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映画『レクイエム 最後の銃弾』

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【2013年/中国・香港/134min.】
少年時代からの大親友で、共に香港警察の麻薬捜査官となった馬昊天、蘇建秋、張子偉。
警察官として堂々と表舞台で働く馬昊天や張子偉と違い、
蘇建秋は、正体を隠し、“柴”こと柴國勇の組に潜入し、もう長い。
心身共に疲れ果て、兄貴分的存在の馬昊天に、警察に戻りたいと訴えるも
タイの麻薬王・八面佛を捕えるまでは待てと諭されてしまう。
こうして、蘇建秋は仕方なく柴の手下として、馬昊天と張子偉はタイ警察の協力を得て
取り引き現場へ向かうが、どういう訳かこの情報が八面佛側に漏洩。
八面佛の傭兵隊から激しい攻撃を受け、作戦は大失敗。
馬昊天と蘇建秋は辛うじて助かったものの、張子偉は命を落としてしまう。

5年後。馬昊天は事件の責任をとり降格、蘇建秋は警察に復帰し、今や麻薬捜査班のリーダーに。
タイでのあの日以来ワダカマリを抱える二人は、ろくに言葉を交わすこともない。
ちょうどその頃、香港の新興麻薬組織と八面佛の間で抗争が勃発。
馬昊天も蘇建秋も今度こそ八面佛を捕えようと、それぞれに行動を起こすが
信じ難いことに、そんな彼らの前に、タイで死んだはずの張子偉が現れ…。
 
 
 
香港の陳木勝(ベニー・チャン)監督、『新少林 SHAOLIN』(2011年)以来の最新作。
私は特別陳木勝監督のファンではないのだけれど
つい先日テレ東で『コネクテッド』(2008年)が放送されていたので、なんとなーく再見したら
これがなかなか面白かったので、その流れで、この新作もなんとなーく観てしまった。
 
 
本作品の主人公は、馬昊天、蘇建秋、張子偉という3人の大親友。
3人は13歳で出逢い、友情を育み、共に警察学校に進み、香港警察の麻薬捜査官になるが
アジアを牛耳る麻薬王・八面佛を捕えようと渡ったタイで、作戦に失敗し、張子偉が死亡。
この事件は、辛うじて生き残った二人にも暗い影を落とし、互いに反目し合うようになる。
5年後、再び八面佛と接触する機会が到来し、それぞれに行動を起こした二人の前に
死んだはずの張子偉が、なぜか敵側の人間になって出現。
…このように、この物語は、香港、タイ、澳門(マカオ)を舞台に
麻薬取り引きの現場を押さえるための作戦決行中に起きた大事件で運命の歯車を狂わせ
友情をもズタズタに壊してしまった3人の男たちが
5年後、それぞれ異なる思いを抱え、異なる立場である事件に立ち向かうことになり
徐々に誤解とワダカマリを解き、やがて取り戻した絆のために、命を懸けて闘う姿を描く
灼熱のタイランドよりメラメラと熱い香港オヤジたちのクライムアクション友情ドラマ…!暑苦し~っ!
 
 
主人公3人は全員麻薬捜査官なのだが、蘇建秋だけ職務が違う。
正体を伏せ、ヤクザ者に成り切り、裏組織にに潜伏する彼は
まるで『インファナル・アフェア』の梁朝偉(トニー・レオン)。
 
まさかこの映画、劉華(アンディ・ラウ)不在で描く『インファナル・アフェア』改訂版?!
ヒット作の二番煎じならガッカリだわ…、なんて思いながら観ていたら
主人公のひとり張子偉が、物語もまだ中盤なのに、獰猛なワニに喰われて惨死。
死因が“ワニに喰われて”というのは、香港映画史上初かも知れない。
さらに、物語が5年後に進むと、そのワニに喰われたはずの張子偉が、どういう訳か甦生して
以前より仕立ての良いスーツを着て再登場。
えっ、これってファンタジーだったの?それともホラー…??!と一瞬戸惑いもしたけれど
“旧友に会いに黄泉の国から戻って来たゴースト”というほのぼのとしたファンタジーを
対極的な男臭い香港ノワールに融合させるなんて、意表を突いていて斬新。
 
もっとも、実際には、私の早とちりで、“ほのぼのファンタジー香港ノワール”ではなかったのだが。
張子偉がなぜ生きていたかというタネ明かしは
思わず「ほぉ~」と感心させられてしまうタネらしいタネも無く、若干肩透かし。
まぁ、そういうザックリ荒削りな感じも、香港映画らしくて嫌いではないけれど。
 
 
 
 
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出演は、3人組の中で兄貴分的存在の馬昊天に劉青雲(ラウ・チンワン)
裏組織に潜入している蘇建秋に古天樂(ルイス・クー)
そしてタイで犠牲になる張子偉に張家輝(ニック・チョン)
 
