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映画『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』

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【2015年/日本/119min.】
2015年9月。
いつも路線バスで旅をしている太川陽介と蛭子能収のちぐはぐなコンビが、
初めて日本を飛び出し、やって来たのは、お隣の国・台湾。
マドンナに三船美佳を迎えた3人で、台湾最南端の燈台を目指し、早速台北をあとにする。
バスの路線が発達しているという台湾ではあるが、言葉が通じず、勝手も分からず、四苦八苦。
それに3人を何よりも不安にさせるのが、怪しい空色。
なんと、大型台風が台湾に接近しているという予報が出ていたのだ…。



テレビ東京で2007年から放送している人気の旅番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』が
初海外ロケで、なんと映画化されたのが本作品。
“人気の旅番組”などと書いたが、実は私はたったの一度も観たことが無い。
その映画版にもこれっぽっちも興味が無く、お金を払ってまで観るものではないと思っていたが、
伊勢丹に出した靴のお直しを待つ時間を持て余し、近所の新宿ピカデリーでついつい観てしまった。

この映画版は、基本的にテレビ版と同じ。
監督を務めた鹿島健城という人も、2007年の番組開始当時から関わっているディレクターらしい。



本作品を簡単に説明すると、
路線バスだけを乗り継ぎ、3泊4日で目的地を目指すドキュメンタリーでありロード・ムーヴィ

テレビ版と同じように、有名な観光地や名物料理を紹介すること以上に、
制限時間内に目的地に到達することが最重要とされる。
テレビ版にある“旅のルール3箇条”も、同様に映画版に適応。その3箇条とは…

高速、タクシー、鉄道、飛行機、船、自転車、ヒッチハイク等、他の交通機関の利用は禁止。
情報収集でインターネットを利用することは禁止。
ルートを決め、宿泊する宿、撮影交渉など、全て自分たちで行う。

…とのこと。
唯一テレビ版と違うのは、旅の舞台が日本国内ではなく、台湾であること…!



スタート地点は台北、そして目指すは…

イメージ 2

台湾最南端の鵝鑾鼻(がらんび)燈塔!地図を見て分かるように、台湾を本当に南北縦断することになる。
数年前に起きた自転車ブームで、台湾一周にチャレンジする台湾人は激増したと聞くが、
ローカル路線バスだけで南北縦断する現地人は、あまり居ないであろう。

旅のスタートは、2015年9月27日。
一行は、台湾で休暇を過ごす日本人観光客にもお馴染みの、台湾版Suiica、悠遊卡 Easy Cardと地図を手に、
早速南へ向かう。基本的に交渉や調査は本人たちがやらなければならないが、通訳も同行している。

バス路線網が発達していると言われる台湾でも、中長距離は大抵高速バス。
高速にのらず、ローカル路線バスだけで南部へ向かうのは困難だという事は、早々に分かる。

しかし、それ以上の憂いは、この時ちょうど、台風が台湾に接近中だったこと。
初日でなんとか苗栗まで移動するが、台風の進行具合によっては、その後の旅程に大きく影響。
台湾では、台風の進路を見極め、翌日バスを運行するかどうかを、前夜10時に発表するらしい。
その発表がある夜10時は、スクリーンの前の私まで、判決を待つ被告人のようにハラハラ。
一泊目の苗栗ではその瞬間、「翌朝バス運行決定!」の知らせに、ホッと胸をなでおろすが、
二泊目の員林では、無情にも翌日の運行停止が宣言されてしまう。
短い3泊4日のロケで、3日目を丸々無駄にしてしまうとは…。
苗栗まで辿り着いた1日目を見て、このペースで進めば、余裕で鵝鑾鼻にゴールすると確信したけれど、
3日目の足止めで、事態は暗転。なぜわざわざ台風シーズンにロケを選んでしまったのか…?!
(もしかして、旅をより波乱万丈に盛り上げるため、敢えて撮影を台風シーズンにぶつけたとか…?
途中通過した嘉義では、映画『KANO』の紹介とともに
「あの嘉農の選手たちのように、最後まで諦めない精神が大切」といったナレーション。
“重要なのは結果ではなくプロセス”と言わんばかり。
この時点で、私は、“鵝鑾鼻にはゴールインできない”という残念なエンディングに覚悟を決める。

そして迎えた最終日の4日目、一行は結局どこまで進めたのか、奇跡は起きたのか?!に注目。


色々ルールの多い本作品だけれど、観光や食レポも、まったく無いわけではない。
有名な観光スポットや、有名レストランには立ち寄らないが、それゆえ、よりありのままの台湾を覗ける感じ。
例えば、員林のレストランでしたっけ?夕食に提供されたひと皿、なんともジャンクなエビマヨに私の目は釘づけ。

