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北京2014:前門

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一向に終わらない旅の備忘録を久し振りに更新。
今回は、北京城の門前町、前门(前門)を散策。
北京の中軸線上に位置。天安門広場の南端。

★ 前門

前门(前門)は、北京の中軸線上に建つ“正阳门(正陽門)”の俗称。

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紫禁城を中心とした内城を取り囲む城壁には、“九門”と呼ばれる朝阳门(朝陽門)、崇文门(崇文門)、
正阳门(正陽門)、宣武门(宣武門)、阜成门(阜成門)、胜门(徳勝門)、安定门(安定門)、
东直门(東直門)、西直门(西直門)という9ツの城門が有り、
中でも、北京城の中軸線上に建つ、紫禁城内城南端の正陽門は重要で、正門にあたる。


この城門の歴史は約6百年前の明代に遡る。
日本では一般的に“永楽帝”と呼ばれる明朝第3代皇帝、成祖・朱棣が、
1419年(明・永楽17年)、南京から北京に遷都した際に建造した物で、当時の名称は“丽正门(麗正門)”。
1436年(明・正統元年)、“正陽門”に改称され、今に至る。
ただ、地下鉄の駅名にもなっているし、現在一般的には俗称の“前門”の方がよく使われるようだ。


この前門は、城楼と箭楼から成り…

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(↑)こちらが城楼。




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そして、城楼のさらに南側に建つ(↑)こちらが前門の箭楼。
箭楼(jiànlóu/せんろう)というのは、“箭(矢)”の字からも想像がつくように、
城楼を防御するための建造物、いわゆる“櫓(やぐら)”。
この箭楼は、城楼よりもう少し後、1439年(明・正統4年)に、都の防衛強化のために建造。
日本のお城でもしばしば見掛けるような、向かってくる敵に矢を放つための小窓が、
南、西、東の3面に、計94個開けられている。


前門で特徴的なのは、城台部に、トンネルのような通路が開けられていること。
このような通路をもつ箭楼は、九門の内、これが唯一。
ここ、かつては皇帝専用の御門だったという。今は誰でもOK。せっかくなのでここを通り抜けましょう!

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大陸時代劇を観過ぎなのか、こういう所を通ると、
内緒でお城を抜け出し、変装して庶民の街に繰り出すじゃじゃ馬お姫様の気持ちが重なる。

★ 前門大街

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「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」ではなく、「箭楼の門洞を抜けるとそこは門前町だった」。
箭楼を北側から南側に抜けると、すぐ目の前に前门大街(前門大街)という通りが現れる。

北京の中軸線上を南北に845メートル走るこの通りは、
元々は、1550年(明・嘉靖29年)、皇帝が天壇や山川壇(現・先農壇)へ赴く際の御路として建設。

明代中期、この通りの附近には、次々と様々な市ができたという。
また、北京にやって来て科挙に合格した者たちが泊まる各省の地方会館も建ち、
彼らが買い物をしたり飲食をすることで、どんどん繁栄し、一大商業エリアに発展。
さらに、清朝末期、箭楼の東西に鉄道の駅が建設されると、この地域は、北京と地方を結ぶ交通の要所に。

こうして発展していった前門大街だが、近年はいまひとつパッとしない“かつての繁華街”の様相。
そこで、政府は、北京オリンピックを控えた2004年、前門大街の大改修に着手し、
2008年8月、生まれ変わったNEW前門大街として全面開放。

2009年には、1924年、北京で初めての近代交通機関として登場し、1966年にお役目を終えた
“鐺鐺車”と呼ばれる路面電車も、ここに復活。(→画像下右)
この通りを走る唯一の乗り物で、840メートルの距離を約10分かけ、ゆっくり走行。
まぁ移動手段というよりは、遊覧電車という感じ。
(2014年9月には、この鐺鐺車とそっくりな外観の電気自動車も、
北京の名所を巡る観光車両として運行を開始したそうだ。)

★ 前門大街散策

リニューアルした前門大街は、清代末期から民国時代初期の街並みを再現した歩行者天国。
ここには我々日本人にもお馴染みの飲食店や服飾ブランドも出店してるが、
雰囲気は日本のこの手のショッピングストリートとかなり違う。



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星巴克咖啡(スターバックス)も北京ではチャイナテイスト。



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こちらもアメリカ、LA発のコーヒーチェーン、香啡缤(ザ・コーヒービーン&ティーリーフ)。
日本上陸より前に、中国に進出しております。




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スペイン発のファストファッションブランドZARA。
日本初のファストファッション、ユニクロもこの近くに出店している。




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2014年5月末にオープンしたばかりの杜莎夫人蜡像馆(マダム・タッソー)。
時間が無かったから中へは入っていないけれど、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の甄嬛や
入場料は170元(≒3200円)。
円安ということもあるが、日本のマダム・タッソーの入場料2千円に比べ、高く感じる。
入り口に佇むスティーヴ・ジョブズならタダで見放題。




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外国のお店ばかりではなく、もちろん中国のお店も。
こちら、創業1887年(清・光緒13年)創業の北京のお茶の老舗、吴裕泰(呉裕泰)。
店頭では、お茶を使ったソフトクリームを販売。緑茶味と花茶味、それぞれ6元だって。
緑茶だと、日本にも似た抹茶ソフトがあるから、花茶味の方が、より中国っぽいだろうか。
(コーンはどうやら日本の日世の物を使っているようだ。)




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日本にも進出しているレストラン全聚。1864年(清・同治3年)創業の北京烤鴨(北京ダック)の老舗。
今や北京市内だけでも何店舗もの支店をもつ一大レストランチェーンだが、本店はここ。
鶏やアヒル肉の売買をしていた楊全仁が、潰れたドライフルーツ屋・聚全の店舗を買い取り、
「倒産した店の名を引っくり返せば、悪い運気が祓える」という風水師の助言で“全聚”として開業。




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老舗のテイラー(今やアパレルメーカー)の隆庆祥(隆慶祥)の店頭。
創業者の御先祖様・袁氏が、明代、第13代皇帝穆宗(隆慶帝)にも認められる腕利きの仕立て屋で、
9代目の子孫が、清朝乾隆年間に“袁氏制衣坊”の名で開業し、以後縫製業を続けてきたが、
90年代になり、祖先の偉業を回顧し、隆慶帝にちなみ、隆慶祥と改名したそう。
店頭のこの像は、明代のお仕立ての様子を再現しているのかしら。

★ 備品

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この通りは、お店の外観のみならず、街灯、プランター、ゴミ箱など、細部までレトロ。




前門大街が修復を終え、開放されて間もない頃は、
いくら懐古趣味にしたところで、本当に古い物とは違い、ただ綺麗なだけで、
どこか薄っぺらなアミューズメントパークのように感じたが、
今回久し振りに行ったら、良い意味で少し汚れ、
ちゃんと人々の息吹がある活きた街に変化してきたように感じた。
東京もあちらこちらで再開発が行われているけれど、西洋の街並みを真似るばかりでなく、
前門大街のように、自国特有の雰囲気を打ち出せば良いのに。
お江戸情緒漂うスターバックスが有ったら、外国人観光客は勿論のこと、
日本人の間でもちょっとした話題になりそうな気がする。


私の散策は、この後、前門大街から反れ、老舗が集まる大栅栏(大柵欄)へと続く。



◆◇◆ 前門 Qianmen ◆◇◆
地下鉄2号線・前门(前門)駅下車

空を飛ぶ侠女 聶隠娘~唐宋伝奇集(下巻)より

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訳 :今村与志雄
発行:岩波書店




またまた映画のための読書。今回の映画は、こちら(↓)

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今年5月、第68回カンヌ国際映画祭・監督賞受賞のニュースを見ながら
「日本でも早く観たーい!」と公開を待ち望んでいた
台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督最新作『黒衣の刺客』(原題『刺客聶隱娘~The Assassin』)。

侯孝賢監督のお膝元・台湾での公開は2015年8月末、日本での公開は明日9月12日。
現地との差たったの2週間で日本公開とは、中華電影にしては珍しい早さ。
それでも、公開日が判った時は、まだまだ先の事だと思っていた。
この『黒衣の刺客』は、大好きな侯孝賢監督、実に8年ぶりの新作という事もあり、
原作小説を読んで映画鑑賞に備えておこうと考えていたのに、
時の経つのは速いもので、ふと気付いたら、公開がもう目前…!


そこで慌てて本書を購入し、一気読み!

★ 唐宋伝奇集:下

岩波文庫の<唐宋伝奇集>は上下巻から成り、上巻には唐代初期から唐代中期、
下巻には唐代中期から、唐代末期、宋代までの伝奇小説が収められている。

『黒衣の刺客』の原作、裴鉶(はい・けい)の<聶隱娘>は
<空を飛ぶ俠女~聶隠娘(しょういんじょう)>と名付けられ、下巻に収録されているので、
私は取り急ぎ下巻のみを購入。


下巻には、他、どのようなお話が収録されているかと言うと…
01) 杜子春
02) 杵、燭台、水桶、そして釜~元無有
03) みかんの中の楽しさ~巴邛人
04) 冥界からもどった女~斉饒州
05) 同宿の客~辛公平上仙
06) 魚服記~薛偉
07) 赤い縄と月下の老人~定婚店
08) 則天武后の宝物~蘇無名
09) 竜女の詩会~許漢陽
10) 飛天夜叉~薛淙
11) 白蛇の怪~李黄
12) 碁をうつ嫁と姑~王積薪
13) 玻璃の瓶子~胡媚児
14) 女将とろば~板橋三娘子
15) 山の奥の実家~申屠澄
16) 蒼い鶴~戸部令史妻
17) 巨獣~安南猟者
18) 鄭四娘の話~李黁
19) 嘉興の綱渡り~嘉興縄技
20) 都の儒士~京都儒士
21) 腕だめし~僧俠
22) 旁イとその弟~新羅
23) 葉限~中国のシンデレラ
24) 形見の衣~陳義郎
25) 再会~楊素
26) 崔護と若い娘~崔護
27) 麵をとかす虫~消麵虫
28) 李徴が虎に変身した話~李徴
29) 崑崙人の奴隷~崑崙奴
30) 空を飛ぶ俠女~聶隠娘
31) 女道士魚玄機~緑翹
32) 犬に吠えられた刺客~李亀寿
33) 詩人の男伊達~張祜
34) 奇譚二則~画工・番禺書生
35) つばめの国の冒険~王榭
36) 真珠~狄氏
37) 日銭貸しの娘~大桶張氏
38) 居酒屋の女~呉小員外
39) 壁に描かれた字~太原意娘
40) 怪盗我来也~我来也


…と、たっぷり40篇収録。
短い物で3ページ程度、長くても10ページ程度なので、
ちょっと時間が空いたときに一篇、また一篇と、読み易いし、
それぞれがタイプの異なるお話なので、どれかしら好きな物があり、飽きることもない。


ただ、訳注は独特。
なんと、訳注だけでも、本書の約1/4を占めるほど膨大なのだ。
単語の説明のみならず、各々の作品について、作者や作品の解説、版本、
原文をどう日本語に訳したかの説明まで記されているのが膨大になってしまっている要因で、
長い物だと訳注なのに2ページに渡ることもある。
物語の背景を深く知る上では、非常に丁寧で有益だと感じるが、
本文中に振られている訳注を示す番号に当たる度に、巻末に飛び、注を読んでいると、
文章が途切れ途切れになってしまい、物語の全体像が、まったく頭の中に入ってこないという難点が…。

★ 空を飛ぶ侠女~聶隠娘

一応全て読んだが、ここには当初、本書を購入した目的であった映画『黒衣の刺客』の原作、
裴鉶(はい・けい)作の<空を飛ぶ俠女~聶隠娘(しょういんじょう)>についてのみ記しておく。


物語はザッと以下の通り。
聶隠娘は、唐代、貞元(785-805)の頃、魏博節度使の大将をしていた聶鋒の娘。
それは10歳の時のこと。
聶隠娘を見て気に入り、「将軍、娘御をいただいて仕込みたい」と申し出るも
父・聶鋒に怒られ、断られた尼が、彼女を連れ去ってしまう。

5年後、その尼は「すっかり仕込みました。お引き取り下さい」と聶隠娘を親元に返し、姿を消す。
両親は、失踪した娘の帰還を喜び、この数年何をしていたのか問いただすと、
聶隠娘は「本当の事を話しても信じてもらえないと思うけれど…」と戸惑いながらも
彼女が5年の間に学んだ事や、最後に尼が彼女の脳の後ろを開いて、そこに匕首(あいくち)を隠し、
「使う時は、すぐに匕首を抜き出しなさい。お前の技は上達したから、家に帰っていい。
20年後にまた会えるだろう」と言い、こうして親元に戻されたことを説明する。

父・聶鋒は、その後も聶隠娘が夜になると消え、
夜が明ける前に戻るという生活を繰り返していることに気付くが、本人には何も問いたださず、
次第に娘をあまり可愛がらなくなる。

ある日聶隠娘は、門前を通り掛かった鏡磨きの青年を見て、
「この人なら、私の夫になれる」と感じたことを父・聶鋒に話す。
鏡に水をつけて磨くくらいしか出来ない青年であったが、父は結婚を承諾し、
夫婦に充分な衣類や食物、住居を与え、数年後亡くなる。

さらに数年経った元和年間(806-820)。
聶隠娘は、魏博節度使から、折り合いの悪い陳許節度使・劉昌裔の暗殺を命じられ、夫と共に許州に赴く。
いざ会ってみると、殺すべき劉昌裔は神通力のある立派な人物。
聶隠娘は、魏博を捨て、当地に留まることを決める。

ところが、そのせいで、聶隠娘は魏博節度使から狙われることに。
魏博節度使がまず送り込んできたのは精精児。
聶隠娘は、手段をつくし、精精児を殺め、薬を使って水に変えてしまう。

次に聶隠娘は、明後日、魏博節度使が空空児を送り込んでくることを予知する。
空空児は、神変不思議な術の担い手で、動きが察知できない。
そこで聶隠娘は、蠓虫に変身し、陳許節度使・劉昌裔の腸の中に潜り込み、様子を窺うことを提案し、
劉昌裔もこれに同意する。
深夜、案の定、首の辺りで鋭い音がしたので、劉昌裔の口から外に出た聶隠娘。
首のまわりを調べると、やはり匕首の痕跡を発見。
空空児は、一撃で命中しなかった事を恥じ、千里さきまで飛び去ってしまったのだ。
この一件で、劉昌裔は、聶隠娘を益々手厚く処遇するようになるが、
元和8年(813年)、聶隠娘は「これからは自然の風物を楽しみ、道を会得した人を訪ねようと思います」と
彼の地を離れ、次第に消息が分からなくなる。

やがて劉昌裔も亡くなり、子息の劉縦が陵州の刺史に任命され、赴任の途次、
昔と容貌の変わらぬ聶隠娘と偶然再会し、
「若様、そこにお出でになってはなりません。大変な災難に遭います」と忠告され、薬をひと粒飲まされる。
この薬の効力は一年だけだから、来年急いで役人をやめ、洛陽に戻れば、禍を逃れられるというが、
劉縦は、その言葉をあまり信じなかった。

一年後、役人をやめなかった劉縦は、案の定陵州で死亡。
以後、聶隠娘を見た人はいなかった…。


匕首を切り開いた脳の後ろに隠すとか、虫になって腸に中に潜むとか、なんとも摩訶不思議なお話。
ほんの10ページ程度の物語だが、侯孝賢監督は、これをどう100分以上の映画に膨らませたのだか。


そう言えば、映画のスチール写真でよく目にするこちら(↓)

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これが原作小説にも出てくる匕首で、聶隠娘のお約束の武器なのかしら。




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キャストだが、主演女優・舒淇(スー・チー)が扮するのはもちろん聶隠娘。
私のお目当て張震(チャン・チェン)が演じる田季安は、この伝奇小説の中に名前が出てこない。
だが、田季安(?-812)が実在の魏博節度使であることから、
作中“魏博節度使”と記されているのが張震扮する男と推測。
本書の訳注には、唐代、元和年間の頃、魏博節度使だったのが、田季安と田弘正(764-821)だったため、
両者の内のどちらかが、この人物に該当すると解説されている。
その田季安が聶隠娘の元許婚といった映画オリジナルの設定も色々盛り込まれているみたい。
日本で最も注目されている妻夫木聡が演じる鏡磨きの青年は、
原作の中では聶隠娘の夫となる青年だけれども、
映画では(日本公開版のみとは言えど…)、忽那汐里が妻役との事だし、もしや重婚??
遣唐使として唐に渡った日本人という設定も、原作にはない映画オリジナル。


他、魏博節度使が聶隠娘を消すために送り込んでくる刺客、精精児と空空児は、
それぞれ大陸女優の周韵(チョウ・ユン)とフランス人アーティスト畢安生(ジャック・ピクゥ)が演じている。
これら二人の刺客は、小説を読みながら勝手に若い女性を想像していたので、
空空児が男性、しかも若くない男性、しかもしかもおフランス人とは、私にとっては超意外。

★ その他の収録作品

日本の芥川龍之介が、ズバリ<杜子春>という小説を著しているように、
後世、広く国内外の文学に影響を及ぼした唐代、宋代の伝奇。
芥川龍之介の<杜子春>ほど顕著でなくても、例えば<李徴が虎に変身した話~李徴>で
虎になってしまった李徴が、元同僚と人間の言葉で会話するくだりなどを読んでいたら、
秦代から漢代の中国を舞台に、狼になった男を描いた井上靖の<狼災記>がふと頭に浮かんだ。

唐宋伝奇の影響は東洋のみならず、“シンデレラ中国人説”(…!)の元になっている
<葉限~中国のシンデレラ>なんて伝奇もあるのだから、興味深い。
葉限に関しては、数年前、大陸女優・張靜初(チャン・ジンチュウ)が“シンデレラ中国人説”の謎を追う
ディスカバリーチャンネルの番組を観て以来とても気になっていたけれど、
元となった物語を読むのは、今回が初めて。
(余談になるが、この番組は全て英語で進行される番組。
この時初めて聞いた張靜初の英語は、帰国子女どころか、留学経験さえない人の英語とは
とても信じ難いレベルの流暢なもので、“シンデレラ中国人説”以上の衝撃であった。)


“伝奇=世にも奇妙な昔話”ではなく、
唐~宋代に書かれた文語体の短編小説は広く“伝奇”に分類されるようだけれど、
私が今回読んだ<唐宋伝奇集:下>の中では、前出の<李徴が虎に変身した話~李徴>の他、
<魚服記~薛偉>、<赤い縄と月下の老人~定婚店>といった摩訶不思議な物語が取り分け印象に残った。

<赤い縄と月下の老人~定婚店>は、縁結びの神様として知られる月下老人や、
日本でもよく語られる“運命の赤い糸”の元になった物語。
早く結婚したいのになかなか縁談がまとまらない韋固という男が、冥界からやって来たとある老人から
“将来の妻”と教えられたのが、市場で野菜を売っている老婆のひどく醜い3歳の女児だったため、
カッときて、奴隷を雇い、その娘を殺し、14年後目の醒めるような美しい少女と結婚。
ところが、その妻の眉間に刀の跡が有ったことで、昔奴隷に殺害させようとした女児が、
今の妻であることに気付く、…とまぁザッとこのようなお話。
私にとって意外だったのは、この韋固という男が、妻に「昔、きみを殺そうとしたのは私だ」と告白して以降。
なんと妻は「不思議だわ。運命ですわね」といい、夫婦は互いに益々尊敬し合ったというのだ。
もし私がこの妻なら、間違いなく人間不信に陥るワ…。

この<赤い縄と月下の老人~定婚店>に限らず、えっ、そんなオチでいいの?!と思わずにいられない
何とも腑に落ちないラストや、もしくはあまりにもあっけないラストで閉じる物語が多い。
それがあの時代の感覚なのか、お国柄の違いなのかは、不明。





裴鉶(はい・けい)の伝奇小説<空を飛ぶ俠女~聶隠娘(しょういんじょう)>を原作とした映画
『黒衣の刺客』は、いよいよ明日、2015年9月12日(土曜)日本公開。
この伝奇が、侯孝賢監督の手でどのような映画になったのでしょう。

せっかく待ち望んだ作品なのに、日本向けに再編集させ公開する(→参照)日本の配給会社に対しては
「なんで世界中で日本だけが別物を観させられなきゃいけないのヨッ!“カンヌ受賞作”のまんま公開しろ!」
怒りでワナワナ打ち震えているが、残念ながら選択肢が無いので、日本公開版でも鑑賞いたします。
(本当なら、カンヌ受賞作のまんまの国際版で公開し、国際版でカットされた忽那汐里のシーン等は
DVDの特典映像にするべきだったのでは…?!)

