現代の中国。骨董店のひとり娘・洛晴川は、
父亡き後、店を支えてくれている林非凡との気乗りしない婚約パーティーの最中、
風に舞う一枚の古い美人画に導かれ、いつしか辿り着いた森の中で、
不思議な光の中へ引き込まれてしまう。
ふと気付くと、周囲に広がっているのは、見慣れない光景。
なんと晴川は、康熙帝が天下を治める清の時代、1708年に迷い込んでしまったのだ…!
晴川が偶然舞い降りたのは、花魁を決めるコンテスト会場。
たまたま持っていた音楽プレイヤーから流れた歌が観衆の注目を集め、計らずも優勝し、
とある高貴な男性に仕えるため、彼の家に連れて行かれてしまった晴川。
その高貴な男性とは、康熙帝の御曹司。晴川は、太子に献上されてしまったのだ。
現代で学んだ歴史から、この太子がゆくゆく廃されることを知っている晴川は
自分を自由にしてもらう事を交換条件に、太子を窮地から救うと宣言し…。
2015年4月、LaLaTVで始まった大陸時代劇『宮 パレス 時をかける宮女~宮/宮鎖心玉』。
月曜から金曜まで、毎日2話ずつの進行はキツかったけれど、
同月月末には全35話の放送を終了。あっと言う間。
★ 概要
大陸のお騒がせプロデューサーでありヒットメーカー、于正(ユー・ジョン)制作の2011年度のドラマ。
監督したのは、于正工作室御用女性監督、香港出身の
李慧珠(リー・フイジュ)。
本ドラマも見事ヒットし、その後、第2弾『宮 パレス2 恋に落ちた女官~宮鎖珠簾』、
第3弾『宮鎖連城~The Palace The Lost Daughter』、さらに映画版『宮鎖沉香~The Palace』まで
“宮系列”として制作されている(映画版は別の監督)。
“時を~かける少女~♪”ならぬ『時をかける宮女』と命名された本ドラマは
そのお題からも判るように、現代人の主人公が過去に迷い込んでしまうタイムトラベルもの、
いわゆる“穿越”と呼ばれるジャンル。
洋の東西を問わず、タイムトラベルを題材にした映画やドラマは数多くあるが
大陸では特に2007年頃から増えだし、歴史の湾曲などを懸念した廣電總局が、穿越禁止のお達しを発令。
まぁ、それほどこの『宮 パレス』をはじめとするその手のドラマが大ヒットしたという事でしょうか。
★ 物語
主人公は、ひょんな事から康熙帝が天下を治める清代にタイムワープしてしまった
現代中国の骨董品店のひとり娘・晴川。
宮女として宮廷に仕えることになった晴川は、慣れない息苦しい日々の中、康熙帝の二人の御曹司、
性格がまったく異なる、冷静な第四皇子と子供っぽい第八皇子に、徐々に惹かれるようになる。
この二人こそ、康熙帝の御曹司たちによる後継者争い“九王奪嫡”の中心人物で、
その争いがどのような結末を迎えるかも知りながら、
時に歴史に逆らい、時に運命を受け入れ、奮闘する晴川の姿を描く
清宮ラヴ・ロマンス。
物語のベースは、清朝・康熙年間後半から雍正年間初期の史実。
具体的には、主人公・晴川が現代から飛んで来たのは、1708年(康熙47年)春の暮れ。
それから諸々あり、1722年(康熙61年)12月、康熙帝の崩御に伴い、雍正帝が即位し、
後継者争いで雍正帝と争った異母弟、第八皇子・胤禩が、爵位を奪われ、“阿其那(=犬)”と改名され、
失意の中、1726年(雍正4年)に病死するまでの年月。
つまり、このドラマが描いているのは、清朝の中の約18年間ということになる。
★ 亜流『宮廷女官 若曦』…?
