、掖幽庭で生まれるも、宗主・梅長蘇の計らいで、靖王・蕭景琰に引き取られ、
出自を知らぬまま育つところまでを描くのが前作。
続編の庭生は、長林軍の主帥として、血の繋がらない弟・梁帝蕭歆と()、梁を支え、
家庭では、蕭平章と蕭平旌という二人の息子の父親で、すでに人生の黄昏時を迎えている。
 正確には、庭生と梁帝には血縁あり。
庭生の実父・祁王と、梁帝の実父・靖王は兄弟なので、庭生と梁帝は実のところ従兄弟同士。)


前作から引き続き登場し、視聴者にも馴染みのある人物ゆえ、
続編の制作発表当初から、キャスティングに注目が集まっていた庭生。

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孫淳が演じると知った最初の率直な感想は、「随分とオッサン化したわね、庭生…」。
赤子だって死なない限り老いるのは当たり前の事。
それでも、多くの前作ファンは、私と同じように、初めて目にした熟年庭生に、軽いショックを受けたはず。

ところがデス!このオッサン化した庭生が、素晴らしい人格者。
靖王(武靖帝)が、実子ではない自分を、我が子同然に育ててくれたのと同じように、
養子の平章と実子の平旌を平等に育て、権力欲に駆られることなく、義弟である皇帝と国に尽くす君子。
私は、回を追うごとに、この庭生に魅了され、遂に庭生逝去という時には、気分的には殉死or未亡人…。
『琅琊榜<弐>』全登場人物の中で、良い意味で、最初と最後の印象がここまで違う人物は、
庭生を置いて他に居ない。
つまり、わたしにとっての庭生は、『琅琊榜<弐>』のギャップ萌え度NO.1キャラであった。

最後まで分からなかったのは、庭生は自分の出自を知っていたのか?という事。
庭生は、自分が武靖王の実子ではなく、掖幽庭から引き取られた養子だという事は知っている。
でも、じゃぁ、実父が祁王だという事は、最期まで知らなかったのだろうか…?
それとも、知っていたとしても、皇位を巡る問題をこれ以上複雑にしないため、“臣下に徹する!”と心に決め、
息子たちにも真実を告げず、秘密を墓場まで持って行ったのだろうか?(←庭生なら有り得る。)
もし赤焰軍のあの一件さえなければ、
庭生こそ大梁皇家の直系中の直系で、皇帝になるべき人だったのだけれどね…。

★ キャスト:その②~長林王府の兄弟

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黃曉明(ホァン・シャオミン)蕭平章~長林王府世子

蕭平章は、蕭庭生の非常に優秀な長男だが、実は庭生に引き取られた養子。
実父は庭生と一緒に掖幽庭で育った路原。
皆さま、覚えていらっしゃいますか、路原を。

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前作で、宗主に拾われた3人の子の内の一人。
あの路原は、成長すると国に仕えるようになるが、欲に取り付かれ、罪を犯し、死んでしまったため、
当時まだ幼かった彼の息子・平章は、幼馴染みの庭生が引き取って養育。
血の繋がりは無くても、平章と庭生、平章と平旌の、父子愛、兄弟愛はホンモノ。
特に、無邪気な弟・旌を優しく見守る知的で包容力のある兄としての顔が素敵。

演じているのは、大陸のトップスタア黃曉明。
かつては、日本でも、“中国一美しい男”と紹介されていた黃曉明だが、
近年は『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』(2013年)のように、二枚目とは言い難い役に挑戦したり、
『愛のカケヒキ』(2014年)で爆笑演技も披露。
私は、そういう黃曉明に慣れ、また気に入っていたため、
この『琅琊榜<弐>』は、原点回帰とでも言おうか、久し振りにカッコイイ黃曉明を堪能。
…が、その黃曉明は、このドラマで、特別出演という扱い。
えっ、こんなにたっぷり出演している主要キャストなのに、なぜ特別出演?と疑問に思っていたら、
ハイ、悲しいかな、ドラマ中盤で永遠のお別れ…。
最期までカッコよく、弟思いの素敵な平章でありました…。



劉昊然(リウ・ハオラン)蕭平旌~長林王・蕭庭生の次男

本ドラマの主人公・蕭平旌は、典型的な末っ子キャラ。
王府の息子に生まれながら、縛られることを嫌い、自由気ままに琅琊閣で武芸の腕を磨いてきた少年。
血縁関係が無いことなど知らず、大好きな兄・平章を慕う可愛い弟。
良く言えば無邪気でも、悪く言えば単純なお馬鹿さんなのかというと、そんな事はなく、実は聡明で勘も鋭い。
兄、そして父と、ずっと自分を守ってきてくれた大切な人たちを立て続けに亡くし、
否が応にも平旌の少年時代は幕を閉じ、薄汚い大人の世界に足を踏み入れることとなる。
ドラマは、前半と後半ではっきりと平旌の変化が分る成長記になっている。

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見た目の変化も顕著。
前半はポニーテールの少年仕様、後半は髷でアダルト仕様。私の好みは髷姿のアダルト平旌

扮する劉昊然は、1997年生まれで、撮影時はまだティーンエイジャー、
今でも中央戲劇學院に在籍する現役学生俳優である。
正式なデビューは2014年で、キャリアは決して長くはないけれど、
主演映画『僕はチャイナタウンの名探偵』(2015年)は大ヒットして、シリーズ化、
陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品『空海 KU-KAI』(2017年)のような大作にも重要な役で出演。
そして、大ヒットドラマ『琅琊榜』の続編で主人公に大抜擢と、ノリに乗っている若手。
母親世代を安心させる素朴な顔立ちと、185センチの長身というアンバランスが、
野球の大谷翔平にも通じるから(顔がソックリという意味ではなく、同カテゴリーという意味)、
人気になるのも、なんか分るのよねぇ。
『琅琊榜<弐>』では、無邪気な少年が、高潔な魂を受け継いだ長林王となるまでの成長を演じ切っている。
若くして、こんな大作で大役を経験したことは、俳優・劉昊然自身の成長にもなったことでしょう。

ドラマを観ていて、細かい部分で気になったのは、劉昊然の脇の下。
初回、泳ぎが得意で、自称“寒潭の神龍”という平旌が、
琅琊閣老閣主から与えられた罰で川に潜るシーンで、彼のワキにふと目をやると…

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毛が無い。
平旌の少年ぽさを演出するために、処理したのかと思い、他の画像もチェック。すると…

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『琅琊榜<弐>』に限ったことではなく、劉昊然の脇には通常毛が無い。
中央戲劇學院の同級生が、「たまたま劉昊然のワキを見たら、毛が一本も無かった」と証言しているし、
劉昊然のワキは、無毛がスタンダード。
無毛には、剃る、抜く、又は、そもそも最初から生えない、の3ツの要因が考えられるが、
劉昊然本人が腋毛について語っているインタヴュが見当たらないので、真相は不明。
私mango、以前は、台湾女優の口ヒゲ問題を追っておりましたが、彼女たちが剃毛を覚えてしまった今、
新たな対象として、大陸若手男優の腋毛問題に注視していく所存でございます。
(男子新体操や水泳等でも、腋毛ある派と処理派で、世界中で二極化が進んでいるので、
2020年東京五輪に向け、これ、今後活発化していくであろう結構ホットな話題。)

★ キャスト:その③~大梁皇帝ファミリー

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劉鈞(リウ・ジュン):梁帝蕭歆

武靖帝蕭景琰から帝位を継承した武靖帝の嫡男。
武靖帝が、靖王時代に養子にした兄・庭生とは、当然本当の兄弟ではなく、
父帝の死後は、年下でも嫡男である自分が帝位を継ぎ、兄・庭生に補佐されながら、国を治める。
でもね、この梁帝、さすがは靖王の息子なのだ。
歴史の中では、実の兄弟でも、血で血を洗う権力闘争なんて珍しくないのに、
この梁帝は、自分の死後まで考えて、義兄・庭生を守ろうとするの。
平章&平旌同様、この梁帝&長林王の兄弟愛も泣かせる…。
演じている劉鈞は、香港明星風の暑苦しい顔ゆえ、
当初、“『琅琊榜』的キャスト”ではないようにも感じたのだが、いや、劉鈞扮する梁帝、大層良かった。


梅婷(メイ・ティン):荀皇后

梁帝蕭歆のような名君が、なぜ荀氏のような愚かな女を皇后にしてしまったのだろうか。
もっとも、昔の皇族は惚れた腫れたで婚姻関係を結ぶ訳じゃないから、色々事情が有ったのでしょうが…。
荀皇后は、溺愛する我が子を守りたい一心で感情的に動く盲目なママ。
(感情で動く母親という動物は、キレ者の策士より、ある意味厄介…。)
視聴者が、他の悪役より、この荀皇后にイラっとさせられるのは、
彼女が、現代日本にも居そうな一種のモンスターペアレントで、馴染みがあるからであろう。
でも、荀皇后は、そこらのモンスターペアレントとは違い、絶大な権力を握っているから、益々面倒。
梅婷の、愚かしくフテブテしい演技が、これまた上手いのです。
嫌われキャラでしょうが、本ドラマ出演の全女優の中で、私が最も演技で感嘆したのは、この梅婷である。

梅婷は、本ドラマで、黃曉明と並び、日本の映画ファンを喜ばす大物出演者。
『琅琊榜<弐>』で初めて梅婷を知ったという皆さま、
「荀皇后を嫌いになっても、梅婷を嫌いにならないで下さいっ!」(←AKB脱退時の前田敦子風に)
御存知ない方のために、改めて梅婷について簡単におさらいしておくと、
1975年生まれの彼女は、中央戲劇學院で、あの章子怡(チャン・ツィイー)と同級生だが、
中退しているので、卒業写真には一緒に写っていない。中退の理由は、当時すでに仕事が忙しかったから。
在学中に撮影した『追憶の上海』(1997年)は、日本でも広く知られる映画。

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相手役が、かの張國榮(レスリー・チャン)という事もあり、この映画で梅婷を知った日本人は多いはず。
章子怡も「在学中、一番羨ましかった同級生は梅婷。
私のアイドル張國榮と共演し、彼からサングラスをプレゼントされていた」と話している。
あの『追憶の上海』から約20年、『琅琊榜<弐>』の荀皇后を見て、
梅婷はやはり凄い女優になったと、彼女の実力を再確認。


胡先煦(フー・シェンシュー):蕭元時

荀皇后が産んだ蕭元時は、次期皇帝の座が約束された太子で、
実際、父帝蕭歆の崩御に伴い、13歳の若さで新たな大梁皇帝に即位。
素直な良い子で、子供の頃からずっと平旌お兄ちゃんが大好き。
皇帝になってからは、父の遺言通り、補佐役の長林王・蕭庭生に学び、朝廷を運営するが、
その事で余計に、母・荀皇后と伯父・荀白水が、長林王府に脅威を感じ、長林王府潰しを加速させる。
元時が幼くピュアなだけに、母&伯父の入れ知恵に毒されるのではないかと、見ているこちらはハッラハラ。
そして、母&伯父の思惑通り、長林王府が解体しても、
今度は萊陽王・蕭元啟の台頭で、元時自身が狙われるから、ハラハラ感倍増。

扮する胡先煦は、2000年天津生まれの子役出身。
『琅琊榜』繋がりで、同世代の子役出身俳優・吳磊(ウー・レイ)と引き合いに出されこともしばしばだが、
子役時代は、吳磊ほどの人気者になったことはないようだ。
が、ここ最近、『琅琊榜<弐>』、『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』と話題作に立て続けに出たり、
『老男孩~Old Boy』であの劉(リウ・イエ)の息子を演じたりと、活躍が目立ってきている。
今秋、北京電影學院に入学した吳磊に対し、胡先煦は実技試験3位の成績で中央戲劇學院に入学。

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初々しい新入生の胡先煦クン。これで、学校でも、平旌お兄ちゃん・劉昊然の後輩になりましたね。
ちなみに、今年首席で中戲に合格した同級生は、TFBOYSの易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)。
胡先煦は、若いイケメンを指す“小鮮肉”より、
年齢以上の卓越した演技をみせる実力派の若手を指す“小戲骨”と形容されることが多いし、
学校で本格的に演技を学び、将来どんな俳優になるか楽しみですね。



大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』②に続く。

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』②

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2018年3月末、衛星劇場でスタートした大陸ドラマ、
『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』が、
約半年後の9月初旬、全50話の放送終了。


あれこれ書き綴っていたら、思いの外長くなってしまったので、
この『琅琊榜<弐>』に関しては、以下の3部構成で掲載いたします。

概要、物語、キャストなどについて

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』②
その他のキャストについて

吹き替え、所作、音楽などについて


この②では、①に引き続きキャストについて。

★ キャスト:その③~荀氏一族

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畢彥君(ピー・イェンチュン):荀白水

朝廷で內閣首輔を務める荀白水は、荀皇后の兄で、蕭元時の伯父。
本来国を思う賢臣であるが、妹の尻拭い&甥っ子である幼皇帝や荀氏一族を守りたい気持ちが勝ってしまい、
幾度となく判断を誤り、忠義の長林王府を潰し、悪を助長させ、
過ちに気付いた時は、すでに手遅れで、暗殺という無残な最期を遂げる。
この荀白水も、長林王府に野心など無いことは分かっていたのだ。
でも、皇帝や人々からの信頼が厚い長林王府だからこそ、
将来甥っ子の地位を脅かす存在になるのではないかと恐れ、
“禍の根は早い内に…”と思ってしまった浅はかな伯父心よ…。
そんな荀白水に対し、別の甥っ子である禁軍大統領・荀飛盞が言い放つ
「長林之罪、罪在將來?!(つまり、長林王府の罪は未来にあるわけですね…?)」が忘れ難い。
短い言葉で全てを言い表している。名言に認定。



張博(チャン・ボー):荀飛盞

その名言を吐いた禁軍大統領・荀飛盞は、荀皇后と首輔・荀白水の甥っ子。
禁軍大統領と言えば、前作『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす』の蒙摯の役職。
荀飛盞も、蒙摯と同じように、正義感のある凄腕。
クズばかりの身内の中で、流されず、道を外さず、正義を貫く荀氏一族唯一の良心。
前作の禁軍大統領と比べると、体育会系の“筋肉バカ”的ではなく、知性も落ち着きも有るため、
お茶目度では負けるが、黃暁明扮する蕭平章と並ぶ、本作一の“頼れるイイ男(中年部門)”。
私は、張博に対し、未だに『蒼穹の昴~蒼穹之昴』の頼りない光緒帝のイメージを引きずっていたので、
『琅琊榜<弐>』のこの正々堂々とした荀飛盞を見て、惚れた。
蕭平章と蕭庭生の死で未亡人気分になった後、今度は荀飛盞に嫁ぎ直そうかと考えたほど。



喬欣(チャオ・シン):荀安如

荀安如もまた荀皇后と首輔・荀白水の姪っ子だが、荀飛盞の妹ではない。
萊陽侯・蕭元啟から婚儀の申し入れがあった時は、英雄に嫁げることを心底喜んだが、
その英雄の裏の顔を知ってしまうと酷く落胆。
蕭元啟の悪事を知ったところで、もはやどうする事もできず、陰謀に巻き込まれていく悲劇の妃。
喬欣は、『琅琊榜<弐>』制作発表当時、前作からの唯一の続投キャストと言われていた女優さん。
いざ蓋を開けたら、続投キャストは他にも多数いたのだけれど、
喬欣自身は、南楚の公主・宇文念役で出た前作より、続編ではずっと重要な役で、たっぷり出演している。

★ キャスト その④:二大悪

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郭京飛(グオ・ジンフェイ):濮陽纓~乾天院上師、白神教掌尊

荀皇后からもお引き立てされている白神教の上師・濮陽纓は、ドラマ前半一の悪役。
実は、25年前、疫病で滅亡した国・夜秦の数少ない生存者で、梁への歪んだ復讐心を晴らすため、
息子の事となると盲目になる荀皇后の愚かな母心を巧みに利用し、バイオテロを企てる。
中性的な容貌で、兎にも角にもキョーレツなキャラである。
子供時代は、双子の優秀な弟に強い劣等感を抱いていたようだが、いやいや、アナタ様も充分凄いって。
だってサ、手のひらから発火させるという驚異のハンドパワーの持ち主ヨ。
中国だけに、その火力は、中華レストランのコンロ並みにハイカロリー。

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私は、これを見て、<冬天裡的一把火>を歌う費翔(クリス・フィリップス)を重ねたのであった。

前作には、全身毛だらけの着ぐるみ(?)になって登場する聶鋒というキャラがいた。
この『琅琊榜』シリーズには、聶鋒や濮陽纓のような現実離れした奇想天外なキャラも投入され、
一視聴者である私は、渋い作風には合わないんじゃないの?!と心配になってしまうのだけれど、
これが意外にも、ドラマをB級ホラーにせず、物語を面白くしているから、不思議。

このような不思議キャラで、視聴者の失笑を買う代わりに、目を釘付けにするには、演者の技量も物を言う。
アラフォー俳優・郭京飛にBRAVO。
私、多分、過去の郭京飛出演作って、『失戀33天~Love is Not Blind』(2011年)くらいしか観た記憶が無い。
その映画では、えらくフツーの男性を演じていたはずなので、
『琅琊榜<弐>』での変わり身には、目を疑い、…&ド肝を抜かれた。
『琅琊榜<弐>』の濮陽纓は、見た目のみならず、声も妖艶で役に非常に合っているため、
私は、漠然と、不思議キャラ専門声優が声を当てているものだと思い込んでいたのよ。そうしたら…

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郭京飛が自らアフレコ作業も行っておりました。本当に上手いですね、郭京飛。



