Quantcast
Channel: 東京倶樂部★CLUB TOKYO
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

蔡國強展:歸去來

$
0
0
イメージ 1


7月の開幕以来、ずーーーっと行こう行こうと思いながらも、
横浜まで出向くのがどうも億劫で、ズルズル先延ばしになっていた
蔡國強、日本で久々の大規模個展、<歸去來(帰去来)~There and Back Again
この度、ようやく重い腰を上げ、行って参りました。
母も行くというので、今回は珍しくお供を連れての美術鑑賞。

★ 蔡國強 Cai Guoqiang

イメージ 2


蔡國強(ツァイ・グオチャン/さい・こっきょう)は、1957年生まれ、中国福建省泉州市出身の芸術家。
1985年、上海戲劇學院の舞台美術系を卒業後、1986年から1995年までを日本で過ごし、
現在は、アメリカ・ニューヨークを拠点に活動。
古代中国四大発明のひとつ、火薬を使った作品で取り分け有名。


蔡國強?誰、それ??という人でも…

イメージ 3

2008年、北京オリンピック開幕式の花火は記憶にあるのでは。
北京五輪開閉幕式ヴィジュアルディレクターを務め、あの花火のド派手なパフォーマンスを行ったのが蔡國強。
(北京五輪のスタジアム“鳥巢(鳥の巣)”を見ると、東京の新国立競技場問題を思い出し、ワナワナしてくる。
巨大スタジアムの“相場”なんて知らなかったけれど、
鳥の巣の総工費は約4百億円で、日本よりずっとお手頃価格だというではないか。
鳥の巣だって、そこらの建築家見習いが設計したわけではない。
ヘルツォーク&ド・ムーロンが手掛けた立派な“ブランドもん”ですから。
あまりにもズサンな日本の公共事業計画に、イライラが募る。…やたら長い余談になりましたが。)



世界各国で展覧会を開催している蔡國強であるが、
行く先々で、その土地の文化を取り入れたり、人々との交流を通し、作品を創り上げていくことも多い。
今回の横浜美術館の展覧会でも、そのように現地で創作された作品も展示されている。

★ 蔡國強展:歸去來 @ 横浜美術館

イメージ 4


私、もしかして、みなとみらい線に乗ったの初めてかも。
少なくとも、“MARK IS みなとみらい”などという商業施設にはこれまで立ち寄ったことがない。
横浜美術館は、みなとみらい線・みなとみらい駅の3番出口を出たら、
MARK IS みなとみらいを抜け、もうすぐ目の前。予想していやよりずっと便利な場所。
建物の設計は丹下健三。



建物正面のエントランスから中へ足を踏み入れると…

イメージ 5

ホールの奥にドーンッと蔡國強の新作<夜桜>
蔡國強によると、桜の開花の瞬間の力強さと儚く散る潔さは、火薬に通じるという。なるほど。
本作品は、高知県で生産される大判の和紙を使い、市民や学生のボランティアと共働で制作。
淡く黄味がかった色合いは、鶏冠石の粉末を火薬に混ぜた効果なのだと。

線に繊細さがありながら、火薬で描かれたもの特有の瞬発的なエネルギーや偶発的な面白みを感じるし、
縦8メートル×横24メートルと、文字通り“大作”なので、近くで観るとこちらに迫って来るような迫力がある。

この作品は、まさにこのホール内で制作されたらしい。
火薬を爆発させ、煙がもくもくと立ち上る、制作工程を収めた映像も面白かった。




イメージ 6

この作品は、2階のバルコニーからだと全体が見渡せる。


ちなみに、写真撮影は、エントランスホールのこの<夜桜>のみOK。
(<夜桜>も自撮り棒を使っての撮影は禁止とのこと。)



会場内に入ると、<夜桜>以外にも、この場でドッカーン!もくもく!と制作された新作あり。
<人生四季>は、江戸時代の浮世絵師・月岡雪鼎(1726-1787)の春画<四季画巻>から着想を得た作品。
これまでの火薬絵画は水墨画を彷彿させるモノトーンであったが、
この作品では、鮮やかな色彩を用いるという新たな試みが行われている。