素朴な和のお菓子3種(+テレビ雑記)

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つい先日開催されたソウル・インターナショナル・ドラマ・アワード2015で、
スピーチした林依晨(アリエル・リン)が自分のことを“台湾の芸能人”と自己紹介したとか、
炎亞綸(アーロン)がひと言も中国語を発しなかったとかで
大陸で批判されているという芸能ニュースを先程読んでいて知ったのだが、
“アジアスター賞”という賞を、台湾のその炎亞綸、大陸の張翰(チャン・ハン)と共に、
日本の神木隆之介も受賞したそうだ。私がよくドラマで見ているこの中華な二人と
神木クンが同じステージに立っているのが、なんだか不思議な感じ。
(↓)こちら、3人のスピーチ映像。



炎亞綸は確かに中国語をひとっ言も発していないが、だから?!って感じよねぇ…???
帰国子女の彼が、何かで以前「英語をぜんぜん使っていないから、
どんどん忘れてきてしまった」と語っていたけれど、いえいえ、まだまだ充分イケています。御安心を。
(ちなみに、現在チャンネル銀河で放送中の張翰主演ドラマ
『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』は次回が最終回。)




韓国と言えば、今しがた、録画しておいた今週の『アナザースカイ』を観る。
インスタグラムの女王・MEGBABY(メグベイビー)の生き方を変えてくれた場所として
韓国を紹介する回であった。
私、このMEGBABYという人を初めて見たのだけれど…

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あららぁ、名前も顔も、中国の楊穎(Angelababy アンジェラベイビー)をパクリ過ぎでしょー。

自撮りが上手いのか、静止画像だと20代半ばくらいに見えるけれど、
番組の中で動いている姿は、“BABY”と名乗ってしまうのも厚かましい結構な年齢と見受けた。
所詮Angelababyも人工だが、いい年してそのべいべーをさらにガッツリ複製してしまったMEGBABY…。
同じ人工でも、完成度は元祖に遠く及ばず、“廉価版Angelababy”という印象であった。

映画でも音楽でも、自分から率先して「○○にオマージュを捧げました」と言ってしまえば、
“パクリ”と叩かれず、むしろオリジナルのファンからも温かな目で見てもらえたり、
親近感を抱いてもらえたりするものだが、
逆に、意固地になって自分のオリジナル性を主張してしまったりすると、
パクリがバレた時に激しく糾弾されてしまうもの。
日本国内だけだったら、MEGBABYのファンは
恐らく韓国とかK-Popが好きで、中華圏の情報などには疎い女性が中心と推測するので、
Angelababyをパクってもバレにくいだろうけれど、SNS等のネットを通じ、国外にまで拡散するのは不都合。
これまで中国をパクリ国家と見下してきた日本が、ついにその中国をパクリ始めたと反撃されること必至。
(すでに中華圏で、「MEGBABYってAngelababyと同じ工場生産?」と呟かれているのを見た。言い得て妙。)




似ていると言えば、NHK朝ドラ『まれ』の主人公・希の息子が…

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父親役の山賢人より、本ドラマとは無縁の佐藤二朗にソックリ…!

先日この事をある人に言ったら、「それ、世間でも結構噂になっていて、
佐藤二朗本人もTwitterとかでコメントしている」とのこと。やはり、多くの人々が、そう感じていたのですねー。
その内、佐藤二朗とこの子役の小山春朋クンに親子役のオファーが来るのでは。





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さて、今後のテレビ番組では、
9月14日(月曜)、NHK BS1『Asia Inshight』が“24時間ドキュメント 北京グルメ街”と題し、
多くの飲食店が軒を連ねる通り、通称“鬼街/簋街(グイジエ)”を紹介。
これ、多分、以前私が観た物の再放送だと思う。
…が、有名な通りの割りに、日本のテレビではあまり紹介されないので、改めて録画。
ちなみに、この通りのすぐ近くには、あの成龍(ジャッキー・チェン)が、
息子・房祖名(ジェイシー・チャン)の誕生日にプレゼントした億ションあり。(→参照
番組を観ると、このグルメ街の附近にそのような高級住宅があるとは想像しにくい
なんとも庶民的な場所であることが分るはず。



同日の晩、テレ東の『未来世紀ジパング』
“中国「バブル崩壊」の真相...知られざる裏側を緊急取材!”と題し、
中国バブル崩壊の真相や今後の行方を取材。
『未来世紀ジパング』や『ガイアの夜明け』の中国特集は、いつも興味深く視聴。
今回は、大陸内は勿論のこと、カジノのVIP客激減で、経済的影響を受けている澳門(マカオ)も取材。

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新国立競技場問題で、建築に興味の無い人にまで名が知れたザハ・ハディドによる設計の
かつてない奇抜なホテルの全容を紹介する模様。
恐らく、澳門に2017年開業を予定している新濠天地酒店(City of Dreams)のことだと思う。
この建物は、外壁のお掃除だけでも大変そうで、維持費がかなりかかるだろうから、
好景気が続いてくれないと困るでしょうー。




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翌、9月15日(火曜)、NHK総合では、結婚願望が強い独身女優・久本雅美をゲストに迎え、
女性ならではのトーク満載で進行する紀行番組『2DOORS 婚活世界旅』を放送。
共に独身の二人、女優・大塚千弘は婚活先進国シンガポールへ、
北島三郎の娘・水町レイコは恋愛大国フランスへ飛び、それぞれの国の結婚観を取材。
上の画像のおばあさん、どうやら81歳で初婚らしい。
私、こんな番組を観たら、「81までまだまだ時間がある」と益々悠長に独身生活を引き延ばしてしまいそうで、
それはそれで危険だわ(笑)。




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9月17日(木曜)は、TBS『櫻井有吉アブナイ夜会』が、前回の多部未華子日帰り台湾に引き続き、
今度はホラン千秋が香港を紹介。どうやら今回も日帰りの弾丸旅行みたい。
香港は台湾より遠いから、さすがに日帰りはキツイ気がする。
バブル期、「ディナーにフカヒレ食べたいから、ちょっと香港まで飛ぶか」
なんて言うバブリーなおじさんが居たことを考えると、まぁ不可能ではないだろう。




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翌、9月18日(金曜)、NHK総合『妄想ニホン料理』
ハンガリーと中国の料理人に、簡単なヒントだけを頼りに妄想を膨らませ、“生八ツ橋”を作ってもらうという。
ハンガリーでは伝説のパティシエが、中国では西湖の三鉄人が超技巧点心で、
それぞれ彼らが想像する生八ツ橋を作るらしい。
本物の生八ツ橋とは似ても似つかぬ物だったとしても、きっと美味しいお菓子を作ってくれそうな予感。




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そしてちょうど一週間後の9月20日(日曜)には、NHK BSプレミアム『桃源紀行 君住む街で』
今回は、中国山東省の省都・済南を舞台に、大学で書道を学ぶ女性の一週間を追う。
この番組は、最近ずっと再放送ばかりだったけれど、もしかしてこれは久々の新作なのでは…?





お菓子は、素朴な和の物ばかりを3種類。こういうおやつも、たまには良いものです。

★ 御座候:御座候(白あん)

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大きさは、直径約7センチ、厚さ約2.5センチ。
焼き型の中に生地を流し、白餡を入れて焼いたお菓子。




ひとつめは、御座候(公式サイト)の看板商品、その名もズバリ“御座候”
読み方は、“ござそうろう”。
「お買い上げ賜り、ありがたく御座候」というお店側の感謝の気持ちから命名。
俗に“今川焼き”とか“大判焼き”などと呼ばれている焼き菓子である。
(御座候本社がある姫路とか近畿の方では、“回転焼き”と呼ぶのが一般的なのだとか。)

生地を割ると、中に入っているのは、北海道十勝産の絹手亡を使用して作った白餡。
同じく北海道十勝産の小豆を使用した“赤あん”入りも有るが、私は白餡を買う方が多い。
どちらにしても、ここのは、生地が薄く、餡子たっぷりなのが良い。

買ってすぐ出来立てを食べられるなら、それに越したことないけれど、
大抵それが出来ず、冷めてしまってから食べることになるので、
私はまず電子レンジで少々温め、次にオーヴンで軽く焼き直してから食べることが多い。
以前、いきなりオーヴンという方法も試してみたのだが、御座候に厚みがあるため、
オーヴンだけだと、表面がこんがり焼けても、中の餡が冷えたままになってしまった。
電子レンジとオーヴンを両方使うことにより、
皮の表面は香ばしく、中の餡はフッハフハに温かくなり、美味しさ倍増。

この御座候は、これだけ餡をたっぷり使い、1個85円。
今川焼きという物をあまり買ったことがないので、平均価格の見当がつかないけれど、
この値段でこの内容なら優秀だと思う。満足度高し。

★ たねや:末廣饅頭

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大きさは、直径約2.5センチ。
黒糖入りの生地でこし餡を包み蒸し上げたひと口饅頭。




続いて、たねや(公式サイト)“末廣饅頭”
画像だと大きさが判りにくく、普通の茶饅頭のように見えるけれど、実はとても小さなひと口饅頭。
たねやでは、ひと箱10個入りで販売。

生地に練り込まれているのは、沖縄県波照間産の黒糖。
その生地を充分楽しめるよう、皮はやや厚め。
黒糖特有のコクとほんのりした甘みが、ちゃんと感じられる。

こちらも試しに電子レンジで15秒ほど温めてみた。
これ、正解。まるで蒸したてのお饅頭のよう。生地がよりフワッとなり、黒糖の味も際立ってくる。

基本的に、お饅頭の類は、生地が薄ければ薄い方が好みだけれど、これはこれでアリ。
ただ、大きさは、ちょうど山田屋まんじゅうくらいの大きさで、本当に小さいので、一個ではぜんぜん物足りない。
私なら、ひと箱一気にいける。…だったら、最初から大きいお饅頭を買って食べた方が、経済的か?
食の細い人や、普段積極的には甘い物を食べない人が、ちょっと小腹に入れたい時に良いかも。

★ 小池菓子舗:あわまんじゅう

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大きさは、直径約5センチ。
こし餡を包み蒸し上げた粟まんじゅう。




最後は、小池菓子舗(公式サイト)“あわまんじゅう”
これは、デパートの催事場などで、実演販売を見掛けると、ついつい買ってしまう。

もち米と粟(アワ)を混ぜた生地で、こし餡を包み、蒸し上げたお饅頭。
もち米だけで作られた普通のお餅とは明らかに異なる食感。
ねっとり柔らか。滑らかなようでいて、粟の粒々を下に感じる。

お餅なので、早めに食べないと、やはり固くなってしまうのだけれど、蒸し直せば、この食感が蘇る。
蒸し器で蒸し直すのがベストだが、それが面倒なら、電子レンジで温めても大丈夫。

粟が入るだけで、なぜこんなに美味しくなるのでしょう。
しっかりした食感の、紀の国屋の“あわ大福”も好きだけれど、ねっとり柔らかなこちらも好き。

都心での購入は、近いところでは、9月17日(木曜)から一週間、新宿高島屋で出張販売あり。

映画『黒衣の刺客』

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【2015年/台湾・中国/108min.】
唐代の中国。
女道士に預けられた聶隱娘が、13年の時を経て、親元に帰ってくる。
美しく成長した娘との久々の再会を喜ぶ両親であったが、
間も無くして聶隱娘の異変に気付き、女道士に預けたことを後悔するようになる。
なんと聶隱娘は、ずっと女道士のもとで訓練を積み、刺客に育て上げられていたのだ。
聶隱娘が殺すように命じられたのは、魏博節度使・田季安。
田季安は、聶隱娘の母方の親族で、彼女のかつての許婚でもあった…。



台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督8年ぶりの新作にして、
2015年第68回カンヌ国際映画祭監督賞受賞の話題作。

…が、我々が日本のスクリーンで観られるものは、正確には“カンヌ受賞作”ではなく、
日本市場向けに、日本で撮影したシーンや日本人女優のシーンを加えて再編集したもの。
色々オトナの事情があったとしても、
“カンヌ受賞作”をわざわざいじり直して公開する配給会社には憤りを感じる。
世界中で日本だけが“カンヌ受賞作”を観られない事に、まったく納得なんかしていないけれど、
日本に暮らす私に選択肢は無いので、その日本公開版を公開初日に鑑賞。


本作品は、唐代の伝奇、裴鉶(はい・けい)による<空を飛ぶ俠女~聶隠娘>の映画化で、
侯孝賢監督初の武侠映画。
私は、映画を観る前に、原作を読んで予習したが、10ページ程度の摩訶不思議な物語を、どう膨らませて、
一時間半以上の映画作品に仕上げるのか、想像がつかなかった。



物語の時代は8世紀。
各地に設けられた地方組織“藩鎮”が力をつけ、朝廷の勢力も充分に及ばなくなり、
政情が不安定な唐代の中国。
主人公は、数ある藩鎮の中でも、強大な力をもつ魏博の重臣・聶鋒の娘、聶隱娘。
聶隱娘は、幼い頃、女道士に預けられ、訓練を積み、凄腕の刺客に育て上げられ、
13年後ようやく親元に返されるも、もう普通の女の子としての穏やかな生活には戻ることはなく、
刺客として、魏博節度使・田季安暗殺という与えられた任務を果たそうとするようになる。

つまり、本作品を大雑把に説明してしまうと、
刺客として育てられた女性・聶隱娘の数奇な運命と孤独を描く武侠映画


所々で原作の要素を押さえているものの、かなり異なる物語に練り直されているという印象を受けた。
細かい違いを挙げたらキリがない。特に違うのは、刺客・聶隱娘のターゲットであろう。
原作で聶隱娘は、魏博節度使から、彼と対立する陳許節度使・劉昌裔の暗殺を命じられる。
ところが、実際に会った劉昌裔の人柄に敬服したため、陳許側に寝返り、そこに留まることにする。
当然のことながら、元々のボス・魏博節度使は怒り、裏切り者・聶隱娘を殺すために、刺客を送り込んで来る。
元の味方は敵となり、人の命を狙う刺客が、人から狙われる立場になってしまったのだ。

しかし、これが映画だと、原作では聶隱娘のボスで、彼女にライバル暗殺を命じた魏博節度使が、
最初から聶隱娘が命を狙うターゲットになっている。
しかも、この魏博節度使・田季安は、聶隱娘の母方の親戚で、なおかつ、かつての許婚という設定。
二人の婚約が破談になったのは、田季安の父・田緒が、勢力拡大のため、
強力な兵力をもつ元誼の娘と、自分の息子との政略結婚を決めたから。
複雑なのは、田季安の継母でもある田緒の妻が、降嫁してきた唐朝の公主、
唐朝第11代皇帝代宗の娘・嘉誠公主であること。
嘉誠公主には、嘉信公主という双子の姉妹がおり、
その嘉信公主こそが、聶隱娘を刺客に育て、暴君・田季安暗殺を命じた女道士なのだ…!

妙な話だが、藩鎮が朝廷に反発している当時の状況を考えると、全ての辻褄が合う。
魏博の節度使であった田緒に降嫁した嘉誠公主は、魏博と朝廷との安定した関係を望み、
魏博の中でも朝廷寄りの聶田氏を母にもつ聶隱娘と、養子・田季安の婚約を取り決めるが、
嘉誠公主の夫で、田季安の父である田緒は、魏博のさらなる勢力拡大を目論み、
強力な軍事力をもつ元誼の娘と自分の息子との政略結婚を決め、反朝廷の傾向を強めていく。
聶隱娘の両親は、婚約を破棄された娘が、元誼ら反朝廷勢力から狙われることを恐れ、
密かに聶隱娘を女道士に託す(原作では、聶隱娘は女道士に勝手に拉致され、行方を暗ます)。
女道士=嘉信公主は当然のことながら朝廷側の人間で、
父親から魏博節度使を継いだ田季安がとんでもない暴君であることを知っているからこそ、
唐の安定のために、刺客に育て上げた聶隱娘に田季安暗殺を命じるのだ。
(…が、娘を守るために良かれと思って女道士に託した聶隱娘の両親にとっては、
その娘が刺客になってしまったのは想定外で、戸惑う。)


フィクションだが、多くの登場人物は実在した人々だし、物語は根底で歴史的事実にかなり則している。
原作は、CGを駆使したSFにでもしない限り映画化困難な奇想天外な描写が多いため、
それでは侯孝賢監督の作風に合わないし、一体どう処理するのかと案じもしたけれど、
朝廷と藩鎮の対立という史実を軸にした物語に書き換えることで、荒唐無稽なSF作品にすることを避け、
ちゃんとリアリティのある侯孝賢監督テイストの伝奇<聶隱娘>に仕上げているのはお見事。


理屈ではなく感覚で楽しむべき作品とも思うが、
物語をより深く理解したいのなら、人物相関図をなんとなく頭に入れておくのも悪くないかも知れない。

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この中で、魏博節度使・田季安(?-812)、田季安の父でやはり魏博節度使だった田緒(764-796)、
田緒の妻・嘉誠公主(785年、田緒に降嫁)、田季安の妻・田元氏、田元氏の父で昭義軍行軍司馬の元誼
田季安への諫言で朝廷寄りと見做され、左遷される田季安の叔父・田興(764-821)は全て実在の人物。





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主人公・聶隱娘と、彼女が暗殺を試みる魏博節度使・田季安に扮するのは
舒淇(スー・チー)張震(チャン・チェン)

舒淇&張震in侯孝賢監督作品というだけでも、弥が上にも期待が高まる。

2015年9月15日の朝日新聞に掲載された是枝裕和監督との対談で、侯孝賢監督は
「成瀬巳喜男に高峰秀子、小津安二郎に原節子がいたように、どの監督にも心の女優がいるもので、
舒淇との出会いは得難いものであった」と語っている。
そういう存在が、『悲情城市』までは辛樹芬(シン・シューフェン)だったけれど、
彼女は結婚して引退してしまったから、以降は舒淇だ、…と。
(実は、その辛樹芬と舒淇の間に、もう一人、伊能靜が居るのだが、
監督ってば、彼女は居なかったことにしてしまったのかしら~…。

侯孝賢監督も言っているように、確かに日本の映画界も昔は
“この監督にはこのミューズ”というお約束のキャスティングがあったが、最近はそうでもないような…。
中華圏だと侯孝賢監督&舒淇以外にも、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督に趙濤(チャオ・タオ)とか
蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督に(男優だが)李康生(リー・カンション)といったミューズが居るのにねぇ。
今の日本だと、強いて言えば、園子温監督に神楽坂恵くらい…?
“銀幕女優”と呼べる女優が激減してしまったこともあるし、
テレビ局主導の当たり障りのない娯楽作ばかりが増え、
作家性の強い個性的な作品がなかなか作られないことも
一人の監督が一人の“心の女優”を撮り続けられなくなった一因かも。
実際、“心の女優”をもつ侯孝賢、賈樟柯、蔡明亮、園子温らは、皆個性的な作品を作る監督である。

