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映画『藁の楯』

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【2013年/日本/124min.】
日本の財界を牛耳る大物・蜷川の7歳の孫娘・知香の無残な遺体が世田谷で発見される。
容疑者は、8年前にも少女暴行殺人を起こし逮捕され、出所したばかりの清丸国秀。
全国指名手配されるも、行方は分からぬまま。
しばらくして、清丸の顔写真に「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします。」
という文句を添えた全面広告が、大手全国紙全てに掲載される。
蜷川が打ったこの広告は功を奏し、身の危険を感じた清丸は、潜伏先から福岡県警に自首。
この清丸を東京の警視庁に移送するため、警視庁警備部警護課SPから銘苅と白岩、
警視庁捜査一課から奥村と神箸、福岡県警から関谷という5人の精鋭が選ばれ、移送チームが組まれる。
日本中の注目を集め、日本中から狙われる中、東京へ向け、清丸の移送が始まるが…。
 
 
間もなく2013年5月15日に開幕する第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に
今年は日本の作品が2本選出される快挙。 一本は是枝裕和監督の『そして父になる』、
そしてもう一本は木内一裕の小説を三池崇史監督が映画化した本作品。
是枝は分かるけれど、三池はカンヌっぽくないような…。 とにかく試しに観てみることにする。
 
 
物語を端的に説明すると、福岡県警に自首してきた少女暴行殺人犯・清丸を
敏腕SPらで構成された5人組が、東京の警視庁まで48時間以内にお届けしようと奮闘する
福岡東京間1200キロの殺人鬼移送ロードムービー
 
…なんて言うと、ほのぼの楽しげですらあるが、これが命懸けの重労働。
そもそも犯人・清丸が惨殺した少女は、資産1000億円とも言われる財界の大物・蜷川隆興の孫娘。
孫を殺され憤慨した蜷川が、全国紙に殺害をお願いする全面広告を出し
清丸の首に10億円という破格の懸賞金をかけたのだ(↓)。
 
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もうこうなると大変。 日本(ほぼ)全国民が、10億円狙いのバウンティ・ハンターに豹変。
行く先々で刺客が現れ、その度に繰り広げられる死闘。
ひとつの難所をクリアして先に進んでも、また次の難所…という展開が、まるでコンピューターゲームのよう。
「本当に怖いのは一般人ではなく、訓練を受け武器を持つ者」と
警察の人間を警戒する推測には、なるほどと納得。
身内である警察をも信用できず、四方八方敵ばかり。
 
 
 
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                                                         (クリックで拡大) 
出演は、少女暴行殺人犯・清丸国秀に藤原竜也、
孫娘・知香を殺した清丸の首に懸賞金をかける大富豪・蜷川隆興に山崎努、
清丸の移送チームには、警視庁警備部警護課SP銘苅一基に大沢たかお、
同じくSPでシングルマザーの白岩篤子に松嶋菜々子、
警視庁捜査一課の奥村武に岸谷五朗、奥村の部下・神箸正貴に永山絢斗、
福岡県警の巡査部長・関谷賢示に伊武雅刀など。
 
藤原竜也は、あのガタガタの歯並びが、この先中年になっても、美男として俳優業を続けていくなら
致命的な欠陥だと思うが、今回の役にはもってこい。
ハリウッドスターのような白く輝く完璧な歯並びでは、裕福な成功者に見えてしまい
社会の底辺で生きてきた卑屈なサイコパスという下流感を醸さないから。
 
その藤原竜也や山崎努は別として、出演者の顔ぶれが、テレビ向けの人選という印象が無きにしも非ず。
演技も全体的にテレビ向けの大芝居で、特に岸谷五朗の大袈裟な芝居が、鼻につく。
あの松嶋菜々子が、幾度となく「ババァ」だとか「オバさん臭い」と罵られてしまうのは、ちょっと新鮮。
 
あと脇では、新神戸駅で、子供を人質に清丸を殺そうとする男が気になった。
『欽ドン!良い子悪い子普通の子』の‘フツオ’の面影がある中年おやじ。
マサカね…と思いつつ、クロージングクレジットを見ていたら、本当に長江健次とあった。
欽ちゃんファミリーまでもが、10億円に目がくらみ、犯罪を犯してしまうとは、世も末ヨ。
 
 
 
撮影は、国内のみならず、一部台湾でも行われている。
昨年、撮影のため高雄を訪れた主要出演者を、あちらのメディアが紹介しているのを見て(↓)
私は本作品の存在を知った。
 
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分刻みの密着取材から、永山絢斗が瑛太の弟だということまで説明する“痒い所に手が届く”レポ。
 
私は、三池崇史監督作品の中では、中国を舞台にした『中国の鳥人』
フィリピンを舞台にした『天国から来た男たち』など“アジアもの”が好きなので
本作品にも幾らかの期待が有ったのだけれど、実際には作中台湾らしい風景が皆無で残念。
日本では新幹線での撮影に許可が下りないので、台湾の新幹線を使って撮影したとのこと。
あくまでも日本という設定なので、車内も駅のホームも、看板や広告が日本語の物に替えられている。
どこかに漢字だらけの看板でも残っていないかと、頑張って粗探ししたけれど失敗。 
唯一おかしいと思ったのは、行き先などを表示する車内(車両端のドアの上)の電光掲示板。
確か普通は日本語と英語が交互に表示されるはずだが
本作品の新幹線では、ずっと日本語で“次は岡山”であった。
なお、参考までに、台湾の新幹線・台灣高鐵 Taiwan High Speed Railに関しては、こちらから。
 
 
 
 
『藁の楯』というタイトルの意味は?
鑑賞前は“楯 made of 藁”、つまり金属製の強固な楯ではなく
藁で出来た役立たずな楯を意味するのかと思っていたけれど
今は“藁を守る楯(=SPら移送チーム)”という意味なのかしらぁ、と。
この場合の“藁(=清丸)”は、取るに足らないクズという意味?
実際には、藁もなかなか人様の役に立つ物だけれど。 俵とか、麦わら帽子とか、呪いの藁人形(!?)とか…。
 
前述のように、まるでゲームのような展開で、終始どきどきハラハラさせられた。
さらに、クズを命懸けで守るという任務について、徐々に湧き上がる疑問や葛藤など、心理描写も絡み
観客を飽きさせないエンターテインメント作品になっているけれど、映画というよりテレビドラマ的。
鑑賞前に疑った通り、カンヌ向きの作品という印象ではない。
これがパルムドールを獲るなどという珍事は起きないであろう。
今回コンペティション部門に入選している他のアジア作品、是枝裕和監督の『そして父になる』
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『天注定~A Touch Of Sin』も観たい。
それら2本の方が、自分好みである予感。
『そして父になる』は2013年10月公開。 『天注定』は、今年の東京Filmexに期待しちゃって良いですか?

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