清代にタイムワープした現代女性が、宮廷にあがり、
康熙帝の息子たちによる後継者争い、九王奪嫡に巻き込まれ、悩みながらも
第四皇子と第八皇子の間で恋に揺れる物語…、って、
『宮廷女官 若曦』の原作は、
![]()
桐華(トンホア)が2005年に発表したインターネット小説<步步驚心>で
それのドラマ化『若曦』は2010年12月にクランクイン→2011年9月に放送開始。
一方『宮 パレス』に原作は無く、脚本を于正が手掛け、
2010年7月にクランクイン→2011年1月末に放送開始。
さすがは于正、対応の速さは中国一!御本家『若曦』を出し抜き、フライングで“早いモン勝ち”をやってのけた。
『宮 パレス』は、好意的に捉えるなら、桐華の小説<步步驚心>に“オマージュを捧げたドラマ”で、
批判的に捉えるなら“パクリ”…?
于正が一応パクリ疑惑を否定しているので、『宮廷女官 若曦』を桐華の小説の“公式ドラマ化”、
『宮 パレス』を“勝手に非公式ドラマ化”とマイルドに位置付けておこう。
実際のところ、『宮 パレス』独自のアイディアも沢山盛り込まれ、“似て非なるもの”に仕上がっているが
小説<步步驚心>に相当インスパイアされちゃった感は、否定できない気がする。
★ 清朝版『流星花園』…?
よく挙げられるもうひとつのパクリ疑惑、…いえ、オマージュを捧げた作品は『花より男子~流星花園』。
現代のセレブ校を清代の宮廷に置き換え、そこに入学/入宮した場違いな平民女子が
お坊ちゃま集団F4/康熙帝の御曹司たちからのイジメに遭うが、そのイジメも実は愛情の裏返しで、
平民女子はやがてお馬鹿だが根の優しい道明寺/⑧様と、寡黙な花沢類/④様の間で揺れる、
…という逞しい雑草のような女の子とボンボンの身分違いの
![]()
シンデレラ・ラヴ・ストーリー。
平凡な自分が大金持ちの男性と付き合うのも、自分のことを二人の男性が奪い合うのも、
女子が夢見がちなシチュエーションで、『流星花園』に限らず、そういうドラマは結構ある気がする。
まぁだから、パクリと言えばパクリだが、
ただ単に、有りがちな女子憧れ恋愛モデルケースのアレンジ版とも言えるかも。
★ キャスト その①:主人公・晴川
楊冪(ヤン・ミー):洛晴川~清代に迷い込んだ現代女性
子役出身の人気大陸アイドル女、ヤンキー、…じゃなて楊冪(ヤン・ミー)。
映画でもドラマでも、出演作はぼちぼち日本に入ってきているけれど、
たっぷり楊冪を見られる作品は、この『宮 パレス』が初めてかも。
そんな訳で、現地での人気の割りに、これまで日本ではさほど知名度が高くなかった楊冪。
中華圏では、北川景子が“日本の楊冪”と紹介されているのをしばしば目にするが…
いざ比べると違うけれど、確かに二人とも同系統の顔立ちか。1986年生まれで、年も同じ。
楊冪は香港の俳優・劉威(ハウイック・ラウ)と結婚し、
昨年女児をもうけ、ひと足お先にママ・ミー(?)になっているが、北川景子はDAIGOとどうなのでしょう。
それはさておき、そんな楊冪が本ドラマで扮する晴川は、
『宮廷女官 若曦』の主人公・張曉/若曦と同じように
ふとした拍子に、現代から清代へ迷い込み、宮中で仕えることになる女の子。
やはり若曦と同じように、康熙帝の御子息、④様と⑧様の間で恋に揺れるが、
最終的に、後の雍正帝④様を選んだ若曦と異なり、後継者争いに敗れる⑧様を選ぶのが晴川。
現代で清朝の歴史を学び、後継者争いの結末を知った上で、
皇帝に即位する④様を選んだ若曦を、少々計算高い女だと感じていたので、
無茶でも「④様は冷酷!⑧様に残された時間が僅かでも、私がその時間で彼を幸せにする!」と息巻き、
⑧様の悲惨な末路を知りつつ、それでも彼を選んだ晴川の方が、同性には嫌われにくい女の子かもねー。
★ キャスト その②:皇位と晴川を巡り火花を散らす愛新覺羅家の御曹司お二方
康熙帝の御子息たちにより後継者争い“九王奪嫡”の中心的人物、
④様・胤と⑧様・胤禩が奪い合ったのは、皇位のみならず女性主人公。
馮紹峰(ウィリアム・フォン):⑧愛新覺羅胤禩~康熙帝の第八子
→『宮廷女官 若曦』:鄭嘉穎(ケビン・チェン)
『若曦』では、皇位も女性も異母兄④様に奪われ、踏んだり蹴ったりだった⑧様。
本ドラマでは、史実通り皇位こそ逃しても、女性だけは辛うじて死守。
でも、そのせいもあり、晴川を忘れられない④様から嫉妬され、置かれた立場は悪くなる一方。
「自分がここに居る限り、兄弟間の争いは終わらない…」と感じた晴川は、⑧様を愛し、守りたいがゆえ、
⑧様の元を離れ、現代に帰る決心をする。
『若曦』では、現代に戻った若曦こと張暁が、④様にソックリな現代人男性と出会い、
時空を超越した赤い糸や輪廻転生を匂わすが、このドラマの⑧様は…
清代で非業の死を遂げたその足で、なんと辮髪のまま現代にやって来ちゃったから、ビックリ…!
