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大陸ドラマ『名家の恋衣~抓住彩虹的男人』

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清朝末期の湖州。
美しい絹で知られるこの地でも取り分け有名な染織工房・玲瓏は、
この日、経営者・江文淵の誕生日で、いつにも増して賑わっている。
そこに、多くの部下を引き連れ、乗り込んできたのは湖州督辦の吳宏達。
玲瓏が染織工房を隠れ蓑に、阿片の密売を行っているという通報で、取り調べに踏み込んだのだという。
根も葉もない話だが、彼らは工房内で有るはずのない阿片をなぜか発見。
工房の事務室で、経営者・江文淵と二人きりになった吳宏達督辦は、
この件を穏便に済ませたかったら、秘伝の染織法を渡せと迫るが、江文淵はこの取り引きを拒絶。
江文淵のまだ幼い息子・江余が、この騒ぎを聞きつけ、工房へやって来たその時、
父・江文淵は建物2階から落下し、地面に強く叩き付けられ、息絶える。
江文淵が自殺したことで、阿片密売事件は封印されるが、
玲瓏は国に没収され、江家は全財産を失い、湖州を追われ、工房の従業員たちも解雇となり、職を失う。
長年玲瓏で働き、一家を支えてきた周夫人も、収入を断たれ、貧困に陥った一人。
重病で寝たきりの夫からもう殺してくれと懇願され、涙ながらに手をかけてしまう。
母が父を殺す現場をたまたま目撃してしまった幼い一人息子・周邵天は、心に深い傷を残す。

12年後。
吳宏達が経営する玲瓏は、時代が変わっても湖州一の染織工房として大繁盛。
娘の彩虹も美しく成長。そろそろ年頃なので、信頼する部下の周邵天に嫁がせようと考えている。
その彩虹は、父の誕生日に舶来の万年筆を贈ろうと、店に出向くが、
一歩の差で、お目当ての品を、先客に取られてしまい、その男とひと悶着。
実はこの男は、あの江文淵の息子・江余。
かつて湖州を追われた江余は、耀昇という染織工房を立ち上げ、軌道に乗せ、
玲瓏を奪い返そうと着々と準備を進めていた。
そして、ついに、玲瓏を訪れ、吳宏達本人と接触し、自分が江文淵の息子であると名乗り出る。
“江文淵”という名にハッとし、「ずっと後悔している、償いたい」と跪き、許しを請う吳宏達。
ちょうどその頃、自宅では、吳宏達不在のまま、彼の誕生の宴の真っ最中。
自分の誕生日にどこへ?こんな日まで仕事とは…と、彩虹が、父・吳宏達を探しに工房へ行くと、
目の前で、建物上階から無力に落下する父を見てしまい…。


2017年11月、チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ『名家の恋衣~抓住彩虹的男人』が、
年を跨ぎ、2018年1月半ばに全35話の放送を終了。
Yahoo!ブログの不具合が改善されず、相変わらず長文投稿が不可能なのだが、
せっかくゴールしたドラマなので、簡単に記録を残しておく。

★ 概要

『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』をはじめ、多くのヒットドラマに関わってきた
香港出身の吳錦源(ン・ガムユェン/ウー・ジンユェン)が総監督を務めた作品。

監督の名前以上に、日本の中華ドラマニアの皆さまが注目するのは、桐華(トン・ホア)であろう。
『宮廷女官 若曦』の原作者として知られる桐華が、
ドラマのためにプロットを起こし、企画したのは『金蘭良縁~金玉良緣』に続き、これが2作目らしい。

原題の『抓住彩虹的男人』は、“虹を掴む男”の意。
日本語に直訳してしまうと、石原裕次郎1957年の主演作『嵐を呼ぶ男』の続編か?と勘違いを招きそう。
なお、タイトルにある“彩虹(=虹)”は、女性主人公の名前に掛けている。

