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中香合作ドラマ『賢后 衛子夫~衛子夫/大漢賢后衛子夫』

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武帝・劉徹が第7代皇帝につく紀元前2世紀、前漢の中国。
朝廷の奸臣の悪行が横行し、民の生活は困窮。さらに水害が国を襲い、
家族と離ればなれになってしまった幼い女の子・衛子夫は、
偶然出会った気を失いかけている男性・易寒に、持っていたなけなしの食べ物を分け与え、
彼から代わりに「不爭、不露、不顯(争わず、目立たず、ひけらかさず)」という言葉をもらう。

やがて美しい女性に成長した衛子夫は、仲の良い異父弟・衛青と共に、
時の皇帝・劉徹の姉である平陽公主の屋敷・平陽府の使用人となり、
そこで偶然にも、幼い頃出会った易寒と再会。易寒は、平陽府で厨房を任されていたのだ。
ある日、この平陽府で、皇帝・劉徹を迎え、酒宴が催される。
宴の席で、急遽舞いを披露することになった衛子夫は、その清らかな美しさで一瞬にして劉徹の心を奪い、
寵愛を受け、平陽公主の後押しと易寒の機転もあり、宮廷にあがることに。
しかし、劉徹の皇后である陳嬌らからの猛反発に遭い、冊封は見送られ、
下級の宮女として、後宮に残ることを許されるが…。



2015年2月、チャンネル銀河で放送された中香合作ドラマ『賢后 衛子夫~衛子夫/大漢賢后衛子夫』
何話か観たものの、途中で録画をしくじり、視聴の継続断念。
話の続きが気になっていたら、数ヶ月後の5月に同局で再放送。
今度こそ頑張る!と、月曜から金曜まで平日毎日一話ずつの進行をコツコツと追うことに。
そして、7月下旬、ついに全47話を放送を終了。

★ 概要

本作品は、大陸の華策影視と、香港のnow頻電視が組んだ中香合作ドラマ。
監督を務めたのは、香港出身の劉家豪(ラウ・カーホウ)
脚本を手掛けたのは、劉家豪監督の奥方で、同じく香港出身の梅小青(ムイ・シウチン)
出演者も、大陸と香港(あとちょっと台湾)から程よくキャスティング。


このドラマ、そもそもは47話完結として制作された物だが、あちらでは、38話版と47話版が存在。
と言うのも、中国の建国記念日にあたる国慶節を前に、
大陸のラジオ、テレビ、映画といったメディアを管理する國家廣播電影電視總局、通称“廣電總局”が、
2014年9月3日から10月末までの間、ゴールデンタイムに、
愛国主義と反ファシズムをテーマにしたドラマを放送するようにと、テレビ各局にお達し。
そこで、8月20日から毎日3話ずつ放送の本ドラマを、期限ギリギリの9月2日までに終了させるため、
微調整を重ね、38話版を制作したのだとか。“苦肉の策の38話版”ってこと。
相変わらず日本人の感覚では分かりにくい面倒が色々有る不思議国家でございます。
ま、とにかく、大陸でも、その後、11月に入ってから、47話の完全版が放送されている。
日本に入ってきている物も、もちろん47話の完全版。

★ 物語

時代は紀元前2世紀、前漢の中国。
物語は、貧しく辛い幼少期を送った少女・衛子夫が、美しく控え目な女性に成長し、
弟・衛青と共に、平陽公主の屋敷の使用人になったことで、
平陽公主の弟である時の皇帝、武帝・劉徹に見初められ、宮廷にあがり、様々な困難に直面しながらも、
劉徹と国の発展を一番に思い、その聡明さと誠実さで、劉徹の寵愛と信頼を得、
賢后として中国史上に名を残すまでを描いた女の一代記


簡単に言ってしまうと、平民から皇后にまでのし上がった衛子夫という女性のサクセス・ストーリー
運命的に出逢った夫・武帝と深い絆で結ばれ、共に国を盛り上げたメオト愛の物語でもある。

武則天、楊貴妃、西太后等々、中国史に名を残した女性は数多く居れど、
衛子夫(紀元前2世紀-紀元前91年)はここ日本では馴染みが薄い。…が、ちゃんと実在の人物。
私がドラマで衛子夫を見るのは初めてだと思っていたけれど、
すっかり忘れていただけで、『美人心計 一人の妃と二人の皇帝~美人心計』の後半に…

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ちょこっとだけ登場。『美人心計』で張檬(チャン・モン)が扮していた女性が衛子夫。


このドラマ『衛子夫』では、その主人公・衛子夫は勿論のこと、登場人物の多くは実在した人物。
私がこれまでほとんど無関心だった前漢の武帝年間や、衛子夫という人物を学べる史劇としても面白い。


もちろん全てが史実ではなく、このドラマなりの解釈で演出されており、
特にラストは美しい良い話にまとめられている。
実際には、晩年、老害ふりまく暴走老人と化した武帝から厚い信頼を寄せられ、
水衡都尉にまで出世した江充(?-紀元前91年)が、敵対する太子・劉拠が次期皇帝に即位することを恐れ、
その周囲の者たちに巫蠱(ふこ=人を呪う術)の嫌疑をでっち上げ、
次々と抹殺するという事件“巫蠱之禍/巫蠱之獄(巫蠱の乱/巫蠱の獄)”が起き、
巻き込まれた衛子夫もまた皇后を廃され、自害を強いられ、命を落としているけれど、
ドラマでは、武帝は、爰樞という怪しい男の話を一時は鵜呑みにして、衛子夫を殺そうとまで考えるが、
「夫・武帝が後々“冤罪で賢后を殺した暗君”と汚名を着せられるくらいなら、自ら命を絶つ!」と
自己を犠牲にしてまで夫を想う衛子夫の深い愛に心を打たれ、
メオトは改めて絆を取り戻しラヴラヴという、悲惨な史実とは異なるハッピーエンディングになっている。

史実で、武帝からの寵愛も失せ、皇后を廃され、自害までさせられたお気の毒様な衛子夫の扱いが
その後どうなったかと言うと、曾孫の劉詢が漢の第9代皇帝・宣帝に即位すると、
皇后の位が回復され、“思皇后”という諡號(おくりな)を贈られている。

そんな訳で、晩年は決して幸せだったとは言い難い衛子夫だけれど、
武帝の皇后として在位した38年は、中国史上2番目に長い皇后の在位期間で
(トップは、明朝第14代皇帝・萬曆帝の皇后、孝端顯皇后の42年)、諡號をもった最初の皇后でもあるそうだ。

ドラマでは、そもそもがハッピーエンディングなので、そこの辺の史実は説明されていない。

★ キャスト その①:愛と信頼で結ばれ漢に繁栄をもたらす運命のメオト

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王珞丹(ワン・ルオタン):衛子夫(紀元前2世紀-紀元前91年)~貧しい出生でありながら武帝の皇后に

2007年のヒットドラマ『奮鬥~Struggle』で人気急上昇した頃から気になっていた王珞丹。
舒淇(スー・チー)や周迅(ジョウ・シュン)のように目と目の間が離れていて、
下手すればブス枠に組み込まれそう顔なのだが、それが逆に個性的でスタイリッシュ。
同じ年の女優・白百何(バイ・バイホー)にも似たサッパリ系美人。
私は、『衛子夫』を途中で休み、取り敢えず映画『いつか、また』(2014年)で王珞丹を見たけれど、
たっぷり彼女を堪能するなら、やはりこちらのドラマ。
キャリア十年目にして初めて挑戦する史劇で彼女が演じる衛子夫には、
目頭切開でパッチリお目々にした昨今の安っぽいアイドル女優には真似できない
上品で洗練されされた古典的な美しさがある。

本ドラマでのスタイリングは大きく別け2種類。
髪型も、Before皇后とAftere皇后(皇后になる前と皇后に冊封された後)で変わる。

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どちらもお似合い。特に皇后になる前の、耳をすっぽり覆い隠した髪型は、清楚さが際立つ。

衛子夫は性格も見た目通りで、極めて清らか。私利私欲が無く、常に世のため人のため。
豊かな暮らしや地位を手にしても、貧しかった頃の気持ちを忘れぬよう、
子供の頃に教わった「不爭、不露、不顯(争わず、目立たず、ひけらかさず)」という言葉を生涯戒めに。
皇后にまで上り詰めると、さすがに優しさだけではやっていけず、それなりの貫録も。
罪人に対し、自ら初めて死刑を言い渡すシーンは、皇后としてひと皮剥けた“NEW衛子夫”誕生の瞬間。

とにかく、この『衛子夫』で、私はすっかり王珞丹ファンになってしまいましたー!
『衛子夫』の後は、映画出演もドッと増え、
彭順(オキサイド・パン)監督の『宅女偵探桂香Detective Gui』では周渝民(ヴィック・チョウ)、
林超賢(ダンテ・ラム)監督の『破風~To The Fore』では彭于晏(エディ・ポン)といった具合に
香港のメジャーな監督の作品でメジャーな男優とも共演しているし、
私が大好きな張震(チャン・チェン)との共演作『悠長駕期~Drive Me Crazy』も控えている。
映画ファンにも要注目の女優さん。



林峯(レイモンド・ラム):漢武帝・劉徹(紀元前157年-紀元前87年)~前漢第7代皇帝

私は香港ドラマをまったく観ないので、香港ドラマ出演の多い林峯は、
歌手としての活動をたまに芸能ニュースで目にするくらいで、これまで演じているところは
映画『楊家将~烈士七人兄弟の伝説』で楊延/楊五郎に扮しているのをチラッと見たことがあるくらい。
ジックリ見たのは今回が初めてなのだけれど、林峯扮する夫の武帝・劉徹は
美しい妻・衛子夫と釣り合いのとれたなかなかの二枚目である。
…が、普段の私なら、こんな二枚目に瞬時にホレてしまうところなのに、今回は簡単にオチなかった。
と言うのも、私は、林峯扮する劉徹からそこはかとなく漂う皇帝らしからぬ
(もっと言ってしまうと…)中条きよしにも近い“ホスト臭”のような“Vシネ臭”のようなお水っぽいニオイを
敏感に嗅ぎ取ってしまったのであります…。
この役、もし陳曉東(ダニエル・チャン)が演じていたら、私も即メロメロになっていたに違いない。
しかしそうすると『蘭陵王』の宇文邕(奇しくもあちらも“武帝”、ただし北周の)とキャラが被るので
やはり林峯が演じることで、新鮮味があり、結果的に良かったのかも知れない。

余談になるが、近頃私は、前漢の武帝・劉徹のお誕生日が7月14日で、
方大同(カリル・フォン)と同じであると知った。もっとも武帝・劉徹の方が2140歳も年上(!)だけれど…。

★ キャスト その②:身内だからこそ恐ろしい最強お姑サマ・小姑サマ軍団…!

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陳莎莉(サリー・チェン):太皇太后/孝文竇皇后(紀元前3世紀-紀元前135年)~劉徹の祖母

台湾のベテラン女優・陳莎莉。
混血っぽい顔立ちは、『僕たちのプリンセス~全民公主』にも出ている同世代の台湾女優、
夏台鳳(シア・タイフォン)にとてもよく似た雰囲気。現代の感覚からすると、かなり暑苦しく、
キョーレツな印象を残す顔だが、あの時代は、こういう感じが美人女優だったのであろう。
扮する太皇太后は、漢の武帝・劉徹の祖母。目が不自由で、魔女のような大きな杖をついている。
うん?あらら、こういう人、他にどこかで見た覚えが…

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そう、『美人心計 一人の妃と二人の皇帝~美人心計』で林心如(ルビー・リン)が演じている
前漢第5代皇帝、文帝・劉恆の皇后になる竇漪房。そう言えば、『美人心計』も前漢の物語。
失明している太皇太后と大きな杖を見て、あのドラマの後半が、この『衛子夫』に繋がっていくのだと、
ようやく時代背景が掴めた。



柳影虹(ラウ・イェンホン):館陶公主・劉嫖(紀元前2世紀-紀元前116年)~太皇太后の娘

柳影虹は香港の女優さん。扮する館陶公主は漢文帝・劉恆と太皇太后の間に生まれた娘で、劉徹の叔母。
甥っ子・劉徹の皇帝即位を後押しし、自分の娘・陳嬌も、劉徹に嫁がせ、皇后にする。
一度見たら忘れられないキョーレツな顔は、母の太皇太后にも負けず劣らず。

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メイクの影響も大いに有るが、京唄子や小林幸子と同種のオーラを発する館陶公主。



鄭媛元(チョン・ユエンユエン):陳皇后・陳嬌(紀元前2世紀-紀元前2世紀)~武帝・劉徹の皇后

鄭媛元は、この『衛子夫』で一躍注目を集めた大陸女優。
演じているのは、太皇太后に可愛がられている外孫で、子供の頃から一緒に育ち、
ずっと好きだった従兄の劉徹に嫁ぎ、皇后となる陳嬌。しかし、当の劉徹からは、政略結婚としか見做されず、
子にも恵まれず、ただでさえ不安なところに、衛子夫が出現したため、衛子夫を逆恨みし、彼女を潰すために、
母の館陶公主とタッグを組んで、ありとあらゆる悪事を重ねる。優しく甘い顔に似合わず、かなりの悪役。
しかし、なかなかの美人さんにも拘わらず、何をやっても、何を言っても、演歌っぽい湿っぽさを感じるのは
なぜだろうと不思議に思いながら見ていて、ある時、ふと気が付いた。

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あまり共感されないかも知れないけれど、
目と目の間の幅が狭く、中央に全てのパーツがギュッと集まった泣き顔の彼女もまた小林幸子系。
当初、陳嬌の甘い顔は館陶公主にまったく似ておらず、母娘に見えない!と思っていたが
実は二人は小林幸子で繋がっていたのだ。これに気付いてからは、案外上手いキャスティングと感心。



俞小凡(ユー・シャオファン):皇太后/孝景王皇后(紀元前174年-紀元前125年)~劉徹の生母

息子・劉徹が皇帝に即位し、自分も皇太后になったのだから、大威張りできそうなものだが、
威圧感ハンパ無いお姑サマと小姑サマがバリバリに健在なため、いつも気を遣い、小さくなっているお嫁さん。
大陸時代劇史上、最も控え目でおとなしい皇太后かも知れない。
…が、お姑サマ崩御で、形勢急変。それまで溜め込んでいたストレスが爆発したのか、
自身がお姑サマや小姑サマにされた仕打ち以上の暴言暴挙で、理不尽な嫁イビリを開始。
標的にされた衛子夫はたまったものではない。ワケの分からない因縁をつけられ、どんなにイビリ倒されても、
お姑サマを敬い、耐え続けなければならないから、中国のお嫁さんは大変…。



周麗淇(ニキ・チョウ):平陽公主(紀元前2世紀-?)~劉徹の姉

冷静で聡明な平陽公主は、自分の屋敷で使用人をしていた衛子夫の優れた人間性を見抜き、
弟・劉徹に嫁がせようと尽力。その後も衛子夫が苦境に立たされる度に、彼女に助け舟を出す。
嫉妬や陰謀渦巻く女の戦場において、理性で事を対処できる唯一のマトモな存在。
…だったハズなのに、愛する衛青との結婚が叶わなかったことで、その理性を失い、
衛青の姉・衛子夫への態度を一変させ、逆恨みの猛攻撃を開始。でもそんな攻撃も比較的短期間に収まる。
やはり元々はマトモな人だから、一時の気の迷いだったのね、…と私をホッとさせておき、
終盤もう一波乱起こすも、ついに衛青のお嫁さんになる夢を叶え、またもや真人間に。
結局のところ、オトコとの関係が上手くいっているかどうかが露骨に表面に現れる案外平凡な女であった。

★ キャスト その③:衛子夫を守るナイトたち

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沈泰(シェン・タイ):衛青(?-紀元前106年)~衛子夫と仲の良い異父弟 後に前漢の名将に

このドラマ、衛子夫を守る忠実なナイトたちも、結構な二枚目揃い。
まず沈泰。『宮廷の泪 山河の恋~山河戀·美人無淚』に皇太極(ホンタイジ)の側近・鳌拜(オボイ)役で
チラッと出ていたあの男優。沈泰自身、満族らしい。演技を学んだ北京電影學院では、
『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の果郡王、李東學(リー・トンシュエ)と同級生。
本ドラマでは、皇后の姉・衛子夫と共に、将軍として皇帝を支える衛青を演じ、出演シーンも激増。
この衛青は、姉と同じように、ひた向きで清廉潔白なお人柄に加え、よく見るとなかなかの美男子で、
角度によっては、『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』の⑬様・袁弘(ユアン・ホン)を彷彿。
そんな素敵な沈泰であるが、この『衛子夫』出演の後、
夜のカフェで有名プロデューサー于正(ユー・ジョン)をブン殴り、3日間拘留。
一説には、『大漢情緣之雲中歌』で約束されていた主役の座をいきなり降ろされ、
陸毅(ルー・イー)に取って代わられたことに激昂してしまったのだとか。
結構な逸材の割りに、近年出演作が少なめなのは、
大物プロデューサーを敵に回してしまった事が影響しているのだろうか…?
沈泰クンよ、どんなに頭に来ても、少しは計算することも覚えましょう!



徐正曦(シュー・ジェンシー):段宏~衛子夫の幼馴染み 武帝・劉徹に忠誠を誓い重臣に

沈泰以上の美男がこちら徐正曦。
上海出身、2005年<MEN7S UNO>のモデルコンテストで、両岸三地の頂点に立ち、
香港の事務所と契約し、香港で芸能のキャリアをスタート。
私が初めて演じている彼を見たのは、このドラマより少々前、
彭順(オキサイド・パン)監督×郭富城(アーロン・クォック)主演作『冷血のレクイエム【極限探偵+B】』の
修理工役であった。あちらでは確か“ジェレミー・シュウ”の名で紹介されているけれど、同一人物。
(だから名前くらい漢字で表記しろ!と常々言っているのです。)
本ドラマで扮する段宏は、架空の人物。
国と皇帝に忠誠を誓い、衛青と共に前漢の発展に大いに貢献する重臣。
子供の頃からずっと片想いしていた衛子夫が、皇帝に嫁ぎ、少なからずショックを受けるが、
それでも生涯一途に彼女への報われない愛を密かに貫き通し、窮地から何度も彼女を救う。
蘭陵王の妃となり、主従関係になってもずっと雪舞を守ろうとする『蘭陵王』の韓曉冬に近いキャラかも。
但し、段宏は韓曉冬よりずっとハンサムで、地位も高い。良き友人と割り切り雪舞に尽くす韓曉冬と違い、
いつまでも未練がましく“LOVE衛子夫”なのは、一途な愛の度が過ぎ、禍を招き、迷惑千万であった。
私生活では、このドラマを機に、平陽公主役の年上女優・周麗淇と恋仲に(最近別れたという噂も)。
平陽公主のお相手は、衛青ではなく段宏だったのですね~。



彭皓峰(ピーター・パン):易寒~平陽府の料理番 衛子夫とは家族同然の仲

易寒は、幼い衛子夫に食べ物を恵んでもらった代わりに「不爭、不露、不顯」という言葉を授け、
衛子夫の運命を切り開き、彼女が後宮に入ってからもずっと支え続ける人物。
上記の二人に比べると、ルックスでは劣るが、易寒も衛子夫を守るナイトで、とても良い人。
料理番にしては博学なのは、人には言えない“過去”があるから。
演じている彭皓峰は、香港の俳優で、香港ドラマを中心に活躍しているため、私は知らなかった。
英語名を“Peter Pang(ピーター・パン)”にしているのは、随分狙っちゃった感が…。
ドラマ『王子様の条件~拜金女王』で那維勳(ナー・ウェイシュン)が扮するオネェなマネージャー、
“潘彼得(パン・ピーター)”を思い出した。

★ キャスト その④:悪党

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鄭斯仁(チェン・スーレン):韓嫣(?-?)~子供時代の劉徹の勉強相手 館陶公主と結託

韓嫣は、ドラマ前半部一番の悪役。
武帝・劉徹と子供時代一緒に机を並べた仲であることから、何をやっても許されると過信し、
民を苦しめた上、館陶公主&陳嬌母娘と結託し、悪事を働く。
ゴム製人形のような顔立ちで、ふてぶてしくもナヨッとした物言い。
後々登場する悪役たちと比べると、大した策も無く、ただ単に図に乗っているだけにも思えるので、
“奸臣”と言うより、“性悪のオカマ”といった印象。



苗皓鈞(ミャオ・ハォジュン):爰樞~巫蠱(ふこ)の術で漢室を貶めようとする策士

かつて欽ちゃんファミリーの一員として一時話題になった斎藤清六を油ギラせた雰囲気で、
コナカや青木のヨレた背広を着て町役場の出納係りでもやっていそうな、ごくごくフツーのオジちゃん顔なのに、
このドラマで演じている爰樞は、皇帝と衛子夫に強い恨みを抱く怪しい祈祷師というミスマッチ。
架空の人物であるが、前述の武帝に信頼され“巫蠱の獄”で暗躍した実在の人物、
江充(?-紀元前91年)をモデルにしているのではないかと推測。
ドラマの爰樞は、本ドラマ一の黒幕で、本人は表には出ず、人に策を授け、
間接的にじわじわと漢室崩壊を目論むけれど、
武帝が聡明で、爰樞が仕込んだ捏造や虚言になかなか引っ掛かってくれない。
そんな武帝も最後には遂に罠にハマりそうになるが、最後の最後で真実が暴かれ、
爰樞が斬られるのは、実際の江充と同じ末路。



黄小戈(ホアン・シャオゴー):楚服~爰樞の弟子にして恋人

爰樞は見た目があんなにフツーのオジちゃんなのに、女性の好みが相当特殊なゲテモノ趣味。
この魔界系美女・楚服に本気でゾッコンとは、
ああ見えて、実はそこらの平凡な男たちとは異なる感性の持ち主で、タダ者ではないと思わせる。
楚服は、見ようによっては、香港の故・梅艷芳(アニタ・ムイ)にも似ているが、化粧が濃過ぎて摩訶不思議。
真面目に歴史を描いた時代劇には通常登場しないタイプで、アニメにでも出てきそうなキャラクター。
一見して怪しいのに、館陶公主&陳嬌母娘はこの楚服に簡単に傾倒し、衛子夫潰しの共同戦線を張る。



郭鑫(ライアン・クォ):慕容鳳~爰樞の弟子 毒と香りの魔術師

楚服亡き後登場するのがもう一人の弟子、慕容鳳。
こちらは男性だが、楚服と同じように常にばっちりメイクを施し、ヴィジュアル系バンドのメンバーのよう。
爰樞自身はフツーのオジちゃんなのに、弟子はナゼ二人とも厚化粧の魔界系なのだか…。
姉弟子・楚服に比べると、やや存在感の薄い慕容鳳だが、調香の技術は一流。
慕容鳳が調合した“天香丸”とやらを、爰樞が宮廷に送り込んだ李夫人に服用させたところ、
武帝・劉徹はその香りに誘われ、李夫人に入れ込んでしまう。
皇帝をもメロメロにする香りを調合できるパフューマーなんて、
現代に生きていたら、おフランスの一流香水メーカーから引く手あまたじゃない…?

★ テーマ曲

本ドラマのサントラは、長年香港のテレビ局でドラマ音楽の指導に当たってきた
陳國樑(ジャッキー・チャン)が担当。
オープニング曲の<江山背後>もエンディング曲の<守衛>も、
歌っているのは“武帝”林峯(レイモンド・ラム)。
ここには<守衛>を。あまり時代劇らしい曲ではないかも。
これ、インストゥルメンタルでも何パターンか有って、劇中よく流れるので、なんとなく耳にしていたら、
いつの間にか、綺麗なメロディだなぁと自然に思うようになっていた。






結局のところ、常日頃から人に優しく、誠実に生きていれば、窮地に陥った時に、皆が味方してくれる、
“情けは人のためならず”ですヨ、と教え諭すドラマであった。
しかし、誠実に生きていても、絶対権力をもったボケた老皇帝の前では、真も虚となり、
冤罪で無残に殺されるしかないというドロドロの史実を知ってしまうと、
あのラストのまとめ方は綺麗過ぎるようにも感じるが、それでも最後の一話まで毎回ハラハラどきどきの連続。

ラストの描き方のみならず、主人公のキャラクター設定も、ここまで控え目で利他的な人格者だと、
逆にイラッとしてしまう人が居るかも知れない。
でも、私は、例え理想でしかなくても、“良い人は報われる”、“善行は認められる”、
“正義は勝つ”という正統派の勧善懲悪に、案外ホッとさせられた。
皇帝や衛子夫を貶めようとする出来事が次から次へと起きるが、いつも最終的に悪事が暴かれるのは、
『半沢直樹』のスタイルにも似ており、スカッとさせられる。
それに、主人公の衛子夫が現実では有り得ないほど理想的な人物である分、
脇を固めるキャラクターに(こちらも現実では有り得ないほど)キョーレツなのが多いので、
まぁバランスはとれているのでは。
全般的にとても良くできたドラマで、時代はややズレるけれど、漢を描くドラマだったら、
私には『美人心計』より、こちらの方がずっと面白かった。
衛子夫という歴史上の人物を学んだことや、
彼女に扮する王珞丹という素敵な女優さんをじっくり鑑賞できたのも良し。


今回『賢后 衛子夫』を観逃した皆さま、朗報です。
チャンネル銀河では、2015年8月8日から毎週土曜、2話ずつを改めて放送。恐らく3度目の放送。

一方、私が『衛子夫』を観ていた月曜から金曜までの夜11時の枠は、この後、昨日7月22日(水曜)から
『岳飛伝 THE LAST HERO~精忠岳飛』を再放送している。
黃曉明(ホァン・シャオミン)主演だしぃ…と、初回放送の時2~3話観たのだけれど、
ホコリっぽい戦闘モノが、どうも私の好みには合わず、視聴を中断。今回の再放送でも追わないつもり。

チャンネル銀河では他にも7月20日(月曜)から『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』も放送している。
こちらは清宮ドラマの最高峰!もう視聴済みの人も多いと思うけれど、まだならこの機会に。

台湾映画『共犯』姚愛寗舞台挨拶in新宿

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台湾映画『光にふれる』(2012年)の張榮吉(チャン・ロンジー)監督の新作で、
2014年、第27回東京国際映画祭で上映された『共犯』が、一般劇場公開。

私は、その東京国際映画祭での上映で観たのだけれど、今回の一般劇場公開にあたり、
天使すぎる台湾新星女優ヤオ・アイニン来日!”…だって。

そう、出演者の一人、劇中自殺する高校生・夏薇喬に扮する姚愛寗(ヤオ・アイニン/ピピ・ヤオ)
来日し、舞台挨拶をするというのだ。
そこで私も、つい先程、熱中症気味で、軽い吐き気と頭痛に悩まされながらも、
公開初日の新宿武蔵野館までひとっ走り行ってきた。

★ 前売り券で座席予約

最近、舞台挨拶が付くだけで、チケット料金が割り増しされるのが当たり前になっているけれど、
今回は、通常料金で、前売り券も使用可能。
『共犯』はすでに一度観ているし、姚愛寗に特別興味が有ったわけではないが、
前売り券を使えるなら…、と座席を予約。

“付加価値つけて儲けます!”ではなく、“同額で来場者にサービス”という姿勢は
昨今の映画業界にしては誠実な印象で、とても好感がもてる。
が、即完売にはならず、予約開始日の夕方にふらりと武蔵野館へ寄った私でも、席は選び放題であった。



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ちなみに、(↑)こちらは、前売り券に付いてきたポストカード。
出演者の内、女子ばかりの3枚セット。

★ 本日の新宿武蔵野館

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舞台挨拶付きの上映は、10時20分と12時半の2回で、私が選んだのは初回の方。

会場となるスクリーン1は、新宿武蔵野館の中では、最も大きなスクリーンだが、
それでもキャパ133人の小劇場。
映画鑑賞が目的なら、ここでは普段極力後方の席を選んでいるけれど、
今回はすでに一度観ている作品だし、舞台挨拶重視で、前から3列目を確保。
最前列は、プレスのために空けているので、実質前から2列目のほぼ“かぶりつきシート”。

この回の入りは、目測で70%程度。
週末だし、通常の料金で舞台挨拶まで付くのだから、もっといっぱいになっても良い気がするけれど…。
宣伝に充分な予算が組めないマイナー作品の難しさを感じます。

★ 姚愛寗舞台挨拶

初回の舞台挨拶は、上映終了後に実施。
約一時間半の映画が終了すると、スタッフにより、簡単な準備がなされ、プレスが入り、
間も無くして、スクリーン左脇の非常口から、姚愛寗が入場♪

その入場口が私の真横だったため、超至近距離で彼女を見たのだけれど、
毛穴なんて無いし、まるで陶器のお人形さんのよう。
お召し物は、モンドリアン調のブロックカラーのワンピース。




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司会進行役は東京国際映画祭の田中文人氏、通訳は樋口裕子女史でスタート。
ただの舞台挨拶だと思い込んでいたら、質疑応答もある約20分のイベントであった。
(ちなみに、撮影は積極的に「どうぞ」とは言わないが、禁止令も出ず。
周囲の人が撮り始めたので、私も撮影。すぐ近くにスタッフが居たが、止められることはなかった。)




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以下、印象に残ったお話を大雑把に残しておく。


姚愛寗
こんにちは。私は姚愛寗(ヤオ・アイニン)です。今日はありがとうございます。
ニックネームは“ピピ”です。“ピピ”と呼んで下さい。(全て日本語)



姚愛寗
日本に来たのは6回目です。
元々台湾には日本が好きな人が多く、私も親近感を抱いています。日本の雰囲気が好きです。



姚愛寗
この映画で演じた夏薇喬は、私自身にも似ています。
私もプライベートでは、一人でじっと部屋で過ごすのが好きですし。
張榮吉監督は、夏薇喬のキャラクターが私に似ていると思って、私を選んでくれたのではないでしょうか。
撮影が始まってからは、私が役に入り易いように、一人で音楽でも聴いているようにと言われました。
普段は吸わないタバコを吸ったり、ワイヤーで吊るされるのは大変でしたね。



質問
台湾でAKBの新メンバーを募集していると聞きましたが、いかがでしょう。

姚愛寗
私は今25歳ですねー。だから、多分駄目ですね。(日本語)
それに、歌も歌えないんです。



質問
映画の中に『進撃の巨人』の絵が映ったのですが、御存知ですか。

姚愛寗
『進撃の巨人』は台湾でも有名ですが、私はまだ読んでいません。
日本の漫画で好きなのは、『美少女戦士セーラームーン』、『ドラゴンボール』、『HUNTER×HUNTER』等です。



質問
『妖怪ウォッチ』は知っていますか?

