食欲がまったく湧かない胃を刺激しようと、
辛い四川料理を提供するお馴染みのお店、
川办餐厅(川辦餐廳)へ。

北京には、中国各省の政府駐在事務所がある。
こちらは、四川省の在北京事務所、四川驻京办事处(四川駐京辦事處)に併設されたレストラン。
そんな所は関係者以外立ち入り禁止なのでは?とも思ってしまうけれど、
多くの省が併設のレストランを、一般に開放している。
東京にある地方自治体のアンテナショップのような役割りも果たしているのだろうか。
よく分からないけれど、本場のお役人お墨付きの本格的な地方料理が食べられるとあり、人気なのでしょう。
取り分け、四川省のレストランは有名。
どうやら、このレストランの元々の正式名称は、贡院蜀楼(貢院蜀樓)。
ところが、その名があまり根付いておらず、
四川省人民政府驻北京办事处招待餐厅(四川省人民政府駐北京辦事處招待餐廳)として有名になり、
それがあまりにも長いので川办餐厅(川辦餐廳)と略され、
今では、大陸のレストラン情報サイトなどで、もはやその名が正式名称かのように使われている。
地元の人々は、それをさらに略し、簡単に“川办(川辦 Chuānbàn)”と呼ぶことが多いようだ。
また、外国人向けの英語グルメサイトでも、“The Sichuan Provincial Government Restaurant”より、
“Chuan Ban”で紹介されているのをよく目にする。
★ 場所
場所は北京の中心部、とても便利な建国门(建國門)。
…なんだけれどぉ、大通りから反れている上、
おおよそレストランがあるとは思えない建物のゲートをくぐらなければならないので、
初めて行く人は迷うであろう。
(↓)これが、その分かりにくい建物正面。
壁に貼られた金のプレートには“四川省人民政府驻北京办事处 北京驻京办招待所”の文字。
“人民政府”だの“招待所”だのと記されていると、普通の日本人はちょっとビビッちゃいますよねぇ~。![]()