吳昊宸(ウー・ハオチェン):萊陽侯・蕭元啟

蕭元啟は、梁帝蕭歆の弟にあたる萊陽王と東海から嫁いだ郡主の間に生まれた息子。
先帝・武靖帝の孫にあたり、つまりは、れっきとした宗室メンバー。
父・萊陽王は皇族に有るまじき悪事を働き、処せられたが、
梁帝の寛大な裁量で、息子・元啟とその母・萊陽太夫人は、罪に問われることなく、宗室であり続ける。
元啟自身、その事をよく分っているため、つましく生きていたのだけれど、
実は、自由に生き誰からも愛される平旌への嫉妬や、自分が置かれた境遇の惨めさが、
心の奥底に蓄積していたのであろう。
母が死んだことで、自分を制していた良心が揺らぎ始め、
さらに、その揺らぎを加速させるべく、魔の手も及び、遂には邪の道まっしぐら。
現代でもそうであるように、「おとなしい良い子でした」と言われる人の方が、
タガが外れた時の振り幅が大きいものである。
物語序盤、初めて人を殺め、オドオドしていた内気な青年は、
負のエネルギーに突き動かされ、最終的に本作品一の悪役となる。
(でもね、一時でも権力を掌握したものの、誰からの信も得られず、裸の王様状態で、
長林王・蕭平旌との差を見せ付けられ、益々侘しい思いを噛みしめることになる可哀相な人。)

この屈折しまくりのヤサグレ萊陽侯を演じている吳昊宸は、本ドラマで娶った荀安如役の喬欣と同じで、
東陽正午陽光が2017年、芸能人のマネージメント部門を止めるまで、同社所属の俳優。
そんな訳で、私が過去に観た、吳昊宸出演作2本も、東陽正午陽光制作のドラマで、
『偽裝者~The Disguiser』と『歡樂頌 第一季~Ode to Joy1』だったのだけれど、いずれも小さな役だったので、
存在感は、もう断然『琅琊榜<弐>』の蕭元啟である。
20代前半にして、屈折した青年の深い心の闇を巧みに表現していると高く評価。 
見た目はねぇ…

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私のお気に入り黃軒(ホアン・シュエン)に似ていると言われている。
シーンや角度によっては、綾野剛の雰囲気も醸している。
いわゆる二枚目ばかりではなく、吳昊宸のような個性的な顔立ちの実力派もちゃんと育っていて、
大陸は、若手も層が厚い。

★ キャスト その⑤:善き人

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佟麗婭(トン・リーヤー):蒙淺雪

“小雪(こゆき)”こと蒙淺雪は、長林王府世子・蕭平章の妻。
姓からも想像がつくように、大叔父は、あの禁軍大統領・蒙摯!
錫伯(シベ)族の美女・佟麗婭は、正直言って、私好みの女優ではなく、
『琅琊榜』の作風にも、あまり向いていないと思っていた。
実際にドラマを観たことで大好きになっちゃった!…なんて事は起きなかったのだけれど、
長林王・蕭庭生の死の直後、荀白水が王府に差し向けてきた軍を、毅然とした態度で抑える男前な姿は、
蒙摯の血筋を感じさせ、カッコよかった。



張慧雯(チャン・ホイウェン):林奚

林奚は、蕭庭生と一緒に掖幽庭で育った義弟・林深の遺児。

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宗主・梅長蘇に引き取られた三人の内、蕭庭生でも、蕭平章の実父・路原でもない、残りの一人が林深。
その林深は大人になり、戦死する前、蕭庭生と、互いの子を許婚にする取り決めを交わすも、
林深の未亡人が、娘を軍人に嫁がせ、悲しい思いをさせたくないと考え、約束を反故。
行方知れずになっていたその娘・林奚は、後に、濟風堂の少堂主として、偶然にも蕭平旌と出逢い、
蕭平旌は彼女が許婚と知らぬまま、恋に落ちる。
林奚役の張慧雯は、佟麗婭と違い、私が“『琅琊榜』的”と感じる女優さん。
大輪の薔薇のような女優とは違い、山野にひっそりと咲くサギソウやスズランのような雰囲気が、
“『琅琊榜』的”と感じる理由だと思う。
彼女は、『妻への家路』(2014年)で注目された謀女郎(イーモウ・ガール)で、映画中心に活動してきたため、
ドラマ出演は、この『琅琊榜<弐>』がお初。
詳しくは、こちらの“大陸美女名鑑・張慧雯”を。



金澤灝(ジン・ザーハオ):岳銀川

敵と通じ、形ばかりの軍功を立て、若き皇帝からの信用も得た萊陽王・蕭元啟が、
益々ブラック化し、梁が危機的状況に陥る頃、ようやく登場するのが芡州の将軍・岳銀川。
まさかドラマも終盤になって、こんな美男子を投入してくるとはね。
岳銀川は美男な上、それまで田舎将軍だったとは思えぬほど頭もキレるので、
私は、最初の内、彼が悪なのか善なのかが読み切れず、警戒。結局は、私の考え過ぎで、善き人であった。
いつもツルんでいる部下の譚恆が、これまた単純なイイ人。

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譚恆、見た目は“ヤンキー臭を抜いたフジモン(藤本敏史)”って感じ。
どんどんヘヴィになっていく物語に、息抜きの瞬間を作ってくれる癒しキャラ。
私は、この譚恆を見て、その上官である岳銀川も良い人に違いないと確信した。
見た目も性格も正反対の良きコンビです。

岳銀川を演じる金澤灝は、1988年南京生まれ、回族の俳優。
回族の俳優は活躍している人気者が結構多く、
『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の雍正帝・陳建斌(チェン・ジェンビン)や華妃・蔣欣(ジャン・シン)、
あと、劉詩詩(リウ・シーシー)、馬天宇(マー・ティエンユー)、吳樾(ウー・ユエ)等、皆同じ回族の俳優である。

で、その肝心の金澤灝は、蕭元啟役の吳昊宸や、荀安如役の喬欣らと同じように、
元々は東陽正午陽光所属の俳優だったため、同社制作のドラマに立て続けに出演。
これからの活動も見守っていきたい美男ですね。
私は、すぐに漢字変換できるよう、早々に“カナザワ・コウ”で辞書登録も済ませましたヨ。





大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』③

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2018年3月末、衛星劇場でスタートした大陸ドラマ、
『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』が、
約半年後の9月初旬、全50話の放送終了。


あれこれ書き綴っていたら、思いの外長くなってしまったので、
この『琅琊榜<弐>』に関しては、以下の3部構成で掲載いたします。

概要、物語、キャストなどについて

その他のキャストについて

大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』③
吹き替え、所作、音楽などについて


では、最終章、行きます。

★ 吹き替え

摩訶不思議キャラ・濮陽纓役の郭京飛(グオ・ジンフェイ)が、
妖艶な声で、自らアフレコ作業を行った旨を記したついでに、
他のキャストの声についても、軽く触れておく。



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まず、男性陣。
重要な役についているベテラン俳優の多くは、自らアフレコ作業を行っている。
具体的には、長林王・蕭庭生役の孫淳(スン・チュン)、蕭平章役の黃曉明(ホァン・シャオミン)、
梁帝蕭歆役の劉鈞(リウ・ジュン)など。勿論、前出の濮陽纓役・郭京飛も。


意外なところでは、王宏(ワン・ホン)も、地声が使われていること。
王宏って誰よ?!という方…

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この続編では、天牢の主管役でちょこっとだけ顔を出す、本シリーズの助監督。
同じく裏方さんでありながら、前作では重要な悪役の夏江、
続編では濟風堂の黎老堂主の役で出演する王永泉(ワン・ヨンチュエン)の御子息でもある。

つまりは、この王宏、専業俳優ではないのだけれど、
『琅琊榜』シリーズ両作品で、声優に任せず、自分でアフレコをやっているの。
余談になりますが、その王宏、私生活では…

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いつの間にか、パパになっておられた。夏江も、孫をもつおじいちゃまになったのですね~。


話を戻して、自らアフレコ作業にあたった女性陣。
こちらは二名。荀皇后役の梅婷(メイ・ティン)と、蕭元啟の母、萊陽太夫人役の劉琳(リウ・リン)。


男性でも女性でも、これらアフレコを行った俳優さんたちは、
いずれも実力派と称される大物ばかりだけあり、台詞回しや微妙な声の表情の出し方がとても上手い。
特に私の印象に残っているのは、濮陽纓(郭京飛)と荀皇后(梅婷)。

★ お作法あれこれ

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『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』で注目されて以降、俄然レベルが向上した大陸ドラマの所作。
『琅琊榜』シリーズでは、その『宮廷の諍い女』の所作指導、
及び、溫太醫役で出演し、有名になった張曉龍(チャン・シャオロン)のお弟子さん、
李斌(リー・ビン)が所作を担当している。

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ちなみに、この李斌先生は、多くの他の裏方さんと同じように、ドラマにも俳優として出演。
前作と続編、2作品で、同一人物を演じているのは、李斌先生だけ。演じた役は…

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先々帝・蕭選と惠妃の間に生まれた第3皇子で、靖王の異母兄にあたる寧王・蕭景亭。
続編には、白髪の翁になって登場するが、
お肌が明らかにピッチピチなので、老俳優ではないことがすぐに判る。


この李斌先生が担当した前作『琅琊榜』を観て、
うわぁ~、所作の綺麗な男性ってエレガントで素敵~、とウットリしたのは私だけではないはず。
そんな視聴者の想いに応えるべく、続編でも、所作に抜かりナシ。

まずは、クランクイン前、エキストラを含めた出演者は、揃って所作のレッスンを受講。
さらに、主要キャストは、李斌先生が、一人一人に個別指導。
キャラクターの性格や立場などによって、所作も変わってくるので、個別の指導が必要になってくるという。


『琅琊榜<弐>の所作は、』基本的には前作とそう変わらない。
前作には無く、続編で見て、印象に残ったのは、お葬式でのお作法や決まり事だろうか。
(なにせ、続編は、お葬式が多いので。)

まずは、「噫興!」。

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亡くなった蕭平章の出棺の時、先頭に立った弟・平旌の「噫興!噫興!」という雄たけびに続き、
他の兵士たちからも噫興!噫興!」の声が上がる。
私が持っている辞書には出ていないこの“噫興(Yīxīng イーシン)”は、中国人にとっても耳慣れない言葉で、
多くの人は、このシーンで、平旌何叫んでんの?とチンプンカンプンらしい。
李斌先生曰く、この噫興”の出典は<禮記•檀弓下>。
”は、悲痛や嘆きを表す語気詞。
通常、出棺の前、その場に居る人々は皆泣き止まなければならず、静寂になったところで、
中心となる人物が噫興!」を連続3回叫び、死者の魂を呼び覚ます。
このシーンでは、平旌と、あの場に立ち会った兵士たちの、
蕭平章に対する悲痛なまでの哀悼の念を、あの噫興!」の雄たけびに込め表現している。
…と、こうも抽象的だと、気になるのが、あのシーンの日本語訳。
中国人も聞いたことの無い悲痛な雄たけびを、どう訳すのか…?(しかも、ここ、重要かつ感動的なシーン。)
日本語字幕では、「魂は消えず!」の連呼になっている。
なるほど。良いのではないでしょうか。これ、翻訳者さん泣かせのシーンだったに違いない。



さらに気になるのが、死者を弔うお作法。

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最初にそれを見られるのは、確か、梁帝蕭歆崩御の時、
平旌が遠く都を離れた軍営から、亡き皇帝を弔うシーン。
これが非常に独特で、足で拍子をとりながら、
敵を威嚇する時のゴリラ風に(?)、拳をつくった両手で、バーン!バーン!と力を込めて胸を打つの。
(前作では、腕を胸の高さで真っ直ぐ前へ伸ばし、パーン、パーンと打つ方法なら有った。)
李斌先生曰く、これも禮記•檀弓下>に記載されているもので、“辟踴”という。
今どきの言い方をすると、怒ったり悔しい時に、胸を叩き、地団太を踏む様を表す四字熟語“捶胸頓足”。
つまりは、悲痛を極めた時、自然と内から出る感情を、そのまま体現したのが、
あの哀悼のお作法になったのであろう。

父の死で、皇位を継承したプチ皇帝・蕭元時も、
伯父にあたる長林王・蕭庭生が亡くなり、長林王府を弔問した際、同じように拳で胸をバンバン打っている。

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実は、これはマナー違反。
なぜなら、長林王・蕭庭生は伯父とはいえ、蕭元時にとっては臣下だから。
通常、君主が臣下に対し、このように恭しく哀悼の意を表すのはNG。
それでも、このシーンで、プチ皇帝・蕭元時に、敢えてマナー違反をさせ、
胸をバンバン打って長林王を弔わせたのは、長林王に対する蕭元時の深い後悔の念を表現するため。
蕭元時が何を悔やんでいるのかは、ドラマを観た人なら、分かりますよね…?
制作者は、時に敢えて誤った所作を取り入れることで、その人物の内面をも表現しているわけ。
(が、所作が正しいか間違っているかさえ判断のつかない我々日本人だと、
そこまで深い意図は汲みにくいですよね。)


お茶についても。

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架空の王朝を舞台にしながらも、ベースは南北朝時代と言われている『瑯琊榜』シリーズ。
そこで、お茶の入れ方も、唐代以前の方法が採用されている。
ドラマの中では、その唐代以前のお茶のお点前全プロセスを、じっくり見ることはできない。
方法を念の為記しておくと、まず、茶餅(茶葉を圧縮しまとめた物)を直火で炙る
→それを袋に入れ砕き、粉状にする→その粉末茶葉をお湯に入れ煮る→最後に、塩で味を調える。

唐代以前は、お茶の製法技術がまだ完全ではなく、お茶に苦みや渋みがあったので、
それを抑えるために、塩を入れたという。
塩以外では、椒(サンショウ)、薑(生姜)、桂(ニッケイ)等を混ぜることも。

『琅琊榜<弐>』の中で、お茶に白っぽい粉を投入しているシーンを見たら、
それは、お砂糖ではなく、ましてやクリープでもなく、エグミを抑えるお塩の可能性が高いというわけです。

★ 音楽

音楽も前作からの続投で、孟可(モン・クー)が担当。
これは、監督も言っている事なのだけれど、
義兄弟の情や文人気質を表現している前作に対し、続編はより“武”を押し出した作品。
そこで、音楽も、前作では抒情的な物が多かったのに対し、
続編では熱情的な物や高揚感のある曲が増えている。

オープニング曲は、前作のオープニング曲をベースにアレンジしたインストゥルメンタル曲。
前作のをあまりにも聴き慣れ過ぎた耳で、ビミョーに違う続編のオープニング曲を聴くと、
最初、「アレ?!なんか半音ズレた?!」と、モヤモヤしてしまうのだが、慣れると、これはこれで良い曲。

エンディングは<清平願>という曲。
これもね、前作で胡歌(フー・ゴー)が歌っているエンディング曲<風起時>と比べると、
確かに、より“武”を感じる力強く勇ましいメロディである。
同じ曲を、前半は女性の黃綺珊(ホアン・チーシャン)が、
後半は男性の多亮(ドゥリャン)が歌っているヴァージョンに変えているのも特徴的。
私は、この曲の場合、どちらかと言うと、前半で流れる女性ヴォーカルの方が好きかも。
でも、ここには最近聴き慣れている多亮版の方を貼っておく。


★ LINK

『琅琊榜<弐>』放送中、ブログに記した過去記事の内いくつかを、最後にまとめてリンクしておく。

林奚役の張慧雯(チャン・ホイウェン)について。

長林軍の親衛・東青役で主演している夏凡(シア・ファン)について。日本と御縁のある俳優さんです。

他、濮陽纓や、“中国版呪いの藁人形”扎小人(針刺し小人)について。

他、蕭平章の幼少期を演じる子役・章哲諭(ジャン・ジャーユー)クン等について。

他、所作指導の李斌先生扮する寧王・蕭景亭や、萊陽侯・蕭元啟役の吳昊宸について。

長林王・蕭庭生想い出のお品・金絲軟甲(金の鎖帷子)や、カメオ出演の孔笙(コン・ション)監督について。

他、禁軍大統領・荀飛盞に扮する張博について。

他、東海の墨淄侯に扮する名優・成泰燊(チェン・タイシェン)等について。

他、芡州の将軍・岳銀川に扮する金澤灝(ジン・ザーハオ)等について。





映画でもドラマでも、続編でこのレベルの感動と満足感を得たのは、もしかして初めてかも。
マスターピースに認定させていただきます。

最近、大陸ドラマは豊作で、楽しんで追っている作品が複数本あるのだが、
作風が私の好みに合うという点では、もう断トツでこの『琅琊榜<弐>』であった。
映像、脚本、演出、出演俳優の選択に至るまで、映画的で、重厚感あり。
まぁ、映画もピンキリで、よく「女性はラヴストーリーが好き」という思い込みから、
ベタベタに甘ったるい作品を売り込みたがる傾向が日本にはあるけれど、私にはそういうの不要ですから!
逆に言うと、昭和的な壁ドンとか、若手イケメンのシャワーシーン等に身悶えしたい人には、
『琅琊榜<弐>』の世界観はストイック過ぎるであろう。

“続編”と聞くと、前作未見の人は楽しめるのか?という点が、気になる人も居ますよね?
時代設定に約50年のズレがあり、登場人物もほぼ一新しているので、
独立した一本の作品として鑑賞することは、まぁ可能だと思う。
…が、私自身が前作のファンで、もはや“前作未見の人”にはなれないため、
そういう人々が、実際にはどう感じるかまでは、もう絶対に分かり得ない。

さらに言うと、これは、やはり、前作のファンこそがより楽しめる作品。
確かに約半世紀も違う時代を、ほぼ一新した登場人物で描いているため、一見前作とは別モノで、
いわゆる“続編”のイメージとは違う。
でも、まるで目には見えない霊魂の如く、所々で前作の影をチラつかせる演出があり、
それが前作のファンの心を揺さぶる仕掛けにもなっている、ちょっと変わったタイプの巧妙な続編なの。
前作未見だと、それら仕掛けを恐らく汲み取り切れないであろう。
もちろん、前作未見だからこその楽しみ方も有るのかも知れないけれど…。


ちなみに、現時点で、色んな意味で取り分け印象に残っている部分は、以下の通り。
蕭平章が蕭平旌に、自分が実兄ではない事実を、あまりにもサラリと告白。
蕭平章が、長年王府に仕えた周さんにお暇を出す伏線から、蒙淺雪不妊の謎が解明。
琅琊榜4位・段桐舟の手が焼きゴテ並みに自動加熱&濮陽纓も手から発火のハンドパワー。
萊陽侯・蕭元啟が初めて積極的に殺めた相手が、献身的だった泰叔で、しかも唐突な後ろ刺し。
ついでに、不死身にも思えた濮陽纓まで、油断の後ろ刺しで、アッサリあの世逝き。
弟・蕭平旌を救いたい一心で、迷わず犠牲になる道を選んだ蕭平章の死。
梁帝蕭歆が、自分亡き後の兄・蕭庭生を案じながら、崩御。
自分の死期を悟った長林王・蕭庭生が、金絲軟甲を手に少年時代を回想。
長林王・蕭庭生が息子・平旌と過ごす最後の時に語る、自分の生涯で至幸だった3ツの事。
長林王・蕭庭生が息子・平旌に託す遺言「遺骨歸梅嶺(遺骨は梅嶺へ)」。
萊陽王・蕭元啟の秘密を知ってしまい、追い詰められる荀安如の侍女・佩兒が、意外にも名スイマー。
金陵城を制した萊陽王・蕭元啟に立ち向かうべく、長林の旗のもと集まる大勢の兵。
いつの間にか『マトリックス』並みの分身術を身に付け、機敏に戦う萊陽王・蕭元啟。
萊陽王・蕭元啟の剣から、蕭平旌を間一髪で守ったのが、林殊のバングル。
長林王府が実は靖王府!しかも、隠れ部屋を抜けると、そこには蘇宅だった!ギャーッ…!!

