Quantcast
Channel: 東京倶樂部★CLUB TOKYO
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

映画『So Young』

$
0
0
イメージ 1
 
【2013年/中国/131min.】
1990年代の中国。
18歳の女の子・鄭微は、憧れ続けてきた幼馴染みのお兄さん林靜を追って京南理工大学に入学。
ところが林靜は鄭微に何も告げずに海外へ留学。失恋に打ちひしがれる鄭微を支えてくれたのは
後に大親友となる3人のルームメイト、阮莞、黎維娟、朱小北。
大学一の美女・阮莞ほどではないけれど、それなりに可愛い鄭微は、男子生徒たちからも注目を集め
楽しいキャンパスライフが始まるが、ある日、そんな彼女を特別視しない陳孝正という生徒と
最悪の出会いを果たす。陳孝正にプライドをズタズタにされ苛立つ鄭微であったが
彼への憎悪はいつの間にか恋に変わり、形振りかまわず猛アタック。
戸惑う陳孝正も次第に鄭微に惹かれていき、ふたりは付き合うようになる。
月日は流れ、学生生活も残り僅か。
就活中の鄭微は、陳孝正が彼女に内緒で、アメリカ留学を決めていたことを知ってしまう…。
 
 
 
大陸トップ女優・趙薇(ヴィッキー・チャオ)の初監督作品が、第26回東京国際映画祭に登場。
公開から現在に至るまで興行成績を伸ばし続けている話題作なので、取り敢えずチケット入手。
こんな御時世なので期待していなかったが、なんと趙薇は来日してくれ、上映終了後にQ&Aを実施。
 
女優としてもう長いこと第一線で活躍している趙薇は、その輝かしいキャリアに甘んじることなく
母校である北京電影學院に再入学し、監督のお勉強を専攻。
多忙ゆえ時間はかかったが、ようやく全課程を履修し、卒業制作として撮った監督処女作が本作品。
辛夷塢(シン・イーウー)による同名小説<致我們終將逝去的青春>の映画化で
プロデューサーを務めるのは、香港の映画監督・關錦鵬(スタンリー・クワン)
この卒制は、開校以来最高の99点という高評価を受けたとのこと。
 
 
 
物語を要約すると、中国1990年代の大学を舞台に、そこで学ぶ鄭微たちの友情と恋愛を描く
時にホロ苦くも輝かしい青春モノ
 
正確に言うと、作品は二部構成で、懐かしき青春時代を描くのは前半。
後半は、登場人物たちの“その後”を描く。
もはや“箸が転んでも可笑しいお年頃”ではなく、社会で揉まれ、現実を知り、どこか冷めている。
それでいて恋愛には相変わらず不器用だから、旧情に縛られたり、焼け棒杭に火がついたり
なんかお昼のメロドラマのような展開も。前半後半で随分異なるテイスト。
冒頭と途中にちょっと挿入されるCG処理されたメルヘンちっくな映像は
「勘弁して…」とゲンナリさせられたが、それにさえ目を瞑れば、前半の方がずっと良い。
 
 
本作品の登場人物たちは1990年代初頭の大学生なので
それでも日本の90年代の大学生と比べると、もっとずっと懐かしい雰囲気。
作品の中には、私がイメージする通りの“ひと昔前の中国の大学生”が描かれており
ゴチャゴチャした学食があったり、学生たちがお洒落とは言い難い古びた寮で共同生活していたり。
寮の狭い部屋には二段ベッドが並び、洗濯物が干してあり、電気調理器を無闇に使うと停電してしまい
レトロなホーローの器で味気なくゴハンを食べる。
壁には、イギリスのバンド・スウェードやアメリカのバンド・ニルヴァーナ、
今は亡き張國榮(レスリー・チャン)、台湾出身の人気女優・王祖賢(ジョイ・ウォン)、
張曼玉(マギー・チャン)主演映画『ロアン・リンユィ~阮玲玉』などのポスターがギッシリ。
スウェードの中国名は“山羊皮”だったのか(これだと起毛していないただの山羊皮と区別されないと思うが)。
 
台湾の『あの頃、君を追いかけた』ほどではないけれど
例えば、大学生たちが遊んでいるゲームが、任天堂のファミコンだったり
作中、あの時代の中国の若者の生活に、日本をちょっとだけ垣間見ることも出来る。
台湾経由で中国に伝わったと思われる“歐巴桑(オバさん)”
和製AVの台詞から知られるようになったと推測される“亞美蝶(やめてぇ~)”といった日本語も
この頃もう中国で使われている。
あと、年配の男性だと歌う歌が(正確には歌っておらず“歌おうとした歌”)、お馴染み<北国の春>
 
