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北京2016:田義墓①~田義墓への道

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毎度のことだが、北京2016旅の備忘録、更新すっかり滞っております…。
1月20日に放送された『アナザースカイ』隈研吾の北京編に触発され
(あれは『アナザースカイ』史上、上位に食い込む名編であった)、久々に田义墓(田義墓)でブログ更新。

★ 田義

田义墓(田義墓)とは、読んで字の如く、“田义(田義)”という人のお墓。

この田義(1534-1605)は、陝西華陰の出身。号は“渭川”。
9歳の時、浄身され、宮廷に上がり、
明の12代皇帝 世宗・嘉靖、13代 穆宗・隆慶、14代 神宗・万暦と、明朝三代の皇帝に仕えた太監(宦官)。

太監というと、賄賂で財を成すとか、皇帝を操るといったズル賢い奸臣のイメージも付きまとうが
田義はクリーンな好人物として語り継がれてる数少ない太監の一人。
特に第14代皇帝・万暦(萬曆)からの信頼は厚く、軍事行政面でも重用され、
南京守備の任を受け、万暦11年(1583年)からの6年間は、南京に派遣されている。
南京は、元々明の首都だった場所。
第3代皇帝・成祖永樂が、1421年、北京に遷都した後も、
六部や五軍都督府といった機能は残され、副都的役割を果たしていたので、
そこに守備として派遣されるということは、皇帝の代理くらい重要なお役目だったのだと。
北京に戻ってからは、内廷管理宦官の役職“十二監”の最高位・司礼監として、様々な部署を監督。
蟒袍玉帯など、在任中に受けた恩賜も多く、地位は二品まで上り詰めている。
明代、太監の最高位は四品とされており、田義の二品は特例。

そんな田義も、万暦33年(1605年)、72歳で病死。
萬曆帝は、ひどく悲しみ、3日間朝儀を取りやめ、田義を厚く弔う準備をさせたという。

★ 田義墓

通常四品までのところ、異例の二品まで上り詰めたほど皇帝からの信頼も厚かった寵臣なので、
お墓も太監のものとしては、かなり立派。

清代になると、管理する者も居なくなり、荒廃してしまうが、
それを惜しんだ僧侶が、時の皇帝・康熙に、批准を上奏し、
園内東側に慈祥庵を建て、そこを陽宅(風水における“人が住む場所”)として、
陰宅(風水で陽宅に対し死者が入る墓)田義墓を、守ることになる。

とは言っても、幾度となく盗掘に遭っているし、近年文革とか色々あって、荒廃は進んだであろう。
(文革中は幼稚園になったため、この場所が守られたという説もあるようだが、
その情報が正しいかどうかは、現時点で私は未確認。)
修復作業に入ったのは、比較的最近、1998年のこと。
2006年には、北京市の文化保護單位に登録され、一般にも開放されている。


この田義墓、全体の敷地面積は、約6000平米。
東京ドームのグラウンド部分の半分くらいの広さ。

園内は、以下の3ツのエリアで構成。
 墓园展区(墓地エリア)
 宦官文化陈列馆(宦官文化陳列館)
 田野石刻展区(屋外石彫刻エリア)


現在、墓地エリアには、明の田義をメインに、
馬龍湖、王奉、慈有方といった、明代、清代の他数名の太監のお墓が並んでいる。
(田義以外のお墓がここに作られた、もしくはここに移された時期は、説明文が見付からず、不明。)

★ 田義墓はどこ…?

保存状態の良い明代太監の貴重なお墓で、北京の文化保護単位に指定されているにもかかわらず、
観光地としては、なぜか不人気な田義墓。
日本のガイドブックの中では、取り上げる場所が比較的広く細かい<地球の歩き方>を見てみたが、
田義墓に関する記述は皆無。
折り込みの“北京市広域図”という地図でも、その辺りはばっさりカットされている。
北京の中心部からの距離は、頤和園へ行くのと大して変わらないのではないかと思うが、
あまり需要が無いのか、完全にスルーされている。

そこで私は、百度 baiduの地図などの他、たまたま読んだ台湾人男性が書いたブログを、行き方の参考に。
その男性も、情報が少なくて、行き方が分からず、困ったらしい。
近くまで来ているはずなのに、それらしき場所が見付からず、
道行く人々に「“田義墓”はどこですか?」と尋ねても、皆が皆、知らないという返答。
最後の最後に出稼ぎでこの地に住む男性がようやく場所を知っていて、教えてくれたという。
その出稼ぎの男性は、「昔からここに住む人たちは、
太監の墓なんて縁起の悪い物が地元にあることをイヤがっているから、
“田義墓”と聞いても、答えてくれないヨ。“慈祥庵”と尋ねないと駄目」と教えてくれたらしい。