当然街中で浮きまくり、「時代劇の撮影か?」と人だかりができてしまう。
![]()
何晟銘(ミッキー・ホー):④愛新覺羅胤~康熙帝の第四子 後に清朝第5代皇帝・雍正帝に即位
→『宮廷女官 若曦』:吳隆奇(ニッキー・ウー)
『若曦』の④様は、男性側の最重要登場人物であるが、
本ドラマでは、女性主人公が異母弟⑧様になびいてしまうため、脇役扱い。
康熙帝崩御で、清朝第5代皇帝・雍正帝に即位するのは、『若曦』と同じで、史実通り。
ただ、本ドラマでは、⑧様、もしくは⑭様が次期皇帝有力候補と目されていたので、
最後の最後、康熙帝が「ワシはずっとお前を後継者と心に決めておった」と④様を御指名して死ぬという
大ドンデン返しは、いささか唐突で、説得力にも欠け、肩透かしを食らった気分。
いっそ、“遺詔に書かれていた‘十四’の‘十’の字を‘于四’に書き換える小細工で、弟⑭様から皇位を奪った”
という雍正帝即位にまつわる黒い噂を採用した方が、物語が面白くなるし
④様もダークな新皇帝として、もっと印象に残るキャラクターになったのでは。
演じている男優は、『若曦』の吳隆奇も、『宮 パレス』の何晟銘も、どちらも私の好みからは外れている。
でも、好みかどうかは別にして、何晟銘の顔は非常に個性的で、
他の“今どきイケメン”とも完全に差別化ができ、今後も益々彼の強みになっていく気がする。
★ キャスト その③:愛新覺羅家のその他の高貴な殿方たち
『若曦』と異なり、本ドラマの康熙帝の御子息たちは、一部を除き、大変影が薄い。
しかも、中国語の台詞では、「九弟」だの「十三阿哥」だのと呼ばれているにもかかわらず、
日本語字幕では、それさえも端折られている場合が多いので、
最後まで誰が何役かよく分からなかった視聴者も結構居るのでは。
湯鎮業(ケン・トン):康熙帝~清朝第4代皇帝
→『宮廷女官 若曦』:劉松仁(ダミアン・ラウ)
本ドラマでは、その父・康熙帝。さらに宮系列第3弾『宮鎖連城』では、息子の乾隆帝と、
清朝歴代皇帝を虱潰しに演じ、もはや清宮劇御用達エンペラー男優。
宗峰岩(ゾン・フォンイェン):②愛新覺羅胤礽~不出来な太子 結局父帝もかばい切れず廃太子に
→『宮廷女官 若曦』:張雷(チャン・レイ)
出番が少ない上、終始悪役だった『若曦』の②様に比べ、
本ドラマの②様は結構登場シーンが多く、特に物語前半では、重要な役。
太子を廃されてしまうくらいなので、無能であることは両作品共通だけれど
意地汚い『若曦』の②様と違い、こちらの②様は単純(良く言えば素直)で、決して悪人ではない。
付き合うなら、根性の腐ったキレ者より、素直なお馬鹿の方がずっと信用できる。私、この②様、嫌いじゃない。
馬文龍(マー・ルーロン):⑨愛新覺羅胤禟~異母兄⑧様と仲良し
→『宮廷女官 若曦』:韓棟(ハン・ドン)
すっかり見直してしまった馬文龍であるが、このドラマでは、お調子者に逆戻り。
私の彼への愛も、潮が引くように、スーッと消えた…。
