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映画『グォさんの仮装大賞』

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【2012年/中国/104min.】
妻を亡くし、妻の連れ子に家を明け渡した75歳の老葛は
友人・老周が暮らす老人ホーム・關山老人院に入居する。
慣れない環境、肉親との確執、肉体の衰え、孤独感…。
悶々としていたある日、老周が仮装を競う人気番組『超級變變變』に出場しようと提案。
多くの入居者たちがこの話に乗り、練習に励み、ホームは一時活気づくが
これを知ったホーム職員や家族が、遠く天津まで収録に行くことを問題視し、番組出場を禁じてしまう。
その頃、老葛は老周の異変に気付く。
実は老周、重い病を患っており、番組に出場することと海を見ることだけが、最後の望みだという。
なんとか老周の夢を叶えたいと思った老葛は、ホーム脱出計画を練り始め…。
 
 
 
『老人ホームを飛び出して』の邦題で
2012年第25回東京国際映画祭に出品された中国の張楊(チャン・ヤン)監督作品が
タイトルを改め一般劇場公開。
張揚監督作品は、『胡同(フートン)のひまわり』(2005年)はボチボチであったが
『こころの湯』(1999年)のような人情モノは苦手。
この新作からは、直感で人情モノのニオイを感じ取り、東京国際映画祭ではチケットを取ろうとも思わなかった。
この度、上映時間が好都合だったこともあり、消極的に鑑賞。
 
余談になるが、原題は“老人ホームを飛び出して”を意味する『飛越老人院』
中国では、ジャック・ニコルソン主演の名作『カッコーの巣の上で』(1975年)を
“精神病院を飛び出して”を意味する『飛越瘋人院』と呼ぶようだ。
(台湾では、“カッコーの巣を飛び出して”を意味する『飛越杜鵑窩』)
 
 
物語は、それぞれに悩みや孤独を抱え、これといった生き甲斐も無いまま
老人ホームでただただ生き長らえていた老人たちが、仮装コンテスト番組に出場するという目標を見付け
周囲の反対を振り切り、ホームを抜け出し、コンテスト会場のある天津へ向けバスで旅する
人生黄昏期のシニア悦びと尊厳のためのロードムーヴィ。
簡単に言ってしまうと、“シニア版『リトル・ミス・サンシャイン』”(2006年)。
 
『リトル・ミス・サンシャイン』で目指すコンテストは少女版のミスコンで
本作品で目指すのは『超級變變變』という仮装を競うテレビ番組。
中国版『欽ちゃんの仮装大賞』といった雰囲気で、採点方法も酷似。…と思ったら、それもそのはずで
『欽ちゃんの仮装大賞』は『超級變變變』のタイトルで、内容そのままに台湾などで放送されているそう。
本作品の中の『超級變變變』では、中国人司会者が番組を進行しており
“『欽ちゃんの仮装大賞』のフォーマットで制作された中国の姉妹番組”という感じ。
日本は、その後にも少し物語に絡んでくる。
 
「老人ばかりで行かせられない!」、「何か起きたらどうするんだ!?」と周囲を反対させる
老人ホームからコンテスト会場までの距離は、一体どれくらいなのか気になるところ。
コンテスト会場は、作中繰り返し言われているように天津
老人ホームは、車のナンバープレイトに記された“宁”の文字から、寧夏であると推測される。
寧夏→天津の距離感は、まったく掴めない。日本に例えると、我が街・東京からどれ位の距離なのだろう。
広大な中国のこと、周囲が老人の身を案じるのも仕方がないほど結構な距離が有るのであろう。
とにかく、内陸部で生まれ育った老周が、「一度海を見てみたい」と
外国への玄関口となる沿岸の街・天津に行きたがるのは納得。
 
 
 
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出演は、息子との確執に心を痛める老葛に許還山(シュイ・ホァンシャン)
老葛の友人で、番組参加を提案する老周に吳天明(ウー・ティエンミン)
老人ホームの院長に顏丙燕(イエン・ビンイエン)
父・老葛を許せず、絶縁状態でいる老葛の実の息子・大葛に韓童生(ハン・トンション)などなど。
 
老葛に扮する許還山は醸す雰囲気が上品で、元バスの運転手という設定より
元会社役員とか元大学教授といった佇まい。
 
老周役の吳天明は、親しみ易い丸顔で、落語家や喜劇役者のようだけれど
『古井戸』(1987年)や『變臉 この櫂に手をそえて』(1996年)で知られる映画監督。
この老周が作品冒頭で発表するパフォーマンスが…
 
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最近アメリカから日本に逆輸入されたパフォーマー蛯名健一のHead-Dropping!
 
話は少々反れるが、院長役の顏丙燕は、孔子の四大弟子のひとり顏回/顏渊の末裔らしい。
老葛の息子・大葛の役は、最初、倪大紅(ニー・ダーホン)が演じているのかと思ったが、よく見たら違った。
扮する韓童生、目元、特にたれ気味の大きな涙袋が倪大紅に似ている。篠井英介にも似た不気味な感じ。
 
 
あと、本作品には他にも脇で有名俳優たちがチラリと友情出演している。
 
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                                                         (クリックで拡大) 
老葛の義理の息子の妻役で徐帆(シュイ・ファン)、
老人たちのバスとカーチェイスと繰り広げる一見悪そうな男役で廖凡(リャオ・ファン)、
老人たちが道中出会う蒙古族の女性に斯琴高娃(スーチン・ガオワー)、
天津の病院の医師役で陳坤(チェン・クン)といった具合。
 
馮小剛(フォン・シャオガン)監督の奥方である女優の徐帆は、張楊監督とは中央戲劇學院の同期らしい。
友情出演した本作品では、『楊家将~烈士七兄弟の伝説』で演じた白髪のママとはまったく違い、若い!  
 
 
 
 
随分前、ある中国人男性が
「中国では親を老人ホームに預けるなんて信じられないこと。罪の意識を感じる」と言った。
でも、中国はひとりっ子が多いし、共働き夫婦の多いのに、どうするのかと尋ねたら
「そう、それが問題。夫の両親と妻の両親、計4人もの老人の面倒を見ることになるから…」と。
中国からこういう映画が出てくるようになったのは
一般中国人が心の中で超高齢化社へのカウントダウンを始め
老いた親の世話や、親と子の関係、また老後をどう活き活き過ごすかといった事を
現実味をもって考えるようになったからかも知れない。 
 
作品自体は、予想していた通り、ベタな人情モノで、決して私好みでは無かった。
老人ホームもの(?)だったら『桃(タオ)さんのしあわせ』の方がずっと私好み。
でも、この作品もベタだと思いながらも、院長が言うこんな台詞(↓)にはジーン…。
「こんな事を考えたことが有りますか?我々の親は70歳前後で、あと20年生きるかも知れません。
今、親に会うのは、正月の5~6日くらい。しかも、実際に一緒に過ごしているのは、一日2~3時間。
つまり、一年で約10時間、残りの一生で約200時間。
20年って長いようですが、実際にはあと10日分くらいの時間しか一緒に居られないんです。」
よく「一生の睡眠時間は○○時間」とか「一生に食べる回数はあと○○食」と言うけれど
親と過ごせる時間をこういう風に換算されてしまうと、ただただシミジミしてしまう…。

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