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映画『名探偵ゴッド・アイ』

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【2013年/中国・香港/130min.】
4年前に視力を失って以来、卓越した想像力を使った独自の捜査で難事件を解決し
報奨金で生計を立てている探偵・莊士敦は、ある晩、容疑者確保まであと一歩というところで
香港警察の司徒法寶に手柄を横取りされてしまう。
訳も分からぬまま上司・司徒法寶に加担した女刑事・何家彤であったが
この一件で莊士敦が伝説の名探偵であると知り、個人的に捜査を依頼。
何家彤は、疾走して10年以上になる3歳年下の友達・小敏の行方をずっと気にしていたのだ。
莊士敦はこの依頼を受けてくれるが、助手として捜査を手伝うことになった何家彤は
あまりにも奇矯な彼に振り回されることになり…。
 
 
杜峯(ジョニー・トー)監督最新作が、シネマートで開催の
“冬の香港中国エンターテイメント映画まつり”上映作品の一本として、早くも日本上陸。
日本で比較的上映され易い杜峯監督作品ではあるが
それにしても現地での公開から半年も経たずに日本のスクリーンで鑑賞できるとは思っていなかった。
 
 
物語は、盲目の名探偵・莊士敦が、中年お嬢サマ刑事・何家彤を助手に
彼女の子供時代の友達・小敏の失踪事件を追う謎解きライトコメディ
 
シャーロック・ホームズにはワトソン君、明智小五郎には小林少年と
古今東西、名探偵には漏れなく助手が付いてくるもので、本作品の名探偵・莊士敦には何家彤が。
いわゆる“尊敬に価する人物”とは言い難い莊士敦であるが
それでも何家彤は彼を崇拝し、一方通行の恋心が芽生えてしまうから、余計に振り回されてしまう…。
 
莊士敦が過去の名探偵と一番異なる部分は、全盲であること。
目が見えない分、鼻、耳、舌といった他の感覚器官の感度は抜群。
室内で投げたピンポン玉の音と戻ってくる速度だけで、何家彤の住まいが3000平方フィートの豪邸だと
瞬時に計算してしまう感覚と頭脳の持ち主(…実際には3600平方フィートであったが)。
取り分け強いのは、食への執着。劇中、食事のシーンはとても多く…
 
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屋台メシから高級レストランまで、食べて食べて食べまくる。
無駄に食い意地が張っているわけではなく、塩加減で料理人の心理を読んでしまうことも。
 
 
また、目が見えない分、妄想とも言える想像力が逞しい。
ぽわ~んと妄想するのではなく、アグレッシヴ版関根勤って感じに過激に妄想。
この妄想を基に、何家彤を使い、再現ドラマを演じ、捜査に役立てる。
 
 
 
イメージ 3                                                    (クリックで拡大) 
出演は、盲目の名探偵・莊士敦に劉華(アンディ・ラウ)、
莊士敦を慕い助手をする女刑事・何家彤に鄭秀文(サミー・チェン)、
莊士敦のライバル、香港警察の司徒法寶に郭濤(グォ・タオ)、
莊士敦が想いを寄せるダンス教師・丁丁に高圓圓(カオ・ユアンユアン)など。
 
本作品は、杜峯監督×劉華×鄭秀文による4本目の合作であることも話題。
過去のコラボ作を今一度振り返ってみると…
 
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上から順に、『Needing You』(2000年)『ダイエット・ラブ』(2001年)、
そして『イエスタデイ、ワンスモア』(2004年)。2000年から立て続けに3本撮られているのに
3本目からこの4本目までは9年空いていたのか。3人コラボ作は、他の杜峯監督作品に比べ軽妙で好き。
 