韓棟扮する『若曦』の⑨様ほど陰湿でないのが救い。
劉濱(リウ・ビン):⑩愛新覺羅胤䄉~異母兄⑧様と仲良し
→『宮廷女官 若曦』:葉祖新(イエ・ズーシン)
『若曦』の⑩様は、お馬鹿で子供じみていても、お茶目でそれなりに好かれるキャラクターとして確立しているが
本ドラマの⑩様は、いつも行動を共にしている⑧様、⑨様の蔭に隠れ、まったく目立たない存在。
活躍もしなければ、大失態も犯さず、作中、最も影が薄い御曹司かも知れない。
田振崴(ティエン・ジェンワイ):⑬愛新覺羅胤祥~異母兄④様と仲良し
→『宮廷女官 若曦』:袁弘(ユアン・ホン)
『若曦』の⑬様は、一応“チーム④様”の一員ではあるけれど、世俗を離れた知的な文人タイプで、
争いには必要以上に足を突っ込まず、主人公・若曦とも男女の性別を越えた友情を築く。
このキャラクター設定と、演じる袁弘、共々もろ私好みであった。
一方、『宮 パレス』の⑬様は、当の④様以上に“④様押し”に必死で、
④様を次期皇帝にするためなら、汚い事もしてしまう。こういうガツガツした男、苦手…。
『若曦』と『宮 パレス』の⑬様対決は、迷うことなく『若曦』が圧勝。
茅子俊(マオ・ズージュン):⑭愛新覺羅胤禵~④様の同母弟 生母・妃から溺愛 素言に片想い
→『宮廷女官 若曦』:林更新(ケニー・リン)
本ドラマの⑭様は、『傾城の皇妃~傾世皇妃』で林心如(ルビー・リン)の弟・馬度雲を演じた茅子俊。
⑭様を演じるこのドラマを観ていても、しれーっと悪事を働き、
何食わぬ顔をするあのコザカしい度雲が重なってしまい、人格をついつい疑ってしまった…。
今回演じているこの⑭様は、ずっと都を離れているため、ドラマ終盤まで目立たない存在。
ただ、本人が登場しなくても、生母・妃の態度からは溺愛されていることが明らかで、
同母兄④様の嫉妬の対象になっている。
残念ながら、今回の茅子俊は、ややオーラに欠け、
ドラマ終盤次期皇帝最有力候補に急浮上するほどの人物には見えなかったし、
両親を盲目にするほどの何らかの魅力も、ほとんど感じられなかった。
あまりにも魅力的だった林更新扮する『若曦』の⑭様とは、比べ物にならないほど希薄な存在感…。
『若曦』と『宮 パレス』の⑭様対決は、『宮 パレス』が惨敗。
★ キャスト その④:後宮の女たち
佟麗婭(トン・リーヤー):素言~④様が宮廷内に送った間諜
新疆出身、錫伯(シベ)族の女優・佟麗婭は、エキゾティックな美人さんではあるけれど、このドラマでは…
清代に有るまじき白っぽいパステルピンクのメイクで一人浮きまくり。
扮する素言は、④様が宮廷内に送った間諜。表向きは宮女の身分で、蔭で④様のために一生懸命働くが、
愛する④様は結局自分を妻として迎え入れてくれず、失意の中死亡。…したと思ったら、
仕立て屋の小春に助けられ、命拾い。小春を年羹堯、自分を年羹堯の妹とでっち上げ、
今度こそ④様に嫁ぐことに成功!