舒淇も、なぜかキャピキャピの女の子を演じさせられることが多い香港映画だとイマイチだが、
侯孝賢監督作品の中では独特な雰囲気を醸し、輝きが違う。
さすがは“心の女優”と言っているだけあり、侯孝賢監督は舒淇の魅力を最大限に引き出すのが上手いと、
この『黒衣の刺客』を観て、改めて思った。
演じている聶隱娘は、幼い頃から培養された殺人マシーンゆえか、良くも悪くも世間ズレしておらず、
任務を全うしようとする姿がピュアにさえ見えるし、どこか妖精のようでもあった。


でも、私のお目当ては、張震♪
この前に観た出演作『ブレイド・マスター』では、良かれと思ってやった行為で禍を招いたり、
好きな女性にこっぴどくフラレたり、ちょっと情けない感じの下っ端錦衣衛を演じていたけれど、
今回は打って変わり大物。しかも暴君で、終始しかめっ面。
自分の子供と戯れている時だけ、一瞬表情が緩み、人間らしさが垣間見えた。
人間的に好みなのは『ブレイド・マスター』の張震でも、作品全体を考えての評価は、迷うことなく断然こちら。




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魏博節度使・田季安を取り巻く女性陣もみておこう。
田季安の継母・嘉誠公主と、その双子の姉妹で女道士の嘉信公主に許芳宜(シュー・ファンイー)
田季安の正妻・田元氏に周韵(チョウ・ユン)、妾・瑚姬に謝欣穎(ニッキー・シエ)など。

許芳宜は『光にふれる』にゲスト出演したマーサ・グラハム舞踏団の元首席ダンサー。
『光にふれる』では、本業と同じダンサー役であったが、今回はより“女優”らしく、双子の公主を一人二役で!
元々が表現者だから、台詞が少なく、佇まいで内面を表すこのような映画には合っている。
儚げな顔立ちも、唐朝から降嫁し、味方がいない孤独な公主向き。
嘉信公主(女道士)の方は、魏博と朝廷の穏やかな関係を望むハト派な嘉誠公主とは異なり、
敵の抹消で事態の収束を計るタカ派。穏健派も急進派も表裏一体というか、
双子の姉妹が対照的なことで、人間の二面性のようなものを感じた。


田季安の正室・田元氏役の周韵は、日本に入って来ている出演作が少ない女優さんだけれど、
大陸の監督兼俳優・姜文(チアン・ウェン)の奥方。
今回演じている田元氏は、実は武術の達人・精精兒という裏の顔をもつ。
原作の精精兒は、聶隱娘を殺すために魏博節度使が送り込む刺客。
映画の精精兒も魏博節度使側の刺客には違いないが、
朝廷派を倒すために、実家の元家によって訓練された刺客といった感じだろうか。
但し、聶隱娘との一騎打ちでは、聶隱娘から夫を守りたいという妻としての愛のようなものも感じた。


瑚姬という田季安の妾は架空の人物。
田季安の子を妊娠しているのに、保身のため、鶏の血を使って月経が有ると見せかける。
演じている謝欣穎は、台湾女優らしいピュアな雰囲気があるから、鬼ヨメ・田元氏と対照的で良いのでは。
今回は小さな役であったが、テレビドラマだと主演作『カノジョの恋の秘密~金大花的華麗冒險』が
間も無くホームドラマチャンネルで放送開始。

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このドラマでは、綺麗で物憂げな瑚姬とは別人の不っ細工な謝欣穎が見られるらしい。





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日本からは、鏡磨きの青年役で妻夫木聡、その妻役で忽那汐里が参加。

…とは言っても、忽那汐里は、カンヌで受賞した国際版ではバッサリ切られており、日本版にしか登場しない。
ブッキーも決して大きな役ではないけれど、恐らく第三者からの推薦ではなく、
侯孝賢監督自らの希望でキャスティングされたものと推測。
そう思う理由は、2003年春、『ミレニアム・マンボ』が日本で公開された時に遡る。
今はなきシブヤ・シネマ・ソサエティで、来日した侯孝賢監督が初日舞台挨拶を行った際、
使ってみたい日本人俳優は?というお約束の質問をされ、「妻夫木聡」と答えた事が忘れられない。
当時のブッキーは、母親世代に好かれる好青年タイプではあったものの、
おおよそ“侯孝賢監督的”とは言い難いアイドル俳優。
浅野忠信とか(案の定その年『珈琲時光』に出演)、加瀬亮とか、もっと“侯孝賢監督的”な俳優もいるのに、
敢えて「妻夫木聡」と外した所を狙った侯孝賢監督の感覚が理解できず、その事がずっと記憶に残っていた。
それが何年もの時を経て、このようなコラボに繋がるとわねぇー。

ブッキー扮する鏡磨きの青年は、原作では聶隱娘の夫となる男性。
ブッキーを起用するにあたり、遣唐使として唐に渡ってきた日本人という設定に変えられている。
ちょうど撮影に入る頃、中国で反日デモが激化したため、危険だとか降板だとか色々言われていたけれど、
それでも大陸へ渡り、撮影に参加し、結果的にカンヌにも行けたし、ブッキー報われて本当に良かった!

観賞前、ちょっと気になったのは、中国語をどう処理するのかという点。
当時、遣唐使として唐に渡った日本人の中文レベルは不明だが、
エリートなら素養として中国語の読み書きができたと聞いたことがある。
しかし、本作品では、ブッキーと限らず、皆台詞が極端に少ないので、心配御無用であった!
ブッキーの台詞も全編を通し、「いんにゃん!いんにゃん!(隱娘!隱娘!)」だけ。


もう一人の日本人出演者・忽那汐里は、その青年が日本に残してきた妻という設定。
清潔感のある可憐な雰囲気がとても良く、吸い込まれる。
…が、彼女のシーンはやはり初見では取り敢えずは無いまま観たかった。
カンヌ受賞作のまんまが観たかったという事も勿論あるが、それだけではない。
今回この日本版を観て、彼女のシーンが有るのと無いのでは、物語のニュアンスが変わってきてしまうと感じた。

鏡磨きの青年が既婚者であることが明確な日本版では、彼が故郷や妻を懐かしんでいる様子で、
聶隱娘に特別な感情を抱いているようには見受けない。帰国の途につく時も嬉しそうである。
聶隱娘の方も、彼に恋愛感情がある風ではない。
確かに、青年に会った時、ふとはにかんだ笑顔を浮かべるけれど、
それは孤独な聶隱娘が、朗らかなこの青年と会う時だけ感じられる安堵から来るもので、
必ずしも恋愛感情ではないように思う。

しかし、妻のシーンが無い国際版だったら、どうであろう?
聶隱娘のはにかんだ笑顔を、ストレートに恋心と受け止めたかも知れない。
そうなると、日本に帰る鏡磨きの青年を新羅まで送るラストシーンも、
聶隱娘の複雑な心境が汲み取れる、もっと切ない幕締めになっていたかも…??




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その他の気になるキャストは、聶隱娘の父・聶鋒に倪大紅(ニー・ダーホン)
田季安の側近・夏靖に阮經天(イーサン・ルアン)、精精兒の師匠・空空兒に畢安生(ジャック・C.・ピクゥ)等。

倪大紅は、おヒゲや烏帽子で変装していても、大きな涙袋ですぐ分る。
あっ、そういえば、この倪大紅扮する聶鋒の母親、つまり聶隱娘の祖母役で、
梅芳(メイ・ファン)もチラッと出ていた。
舒淇以上に昔から侯孝賢監督作品には欠かせない梅芳もまた、ある種“侯孝賢のミューズ”。

阮經天はテレビの偶像劇から映画へのシフトに成功した、数少ない台湾の若手。
恐らく『敗犬女王』を最後に、偶像劇には出ていない。
今回演じた夏靖は、あまり目立たない役であったが、ついに自国の巨匠・侯孝賢監督作品にまで出演でき、
小天(=阮經天)本人は感激したに違いない。

そして空空兒。原作では、精精兒と同じように、魏博節度使が聶隱娘を殺すために送り込む刺客。
原作を読みながら、漠然と若い女性をイメージしていた。
映画を観たら、年齢、性別、人種(…!)までもが私のイメージと違っていたからビックリ。
扮する畢安生はフランス人アーティスト。嘉誠公主役の許芳宜にしても、この畢安生にしても、
専業の俳優とはまた異なる、芸術家特有の雰囲気や存在感が、侯孝賢監督のお気に召したのかも?





映画監督を目指す中華な少年たちが、大物になった暁に是非撮りたい!と夢見るのは、
武侠映画なのだろうか。
王家衛監督が、葉問(イップ・マン)を主人公に『グランド・マスター』を撮ると知った時と同じように、
侯孝賢監督が本作品を撮ると知り、驚いた。
私は武侠というジャンルに特別興味が無いし、
両監督は、その手の作品とは無縁だったからこそ、私の好みに合ったわけだ。
でも、王家衛監督が、侯孝賢監督が撮る武侠映画なら…、と期待半分不安半分で観た結果、
どちらもとても気に入った。
両監督のこれら2作品は、それぞれに異なる趣向でも、
ジャンルの固定観念に縛られないハイパー武侠映画であることは共通。
近年の台湾映画には失望させられてばかりだったけれど、『黒衣の刺客』で久し振りに満足感を得た。

カンヌ受賞作のまんまで上映されないことには、不満しかないが、
いざ観始めたら、その不満をも消し去ってくれる程の圧倒的な美の世界に釘付け。
衣装や美術は当然のように美しいしいけれど、
蝋燭のゆらぐ炎とか、風にそよぐ木々の葉や紗の布が、これまた印象深い。
自然の中にある光や音を、ここまでうっとり感じられる作品は、そうそう無い。
物語は、台詞などによる説明が極端に少ないため、難解な作品と頭を傾げる人も多いようだが、
私はむしろシンプルに対立と孤独に焦点を当てた、ある意味単純な話だと思った。

侯孝賢監督って、普通の気さくなおじちゃんにしか見えないのに、趣味はホントに良いわよねぇー。
要所要所で縦書きを配したクロージングクレジットまでセンスが良くて、最後の最後まで観入った。
その背後に流れる曲までカッコイイ。Bagad Men Ha Tanというユニットの<Rohan>とい曲らしい。



フランス・カンペルレ出身のユニットなのだとか。
おフランスというより、西域の民族音楽みたい。エキゾティックで唐代の中国大陸にマッチ。
終始静寂が続く物語で、最後にこの曲がバーン!とかかるインパクトは絶大。



私個人的に気に入っても、万人ウケする作品だとは思わないので、人には勧めない。
公開劇場が少ない!と不満を洩らす人も結構居るようだが、そもそも大規模公開するような作品ではない。
あの手この手で動員数を増やしても、それは趣味の合わない観客を増やすことになるだけで、
そういう人たちの「退屈…」、「眠気を誘うだけの駄作」という口コミが広がれば、作品の評価を落とすだけ。
侯孝賢監督作品は、あの『悲情城市』でさえ、確か日比谷シャンテシネの単館上映だったはず。
お金の事も考えなければならない関係者が呑気に構えていられないのも分るけれど、
こういう作品はカルト的に支持され、後々“伝説の武侠映画”と語り継がれた方が、作品自身は幸せかもヨ。


もーついでなので、字幕の表記についても一言。
人物名や地名をきちんと漢字で表記していることは良し。しかし、あのルビは如何なものか。
日本で中国史を学ぶ場合、歴史上の人物や地名は日本語の音読みにするのが一般的である。
“魏博(ぎはく)”を“魏博(ウェイボー)”などと記した歴史書なんて見たことがないし、
主人公だって日本ですでに“聶隠娘(しょう・いんじょう)”という呼び名で紹介されている。
この映画では、他の固有名詞も全て、“嘉誠(ジャーチャン)”、“田興(ティエン・シン)”といった具合に
中国語風の発音でルビがふられているけれど、“嘉誠(かせい)”、“田興(でん・こう)”とするべきだったのでは。
“曹操(そうそう)”や“諸葛亮(しょかつりょう)”を、
“曹操(ツァオツァオ)”、“諸葛亮(ジューグーリャン)”などと記した三国志モノなんて無いでしょ…?!

あーあ、この映画、いくら語っても語り尽くせないワ(笑)。




映画『黒衣の刺客』の原作小説、裴鉶の<空を飛ぶ俠女~聶隠娘>については、こちらから。

『黒衣の刺客』鑑賞前の予習に、侯孝賢監督作品10選!

映画『キングスマン』

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【2014年/イギリス・アメリカ/129min.】
1997年、中東。
任務遂行中に、敵の手榴弾に気付いたその男は、仲間を守るために、自分の命を犠牲にする。
この事に責任を感じた上司のハリー・ハートは、ロンドンに戻ると、彼の遺族を訪ね、
まだ幼い息子のエグジーに
「何か困った時はここに連絡するように。合い言葉は“ブローグではなくオックスフォード”。」
と電話番号らしき数字が刻印されたメダルを渡し、立ち去る。

17年後。22歳になったエグジーは、学校にも行かず、仕事にも就かず、
ただただ仲間とパブに入り浸ったり、ケンカをしたりの日々。
ある日、盗んだ車で暴走し、ついに御用。
警察で取り調べ中、ふとあのメダルのことを思い出し、試しに電話をかけ、例の合い言葉を呟くと、
不思議なことに釈放される。
警察を出たエグジーを待っていたのは、あのハリー・ハート。
彼はエグジーに言う、「君のお父さんは勇敢だった。今の君を見たら失望するだろう。
生まれや環境を言い訳にしてはならない。努力すれば変われるんだ」と。

この自称・仕立て屋のハリー・ハートは、実はキングスマンという諜報機関のエージェントであった。
ちょうどその頃、組織に欠員が出たため、彼はエグジーに新人採用試験を受けるよう勧める。
最初は懐疑的だったエグジーも、ハリー・ハートの手腕を目の当たりにし、気持ちに変化。
どうせ失う物はない。エグジーは採用試験への参加を決めるが…。



マーク・ミラー&デイヴ・ギボンによるコミック<Kingsman:The Secret service>を
マシュー・ヴォーン監督が映画化。

マシュー・ヴォーンは、『レイヤー・ケーキ』(2004年)で監督デビューし、
近年『キック・アス』(2010年)を大ヒットさせたイギリス人監督。
私は、前者はまぁまぁだったが、後者は世間の皆さまが讃えるほどの傑作だとは感じなかった。



今回の主な舞台は、イギリス・ロンドン。
主人公は、親子ほど年の離れた二人のイギリス人男性。
ハリー・ハートは、サヴィル・ロウの高級テイラーKingsman(キングスマン)の仕立て職人。
…というのは表の顔。実はこのキングスマンは、無報酬で秘密裏に活動する諜報機関で、
ハリー・ハートはそこの敏腕エージェント。
ゲイリー・“エグジー”・アーウィンは、幼い頃に父を亡くした下層階級の22歳。
再婚相手のDVに怯えながら暮らす母の元に身を寄せ、職にも就かず自堕落に生きる日々。

エグジーさえ知らなかったが、彼の父親は、実はかつてハリー・ハートの部下で、
1997年、中東で活動中、仲間を守るために死亡。
ハリー・ハートは責任を感じ、彼の尊い犠牲に何とか報いたいと思い続けていたのだ。
そこで、キングスマンの欠員補助のための新人採用試験に、無職のエグジーをスカウト。
こうしてエグジーは、未知の世界に足を踏み入れる。

本作品は、アメリカのIT富豪が水面下で進めるとんでもないテロ計画を阻止すべく、
諜報機関キングスマンが奔走する様子を描くスパイ映画であり、
同時に、自暴自棄に生きていた下層の青年が立派な紳士スパイになるまでを描く成長物語



紳士なスパイたちのアジトとなっているKingsman(キングスマン)は、
1849年サヴィル・ロウに創業し、上流階級御用達テイラーとなるが、第一次世界大戦で多くの顧客が死亡。
そこで、行き場のなくなった彼らの莫大な遺産を、彼らの意思を継ぐべく運用しようと、
非営利で世のため人のために活動する諜報機関としてスタートした、…という設定。

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撮影に協力しているサヴィル・ロウのHuntsman(ハンツマン)も、今チェックしたら、1849年創業であった。
マシュー・ヴォーン監督がこの店に初めて足を踏み入れたのは、
母親に連れられ、初めてビスポークのスーツを注文しにきた18歳の時なのだと。
当たり前だけれど、あちらには、日本には到底追いつけない洋服の文化がありますね~。


キングスマンのエージェントたちが身にまとっているのも、当然ビスポークのスーツ。
(但し、見た目は普通でも、防弾仕様になっているらしい。)
スパイ・ガジェットも、傘、万年筆、レースアップのシューズ等、紳士のお洒落小物尽くし。


台詞も、記憶に焼き付く小洒落たもの多し。一例を挙げると…
Oxfords, not brogues.(ブローグではなくオックスフォード)
…ハリー・ハントに接触するための合言葉。“ブローグ”はミシン目が入ったカジュアルな靴のこと。
プレーンな“オックスフォード”の方が勿論フォーマルな靴。

The suit is a modern gentleman's armour.(スーツは現代に生きる紳士の鎧)

Manners maketh man.(マナーが人を作る)

To pee or not to pee, that was the headline the day after I defused a dirty bomb in Paris.
(おしっこかおしっこじゃないか、それそは私がパリで爆弾を消した翌日の新聞の見出しだ)
…あまりにも有名な<ハムレット>の「To be or not to be, that is the question.」のモジり。

Martini. Gin, not vodka.(マティーニ、ウォッカじゃなくてジンで)
…紳士なスパイに成長したエグジーが、ボーイにマティーニを注文する際に出した指示。
ジェームズ・ボンドの「Martini. Shaken, not stirred.(マティーニ、ステアじゃなくてシェイク)」のパロディ。


あと、紳士なワードではないけれど、“Negging(ネギング)”は日本でも流行りそうな言葉だと思った。
意味は、相手を褒めるのではなく、逆に否定的な事を言って注意を引き、
会話するキッカケを作る新手のナンパ技術。





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二人の主人公を演じるのは、
キングスマンのエージェント、コードネーム“ガラハッド”ことハリー・ハートにコリン・ファース
幼い頃父を亡くした下層階級の青年、ゲイリー・“エグジー”・アンウィンにタロン・エガートン

『キック・アス』に感激しなかった私が、それでもマシュー・ヴォーン監督の新作を観ようと思ったのは、
ひとえにコリン・ファース様を拝みたかった、それだけに尽きる。
鑑賞前から、絶対にコリン・ファース以外には演じられないハマリ役だと直感した。
イギリスには、他にもハリウッドに進出している同世代のメジャー級俳優がいるけれど、
例えば『アナザー・カントリー』(1983年)でコリン・ファースとも共演しているルパート・エヴェレットは、
実際にアリスト俳優であっても、ゲイであることをカムアウトして以降、演じる役が特殊になっているし、
ヒュー・グラントは、オックスフォード大学で学んではいても(中退)、
数々の下半身問題で、やや軽めのイメージがついてしまっている。
また、レイフ・ファインズの場合だと、画面に映ると、背徳の香りが漂ってしまうし…。
う~ン、色々考えても、このエレガントなスパイは、やはりコリン・ファース以外有り得ない…!