ええぇぇー、太監のお墓がイヤだから、無いものとして、教えないなんて事あるかしら…??!
とにかく、私は、念の為、メモ帳に“慈祥庵”と覚え書きして、出発。

★ 田義墓への道のり

イメージ 1


まず、行ける所までは、地下鉄で。
田義墓に一番近い地下鉄駅は、1号線の西の終着駅、苹果园(蘋果園)
私は、それまで蘋果園の辺りには行ったことが無かった。
蘋果園というと、数年前に中国インディペンデント映画祭で『小蛾(シャオオー)の行方』(2007年)を観た時、
上映終了後にインターネットで中国と結んで行われたQ&Aで、
彭韜(ポン・タオ)監督が話した「北京で物乞いが一番多いのは蘋果園」という発言ばかりを思い出す。
それから数年経った2016年初秋、私は蘋果園で物乞いを見掛けることは無かった。
羊肉を使った料理を出すお店が多く、西域の香りを感じさせることからも、
昔ながらの北京っ子より、出稼ぎ労働者が多く住む地区であるとは見受けた。




イメージ 2

地下鉄で蘋果園駅まで行ったら、次はバスを利用。
地図で事前に調べたところ、首钢小区(首鋼小區)というバス停が、田義墓に一番近い。
そこは、結構な路線のバスが通っているようだ。
駅前が雑然としていて、バスがどこに止まるのか分からず、何本か逃してしまったけれど、
次から次へと来るので大丈夫。大して待たずに、977路のバスに乗車。


イメージ 3

バスは、全てのバス停に停車するし、次に止まるバス停名は、バス正面に表示されるから、分かり易い。
地下鉄で移動するのと何ら変わりは無い。
東京ではまったくバスに乗らないバス慣れしていない私でも、迷うことナシ。
目的の首鋼小區へは、事前に調べておいた時間より短い約15分で到着。



イメージ 4

バス下車いたしました、ここからは徒歩。
炎天下では体力を消耗し易いので、こんな場所で道を間違え、無駄に歩き回りたくない。
最初から確実な方角に進むため、人が多いバス停附近で、田義墓の場所を聞くことにする。
もちろん、例の台湾人男性のレポに従い、「“慈祥庵”はどこですか?」と質問。
…ところが、慈祥庵でも、知る人おらず。

何人かに質問した後、知っている人を探し出すにはかなりの時間を要すると悟ったので、
自分の勘を頼りに歩きだすことにした。
実のところ、バス停から田義墓までは単純な道のりで、
まずは“石门路(石門路)”という大通りを北上しなければならない事を私は知っていた。
ただ、道路名を表示したプレートがどこにも見当たらなかったので、
どの道が石門路なのか確信がもてなかったわけ。


80%くらいの確信で石門路らしき道を北上。

イメージ 5

北へ進めば進むほど人が少なくなっていくので、
本当にこの道で合っているのか?と少々不安にもなったけれど、それでも歩き続けていたら、
田義墓を示すプレートが掲げられているではないか。ホッ…!


(↓)ここ、“联科医院”、“民族养老院”という大きな看板が掲げられている角の家の手前の道に右折。

イメージ 6

ここにもやはり道路名は表示されていないが、この通りが“模式口大街”らしい。




イメージ 7

中国映画に出てくる田舎町のようで、北京の中心部とはまったく異なる雰囲気。
模式口大街の入り口附近は人影もまばらだったけれど、
奥へ進むと、ちょっとした市場のようなものや商店が出ていて、かなり賑わっている。




イメージ 8

どのようなお店が有るのか、人々は何を買っているのか?と興味深くキョロキョロ辺りを見渡していたら、
偶然にも、左手上方に“田義墓”と書かれた看板が目に飛び込んできた。
うわっ、こんな所に紛れ込んでいたのか、田義墓…!
北京市文物保護単位に指定されている施設の割りに、あまりにも気兼ねなく佇み過ぎており、
危うく通り過ぎてしまうところであった。
周囲に雑然と埋もれているこの様子を目の当たりにし、私は思った。
近隣住民は、太監のお墓を忌み嫌って知らないフリをしているのではなく、
本当にここに田義墓という文化財が有ることに気付いていないのではないか?…と。
それくらいここは目立たない。


とにかく、幸いにも私は偶然看板に気付き、目的地に辿り着けたので、坂を上って入り口へ。

イメージ 9

小さな牌樓をくぐり、右手にある小屋でチケット購入。大人一人8元也。



いよいよ見学スタート。
“北京2016:田義墓②~お墓参り”に続く。


◆◇◆ 田义墓 TianYi Tomb ◆◇◆
北京市 石景山区 模式口大街 80号

 9’00~16’00(入場券の販売は15時半終了)

 大人8元/学生4元
(身長120センチ以下の児童、65歳以上の高齢者、軍人などは無料)


地下鉄1号線・苹果园(蘋果園)駅から
336路、597路、977路、运通112线,运通116线といったバスに乗車、
首钢小区(首鋼小區)バス停で下車し、そこからさらに徒歩で約15~20分

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