★ 物語

物語は、卑劣な手段で有名染織工房・玲瓏を奪い取った男の娘・彩虹が、
玲瓏を奪い取られた本来の経営者の息子・江余、当時の従業員の息子・周邵天という
彩虹の父親のせいで人生を狂わされ、辛酸を嘗めてきた二人の青年と出逢い、
彼らから愛されてしまったことで動き出す、因果なトライアングル・ラヴ・ストーリー


諸悪の根源は、清朝末期、役人だった頃に、立場を利用し、
卑怯な手で、玲瓏を奪い、その経営者・江文淵を死に追いやった吳宏達。
その一件で奈落の底に突き落とされた二人の少年、江余と周邵天は、
それぞれ吳宏達への復讐を胸に誓い、成長し、ようやくその無念を果たそうとするのだが、
宿敵の愛娘・彩虹を愛してしまうという番狂わせ。
共に被害者である江余と周邵天は、本当だったら手を組んで闘うこともできただろうに、
同じ女性を愛してしまったがために、対立。
どちらの男性が虹(=彩虹)を掴むのか?
そして、彼らは、親世代で生じた確執を乗り越え、純粋に愛し合えるのか?という愛憎劇が、
本作品の大きな柱の一つ。

もう一つの柱は、推理劇。
卑怯な手で玲瓏を奪った吳宏達は、因果応報なのか、結局自分自身も何者かに殺され、
玲瓏は江余の元に戻り、残された吳宏達の遺族は無一文になってしまう。
吳宏達を殺したのは一体誰なのか?吳宏達を恨んでいた江余か周邵天のいずれかなのか?
やがて、玲瓏に伝わる染織法が、事件の鍵であることが判明。
殺害の動機や犯人捜しといった、このようなミステリーの側面も、このドラマの見所。
(…と記しておいて言うのもナンですが、ユルユルで詰めが甘く、謎解きドラマとしてはイマイチ。)

★ 時代背景

物語の幕開けは、清朝(1616-1912)の末期。
『ラストエンペラー』でお馴染み宣統帝・愛新覺羅溥儀が在位していた時代(1908-1912)と考えるのが妥当。

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なので、登場する男性たちは、みんな辮髪。
吳宏達のような奸臣が幅を利かせていたのも、王朝滅亡寸前の混沌とした時期だったのも一因であろう。


清の描写は事の発端を説明するプロローグだけで、その後、間も無くして、物語の舞台は12年後に移る。
この頃はすでに清朝が崩壊し、民国の時代。

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江余が玲瓏の新社長に就任して早々に入る注文が、張作霖(1875-1928)からだったり、
曹錕(1862-1938)の中華民国大総統就任式典用の幕を湖州のどの工房に注文するかを決めるため、
玲瓏と榮達で公開対決を行うといったくだりで、歴史上実在の有名政治家の名が出てくる。
補足しておくと、曹錕が中華民国の大総統になったのは1923年。
ドラマの最終回、事件が起き、亡くなった人物のお墓にも“民國十二年(1923年)”と刻まれているので、
物語の時代背景は、ズバリ、1923年ということになる。
その頃、日本は大正12年、関東大震災が起きた年らしい(…NHK『わろてんか』と重なっている~)。

★ 玲瓏

ドラマの中で事件の舞台となる染織工房の名は“玲瓏”
“玲瓏 Línglóng”とは、細工が精巧であることや、
玉の澄んだ音色、玉が透き通り、曇りのない様を意味するらしい。
日本では、将棋の羽生善治竜王が好んで揮毫する言葉として有名。

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羽生サンは、周囲を見渡せる澄み切った状況や澄んだ心を意味する四文字熟語“八面玲瓏”を
自分が将棋に臨む気持ちを重ね、“玲瓏”を好んで揮毫しているみたい。
但し、現代中国語で“八面玲瓏”は、八方美人といったネガティヴな意味に使われるのが一般的と見受ける。
ま、とにかく、羽生サンも使っているくらいだから、すでに日本語として定着しており、
難しい漢字だけれど、“れいろう”で一発変換できます。


ちなみに、日本で本ドラマと放送時期が重なった『記憶の森のシンデレラ~放棄我,抓緊我』でも、
主人公がデザインを手掛けるウェディングドレスの会社名は“玲瓏”。しかも…

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両ドラマで、玲瓏のトップを演じているのが、香港明星・謝君豪(ツェ・クワンホー)で同じなの。
これって偶然?それとも意図的なお遊び…?