実際に映画を観たら、期待を上回る素敵っぷり。スーツでアクションもカッコイイ。
まぁ元々がアクション俳優ではないから、甄子丹(ドニー・イェン)とかと対決したら、負けると思うけれど。
でも、いいの。別にそこは私の萌えポイントではないから。

ポイントは英国紳士然とした佇まい。また、そう見せてくれるスーツは重要なアイテム。
この映画は、コリン・ファースのみならず、他のエージェントたちも、とにかくスーツ姿が素敵で、
私にとっては、スパイ・アクションではなく、眼福の“スーツ萌え映画”であった…!
私は元々“男はスーツ派”だけれど、これまでそう思っていなかった人でも、
本作品を観たら、スーツのかっこよさに目覚めることウケアイ。

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現に、本作品のヒットで、世界的にスーツへの注目が高まり、
中でも韓国は、その傾向が顕著で、スーツの売上高にはっきり表れているのだと。
特に売り上げが急激にのびているのは、クラシックなダブルのスーツらしい。

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「韓国人男優シン・ハギュンも映画『The Age of Innocence』のプレミアで早速ダブルのスーツ」
と紹介されていたけれど、それが『キングスマン』の影響なのかどうかは、本人のコメントが無いため不明。



スーツ姿のコリン・ファースを堪能できるだけでも、
映画代金の元は充分取り返せたと満足しながら鑑賞していた私だが、
そんな矢先、彼が扮するハリー・ハートが、ラストを待たずして、志半ばでマサカの殉職…!!
主人公が途中で死ぬワケがない、何か仕掛けがあり、あとで甦生して再登場するハズと信じていたのに、
結局本当にあのシーンで絶命していて、それっきりであった…。ガーン…!!



エグジー役のタロン・エガートンは、キャリアの浅い新人でありながら、この大役に大抜擢。
小柄で身軽で、顔もクシャッとしていて、子猿のよう。
エグジーは下層階級の出身で、キングスマンの新人採用試験では、
良家の息子たちに見下され、意地悪をされるが、
ロキシーという女の子だけが、彼を家柄で判断せず、二人は仲良くなる。
このまま恋に発展するのかと思いきや、立派なエージェントに成長したエグジーは、
同世代の同僚・ロキシーには見向きもせず、スカンジナビアのティルデ王女に果敢にアタック。
エグジーってば、案外女性に関しては、貪欲に高みを目指すタイプだったのね…。

“馬子にも衣装”で、街のチンピラだったエグジーも、終盤にはビシッとスーツで決めたジェントルマンに変身。
だが、私には、彼の変身より、彼の母・ミシェルの変貌っぷりの方が驚きであった。
1997年の時点では普通の幸せそうな主婦という印象だったのに、夫を亡くした後の荒廃ぶりといったら…。




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悪役は、恐ろし計画を進めるアメリカのIT富豪、リッチモンド・ヴァレンタインにサミュエル・L・ジャクソン
ヴァレンタインの手下のガゼルにソフィア・ブテラ

サミュエル・L・ジャクソン扮するIT富豪のリッチモンド・ヴァレンタインは、
人類を減らさなければ地球が滅びるという妄想に憑りつかれている。
そこで、地球上の人口削減のために行ったのが、全世界でのSIMカードばら撒き作戦。
通話もインターネットも無料になるという夢のカードを、人々はこぞって入手。
ところが、コレ、特殊な信号を発し、人の神経系を狂わすという恐怖のSIMカードだったのだ。
教訓:タダほど怖いものはない。

このヴァレンタインの恰好は、キングスマンたちとは対照的なカジュアル。
サミュエル・L・ジャクソンは還暦すぎても、こういうストリート系が妙に様になっているし、迫力もある。

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かぶっていたキャップのせいか、“その後のエマニエル坊や”という感じもしたが。


その部下・ガゼルに扮するソフィア・ブテラは初めて見る顔。
アルジェリア系フランス人のダンサーなのだと。
映画女優としてのキャリアはまだ浅いようだけれど、
ボスのサミュエル・L・ジャクソンにも負けない個性派で印象に残る。
義足の美女という現実離れした、いかにもコミックから飛び出したキャラが面白い。
俊敏な動きを実現する彼女のハイテク義足を見ていたら…

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オスカー・ピストリウスは言うまでもなく、
ドクター中松のフライングシューズ“スーパーピョンピョン”をも思い出した。




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他にも、キングスマンのリーダー、アーサー役のマイケル・ケイン
メンバーで教官のマーリン役のマーク・ストロング等、イギリスのオヤジたちがとにかくカッコイイ!





アクションがあってファッショナブルで、台詞もウィットに富んでいて、キャストも絶妙。
ヒットする要素をあれこれ詰め込んだ上手いエンターテインメント作品。
スパイ・アクションに大して興味がない私でも、“スーツ萌え映画”、“オヤジ萌え映画”としての満足度120%。
(コリン・ファース限定で考えても、『シングルマン』と並ぶ“2大スーツ萌え映画”!)
そう遠くない将来、本作品にインスパイアされた中華圏の映画人の手で、
アクションシーンを何倍にも強化した中華版『キングスマン』が制作されそうな予感もした。

ただ、こういうエレガントなスパイ物はイギリスのお家芸。
たとえエンタメ作でも、物語にも、イギリスならではの文化的歴史的要素が盛り込まれ、
ちゃんとお国柄が出ているし。

物語の根底にあるのは、日本人には実感しにくい根深い階級社会。
「出身が貧しくても、努力次第でそこから抜け出せる」というメッセージを発しているが、
下層階級を美化していないし、上流階級の批判もしていない。
批判の対象は、お金だけを得て、気高い精神性を伴わない新興の成り金。
地位の高い人には、それに見合った義務があり、人々のために尽くさなければならないという
“Nobless Oblige(ノブレス・オブリージュ)”の精神を描いているわけ。
また、そのような高貴な紳士は、立ち居振る舞いは勿論の事、装いもキチンとしていなければならない。
“人を見掛けで判断するな”というのは、とても日本的な考えで、
ヨーロッパは勿論、世界的には“人は見掛けで判断される”場合の方が多いのです。
この映画、日本でもかなりヒットしているようだし、日本人男性も良い意味で感化され、
見た目も振る舞いももう少し洗練された殿方が増えることを切に願いますワ。


日本の男性の皆さま、お洒落はまず足元から。ヨーロッパでは、下流の男でも知っていることなので、
映画の中ではハリー・ハート先生から着こなしアドバイスさえありませんでしたが…

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“スーツを着る時はハイソックスを履く”は鉄則です…!
足を組んだ時にスネがチラ見えするなんて下品の極みと鼻で笑われることを覚えておきましょう。

したコメ『全力スマッシュ』キャスト&スタッフ豪華舞台挨拶♪

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第8回したまちコメディ映画祭in台東、通称“したコメ”が開幕。
新たな映画祭を勢いで立ち上げても、その後ちゃんと継続的に開催できるのだろうか?!
と最初は半信半疑であったが、ナンだカンだいって、もう8回目になるのか。

昨年は、確か『ゴッド・ギャンブラー レジェンド』(映画祭でのタイトル『ヴェガスからマカオへ』)だか
『西遊記~はじまりのはじまり』だかを観ようかどうか迷っている内に結局行きそびれたら、
上映日にちょうど強烈な台風が襲来。
楽しみにしていた人々や関係者には残念だったとしか言いようがないけれど、私自身はそれで諦めがついた。

今年のラインナップの中で、強いて観たいものを挙げるなら、
特別招待作品として上映される香港映画『全力スマッシュ~全力扣殺』
但し、本作品は2015年10月10日に日本公開が決まっているので、絶対ではない。

ところが、したコメの『全力スマッシュ』の上映で、
な、な、なんと総勢6人ものキャスト&スタッフが舞台挨拶を行うと発表された。
もー俄然行きたくなっちゃって、前売り券購入。
そんな訳で、開催8度目にして、私はしたコメに初参戦する運びとなった。


(なお、↑今年のポスターは、画風からも分るように、水木しげるの描き下ろし。
浅草雷門に集まった妖怪たちの様子が賑やか!)

★ 浅草

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8回目になる2015年のしたコメ、開催初日の9月19日(土曜)は、
昨年とは打って変わり、晴天に恵まれた。気温も30度近くまで上がり、暑いくらい。
この日私は、他に色々予定を詰め過ぎてしまい、別の場所からの移動だったので、
映画上映のある夕刻に浅草到着。
私は見ていない昼間のレッドカーペット・イベントも、随分盛り上がったようだ。

会場時間よりちょっと早めに浅草に到着したので、近隣を軽く散策。
外国人も沢山いるけれど、この日は連休中ということもあり、日本人観光客もいっぱい。



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何やら人だかりができているので覗いてみたら、中央に艶やかな着物姿の女性がいて、
写真撮影に応じている。
後方から「うわぁ~、芸者さん!これからお仕事かしら」という声が聞こえたけれど、
私はその後もこの女性がこの近辺をゆらりゆらりとお練りしているのを見掛けた。
もしかして、浅草では、観光客を喜ばせる一種のサービスとして、
こういう女性に近辺を巡回をしてもらっているのではないだろうか。地域活性の良いアイディア。
人力車も以前より増えている気がする。しかも、かなりの利用率。
休日の浅草は、とても活気がある。
かといって、ちょっと脇道に反れると、昔ながらの情緒もあり、都内でも未だ独特な地域。

★ 浅草公会堂

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会場は浅草公会堂。ここへ行くのは初めて。
仲見世通りをぶらぶらしている時に、すぐ西側に建物が見えたのだけれど、
入り口はオレンジ通り側にしかないようで、少しだけ探してしまった。

開場は、上演開始30分前の夕方5時半。
全席自由席なので、私はその5分ほど前、5時25分くらいに到着。
すると、すでに結構長い列ができていた。
先頭集団は、長年ディープに香港映画を愛し続けている女性たちとお見受けした。
バドミントンを題材にした『全力スマッシュ』を応援するため、
シャトルを烏帽子のように頭頂部にのせている女性もいる。愛が深いですね~。



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大して待たずに入場開始。
舞台挨拶は前方で観たくても、映画は後方が好きなので、あまり前過ぎない7列目の席をキープ。

開演するまでの時間、スタッフがプラカードを持って、
“前の座席を蹴らないように”とか“場内飲食禁止”といった注意事項を説明している。
その中に、“場内禁煙”というのもあったのだが、浅草辺りだと、未だ昭和のストリップ劇場感覚で、
こういうホール内で煙草を吸っちゃうおじちゃんが居たりするのかしら…??

私が想像していた浅草公会堂は、まさに気兼ねせず煙草をバカスカ吸ってしまえるような、
下町の昔ながらの公民館風の場所だったので、思いの外モダンで清潔だったのが、嬉しい驚き。
外壁は昔風だったので、内部だけ改装したのかも知れない。

★ したコメ特別招待作品 香港映画『全力スマッシュ』 登壇メンバー

開演の6時になると、奥浜レイラが登場し、ちょっとした挨拶と説明。
5分ほどで 『全力スマッシュ』の上映が始まり、それも終わった夜7時55分頃、いよいよ舞台挨拶スタート。




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画像右から、司会進行役の大場渉太(…かな?)といとうせいこう。
続いて、黃智亨(ヘンリー・ウォン)監督、主演女優兼プロデューサーの何超儀(ジョシー・ホー)
出演者の邵音音(スーザン・ショウ)、林敏驄(アンドリュー・ラム)、劉浩龍(ウィルフレッド・ラウ)、
そして音楽を担当した日本人の波多野裕介

本作品の監督は、黃智亨だけではなく、本当は郭子健(デレク・クォック)との共同監督だが、
残念ながら今回は一人で参加。
あと、作中重要な役を演じている鄭伊健(イーキン・チェン)や鄭中基(ロナルド・チェン)も不参加だけれど、
一作品で6人も来てくれるなんて、充分豪華。

何超儀、この日のお召し物は、白いフリンジが全体を覆うジャケットで、
これを見ていたら、私は何となく市川猿之助のスーパー歌舞伎を思い出した。
髪型や顔は、イザベラ・ロッセリーニに似てきた。

邵音音は、雲翔(スカッド)監督作品『ボヤージュ』の初日舞台挨拶のために、8月末に来日したばかり。
その時は、レイトショウだったので、パスしてしまったけれど、まさか3週間で東京に舞い戻ってくださるとは。
圧倒的な存在感は、想像していた通り。
映画の中では、ずんぐりむっくりのオバちゃんに見えるけれど、実物はあんよがスラリ。
華人は美脚が多いですよねぇ~。

林敏驄は、映画の中で、呑んだくれの堕ちたチャンピオンを演じているのだが、
その役と同じように、足元ビーサンで出席。
ビーサンにばかり気を取られ、ちゃんと服まで見ていなかったのだけれど、
今、この画像を見たら、Tシャツの胸に書かれている文字が“虚弱体質”だった。

★ 『全力スマッシュ』ティーチイン

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今回は、ステージ上のライティングが丁度良かったのかしら…?
7列目から適当に撮った割りに、鮮明に映っている写真が多い。
ここには数枚しか載せていないけれど、ご興味のある方は、拡大して御覧くださいませ。

それはそうと、「映画終了後約15分の舞台挨拶」と聞いていたのに、たっぷりのティーチインであった。
ムードメーカーはサービス満点の邵音音と林敏驄の二人で、終始ふざけ合っていて、会場に笑いが絶えない。
質問が有ろうと無かろうと、常に複数人が同時に喋っているから、内容がまったく頭に残らないのだが、
“なんだかよく分からないけれど楽しかった”という記憶だけは刻まれた。

そんな訳なので、ここには沢山あったやり取りの中で、特に印象に残った話だけをいくつかピックアップ。


質問
バドミントンのトーナメントで最後に優勝するというラストも有り得たと思いますが
なぜあのようなラストにしたのですか?

黃智亨監督
人生には色んな事があるけれど、最後の言葉“また今度(後會有期)”に、人生には続きがある、
努力することが大切だという思いを込めました。




質問
ちょっと下品なんですけれど、あのゲロはどうなっているんですか?(質問者は子供)

林敏驄
こういうシーンを入れれば、子供たちが絶対に喜んでくれると思っていました。
撮影は大変でした。まず、毎日9時から5時までジョギング。走って、走って、走りまくります。
ただ走るだけではなく、食べながら走って走って、絶えず走ります。
これをずっと続けると、一年後には吐けるようになります。
まぁ、今のは全部ウソですが。最終的には監督のCG。
もっとも隣のこの人(=邵音音)を見ると吐きたくなりますが。




波多野裕介
(波多野さんは、スーザンさんのお嬢さんと結婚していらっしゃるんですよね、という投げ掛けに対し…)
はい、義理のお母さんなんです。日々の生活でも面白い人なんですヨ。
この二人(邵音音&林敏驄)、ずっとこんな感じで、漫才のコンビのようです。




質問
劉浩龍さんは、本当はハンサムなのに、エキセントリックな役を演じていますよね?

劉浩龍
髪を切らされたり、ヒゲを生やさせたり、モリモリにさせられたり、
しかも、冬の撮影で、皆ちゃんと服を着ているのに、僕だけランニングでした。




質問
邵音音さんは、郭子健監督作品に必ず出ていますよね?

邵音音
はい。郭子健監督だけではなく、黃智亨監督も、以前からの付き合いです。
黃智亨も、実は『燃えよ!じじぃドラゴン』に、脚本、アニメ、CGで関わっています。
私が若手のどの監督が好きというのではなく、全ての若手の監督が私のことを好きなんです!




質問
好きなシーンや、大変だったシーン等、思い入れのあるシーンはどれですか?

何超儀
スマッシュを決めるシーンはCGなので、撮影する時にはシャトルが無いんです。
なので、シャトルがあたかも有るかのように、どこに視線を向けるか、大変でした。

邵音音
どのシーンも全部好き。私、速く走れていたでしょう?!

林敏驄
最後、いよいよ僕が試合に出場しなければならないというシーン。
監督から「観客が笑いながら感動する演技を」と言われました。

劉浩龍
最後の3人の義兄弟のシーンですね。
あのシーンを撮った日は、香港で一番寒い日だったのに、やはり僕だけ衣装がランニングでした。

波多野裕介
「コーヒーorティー?」のシーン。
あのシーンに流れている曲は、広東オペラ風なのですが、
よくよく聴くと、広東語で「くたばれ!」と歌っているんです。

黃智亨監督
皆さんが挙げたシーンは全部僕も好きです。
でも、エンディングの歌のところは特に好きです。





ティーチインが終わったのは夜8時半。
15分と聞いていた舞台挨拶が、結局30分以上のティーチインになったのだ。

ここに挙げたティーチインの内容は、ごく一部(…しかもかなりいい加減)。
中でも私にとって印象的だったのは、ゲロの話と波多野氏が実は邵音音の娘婿だったという話。
香港映画にゲロは付き物だが、映画祭のティーチインでゲロに触れたのは、
2006年東京国際映画祭『イザベラ』のティーチイン以来。
あの時、彭浩翔監督は「ゲロはフツーのこと」と言っておられた。(→参照
邵音音の娘婿が波多野氏というのは、森山良子の娘婿が小木博明というのとは
またちょっと違う感覚だけれど、「え、えーっ…!?」という驚きが。
元々嫁姑と違って、お婿さんというのは姑と上手くやっていけるものだが、
邵音音のようななエキセントリックなお姑サマだったらなおのこと、普通の衝突なんて起きえない気がする。
それどころか、婿殿まで規格外な人生を共有できそうで、楽しいかもね。

登壇者は皆仲が良さそうで、会場もアットホームな雰囲気で、とても楽しく、良いイベントであった。
したコメには興味があるけれど、行ったことはないという方も、機会があれば是非。お薦めです。

映画『全力スマッシュ』は、2015年10月10日(元)体育の日に日本公開。
私の感想は、また後日。

栗のプチ和菓子2種とお彼岸ガッツリ系おはぎ2種(+テレビ雑記)

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<国宝 曜変天目茶碗と日本の美>の会期終了が迫っていることに気付き、
慌てて六本木のサントリー美術館へ。
どうせ空いていて、ゆっくり鑑賞できるだろう、…と高を括っていたら、結構な賑わい。

何かメディアで紹介されたのだろうか。それとも、連休中だから…?
まぁ、とにかく、一見地味な展覧会でも、実はかなりのお宝が多数出展されているので、
この機会に是非見ておきたいという人が沢山いても、まったく不思議ではないのだけれど。

サントリー美術館を出た後、同じ東京ミッドタウン内に入っているトシ・ヨロイヅカで
久し振りにケーキでも買おうかと思ったら、そこも行列ができていたため、面倒になり、断念。
トシ・ヨロイヅカといえば、奥方の川島なお美嬢、どうしてしまったのでしょう。
ぜんぜんファンではなく、まったく興味も無かったけれど、
あの痩せ方を見たら、さすがに心配になってしまった…。お大事に!



さて、今週気になるテレビは、まず本日9月21日(月)深夜、
正確には22日(火曜)午前0時放送のNHK BS1『BS世界のドキュメンタリー』
海外で制作されたドキュメンタリーを紹介するこの番組が、今晩から3夜連続で、
“海を越えたアメリカン・プリンセス”全3話を好評につき再放送。
これ、イギリスのテレビ局制作の『Million Dollar American Princesses~Cash For Class』という番組。
特別興味なかったのだけれど、初回放送の時、なんとなく観たら、面白かった!

