早くに夫・震堯を亡くし、娘・ 巧兒とつましく生きてきた若蘭は自身も重い病に冒され、命の限界を察知する。
そこで、まだ幼い巧兒を連れ、ずっと距離を置いていた臨安にあるかつての職場、
名門織物工房・錦繡坊を訪ね、経営者の容秀滿に、巧兒を引き取り、織姫に育ててくれと頭を下げる。
その昔、若蘭と容秀滿は、姉妹の契りを結んだ大親友であったが
若蘭が容秀滿の許嫁・震堯と不覚にも恋に落ちてしまったことで、友情は崩壊し
以降若蘭は、疎遠になった容秀滿に対し、罪悪感を抱き続けながら生きていた。
許嫁を奪った若蘭を未だ許せずにいる容秀滿は
若蘭と元許嫁・震堯の娘である巧兒の引き取りを拒絶するが、その晩若蘭は永久の眠りについてしまう。
それでもなお頑なに心を閉ざす容秀滿であったが、巧兒が持っていた杼を目にし、変化が起きる。
それは、昔若蘭と交換した友情の証しである容秀滿の杼であった。
こうして幼い巧兒は、 容秀滿の錦繡坊に置いてもらえることとなるが…。

視聴を諦めた大陸ドラマ『織姫の祈り~天涯織女/衣被天下』が
2014年7月下旬、同局での一挙放送が始まったので、今度こそ視聴。
苦手です、一挙放送…。週5日、一日2話ずつ進行していくドラマを追うのは、本当にキツイ…!
しかし、そのハイペースのお蔭で、8月中旬の本日、全36話をあっと言う間に終了。
★ 概要
本作品は、
大陸の大手プロダクション上海唐人電影、


唐人と言えば、『仙劍奇俠傳~Chinese Paladin』、『射英雄傳~The Legend of the Condor Heroes』等、
特に看板俳優・胡歌(フー・ゴー)が主演するドラマで次々にヒットを飛ばし、日本の古裝劇ファンにもお馴染み。
あまりそういうのに興味が無い私にとっての唐人ドラマと言ったら
比較的最近にハマった『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』だろうか。
その続編で、2014年9月に日本での放送を控えている
『続・宮廷女官 若曦(ジャクギ) 輪廻の恋~步步驚情』もまた唐人のドラマ。
制作された順番は、この『織姫の祈り』の方が『宮廷女官 若曦』より一年前になる。
制作会社が同じだと、出演者の顔もダブるもの。
本ドラマにも、『宮廷女官 若曦』で見慣れたあんな俳優やこーんな俳優が所々に顔を出すので
彼らの“ビフォー『若曦』”も要チェック。
邦題にもなっている“織姫(おりひめ)”とは、本ドラマ主人公の職業。
ドラマは、一年に一度しか会えない彦星様と伝説の仙女を描く七夕ファンタジーではないし
(←まったくの無関係では無いけれど)、“姫”なんて聞くと、高貴な身分を想像してしまうが
この場合、織姫=機織りの女工さん。機織りの女工さんは中国語で“織女 zhīnŭ”といい、
この“織女”はまた機織りが得意だった七夕の織姫をも意味する。
日本語で女工さんに“姫”という字をあてると、プリンセスばかりを想像してしまい、ピンと来ないかも。
★ 物語
時は南宋(1127-1279)末期。
幼くして父母を立て続けに亡くし、孤児となった少女・巧兒が
母と姉妹の契りを結びながらも、恋愛のもつれで仲違いしてしまった容秀滿が経営する織物工房・錦繡坊に
引き取られたことをキッカケに、紡織の世界に足を踏み入れ、時代の荒波、幾多の困難を乗り越え
やがて故郷に工房を開き、人々に綿紡織を伝えるようになるまでを描く歴史ヒューマン・ドラマ。
主人公・巧兒の人生には何度かの転換期があり、物語は大きくいくつかのパートに分かれる。

幼くして父母を亡くした孤児・巧兒は、母の恋敵・容秀滿が経営する名門織物工房・錦繡坊に預けられ
そこで絹織物の技術を身に付けながら、姉妹のような仲間たちと共に成長していく。

戦争続きで高級品が売れず、経営難に陥る錦繡坊であったが
幸運にも、ライバル工房・彩雲坊と共に宮廷のお抱え工房に選ばれ、宮中にあがることになる。
宮中では、身分の差を越え、嘉儀公主と友達になるが、林慕飛将軍を巡り三角関係に。
巧兒は、身を引く覚悟でいたが、そんな時、師匠・容秀滿が罠にかかり、無実の罪を着せられてしまったため
巧兒らは逃げるように宮廷をあとにする。