他にも色々有ったけれど、今、パッと思い浮かんだのは、これら。
皆さまの心に刻まれた名シーンは、どこですか?


さて、この『琅琊榜<弐>』、2018年10月9日(火曜)、早くもチャンネル銀河にやって来るという。
まだ前作『琅琊榜』を観ていないという人は、出来ればそれまでに観終え、続編に備えるべし。
欲を言うなら、平日午後1時枠ではなく、夜の放送にして欲しかった。
これ、真っ昼間に、お煎餅をバリバリ頬張りながら観るドラマじゃない。
夜の静寂の中、誰も居ない部屋で、ドップリこの世界だけに浸って鑑賞したくなるドラマ。
録画して観る人も多いだろうから、まぁ、結果的にそうなるんでしょうけれど。

映画『SPL 狼たちの処刑台』

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【2017年/中国・香港/100min.】
香港警察の李忠志は、男手一つで育てた15歳の娘・詠芝が、友人に会うため訪れたタイのパタヤで、
突如行方不明になったという知らせを受け、慌てて現地へ飛ぶ。
自身も警察である李忠志は、居ても立っても居られず、タイ警察に在籍する華人刑事・崔傑の捜査に随行。
粘り強く監視カメラをチェックしていると、詠芝が海岸沿いで何者かの車で拉致される映像を発見。
さらに調べを進めていく内に、犯人は臓器売買に関連する裏組織であることが判明。
詠芝の父親である李忠志は勿論の事、崔傑もまた警察として必死に事件の解明を急ごうとするが、
そんな崔傑に、妻ソーエイの父でもある警察局長が、「この事件から手を引け」と命令を下す。
実は、この臓器売買には、裏で政府が一枚噛んでおり、
警察ではどうにもできないシナリオがすでに進行していたのだった…。



2018年4月、第37回香港電影金像獎(香港フィルム・アワード)にて、9部門にノミネートされ、
結果、最佳男主角(最優秀主演男優賞)、最佳動作設計(最優秀アクションデザイン賞)、
最佳音響效果(最優秀音響効果賞)の3部門で受賞を果たした話題作。
トロフィ3ツは、許鞍華(アン・ホイ)監督作『明月幾時有~Our Time Will Come』の5部門に次ぐ多さである。

原題は、『殺破狼·貪狼~Paradox』。
その“殺破狼”でピンと来る人も居るであろう。
これ、一応、シリーズ物の3作目である。
前二作は、一作目が『SPL/狼よ静かに死ね(原題:殺破狼~SPL: Sha Po Lang』(2005年)、
二作目が『ドラゴン×マッハ(原題:殺破狼II~SPL 2』(2015年)。

本作の邦題、及び、シリーズ前2作の英語タイトルにある“SPL”とは、
“殺破狼 Sha Po Lang”の頭文字。
中国に宋代から伝わる占術・紫微斗数(しびとすう)にある星々の中でも、
特に人生の吉凶に激しい変化を及ぼすとされる3ツの星“七殺”、“破軍”、“貪狼”を合わせ、
“殺破狼”と呼ぶらしい。
(トン吉、チン平、カン太、3人合わせて“トンチンカン”、…みたいな?違う…??)
この殺破狼が同じ命宮に入ると、何か大きな出来事が起きたり、
また、殺破狼の座命をもつ人は、気性が激しかったり、人生の起伏が激しく、
良い方に傾けば、大物にもなり得るのだとか。
まぁ、私は、そういうのはよく分らないけれど、
日本でも占術が好きな人の間では、殺破狼はそこそこ知られた言葉のようだ。


そんなシリーズ最新作である本作品を手掛けたのは、
『イップ・マン』シリーズの方の最新作『葉問4~Ip Man 4』の公開も待たれる葉偉信(ウィルソン・イップ)監督。
葉偉信監督は、シリーズ第1弾の『SPL/狼よ静かに死ね』のメガホンもとっているけれど、
次の『ドラゴン×マッハ』では、プロデュースに回り、鄭保瑞(ソイ・チェン)が監督。
で、この『SPL 狼たちの処刑台』ではまた監督し、鄭保瑞がプロデュースと、
作品によって持ち回りが変わっております。




本作品は、タイで行方不明になった娘・詠芝を探す内、それがただの失踪事件ではなく、
裏で政治家が糸を引く闇の組織と繋がっていた事が判明し、
大きな陰謀の渦に巻き込まれていく香港警察・李忠志の父親としての葛藤を描く犯罪アクション映画

邦題に敢えて『SPL』と付けることで、
シリーズ過去作品との関連を持たせたかったのだろうと想像していたが、
実際には、これだけで完全に独立した一本の作品になっているので、シリーズを通しで観る必要ナシ。



本作品は、子を持つ親心がテーマと言えるかも。
主人公・李忠志は、妻を交通事故で亡くし、男手ひとつで娘を育てるシングルファーザー。

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幼い頃は、「パパ!パパ!」と懐いていた愛娘・詠芝も、お年頃になると、父離して、
せっかくの父娘デートの時に、学校へも行かずにバイト暮らしをしているヘンリーとかいう男を連れてきて、
彼の子を身籠っているから結婚すると宣言され、李忠志パパ絶句…。
李忠志もここで折れず、警察の部下を使い、そのヘンリーとやらを、未成年者淫行の罪で逮捕させたから、
娘・詠芝から益々嫌われる始末。娘をもつパパはツライよ、って話なわけ(笑)。

でもね、パパはどんなに嫌われても、娘のために必死なの。
詠芝が、パタヤで行方不明になったと知ると、すぐさま現地へ飛び、地元警察に勝手に同行し、捜査開始。
警察も色々調べているから、詠芝が父親を嫌っていることも知っていて、
最初は「家出じゃないの?」なんて言われてしまうのだけれど。

この李忠志に協力するのが、タイの華人刑事・崔傑。
崔傑は、ソーエイというタイ人の妻が妊娠中で、彼もまた父親予備軍である。

その妻ソーエイは、警察で崔傑の上司に当たる局長の娘。
局長だって、本来は正義の人だが、娘婿・崔傑に詠芝の案件から手を引くように勧告する。
なぜなら、事件の裏に、大物政治家が絡んでおり、
これ以上捜査を進めたら、ソーエイの身に危険が及ぶと脅迫されたから。
局長も、世の人々を守る警察である以前に、我が娘を守りたい一心のしがない父親だったのです…。





“殺破狼”を演じる主要キャストは…

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娘・詠芝の行方を追う香港警察の李忠志に古天樂(ルイス・クー)
李忠志に協力し、一緒に捜査を進めるタイの華人刑事・崔傑に吳樾(ウー・ユエ)
バンコク市長選有力候補アジズの補佐役・鄭漢守に林家棟(ラム・カートン)

この3人が、順に、殺破狼の、破軍、七殺、貪狼に当たる人物なのであろう。
紫微斗数に詳しい人なら、それぞれの性格設定が分かり易いのでは。
私はチンプンカンプンなので、そこら辺はスルー。

古天樂は、本作品で、第37回香港電影金像獎の影帝に輝いたので、その演技を楽しみにしていた。
特に印象に残ったのが、臓器密売組織の隠れ蓑になっている精肉工場で、
探し続けた娘・詠芝の変わり果てた姿と対面した時の表情。
見開いた目が文字通り血まなこになり、極限の悲しみと怒りで狂わんばかりの表情を見て、
なぜ古天樂がアクション映画で、最優秀主演男優賞を獲れたのか、分かった気がした。

ちなみに、役名の李忠志は、前作『ドラゴン×マッハ』で、
第35回香港電影金像獎の最佳動作設計(最優秀アクションデザイン賞)を獲得した
李忠志(ニッキー・リー)へのオマージュで、拝借して命名。


だが、私のお目当ては、影帝・古天樂以上に、実は吳樾であった。
この映画、日本では、まるで古天樂×トニー・ジャーのダブル主演作かのように宣伝。

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こんなポスターを見たら、確かに誰もがそう思うであろう。
チラシ裏の解説でも、吳樾に関しては一切触れていない。
(誰が主演かという以前に、ポスターのデザインのこのダサさ、どうにかならないものか…。
作品の内容をまったく表していないだけではなく、ただただひたすらに悪趣味…。)

『SPL 狼たちの処刑台』は、実際には、古天樂×吳樾のための作品である。
前作『ドラゴン×マッハ』に出演のトニー・ジャーは、本作品の舞台が地元タイということもあり、特別出演で、
まぁ色々有って、作品中盤で消える。
本作品でアクション担当の大本命は吳樾なのだ。
私は、この作品は、日本で本格的に吳樾の名を知らしめるためだけに存在するとさえ思っていたのに、
宣伝での扱いが、あまりにも小さくて、ガックリよ…。

かく言う私も、吳樾が本作品でどのような役を演じているのかまでは、知らなかった。

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(↑)このようなスチールをよく目にしていたので、てっきり悪役だと思っていたら、善人であった。



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1976年、河北省張家口出身、回族の吳樾は、5歳で武術を始め、
国から最高ランクの武英級の称号を与えられた本格的にアクションが出来る俳優。

(↓)こちらは、成龍(ジャッキー・チェン)が還暦を過ぎ、おとなしくなってから、
中華圏のアクション映画で特に活躍の目立つ俳優陣を集め、以前当ブログに投降した画像。

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上段左、今や大御所の甄子丹(ドニー・イェン)を筆頭に、吳京(ウー・ジン)、張晉(マックス・チャン)、
下段へ行って、吳樾(ウー・ユエ)、そして、元リアル少林僧の二人、
釋延能(シー・ヤンネン/シー・イェンノン)と王寶強(ワン・バオチャン)。

この中で、日本での知名度が最も低い最後の大物だったのが吳樾。
私の一押し吳樾は、ただの肉体派というわけではなく、
中央戲劇學院で学んだキチンと演技のできる俳優である。
この『SPL 狼たちの処刑台』では、古天樂以上にアクションを披露しているけれど、
扮する崔傑は、案外フツーの男。
一警察として必死に詠芝の行方を追っているのに、なぜか義父から捜査から手を引けと諭され、
訳が分からなくなっている。
こういう普通のイイ人は、素の吳樾に近い感じかも。

この崔傑は、タイ人の妻を娶り、タイに暮らす華人警察という設定で、
さらに、相手役が香港の古天樂なので、言語は基本的にタイ語と広東語。
以前読んだ記事によると、確か、タイ語と北京語は吳樾自身の地声で、
広東語部分だけ声優による吹き替えとのことだった。
吳樾の地声はちょっとクセが有るので、タイ語の部分も、私には声優による吹き替えに聞こえたのだけれど、
外国語だとノドの使い方が違うせいか、声が若干変化することもあるので、きっと情報が正しいのでしょう。
違和感なく、本人の地声と声優の声が馴染んでいますね。
でも、北京語ってどこよ…?
鼻歌で<月亮代表我的心>を口ずさむシーンくらいしか、北京語は無かったように記憶。

ついでに、その<月亮代表我的心>を、古天樂&吳樾でデュエットしているMVを。


これまでに何度もカヴァーされている70年代のヒット曲。
有名なのは、麗君(テレサ・テン)版。
私は、ジャズっぽアレンジの方大同(カリル・フォン)版も好き、…余談になりますが。

この映画では、普通にイイ人だったが、もっとキレたイヤな吳樾を見たい人は、
屈折した阿里不哥(アリクブカ)を演じているドラマ『フビライ・ハン~忽必烈傳奇』を是非。
アクションはほとんど無く、演技で印象に残るドラマ。



林家棟は、古天樂や吳樾に比べ、出番は少な目。
今回は悪役なのだけれど、白髪+眼鏡+スーツという私の好物3点盛りで、サイコーであった。


あっ、あと、李忠志の亡き妻が…

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シンガポールの鄭雪兒(ミシェル・チェン)であった。

ドラマ『花より男子Ⅱ~流星花園Ⅱ』で…

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窮屈な生活から逃れ、気ままな生活をしているブータンのお姫様(!)葉莎を演じていた、あの鄭雪兒。
最近、見なくなったと思ったら、商売の方に力を入れるため、芸能活動は休止していたらしい。
『SPL 狼たちの処刑台』では、特別出演程度の小さな役だけれど、これをキッカケに本格再始動でしょうか。





私は元々アクション映画命!ではないし、香港系のこの手のジャンルは食傷気味になっているので、
この『SPL 狼たちの処刑台』も、手放しの絶賛はしないけれど、
怒りや悲しみが表情に滲み出る古天樂の演技には引き込まれたし、
何より、私の押し吳樾の本格的日本お披露目作品なので、御祝儀で、ちょっと高めの評価をさせて頂きます。
トニー・ジャー見たさに映画館へ足を運んだアクション映画ファンは、
お目当てのトニー・ジャーが中盤で殉職し、
代わりに見たことも聞いたことも無い“吳樾”なる俳優がたっぷり出ていて、失望したであろう。
でもね、失望するより、期せずして吳樾に出逢えた事を喜んだ方が良いかも知れません。
なぜなら、アナタ様が知らなかっただけで、吳樾は有名かつ優秀な俳優で、
日本でもこの先人気に火が付く可能性を秘めているからです。
同じ葉偉信監督の新作で…

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甄子丹(ドニー・イェン)主演のシリーズ最新作『葉問4~Ip Man 4』にも出ております。
『SPL 狼たちの処刑台』の配給会社も、宣伝で吳樾に一切触れないなんて、
中華芸能に疎いのだか、ただ単に見る目が無いのだか…。(多分両方であろう。)
せめて、ポスターは、もう少しマシなデザインにして欲しかった。
アクション映画のポスターに、無駄に炎を描き込む悪習はいい加減断たないと、客層が広がらない。
アクション要素を押し過ぎて、人間ドラマの要素もあることをこれっぽっちも感じさせない宣伝だって、
如何なものか。
色んな意味で、葉偉信監督作品は、『葉問4』の方に期待。

お悔やみ(樹木希林も朱旭も…)

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2018年9月15日午前2時45分、樹木希林、都内の自宅で永眠のニュースにびっくり。享年75歳。
確かに以前から全身癌であることを告白していたし、
先月は大腿骨骨折で、一時危篤状態に陥った事も、娘婿のモックンが話してはいたけれど、
回復に向かっているものとばかり思っていた。

出演作のプロモーション等には積極的に参加する女優さんだったので、私も幾度となくナマ希林を見てきたが、
結局、2018年6月、六本木で行われた『万引き家族』公開記念舞台挨拶が最後となった。(→参照
その時も、マイペースで毒を吐きながら会場を沸かすムードメーカーだったのだが、
杖をつき、是枝裕和監督に支えられながら舞台に上がる姿を見て、実はちょっと心配もした。

掴み所の無い不思議な人で、本人が真顔で「冗談じゃなく、いつ死んでもおかしくない」と言っても、
それがどこまで本気でどこまで冗談なのか、まったく分からなかったし、
私は、なんか漠然と、「この人は、あと百年は生き、妖怪の域にまで達するに違いない」と信じていた。
それが、実際には、日本人女性の平均寿命よりずっと若い75歳。
でも、きっと濃いぃー75年だったに違いない。