姚愛寗
詳しくはありませんが、大勢で踊るやつですよね。



質問
映画の中ではロングヘアですが、あの髪型は監督が決めたのですか。

姚愛寗
監督とスタイリストが、役のイメージで決めました。
あれは、私の地毛です。とても暑いので、撮影終了後にバッサリ切ってしまったら、
その後に追加撮影をすることになり、ウィグを付けました。どのシーンがウィグか分りますか?
バルコニーからネックレスを落とすあのシーンが、ウィグで撮影した追加のシーンなんです。



質問
ロングヘアだと、昔の宮崎あおいに似ていると思いました。
日本でも絶対にファンがつくと思いますが、日本でやってみたいお仕事はありますか。

姚愛寗
元々日本が大好きなので、興味がありますし、この先もお仕事で来る予定はありますが、
私の日本語はまだまだ上手ではありません。
モデル、映画、テレビのお仕事もやってみたいです。



姚愛寗
『共犯』の物語は、誰もが体験することを描いています。
この映画を観たら、誰でも優しくなれると思います。ありがとうございました。(〆のお言葉は全て日本語)




25歳は、四捨五入すれば、もう30歳(←わざわざ嫌味ったらしく四捨五入する必要もないが)。
そんな25歳の女性に“天使すぎる”などという形容は失礼だろ!とも思ったが、
この姚愛寗ちゃんは、年齢不詳で、確かに天使かお人形さんのようであった。
写真より、実物の方がはるかに可愛い。
映画の中では、私には小松菜奈のように見えたけれど、ある観客は「昔の宮崎あおい」と言っていたし、
近くで見ると平愛梨を混ぜたような感じでもある。
声も可愛らしく、小鳥のように喋るし、たどたどしい日本語も萌えポイントで、
日本人男性の好みド真ん中の台湾女子なのでは。
映画館で私の周囲を見渡すと、中年男性の率が非常に高かった上、
AKBだの漫画だのといった話も出てきて、益々その考えに確信をもった。
アイドルやアニメのヲタと、姚愛寗のような女の子を好むタイプは、すごく被るわけよ。
本人も「今後日本に来る予定がある」とチラリと言っていたところをみると、
もしかして、もうどこか日本の事務所に目をつけられ、マネージメント契約を結んでいる可能性も?
とにかく、今後の活躍にも注目。

★ 映画『共犯』

映画『共犯』は、二度目の鑑賞なので、具体的な感想はブログには今回ナシとする。
張榮吉監督作品なら、やはり『光にふれる』の方がより私好みだけれど、
『共犯』も一度目ですでにオチを知っている分、詳細をじっくり鑑賞でき、以前より好きになった。

あと、台湾の俳優に興味がある人なら、今回来日した姚愛寗に限らず、
ドラマ『ショコラ~流氓蛋糕店』で長澤まさみと共演している巫建和(ウー・チエンホー)、
単発ドラマ『曉之春~Dawn/Spring』で昨年金鐘獎・助演女優賞を獲得した溫貞菱(ウェン・チェンリン)、
梁朝偉(トニー・レオン)や張震(チャン・チェン)と同じ事務所・澤東に所属し、
岩井俊二らがプロデュースするオムニバス映画『戀愛中的城市~Cities In Love』で
楊冪(ヤン・ミー)の相手役に抜擢された鄭開元(チェン・カイユアン)等、
アイドルの高齢化で、慢性的な若手不足に陥っている台湾芸能界だが、
本作品では今後の活躍が期待できる新鮮な顔を揃えているので、その点にも注目。

東京国際映画祭では、登場人物の名前などが片仮名表記で判りにくかった日本語字幕が、
この一般劇場公開では、漢字表記に直されて、ずっと良くなっている点も評価。





世界に逆行し、未だに無意味な“撮影禁止”を慣習的に続けている日本の他のイベントと違い、
今回は写真撮り放題だったし、舞台挨拶だけでなく、たっぷりお話もあったし、満足、満足。
熱中症でもわざわざ行った甲斐がありました。


映画『共犯』については、こちらから。

『共犯』の出品にあわせ、東京国際映画祭のために来日した張榮吉監督のQ&Aは、こちらから。

クレオパトラとエジプトの王妃展

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先週、現在上野の東京国立博物館で開催中の<クレオパトラとエジプトの王妃展>へ行ってきた。
正直なところ、エジプトの歴史や文化には、あまり興味が無いのだけれど、
チケットを持っていたので、せっかくだから鑑賞することに。




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大混雑という情報は耳にしないので、開館時間ぴったりの朝9時半に到着。
エジプトは、私の興味が薄いだけで、大好き!という考古学マニアが多いし、
今は夏休みなので、もしかして子供がいっぱい来ていたりして…、と案じもしたが、
開館時間の時点で、私より前に居た人は、目測30人程度。
お蔭で、列を作って並ばされることもなく、スイスイと中へ。
近年、私が行く東博の特別展は、2時間3時間の行列が当たり前だったので、待ち時間ゼロは有り難い。

★ クレオパトラとエジプトの王妃展

本展では、ルーヴル美術館、大英博物館、ボストン美術館、ベルリン・エジプト博物館、
ウイーン美術史美術館等々、世界中に散らばっているエジプトの名品を14ヶ国から集結。
特に、クレオパトラに代表されるエジプトの女王/王妃にスポットを当てているのが特徴的。




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ここ日本でも誰もが知るクレオパトラ(クレオパトラ7世 紀元前69年-紀元前30年)。
プトレマイオス朝の“ラスト・ファラオ”で、国を統治する上でローマと同盟を結ぶために、
その美貌とお色気を武器に、「私自身がプレゼントよ♪」と言わんばかりに、
絨毯に包まった自分自身を贈呈し、カエサルをオトし、
カエサルの死後はアントニウスをもメロメロにしたと言い伝えられる伝説の美女。

そのようなクレオパトラをタイトルにも掲げた展覧会なので、
“エジプトの名品=古代エジプトの品々”というイメージがあるけれど、
よりヨーロッパ的な匂いのするローマ時代の彫刻や絵画なども結構展示されている。

あと、女性にスポットを当てているため、男性臭い物より、女性的な展示品が多い。



ちなみに、紀元前の話なんかされても、あまりにも昔すぎて、まったくピンと来ないのだけれど、
アジアで見てみると、クレオパトラが生まれた紀元前69年というのは…

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前漢の元帝・劉奭の皇后、王政君とほぼ同じ年らしい。
王政君は、ドラマ『クイーンズ 長安 後宮の乱~母儀天下』で袁立(ユアン・リー)が演じたあの女性。




以下、今回の展覧会で印象に残った品を簡単に挙げておく。

★ 大きめサイズの展示品

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大きめサイズの作品は、パッと目にした瞬間にハッとさせられ、どうしても印象に残り易い。

セクメト女神

新王国・第18王朝時代、アメンヘテブ3世治世(前1388年-前1350年頃)
2体のセクメト女神が、狛犬のように対になって並んでいると、
その間を通る時に、エジプトの古代神殿に入るような感覚に。


乳母の木棺(→画像上段左)

第3中間期・第25王朝時代、タハルカ王治世(前690年-前664年頃)
タハルカ王の娘・アメンイルディスの乳母、チェスラペルトの乳母の木棺の上部。
とても細密に美しく彩色されている。
“乳母”と聞くと、何となくクタビレたおばちゃんをイメージしてしまうが、
このような華やかな木棺を作ってもらえるなんて、生前の地位はそれなりに高かったのであろう。
“エジプト版春日局”みたいな感じ?


ハトホル女神をかたどった柱頭(→画像上段右)

第3中間期・第22王朝時代、オソルコン1世~オソルコン2世治世(前925年-前837年頃)
オソルコン1世が、ナイル川デルタのブバスティスに建てたバステト神殿のハトホル女神を象った
花崗岩製の柱頭で、神殿の祝祭の間か入り口にあったと推測されるらしい。
柱頭だけでこれだけ大きいということは、余程大きな柱をもった大神殿だったのだろうと想像するだけで
タメ息が漏れる。これは、実物を間近に見ないと、その迫力が分らない作品。


王妃のマスク(→画像下段左)

新王国・第18王朝時代(前1550年-前1292年頃)
布と漆喰を交互に重ねて固め彩色した、ミイラの頭部を覆っていたマスク。
金箔をほどこした質の高さなどから、既製品ではない、高貴な王妃のマスクと推測されるという。
…と言うことは、エジプトでは、そんな昔に、もっとお手軽に買える
既製品のミイラ収納ケースがあったという意味か。


神官の監督サテプイフウ(→画像下段中)

新王国・第18王朝時代、ハトシェプスト女王治世(前1473年-前1458年頃)
膝を抱えて座っている姿が胎児の姿勢を連想させることから、再生を意味していると推測されるのだとか。
びっしりヒエログリフが刻まれた方形の彫刻は、まるで現代アート。


アメンヘテブ3世の王妃のレリーフ(→画像下段右)

新王国・第18王朝時代、アメンヘテブ3世治世(前1388年-前1350年頃)
アメンヘテブ3世の寵愛をうけた正妃ティイの肖像のレリーフ。
清らかな印象を受ける美しいレリーフ。


石棺

プトレマイオス朝時代(前304年-前30年頃)
棺に刻まれたヒエログリフから、アンケトという女性の物であると判っているらしい。
エジプトの棺では、彩色を施された華やかな物は随分見ているけれど、
こういう“石の塊りがドカーン!”という棺は迫力があるし、より現代的で洗練された印象も。

★ 女性小物

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女性らしい装飾品や化粧品は、本展のコンセプトに合った展示品で、目を引く物も多い。

ハエ形装飾付き首飾

新王国・第18王朝時代(前1550年-前1292年頃)
所々に小さなハエ型のチャームを付けた、首回り目測42センチ位の金とカーネリアンのショートネックレス。
昆虫をモチーフにするのは今時風。…でも、敢えてハエ??
何でも、どこにでも飛んでいくハエは、当時勇敢な存在と見做されていたらしい。


耳飾(→画像左)

新王国・第18王朝時代(前1550年-前1292年頃)
日本風に言うと“ピアス”と表現される、耳に開けた穴に通すタイプの耳飾りが多数出展。
目を引くのはやはり、現代の物とまったく変わらないデザインの物や、高価な素材を使った贅沢な物。
それらと比べると、素朴なアラバスター製の耳飾りは、
お世辞にも制作に高度な技巧をこらしたとは言えないが、忘れ難い。
太い釘のような実にシンプルな形なのだけれど、それを突っ込むには、耳にかなり大きな穴が必要。
他の耳飾りを見ると、耳に通す部分が細いのに、これだけ直径1センチ近くある。


化粧容器

エジプト女性のメイクと言えば、“コホル”と呼ばれるアイラインが必須。
そんな訳で、コホルを入れるボトルや、それを目に描くスティックの展示がいくつか有る。
説明によると、コホル壷の中で、方鉛鉱やマラカイトといった鉱物のパウダーを
水で溶いて使うらしいのだけれど、そんな鉱物を長年目の周りに塗りまくって、毒ではないのだろうか。


腕輪(→画像中)

新王国・第18王朝時代(前1550年-前1292年頃)
金線にカーネリアンやラピスラズリといった貴石のビーズを通したバングルが何点か出展。
現代でも充分通用するデザイン性もさることながら、
紀元前に貴石であんなに小さなビーズを作れたという技術に感嘆。



蛇形の腕輪(→画像右)

ローマ時代(後1世紀頃)
蛇が手首にぐるぐると巻き付くようにデザインされたゴールドの腕輪は3品出展されている。
蛇をモチーフにした装飾品は、ヘレニズムからローマ時代にかけて、地中海世界で大流行したという。
今でも、例えばブルガリなどは、“Serpente(蛇)”と呼ばれるシリーズを出しているが、
あれはあの地方でローマ時代から延々と受け継がれてきたデザインだったわけか。

★ ミュージアムショップ

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見学が終わったら、ミュージアムショップも覗く。
真っ先に目に飛び込んで来たのは、ゴールドが眩しいファラオとツタンカーメンのボールペン。
しかし、これは、兵馬俑状態で大量に並んでいるから目に付くわけで、一本だけ買っても淋しいではないか。
マリアージュフレールが本展をイメージして作った会場限定のフレーバーティーも気になったけれど、
クセのあるお茶が好きな私にも、そのフレーバーティーのフローラル系の香りは、強過ぎてパス。
今回は結局何も買わず仕舞い。あっ、でも…

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本展が<王家の紋章>とコラボしたミニガイドブックは、540円とお手頃だし、
買っておけば良かったと、少々後悔。

★ 東洋館アジアギャラリーに寄り道

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普段、平成館で行われる東博の特別展に行くと、その後、本館に立ち寄ることが多いが、
今回は久し振りに東洋館アジアギャラリーを覗いてみた。
ここ、本館に比べ地味な印象で、素通りしてしまう人も多いけれど、実はアジアの結構なお宝が並ぶ穴場。




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入館してすぐ右側にある中国の仏像ギャラリーからして立派。
大小様々な仏像が並ぶ薄暗い空間は、幻想的で落ち着く。



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中国の名品なら、唐三彩も見逃せない。
何作品かある内、特に、両脇の三彩鎮墓獣と並ぶ三彩官人傭の3体が際立って素晴らしい。
このレベルの唐三彩には、なかなか出逢えないと思わせる逸品。



さらに私のお気に入りは、5階にある清代のお宝。
時折り展示品が入れ替わるので、たまに覗いてみると、新たなお宝に出逢えることも。


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瑪瑙柘榴

ルビーで象嵌した透明感のあるプチプチの実を、瑪瑙の裂け目から覗かせ、新鮮な柘榴を表現。
石材の色を生かした工芸の技法・俏色(しょうしょく)と言えば、
台湾の故宮博物院が所蔵する“翠玉白菜”が有名だけれど、この“瑪瑙柘榴”も負けていない。
しかも、故宮と違い、東博の東洋館はいつもガラガラで、写真も撮り放題。
私がここに立ち寄る時はいつも展示されているので、常設だと思い込んでいたけれど、
表に出ていない時もあるらしい。実物を見たい人は、事前に確認した方が良いかも。




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如意形時計

如意は常に何点か展示されているが、私がこの作品を見るのは初めて。
銅製の如意を色ガラスや真珠で埋め尽くし、
さらに両端にエナメル絵、中央に時計を配した華洋折衷の華やかな物。清代後期の西洋趣味が窺える。



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楼閣人物螺鈿十角箱

こちらは清代ではなく、14世紀、元の時代の物。
当たり前だが、そこらの土産物屋で売っているチープな螺鈿細工とは大違い!緻密な細工にうっとり。




実は現在、この東洋館では、平成館の特別展に併せ、エジプトから寄贈された日本で唯一のミイラを展示。
それも見るつもりだったのに、なぜか急にどうでもよくなり、建物をあとにしてしまった…。

★ タカノフルーツパーラー

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美術鑑賞の後は、久し振りにタカノフルーツパーラー(公式サイト)へ。
前回ここに来たのも、東博の後。
最近、東博とタカノフルーツパーラーはすっかりセットで、私の行動パターンになっているようだ。

今回オーダーした季節のパフェは、“桃のパフェ”。
ピーチゼリー、ピーチフロマージュムース、ピーチグラニテ、ヴァニラアイスと合せたピーチシャーベット、
そして勿論フレッシュな桃と、桃尽くしのパフェ。
甘く瑞々しく、口の中でとろける食感の桃が美味。




エジプトの歴史や文化にあまり興味が無いと書いたけれど、
エジプトの美術は、収蔵の多いロンドンの大英博物館やパリのルーヴル美術館は勿論の事、
実はカイロのエジプト考古学博物館にも複数回行っている。
今回の東博の展示は、それらと比べるとどうしても規模や質が劣るかも知れないけれど、
“王妃”というテーマに合せ、色々な所から様々な品をちょっとずつ集め、コンパクトにまとめているし、
きちんと説明書きも添えられているので、私のようなエジプト初級者には、
むしろ分かり易く、楽しみ易い展覧会だったようにも思う。
ただ、エジプトはマニアックなまでに好きという人もかなり居るので、
そういう人々にはもしかして物足りないかも…?

次回東博に行くなら、10月下旬から始まる<始皇帝と大兵馬俑>が大いに興味アリ。
年末年始をはさむ約4ヶ月もの長期に渡り開催する展覧会なので、
かなり力が入ったものなのではないかしら、と期待。



◆◇◆ クレオパトラとエジプトの王妃展 Cleopatra And The Queens of Egypt ◆◇◆
東京国立博物館 平成館

東京都 台東区 上野公園内

会期:2015年7月11日(土曜)~9月23日(水曜・祝)

9:30am~5:00pm (金曜 ~8:00pm/土日祝 ~6:00pm) 月曜休館

松翁軒の桃カステラで数日遅れの誕生祝い♪

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今知りたいのは、Windows10無料提供でアップグレードした方が良いのか、どうかということ。
パソコンの右下に“Windows10を入手する”というアイコンが出ていて、気になって仕方が無い。
一年間無料と聞くと、今の内にやらなければ損な気になってしまうけれど、
アップグレードすることで、今ある何かが消えちゃうとか、どういう変化が起きるとか、
メカおんちの私には、まったく分からず、恐ろしくて簡単には手を出せない…。



さて、テレビ。

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7月31日(金曜)、毎度の日テレ『アナザースカイ』は、
藤森慎吾の香港編以来3週ぶりのアジアで、吉田羊の台湾編。
マネージャーと二人三脚で8年かけブレイクした遅咲き女優が、
そのマネージャーと初めて二人で行った海外・台湾を再訪するという。
最近の私は、若いアイドルが台湾をキャピキャピ紹介している番組だと、
見ているだけでドッと疲労感が湧いてくるので、吉田羊くらいが丁度いいわ。
前回のアジア、香港編からいきなり選曲のセンスが変わったBGMにも注目。


月が変わって、8月2日(日曜)、同じく日テレの『所さんの目がテン』も台湾。
夏休み特集第2弾で、夜市やパワースポットなど、台湾の人気を科学した先週の放送に続き、
今週は台湾の温泉を科学。




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その日の晩、TBS『情熱大陸』は、“映画作家・河直美~カンヌで愛された彼女の素顔とは!?”と題し
河直美監督に密着取材。



翌8月3日(月曜)、テレ東『未来世紀ジパング』は、
“巨星墜つ・・・優良国家!シンガポールの表と裏”というシンガポール特集。
“巨星墜つ”というのは、どうやら今年3月に亡くなった李光耀(リー・クアンユー)元首相を指しているようだ。
評価の高いエアライン、シンガポール航空の研修、罰金を科せ、公共の場の風紀を守る国家戦略、
経済発展を支えるエリート官僚の育成と確保、熾烈な競争社会などについて取材している他、
予告編に、あの“ネオヒルズ族”与沢翼がチラリと映っていたことで、すでに話題になっているみたい。
前回のマレーシア特集も面白かったし、今回も楽しみ。



あと、8月1日(土曜)、BSジャパンで放送の『紹興酒の香りに誘われて~杭州・紹興の旅』という番組は
初回放送かしら?紹興酒と魯迅の係わりや王羲之で有名な蘭亭を取材し、
紹興市や杭州市の情景、グルメを紹介するとのことだが、
以前にもそのような番組を観たような、観なかったような…。取り敢えず録画予約。




それはそうと、つい先日、
香港で甄子丹(ドニー・イェン)と陳奕迅(イーソン・チャン)がお誕生日を迎えたその日、
不幸なことに、私もまたひとつ年を増やしてしまった…!!
一年があまりにも速過ぎる。このスピードでガンガン年を増やしていくなんて、考えるだけでも恐ろしい。
あーぁ、うるう年のうるう日に生まれたかったっ…!年を増やすのは、4年に一度くらいが丁度いいのにねぇ。


こんなに打ちひしがれている私とは対照的に…

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陳奕迅は赴いた台湾で、レコード会社が用意したお祝いの桃まんじゅう“大壽桃”を前に、
陽気にニューアルバム<準備中>をプロモーション。


大壽桃をさらにアップ。

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キッチュで楽しげ、しかもなんだかとってもおめでたい感じ。
普通のケーキとは違い、お国柄が出たお祝いで、よろしい。



やはり東洋で祝いの席には桃でございます。
香港の陳奕迅が“大壽桃”なら、私は“桃カステラ”で誕生祝い…!

★ 松翁軒:桃カステラ

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大きさは、直径約8センチ、高さ約5センチ。
すり蜜をかけ、色を差し、桃に見立てたカステラ。



こちら、長崎に行っていた母のお土産、
1681年(天和元年)創業の老舗・松翁軒(公式サイト)“桃カステラ”
“お土産”と言っても、今の時期、このお菓子は店頭に並んでいないらしく、受注生産。
長崎では注文だけして、後で東京に送ってもらったようだ。
別に私のお誕生日に合わせて注文したわけではない。
これは母のお気に入り菓子で、長崎に行った時や東京のデパートの催事で見掛けた時は、いつも購入。

桃カステラは、桃を模した縁起菓子。
南蛮貿易で伝来したカステラと、桃を不老長寿の象徴とする中国の文化を融合させた、長崎らしいお菓子。

中華の“大壽桃”と同じで、別に桃の果汁や果肉が入っているわけではなく、“見た目が桃”。
桃型に流し、天火で焼いた生地の上に、砂糖を水で煮詰めたすり蜜を2回かけ、
乾かし、白くなったところで、色をさし、桃に見立てている。

生地はふんわり、しっとり。
甘いすり蜜と一緒に食べ、丁度良くなるよう、通常のカステラより甘さが控えられているように感じる。



カステラは好物ではないけれど、これは可愛らしいから好き。
日本では近年、カラフルなバタークリームやアイシングでデコレートした
アメリカンなカップケーキがもてはやされているけれど、
和風カップケーキとも呼べそうな桃カステラの方が、東京ではむしろ珍しいし、私は好き。
桃という東洋的なモチーフがキュートだし、アメリカのカップケーキよりヘルシーな印象。

私は、母がいつも買ってくる、一応“元祖”と言われているこの松翁軒の物しか食べたことが無いけれど、
長崎では、多くの和菓子屋さんが桃カステラを作り、時期に関係無く販売しているのだとか。
母は今回の旅行で、松翁軒の物は注文し、他のお店ですぐに買える物を入手し、現地で食べてみたところ、
「カステラが、膨らし粉で膨らませたコンビニのスポンジケーキみたいな安っぽい味で不味かった」という。
色々食べ比べるのも楽しいかも知れない。

台湾ドラマ『春梅 HARU』

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1925年。
砂糖の需要にあわせ、總統府も農民に原料となるサトウキビの増産を奨励し、
益々発展する日本統治下の台湾。
しかし、サトウキビの買い取り価格は製糖会社によって決められており、
正当な利益を得られない農民たちは不満を募らせ、各地で抗議運動が勃発。

台南州・水上庄のサトウキビ農家・李天生もまた製糖会社の搾取に納得できないでいた。
ある日、李天生は、文化協会に所属し、農民運動を支援している医師・林慶堂から、
台湾視察で製糖工場を見学予定の雍仁親王に直接陳情する計画をもちかけられる。
林慶堂医師の助言通り、李天生は妻の阿月や気持ちを同じくする農民仲間たちと共に
雍仁親王の到着を待ち、自分たちの現状を訴えようと試みるが、
そんな時、どういう訳か群衆の中から一人の農民が発砲。
李天生らは、雍仁親王暗殺未遂の容疑で日本の警察から追われ、
サトウキビ畑の中に逃げ込むが、そこに火を放たれ、息絶えてしまう。

責任を感じた林慶堂医師は、孤児になってしまった李天生のまだ12歳の娘・春梅を
北門庄の自分の家に呼び寄せることに。
女中として生きる決意を固め、近所の阿滿姨に連れられ、北門庄へ行った春梅であったが、
そこで彼女を待っていたのは、林慶堂医師の妻・文櫻。
文櫻は突然押しかけてきた春梅に不快感を隠さず…。



台湾の台視で、2015年5月上旬に始まったドラマ『春梅 HARU』
日本での放送は99%無い!と確信し、youtubeの台視公式チャンネルで視聴。
月曜から金曜まで毎日一話ずつ進行するこのドラマは、現地では7月21日に全54話を終了。
公式チャンネルにも割りとすぐにアップされるため、私も現地とそう変わらぬペースで、全話を視聴終了。

★ 概要

監督、脚本家としても活躍する黃志翔(ホアン・ジーシャン)の小説<望鄉>を
洪于茹(ホン・ユールー)と楊一峯(ヤン・イーフォン)が共同監督でドラマ化。
この小説は、2001年にすでに一度、今回と同じテレビ局・台視が、黃志翔自身の脚本で、
小説と同じ『望鄉』のタイトルでドラマ化しているようだ。

ドラマのタイトル『春梅 HARU』は、台湾人の女性主人公の名前。
小説でも一回目のドラマ化でも、主人公の名前は“玉梅”で、
今回2度目のドラマ化にあたり、“タマちゃん”から“ハルちゃん”に変更。

出演者は、ドラマ『雨後驕陽~Sun After The Rain』や『妻の純愛~親愛的,我愛上別人了』のキャストを
数多く起用(もっとも私はどちらも観ていない)。

★ 物語の背景

まずは簡単に物語の背景を。
誰もが知る通り、日本は1895年(明治28年)から1945年(昭和20年)までの50年間、台湾を統治。
ドラマでは、その日本統治時代の後半、1925年から1945年までの20年間を描く。



物語の舞台は、サトウキビ畑が広がる台南州・水上庄で幕を開け、
その後、養女になった主人公が暮らす台南州・北門庄、看護を学ぶ台南、
訳あって3年間を過ごすことになる台北がメイン。

台南州・水上庄は、現在の行政区分だと、嘉義縣水上鄉。
“嘉義”は、そう、映画『KANO-カノ-1931海の向こうの甲子園』(2014年)の舞台になっている場所。


また台北でまず出てくる大稻埕は、現在の台北市大同區西南部。

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当時、経済文化の中心地として栄えたエリアで、
映画『ピース!時空を越える想い』(2014年)の舞台にもなっている。
左の画像は、その『ピース!』で鍵となる絵で、
画家・郭雪湖大稻埕の賑わいを描いた1930年の作品<南街殷賑>。

★ 物語

主人公は、貧しいサトウキビ農家の娘・春梅。
農民の権利を主張したばかりに両親が命を落とし、孤児となった春梅が、
農民運動の支援をした医師・林慶堂に養女として引き取られ、次々と降りかかる困難に立ち向かいながら、
日本統治時代の台湾を逞しく生きぬく姿を描く、女性の一代記


実の両親の死、養母からの冷遇、看護学校で受ける激しい差別と虐待、義兄との恋、
迫りくる特高の魔の手、記憶喪失、日本人との祝福されない恋…、とまぁ、波瀾万丈。
時代背景こそ史実に基づいているが、“メロドラマのお約束”をテンコ盛りにした
ラヴあり、サスペンスありの歴史フィクション。

★ ドラマの中の日本 その①:台湾人にとっての日本と日本人観

例えフィクションでも、日本が台湾を植民地支配していた時代を背景にしているという点が、
私が「このドラマは日本では99%放送されない」と直感した理由。
多くの日本人の関心どころもまた“日本や日本人がどのように描かれているか”ではないだろうか。

結果から言うと、「欺負我們台灣人的是不公平的殖民統治、是覇道的日本軍政府。
你們不應該將怨氣出在無辜的日本人身上。(我々台湾人を苦しめたのは、不公平な植民統治と
横暴な日本軍政府であって罪の無い日本人に腹いせすべきではない。)」という台詞にも表れているように、
日本の植民地政策や軍国主義には否定的、
日本人に関しては、良い人も悪い人も居た、という描き方をしているという印象。

全体的には、統治者側の日本人には、被統治者である台湾人を見下す傾向があり、
横暴に振る舞う日本人警官や、学校で台湾人生徒をイジメる日本人生徒が当たり前のようにいて、
“日本人=善良な人々”では決してない。

