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映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』

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【2012年/日本/106min.】
34歳カフェ店員のすーちゃん、34歳OA機器メーカー営業部所属のまいちゃん、
そして39歳Webデザイナーのさわ子さん。 3人はかつてのバイト仲間。
あれから十数年経っても、異なる道を歩んでいても、友情は変わらず、時間を見付けては集まる仲。
一見幸せそうな、平凡に暮らす彼女たちだが、それぞれに悩みや不安を抱えており
友人に打ち明けられる事もあれば、ひとり心の中に秘める事もあり…。
 
 
益田ミリの四コマ漫画<すーちゃん>シリーズを、御法川修監督が映画化。
 
<すーちゃん>シリーズ? 知らない。
映画のスチール写真などから、『かもめ食堂』等の荻原直子監督作品と似たニオイを感じ
苦手なタイプの作品であると予感。
なのに、GyaO!のオンライン試写会で珍しく当選してしまった。
今までたったの一度も当たったためしが無かったのに、ある晩、何気なく“抽選する”ボタンをクリックしたら
想定外の当選。 もう寝ようと思っていたのに、当たってしまったので
視聴の権利を放棄するのがもったいなくなり、睡眠時間を削って鑑賞。 
実際には、すぐに観なくても、当選から24時間は視聴の権利が保たれるようだ。
 
本作品、明日から全国公開とのこと。
せっかくタダで観せていただいたし、簡単に感想を残しておく。
 
 
 
恋は御無沙汰だけれど、気になる上司がいる、料理が得意な34歳カフェ店員すーちゃん、
既婚男性との不毛な恋をダラダラ続ける34歳OA機器メーカー勤務のまいちゃん、
女ばかりの3世代家庭で、母と共に祖母の介護をする39歳Webデザイナーのさわ子さん。
一見平凡だが、それぞれに悩みや不安を抱える30代独身仲良し3人組の
心情や日常を優しくさり気なく描く人間ドラマ
 
職場の上司に片想いしていないし、ましてや不倫なんてしていないし、祖母の介護もしていない私と
登場人物たちの共通点といったら、独身であることくらい。
こういう作品を観て、「うわぁ~、共感できるぅ~!」とか
「皆悩みが有るのだと分かり、勇気をもらいました!」などと言う人を、普段冷めた目で見てしまうのだけれど
本作品の登場人物たちの台詞には、不覚にも所々「有る、有る」と頷いてしまった。
 
それは必ずしも独身女性の痛い部分をえぐるような鋭い台詞とは限らない。
例えば、冒頭のまいちゃん。 エレベーターに乗った時、
こちらに向かって駆けてくる人が、目に入ってきているのに、“開”ボタンを押して待っていてあげず
シラーッとそ知らぬ顔をしている間に、ドアがスーッと閉まり、ひと言、「見ないフリをしてしまった」。
これねぇ、私もたまにやっちゃう。 心と時間に余裕が有る時は、待っていられるのだけれど。
(さらに言えば、待っていてあげたのに、“当然”という顔をされると
「ありがとう」とか「スミマセン」とか言えヨ!お前なんかドアに挟まれば良かった!って気にさせられる。)
 
「有る、有る」と頷けたり、考えさせられる台詞は他にも沢山有るのだが
特に印象に残っているのは、これまたまいちゃんの台詞。
不倫を清算し、人生の軌道修正にかかり、結婚相談所に入会して、とんとん拍子で相手が見付かり
退職し、結婚し、妊娠までしたのに、なぜか浮かない表情のまいちゃんの心の中の呟き、
「時々思う、捨てた方の人生の続きも“アリ”だったんじゃないかなぁって…」に、なぜかシミジミ…。
結婚は人生の大きな転機になるけれど、その転機を迎えてしまった後の長く平坦な人生を思うと
虚しささえ感じてしまうオンナ心が吐かせる言葉。
普通の男性と結婚し、平凡でも安定した幸せを手に入れたのに、なぜか物足りなさを感じている自分を想像し
目の前真っ暗になってしまった。 まったく結婚の予定も無いのに、ナンなの、このネガティヴ思考?!
こんな事では、凡庸な男との退屈な生活を引き寄せてしまいそうで、マズイ…。
 