④様・雍正帝の側室で、兄・年羹堯の権力を笠に着て、後宮で幅を利かせた女性といえば…
年妃を、“④様を愛するあまり身分を詐称して宮廷に戻ってきた元間諜”とするとは、大胆な解釈。
しかし、『宮廷の諍い女』であまりにも鮮烈な印象を残した蔣欣(ジャン・シン)扮する華妃(年妃)に比べると
本ドラマの佟麗婭版年妃は、魅力にも迫力にも欠ける。
劉雪華(リウ・シュエホア):妃~康熙帝の妃 ④様・⑭様の生母 下の息子⑭様を溺愛
お馴染み劉雪華が今回扮する妃は、
足の引っ張り合いが当たり前の後宮には珍しい、誠実で優しく出しゃばらない良妻賢母。
…だと思っていたら、控え目で無欲に見せるのも実は計算であった。
ドラマ前半がまるで聖母だっただけに、中盤以降、たまにボソッと呟く邪悪なひと言からは、
終始毒づいている極悪人より、よほど腹黒さを感じさせる。
もっとも、そうなってしまうのは、溺愛する息子⑭様を皇帝にしたいがため。
可愛い我が子のために盲目になってしまうのは今も昔も母親の性で、
完璧な良妻賢母より人間味のある役かも知れない。
邵美(マギー・シュウ):良妃~康熙帝の妃 ⑧様・胤禩の生母 実は…
得意の武芸を披露している時、たまたま通りがかった康熙帝の目に留まり、
「しなやかな動きが王羲之の書にも勝る」と見初められ(←さすがは皇帝、平凡な男とは惚れポイントが違う)
寵愛を受けるも、その後色々あり、承乾宮に籠りっぱなしで、ドラマに登場しないため、
妃に比べ、影が薄いが、終盤一気に存在感を増す。
だって、なんと、清川のみならず、この良妃も、実は清代に“穿越”した現代人だったのですもの…!
しかも現代での生業は刑事…!!
![]()
拳銃を構えて犯人を追う姿は、香港映画で見る邵美のまんま。
そういう現代パートで見ると、普段通りの邵美も、清代パートで見ると、ぽっちゃり気味のオバちゃん。
政治家・鳩山邦夫の妻・エミリっぽくなっている(勿論若い頃のエミリではなく、オバちゃん化してからのエミリ)。
当初、太ったのかと思ったが、そうではなく、恐らく古裝が似合わないのだと思う。
この良妃は、想定外に面白いキャラクターであった。
なんと言っても、清宮ドラマ初の“側室刑事(デカ)”ですから…!
郭羨妮(ソニア・クォック):僖嬪~康熙帝の妃 なかなか子に恵まれず 康熙帝の気を引くことに必死
他の嬪妃に比べ、若く綺麗な僖嬪だが、子供がいないため、将来が不安。
康熙帝の寵愛を受けようと必死に努力するも報われず、遂には仕立て屋・小春を逆レイプし(!)、
妊娠、そして出産。ところが、辻褄を合わせるために服用した早産を促す薬の副作用で、激しい脱毛(!!)。
宮女を襲い、奪った頭髪で、なんとか体裁を繕うが、
有ろう事か、皇帝の前でコケた拍子に、ズラが外れるという前代未聞の緊急事態発生(!!!)。
ズラがバレるという珍事で、冷宮送りになった妃なんて、宮廷ドラマで初めて見た。
徐麒雯(シュー・チーウェン):金枝~④様の正室 費揚古の養女で実の父は隆科多
かつて馮紹峰(ウィリアム・フォン)とも恋の噂が立った女優さん。
扮する金枝は、隆科多(ロコンド)が外で作った子供で、表向きは費揚古(フィヤング)の娘。
④様は、隆科多を味方につけるため、愛してもいないこの金枝を妻に迎える、という設定。
“費揚古の娘”で“④様の皇后”であることから、孝敬憲皇后がモデルと言われている。
孝敬憲皇后は、
『宮廷の諍い女』で、雍正帝が最も愛した亡き皇后・純元皇后として名前だけ登場。
蔡少芬(エイダ・チョイ)扮する雍正帝の皇后は、故・純元皇后の異母妹で、
姉亡き後、姉に代わって皇后の座に就いたという設定であった。