“貴族”といえば聞こえは良いが、その実、懐具合が非常に厳しかったイギリス貴族と
お金は腐るほどあっても、地位が無いアメリカ大富豪の娘たちが、ギヴ&テイクで政略的に結婚。
19世紀末から20世紀初頭にかけ、海を渡り、その後イギリスの政治や王室にも影響を及ぼした
アメリカンプリンセスたちに焦点を当て、ドラマ仕立てで紹介する番組。
あのチャーチルの母親も、ダイアナ妃の曽祖母も、そんなアメリカンプリンセスとして取り上げられる。
本当に興味深い番組であった。忘れている部分が結構あるので、録画して再見。



ちょっと間が空いて、9月25日(金曜)、BS TBS『地球絶景紀行』が取り上げるのは、中国の武陵源。
武陵源(ぶりょうげん)は、無数の石の柱が立ち並ぶ絶景で、
世界自然遺産にも登録されている湖南省張家界の自然保護区。
“大自然がつくりだした仙境の世界”だって。ダイナミックで、かつ、幻想的な風景が見られそう。



9月27日(日)、NHK BSプレミアム『桃源紀行』も今回取り上げるのは
中国の自然豊かな場所で、山西省のダーチャン村。
人口わずか16人の“ダーチャン村”って…?
恐らく、山西省盂縣の山奥にある“大汖村”のことだと思う。
この“汖”という漢字、私は見たことがなかったので、読み方と意味を知りたくて、中日辞典をひいたが、
なんと載っていない…。別に私の辞書がお粗末なのではなく、中国の辞書にも今では載っておらず、
清朝・康熙年間に編纂された漢字字典<康熙字典>でようやく見付けられる漢字らしい。
結局何だかよく分からないままだけれど、“山+水”という成りたちからして、ネイチャー感たっぷりの漢字。
大汖村(ダーチャン村)は、一体どのような村なのでしょう…?



その日の晩、BS朝日では『両親に贈りたい旅~ハノイからホーチミンへ ベトナム縦断!絶景いやし紀行』
ベトナムを取り上げる旅番組には興味あるが、“両親に贈りたい旅”だから、シニア向け。
日本人スタッフがいるホテルとか、日本語が通じる店とか、安く頼める日本語ガイドとか、
とにかくシニアが安心して旅行できるプランを村井國夫&音無美紀子夫妻が紹介するようなので、
最近「どっと老けた」、「疲れ易い」などと言っている私でも、いくらなんでもさすが物足りない気がする。
その晩、他に観たい番組が無かったら、将来の予習のつもりで観ておこうかしら。




お菓子は、小ぶりな物と大ぶりな物を各ふたつずつ。
小ぶりの物は、秋らしく栗を使った和菓子。
大ぶりな物は、現在秋のお彼岸ということで、おはぎを。

★ 鈴懸:栗餅

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大きさは、直径約4センチ。
つぶ餡と共に、渋皮栗を包んだお餅。




ひとつめの栗を使ったプチ和菓子は、鈴懸(公式サイト)“栗餅”

栗は熊本県産、餡の小豆は北海道十勝産、お餅は山形県産の彦太郎糯を使用。

“彦太郎糯(ひこたろうもち)”は初めて聞く名。
なんでも、大正13年、山形県の遊佐町という所で生まれたもち米の銘柄らしい。
ただ、この彦太郎糯は、稲丈が1.5メートルにもなるため倒れ易く、
栽培も管理も困難で、次第に姿を消していったという。
ところが近年になり、遊佐町の若い生産者が、彦太郎糯を復活させよう!と立ち上がり、
栽培と普及に努めているのだと。
へぇー。農家も若い世代が頑張っているのですね~。
自分たちが元々持っていた“眠れるお宝”に目を付け、それを復活させ、世に広めれば、
地域のカラーが出て、新しい物に飛びつくより、よほど強みになる。

彦太郎糯の特徴に関してはまったく知らないが、
この栗餅を食べた限り、シッカリと弾力のあるお餅という印象を受けた。
弾力があってよく噛むせいか、お米の旨味もきちんと感じる。

中に包まれている餡は、鈴懸定番の藤色の上品なこし餡ではなく、つぶ餡。
お餅にコシがあるから、あのこし餡では多分負けてしまう。つぶ餡で正解。

栗は渋皮付きで、大きくてホクホク。
ほぼ“栗の大きさ=お餅の大きさ”。

コシのあるお餅とつぶ餡を使っているので、鈴懸の他の商品に比べると、ややガッツリ気味の素朴な栗大福。
でも、小ぶりで、良い栗を使っていて、やはりどこか上品な印象。

★ 仙太郎:生渋栗

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大きさは、幅約4センチ。
渋皮付きの栗を丸々一個こし餡で包み、ケシをまぶし、栗に見立てたお菓子。




次も栗のプチ和菓子で、仙太郎(公式サイト)“生渋栗”
こちらは、昨秋食べて気に入ったので、今秋にもリピート買い。

去年も今年もお店で質問していないので、この餡が何なのかよく分からない。
こし餡と言っても、普通のこし餡とはどこか違うような気がする。とにかくとても滑らか。
甘さは控えめのあっさり味で、栗を邪魔せず、むしろその栗をより美味しくするための名脇役。

大きめで素朴な和菓子が多い仙太郎にしては、随分上品な印象のお菓子。
美味しいだけではなく、見た目の可愛らしさにも惹かれる。

★ 仙太郎:七穀ぼた

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大きさは、幅約7センチ。
青じそを混ぜ込んだ七穀米に、つぶ餡を包んだぼた餅。




引き続き仙太郎のお菓子だけれど、プチ和菓子ではなく、ドッシリ大きな“七穀ぼた”
秋のお彼岸なので、ブログのタイトルには一般的によく使われる“おはぎ”と記したが、
仙太郎では、この手のお菓子は一年中“ぼた餅”と呼ばれている。
“ぼた餅=牡丹餅/おはぎ=萩の餅”ではなく、売り物にならない欠けた米、
通称“ボタ”を使って作られたお菓子が“ぼた餅”であるという説に由来する。

何種類か有る仙太郎のぼた餅のひとつ、
“七穀ぼた”は、当ブログにしばしば登場している七穀米で作ったぼた餅。
七穀とは、もち米、黒米、ひえ、粟、たかきび、押し麦、小豆の7種類。
そこにさらに、青じそが混ぜ込まれている。

7種の穀物が生み出す多様な食感が楽しい。
全体的には、もっちりとした弾力。
これを食べる時の咀嚼回数は、普通のぼた餅の倍以上だと思う。…多分。

中に包まれている田舎風のつぶ餡に、青じその清涼感がアクセント。
表のお米の部分だけだと甘さが無いお食事系の、なんだか不思議なぼた餅。
ただでさえ大きめなのに、よく噛まなければならない雑穀を使っているから、食べ応えがかなりある。

★ 仙太郎:蕎麦ぼた

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大きさは、幅約7センチ。
煎った蕎麦の実と青じそを混ぜ込んだもち米で、つぶ餡を包んだぼた餅。




最後も仙太郎で“蕎麦ぼた”
七穀ぼたはよく食べているけれど、これは初めて。
定番商品ではなく、伊勢丹で9月末までの限定販売の商品。

商品名からも分るように、こちらは、ベースのもち米に、煎った蕎麦の実を混ぜている。
さらに、七穀ぼたと同じように、青じそも。中がつぶ餡なのも同じ。

包装を開け、取り出す時に、香ばしい蕎麦の香りがプーンと漂った。
味も香りから感じたままの味。
一口目で、麦茶とか、何か煎った物特有の香ばしく、懐かしい味が口の中に広がる。

食感は、普通のもち米だけの物とは当然違い、所々プチプチ。
青じそは、想像していたより少ないのか、さほど主張が無く、隠し味的な効果。

香ばしく、あっさりしたお餅と、存在感のあるつぶ餡で、バランスがとれている。
今まで見たことも食べたこともない斬新なぼた餅なのに、郷愁を誘う素朴な味。
他では見掛けない変わったぼた餅なので、今月末までにできればもう一度食べておきたい。

赤坂大歌舞伎2015

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赤坂ACTシアターの柿葺落公演として2008年に始まり、今年で4回目になる赤坂大歌舞伎。
私は初演の時、新しい試みがどのようなものかと興味が湧き、劇場へ足を運んだ。
その時の出し物は『狐狸狐狸ばなし』と『棒しばり』。
お目当てだった『狐狸狐狸ばなし』は期待を裏切らない面白さだったし、
当初“オマケ”程度に思っていた『棒しばり』は、実は非常にアクロバティックな演目で、
演じる中村勘九郎(当時:勘太郎)&七之兄弟の驚異の身体能力と表現力に感動させられた。

また行く!と思っていたのに、ズルズルと月日ばかりが過ぎ、それっきり。
2012年には大好きだった中村勘三郎が57歳の若さで突如亡くなり、益々歌舞伎離れ。
そろそろ勘三郎の御子息の様子をうかがわなくてはと思い、今年久し振りに赤坂ACTシアターへ。
他では観ているけれど、赤坂大歌舞伎は、あの初演の時から実に7年ぶり!

★ 赤坂ACTシアター

1ヶ月近い会期の間、私が鑑賞したのは、9月19日(土曜)昼の部。
チケット購入が出遅れてしまったため、候補に挙げていた日がことごとく取れず、
諦めかけたその時、この日のこの回に限って、なぜか1席だけポツンと良席が空いていたため。



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そして当日。
会場の赤坂ACTシアターは、入り口までのアプローチにカラフルなノボリが並べられて華やか。



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ホールには、役者に贈られた花が飾られ、食べ物やお土産の販売も勿論ある。
リニューアルした歌舞伎座で未だ観劇していないので、何とも言えないけれど、
客層はこちらの方が幅広く、服装もカジュアルな人が多いような気がする。
だからこそ、ポツリポツリといる和装の人が、とても素敵で目を引く。
男性でも和装の人がいて、大変お似合いであった。



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久し振りの歌舞伎観劇なので、念の為イヤホンガイドも借りた。
利用料金は7百円+デポジット千円(デポジットは機材返却時に返金)。
イヤホンガイドは、物語の解説にとどまらず、歴史的背景や歌舞伎の豆知識も語られるから、とても楽しい。

★ 座席

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私の席は、1階K列。前から11列目の中央ブロック右寄り。
ステージに近いが、接近し過ぎず、横も奥も見渡せる。
ちょっとした花道は、私の席からはやや遠い左側に設置。
ただ、役者が舞台右そでから下りてきて会場内を回ってくれた時は、かなりの近距離で見ることができた。
I列の人なら、なおかぶりつきで見られるはず。

★ 演目

今回の演目は、『操り三番叟(あやつりさんばそう)』と
『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり) お染の七役』。


上演時間はこんな感じ。
『操り三番叟』-25分
幕間-25分
『お染の七役』序幕・二幕目-1時間35分
幕間-15分
『お染の七役』大詰-30分

開演から終演まで通しで3時間10分。休憩を除くと正味2時間30分。


それぞれの演目については、以下の通り。

★ 『操り三番叟』

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能楽の儀式舞踊『三番叟』を基に創作された多くの“三番叟関連作品”の内のひとつ。
糸繰りの人形が三番叟を踊るという舞踊の舞台。


配役は…
中村勘九郎:三番叟
坂東新悟:千歳
中村国生:後見
坂東彌十郎:



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キン肉マンの額に“肉”と記されているように、
三番叟の額には赤い文字で“寿”と記されている(額の文字は日替わり)。
赤、黒、白、金をベースにした派手な衣装も楽しい。足袋はなんと目も覚めるようなイエロー。

踊る三番叟の動きは、人間のものではなく、まさに操り人形。
まるで本当に天井から垂れる糸に操られているかのように、舞台上をふわふわ軽やかに動くが、
相当な技術と体力がないと、こうはいかない。
もちろん、裏での努力をこれ見よがしに押し付けてくるわけではなく、
とてもユーモアのある舞踊で、見ていて顔がほころんだ。

あと、そう、三番叟の後見(操る人)を、橋之助の長男・中村国生が演じている。
いつの間にか19歳だと。見せ場もあって、もうちゃんと歌舞伎役者になっておられた。

★ 『於染久松色読販 お染の七役』~三幕七場

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作・四世鶴屋南北、改訂・渥美清太郎。

宝永年間に大阪で実際に起きたお染と久松の心中事件の舞台を、大阪から東京に移した作品。
質屋油屋の娘・お染と山家屋清兵衛の縁談が進められるが、
実はお染には久松という心に決めた相手がいて、その久松にもまた母が決めたお光という許婚がいる。
この久松、元々は武家の息子で、消えた御家の短刀と折紙(=保証書)を探している。
久松の姉・竹川も、弟を案じ、短刀の捜索と金の工面を土手のお六に依頼。
お六とその亭主の鬼門の喜兵衛は、一策を講じ、油屋で金を騙し取ろうするが…。


配役は…
中村七之助:油屋娘お染/丁稚久松/許嫁お光/後家貞昌/奥女中竹川/芸者小糸/土手のお六
中村勘九郎:鬼門の喜兵衛
坂東新悟:油屋多三郎
中村国生:船頭長吉
中村鶴松:腰元お勝/女猿廻しお作
片岡亀蔵:庵崎久作
坂東彌十郎:山家屋清兵衛


お嬢様とお嬢様の家に奉公している男の身分違いの悲恋、
お江戸版“ロミオとジュリエット”だと思い込んでいたら、まぁそれもあるけれど、ちょっと違う。
久松はそもそも武家の息子。父が名刀・午王義光をなくしてしまったため、
父は切腹、お家はおとり潰し、久松は身分を伏せ、奉公に出たのだ。
このような背景があるから、刀を巡る騒動や各々の思惑が絡み、ただの悲恋には収まらない面白さが。
見所は、ズバリ七之助の早替わり!七之助だけに、演じるのはなんと一人七役!

物語の序盤は人間関係の説明でもあるから、冒頭のたった10分程度の間にも、
確か4人くらいに次々と変わっていったので、その時点ですでにビックリ。
一例を挙げると、(↓)こんな感じ。

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左から、質屋のお嬢様・お染、お染の恋人・久松、久松の許婚・お光。
衣装も髪型もまったく異なるのに、早替わりに1分とかからない。
しかも、衣装は見るからにチャチな粗末な物ではなく、ちゃんと豪華。
また、見た目を変えているだけではなく、声や喋り方、身のこなしで、ちゃんと役を演じ分けているからお見事。
あっ、ちなみに、お光が着ているような緑色の衣装は、歌舞伎では田舎娘によく使われるらしい。
一説には、長閑な田園の風景を連想させる色だからなのだとか。

驚くしかない早替わりだが、お染と久松は恋仲なのに、さすがにその後も同じ場面にまったく登場しない。
そりゃあそうよねぇ~、映画やドラマだったら、CGの処理で、一人の俳優を同じ画面に入れられるけれど、
ナマの舞台ではそれが不可能。
きっと二者を同時に出さずに済むように、物語が上手く練られているのだろう、
…と物語の展開を気にしながら鑑賞。

そうしたら、最後の幕・大詰で、なんとお染と久松が一緒に登場!ど、ど、どうなっているの…???
意地悪くタネを見破ってやろうと目を凝らしたが、
仕掛けが、まーーーったく分らなぁぁーーーーーーーい…!!!!!
七之助って、本当は双子でしょう??じゃなきゃ、ものの2~3秒でお染⇔久松は無理っ!


私は勘九郎ファンなので、勘九郎より七之助の出番が多い今回の公演をどれくらい楽しめるか、
実のことろ、やや不安もあったのだけれど、結果は大・大・大・大・大満足っ!
伝統芸能でまさかのイリュージョン。
歌舞伎を難解なもの、古臭いものだと思い込んでいる人にこそ、観ていただきたい。
芸術性と娯楽性を兼ね備えた、驚愕のパフォーマンスだから。

あと、やはり役者が素晴らしい。
映画でもドラマでも舞台でも、一般的な俳優の中には“天性の俳優”と呼ばれる人がいるが、
歌舞伎は、仮にその“天性”に恵まれている人でも、パッとできるものでは絶対にないと感じる。
歌舞伎役者のDNAが組み込まれている人が、言葉もろくに喋れない子供のうちから、歌舞伎に慣れ親しみ、
厳しい稽古を積み、骨の髄にまで歌舞伎が染み付いているからこそ為せる業であり、発するオーラ。
一方的にずーっと見守り続けてきた勘九郎と七之助だけれど、益々彼らのファンになってしまった。
(よくよく考えると、AKBのような“自分たちで育てるアイドル”の原点も、歌舞伎にあるかも知れない。)



舞台の最後は、その日の大入りを祝い、役者が観客席に向け、中村屋の手拭いを何本か投げた。
私の近くに居た女性も、キャッチしていた。いいなぁ~。


2015年の赤坂大歌舞伎は、千秋楽の25日まで、あと何公演かある。
これから行く人は、会場内が冷えるでの要注意。羽織りものを持って行かないと、凍死しかける。
(私はショールを持参していったが、それでも軽く風邪をひいてしまった…。)



◆◇◆ 赤坂大歌舞伎 ◆◇◆
会場:赤坂ACTシアター

会期:2015年9月7日(月曜)~25日(金曜)

大陸ドラマ『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』

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一応大学は出たものの、何の取り柄もない22歳の女の子・薛杉杉は
幸運にも誰もが憧れる上海の大企業・風騰集團に採用され、上京。
慣れない仕事に奮闘しながら一ヶ月が過ぎようとしていたある晩、一本の電話で起こされる。
「薛杉杉さん、下に待たせている車に乗って、至急上北医院の産婦人科に来て下さい。」
わけも分らぬまま、車に乗り込んだ杉杉を病院で待っていたのは
なんと風騰集團の総裁・封騰であった。
なんでも封騰の妹・封月が出産するのに、封月の血液型、RHマイナスAB型の備蓄が足りないため、
同じ血液型の杉杉に輸血に協力して欲しいというのだ。
杉杉はこの申し出に快く応じ、封月は無事子供を出産。

妹の恩人・杉杉に、小切手でも渡そうかと考える封騰。
ところが封月は、それでは心がこもっていないと、兄をたしなめる。
そして、毎日ランチタイムに、封家のコックが作ったお弁当を届けようと提案。
こうして杉杉の元に、造血作用のあるレバーが入ったお弁当が来る日も来る日も届けられるようになり…。



2015年2月、ホームドラマチャンネルで開始した大陸ドラマ『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』
約5ヶ月後の7月、全33話の放送を終了。
私は、録画しておいた最終話を、この連休に鑑賞し、ようやくゴールイン。

★ 概要

大陸の人気ネット小説、顧漫(グー・マン)による<杉杉來吃>を
『シンデレラの法則~S.O.P女王/勝女的代價』、『ずっと君を忘れない~熱海戀歌』などを手掛けた
台湾の脚本家集団好故事工作坊(グッド・ストーリー・インク)が脚本におこし、
『P.S.男~偷心大聖PS男』、『絶対彼氏~絕對達令』などでお馴染みの台湾のヒットメーカー、
劉俊傑(リウ・ジュンジエ)が監督した偶像劇。

原作者の顧漫は、1981年生まれの女性の作家。
あちらでは人気があるようで、作品の映像化はこれだけではない。
例えば、<何以笙簫默>は、本作に引き続き劉俊傑監督がまたまたドラマ化しているし、
黃曉明(ホアン・シャオミン)、楊冪(ヤン・ミー)、Angelababy、佟大為(トン・ダーウェイ)ら豪華キャストで
楊文軍(ヤン・ウェンチュン)監督に映画化もされている。
(この映画は『ユア・マイ・サンシャイン』の邦題で、東京・中国映画週間2015で上映予定)。


