日本。母子家庭で育った龍太は、母と共に魚市場で働く、快活な28歳。
ある日、女手ひとつで自分を育ててくれた母・美智子が突然他界。
この母の死をキッカケに、龍太は、自分の本名が“龍天豪”で、台湾に実の父と双子の兄が居ることを知り
早速その地へ向かう。
台湾。温泉旅館・龍湯の跡取り息子・天賀は、子供の頃から病弱だったこともあり、気難しく身勝手な性格。
酷くなる一方の病気を治療するため、主治医と共に日本へ。
そして、天賀と入れ替わるように台湾の地へ下り立った龍太。
天賀と瓜ふたつの姿に、誰もが龍太を天賀だと思い込み…。
2013年7月、
ホームドラマチャンネルでスタートした台湾ドラマ、

『1/2の両想い Spring Love~美人龍湯』が、5ヶ月後の年の瀬に、全22話の放送を終了。

(クレームは一切受け付けません)
★ 概要

2012年に楊貽茜(ヤン・イーチェン)と共同監督した映画『寶米恰恰~Cha Cha for Twins』が
『ボーとミーのチャチャ』という邦題で、今年大阪アジアン映画祭で上映されているが、私は未見。
ドラマも撮っており、『我的完男人~Who's The One』など。いずれにせよ私は未見。
本ドラマでは、一人二役の双子を同画面に登場させたり、ヒロインを特殊メイクで肥満に仕立てたり
台湾が誇る最新技術(?)を駆使。
我々日本人にとっての見所は、ドラマの所々に感じられる
日本色。

双子の主人公の片割れが日本育ちという設定で、日本人が出演し、日本語も飛び交ったりする。
★ 物語
台湾老舗旅館・龍湯の御曹司・守成と日本人女性・美智子は相思相愛で結ばれ双子の男児、天賀と天豪を授かるが、当時龍家の家長だった守成の母親の猛反対に遭い
美智子は下の息子・天豪だけを連れ、止む無く日本に帰国、天豪に“龍太”という日本名を付け
女手ひとりで育てることに。一家の過去も兄弟の存在も知らぬまま
天賀と龍太それぞれが台湾と日本で離れて成長し、26年が経った時、美智子が他界。
美智子の遺品から、父親が台湾人であることを知った龍太は台湾へ。
折りしも、治療のため日本へ渡った病弱な天賀と入れ違いになり
龍太が天賀に成りすまし
台湾の温泉郷で過ごすようになった事から動きだす物語。

お話の導入部はそんな感じだが、色んな要素が無駄にテンコ盛りである。
26年前、古風で厳格な祖母によって引き裂かれた主人公の父母は、まるで悲恋のロミオとジュリエット。
こうして兄弟の存在を知らずに二国に分かれ、別々に育った性格正反対の双子の確執。
龍太が母の死後初めて行った第二の故郷・台湾で
傾きかけた実家の温泉旅館“龍湯”を立て直そう頑張る崖っぷち旅館再建奮闘記。
実は、この温泉地には、もう一軒“美人湯”という老舗旅館があり、長年龍湯とはライバル関係。
長閑な温泉郷を舞台に脈々と続く2軒の温泉宿バトル。
また、ワケ有って龍湯に修業にやって来た美人湯の娘・人美と龍太が接近し、ロミオとジュリエット再び?
しかもそこに、龍太を追って日本からやって来た温子、温子にひと目惚れした人美の兄・人虎が参戦し

さらに、日本での病気治療を終えた天賀が帰国し、龍太と鉢合わせし、事態は益々こじれる…。
★ キャスト その① : 主人公

またまた「あっちゃぁぁー…」とタメ息つかずには見ていられない賀軍翔(が・ぐんしょう)。
一人二役で演じる一卵性双生児の兄と弟に見た目で差をつけるためとはいえ
弟・龍太のもっこりヘアーが痛すぎる賀(が)サン…。いや、もこもこカールにセットしなくても
ベースになっている茶髪の時点ですでに
アウト。このイケていないヘアーが

郷愁を誘う昭和の懐かし系アイドル顔とその顔にこってり塗られたドーランの質感と相俟り、野暮ったさ倍増。
難しい日本語の台詞に挑戦した努力は買うが、“日本育ち”という設定は、あまりにも無理矢理。
また、ヒネクレ者の兄・天賀の「俺ってワル」と言わんばかりのクサい演技は
『悪魔で候~惡魔在身邊』の頃から進歩無し。
もう30だし、いい加減兵役に行って、それを機に180度の方向転換を計るべし。
★ キャスト その② : ヒロイン

Popu Ladyの大元は、これまで『人間万事塞翁が犬』、『結婚って、しあわせですか THE MOVIE』と
2本の映画作品で見ているけれど、テレビドラマでの大役は恐らくこれがお初のはず。
ドラマ前半では、肉襦袢をたっぷり着込み、アイドルらしからぬおデブちゃんに扮装。
中盤、ダイエットに成功し、ほっそりスッキリ可愛く変身!…と言いたいところだが
元々今どきのアイドルにしてはふっくら気味の大元、肉襦袢を脱いでも激変せず、ちょいポヨ。
テレビは太って見えるので、実際には結構華奢なのだろうけれど、それを考慮してもバレリーナはキツイ…。
踊るシーンでは下半身を吹き替えているが、それでもなお不格好。贔屓目に見ても、コンテストに勝ち抜き
アメリカ留学を勝ち取る天性のバレリーナからは程遠い。なぜ敢えてバレリーナという設定にしたのか?!
せめてバリ舞踊とかポリネシアンダンスとか、もう少し体型に目を瞑れる踊りにすれば良かったのに…。
★ キャスト その③ : その他

