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映画『画皮~あやかしの恋』

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【2008年/シンガポール・中国・香港/103min.】
秦漢年間の中国。 都尉・王生は、軍を率いて西域で合戦中、
盗賊に捕えられていた美しい女性・小唯を救出し、故郷の江都王府に連れ帰る。
夫・王生の帰郷にホッと胸をなで下ろした貞淑な妻・佩蓉は、身寄りの無い小唯のことも温かく迎い入れ
自分たちの家に住ませることに。
その頃から、江都で殺人事件が連続発生。 全て手口は心臓がえぐり取られるという残忍なもの。
必死の捜査も甲斐が無く、犯人は一向に捕まらず、江都中が恐怖に震え上がるある日、
佩蓉は小唯が妖魔であることを知ってしまう…。
 
 
清代、康熙年間の短編小説集、蒲松齡による<聊齋志異>の中の一篇を
香港の陳嘉上(ゴードン・チャン)監督が映画化。
 
現在日本ではBSジャパンで本作品のドラマ版、『画皮~千年の恋』が放送中。
週4話のペースはキツ過ぎる、絶対に追えない!でも映画の予習にサワリだけでも…、とお試し視聴したら
不覚にもハマってしまい、止めるに止められず、今のところ頑張って観続けている。
どうせだったら、ドラマを最後まで観終えてから、映画を観たかった。
しかし、そんな悠長に構えていたら、上映が打ち切られてしまうかも知れない。
結局ドラマは1/3を残し(全34話中22話まで鑑賞)、映画館へ。
 
 
妖魔と人間が共存するいにしえの中国。 
人間の男を愛してしまっ狐の妖魔・小唯と、小唯の正体に気付き、夫を命懸けで守ろうとする貞淑な妻・佩蓉。
将軍・王生を巡るふたりの女の一途な想いと真の愛の意味を描く切なくも妖気満々のラヴ・ファンタジー
 
ドラマ版の前半に描かれている佩蓉と王生の出逢い、結婚前の佩蓉を巡る王生と龐勇の三角関係、
狐の妖魔・小唯と降魔師・夏冰の確執などは、映画では省かれており
その後の話も、時間的な都合で、駆け足で展開するため、映画はドラマのダイジェスト版という印象。
 
映画が幕を上げてからの6割くらいは、すでに知っている話で、ドラマと同じシーンや似た台詞も多い。
それらに触れる度に、その小さなエピソードの背後にあるドラマ版で観た長く深い物語が
自動的に思い出され、頭の中でパズルのピースのように組み合わさっていく。
残りの4割に関しては、まったくの未知なので、先の読めないワクワクどきどき感で鑑賞。
前半6割とは逆で、ぎゅっと短く凝縮された映画版のエピソードが、どのように膨らまされているのか
今後ドラマで確認するのが楽しみ。
 
 
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                                                         (クリックで拡大)
主な出演者は、狐の妖魔・小唯に周迅(ジョウ・シュン)
小唯から夫を守ろうとする貞淑な妻・佩蓉に趙薇(ヴィッキー・チャオ)
ふたりの女性の間で揺れる将軍・王生に陳坤(チェン・クン)
落ちぶれた姿で江都に戻って来る元将軍・龐勇に甄子丹(ドニー・イェン)
小唯を退治しようとする降魔師・夏冰に孫儷(スン・リー)
小唯に片想いする蜥蜴の妖魔・小易に戚玉武(チー・ユーウー)
 
周迅の小唯と趙薇の佩蓉は、分かり易いまでに対照的な愛人タイプと正妻タイプ。
周迅は、一見無垢な“守ってあげたい”と思わせる童顔でありながら、実は強かな小悪魔が上手い。
一般的にこのような女性は、同性を敵に回すものだが
私は、ドラマ版の方でもっと計算高い小唯に慣れてしまっているせいか、映画版の小唯が随分マシに思えた。
ドラマ版の小唯は、もっと独占欲が強く、あの手この手で王生を妻から完全に奪い取ろうと試みるが
映画版の小唯は、王生と佩蓉の前で、「妾にして下さい」と譲歩案を持ち掛けるのだから
身の程を知っていて、奥ゆかしいではないか。
 
小唯が、王生のみならず、佩蓉の周囲の人々を上手いこと手なずけ、佩蓉をどんどん孤立させていく過程を
時間をかけ、より丁寧に描いているドラマ版の方が、小唯の性悪っぷりと、佩蓉の悲劇が、より際立つ。
 
