北京四季酒店(フォーシーズンズホテル北京)に関しては、まだ全てを書き切っていないのだけれど、
2016年は、明日9月15日(木曜)が
中秋節なので、ホテルの話はひとまず置いておき、月餅について。

あっちでもこっちでも月餅が売られている中秋節前の北京。
この時期、中華圏へ行く日本人の定番土産になりつつあるスターバックス(中国名:星巴克)の月餅、
2016年大陸ヴァージョンは、(↓)こんな感じ。
可愛らしいミニ月餅ですね~。![]()

…が、この一番小さな6個入りボックスで、328元(≒5250円)とは、
大量生産のたかがスターバックスごときが身の程知らずな価格設定。
物には“見合った値段”というものがあるのです。
人民の皆さまが受け入れても、私は受け入れない。
お嫁さんや姪っ子が物珍しさから喜びそうだから、よほど弟の家のお土産に買おうかと考えたが、
いつまでも強気な姿勢を崩さない大陸スターバックスに対し、一人レジスタンス運動のつもりで、購入見送り。
(パッケージをもっと簡素にし、2個入りを8百円程度で売ったら、日本人旅行者が爆買いすると思う。)
で、ホテル製を一箱購入。
それも、ハッキリ言って、ぼったくり価格であるが、スタバよりはまだ納得できる。
自分では食べず、サッサと上げてしまったため、当然味を知らないし、パッケージの写真さえ残していない。
哀しいかな、結局、手元に残ったのは、庶民的な稻香村(稲香村)の月餅だけ。![]()

し、しかも、この稲香村製にパチ疑惑が…!
★ 稻香村
稲香村は、1895年(清・光緒21年)創業の北京の老舗。
つい最近、日本語では“とうかそん”と呼ぶのが正しいと知ったものの、
それでも私は頑なに“いなかむら”と呼び続けております。
上の画像は、その1895年の創業当時、北京・前门大街(前門大街)のお店を撮った物。

北京の南半截胡同にある绍兴会馆(紹興會館)に暮らしていた頃、
1913年から1915年の間に少なくとも15回、この稲香村を訪れ、お菓子を買ったという記載があるのだと。
歴史上の著名な文人も愛した老舗と言っても、
今や別に格調高い雰囲気はなく、街中にチェーン展開している、むしろ庶民的なお店で、
北京の街中を“50m歩けば稲香村に当たる”ってくらい、何軒も出店。
ほら、このように、北京中心部だけを見ても、こんなに支店が。
「もう何でもいいから、お土産買わなきゃ!」という時には、便利かも。
★ なんちゃって(?)稻香村@王府井
私がこれまで立ち寄ったことのあるのは、灯市口大街(燈市口大街)や前门(前門)のお店であったが、
この度、夜の王府井で、目に飛び込んできた“稲香村”のネオンに誘われ、そのまま入店。
そして、商品を購入し、退店。振り返り、改めてお店を見たところ、“稲香村王府井旗舰店”の文字。
ここが旗艦店とはおかしくないか?と疑問が湧き、
ホテルに戻ってから、稲香村の公式サイトをチェックしたら、どうやらそのお店は存在していない。
つまりは、“なんちゃって稲香村”なのか…?!
さらに、買った月餅のパッケージをまじまじと見たら、生産者が“苏州稻香村(蘇州稻香村)”となっている。
ここで、おさらいしておくと、前述の1895年(清・光緒21年)創業の北京の老舗菓子店は、
正式名称を“北京稻香村”という。
同じ稲香村でも、頭に付いている街の名前が異なる“蘇州稻香村”は、
有名な北京稻香村をパクった新興の菓子店なのかというと、そうでもない。
それどころか、この蘇州稲香村は、北京稲香村より早い1773年(清・乾隆38年)の創業。
南方・蘇州菓子を得意とする、蘇州で最も古い老舗中の老舗。
江南を巡行した際に食べたここのお菓子を高く評価した乾隆帝からは、“稻香村”の扁額を賜ったという。
その蘇州稲香村で働いていた人が、北京へ出て、1895年に開業したのが、北京稲香村。
“暖簾分け”という理解で良いのだろうか。でも、そんな穏やかなものではなく、
この2社は、近年、商標登録の問題で、ドロドロの法廷闘争を繰り広げている模様。
今回購入した商品のパッケージも改めてよく見ると、裏面に、
「『稻香村』、『禾』文字及图注册商标为中华老字号企业苏州稻香村食品有限公司特有并授权使用」と、
蘇州稲香村こそが『稻香村』、『禾』の商標使用が認められた企業であると、自社の正当性が記されている。
他にも、北京稲香村から分かれた“保定稻香村”というお店もあるし、なんだか複雑ですね。
この複雑さに乗じて、北京の繁華街では、御本家と何の縁も無い“勝手に稲香村”の出店も相次ぎ、
しばしば当局の取り締まりにあっているようだ。
私は今回、何も考えずに買った物が、たまたま蘇州稲香村の方の月餅だったわけだけれど、
「私は北京稲香村派!」、「いや、蘇州稲香村でしょ!」とハッキリお目当てがある人は、
事前にお店の場所を確認すべし。
どのお店も看板に掲げているのは“稻香村”の名だけだから、本当に分かりにくい。
私が今回偶然購入することとなった蘇州稲香村”の月餅は、
ちょっとしたお土産に好都合なプチサイズだったのが、良い点。
月餅は苦手という日本人は多いし、嫌いではなくても、「クド過ぎて、量は食べられない」とよく聞くので、
お土産に買うなら、サイズは小さい方が向いている気が。飛行機での持ち帰りにも便利だしね。
そのミニ月餅は量り売りで、味に関係無く、どれをどう混ぜても一斤(=500g)36元。
一斤と聞いてもピンと来ないので尋ねたら、大体10個くらいと言われたが、実際には10個以上であった。
ま、量り売りだから、何も一斤買わなくても、極端な話、一個だけでも買えるわけ。
人民の皆さまが何を手に取るかチラ見していたら、
意外にもチャレンジャーで、“
玫瑰豆沙(ローズ小豆餡)”というのが人気。