 
 
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出演は、カフェ店員すーちゃんに柴咲コウ、OA機器メーカー社員まいちゃんに真木よう子、
そして、Webデザイナーさわ子さんに寺島しのぶ
 
もっと若い頃の柴咲コウって、正直なところ、“さっぱり”とか“サバサバ”を通り越した物言いに
スレて可愛げ無いと思うことが、しばしば有った。
(思いっ切り上から目線で申し訳ないが…) でも、最近は、年を重ね、角が取れた印象。
本作品の中でも、一番ほわぁ~っとした存在で、出しゃばらず、自然体で
見ていて応援したくなる可愛らしい女性であった。
 
 
その他の出演者は、すーちゃんが想いを寄せる勤務先カフェの中田誠一郎マネージャーに井浦新、
すーちゃんの同僚・今井に佐藤めぐみ、カフェにバイトで入って来る千葉恒輔に染谷将太、
そのカフェのオーナーに木野花、さわ子さんの母に銀粉蝶、
さわ子さんが偶然再会する高校の同級生・吉田に矢柴俊博などなど。
 
この中で、女性の観客を敵に回すであろう登場人物が、男女それぞれひとりずつ。 
ひとりは、佐藤めぐみ扮するすーちゃんの同僚・今井さん。
典型的な“異性にモテ、同性に嫌われる”タイプの要領のいい女性で
すーちゃん憧れの中田マネージャーも、まんまと丸め込まれてしまうから
心の中で、中田さんに彼女の裏の顔を暴いてやりたくなったり
逆に、あんな女に引っ掛かるような中田さんは、所詮それ程度の器の男なのだと彼の評価を下げたり
たかが映画の中の話に、ひとりでムキになってしまった。
 
もうひとりは、矢柴俊博扮するさわ子さんの元同級生で、蕎麦屋を継いでいる吉田くん。
偶然の再会で、さわ子さんも久々に恋心を抱き始めた矢先の、あのデリカシーに欠けるひと言…!
矢柴俊博の地味なポーカーフェイスは、善人にも悪人に対応自由自在 (でも悪人役の方が多いかしら?)。
 
 
ロケ地は、だいたい東京とその近郊みたい。
例えば、すーちゃんちの最寄りの駅には、“学芸大学前”と書かれているので
目から入って来る文字の情報ですぐ分かる。
あと私が見てすぐに分かったのは、すーちゃんとまいちゃんが行く輸入食品や雑貨を売る店。
あれは、吉祥寺のカーニバル
さわ子さんが、母親との歌舞伎鑑賞の後に立ち寄る、銀座4丁目の交差点が見下ろせるお店は、鹿乃子
梨園出身の寺島しのぶ(=さわ子さん)が、母を誘って歌舞伎鑑賞とは、ちょっとしたお遊びか。
すーちゃんが働いているのは、郊外のカフェなのかと思ったら、六本木のTIME512らしい。
このカフェの店名、映画の中では、ドイツ語で独身女性に使う敬称、
英語でいう“Miss”に当たるFräuleinに変えられている。
周りに余計な気を遣わせてしまいそうだから、私だったら、こんな店名のお店でバイトしたくない。
それから、まいちゃんの取り引き先からの勧めで見学に行く億ション (↓)。
 
イメージ 3
 
部屋のレイアウトや窓の感じなどから、六本木ヒルズのように思えたのだけれど、実際はどこなのでしょう。
 
 
 
 
懸念していた荻原直子監督テイストとは、ちょっと異なった。
本作品も荻原直子監督作品も、共に“ユルい”と形容される気がするけれど、ユルさの質が違う。
荻原直子監督作品には、狙ったユルさが見え隠れしていて、アザトく感じ、引いてしまうのだけれど
本作品は、日常のひとコマを切り取ったような自然なユルさで、すんなり作品に入り込めた。
導入部分だけを観ると、これから始まる物語がライト・コメディなのかと想像するが
実際にはコメディといった趣きではない。
最終的には、ストレートなハッピーエンディングではないけれど
かと言ってアンハッピーエンディングという訳でもないのに、なぜか切なさが残った。
人が抱く割り切れない感情を、優しく温かな目線で捉えているのは、好感が持てる。

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