今回のこの『お昼12時のシンデレラ』は、舞台も出演者も大陸なので
一応“大陸ドラマ”と位置付けたが、上記のように裏方が台湾なので、実のところ中台合作ドラマ。
近年、台湾では、様々な分野で、大陸と手を組むケースが増えているけれど、
ドラマの世界でも、それは同じで、表面的には大陸で中身は台湾という“陸皮台骨”な合作が益々盛ん。
もはや“台湾ドラマ”、“大陸ドラマ”といった区分は困難なので、
無難に“華流ドラマ”とまとめるべきかとも思うが、その表現があまり好きではないので、もうちょっと様子見。


原題にある“杉杉(shānshān)”は、主人公の名前。
ドラマのタイトルも本来原作小説と同じように
“杉杉が食べに来る”を意味する『杉杉來吃(shānshān lái chī)』になるはずであったが、
“ゆっくり遅れてやって来る”を意味する熟語“姍姍來遲(shānshān lái chí)”に発音が酷似しているため、
当局から、テレビの前のお子ちゃまたちが間違いを覚えるといけないと御指摘があり、
改名させられたのだとか。(相変わらず厳格というか、まぁはっきり言って面倒くさいお国柄…。
むしろ、敢えて言葉遊びで“姍姍來遲”にかけ“杉杉來吃”と命名したのだと思うのだが…。)

★ 物語

たまたま珍しい血液型・RHマイナスAB型だったため、
有名な大企業・風騰集團に運よく採用されたごく平凡な女の子・薛杉杉が
その血液を、若き総裁・封騰の妹、封月が出産する際に提供し、恩人となったことで始まる
大企業に“血液型採用”の女の子と二枚目セレブ総裁の恋を描くロマンティック・ラヴ・ストーリー


学歴、家柄、ルックス、どこをとっても秀でた所が無いごくごく平凡な女の子が、
学歴、家柄、ルックス、どこをとっても超一流の御曹司に見初められ、大玉の輿に乗るのだから、
絵に描いたように分かり易いシンデレラ・ストーリーである。

但し、白馬の王子様との夢のようなデートを綴るキラキラのシンデレラ・ストーリーとは少々異なる。
オノレをよく分かっている主人公・杉杉本人には、分不相応な玉の輿願望などこれっぽちも無く、
大富豪・封騰が、まさか自分程度の人間に気があるなどとは夢にも思いもよらないため、
彼からのアプローチも、いちいち“無い裏”を読み、恋が一向に進行しない。

これだけだと、無欲な女の子に降って湧いた綺麗すぎる純愛物語になってしまうが、
杉杉とは対照的に、自分の娘を玉の輿に乗せたくて仕方が無いガツガツした親戚の叔母さんを登場させ、
拝金主義を皮肉ったり、杉杉のような地方出身者と都会のセレブとの格差を描いたり、
所々に昨今の中国が抱える問題を織り交ぜた社会派ドラマになっている(←嘘。そこまで大袈裟ではない)。

また、何の取り柄も無かった杉杉が、セレブなダーリンに釣り合う女になろうと、
会計士の資格を取ったり、社交ダンスを習ったり、最終的には経営者にもなったりと、
努力を重ね、自分を磨き、変わっていく様子を描く成長物語でもある。

★ 吹き替え…?

シンデレラ・ストーリーはもう世の中に溢れているから、もしこれが台湾偶像劇だったら、
「またか…」とゲンナリしていたに違いない。
しかしこれが大陸の偶像劇になると、案外ささやかな事さえも新鮮に感じられるもの。
そのひとつが声。

大陸ドラマといえば、吹き替えが当たり前。
中国語で台詞を喋っている俳優に、声優が同じ中国語で声を当てるため、口の動きが合っており、
日本の吹き替えと比べ、ずっと自然に感じられることは認めるが、
それでもやはりどこかにギコチなさが残るもの。
ところが、本ドラマでは、俳優の地声を採用していることが一目瞭然!(←いや、一耳瞭然?)
他国では当たり前でも、これが大陸ドラマだと思えば、非常に画期的。
それに、どんなに上手い声優の声より、俳優自身の声の方が本人の個性に合っているに決まっている。

大陸ドラマに起きたこのようなささやかな変化の一つ一つが、
在り来たりのシンデレラ・ストーリーをも新鮮に感じさせている気がする。

★ キャスト その①:シンデレラと王子様

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趙麗穎(チャオ・リーイン):薛杉杉~風騰集團に就職した地方出身の女の子

『蒼穹の昴~蒼穹之昴』『後宮の涙~陸貞傳奇』といった時代劇でしか見たことがなかった趙麗穎。
初めて現代劇で見た第一印象は、「眉毛、太っ…!」
確かにこの頃太眉ブームが来ていたけれど、取って付けたような彼女の太眉にオシャレ感はなく、
毒っ気を抜いた“癒し系クレヨンしんちゃん”にしか見えない。
しかし、よくよく考えてみたら、そもそも田舎モンの杉(スギ)ちゃんにオシャレ感なんて不要なのだ。
杉ちゃんが醸す野暮ったさは、太眉の賜物ヨ。
それに、太眉はまだマシな方で、メイクやファッションに無頓着な杉ちゃんは…

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下手に張り切ると、方向性を見失いがち…(笑)。

さらに、見た目以外で彼女を野暮ったく見せているもう一つの要素が声。
初めて地声で演じる趙麗穎を見たが、声質にも喋り方にも独特のモッタリ感があり、杉杉のキャラにぴったり!
滑舌のよい声優では、このモッタリ感は出せない。声も俳優の一部、喋り方も演技の内だと、改めて思った。

野暮だのモッタリだのと散々に評しているが、これは賛辞。
セレブに見初められ玉の輿に乗る杉杉が、同性の視聴者からヒガまれ反感を買うどころか、応援されるのは、
彼女が猫を被ったアバズレではなく、根っから純朴な女の子に見えるから。
それだけに、妊娠が発覚した時は(←後に間違いだったと判明)、
えっ、恋愛経験ゼロでオクテなはずの杉ちゃんが、
いつの間に封騰とあぁーんな事とかこぉ~んな事とかしちゃっていたの?!と軽くショックを受けた…。

ちなみに、そんな杉ちゃんに幸運をもたらした血液型、RHマイナスAB型を
中国語で俗に“熊貓血(パンダ・ブラッド)”ということを、このドラマで知った。
熊猫みたいに絶滅が危惧されるほど珍しい血液型ってこと…?




張翰(チャン・ハン):封騰~風騰集團の若き総裁

人気者の張翰が演じるのは、案の定、“高富帥(背が高くてお金持ちでカッコイイ)”なパーフェクトな男性。
髪型は、当時中華圏で流行っていた韓ドラ『星から来たあなた』の金秀賢(キム・スヒョン)を彷彿させる
前髪重めの韓流スタイルで、カラーは明るいブラウン(←黒髪な分、金秀賢の方がまだマシ…)。
信じ難い事に、わざわざこんなヘアのために、韓国から美容師を招聘。
その美容師は、二十日に一度は大陸へ渡り、張翰の髪に手を入れたという。

私にとっては、見た目でまったく惹かれない張翰扮する封騰であったが、回を重ねる内に、中身にホレた!
口数が少ないというだけでも好きになれるが、さらに、責任感が強く、恋には一途、
しかも莫大な経済力がある上、ケチケチしていない、…と女性を魅了する要素がテンコ盛り。
NHKの朝ドラ『花子とアン』で、吉田鋼太郎扮する嘉納伝助が人気になったのと本質的には同じ。
嘉納伝助と封騰では、年齢も見た目もまったく違うが、一見ぶっきら棒でも根は誠実な昭和の男タイプで
金払いがさり気なく、かつ豪快な大富豪は、やはり女性にとって魅力的なものなのです。

見た目が好みじゃないなどと記したが、張翰自身も30を過ぎ、どんどん素敵になってきた。
スッと涼しげでクラシックな顔立ちだから、黒髪にして、ドラマ版『上海グランド~新上海灘』で
黃曉明(ホアン・シャオミン)が扮した許文強のような役を演じたら、絶対に合うと思うわぁ~。
(だから、頼むから誰か張翰に韓流ヘアは田舎臭いって教えてあげて。)

★ キャスト その②:脇を固めるキャラクター

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黃明(ホアン・ミン):鄭棋~封騰の古い友人にして仕事上のパートナー 両親はアメリカ在住

こちら、その黃曉明(ホアン・シャオミン)から“曉(シャオ)”を抜いた黃明。
このドラマで元々私のお目当ては、張翰ではなく、この黃明であった。
扮する鄭棋は、ちょっと軽くて、女好きな花花公子。
でも、実は根っこは優しく、真面目で、女性にも一途な“イイ奴”であった。
『王子様をオトせ!~就是要你愛上我』で藤岡靛 DEAN FUJIOKAが演じた役と似た立ち位置。



李呈媛(リー・チョンユアン):元麗抒~封家の兄妹の幼馴染み ずっと封騰に片想い

ラヴ・ストーリーには欠かせない恋のライバルは、本ドラマではこの麗抒。
麗抒は、封騰と一緒にアメリカ留学していたこともある幼馴染み。
杉杉とは雲泥の差で、ライバル視することすらおこがましい美人で知的な“出来るオンナ”。
もっとも当の封騰は、終始“雲”より“泥”の方に御執心なので、麗抒の独り相撲。
麗抒は蔭で杉杉のことを「容姿も学歴も家柄も、どこを取っても大したことがない」と見下すが
そんな麗抒自身が実は封家にお仕えしていたお手伝いさんの娘だと判明した時は
「おいおい、オマエが家柄云々を言っちゃうかっ!」と呆れた…。
いや、自分の事を棚に上げてケチつけているのは家柄だけではなく、容姿もである。
麗抒は確かに美人さんではあるが、ナチュラル感に乏しい。

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小ぶりでツンと上向きな鼻は、典型的なMade in Korea。
私は麗抒に扮する李呈媛という女優をこれまで知らなかったので、
本ドラマでの最初の登場シーンで見た時、韓国女優が声優の吹き替えで出演しているのかと勘違いした。

李呈媛は中央戲劇學院出身でありながら、これまでお芝居ではあまり目立っていなかったが
上品で爽やかな笑顔は評判で、広告モデルとしてはそれなりに活躍していたみたい。
そのため、女優として売れる以前の画像もぼちぼち残っているので、見てみると…

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鼻は完全に黒。
目は、昨今、メイクでも整形級に変えられるので断言はしにくいが、まぁ限りなく黒に近いグレーでしょうか。
元々ブスではないのだから、量産型の安っぽい韓流顔なんかにしない方が良かったのにねぇ…。



張楊果而(チャンヤン・グオアル):封月~封騰の妹 出産時杉杉から輸血してもらう

この張楊果而、張翰より大人っぽく見えるから、封騰=弟、封月=姉に思えてならなかった。
見た目だけではなく、すでに結婚し、出産もしている封月は、封騰よりある意味“人生の先輩”で、
封騰の結婚相手の心配までしている世話焼きだから、妹というより姉のように感じられるのかも知れない。
現実にも張楊果而は、張翰より1歳年下で、結婚も出産もしている“人生の先輩”。
『お昼12時のシンデレラ』クランクインほんのちょっと前に結婚した私生活でのパートナーは…

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劇中、封月の逆玉の輿夫・言清を演じている百克力(バイ・カーリー)
2015年1月、二人の間には、ドラマと同じように子供が生まれており、
幼名は、夫・百克力の名前をもじり、巧克力(チョコレート)と命名。
一方、ドラマの中で、杉ちゃんに輸血してもらってまで産んだ子は、その後の存在感が非常に薄く、安否不明。



石安妮(シー・アンニー):薛柳柳~杉杉の従妹 玉の輿狙いの母の勧めで裕福な游承浩と交際

服装のせいで野暮ったい印象だが、よくよく見ると顔は綺麗。
こういう柳柳みたいな女性は、中国の街中で結構見掛けるので、スタイリングにリアリティを感じた。
この柳柳は杉杉の従姉(従姉妹同士で、片や“ヤナギ”で片や“スギ”)。
杉ちゃんの叔母の養女なので、従姉といっても血縁は無い。
中国で他から子供をもらう場合、家を継がせるとか、老後の面倒を見てもらうなどという理由で、
一般的には男児が好まれるようだが、女の子の柳柳は一体どういう経緯で薛家の養女になったのだろう。
柳柳は、自分が養女であることに負い目を感じていることもあり、玉の輿狙いのガメツイ養母の言いなりで、
気乗りしないまま裕福な游承浩との交際を続行。仮初めにも恋人の游承浩は人間的に難アリで、
浮気だけならまだしも、ドラマ終盤には1千万元分の仮想通貨を盗んで逃走するダメンズ。
養女になった幼少期から今日までを一本のドラマにできるほど、実は人生波瀾万丈な柳柳なのです。



王汀(ティナ・ワン・ティン):陸雙宜~杉杉の親友の小説家 

雙宜は、上京したばかりの杉杉を自分の家に居候させる親友。 
サバサバしていて、同性に好かれるタイプ。私もこの雙宜、好きだわ~。
演じている王汀を検索にかけると、第2検索ワードで“日本”と出てくる。
で、プロフィールを見てみると、2007年に日本で演技を学んだことになっている。えっ、そうなの?
出演者中、最も知名度が低い女優だと思っていたが、
なんと日本版wikiにも、“在日中国人の気功師タレント(…!)”と紹介されているではないか。確かに…

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日本で、宮廷式気功ダイエット等の本やDVDを複数出しており、気功関連のサイトでも紹介されている。
それらの写真を見ると、『お昼12時のシンデレラ』の雙宜とは、顔がかなり違うのだが(笑)、
プロフィールを見ると彼女だし、リンクされている本人ブログへ飛んだら、
“今の顔”で日本語でブログをやっていて、『お昼12時のシンデレラ』について書いている記事もある。
へぇー、杉ちゃんの親友は、立教大学を出て日本語を喋れる気功師だったのですねー。意外。
今後も日中双方での活躍をお祈りいたします!

★ 衣装

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台湾偶像劇とこのドラマの大きな違いの一つが、男性の衣装。
台湾偶像劇の男性主人公は、台湾ドメスティックブランドを中心に、画面越しにも安物と判る物を着ているが、
このドラマの男性主人公・封騰が着ているのは、ディオール、ヴァレンティノ、イヴ・サンローラン、
ジバンシー、プラダ、ルイ・ヴィトン、ドルチェ&ガッバーナ、ディースクエアード、ニール・バレット、
アレキサンダー・マックイーン、バーバリー等々、ヨーロッパの一流メゾンの物ばかり。
腕時計もひとつではなく、フランク・ミューラー、ウブロ、ブレゲ、クエルボ・イ・ソブリノス
といった高級時計が袖口からチラリチラリ。

ここまで一流メゾンの最新作を着まくってしまうと、六本木ヒルズにオフィスを構える成金青年実業家のような
痛ましい“頑張っちゃった感”が出て、私は苦手だが(特にクロムハーツは、堅気の総裁には御法度)、
少なくとも、台湾偶像劇より高級品を使っていることは、画面越しにも伝わってくる。
単純に、台湾より大陸の方が、メーカーが積極的に服を提供してくれるのだと思い込んでいたら、
なんとその多くはレンタルではなく、お買い上げの品だという。
ドラマ制作者側が張翰に用意した約20万元に加え、張翰が50万元(≒950万円)の身銭を切って、
香港などで衣装を購入し、毎話脚本を読んだ後に自らシーンに合ったコーディネイトをしたという。
趣味の良し悪しはさて置き、ドラマの衣装が自腹とは、ちょっとした驚き。
衣装代を経費で落とすとか色々処理方法は有るのだろうが、
それにしても売れっ子俳優じゃないと、なかなかここまでは出来ませんわ、多分。


張翰コダワリのコーディネートは基本的にどうも好みに合わなかった私だが、
強いて言うならば、バッチリ決め過ぎちゃった張翰よりは…

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スポーツウェアや家で寛いでいる時のニットなど、カジュアルなお召し物の方がお似合いに感じた。



とにかく、このドラマの衣装は、片っ端から高級品をバブリーに使いまくっているというわけではなく、
特に女性の衣装などを見ると、スタイリストもちゃんと考えてスタイリングしている事が分る。
例え提供される高級品が有っても、それらはあくまでも封月や麗抒といったセレブリティのためであり、
主人公・杉杉や従姉の柳柳は、露店で値切って買ったような野暮ったくて安っぽい服ばかり着ている。

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ラビットやフェイクファーをあしらった“野暮ったい系ガーリー”なコーディネイト多し。
実際に中国の20代前半のOLはこういう感じだという現実味がとてもよく出ている服装。

ちなみに、セレブな封月や麗抒がショッピングに行くのは、大抵フェラガモ。
フェラガモのバッグや靴もしばしば身に付けているので、撮影に協力的だったのであろう。

★ RIO

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スポンサーと言えば、こちら。またまた出たーーーっ、RIO…!!
カラフルなアルコポップRIOが、このドラマでも飲まれまくっているのだ。
中国人(←ドラマの中限定)、どんだけ好きなんだ、RIO。
食事との相性など無視で、家でも外でも、登場人物たちはいつもRIOを瓶ごとラッパ飲み。
カロリーの摂取過多が気になります。

★ テーマ曲

テーマ曲は、オープニングが主演男優・張翰が歌う<風之諾言>
エンディングが何潔(ハー・ジエ)の<身不由己>
曲の良し悪し以前に、このドラマも、オープニングでもエンディングでも
キャストやスタッフ等作品情報を全て消去し、歌の歌詞の日本語訳だけを映像と共に流している事に失望。
歌の中文歌詞さえ出ていないから、カラオケ映像にすらなっておらず、
有っても無くてもどうでもいいイメージ映像がダラダラと流れているだけ。
昨今どういう訳かこのような中華ドラマが日本で急増している。
配給会社は余計な事をしないで欲しい。色々工夫しないで、“まんま”を流してくれるだけで良いのです。

ここには、上記の2曲ではなく、挿入歌の<Roll the dice>を。
英語曲だが、作詞作曲、演唱まで全て、大陸の女性シンガーソングライター高姍(ガオ・シャン)による。
高姍は北京大学卒のエリートなのだと。


曲のセンスが洗練されているし、声が独特。英語の発音もまったく痛くない。
大陸にもついにこういうタイプの女性シンガーソングライターが出てきたか。






主人公・杉ちゃんと封騰では、ただでさえ越え難い格差が有るのに、
さらに、封月という小姑が存在したり、封月とも親密な才色兼備・麗抒が恋のライバルだから、
杉ちゃんに次々と試練が降りかかるドロドロのメロドラマに展開していくのではないかと、
恐る恐る鑑賞していたが、結局は、全体的に、ホンワカした杉ちゃんのキャラクターを表したかのような、
ほのぼのとしたユルいラヴ・ストーリーであった。

当初、封月は、兄に相応しい令嬢を紹介したがっていたので、
小姑根性を発揮し、杉ちゃんを見下し、兄との恋を邪魔するのかと思いきや、
実は封月自身、格下の言清と逆玉の輿婚をしており、人を財力や家柄で差別しない人格者だったし、
恋のライバル麗抒の攻撃も、大して激しくならないまま収束。
でも、何の取り柄も無い杉ちゃんが、総裁に見初められたら、女性の同僚たちはヒガんで、
社内イジメが起きるでしょー、と予想したが、これもハズレ。
日本と違い、ネチネチしておらず、同僚たちは協力的なのだ。
イジメるどころかにこやかに「総裁夫人になっても私の事を忘れないで、ヨロシクね」と
早い内から上層部とのコネクションを作って、将来の保身や出世の手立てを講ずるのは、大陸時代劇と同じ。
中国4千年の歴史の中で、中国人に培われたDNAがなす処世術なのだと、お国柄を感じた。
ネチッこいイジメよりは、建設的かつ現実的ですわ。

終盤、杉ちゃんが柳柳と高級宝飾店をオープンして、
あっと言う間に借金1千万元(≒2億円)を完済したのは、いくらなんでも都合が良過ぎる展開。
安物ジュエリーさえ無縁だった田舎モンの二人が高級宝飾店を開くなんて、
現実なら、借金を膨らませるだけの無謀な計画だと思いますが…。
最終回、商売も覚え、シッカリ者に変わった杉ちゃんが、「私はもう仕事はいい。封夫人で充分」と
専業主婦宣言ともとれる発言をしたのは、やや意外。
かつての中国には、“男女平等、女性もバリバリ働く”というイメージが有ったけれど、
経済状況が良くなるにつれ、専業主婦が増えていると聞く。
逆に、経済状況の悪化と共に、女性も働けと奨励するようになった昨今の日本でこのドラマを撮ったら、
主人公・杉ちゃんを“結婚も手に入れたバリバリのキャリアウーマン”に仕立てて終わるような気がする。


このドラマはぜんぜん期待しないで観て、
実際、傑作と呼べるほどではなく、平均的な出来かも知れないけれど、
出演俳優の地声を使うなど、これまでの大陸偶像劇とは違う新鮮味があり、案外楽しめた。
“張翰主演御曹司モノ”として考えても、『シンデレラの法則』よりこちらの方がずっと良い。
一番の欠点を挙げるなら、“消えモノ”だろうか。
『お昼12時のシンデレラ』とタイトルでもランチタイムを売り文句にしているにもかかわらず、
劇中“大富豪・封家の専属シェフが作るお弁当”として登場するお弁当が、
どう贔屓目に見ても、ことごとくマズそうだったのは、問題である。

ドラマ自体は良くても、日本側で手を加えた部分はぜんぜん駄目。
前述のように、オープニングとエンディングの処理が駄目だし、日本語字幕も駄目。
頼むから、片仮名表記はやめて。“杉杉”程度の漢字も避けなければならないのなら、
日本中の杉田さんや杉本さんは、どうしたら良いの…??!