★ キャスト:その①~愛憎のエターナル・トライアングル

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鄭爽(ジェン・シュアン):吳彩虹~父の悪行を知らず、真っ直ぐに育った玲瓏の令嬢

サイテーな男・吳宏達も、彩虹にとっては良いパパだったから、
彼女は一家の黒い過去など知らずに、すくすくと育ったお嬢様。
その素直さと美しさで、本来宿敵であるはずの二人の男性、江余と周邵天から愛されてしまう。
演じている鄭爽は、確かに元々私好みの女優さんではないのだけれど、
その私情を差し引いても、このドラマでの彩虹には共感できず、彼女の魅力は、まったく分からなかった。
周邵天の言葉をいとも簡単に信じたり、自分のために尽力してくれている江余を悪人扱いしたり…。
“素直”も突き詰めると“愚か”でしかないことを視聴者に見せ付ける彩虹には、終始イライラさせられた。


劉威(ハウィック・ラウ):江余~玲瓏の元の経営者・江文淵の息子

口は悪いが、実は優しく、物事を冷静かつ公平に判断できる江余。
玲瓏を奪い、一家を奈落の底に突き落とした吳宏達を憎んでも、
その娘である彩虹に、父親の罪を償わせようとはせず、むしろ、彼女には常に協力的。
なのに、お馬鹿な彩虹は、それが分からず、いつも江余に敵対心ムキ出しだから、江余には同情。
(但し、オフィスの机に、サングラスでバッチリ決めた自分の写真を飾るというナルシストっぷりには萎えた。)
演じるは、香港明星・劉威。
2013年、楊冪(ヤン・ミー)との結婚後、離婚の噂が絶えないから、芸能ニュースではよく目にするが、
演じているのを見るのは、皇太極(ホンタイジ)に扮した『宮廷の泪 山河の恋~山河戀·美人無淚』以来かも。
劉威と言えば、もう一つ絶えない噂が整形疑惑。
このドラマを観ていても、不自然に切れ込みの入った劉威の目頭ばかりが気になってしまった…。



李東學(リー・ドンシュエ):周邵天~吳宏達に復讐するため、信頼を得て優秀な部下に

周邵天の母親は、玲瓏の元従業員。吳宏達が罪をでっち上げ、玲瓏を潰したせいで、母は職を失い、
元々決して豊かではなかった周家は、貧困のドン底に陥る。言わば、事件の“間接的被害者”。
そこで、周邵天は、吳宏達にいつか同じ苦労をさせてやろうと、
復讐心を隠し、忠実な部下となり、信頼を得たところで、大胆な横領という反撃に出る。

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横領で羽振りが良くなった途端、周邵天の身なりが派手になるのだが、
そのファッションが中国の金持ちというより、インドのマハラジャを彷彿。

演じているのは、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の果郡王でブレイクの李東學。
優しそうな雰囲気の正統派美男子で、江余役の劉威より、本来なら私好みなのだけれど、
このドラマで演じている周邵天は、あまりにも卑屈な男で、どうしても好きになれなかったー…!