本人も面白かったが、女優としても唯一無二。

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『寺内貫太郎一家』で、「ジュリィィィーッ!」と叫ぶ可笑しなバァ様を演じたのは、
なんとまだ31歳の時だったのだと。
(余談になりますが、後方、扁額の書が“時代錯誤”って…。 笑)

2歳しか違わない吉永小百合とは、まったく違う女優道。
自分を何十年も応援し続けてくれるサユリストたちのために、
永遠の乙女であり続けようとする吉永小百合のような女優が居ても、勿論OKだけれど、
私個人的には、男性でも女性でも、若さにシガミ付かず、重ねた年齢も武器にして演じられる俳優の方に、
より魅力を感じる。
樹木希林は、元々美人女優タイプではなかったし、30代ですでに老け役も経験していたので、
結果的に、執着する物が無く、より自由な表現者になれたのかも知れない。

まだまだ当分の間、スクリーンの中でお目に掛かれるものと思っていたので、残念。
樹木希林さま、安らかに。

★ 朱旭

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実は、樹木希林と同じ2018年9月15日、時間も近い午前2時20分(一時間の時差は有るけれど)、
海の向こう中国では、朱旭(チュウ・シュー)も病魔に勝てず、
首都醫科大學附属北京友誼醫院にて逝去。享年88歳。

日本では…

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上川隆也扮する残留孤児・一心を引き取る中国人養父・陸徳志を演じたドラマ、
『大地の子』で広く知られるようになった、あの朱旭である。

『大地の子』の陸徳志は、いかにも情に厚い教師風情で、一人で映っていると、こじんまりしているのに、
養子・陸一心と並ぶと、頭が突き出ているので、
私は、上川隆也の身長は一体どれだけなんだ?!と疑問に思っていた。
そうしたら、ナマ朱旭を見たという人から
「朱旭は180はある。中国風の長袍を着ていると、スラッとしてカッコイイ」と聞き、
少々意外に思った覚えがある。
スラッと長身で、さぞや舞台映えしたであろう。

その『大地の子』が再放送された数年前、
「そう言えば、朱旭は最近どうしているのだろう?」とふと思い出し、ちょっと調べてみたら、
80過ぎてなおお元気そうだったので、ホッとしたのであった。
それからまたすでに数年が経過し、88歳。大往生と言えるのかも知れないけれど、淋しいですね。

キャリアが長いので、関わって来た後輩も多く、
陸一心の妻・江月梅役で出演した『大地の子』以外にも、朱旭との共演が多い蔣雯麗(ジアン・ウェンリー)、
蔣雯麗の姪っ子で近年人気の馬思純(マー・スーチュン)、黃曉明(ホァン・シャオミン)、黃磊(ホアン・レイ)、
吳剛(ウー・ガン)、蔣欣(ジャン・シン)、姜武(ジャン・ウー)、劉若英(レネ・リウ)、
田壯壯(ティエン・チュアンチュアン)監督、張藝謀(チャン・イーモウ)監督、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督等々
多くの著名人が哀悼コメントを出したり、本日午前に行われた葬儀に参列したり、お花を送ったりしている。

あっ、ちなみに…

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『大地の子』の養子・上川隆也もtwitterでコメント出しております。詩的な哀悼ですね。

朱旭出演作では、『變臉 この櫂に手をそえて』(1996年)を久し振りに観てみたくなった。
DVDを持っているかと思ったら、見当たらないので、テレビで放送してくれないかしら。

朱旭さまの御冥福をお祈りいたします。

日中季節菓子3種(+胡歌御生誕記念、范冰冰案件、月餅など諸々)

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本日9月20日は、胡歌(フー・ゴー)の御生誕記念日。
1982年生まれの胡歌、36歳になりました。
胡歌は、すでに約一ヶ月前から、お誕生日の事に触れており、
「ファンの皆さんが自分の誕生日にお金を使うことは望みません。プレゼントは受け取りません。
それより、本当に助けを必要としている人々の事を常日頃から考えて欲しい。
僕の誕生日を祝う目的で寄付金集めなどせず、
チャリティーは自身の本当の気持ちからしてくれたらと願います。
もし9月20日を普段とちょっと違う日と感じるなら、自分のために何か小さなお願い事をしたり、
心の中で僕に祝福を送って下さい。それが僕にとっては一番のプレゼントです。
もし、その日にどうしても何かしたいのなら、歯をよく磨いて!
9月20日は、國際愛牙日だからね。」などと言っておられた。
多分、毎年、お誕生日に、おびただしい数のプレゼントが送られてきちゃうんでしょうねぇ。
“國際愛牙日”なる記念日は、初耳。ちょっと調べてみたが、日本には無いみたい。
恐らく、中国で1989年に制定された“全國愛牙日 Chinese Teeth Care Day”の事を指しているのだと思う。

胡歌は、“もう36歳”というより、“まだ36歳”という印象。
内面は、すでに人生を達観した86歳並み。
やはり、若い頃からスタアで、早い内から一流の世界を知っている人は、
一般の36歳とは精神的成熟度が違うのだと感心してしまう。

画像は、一番最近のピアジェの広告から。
広告だけじゃなく、映画でもドラマでも、そろそろ新たな出演作を観たい。
何はともあれ、胡歌サマ、お誕生日おめでとうございます。




そして、もう一人、やはり最近お誕生日を迎えた大陸のトップスタア、范冰冰(ファン・ビンビン)。

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最近、当ブログでは、“范冰冰”検索が激増。
どうやら、范冰冰が巨額脱税疑惑で行方不明になっている事を、
日本のごく普通のワイドショウまでもが、こぞって取り上げ始めたからみたい。

本来報道すべき日本の暗部にはダンマリを決め込むくせに、
中国のスキャンダルとなると、大袈裟に騒ぎ立てる日本のメディアの質の低さは、誠に嘆かわしいが、
まだ知らない人のために、ここで范冰冰案件を簡単におさらい。

事の発端は、中国では脱税用に以前からよく行われていると噂される“陰陽合同”と呼ばれる二重契約。
2018年5月末、有名司会者・崔永元(ツイ・ヨンユエン)が、
自身の微博で、実名こそ伏せてはいるものの、
馮小剛(フォン・シャオガン)監督作品『手機2~Cell Phone2』のために交わした范冰冰の物と思われる
二重契約書のコピーを暴露したのを機に、国税局が動きだし、范冰冰が雲隠れ。
海外逃亡説だの、いや、すでに逮捕され収監されているだの、色々と憶測が飛び交ったが、
最近では、どうやら家に戻っていると見られ、報道もおとなしくなっている(…むしろ日本の方が大はしゃぎ)。
9月16日、范冰冰37回目のお誕生日にも、特別な動きは無かったけれど、
微博の范冰冰のアカウントと、婚約者・李晨(リー・チェン)のアカウントが、
同時刻に10分ほどオンラインになっていたという目撃情報あり。
今のところ、“范冰冰の処遇は当局の公表待ち”と受け止める人が多いように見受ける。


この一件が日本で報道されるようになってから、
前述のように、当ブログにも“范冰冰”検索で来る人が激増。
中でも、どういう訳か、アクセス数が際立って多いのが、
藤原紀香が范冰冰をパクった旨を記した“紀香の范冰冰化が止まらない…”という2015年末の記事。
日本で、范冰冰の巨額脱税疑惑が報道されればされる程、
紀香のみっともない范冰冰パクリ疑惑を知る人が増えるなんて、紀香にとっては想定外の災難であろう。
「これ以上、事を荒げず、追徴課税でサッサと済ませて」と范冰冰案件の穏便な収束を願っているのは、
范冰冰以上に紀香だったりして…。



私のように、映画やドラマが好きな人なら、范冰冰が関わった作品が今後どうなるのかが気になるところ。

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公開が厳しくなったであろう作品は、大作ドラマ『巴清傳~Legend of Ba Qing』。
このドラマの主要登場人物である秦の始皇帝嬴政を演じる高雲翔(ガオ・ユンシャン)が、
2018年3月、オーストラリアで現地の華人女性に性的暴行を働いた容疑で裁判沙汰になったため、
元々公開が危ぶまれていたけれど、
高雲翔のシーンを李晨で撮り直し、なんとか難を乗り越えたと安心したのも束の間、
今度は范冰冰の脱税疑惑である。
最近の様子だと、このドラマは、お蔵入りほぼ確定なのでしょうか。
『巴清傳』は、主演・范冰冰×監督・高翊浚(ダニー・コー/ガオ・イージュン)という
『武則天-The Empress-~武媚娘傳奇』コンビによる史劇で、私はその『武則天』にえらく失望したので、
『巴清傳』に対する期待も低く、実のところ、お蔵入りしても別に大して惜しくない。


私が、お蔵入りしたら残念に思うのは、曹保平(ツァオ・バオピン)監督によるクライムサスペンス『她殺』。

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だって、これ、黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン)とのダブル主演映画なのですもの…。
しかも、以前、こちらにも記したように、日本でも撮影が行われているの。
(↓)こちら、『她殺』撮影のために来日した際の范冰冰。

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范冰冰サマin渋谷。東京在住の人なら、ここがどこなのか、すぐに分かりますよね?
ドン・キホーテ真向かい、クロサワ楽器店の横道。(画像右は、撮影by私)
こんな馴染みの場所で范冰冰に出くわしたら、ビックリ。あぁ、出くわしてみたかった…。
そして、何よりその『她殺』、観たいのに、お蔵入りだったら、ガッカリ…。


ちなみに、私が先日たまたま目にしたワイドショウでは、
范冰冰の代表作が『楊貴妃 Lady Of The Dynasty』(2015年)と紹介されていた。
私は、これ、クズ映画だと思っているので、
今回の一件で范冰冰に興味をもった中華芸能をあまり知らない人が、試しに『楊貴妃』を観て、
中国映画ってレベル低っ!と思ったら、残念。
まぁ、“美しい范冰冰サマ鑑賞用”と割り切るなら、最悪の映画じゃないかも知れないけれど。
作品の出来が良い范冰冰出演作なら、私個人的には、『ロスト・イン・北京』(2007年)が好き。




ところで、最近、朝夕は肌寒いくらいで、めっきり秋らしくなりました。
暦の上でも、すっかり秋。
2018年秋のお彼岸は、本日9月20日(木曜)が彼岸入りで、
中日にあたる秋分の日が9月23日(日曜)、彼岸明けが9月26日(水曜)となるらしい。
一方、広く中華圏で祝う中秋節は、今年は9月24日(月曜)。
22日(土曜)から24日(月曜)まで3連休となるようだ。
そのすぐ後に、国慶節の大型連休も控えているし、今秋の中国は、休みがギュッとまとまっていますね。

★ 月餅商戦2018

中秋節と言えば、月餅。
この時期に中華圏へ行くなら、月餅はお約束のお土産。
そして、そんな日本人観光客にも人気なのが、星巴克(スターバック)の月餅。
値段はとらやの上生菓子以上なのに、味がまるでコンビニの練り切りなので、私はあまり買いたくないけれど、
新作は一応毎年チェック。
今年も例年通り、コーヒー風味等、華洋折衷のカラフルなミニ月餅を数種類出しているのだが、
これまで有りそうで無かったのが、(↓)こちら。

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5種類のナッツを詰めた伝統の五仁月餅を星巴克風にアレンジ。
(マカダミアナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、パンプキンシードと
ナッツを洋風の5種で揃えているのが星巴克流。)
“より斬新な物を”という傾向が長らく続いていたので、伝統回帰がちょっと新鮮。


華洋折衷で、インパクトが強い物なら、(↓)こちら。

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烤鴨(北京ダック)で有名な大董の“松露竹炭月餅”。真っ黒です!
西洋料理の高級食材・松露(黒トリュフ)を中国伝統の月餅に。これ、案外、美味しいかも。



お土産用にするなら、星巴克より良いかも知れないと思ったのは、(↓)こちら。

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故宮博物院とお菓子の老舗・北京稻香村のコラボ商品。
北宋屈指の芸術家として名高い、
第8代皇帝・徽宗趙佶(1082-1135)からインスピレーションを得て作ったという月餅。
中国的なデザインが可愛らしいし、お菓子の専門店が作っているので、星巴克より、味も期待できるかと。



この時期、飲食店のみならず、欧米の一流ファッションブランドも月餅作り。
以前、エルメスの“H”の刻印入り月餅なら見たことがあるのだけれど、
他のメゾンも中華圏では大抵は月餅を用意しているようだ。

(↓)こちら、2018年度版ルイ・ヴィトン月餅。

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“LV”の刻印が押されたカラフルな月餅。


ルイ・ヴィトンでさらに凄いのが、(↓)こちら。

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アメリカの超人気メゾンSupreme(シュプリーム)とのコラボ月餅。
もはや月餅用の贈答箱じゃないし。
これは、高額で転売されそう。


Supremeより価格的にもカジュアルなストリート系ブランドでも月餅。
(↓)こちら、彭浩翔(パン・ホーチョン)監督が、今年、余文樂(ショーン・ユー)から贈られたお品。

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余文樂のブランド、Madness(マッドネス)の月餅。
上部に“Madness”の刻印が押されている。
月餅を食べ終えたら、お弁当箱として使えそうな容器。



過剰包装とか、法外な価格とか、批判も色々有るだろうけれど、
伝統がこういう形で現代に受け継がれ、盛り上がっているのは、羨ましくもある。
日本にも、中秋節の月餅に代わる、伝統行事の伝統菓子が何かないものかと、考えてしまう。
スタバ等でも、毎年期間限定で売り出し、外国人もこぞって買いたがるような日本の伝統菓子…。
そんな事を考えつつ、私自身は地味ぃーに、毎度のお菓子を。
日本のお彼岸に合わせ和菓子を一個と、中国の中秋節に向け月餅を2種。

★ 仙太郎:七穀ぼた

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大きさは、長さ約7センチ。
刻んだ青じそを混ぜ込んだ七穀米で、つぶ餡を包んだぼた餅。




和の季節菓子は、仙太郎(公式サイト)“七穀ぼた”

秋のお彼岸に食べるのは、“ぼた餅”ではなく、
季節のお花・萩に由来する“おはぎ”と呼ぶのが定説になっているが、
仙太郎では一年を通して常に“ぼた餅”。
仙太郎曰く、元々、“ボタ”とはお米の卑称で、欠けて売り物にできないお米を“ボタ米”と称し、
それで作ったお菓子が“ぼた餅”になったという由来に準じ、
同店では、敢えて一年中“ぼた餅”の呼称を使用。

何種類か有る仙太郎のぼた餅の中で、私の一番のお気に入りは、もうずっとこの七穀ぼた。
七穀米で、餡子を包んだぼた餅。
七穀とは、もち米、黒米、ひえ、粟、たかきび、押し麦、そして小豆。
一般的なぼた餅より、お米の形状を残した八分つきなので、ただでさえシッカリした質感で、
さらに、所々で多種多様な雑穀の異なる食感も楽しめる。

中の餡は、素朴なこし餡。
餅生地に混ぜ込まれた青じその清涼感が、餡に合う。


どっしりと大ぶりだが、雑穀を使った、お食事系とも呼びたくなるぼた餅は、案外アッサリ。

★ 聚楽:白あん大月餅

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大きさは、直径約7.5センチ、高さ約3.5センチ。
中に蓮の実餡を包んだ月餅。




中国の季節菓子は、聚楽045-651-2190)の月餅。
2ツ食べた内、こちらは“白あん大月餅”という物。
中国語では、“蓮蓉大月餅”。
月餅上部にも、“蓮蓉”らしき刻印が押されているけれど、
今回購入の物は、文字がはっきり浮き出ていない。

“白餡”とは言っても、日本で一般的な白いんげん豆や白小豆で作る白餡とは違い、
蓮の実を練り上げた餡。
生地にギューッと密にたっぷり詰められているため、一見重そうだが、
とても繊細でシルキーな質感で、舌触り滑らか。


蓮の実の白餡は、日本ではあまり一般的ではないので、ちょっと贅沢な印象。
質感も味も上品で、美味。

★ 聚楽:ココナッツ月餅

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大きさは、直径約7.5センチ、高さ約3.5センチ。
白胡麻を混ぜ込んだココナッツロングを詰めた月餅。




聚楽の月餅2ツの内、こちらは“ココナッツ月餅”
上部には、“椰絲月餅”の刻印。
恐らく当ブログで最も登場回数が多い、私のお気に入り。

一般的には、白餡ベースにココナッツを練り込んだ物をココナッツ餡と呼ぶことが多いけれど、
これは、ココナッツそのものをギッシリ詰め込んでいる。
ココナッツは半生状態で、シャキシャキの食感。


これ以上ココナッツ含有量の高いココナッツ月餅は見たことが無い。
ココナッツ好きな人にお勧め。

映画『寝ても覚めても』

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【2018年/日本・フランス/119min.】
大阪。
泉谷朝子は、街で鳥居麦という青年と運命的に出逢い、みるみる内に惹かれ合っていくが、
周囲が心配していたように、半年後、麦は「靴を買いに行く」と言って出たまま戻らず、音信不通。

それから2年と少し後の東京。
カフェで働く朝子は、近所の紅錦酒造へ、仕出しのコーヒーポットを回収しに行き、
迎えに出た男性社員を見て、言葉を失う。
なぜここに麦が…?
麦と瓜二つのこの社員は、実のところ、丸子亮平というまったくの別人。
姫路出身で、大阪本社で働いていたが、最近東京のこの支社に転属になったという。
こうして知り合った朝子と亮平は、
朝子のルームメイト・鈴木マヤや亮平の同僚・串橋耕介を交え、一緒に遊ぶようになる。

