【2018年/中国・モロッコ/143min.】
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2015年、アデン湾、ソマリア沖。
“海賊横丁”と呼ばれるこの海域で、
中国海軍所属の精鋭・蛟龍突撃隊は、海賊から襲撃を受けた中国商船を無事救出するが、
間も無くして今度は、内戦が続くアフリカ北部イウェア共和国で、テロ組織が首都を攻撃し、
現地にまだ中国人が取り残されているとの情報が入る。
隊長の楊銳をはじめとする蛟龍突撃隊の8人は、
最後の一人まで絶対に救出すると意を決し、危険地帯へ飛び込んでゆく。
一方、核原料イエローケーキの取材を続けるフランスの華人ジャーナリスト・夏楠は、
グリーンビレ・エナジー社の社長ウィリアムが、テロ組織と接触しているとの情報を得、
助手のアブを伴い、真相究明に乗り出すが…。
林超賢(ダンテ・ラム)監督、『オペレーション・メコン』(2016年)に続く最新作。
メコンの次は紅海でオペレーションです。
“世界最驚!中国‘空海’軍”と銘打ち、『スカイハンター 空天猎』(2017年)と同時に日本で公開。
こちらの『オペレーション:レッド・シー』は、海軍の方。
日本にもミリタリーマニアは結構居るから、
“広く一般向け”とはいかなくても、ニッチな需要は有るのかも知れない。
どうせだったら、陸軍映画も加え、3本同時公開すれば良かったのに。
陸軍モノは、目ぼしい作品が無かったのでしょうか。
私自身は、この手の映画には興味が無いのだけれど、
どうせなら大きなスクリーンで観たいと思い、シネマート新宿のスクリーン1で上映する日時を狙っていたら、
なかなか予定が合わず、どんどん先延ばしになり、この度ようやく鑑賞。
本作品は、内戦が激化する中東のイウェア共和国に在留する多くの中国人が脱出する中、
取り残された最後の一人をも救うべく、
人民解放軍海軍の蛟龍突撃隊8人が危険地域に果敢に飛び込む救出劇を描くと同時に、
フランス華人記者・夏楠からの情報で、核原料がテロ組織に渡るのを阻止するため、
命懸けで戦う様をスリリングに描くミリタリー・アクション超大作。
本作品は、実際に起きた出来事から着想を得て作られている。
2015年3月末、内戦の続くイエメンで、人民解放軍海軍のフリゲート艦が、
自国民571人と外国人225人を救出した出来事がソレ。
“也門撤僑(イエメン居留民救出)事件”と呼ばれ、あちらでは広く知られるようだ。
映画では、舞台となる内戦の続く国家を“イエメン”とは呼ばず、“イウェア”という架空の共和国に設定。
任務に当たるのは、蛟龍突撃隊。
“蛟龍(こうりゅう)”とは、水中にすむ龍のような架空の生き物、蛟(みずち)のこと。
蛟龍突撃隊は、実際に人民解放軍海軍に存在する特殊部隊。
海軍所属でも、隊員には、総合的に高い能力が求められ、
空中、陸地、海上、そして水中でまで作戦を実行可能、
“海では蛟龍、陸では猛虎、空では雄鷹”と称される精鋭中の精鋭の集まりなのだと。
確かにね、映画『オペレーション:レッド・シー』も海軍の話のつもりで観たら、
激しい陸上戦を繰り広げていた。
中国海軍の支援を受け撮られているから…
057A型護衛艦・臨沂艦などホンモノが登場。
こういう部分も、ミリタリーマニアにとっては見所になるであろう。
物語は、実際にあったイエメン居留民救出作戦からヒントを得てはいるけれど、
事実を淡々と綴ったドキュメンタリーのような作品ではない。
さらに、映画には、もう一つ、核原料・黃餅(イエローケーキ)と“髒彈(汚い爆弾)”の製法が、
テロ組織に渡るのを阻止する壮絶な戦いが描かれる。
蛟龍突撃隊は、上からの命令無しに、自分たちの判断で、正義と地球平和のために敵に挑むのだが、
もちろんフィクションである。
登場人物は大半が軍服姿で、しかも顔がススけているから、見ていて混乱。
それでも、数人をピックアップしておくと…
蛟龍突撃隊隊長・楊銳に張譯(チャン・イー)、
蛟龍突撃隊の狙撃手・顧順に黃景瑜(ホアン・ジンユー/ホアン・ジンギュ)、
顧順とコンビを組む李懂に尹(イン・ファン)、
黃餅の行方を追うフランス華人のジャーナリスト・夏楠に海清(ハイ・チン)、
臨沂艦の艦長・高雲に張涵予(チャン・ハンユー)、
そして、夏楠の上司である編集長アルバートに任達華(サイモン・ヤム)などなど。
林超賢監督の前作『オペレーション・メコン』で主演を務めた張涵予は、今回は特別出演。
離れた場所から指令を出すだけなので、肉体は酷使していない。
本作品で蛟龍突撃隊の隊長を演じているのは張譯。
田舎成り金を演じさせたら中国一だと思っていた張譯だけれど、軍人もイケていた。
いわゆる美男子ではないから、泥臭い役が似合うのです。
泥臭いオッサンなんてイヤ!という人には、話題性のある若い男の子も用意されている。
顧順を演じる黃景瑜は、
大ヒットしたBLドラマ『ハイロイン~上癮』でブレイクした二人の主演男優の内の一人。
ちなみに、もう一人の方は許魏洲(シュー・ウェイジョウ)。
許魏洲の方がカワイイ系で、黃景瑜の方が男くさい印象。
黃景瑜ってねぇ、なんか、今どきの線の細いイケメンとも違い、昭和のニオイがするのよ。
だから、軍人役は結構合っている。
本作品で演じている顧順は、ちょっと生意気というか、トンがった所のある若者。
そんな黃景瑜であるが、本作品の日本公式サイトやポスターには…
残念ながら、“ホアン・ジンギュ”という誤表記で紹介。
なんだか韓流スタアみたい…。ほら、李準基(イ・ジュンギ)みたいな…。
中国語が解らなくても、“ジンギュ”という響きからして、中国人っぽくないと察するでしょうに。
日本の配給会社って、本当にいい加減。
公式に名前を掲載するにあたり、ちゃんと調べたり、翻訳者に確認したりしないのか…?!