★ 壁撞き

イメージ 7



この展覧会へ足を運ぶ多くの人々のお目当ては、恐らくこの<壁撞き~撞牆 Head On>であろう。
2006年、ドイツで発表された作品で、日本公開は初めて。
ポスターやチケットにも使われている本展覧会の目玉作品。


ベルリンの壁とほぼ同じ高さのガラスの壁に向かって行く99匹の狼のレプリカで構成された作品。
蔡國強曰く、「目に見える壁は簡単に壊せるが、目に見えない壁を壊すのは難しい」

狼は“共同体意識”、“英雄精神”、“勇気”、
99という数は“連続性”、“完結を知らずに先頭を進む”ことを意味。
ふたつ重なる“9(jiŭ)”という数字をそのように捉えるのは、中国人らしい発想。


この<壁撞き>、お触りは勿論不可だが、作品の中に入ることは問題なし。
狼と狼の間を縫うように歩いたり、頭上を飛び交う狼たちを下から見上げてみたり。
見る場所によっても、受ける印象が変わってくる。
平面でした見たことがなかった作品を、こうして立体として間近で見て、
しかもその空間に入り込んで体感すると、想像では分らなかった感動が味わえる。

★ 春夏秋冬

イメージ 8



でも、私が<壁撞き>以上に観たかった作品は
こちらの比較的新しい2014年の作品、<春夏秋冬~Spring, Summer, Fall, Winter>
上の画像では、どこがそんなに良いのか、そんなに凄いのか、まったく伝わらないであろう事が残念でならない。

この<春夏秋冬>は、蔡國強の故郷・福建省の磁窯、化窯の職人との共働制作。
化窯は、宋代に始まり、明代に発展した歴史ある白磁の里で、
“化白瓷(化白磁)”と言えば、特に仏像などの彫塑白磁が有名。



<春夏秋冬>は、四季を表現した4ツのレリーフのような物で構成された作品。
それぞれ60枚のタイル状の白磁から成り、春は牡丹、夏は蓮、秋は菊、冬は梅をメインに季節を表現。

蔡國強が手を加える前の真っ新な白磁の時点ですでにスゴイ。

イメージ 9

繊細なレースのように柔らかに表現された花弁が、実は硬い白磁だなんて信じ難い。
どんなに小さな花にも、中央には雄蕊や雌蕊が配され、細部までリアル。
化窯の職人の超絶ワザだけでも見る価値あり。


これだけでも充分スゴイ化白磁を、蔡國強は…

イメージ 10

有ろうことか、火薬でドッカーン…!蔡國強ってば、一体何を考えているのでしょうか…?!
もっとも、これをやらないと蔡國強作品にならないのだけれど(笑)。

そのままでも恐ろしく美しい化白磁の<春夏秋冬>だが、
火薬の効果でさらに奥行きが出たり、空気の流れのようなものまで感じられるようになっているし、
グレーの濃淡が水墨画のような味わいを醸し、古典的でありながらモダン。非常に洗練された作品。
不思議なのは、あれだけドカン!とやっておきながら、白磁が割れたり欠けたりしていないことだ。


<春夏秋冬>の中で、私が取り分け好きなのは蓮をメインにした<夏>。
左上部には、荔枝(ライチ)のような果実がたわわに実り、
右下方には、<春>のおたまじゃくが成長してカエルになっている。


細部まで凝っていて、観ていてまったく飽きない。
写真でしか知らなかった時から、絶対に自分好みの作品だろうとは思っていたけれど、
実物は想像していた以上に素晴らい。
中国伝統工芸の匠が産み出す超絶技巧と、現代芸術家・蔡國強が発する感性の融合に、感激の極み。
本展覧会で私の一押しは、<壁撞き>を差し置き、こちら。
この手の作品が好きな人には、是非ぜひ会場で実物を観て、私と同じ感動を得てもらいたいわー。

★ 横浜美術館コレクション

イメージ 11


蔡國強展の作品は(ヴィデオ・インスタレーションなども有るが)、
基本的に一点一点が大きく、総出展数は決して多くはない。
蔡國強展のチケットで、横浜美術館コレクションも見学できるので、ついでにそちらも観てきた。