宮廷からは無事脱出できたものの、救出してくれた幼馴染み・方は犠牲となり、半身不随。
責任を感じた巧兒は、林慕飛将軍との愛を諦め、一生方の面倒を見るために、彼と結婚し
彼の実家である有名染色工房・大方染坊の若女将となり、染色の仕事を身に付ける。
そんな彼女を待っていたのは、姑と小姑による激しい嫁イビリ。しかも、陽気で優しかった夫・方は
半身不随で卑屈になり、酒と女に溺れ、ドメスティックヴァイオレンスまで!

ようやく義母に認めてもらったのも束の間、宋は崩壊し、街は混乱。
染色工房を敵・蒙古の手に渡すまいと、義母は工房に火を放ち、自らの命も絶つ。
生き残った巧兒と方は、山奥の寺に匿ってもらい、夫婦の絆も深まっていく。
ここで、音信不通になっていた師匠・容秀滿と偶然再会。
さらに、木工の達人である風九斤という老人と出会い、彼にも弟子入り。二人の師匠を持つようになる。

山奥での穏やかな生活もそう長くは続かず、追っ手に見付かってしまうが
方が命を張って守ってくれたお蔭で、巧兒は師匠と共に山を抜け出し、より遠くを目指し乗船するも、
悪天候で転覆し、崖州に流れ着く。この地で、素朴な黎(リー)族の人々に助けられ
彼らから綿栽培や綿の扱いを学ぶ。
また巧兒から黎族には、門外不出であった錦繡坊の技術を伝授し、黎族の自立を助ける。

崖州を離れた巧兒は、生まれ故郷・烏泥へ戻り、荒れ果てた田畑で綿花の栽培を始め、
その綿花で綿織物を作ることにより、蒙古人の圧制に苦しむ村人たちには職と賃金を、
貧しい人々にも綿の安価な衣服が行き届くように努める。
人生山あり谷あり。ドラマには色々な要素が盛り込まれており
例えば
は、皇帝の寵愛や権力を巡る闘争が描かれる典型的な宮廷ドラマだし


しかし、巧兒は、数奇な運命に翻弄されながらも、偶然なのか必然なのか、人生の節目節目で、絹織物、
刺繍、染色、木工、綿花栽培、綿織物といったテキスタイルに関する技術を幅広く身に付けることになり
結果的に、綿紡織のエキスパートに。
男尊女卑の封建時代に、貧しい家の出身でありながら、手に職を付け、身を立てただけでなく
綿紡織を産業として確立し、人々に仕事と衣服を与え、地域の発展にも尽力した
あの時代には珍しい相当やり手なオンナの一代記になっている。
★ 黃道婆
このドラマ、フィクションのように思える物語だが、実は主人公・黄巧兒は
宋代末期から元代初期に実在した女性紡織家・黃道婆(±1245-1330)がモデル。
黃道婆は、松江縣烏泥(現在の上海市徐匯區華鎮)の貧しい家に生まれ、さんざん苦労した後、
海南島崖州に流れ着き、そこで少数民族・黎(リー)族から綿栽培や、綿紡織術を学ぶ。
結局崖州には30年近く暮らし、1295年頃ようやく烏泥に帰郷。
身に付けた経験を故郷に伝えたり、器具の開発も行い、地域の綿紡織術の発展に貢献。
中国で、黃道婆は、綿紡織の先駆者、13世紀の突出した紡織技術革命家として広く知られ
2003年には、故郷・上海市徐匯區華鎮に黃道婆記念館が開設されるほどの有名人らしい。
私は知らなかったが、日本では、黃道婆を“こうどうおばあさん”と呼ぶそう。
ドラマの中では、若くて綺麗なので、“おばあさん”のイメージからは程遠いが…。
今回、このドラマを観始めたことをキッカケに、私も黃道婆のプロフィールにザッと目を通してみたが
本ドラマは、実在の人物をモデルにしているからといって、実話を描いているとは言えないようだ。
登場人物の内、歴史上実在したのは、この黃道婆と
宋朝第15代皇帝(南宋第6代皇帝)・度宗(1240-1274)のふたりくらい。
あとの人物は、市井の人々は勿論のこと、皇帝の嬪妃らまでもが架空の人物。
主人公・巧兒(=黃道婆)が松江縣の貧しい家の出身で、嫁ぎ先でも苦労をして、崖州に逃れ、
そこで黎族から綿に関する様々を学び、中国に綿紡織を広めるという、ザックリした人生の流れと
南宋末期から元にかけての歴史的背景という物語の骨組みだけが、辛うじて史実で、
肉付けされたエピソードの数々はほとんどがフィクションと言えそうだ。
★ キャスト その① : 主人公を巡る恋の四角関係
(クリックで拡大)