この中で私のお目当ては劉青雲だが、世間での注目度が取り分け高いのは
近年ノリにノッている張家輝ではないだろうか。
 
なのに、今回張家輝が扮する張子偉は、主張が強い兄弟分、馬昊天と蘇建秋に比べ、穏やかでおとなしく、
3人組の潤滑油のような、聞き分けの良い弟分のような存在で、少々影が薄い。
まるで十年前の張家輝が演じそうな役ではないか。
張家輝、本作品では十年前の子分キャラに逆戻り?と、やや物足りなさを感じながら観ていたら
5年後のシーンで人格豹変して再登場。結局、クセ者演技で観衆の期待に応えてくれる張家輝であった。
 
 
 
 
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その他の出演は、蘇建秋の妻・袁可兒に袁泉(ユエン・チュエン)
香港ヤクザBobbyに盧惠光(ケン・ロー/ロー・ワイコン)
タイの麻薬王“八面佛”こと魏興光に盧海鵬(ロー・ホイパン)
八面佛の愛娘Minaに寶兒(ノン・ポーイ)などなど。
 
この中で、イヤでも注目してしまうのは、Mina役の“寶兒 Poy”ことタリーチャダー・マラニャポン。
タイ人の寶兒は、本作品に出演したことで、中華圏での知名度を一気に上げたけれど
日本では、そこまでブレイクしないまでも、もっと以前からぼちぼちテレビで紹介されていた。
なぜ紹介されていたかと言うと、寶兒は、こう見えて、17歳で性転換手術を受けた元男…!
 
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女性になる前の少年時代も充分可愛らしい。
でも、当時は南国の人特有の幅広だったお鼻が、いつの間にか狭くスッとなっているし
ボディを工事するついでに、お顔も多少手直しをお加えになったに違いない。
元男とは信じ難いほど綺麗な寶兒ちゃんだけれど、韓国女優にも近い“量産型美女”って感じは否めない。
 
陳木勝監督は、寶兒がとても美しく、表現も大胆だったから
オーディションで大勢の中から彼女を選んだと語っているけれど
“タイのニューハーフを起用し、注目を集めよう”という狙いなど微塵も無かったと、本当に断言できるだろうか。
だって、確かに綺麗な寶兒だが、声を発すると、やはり“まんまオネェ”。
終盤の感動的なシーンでも、戦場と化した室内に駆け込んできた彼女の声を聞いて、ズッコケた…。
私はトランスジェンダーに差別意識などまったく無いけれど(むしろ好き)
このMina役だったら、寶兒より多少ブスでも構わないから、天然の女優が演じていた方が
余計な事に気を取られず、物語にスッと入り込めた気がする。
 
 
 
 
まぁまぁ。それなりに楽しんだが、香港ノワールは、自分が夢中になるジャンルではないと感じる。
なので、友情のためにオヤジたちが見せる熱い男気より
元男性・寶兒のショーパブ風小芝居の方に食い付いてしまった。
もしかして、そもそも本作品でMinaは“生まれた時から女”という設定ではなく
「“元男性の女性”かも知れない…」と観衆に想像の余地を与える設定なのだろうか。
“Minaは天然の女性”と思い込もうとすると、作品の色々な部分に不自然さばかりを感じてしまうけれど
最初から素直に“Minaはオネェかも”と疑えば
「八面佛みたいなコワモテのオジちゃんの息子がなぜオネェになったのだろうか?」とか
「平凡な警官だった張子偉がオネェにゾッコンとは、一体彼の心境にどんな変化が起きたのか?!」と
裏に隠されたサイドストーリーに想像が膨らみ、この映画をより楽しめる気がしてきた。
陳木勝監督がもし『張子偉&Mina タイで生まれた愛の軌跡~平凡な警官が性(ジェンダー)の壁を超えるまで』
というスピンオフを撮ってくれたら、私、絶対『レクイエム 最後の銃弾』よりノリノリで観ちゃうワ。
 
あと、この映画で寶兒を見ていたら
中華圏で以前ブレイクした韓国出身の河莉秀(ハリス)という性転換タレントを思い出した。河莉秀は今いずこ。
 
それにしても、香港映画の邦題は、どうにかならないものか。
未だに80年代を引きずる古臭い邦題ばかり。しかも、どれも似たり寄ったりで、まったく記憶に残らない。
こんな邦題を付け続けるなんて、香港映画への嫌がらせとしか思えない…。
 
ついでだから、もうひとつ愚痴る。
公開初日に映画館へ行ったら、来場者にポスターのプレゼントがあったのだが
館内で私と同じ列、3ツ横の席にいた70代くらいのおじいさんが、上映中ずーっとそのポスターを触っていて
ポスターが入れられているビニール袋(スーパーでタダでもらえる薄い半透明のと同じ素材)の
シャカシャカした音が鳴りやまず、イライラさせられた。
さらに、左横の中年男性は、上映開始15分で爆睡。おとなしく寝ていてくれる分には構わないけれど
イビキがキョーレツで、劇中の銃撃戦をも掻き消す轟音。
最初の内は我慢していたが、まったく止む気配が無いので
最後まで隣でガーガー唸られてはタマラんと思い、その男性の肩を叩いて目覚めていただいた。
まぁ自然現象は仕方が無いけれど、ビニールのシャカシャカは勘弁ヨ。
来場者プレゼントは親切だが、周囲への迷惑が考えられない年寄りに、音の出る物は渡さないで欲しい。

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