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映画『ライジング・ドラゴン』

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【2012年/中国・香港/124min.】
19世紀、イギリス軍、フランス軍の中国侵攻で、円明園から略奪された十二支のブロンズ像“十二生肖”。
海外で発見されたいくつかの像は、オークションにかけられ、軒並価格高騰。
ある日、トレジャーハンターJCの元に、アンティークディーラー、マックス・プロフィット社から
未だ所在不明の残りの像を探し出すよう依頼が舞い込む。
報酬は、像一体につき百万ドル、さらに龍の像には、もうひと桁上乗せするという。
早速JCは、仲間を従え、フランスへ飛ぶ…。
 
 
成龍(ジャッキー・チェン)本格的アクション観収め、キャリアにひと区切りつける節目の作品。
自ら監督、製作、脚本、主演までこなす力の入れよう。
 
邦題は、もう少しどうにかならなかったのか。
中華アクション映画というと、馬鹿のひとつ覚えのように“ドラゴン”と付けるから
どれも似たり寄ったりで、紛らわしい。 (→参照
 
 
原題は『十二生肖』。 正確には、圓明園十二生肖獸首銅像を指す。 (以後略して“十二生肖”と記す)
 
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これは、清朝の離宮・円明園の水力時計に設置された十二支の動物を模した12体の銅像で
デザインしたのは、乾隆帝の肖像画<乾隆帝大閲像軸>などで有名な(→参照
イタリア人宣教師で宮廷画家のジュゼッペ・カスティリオーネ
1860年、英仏連合軍が中国に侵攻した際、円明園は破壊され、十二生肖は略奪されている。
十二支の内、龍、蛇、羊、鶏、犬は、未だ所在不明。
発見された物に関しては、オークションにかけられ、
例えばマカオのカジノ王・何鴻燊(スタンレー・ホー)等が落札し、中国に寄贈している。
また、文物の海外流出を阻止しようとする中国人が高額で落札し、支払いを拒否するといった事も起きている。
こういう模様は、日本でもしばしば報道されているので、美術品に無関心な人でも
知らず知らずの内に、“十二生肖(じゅうにせいしょう)”という言葉を見聞きしている可能性は高い。
何より、十二生肖はこの物語を動かす最重要物なのだから
これを上手く生かし、『ライジング・ドラゴン』よりマシな邦題は付けられなかったのか…?!
 
 
本作品は、思いや目的を異にする様々な人間が、そんな圓明園十二生肖獸首銅像の行方を追い、
競って手に入れようとする様子を描くお宝強奪アクション映画
物に必要以上の価値を与え価格操作することや、白熱するオークションを皮肉ったり
戦乱のどさくさで略奪された文物を自国に戻したいという愛国心も織り込まれているように感じる。
 
 
 
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出演は、トレジャーハンターJCに成龍(ジャッキー・チェン)、
JCの3人のアシスタント、Davidに廖凡(リアオ・ファン)、
Simonに權相佑(クォン・サンウ)、Bonnieに張藍心(ジャン・ランシン)、
文化財を元の国に戻す運動をする美術鑑定士Cocoに姚星彤(ヤオ・シントン)、
19世紀の略奪に関わった曾祖父をもつフランス上流階級の女性Catherineにローラ・ワイスベッカー等。
 
1954年生まれの成龍、還暦にリーチ。
どんなに優れた身体能力の持ち主だったとしても、体を張ったアクションは、確かにいい加減キツかろう。
本作品では、最後の力を振り絞り、様々なアクションを披露しているが
終盤、パラシュート無しで上空から落下して
全身エアバッグと化し (←ミシュランのマスコット、ビバンダムのよう)
山を転げ落ちるシーンばかりが印象に刻まれ、他がどんなだったか忘れてしまった…。
作品の最後に自ら語っているように、別にこれで引退するわけではないが
激しいアクションはもう封印とのことなので、取り敢えずお疲れ様でした。
 
私のお気に入り大陸男優・廖凡は、悪役や曲者に扮している時の方が、演技の上手さや個性が際立つ。
普通っぽいDavidのような役も、まぁ悪くはないが。
 
『グリーン・ホーネット』の主人公を周杰倫(ジェイ・チョウ)に奪われた韓国の權相佑にとっては
本作品が海外進出第1弾となるのだろうか。 扮するSimonは、韓国人ではなく、華人という設定なのか?
見せ場は少なく、台詞も少ない。 しかも中文に吹き替え。 
“華々しい海外デビュー!”といえる程の存在感は、本作品の中で放っていない。
 
 
本作品では、成龍以外の男優陣より女優陣の活躍の方が目立っており
中でも取り分け個性的なのが、Bonnie役の張藍心。
 
イメージ 4
 
ただでさえ目を引く長く真っ直ぐな美脚で、ガバッと股割り。 なんて柔軟性のある股関節。
鍵を盗むシーンでは、ハイヒールの有効活用も教えていただいた(→画像下)。
 
 
脇でちょこっとだけ出てくる俳優陣を見付けるのも、お楽しみ。
例えば、Cocoの弟・吳清役で陳柏霖(チェン・ボーリン)、
出産したばかりのDavidの妻役に舒淇(スー・チー)、
JCが運ばれた病院の医師役で吳彥祖(ダニエル・ウー)等々…。
 
 
しかし、今回の特別出演の中で一番の注目は、JCの妻役の女性。
 
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そう、成龍の実際の妻で、結婚後は表舞台から身を隠していた台湾の元女優・林鳳嬌(ジョアン・リン)
つまり、房祖名(ジェイシー・チャン)のママ。
成龍は、過激アクションを封印するこの節目に
これまでずっと女性問題などで苦労をかけ続けてきた日蔭の妻に、懺悔と感謝の意を示しているかのよう。
作中、終始、妻役の妻の御機嫌取りに必死。
もう長年家庭に入っている林鳳嬌は、もはや女優という雰囲気ではなく、控え目な奥さんという印象。
 
 
 
 
最初の方は、秘密道具や裏ワザが沢山出てきて、作品の世界にどんどん引き込まれていったが
その後、南太平洋で繰り広げられるドタバタが、私にとってはやや退屈で、中弛み。
あそこら辺をちょっとカットして、全体的にもう少しコンパクトにまとめたら
もっとスピーディでサクサク展開する、より面白い作品になったかも。
 
また、本作品からは、過去に略奪された文化財を元の国に戻そう!というメッセージもビシバシ感じ取った。
実際、イギリスやフランスの美術館は戦利品の山だし
日本も、特に韓国との間の文化財返還問題がしばしば取り沙汰される。
人それぞれ見解が異なり、政治的にデリケートな側面があるので、解決は容易ではない。
近年、“共産党員より共産党っぽい”と揶揄されることすらある成龍だけに
ついつい作品を深読みし、愛国心やメッセージ性を必要以上に感じ取ってしまうと、ちょっとシラケてしまう。
いっそ、とことん馬鹿っぽいエンターテインメントに徹していてくれた方が、スカッとする。

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