しかも、守衛さんみたいな人が常駐しているので、
日本人観光客が何も知らずに行ったら、一般人立ち入り禁止区域だと思ってしまいそうな雰囲気。
人民の皆さまにも分かりにくいようで、
この場所まで来て、まだレストランに気付かず、キョロキョロしている女の子に、
「川辦餐廳はどこですか?」と尋ねられた。
実際には、この建物さえ見過ごさなければ、もう到着したも同然。
このゲートをくぐるのに、守衛さんに呼び止められたり、手荷物検査をされることは無い。
ゲートをくぐると、もうすぐ目の前に…
門額に“貢院蜀樓”と掲げられた、お目当てのレストランが。
★ 着席して注文
私は、場所は分かっていて問題無かったのだけれど、行った時間に問題あり。
ちょうど混んでいる時間に到着してしまったら、店内は満席。
しかも、次から次へとお客さんがやって来る。
しかし、お一人様だったのが幸い。小さなテーブルならひとつ空いていることが判明。
他のお客さんたちは、皆最低でも3人のグループだったため、
私だけ、ほとんど待たずに、先に中へ通してもらえた。
2方向が壁に接している角地で、ホールを背にして座る小さなテーブル。
大勢でワイワイ賑やかにするのが好きな中国人は、こういう隅っこの小さなテーブルで、
壁に向かって黙々とお食事するなんて、疎外感に苛まれ、嫌がるかも知れないが、
元来お一人様が大好きな日本人には打って付け。
自分だけの閉ざされた小さな空間に、やけに落ち着きを感じることウケ合い。
お一人様シートでホッとひと息ついたら、さぁ注文。
メニューには写真がいっぱいなので、お料理をイメージし易い。
(↓)以下、私が食べた物。
私は、いつも四川の定番中の定番を無難にセレクトしちゃうけれど、
もっとコテコテの本場料理を!という人にもちゃんと対応できる豊富なメニューですヨ。
★ 時蔬拌毛豆
野菜を食べなきゃ!と思い、まずは“时蔬拌毛豆(時蔬拌毛豆)”という冷菜を注文。
“毛豆”は中国語で枝豆の意。なので、“時蔬(季節の野菜)”と枝豆の和え物ということ。
どんぶりにいっぱい盛られ、18元也。
季節の野菜が具体的に何なのかは、分からない。一種の菜っ葉で、恐らく茹でて刻んで、混ぜている。
この冷菜は、まったく辛くないし、日本人がビールのおつまみに食べる茹でた枝豆より、塩分も少ない。
自然な枝豆そのものに、ほんのり香る胡麻油がアクセント。
辛い四川料理の箸休め的に食べ、ホッとできるお味。
★ 麻婆豆腐
好物の“麻婆豆腐”もオーダー。枝豆の冷菜よりさらに安い15元也。
日本円にして250円程度。
中国では、結構な高級店でも、麻婆豆腐は安い。
主となる材料がお豆腐なので、安くて当然なのだろうけれど、
日本では、中華料理店のメインを選べるランチセットなどで、エビチリや酢豚と大抵同等の扱いになっており、
麻婆豆腐が格別安いお料理という印象はない。
オーダーし終え、ちょっとしてから、辛さの調整を頼まなかったことに気付く。
本場四川仕込みの麻婆豆腐は、日本人の想像を絶する激辛なのではないだろうか…?!
あぁーーっ、辛さを少し抑えてと頼めば良かったぁー…!と後悔。
気付いたのが遅かったので、もう諦めることにした。
そして、出来上がった麻婆豆腐を、恐る恐る口にしたところ、…ンん、耐えられる辛さ。
これ位の辛さの麻婆豆腐なら、今どき日本でも出しているお店はある。
辛さだけではなく、旨味も感じられるし、山椒の風味がイイ感じ。
お豆腐は、固過ぎず、柔らか過ぎず。
★ 蜀樓水餃
最後はこちら、“蜀楼水饺(蜀樓水餃)”。ひと椀、6元也。
このお店では“蜀樓水餃”と呼んでいるけれど、要は“钟水饺(鐘水餃)”のこと。
鐘水餃は、四川省成都発祥の定番小吃。
清朝・光緒年間に、鐘少白という人が考案したから“鐘水餃”。“鐘さんの水餃子”ってこと。
小さなお椀に入った肉の餡の水餃子で、辣油のようなタレをかけた状態で提供される。
皮は、一般的な水餃子より薄目で、ツルンとしたノド越し。
麻婆豆腐と同じで、蜀樓水餃のタレも、ここのは辛過ぎず、ちゃんと旨味が感じられる。
小ぶりなお椀に4~5個の水餃子が入っているだけだし、適度な辛さが良い刺激になるので、
食欲旺盛な男子高校生だったら、わんこ蕎麦感覚で何杯も食べられてしまうのでは。
肉や魚介をドカーンとメインにしたお料理を頼んでいないということもあるけれど、
それにしても日本では考えられない安さ。
本場の味をレストランのテーブルについて堪能しても、お値段ファストフード店並み。
肉や魚介の豪華料理を頼んだところで、質の割りに安く、お得感のある良心的なお店だと思う。
混雑する時間帯に、これっぽっちしか頼まないで居座っては気が引けるし、
他に行きたい所があったので、サッサと退散いたしました。
◆◇◆ 川办餐厅 Chuan Ban ◆◇◆
北京市 东城区 建国门内大街 贡院西街头条 5号


地下鉄駅から大通り・建国门内大街(建國門内大街)を西に進み、
場・长安大戏院(長安大戲院)手前の道・贡院西街(貢院西街)に右折し、北上。
やがて見えて来る贡院西街头条(貢院西街頭条)という細い道を右折すると、
間も無くして左手に四川省人民政府驻北京办事处(四川省人民政府駐北京辦事處)の建物があるので、
そこのゲートをくぐると、お目当てのレストラン。