ホームドラマチャンネルでは、この『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』の最終回を待たずに、
2015年9月13日(日曜)より、毎週日曜3話ずつ、すでに再放送を開始している。

また、木曜深夜の『お昼12時のシンデレラ』の後枠では、今晩9月24日から
謝欣穎(ニッキー・シエ)主演の台湾ドラマ『カノジョの恋の秘密~金大花的華麗冒險』を放送。
相手役の男優は、吳慷仁(クリス・ウー)と溫昇豪(ウェン・シェンハオ)。
何てことない台湾偶像劇という予感はするが、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の秘蔵っ子・謝欣穎と
映画など非娯楽作品にも対応できる吳慷仁が共演している点は、見所になるかも。

芸術の秋に(?)変態界の山P・山下智博

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2015年9月28日(月曜)放送のテレ東『未来世紀ジパング』が
“シリーズ‘中国異変’ 反日中国でなぜ?知られざる日本ブーム”と題した特集の中で、
山下智博を取り上げるらしい。



字面が酷似しているため、ジャニーズの“山P”こと山下智久と一瞬勘違いしそうになるが、
上に貼った画像からも判るように、まったくの別人。
改めて比べてみても…

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顕著に別人。



私は、以前ネット上で“日本HENTAI(日本の変態)”、“超級变态(スーパー変態)”、
“日本来的真正的变态(日本からやって来た正真正銘の変態)”という文字をたまたま見て、
日本には私が知らないどれほどの変態が居るのかと食い付き、彼の存在を知った。


簡単なプロフィールは
氏名:山下智博(やました・ともひろ Shānxià Zhìbó)
生年月日:1985年10月29日
出身:北海道小樽市
学歴:大阪芸術大学芸術計画学科卒

札幌の団体職員を経て、2012年中国・上海へ移住

何の因果か、名前が似ているジャニーズの山Pと生まれた年まで一緒の山下智博。
職業は、2012年の移住以降、上海を拠点に活動する、アーティスト、クリエーターと呼んで良いだろうか。
コスプレをしたパフォーマンスで徐々に注目を集めたようだが、
近年の主な活動は、中国版ニコニコ動画のような哔哩哔哩Bilibili等を通し発表する動画。

特に有名なのが…

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2014年7月に発表した『日本屌丝(日本屌絲)』というショートムーヴィ。

1話平均10分程度で、10話完結。
この作品では、監督・脚本・主演から、主題歌<Love You 薇薇>の作詞作曲歌唱まで自ら手掛けている。
タイトルにある“屌丝 diăosī”を日本語に訳すと、駄目人間とかイケてない奴といった感じか?
作中、山下智博本人が本名のまま演じている素とも思える日本人が、まさにその“屌丝”。
中国で人生初のガールフレンド維維(ウェイウェイ)と付き合うようになるが、早々にフラれ、
半ば騙されて買ったラヴドールに元カノの名に似た“薇薇(ウェイウェイ)”と名付け、
同棲を始める日本の童貞・山下の話。

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作中、ピカチュウの全身タイツに身を包み、薇薇を抱いて上海の街に繰り出す山下の画もシュール。

“ニッポンの正しいヲタク”の姿には失笑してしまうしかないのだが、憎めない愛されキャラでもある。
主要登場人物は他にも数名おり、特にイケメンで恋愛経験豊富な宮崎先輩とのチグハグなやり取りが愉快。
私が、“ダッチワイフもの”である種の感動を得たのは
是枝裕和監督の『空気人形』(2009年)以来かも知れない。
(…もっとも“ダッチワイフもの”は後にも先にも、『空気人形』『ラースと、その彼女』しか観たことないが)。

『日本屌丝』の動画は、敢えてここには貼らないけれど、ちょっと検索するれば、すぐに見付かるはず。
主題歌の<Love You 薇薇>も耳に残るポップな、意外にも良い曲。




山下智博がネット上で定期的に発表している動画がもう一本ある。
『绅士大概一分钟(紳士の大体一分間)』という動画で、
こちらでは毎回真面目に、紳士的に、日本の文化や習慣などを紹介し、
最後に必ずワンフレーズ役立つ日本語を教えている。
実はこれはYoutubeにも公式チャンネルがあるので、日本での視聴も簡単。


ここにお試しの一本。日本人にも分かり易いよう、日本語の多い物を選んでみた。
アニメの中で見た日本の文化祭について知りたいというファンからの質問に答える山下老師。


後半、紳士崩壊…。堰を切ったように内面を吐露する目が据わった山下老師がコワイ…。


ついでにもう一本。こちらでは、宅男(ヲタク)の修学旅行を説明。


馬鹿ですねー(笑)。
“現充(リア充)”とか“非現充(非リア充)”なんて、私、日本語の会話でも使わないけれど、
中国でも若い子は使うわけね。

山下智博レベルのヲタは、本場・日本には相当数いるはずだが、
彼はそういう普通のヲタと少々異なり、表現力があるし、中国語ができるので発信力も違うと、感心する。
いじられキャラっぽい雰囲気がまた良いのでしょう。





明後日10月27日(月曜)放送の『未来世紀ジパング』では、
彼のことを“中国の若者に絶大な人気を誇るカリスマ”として紹介するようだが、
ヲタクを毛嫌いする人も居るだろうし、まぁ中国の若者なら誰もが知っているほど知名度が高いとも思わない。
そもそもこういう人は、あまりメジャーになり過ぎると、マニアックな感じが薄れてしまうので、
ニッチな所で熱烈に支持されていた方が、ファンの側もマニア心がくすぐられるものだ。

今、本人の微博を覗いてみたら、フォロワー数41万人強だから、
中国の人口を考慮したり、有名な俳優などと比べてしまうと、ビックリするほど多いわけではない。
但し、同じ(?)日本人映像作家の岩井俊二監督のフォロワーが約31万人なので、
中国での注目度は、少なくとも、岩井俊二<山下智博、という事だわね。
(ちなみに、日本人トップは相変わらず蒼井そらで、フォロワー数約1600万と、山下智博の約40倍。)

中華圏で日本のAVが人気なように、
表だって言えないだけで、日本独特のエロ、ヲタ、変態には、市場がある。
日本政府が推すクール・ジャパンより、実はそういう“裏クール・ジャパン”の方が根強く支持されている。
ピースフルなヲタクは誰も傷付けないし、見ていて和むし、
めくじら立てて愛国を叫ぶ人たちより、よほど建設的で、国交にも役立ち、社会貢献している。

動く山下智博は、動画作品の中でしか見たことがないので、
明後日放送の『未来世紀ジパング』がどのように取材しているのか、楽しみ。
放送後、日本から微博をフォローする人が増えるかも?

中秋に月餅♪(…ついでにその他の中華菓子)

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2015年の中秋節は、本日9月27日。
今朝は曇っていた東京の空も、今になって晴れてきたけれど、今晩お月様は顔を出すのでしょうか…?

とにかく、“花より団子”。お月様が出ようが出まいが、月餅を食べて中秋気分を満喫。

★ 聚楽

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東京近郊の月餅を売る店で、近年私のお気に入りは聚楽(じゅらく)
あまり若くない日本人が“聚楽”と聞くと、
その昔「聚楽よぉ~ン」という、(↓)こちらのCMを流していた伊東のホテルを連想してしまうことでしょう。


CM、懐かしいですか?そんなアナタ様は、もうそれほど若くないかも知れません。


ま、それはどうでも良い事で、月餅の聚楽はあの「聚楽よぉ~ン」とは無縁。
1960年の創業以来、横浜中華街で中華菓子ひと筋のお店。
代々提供し続けているのは、餡も生地も全て無添加で手作りの正統派月餅!
日本で今どきこういうお店は貴重だと思う。
たまご入り蓮の実餡月餅など、中秋節の時期だけ限定で売っている物もあるけれど、
他の月餅なら、本場・中華圏のように“月餅=中秋節”ではなく、通年販売している。

本場・中華圏で売られている月餅なら、絶対美味しいかというと、そういうわけでもなく、
あちらにも、美味しい物と不味い物がある。
たとえ本場・中華圏で売られている月餅でも、それが機械で大量に作られている工業製品なら、
明らかに横浜・聚楽の月餅の方が、正統派でナチュラルで、しかもずっと美味。


中華街の老舗中華菓子屋と聞くと、立派な店構えを想像してしまうかも知れないが、
小さな間口で、ひっそり佇んでいるので、注意して歩いていないと、通り過ぎてしまうかも。
私も、普段は母に頼んで買ってきてもらっているため、ごくたまに自分で行くと、通り過ぎてしまうことも。
聚楽の月餅をお試しになりたい方は、要注意。


◆◇◆ 聚楽 ◆◇◆
神奈川県 横浜市 中区 山下町143

 045-651-2190

10:30~21:30(火曜定休)

★ 聚楽:椰絲大月餅(ココナッツ月餅)

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大きさは、直径約7.5センチ、厚さ約4センチ。
白胡麻を混ぜたココナッツを包んだ月餅。



では早速その聚楽の月餅で、ひとつめはこの“椰絲大月餅(ココナッツ月餅)”
聚楽は、蓮の実餡とか、他の餡のも美味しいが、一番のお気に入りはココナッツ。

他店では、ベースとなる餡(主に白餡)にココナッツを混ぜた物を
ココナッツ月餅として売っている場合が多く、ココナッツの含有量はまちまち。
しかし、聚楽のココナッツ月餅は、本当にココナッツばかりをこれでもかーっ!というくらいゴッソリ詰め込んだ
紛れもないこれぞ“Theココナッツ月餅!”なココナッツ月餅。

そのココナッツが、ナマっぽいのもミソで、“シャキッ!”と“しなり”の間くらいの独特な歯応え。

食べても食べても、ココナッツばかり出てくるので、ココナッツ嫌いな人には悪夢の月餅だろうが、
ココナッツ好きなら一度試す価値あり。
他店のココナッツ月餅も試しているけれど、
今のところ、これ以上にココナッツを使っている月餅には出会っていない。

★ 聚楽:切肉月餅(木の実入り)

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大きさは、長さ約7センチ、幅約4センチ。
木の実餡を生地ではさみ、四角くカットした月餅。




こちらも聚楽の商品で、“切肉月餅(木の実入り)”
これは初めて食べる。
そもそも、真ん丸お月様の形ではない、四角くカットされたお菓子でも、“月餅”と呼んで良いのだろうか。

上下2枚の生地にはさまっているのは、多種多様の木の実類。
色々入っていて、よく分からないけれど、確認できた物は、胡桃、落花生、白胡麻、松の実くらいかしら。
いわゆる“伍仁月餅”の中身。
以前聚楽でも“伍仁月餅”の名で売っていた普通の大月餅を、形を変えて売り出したのではないだろうか。
事実、その伍仁月餅はショーケースから消え、
代わりに今まで見たことが無かったこの切肉月餅が並んでいた。

形が変わったら、洋菓子の焼き菓子エンガディナーのよう。
そう、切肉月餅は、まさに中華版エンガディナー。
エンガディナーとの一番の違いは、木の実類にキャラメルを絡めていない事。
その分、エンガディナーより甘さが抑えられ、木の実類の旨味を堪能できる。

エンガディナーが好きな人なら、これも絶対に好きなはず。
どこを食べても、木の実ザックザックで美味。

★ 菜香:馬拉糕(マーライコ)

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大きさは、直径約13センチ、高さ約7センチ。
たまごをたっぷり使い蒸し上げた中華風蒸しカステラ。




ここからは、中秋も月餅も聚楽も関係無しの中華菓子。
こちら、聚楽と同じ横浜中華街のお店、菜香(公式サイト)“馬拉糕(マーライコ)”
マーラーカオとかマーライコーとか、日本では呼び名がまちまちだけれど、ここのお店では“マーライコ”。
広東料理で有名なお菓子だから、広東語で発音するべきなのだろうが、
“馬拉糕”の正しい広東語の発音が私には分からない。

その馬拉糕、菜香ではふたつのサイズを販売しており、こちらは“小”。
“小”といっても、一人が一回で食べ切ってしまうような量ではない。
1/6にカットして、ちょうど一人分くらいだろうか。
“大”の方は、値段が確かちょうど倍くらいだったから、量も倍くらいあるのかも。

菜香の馬拉糕は、創業当時から代々受け継がれてきたレシピ。
材料を混ぜて蒸すだけの簡単なお菓子に見えるけれど、
実は蒸し上がるまでに10時間も要す、案外手間のかかるお菓子なのだと。

このままでも充分美味しいが、電子レンジで温めると(蒸し器ならなお良し)、甘い香りがさらに立ち上り、
生地もふわっ!とまるで蒸したてのよう。
冷めた状態だと、生地の目がもっとしっかり詰まった感じで、それはそれで美味。

蒸しパンミックスのような物で膨らませただけの、ただフカフカした蒸しケーキと異なり、
たまごと油分で生地しっとり。まぁ、その分、カロリーも高くなってしまうとは思うけれど…。
中国が故郷でもないのに、なぜか懐かしさを感じる優しい味。

★ アンドリューのエッグタルト:エッグタルト

最後は、中華とポルトガルのフュージョン菓子、
アンドリューのエッグタルト(公式サイト)“エッグタルト”


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御覧のように、パッケージに“アンドリューのエッグタルト”の文字はない。
そう、これ、澳門(マカオ)の有名店・安魯餅店(ロードストーズベーカリー)のかの“蛋撻(エッグタルト)”。
大阪の会社がフランチャイズでやっているのがこれで、
“アンドリュー”は、安魯餅店のイギリス人創始者、アンドリュー・W・ストー氏から取っている。

店舗は関西が中心で、東京には無し。
通販は行われているけれど、直接買いたかったら、デパートの催事などを狙うしかない。
そんな事情で、ずーっとチャンスを逃し続け、ようやく入手。



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大きさは、直径約7センチ、高さ約3センチ。
パイ生地の中にたまご液を流し入れ、焼き上げたエッグタルト。




本当は、温かい出来立てのエッグタルトを食べたいけれど、
実演販売はしておらず、店頭で売られている物は、すでに冷めた状態。
正直に言って、冷めたエッグタルトは、あまり美味しそうには見えない。

それでも、このまま、もしくはさらに冷やして食べても良いそうだが、私は温め直して食べることに。
説明書に書かれている通り、上にアルミホイルをのせ、オーヴンで、様子を見ながら5~10分加熱。
温まってくると、それまでほとんど感じられなかった甘い香りがプ~ンと漂ってくる。

私は結局200℃で8分加熱して、アツアツのエッグタルトをハフハフしながら、いざ実食。
外のパイは、パリ!サクッ!な食感と、バターの風味が良い感じ。
電子レンジで加熱してしまうと、この食感が失われ、シナッとしてしまうだろうから、
やはりオーヴンでの加熱は絶対である。

冷えていた時は固そうに見えた中のクリームも、加熱したらトロリ!
プリンと表現されることが多いけれど、絹ごし豆腐のような滑らかなテクスチャーで、
それでいて絹ごし豆腐よりさらに柔らかだから、茶わん蒸しに近い。
味は、控え目で優しい甘さ。バターの風味が加わり、軽過ぎず重過ぎない絶妙なバランス。


澳門で出来立てホヤホヤを食べるのが勿論ベスト。
でも、それが出来ないのなら、これは大いに“アリ”である。
作り置きを温めて食べるなんて、どうだろうかと半信半疑であったが、かなりイケるエッグタルトであった。
次に東京で買えるのは、2015年10月28日(水曜)から11月3日(火曜)、
大丸東京1階ウイークリー・セレクトスイーツのコーナーで。
う~ん、その一週間の間に大丸に行けるかどうか…。

ケーキ2種(+金鐘とかテレビとか諸々)

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2015年9月26日(土曜)、台北の國父紀念館で発表された
“台湾版エミー賞”こと第50回金鐘獎 Golden Bell Awardsの受賞結果。
ノミネート作品等、節目の50回目でありながら地味と言われていた今回の金鐘については、こちらから。


日本人にも興味が有りそうな最低限の主要部門の受賞結果は以下の通り。
【戲劇節目獎(長編ドラマ賞)】
『16個夏天~The Way We Were』

【戲劇節目男主角獎(長編ドラマ主演男優賞)】
藍正龍(ラン・ジェンロン) :『僕らのメヌエット~妹妹』

【戲劇節目女主角獎(長編ドラマ主演女優賞)】
朱芷瑩(チュウ・チーイン) :『新丁花開~Brave Forward』

【戲劇節目男配角獎(長編ドラマ助演男優賞)】
蘇達(スー・ダー) :『C.S.I.C鑑識英雄~Crime Scene Investigation Center/i Hero』

【戲劇節目女配角獎(長編ドラマ助演女優賞)】
許瑋(ティファニー・シュー) :『16個夏天』

【戲劇節目導演獎(長編ドラマ監督賞)】
許富翔(シュウ・フーシャン) :『16個夏天』

【戲劇節目編劇獎(長編ドラマ脚本賞)】
呂蒔媛(ルー・シーユェン) :『出境事務所~Long Day's Journey into Light』




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上記の内、現在日本で観られるのは、
藍正龍(ラン・ジェンロン)が主演男優賞を受賞した『僕らのメヌエット~妹妹』だけ。
これ観たーい…!お願いだから、うちに入るチャンネルでやって。

上の画像で、その藍正龍と一緒に映っているのは、
今年の“金鐘影后”、主演女優賞受賞の朱芷瑩(チュウ・チーイン)。
撮影中に父上を癌で亡くしたそうで、感激もひとしおだったみたい。
彼女を影后に導いたドラマ『新丁花開』は面白そうだけれど、
この手の文芸作品は日本にまったく入ってこないから…。


ちなみに、朱芷瑩のお召し物は“JULIA”というブランドの物らしい。
私は聞いたことがないブランド。台湾のものと推測。
今年の金鐘獎では、こういうブルーを着る女性が多く目についた。


色に関係無く、記憶に残ったお召し物をいくつか挙げるなら…

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楊丞琳(レイニー・ヤン)

縦に流れるクラシックでエレガントなラインのお召し物はMS.IDEAS。
このブランドも私は聞いたことがないものだが、
恐らく主にブライダル等のフォーマルを手掛ける台湾ドメスティックブランドだと思う。
髪型も懐古調で服に合っております。可愛い女の子だと思っていた楊丞琳も、すっかり大人のイイ女!