映画で好きになった張鈞だけれど、最近台湾偶像劇に出過ぎ、女優としての価値を落としたように感じたし
何より、似たり寄ったりのラヴコメには食傷気味だったので
時代劇に出ている彼女をとても新鮮な目で見ることができた。
扮する巧兒は、貧しい孤児の出身だが、押し付けがましくひた向きさを売りにはせず、媚びた印象もなく、
自然体の努力家といったキャラクターで、好感度が高い。
知的で清潔感のある張鈞だからこそ醸せる雰囲気なのかも知れない。
ただ、聞き慣れた彼女の声が吹き替えられてしまっているので、それには違和感が…(直に耳慣れたけれど)。
最近だと、林依晨(アリエル・リン)などは、同じ台湾人女優でも『蘭陵王』で地声が使われているし
そろそろ大陸の吹き替え文化に革命が起きることを願う。

『宮廷女官 若曦』では、当初、「主演女優にしては華が無い」とあまり惹かれなかったが
話が進むにつれ、奥ゆかしまでに地味目な天然顔が、お直し全盛の昨今に新鮮に感じられてきた劉詩詩。
私の目がすでに彼女に慣れていることもあり、本ドラマでは最初から可愛く思えた。
劉詩詩が清朝に仕える女官の一年前に、このドラマで演じたのは、南宋のとても身分が高い公主。
お姫様気質で多少ワガママではあるが、気にくわない奴に毒を盛るような悪女ではないし
逆に、か弱い“深窓の令嬢”という感じでもなく、はねっかえりの“宋代版あんみつ姫”のような公主。
実際には、ここまで高貴な身分で、女官と友達になるなんて有り得ない事だろうし
ましてや、宋が崩壊したからといって、男装で逃亡し、ウジが湧く残飯で飢えをしのぎ
ついでに武術まで身に付け抗戦し、さらに表向き大道芸人をやりながら(!)裏でレジスタンスなんて
飛躍し過ぎで、所詮フィクションだなぁ~と感じる。
ちょっぴりワガママでおきゃんな詩詩ちゃんは可愛いけれど、歴史ドラマはもっと現実に則したものが好き。

『宮廷女官 若曦』の“⑬様”愛新覺羅胤祥役で見初めた袁弘も登場♪
本ドラマで演じている林慕飛は、国を守るために全てを捧げる正義感に燃える忠臣で、腕の立つ将軍。
辮髪の⑬様も素敵だったけれど、ヒゲを蓄えたワイルドな林慕飛にもクラクラする。
この林慕飛は、巧兒と両想いでありながら、嘉儀公主からも想われてしまったがために
皇帝から嘉儀公主を娶るよう命じられ、困惑…。う~ん、モテる男は大変デス。
袁弘、本当に素敵。もし私が劉詩詩なら、共演を機に恋に落ちるのは
“④様”吳奇隆(ニッキー・ウー)ではなく、絶対にこの袁弘…!
詩詩ちゃんと、オトコの趣味合わなくて良かったわぁー(…どうせ同じ男性を奪い合う事も無いでしょうが)。
今のところ、彼のお仕事がドラマ中心なのが残念。
大スクリーンにも映えるはずだから、もっと映画に出て欲しい。

香港の歌手で俳優の蕭正楠も出演。袁弘より5歳くらいお兄さんのはずだけれど、やたら若く見える。
その見た目の若さが、明るいけれど、どこか頼りにならず
女の子から“友達”としか見てもらえない方のキャラに合っている。
そんな方ニックネームは、
カランコロン鳴る鈴鐺(=鈴)にちなみ“鈴鐺郎”。

日本語だと差し詰め“鈴男(すずお)”?
★ キャスト その② : 宋皇室の面々
作品の中で一番華やかな宮廷ドラマの部分に登場するキャラも、軽くおさらいしておく。
本ドラマは全編宮廷ドラマではなく、主人公の長い人生の一部分として宮廷内の出来事を描いているので
一般的な宮廷ドラマと比べ、皇帝の寵愛を巡り闘う女たちの人数もぐっと絞られている。
宮廷ドラマを観慣れている人なら、ちょっとした“内輪モメ”程度のバトルと感じ、サラ~ッと流すことであろう。



