Quantcast
Channel: 東京倶樂部★CLUB TOKYO
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

映画『ブリングリング』

$
0
0
イメージ 1
 
【2013年/アメリカ・フランス・イギリス・日本・ドイツ/90min.】
アメリカ、ロサンゼルス郊外カラバサス。
インディアンヒルズ・ハイスクールに転校してきた内向的な青年マークは
レベッカという明るい女の子に声を掛けられ、親しくなる。
ある晩、レベッカに誘われ、セレブの留守宅に侵入。
戸惑いながらも、案外簡単に盗みが出来てしまうことに感心するマークに
今度は「パリスの家に行きたい」と言うレベッカ。
ふたりは、芸能ニュースサイトで、パリス・ヒルトンがパーティーに出席するため、家を空けることを知り…。
 
 
2014年初映画はソフィア・コッポラ5本目の長編監督作品。
本作品は、雑誌<Vanitu Fair>に掲載されたナンシー・ジョー・セールズによる記事、
(『プラダを着た悪魔~The Devil Wears Prada』ならぬ…)
<容疑者たちはルブタンを履いていた~The Suspects Wore Louboutins>がベース。
…と言うか、元々この記事は実際に起きた事件について書かれた物なので、映画は実話ベース。
 
 
その事件とは、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のカラバサスで
2008年10月から2009年8月にかけて起きた青少年による窃盗事件。
“The Bling Ring(ブリングリング=キラキラしたヤツら)と呼ばれるティーンの窃盗団が
セレブリティの邸宅に侵入し、盗みを働き、被害総額は300万ドルにものぼったという。
 
悪い仲間とツルんで泥棒するティーンなんて、どこの国にも大抵居るもので、あまり珍しく無いのだけれど
この窃盗団に、映画化される程の話題性が有るのは
ロスという土地柄、被害に遭ったのが、世界的に有名なハリウッド・セレブだった事も一因であろう。
その被害者は、パリス・ヒルトン、オードリーナ・パトリッジ、ミーガン・フォックス、
オーランド・ブルーム&ミランダ・カー夫妻(その後離婚したので、今となっては“元夫妻”)、
リンジー・ローハンといった豪華な顔ぶれ。
 
日本だと、ここまで有名人が集中的に住んでいる地域が無いし
それ以前に、知名度やお金をこれ程までにもつ世界的セレブがほぼ皆無。
仮に孫正義柳井正といった富豪のおじさんちに泥棒に入っても
ティーンエイジャーを狂喜させるお洋服や靴で溢れかえっているとは考えにくい。
そもそも仲間と泥棒するヤンキー側も、ハイエンドな品をほとんど知らず、渋谷109の服くらいで満足しそう。
 
そんななので、ブリングリングの事件は、アメリカならではと感じる一方で
ソーシャルメディアを活用する点や、悪事を働いておきながら、当事者たちに犯罪の意識が希薄という点は
アメリカでも日本でも最近の若者に共通と感じる。
ブリングリングは周到な準備などせず、気軽に人様のお宅に侵入。指紋など証拠を残さない配慮も無し。
知り合いに「パリスの家に入ったの?」と聞かれれば、あっさり「そうよ」と肯定するし
自慢げに戦利品を持ち歩いたり、撮った写真をSNSに投稿したり、悪びれた様子がまったく無い。
 
犯罪のレベルこそ差が有れど、根本的には世界中どこにでも居る現代の勘違いヤングの話だから
日本でもしばしば報道される事件と重ね、タメ息ついたり、ムカッときたり。
…でも、それだけ。事の発端から逮捕までをシンプルに見せてはくれても
一本の“歪んだ青春群像劇”と呼ぶには、うーン、何かが物足りない。
 
 
 
そんな訳で、私にとって、本作品一番の見所は、パリス・ヒルトンのお宅拝見。
実際の事件で被害者となった彼女が、撮影に自宅を貸しているから、ホンモノの“パリスんち”を覗ける。
 
イメージ 2
 
クローゼットに並べられたおびただしい量の服や靴は圧巻。
代官山や青山辺りのセレクトショップでは到底足元にも及ばない豊富な品揃え。
きっと自分でも、何を購入して所持しているのか、どこに何を置いたのかも覚えていないに違いない。
実際、大らかな(ズサンな?)パリス・ヒルトンは、ブリングリングの侵入を8回も許してしまったようだ。
(せいぜい3回目くらいで気付けヨ、と言いたい。)
 
また、自分のポートレートや、自分の顔がプリントされたクッションで
自宅をデコレイトする自己愛の強さも印象的。
日本だと、自分の顔をプリントしたTシャツを着る高須クリニックの院長や
同じく自分の顔をプリントしたアニヤハインドマーチのバッグを持つ假屋崎省吾をテレビで見たことがある。
つまり…
イメージ 3
 
