第29回東京国際映画祭、ワールド・フォーカス部門に出品された

大陸の張涵予(チャン・ハンユー)×台湾の彭于晏(エディ・ポン)主演、
香港の林超賢(ダンテ・ラム)監督最新作。
上映は、10月26日(水曜)、27日(木曜)、28日(金曜)と3日連続。
3日間とも、来日した林超賢監督が、上映終了後にQ&Aを実施。
林超賢監督は、自転車レースを描いた作品『破風~To The Fore』で、昨年もこの映画祭に参加。
私は、自転車に興味が無いので、無理してまで予定にネジ込むこともないとパスしたが、
その時の作品は『疾風スプリンター』と邦題を変え、2017年1月7日に日本公開が予定されている。
今年はスケジュールの都合が合ったので、3回ある上映の内、一回目のチケットを私も入手。
会場のEXシアター六本木は、初めて行く場所。
椅子があまり良くなかったけれど、スクリーンが大きいので、
ど派手なアクション満載の『メコン大作戦』を観るには、悪くない会場だったと言えるかも。
林超賢監督が今年もって来たその『メコン大作戦』は、
2011年、メコン河で中国船が拿捕され、乗組員13人が殺害された事件を描いた物語。
主演男優の一人・張涵予は、
吳宇森(ジョン・ウー)監督が高倉健主演映画『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年)をリメイクする
『追捕~MANHUNT』の撮影で、今現在、日本に潜伏している可能性大いにあり。
(「張涵予もその場に居た」と明言はされていないけれど、先日、鳥取で大きな地震があった際、
岡山で『追捕』の撮影が行われていたのは確かな情報。)
もし、どうせ日本に居るのであれば、張涵予にも来ていただきたかったわぁ~。
★ 『メコン大作戦~湄公河行動 Operation Mekong』 林超賢監督Q&A
ライティングのせいか、カメラに収まったステージ上の林超賢監督は、なんだか人形っぽい。![]()

映画の詳細は後日として、ここには、上映終了後に行われた林超賢監督による約30分のQ&Aから、
私個人の記憶に残った部分をピックアップして、書き残しておく。

実際に起きた事件をベースに脚色していますが、関係者への取材は行いましたか?

この映画はノンフィクションです。私は、脚本を書くにあたり、雲南省で事件を担当した人に取材をしたり、
“黄金の三角地帯”へも行きました。
そこでは、通常入れないはずの製毒工場(ドラッグ製造工場)にも、
警察に裏から手をまわしてもらい、入ることができました。

監督は、中国内地では、『閃閃的紅星之紅星小勇士~Sparkling Red Star』のような
共産党アニメも作っていますが、他とどういうバランスで作品を撮っているのですか?

私は香港の監督ですが、どこを中心にするとは考えておらず、あるのは“映画を撮る”ということだけです。
まずテーマがあり、そこにどういうドラマがあるのかを考えて撮る、ということです。
中国には、広電総局による厳しいルールがあり、特に中国の警察に関する物には、大変厳格です。
ただ、そのような検閲も、年々ユルくなりつつあります。

2011年に起きたメコン川中国船襲撃事件は、当初、現地武装勢力の仕業と言われていましたが、
その後、タイの軍事勢力も絡んでいたと報道されました。
映画も、それら両方が事件に関わっているという描き方と感じましたが、
今、中国では、そのように理解されているのですか?

この事件には複雑な背景があります。
確実に分かっている事実は、13人の中国人が殺されたという事だけ。
確かにタイの軍人が関わっていたとも言われていますが、確固たる証拠はありません。
私は、不確かな事は、映画では描きたくないので、そうしました。

銃撃戦が行われるショッピングモールは、実際に存在するモールですか?
撮影にはどれくらいかかりましたか?

あのモールは、実際に存在するモールです。
脚本を書いた時点で、撮影が大変になることは分かっていました。
セットを作るのは予算上無理だったのですが、幸運にも、丁度いいモールが見付かりました。
あのモールでは、真ん中にあるレストランだけが、セットです。そのセットも、一日では組めません。
その間、モール内の周囲のお店に騒音などの迷惑をかけてしまうため、賠償金を払いました。
また、撮影時には、モール内のお店に車が突っ込んでしまったり、床にダメージを与えてしまったので、
結構な額の賠償金を払うことになりました。
幸い、スタッフが頑張ってくれたので、あのシーンの撮影にかかったのは、7日間でした。

映像と音楽は切り離せないものだと思いますが、監督は何を基準に音楽を選んでいるのですか?