5年後。
朝子と亮平はもう長らく一緒に暮らし、関係は安定。
平凡でも小さな幸せを噛みしめているある日、
二人揃って買い物に出掛けたところ、朝子は、大阪時代の友人・島春代から声を掛けられる。
約7年ぶりの再会を喜ぶ朝子と春代。
「時間は気にせず、楽しんできて」と言い残し、亮平が去った途端、春代は驚いた様子を隠さない。
それもそうであろう、亮平があまりにも麦に似てる事に、春代も驚いたのだ。
春代の話では、当の麦は、数年前、モデルになって注目され、
俳優に転身し、主演映画の公開も決まっているという。
過去の整理はついたと信じていた朝子だが、麦の近況を知り、心の揺らぎを覚え…。



濱口竜介監督初の商業作品。
原作は、柴崎友香の同名小説。

2017年5月、『万引き家族』がパルムドールに輝いた第71回カンヌ国際映画祭で…

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コンペティション部門に選出されていたもう一本の日本映画が、本作品である。

私は原作小説未読だが、濱口竜介監督作品である事と、カンヌに出品されていた事で、
この作品がどうも気になっていたので、公開後、早速鑑賞。




本作品は、突如姿を消した運命の恋人・鳥居麦と瓜二つの別人・丸子亮平と出逢い、
戸惑いながらも彼を愛するようになり、将来を決めた矢先、
鳥居麦と再会してしまった泉谷朝子のどうすることも出来ない心の揺れを描く恋愛物語

原作小説未読でも、映画のザックリとした筋は、鑑賞前に目を通していた。
元恋人とソックリな男性と出逢い、恋に落ちるも、
忘れた頃に御本家が再度現れ、心乱されるという
まるで昭和の少女漫画にでも有りそうな安っぽいラヴ・ストーリー、
…というのが、あらすじを読んだ時の率直な印象。
濱口竜介監督は、なぜこんな陳腐で乙女チックな話を、わざわざ映画化し、
しかも、それがカンヌのコンペティション部門に入選できたのか、私には分からなかった。
この映画は、その「なんで?!」を解明したい気持ちで、観てみたくなったようなもの。


実際に観た印象を最初にまず言ってしまうと、想像していた程少女漫画チックでも陳腐でもなかった。
麦と亮平という見た目がソックリで中身が別人の二人に対する朝子の想いを、
惚れた腫れたという男女の恋愛問題に留まらない描き方をしているからかも知れない。
朝子にとっての麦は、非日常であり、現実味に欠ける存在だからこそ、刺激的で忘れ難く、
亮平はいつでも身辺にある“日常”の象徴のような存在。
どんな“日常”も有ることが当たり前になっていると、
存在の有り難さを忘れがちになってしまう事も朝子は分かっていて、
これは刺激的な“非日常”の代替として手に入れたものではない!と自分に言い聞かせながら暮らすも、
敢えてそう思い込もうとする事自体が、自分に無理を課しているわけで、
何かのキッカケで心の中の張り詰めた糸がプツンと切れてしまうこともあるのかも知れない。


本作品、英語のタイトルは『Asako Ⅰ&Ⅱ』。
なんともビミョー…。日本語タイトルの方がずっと良い。
趣味が良いとは言い難い『Asako Ⅰ&Ⅱ』ではあるけれど、もしかして作品の内容は表されているのかも。
本作品では、見た目がソックリな麦と亮平を、同一人物のA面とB面のように捉えてしまうが、
むしろ朝子という一人の女性の中にあるA面とB面を描いた物語のようにも感じるので。




運命の男女を演じるのは、(↓)こちら。

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泉谷朝子に唐田エリカ
朝子の前から突如消えた鳥居麦と、麦にソックリな丸子亮平に東出昌大

ヒロイン朝子役は、本格的な映画デビューは本作品という唐田えりか。
プロフィールによると、マザー牧場でバイト中にスカウトされ、芸能界入りしたのだとか。
渋谷でも原宿でもなく、マザー牧場でスカウトなんて事があるのですね。
ご近所に居そうな、ごく普通の女の子という印象。
こういう普通の子が実は魔性の女という事はよくある。
でも、劇中の唐田えりかは、本当に“普通の女の子”の域に留まっており、魔性度が低く感じてしまった。
同じように見た目がフツーでも、蒼井優や黒木華、池脇千鶴のような女優だったら、
もっと内に秘めた凄みをサラッと普通に醸し、役に説得力が出たのではないかと考えてしまった。
それとも、裏のさらに裏をかき、
“どこからどう見ても、まったくフツーで、魔性の片鱗も見えない”という“高度な魔性”として、
唐田えりかを起用したのだろうか。
だとしたら、彼女は、起用の狙い通りに、役目を果たしている。



東出昌大は、今回一人二役。

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一人目は鳥居麦。
名の“麦”は、門脇麦と同じように“むぎ”と読むのかと思ったら、“ばく”と読むそう。
名の由来は、父親が北海道で穀物研究をしているから“麦(ばく)”で、“米(まい)”という妹も居るのだと。
(他に、“粟”とか“稗”とかいう弟は居ないのでしょうか。)
掴み所が無い不思議な雰囲気の青年である。
丸子亮平は、見た目こそ麦と瓜二つでも、性格は正反対で、
地に足がついており、朝子に安心感を与えられる男性。
片や髪の毛ボサボサ、片やスーツ姿と、髪形や服装で分かり易い違いを出すだけではなく、
姿勢や歩き方まで変えている。
東出昌大という同一人物が演じているのに、
鳥居麦と丸子亮平は、確かに“見た目が瓜二つの別人”に感じられた。



脇では、(↓)こんな人も出演。

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朝子の大阪時代の友人・島春代に伊藤沙莉
麦の遠縁で、麦に部屋を貸す大家でもある岡崎伸行に渡辺大和
東京で朝子とルームシェアをする鈴木マヤに山下りお
亮平の会社の同僚・串橋耕介に瀬戸康史などなど…。

この中で一番印象に残ったのは伊藤紗莉。
1994年生まれ、子役出身の伊藤紗莉は、まだ20代前半の充分な“若手”。
なのに、すでに、“オバさん”の片鱗が見え隠れ。
長い目で見ると、若い内にアイドル的に人気を博す人より、こういう人の方が強いものなのよ。
今回演じている春代は、ゆらゆら揺れる朝子にブレーキをかける冷静な姉のような友人であると同時に、
朝子とは対照的な人物として、作品に存在している気がした。
朝子と連絡が途絶えていた7年の間に、シンガポールで国際結婚し、
プチ整形をしたり、エルメス風のスカーフまで首に巻き、装いまですっかりマダム風に変身した春代。
過去に囚われ続けている朝子とはまったく違い、どんどん変わりながら前進していくのが春代なのだ。
前向きでしっかり者という役柄に加え、伊藤紗莉本人の演技力もあり、
春代が出てくるシーンは、単調になりがちな物語に変化を与える作品の良いアクセント。


岡崎伸行は、当初、演じている渡辺大和本人の素を感じさせる
マイペースで明るく優しい青年だったのだが、
次に久し振りに再登場すると、ALSを発症し、寝たきり状態…。
やや唐突にも感じたのだが、原作小説だと、岡崎がALSを発症する経緯も書かれているのだろうか。
それとも、映画では、過去に縛られる朝子に、以前とはまったくの別人になった岡崎を、
意図して、敢えて唐突に見せ付けたかったのだろうか。






事前にあらすじを読み、想像した通りに話が淡々と進んでいくのに、
なぜか引き込まれてしまう不思議な雰囲気。
楽しみながら展開を追っていたのだけれど、
最終的には、なんとも釈然としないモヤモヤ感が残ってしまった…。
作風が好みに合ってはいても、
朝子という人物に共感できる部分をこれっぽっちも見い出せなかったからではないか、と。
いや、共感できなくても、魅力的に感じる人物なんて、いくらでも居る。
うーン、やはり、朝子は、他の女優に演じて欲しかった。
唐田えりかだって、今後素晴らしい女優に成長するかも知れないけれど、
現時点での彼女には、朝子を演じきる充分な力量は無いように思えた。
それだけが残念。

栗を使った和菓子4種(+范冰冰とかドラマとか諸々)

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第31回東京国際映画祭の上映全ラインナップ、本日発表。
公式サイトをチラリと覗いたが、もしかして、私が期待していた作品は、ことごとく入っていないかも…。
後でゆっくりチェック。


ところで、当ブログ、“范冰冰(ファン・ビンビン)”検索でお越しの方が、相変わらず非常に多い。
アクセス数最多は、やはり“紀香の范冰冰化が止まらない…”という2015年末の記事なのだけれど、
ここ二日は、范冰冰の体重を知りたがる人が増えてる。(ちなみに、身長は168センチ。)
范冰冰は過去に、「女性の美しさは人それぞれ、痩せているだけが良いわけではない」ともっともな事を仰り、
自身の事も“中国一おデブな女優”、“微胖(小デブ)”、“微胖界女神(小太り界の女神)”等と称しておられた。
が、俳優の大先輩・張豐毅(チャン・フォンイー)が言って広まった“范冰冰は体重60キロ”説には、
「いや、そこまではない」と否定しており、
ドラマ『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』のプロモーションで、公開体重測定。

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この時、体重計の針が指したのは、53.5キロ前後で、一応60キロ説の否定には成功。
それにしても、有名な美人女優がよく公衆の面前で体重計にのりますよねぇ。


范冰冰と限らず、中華圏の女優は、相対的に日本の女優よりアケスケでサバサバした印象がある。
(↓)こちら、2013年、路駐したVANの車中で休憩中、ファンに見付かり、サインを求められた范冰冰サマ。

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フェイシャルマスク装着のまま、求めに応じサイン。
アケスケでございます(笑)。
ちなみに、15歳でスキンケアに目覚めたという范冰冰は、
特にフェイシャルマスク好きで知られ、市場に出回っている商品は大方試したそうで、
具体的な使用量は年間7百枚以上とも噂されている。
私も来世では、15歳から年間7百枚のフェイシャルマスクでケアいたします(悔しいかな、現世では手遅れ)。




さて、早いもので、あと一週間もしない内にもう10月。
来月のテレビ番組をチェックしようと、<J:COMマガジン>10月号をパラパラめくっていたら、
一ページを使い、「時代劇で堪能!美男美女絵巻」と題し、
日本で放送待機中の大陸史劇3本を紹介している。

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『三国志 Secret of Three Kingdoms~三國機密之潛龍在淵』、
そして『花と将軍 Oh My General~將軍在上』。
つい最近まで、<J:COMマガジン>で、ページを割き、ドーンと取り上げられるアジアのドラマは、
必ずと言って良いほど韓国のドラマであった。
ところが、『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』が放送開始する時、
一ページ全部を使い、同ドラマが紹介されていたので、ちょっと驚いた。
で、10月号も、こんな感じ。
日本におけるアジアドラマのトレンドが、ようやく韓国から中国へシフトしてきたと感じる。
NHKもいい加減大陸ドラマの放送に踏み切る時期でしょ。
(日本語吹き替え版での放送なら、私は要らないけれど。)


本題はそこじゃなくて、『三国志 Secret of Three Kingdoms』の紹介部分。
主演俳優の馬天宇(マー・ティエンユー)が…

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あらら、“マー・テンウー”に…。
日本語の音読み“ば・てんう”を、中国語ちっくにアレンジしたのか…?
(“小籠包 シャオロンバオ”を“しょうろんぽう”と呼ぶ日中ミックスのあの感覚。)

当初、<J:COMマガジン>の誤植かと思ったが、本ドラマを放送する衛星劇場の公式サイトを覗いたら…

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やっぱり“マー・テンウー”…。
“馬天宇 Mǎ Tiānyǔ”は、“マー・テンウー”とは発音しない。
しかも、馬天宇は、別に今回初めて日本で紹介される俳優などではなく、
すでに複数本の出演作が放送されており、その度に正しい“マー・ティエンユー”で紹介されてきたハズである。
これまで誤表記されていたから軌道修正するというのなら分かるけれど、
元々正しかった物を、なぜ敢えて誤表記に軌道修“悪”したのか…?
私は、“マー・テンウー”を見て、『天才悪魔フー・マンチュー』とか『3匹の子豚 ブーフーウー』、
はたまたココアのバンホーテンや、アメリカの彫刻柱トーテンポールをも連想しちゃいましたヨ。
あっ、あと、上野には、東天紅(とーてんこー)という中華レストランも有りましたね。
次から次へとどんどん思い浮かぶわ、“マー・テンウー”もどき。


ついでに、他のキャストの表記も見てみたら、
日本でも有名な絶世の美女・貂蟬(任紅昌)を演じている董璇(ドン・シュエン)も…

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“ドン・シュアン”の誤表記にされている。
これは、私の御贔屓・黃軒(ホアン・シュエン)を“ホアン・シュアン”としてしまったのと同じ過ち。
“Xuan”を日本語のローマ字風に読んではいけないという
中国語初学者でも知っている基礎さえ知らない人に、キャストの日本語表記を担当させているのであろう。
翻訳者に尋ねれば良いだけの事なのに、それすらやらずに、公けに誤表記を拡散させるなんて、無責任。
翻訳者に払うギャラをケチりたかったのか…?


さらに言ってしまうと、邦題を『三国志 Secret of Three Kingdoms』にしちゃうセンスにも疑問。
上陸前から、中華ドラマニアや出演者のファンの皆さまの間では、『三國機密』の原題で根付いていたし、
ズバリ『三国機密(さんごくきみつ)』の方がインパクトがあるのに…。
三国志マニアを当て込んで、何でも“三国志”をくっ付ける“三国志便乗商法”みたいのは、みっともないし、
“三国志”が氾濫し過ぎて、紛らわしくなるだけ。
(『三国志 Secret of Three Kingdoms』も、ネットで検索する時、
いちいち“Secret of Three Kingdoms”まで付けないと、他のドラマがヒットするから、非常に面倒くさい。)
中国の業者からも、「“三国志”関連と言えば、日本人はひょいひょい食い付いてくる」と足元を見られ、
高値でドラマを売り付けられていそう…。
邦題を『三国志 趙雲伝』とした現地では大不評だったドラマ『武神趙子龍』を観た時に、そう思った。


この度の『三国志 Secret of Three Kingdoms』は衛星劇場での放送で、視聴が限られているため、
いきなり“マー・テンウー”表記が定着するとは考えにくいが、
この先、他局でも繰り返し放送され、ドラマが評判になれば、
馬天宇も“マー・テンウー”で定着していってしまうかも知れませんね。
私は、黃軒(ホアン・シュエン)が“ホアン・シュアン”にされた事を、非常に根に持っているので、
馬天宇ファンのやるせない気持ちをお察しいたします。
そもそも、中国語の複雑な発音を日本語の五十音に当て嵌めようとする事自体に無理があるし、
中国語チンプンカンプンの日本の業者が無理矢理やった結果、実際、間違いが氾濫しているのだから
(黃軒、馬天宇の片仮名誤表記なんて氷山の一角)、
もう何度も言っているように、華人の名はちゃんと漢字で表記すべき。
漢字表記なら、この手の間違いは起きにくいし、
日本人にとっては、チャンだのチュンだのという片仮名の羅列より、記憶に残り易いから、一挙両得。


ちなみに、<J:COMマガジン>10月号で取り上げている3作品の放送予定は…

『琅琊榜<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』
2018年10月9日(火曜) 午後1時~
チャンネル銀河
毎週月曜~金曜  毎日1話、週5話進行  全50話

『三国志 Secret of Three Kingdoms~三國機密之潛龍在淵』
2018年10月17日(水曜) 午後9時~
衛星劇場
毎週水曜 2話連続放送  全54話

『花と将軍 Oh My General~將軍在上』
2018年10月5日(金曜) 午後6時~
アジアドラマチックTV
毎週木曜+金曜  一日一話、週2話進行  全60話

『三国志 Secret of Three Kingdoms』は、本日、9月25日夜11時に先行放送あり。
『琅琊榜<弐>』は、もう一回、最初から観直しちゃいそう。



その『琅琊榜<弐>』で太子・蕭元時を演じている子役出身の胡先煦(フー・シェンシュー)、
本日、自身の微博で、恋愛中であることを公表。
お相手は、この秋入学した中央戲劇學院の同級生・刁卓(ディアオ・ジュオ)。
どうやら、中戲の講師兼俳優で、昨年45歳の若さで亡くなった刁海明(ディアオ・ハイミン)の娘らしい。

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画像上の“テへッ”は、私が書き込んだのではない。刁卓ちゃん自身の加工。
彼女、微博の紹介文も“かわいい人”と日本語で書いているし、アニメ等が好きな今どきの子なのかもね。
いやぁ、それにしても、この秋入学したばかりで、もう付き合っている女の子がいるなんて、
胡先煦クンって、幼く可愛らしい見掛けによらず、案外肉食系なのかしらー。
(…と思ったら、あちらでも“進展神速”と言われていた。 笑!)




