2017年2月下旬、国立新美術館で始まった展覧会<草間彌生展~わが永遠の魂>。
寒い中、六本木まで足を運ぶのが面倒で、先送りになっていたけれど、
3月末、ようやく重い腰を上げ、鑑賞して参りました。
★ 草間彌生
今さらですが、草間彌生(くさま・やよい)とは。
1929年(昭和4年)、長野県松本市生まれ、
御年88歳の現在も精力的に創作を続ける現代日本を代表する前衛芸術家。
種苗業を営む裕福な家に生まれ、幼い頃より絵を描き始める。
少女時代に統合失調症を発症し、度々襲われる幻覚や幻聴を絵に表したり、
それらから身を守る儀式として、水玉をモチーフに多用。
京都市立美術工芸学校(現・京都市立銅駝美術工芸高等学校)卒業後は、松本の実家へ戻り、絵画を制作。
1957年、渡米。
ニューヨークを拠点に、作品を制作、発表し続けるも、体調を崩し、1973年に帰国。
それからは東京を拠点に、絵画、立体作品、小説などを制作し続け、
現在に至っているのは、皆さま御存知の通り。
元々海外でも作品が紹介されていた草間彌生だが、
2012年、当時マーク・ジェイコブスがデザイナーを務めていたルイ・ヴィトンが、
草間彌生とのコラボ商品を発表したことで、世界中でよりメジャーになり、商業的価値も増したと言えよう。
ほら、ジョージ・クルーニーだって、彌生ちゃん仕様。
動物の擬態(?)、保護色(??)の如く、背景の水玉と同化するクルーニー様。
もっと近場のアジアでも、もちろん知られている。
私が好きな中国の女性フォトグラファー、陳漫(チェン・マン)も、2013年に、草間彌生を撮っている。
微妙に色の違うウィグをいくつか持っているのかしら。この赤もキュート。
(陳漫に関しては、こちらを参照。)
台湾のイラストレーター、保羅先生(Mr.ポール)は、(↓)このようなイラストを。
“拔罐の彌生”(笑)!
草間彌生お馴染みのモチーフ水玉を、カッピング療法(拔罐)に重ねる東洋的な発想に拍手。
★ 草間彌生展~わが永遠の魂:概要
そんな草間彌生をフィーチャーし、国立新美術館でこの度開催の<草間彌生展~わが永遠の魂>は、
日本国内で過去最大級の個展。
大規模個展ならではで、ここへ行けば“アーティスト草間彌生”をザックリ丸ごと知ることができる
草間彌生の集大成的展覧会。
古い物では、まだ少女時代に描いたスケッチに始まり、
故郷の松本時代、ニューヨーク時代、東京時代と、大きく3ツの時代に分け、草間彌生の足跡を追える仕組み。
写真などで見慣れた“いかにも草間彌生”な作品を、実際に見られる喜びもあるけれど、
今回の展覧会では、日本初公開作品も大きな目玉。
それは、草間彌生が2009年から取り組んでいる<わが永遠の魂>シリーズ。
約500点に上る膨大なコレクションの中から、今回は選りすぐりの132点を公開。
★ いざ、国立新美術館へ
混んでいるとは小耳に挟んでいたものの、はっきりした様子は分からないので、取り敢えず早めに現地へ。
私が到着したのは、9時25分頃。
まだ、国立新美術館のメインゲートは閉まっており、敷地内へは入れない。
係員の指示に従い、同美術館で開催中の2ツの展覧会、草間彌生展、ミュシャ展に関係なく、
“チケットをすでに持ってる人”と“当日券を買わなければならない人”という2グループに分かれ、整列。
私は、すでに
チケットを持っていたので、前者の列へ。

9時30分、ゲートがオープン。
“チケットをすでに持ってる人”グループで、建物前まで進み、ここで、草間彌生展とミュシャ展に分かれる。
私は勿論草間彌生展の方。
今度は、このグループだけで、係員に誘導され、会場となる企画展示室1Eの前へ。
あとは、開館を待つだけ。
その間、係員や周囲の人に声掛けし、おトイレに行くこともできるし、
寒い日だったけれど、室内なので、待ち時間が大して苦にならなかった。
(しかも、開館時間がちょっとだけ繰り上げられた。私が、中へ入ったのは、確か9時52~53分頃。)
★ 見学スタート
入ってすぐ、ひとつめの展示室で出迎えてくれるのは、
比較的新しい2014年の作品で、<声明は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時>。
草間彌生が
富士山を描くとこうなります!下方に広がっているのは、河口湖畔らしい。

カンヴァスを3枚合わせ、横幅が約6メートルにもなる大作。
オレンジ色の富士山に、エネルギーを感じる。
★ 大展示室
続く大展示室は、草間彌生が2009年から取り組んでいる連作、
<わが永遠の魂>を一挙132点展示している部屋。
高さ5メートル、奥行き50メートルの大ホールを埋め尽くす色の洪水は圧巻。
実は全部が全部同じ大きさではないらしいが、近年は120号(194cm×194cm)が主流。
まず、正方形のカンヴァスに均一に色を塗り、その上にアクリル絵の具で描いていくらしい。
なんかプリミティヴアートとか、アフリカ辺りのフォークアートのような印象も受けた。
計算無く内から湧き出てくる物が表現されていると思わせる点で、まさに“primitive(原始的)”。
会場の中央を飾るのは、<真夜中に咲く花>、<明日咲く花>、<明日咲く花>という3点の立体作品。