小唯佩蓉の最終決戦は、ドラマでまだ観ていないので、妖魔ではなく、人間役のハズの趙薇が
連獅子のような白髪になり、目から血まで流しているおどろおどろしい姿をポスターで見て
「どうしてかしら…?」と不思議に思っていたが、ふぅーん、そういう事情が有ったのか…。
愛する人を救うためなら、その愛する人から誤解され、嫌われたっていいの!とは、骨の髄まで献身的。
 
ふたりの女性から熱烈に愛される王生は
ドラマ版の方が人格者で、迷いを振り切り、妻に対して誠実であろうとする姿勢が窺える。
映画版の方が、精神的に弱いダメ男で、煩悩が多そう。 より人間的ではある。 
演じる陳坤が端整な二枚目なので、余計にヤサ男の印象を受ける。
 
その陳坤、私生活ではシングルファーザー(最近、養育している男児が実子であることを認めている)。 
そこで注目なのが、上半身露わなこの床上戯。
 
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左肩の刺青が、オリエンタルな蓮の花なので、幻想的な作品に合わせた演出にも思えるが
コレ、王生ではなく、陳坤自身のリアルタトゥ。 蓮の下に彫られた“尊佑”という小さな文字は
通常“優優”という幼名で知られている2002年に生まれた陳坤の息子の名前らしい。
 
 
日本だと、甄子丹目当てで本作品を観る人も多いだろうが
映画では、人々から敬われていた将軍・龐勇が、訳有って故郷を捨て消えたエピソードが
バッサリ割愛されている事もあり、存在感がやや希薄。 アクションの見せ場も、そんなに無い。
 
孫儷は、お目々パッチリのカワイ子ちゃんゆえ
これまでお嬢様役やお姫様役、せいぜい町娘役が定番だったので
ボロ雑巾のような粗末な服を身にまとい、悪態をついているだけでも新鮮。
 
戚玉武は映画版のみならず、実はこの後、ドラマ版の方にも違う役で出演している。
本作品では、邪険にされながらも小唯にお仕えする“舎弟”のような蜥蜴の妖魔・小易に扮するが
ドラマ版では、栩栩(=小唯)に愛を誓っておきながら、どうしても妖魔が許せず
婚礼の日に彼女を裏切る降魔師・龍雲を演じる。 
戚玉武ってば、映画で小唯にこき使われたから、ドラマで仕返ししちゃったのかしらー。
なお、映画版で戚玉武扮する蜥蜴の妖魔・小易は、ドラマ版の少年っぽい小易に比べると、男臭い。
顔はぜんぜん似ていないけれど、銀髪の蜥蜴は、遠目に吉川晃司風。
 
 
こういう作品は、凝った衣装や美術も気になるところ。 衣装は、ドラマ版より色が抑えられシック。
ドラマの着こなしでは、女性が夜鷹並みに、いやそれ以上に、ガバッと襟を抜き過ぎているのが気になるが
映画ではきちんとしている。 
 
 
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                                                         (クリックで拡大)
伝奇的なお話なので、摩訶不思議なシーンにも注目。
例えば、小唯がアンチエイジング目的で人の心臓を食べるシーン。 (→画像左) 
ドラマでは、塊をそのまま手にとり食い付くが、映画では、スライスした物を、楊枝を使ってお上品に。 
まるでサラミ (撮影には本当にサラミを使っていたりして。 あちらなら差し詰め“香腸”?)。
あと、小唯が自分の皮膚を剥ぎ取るシーン。 (→画像右)
空気が抜けたダッチワイフのような抜け殻の顔が、ちゃんと周迅だから、笑える。
 
ちなみに、タイトルの『畫皮 huàpí』とは、中日辞典によると
妖怪が人間を騙すために被る美しく描いた人間の皮のこと。 
あの周迅の抜け殻こそ画皮。 確かに映画の中でも、筆を使って、その皮を綺麗に修復している。
(比喩的には、化けの皮、醜悪な実質を覆い隠す美しい外観を意味するそう)
 
 
 
本来この手の作品は好みではないはずなのに
無意識の内にドラマ版と比較しながら鑑賞したことで、思いの外楽しめた。
妖怪も怪奇現象も信じていないし、興味も無いけれど
そういうシーンを滑稽に感じ、思わず吹き出してしまったことも含め、「想像していたより面白い」と感じたのかも。
もしドラマ版をまったく観ていなかったら、この映画版をどう感じたのか、
“ドラマ版をまったく観ていない自分”にはもう戻れないので、今となっては分からない。
ただ、ドラマ版が制作されたのは、映画版の数年後。
当然の事ながら、現地での公開当時は、観客全員がドラマ版未見。
それでヒットしたのだから、元々この手のファンタジーが好きな人には、単独で充分面白い作品なのであろう。
私自身は、映画版を観たことで、ドラマ版の残りがより楽しみにもなった。

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