ついでに、近々放送の要録画番組を一本。

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9月29日(土曜)、TBSの『世界ふしぎ発見!』
今回は、“玄奘三蔵の足跡を追ってシルクロード大紀行!”という特集。
<西遊記>に登場する三蔵法師のモデルとなった玄奘(602-664)が、唐代、往復3万キロを旅した足跡を、
ミステリーハンターの尾花貴絵がレポート。
シルクロードの玄関口・陝西省西安から、西へ西へ、敦煌、キルギスと進んで行くみたい。
清末を描くドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』でも、主人公の周瑩が、商売のため、
住まいのある陝西から、西の迪化(現在の新疆・烏魯木齊)へ過酷な旅をしていましたよねぇ~。
日本で三蔵法師は、夏目雅子以降、女優が演じる役になっているため、華奢な僧侶のイメージがあるけれど、
実際には、そんなナヨナヨした人では、とてもとても無理な、険しい道中であった事は、想像に容易い。
映画祭で『大唐玄奘』(2016年)が上映された時、霍建起(フォ・ジェンチィ)監督が、
玄奘役に黃曉明(ホァン・シャオミン)を起用した理由の一つとして、「体格がいいから」と話していた。
玄奘の体格が立派だった事は、ちゃんと史書に記されているのだと。




お菓子は、秋らしく、栗を使った和菓子ばかりを一気に4ツ。

★ 紀の国屋:栗蒸し羊羹

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大きさは、大体長さ5センチ×幅3センチ×高さ3センチ。
生地の中に栗を混ぜ、四角く切り分けた栗蒸し羊羹。




まずは、紀の国屋(公式サイト)“栗蒸し羊羹”
おこじゅや相国最中で有名な紀の国屋が、期間限定で出している生菓子。

最近は、三角形にカットした羊羹の上に栗を盛った、
ちょっと高級感のあるタ栗蒸し羊羹がよく売られているけれど、
紀の国屋のは、生地の中に栗を入れ、四角くカットした、昔からある素朴なタイプ。

生地は、蒸し羊羹らしいムッチリ食感。
原材料表示を見ると、小麦粉以外に、わらび粉も混ぜ込まれている。
栗は、ホクホク。
中に隠れているので、量は分かりにくいけれど、一個半から2個分くらいの栗が使われているかも。


今どき、これで160円は非常に良心的。
栗の量も充分だし、羊羹部分も美味。
とってもコスパの良い栗蒸し羊羹。
秋の限定商品とは言っても、販売期間は長めで、通常、1月半ばまで店頭に出ている。

★ 笹屋伊織:おはぎ(焼栗)

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大きさは、直径約5センチ。
もち米を栗餡で包み、上部を刻み栗で飾ったおはぎ。




続いて、笹屋伊織(公式サイト)“おはぎ”
同店のおはぎ/ぼた餅では、小豆の餡や胡麻をまぶした物なら幾度となく食べたことがあるけれど、
この焼栗というのは初めて。

餡は、白いんげん豆の白餡をベースに、栗を練り込んだ物で、
洋菓子で使うマロンクリームとはまったく違う。
ただの“栗”ではなく、わざわざ“焼栗”と名付けているように、
天津甘栗のような、焼いた栗特有の味がほんのりする。
甘さはかなり控えめで、あっさり。


自然な甘さで、栗の風味が活きている。
このアッサリした感じは、栗を茶巾で絞った和菓子・栗きんとんにも近いかも。
但し、白餡がベースなので、栗きんとんより、ずっと水分が多く、シットリ。
小豆餡のおはぎは、甘くて重いという人でも、これなら食べ易いかも知れない。
私は激甘党なので、もう少し甘さが欲しい。

★ 梅園:栗かのこ

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大きさは、直径約4センチ。
中に白玉を隠した白餡の周りを、栗の甘露煮ですっぽり覆った鹿の子。




こちらは、梅園(公式サイト)“栗かのこ”
あわぜんざいで有名な浅草の梅園が出している生菓子。

小ぶりな鹿の子である。
中には、さっぱりマイルドな甘さの白餡。
白+白の保護色で(?)、画像だと分かりにくいけれど、白餡の中には、さらに白玉のお餅が隠れている。
栗は、スライスした物が、周囲にたっぷり。底にまで栗。
そもそもが小ぶりなお菓子なので、栗の割り合いはかなり高い。


ちょっと甘い物が欲しい時に、丁度いいサイズ。
小さくても、丁寧に作られているし、中に白玉が入っているのが、ちょっと得した気分。

★ 仙太郎:生渋栗

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大きさは、幅約4センチ。
渋皮付きの栗をこし餡で包み、さらにこし羊羹で衣掛けし、栗に見立てたお菓子。




最後は、仙太郎(公式サイト)“生渋栗”
栗を使った仙太郎の商品の中でも、特に好きで、毎年リピート買いしている物。

渋皮付きの栗を餡で覆っただけの、シンプルなお菓子。
見た目は例年通りなのだが、もしかして、餡の部分をマイナーチェンジした…?
昨年までは、栗を覆う餡の部分が、こし餡と蒸し羊羹の間くらいの質感の物であった。
若干ムチッとした弾力を感じる質感だったので、普通のこし餡ではないと思い、
店員さんに尋ねたら、いや、こし餡だ、と。
その答えに納得できなかったのだけれど、
まぁ美味しいから何でもいいワと、それ以上突っ込むことはしなかった。

そして、今年の物。
餡の部分をよく見ると、二重構造になっていて、内側のこし餡をこし羊羹で覆っている。
内側のこし餡は、昨年までの物より柔らかで、明らかにこし餡である。
その上に、もっと密な質感のこし羊羹を被せているので、あんこ玉っぽい感じ。
中に、渋皮付きの栗を丸々一個隠しているので、普通のあんこ玉より勿論もっと贅沢な印象。


本物と同じくらいの大きさの栗の形で可愛らしい。
田舎風の素朴で大きなお菓子が多い仙太郎にしては、小ぶりで上品なお菓子。
購入の時、店員さんから、要冷蔵だと言われた。
昨年までは言われた事が無かったので、やはり素材を変えたのではないだろうか。
変えて不味くなったらガッカリだが、この新ヴァージョンも美味。

北京2017:麗晶大班(マッサージ)

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2017年度分の北京旅行備忘録、まだまだ終わる気配なし…。

久し振りに更新の今回は、マッサージ屋さんについて。
旅行中、一日中観光で歩き疲れた足を揉みほぐし、また翌日の観光に備えるためには、
夜のマッサージ屋さん通いは欠かせません。

北京は、マッサージ店のレベルが中華圏でブッチギリのナンバーワン。
お店の数も多くて迷うが、選ぶ第一条件は、宿泊ホテルから徒歩圏内であること。
私は、前年も、同じ北京四季酒店(フォーシーズンズ北京)に宿泊し、
そこから非常に近いマッサージ店、天舒会所 Paradise Massage & SPAを試したら、良かったので(→参照)、
翌年もやはり天舒会所に連日通い詰め。

でも、実は、もう一軒、試してみたいマッサージ店があったのだ。
それが、丽晶大班(麗晶大班 Regency Tai Pan Massage & SPA
レストランやスパを運営する澳門(マカオ)の麗晶集團のお店。
大陸でも、事業を展開しています。

北京のこの麗晶大班は、地図で見ると、ホテルからそこそこ距離があるようなので、
一年前は、行こうかどうか迷った。
念の為、ホテルのスタッフに尋ねたら、皆口を揃え「遠くない!近い!近い!」と言う。
その言葉で、私はキッパリと行くのを諦めた。
だって、中国人が言う“近い”に、近かったためしがないんですもの(苦笑)。
広大な大陸で生まれ育った人々は、小さな島国育ちとは、“体感距離”が明らかに違うと感じる。

そんな訳で、前年には行かなかった麗晶大班だけれど、
一年後の旅行中、夕方まだ早い時間に、たまたまその近辺を通りがかったため、
ふと思い出して、立ち寄ってみることにした。



写真はほとんど撮っていないが、以下に、一応記録を残しておく。

★ 麗晶大班

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建物に思いっ切り“丽晶大班”と名が掲げられているので、近くまで来れば、見付かるけれど、
大通りから少し入ったエリアで、ビルも道もごちゃごちゃと入り組んでいるため、
初めてだと、住所だけで辿り着くのは、あまり簡単ではないかも。


まずは、入り口入ってすぐのカウンターで、メニュー選び。
私も母も、最もスタンダードなフットマッサージをセレクト。80分198元也。
アポ無しの飛び込み入店だったが、半端な時間だったので、客は少なく、
待ち時間ナシで、部屋に案内された。

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部屋は、この手のお店によく有るタイプの個室。
照明が薄暗いので、鮮明な写真は撮れなかった。
施術を受ける椅子がドーンと置かれ、向かいの壁にはテレビ。
土地の狭い香港や台湾では考えにくいが、北京では、こういう施術室は珍しくない。
一人で行っても、追加料金を払わずに、個室でマッサージを受けられる。


マッサージ師が、足湯などの準備をしている間に、こちらはお着換え。

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このお店では、紺色のジャージ素材の上下であった。
横浜中華街で安く売っている、サテン素材で、チャイナテイストのテロテロ上下というお店が結構多いので、
そういうのと比べたら、これはシンプルで、相当お洒落な方である。


さらに、メニューから、飲食物のオーダー。

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飲み物は、コーラやスプライトといった清涼飲料から、果物を絞ったフレッシュフルーツジュース、
勿論、中国茶も数種類あり。
食べ物は、咖喱牛腩米粉(牛バラ入りカレービーフン)等、マカオの茶餐廳メニューが多い。
他にも、サンドイッチやサラダ、水餃子も。
デザートは種類が少なく、龜苓膏(亀ゼリー)やフルーツ。
これらは、施術料金に含まれているので、余分にお金を取られることはない。
日本では信じられないけれど、澳門系は、こういうお店が多いですね。
お腹が空いている人は、マッサージのついでに、タダでガッツリ食べることも出来ましょうが、
私も母も、特別欲していなかったので、飲み物とフルーツだけ注文。

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母はコーラ、私は西瓜ジュースをそれぞれ一杯ずつオーダーしたのだけれど、
どういう訳か、コーラ1杯と西瓜ジュース2杯の計3杯が運ばれてきた。
フルーツは、西瓜と梨。


で、いよいよマッサージ。
マッサージ師は、二人とも女性。
始める前に、「この時間帯はサービスで、10分余計にマッサージを受けられます」という説明。
へぇー、ラッキー。

マッサージの流れは基本的に他店と同じ。
まずは、薬剤を入れた桶で足湯をしながら、背中、肩、首、頭部、腕など足以外の場所をマッサージ。
“フットマッサージ”とオーダーしても、他もかなり念入りにマッサージしてくれる。
続いて、足のマッサージ。
疲れ切った足に、これは本当に気持ちがいい。

気持ち良くて、ボーッとし、質問し忘れたのだけれど、
ホットストーンを使ったトリートメントがあって、
恐らくそれがサービスの“余分な10分”だったのではないかと思う。


気分スッキリで、プラス10分、計90分の施術終了。
ホットストーンは、どちらかと言うとリラクゼーションの為の物なので、
まぁそれなりに気持ちはいいけれど、有料だったら、私は不要。
私は、手でガッツリ揉んでもらう方が好み。

着替えを済ませ、帰りがけにお会計。
90分でも、お値段据え置きの198元也。明朗会計。
個室でリラックスでき、技術もサービスも申し分なく、コスパ良し。満足、満足。




◆◇◆ 丽晶大班 Regency Tai Pan Massage & SPA ◆◇◆
北京市 朝阳区 霞光里路 66号 远洋新干线 D座橡树公馆内

足疗:198元/80min.

ドラマの美食(グルメ):『軍師連盟』編

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現在wowowで放送中の大陸ドラマ『三国志 司馬懿 軍師連盟~大軍師司馬懿:軍師聯盟/虎嘯龍吟』、
主人公・司馬懿を演じている吳秀波(ウー・ショウポー)に最近不倫疑惑が勃発。
24歳年下の女優・陳霖(チェン・ユーリン)が、2011年から7年も関係を続けていた事を
微信(Wechat)の朋友圏(友達圏)で告白し、「永遠恨你!(永遠に恨んでやる!)」と怒りが収まらない様子。
陳霖は、『軍師連盟』の撮影中も、横店のホテル豐景嘉麗1208号室で333日間同宿して、
吳秀波の身の回りのお世話をしたという。
さらに、自分との交際中、他にも2人ほど別の愛人が居て、
その内の一人が、『軍師連盟』で甄宓を演じている張芷溪(ジャン・ジーシー)だと実名を挙げている。

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綺麗な女優さんですよねぇ~。
もし噂が事実なら、なぜわざわざ子持ちの五十男と付き合ってしまったのだか…。
張芷溪ほどの美女だったら、もっと好条件の男性がいくらでもいるでしょうに。


吳秀波は、温厚で素敵なおじ様のイメージがあるため、
この不倫疑惑、もっと大騒ぎになるかと思いきや、案外それ程でもない。
張綺雨(キティ・チャン)2度目の離婚のニュースの方が、むしろ盛り上がっていた。
吳秀波自身、姿をくらますこともなく、新ドラマ『無名偵探』の撮影に入っている。
新ドラマでの共演は、唐嫣(ティファニー・タン)、翟天臨(ジャイ・ティエンリン)、
そして香港の任達華(サイモン・ヤム)と豪華。
こういうドラマが、暗礁に乗り上げるような事になったら大変だから、
吳秀波サマ、女性問題でつまずかぬよう、くれぐれも身を引き締めてちょうーだい!

★ 吳の名物お刺身

本題は、吳秀波の不倫疑惑ではなく、『三国志 司馬懿 軍師連盟』の美食。
以前、楊修(175-219)が丁儀(?-220)を家に招き、焼き肉を振る舞うシーンを見て、
ドラマの背景である東漢(後漢)末期に、本当に焼き肉など存在したのか?という疑問が湧き、
当ブログで取り上げた。(→こちら
今回取り上げるのは、2018年9月29日(土曜)放送の第21話に登場するお刺身。



第21話で、司馬懿(179-251)は、曹操(155-220)に、吳と蜀の関係を断つべく、
吳の孫権(182-252)と手を結び、関羽(?-220)を討つことを提案。

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曹操はこれに同意し、司馬懿は、妻の張春華を伴い、使者として吳へ。

地図でも場所を確認しておこう。

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吳は、南部の水の豊かな地域。

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この吳出張の時である、宿で夫婦に提供されたのが、地元の名物であるお刺身。



現在、地球上で、生魚を食べる習慣のある国は少ないと言われ、
お刺身は代表的な日本料理と見る人が多い。
紀元220年頃、果たして司馬懿は本当にお刺身を食べたのか?


中国でも、“お刺身=日本食”と捉える人が多いようだが、
そもそも、狩ってきたばかりの獣や、釣ってきたばかりの魚を、火を使って調理せず、
そのまま生で口にするのは、とても原始的な食べ方。



宋代に出土された“兮甲盤”と呼ばれる国宝級の青銅器がある。

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周の時代、宣王5年(紀元前822年)に作られた青銅器で、その底に、
宣王の臣下・尹吉甫(?-?)が、異民族である玁狁を征伐して凱旋したという銘文が刻まれている。
その凱旋の宴で供された主菜が、火で調理した魚と生の鯉。
尹吉甫は、中国最古の詩篇<詩經>の内、<小雅·六月>などを記した人物としても知られるが、
その中に「飲禦諸友,炰鱉膾鯉」と記載されており、その“膾鯉”こそが、生の鯉のこと。

元々“膾”は、牛、羊、馬、魚などを細かく切った物を指し、必ずしも魚を意味していなかったそうだが、
その後、魚限定の“膾”を意味する魚ヘンの“鱠”という字が出現。
東漢時代の歴史書<吳越春秋>には、吳の第6代王・闔閭(?-紀元前496)が、
楚の都・郢を陥落し、帰還した臣下・伍子胥(?-紀元前484)を、“鱠”でもてなしたという記載があるという。
日本では、“膾”も“鱠”も共に“なます”と読み、両者に意味の違いは無いようだが、
日本の“膾/鱠”も、まぁ、勿論、中国のこの歴史に遡るのであろう。

中国では、この春秋戦国時代は、火で加工する食べ方も生食も両方が存在していた時期。
人々によく知られていることを意味する四字熟語、
“膾炙人口 kuài zhì rén kǒu”(=人口に膾炙する)も、これに由来するんですって。
膾(ナマ)でも炙(あぶり)でも両方万人に好まれるが如く、話題にのぼって、広く知れ渡るという意味。



不思議な事に、西北の内陸部で、かなり早い時期からお刺身が食べられていたそうだが、
その後は、南部で水が豊かな吳の辺りが、やはり地理的にも、お刺身を好んで食べる地域に。

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そんな訳で、ドラマ『軍師連盟』でも、司馬懿と張春華は、魏の使者として吳を訪れた際、
土地の名物料理である新鮮なお刺身を堪能。

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ドラマの中では、お給仕の男性が、お刺身と一緒に、5ツの小皿を運んできて、
春華は、それにお刺身をつけて食べている。

明代、李時珍(1518-1595)が記した薬学書<本草綱目>の中のお刺身についての部分には、
「切って、血を洗い、蒜(ニンニク)、韮(ニラ)、薑(生姜)、葱(ネギ)、醋(酢)に付ける」と記載があるので、
ドラマは、これを参考にしたものと思われる。
当然、明は、東漢よりもっとずーっと後の時代なので、
『軍師連盟』に描かれる表現の内、当時、お刺身が食べられていたという部分は正解で、
春華がお刺身に薬味を使う部分には、疑問が残る。


さらに補足すると、司馬懿と張春華が吳でお刺身を食べたなどという史実は文献に残っていないのだが、
同じ時代、同じ魏に生きた人でも、曹植(192-232)は、お刺身が好きで、
自身の著作<名都篇>にも、「お刺身を小蝦醬に付けて食す」との記載あり。
念の為、曹植とは…

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曹操と卞氏の間に生まれた第3子で、字は子建。
『軍師連盟』では、王仁君(ワン・レンジュン)が演じているあの人。



その後の中国では、唐の時代がお刺身の最盛期。
日本は、遣唐使を送ったりして、唐の文化を積極的に取り入れていたので、
お刺身も、この頃、伝わってきたという説あり。
もっとも、前述のように、調理しない生食は、原始的な食べ方なので、
四方を海に囲まれた日本なら、なおのこと、もっと昔から食べていた可能性も高い。
…が、日本で初めてお刺身に関する記述が文献上に登場するのが、
大陸では、明代に当たる応永6年(1399年)と随分後なので、
“原始的にナマでガッツリ”だったら大昔からしていたとしても、
“洗練された生魚の食習慣”となると、もしかして唐からの伝来なのかも知れない。

で、当の中国では、逆に、日本の文献にお刺身が登場し始めた明代から、お刺身人気が急速に衰退。
様々な調理法が成熟してきた事や、
加熱食品の方が衛生的、かつ中医学上健康に良いと見做される事などが、
人気衰退の理由に挙げられるそう。
(例えば、曹操に帰順し呂布を討った武将・陳登は、
お刺身が大好きで、食べ過ぎ、寄生虫が湧いた事が死因という説あり。)


では、最後に今一度、『三国志 司馬懿 軍師連盟』に登場するお刺身についてまとめておく。
お刺身は当時本当にあった。
曹操の息子・曹植もお刺身大好き。(ドラマには、曹植がお刺身を食べるシーンは無い。)
5種の薬味を付ける食べ方は、時代を先取りし過ぎかも…?





