第71回カンヌ国際映画祭で、パルム・ドール受賞のニュースも記憶に新しい
是枝裕和監督の最新作『万引き家族』が、いよいよ公開。
公開2日目の2018年6月9日(土曜)、東京と大阪で記念の舞台挨拶をやるという。
早い内に観に行きたかったので、「どうせなら…」と、舞台挨拶付き東京会場のチケット争奪戦に参戦。
午前11時の回と、午後2時25分の回の二回あり、私の狙いは前者。
週末は朝寝坊したい人が多いだろうから、きっと午前の方が取り易い、
…なんて考えたけれど、あまり関係なかったかしら?
やはりカンヌ効果もあるのか、販売サイト上の座席がみるみる埋まっていくのだが、なんとか席を確保。
私の理想の良席とはちょっと違うけれど、最悪でもない。
しかも、随分前に買って持っていたムビチケが使えたので、つまりはお値段1400円也。
話題作で舞台挨拶付きなのに、良心的です。
★ 会場
東京会場は、TOHOシネマズ六本木ヒルズ。
私が好んで行く映画館ではない。利用するのは、東京国際映画祭の時くらい。
今回使用するのは、ここでは一番大きなスクリーン7で、収容約520人。
私の席は、前から6列目のF列。
映画鑑賞だけなら、もっと後方が良かった…。しかも隅っこの方。
でも、まぁ、座席の手前が通路になっているので、映画鑑賞も舞台挨拶鑑賞も、割りとし易い気がする。
客層はねぇ、うちの母が「『万引き家族』観たいの~」と言っていたくらいだから、年齢高めかと思いきや、
意外と若い人が多い。
売れ筋のチケットをネット上で確保するには、それなりの“慣れ”が必要だから、高齢者には難しいのかも。
一番若い子は、親と来ている小学生で、私の周りには、大学生っぽい子が結構いた。
★ 『万引き家族』公開記念舞台挨拶
私が行った1回目の舞台挨拶は、映画の上映終了後。
午後1時20分頃、司会進行役のフジテレビ宮司愛海アナが、注意事項などを簡単に説明した後、
一人一人名を呼ばれた順にゲスト登場。
気になる本日の登壇者は、是枝裕和監督をはじめ、
出演のリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優、池松壮亮、
そして子役の城桧吏と佐々木みゆで、計8名。
映画の中ではボロを身にまとっている一家だけれど、
公開記念の舞台では、特に女性陣は華やかに装っております。
樹木希林は、白シャツ+黒のジャケット&パンツという毎度のブレない“希林ルック”だが、
松岡茉優ちゃんは、若い女の子らしく、赤のシフォンのワンピース、
安藤サクラは、“パルムドール(金のシュロ)”受賞作の舞台挨拶らしく、ゴールドのスリップドレス。
肩から胸を覆う黒のシフォンの透け感がセクシー。
(作中、スリップ姿で、お素麺を食べるあのシーンも、ちょっと彷彿。)
ちなみに、足元は、松岡茉優がプレーンな黒のカーフのクリスチャン・ルブタン、
安藤サクラはTABIシリーズの真っ赤なマルタン・マルジェラであった。
「小さく生んで、小さな声で届けようと思ってスタートした作品でしたが、
結果的に、こんなに広く遠くまで届けられることになったのは、スタッフやキャスト、皆のお陰です」
という是枝監督のご挨拶でイベントはスタート。
以下、気になったやり取りを幾つか残しておく。

カンヌ以来、また家族に再会できました。
今日、池松壮亮さんまで来てくれるとは知りませんでした。
彼氏をようやく家族に紹介できます。“4番さん”でーす!

将来の見込みが無さそう。幸せにならない相手だね。

ちょっとしか出ていないのに、来ちゃって…。
この作品は、観終わった後、すごく興奮して、是枝さんに握手を求め、
図々しいんですけど、「カンヌ獲ってきて下さい!」と言っちゃいました。
そうしたら、本当にカンヌでとんでもないお土産をとってきてくれて。
平成生まれとしては、平成の終わりにこんな事が起き、とても嬉しいです。

“平成”で思い出しましたが、今度天皇陛下になられる方の結婚式って、今日だったんですよ、6月9日。
なんで覚えているかと言いますとね、“ロック”だから。

是枝組で過ごした時間は短くて穏やかなのに、所々でとんでもない興奮や爆発が起きるんです。
ここにいる皆さんは凄い方々なのに、納豆ご飯みたいな感じで。
何て言っていいのか…、キャビアを食べているのに、納豆ご飯のような。

すみません、いつもこんな感じなんです。

カンヌは、世界中の映画関係者が、色んな思いやお金をかけてやって来る、本当に凄い所なんですよ。
正月も何もなく、寒くて、汚い中、撮影して、あんな貧しいのが、ひょいと賞を獲ったのは、偶然じゃない。
9歳から28歳まで団地にしか住めなかった方で、貧しさじゃ右に出る者がいないのに、
それで世界に認められたのは快挙です。
これが映画の作家性。皆、監督には感謝しております。

好きなシーンは、土砂降りの雨の中、子供たちが駆けてくると、家では見事なセックスシーン。
冬にあんな雨を降らせて、子供を走らせるなんて、児童虐待ですよ。

いえ、あれは夏で、本当に雨が降ったんですよ。
それで、脚本をああいう風に書き換えたんです。
終盤、子役の佐々木みゆちゃんから、監督にプレゼントの贈呈。
プレゼントは、佐々木みゆちゃん手作りの“パルム・ドール”。

何で作ったの?

段ボールと、折り紙と、のりとハサミと、普通の紙と、あと、葉っぱは、みゆのうちの葉っぱ。

あら、庭のある家に住んでいるの?
(さすがは、不動産に敏感な樹木希林ならではの返し …笑!)
ちなみに、(↓)こちらが本物のパルム・ドール。ショパール製です。
元は、ジャン・コクトーのデザインだったが、1998年にニューデザインに変更。
新たな物は、ショパールのアーティステックディレクター、キャロライン・ショイフレによる。
素材は、18Kイエローゴールド。
佐々木みゆちゃんは、パルム・ドール本体のみならず、
それを収納するケースもちゃんと再現していたのですね。
「本物はプロデューサーに渡し、私はこれを取っておきます」と嬉しそうな表情の是枝監督。
最後は、是枝裕和監督が、「『万引き家族』は納豆ご飯のような映画です。
だから、毎日でも食べられるし、観る度に味わいが変わると思います」
と安藤サクラの言葉に絡め、締めのご挨拶。
その後、5分ほど、メディア向けのフォトセッションがあり、午後1時50分頃、30分程の舞台挨拶終了。
会場中に漂う「カンヌ受賞おめでとう!」の温かい空気を肌で感じる良いイベントであった。
要所要所で毒を吐く、マイペースな樹木希林は、やはりムードメーカー。
映画とは直接関係ないけれど、
次期天皇皇后両陛下の結婚記念日が、6月9日ということは、一生私の記憶に残りそう。
ちょっと心配なのは、
その樹木希林が、片手で杖をつき、是枝裕和監督に支えられながら、ステージに上がったこと。
よく自分で「全身癌」だの「死ぬ死ぬ詐欺」だの言っているけれど、大丈夫なのだろうか。
肝心な映画『万引き家族』の詳細は、また後日。
私は、とーーーーっても気に入りました。
上半期で、2018年度一番の日本映画を観ちゃったかも、…と思っている。