この3人のいざこざ、前田吟を巡る若村麻由美と春やすこの争いに見えてならなかった…。![]()

この中で実在したのは前田吟、…もとい、皇帝・度宗(1240-1274/在位期間1264-1274)の一人だけ。
史実での度宗は、先帝・理宗の甥っ子で、理宗の嗣子が夭逝していたため、20代半ばで皇位を継承し
30代半ばにはもう崩御。このドラマの度宗は50~60代に見え、実際よりかなり高齢。
女遊びばかりに精を出すエロじじいで、困窮する国情には無関心だったから、宋の崩壊も当然と思わせる。
実際のところ、宋は何度も元軍からの侵攻を受け、先帝の時代にはすでにボロボロだったわけで
度宗がストイックで聡明な皇帝だったとしても、宋の立て直しはもう不可能だったかも知れない。
実際の度宗の死因は、酒色に溺れた末の脳溢血と言われるが、伯父上から崩壊寸前の国を託され
ストレスが溜まり、自暴自棄に陥り、酒と女に逃げるしかなかったのかもね~。
★ キャスト その③ : その他の登場人物
宋から元に変わる激動の時代に、工房、宮廷、山奥、南国などなど、舞台もどんどん変わるお話なので
登場人物も、漢民族、蒙古人、色目人、黎族、職人、皇族、軍人、道士…、と当然多数。
ここには絞りに絞って6人だけ。

香港の陳秀雯は、以前確か歌っている姿を見たことがある程度であったが
このドラマで改めてジックリ見たら、“真野響子・眞野あずさ姉妹の、もう一人の姉妹” といった感じ。
扮する容秀滿は、若い頃婚約者を取られてしまった後は、もう生涯男っ気ナシで
仕事ひと筋に独り身を通すのかと思いきや、熟年で気の合う男性と出逢い、少女のようにフォーリンラヴ。
運命の出逢いに年齢は関係無いと、私に希望を与えてくれて、容秀滿センセーありがとう。

徐麒雯は、“かつて馮紹峰(ウィリアム・フォン)と恋の噂があった女優”というくらいの認識であったが
美人さん。蘭陵王ったら面食いなんだから~(←もし本当に付き合っていたのならば、だが)。
扮する小梅は、良く言えば聡明、悪く言えばズル賢い女の子。
腹に溜めず、何でもズバズバと口に出すが、根は良い子で、巧兒とも信頼し合う友人。
…なので、巧兒と同じように、堅実に生きるタイプなのかと思いきや
まさか皇帝の側室の座を狙うほど上昇志向が強い野心家だったとは。
茉莉花(ジャスミン)の香りで誘惑されたエロ皇帝は、「ジャスミンも良いが、朕は梅も好きじゃぞ、ウッシッシ」
と簡単に落ちるが、日本語字幕だと、小梅の名前が“シャオメイ”になっているので分かりにくい。
その後色々あって西域で商売をするようになった小梅が
ベリーダンサー風のド派手な恰好で再登場したのには、驚いた。

この流れ者の木工職人が、『宮廷女官 若曦』の康熙帝と同じ人間だとは信じ難い。
この気の置けないオッサンのどこに付いているスイッチを押せば
康熙帝のあの威厳が湧き出てくるのだか…??!女優だけでなく、男優も化けますねー。

鄭佩佩をテレビドラマで見たのは初めて。私の中で鄭佩佩は、“60年代ショウブラ女優”、
“剣劇の女王”というイメージで止まっており、正義の味方だと刷り込まれているのに
底意地の悪いお姑サマ役で出てきたので、意表を突かれた。

あちらは出戻り、こちらは行かずという違いはあれど、私も一応弟を持つお姉さんなので
実家で大きな顔をしながら、弟の妻をイビリまくるこの方靜には、ついつい自分を重ねて見てしまう。
一度は方家を出た身でありながら、実母とタッグを組んで嫁イビリする方靜だが
実は彼女自身、嫁ぎ先で姑と小姑にイビリまくられた辛い経験が。
自分がやられてイヤな事は、人にしてはなりません…!喝!
もうひとつ、方靜を見て「私も気を付けなければ!」と肝に銘じたのは、付き合う男選び。
この方靜、シッカリ者に見えるが、男を見る目はまったく無く、タチの悪いダメンズに簡単にヨロメいてしまう。
金ヅルにされていることにも気付かず、貢いだ挙句、妓楼に売られそうになるなんて最悪…。
私も気を付けなきゃ~。…もっとも私では、場末の妓楼も引き取ってくれないだろうけれどね。![]()