 
今回の劉華は、ビシッと決めたスーツ姿だけ見ると、いつもの完璧な劉華なのだが
実は身勝手でケチでガツガツしたところも有るエキセントリックな男。
物語が始まって間も無く、水を吹くマーライオンの如く、豪快にゲロを吐く姿を見て
今回の劉華捨て身の覚悟を感じ取る。
出演作の非常に多い劉華であるが、盲目の役は過去にも演じていましたっけ…?今パッと思い浮かばない。
盲目の役というと、梁朝偉(トニー・レオン)の方が印象に残っている。
 
今回の鄭秀文は、『イエスタデイ、ワンスモア』で扮したリッチな女性に
『ダイエット・ラブ』で扮した自信無さ気な子分キャラをミックスした感じ。
下っ端刑事なのに、なぜリッチかというと、遺産があるからで
九龍塘對衡道にある3600平方フィートのフラットにひとり暮らし。
それでいて、タカビーなお嬢キャラではなく、おっとりしていて簡単に言い包められてしまう。
いつも一生懸命で憎めない女性。鄭秀文は、こういう役が上手い。
彼女を美人だと思ったことは無いけれど、魅力的なコメディエンヌ。
 
 
“これぞ香港!”な杜峯監督作品にも、近年、大陸俳優の起用が増えているが、本作品もそう。
今回一番大きな役についている大陸俳優は、莊士敦のライバル司徒法寶役の郭濤。
郭濤は、杜峯監督のこの前の作品、
日本での公開も決まっている『ドラッグ・ウォー 毒戦』にも出ているそうで。
本作品で扮する司徒法寶は、莊士敦と犬猿の仲なのかと思いきや、互いに毒づき合える“悪友”。
台詞は広東語に吹き替えられている。
コメディ俳優として人気の郭濤には、ずんぐりムックリのイメージを勝手に抱いていたが
今回改めて全身を見たら、スラーッと長身で案外恰好が良い。実際に会ったら、私、ホレるかも。
 
趙又廷(マーク・チャオ)との交際が噂される高圓圓にとっては、恐らく3作目の杜峯監督作品だが
日本で一般劇場公開されたのは、もしかして本作品が初めてか。
本作品では、前髪を下ろしている現在のシーンより、額を出している過去のシーンでの方が、ずっと美人。
高圓圓の台詞は北京語。
 
 
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あと、私は知らなかったけれど、バレーボールのコーチ役で出演している長身の女性は
中国ナショナルチームに所属し、2004年アテネ五輪で金メダルを獲得した
張萍という本物の有名バレーボール選手らしい。身長187センチだって。
 
他、林雪(ラム・シュー)姜皓文(キョン・ヒウマン)といった
杜峯監督作品常連の香港人俳優ももちろん出演。
元タクシー運転手のシリアルキラー陳廣に扮する姜皓文の妙なキレっぷりを見ていたら
台湾偶像劇でお馴染みの男優・那維勳(ナー・ウェイシュン)が重なった。
ボサボサの髪で顔が覆われているから、注意していないと姜皓文だと気付かないかも。
 
 
 
 
 
何家彤の友達・小敏が失踪したのは、香港が中国に返還される直前の1997年6月20日。
あの頃香港を捨て、他国に移民した子供が成長し、中国・珠海で高級鉄板焼き店のオーナーとは
近年の中国、香港の動向を、本作品で改めて振り返り、時の流れにしみじみ…。
無理やスキが感じられ、ミステリーとしてはイマイチであったが
劉華&鄭秀文コンビは相変わらず絶妙で、ふたりのやり取りを傍観するのは楽しい。
 
『名探偵ゴッド・アイ』という邦題は、よくよく考えると変じゃないか?
だって、主人公の目はまったく機能していないのだから。
神がかっているほど優れているのは、彼の鼻や耳や舌、
つまり、ゴッド・ノーズ、ゴッド・イヤー、はたまたゴッド・タンなのでは…?
ポスターやチラシの画像も、日本で使われているハードボイルド調の物より
あちらで使われている物(当エントリのトップの画像)の方が、作品のイメージに合っているように感じる。

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