シンガーソングライターの陳乃榮は、『ハチミツとクローバー~蜂蜜幸運草』での飄々とした盧山崎役が
合っていて、すごく好きだったのだけれど、このドラマではイヤミな奴をねっちり演じる。
“鋼琴王子(ピアノ王子)”らしく、ピアノを弾くシーンも有り。また挿入歌には、自身の楽曲が使用されている。

同時期に台湾で活動を開始した千田愛紗にやや遅れをとっている印象だった佐藤麻衣だが
吉本興業に移籍してから、徐々に活動の場が増えてきたように見受ける。
決して不美人ではなく、むしろ可愛いのだろうけれど、ヘアメイクのせいか
“運命”と書いて“さだめ”と読んでしまいそうな湿っぽい情緒を醸す。日本に帰国して演歌歌手に転身したら
トラックの運ちゃんや田舎のおじいちゃんたちから熱烈に支持されることウケアイ。
★ くるくるパーマ
近年、メイクや衣装がみるみる洗練されてきた台湾偶像劇であるが
このドラマの髪型は、リアリティやトレンド感より、敢えて漫画チックなスタイリングを意識しているのだろうか。
取り分け印象に焼き付くのが、主人公・龍太、天賀にライバル心を燃やす人虎、龍湯の従業員・阿潘の髪。
3人とも同じコテを使ってクルクルにカールしている?人虎の髪型なんて…
花輪くん+スネ夫+花形満+BIG BOYボビー+野口英世÷5=人虎の髪型
★ ロケ地
(クリックで拡大)
老舗温泉旅館という設定の龍湯であるが、
撮影に使われたのは、本物の温泉旅館ではなく

日本統治時代に建てられた日本式建築で、新北市の市定古蹟にもなっている臺陽礦業公司平溪招待所。
温泉部分だけは、陽明山天籟溫泉會館で撮影した模様。
ライバル美人湯の方は、日本人観光客も結構利用していると思われる北投の温泉ホテル、
北投麗禧溫泉酒店(グランド・ビュー・リゾート・ベイトウ)。
「日本のロケ地は…」と言いたいところだが、
日本という設定の場所も、実は台湾。

龍太が母と働く魚市場は台中市南屯の哈魚碼頭觀光魚市、
神社は日本統治時代の産物で、苗栗にある通霄神社。(絵馬に書かれた日本語がかなりテキトー …笑)
★ テーマ曲
オープニングはPopu Ladyの<好想變蘋果>、エンディングは炎亞綸(アーロン)の<被忘錄>。炎亞綸はバラードのイメージが強かったけれど、こういう突き抜けた感じも良いのでは。
と言うことで、ここには後者を。
あらあら、一体賀サンに何回臨死体験させれば気が済むの~?!
賀サンってば、『晴れのち女神が微笑んで~美樂加油』に引き続き、本ドラマ(21話)でも、心肺停止で
医師から一度死亡宣告が出されたにも拘わらず、愛する女性の懸命な働きで、奇跡の甦生…!![]()

台湾の病院では、素人の処置で簡単に甦生する状態で“死亡”と断定されてしまうから
恐ろしくて、おちおち入院できない…。 まぁ、ここがこのドラマで唯一面白かった部分なのだけれど。
あっ、あと、羅北安(ルオ・ベイアン)扮する北野の事務所に貼られている
「まワリを気にせず自分がよいと思ったことにトライ」、「闘いの神なので勝負事の前につぶやきまくってます」
という日本語の標語(?)も、素で間違えたのか狙っているのか判断しかね、目が釘付けになってしまった。
現実味の薄い内容といい、大袈裟なドタバタ演技といい、漫画ちっくな髪型といい、
コレ、現地台湾では何歳くらいの視聴者を想定して制作されたドラマなのか。小中学生向けドラマならば納得。
ただ、一般的に、ここ日本で台湾偶像劇を観るのは、20代~50代のOLや主婦が中心と思われる。
ましてや懐かしの昭和を思い起こさせてくれる賀サンを出すなら、ターゲットはシニアでしょ。
柔らかそうなふっくらアイドル大元だって、男性ウケは良さそうだが
女性視聴者が憧れたり共感するタイプではない。
日本絡みという理由だけで、最後まで歯を食いしばって観たけれど
物語が退屈なのにキャストにも魅力が感じられず、ついでに日本語字幕もNGの駄作であった。
ホームドラマチャンネル、水曜深夜1時15分のこの枠は来週から
『LOVE♥NOW ホントの愛は、いまのうちに…~真愛趁現在』を放送。
同局、火曜に放送の『逆転!赤ずきん~大紅帽與小野狼』もゲンナリだし、いい加減本気出して下さい。
…と言うか、もう偶像劇は食傷気味なので、そろそろ日本の業者も取り扱う作品を、この手の偶像劇から
大人の視聴に耐えられる観応えのある良作にシフトしていただく事を切に願う。