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映画『僕はチャイナタウンの名探偵』

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【2015年/中国/135min.】
頭脳明晰でありながら、舌っ足らずな青年・秦風は、警察学校の受験に失敗。
そこで、おばあちゃんから勧められ、7日間の予定で、タイに行くことに。
おばあちゃん曰く、タイに暮らす秦風の叔父・唐仁は、“チャイナタウン一”と誉れ高い名探偵。
しかし、バンコクの空港に到着早々、迎えに来たショボい叔父・唐仁を見て、秦風の脳裏に疑念が湧く。
これが本当にチャイナタウン一の名探偵なのだろうか…、と。
案の定、唐仁が引き受けているのは雑用ばかりで、舌先三寸で小銭稼ぎ。
しかも、下品で、街の美女・阿香の入浴を覗く始末。
すっかり失望した秦風は、予定をキャンセルして帰国しようとするが、
そんな矢先、唐仁がいきなり警察に捕まりそうに!
すかさず逃げ、取り敢えず難を逃れたものの、
どうやら唐仁は殺人事件の容疑者に仕立て上げられてしまったらしい。
巻き込まれた秦風も、止むを得ず、唐仁と共に追っ手を避けながら、事件の真相を探ることになるが…。



2016東京・中国映画週間で鑑賞。

監督は、俳優として知られる陳思誠(チェン・スーチェン)
婁(ロウ・イエ)監督作品『スプリング・フィーバー』(2008年)で、
秦昊(チン・ハオ)とイチャイチャしていたあの陳思誠でございます。
元々、自分で脚本を書いて映画を監督する夢を抱いていたそうで、
2012年『北京愛情故事~Beijing Love Story』で監督デビューし、本作品は2本目。



主人公は、タイの中華街で、何でも引き受けるセコイ三流探偵をやっている唐仁と、
唐仁を“名探偵”と信じ、タイにやって来た彼の甥っ子・秦風。
物語は、秦風がタイに到着早々、叔父の唐仁が如何様師紛いの駄目男と知り、失望して、帰国しようとするも、
その唐仁がなぜか事件の犯人に仕立て上げられ、追われる身となってしまったため、
二人で協力して事件の真相を解こうと奔走する7日間をコミカルに描く探偵ミステリー

唐仁は、確かに胡散臭い男だが、重い犯罪に手を染めるよな悪人ではない。
なのに、彼にかけられた容疑は、黄金の窃盗と殺人!
唐仁が何も知らずに運んだ荷物の中身が実は黄金で、
しかも、その荷物が運び出された工房で、彫刻家の遺体が発見!
防犯カメラに、荷物を運ぶ唐仁の姿が映っていたため、殺人犯と見做されてしまったわけ。
唐仁は、殺人容疑で警察から追われるばかりか、消えた黄金を探す地元ヤクザからまで追われる始末。
あっちにもこっちにも敵だらけ!





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主人公コンビを演じるのは、自称“チャイナタウン一の名探偵”唐仁に王寶強(ワン・バオチアン)
警察学校の受験に失敗し、タイにやって来た唐仁の甥っ子・秦風に劉昊然(リウ・ハオラン)

本作品は、叔父と甥っ子がコンビで事件解決に挑む“バディもの”。
一般的に“バディもの”に、“似た者同士”は無い。
大抵は、生真面目と不良という、相反する二つの個性がぶつかり合いながらも、難事件に挑み、
その過程で相手を認めるようになったり、友情が芽生えてくるものだ。

本作品でも、そのような“バディもの”のお約束は守られている。
唐仁はしょうもないチンピラ崩れ、秦風は真面目で頭の切れる男の子。
叔父と甥であるから、年齢も親子ほど違う。
見た目も、チビの不細工と、長身のイケメンと、正反対。
165センチの王寶強と184センチの劉昊然が並ぶと、文字通りの“凸凹コンビ”で、
ヴィジュアル的にも分かり易くて、楽しい。