また、映画『KANO』で描かれる嘉義農業學校の甲子園進出は1931年、
日本の水利技術者・八田與一による烏山頭ダムの完成は1930年と、
この『春梅』にすっぽり入る時代に起きているが、ドラマではそんな事にはこれっぽっちも触れていないので、
『KANO』で大感激した日本人や、“台湾は、発展に貢献した日本に感謝している”と信じて疑わない日本人は
ガッカリを通り越して愕然とするかも知れない。

でも大丈夫、本ドラマには、台湾人と平等に接する良い日本人も登場。
逆に、台湾人の中にも、日本と繋がり利を得ようとしたり、同じ台湾人を貶めたり、
終戦を境に、立場が逆になった日本人に対しこれまでの復讐をしたり、
日本人の家から物を盗もうとするしょうもない人間が登場。
つまり、日本人だろうと台湾人だろうと、悪い人は悪い、良い人は良い、
“虎の威を借る狐”はどこにも居るとという描き方。

玉音放送が流れ、日本の敗戦が知らされるシーンも記憶に残る。
日本人の多くは茫然自失となり、中には、現実が受け入れられず逆上する者も。
間も無くすると、今度は、自分たちの財産や自分たちがどうなってしまうのかという不安が広がり始める。
逆に台湾人は「これでアメリカ軍の空襲が無くなるぞ~!」、「台灣復光了!」と素直に嬉しそう。

最後に日本の善良な警部・小野が特高の中村に言う「お前がしてきた行為は法治ではない、暴挙だ。
帝國がそのような行為のために失敗したと考えたことはないのか?!」という台詞は
歯止めのきかなくなった日本の軍国主義への痛烈批判と感じる。

★ ドラマの中の日本 その②:日本語

日本統治下の台湾を舞台にしているため、台詞はほぼ全て台湾語と日本語。
(台湾と大陸の抗日同志が会話するシーンなどには北京語も。あとほんの少々の英語も有り。)

本ドラマには日本人俳優も出演しているが、重要な日本人役はほとんど台湾人俳優が演じており、
彼らも多くのシーンで日本語を披露。
日本語の台詞は恐らく日本人が監修しているのであろう。使われている単語や言い回しは自然だけれど、
正直言って、発音は明らかに我々ネイティヴとは異なるので、
日本人役の台湾人同士が、日本語で会話しているシーンなどは、慣れるまで滑稽に感じてしまう。
(日本人が金髪のカツラを付けて、英語で演じるシェイクスピア劇よりはマシかも。)

しかし、“外国人の日本語”だと思えば、かなり上手く、映画『KANO』の少年たちの日本語とは雲泥の差。
一般的には、外国語は、若ければ若いほど吸収が早く、発音も良くなると言われるが、
素人の即席俳優とプロの俳優では、やはり覚えようという意識も取り組み方もぜんぜん違うのであろう。

そのように、プロのお仕事ぶりをまざまざと見せ付けられる日本語の台詞だが、
気のせいか、ドラマも後半になると減ってきて、日本人役の台湾人も台湾語で喋ることが多くなる。
日本語学習が撮影のスピードに追い付かなかったのか、はたまた視聴者から不評だったからなのか、
そこら辺の事情は不明。

★ ドラマの中の日本 その③:衣装・美術

時代を感じさせる衣装やセットも見どころのひとつ。

普段「台湾ドラマの衣装、特に男性の衣装が悲惨すぎる!」と酷評している私だが、
このドラマは、時代の雰囲気をリアルに醸していて、なかなか。
今では、Tシャツ+短パン+ビーサンがオヤジの定番ファッションになっている南国台湾でも、
当時は、富裕層や知識階層の男性はきちんと三つ揃えで決めていている。
私がこの世から消えて欲しいと願っている半袖ワイシャツなども着ておらず、長袖のワイシャツを着用。
台湾の気候で、軍服や三つ揃えで撮影するのはキツイだろうが、
仕上がった映像の中に映る男性たちはエレガント。
演じる役が、下層になればなるほど、服も布きれ同然の粗末な物になるので、撮影には楽そう。


概ね良好な衣装だが、春梅の養母・文櫻の和服姿と、囚人服には、「・・・・??」。

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当時、文櫻のような良家の奥方には、日本の教育を受け、日本文化に馴染み、和装で過ごす人も居たであろう。
ただ、台湾人女性が日本人女性より派手な色柄を好む傾向を考慮しても、
テロテロでテカテカのサテン地の着物はどうでしょう…?!
文櫻ってば、寂れた温泉町の土産物屋で外国人観光客相手に売っている
2千円程度の“なんちゃって着物”みたいのばかりを着ている。しかも着付けもイマイチ。
(それが台湾でも不評だったからかは分からないが、
ドラマの後半になると、文櫻は着物を着なくなり、旗袍を着るようになる。)

春梅の義兄・林俊彥が、冤罪で投獄された際に着ている囚人服にも疑問が。
…だって、どう見ても柔道着。
当時の刑務所事情を知らないので、何とも言えない。実際にはどうだったのか?これって、正しいの…??



セットは非常にリアル。
台湾には未だ日本統治時代の建造物が数多く現存しているため、“セットをリアルに再現”ではなく、
本当にホンモノを使用して撮影している場合が多い。例えば、主人公・春梅が養女となる林家の建物は…

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2011年、台南にオープンした八田與一紀念園區(八田與一紀念公園)の中に建つ4棟の日本家屋の内、
烏山頭出張所の所長・赤堀信一が暮らした“赤堀宅”を使用。


自宅で簡素な結婚式を挙げるシーンもある。

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畳敷きの日本家屋の壁に真っ赤な“(ダブルハッピネス)”の文字が、時代を感じさせる日台折衷。
お嫁さん“ヒロミ”は、真っ赤な口紅に翡翠の腕輪、そしてレトロなウエディングドレス。
映画『悲情城市』の“ヒロミ”もまた花嫁衣裳はこういう感じであった。
昔の台湾で、そこそこ良い家に嫁ぐお嫁さんの定番花嫁衣裳なのかしら。



八田與一紀念園區(八田與一紀念公園)
台南市官田區嘉南里 68-2號
OPEN:9'00~17'00(月曜休園)
日本家屋の開放:毎月第1週-田中及市川宅/第2週-八田宅/第3週-赤堀宅/第4週-阿部宅

★ 実在の人物

フィクションなので、ほとんどが架空の人物だが、実在の人物も二人だけちょこっと登場。


秩父宮雍仁親王(1902年-1953年)

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大正天皇の第二皇子。昭和天皇の弟。日本では“秩父宮(ちちぶのみや)”の名で知られるあの殿下。
ドラマの中では、1925年に視察のため台湾訪問。
主人公・春梅の実の両親ら台湾の農民は、この機に自分たちが受けている不公平を直々に訴えようと
雍仁親王の車列に近付こうとするが、日本の特高に買収された仲間が起こした暴挙のせいで
雍仁親王暗殺を企てた反日分子と見做され、殺される。
現実にも、雍仁親王は、1925年(大正14年)5月に台湾を訪問。
後の昭和天皇で、当時まだ皇太子だった裕仁親王が、
1923年(大正12年)に台湾を訪れた、いわゆる皇太子の“台湾行啓”は、そこそこに知られているけれど、
雍仁親王の台湾訪問までは、私は知らなかった。
このドラマの中で雍仁親王に扮しているのは沖津壮太郎
近年台湾を拠点に活動している石川県出身のモデルらしい。なかなかの美男子。



蔣渭水(1891年-1931年)

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台湾文化協会を創設し、非暴力での民族運動を指導した医師で社会運動家。
日本での呼び名は“しょう・いすい”。
ここ日本では、まったくと言って良いほど知られていないが、台湾では評価の高い抗日英雄で、
映画『ピース!時空を越える想い』では、李李仁(リー・リーレン)が演じている。
その『ピース!』では、皇太子の台湾行啓の際に、のぼりを振って皇太子に請願し、そのせいで逮捕され、
拷問を受ける蔣渭水が描かれているけれど、本ドラマでは、そのもう少し後の蔣渭水。
息を引き取るシーンなどは無いが、1931年に蔣渭水の死亡が伝わると、
同志たちの間に少なからず動揺が広がる様子が描かれる。
演じているのは、歌手の殷正洋(ジョニー・イン)。蔣渭水の肖像写真と並べると、結構似ていることが分る。


臺灣文化協會

蔣渭水らが創設した臺灣文化協會(台湾文化協会)も、本ドラマのキーのひとつなので、参考までに。
それまで日本統治下の台湾では、武装蜂起が頻繁に起きていたが、
1915年、台湾側に甚大な被害が出た西來庵事件を最後に、抗日運動のやり方を見直すようになり、
1921年、蔣渭水らにより台湾文化協会設立。
医師である蔣渭水は、台湾を“知識という栄養の不良症にかかっている病人”に例え、
その治療には教育が必要で、文化協会を通し、病んだ台湾を治療していくと説いている。
まぁ“文化的啓蒙を目的とする民間団体”と言えば聞こえは良いが、日本統治下における台湾の抗日機関。
台湾議会設置請願運動などを起こすが、その後映画『ピース!』でも触れているように、
この運動に関わった蔣渭水ら多くの社会運動家が逮捕、起訴されるという治警事件に繋がっていく。
本ドラマには、蔣渭水が登場するのは勿論のこと、主人公の養父・林慶堂や義兄・林俊彥も文化協会に共鳴し、
不平等を是正し、台湾社会を変えようと奔走(しかし、そのせいで身近な人々を犠牲にしてしまう…)。
「台湾は病んでいる」、「日本は憎いが、彼らの文化水準は明らかに台湾より優っている」、
「日本人に見下されないためには、我々も学ばなければならない」といった台詞もしばしば出てくる。

★ キャスト その①:主人公・春梅

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林建萱(リン・ジェンシュエン):農家の娘・李春梅から医師の養女になる少女期の春梅
林予晞(アリソン・リン):18歳から中年までの春梅


主人公・春梅は、9話までの少女期を林建萱、それ以降を林予晞が演じる。
女の子は成長すると見違えるように綺麗になると言うけれど、それにしても化け過ぎではないか?
少女期の春梅に林建萱が抜擢された理由が、私には今ひとつ理解できず…。
この林建萱は、1997年生まれのまだティーンエイジャーだが、すでにオバさんの様相。
しかも、実父役の吳朋奉(ウー・ポンフォン)より…

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血縁関係の無い養父役の朱剛(ジュー・ダーガン)似のカバ顔という不可解。


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特に横顔がソックリ。“ペットは飼い主に似る”と言うが、養女も養父に似るものなのか?

春梅が洗練された美女では、確かに役に説得力が出ないけれど、
貧農の娘の割りに、体格が良く、栄養が行き渡っているように見えてしまうのも、いけない。
まぁ、私には不評でも、現地台湾では、大勢の視聴者が彼女の演技に涙し、概ね好評だった模様。


林建萱から春梅を引き継ぐ林予晞は、1985年生まれ、現在30歳、元スッチーの遅咲き女優。
キャセイで5年近く客室乗務員として働いたものの、健康を害し、甲状腺腫瘍の手術を機に退職。
人生計画を見直し、テレビ局のOLになったところ、ドラマスタッフの目に留まり、マサカの芸能界入り。
日本に入って来ている物では、關關に扮した『キミをプロデュース~A咖的路』があるが(←私は未見)、
演技経験は極めて少なく、デビュー僅か一年少々で、この『春梅』主役に抜擢されたシンデレラガール。

生き馬の目を抜く芸能界をそんなにトントン拍子で駆け上った女優なんて聞くと、
余程の美女を想像してしまうが、実際にはそうでもない。
一般社会にいたら“美人すぎるOL”でも、芸能人としては華が無い感じ。
が、その華の無さが、困難な時代を地道に生きた“台湾版『おしん』”とも称される春梅の役には合っている。

春梅は、ドラマが幕開けする1925年の時点で12歳ということは、1913年頃の生まれ。
林予晞が春梅として最初に登場するシーンでは、十代にしては落ち着き過ぎだと思ったが、
ドラマの中で終戦を迎える1945年には、実年齢に近い32歳くらいだし、
最終回の1959年のシーンでは、40代ももう後半。
色々考えると、地味めなアラサー林予晞は正しいキャスティングだったと思える。

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約30年の経年変化は勿論のこと、長髪、短髪、ナース姿、男装(←バレバレ、せめて口紅やめるべし)等々、
新進女優・林予晞が一人で演じ切る春梅に注目。

★ キャスト その②:林家の人々

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朱剛(ジュー・ダーガン):林慶堂~春梅を養女として引き取る医師 通称“林先生(りん・せんせい)” 

朱剛といえば、その見た目から、これまで偶像劇では、気の置けないおじちゃん、
もしくは親しみ易い丸顔を逆手にとった腹黒い企業家の役などが定番であったため、
社会運動に力を入れる知識分子の役は少々意外にも感じたが、これがとても合っている。
林慶堂は、余計な事は妻に打ち明けず、なんでも自分一人で決めてしまう一家の大黒柱。
台湾にもこういう“昭和のお父さん”が居たのか。本当は優しい人だと分るから、涙を誘うシーンも。



席曼寧(シー・マンニン):林陳文櫻~林慶堂医師の妻 通称“サクラ”

文櫻は、夫の林慶堂が、自分に何の相談も無く養女にした春梅が気に入らず、春梅をイビリまくる養母。
夫の手前、春梅を家には置くが、「私のことは“母さん”ではなく“先生娘(奥様)”とお呼び!」と言い放ち、
春梅を女中扱い。ここら辺のくだりは、まるで“台湾日本統治時代版『シンデレラ』”。
でも、この文櫻、その昔、夫が仕事を優先したため、実の娘を亡くすという悲しい過去をもつ傷付いた女性。
根は悪い人ではなく、やがて春梅を実の娘同様に愛すようになる。(…が、終盤もう一波乱起こす。)



韓宜邦(Junior/ハン・イーバン):林俊彥~林家の一人息子 日本で医学を学び帰国 通称“ヒコ”

かつて、“小鬼”こと黃鴻升(ホァン・ホンション)らとアイドルユニット丸子を組んでいた通称“Junior”である。
絶対的二枚目ではなく、ハジケた若さと時代の風潮で何となく売れたアイドルだと思っていたが、
このJunior、なかなか上手い中年男優になっておられた。
未だに茶髪で偶像劇の王子様にしがみ付く、彼と同世代の痛い台湾中年アイドルたちと異なり、
昭和レトロな装いもお似合い。昭和顔の賀軍翔(マイク・ハー)も、こっちの方向に進めば良いのにねぇ。

本ドラマが台湾版『シンデレラ』なら、林俊彥は、継母にイビラれるシンデレラ(春梅)を救う王子様。
知的で人柄が良く、優しい。しかし、知的で正義感が強いがゆえに、若い頃の父と同じように、
社会運動にのめり込むようになり、自分自身と周囲を危険にさらす羽目となる。
妻の死を機に、復讐の鬼と化す様子にも要注目。
それまで優しかった林俊彥の顔に、文字通り真っ赤に血が上り、怒りを顕わにする表情は見もの。

★ キャスト その③:春梅の友人たち

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邱凱偉(Darren/チウ・カイウェイ):宮本剛~軍人として幼い春梅と出会う 退役後は企業家に

周杰倫(ジェイ・チョウ)プロデュースのユニット・浪花兄弟のDarrenが、日本人役に挑戦!
この日本人は良い日本人。もっとも100%の日本人ではない。
母親は台湾人だが、台湾人を見下す日本人の父親から、完璧な日本人として育てられた男性。
それでも宮本剛自身は、台湾を愛し、台湾人にも誠実に接し、やがて春梅に惹かれていく。



楊子儀(ヤン・ズーイー):莊和泰~林家のお手伝いさん阿好嬸の甥 春梅の幼馴染み 通称“阿泰”

阿泰も超イイ人!阿泰は貧しい漁師の息子だが、叔母が林家のお手伝いさんだったことから、
春梅の勉強相手に選ばれ、共に育った彼女に片想いするようになる。
幼馴染みと言えど、片や無学な漁師の息子、片や医者の娘(まぁ元々は貧農の娘だが)では、
所詮報われぬ恋なのだけれど、それでも春梅を一途に愛し、彼女のためにとことん尽くす。
『蘭陵王』における韓曉冬のようなキャラ。



王思平(ワン・スーピン):趙美~春梅の看護学校時代の同級生 通称“ヒロミ”

モデル出身の長身美女のせいか、これまで高飛車な女性を演じている印象が強かった王思平。
今回は珍しく、けな気で誠実な女性を演じている。この美は、美人でも、どこか薄幸な雰囲気が漂う。
本人は真面目でも、兄・趙榮三はチンピラ。しかし、早くに両親を亡くし、自分を育ててくれた兄とは、
深い絆で繋がっており、切り捨てることなんてできず、美自身も問題に巻き込まれてしまう。
ところで、この“ヒロミ”という名前、日本統治時代に育った台湾女性にとても多いように感じる。
映画『悲情城市』の梁朝偉(トニー・レオン)の妻の“吳寛美”も然り。

★ キャスト その④:日本人(…?)

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李沛旭(パトリック・リー):中村公平~日本の特別高等警察

やたらイングリッシュを捲し立てるルー大柴ばりのウザい男を演じるあの李沛旭が、新境地を開拓!
笑いとイングリッシュを封印し、なんと日本人、…しかも、極悪の特高を演じる。
この中村公平は、行き過ぎた国粋主義者で、治安維持の名のもと、思想に問題があると見做した者を
卑劣な手段で封じ込めていく。名が体をまったく表しておらず、“公平”という名が嫌味なほど偏った男。
人を信用せず、実は孤独な中村公平だが、純真な趙美と出会ったことで、変化が…。
日本人役なので、当然日本語の台詞は多い。
本ドラマでは、イングリッシュではなく、ジャパニーズを操る李沛旭をお楽しみ下さいませ。



張銘杰(チャン・ミンジエ):宮本龍治~宮本剛の父 商社経営

剛のパパは、やり手と言えばやり手だけれど、なかなか腹黒い実業家。
元々は茶葉などを扱う商社を経営していたが、戦況をみて軍需工場に鞍替え。
黒龍会と組み、自分の手を汚さずに、邪魔者を消そうとも。
(当時、黒龍会のメンバーが腕に本当にお揃いの刺青を入れていたのはか、はなはだ疑問。)
扮する張銘杰は、彼より年少の他の俳優たちと比べ、日本語があまり得意ではないみたい。
台湾人を見下し、台湾人女性との間につくった息子・剛を、ニッポン男児として育てた宮本龍治なのに、
その息子との会話は大抵台湾語で、発する頻度の高い日本語は「バカヤロー!」。
台湾人がイメージする典型的な“横柄な日本人男性”を表現しているように思う。



曹景俊(アーティー・ツァオ):小野俊二~日本人警察官 通称“小野部長”

小野部長は日本の警察という立場上、物語序盤こそ日本人に加担しているようにも見受けられるが、
特高・中村公平の態度に不信感を抱き、台湾人、日本人に関係無い中立的な視線で事件に対処し、
台湾の治安を守るという任務を果たそうとする警察官。
中村“公平”よりよほど公平な人間だと判るから、台湾人からの信頼も厚い。



朱蕾安(チュウ・レイアン):龜井洋子~春梅の看護学校の先輩 

看護学校のリーダー格。学校初の台湾人学生として入学してきた春梅たち後輩が気に入らず、イジメまくり。
特に二等民族でありながら成績優秀な春梅を忌み嫌い、そのイジメはどんどんエスカレート。
春梅の出生を調べ上げ、彼女の実の両親がその昔雍仁親王暗殺を企てた容疑者だと突き止めると…

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夜中に拉致し、竹刀を持って集団リンチ!
反乱分子の娘は日の丸の前で跪け!と強要し、取り出したハサミで、春梅の長い黒髪をザンギリ頭に…!
 ひぇーーーっ!洋子先輩、コワッ…!!!
この洋子と春梅の腐れ縁は、そうそう簡単には切れず、ドラマ後半の第2ラウンドに続く。

女性登場人物随一の悪党・洋子先輩を演じている朱蕾安だが、悪役はデビュー十年にして初めてだという。
(やはり発音はどうしても外国人だと判るけれど)日本語力も出演者の中でナンバー1。
洋子の父親で製糖工場経営者を演じている原田潤という日本人より、むしろ上手いくらい。
(この原田潤って、本職の俳優ではないわよねぇ??ヒドイ棒読み…。)
元々ある程度喋れるのではないだろうか。実際、日本関連のお仕事もしている。

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2015年2月、関西テレビの『くーる!?ジパング』という番組に出演したようだ。
“元首相の孫が海外スターをおもてなし”という内容で、
DAIGOが、台湾の歌手・林育羣(リン・ユーチュン)を京都でおもてなしする際、
この朱蕾安が通訳として、DAIGOをサポートした模様。
(↑)この画像を見ると、他にはラブリも映っていますね。

★ キャスト その⑤:日本人(リアル)

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その他、大きな役とは言い難いが、日本人役で“リアル日本人”も多数出演。
前出の雍仁親王役・沖津壮太郎、製糖工場経営者龜井役・原田潤以外にも、
脱走兵役で与座重理久、小野部長の部下・龍門役で岡本孝、中村公平の部下の特高役で河南裕士
看護学校の佐藤亞美役で新井利佳、看護婦長役で藤岡麻美(←ディーン藤岡の妹)などなど。

男性はほとんどは台湾を拠点に活動するモデル出身の俳優らしく、容姿のレベルが高い。
演技も、製糖工場経営者役・原田潤を除き、皆ぜんぜん下手ではないので、
彼らが登場し、正しい発音の日本語で喋ってくれると、ホッとする。
かつて台湾作品に出演していた日本人たちは、日本で売れずに“都落ち”した感が否めないタレントが多く、
台詞が棒読みで、演技なんて見られたものではなかったけれど、
DEAN FUJIOK(藤岡靛/ディーン藤岡)辺りから、
“日本でも充分やっていける人が、敢えて中華圏に打って出た”という感じに変わりつつあるように見受ける。

★ テーマ曲

テーマ曲もやはり台湾語の曲で、オープニングは葉懷佩(アンドリュウ・イエ)が歌う<越唱越大聲>
エンディングは袁詠琳(シンディ・ユェン)が歌うズバリ<春梅>。作曲はどちらも葉懷佩。
この葉懷佩という人はアメリカ育ちのいわゆる“ABC”で、
大学卒業後は3年間JPモルガンで証券アナリストをしていたのだけれど、高給取りの安定した生活を捨て、
一念発起しバークリー音楽大学で一から音楽を学んだという異色の経歴の持ち主。
これまでは、C-Popの有名シンガーに曲を提供する裏方さんだったが、
<越唱越大聲>では自分自身が歌い表舞台に。周杰倫(ジェイ・チョウ)が歌う歌にちょっと曲調が通じるかも。
そう、歌詞は、その周杰倫の名パートナー、方文山(ヴィンセント・ファン)による。
ABCの葉懷佩は、この歌で不慣れな台語に挑戦している。
…と、色々書いたけれど、ここにはエンディング曲<春梅>の方を。こちらも歌詞は方文山。
台語の歌詞と相俟り、本当にアメリカ育ちが作曲したの?!って感じの郷愁を誘うメロディで、
サビの部分がやたら耳に残る。






終盤は『海角七号』のような流れに。
あの時代、友人でも恋人でも、終戦で台湾と日本に離れ離れになった人たちは、本当に沢山居たのだと思う。
それから十年以上の月日が流れ、日本人の台湾渡航が解禁となり、奇跡の再会でハッピーエンディング♪
現実には、こんな上手い話はそうそう起きなかったのではないかと思うけれど…。

ドラマはハッピーエンディングだったが、実際の台湾では、日本の撤退後、
今度は映画『悲情城市』に繋がる時代に突入していくと考えると、
常に何者かに支配されている台湾の歴史に、タメ息が漏れてしまう。


ただのメロドラマと言ってしまえばそれまでだが、日本統治時代を背景にしていることで、非常に興味深く鑑賞。
面白い。最近最もハマった台湾ドラマであった。
近年ずっと「台湾ドラマがつまらない」と言っている私だけれど、
それは“日本に入ってくる台湾ドラマ”が低品質の偶像劇に偏っているため、つまらないのであって、
台湾国内ではちゃんと面白いドラマも作られていると、改めて感じた。
アイドルのファンを当て込んだ偶像劇はもう限界なのでは?
台湾のドラマを観慣れていなければ、安っぽい偶像劇も、その安っぽさが逆に新鮮に感じられるだろうけれど、
慣れてしまうと、やはりどうしても物足りなくなり、
もっと内容の濃い物や、知的好奇心を刺激してくれる物でないと、満足できなくなる。

その点、この『春梅』は、例えメロドラマでも、台湾の日本統治時代が背景ということで、
日本人の知的好奇心を充分刺激。日本でもヒットする可能性があるドラマだと感じるけれど、
日本人の過去の行いをちょっとでも傷付けると“反日”だの“自虐史”だのと大騒ぎになる昨今の日本では、
その“台湾の日本統治時代が背景”という点がアダになってしまう。
日本の皇族が登場するし、黒龍会や特高の描き方も問題視されそうな気がするし、
右寄りの日本人が言いがかりをつけようと思えばいくらでもつけられるドラマで、十年前なら大丈夫でも、
残念ながら、現状況下の日本では放送はまず無いと思われる。
このドラマには、確かにしょーもない日本人も登場するけれど、しょーもない台湾人も登場するし、
決して日本を責めたり、反省を促している作品ではないのだけれどねぇ…。
結局のところ、昨今の台湾に多い“台湾人自身が過去を振り返り、
自分たちのアイデンティティを模索する”といった類の作品という印象。

とにかく、台湾の文化や歴史に興味がある人、日台関係に興味のある人なら、
何らかの手段で観ておいても損は無いのでは。
また、いつまでも「台湾人は日本が大好き」、「台湾人は日本統治時代を懐かしんでいる」、
「台湾の発展に貢献した日本に感謝している」などと(悪気が無くても)上から目線で言い続けている人、
『KANO』の世界が全てだと信じ込んでいる人には、観せたいドラマ。(今後台湾と対等に付き合うなら、
“過去に色々有った上で、それでも台湾が日本に好意的に接してくれている”と知っておくべき。)


ある程度中国語が分っても、台湾語ドラマということで躊躇する人も居るだろうか。
私にとっても、この『春梅』は初の全編台湾語ドラマだったので、どれ程度理解できるか当初分らなかったが
日本語も混じるし、実のところ、意外にも簡単であった。むしろ普通の偶像劇より分かり易いくらい。
54話も観ていれば、台湾語の単語でも、頻繁に出てくるものは、自然に理解できるようになっているし。
あと、“父さん”、“母さん”は勿論のこと、“看護婦”とか“腸チフス”とか、
台湾語の中に普通に入っている日本語を知るのも興味深い。


ドラマ『春梅 HARU』が視聴できるTTTV台視youtube公式チャンネルは、こちらにリンク。

東京に居ながら“DCFE音樂很窮 KEF×方大同演唱會”♪

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今年デビュー10年になる方大同(カリル・フォン)が、2015年8月4日、5日の二日間、
香港會議展覽中心展覽廳 (香港コンベンション&エキシビション・センター)で
“DCFE音樂很窮 KEF×方大同演唱會”と題したコンサートを開催。


ミュージシャンでありながら“音樂很窮(音楽は乏しい)”という何とも不可解なお題。
経済面のみならず、歌手の選択、音楽のジャンル等々、音楽を取り巻く環境が窮屈になり、
音楽そのものを楽しめる人がどんどん減ってきていると方大同。
そこで、音楽救済の様々な試みを行うのが、この度のコンサート“音樂很窮”。

そのひとつが、新たな才能の発掘、“音樂窮人(音楽ビンボー人)”の救済。
ネット上の投票数で決まるDCFE主催の新人発掘コンテストで優勝した“音樂窮人”は
賞金のみならず、今回の香港公演で方大同と同じステージで共演する権利も獲得。

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台湾地区勝者の音樂窮人・孟克柔(Edison M)と香港地区勝者の音樂窮人・關浩(ウォルター・クワン)。
おめでとうございます。



そして、我々遠方のファンにも嬉しい試みがこちら。
8月5日のコンサートを、な、な、なんとネットでライヴ中継!!
…しかもタダ!奥様、“タダ”お好きですよねぇ(笑)?!ありがたい。太っ腹!