つまり、『宮 パレス』の金枝は、『宮廷の諍い女』には登場しない、蔡少芬の亡きお姉さんって事。
徐麒雯が演じる金枝は、④様を心底愛するゆえとは言え、嫉妬深く、浅はかで、かなり面倒な女。
ケチな意地悪をしたり、頬にエクボが出ることから、『マッサン』での相武紗季がダブった。
★ キャスト その④:その他の男たち
王翔弘(ワン・シャンホン):顧小春~仕立て屋の息子から年羹堯に
晴川にさえ出逢わなければ、小春は仕立て屋として平凡でも静かな人生を送ったに違いない。
一方的に好きになった晴川を近くで助けたくて、宮廷に出入りするようになったばかりに、
妊娠したくて仕方が無い僖嬪から逆レイプ。割り切って精子提供だけのつもりが、気が付けば、彼女に夢中。
その後色々あって⑧様を恨んでいたところ、
④様を恨む素言と、復讐という共通目標で共鳴し、ビジネスパートナーに。
そして、素言の悪知恵で、なんと年羹堯に成りすますことになる。
雍正帝擁立の立て役者と言われる、あの年羹堯が
実は、元々街の一介の仕立て屋だったという大胆な仮説にビックリ。
任學海(レン・シュエハイ):李全~本名・李安達 康熙帝お付きの太監
大陸時代劇には欠かせないベテラン俳優・任學海。
穏やかな優しい顔立ちにぴったりの、控え目で人柄の良い役が多いように感じる。
本ドラマで演じている李全も、康熙帝に忠実な太監。…が、んン、今回は若干様子が違う。
康熙帝の死後も、次期皇帝のお引き立てを得るべく、後継者争いの情勢を見ながら、
その都度あっちに付いたり、こっちに加担したりと、風見鶏。
ちなみに、この“李全”は、康熙帝に仕える架空の太監として、様々な清宮ドラマに登場。
『若曦』で、立民(ダン・リーミン)が演じている康熙帝お付きの太監も、やはり名前は“李全”。
康熙年間に実在した太監、梁九功や魏珠をモデルにしたと言われているのだとか。
私は、この名を見ると、いつも反射的に、北京ダックの老舗・全聚(ぜんしゅとく)を思い出してしまう…。
郭明翔(グォ・ミンシャン):小順子~李全の乾兒子 雍正帝の妃になった僖嬪を追って宮廷に
小順子は、幼馴染みで、かつての恋人・僖嬪が忘れられず、例え報われなくても、彼女を蔭で支えるべく、
乾爹(義理の父)李全のコネで、太監として宮廷に入る。
復縁不可能な元カノに尽すためだけに、自ら進んで去勢って、ナンなの、その無償の愛…?!
しかも、そこまでしたのに、当の僖嬪からは「愚かな上に、もはや男でもない」と足蹴にされる。嗚呼、無情…。
演じている郭明翔は、雜技団出身なのだと。今でも雜技できるのかしら?
お椀を頭のてっぺんにのせたり、足で挟んだりしながら、身体をくねーっと曲げて、
「粗茶でごさいます」って皇帝に差し出す演技を、ドラマで見たい。
(↑)こんなイメージ。お願い、それ時代劇でやって。
★ あっちゃー、やっぱ于正ドラマ…!
さすがは奇を衒いまくりの于正ドラマ。
今回もリアリティを一切無視した唖然ボー然の演出で、視聴者のド肝を抜く。
色々有るけれど、ここには特に印象に残った2ツを挙げておこう。
ショー演出
妓楼・夢仙居の崖っぷち妓女・紫煙の人気復活の手助けをすることとなった晴川は、
現代のショーをヒントに、豪華な衣装や照明、ゴンドラでの宙吊りといった派手な演出で紫煙を売り込み、
見事観客の心を掴み、彼女の人気を不動のものとする。
これに驚き、晴川の手腕を見込んだ夢仙居の女将は、「他の演出も頼むわ!」と仕事を依頼。
崖っぷち芸人の売り込みからショー演出まで手掛ける総合プロデューサー晴川は、
まさに清代オンナ版ジャニー喜多川or秋元康!