イメージ 3

↑これこれ。この画像だと分からないけれど、
実はエビマヨの上に、カラフルなチョコレートスプレーがトッピングされている。
お世辞にも趣味が良いとは言い難いこういう料理を出すレストランは、
自分では積極的に行きたいとは思わないが、とても台湾らしいと感じる。


こうして終えた3泊4日台湾の旅。
この間、彼らが乗った路線バスは23本、かかったバス代はNT$500(7500円)とのこと。
やはり台湾は日本に比べ交通費が断然お安い。
NT$1=JPY4で計算しているようなので、現在のレートなら、さらに安くあがるであろう。




イメージ 4

出演は、太川陽介蛭子能収がレギュラーメンバーで、
そこに毎回一人のマドンナを加えた3人で旅をするのがお約束らしい。
初の映画版でマドンナに抜擢されたのは、三船美佳

これまで太川陽介には、明るく自虐的に「ルイルイ♪」と言っているイメージしか無かった。
この映画では、慣れない土地でのロケだの、天候不良だので、さすがに顔に疲労困憊の色が隠せず、
案外“年相応の普通のオジちゃん”という一面を垣間見た。

太川陽介の疲れを加速させるもう一つの要因は、空気を読まない蛭子能収の言動ではないだろうか。
蛭子能収は決して悪い人ではない。でも、ナンなのでしょう、人を軽くイラッとさせるあの雰囲気は。
映画鑑賞中、知らず知らずの内に私は太川陽介に乗り移り、
蛭子能収がどーでもいい事を口走る度に、神経をピリッとさせたのであった。
そんな蛭子能収ではあるが、今回ひとつ特技を披露。なんとビニール傘の修理が得意なのだ。
今まで、壊れたら捨てるしかないと諦めていたビニール傘を、あんなに上手に直せる人が居たなんて…!
尊敬に値する特技です。

三船美佳に関しては、これまで良くも悪くもあまり印象が無かった。
…が、この映画では、非常に好印象。
疲れ切った太川陽介と、人の神経を逆撫でする蛭子能収という二人のオヤジ衆の中で、
明るく笑顔を振りまくマドンナ三船美佳に、私は何度癒され、救われたことか。
もし私が男性なら、三船美佳と結婚したいとさえ思った。

そんな三船美佳、彼女は確かインターナショナルスクール出身で、英語は喋るハズよねぇ…?
英語でやり取りすれば簡単に済む事も多いはずなのに、本作品の中では、あまり使っていなかった。
庶民的なイメージを保つためや、作品をより面白くするために、英語は意識的に封印しているのだろうか。

そんな訳で、台湾の人々との交渉には、一番モタモタした蛭子能収までもが駆り出される。
案外やる気が有って、出発前、「公車站在哪裡?(Gōngchēzhàn zài năili?バス停はどこですか)」という
中国語フレーズまで覚えてきた蛭子能収であるが、これは残念ながら、ほとんど通じていなかった。
ホテルの客室確保には英語も駆使。いつも“シングルルーム3室希望”という意思を
「ワン・ピープル、ワン・ピープル、ワン・ピープル、スリー・ルーム」というかなりいい加減な英語で伝えるのだが、
これは不思議と理解されていた。




まったく期待しておらず、どうせ時間潰しと割り切って観たこともあり、
意外にもスリリングな展開に、どきどきハラハラしながら、結構楽しんでしまった。
でも、じゃぁ人にお薦めしたいかと聞かれたら、う~ン、どうでしょう…??
わざわざ1800円払ってまで観るべき作品と言えるかどうか…。
どうせ数ヶ月後にはテレ東で放送されていそうだし(笑)。
テレビで観るなら、台湾を紹介する他の旅番組と切り口がちょっと違うから、多くの人が楽しめそうな気がする。

上映館は、どうせガラガラだろうと想像していたら、そこそこに人が入っていた。
近年台湾は、女子大生から主婦まで、日本人女性に人気の旅行先になっているので、
映画館の観客も女性が大半かと思いきや、そのほとんどは高齢の男性。
テレビ版『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の視聴者層が、ちょうどこのおじいちゃまたち辺りなのでしょうか。
この映画版は、お茶の間のファンを映画館に呼び寄せる事には、ある程度成功したかも知れないけれど、
観客の大半はシニア割り引きが適応される層で、満額は払っていないと想像いたします。

ちなみに、本作品の売り上げの一部は、2月6日に台湾南部で起きた地震に、義援金として寄付されるそう。
寄付だと思えば、ゆくゆくテレ東で放送されるにしても、その前に映画館で観るのも悪くないかも知れない。

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