視聴は簡単。
このサービスを提供するDCFEのサイトに登録するだけ。
私は新たな登録をせず、微博のIDでログイン(facebookからも可能)。あとは、“演唱會”のページへ飛び…

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無料の通常画質で良ければ、そこを選択すると、中継画面に。
(高画質で観たい場合の価格は、そこをポチっていないので確認していない。)



開演は、現地時間夜8時15分。日本時間の夜9時15分。
こういう場合、日本人の私はパソコンの前に9時からスタンバッてしまうわけだが
開演時間の15分になっても、画面になんの変化も無し。
固まりっ放しの画面に不安がよぎる9時30分…。

もしかして日本は視聴不可能な地域でブロックされているのではないだろうか…、
と疑念がマックスに達した9時35分頃…

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画面が、会場内の映像に切り替わった。ホッ…!これでどうやら観られるようだ。


それからさらに5分ほど経ち、9時40分をまわった頃、会場が暗くなり、
私のパソコンの中についに方大同降臨…!!!ぎゃーーーっ、コーフン…!
先ごろ発表されたばかりの新曲<聽>でコンサートは幕開け。

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中央に大きなジュークボックスを映し出した50~60年代風のセットで(←映し出される映像は変わっていく)
<聽>の後、<La bamba>、エディ・コクランの<Summer Time Blues>と有名曲のカヴァーが続いたので
やはりネット中継で世界中どこからでも観られることを意識しているのかしらぁ~とも思ったが、
曲間の喋りは地元を意識した広東語であったため、「多謝!」くらいしか分らず…。
(中盤以降、やはり北京語でも喋っていた。
もっとも、喋るシーンはそう多くなく、より“音楽を聴かせる”コンサート。)




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あちらでは、セットリストを公表する習慣はあまり無いのだろうか。
間違いがあるといけないので、ここに曲目は記さないが、
本人がステージ上に不在の間のバンドメンバーの演奏などを含め、多分27曲くらいやっている。
10周年であることや、ネット配信を意識してか、
過去から現在までの人気曲を網羅した“Best of 方大同”って感じで、楽しい。
カヴァーは、前出の2曲以外に後半<Nothing Gonna Change My Love For You>。
久し振りに聴いたら、やけに良かった。

お着替えは2回。つまり、衣装計3着で基本は黒。
金モールをあしらったミリタリー調の2着目の衣装は、昨年の北京公演でやはり2着目に着ていた物に酷似。
念の為、昨年の画像と見比べてみたら、ビミョーに違っていた。


ゲストは、前夜と同じで、マレーシアの歌姫、シーラ・アムザ(Shila Amzah/茜拉)。
大同クンとのデュエットで披露したのは、<自以為>。
アルバムでは徐佳瑩(ララ・スー)が歌っているパートを、シーラが担当。(↓音が小さい。)


徐佳瑩とはまた異なるパワフルなヴォーカル。

台湾と香港の音樂窮人くんたちも勿論登場し、それぞれ<BB88>と<Love Song>を披露。


ラストは<危險世界>を歌って、踊りがあって、終了。
アンコール無し。えっ、本当にこのまま終わり?!って感じのあっけない幕引きであった。
(ネットでは中継されなかったけれど、どうやらその後、一人で出てきて、
<I Just Call To Say I Love You>と<Wonderful Tonight>をアカペラで歌った模様。)
終わったのは、日本時間で11時40分。きっかり2時間のショウであった。




中盤以降、画面が固まることが数度起きたが、画質はクリアで概ね良好。
東京のおうちに居ながら、海の向こうの香港で“今”やっているコンサートを観られてしまうなんて、
すごい時代ですねー。まぁ技術的にはもっと前から可能だったのだろうけれど、
未だ観衆に写真撮影すら禁じている日本では考えられない大盤振る舞い。
もちろん、アーティスト本人と違い、周囲は「採算度外視!」とはいかないだろうから、
ネットで世界に同時配信することで得られる何か利を見越した革新的な試みなのでしょう。
エンターテインメントの世界でも、頭ガチガチの日本より、もはや中華圏の方が数歩先に行っている気がした。
こういう例が成功し、今後海外のコンサートがどんどんライブ配信されるようになれば嬉しい。

本日大同クンは、ファンをはじめ、このショウを成功に導いてくれた全ての人々に感謝のメッセージを発信。
また、喉を充分休ませられなかったため、2日目を理想の状態で迎えられず、自分にとっての挑戦になったが、
自分と超級樂隊(スーパーバンド)を信じのりきったと、若干の後悔も見え隠れする感想を述べている。

いやぁー、私は充分満足いたしました。香港だと時差が1時間しかないのも助かる。
そしてこれを観たら、益々また本物のナマを体験したくなった。
東京に来てくださらないかしらー。方大同様、お越しを心よりお待ちしております。



そして、昨晩この“DCFE音樂很窮 KEF×方大同演唱會”ライヴ中継を観逃した方々に朗報でございます。

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今晩、8月6日(木曜)、現地時間夜8時から11時59分まで、つまり日本時間の夜9時から再配信あり!
もはや“ライヴ”ではないし、配信4時間限定は短いが(せめて24時間…)、贅沢は言えません。
我々日本に潜伏する数少ないファンが、方大同のコンサートを無料で丸々一回分楽しめる貴重なチャンス。
DCFEにアクセス!



参考までに、昨夏私が行ってきた方大同“Soulboy Lights Up 世界巡回演唱會”北京公演については…

映画『野火』

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【2014年/日本/87min.】
日本の敗戦が色濃くなってきた太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。
肺を患った一等兵・田村は、治療費代わりの芋を数本持たされ部隊を追われ、野戦病院へ送られる。
ところが野戦病院は重症の兵士で手一杯。田村は芋を取り上げられた挙句、そこも追い出されてしまう。
仕方なく部隊に戻るも、留まることを拒否され、居場所をなくし、
空腹をかかえながら島内を彷徨っていると、他の部隊の兵士たちと出くわし…。



1959年、市川崑監督により映画化された大岡昇平の同名小説を、塚本晋也監督が再び映画化。

塚本晋也監督は「(市川崑監督作品の)リメイクではなく、あくまでも原作から感じたものを映画にした」
と語っている。小説<野火>塚本晋也新解釈ヴァージョンってこと。
例えはえらく軽くなってしまうけれど、市川崑監督版と塚本晋也監督版は、感覚的には、
同じ脚本を韓国と中国でそれぞれ映画にした『怪しい彼女』と『20歳よ、もう一度』みたいなもの。
あれらも、原典こそ同じでも、雰囲気の異なる2本の映画になっていた。

『野火』の場合、私は原作小説未読で、市川崑版映画も未見。なんか怖そうで、観ようと思えなかった…。
基本的に戦争モノは苦手だし、塚本晋也監督作品との相性も悪いが、
本作品に限って観たいと欲したのは、不穏な空気を感じる今の時代に、自分がこの年齢になったという
タイミングの問題なのかも知れない。もし私が今18歳なら、観ようと思ったかどうか…。

この塚本晋也監督最新作『野火』は、昨年第15回東京フィルメックでオープニング作品として上映。
その時は、みすみす一般劇場公開が決まっていたので、私はパス。
この夏公開され、いよいよ私も鑑賞。



舞台は、太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。
物語は、肺を患い、所属部隊からも野戦病院からも追われてしまった一等兵・田村が、
飢餓、孤独、恐怖と闘いながら、帰国の経由地・パロンポンを目指し、
島内を彷徨う過酷な日々を描く戦争ドラマ

主人公・田村一等兵は本来物書き。
最後まで観ると、この田村がなんとか帰国に成功し、
戦後の日本で生きていることが分る(しかし、命こそ有っても、精神は蝕まれている様子)。
そんな田村が、戦中の悪夢の体験を綴った回想録という形で描かれているのがこの映画。




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出演は、肺を患い居場所を失った一等兵・田村に塚本晋也
手持ちのタバコで商売をする要領のいい年配の男・安田にリリー・フランキー、
安田の世話をしながら行動を共にする若者・永松に森優作
田村が途中合流する隊の伍長に中村達也などなど…。(みんな顔がススけていて識別困難。


塚本晋也監督は、本作品では自作自演で、主演男優も兼任している。
これまでにも自身の監督作品と限らず、人の監督作品にも、俳優として出演している塚本晋也なので、
特に長年構想してきた本作品では、何がなんでも自分が主人公・田村を演じるっ!
という強い思い入れが有ったのかと思いきや、「唯一残念なのは、自分が主演ということ。
相当なガッカリ感でスタートしました」と意外な発言。
より多くの人々に観てもらいたい作品だからこそ、本当は有名俳優を起用したかったようだ。
しかし、現実には、この映画の企画をもちだしても、“戦争を懐疑的に描く”という事がだんだん難しくなっており、
なかなか賛同が得られず、出資者もなく、結局自主制作映画として、
何もかも自分でやらなければならなくなったという致し方ない事情があったらしい。

扮したこの田村一等兵という主人公は、原作者・大岡昇平自身がモデルなのだろうか。
市川崑監督版では、船越英二が演じている。
本業は作家で、他の兵士からカラカい半分に“インテリ”と呼ばれる男。
そういう雰囲気は、もしかして船越英二の方が合っているかも知れない。
しかし、若干作家風情に欠ける塚本晋也も、
場違いな戦場に駆り出されてしまった文系のオドオドとした雰囲気が出ていて、これはこれで充分あり。
体型も、飢餓状態の兵士を演じるために、普段は60キロある体重を53キロに落として撮影に臨んだのだと。


出演者中、最もメジャーなのは、リリー・フランキー。
扮する安田は狡猾な男。若くもなければ、強靭な肉体も無いが、
ズル賢さで戦場を生き抜いている胡散臭さが滲み出ている。
基本的には良かったけれど、「ぜんぜん大丈夫」という台詞はどうなの…??!
今でこそ頻繁に使われている表現だけれど、
あの時代は、どんなに無学な男でも、そんな言い方はしなかったのでは。


森田健作でも松田優作でもなく、森優作という新人俳優が扮する永松も印象に残る。
淋しがり屋で気の弱そうな青年が、最後にあの豹変…。





好きか嫌いかと聞かれれば、まったく好きとは答えられない作品。
気持ち悪いし、怖いし、もう一度観たいなんて思わない。
DVD化されても、これを自分の部屋で一人で観たら、あの戦場の空気や死んだ兵士の魂、
フィリピンンの太陽で蒸し焼きにされた遺体の腐臭が、私の部屋に残ってしまいそうで、気味が悪いから、
他の大勢の観衆と一緒に映画館で観ておいて良かった。
…そう思ってしまうほど、“戦争の現実と恐ろしさを伝える”という点では優れた作品。

世の中のほとんど全ての戦争映画には、多かれ少なかれロマンが感じられるものである。
『永遠の0』なんて、その最たるもの。
人の好みはそれぞれだし、多くの日本人を感動させたという事実を否定するつもりはないけれど、
私には薄っぺらな戦争エンタメにしか感じられなかった『永遠の0』…。
題材にしているのは戦争でも、“日本人の泣きのツボを押さえたエンタメ映画”という本質は、
『タイタニック』や『ゴースト』、『ALWAYS 三丁目の夕日』などと変わらない。

『野火』はその対極。ロマンなんて一切排除。
『永遠の0』に描かれる“臆病者とそしられても命を大切にした祖父”のような一種のヒロイズムも当然無く、
逆に、鬼畜と化す普通の男たちが描かれる。
私が戦争で怖いと思う点は、まさにそこで、敵兵に銃で撃たれたり、爆弾落とされたり、強姦されること以上に、
切羽詰った状況で平常心を失い、人に危害を加える鬼畜と化す可能性が誰にも充分にあるという事の方が、
想像すると余程恐ろしい。
よく、戦争体験者がどんどん減り、戦争の記憶が風化してしまうことを危惧する声を耳にするが、
実際には、家族や国のために勇敢に戦った体験や被害体験はそこそこに語り継がれているように見受ける。
仕方が無い状況だったとはいえ、人を殺したとか人肉を食べたなどという経験は、なかなか言えないものだ。
でも、人には言えずに封印されている、お世辞にも美談とはいえない体験こそ語り継がなければ、
戦争の真の恐ろしさは伝わらず、被害者意識から他者ばかりを責め、
性懲りも無く愚かしい戦争を繰り返してしまうように感じる。

この『野火』は、はっきり言って、繊細な人ならトラウマになるほどグロテスク。
見ていて、固まってしまったり、後退りしてしまうことはあっても、感動の涙なんて一滴も出てこない。
でも、そこに戦争の現実を感じる。
生ぬるい戦争エンタメが、「号泣して心のデトックスをしたい女子におススメ♪」とか
「タオルのご用意を」などと感動作に祭り上げられるのは、本当に悲惨な現実に欠けているから。
リアルな惨状を見せ付けられたら、ドン引きしても、涙なんか出てきませんからー。
“戦争を懐疑的に描くという事がだんだん難しくなっている”という塚本晋也監督だからこそ、
私と同じように、昨今の日本の風潮を危惧し、敢えてヒーローのいる美しい戦争感動作ではなく、
“封印したい過去”の方を何がなんでも描かなければならないという使命感で、この映画を撮ったのでは。


そう、そう、この上映には英語字幕がついていた。
そこにも、「より多くの人々に観てもらいたい」という塚本晋也監督の強い思いが感じられる。
この英語字幕は、日本語を解する日本人の私にも、時に有益であった。
日本語でも聞き取りにくい台詞が有るし、ちょっとだけ有るタガログ語(?)の台詞には、
日本語字幕が付かないので、英語字幕で意味を知ることになる。
単純に、極限の戦時下で交わされる日常離れした日本語が、どのような英語に訳されるのか
チェックするだけでも結構面白かった。
合掌」を「Namaste(ナマステ)」と訳すのは、なんかビミョーに感じたが、どうなのでしょう…?

美味!フルーツ丸ごと和洋菓子2種(+台湾関連ドラマ雑記)

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先週のある日、地味ぃーに続けているこの拙ブログへのアクセス数がいきなり急増。
翌日、検索キーワードを見たら、上位10位のほとんどが“台湾 パンダマン”、“ドラマ パンダマン”、
“台湾ドラマ パンダマン”、“パンダマン ユーハオ”、“台湾 パンダマン キャスト”等々、
台湾ドラマ『パンダマン 近未来熊猫ライダー~熊貓人』に関する物ばかり。



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なぜに今更『パンダマン』?!と不思議に思ったら、
8月3日(月曜)放送の日テレ『世界まる見え!テレビ特捜部』が“世界のヒーロー大集合SP”という特集で
『パンダマン』を台湾 女性に大人気のテレビドラマとして紹介した事や、
番組中、出演者の名前が誤って伝えられ、ファンのお怒りに触れている事などが判明。

で、私も、遅ればせながら昨日、試しにその日の『世界まる見え!』の動画を観てみた。
『パンダマン』は、番組始まって早々に、たったの1~2分ではあるが、台湾の人気ドラマとして紹介。
台湾で有名なイケメン俳優ばかりが次から次へと登場するため、
台湾女性たちを夢中にして大ヒットしていると説明される。



日本のファンの逆鱗に触れた出演俳優の誤報道も、確かにあった。
…しかも、名前を挙げて紹介する4人の内2人もが別人という、ある意味驚異の高確率。

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まずひとり目、“ウィルバー・パン”と紹介されているこの人は、潘瑋柏(ウィルバー・パン)ではない。
このドラマを監督した周杰倫(ジェイ・チョウ)プロデュースのユニット・浪花兄弟のメンバー、
“Darren”こと邱凱偉(チウ・カイウェイ)。
俳優としても活動しており、私が観た最近の出演作だと『春梅 HARU』で重要な役を演じている。



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続いて、日本の女性ファンの神経をさらに逆撫でしたふたり目。
“ジェリー・イェン”と紹介されているこの人も、言承旭(ジェリー・イェン)とは別人。
私がこの『パンダマン』を観たのは随分前なので、私の記憶もおぼろげだと断っておきますが、
こちらは恐らく、『片腕必殺剣』(1967年)などでお馴染みの武俠の巨星、
あの王羽(ジミー・ウォング)先生の甥っ子・張大成(チャン・ダーチェン)だと思われる。
張大成は両親が離婚しいているため、伯父・王羽との交流もほとんど無かったようだが、
退役後働いていた高級レストランで知り合った劉畊宏(ウィル・リウ)のマネージャーをするようになった関係で
劉畊宏の親友・周杰倫が初監督するこのドラマへも刑事役で出演。


ちなみに、「中にはビミョーなイケメンもいるが…」と説明されるシーンに映し出されているのは…

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その劉畊宏(ウィル・リウ)と、周杰倫との名コンビで知られる作詞家・方文山(ヴィンセント・ファン)であった。


この『パンダマン』には、周杰倫の人脈が生かされており、他にも香港の余文樂(ショーン・ユー)や
曾志偉(エリック・ツァン)といった超有名どころが多数カメオ出演しているのが一つの売りで
前出の潘瑋柏や言承旭も確かに友情出演はしている(…が、紹介された人物とは別人)。
潘瑋柏や言承旭は、ここ日本でも台湾エンタメ好きの間ではよく知られる有名人なので
テレビで誤って紹介されれば、気付く人も多いし、不快に感じるファンがいるのも理解できますわ。


…と言うか、それ以前に、5年も前のドラマをなぜ今さら引っ張り出してきたのか…?!
しかも、このドラマは、若くしてミュージシャンとして大成功を収め、
初めて手掛けた映画『言えない秘密』(2007年)をもマサカの大ヒットに導いた
「あの周杰倫が今度はドラマを初監督!」と鳴り物入りで放送されたにも拘わらず、大コケしたドラマ。

大ヒットした物を大コケとディスるのではなく、大コケした物を大ヒットと持ち上げて紹介しているのだから、
かなりのポジティヴ報道ではあるが、誤報道には違いない。
『世界まる見え!』の担当者は、よほどネタに尽き、ネット上で適当に拾った話題を、何の検証もせずに、
面白おかしく番組に使ってしまったのでは…?台湾のB級ドラマを取り上げて、間違いが有ったところで、
日本では誰も気付くわけがない、…などと軽く考えていたのなら甘過ぎる。
今どき、気付く人はごまんと居るのです。

昨今しばしば話題になる“番組制作会社による事件の証言でっち上げ”といった類のヤラセに比べたら
“『パンダマン』台湾で大ヒット!”も出演者の名前の間違いも、それ自体は大した事ではないけれど、
“日本の大手テレビ局は、今どき小学生でもネット上で拾える程度のネタを、何の検証もせずに、
ゴールデンタイムに堂々と情報として番組内でタレ流しにしている”、
“日本の大手民放のレベルは想像していた以上に極めて低い”という非常に悪い印象を受けた。
当然これが唯一の誤報道だとは思えない。こういう素人以下の情報収集能力で雑に集めたネタを
もっともらしく番組にしてしまうのが日常茶飯事だと視聴者に疑念を抱かせたら、
テレビの信頼は益々失墜し、テレビ離れも加速します。テレビ好きな私には残念。
『世界まる見え!』関係者は猛省し、せめて素人に馬鹿にされないレベルにもっていくよう改善に取り組むべし。




ドラマと言えば、(こちらは本当に)大ヒット台湾ドラマ『イタズラな恋愛白書~我可能不會愛你』などの
脚本家として知られる徐譽庭(シュー・ユーティン)の小説<馬子們!寫給曾經被我愛過傷害過的你們>を
日本で漫画化し、別冊少年マガジンに連載中の<それでも僕は君が好き>が、今度はドラマ化されるそう。

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主人公の芹澤祐輔を小出恵介が演じ、この秋、フジテレビの深夜枠で4夜連続放送の予定。
ドラマのタイトルは、漫画と同じ『それでも僕は君が好き』
主題歌はK-PopアイドルユニットCROSS GENE(←一応申し訳程度に日本人と中国人のメンバーも
各一人ずつ居て、“アジアグローバルユニット”を謳っている)が担当。

どちらかと言うと、小出恵介は苦手なタイプなのだけれど、これは4話だけだから、録画決定かしら~。
小出恵介は、中華圏進出に積極的なアミューズ所属なので、これを足掛かりに、
台湾、そしてその先の大陸へと活動の場を広げることを考えているのかもね。

この『それでも僕は君が好き』は、『電車男』のエルメスのように清らかな女性だった初恋の先生、
『花より男子』の牧野つくしのように一生懸命な女の子だった初めてのガールフレンド、
『私の名前はキム・サムスン』のサムスンのような大人の女性だった初体験のお相手、
人生で一番最初に好きになり、一番最初に傷付けてしまった母、…という4人の“彼女たち”との物語を
どこにでもいる駄目男子・芹澤祐輔の視線で描くドラマなのだと。
4話のオムニバス仕立てなのかしら。観易くて、結構面白いかも知れない。
お相手の女性4人はどの女優さんが演じるのでしょう。




お菓子は、暑い夏でも美味しく食べられるフルーツを丸ごと使った和と洋の物を、それぞれひとつずつ。

★ 源吉兆庵:陸乃宝珠

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ひと粒の大きさは、直径約2.5センチ。
マスカットを求肥で包み、砂糖をまぶしたお菓子。




和の代表は、源吉兆庵(公式サイト)のお馴染み“陸乃宝珠”
毎年販売期間は5月上旬から9月中旬くらいだが、
葡萄の収穫量などにより、早めになくなってしまう可能性も。

丸々ひと粒のマスカットを薄い求肥で包み、お砂糖をまぶした、ただそれだけのお菓子。
使用しているの葡萄は、マスカット・オブ・アレキサンドリア。
中でも最高級と称される岡山県産の物を使用。

噛むと、葡萄の薄皮がプチッとはじけ、中から甘く爽やかな果汁がジュワッ…!
葡萄を包んでいる求肥の層は非常に薄く、有っても無くても良いようにさえ思えるが、
この極薄の求肥が有ることで、ちょっとしたもっちり感が楽しめるため、やはり必要な存在。
さらにその上のお砂糖のザラッとした食感もいい感じ。

ジューシー!美味!源吉兆庵の最高傑作。
厳選された美味しいマスカットをメインに、最低限の素材で作られたシンプルを極めたお菓子。
マスカット、求肥、砂糖、どれも不可欠で、計算され尽くしている。
いつも箱買いしているけれど、実はひと粒270円でバラ売りもしているらしい。
食べたことが無い人は、取り敢えず270円でお試しを。

★ ジュン・ホンマ:桃のタルト

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大きさは、直径約7センチ。
中にカスタードクリームを詰めた桃を、タルトの台の上にのせたお菓子。




洋の代表は、ジュン・ホンマ(公式サイト)“桃のタルト”
以前、これに似たので、ロートンヌの“どんぶらココ”というのを食べたことがあるけれど、
ジュン・ホンマのは初めて。

一般的に“桃のタルト”と呼ばれる物は、
大きなタルト生地の中にクリームを流し入れ、上部をスライスした桃で埋め尽くしたタルトを指す。
ところがこれは、クリームを中に詰めた完熟桃を一個丸々ドカーンとタルトの上にのせているから、
桃の“私が主役ヨ!”感がハンパではない。

主役の桃が不味かったらガッカリだが、これはみずみずしくて、甘ーーーいっ…!(←井戸田潤風に)
中のカスタードクリームは、桃の美味しさを殺さないサッパリ味。
下のタルトは、アーモンドクリームたっぷりで、バターの風味も良いが、これも桃の邪魔はしていない。


こちらも美味。
桃、カスタードクリーム、タルトという3ツの要素だけで構成されているけれど、
あくまでも主人公を生かした絶妙のバランス。
簡単そうに見えるが、果肉にべったりくっ付いた種を上手く取り除いたり、
皮をむいた完熟桃の変色を防いだり、実は作るのに結構手間のかかるタルトだという気がする。
桃が美味しい内に、せめてもう一度食べたい。

大陸ドラマ『武則天 秘史~武則天秘史』

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第2代皇帝、太宗・李世民が天下を治める唐代の中国。
戦場で、自らの命を盾に自分を守ってくれた将軍・武士彠の忠義に報いるため、
李世民は、武士彠将軍のまだ14歳の遺児・媚娘を後宮に迎い入れ、才人に封じる。
その頃から長安の都では、奇怪な現象が頻発。
「唐三代の後、女帝武王が天下をとる」という噂が実しやかに流れ、
李世民は“武”の姓をもつ媚娘を遠ざけるようになる。
そんなある日、宮中を散策していた太子の李治が、偶然にも媚娘と出会う。
李治は活発な彼女に惹かれ、媚娘もまた穏やかな李治に気を許し、二人は心を通わせるように。

649年、名君と名高い太宗・李世民崩御。
媚娘は、皇帝に仕えた他の多くの女たちと共に、出家を強いられ、感業寺へ送られる。
酷い扱いを受け、出口の見えない辛い日々を過ごしていたある時、
第3代皇帝・高宗に即位した李治が、先帝の供養のため、感業寺にやって来て、再会。
二人の恋心は再燃、媚娘は李治の子を宿す。
李治はこれを機に、媚娘を入宮させようと試みるが、朝廷で力をもつ古参の重臣たちから強く反対され…。



2015年7月1日、LaLaTVでスタートした大陸ドラマ『武則天 秘史~武則天秘史』
約5週間後の8月上旬、全50話を放送終了。
平日毎日2話ずつの進行はキツイけれど、なんとか私もゴールイン。

★概要

大手ドラマ制作会社・長城影視とテレビ局・湖南衛視による2011年度の大型時代劇。
手掛けたのは、大陸を拠点に活動する香港出身の澄豐(チョン・フォン)監督。


范冰冰(ファン・ビンビン)が武則天を演じた『武媚娘傳奇』が話題になり、いく久しいが、
日本にはその大本命が上陸しないまま、『謀り(たばかり)の後宮~唐宮燕』
2015年に入ってもう3本目の“武則天モノ”。

私は、いつか『武媚娘傳奇』が日本にも入って来ると信じ、
武則天に関しては、外山軍治の<則天武后~女性と権力>で予習済み。

★ 物語

物語は、ズバリ、武則天(則天武后/武媚娘)を描く伝記ドラマ


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武則天(624年-705年)は、言わずと知れた中国史上唯一の女帝。

このドラマでは、武則天の全生涯は描いていない。
物語は、父の功績で、14歳の武媚娘(=武則天)が、
唐朝第2代皇帝、太宗・李世民の後宮に入り、才人に冊封されるところで幕を開ける。
最初の内こそ寵愛を受けるが、
「唐三世後 女主武王 代有天下(唐三代の後、女帝武王が天下をとる)」という予言を信じた李世民から
疎まわれるようになり、命こそ奪われなかったものの、李世民の崩御とともに、寺送り。
ここで尼としてこれから先の長い人生を過ごすのかと思いきや、
李世民存命中から恋仲だった李世民の息子で今生皇帝の高宗・李治と焼け棒杭に火がつき、
不謹慎にも寺でのランデヴーを重ね、(一応)尼でありながら御懐妊。
これを機に、再び宮廷に舞い戻り、邪魔な王皇后を廃し、自ら皇后の座につき、
稀有な才能で夫をサポートしながら、多くの難題を処理し、みるみる朝廷内で勢力を拡大し、
夫の死後も、皇帝に即位させた息子たちに代わり垂簾政治を行うが、
揚州で起きた謀反の乱を収めたのを機に、女だてらに自らが皇帝に即位。
14歳の時「唐三代の後、女帝武王が天下をとる」という予言を聞いたあの少女が、
69歳でその予言を現実のものとし、ドラマは幕を下ろす。

つまり、このドラマで描かれているのは、
637年から690年まで、武則天14歳から67歳までの53年間ということになる。

武則天は、皇帝に即位する前も、
夫や息子たちに代わり、政治を執り行っていた実質上の最高権力者だったわけだが、
国号を“唐”から“周”に改め、自ら皇帝となった690年以降は、名実ともに最高権力者。
そこから始まる武則天人生劇場第2幕は、このドラマでは描かれていないけれど、
即位前の人生だけでも、充分濃密で波瀾万丈。
そもそも、今から1300年以上前の平均寿命なんて、40歳とかせいぜい50歳くらい?
そんな時代の67歳は、恐らく今の90歳から100歳くらいの感覚だったのでは。
その年で第2の人生をスタートさせるなんて、このバァ様のヴァイタリティはやはり半端なものではないと感心。

★ 武則天観

漢の呂雉(紀元前241年-紀元前180年)、清の西太后(1835年-1908年)と共に
“中国三大悪女”に挙げられる武則天を、このドラマではどのように描いているのか。

武則天は、若い頃から勝ち気で、頭が切れるシッカリ者。
女性が抱きがちな嫉妬心から、夫の周囲の女性を蹴落としたりもするが、
年齢と共に、単純な嫉妬心は薄れ、それより夫や国を守り、繁栄させる事に責任を感じ、力を尽くす。
冷酷とも思える判断で行われる大胆な人事や処罰は、人々の誤解を招き、
皇帝の一族・李家から唐朝を奪い取ろうとする鬼ヨメか妖魔のように言われ、反発を買うけれど、
実は鬼ヨメどころか、良妻。不甲斐無い夫に代わり、嫁ぎ先の李家を守ろうと必死。
しかも、相当な才女で、国を運営する手腕は、並みの男では比にならない。
人材登用は、コネを断ち切った能力第一主義で、例え罪人でも使えると思えば重用するという
あの時代にしては革新的な考えの持ち主で、洞察力鋭く、先見の明もある。

つまり、現代に例えるなら、本ドラマの武則天は、有名老舗旅館の3代目に嫁いだ若女将。
敏腕経営者だったお舅さんのお蔭で、旅館は立派になったが、その息子である夫が商売に不向きなため、
意外にも商才に長けていた若女将が、婚家のためにと、夫に代わり旅館を一生懸命切り盛り。
新経営に反発する頭の固い夫の親族や昔からいる番頭さんたちのリストラも辞さず、
夫の家に代々続く商売を盛り立てようと邁進する若女将の細腕繁盛記。…って感じ。

…と言うわけで、悪女ではなく、深く愛した夫のために婚家を守ろうと奮闘した良妻にして、
それを実現する能力を持ち合わせた才女として描かれているという印象。
また、あまりにも仕事熱心だったことが災いし、子供たちと良好な関係が結べず、
苦悩する母としての一面も見え隠れしている。

★ キャスト その①:武則天

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殷桃(イン・タオ):少女から大人の女性に成長する武則天 ~20話まで
劉曉慶(リュウ・シャオチン):中年期の武則天 ~43話まで
斯琴高娃(スーチン・ガオワー):60歳以降の武則天 43話~最終話まで

『武媚娘傳奇』では、美人女優・范冰冰が、
少女から老女までの武則天を一人で演じきっているというのがひとつの見所だろうけれど、
こちら『武則天秘史』では、3人の女優が年齢に合せ、それぞれの武則天を演じている。

ドラマ鑑賞前、この顔ぶれを見た最初の印象は、“殷桃と劉曉慶の年齢が近過ぎる”、
“殷桃だけ顔のタイプが違い、同一人物に見えない”という2点であった。

しかし、ある時ふと劉曉慶の代表作が映画『芙蓉鎮』(1986年)であることを思い出す。
しかも、今年、TBSの『不思議探究バラエティー ザ・世界ワンダーX~ワケあり美女SP』に
“中国最強の美魔女”として劉曉慶が取り上げられた際(←私は番組未見)、
番組に年齢を暴露されたと本人が怒りを顕わにしたというニュースがあったことも思い出した。
…って事は、この人一体いくつなの?と気になり調べたら、すでに還暦過ぎていた!確かに保存状態良好。

3女優の生まれ年は、殷桃1979年、劉曉慶1951年、斯琴高娃1950年で、
私の第一印象とはまったく違い、殷桃と劉曉慶の間には、年齢に大きな隔たりがあり、
逆に、劉曉慶と斯琴高娃はほぼ同じ年だったのだ。



一人ずつ見ていく。まず殷桃。
殷桃をテレビドラマで見るのは、張夫人に扮した『蒼穹の昴~蒼穹之昴』以来。
この『武則天秘史』での殷桃は、外見的に女性が最も変化するお年頃の武媚娘(武則天)を担当。

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14歳で入宮し、唐朝第2代皇帝、太宗・李世民(598年-649年)の才人となるも、太宗の死と同時に寺送り。
しかし、太宗存命中から恋仲だった太宗の息子で、唐朝第3代皇帝に即位した高宗・李治と
お寺で逢瀬を重ね、見事懐妊し、髪が伸びるのを待って、人生で2度目の後宮入り。
李治の寵愛を盾に、宮中で力をのばし、すでに李治の正室だった王皇后を蹴落とし、自分が皇后に!
…と若い内から濃密な人生を送っているため、殷桃が演じる20話の中でも見た目に様々な変化が。
さすがに30代も半ばの殷桃が、前髪をおろした十代の少女を演じているのには、かなりの無理を感じたが
後半は、殷桃特有のちぃママ風のお色気と勝ち気な態度で、優柔不断な夫を巧く操縦する様が合っていた。
(今思うと、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』で主人公の甄嬛が出家して、仮初めにも尼でありながら、
お寺で果郡王と関係し、妊娠するあのくだりは、武則天のエピソードに由来しているのか…?)


