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ドラマの美食(グルメ):『軍師連盟』編

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現在wowowで放送中の大陸ドラマ『三国志 司馬懿 軍師連盟~大軍師司馬懿:軍師聯盟/虎嘯龍吟』、
主人公・司馬懿を演じている吳秀波(ウー・ショウポー)に最近不倫疑惑が勃発。
24歳年下の女優・陳霖(チェン・ユーリン)が、2011年から7年も関係を続けていた事を
微信(Wechat)の朋友圏(友達圏)で告白し、「永遠恨你!(永遠に恨んでやる!)」と怒りが収まらない様子。
陳霖は、『軍師連盟』の撮影中も、横店のホテル豐景嘉麗1208号室で333日間同宿して、
吳秀波の身の回りのお世話をしたという。
さらに、自分との交際中、他にも2人ほど別の愛人が居て、
その内の一人が、『軍師連盟』で甄宓を演じている張芷溪(ジャン・ジーシー)だと実名を挙げている。

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綺麗な女優さんですよねぇ~。
もし噂が事実なら、なぜわざわざ子持ちの五十男と付き合ってしまったのだか…。
張芷溪ほどの美女だったら、もっと好条件の男性がいくらでもいるでしょうに。


吳秀波は、温厚で素敵なおじ様のイメージがあるため、
この不倫疑惑、もっと大騒ぎになるかと思いきや、案外それ程でもない。
張綺雨(キティ・チャン)2度目の離婚のニュースの方が、むしろ盛り上がっていた。
吳秀波自身、姿をくらますこともなく、新ドラマ『無名偵探』の撮影に入っている。
新ドラマでの共演は、唐嫣(ティファニー・タン)、翟天臨(ジャイ・ティエンリン)、
そして香港の任達華(サイモン・ヤム)と豪華。
こういうドラマが、暗礁に乗り上げるような事になったら大変だから、
吳秀波サマ、女性問題でつまずかぬよう、くれぐれも身を引き締めてちょうーだい!

★ 吳の名物お刺身

本題は、吳秀波の不倫疑惑ではなく、『三国志 司馬懿 軍師連盟』の美食。
以前、楊修(175-219)が丁儀(?-220)を家に招き、焼き肉を振る舞うシーンを見て、
ドラマの背景である東漢(後漢)末期に、本当に焼き肉など存在したのか?という疑問が湧き、
当ブログで取り上げた。(→こちら
今回取り上げるのは、2018年9月29日(土曜)放送の第21話に登場するお刺身。



第21話で、司馬懿(179-251)は、曹操(155-220)に、吳と蜀の関係を断つべく、
吳の孫権(182-252)と手を結び、関羽(?-220)を討つことを提案。

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曹操はこれに同意し、司馬懿は、妻の張春華を伴い、使者として吳へ。

地図でも場所を確認しておこう。

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吳は、南部の水の豊かな地域。

イメージ 4

この吳出張の時である、宿で夫婦に提供されたのが、地元の名物であるお刺身。



現在、地球上で、生魚を食べる習慣のある国は少ないと言われ、
お刺身は代表的な日本料理と見る人が多い。
紀元220年頃、果たして司馬懿は本当にお刺身を食べたのか?


中国でも、“お刺身=日本食”と捉える人が多いようだが、
そもそも、狩ってきたばかりの獣や、釣ってきたばかりの魚を、火を使って調理せず、
そのまま生で口にするのは、とても原始的な食べ方。



宋代に出土された“兮甲盤”と呼ばれる国宝級の青銅器がある。

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周の時代、宣王5年(紀元前822年)に作られた青銅器で、その底に、
宣王の臣下・尹吉甫(?-?)が、異民族である玁狁を征伐して凱旋したという銘文が刻まれている。
その凱旋の宴で供された主菜が、火で調理した魚と生の鯉。
尹吉甫は、中国最古の詩篇<詩經>の内、<小雅·六月>などを記した人物としても知られるが、
その中に「飲禦諸友,炰鱉膾鯉」と記載されており、その“膾鯉”こそが、生の鯉のこと。

元々“膾”は、牛、羊、馬、魚などを細かく切った物を指し、必ずしも魚を意味していなかったそうだが、
その後、魚限定の“膾”を意味する魚ヘンの“鱠”という字が出現。
東漢時代の歴史書<吳越春秋>には、吳の第6代王・闔閭(?-紀元前496)が、
楚の都・郢を陥落し、帰還した臣下・伍子胥(?-紀元前484)を、“鱠”でもてなしたという記載があるという。
日本では、“膾”も“鱠”も共に“なます”と読み、両者に意味の違いは無いようだが、
日本の“膾/鱠”も、まぁ、勿論、中国のこの歴史に遡るのであろう。