素手でカチ割り氷&即興アクロバティック・アイス・スクラプチャー
康熙帝の関心を、なんとか⑧様に向けさせたくて、晴川が⑧様にやらせた、氷を使ったパフォーマンス。
まずは、暑さで食の進まない康熙帝のために、氷の塊りを素手でガシガシ割って、
文字通り“手作り”の
![]()
カチ割り氷を献上。
さらに、おなかのみならず、目でも満足していただけるよう、
今度は剣を手に、即興で宙を舞いながら、氷の塊りから皇帝のシンボル
![]()
ドラゴンを彫刻!
所要時間ものの数秒。ス、ス、スゴ過ぎます、⑧様…!
こんな一芸があれば、皇族やめても、高級ホテルの宴会部から引く手あまた。
喰いっぱぐれの心配無用。⑧様は案外生活力のある男かも知れない。
★ 主題歌
![]()
主題歌、オープニングは主演女優・楊冪が歌う
<愛的供養>、
エンディングは④様・何晟銘が歌う<見或不見>。
どちらにも特別思い入れはないが、“愛の供養”という仏事じみたタイトルだけに惹き付けられ、
ここにはそのオープニング曲の方を。タイトルを目にしただけで、頭の中に、
“葬り去られた過去の愛に、白いお饅頭をお供えしている”画が思い浮かんできてしまう。
晴川と⑧様が現代で再会し、これからもうひと盛り上がり有るかと思いきや、
映像もBGMもブチッと切れて、何事も無かったかのように、毎度のエンディング曲に突入したのは、
ちょっとしたサプライズ。相変わらず雜な作り(笑)。ここまで視聴者を余韻に浸らせないドラマも珍しい。
非常に軽いテイストで、大傑作とは到底思わないけれど、ツッコミ所が満載で、それなりに面白いことは確か。
では、その『若曦』との比較の結果、どちらが良かったかと言うと、うーン、やはり『若曦』。
『若曦』は、個性の異なる様々な男優を愛新覺羅家の御曹司にキャスティングし、
それぞれに④様、⑨様、⑬様…と番号をふり、女性視聴者が、その番号でお気に入り御曹司を御指名できる
“ホストクラブ紫禁城”システムをとっていた点が、新鮮であった。
この『宮 パレス』の方は、男優のキャスティングにあまり幅が感じられず、
特に⑩様、⑬様、小春、小順子など、似たような丸顔男子を多く起用しているため、
好みが異なるワガママ女性視聴者に対応しきれていないし、何より区別がつきにくい。
(前述のように、日本語字幕で、個々の御曹司をちゃんと番号で区別して表記していないことも問題。)
『若曦』が、一流ホストばかりを集めた都会の会員制高級ホストクラブなら、
『宮 パレス』は、ホストの質には目を瞑り、取り敢えず頭数だけ揃え、
その代わり、アイディア勝負の奇想天外なショータイムでお客を楽しませようとする
下町の気さくなショーパブって印象。
『若曦』が“ホストクラブ紫禁城”なら、こちらはぜいぜい“ショーパブ門前町”くらいかしら。
別にそれが悪いと言っているのではなく、安っぽさも、ここまで奇抜だと唯一無二の個性だと感じるし、
結局のところ、何度も苦笑したり、ギョッとしたりしながら、かなり楽しめた。
LaLaTVで『宮 パレス』を観終えたこの絶妙なタイミングで、DATVが2015年5月3日(日曜)の無料開放日に
宮系列の第2弾『宮 パレス2 恋に落ちた女官~宮鎖珠簾』を1話から4話まで放送。
これは録画しなくては。
LaLaTVの方はというと、平日朝のこの枠は、この後2015年5月4日(月曜)から
『美人心計 一人の妃と二人の皇帝~美人心計』を放送。
もう一度観ているし、主演の林心如(ルビー・リン)は特別好きな女優ではないので、今回はパス。
これで少しはドラマ視聴地獄から解放される…。
(ところで、この『宮 パレス』、オープニングもクロージングも、映像だけで、文字が全く無かったのはナゼ…?
私は中国での放送がどうだったのか確認していないけれど、あちらでも文字ナシだったの…??
もし元々有ったのなら、日本の放送向けに、どうして消してしまったのか?
映画でも、俳優名、スタッフ名、ロケ地、衣装協力、使用曲など、事細かにチェックするのが好きなのに…。
日本で放送する時に、勝手に余計な事はしないで欲しい。)