殷桃から役を引き継ぐ劉曉慶は、『武則天』(1995年)と『日月凌空』(2007年)に続き
武則天を演じるのがもう3度目。3度もやれば、もう立派な“武則天女優”。
本ドラマでは、20話から43話までと、最も長いパートを担当。
この頃の武媚娘は、夫・李治に代わり、政治の表舞台で手腕をふるう、油のりまくりの働き盛り。
プライベートでは、夫に手を出した実の姉や姪を死に追い遣ったりもするけれど、国の運営センスは抜群。
豪快でテキパキした物言いは、良い意味で“やり手ばばぁ”といった感じで、同性の目から見て悪くない。



最後の斯琴高娃もまた劉曉慶と同じように、『大唐御史謝瑤環』(1999年)と『無字碑歌』(2006年)に続き、
武則天を演じるのがもう3度目のベテラン“武則天女優”。
本ドラマでは、武則天が60歳になる43話から最終話の第50話までを担当。
この頃の武則天は、すでに夫を亡くしている未亡人。夫に代わり息子を即位させ、自分は皇太后になるが
息子たちの出来があまりにも悪いため、一線から退くわけにはいかず、
実は裏で全てを牛耳る実質上の最高権力者。
ひと筋に愛した夫を亡くした寂しさがあるのか、この頃からちょっとした色ボケが始まるのも見どころ。
担当パートは、3人の内一番短いが、大トリを飾るに相応しいさすがの貫録であった。

★ キャスト その②:唐高宗・李治

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余少群(ユィ・シャオチュン):青年期の李治
趙文瑄(ウィンストン・チャオ):中年期の李治

父帝・太宗の才人だった武媚娘に惹かれ、太宗の死後、自分が唐朝第3代皇帝に即位すると、
彼女を自分の妃にしてしまった高宗・李治(628年-683年)。
才気あふれる武則天の尻に敷かれ続けた無能な皇帝として語られることの多い李治は、
青年期とそれ以降の中年期を両岸それぞれ二人の男優が演じる。

まず登場するのは、伝統芸能、漢劇や越劇の元役者で、陳凱歌(チェン・カイコー)監督に見い出され、
『花の生涯~梅蘭芳』(2008年)でスクリーンデビューを飾った余少群。
本ドラマでは、かつて『蒼穹の昴』で共演した殷桃と夫婦役。
一般的にいう“イケメン”とは程遠いため、見ていてもトキメキに欠けるし、
主人公の相手役に不足と感じる女性視聴者も多いだろうが、私は余少群のあの“伝統芸能顔”が
皇族役、しかも良くも悪くも野心に欠けたおっとりタイプの皇族役には、向いていると感じた。
但し、やはりラヴシーンだけは、いただけない。余少群があの“伝統芸能顔”で女性にネットリ絡みつくと、
「見たくないものを見てしまった…」という何とも言えない後味の悪さが残った…。


続いて登場するのは、台湾の趙文瑄。趙文瑄は、『ウェディング・バンケット』(1993年)に代表されるゲイ、
もしくは『宋家の三姉妹』(1997年)に代表される孫文のイメージが非常に強いため、
ゲイでも孫文でもない唐高宗・李治役を、当初やや意外に感じた。
しかも、先に李治を演じる余少群に比べ、ずっとイケメン度が高く、
洗練されたエリートビジネスマンのような容貌であるため、器量不足の皇帝役はどうかと疑ったが、
なんの、なんの、上手に演じておられる。
政治手腕はイマイチでも、風流で飄々とした“老舗の若旦那”風情は、
まさに、偉大なる父帝から国を継いでしまったトホホなボンボン皇帝の雰囲気。

★ キャスト その③:ジュニア世代

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雷雷(レイレイ):李賢(654年-684年)~李治と武則天の間に生まれた第二子

4人も男児を生み、ラッキーなハズの武則天であるが、どいつもこいつも馬鹿ばっかりでアンラッキー。
この李賢は、同腹の兄・李弘が死んだため、太子に格上げされるが、お調子に乗った行動が目に余る。
母の側近・上官婉兒に手を出すくらいならまだしも、自分の側近()とまでねんごろに(!)。
唐朝の太子に有るまじき性癖はママにバレ、遂には爵位を奪われ、地方に飛ばされてしまう。
飛ばされた巴州でも、いつ殺されるか分からないとビクビクし、
いっそ精神を病んだことにしてしまおうと、無い知恵を絞って思い立った策は…

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女装(…!!)。
尾上菊之助を彷彿させ、満更でもないが、いや、それより、果たして“病んだフリ”なのだろうか。
かつて男ともねんごろになっていた李賢なので、女装も案外本気だったのではないかと疑う私。
(李賢が女装に走る第46話では、ママの武則天も若い男に目覚めるし、
母子それぞれの妙な性的嗜好が花開く笑える回であった。)



王昊(ワン・ハオ):李顯(656年-710年)~李治と武則天の間に生まれた第三子

兄・李賢が巴州に流されたため、第三子でありながら、太子に繰り上げ当選した李顯。
後に唐朝第4代(そして一度廃され)第6代皇帝となる中宗・李顯である。
皇帝即位後は、母よりキョーレツな女房の尻に敷かれ、隅に追いやられる李顯だから、
やはり中国では、弱々しいというイメージがあるのだろうか。
『謀り(たばかり)の後宮』で李顯に扮した謝祖武(ウィリアム・シエ)は神経質そうで細かったし、
本ドラマの王昊もまた細身。さらに顔が、角度によってラッキー池田を彷彿させるため、
益々いじられキャラに見えてくる。王昊版李顯は、“古裝界のラッキー池田”でございます。



丁嘉藍(ディン・ジャーラン):韋蓮兒(667年-710年)~太子・李顯に見初められ太子妃に

後に李顯を尻に敷き、朝廷を掌握し、武則天以上の悪女として語り継がれることになる、あの韋皇后である。
この頃はまだうら若き乙女。李顯は将来この女に毒殺されるとも知らずに、
湖のほとりで見掛けたこの美しい女性・蓮兒が放つ香りに誘われ、フォーリンラヴ。
蓮兒曰く、8歳まで嫁の貰い手が無いと言われるほどのおブスだったのに、ある時出会った道士に
「将来立派な殿方に嫁ぐ」と予言され、、処方された“女兒丸”なる薬を半年服用したところ、美女になり、
しかも不思議なことに身体から良い香りまで漂うようになったのだと。私にも“女兒丸”プリーズ。



鄭爽(ジェン・シュアン):太平公主(665年-713年)~李治と武則天の間に生まれた娘

出世作となった大陸版『流星花園』、『一起來看流星雨~Let's Watch The Meteor Shower』で共演した
張翰(チャン・ハン)との交際を公けにしたり(←すでに別れている)、
お顔の微調整も認めている、今どきのあっけらかんとした女優・鄭爽。
いつ、どこをどうお直ししたのでしょう。なかなか上手い仕上がり。手掛けたドクター、ゴッドハンド。
…なんて感心しながら、物語そっちのけで鄭爽の顔ばかり見てしまった。
ちなみに、鄭爽のEX・張翰は、つい先日、維吾爾(ウイグル)族の女優・古力娜扎(グリナザ)との
新たな恋を微博上で公表。張翰のお相手、お直し美女からエキゾティック美女へ。

★ キャスト その④:その他の女性たち

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蔣林靜(ジアン・リンジン):王皇后(628年-655年)~高宗・李治の皇后 武則天の出現で廃される

寵妃・蕭淑妃を李治から離すための策として、武則天を後宮に入れ、蕭淑妃を蹴落とすことには成功するが
今度は武則天に李治を奪われた上、皇后を廃され、殺されてしまうあの王皇后。
一般的に、“武則天は我が子を自らの手で殺め、王皇后に濡れ衣を着せた”と語り継がれているくだりは、
“冬場、武則天は、炭炉を炊く部屋の窓を開け、眠っている公主を残し、外出。
→そこにやって来た王皇后は、冷たい外気にさらされている公主を気遣い、窓を閉め、立ち去る。
→武則天が戻って来ると、公主が練炭中毒でぐったりしていて大ショック!
→助けようと思えば助けられたかも知れないが、これを利用しようと思い立ち、
衰弱している公主に追い打ちをかけるように窒息させ殺害→王皇后のせいにする”という風に描かれている。
また、殺された王皇后は四肢を切られ酒壷に入れられたと言い伝えられているが、本ドラマでは普通に処刑。



秦海璐(チン・ハイルー):武順/韓國夫人(?-?)~武則天の実の姉

秦海璐は、中央戲劇學院で、章子怡(チャン・ツィイー)と同級生。
かなりの本数のテレビドラマに出演しているが、日本にはほとんど入ってきていないのでは?
そのせいもあり、ここ日本では“映画女優”のイメージが強いから、
このドラマに登場する彼女を見て、なんか得した気分。
扮する武順は武則天の実の姉。武則天の子供の乳母としてお仕えしている内に、
妹の夫、高宗・李治と深い仲に。自分の子供が、自分より姉に懐くようになってしまうし、
夫まで姉に懐いてしまうし(?)、穏やかではいられない武則天の心中、お察しいたします。



湯怡(キャシー・トン):賀蘭敏月(?-666年)~韓國夫人の娘 武則天の姪っ子

裏切り者の姉を始末しても、まだ姉の娘が残っている。
当初、この賀蘭敏月をどうせ子供だと甘く見ていた武則天。
自分の夫が、見境の無い女ったらしだという事を忘れていたとは不覚です。
なんと高宗・李治は、女房の姉のみならず、姪っ子にまで手を付けてしまう。
賀蘭敏月も、母を殺した叔母・武則天に復讐しようと、ノリノリで李治をタラシ込む。
韓國夫人の方がまだ遠慮があった。賀蘭敏月は可愛い顔して小賢しいっ!キーーッ!



鍾欣潼(ジリアン・チョン):上官婉兒(664年-710年)~祖父・上官儀を殺した武則天の側近に

出演者の中で、日本で最もメジャーなのは、この香港アイドル鍾欣潼ではないだろうか。
演じているのは、祖父を殺した武則天から才能を見い出され、側近に重用される上官婉兒。

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上官婉兒は、『謀りの後宮』では、マレーシアの陳秀麗(チェン・シウリー)が演じている女性。
徐克(ツイ・ハーク)監督作品『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』(2010年)で
李冰冰(リー・ビンビン)が演じている上官靜兒も、この上官婉兒がモデルと思われる。


ちなみに、本ドラマで、上官婉兒の祖父・上官儀に扮しているのは…

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張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品『秋菊の物語』(1992年)や
陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品『北京バイオリン』(2002年)でもお馴染みの劉佩(リウ・ペイチー)
“田舎のおじちゃん”が上手い俳優さんだと思っていたけれど、
本ドラマではワンランクどころか、10ランクも100ランクも上の殿方を演じている。随分化けますね。

★ オープニングとエンディングに物申す!

ドラマのテーマ曲は、オープニングが<捨我其誰>というインストゥルメンタル曲、
エンディングは金琳(ジン・リン)が歌う<傳奇人生>

…なのだけれどさぁー、通常ドラマのオープニングやエンディングに記されているはずの
スタッフやキャスト等の記述がなぜ何も無いの…?!
最近日本では、本作と同じように、映像と音楽を流しているだけというパターンの中華ドラマが急に増えた。
元々無かったわけではなく、日本での放送にあたり、有った物を敢えて消しているのよねぇ…??
消すことに何のメリットが有るのか?!あそこは情報の宝庫。余計な事はしないで欲しい。

この『武則天秘史』でも、最初と最後に、映像にのせた音楽が、延々と流れる。
ようやく終わったとホッとすると、息つく間もなく始まる2番のメロディ。「へっ、まだあったの?」とガクッ…。
こうしてオープニングもエンディングも、それぞれ約3分間、ただのイメージ映像のようなものがひたすら流れる。

ちなみにエンディングの<傳奇人生>をじっと聴いていたら、
“14歳我那年我進了後宮、24歳那年我削髮為尼、30歳那年我失去親生女兒、
32歳那年我成為大唐皇后…(私は14歳のその年後宮に入り、24歳のその年剃髪して尼に、
30歳のその年実の娘を亡くし、32歳で唐朝の皇后にぃ~”といった具合に
武則天の経歴を数え歌のようにメロディにのせ紹介している歌であった。

★ 武則天モノ 3作品比較

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最後に、2015年に入り、日本で立て続けに放送された3本の“武則天モノ”、
それぞれの特徴をみながら、簡単比較。


唐代の宮女が目の上に、昭和の丘サーファーを彷彿させる水色のアイシャドーをこってり塗っているという
前代未聞の悪趣味メイクで、視聴者をドン引きさせるが、
実は要所要所で史実をきちんと踏まえているため、唐朝の歴史を学ぶには悪くないドラマ。
但し、武則天は中盤で死に、その後物語の比重は、
武則天の息子、中宗・李顯の妻、韋皇后に移っていくので、“武則天モノ”と捉えると弱い。



邦題に『則天武后』と掲げているが、武則天は主人公ではなく、
賀蘭心兒という架空の人物が次々と起きる難事件を解決していく推理ドラマといった感じ。
一応時代背景は唐代に設定してはいるけれど、物語に史実はあまり絡んでおらず、ほぼフィクションなので、
歴史を学ぶには不適合。作風が一番軽いのもコレ。


『武則天 秘史~武則天秘史』

武則天が宮中に初めて上がる14歳から、周の女帝に即位する67歳までを事細かに網羅。
武則天以外の登場人物も、多くは実在した人物。
タイトルには“秘史”とあるが、言い伝えられている史実をかなり忠実にドラマにしているため、
えぇー、そんな事があったのぉ~?!という新たな驚きは無い。




オープニング映像が、ひと昔前の典型的な大陸時代劇のイメージで野暮ったく、
まったくワクワクさせれくれないが、せっかくの“武則天モノ”なので視聴を始めたら、案外イケていた。
今年日本で放送された“武則天モノ”3作品に中で、私が最も気に入ったのは、実はコレ。
一番の理由は、やはり史実により則したお話になっているという点。
『則天武后 美しき謀りの妃』のようなエンターテインメント性には欠けるが、
まるで武則天の伝記本を1ページ1ページ読み進めていく感覚で、ドラマが1話1話と進んでいく。
もちろん本作品ならではの解釈もあるだろうが、
本を読むのが面倒な人は、このドラマを観れば、67歳までの武則天をかなり正確に学べる。
また、劉曉慶、斯琴高娃、余少群、趙文瑄、秦海璐、鍾欣潼、劉佩などなど
映画ファンにお馴染みの俳優が多数出演しているのも魅力。

そんなわけで、“武則天モノ”3作品に、私の好みで順位をつけると…



LaLaTV、平日朝8時半のこの枠は、この後、中華ドラマを離れ、
韓国ドラマ『広開土太王』を放送しているので、私はしばらくお休み。
范冰冰主演の『武媚娘傳奇』日本上陸を待ちたいと思います。



参考までに、武則天について書かれた書籍、
外山軍治の<則天武后~女性と権力>については、こちらから。

映画『彼は秘密の女ともだち』

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【2014年/フランス/107min.】
7歳の時の出逢いから、ずっと大親友であり続けたローラが、病に勝てず、この世を去り、
クレールは深い悲しみに暮れ、何も手につかない。
ローラを思い出してしまうのは辛くて仕方が無いけれど、思い切って彼女の家を訪ねると、
ローラの夫・ダヴィッドが、有ろうことかローラの服を着て、幼い娘・リュシーをあやしているではないか…!
仲の良い理想の夫婦だと信じていたのに、親友の夫が女装…?!
予想だにしなかった光景を目撃してしまい戸惑うクレール。
自分以上に、自分の夫・ジルは、こんなダヴィッドを許すわけがない。
クレールは、ダヴィッドを“ヴィルジニア”と女性の名で呼び、
この事を二人だけの秘密にして、密会を繰り返すようになる。
ローラを亡くした絶望で、あんなに塞いでいたクレールも、
ヴィルジニアとのショッピングやお喋りで、徐々に明るさを取り戻していくが…。



おフランスのフランソワ・オゾン監督、『17歳』(2013年)以来の最新作。

原題は、“新しい女友達”を意味する『Une Nouvelle Amie』。
“彼”なのに“女ともだち”という矛盾含みの邦題『彼は秘密の女ともだち』は
内容をよく表したタイトルと言えそう。



主人公は、大親友・ローラを亡くした喪失感から抜け出せないクレールと、
同じように深い悲しみに暮れるローラの夫・ダヴィッド。
クレールは、ある日偶然にも女装しているダヴィッドを目撃してしまい、最初こそ嫌悪感を顕わにするが、
彼を“ヴィルジニア”と女性の名前で呼び、夫・ジルにも内緒で、密会を重ねるように。
クレールとヴィルジニア、秘密を共有する二人は、会う度、徐々に明るさを取り戻していくけれど、
ある事をきっかけに、クレールはついにヴィルジニアは本来男性なのだと思い知る。
物語は、紆余曲折を経た二人が、やがてありのままの自分、ありのままの相手を受け入れ、
自分らしく活き活きと生きるようになるまでを描く人生賛歌のヒューマン・ドラマ

目にした何枚かのスチール写真やタイトルから、
親友・ローラの死後、ローラの夫・ダヴィッドが、実はゲイだとまさかのカムアウト!
…という物語だと予想していたら、少々違った。

ダヴィッドが好きなのはあくまでも女装であり、恋愛対象は常に異性。
自らを“女装家”と称し、同性愛者であることも公表しているミッツ・マングローブとは異なる。
ダヴィッドもいっそミッツみたいだったら分かり易いのに、そうではないから面倒…。

女装癖が有ろうとゲイだろうと、偏見も差別も無いのに、そう思ってしまう私は、
頭の片隅で“女装癖のある男性=ゲイ”という固定観念に囚われているのかもね。


固定観念と言えば、フランス人は自由で個人主義というイメージも、
必要以上に植え付けられているかも知れない。
本作品のクレールは、自分の夫・ジルが、女装をするような男性を毛嫌いしていると知っているからこそ、
ダヴィッドの事をジルには隠そうと決める。
ジルは、(女装よりはマシとはいえ…)ゲイのことも軽蔑している様子。
そもそもジルが「人は人。どう生きようとその人の勝手。どんな趣味趣向があっても別に良いではないか。
その人の人間性には変わりはない」と他人を尊重する人だったら、
クレールは夫に隠し事をする必要など無かったはず。
ジルって、美男子だけれど、案外ちっちゃい男…。
これがおフランスの標準なら、もしかして日本の方がリベラルかも知れない。




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出演は、女装の“ヴィルジニア”になるローラの夫・ダヴィッドにロマン・デュリス
ローラの大親友・クレールにアナイス・ドゥムースティエ
クレールの夫・ジルにラファエル・ペルソナ、そして若くして亡くなったローラにイジルド・ル・べスコ等々。

セドリック・クラピッシュ監督作品で注目された若い頃は、
“どこにでも居るフランスの普通のお兄ちゃん”という雰囲気だったロマン・デュリス。
その後はクセモノが得意な個性派に。
『ルパン』(2004年)や『モリエール 恋こそ喜劇』(2007年)のように、
コスプレとも思える特殊な扮装をしているイメージが強いため、
フツーに女にモテるスーツを着たビジネスマンなどを演じている姿を見ると、逆に違和感が湧いてくる。
なので、今回演じている女装のヴィルジニアは、私にとってはむしろ違和感ナシのロマン・デュリス。

ロマン・デュリスが、ばっちり妖艶なメイクを施したお顔で映画に登場するのは初めてではない。

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(↑)『PARIS』(2008年)ですでに披露済み。
余命いくばくもないダンサー役。ステージ用メイクだからアイライン濃いめ。


今回は、その時より百歩も千歩も踏み込んだ本気の女装!
やはり女装には似合う人とそうでない人がいる。
当たり前だけれど、女装して自然に見えるのは、女性っぽい柔らかな顔立ちの華奢な男性。
顎がゴツゴツと大きなロマン・デュリスの顔は、女装に適しているとは言い難く…

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ホンモノの女性と見紛うタイランドの綺麗系ニューハーフなどと比べてしまうと、クオリティは限りなく低し。
女装した名倉潤or田中要二にしか見えない。
お世辞にも美女とは呼べないが、だからこそリアル。
厚塗りファンデーションの下のオヤジ顔から痛ましいまでの哀愁が漂い、見ていて切なくなる。

ちなみに、マスカラを上手く塗るコツは、右目は右手で、左目は左手で、らしい。
私も早速試してみたが、右利きの私には、左手で塗るのはやや困難であった。


クレール役のアナイス・ドゥムースティエは、貧乳ばかりに目が釘付け。
私のフランス映画鑑賞史上、最も胸の小さな女優かも知れない。
扮するこのクレールは、ごく普通の既婚女性だが、亡き大親友・ローラに対し、
友情と同性愛ギリギリ境界線の危うい感情を抱いていたのではないだろうか?
そう考えると、色々な事の辻褄が合う。
どこにでも居そうな平凡な顔立ちの彼女が、ラストシーンでまるで別人のように美人になっているのも印象深い。
自分に自信を持って、我が道を行く女性は輝くばかりに美しいってこと?
それまでの彼女の人生も決して悪くはなかったと思うけれど…。


クレールの夫・ジル役のラファエル・ペルソナは甘い二枚目。
彼こそゲイをやらせたら、絶対にハマるはず。
(…今回もクレールの想像の中で、そういうシーンがちょこっとだけ有る。)




ちなみに、劇中何度も使われている歌は、(↓)こちら。



<あなたとともに~Une Femme Avec Toi>というニコル・クロワジール1975年のヒット曲なのだと。
ニコル・クロワジールは、ピエール・バルーとデュエットした映画『男と女』(1966年)の主題歌、
「ダバダバダ」のスキャットであまりにも有名な<男と女~Un Homme et Une Femme>でお馴染みの歌手。
私はフランスの音楽をほとんど知らないが、この<あなたとともに>も
多分あちらでは誰もが知る有名な曲なのでしょう。
哀愁を帯びたメロディと、女性の喜びを歌った歌詞が、映画の内容に合っております。






7年後、女装したヴィルジニア(ダヴィッド)と、おなかの大きなクレールが、
成長したリュシーをはさみ、3人仲良く歩くあのラストシーンはどう理解するべきなのか…?!
観衆の解釈は、恐らくふたつに分かれるであろう。

クレールは、夫ジルとの子供を妊娠。
ダヴィッドは堂々と女装して生きていくと決め、クレールもその決意を支持し、
二人は強い絆で結ばれた大親友となる。

クレールは、ダヴィッドが男性であるという現実を認識した上で、
女装も含め、彼の全てを受け入れて愛するようになり、ダヴィッドの子を妊娠。

後者の場合、ジルはクレールに捨てられたことになる。
ジルは、セクシャルマイノリティに対しての偏見が見え隠れしていたとはいえ、
ハンサムで優しい、ほぼ完璧に近い夫だったのに、もったいなーいっ…!
もし私がクレールなら、わざわざ荊の人生を選ばず、無難に前者に落ち着くわ。

クレールとダヴィッドの7年後をはっきり提示しないこの不明瞭なエンディングは、
観衆に考えさせる余白を残したかったフランソワ・オゾン監督の狙いなのであろう。
物語の途中でも、私のように固定観念に囚われている凡人の頭で、物事に白黒つけようとすると
なんとも割り切れないグレーな部分が結構ある。
本作品が発するメッセージで、はっきりと分った事はふたつ。
ひとつは、自分らしくありのままに生きることや、それを受け入れてくれる環境は素晴らしいという事。
もうひとつ、さらに明確に受け止めたメッセージは“歩きスマホは危険”。
女装のヴィルジニアが無残にも事故に遭うシーンを、公共広告機構のCMに使いたいワ。


クレールとローラの出逢いから別れまでを走馬灯のように駆け足で見せていく冒頭のたった数分のシーンから
この物語の世界に引き込まれた(台詞無しで全てを説明するこの冒頭のシーンは上手い)。
フランソワ・オゾン監督作品らしく、映像やファッションのセンスは相変わらずお洒落。
日本の街中で見ても何とも思わない、クレールの愛車、真っ赤なマツダMX5まで
おフランス映画のマジックにかかり、小粋に見えてしまった。
あと、やはり主演のロマン・デュリスは、女装にも演技にも見応えが有る。
扱っている題材のせいもあるのか、途中から、ペドロ・アルモドバル監督の作風が重なった。
フランソワ・オゾンにしても、ペドロ・アルモドバルにしても、
ヨーロッパのゲイの監督の作品からは、共通のニオイを感じることがる。
但し、本作品は、ペドロ・アルモドバル監督作品ほど毒々しくなく、もっとライトな感じ。
一映画作品としては、平均的な出来だと感じるけれど、
女性が都会で過ごす夏休みに、気楽に楽しめる作品という気がする。

王力宏(&大陸新進アイドル)in『明天去哪儿!?』

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録画しておいた、昨晩2015年8月15日(土曜)、東京MX2で放送の
『明日、どこ行くの!?~明天去哪儿!?』を観る。

中華圏からやって来た旅行者に限定した『Youは何しに日本へ?』のような感じで、
近年増加傾向にある訪日華人に密着取材することで、彼らの日本での過ごし方を覗ける番組。
…のハズであったが、密着に応じてくれる観光客を探すのも困難なのであろう。
最近は、当初のコンセプトから離れつつあり、中国で日本人に密着することもしばしばあるのだが、
朝鮮族が多く暮らす延辺とか、カナダ式の教育を行っている大連の楓葉国際学校とか、
日本の他の番組が取り上げない中国を取材していて、とても興味深い。
むしろ、本来の番組コンセプトからズレた今の方が、よほど面白いくらい。


で、今回も横道に反れた放送。カメラが密着するのはAima。日本を拠点に活動する中国人タレントだという。
東京タワーを臨む六本木の自宅マンションが、“日本での成功の証し”みたいに紹介されていたが
その割りには、このAima、ここ日本でまったく知られていないように思う(少なくとも私は知らなかった)。
何でも、前田敦子主演の黒沢清監督作品『Seventh Code』にも出演しているらしい。
早速チェックしてみたら、確かに出演していて、“愛茜(アイシー)”の名でクレジットされている。
その後、芸名をAimaに変えたのであろう。


絶対に微博をやっているはずだと思い、覗いてみたら…

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“Angelababy(アンジェラベイビー)”を彷彿させる“Aimababe(アイマーベイブ)”の名で登録されていた。
所在地は東京・六本木ではなく、上海・盧灣区。フォロワーは一万人近くいる。


微博を見ていたら、さらに、彼女がAIO模特組合のメンバーであることも判明。
このAIOは、上海に本部を置く大陸モデル事務所大手・英模文化 ESEEが、
中国でモデルという職業をもっと認知してもらおうという目的で結成し、
2015年5月にデビューしたばかりの7人編成アイドルユニット。