中国では、この春秋戦国時代は、火で加工する食べ方も生食も両方が存在していた時期。
人々によく知られていることを意味する四字熟語、
“膾炙人口 kuài zhì rén kǒu”(=人口に膾炙する)も、これに由来するんですって。
膾(ナマ)でも炙(あぶり)でも両方万人に好まれるが如く、話題にのぼって、広く知れ渡るという意味。



不思議な事に、西北の内陸部で、かなり早い時期からお刺身が食べられていたそうだが、
その後は、南部で水が豊かな吳の辺りが、やはり地理的にも、お刺身を好んで食べる地域に。

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そんな訳で、ドラマ『軍師連盟』でも、司馬懿と張春華は、魏の使者として吳を訪れた際、
土地の名物料理である新鮮なお刺身を堪能。

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ドラマの中では、お給仕の男性が、お刺身と一緒に、5ツの小皿を運んできて、
春華は、それにお刺身をつけて食べている。

明代、李時珍(1518-1595)が記した薬学書<本草綱目>の中のお刺身についての部分には、
「切って、血を洗い、蒜(ニンニク)、韮(ニラ)、薑(生姜)、葱(ネギ)、醋(酢)に付ける」と記載があるので、
ドラマは、これを参考にしたものと思われる。
当然、明は、東漢よりもっとずーっと後の時代なので、
『軍師連盟』に描かれる表現の内、当時、お刺身が食べられていたという部分は正解で、
春華がお刺身に薬味を使う部分には、疑問が残る。


さらに補足すると、司馬懿と張春華が吳でお刺身を食べたなどという史実は文献に残っていないのだが、
同じ時代、同じ魏に生きた人でも、曹植(192-232)は、お刺身が好きで、
自身の著作<名都篇>にも、「お刺身を小蝦醬に付けて食す」との記載あり。
念の為、曹植とは…

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曹操と卞氏の間に生まれた第3子で、字は子建。
『軍師連盟』では、王仁君(ワン・レンジュン)が演じているあの人。



その後の中国では、唐の時代がお刺身の最盛期。
日本は、遣唐使を送ったりして、唐の文化を積極的に取り入れていたので、
お刺身も、この頃、伝わってきたという説あり。
もっとも、前述のように、調理しない生食は、原始的な食べ方なので、
四方を海に囲まれた日本なら、なおのこと、もっと昔から食べていた可能性も高い。
…が、日本で初めてお刺身に関する記述が文献上に登場するのが、
大陸では、明代に当たる応永6年(1399年)と随分後なので、
“原始的にナマでガッツリ”だったら大昔からしていたとしても、
“洗練された生魚の食習慣”となると、もしかして唐からの伝来なのかも知れない。

で、当の中国では、逆に、日本の文献にお刺身が登場し始めた明代から、お刺身人気が急速に衰退。
様々な調理法が成熟してきた事や、
加熱食品の方が衛生的、かつ中医学上健康に良いと見做される事などが、
人気衰退の理由に挙げられるそう。
(例えば、曹操に帰順し呂布を討った武将・陳登は、
お刺身が大好きで、食べ過ぎ、寄生虫が湧いた事が死因という説あり。)


では、最後に今一度、『三国志 司馬懿 軍師連盟』に登場するお刺身についてまとめておく。
お刺身は当時本当にあった。
曹操の息子・曹植もお刺身大好き。(ドラマには、曹植がお刺身を食べるシーンは無い。)
5種の薬味を付ける食べ方は、時代を先取りし過ぎかも…?





この回の放送では、翟天臨(ジャイ・ティエンリン)扮する楊修が、ついに処刑されてしまった…。
最後に宿敵・司馬懿とお酒を酌み交わすシーンは、ジーンと来た。

で、次回の放送では、絶対に曹操が死んじゃうわよねぇ…?!悲しいぃーっ…!

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このドラマで于和偉(ユー・ハーウェイ)が演じる曹操は、『三国志』モノ史上最高の曹操じゃなぁーい…?!
于和偉って、実は1971年生まれのまだ40代で、司馬懿役の吳秀波より3ツ年下なのよねぇ。
70年代生まれとは信じ難い圧巻の“曹操オーラ”を醸している。
この『三国志 司馬懿 軍師連盟』は、間違いなく于和偉の代表作に挙げられる作品だと思う。




『三国志 司馬懿 軍師連盟』に登場する焼き肉については、こちらから。

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