★ キャスト:その②~その他

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張芷溪(ジャン・ジーシー):方菲菲~江家の養女 血の繋がらない兄・江余に恋心

菲菲は、幼い内に実の両親を亡くし、江家に引き取られた養女。
血の繋がらない兄・江余をずっと慕い続け、いつか江余のお嫁さんになることを夢見ているけれど、
江余は彼女の事を妹としか見てくれない上、仇の娘・彩虹に惹かれてしまうから、彩虹に激しく嫉妬。
なんとも小賢しい小姑なんだけれど、イイ子ちゃんキャラの彩虹よりは人間味があるし、
“中の人”張芷溪も、主演のアイドル女優・鄭爽よりずっと美人。
これだけ端正な顔立ちなのに、『美人製造~Cosmetology High』では果敢にも別人のおブスに。

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ここまで捨て身になった女優を見るのは、『食神』(1996年)の莫文蔚(カレン・モク)以来かも。
見込みあります、張芷溪。以降、要チェック女優。


劉雨欣(リウ・ユーシン):陸曼~玲瓏秘伝の染織法に固執する謎の女性 盧督軍の愛人

陸曼は、愛人関係にある大物・盧督軍を後ろ盾に、権勢を振るう謎多き女性。
どうやら元々は、革命で没落した清朝王府の格格で、
当時福晉の位で、非業の死を遂げた母を想い、玲瓏秘伝の染織法に固執し、悪行を重ねている様子。
演じている劉雨欣は、『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』の明玉役で名を広めた女優さんだが、
その後、こちらにも記したように、アゴの不自然な急成長で注目を集めた。
この『名家の恋衣』でも、陸曼のシーンになると、肥大したアゴばかりに、ついつい目が…。
盧督軍にブン殴られるシーンでは、アゴのプロテーゼがズレるのではないかと、本気で気を揉んだ。



周海媚(キャシー・チャウ):吳夫人~彩虹の継母 彩虹の妹・彩雲の生母

彩虹の生母は、彼女がまだ幼い内に亡くなっており、父・吳宏達も亡くなったので、
今や彩虹にとって“親”と呼べるのは、この継母だけ。
物語上、特別重要な役ではないけれど、演じている香港明星・周海媚は、
この前に日本で放送されたドラマ『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』の時と
ぜんぜん違う顔を見せてくれているから要チェック。
『武則天』では、「綺麗!品がある!アラフィフに見えない!」と絶賛した皆さま、
こちらの『名家の恋衣』だと、ちゃんと年相応のガメツいオバちゃんを演じていますヨ。

★ テーマ曲

テーマ曲は、オープニングが、江余役・劉威(ハウィック・ラウ)が歌う<抓不住的溫柔>
エンディングが、“萱萱”こと戴瀠萱(ダイ・インシュエン)の<知道你愛我>
ここに貼るのは、主演男優の歌にしておこうかしら。原作者の桐華が作詞を手掛けたらしいし。







彩虹が江余とくっ付き、恋に破れた周邵天は潔く散り、一番の悪人・陸曼は成敗され、
他の面倒な人たちはやけに物分かりが良くなり、吳家、江家、周家は何のシコリも残さず、皆ハッピー♪
…というほぼ予想通りの最終回。
良く言えば、すっきり丸く収まった印象。悪く言うと、意外性が無く、あっけない幕締め。
内容が単純なので、何も考えずにボケーッと観るには悪くはないが、
ラヴストーリーとしても、謎解きミステリーとしても、薄っぺらで、やや物足りない。
何より、“ただのイイ人を、魅力的に描くのは難しい”と再確認させてくれたドラマであった。
ただ、日本ではあまり放送が無い民国期の物語なので、興味がある方はどうぞ。


チャンネル銀河、平日、午後1時のこの枠は、この後、2018年1月15日(月曜)より
『開封府 北宋を包む青い天~開封府~開封府傳奇』を放送。
北宋の有名な政治家、“包青天”こと包拯(999-1062)を描くドラマで、
主演は『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす』の譽王でお馴染み黃維(ビクター・ホァン)。
包青天については、実在した公明正大、清廉潔白な超有名人という程度の認識で、
これまでに何度何度も映像化された作品は、実は一本も観たことがない。
水滸伝然り、隋唐演義然り、忽必烈(フビライ・ハン)然り、そしてこの包青天も然り、
“今さら人には聞けない有名な物語/有名人”は、ドラマでお手軽に学ばせていただきます。

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