私は脚本を書く時、「今回は、どんなテンポでいこうか」と考え、
イメージにあった音楽を流しながら、書いています。
例えば、『激戦 ハート・オブ・ファイト』(2013年)の時は、<サウンド・オブ・サイレンス>でした。
その音楽を、撮影の現場でも流すのです。
そうすることで、現場のスタッフたちも「今回はこういうテンポなのか」と分かり、皆で意識を共有できます。
この日の林超賢監督は、
まるで『メコン大作戦』の中から抜け出てきたかのようなカーキ色の軍人ルック(?)だったのが、まず印象的。
Q&Aの内容は、満足のレベル。
こういう映画祭では、「えっ、わざわざ尋ねるのって、そこ…?!」と首をかしげたくなる素っ頓狂な質問や、
質問にもなっていない的外れな事を取り留めなく語る人が、最低でも必ず一人はいるものだが
(それもその人にとっては重要な部分で、質問は自由なのだから、本当は別に良いのだけれどね)、
林超賢監督には熱心な固定ファンも多いせいか、皆さまテキパキ的確に質問をされる。
言語は広東語で始まったが、大陸からの質問者お二方に対しては北京語で返答。
最近こういうパターンが多いから、広東語を専門にやってきた通訳さんは、
北京語にも対応できないといけなくなり、大変ですね。
今回ここに挙げたのは、私自身の記憶に残ったお話だけれど、その中でも取り分け印象的だったのが、
「警察に裏から手をまわしてもらい、通常入れない製毒工場に入った」という部分。

新作を手掛ける度に、
イメージに合った曲を決め、脚本を書く時や現場でそれを流すというお話も、良かった。

『激戦』のみならず、今までの監督作全てについて、
一作一作ずつ、この作品の時イメージした曲は?と知りたくなってしまう。
あと、共産党アニメ『閃閃的紅星』を引き合いに出し、質問したのは、中国人留学生。
このアニメのタイトルは、日本の香港電影ファンの口からは、なかなか出ないだろうから、これも興味深かった。
広電総局の縛りがユルくなってきているというのは、どうなのでしょうねぇ…?
確かに、全体的には甘くなってきているのかも知れないけれど、
今でも、日本人の私には“どうでもいい事”にしか思えない部分に、いきなり噛み付いている気が…。
あと、特に独立電影への縛りは、益々厳しくなっているように見受ける。
★ サイン会
会場がTOHOシネマズ六本木ヒルズの時は、
イベント終了後、観客が自然に映画館入り口附近に集まり、即席サイン会がなんとなく始まるけれど、
このEXシアターには、“なんとなく人が集まれそうな場所”が無い。
そうしたら、Q&Aの最後に、司会者が「この後、2階で、監督が
サイン会をやって下さいます」とアナウンス。

私も行ってみました。
2階は、ちょっとした屋上庭園がある階。
その隅にある、恐らく普段は喫茶スペースとして使われているであろう部屋が、
サイン会会場として準備されていた。
屋内だし、テーブルが有って、ペンも用意されているので、そういう点ではTOHOシネマズより良い。
スタッフの女の子が一人待機していて、
監督とツーショットを撮りたい人のために、シャッターを押してくれる。

林超賢監督は、一人一人にとても丁寧に応対。
その割には、案外早く自分の番が回って来た。
今日のお召し物、映画の中の人みたいですね、と言ったら、「そう、スペシャル」と林超賢監督。
そして、お召し物以上に、私の目を釘付けにしたのが、“湯上りたまご肌”。
とても50を過ぎた男性とは思えないツヤッツヤの玉の肌。
“年がら年中スチームサウナ”みたいな香港の蒸し暑さが、
体内の老廃物を汗と一緒に排出して、お肌に良いのかしら。
お召し物やお肌ばかりにすっかり気を取られ、観た映画について何一つコメントしなかった事を、
私、悔やんでおります…。![]()

この日観た映画『メコン大作戦~湄公河行動』の感想は、また後日。