この回の放送では、翟天臨(ジャイ・ティエンリン)扮する楊修が、ついに処刑されてしまった…。
最後に宿敵・司馬懿とお酒を酌み交わすシーンは、ジーンと来た。

で、次回の放送では、絶対に曹操が死んじゃうわよねぇ…?!悲しいぃーっ…!

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このドラマで于和偉(ユー・ハーウェイ)が演じる曹操は、『三国志』モノ史上最高の曹操じゃなぁーい…?!
于和偉って、実は1971年生まれのまだ40代で、司馬懿役の吳秀波より3ツ年下なのよねぇ。
70年代生まれとは信じ難い圧巻の“曹操オーラ”を醸している。
この『三国志 司馬懿 軍師連盟』は、間違いなく于和偉の代表作に挙げられる作品だと思う。




『三国志 司馬懿 軍師連盟』に登場する焼き肉については、こちらから。

街角の明星in新宿(范冰冰案件の結末)

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“陰陽合同”と呼ばれる二重契約書の暴露に端を発した脱税容疑で
姿をくらましていた女優、范冰冰(ファン・ビンビン)。
2018年10月3日、国税局が処分を公表。
大方の予想通り、范冰冰に命じられたのは、追徴課税と罰金。
その総額、8億8394万6千人民元也。
日本円にして、約147億円。支払期限は本年度末。
沈黙を守っていた范冰冰も、その直後、久し振りに微博を更新し、謝罪文を掲載。

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国家や社会に対し不利益をもたらした事を認め、
下された罰を全面的に受け入れ、納付に全力を尽くすと、ひたすら反省と謝罪。




思い出すのは、2002年に発覚した劉曉慶(リウ・シャオチン)の脱税である。
劉曉慶は、710万人民元という范冰冰よりずっと少ない額にもかかわらず422日間も収監。
そんな事例が有ったので、もしかして范冰冰サマも監獄入り?!と予想した人は少なからず居ただろうが、
なんでも、中国では2009年に脱税に関する法改正があり、
初犯の場合、期限内に定められた額を納付すれば、基本的には刑事罰には問われなくなったのだとか。
日本だと、そんなお金持ちの芸能人はいないから、支払額147億円なんて聞くと、ギョッとするけれど、
大陸トップクラスの芸能人なら、払える額でしょ。

ちなみに、劉曉慶は、日本でも、映画『芙蓉鎮』(1986年)で広く知られ、
数年前TBSの番組が“中国最強の美魔女”として取り上げた際、年齢を暴露し、御本人激怒と話題になった。
近年では、武則天を演じたドラマ『武則天 秘史~武則天秘史』が日本に入って来ている。

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私にとっては、范冰冰が武則天を演じた『武則天-The Empress-~武媚娘傳奇』より、
劉曉慶の(正確には、他2名の女優が武則天を演じている)『武則天秘史』の方がずっと面白かった。




さて、脱税問題も収束すると、気になるのは、范冰冰出演作の行方である。
昨日の今日なので、まだ具体的な話は無く、どの報道も推測の域を出ていないように見受ける。

ブルース・ウィリスも出演する日中戦争中の重慶爆撃を描く映画『大轟炸~Unbreakable Spirit』は、
本来2018年8月17日公開の予定であったが、延期となり、
いつの間にかポスターから范冰冰の名が消え、2018年10月26日に今度こそ公開予定。

(↓)こちら、范冰冰の名前がある旧版ポスター。

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(↓)こちら、范冰冰の名前が消えた新ポスター。

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但し、制作者サイドは
「深い意味は無い。新しいポスターには、主要キャストの名だけを載せた」と言っている。
実際、この映画で、范冰冰は主要キャストではなく、特別出演の扱い。
(ちなみに、前出の劉曉慶も、この映画に特別出演。)

そして、この映画、公開は決まったものの、
一連の出来事の発端となった有名司会者・崔永元(ツイ・ヨンユエン)がまたまた
『大轟炸』は大ウソつき。たった一人の出演者しか処罰を受けていない」と
他にも脱税した者がいることを匂わす発言。
“不発弾”を抱えた映画と言われている(苦笑)。


ドラマでは…

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『巴清傳~Legend of Ba Qing』は、范冰冰の脱税問題の前に、
もう一人の出演者、秦の始皇帝嬴政を演じる高雲翔(ガオ・ユンシャン)も、
オーストラリアで現地の華人女性に性的暴行を働いた容疑で裁判沙汰になったため、
制作した唐影視は株価も下落し、相当な損失を出したらしい。
現時点では、公開困難と見る人が多いようだが、ホトボリが冷めた頃、シレーッと公開の可能性も…。
芸能人は人気商売なので、公開されたところで、現地ではどれくらい受け入れられるのか不明だが、
日本に限って言えば、秦は人気の時代だし、今回の一件で范冰冰の知名度が一気に上がったので、
飛び付いて買いたがる配給会社が絶対にある気がする。

★ 街角の明星

そう、范冰冰が脱税しようが納税しようが、日本には関係ないのです。
それどころか、今や彼女は、有名人。
これまで長年、ごく一般的な日本人が知っている中華明星と言ったら、
李小龍(ブルース・リー)と成龍(ジャッキー・チェン)くらいだったけれど、
このほんのひと月程の間に、そこに范冰冰が加わった。


以前、こちらに記したように、2018年5月より、范冰冰は、
美顔ローラーでお馴染みの日本企業ReFaのグローバルアンバサダーになっている。
私は、新宿伊勢丹に貼られたポスターをたまたま目にして、その事を知った。
伊勢丹の化粧品売り場には、中華圏からの旅行者も多い。
果たして、あのポスターはどうなったのか?と思ったら…

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はい、范冰冰サマはちゃんと健在でした。

伊勢丹の近くのシネマート新宿では、范冰冰の婚約者・李晨(リー・チェン)が監督&主演して、
范冰冰も出演している映画『スカイハンター 空天猎』が絶賛上映中。
日本でお客が入るタイプの映画とは思えないのだけれど、
配給会社は、偶然にも、このタイミングで公開し、ちょっとした范冰冰特需に湧いたのでは。


その後、伊勢丹で買い物を済ませた私は、道を挟んで斜め向かいのビックロへ。
そうしたら、こちらには…

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あら、王凱(ワン・カイ)が。
こんな所で殿下に謁見できるとは。
「お得なクーポンを配布中」と日本語でも書いてあるけれど、
中華圏からの旅行者だけではなく、日本人のお客さんでも、
ーラルBの何かお得なクーポンをもらえるの?



最後に、今回もしつこく申しておきますが、
私が好きな范冰冰出演作は、『ロスト・イン・北京』(2007年)です。
あと、2017年の大阪アジアン映画祭で上映され、それっきりになっている范冰冰主演作、
『わたしは潘金蓮じゃない』はどうしても観たい作品なので、
日本で范冰冰の知名度が一気に上がったこの機会に、
どこかが買って、公開してくれないかと、密かに願っております。

映画『クレイジー・リッチ』

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【2018年/アメリカ/121min.】
1995年、イギリス・ロンドン。
土砂降りの雨の中、子供たちを連れ、予約を入れたカルソープ・ホテルに到着したエレノアだが、
従業員から「ここは会員制高級ホテル。宿はチャイナタウンでお探しに」と屈辱される。
そこに現れたのは、カルソープ卿。
カルソープ卿は、このホテルの新オーナーがエレノアであることを従業員に告げ、
彼女を恭しく部屋へ案内する。

2018年、アメリカ・ニューヨーク。
ニューヨーク大学で経済学の教鞭を執る中国系女性教授レイチェルは、
交際して一年になる恋人ニックから、春休みに彼の故郷シンガポールへ一緒に行こうと誘われる。
親友・コリンの結婚式があり、ニックはベストマンを務めることになっているのだ。
誘いを受けたレイチェルは、中国からの移民である母の助言に従い、礼服を用意し、ニックと共に空港へ。
空港に到着するやいなや迎えが来て、案内されたのはファーストクラス。
レイチェルは、この時初めて、ニックが裕福な家庭の御曹司であることを知る。

一方、シンガポールでは、国中誰もが知る楊家の御曹司ニックが、
“レイチェル・チュウ”という恋人を伴い帰国する事が、ネットでみるみる内に拡散。
“朱(チュウ)”姓なら、台湾プラスティック業界の朱家か、
それとも香港テレコムの朱家の令嬢か?!と話題騒然。
その騒動は、間も無くして、ニックの母・エレノアの耳にも入り…。



アメリカの華人監督・朱浩偉(ジョン・M・チュウ)最新作。
原作は、シンガポール出身のアメリカ移民作家・關凱文(ケヴィン・クワン)が2013年に発表し
ベストセラーとなった同名小説。


原題は『Crazy Rich Asians』。
邦題だと、最後の“Asians”の部分がバッサリ割愛されているけれど、そこが結構重要。
これ、正真正銘のハリウッド映画でありながら、主要キャストが全てアジア系なのだ。
原作者の關凱文は、数々舞い込んだオイシイ映画化の話を蹴り、
自身が受け取る報酬を1ドルぽっきりにしてまで、
自分がキャスティングに加わることを条件に、このプロジェクトを進めたのだと。
勿論これは、近年ハリウッドで頻繁に語られるようになったホワイトウォッシングへの対抗処置。
(対抗処置というより、強い“意思表示”や“挑戦”と表現すべきか。)


アジア系の物語をアジア系キャストで撮ったハリウッド映画は…

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王穎(ウェイン・ワン)監督の『ジョイ・ラック・クラブ』(1993年)以来、実に25年ぶり。
他にも、例えば、李安(アン・リー)監督は、
『ウェディング・バンケット』(1993年)や『グリーン・デスティニー』(2000年)といった作品を発表しているが、
前者は、全てがアジア人キャストではない上、台湾との合作、
後者も、中香台との合作である。

それだけ珍しいアジア系キャストによるハリウッド映画『クレイジー・リッチ』。
結果、アジア系映画はヒットしないというハリウッドの定説を打ち砕き、アメリカで大ヒットしたという
ある種エポックメイキング的な作品である。




本作品は、恋人・ニックが、シンガポールの大富豪だったと判明した事で、
アメリカ育ちの中国系大学教授・レイチェルが、思いも寄らなかった困難に巻き込まれ、四苦八苦するも、
彼との愛を勝ち取るまでを描くラヴ・ストーリー

主人公のレイチェルは、元々玉の輿狙いだったわけではない。
お相手・ニックのことをごく普通の人と信じていたのに(むしろ、“ちょっとビンボー”くらいに思っていたのに)、
交際して一年、初めて彼の故郷シンガポールを訪ねる際、
自分が掴んだ恋人が大富豪の御曹司だったとようやく知るわけで、“期せずして玉の輿”だったのだ。

それも、そこら辺の金持ちとはレベルが違う。
ニックの実家・楊家は、シンガポールがまだただのジャングルだった頃に開発を進め、
莫大な財を成したシンガポール随一の不動産長者だというから、相当なものであろう。
平凡なニューヨーカーであるレイチェルにとっては、本来有り得ない御縁で、夢のようなシンデレラ・ストーリー。

でもね、どんなに王子様から誠実に愛されても、シンデレラは簡単にお姫様には成れないの。
シンデレラにイジメや障害は付き物なのです。

レイチェルというシンデレラがブチ当たった壁は2ツ。
一つは、家柄の差。
もう一つは、文化やメンタリティの差。

確かに、家柄の差は、明らか。
レイチェルの亡き父は中国の工場労働者。
母・ケリーは、中国からアメリカへ移民し、不動産の営業をしながら、女手一つで娘を育てたシングルマザー。
母親が頑張ったお陰で、レイチェルはNY大学の教授にまでなったのだから、立派な経歴である。
それでも、シンガポールの富豪一族に嫁ぐとなると、家柄の格差は誰の目にも明らか。
日本は一億総中産階級意識が染み付いているので、近年、表立って家柄の差を口にする事は少ないけれど、
中華圏では、今でも、例えば芸能人の結婚のニュース等でさえも、
「この二人は“門當戶對(家柄が釣り合っている)”」とフツーに報じられている。

そのような価値観も、もう一つの文化やメンタリティの差に繋がる。
レイチェルは、血統的には100%の中国系だけれど、アメリカ育ち。
一方、レイチェル最大の敵となるニックの母・エレノアをはじめ、ニックの周囲にいる人々は、
中華圏で育った中国血統。
そういう人々にとってレイチェルは、所詮、外側が黄色くても内側が白い“バナナ”であり、
同じメンタリティを共有できる人ではないのだ。



昔からあるベタなラヴストーリーで、基本的には単純明快。
でも、一ヶ所だけ、今ひとつ分からなかったのが、
レイチェルとエレノアの最終決戦、息子の恋人VS鬼姑の麻雀対決シーン。

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レイチェルはずっと索子の8を手にしていたので、それが重要な牌であることは分かった。
8が、ラッキーナンバーであることも察した。
結局レイチェルはこの牌を捨て、エレノアが勝つのだが、これ、どういう上がり方で、何を意味していたのだか。
私、麻雀ができるオンナに憧れ、少しだけお教室に通ったことがあるのだけれど、
まったく物にならない内に辞めてしまったので、このシーンを読み解くことが出来なかった。あ゛ー、残念!




印象に残ったキャストを数人ピックアップ。

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ニューヨーク育ちの中国系大学教授・朱瑞秋(レイチェル・チュウ)に吳恬敏(コンスタンス・ウー)
レイチェルの恋人・楊尼克(ニック・ヤン)にヘンリー・ゴールディング
上海に暮らすニックの従姉・梁張雅絲(アストレッド・レオン=テオ)に陳靜(ジェンマ・チャン)
レイチェルの大学の同級生、高佩琳(ゴー・ペクリン)にオークワフィナ/林家珍(ノラ・ラム)
ニックの母・楊宋艾蓮娜(エレノア・スン=ヤン)に楊紫瓊(ミシェル・ヨー)
そして、ニックの祖母・商淑宜(シャン・シューイー)に盧燕(リサ・ルー)等々…。


大ヒットしたハリウッド映画と聞くと、主役はスタア級の俳優だと思いがちだが、本作品は、そこも異例。
レイチェル役の吳恬敏は、自身もばりばりアメリカ育ちの華人で(具体的には台湾系)、
ドラマ『ファン家のアメリカ開拓記~Fresh Off the Boat』のジェシカ・ファン役でそこそこ知られた女優らしいが、
国際的ハリウッドスタアとは言い難い。
(ちなみに、『ファン家のアメリカ開拓記』も、アメリカの台湾移民を描いたコメディドラマらしい。)

ニック役のヘンリー・ゴールディングは、イギリス人の父とマレーシア人の母をもつ混血で、
映画出演は、本作品が初めて。
若い頃の王敏(マイケル・ウォン)と少し感じが似ている。

このヘンリー・ゴールディングは、夢物語の王子様に相応しい美男子なのだが、
吳恬敏の方は、アジア人が好む“綺麗なアジア人女性”とは違う。
周囲の女性たちが、皆、モデル並みの美女ばかりだから、余計に霞む。
でも、だからこそ、平凡なレイチェルの役には説得力あり。


ヒロインであるレイチェルの存在を霞ませる美女たちの中でも、特に目を引くのが、
イギリスの華人女優、陳靜。
演じているアストレッドは、上海に暮らすニックの従姉。
世界中にいる親族の中でも、ニックが最も尊敬するデキる女性。
美人で知的なアストレッドは、ニックと同様、家柄が釣り合わない男性マイケルと結婚しているのだけれど、
実はその結婚生活は上手く行っておらず、人知れず悩んでいる。

ちなみに、世界中にいる親族の内、
台湾に暮らす従兄、鄭阿利斯泰爾(アリステア・チャン)はイマイチな映画監督で、
『台北阿虎2~Taipei Tiger 2』とかいう映画を撮っていて、主演女優とデキている。
(↓)こちら、その主演女優。演じているのは、シンガポールの謝宛諭(フィオナ・シエ)。

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元々AVに出ていたという設定で、なかなかの肉食系。
龐凱蒂(キティ・ポン)という名前からして“いかにも”。
登場シーンはそう多くはないけれど、私は結構好きなキャラ。