ポップで可愛いけれど、よくよく見ると毒々しい、“グロ可愛い”立体作品。
そうそう、ここは、会場内で唯一
撮影が許されている展示室。

老いも若きもパチパチ撮りまくり。
カラフルなこの空間は、気分を上げてくれ、私も結構撮りました。
★ 作品色々
次の第2展示室からは、撮影不可。
ここからは、松本時代→ニューヨーク時代→東京時代と、順を追って作品を鑑賞できる。
気になる作品は数あれど、最初にハッとさせられたのは、
今回の展示品の中で最も古い1939年の作品、草間彌生10歳の時のスケッチ。
<無題>となっているけれど、母親の肖像らしい。
画用紙の隅に“5年 草間弥生”と書かれている。小学校の授業で描かされた物なのだろうか。
まず驚かされるのは、10歳にして、このデッサン力。やや右寄りにした構図にもセンスあり。
そして、この時すでに、顔にも背景にも水玉模様。
普通の10歳が、母親の似顔絵を描く時、顔中を水疱瘡のような水玉で埋め尽くす?!
しかも、この頃すでに描き始めていた水玉を、草間彌生は90歳近くなった今でも描き続けているのだ。
そもそも80年近く前の小学生の絵が、残されているのも驚き。戦争もあったのに。
「うちの彌生ちゃんは絵が上手い」と、親が大切に保管していたのだろうか。
若い頃の作品には、我々が想像しがちな“草間彌生”とは異なる沈んだ色調の物も多い。
その淀んだ色の中に、ふつふつと内に籠ったマグマのような感情を見て取れる。
その後、アメリカ時代になると、もう現在の草間彌生の片鱗が見え隠れ。
現在に近付けば近付くほど、我々がよく目にする“これぞ草間彌生!”な作品が増えてくる。
例えば、こちら、1995年の作品、<よみがえる魂>。
水玉の変化球ヴァージョンをモノトーンで表現。
実物は、印刷物で見るより、ずっと素敵な作品。

1999年のお馴染みの作品<かぼちゃ>。
南瓜モチーフのもっと新しい作品で、気に入ったのは、(↓)こちら。
2016年の連作<南瓜>。
レリーフのような半立体作品で、南瓜も背景もタイルでびっちり詰め尽くされている。
メタリックに輝く色彩が、お馴染みの南瓜を新鮮に見せてくれる。
他、忘れ難いのが、(↓)こちらのインスタレーション<生命の輝きに満ちて>。
無数のLEDが吊り下げられた、四方が鏡で構成された暗い部屋。

草間彌生が見る幻覚の中に、自分が迷い込んだ錯覚に陥る。
一通り鑑賞し終わると、また最初の大展示室に戻る。この順路はとても良いと思った。
10歳の少女時代から芸術家・草間彌生のお仕事を徐々に追い、
最後の最後でもう一度あの大作を鑑賞し直すことで、
それらが如何に長年の積み重ねで生まれてきた物で、まさに“集大成”であるかが分かり、
やけに腑に落ちるのだ。
★ ミュージアムショップ
今度こそ大展示室をあとにし、ミュージアムショップへ。
決して広いとは言えない空間は、人、人、人で埋め尽くされていた。
ただ、30分、40分待ち当たり前と聞いていたレジでは、まだ午前中だと、特別待たされることは無く、スムーズ。
人を掻き分け、ひとつずつ商品を見るのが面倒になり、ポストカード、トランプ、お菓子のみ購入。
買ったポストカードの内の一枚は、
<わが永遠の魂>シリーズから、特に気に入った黒を背景にした<人類の愛のすべて>。
トランプは、背面が草間彌生の肖像写真で統一され、文字面は一枚一枚全て絵柄が異なる。
★ オブリタレーションルーム
買い物を済ませ、美術館の公共スペースに出ても、まだ一つ<オブリタレーションルーム>が残っている。
これも体験型のインスタレーションで、立派な作品。
入り口で配られるシールを、室内で自由に貼るというもの。
水玉シールで真っ白な空間を“oblitaration(抹消)!”という試み。
小さな子供たちも楽しそうにシールをペタペタ貼っていた。
★ 屋外展示
最後は屋外へ。
2007年の作品<南瓜>。
六本木の片隅にどかんと座った虫食い南瓜の愛くるしいこと!
気分を楽しくしてくれる愛嬌のある姿に、パブリックアートの意味を感じる。
空が曇っていたのだけが残念。真っ青な空の下だったら、黄色い南瓜がもっと映えただろうに。
屋外の展示は、もう一つ。
美術館敷地内の木々も、彌生ちゃん仕様におめかしした<木に登った水玉2017>という作品。
水玉の布を巻いただけで、木がなんでこんなに可愛くなるのでしょう。
私が行った日は底冷えする3月末であったが、もうちょっとすると、ここには
桜がいっぱい咲くので、

とても華やいだ期間限定の素晴らしい“作品”になるはず。
★ オマケ
美術鑑賞後、六本木でのランチのアテが外れたので、
久し振りに新宿タカノフルーツパーラーで、おやつ。
今の季節のお薦めは、どうやら
苺みたいだけれど、私は敢えて“
せとかパフェ”。


爽やかな柑橘系フルーツ、大好き。せとかの次は、清見オレンジになるようだ。
芸術家にも“努力型”と“天才型”があるなら、
草間彌生は間違いなく後者だと、改めて思い知らされた個展であった。
草間彌生の作品には、何か“直感的”な閃きや、計算されていない物がもつ不思議なパワーを感じる。
草間彌生自身が予測不能で、アヴァンギャルド過ぎる唯一無二の存在だしね。
あんな変な人(←褒めております)と、同時代に生きられるなんて、ちょっと嬉しい。
◆◇◆ 草間彌生展~わが永遠の魂 YAYOI KUSAMA:My Eternal Soul ◆◇◆