劇中、この黃景瑜扮する顧順とコンビを組んで戦うのが、尹扮する李懂。
BLドラマでブレイクした黃景瑜だからなのか、本作品でも相棒はタイプの異なるカワイイ系。
お目々パッチリ、唇ポッテリで、韓国の元斌(ウォンビン)をちょっぴり彷彿。
女性では、十年ほど前、ヒットドラマ『蝸居~Dwelling Narrowness』に出演し、
“國民媳婦(国民的ヨメ)”と呼ばれた海清が出演。
演じる夏楠は、お嫁サマとは全然違い、危険を顧みず事件を追うジャーナリスト。
2005年、ロンドンで起きた同時多発テロで、夫と子供を失った事が、彼女を突き動かしている。
わざわざ中国系フランス人に設定する意味があったのかは疑問。
ちなみに、最近の海清出演作だと…
中華版『深夜食堂~深夜食堂』が日本に入って来ている。
海清が演じているのは、まだ充分若いのにアルツハイマーを発症する母親の役。
あと、日本絡みでもう一本、山田洋次監督作品『家族はつらいよ』の中国リメイク版『麻煩家族』にも出演。
私は未見だけれど、彼女が演じているのは、恐らく、日本版で中嶋朋子が演じている役だと思う。
なお、この海清と黃景瑜は、もう直開催の2018東京・中国映画週間に来日予定。
10月25日(木曜)、この『オペレーション:レッド・シー』上映終了後に、
二人揃って舞台挨拶をするものと思われる。
写真美術館のような小さな会場でスタアを拝めるなんて、広大な中国では有り得ない貴重な体験。
ファンにとっては至福の時になりそうですね~。
お馴染み香港の任達華は、ほんの友情出演程度の登場。
林超賢監督との交流から叶ったサプライズ出演だと漠然と考え、思い返してみたのだけれど、
実は林超賢監督の過去の作品には出ていないような…。
もしかして、本作品が初の林超賢監督作品…?だとしたら意外。
これを機に、将来は主要キャストで出演することになるかも…?
ラストは、中国の護衛艦が「ここは中国の領海、外国船舶は直ちに出て行きなさい」
と警告しながら南シナ海を走行し、プロパガンダのお役目を果たし、映画は幕を下ろすのだが、
この海がもう少し東にズレた場所だったら、日本で大騒ぎになり、上映が困難になっていたかも知れない。
(もっとも、大騒ぎになる程この映画は注目されていないでしょうか。)
「これまで映画を撮ってきて、今回が一番満足を得られた」と語る林超賢監督。
でしょうねぇー。作品を観て、監督の興奮が伝わってきた。
林超賢監督は、根っからのミリタリーマニアなのであろう。
日本にも、リモコンやプラモデルが大好きな少年なら沢山いる。
そういう少年が大人になり、おもちゃではなく、本物の戦車や軍艦を自分の意のままに動かせるとしたら、
そりゃー大興奮でしょー。
林超賢監督にとっては、
低予算で細々と香港映画を撮っていた頃には叶えられなかったであろう壮大な趣味映画。
この映画は、ミリタリーマニアによる、ミリタリーマニアのためのミリタリー映画ヨ。
現地と同じように、IMAX 3Dで上映されたら、マニアの興奮はさらに高まったであろう。
そんな訳で、そういう物にまったく興味の無い私には、2時間半は長過ぎた…。
せめて、もう少し人間ドラマを描いてくれていたら、楽しめたかも知れないが、
この映画、群像劇にもかかわらず、一人一人の登場人物の掘り下げ方が、非常に浅い。
だから、それぞれのキャラクターに対し、特別な思い入れが沸きにくかった。
似たタイプの作品だったら、『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(2017年)の方がまだ観易かったかも。
(実のところ、私にとっては両作品に大差は無いのだけれど、あちらの方が20分短いし…。)
中国映画週間で、黃景瑜と海清が舞台挨拶をすると早々に知っていたら、その上映で観たかった。
すでに観てしまった今、もう一度これを2時間半観るのは、あまりにもキツイ。あぁ、残念…。