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K-Popアイドル風のセクシー路線かと思いきや、AKBに代表されるような萌え路線もあり、
コンセプトはいまいちハッキリしない。いや、韓国と日本の良いとこ取りが狙いなのだろうか。
Aimaは多くの写真でセンターにいることから、事務所一押しのメンバーと推測。


私はこの手のアイドルにまったく興味無いのだけれど、たまたま先日NHK BS1『Asia Insight』の
“中国・コンパニオンたちの憂鬱~China's Car Models Clean-up ”という回で、
このAIOが紹介されているのを見たばかりだったのだ。
デビューほやほや大陸アイドルを取り上げるなんて、NHKは情報が早い。




話は戻って『明日、どこ行くの!?~明天去哪儿!?』。
今回、この番組で初めて見た動き、喋る彼女は、
涙袋にヒアルロン酸大量注入が疑われる不自然さがあったものの、性格は明るく穏やかで感じ良し。

そんなAimaが、浴衣姿で銀座に赴き、超有名な“男神”に会うという。
気になります、その“超有名な男神”。最近銀座にそんな人、来ましたっけ…?!誰かと思ったら…

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“おうりき・ひろし”こと王力宏(ワン・リーホン)であった。

2015年7月30日、SEIKOが銀座7丁目に高級ラインのみを扱うプレミアム・ブティックを開店。
そのオープニング・セレモニーに、同社のイメージキャラクターを務めもう5年になる
王力宏が出席したというわけ。
SEIKO傘下の和光の、かの時計台で、ヒロシと一緒に映っている中年男性はSEIKOの服部真二社長。
社長直々の案内で、銀座のド真ん中を上空から見下ろせるなんて、我々一般人ではなかなか出来ない体験。


とにかく、そのようなイベントが有り、ヒロシが来ていたなんて、知らなかった。
私、7月30日、何をしていたかしら。もし知っていたら、ヒロシを見に、銀座までひとっ走りしてきたのに…。

SEIKOは日本の企業だが、日本のテレビの芸能ニュースなどでは多分報道されていないであろう。
まぁ、SEIKOもそれで納得しているとは思うけれど。
このプレミアム・ブティックが、銀座という土地に開店した高級ラインのみを扱うお店である事や、
店員が中国語対応である事、日本人タレントではなく、わざわざ王力宏をセレモニーに呼んでいる事などから
ターゲットは日本人ではなく、中華圏からの観光客であることは明白。


でもヒロシ、セレモニーでは、一応ちゃんと日本語で挨拶しております。
『明日どこ行くの!?』ではないけれど、そのシーンを収めたニュース映像があった。こちら(↓)





『明日どこ行くの!?』の中で流れた映像も、番組スタッフが撮った物ではなく、
SEIKOが提供した宣伝用の素材と推測。
男神に会いに行くとワクワクしていたAimaが、その“男神”王力宏にインタヴュする映像どころか、
二人がちょっとでも絡む映像も無かった。が…

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一応ヒロシには会って、ツーショットも撮らせてもらったみたい。Aimaちゃん、良かったですね~。



こちらも番組内では流れなかったけれど…

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SEIKOは、王力宏15thアルバム<你的愛。>のジャケ写真をイメージしたケーキを和光に作らせ、
ヒロシにプレゼントしたようだ。嬉しい心遣い。



またヒロシは空き時間に…

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築地市場まで足を運んでいる。
(手にしているビニール袋の中は果物のようにも見えるが、何なのでしょう。)



王力宏サマ、またのお越しをお待ちしております。



なお、この『明日、どこ行くの!?~明天去哪儿!?』は、あと2回、
8月18日(火曜)と20日(水曜)に再放送あり。初回放送で観逃した王力宏ファンは要チェック。

<沖田総司の恋~新選組血風録より>司馬遼太郎

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著:司馬遼太郎
発行:中央公論新社



新選組…。
好きな人が多いようだけれど、私はまったく興味なし。
なのにどうしてこの本<新選組血風録>を手にしたかというと、映画の予習。

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その映画とは、現在日本で公開中の張震(チャン・チェン)主演2014年度作品『繡春刀』、
邦題『ブレイド・マスター』。この陳腐すぎる邦題からは、内容が見えにくいが、
明朝の特務機関・錦衣衛(きんいえい)を題材にした武侠アクションらしい。
反幕府勢力の取り締まりを行った新選組は、“幕末の京都版・錦衣衛”と言えなくもないが、
それだけの理由でわざわざこの本は読まない。そもそも新選組関連の本なんて、いくらでも有る。

なぜ敢えてこの本かというと、大陸の映画監督・路陽(ルー・ヤン)が、
「随分前に読んだ、政治的使命を背負った剣客集団に所属する一人の若い剣客と
医者の娘との恋を描いた日本の小説が好きで、そういう人物をふくらませた映画を撮りたいとずっと思っていた」
と『ブレイド・マスター』の着想を語っており、その“若い剣客と医者の娘を描いた日本の小説”こそが、
司馬遼太郎の<沖田総司の恋>なのだ。

<沖田総司の恋>は、新選組隊士を題材に、史実とフィクションを絡めストーリー仕立てにした短編小説集
<新選組血風録>に収録された40数ページの短い物語で、すぐに読めてしまう。
私はせっかくなので収録されている15篇全て読んだけれど、
ここには映画と所縁がある<沖田総司の恋>のみを。

★ 沖田総司の恋

短編小説<沖田総司の恋>のあらすじは、こんな感じ。

元治元年(1864年)。
当時21歳の沖田総司は、池田屋に踏み込み、吉田稔麿を一刀で斬った際に大量の血を吐く。
同門で、自分を本当の弟のように可愛がってくれている近藤勇と土方歳三に心配をかけまいと、
喀血のことは「返り血だ」と誤魔化し、後日、会津藩公用人・外島機兵衛の紹介をうけ、
半井玄節という町の名医を一人でこっそり訪ねる。
外島機兵衛は、新選組の評判が京では決してよくないことを考慮したのであろう。
半井玄節に沖田総司を“会津藩の御家中”と紹介していた。
沖田総司も事情を察し、敢えて身分を明かすことなく診察を受けると、労咳(結核)と診断される。
この町医者・半井玄節には、お悠という年頃の娘がおり、沖田総司は彼女に恋心を抱くようになる。

その内、近藤勇と土方歳三は、五日に一度は一人で屯営を出て、
どこかへ行く沖田総司を不思議に思うようになる。
「そろそろ色気づく年頃の総司に、まさか悪い女でもできたのではないだろうか?」
国を出る際、沖田総司の姉・お光から弟のことを頼まれた手前、放っておくわけにはいかない。
二人はあの手この手で沖田総司の様子を窺い、沖田総司の方もそれを察し、誤魔化すが、
ある時ついに医者通いをしていたことと、お悠へ恋心を抱いていることがバレてしまう。

沖田家のためにも総司にはやく嫁をもたせてやりたい。
近藤勇と土方歳三は真剣に考えた。そして行動派の近藤勇が早速町医者の半井家を訪ねる。
新選組の近藤勇が突然やって来て驚いたのは半井玄節。
無理も無い。実のところ、長州藩出身者の多い西本願寺門跡の侍医も兼ねている半井玄節は
新選組に何か嗅ぎつけられたと感じたのだ。
困惑しながらも近藤勇に会ってみると、本人は噂とは異なり、丁重で笑みさえ浮かべている。
取り敢えず話を聞いた半井玄節は、この時初めて、沖田総司が新選組隊士であったと知る。
さらに娘をくれと言われ、沈黙の後、半井玄節の口をついた答えは
「もし嫁けるならば、医家は医家らしく、同学の後進に与えとうござる。
近藤先生、ここは老父の愚痴と思うて嗤いくだされ。」
近藤勇は、「わかりました」と答え、半井家を辞す。

屯営で近藤勇と土方歳三に呼び出され、事情を聞かされ、「総司、あきらめよ」と言われる沖田総司。
彼にとっては寝耳に水。お悠をただ遠目で見ているだけで良かったのに…。
その夕、沖田総司は、お悠が毎月八のつく日に通う清水山内音羽の滝へ一人足を運ぶ。
今日は八の日ではない。想う人は来ない。
山内をまわる僧が近付いてきて、「ごくろうさまでございます」と声をかけて去っていく。
滝には夜詣での信徒が来る。沖田総司もそういう一人だと思われたのだろう。


要は、義弟想いだけれどやや大雑把で配慮に欠ける兄貴分たちの先走った余計なお世話のせいで、
淡い初恋をズタズタにされた繊細な青年の苦い失恋物語。
(確かに現在沖田総司自身は“美青年”とか“純情”などと形容されることが多いけれど…)
この小説は、私がイメージする新選組とは異なる甘酸っぱくもロマンティックなお話という印象を受けた。


物語の主旨からはズレるが、気になる記述もいくつか有った。
そのひとつが“友情”について。
現実には昔にも勿論友情は存在していたけれど、これは明治以降に入ってきた道徳、概念で、
それ以前は“忠孝”というタテの関係が男子の絶対の道徳で、“友情”などという言葉は無く、
今でいう友情らしきもので結ばれている男子は“義兄弟”と言われていたという。

なるほど。そう言われてみると、“友情”とか“友愛”という概念は、とても西洋的で、この説明をやけに納得した。
恐らく、明治時代、西洋から入って来た書物などを訳すことになった誰かが、
自分たちは考えたこともなかった“friendship”だの“fraternity”だのという言葉から
“友情”とか“友愛”という新たな日本語を創り、今に至っているであろう。

★ その他:前髪の惣三郎

新選組にまったく興味が無いため、読むのも苦痛だろうと覚悟した本だけれど、
一篇一篇が短いため、いざ読み始めたらサクサクと進み、案外楽しめた。
全て読み、<沖田総司の恋>が好きだという路陽監督は、きっとロマンティストなのだろうと想像した。
まったくロマンティストではない私の印象に一番残ったのは、
まだ前髪のある18歳の美少年・加納惣三郎を主人公にした<前髪の惣三郎>
同期で新選組に入隊した久留米出身の三十男・田代彪蔵に手籠めにされ、
“その道”に目覚めてから隊内で巻き起こる小悪魔・加納惣三郎を巡る恋のもつれを描く衆道の物語。
その気の無い近藤勇や土方歳三まで、惣三郎を見ると不覚にもトキメくって、一体どれほどの魔性なのだか。
殺人にまで至ってしまうドロドロの男色物語でありながら、所々の表現は軽快で、コミカルでさえある。
惣三郎を衆道の世界へと導いた田代彪蔵の故郷・久留米藩が
“その在所では衆道は公然たる風習であった(但し、普通は二十を過ぎると悪習から抜ける)”とか
“衆道は、僧門、武門の古風で、士道に反するというほどのことではない”という説明も印象に残る。
日本は昔から、こと男色に関しては、教会が強い西洋世界よりよほどフリーな先進国だと感じる。
江戸時代の衆道関連の話は本当に興味深い。

この<前髪の惣三郎>が、大島渚監督作品『御法度』(1999年)だったなんて、すっかり忘れていた。
映画は観たけれど、当時この小説は読んでいない。
小説を読んだ今、松田龍平=加納惣三郎、浅野忠信=田代彪蔵ということをきちんと念頭におき、
改めて映画を観たら、違う発見や面白みがあるかも。




一生手にとることなど無いと思っていた本を、映画をきっかけに読むのも悪くないものだ。
本当は『ブレイド・マスター』も、張震主演じゃなかったら、何がナンでも観たいタイプの作品ではないが、
今回この小説を読んだことで、ちょっと楽しみになってきた。
司馬遼太郎の<沖田総司の恋>にインスピレーションを得た中国映画が、
どのように仕上がっているのだろうか。

北京2014:雍和宮

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また前回からえらく間が空いてしまった北京2014旅の備忘録…。
まったく終わる気配が無い。どうしましょ。

今回は、現在チャンネル銀河で再放送中の『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』が佳境に入ったことに託け、
雍正帝ゆかりの観光地をば。



それは北京のマッサージ店の個室でテレビをザッピングしている時の事であった。

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画面に『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の主人公・甄嬛と
『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』の④様・雍正帝という番組の枠を超えたツーショットが映っていたので
何かと興味が湧き、そのチャンネルで手を止め、リモコンを置いた。
 
その番組は、北京にある雍和宫(雍和宮)を紹介する番組であった。
「日本の著名な作家・芥川龍之介もかつてここを訪れ、文章を残している」と説明している。
あら、そうだったの…?!と、軽く驚き、ホテルの部屋へ戻ってから
<地球の歩き方>の雍和宮のページを開いたら、確かにそのような記述がある。
どうやら、私が知らなかっただけで、有名な話らしい。
芥川龍之介は1921年(大正10年)に中国を訪れ、
<北京日記抄>という紀行文に雍和宮についても記しているようだが、私は未読であった。
 
そのような流れで、今回は行くつもりの無かった雍和宮に、急遽思い立って出向くことに。

★ アクセス

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最寄りの駅は、地下鉄2号線/5号線の雍和宫(雍和宮)駅。
駅構内は、雍和宮をイメージしたデザイン。



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駅のC出口から地上に出たら、目の前の通り、雍和宫大街(雍和宮大街)を直進するだけ。
この通りは仏具屋さんストリート。道の両脇に、仏具や参拝グッズを扱う小さなお店が並ぶ。



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雍和宮へ向かう途中、右手に見えてくるこの牌樓をくぐり、国子监街(國子監街)という通りを直進すると、
かつての最高学府・国子监(國子監)と孔子を祀った孔庙(孔廟)が隣接して建っている。
今回の旅行ではパスしてしまったが、ここも重要な歴史的文物が見られる興味深い観光スポット。

★ チケット

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雍和宮大街をさらにもうちょっとだけ直進すると、28番地に雍和宮。
到着したら、まずはチケット売り場へ。大人一枚25元也。
北京の他の観光スポットと同じように、子供料金は身長で決まり、120センチ以下なら無料。

お金を払うと渡されるのは、小さなポチ袋のような物。
この中に、折りたたまれたチケットと、小さなディスクが一枚入っている。
ディスクの内容は、雍和宮の簡単な説明(パソコンで再生可)。

チケット売り場の近くには、多言語に対応したイヤホンガイドの貸し出し所もある。
私は、同種の物を故宮で借りて、特別良いと感じなかったので(→参照)、ここでは借りるのをやめた。

★ 入場

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では、簡単な荷物検査をして、この入り口から中へ。

★ お線香

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入り口をくぐり、緑が気持ちいい参道を歩いていると(…炎天下の北京で救いの日蔭)、
最初に見えてくる昭泰门(昭泰門)の左側に、“赠香処”と記された、お線香を配布している小さな窓口あり。
希望する参拝者は、ここで、一人につき一束のお線香を無料でもらうことができる。
この日、私は、祈る気マンマンだったので、お線香ゲット。



ここで、ちょっと疑問。
今回久し振りに雍和宮を訪れたら、駅構内から雍和宮までの間に、
「院内免费赠香 谢绝外香带入(院内でお線香無料贈呈 外からの持ち込みお断り」という
今までは見たことが無かった雍和宮からの注意喚起を幾度となく目にしたのだ。

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もし雍和宮が参拝客に有料でお線香を販売しているのなら、それが雍和宮の大切な収入になるだろうから、
他で買われたくないのも理解できる。でも、雍和宮のお線香は無料配布。
参拝客が、外のお店でお線香を買えば、雍和宮はお線香代をセーヴできるし、周囲の商店も潤い、
皆にとって良いように思うが、なぜ禁じているのだろう。
もしかして、大気汚染の原因になる有害物質を含む悪質なお線香を持ち込まれては困るとか、そういう事?
台北の行天宮が、昨年、環境汚染に配慮して、お線香の利用を廃止したことを、ふと思い出した。
環境に対する意識が高まるのは良い事だけれど、境内でお線香の煙がモクモク立ち上るアジアらしい光景が
徐々に消えゆく運命なのかも知れないと思うと、ちょっと淋しい気も。

★ 雍和宮

見学をする前に、ここで簡単に雍和宮について。

雍和宮は、南北に約400メートル、東西に約120メートル、面積6万6千400㎡の
北京最大のチベット仏教寺院。
日本人がよく言う「東京ドーム○○個分」という表現に当てはめるなら、大体東京ドーム1個半サイズ。

明代は太保街と呼ばれ、宮廷に仕える太監らのお屋敷街であったこの地に、
1694年(清・康熙33年)、時の皇帝・康熙帝が、四男・胤のために建てた邸宅が起源。
当時は“四爺府”、“貝勒府”などと呼ばれていたそうだが
胤が親王に封じられると同時に、“雍王府”と改称。

今でこそ“北京最大のチベット仏教寺院”として広く知られる雍和宮だが
ここはそもそも④様・愛新覺羅胤が、1723年、清朝第5代皇帝・雍正帝に即位し、
紫禁城にお引越しするまで暮らした“④様ヴィラ”なのだ。

つまり、ドラマ『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』で、主人公・若曦とイチャイチャする一方、
次期皇帝の座を巡り、兄弟たちと骨肉の争いを繰り広げていた、あの頃の④様は
ここにお住まいになっていたという事。
『宮 パレス 時をかける宮女~宮鎖心玉』では、④様のお住まいとして、ハッキリと雍王府が登場している。


また、ここは、雍正帝から皇位を譲り受け、清朝第6代皇帝となった乾隆帝の生誕の地としても知られる。
乾隆帝は、④様がまだ皇帝に即位していない親王時代の1711年(清・康熙50年)、
『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の主人公・甄嬛のモデルとなった鈕祜祿氏が
この雍王府の東書院“如意室”で出産。

しかし、この時生まれたのは実は女児で、男児を熱望した鈕祜祿氏が、
清の重臣・陳世倌夫妻(漢人)の間にちょうど同時期に生まれた男児と交換したという“乾隆帝漢人説”がある。
もしくは、父親こそ雍正帝だが、母親は漢人の女官で、
生まれたのは雍和宮ではなく、承避暑山莊だという噂も。
このような乾隆帝の出生に関する黒い噂は、
日本でも放送されたドラマ『宮廷の秘密~王者清風』でも少し触れている。


話を戻すと、④様雍正帝が紫禁城にお引越ししてしまった後の雍王府は
半分がラマ教の上院、もう半分が行宮として使用され、名も“雍和宮”に変更。
1735年(清・雍正13年)、雍正帝が崩御すると、その柩を安置するにあたり、
雍和宮の主要建造物の屋根は紫禁城と同じ琉璃瓦にアップグレード。

次に即位した息子の乾隆帝は、1744年(清・乾隆9年)、ここを正式にチベット仏教寺院に大改修。

時代はドドーッと流れ、中華人民共和国設立後は、数度に渡り、雍和宮の全面修復が行われ、
1961年には全国重点文物保護単位に指定。
ところがその後中国は文化大革命に突入。周恩来の配慮で保護され、なんとか10年の動乱期を乗り越え、
1981年、ついに正式に一般開放。

お蔭さまで我々も現在見学可。
敷地内には、南から北にのびる中軸線を主に、またその左右に、
満、漢、モンゴル、チベット各民族の様式が融合した独特な建造物が並ぶ。
50年代の調査によると、部屋数の合計は661間、内仏殿は238間だという。

仏像を中心としたチベット仏教の重要な文物が展示されていて、見学はできるけれど、
雍和宮では室内の写真撮影を禁じている。

建物外観の写真だけだと、どれも似た感じになってしまうので、当ブログでは一部しか掲載しない。

★ 天王殿/雍和門

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お線香配布所に近い昭泰门(昭泰門)をくぐり、すぐに見えるのが天王殿
元々は雍王府の正門・雍王门(雍王門)。寺院に改修後、天王殿と呼ばれる仏殿に。
扁額の文字は、右から順に、満、漢、藏、蒙と4ヶ国語表記。
内、漢字の“雍和門”は、乾隆帝の御筆なのだとか。




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敷地内、どの建物の前にも、香炉が置かれ、お祈りできるようになっているが、
ここのは取り分けそのスペースが広い。
特別お祈りする気の無い人でも、ここで一回くらいは祈るから、雍和門の前は白い煙でモクモク。
おぉ~これぞ中国!と、煙にムセながら、私も祈る気マンマン。
お線香は一ヶ所につき3本が基本とのことなので、戴いた束から3本抜き取り、香炉に近付くが、
灼熱の8月に、香炉の中でメラメラ燃え上がる真っ赤な炎が暑いのナンのって…。

病んでいる私の気休めの祈祷は、この後も雍和宮内で延々と続くのでした…。

★ 雍和宮

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雍和門のすぐ北に控えるのは、雍王府時代に银安殿(銀安殿)と呼ばれていた建物で、
寺院に改修後、ここの正殿、雍和宫(雍和宮)に改称。

★ 永佑殿

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雍和宮の北には、永佑殿
雍王府時代は、④様の寝殿だった場所。

★ 法輪殿

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永佑殿の北には、法轮殿(法輪殿)
十字型の建物で、仏事を司る雍和宮最大の殿堂。

芥川龍之介は、特にこの法輪殿の東側の东配殿(東配殿)について
「第六所東配殿に木彫りの歡喜佛(くわんきぶつ)四體あり。
堂守に銀貨を一枚やると、繡幔(しうまん)をとつてみせてくれる。」
「歡喜佛は少しもエロテイツクな感じを與へず。只何か殘酷なる好奇心の滿足を與ふるのみ。」
「歡喜佛第四號の隣には半ば口を開きたるやはり木彫りの大熊あり。」
「この熊も因縁を聞いて見れば、定めし何かの象徴ならん。」等々と記述を残している。

寺院に“木彫りの大熊”とは珍しい気もするが、これは乾隆帝所縁の品。
乾隆帝が吉林に狩猟に行った際、とても大きな2匹の熊を狩ったので、それを剥製にして残し、
武の神に自分を守護して欲しいという希望と、武の崇拝の意を込め、雍和宮に陳列。
ところがその剥製が長い年月の間に劣化してしまったため、木彫りの熊さんに替えられたそう。

★ 萬福閣

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雍和宮最北端に建つのは、万福阁(萬福閣)



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3層から成る立派な大殿で、両脇に建つ永康阁(永康閣)延绥阁(延綏閣)とは、上空の渡り廊下で連結。

内部には、高さ26メートル(地上18メートル+地下8メートル)の白檀製巨大彌勒大佛像。
なんとこれ、パーツを組みわせた物ではなく、白檀の巨木から作った一本彫り…!
1990年には、世界最大の一本彫りの木彫仏像として、ギネスに登録。
写真撮影が禁じられているので、現地で実物をご覧くださいませ。





これで雍和宮は簡単にひと通りの見学を終了(今回当ブログでは、中軸線上の建物だけを記載)。
香炉が置かれている場所では、全てお線香を3本づつ焚いて祈ったが、何本も残った。
どう処理して良いのか分からなかったので、最後にもう一度雍和門の香炉で、残り全てに火をつけ、
トドメのお祈りをしておいた。これで私の運もドーンと上がること間違い無し!(…未だ効果みられず)。

それにしても、こんなに人の多い雍和宮は初めて。
これまでは、いつも人が少なく、まるでここだけ外部とは異なる時間が静かに流れているかのようであった。
ホッとひと息つける都会のオアシスという雰囲気が好きだったのだけれど、
今回は、故宮ほどではないにしても、あっちにもこっちにも人、人、人…。
ひとつには、夏休みだったという事が大きい。
けれど、それだけではなく、近年制作されヒットした④様・雍正帝を取り上げた何本かのドラマの影響で
雍和宮に興味をもち、訪れる観光客が増えたそうだ。

日本人観光客の場合、2~3泊の初北京弾丸旅行だと、故宮や万里の長城、
次いで頤和園、天壇公園辺りを優先し、雍和宮はパスするのではないだろうか。
今回も、中国人や欧米人は沢山居たが、日本人らしき人は見掛けなかった。
ま、でも、清宮ドラマニアには必須の観光スポットかも知れない。
閉門時間が早いので要注意。




◆◇◆ 雍和宮 Yonghe Temple ◆◇◆
北京市 东城区 雍和宫大街 12号

9:00~16:30(夏季:4月~10月)/9:00~16:00(冬季:11月~3月)

25元

地下鉄2号線/5号線の雍和宫(雍和宮)駅下車 C出口から出て、徒歩約8分

フルーティなケーキ2種(+テレビ雑記)

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先程、朝刊のテレビ欄をチェックしていたら、
本日、2015年8月22日(土曜)、午後2時から、BSフジで面白そうな番組が。
お題は、『新渡戸稲造の台湾~スーツを着たサムライ』
あまりにも有名な新渡戸稲造だが、その実、パッと思い付くイメージは、著書<武士道>と五千円札くらい。
台湾との関わりなんて、あまり考えたことも無かったけれど、
実は1901年、当時日本の統治下にあった台湾の総督府に赴任しているのだ。

そこで、台湾総統府の糖務局長に就任し、サトウキビと砂糖の生産の改良に取り組み、
台湾経済の礎を築いた新渡戸稲造の足跡を、俳優・城戸裕次が追うのが、この番組。

台湾のサトウキビ生産といえば、先日観たばかりの台湾ドラマ『春梅~HARU』が重なる。
このドラマの幕開けは、新渡戸稲造が台湾へ赴いた1901年から20年以上経った1925年。
総統府の奨励でサトウキビが増産され、日本統治下の台湾経済は活気づくが、
利益が還元されず、搾取されるばかりの農民たちの不満が爆発し、
各地で抗議運動が勃発するところから話が始まる。

恐らく『新渡戸稲造の台湾』という番組では
“台湾の発展に貢献した素晴らしい日本人がいた”という光の部分しか紹介しない予感がする。
その後、新渡戸稲造の努力も虚しく、『春梅』の悲劇に繋がっていくのだと思うと、切ない。
歴史は、自分たちに心地良い光の部分だけでなく、影の部分もバランス良く伝えるべきだと
最近特に強く感じるけれど、まぁ『春梅』に繋がる内容だと思うと興味深いし、とにかく、この番組は要録画。






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本日、他の注目番組は、
NHKの『NEXTスペシャル:愛しい我が子が誘拐された~中国“行方不明児20万人”の衝撃』
中国では、年間20万人もの子供が忽然と居なくなり、農村などで売られているという。
NHKでは、これまでにも、この社会問題を何度か取り上げており、
特に数年前に放送されたドイツのテレビ局制作の『盗まれる子どもたち』というドキュメンタリーは秀逸であった。
今回のこれはどうでしょう。この中国児童誘拐問題は…

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陳可辛(ピーター・チャン)監督が『親愛的』という映画にもしており、
日本でも、『最愛の子』のタイトルで、2016年新春に上映が予定されているので
映画の予習も兼ね、観ておきたい番組。






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翌、8月23日(日曜)は、BS朝日で放送される日中共同制作番組
『カンフーの聖地へ 世界遺産 少林寺 奥田瑛二の鉄道とバスの旅』が面白そう。
奥田瑛二って、もう60代半ばでしょう?いきなりカンフーなんて、身体大丈夫なの…??!とも案じたが
(↓)この番組予告を観ると…



「人々とのふれあいもいっぱい」と言っているから、大丈夫であろう。
我々を悠久の世界へ案内してくれるのだと。嵩山も武当山も、なかなか行く所ではないから楽しみ。






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次の週になり、8月24日(月曜)深夜0時(正確には、日を跨いだ25日)は
NHK BS1『BS世界のドキュメンタリー』で、イギリスBBC制作の
『ひげ面ライダー 食のアジアを行く!~The Hairy Bikers’ Asian Adventure』の香港編を放送。
そのタイトル通り、ひげ面のイギリス人オヤジ二人組が、バイクでアジア各地を旅し、
行く先々で、その土地の食を体験したり、自己流アレンジ料理を披露する番組。
今回の香港編では、イギリスの影響が色濃い香港スタイルの朝食、飲茶文化、屋台料理などをレポする模様。



さらに、8月28日(金曜)のNHK『ドキュメント72時間』も録画を予約。
これは、ある場所に3日間カメラを据え、そこを行き交う人々を捉えるという
有りそうであまり無いタイプの番組。
シンプルだが、市井の人々それぞれの人間ドラマを覗け、不思議な味わいがある。
この度、カメラを据えたのは、“中国・大連 日本食材スーパー”。
お客さんの多くは、やはり大連在住の日本人なのかしら。




とっくに立秋は過ぎたとはいえ、まだまだ暑いので、お菓子は、フルーティで爽やかなケーキを。

★ ショコラクシック:ゆず

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大きさは、直径約5センチ、高さ約5.5センチ。
ダクワーズの台の上に、柚子ジュレと柚子クリームを中に隠したホワイトチョコ・ムースをのせたケーキ。




ひとつめは、オーナー以下、スタッフも全員女性という南青山のケーキ屋さん、
ショコラ・シック(公式サイト)“ゆず”

主になっている部分は、まろやかな甘さのホワイトチョコ・ムース。
その中に隠れているジュレとクリームは、柚子の酸味がしっかり出ていて爽やか。
周囲に散らした小さなキューブ型のクッキーは、サクッ!ホロッ!と口の中で崩れる食感。
ナッツの風味たっぷりで、これだけでもポリポリ食べてしまえる。

明るいイエローのポップな見た目といい、優しい味といい、いかにも“女性が作ったケーキ”という印象。
クセモノ好きな私には、何かもうひとつパンチが足りないようにも感じたけれど、充分美味。

★ エコール・クリオロ:ココ

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大きさは、直径約7センチ、高さ約4センチ。
チョコレートのカップの中に、ココナッツムースとマンゴー&パッションフルーツ・ジュレ、
さらにトップに、タピオカとチョコレートシリアルを散らしたケーキ。



こちらは、フランス人パティシエ、サントス・アントワーヌのお店、
エコール・クリオロ(公式サイト)“ココ”という商品。
エコール・クリオロのケーキはぼちぼち食べているけれど、これは初めて。
去年の夏も有りました?有ったら、絶対に買っていたと思うのだけれど…。

まず、他のケーキとは異なる見た目が目を引く。まるで蓮の実のようで、夏らしい。
外の黒いカップは、お店のショーウィンドウ越しには、プラスティックか陶器の器に見えたのだが、
実はチョコレートで、全部食べられる。
中には、“ココ”というケーキの名前にもなっているように、ココナッツ・ムースが。
ココナッツの味はあまり強くなく、どちらかと言うとミルキーな感じ。
とても滑らかな軽いムースで、口の中で瞬時に消える。
そのムースを覆っているジュレは、マンゴーにパッションフルーツを混ぜているので、適度に酸味があり爽やか。

ムースを主体にしたケーキは、軽過ぎて、物足りなく感じることが多いけれど、
これは、チョコレートが加わるので、淡白過ぎず、しっかり食べた気がする。
マンゴーやパッションフルーツといったトロピカルフルーツと、チョコレートの相性ももちろん良し。
可愛いし、美味しい。このケーキの私のリピート率は結構高く、
この夏、覚えているだけでも、5~6回は食べているはず。来夏も売って下さい。

高級!紅キーツマンゴー(+オマケのマンゴー和菓子)

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昨日2015年8月22日(土曜)に録画しておいたBSフジの番組、
『新渡戸稲造の台湾~スーツを着たサムライ』(→参照)を早速観たら、台湾でレポする城戸裕次が、
現地で頑張る同業の日本人俳優に会うというシーンで…

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目代雄介(めだい・ゆうすけ)が登場。
と言っても、ほとんどの人は知らないだろうけれど、私は…

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最近、台湾ドラマ『春梅 HARU』で、日本統治時代の台湾で働く日本人警察に扮する彼を見ており、
クレジットされている名を目にする度に「珍しい名字だわ」と思っていたので、覚えていた。
台湾を拠点に活動し、もう7年の31歳だって。
「台湾は温かい人が多く、辛い時、助けてもらった」、
「台湾と日本の架け橋になれたらな、と思います」等々と語っておられた。
野球選手とか、何かスポーツをやる人のような雰囲気で、
(役と素では違いから当たり前だけれど)『春梅』で見るよりずっと爽やかな好人物。
藤岡靛 DEAN FUJIOKAのように、活動の場が広がると良いですね。健闘を祈ります。



こちらが本題。
今月のある日、三越の包みが届いた。友人Mからの毎度のお誕生祝いである。

★ サンフルーツ:紅キーツマンゴー

箱を開けるまでもなく、中身が何なのかは、包みに貼られた伝票に記されているため、明白。
それでも、箱を開け、実物を目にした時のトキメキといったら、かなりのもの。



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自腹で自分のために買うことなどゼーーッタイにない沖縄産高級紅キーツマンゴー(レッドキーツマンゴー)が
箱の中にドカーンと一個!