本質的にはパリス・ヒルトンと高須院長は同類ってことよねぇ…?? (ついでに髪の色まで同じ)
 
 
あと、本作品では、セレブのお宅のセキュリティの甘さにも驚かされた。
あれ位のお金持ちなら、警備員を常駐させているものだと思い込んでいた。
警備員を雇わないなら、せめてセコムでしょ。玄関マットの下に鍵を隠すなんて、あまりにも古典的…。
 
 
有名人のスケジュールや住所がネット上でダダ漏れなのも考えもの。
日本にも「今晩は○○でパーティーです♪」とか「明日から一週間海外ロケ」などと
twitterで呟く有名人が居るけれど、ちょっとでも素性が知れている人は、気を付けないと危なくない…?
 
 
 
イメージ 4
                                                         (クリックで拡大) 
窃盗団ブリングリングのメンバーに扮するのは、レベッカ・アン=ケイティ・チャン、
マーク・ホール=イズラエル・ブルサール、ニッキー・ムーア=エマ・ワトソン、
サム・ムーア=タイッサ・ファーミンガ、クロエ・テイナー=クレア・ジュリアン
 
この中で最もメジャーなエマ・ワトソンが主役だと勝手に思い込んでいたら
物語の中心人物は、ケイティ・チャン扮するレベッカと、イズラエル・ブルサール扮するマークであった。
実際の事件でも、主犯格はレベッカに当たるレイチェル・リー
彼女にそそのかされ罪を重ねたマークに当たるニック・プルーゴが同等の刑に処されている。
 
イメージ 5
 
本物のレイチェル・リー(↑)は、北朝鮮からの移民である母と普段はカラバサスで暮らし
父である韓国人ビジネスマンのラスヴェガスの家で逮捕されたというから、血統的には恐らく100%コリアン。
そんな事から、韓国の血を1/4引くケイティ・チャンが起用されたのであろう。
平たいドール顔のケイティ・チャンは、デヴォン青木のような“欧米で好まれるアジア系の混血”といった印象。
アジアだと逆に道端ジェシカのような西洋色のより濃い混血が憧れの対象になりがちなので
なかなか人気が出にくいかも知れないが、ハリウッドでは今後どんどん売れていくかも…?
 
自分の容姿に自信が持てず内向的なマークの元となったニック・プルーゴ(↑画像右)は
何枚かの画像で見る限り、別に不細工ではない。むしろカッコイイ部類なのでは。
作中明言はされていないが、パリス・ヒルトンの11フィートの大きなルブタンのピンヒールを履いたまま
自室のベッドでゴロゴロしている彼に、ゲイ疑惑が湧く。
 
 
注目が集まるエマ・ワトソンは
『ハリー・ポッター』シリーズをほとんど観ていない私にとっては、すんなり受け入れられる役柄だけれど
長年可愛らしいハーマイオニーちゃんのファンをやっている人々は
ちょっとスレてしまった彼女を見て軽いショックを受けるかしら。
“引き寄せの法則”の『ザ・シークレット』にドップリ傾倒するヤバいママに育てられ
自身も根拠が有ろうと無かろうとやたら前向きで、無駄に弁が立つ女の子。
 
 
 
 
学校で皆から「キモい…」と疎まれていたマークにレベッカが積極的に声を掛け、友達になった流れを
当初やや不自然に感じながら作品を鑑賞していた。
最後の最後になって、マークは「レベッカは君に罪を被せて逃げた」、「君は利用されたんだ」と言われ
「そんな事ない!レベッカはヴェガスの父親に会いに行ったんだ!」と反論するものの
黙りこくって護送される彼のラストの表情が切ないこと…。
実際のとこ、レベッカはどういうつもりだったのか。本当に最初から利用するつもりでマークに接近?
韓国系のレベッカと、恐らくゲイで疎まれ者のマーク、打算ではなく
マイノリティ同士、本当に気心が知れていたのではないだろうか。
…と、まぁ、登場人物の背景などを想像すると、色々考えさせられもするけれど
全体的には、ブリングリングによる窃盗事件を紹介したというだけで
それ以上、観ているこちら側に何かを訴えかけてくる作品ではなかった。
犯罪集団を美化する必要など無いにしても
ソフィア・コッポラ監督らしい甘酸っぱさに欠けるから、青春映画としてイマイチだし
このような若者を生んでしまう歪んだ現代社会を斬る社会派作品という程の鋭さも感じられない。
基本的にソフィア・コッポラの作風は好みに合うが、全監督作品の中で、本作品は今のところワースト。
ただ、90分と尺が短いので、飽きずにそれなりに楽しめる。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

Trending Articles