全体的には、一貫性より“何でも有り”という印象を受けた。
(↑)画像、上の右側に写っているのはダリ、下左はイサム・ノグチ、そして下右のカラスは吉村益信。



(↓)こんな作品もあった。

イメージ 12

近代日本を代表する彫刻家・平櫛田中(ひらぐし・でんちゅう)の<陶淵明(帰去来)>
1946年制作の、彩色した木彫作品。
陶淵明(365年-427年)は晉代の文学者。
晉安帝義熙元年(405年)、29歳から13年イヤイヤ務めた役人生活に見切りを付け、
故郷の田園に帰る心境を綴った<歸去來辭(帰去来の辞)>の一節、
“歸去來兮(帰へりなん、いざ)”が、蔡國強展のタイトルに由来しているとのことなので、
もしかしてこの特別展に合せ、この木彫も展示したのかしら。

★ ミュージアムショップ

ミュージアムショップで売られている蔡國強展関連商品では、
角度によって爆発の光景が楽しめるレンチキュラー印刷のポストカードを取り敢えず一枚だけ購入。


これは果たして買う人が居るだろうか?と思ったのは…

イメージ 13

狼のぬいぐるみ。
別に蔡國強に関係無く、おもちゃ屋さんでフツーに売られているぬいぐるみなのではないかと思ったが、
ちゃんと見えない壁に手をついているようなポーズをしている狼も居た。

★ 横浜中華街

イメージ 14


せっかく横浜まで行ったのだから、美術鑑賞の後は中華街へ。
みなとみらい線・元町中華街駅ができ、随分行き易くなった。
美術館があるみなとみらい駅からは所要時間5分程度。

せっかく久々の中華街なのに、牌樓が修復中で、
到着早々、工事現場のようなブルーシートが目に飛び込んできたのは、ちょっぴり残念。

その牌樓をくぐり、すぐの所に、すしざんまいができていたのにも、少々気分を削がれた。
日本人より、中華街を訪れる中国人観光客を当て込んでいるのかしら。


しかし、そこを過ぎれば、中は毎度の中華街。

イメージ 15

工事現場などに置かれる安全柵がパンダだったり、自販機コーナーになぜかめでたく“囍”マーク。
キッチュで中華街らしくて、散策も楽しい。

★ 菜香新館でランチ

イメージ 16


今回は母も一緒だったので、菜香新館でしっかりお昼もとることに。
これまでにも何度か利用したことがある最上階は、その日貸し切りだったため、2階へ。
その貸し切りの都合でか、お得なランチセットもその日は提供が無かったので、
点心類を中心にアラカルトで注文。




イメージ 17

どの点心も基本的に2個ずつなので、母と二人で分け合うのに好都合であった。
特に美味しかったのは、お餅のような生地で具を包み揚げたお馴染みの点心・鹹水角、
エビを皮で包み揚げ、お好みでマヨネーズを付けていただく威化明蝦捲、
蓮の葉で蒸し上げたおこわ金牌糯米雞。


ガッツリもち米を食べたせいで、おなかがパッツンパッツンになってしまったが、
それでも締めに何かしら甘い物が欲しくて、ココナッツ団子をオーダー。

イメージ 18

ココナッツをたっぷりまぶしたお餅の中に包まれている餡には、胡麻や胡桃も入っている。
ほんのり温かだから、お餅が柔らか。




イメージ 19

お店を去る前、1階エントランス脇の売店で、お持ち帰り用で包子なども購入。





蔡國強に中華街。
滅多に行かない横浜を満喫した一日であった。満足、満足。
(強いて言えば、ランチの後、本当は悟空でお茶をしたかったのに、
おなかがいっぱい過ぎて、断念したのが残念。)



◆◇◆ 蔡國強展:歸去來 Cai Guo-Qiang:There and Back Again◆◇◆
横浜美術館 Yokohama Museum of Art

会期:2015年7月11日(土曜)~10月18日(日曜)

10:00~18:00(木曜休館)

みなとみらい線・みなとみらい駅 3番出口から徒歩3分

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

Trending Articles