大きさを計ったところ、だいたい縦が14センチで横幅が12センチ。
コロコロで、手にするとドシッと重く、赤ちゃんの頭くらいある。
残念ながら画像では、その大きさが判りにくい。タバコの箱を横に並べて写真を撮りたいところだけれど、
私も私の周囲にも吸う人が居ないので、それが無い。仕方がないので…

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誰もが大きさを知っている5百円玉や
クレジットカードサイズのカード(なぜかマツキヨのカード)と共に撮ってみた。



重さも計ってみた。

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堂々の1キロ超え!正確には、1.05キロ。


立派。
このように色々と計測してみたが、追熟が必要なので、すぐには食べられない。
滅多に口にできない物なので、ベストの状態で食べたくて、毎日チェックしながら追熟。
日を追うごとに、赤い果皮が落ち着いた色に変わり、香りが強くなってくる。
ひたすら甘~い香りというよりは、やや酸味を帯びたような爽やかな甘みを感じる香り。

もう追熟完了と見極めたら、冷蔵庫で冷やし、3枚におろし、いよいよ実食!
本当は、一人で1キロ全てガッツリ大人喰いしたいところだけれど、1/3は両親に御裾分け。

写真に残すなら、サイの目にカットして引っくり返した方が、見栄えはするが、
見た目より、食べた時の満足感を重視。
「私、今、大きな高級マンゴーを一人占めでたっぷり食べているんだわー!」と実感できるよう、
大きな塊から、スプーンで掘って食べることにした。

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鮮やかなオレンジ色の果肉は、見るからに美味しそう。
そして、実際に、お、お、お、美味しい…!!
ジューシーで、とにかく甘く、濃厚な味。
ただ、その甘さが、感じた香りと同じように、しつこい甘さではなく、軽く酸味を含んだ爽やかな甘さ。
果肉は、繊維が少なく(と言う以上に、まったく繊維質を感じない)、滑らかで、口の中でトロケるよう。
この食感の特徴もあり、味がより濃厚に感じるのかも知れない。

3枚におろした中央の部分も、タネが有るからといって捨てるはずはない。
外ではお行儀悪くて出来ないけれど、家だから、タネにこびり付いた果肉まで、しっかりしゃぶり尽くし、完食!
(タネは薄く、実全体の大きさの割りに小さいから、3枚におろした中央の部分も、実は意外に食べでがある。)

★ 笹屋伊織:マンゴー水羊羹

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大きさは、直径約4センチ。
マンゴーを練り込んだ半円形の水羊羹。




ついでなので、笹屋伊織(公式サイト)の夏の限定品、“マンゴー水羊羹”も。

ちゃんと“水羊羹”と名付けられているのに、中に餡が入った水まんじゅうのような物を漠然と想像していたら、
手にした時、ズシッと重みを感じた。
割ってみたら、確かに中までギッシリ詰まった、紛れもない水羊羹であった。
(勝手に誤解した私が悪いのに…)なんだ、ただの水羊羹だったのね…、と軽く失望し、
口にしたら、あらら、かなりマンゴー。

手亡豆、白小豆、寒天を原材料に、…つまり、白餡ベースにマンゴーを練り込んだ水羊羹なのだが、
マンゴーの味が強く、滑らかな口当たりで、和菓子と言うより、
甘ーい完熟マンゴーを食べているかのような錯覚すら起こす。

期待せずに食べたが、案外美味しかった。
もっとも、贅沢な紅キーツと比べてしまうと、足元にも及ばないけれど。

紅キーツがあまりにも美味しすぎた。
友人M様、貴重なお品を本当に有り難うございました!!
自腹で自分のために買うことのない高級な消えモノを戴くのは、非常に嬉しい。
舌がどんどん肥え、安いマンゴーを食べられなくなってしまうのは、多少問題だけれど…。

映画『ブレイド・マスター』

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【2014年/中国/111min.】
明朝末期の中国・北京。
第16代皇帝、熹宗・朱由校が崩御し、崇禎・朱由檢が第17代皇帝に即位したことにより、
熹宗の下、権勢をふるった太監・魏忠賢は失脚し、阜城に逃亡。
錦衣衛に所属する義兄弟、盧劍星、沈煉、靳一川の3人は、
東廠提督・趙靖忠から、魏忠賢暗殺の命を受け、阜城へ。
隠れ家へ乗り込んだ沈煉は、魏忠賢を追い詰め、乱闘の末、燃え盛る炎の海の中、魏忠賢は息絶える。
証拠となる魏忠賢の焼死体も宮廷に運ばれ、3人は命懸けの任務を無事完了。
これで一件落着かと思いきや、彼らは知らず知らずの内に、何やら陰謀に巻き込まれてゆき…。


昨2014年、中国・東京映画週間で、『ブラザーフッド』のタイトルで上映された際見逃した
大陸の路陽(ルー・ヤン)監督作品『繡春刀』が、『ブレイド・マスター』と名を改め、一般劇場公開。
わざわざ改名したところで、昨今の香港映画を彷彿させる陳腐な横文字邦題…。
この邦題には文句タラタラだが、昨年観逃した本作品を、
今年こうして映画館で鑑賞できる運びとなったのは、素直に嬉しい。



本作品の時代背景は、第16代皇帝・熹宗(1605-1627)が崩御し、
崇禎(1611-1644)が第17代皇帝に即位した明代。つまり、1627年以降の明朝末期。
日本で言うと、江戸時代前期。第3代将軍・徳川家光の頃のお話。

その頃、明朝では、先帝の時代に思うがままに権力を掌握した魏忠賢と
彼の息がかかった残党たちの一掃が行われる。

物語は、錦衣衛に所属する義兄弟、それぞれに夢や悩みを抱く盧劍星、沈煉、靳一川の3人が、
東廠提督・趙靖忠から命じられた魏忠賢暗殺を遂行し、全てを終わらせたつもりが、
逆に、それが不幸の始まりとなり、負のスパイラルに嵌まっていく様子を描く遣る瀬無いヒューマンドラマ

実在の人物や史実を絡め、空想で膨らませた歴史フィクションである。
さらに、路陽監督は、司馬遼太郎の短編小説<沖田総司の恋>が好きで、
本作品は、そこから着想を得ていると語っている。



本作品を鑑賞するにあたり、最低限押さえておきたいキーワードがいくつか。

まず、主人公である3人の義兄弟が所属する“錦衣衛(きんいえい)”。
これは、明の軍事特務機構、禁衛軍。
本作品の中で錦衣衛は、“人殺し集団”と人々から恐れられている。
そういうところ、清の血滴子や、日本の幕末の新選組にも通じる。

ちなみに、本作品の中文原題『繡春刀』とは、刀の名称。
明の錦衣衛と言えば、“飛魚服”と呼ばれる官服に身を包み、
腰に繡春刀を携えているのがトレードマークだったらしい。

続いて“東廠(とうしょう)”。明の特務及び秘密警察機関。
任命された一人の太監を提督としてトップに、下部の錦衣衛まで、
細かく順位づけされた役職で構成された組織。

物語のキーパーソン、魏忠賢(1568-1627)は、忘れてはならない実在の人物。
貧農出身の文盲にも拘わらず、宦官として入宮すると、世渡り上手でみるみる出世し、
第16代皇帝・熹宗の下、権力を掌握し、明朝の衰退を加速させた奸臣。
イケイケの全盛期、皇帝にしか使えない“萬歳(バンザイ)”はさすがに遠慮したものの、
親王に使う“千歳”より上の“九千歳”(後に“九千九百歳”まで水増し)を自分に向け
人々に唱和させたというエピソードからも、相当厚かましい明の黒幕だったことが窺える。
そんな魏忠賢も、熹宗の崩御で、崇禎が皇位を継ぐと、ついに失脚。
本作品で描かれるのは、そこからの魏忠賢。
史実では、失脚した魏忠賢は阜城で自害するが、
本作品では、阜城まで追ってきた錦衣衛の沈煉と取り引きをし、焼け死んだことにしてもらい、
取り敢えずその時は生き延びる。

本作品に登場するシーンは極めて短いけれど、その魏忠賢を失脚させる崇禎(1611-1644)も、勿論実在。
崇禎は、23歳の若さで急死した兄から皇位を継いだ明朝17代皇帝にして、“明のラストエンペラー”。
熱心に国政改革に取り組むも、明の衰退の流れはもはや止められず、
1644年、北京陥落後、紫禁城裏の景山で首を吊って自害。
首を吊った槐(えんじゅ)の木は、すでに消失しているが、その場所には碑が立てられ、
現在、ちょっとした観光スポット。(→参照



このような史実を背景に、錦衣衛に所属する架空の義兄弟たち、盧劍星、沈煉、靳一川のドラマが絡む。
年長の盧劍星は、百戸に昇進したいが、官位を買う金も無ければコネも無い。
年少の靳一川は、労咳の治療に通う医館の娘・張嫣と想い合っているが、
かつての兄弟子・丁修からのゆすりに怯える日々。
真ん中の沈煉は、惚れた官妓・妙彤を何とか自由にしてやり、身請けしたい。
沈煉は、自分自身と義兄弟たちの夢を叶えるために、暗殺すべき魏忠賢と密かに取り引きを交わすが、
良かれと思ってやった彼のこの行いが、逆に3人を破滅に導くことになってしまう…。

表向きには“魏忠賢暗殺成功で一件落着”という時、3人は韓爌、趙靖忠らから酒宴に招かれ、
その席で演じられているのが、水滸伝に取材した古典劇<林冲夜奔>。
数ヶ月前に観た映画『夜に逃れて』(2009年)でもモチーフになっていたあの古典劇。
私、水滸伝をよく知らないのだけれど、<林冲夜奔>はザックリ説明してしまうと、
禁軍の教頭・林冲が、罠に嵌められ、逃亡するお話(…なのだと思う)。
つまり、あの酒席で、<林冲夜奔>が演じられているということは、
3人の義兄弟が狙われているという事を暗に示していたワケ。
(もしくは、魏忠賢に林冲を重ねているのか?)
古典に通じている人が観たら、なかなか深く、ゾゾッと鳥肌が立つ結構重要なシーンだと思う。




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3人の錦衣衛に扮するのは、年長の盧劍星に王千源(ワン・チエンユエン)
真ん中の沈煉に張震(チャン・チェン)、年少の靳一川に李東學(リー・トンシュエ)

私のお目当ては張震。文句なしのカッコよさで、満足。

王千源は、2010年、第23回東京国際映画祭で、主演作『鋼のピアノ』の演技が認められ、
主演男優賞を受賞した俳優さん。美中年ではないが、個性的な顔立ちが記憶に残る。
私の御贔屓・金城武と共演している『太平輪』の日本上陸にも期待。

李東學は、そう、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の果郡王!
そんな彼が今回演じている靳一川のエピソードこそ、司馬遼太郎の<沖田総司の恋>から着想を得た部分。
靳一川が沖田総司なら、あとの義兄二人は、自ずと近藤勇と土方歳三ということになる。
強いて言えば、兄貴分で最終的に斬首される盧劍星が近藤勇、
彼を補佐する副長的立場の沈煉は土方歳三に近いか。
いや、良かれと思って独断で行動し、結果的に不幸を招いてしまったという点では、この沈煉、
<沖田総司の恋>の中の近藤勇にも重なる。
まぁ、盧劍星、沈煉、靳一川は、あくまでも本作品独自のキャラクターであり、
そこまで新選組を意識しているとは思わないが。




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続いて悪役。演じているのは、失脚した太監・魏忠賢に金士傑(ジン・シージエ)
沈煉らに魏忠賢暗殺を命じる東廠提督・趙靖忠に聶遠(ニエ・ユエン)
靳一川をゆすり続ける彼のかつての兄弟子・丁修に周一圍(ジョウ・イーウェイ)など。

悪役では特に魏忠賢と丁修が印象に残った。

魏忠賢に扮する金士傑は、私にとっては“台湾のベテラン映画俳優”だけれど
ここ日本で今や一番知られた出演作は、大ヒットドラマ『イタズラな恋愛白書~我可能不會愛你』であろう。
陳柏霖(チェン・ボーリン)扮する李大仁のママと曖昧な関係を続ける白叔の役で出演。
今回演じている魏忠賢は、あの穏やかな白叔とはまったくの別人。
媚びへつらい大出世した男の浅ましさが滲み出ている。

丁修役の周一圍も、私が彼を知った『蒼穹の昴~蒼穹之昴』での
生真面目な梁文秀とはまるで別人のチンピラ。
ユスリやタカリを続けるこのしょーもない丁修が、最後の最後で沈煉に協力したのは、私には唐突に感じた。

ちなみに、金士傑も周一圍も、『盲人電影院』(2010年)ですでに路陽監督作品に出演済み。
『盲人電影院』は未見なので、彼らがどのような役を演じているのか不明だが、
とにかく路陽監督には気に入られ、二度目の登板となった本作品では、クセのある悪役に挑戦。


聶遠扮する趙靖忠は、正直なところ、上記の二人に比べ、存在の薄い脇キャラに感じていたが、
最後のシーンでハッとさせられた。良く言えば臨機応変、悪く言えば風見鶏。
まさか衰退の一途を辿る明に見切りを付け、金(後の清)に寝返るとはねぇー。

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 帽子を取ったらすでに満州族仕様の辮髪だったから、ビックリ。
一体いつの間に前頭部を剃ってスタンバッていたのだか。満州語らしき言語まで習得済みであった。




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女性の出演者は、沈煉が想いを寄せる官妓・周妙彤に劉詩詩(リウ・シーシー)
靳一川と密かに想い合う医館の娘・張嫣に葉青(イエ・チン)
『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』の親友コンビ、若曦&玉檀でございます。

『宮廷女官 若曦』では、誠実な⑭様に尽くされながら、「④様、④様…」と叶わぬ恋に執着し
私をイラッとさせた“若曦”こと劉詩詩。
少しは成長したかと思いきや、本作品でも、「嚴公子、嚴公子…」と嚴家の御曹司に御執心で、
一途に愛してくれる沈煉には目もくれない。
張震(沈煉)、こんな女のために危険を冒さず、サッサと逃げてーっ…!と心の中で叫んでしまった。

葉青は、玉檀を演じた『宮廷女官 若曦』で、
巨大セイロで蒸し殺されるという最期があまりにも強烈だったため、
今回もセイロか、はたまた中華鍋か…?!と殺害方法を期待、…いや、ハラハラしながら観てしまった。




歴史的背景を考えながら観ると、結構楽しめる作品。
架空の義兄弟たちの人間ドラマが主軸なので、明から清への王朝交代劇はほとんど関係無いが、
様々な混乱が、衰退していく明朝だからこそ起きているようには感じられた。
日本でも“幕末モノ”は人気だし、時代が変わりつつある頃に起きるドラマは、人を惹き付けるのかも知れない。

逆に、明朝末期という歴史的背景に興味の無い人にとっては、少々退屈かも。
宣伝に使われている“武侠アクション超大作”という表現に期待して観ると、地味に感じるのでは。

安定の存在感と実力で魅せてくれる映画俳優と、
近年テレビドラマでブレイクした新進の俳優を混在させたキャスティングもなかなか。
清宮ドラマニアが観ると、「うわっ、果郡王が玉檀とラヴラヴ!」といった
『宮廷の諍い女』『宮廷女官 若曦』のコラボが楽しいし、
逆に大陸ドラマを観ない人には、新鮮な顔ぶれに感じられるかも。



路陽監督が本作品のヒントにしたという司馬遼太郎の<沖田総司の恋>については、こちらから。

映画『インターセプション~盗聴戦』

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【2014年/中国・香港/131min.】
香港・新界。
政府は、70年代からこの地域の男性に与えてきた土地に関する優遇措置の停止を決定。
この機に乗じ、地域の開発で儲けようと目論む地元の有力者・陸瀚濤の下、
陸金強ら陸家の四兄弟は、様々な手段で土地の買い漁るりを始める。
ところが、親族の一人・陸永遠が、計画に猛反対。
手をこまねいていたところ、陸金強らと共に育った義兄弟の羅永就が、自らヨゴレ役を買って出て、
飲酒運転を装い、陸永遠を殺害し、刑務所に送られる。

5年後。
ようやく刑期を終え、これからは当然自分も土地開発の一端を担えると信じ出所する羅永就。
陸家の義兄弟たちは、そんな彼の出所を温かく祝うが、内心疎ましく感じていた。
義兄弟たちの裏切りを察した羅永就は、獄中で知り合ったハッカーの阿祖に依頼し、
盗聴器を仕掛け、彼らの言動を監視するようになるが…。



香港の麥兆輝(アラン・マック)+莊文強(フェリックス・チョン)両監督による
『竊聽風雲~Overheard 』シリーズ第3弾。


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中文原題にある“竊聽”は、やたら画数が多くて、難しい漢字ですね~。
これを日本風の漢字に直すと“窃聴”。つまり“盗聴”の意。

シリーズ第1弾『盗聴犯~死のインサイダー取引』(2009年)、
第2弾『盗聴犯~狙われたブローカー』(2011年)は、期待せずに観たら案外面白かったけれど
大好き!というほどではない。
それでも、ここまで来たら、シリーズ全作品を制覇しなければ…、という半ば義務感で、この新作も鑑賞。

もっとも、前2作を観ていなかったとしても、問題なし。
これら3作品の共通点は、“同じ3人の男優が主要登場人物を演じている”、
“物語の中で何らかの盗聴が行われる”という2点ぐらいしかない。
それぞれが独立した作品なので、一本だけ観ても大丈夫だし、
3本全て観るにしても、制作年順にこだわる必要は無い。



このシリーズ第3弾のお話は、新界の開発に乗じ、土地で儲けようとする者たちが
それぞれの欲を満たすために、他者を裏切り、腹の探り合いをし、
水面下で争いを激化させていく様子を描く“土地転がしたちの仁義なきクライム・サスペンス”!


作品冒頭、この物語を理解する上で重要な背景が説明される。
“丁”とは、華人社会で青年男子を意味する。

1972年、当時イギリス統治下だった香港の新界で、政府はこの地域に暮らす18歳以上の男子に
“丁權”と呼ばれる権利を与え、懐柔策をとる。

これは、700平方フィート以下の土地に、3階建てまでの家屋を建てる場合、
政府に払う地代が免除されるというもの。

こうして建てられて家屋は“丁屋”と呼ばれ、今では約20万戸に及ぶ。


本作品は、このような事情で増え続けた新界の小さな丁屋を片っ端から次々と買い上げ、
土地開発でボロ儲けしよう!と目論む者たちそれぞれの欲と利己がエスカレートすることで起きる
衝突を描いている。




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シリーズ3作品全てで主要登場人物を演じている男優は3名。
今回は、劉青雲(ラウ・チンワン)が陸家の兄貴分・陸金強、
古天樂(ルイス・クー)が陸兄弟たちと一緒に育ち、5年前に邪魔者・陸永遠の殺害を引き受けた羅永就、
吳彥祖(ダニエル・ウー)が羅永就の復讐を補佐するハッカー・阿祖をそれぞれ演じる。


『男はつらいよ』のように、同じ俳優が同じ役を演じ続け、
物語のシチュエーションだけを変えていくのが、一般的なシリーズものだが、
前述のように、『竊聽風雲 』シリーズでは、3名の男優が扮する役の設定が、3作品でバラバラ。
一般的なシリーズものの場合、観衆はすでに主人公の人となりを把握しているから、
行動パターンが読める安心感があったり、感情移入もし易いかも知れない。
そういうものとは性質が違う『竊聽風雲 』シリーズの楽しみは、
“お決まりの俳優がみせる一作一作で異なる別の顔”を堪能できる点だろうか。

私の贔屓は劉青雲だけれど、このシリーズで一番のカメレオンだと思ったのは古天樂。
第1弾で演じているのは、貧乏子沢山な上、重病に冒され、余命僅かと知った踏んだり蹴ったりの刑事。
家族にお金を残したくて、株に手を出すが、事情を知らない妻が「なんで株なんかやるの!
うちにはそんな余裕はないのよ!」と激怒し、子供を連れ、家を飛び出してしまう。
バタン!と閉められたドアの前で、ズボンがズリ落ちたままの姿で立ち尽くすトホホな古天樂が忘れられない。
第2弾では一転して、髪に混ざる白い物がダンディなエリート刑事。
…なのに、不出来な妻が株の不正取引に手を染めたため、自ら逮捕したという輝かしくない過去あり。
そして、この第3弾では、義兄弟たちのために、自ら手を汚したにも拘わらず、
口先ばかりの感謝で、疎まれ、儲け話の仲間から外された男。
古天樂が演じた3役の共通点を強いて挙げるなら、家族思いのパパだろうと、エリートだろうと、
土地転がしのチンピラだろうと、どこかにちょっとした情けなさが漂っている点。だからどの役も憎めない。



この3人以外の脇の俳優たちの中にも、実は前2作に出演している人が多い。
(香港映画ファンにとっては、お馴染みの俳優を拝める楽しさもあるだろうけれど、
人材不足で、同じ俳優を使い回しせざるを得ない実情も見え隠れ。
香港映画界は、中高年男優が充実しているため、オヤジ好きな私には問題ないが、
もっと若手が育っていかないと、将来マズイことになるのでは…?)

中でも気になるのは、3作品全てに出演している方中信(アレックス・フォン)
今回演じているのは、陸家4兄弟の陸永富。
方中信は、特徴が無いのが特徴であり、特別二枚目でもなければ、不細工でもない
“フツー”としか形容できない顔立ちで、フツーの男を演じられる貴重な存在だと思っていたが、
今回の方中信はぜんぜんフツーじゃないっ…!だって…

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まるでグレた大木凡人!この髪、まさか地毛ではないわよねぇ…?!
最初の内はサングラスをかけているし、誰だかまったく気付かなかった。
こういうサラサラなマッシュルームヘアは、盧廣仲(クラウド・ルー)、豬哥亮(ジューガーリャン)といった
台湾芸能人の専売特許のように思ってしまいがちだけれど、思い起こせば香港だって、
成龍(ジャッキー・チェン)も洪金寶(サモ・ハン・キンポー)も、昔はこのような髪型であった。




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女性陣では、陸家の長老・陸瀚濤の娘、陸永瑜に葉璇(ミシェル・イェ)
轢き殺された陸永遠の未亡人・阮月華に周迅(ジョウ・シュン)
あと、大木凡人、…もとい陸永富の浮気妻でチラッとだけ黃奕(ホアン・イー)等、こちらは大陸出身女優多し。

女子の部で注目はやはり周迅。
麥兆輝&莊文強監督作品への出演は『サイレント・ウォー』(2012年)に続き2度目だが、
前作は大陸のお話なので、香港度の高い作品は今回がお初。
しかも、昨今の香港映画に有りがちな“大陸人in香港”を演じているのではなく、地元民に扮している。
台詞は当然広東語。随分本人の声に似たハスキーな声優を探したなぁ~と感心したが、
クロージングに声優名がクレジットされていない。見落としたのだろうか。
気になって、帰宅後ちょっと調べたら、北京語版も広東語版も、周迅本人が声を当てているようだ。
へぇー、周迅、広東語ができたのですね。
「北方の訛りが出ている」などという意見もあるようだけれど、どうせ私には分からない。
(そもそも、“香港人と結婚し、香港に長く暮らす内に広東語を覚えた大陸人”という設定かも知れないし。)
なにより、これまでずっと吹き替えが当たり前とされてきた中華電影界に、
“声優に任せず俳優本人がやる”という変化が見えてきたのが嬉しい。
声も俳優の一部だし、喋り方も演技の一部。やはり俳優本人の声が聞きたいもん。


大陸の俳優では他に男性では黃磊(ホアン・レイ)も出ているが、
こちらは大陸の実業家・萬山の役で、台詞は北京語。
この前に観た黃磊出演作が、2009年度作品『夜に逃れて』だったため、
この数年の間にどっと進んだオッサン化を目の当たりにし、軽く驚いた。





タイトルにもなっている盗聴戦には、特別ハラハラさせられることは無かった。
…と言う以前に、“盗聴”より“盗撮”の印象が強い。
あんなにあちらこちらに隠しカメラを設置できるものだろうか…?