 
 
イメージ 2
 
キャストは数人だけに焦点を。
主人公・鄭微に楊子姍(ヤン・ズーシャン)、
鄭微と犬猿の仲から交際に発展する陳孝正に趙又廷(マーク・チャオ)、
突然姿を暗ました鄭微の初恋のお相手・林靜に韓庚(ハン・グン/ハン・ギョン)、
鄭微の親友である布依(プイ)族の美女・阮莞に江疏影(ジャン・シューイン)、
阮莞の同郷の恋人・趙世永に黄明(ホァン・ミン)、
陳孝正に想いを寄せる副学長の娘・曾毓に王嘉佳(ワン・ジャージャー)
 
基本的に配役は、男性側に知名度の高い人気者、女性側にフレッシュな顔ぶれを揃えているという印象。
集客などを考慮し、無名の女優陣を人気の男優陣でカヴァーしようという策だろうか。
例えば、林靜役の韓庚は、元韓国Super Juniorの中国人メンバーで
日本ではそうでもないが、あちらでは抜群の人気を誇る。
 
 
日本ではむしろ陳孝正役で出演している台湾の趙又廷の方が有名であろう。
趙薇は、映画『愛 LOVE』で自分の相手役だった趙又廷を、今回自身の初監督作品に起用。
スッキリ涼しい顔立ちの趙又廷は、“ひと昔前”の青年役に違和感ナシ。
違和感が有るとしたら、一目瞭然のズラ。非常に不自然で、頭部に目が釘付け。
 
イメージ 3
このズラを見ながら、『台北の朝、僕は恋をする』での張孝全(ジョセフ・チャン)のズラ姿を重ね
「これ、付け心地抜群だから君も使いなよ」と張孝全からお古を譲り受けたのかしらとか
同じメーカーのズラかしら、…などと想像を巡らす。
 
 
楊子姍扮する大学時代の鄭微は見た目が
『あの頃、君を追いかけた』での陳妍希(ミシェル・チェン)の普通っぽさに
スレた吉高由里子を足して2で割った感じ。
性格は無駄に勝ち気でウザく、見ていてイラッとさせられる。このキャラ、中国ではOKなの…?
陳孝正が、彼女の押しに根負けし、彼女を好きになってしまった理由が、未だに分からない。
幸い、後半、大人になると大分落ち着く。髪をワンレンにした大人の鄭微は
“小S”こと徐熙娣(シュー・シーディー)から毒を抜き、可愛くした雰囲気。
 
歌手でもある楊子姍には、歌を歌うシーンも有る。
大学のイベントで、<北国の春>を歌おうとした副学長を差し置き、歌ったのは…
 
 
日本の大事MANブラザーズバンド、1991年のヒット曲<それが大事>
1992年香港の李克勤(ハッケン・リー)がカヴァーし、中華圏でヒットした<紅日>
「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと~♪」ってアレ。
 
 
それから、陳孝正に想いを寄せる曾毓に扮する王嘉佳は、まぁ、すごく大きな役ではないけれど
未だ日中関係が好転しない今年も東京・中国映画週間のオープニングセレモニーのために
来日してくれたので(→参照)、ここに出しておく。
今年のセレモニーでは、マティスが描く女性をプリントしたワンピースを着ていた。
 
 
 
 
この手の娯楽作品は好みとは言えないけれど、最後までまったく飽きることなく楽しんだ。
いわゆる“卒制”とはレベルの違う完成度。
もっともトップ女優・趙薇は、監督業こそ初めてでも、長年業界に身を置き、映画をよく知っているし
経済力も人脈も潤沢だろうから、一般の学生とは同じ尺では計れない。
映画学科のフツーの学生の卒制に、一流のスタッフや人気俳優が参加してくれる訳が無い。
監督処女作をこのような娯楽作にしたのは、Q&Aでの話から推測するに
次回作に繋げるためにも、まずは興行的に好成績を残すことが重要との判断があったからで
本当に撮りたいのは、アート系作品みたいだ。
思惑通り興行記録は現在進行形で更新していて、趙薇は監督としての実績も築いてしまった。
とても聡明な“できるオンナ”。シビアな映画業界も熟知しているのだろう。
アート系になるという次回作にも期待。
 
 
上映終了後に行われた趙薇(ヴィッキー・チャオ)監督によるQ&Aについては、こちらから。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

Trending Articles