一人ずつ見ておこう。まずは王寶強。
私が王寶強を知ったのは、『イノセントワールド-天下無賊-』(2004年)。
この作品では、子供の頃から少林寺で修業を積んだ武術の腕を完全に封印し、ドン臭い青年を演じている。
王寶強って、もしかしてスゴイ俳優なんじゃない?!と驚かされたのは、
それから随分経ってから観た『ミスター・ツリー~Hello!樹先生』(2011年)でのエキセントリックな演技。
さらに、『罪の手ざわり』(2013年)で演じた殺人犯にも、ゾッとさせられた。
地元中国ではコメディのイメージが強いのかも知れないけれど、
このように、私にとっての王寶強は、難しい役を個性的に演じる実力派のイメージが強い。

なので、本作品でコテッコテのコメディをやっている王寶強を見たのは、ちょっと新鮮。

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扮する唐仁は、土方焼けした肌にパンチパーマ、ニッと笑うと前歯に一本の金歯と、一見して下流。
(あの金歯、どうなっているのでしょうか?貼っているの?被せているの…?)

声もかなり作り込んでおり、甲高い声を出し、独特のアクセントで捲し立てている。
あまりにも普段の声と違うので、もしかして吹き替えかと思い、調べてみたら、ちゃんと御本人の声。
実際に世界中に暮らす華僑には広東系が多いことから、この唐仁も広東人と設定されているため、
王寶強は役作りで広東訛りをかなり練習したんですって~。
道理で喋り方が、香港の曾志偉(エリック・ツァン)に似ている訳です。

そもそも広東人の唐仁が、なぜタイに住んでいるのかも気になるところ。
所詮お気楽コメディなので、設定については深く考えてはいけないのかと思いきや、
作中、移住の理由が説明される。

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それによると、唐仁は故郷で結婚したものの、女房を寝取られ、その噂があっと言う間に広まり、
居た堪れなくなり、止むを得ず、小さな田舎町を逃げるように出て、タイに移り住んだという。
この話でイヤでも重ねてしまうのが、この夏、中華芸能界を騒がせた王寶強の泥沼離婚報道。
実際の王寶強も、妻の馬蓉(マー・ロン)を、自分のマネージャーに寝取られ、離婚を発表したばかり。
まるで主演作『僕はチャイナタウンの名探偵』が、王寶強の未来を予言していたかのようで、笑えない。
(それにしても、その妻・馬蓉、“有名俳優の妻の座”に収まっていれば、人生安泰だったものの、
よくマネージャーなんかに走ったわよねぇ。お金より肉欲が勝つなんて、ある意味尊敬するワ。)


続いて劉昊然。
1997年生まれの19歳、中央戲劇學院在学中のまだ学生!
陳思誠の監督デビュー作『北京愛情故事』で、彼もまたデビューしてからは、もうトントン拍子。
巨匠・陳凱歌(チェン・カイコー)監督が手掛ける日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』に
白龍役で出演することが決まっているし、最近こちらに記したように、
大ヒットドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす』の続編『琅琊榜之風起長林』では、
主人公に大抜擢!この恵まれた状況からも、何かしら大きな後ろ盾があることが想像でき、
よほどの不祥事を起こさない限り、トップスタアの座はほぼ約束されているようなもの。

私は、劉昊然の演じている姿を、本作品で初めて見たのだが、
人懐っこい感じがして、確かに彼は広い層から好かれるタイプと感じた。
超美形ではない。例えば、(↓)こちら、先日発表されたドラマ『琅琊榜之風起長林』のヴィジュアル。

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この画像だと、ジャニーズの風間俊介っぽい。
動いている映像を見ると、風間俊介には似ていないのだけれど、
子犬のようなつぶらな瞳はちょっと腫れぼったくて、“シャープ”というより“ヌボッ”とした顔立ち。
若い頃のイノッチや筒井道隆などと系統が似ているかも。
そのヌボッとした素朴なお顔が、スラッと長身のナイスバディに乗っているというギャップ。
“童顔巨乳”に惹かれる男性がいるように、劉昊然の顔とボディの差にもギャップ萌えする人が居ると思うワ。
不良っぽい危険な雰囲気ではなく、母親世代に支持されそうという点では、
松坂桃李や、若い頃の妻夫木聡に通じるかも知れない。