さらに好きなキャラが、佩琳(ペクリン)!
レイチェルの大学の同級生で、今は故郷のシンガポールで暮らしている。
佩琳の実家・高家もかなりの金持ち。但し、代々お金持ちのニックの楊家とは違い、あからさまな成り金。
佩琳のパパが自慢気に「ベルサイユ宮殿をイメージした」という金ピカな豪邸も、
佩琳曰く「いや、トランプタワーのトイレだから」。
佩琳は傲慢でイヤな成り金ではなく、明るく楽しい成り金なの。
『オーシャンズ8』(2018年)のコンスタンス役で、
日本でも知名度が一気に上がった中国系×韓国系アメリカンのラッパーで女優のオークワフィナが、
今回は髪を金髪に染め、コミカルに演じている。
顔はちょっと王若琳(ジョアンナ・ワン)に似ているかも。


イキは良くても、知名度は低い若手ばかりかと言うと、そんな事はなく、
楊家の母と祖母には、楊紫瓊と盧燕という有名なベテラン女優がしっかり配置されている。
盧燕は、25年前のアジア系キャストによるハリウッド映画『ジョイラック・クラブ』にも出演。

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盧燕は、私が物心ついた時には、すでに大ベテランだったため、
年齢をあまり気にした事が無かったのだけれど、1927年生まれで、もう91歳だって…!
様々な歴史を見てきたであろう富豪一族の家長に相応しい貫禄。
北京生まれ、上海育ちの盧燕は、他の出演者と違い、中国語の発音も滑らかで、耳に心地よい。


そして、楊紫瓊!とにかくカッコイイ!
かつては、アクション女優のイメージが強かった楊紫瓊だけれど、
蹴り入れたり、宙返りしたりせずに、名家のマダムを凛と上品に演じる姿が素敵で、ただただ惚れる。
そのマダム、エレノアは、アメリカ育ちのレイチェルとは対照的な保守系のシンボル的存在だが、
“三歩下がって三つ指ついて”というタイプともまた違う。
ケンブリッジで学び、流暢な英語を喋る彼女は、実は婚家から望まれた嫁ではなく、
現在の優雅なマダム然とした姿からは想像もつかない苦労をしている。
もしかして、生まれた時代が少しズレていたら、違う生き方をしていた女性なのかも知れない。

マダムな装いもとても素敵。
目を奪われるのは、夫から贈られたエメラルドの婚約指輪。

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朱浩偉監督は、エレノアのイメージはエメラルドだと考え、
JFケネディがジャクリーンに贈ったエメラルドとダイアモンドを配した
ヴァンクリフ&アーペルの婚約指輪に似せた物をデザインさせ、用意したのだけれど、
いまいちショボく、かと言って予算の関係で、それ以上豪華にも作れず、
楊紫瓊のお気に召さず、却下。
で、楊紫瓊がエレノアのイメージに合うだろうと提案したのが、楊紫瓊の私物。
そう、あの素敵なエメラルドの指輪は、楊紫瓊の私物なのです。
楊紫瓊クラスの女優は、やはり良い物を持っているのですねぇ~。

ちなみに、朱浩偉監督が参考にしたジャクリーン・ケネディの婚約指輪は(↓)こちら。

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これもさすが豪華だけれど、私個人的には、シンプルで20年代っぽいデザインの楊紫瓊の私物の方が好み。
シャープな印象が、演じるエレノアにも合っていると思う。


エレノアは、お洋服も素敵。一例を挙げておくと…

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ベージュのシフォンに水色を配した女性的でフォーマルなお召し物はエリー・サーブ、
マニッシュな白いパンツスーツはジョルジオ・アルマーニ。
ふぅ~、素敵で憧れてしまうわ、楊紫瓊お姐サマ。





映画の幕開けは、「China is a sleeping giant. Let her sleep, for when she wakes she will move the world.
(中国は眠れる巨人。眠らせておこう、中国が目覚めたら世界は震撼するであろう。)」
というナポレオン・ボナパルトの有名な言葉。
『Crazy Rich Asians』というタイトルだが、
広く“Asians”というより、具体的には『Crazy Rich Chinese』の物語である。
地球上に張り巡らされた中華系のネットワークと、現在の彼らの勢いがあってこそのお話で、
同じアジア人でも、日系の設定では、成り立たない。

当の中華圏で、アメリカ程のヒットにはならなかったのは、
当事者だからこそ、ステレオタイプな人物像や現実とのズレといった作品のアラが目に余り、
批判的に捉えたくなるのが一因かも…?

ちょっと淋しいけれど、同じアジア人でも、第三者的立場に置かれた日本人は、
華人には桁外れの富豪がいる現実を知っているし、
白人世界のシンデレラ物語よりは
「もしかして、私も第二のレイチェルに…」と錯覚を起こし易い夢物語。
ベタベタなラヴストーリーであり、25年前の『ジョイラック・クラブ』と比べると随分と軽く、
欠点もいっぱい有るけれど、単純に楽しめる娯楽作であった。
噂通り続編が制作されたら、それも観るであろう。
続編で初登場の新キャラたちのキャスティングも、勝手に考え初めている私。

映画『オペレーション:レッド・シー』

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【2018年/中国・モロッコ/143min.】
2015年、アデン湾、ソマリア沖。
“海賊横丁”と呼ばれるこの海域で、
中国海軍所属の精鋭・蛟龍突撃隊は、海賊から襲撃を受けた中国商船を無事救出するが、
間も無くして今度は、内戦が続くアフリカ北部イウェア共和国で、テロ組織が首都を攻撃し、
現地にまだ中国人が取り残されているとの情報が入る。 
隊長の楊銳をはじめとする蛟龍突撃隊の8人は、
最後の一人まで絶対に救出すると意を決し、危険地帯へ飛び込んでゆく。

一方、核原料イエローケーキの取材を続けるフランスの華人ジャーナリスト・夏楠は、
グリーンビレ・エナジー社の社長ウィリアムが、テロ組織と接触しているとの情報を得、
助手のアブを伴い、真相究明に乗り出すが…。



林超賢(ダンテ・ラム)監督、『オペレーション・メコン』(2016年)に続く最新作。
メコンの次は紅海でオペレーションです。

“世界最驚!中国‘空海’軍”と銘打ち、『スカイハンター 空天猎』(2017年)と同時に日本で公開。
こちらの『オペレーション:レッド・シー』は、海軍の方。
日本にもミリタリーマニアは結構居るから、
“広く一般向け”とはいかなくても、ニッチな需要は有るのかも知れない。
どうせだったら、陸軍映画も加え、3本同時公開すれば良かったのに。
陸軍モノは、目ぼしい作品が無かったのでしょうか。

私自身は、この手の映画には興味が無いのだけれど、
どうせなら大きなスクリーンで観たいと思い、シネマート新宿のスクリーン1で上映する日時を狙っていたら、
なかなか予定が合わず、どんどん先延ばしになり、この度ようやく鑑賞。




本作品は、内戦が激化する中東のイウェア共和国に在留する多くの中国人が脱出する中、
取り残された最後の一人をも救うべく、
人民解放軍海軍の蛟龍突撃隊8人が危険地域に果敢に飛び込む救出劇を描くと同時に、
フランス華人記者・夏楠からの情報で、核原料がテロ組織に渡るのを阻止するため、
命懸けで戦う様をスリリングに描くミリタリー・アクション超大作


本作品は、実際に起きた出来事から着想を得て作られている。
2015年3月末、内戦の続くイエメンで、人民解放軍海軍のフリゲート艦が、
自国民571人と外国人225人を救出した出来事がソレ。

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“也門撤僑(イエメン居留民救出)事件”と呼ばれ、あちらでは広く知られるようだ。
映画では、舞台となる内戦の続く国家を“イエメン”とは呼ばず、“イウェア”という架空の共和国に設定。


任務に当たるのは、蛟龍突撃隊。
“蛟龍(こうりゅう)”とは、水中にすむ龍のような架空の生き物、蛟(みずち)のこと。

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蛟龍突撃隊は、実際に人民解放軍海軍に存在する特殊部隊。
海軍所属でも、隊員には、総合的に高い能力が求められ、
空中、陸地、海上、そして水中でまで作戦を実行可能、
“海では蛟龍、陸では猛虎、空では雄鷹”と称される精鋭中の精鋭の集まりなのだと。
確かにね、映画『オペレーション:レッド・シー』も海軍の話のつもりで観たら、
激しい陸上戦を繰り広げていた。


中国海軍の支援を受け撮られているから…

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057A型護衛艦・臨沂艦などホンモノが登場。
こういう部分も、ミリタリーマニアにとっては見所になるであろう。


物語は、実際にあったイエメン居留民救出作戦からヒントを得てはいるけれど、
事実を淡々と綴ったドキュメンタリーのような作品ではない。
さらに、映画には、もう一つ、核原料・黃餅(イエローケーキ)と“髒彈(汚い爆弾)”の製法が、
テロ組織に渡るのを阻止する壮絶な戦いが描かれる。
蛟龍突撃隊は、上からの命令無しに、自分たちの判断で、正義と地球平和のために敵に挑むのだが、
もちろんフィクションである。




登場人物は大半が軍服姿で、しかも顔がススけているから、見ていて混乱。
それでも、数人をピックアップしておくと…

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蛟龍突撃隊隊長・楊銳に張譯(チャン・イー)
蛟龍突撃隊の狙撃手・顧順に黃景瑜(ホアン・ジンユー/ホアン・ジンギュ
顧順とコンビを組む李懂に尹(イン・ファン)
黃餅の行方を追うフランス華人のジャーナリスト・夏楠に海清(ハイ・チン)、
臨沂艦の艦長・高雲に張涵予(チャン・ハンユー)、
そして、夏楠の上司である編集長アルバートに任達華(サイモン・ヤム)などなど。


林超賢監督の前作『オペレーション・メコン』で主演を務めた張涵予は、今回は特別出演。
離れた場所から指令を出すだけなので、肉体は酷使していない。
本作品で蛟龍突撃隊の隊長を演じているのは張譯。
田舎成り金を演じさせたら中国一だと思っていた張譯だけれど、軍人もイケていた。
いわゆる美男子ではないから、泥臭い役が似合うのです。


泥臭いオッサンなんてイヤ!という人には、話題性のある若い男の子も用意されている。
顧順を演じる黃景瑜は、
大ヒットしたBLドラマ『ハイロイン~上癮』でブレイクした二人の主演男優の内の一人。

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ちなみに、もう一人の方は許魏洲(シュー・ウェイジョウ)。
許魏洲の方がカワイイ系で、黃景瑜の方が男くさい印象。
黃景瑜ってねぇ、なんか、今どきの線の細いイケメンとも違い、昭和のニオイがするのよ。
だから、軍人役は結構合っている。
本作品で演じている顧順は、ちょっと生意気というか、トンがった所のある若者。

そんな黃景瑜であるが、本作品の日本公式サイトやポスターには…

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残念ながら、“ホアン・ジンギュ”という誤表記で紹介。
なんだか韓流スタアみたい…。ほら、李準基(イ・ジュンギ)みたいな…。
中国語が解らなくても、“ジンギュ”という響きからして、中国人っぽくないと察するでしょうに。
日本の配給会社って、本当にいい加減。
公式に名前を掲載するにあたり、ちゃんと調べたり、翻訳者に確認したりしないのか…?!


劇中、この黃景瑜扮する顧順とコンビを組んで戦うのが、尹扮する李懂。
BLドラマでブレイクした黃景瑜だからなのか、本作品でも相棒はタイプの異なるカワイイ系。
お目々パッチリ、唇ポッテリで、韓国の元斌(ウォンビン)をちょっぴり彷彿。


女性では、十年ほど前、ヒットドラマ『蝸居~Dwelling Narrowness』に出演し、
“國民媳婦(国民的ヨメ)”と呼ばれた海清が出演。
演じる夏楠は、お嫁サマとは全然違い、危険を顧みず事件を追うジャーナリスト。
2005年、ロンドンで起きた同時多発テロで、夫と子供を失った事が、彼女を突き動かしている。
わざわざ中国系フランス人に設定する意味があったのかは疑問。

ちなみに、最近の海清出演作だと…

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中華版『深夜食堂~深夜食堂』が日本に入って来ている。
海清が演じているのは、まだ充分若いのにアルツハイマーを発症する母親の役。
あと、日本絡みでもう一本、山田洋次監督作品『家族はつらいよ』の中国リメイク版『麻煩家族』にも出演。
私は未見だけれど、彼女が演じているのは、恐らく、日本版で中嶋朋子が演じている役だと思う。

なお、この海清と黃景瑜は、もう直開催の2018東京・中国映画週間に来日予定。
10月25日(木曜)、この『オペレーション:レッド・シー』上映終了後に、
二人揃って舞台挨拶をするものと思われる。
写真美術館のような小さな会場でスタアを拝めるなんて、広大な中国では有り得ない貴重な体験。
ファンにとっては至福の時になりそうですね~。



お馴染み香港の任達華は、ほんの友情出演程度の登場。
林超賢監督との交流から叶ったサプライズ出演だと漠然と考え、思い返してみたのだけれど、
実は林超賢監督の過去の作品には出ていないような…。
もしかして、本作品が初の林超賢監督作品…?だとしたら意外。
これを機に、将来は主要キャストで出演することになるかも…?





ラストは、中国の護衛艦が「ここは中国の領海、外国船舶は直ちに出て行きなさい」
と警告しながら南シナ海を走行し、プロパガンダのお役目を果たし、映画は幕を下ろすのだが、
この海がもう少し東にズレた場所だったら、日本で大騒ぎになり、上映が困難になっていたかも知れない。
(もっとも、大騒ぎになる程この映画は注目されていないでしょうか。)

「これまで映画を撮ってきて、今回が一番満足を得られた」と語る林超賢監督。
でしょうねぇー。作品を観て、監督の興奮が伝わってきた。
林超賢監督は、根っからのミリタリーマニアなのであろう。
日本にも、リモコンやプラモデルが大好きな少年なら沢山いる。
そういう少年が大人になり、おもちゃではなく、本物の戦車や軍艦を自分の意のままに動かせるとしたら、
そりゃー大興奮でしょー。
林超賢監督にとっては、
低予算で細々と香港映画を撮っていた頃には叶えられなかったであろう壮大な趣味映画。
この映画は、ミリタリーマニアによる、ミリタリーマニアのためのミリタリー映画ヨ。
現地と同じように、IMAX 3Dで上映されたら、マニアの興奮はさらに高まったであろう。

そんな訳で、そういう物にまったく興味の無い私には、2時間半は長過ぎた…。
せめて、もう少し人間ドラマを描いてくれていたら、楽しめたかも知れないが、
この映画、群像劇にもかかわらず、一人一人の登場人物の掘り下げ方が、非常に浅い。
だから、それぞれのキャラクターに対し、特別な思い入れが沸きにくかった。
似たタイプの作品だったら、『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(2017年)の方がまだ観易かったかも。
(実のところ、私にとっては両作品に大差は無いのだけれど、あちらの方が20分短いし…。)

中国映画週間で、黃景瑜と海清が舞台挨拶をすると早々に知っていたら、その上映で観たかった。
すでに観てしまった今、もう一度これを2時間半観るのは、あまりにもキツイ。あぁ、残念…。

祝・金城武御生誕記念♪

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本日10月11日は、我が愛しの金城武御生誕記念日。
1973年生まれの金城くん、45歳になりました。
どんどんイイ具合に熟してきております。

ただねぇ、芸能人らしく表に出て華やかに振る舞う事を相変わらず好まず、消息はほぼ不明状態。
金城武って、もしかして架空の人物、もしくは想像上の生き物なのではないか?!と思えてくるほど、
地上のどこかで生活をしている痕跡が無い。



そんな訳で、これといった新情報は無いのだけれど、比較的最近の活動を挙げておくと…

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まず、2001年、金城武を主人公・左馬介のモデルにして作られたカプコンのPS2用ゲームソフト『鬼武者』が、
2018年末から2019年初頭にかけ、PS4、Nintendo Switch、Xbox等、新たなハード向けに再発売。
内容は以前と同じままだが、グラフィックが高解像度化されたり、日本語ボイスが再収録されている。
で、主人公・左馬介の声は、やっぱり金城クン自身が再び声を吹き替えているの。



ゲームをまったくやらない私には、出演映画の方が待ち遠しい。
ちょうど一年前の今日、金城武44回目の御生誕記念日に、こちらの記したように、
金城クンの最新作は、麥浚龍(ジュノ・マック)監督の『風林火山~Sons Of The Neon Night』。
2018年3月末、クランクアップし、2019年に公開が予定されている。

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こちらは、金城クンがクランクアップした際の祝い酒。
画像左から、麥浚龍監督、林俊賢(ウィルソン・ラム)、そして金城武。
金城クンは、撮影初日から2017年末までの参加。

この映画、広東省惠州の製鉄所内に本物と同スケールで作った香港・銅鑼湾の街並みに雪を降らす等、
幻想的なシーンもあり、ひと味違うカッコイイ犯罪ドラマになっていそうな予感がして、期待大。
共演は、古天樂(ルイス・クー)、劉青雲(ラウ・チンワン)、梁家輝(レオン・カーフェイ)、
高圓圓(カオ・ユエンユエン)らと豪華だし、日本でも公開されると信じたい。



あと、余談になりますが、最近富察皇后役で出演したドラマ、
延禧攻略~Story of Yanxi Palace』が思わぬ大ヒットとなり、益々人気の大陸女優・秦嵐(チン・ラン)が、
香港に赴き、インタヴュで、理想のタイプを聞かれた時、
「子供の頃から金城武が大好き。機会があるなら、ノーギャラでも共演したい」と照れながら語っております。
ちなみに、(↓)こちらが、秦嵐扮する富察。

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ぎゃあーっ、負けたぁーーーーっ…!
(争う気だったのか?!と呆れられそうだが。)



では、改めて、金城武サマ、人知れずひっそりと、御生誕記念を祝わせていただきます。
今年も金城クンにとって素晴らしい年でありますように。
『風林火山』の公開にも期待!
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