全体のざっくりした感想は、前2作と同じで、大好き!というほどではないけれど、まぁまぁ楽しめた。
ストーリー展開に夢中にさせられたというより、日本ではほとんど語られることのない新界の“丁權”や
それにまつわる社会問題を取り上げている点に引かれた。
女性が強いという印象がある香港で、何百年も前ならいざ知らず、近年に、
明らかに男性のみを優遇した措置が堂々ととられていたのは、ちょっとした驚き。
また、「土地は農作をするところで、売買するものではない」という台詞は、
ここのところずっと問題になっている香港の地価高騰に対する苦言と感じた。

あとねぇ、日本語字幕で、人物名を片仮名で表記する悪習は、ホント、もういい加減やめて欲しい。
特に最近の香港映画は、広東語と北京語のチャンポンが多く、同一人物が2ツの発音で呼ばれるから、
耳から入って来る音と、目で見る片仮名表記にかなりのズレがあり、益々紛らわしい。
このような日本語字幕にしても、ダサい横文字邦題にしても、失望させられっ放し。
香港映画を手掛ける日本の配給会社は頭が古く、趣味も悪すぎる。
無意味なコダワリなら、サッサと捨てた方が良い。

鈴懸のお菓子2種(+第50回金鐘獎ノミネート作品)

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遅ればせながら、2015年8月26日に発表された“台湾版エミー賞”、
第50回金鐘獎 Golden Bell Awardsのノミネート作品一覧に目を通してみた。

数多くある部門の中で、日本人が注目するのは
長編ドラマや、それらに関わった俳優、監督に贈られる賞であろう。

【戲劇節目獎(長編ドラマ賞)】
『16個夏天~The Way We Were』
『C.S.I.C鑑識英雄~Crime Scene Investigation Center/i Hero』
『僕らのメヌエット~妹妹』
『出境事務所~Long Day's Journey into Light』
『新丁花開~Brave Forward』

【戲劇節目男主角獎(長編ドラマ主演男優賞)】
吳慷仁(クリス・ウー/ウー・カンレン) :『出境事務所』
周孝安(チョウ・シャオアン) :『C.S.I.C鑑識英雄』
楊一展(ヤン・イーチャン ):『16個夏天』
藍正龍(ラン・ジェンロン) :『僕らのメヌエット』
藍葦華(ラン・ウェイホア) :『新丁花開』

【戲劇節目女主角獎(長編ドラマ主演女優賞)】
朱芷瑩(チュウ・チーイン) :『新丁花開』
林心如(ルビー・リン) :『16個夏天』
黃姵嘉(ホアン・ペイジア) :『出境事務所』
楊可涵(ヤン・コーハン) :『新世界~The New World』
蔡淑臻(ジャネル・ツァイ) :『C.S.I.C鑑識英雄』

【戲劇節目男配角獎(長編ドラマ助演男優賞)】
朱剛(ジュー・ダーガン) :『新世界』
李天柱(リー・ティエンジュー) :『三寶要回家~San Bao Wanted To Go Home』
張少懷(チャン・シャオファイ) :『徵婚啟事~Mr. Right Wanted』
謝佳見(メルヴィン・シア) :『16個夏天』
蘇達(スー・ダー) :『C.S.I.C鑑識英雄』

【戲劇節目女配角獎(長編ドラマ助演女優賞)】
李依瑾(ジーン・リー) :『新世界』
林雨宣(リー・ユーシュエン) :『出境事務所』
苗可麗(ミャオ・カーリー) :『幸せが聴こえる~聽見幸福』
許瑋(ティファニー・シュー) :『16個夏天』
謝瓊煖(シエ・チョンヌアン) :『出境事務所』

【戲劇節目導演獎(長編ドラマ監督賞)】
李志薔(リー・ジーチャン) :『新丁花開』
陳戎暉(チェン・ロンフイ) :『僕らのメヌエット』
許富翔(シュウ・フーシャン) :『16個夏天』
許肇任(シュウ・ジャオレン) :『出境事務所』
孟傑(ライ・モンジエ)/張修誠(チャン・シウチェン) :『C.S.I.C鑑識英雄』

【戲劇節目編劇獎(長編ドラマ脚本賞)】
杜政哲(ドゥ・ジェンジャ)/盧慧心(ルー・フイシン)/楊文(ヤン・フイウェン)/李松霖(リー・ソンリン)
:『16個夏天』
呂蒔媛(ルー・シーユェン) :『出境事務所』
吳繁(ウー・ファン)/莉芬(ダン・リーフェン)/米(ヘイミー)/陳嘉振(ちん・かしん/チェン・ジアジェン)
:『C.S.I.C鑑識英雄』
徐譽庭(シュー・ユーティン):『僕らのメヌエット~妹妹』
黃志翔(ホアン・ジーシャン):『新世界』


台湾ドラマ界は今年結構な当たり年らしいが、2ヶ月ほど前に読んだ芸能記事によると、
例年5月末の金鐘獎出品締め切りを、今年は一ヶ月繰り上げたことで、
『哇!陳怡君~Youth Power』、『長不大的爸爸~Baby Daddy』、『春梅 HARU』、『戲金戲土』、
『一把青~A Touch Of Green』といった受賞の期待がかかる話題作の多くは、
この締め切り期限に間に合わず、全て来年の第51回金鐘獎へ持ち越されるため、
今年はうら寂しく、来年は豊作で盛り上がることが予想されるという。

上記の話題作の内、『戲金戲土』、『一把青』は現地でまだ放送さえされていないが、
取り分け、今年12月に公視で放送開始予定の『一把青』は、私好みのドラマなのではないかと期待。
これは、白先勇(バイ・シエンヨン)の短編小説を曹瑞原(ツァオ・ルイユェン)監督がドラマ化した作品。
そう、私も大好きな文芸作品『ニエズ~孽子』のコンビ。
未だに『ニエズ』を超える台湾ドラマには、なかなか出逢えないでいるし、
『一把青』も絶対に観たいっ!(…が、日本に入って来る可能性は限りなく低い。)



話を今年の金鐘獎に戻すと、リストに目を通した限り、確かに全体的に地味な印象がある。
候補に挙がっているものの内、日本に入ってきているのが…

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『僕らのメヌエット』と『幸せが聴こえる』の2作品だけだから、余計にそう感じるのかも知れない。

『僕らのメヌエット』は、趣味の合う友人Mのお墨付き。きっと自分好みだと直感していたが、益々観たくなった。
アジアドラマチックTV以外でも、そろそろ放送して欲しいわぁ~。
このドラマで若干気になる点を挙げるなら、(この度、金鐘獎の候補者リストを見直していて気付いたのだが…)
監督が、『逆転!赤ずきん~大紅帽與小野狼』の陳戎暉(チェン・ロンフイ)だったのですね。
『赤ずきん』は、ホント、つまらなかった。
徐譽庭の脚本が有れば、あんなドラマを撮る監督でも、名作を撮れるということなのだろうか。

現在ホームドラマチャンネルで放送中の『幸せが聴こえる』の方は、今のところ良さが分らず。
(この先も、良さが分る日が来る気がしない。)
女性主人公・禹希の母親を演じている苗可麗(ミャオ・カーリー)が
助演女優賞にノミネートされているという事は、今後物語の中で彼女の存在が大きくなっていくのだろうか。



ちなみに、今年の金鐘獎で最多の8部門でノミネートされたドラマはこちら(↓)

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『新丁花開』。世代の異なる3人の女性が逆境に立ち向かっていく姿を描く社会派時代劇らしい。
主演女優賞にノミネートされている朱芷瑩(チュウ・チーイン)は舞台出身で、
日本ではあまり知られていないが、実は『ラスト、コーション』に湯唯(タン・ウェイ)の友人役で出ていたり、
主演作『シャングリラ』がNHKアジアフィルムフェスティバルで紹介されている。

最多ノミニー『新丁花開』以下は、7部門ノミネートが『16個夏天』と『出境事務所』、
6部門ノミネートが『C.S.I.C鑑識英雄』と続く。
いわゆる“偶像劇”と呼ばれる物でノミネートされているのは『16個夏天』と『僕らのメヌエット』くらいで
あとは文芸作や社会派のドラマが強くなってきているのも特徴。

今回ノミネートされている日本未上陸のドラマで、今後入ってくる可能性があるのは、
日本でもそこそのに知られた林心如(ルビー・リン)主演&プロデュースで
商業性のある偶像劇『16個夏天』くらいではないだろうか。
私自身が偶像劇に飽きてきているのと同じように、台湾ドラマ界の偶像劇離れも今後さらに進むと思うので、
日本の配給会社もそろそろ偶像劇への執着を捨てて、
もっと見応えのあるドラマを入れるように軌道修正してほしいワ。


さらにもう一つ、今回の金鐘獎では…

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今年7月、27歳の若さで、自ら命を絶ってしまった楊可涵(ヤン・コーハン)が 
『新世界』の演技で主演女優賞にノミネートされており、残り4人の女優が故人と賞を競うことも話題。



このような第50回金鐘獎、結果の発表は9月26日(土曜)、國父紀念館で行われる授賞式にて。




話変わって、ここ日本のテレビでは、9月5日(土曜)のTBS『世界ふしぎ発見!』
“立川志の輔が覗いた夢と可笑しみの国 シンガポール”というシンガポール特集。
志の輔とシンガポールなんて、縁もゆかりも無いように思うが、
実はあちらで落語会を開き、毎年訪れているらしい。
そんな志の輔が、ミステリーハンター宮地眞理子と共に、今年独立50年を迎えた同地を訪れ、
8月9日の独立記念日のイベント他、シンガポールの魅力をレポするようだ。

翌、9月6日(日曜)のNHK BSプレミアム『桃源紀行~君住む街で』
再放送だけれど、久々に中国を取り上げる回で、今回スポットを当てるのは重慶。
地元の川劇女優が街案内するもので、なんとなく記憶に残っているけれど、
詳細はすっかり忘れているので、新作を観る感覚で楽しめるであろう。




今週、もう9月に突入するなんて信じられない。
つい最近まで“猛暑”なんて言っていたのに、確かに最近の東京は半袖では肌寒く、秋の訪れを感じる。
そんなわけで、お菓子も、過ぎゆく夏の物と、近付く秋の物をそれぞれひとつずす鈴懸(公式サイト)から。

★ 葛焼

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大きさは、大体長さ4センチ×幅3センチ×厚み2.5センチ。
こし餡を練り込ませた本葛を蒸し固め、米粉をまぶし、表面を焼いたお菓子。




ひとつめは“葛焼”
これ、以前にも食べたことがあるはず。
でも、以前は丸かった。いつの間にか、小さなマッチ箱のような形に変えたようだ。

“葛版の金つば”とでも言おうか。餡子の代わりに葛を使い、金つばのように、表面を軽く焼いたお菓子。
うーん、“和風焼きゼリー”って感じかしら。
澱粉質っぽい物の表面を焼いているという点では、香港辺りで春節に食べる“年糕”にも少し近いかも。

本葛は、南九州産の物を使用。
そこに、こし餡が練り込まれているらしい。
プルンとした食感で、ほんのり甘い。
ただ、色が白っぽいし、味もさり気ないので、説明されないと、まさかこし餡が練り込まれているとは思わない。

良く言えば上品、悪く言えばボケた味。
私は、クセがあったり、ハッキリした味の物が好きな反面、
すあまとか軽羹のような、今ひとつパンチがない地味な和菓子も好きなので、これも結構好き。
ただ、あっさり味だし、小さいから、食べ応えはまったくない。

★ 山椒餅

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大きさは、直径約4センチ。
山椒を混ぜ合わせた道明寺でこし餡を包んだお菓子。




続いて、鈴懸、秋の限定品、“山椒餅”

店頭に並び始めた頃から気になっていた商品だが、
母が「私も気になって質問したら、道明寺のおまんじゅうの上に
山椒がパラパラっと振りかけられているだけと店員さんに説明された」と言うから
それだけでは、あまりにも芸が無いツマラナいお菓子だと思い、以後、購入を保留。
でも、やはり気になり、ついに食べてみた。

結果から言うと、母の情報はガセであった。
山椒は上部にパラパラだけでなく、ちゃんと道明寺にも混ぜ込まれており、
よく見ると、所々に緑色の点々がある。
何も知らないと、カビが生えたと勘違いする人もいるかも。

山椒は高知県仁淀の物、道明寺は佐賀県産ヒヨクモチを使用。
口にすると、明らかに山椒特有の清涼感がある。
たまに、やや大粒な山椒に当たると、ピリッ!

中に包まれているのは、鈴懸定番の上品なこし餡で、山椒との甘辛コンビが抜群。
塩キャラメルなどと同じで、甘味にちょっとしたアクセントが加わることで、味にグッと奥行きがでる。


山椒を使った和菓子といえば、京都・鍵善良房の“岩山椒”が好きだけれど
またひとつ好きな山椒和菓子が増えた。
母の誤報など信じず、もっと早く買って食べれば良かった~。
文句のつけようの無いお菓子だが、サイズが小ぶりなのは、ちょっと気になる。
桜葉餅、大葉餅など、道明寺を使った鈴懸の他の商品より、ひと回り小さい。
鍵善良房の“岩山椒”もプチサイズだし、クセのある山椒を使った和菓子は、
そう沢山食べられるものではないという考えで、敢えて小さくしているのかしら。
もしそうなら、私にはそのセオリーは通用しない。
山椒入りでも、私はガンガン大量に食べられてしまいます。

蔡國強展:歸去來

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7月の開幕以来、ずーーーっと行こう行こうと思いながらも、
横浜まで出向くのがどうも億劫で、ズルズル先延ばしになっていた
蔡國強、日本で久々の大規模個展、<歸去來(帰去来)~There and Back Again
この度、ようやく重い腰を上げ、行って参りました。
母も行くというので、今回は珍しくお供を連れての美術鑑賞。

★ 蔡國強 Cai Guoqiang

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蔡國強(ツァイ・グオチャン/さい・こっきょう)は、1957年生まれ、中国福建省泉州市出身の芸術家。
1985年、上海戲劇學院の舞台美術系を卒業後、1986年から1995年までを日本で過ごし、
現在は、アメリカ・ニューヨークを拠点に活動。
古代中国四大発明のひとつ、火薬を使った作品で取り分け有名。


蔡國強?誰、それ??という人でも…

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2008年、北京オリンピック開幕式の花火は記憶にあるのでは。
北京五輪開閉幕式ヴィジュアルディレクターを務め、あの花火のド派手なパフォーマンスを行ったのが蔡國強。
(北京五輪のスタジアム“鳥巢(鳥の巣)”を見ると、東京の新国立競技場問題を思い出し、ワナワナしてくる。
巨大スタジアムの“相場”なんて知らなかったけれど、
鳥の巣の総工費は約4百億円で、日本よりずっとお手頃価格だというではないか。
鳥の巣だって、そこらの建築家見習いが設計したわけではない。
ヘルツォーク&ド・ムーロンが手掛けた立派な“ブランドもん”ですから。
あまりにもズサンな日本の公共事業計画に、イライラが募る。…やたら長い余談になりましたが。)



世界各国で展覧会を開催している蔡國強であるが、
行く先々で、その土地の文化を取り入れたり、人々との交流を通し、作品を創り上げていくことも多い。
今回の横浜美術館の展覧会でも、そのように現地で創作された作品も展示されている。

★ 蔡國強展:歸去來 @ 横浜美術館

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私、もしかして、みなとみらい線に乗ったの初めてかも。
少なくとも、“MARK IS みなとみらい”などという商業施設にはこれまで立ち寄ったことがない。
横浜美術館は、みなとみらい線・みなとみらい駅の3番出口を出たら、
MARK IS みなとみらいを抜け、もうすぐ目の前。予想していやよりずっと便利な場所。
建物の設計は丹下健三。



建物正面のエントランスから中へ足を踏み入れると…

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ホールの奥にドーンッと蔡國強の新作<夜桜>
蔡國強によると、桜の開花の瞬間の力強さと儚く散る潔さは、火薬に通じるという。なるほど。
本作品は、高知県で生産される大判の和紙を使い、市民や学生のボランティアと共働で制作。
淡く黄味がかった色合いは、鶏冠石の粉末を火薬に混ぜた効果なのだと。

線に繊細さがありながら、火薬で描かれたもの特有の瞬発的なエネルギーや偶発的な面白みを感じるし、
縦8メートル×横24メートルと、文字通り“大作”なので、近くで観るとこちらに迫って来るような迫力がある。

この作品は、まさにこのホール内で制作されたらしい。
火薬を爆発させ、煙がもくもくと立ち上る、制作工程を収めた映像も面白かった。




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この作品は、2階のバルコニーからだと全体が見渡せる。


ちなみに、写真撮影は、エントランスホールのこの<夜桜>のみOK。
(<夜桜>も自撮り棒を使っての撮影は禁止とのこと。)



会場内に入ると、<夜桜>以外にも、この場でドッカーン!もくもく!と制作された新作あり。
<人生四季>は、江戸時代の浮世絵師・月岡雪鼎(1726-1787)の春画<四季画巻>から着想を得た作品。
これまでの火薬絵画は水墨画を彷彿させるモノトーンであったが、
この作品では、鮮やかな色彩を用いるという新たな試みが行われている。

★ 壁撞き

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この展覧会へ足を運ぶ多くの人々のお目当ては、恐らくこの<壁撞き~撞牆 Head On>であろう。
2006年、ドイツで発表された作品で、日本公開は初めて。
ポスターやチケットにも使われている本展覧会の目玉作品。


ベルリンの壁とほぼ同じ高さのガラスの壁に向かって行く99匹の狼のレプリカで構成された作品。
蔡國強曰く、「目に見える壁は簡単に壊せるが、目に見えない壁を壊すのは難しい」

狼は“共同体意識”、“英雄精神”、“勇気”、
99という数は“連続性”、“完結を知らずに先頭を進む”ことを意味。
ふたつ重なる“9(jiŭ)”という数字をそのように捉えるのは、中国人らしい発想。


この<壁撞き>、お触りは勿論不可だが、作品の中に入ることは問題なし。
狼と狼の間を縫うように歩いたり、頭上を飛び交う狼たちを下から見上げてみたり。
見る場所によっても、受ける印象が変わってくる。
平面でした見たことがなかった作品を、こうして立体として間近で見て、
しかもその空間に入り込んで体感すると、想像では分らなかった感動が味わえる。

★ 春夏秋冬

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でも、私が<壁撞き>以上に観たかった作品は
こちらの比較的新しい2014年の作品、<春夏秋冬~Spring, Summer, Fall, Winter>
上の画像では、どこがそんなに良いのか、そんなに凄いのか、まったく伝わらないであろう事が残念でならない。

この<春夏秋冬>は、蔡國強の故郷・福建省の磁窯、化窯の職人との共働制作。
化窯は、宋代に始まり、明代に発展した歴史ある白磁の里で、
“化白瓷(化白磁)”と言えば、特に仏像などの彫塑白磁が有名。



<春夏秋冬>は、四季を表現した4ツのレリーフのような物で構成された作品。
それぞれ60枚のタイル状の白磁から成り、春は牡丹、夏は蓮、秋は菊、冬は梅をメインに季節を表現。

蔡國強が手を加える前の真っ新な白磁の時点ですでにスゴイ。

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繊細なレースのように柔らかに表現された花弁が、実は硬い白磁だなんて信じ難い。
どんなに小さな花にも、中央には雄蕊や雌蕊が配され、細部までリアル。
化窯の職人の超絶ワザだけでも見る価値あり。


これだけでも充分スゴイ化白磁を、蔡國強は…

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有ろうことか、火薬でドッカーン…!蔡國強ってば、一体何を考えているのでしょうか…?!
もっとも、これをやらないと蔡國強作品にならないのだけれど(笑)。

そのままでも恐ろしく美しい化白磁の<春夏秋冬>だが、
火薬の効果でさらに奥行きが出たり、空気の流れのようなものまで感じられるようになっているし、
グレーの濃淡が水墨画のような味わいを醸し、古典的でありながらモダン。非常に洗練された作品。
不思議なのは、あれだけドカン!とやっておきながら、白磁が割れたり欠けたりしていないことだ。


<春夏秋冬>の中で、私が取り分け好きなのは蓮をメインにした<夏>。
左上部には、荔枝(ライチ)のような果実がたわわに実り、
右下方には、<春>のおたまじゃくが成長してカエルになっている。


細部まで凝っていて、観ていてまったく飽きない。
写真でしか知らなかった時から、絶対に自分好みの作品だろうとは思っていたけれど、
実物は想像していた以上に素晴らい。
中国伝統工芸の匠が産み出す超絶技巧と、現代芸術家・蔡國強が発する感性の融合に、感激の極み。
本展覧会で私の一押しは、<壁撞き>を差し置き、こちら。
この手の作品が好きな人には、是非ぜひ会場で実物を観て、私と同じ感動を得てもらいたいわー。

★ 横浜美術館コレクション

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蔡國強展の作品は(ヴィデオ・インスタレーションなども有るが)、
基本的に一点一点が大きく、総出展数は決して多くはない。
蔡國強展のチケットで、横浜美術館コレクションも見学できるので、ついでにそちらも観てきた。

全体的には、一貫性より“何でも有り”という印象を受けた。
(↑)画像、上の右側に写っているのはダリ、下左はイサム・ノグチ、そして下右のカラスは吉村益信。



(↓)こんな作品もあった。

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近代日本を代表する彫刻家・平櫛田中(ひらぐし・でんちゅう)の<陶淵明(帰去来)>
1946年制作の、彩色した木彫作品。
陶淵明(365年-427年)は晉代の文学者。
晉安帝義熙元年(405年)、29歳から13年イヤイヤ務めた役人生活に見切りを付け、
故郷の田園に帰る心境を綴った<歸去來辭(帰去来の辞)>の一節、
“歸去來兮(帰へりなん、いざ)”が、蔡國強展のタイトルに由来しているとのことなので、
もしかしてこの特別展に合せ、この木彫も展示したのかしら。

★ ミュージアムショップ

ミュージアムショップで売られている蔡國強展関連商品では、
角度によって爆発の光景が楽しめるレンチキュラー印刷のポストカードを取り敢えず一枚だけ購入。


これは果たして買う人が居るだろうか?と思ったのは…

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狼のぬいぐるみ。
別に蔡國強に関係無く、おもちゃ屋さんでフツーに売られているぬいぐるみなのではないかと思ったが、
ちゃんと見えない壁に手をついているようなポーズをしている狼も居た。

★ 横浜中華街

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せっかく横浜まで行ったのだから、美術鑑賞の後は中華街へ。
みなとみらい線・元町中華街駅ができ、随分行き易くなった。
美術館があるみなとみらい駅からは所要時間5分程度。

せっかく久々の中華街なのに、牌樓が修復中で、
到着早々、工事現場のようなブルーシートが目に飛び込んできたのは、ちょっぴり残念。

その牌樓をくぐり、すぐの所に、すしざんまいができていたのにも、少々気分を削がれた。
日本人より、中華街を訪れる中国人観光客を当て込んでいるのかしら。


しかし、そこを過ぎれば、中は毎度の中華街。

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工事現場などに置かれる安全柵がパンダだったり、自販機コーナーになぜかめでたく“囍”マーク。
キッチュで中華街らしくて、散策も楽しい。

★ 菜香新館でランチ

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今回は母も一緒だったので、菜香新館でしっかりお昼もとることに。
これまでにも何度か利用したことがある最上階は、その日貸し切りだったため、2階へ。
その貸し切りの都合でか、お得なランチセットもその日は提供が無かったので、
点心類を中心にアラカルトで注文。




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どの点心も基本的に2個ずつなので、母と二人で分け合うのに好都合であった。
特に美味しかったのは、お餅のような生地で具を包み揚げたお馴染みの点心・鹹水角、
エビを皮で包み揚げ、お好みでマヨネーズを付けていただく威化明蝦捲、
蓮の葉で蒸し上げたおこわ金牌糯米雞。


ガッツリもち米を食べたせいで、おなかがパッツンパッツンになってしまったが、
それでも締めに何かしら甘い物が欲しくて、ココナッツ団子をオーダー。

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ココナッツをたっぷりまぶしたお餅の中に包まれている餡には、胡麻や胡桃も入っている。
ほんのり温かだから、お餅が柔らか。




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お店を去る前、1階エントランス脇の売店で、お持ち帰り用で包子なども購入。





蔡國強に中華街。
滅多に行かない横浜を満喫した一日であった。満足、満足。
(強いて言えば、ランチの後、本当は悟空でお茶をしたかったのに、
おなかがいっぱい過ぎて、断念したのが残念。)



◆◇◆ 蔡國強展:歸去來 Cai Guo-Qiang:There and Back Again◆◇◆
横浜美術館 Yokohama Museum of Art

会期:2015年7月11日(土曜)~10月18日(日曜)

10:00~18:00(木曜休館)

みなとみらい線・みなとみらい駅 3番出口から徒歩3分

映画『僕たちの家(うち)に帰ろう』

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【2014年/中国/103min.】
巴特爾と阿迪克爾は、裕固族の兄弟。
両親が放牧する土地を求め、奥地に移住してしまったため、
兄・巴特爾は祖父の家に預けられ、弟・阿迪克爾は学校の寮に入れられている。
明日から夏休みという学校最後の日、同級生たちは父親に連れられ寮を離れていくのに、
阿迪克爾には迎えがなく、ひとり残されてしまう。
そこで阿迪克爾は、嫌がる兄・巴特爾を説得し、
二人で駱駝に乗って、大草原のどこかに居る両親を訪ねる旅に出るが…。



昨年、第27回東京国際映画祭コンペティション部門に選出され、
『遥かなる家』という邦題で上映された李睿珺(リー・ルイジュン)監督作品『家在水草豐茂的地方』。
映画祭でしか上映されない地味な作品だと思っていたら、
意外なことに、『僕たちの家に帰ろう』と名を変え、一般劇場公開の運びとなったので、有り難く鑑賞。

ちなみに、李睿珺監督は、1983年甘肅省生まれ。
近年、監督作品が海外の映画祭で紹介され、注目されつつあるようだが、私は一本も観たことがない。

李睿珺監督作品は知らなくても、プロデューサー方勵(ファン・リー)が過去に手掛けた作品なら観ている。
婁(ロウ・イエ)監督作品『天安門、恋人たち』(2006年)、
『ロスト・イン・北京』(2007年)、『ブッダ・マウンテン』(2011年)といった李玉(リー・ユー)監督作品等々。
最近では、作家・韓寒(ハン・ハン)の初監督作品『いつか、また』(2014年)をヒットさせている。
こうしてタイトルを挙げてみると、結構私の好みを突いてくるプロデューサーだと分る。
この『僕たちの家に帰ろう』はどうでしょう。



本作品の舞台は河西走廊(河西回廊)

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河西回廊とは、黄河以西、甘肅省の蘭州、武威(涼州)、張掖(甘州)、酒泉(肅州)、
敦煌(沙州)、安西(瓜州)にまたがる一帯のこと。


主人公は裕固(ユグル)族の幼い兄弟。
裕固族は、その多くが甘肅省を居住とする回鶻(ウイグル)人の末裔。
かつて強大な王国・甘州回鶻(甘州ウイグル王国)を築きながらも、西夏に敗れ、離散し、
時代の流れの中で人口を減らしていった民の子孫。
1953年に“裕固”の名称で正式に少数民族に指定され、現在ではもう14000人程しか残っていないという。


物語は、そんな裕固族の幼い兄弟、巴特爾(バタール)と阿迪克爾(アディカー)が、
夏休みに、ラクダに乗って、離れて暮らす両親を訪ねる旅をするロード・ムーヴィ

少数民族のちっちゃな兄弟、夏休み、エキゾティックな河西回廊の風景、移動手段はラクダ…、
と作品のキーワードを並べると、雄大な大自然を背景にした心温まるほのぼの珍道中が頭に浮かぶ。

ところが、いざ蓋を開けてみたら、ぜんぜんほのぼのしていなーい…!
それどころか、主人公の兄弟間には確執があり、ギスギスしているではないか。
旅の目的は親に会うことだが、そもそも幼い子供が親と離れて生活していること自体ワケあり。

その“ワケ”とは?
政府の農業政策のシワ寄せで、草原地帯の水が干上がり、砂漠化が進むにつれ、
遊牧民は草地を求め、大陸の奥へ奥へと移動せざるを得なくなっているという現実が。
兄弟の両親も例外ではなく、子供を街に残し、奥地へ行くことを余儀なくされているワケ。




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出演は、祖父の家に預けられている兄・巴特爾に郭嵩濤(グオ・ソンタオ)
学校の寮で生活する弟・阿迪克爾に湯龍(タン・ロン)

兄弟役は地元の子供を起用。
さすがは地元っ子、なんだかよく分からない言葉を喋っているわ、…と思っていたら、
実は古い突厥(テュルク)語は、今や裕固族でさえも喋れる人がほとんど居なくなっているという。
そこで、喋れるお年寄りに発音してもらった台詞を録音し、子役に聞かせて覚えさせるという
結構面倒な作業があったようだ。

物語の中で、この兄弟は普段一緒に暮らしていない。
兄は様々な事情で祖父の家に預けられ、弟は学校の寮で暮らしている。
弟は、洋服でも何でも兄が優先され、自分にはお古しか回ってこないと兄を恨み、
兄は兄で、弟ばかりが大切にされ、自分は要らない子なのだと卑下し、弟を嫌っている。
よくある兄弟間の対立である。
ただ、ちょっとした子供の喧嘩でも、厳しい環境の中では命懸け…!
残り僅かな水を奪い、相手をカラカラの砂漠に放置するなんて、
兄弟喧嘩のレベルを越えた体のいい殺人よねぇ…?!
物語が終わる時、兄弟がちゃんと揃って存命でいるかどうかが気になり、ハラハラさせられっ放しであった。

ちなみに、兄の名前“巴特爾(バタール)”は、裕固族と限らず、広くあの一帯を描く作品の中によく登場する。
蒙古(モンゴル)族を描いた『トゥヤーの結婚』(2006年)の主人公の夫も、
『我が大草原の母』(2010年)の主人公の息子も巴特爾であった。
蒙古語で、英雄や勇者を意味するのだとか。
甘肅や内蒙古の近辺で広く使われている、中国内陸部版“英雄(ヒデオ)”とか“勇(イサム)”みたいな感じか。



出演者は、子役のみならず大人も素人ばかり。
物語後半、兄弟が寺院に立ち寄り、ラマ僧と出会うシーンがある。
撮影は、甘肅省張掖にある本物の馬蹄寺石窟で行われているし、
ラマ僧は馬興春(マ・シンチュン)と名前がクレジットされているので、
馬蹄寺石窟のリアル僧侶に出演してもらったのかと思いきや、
実は馬興春というこのラマ僧、李睿珺監督の叔父上なのだと。
他も、そのラマ僧と同門の若い僧侶が監督の従弟だったり、
兄弟の母親役が監督の妻だったりと、一家総出で制作費削減に協力。





有りがちなほのぼのロード・ムーヴィと思わせておき、
その実、滅び行く少数民族や環境破壊を問題提起する社会派であった意外。
大都市の繁栄の影で、その恩恵を受けない地方が、負担だけをかせられている理不尽を描いている点は、
『我が大草原の母』にも少し通じる。
扱っているテーマも、スクリーンに映し出される河西回廊の風景も興味深いのに
ググッと惹き付けられる何か決定的な魅力に欠け、冗長に感じてしまったのは少々残念。
一体何が足りなかったのでしょう…?
基本的には良かったけれど、その“何か”が有れば、もっとずっと面白くなった気がしたのは、私だけか。
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