この度演じている秦風は、とても頭の良い男の子なのだけれど、やはりキレッキレの冷たい感じではない。
特徴は、吃音があること。素朴な雰囲気で、可愛げがある。




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他の出演者もザッと見ておこう。
唐仁のアニキ的存在の刑事・坤泰に肖央(シャオ・ヤン)
坤泰とライバル関係にある刑事・黃蘭登に陳赫(チェン・フー)
消えた金を求め、唐仁を執拗に追う地元のヤクザ者・北哥に小瀋陽(シャオシェンヤン)
唐仁が恋い焦がれるチャイナタウン一の美女・阿香に佟麗婭(トン・リーヤー)
チャイナタウンの顔役的存在の閆先生に金士傑(チン・シーチエ)
そして、カフェで働くオカマちゃんに張大大(チャン・ダーダー)等々…。

黃蘭登刑事役の陳赫は、劉昊然も出演する日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』を
現在撮影中の陳凱歌監督の甥っ子。
母親は、主に舞台で活躍の国家一級演員・胡小玲(フー・シャオリン)だし、芸能一家の出なのです。
この映画だと、リーゼントにした髪型や、ウエスタン風のファッションのせいかも知れないが、
香港明星っぽい暑苦しさがあって、印象に残る。

錫伯(シベ)族の女優・佟麗婭は、陳思誠監督の奥方。
チャイナタウンで評判のセクシー美女に扮し、夫の映画作りをサポート。
秦風役の劉昊然が主人公に大抜擢された話題のドラマ『琅琊榜之風起長林』へも、特別出演が決まっている。

台湾からは、ベテラン金士傑が、チャイナタウンを牛耳る閆先生の役で出演。
ノリノリでカラオケをやっている初登場シーンには、
台湾のローカル臭がプンプン漂っていて(映画の舞台はタイだが)、好き。
こういう力の抜けた金士傑は、とても良い。

ほんのチョイ役なのだけれど、
いちいち「コーヒー百バーツ」と請求してくる張大大扮するオカマちゃんも、好きなキャラ。
中国人っぽくない。見た目といい、声の感じといい、私がイメージするタイのオカマちゃんのまんま!

他にも、知った顔が多数出演。
陳思誠監督には、こういう時に助けてくれる芸能界のお友達がいっぱい居るのかも知れない。



ラストは、賀歲片(お正月映画)らしく、大陸の3人組ユニット・南征北戰 NZBZの薩瓦迪卡>に合わせ、
キャストが総出演でタイの街で愉快に歌って踊って、幕を下ろす。
タイ語の“サワディカー(こんにちは)”は、“薩瓦迪卡”という漢字をあてるのですね。







陳思誠には悪いが、「俳優が監督をやっても上手く行くわけがない」という偏見がどこかに有ったのか、
ぜんぜん期待しないで観たら、意外に楽しめた。
ただのドタバタコメディと言ってしまえばそれまでだが、かつての香港映画を彷彿させるノリで、懐かしく感じた。
1978年生まれ、30代後半の陳思誠は、
ちょうど周星馳(チャウ・シンチー)映画に夢中になった世代だろうから、
受けたであろう香港映画の影響は、少なからず、監督作に現れているのではないだろうか。
むしろ香港には、今もうこういうベタなコメディ映画はあまり無いような気がする。

また、陳思誠は、主人公・秦風のように、ミステリー小説も本当に好きなのかも知れない。
作中、引用されている小説の中には、青崎有吾や歌野晶午といった日本の作家の物も出てくる。


本作品のラストでも暗示されているように、続編では唐仁と秦風がニューヨークで活躍。
チャイナタウンは世界中あちらこちらに有るので、シリーズ化できそう。
陳思誠監督、3作目は横浜中華街でいかがですか?

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