で、方靜を骨抜きにしたダメンズが、この何建澤扮する石蒲傑。
何建澤は、吳彥祖(ダニエル・ウー)に似ていると言われるように、確かに美形。
でも本ドラマだと、演じている役がゲスな男のせいか、その端整な顔立ちに妙なイヤラシさを感じ、
“中条きよしのDNAを注入した胡歌(フー・ゴー)”といった趣き。
★ テーマ曲

なぜかエンディング曲に関する情報がまったく無い…!
大陸ドラマのテーマ曲には珍しいインストゥルメンタルで、しっとりしたピアノの音色が美しい。
リチャード・クレーダーマンも演奏している<秋のささやき~A Comm Amour(中文タイトル・秋日私語)>
だという情報が、もっともらしく流れていたので、試しにそれを聴いてみたが、まったく違うではないか…。
クリアな動画は見当たらなかったが、そのエンディングを取り敢えず貼っておく。
どなたか、この曲を御存知の方、いらっしゃいます?
演出がやや雑で、物語の展開が唐突だと感じる事がしばしば有るのだが
好意的に捉えれば、話がダラダラしておらず、テンポ良く進むので、飽きずに観ることができる。
日本ではほとんど知られていない中国綿紡織に革命を起こした女性にスポットを当てた
“宮廷ドラマでも、武侠ドラマでもない時代劇”というのも、新鮮に感じる。
ただ、実在の人物を扱うドラマなら、ドキュメンタリーにしないまでも
創作を控えめにした重厚感のあるドラマの方が、物語に説得力が出て、私個人的にはずっと好み。
宋から元への王朝交代の時期という時代背景は、それなりに興味深く観た。
こういうドラマを観ると、中国って人種の坩堝で、異民族間の争いと
その時代の覇者である民族による支配を繰り返してきたのだなぁ~と、改めて思い知らされる。
主人公・巧兒と錦繡坊で一緒に育った芊芊なんて、嫁に行きたがらないワガママ嘉儀公主の身替わりにされ
遠く蒙古の王族に嫁がされてしまうのだが…
芊芊の事なんてきれいサッパリ忘れていたドラマ後半、彼女がすっかり蒙古化して再登場したのでビックリ!
芊芊の横に立っているお下げ髪の男性は、いざ結婚したら意外にも掘り出し物だった蒙古人の夫・額爾。
一介の織姫から皇族に、しかも、宋に代わり統治者となった元の皇族にのし上がった芊芊の頭部に
威風堂々とそびえ立つ
塔のような帽子に目が釘付け。

現代では最も身近な天然素材・綿が、当時はまだ大陸全土に普及しておらず
地域によってはレア素材だったという話にも、「ふーん、なるほど」。
当時、そういう地域では、高級素材なら絹、それより安価な素材なら麻だったようだ。
ツッコミ所も満載。紡織をテーマにしたドラマなのに
一見して化繊と判る生地を使用していたり(化繊の発明には、まだ6百年ほど早いのでは…)、
主人公・巧兒は、手仕事の達人のハズなのに、林慕飛将軍の帯に丹念に施した“飛”の文字が
アップになったら、かなり粗い素人の刺繍だったり…。まぁ、そういう脇の甘さも中華ドラマならではで、御愛嬌。
(実際には、宋代の刺繍のレベルは相当高い。現在東博の台北 國立故宮博物院展でも見ることが出来る。)
勿論チープなCGも健在なので、ご心配なく。
物語は、史実1:虚構9くらいで、時代設定こそ昔でも、お気楽な偶像劇と大差は無く
知的好奇心はあまりくすぐられないけれど
苦労人の話の割りに、重さが無いので、サラーッと気楽に観るには丁度よく、それなりに楽しめた。
毒殺とか九族皆殺しみたいなドロドロを観るのは精神的にもうしんどいという人(笑)にも
おススメできるかも。
日本語字幕は、これもやはりNG。
登場人物の名前を片仮名にしているのは、現代劇でも耐え難いが、時代劇ならなおの事。
唯一“徽宗(きそう/Huīzōng)”だけは漢字であった。だったら全員漢字表記で揃えろヨ、と言いたい。
スタッフや出演者の名前も片仮名だけで記されていて、例えば、監督の李國立は
『宮廷女官 若曦』だと“リー・クオックリー”なのに、本作品だと“リー・クオックラップ”と、統一もされていない。
これではまるで別人。勝手な片仮名だけで表記せず、ちゃんと漢字の本名を併記して。