私の方がよほど保守的で、「人に上げるなら、もう少し無難な方が良いかなぁ~」とか
「でも、あまり無難すぎると、日本でも買えちゃうし…」なんて考えながら、
結局、“京式棗蓉”と“京式山楂”という2種類だけに絞り、適当にゴソッと三十数個購入。
贈答用の箱を希望しなければ、このような袋詰めにしてくれる。
帰国の際に、箱は邪魔になってしまうので、洒落っ気のない袋詰めはむしろ良い。
以下、それぞれの月餅について。
★ 京式棗蓉
大きさは、直径約4.5センチ、厚さ約2センチ。
ナツメ餡を包んだ小月餅。
一つは、ナツメ餡の物。
月餅上部に“棗蓉”の刻印。
原材料表示を見る限り、餡は白芸豆(白インゲン豆)と金丝小枣(金絲小棗)を練り合わせて作っているようだ。
甘さの程度は、最も一般的な小豆餡の月餅と比べると軽いけれど、ナツメ特有のコックリした甘さがある。
生地はしっとり。
水分が少ない濃密な餡なので、食べる時、歯にネットリくっ付き易いのが、少々気になる。
ちなみに、金絲小棗は、生薬用の大棗とは違い、主に食用にされ、皮が薄く、種が小さく、果肉の多いナツメ。
食用と言っても、栄養価は高く、中医学的価値もあって、胃腸虚弱、消化不良、貧血などに効果があり、
美容にも良いと言われますよねぇ~。
★ 京式山楂
大きさは、直径約4.5センチ、厚さ約2センチ。
サンザシ餡を包んだ小月餅。
もう一つは、サンザシ餡の物。
月餅上部に“山楂”の刻印。
こちらも、上記のナツメ餡月餅と同じように、白芸豆(白インゲン豆)が使われており、
それをサンザシと練り合わせている。
“餡”というより、サンザシを砂糖などと練り、スティック状に加工したお菓子・山楂条を
そのまま生地で包んだという感じ。
画像では分からないだろうが、所々に小さく刻まれたサンザシ片も入っている。
前出のナツメ餡月餅とこちら、パッと見は、両者とも赤黒い餡で、大差無いのだけれど、
食べるとこちらの方がやはり酸味がある。
小さくて、見た目は可愛らしい。味は可もなく不可もなし。
人に上げることを前提に、2種類に絞って購入したけれど、
どうせなら、自分用に全種類買って、食べ比べすれば良かったと、後悔も無きにしも非ず。
◆◇◆ 稻香村 Daoxiangcun ◆◇◆
念のため、北京稻香村の情報を2店舗だけ


朝の開店時間が早いと、旅行中、一日の時間を有効に使えるから嬉しい。