林心如(ルビー・リン)

手の込んだ刺繍が施されたブルーグレーのガウンはヴァレンティノ。芸術品のレベルですわ。
但し、本当に林心如に似合っているかどうかは、別の話。
私は“ガーリーなおばさん”が好みではないので、ただでさえ童顔のいい年した林心如が、
お姫様ちっくに頭にティアラをちょこんと載せているのは、見ていてムズ痒い。


許瑋(ティファニー・シュー)

その林心如主演&プロデュースの『16個夏天』で助演女優賞を受賞した許瑋の方が
ずっと年上の林心如よりよほどスッキリしていて大人っぽい。
セクシーだけれど上品なブルーのガウンは、ミシェル・オバマが着たことで一躍有名になった
台湾系カナダ人デザイナー吳季剛(ジェイソン・ウー)のお品。
素敵だけれど、パンツ透けているからねぇー、普通の人はなかなか挑戦できません。


林依晨(アリエル・リン)

これも素敵!一見無難な全身ブラックだが、異素材を合わせ、レザーベルトでウェストをマークした
ちょっぴり辛口フェミニンなガウンはランヴァン。



お召し物から金鐘獎の内容に話を戻すと、
上には記していない迷你劇(ミニ・ドラマ)の部門で公視の『麻醉風暴~Wake Up』が賞をほぼ独占。
全体的にみても、局別では、公視が11部門で受賞と圧勝だったらしい。
何度も言っているように、軽い偶像劇はもうおなかいっぱいなので、
日本もいい加減、偶像劇に見切りを付け、観応えのある公視などのドラマを入れるように、
方針を転換して欲しい。




日本に入って来る台湾ドラマの選択には、どうも納得できないけれど、
「台湾ドラマをBSで観たいのに、なぜCSばかり…」とお嘆きの皆さまに朗報でございます。
なんと、この10月、BSに台湾ドラマが登場。
BSで台湾ドラマが放送されるのは、もしかして長澤まさみ主演の『ショコラ~流氓蛋糕店』以来?
10月からの放送は、BSといっても、BS Twellv(トゥエルビ)なのが、ちょっとビミョーなのだけれど、
とにかく、毎週土曜と日曜の夕方4時が台湾ドラマ枠に設定され、一気に2本放送される。


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選ばれた2本は、『ずっと君を忘れない~熱海戀歌』と、『王子様をオトせ!~就是要你愛上我』
後者はすでにCSホームドラマチャンネルで放送済みだが、前者は日本初放送。
コレ、70年代の北投温泉を舞台にしたドラマで、
主演男優は日本でお馴染みのアイドル俳優ではなく、美中年・李李仁(リー・リーレン)。
日本で放送される台湾偶像劇とは少々毛色が違うので、興味があった。
平岡祐太も出演しているため、「もしかして日本でも…」と微かな期待を抱いていたが
本当に放送されることとなり、嬉しい。

でも、邦題のセンスは相変わらず最悪。唐沢寿明主演の特攻隊の映画『君を忘れない』に“ずっと”を添えて、
マイナーチェンジしただけではないか…。似たようなタイトルの歌もありませんでしたっけ…?
原題をそのまま日本語風に発音させ『熱海恋歌(あたみ・こいうた)』で良かったのに。
その方が覚え易いし、「えっ、台湾なのになんで“熱海”…?!」と人々の興味を引く。

『王子様をオトせ!』の方は、まぁ私にとってはどうでもいいドラマなのだが、
本日9月28日(月曜)スタートの『あさが来た』でついにNHK朝ドラにも進出することになった
DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ)も出演しているので、興味のある人は試しに観てもいいかも知れない。
DEAN FUJIOKA出演台湾ドラマの中では、一番彼が魅力的に見えるドラマだと思う。

『ずっと君を忘れない』は10月3日(土曜)、『王子様をオトせ!』は翌4日(日曜)放送スタート。




日本の他のテレビでは、
本日9月28日(月曜)放送のテレ東『未来世紀ジパング』が、前回に引き続き中国。
題して“シリーズ‘中国異変’ 反日中国でなぜ?知られざる日本ブーム”。
反日感情が高まっているのかと思いきや、意外にも中国国内で起きていた日本ブームを紹介。

…との事だが、そもそも必要以上に“中国=反日国家”というイメージを日本人に刷り込んだのは
日本のメディアで、以前から、日本が好きとか興味があるという中国人は一定数居ると思うが。
○○は反日国だとか、□□は親日国だと、白黒つけて、
敵対心をメラメラさせたり、逆に自尊心をくすぐられている昨今の自意識過剰な日本人にゲンナリ…。
どこの国にも、日本を好きな人も、嫌いな人も、まったく興味の無い人も居るものだ。

とにかく、今回の『未来世紀ジパング』では、雑誌<知日>や山下智博を紹介するらしい。


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<知日>は、すでに日本のメディアにも何度か取り上げられている
毎回ひとつのテーマで日本を紹介する2011年創刊の雑誌。
明治維新や武士道から、美術、デザイン、雑貨、喫茶店、アイドル、鉄道、制服、萌え文化等々、
扱うテーマは幅広く、エディトリアルデザインも秀逸。

日本ではまったく知られていない山下智博という日本人については、こちらからどうぞ。
摩訶不思議なヲタク系クリエーターです。
本日発売の<AERA>にも“中国ネット界の新星”と取り上げられているみたいだし、
今週山下智博を知る日本人がドドーッと増えそう。



翌9月29日(火曜)、TBSで放送の『世界の日本人妻は見た!』
シンガポールの日本人妻を紹介する2時間スペシャル。
スペシャルに相応しく、登場するのは、元ミスワールド日本代表の日本人妻や
番組史上最高額・20億円の豪邸に暮らす日本人妻だって。
テレビ画面から美女オーラと金持ちオーラを浴び、ラッキーな女性たちにあやかりたいと思います。





お菓子は、久し振りに洋菓子。(…ブログに出していないだけで、私は常に和も洋も食べまくっているが。)

★ ラ・スプランドゥール:サヴァラン

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大きさは、幅約4.5センチ、高さ約6センチ。
中にドライフルーツとカスタードクリームを隠し、ラムシロップを染み込ませた生地の上に
生クリームを盛り、シナモンをふりかけたサヴァラン。




ひとつめは、ラ・スプランドゥール03-3752-5119)の“サヴァラン”
サヴァランは大好きなお菓子のひとつ。ここのは初めて。

サヴァランは、アルコールを大量に使った甘ーいシロップをたっぷり染み込ませた
本場ヨーロッパ風の物が好み。
アルコールもシロップの量も甘さも控えたさり気ない日本風の物だとガッカリする。
ここのシロップは甘めで、ラム酒もちゃんと効いているので及第点。

一番の特徴は、中にドライフルーツが入っていること。
使っているドライフルーツは、レーズン、フィグ、オレンジピールで、
これらもラム酒漬けになっているのが良い。

サヴァランの上、生クリームの内側には、まるで“生クリームの芯”、“土台”のように、
四角くカットされた生地が隠れている。
ドライフルーツやカスタードクリームを詰めるため、サヴァラン本体から掘り出した生地を、
ここに有効活用したのかしら。
この有効活用分の生地も、シロップでしっかり味を付けている。使っているお酒はコアントローだろうか?


サヴァランをのせているトレーが浅いので、シロップがこぼれそうで、持ち帰りにやや不便なのが難。
でも、ドライフルーツの歯応えが良く、
オレンジピールのホロ苦さやラム酒の香りが効いたオトナのサヴァランで、美味しかった。

★ エスプリ・ドゥ・パリ:いちじくのタルト

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大きさは、半径約10センチ、厚さ約3.5センチのタルトを、幅約7センチにカットしたくらい。
パイ生地の中に、アーモンドクリームとカスタードクリームを流し、
その上にスライスしたいちじくを敷き詰めたフルーツタルト。




もうひとつは、エスプリ・ドゥ・パリ(公式サイト)“いちじくのタルト”
シーズンごとに数あるフルーツタルトの中でも、
無花果(いちじく)を使ったタルトは、5本の指に入るほど好き。

タルトは、小麦粉とバターをたっぷり使ったサブレっぽい生地を使った物か、パイ生地か、
大きく分け2種類あるが、ここのは後者でパイ生地を使用。
パイ生地は、フォークだけだとなかなか切れず、ちょっと食べにくいのが難だけれど、
サックリした食感でなかなか。

その中に流し込まれているのはアーモンドクリームとカスタードクリーム。
生地+アーモンドクリーム+カスタードクリーム+フルーツ、という基本に忠実なタルトである。

カスタードクリームはとても軽く、多分これだけ食べても美味しいのだろうけれど
フレッシュな果実を殺さない、良い脇役になっている。
主役の無花果は、舌の上にトロリ、ネットリと触れる独特な滑らかな食感で、
味は甘いのに爽やか。う~ん、旬の無花果、美味なり。


見た目が、あまりにもオーソドックスな無花果のタルトで、これといった特徴が感じられなかったため、
子供から老人まで、万人が楽しめる味を想像し、大して期待しないで食べたら、
ちょっと洋酒も効いていて、案外美味しかった。あの洋酒は何でしょう。ラムかしら。

映画『岸辺の旅』

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【2015年/日本/128min.】
夫・優介が忽然と姿を消し、早3年。
八方手を尽くしたけれど、行方は分らず、瑞希は喪失感に苛まれながらも、
子供たちにピアノを教え、少しずつ元の生活を取り戻そうと努力する日々。
そんなある晩、家で瑞希が料理をしていると、突然優介が帰宅。
戸惑いつつも、優介を温かく迎い入れる瑞希に、彼は「俺、死んだよ」と告げる。
そして、この3年の間に彼が過ごした想い出の場所を一緒に巡ろうと提案。
瑞希はこの誘いにのり、早速二人は電車に乗って、まず最初の目的地・谷峨へ。
そこには、優介が一時お世話になった新聞屋の島影が暮らしているというが…。




黒沢清監督の新作は、湯本香樹実の同名小説の映画化で、
2015年第68回カンヌ国際映画祭・ある視点部門で監督賞を受賞。
黒沢清監督作品は、まぁまぁ好きな物と、苦手な物が有るけれど(…どちらかと言うと苦手な物の方が多い)、
本作品には元々興味が有り、カンヌ受賞のニュースで益々観たくなった。
原作は未読で、内容をほとんど知らないまま、公開されてすぐに鑑賞。



死んで突然戻って来た夫・優介と、ずっと彼の行方を探していた妻・瑞希が3年振りに再会し、
空白の時間を埋めるように、優介が過ごした場所を共に巡る旅をする
亡き夫&未亡人によるちょっと変わった夫婦(めおと)ロード・ムーヴィ

二人の男女が並んでいる様子はとても現実味のある夫婦に見えるのに、
なんと夫がすでに故人という意外…!

この夫・優介は、3年前に失踪。妻・瑞希はあの手この手で捜索するが、足取りは掴めぬまま。
そんなある日、優介がフーテンの寅さんみたいにフラリと帰宅。
これで一件落着かと思いきや、優介の口から出たのは「俺、死んだよ」というマサカの死亡報告…!

とにかく、こうして無事再会を果たした二人は、
この3年の間に、夫・優介がお世話になった人々を訪ねる御礼行脚に出発。
その御礼行脚の過程で、我々観衆は、優介の事や、夫婦の事を少しずつ知るようになる。
妻・瑞希もまた我々観衆と同じように、自分が知らなかった3年間の優介を知っていくのだが、
それは同時に、(瑞希本人は意識せざるとも…)今度こそちゃんと優介を見送れるよう、
心の準備をする期間にもなっている。


死んだ者が心置きなくあの世へ旅立てるよう、
また、残された者が気持ちに整理をつけ、より良く生きられるよう、今一度再会し、交流する様が、
私には、とても東洋的なお盆のようなイベントにも近い感覚に思えた。

そう考えると、台所のコンロに火を点け、手作りする白玉は、“迎え火”や“お供え”みたいだし、
最後に祈願書を燃やすのは、“送り火”のように思えてくる。




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主人公の夫婦を演じるのは、3年前に失踪した夫・薮内優介に浅野忠信
ピアノ講師をしながら一人で暮らす妻・薮内瑞希に深津絵里

幽霊というと、足が無いとか、浮いているとか、体が透けているとか、
何か特殊な演出が施されがちだけれど、浅野忠信扮する本作品の故人・優介は、至ってノーマル。
強いて言えば、靴のまま部屋に上がってきてしまう最初の登場シーンにだけ、
現世の日本の習慣を忘れてしまったのかのような様子が窺える。
それ以外、これといって変わった所の無い普通の中年男性が、
自ら「俺、死んだよ」と想定外の報告をするから、
一体、この人、どうしちゃったの…?!という興味が湧く。

話が進むにつれ、富山の海で死んだこと、それは自殺だったこと、
遺体は蟹に食べられ、跡形も無くなってしまったこと、
当時心を病んでいたこと、生前は歯科医として働いていたことなどが、次々と判明していく。
優介が自ら死を選択するほど心を病んだ理由は、最後まではっきりと明かされることなく、想像の余地を残す。


妻・瑞希は、ずっと優介の行方を追っていたにも拘わらず、
突然の再会にも、不必要に感情を高ぶらせることなく、帰宅した夫を自然に迎い入れる。
ベタベタすることもなく、まるで空気のように、一緒に居ることが当たり前の、お似合いの夫婦に見える。
それだけに、生前の優介が浮気していたと判明した時は、「優介、お前もか…」と軽くショックを受けた私。




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薮内夫婦所縁の人々に扮するのは、谷峨の新聞屋・島影に小松政夫
夫と小さな食堂を営むフジエに村岡希美、優介と同じ病院に勤める松崎朋子に蒼井優
息子を亡くした農家の星谷に柄本明、星谷の息子の嫁・薫に奥貫薫
瑞希が16歳の時に死んだ父に首藤康之など。

味のある実力派で固められた脇のキャストの中でも、
短い出演シーンながら、取り分け印象に残ったのが、
生前の優介の浮気相手だった松崎朋子に扮する蒼井優。

最初の登場シーンでは、地味で控え目な事務員という印象。
そうそう、こういうのに限って案外愛人やっちゃたりするのよねぇ~、なんて思って見ていたら、
この朋子、ぜんぜん“控え目な女性”などではなかった。
恐らく瑞希も、心の片隅で朋子を所詮淋しい独身女性と見くびり、
相手より優位な“私は結婚もしている勝ち組の女”という立場から強く出たのだろうが、
意外にも朋子の方が一枚上手でありました…。蒼井優、コワッ…!
かつては、“癒し系森ガール”の代表格だった蒼井優も、
今では同じ“森”でも、中の様子が伺い知れない“樹海”のようなデンジャラスな女に違和感ナシ。
本妻・瑞希(深津絵里)VS.愛人・朋子(蒼井優)の舌戦は、短いながら見もの。





死んだ夫と存命の妻が旅するなんて、非常に嘘くさい話なのに、なぜだか現実味がある。
形こそファンタジーでも、その中に描かれているのは、大切な人の死をどう乗り越えるか、
永遠の別れをどう受け入れるかといった、人間誰しもがいつかは経験する現実的で普遍的な問題だから、
案外スーッと入り込めてしまう。
黒沢清監督の過去の奇想天外なホラーには、唖然とすることも多く、結構苦手なのだけれど、
本作品は、本来相反するファンタジーとリアリティを上手く融合させたラヴ・ストーリーで、なかなか。
浮気をしていた夫が、心を病み、失踪したまま海で自殺し、身体を蟹に食べ尽くされたなんて、
よくよく考えると悲惨以外のなにものでもないが、後に温かな余韻を残すのも良い。

瑞希が作っていた白玉も記憶に残っている。
白玉なら、私も作ったことがあるけれど、私は丸めて茹でただけ。
瑞希の白玉は、中国の湯圓のように、中に胡麻餡入り。
しかも、その胡麻餡も、胡麻を擂り鉢で擂って一から作る本格派。美味しそう~。


瑞希と言えば、後半、なぜかモンペを穿いていたのも気になった。

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女優が穿いてもモンペは所詮モンペだということが分かった。
戦時中のイメージがあるこのボトムスを、敢えて現代人の瑞希に穿かせた意図は?


あと、余談になるけれど、
映画館のチケット売り場で、私の前の人が「『岸辺のアルバム』一枚」と言っておられた。
ついついそのように間違えてしまうのも分らなくもないが、
私の場合、“岸辺(岸部)”と聞き、反射的に続くのは“一徳”でしょうか。
ちなみに、この手の間違いが多いのか、窓口担当の女性は訂正することもなく、サラーッと対処していた。

東京・中国映画週間は今年10周年らしい

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映画祭シーズン到来♪…は良いのだけれど、
東京国際映画祭と東京・中国映画週間とシッチェス映画祭ファンタスティックセレクションを
同時期に開催されてしまうと、観たいものをかなり諦めなければならなくなってしまう。
東京国際映画祭と提携企画になっている中国映画週間は仕方が無いにしても、
松竹が、シッチェスの時期をぶつけてきたのは、よく分からない。

東京国際映画祭と中国映画週間も、“提携”と言いながら、
それぞれが同じ彭浩翔(パン・ホーチョン)プロデュース作品と監督作品を
同日ほぼ同時刻に上映するって、如何なものか。
提携するなら、ちゃんと連携して、彭浩翔作品ファンが両作品を鑑賞できるよう、
もっと配慮してスケジュールを組んで欲しかった。

この両映画祭、今年はチケットの発売日を、
中国映画週間の方が一週間早く開始するようズラしてくれたのは良かった。
…が、両方ともスケジュールの発表が遅くて、これでは発売日をズラした意味もほとんどナシ。
特に中国映画週間は、チケット発売開始時刻が過ぎても、
公式サイトに個々の作品情報はおろか、肝心のスケジュールやチケット情報まで皆無だったのは、
売る気が無いとしか思えない。

★ 東京・中国映画週間が節目の10周年

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そんな東京・中国映画週間は、今年、記念すべき10周年だという。
確かにここ数年は、険悪な日中関係が少なからず映画祭にも影響し、
色々な事がスムーズに運ばないのも分るけれど、それにしても今年はオーガナイズが悪過ぎ(今のところ)。

これも日中関係が大いに影響していると思うけれど、
節目の10周年なのに、セレモニーの登壇ゲストの顔ぶれがやや地味なのも、ちょっと残念。
普通だったら、オープニング作品くらい、誰かしら出演者が登壇するものだが、
今年のオープニング作品『モンスター・ハント~捉妖記』からは、
主要キャストの白百何(バイ・バイフー)や井柏然(ジン・ボーラン)はおろか、脇役すら来ない。
范冰冰(ファン・ビンビン)、趙薇(ヴィッキー・チャオ)、陸毅(ルー・イー)、陳坤(チェン・クン)といった
超メジャー級スタアが来日しフツーに登壇していた頃が嘘のよう。
最近はもっぱら“苦しい時の栗原小巻頼み”って感じ。
(“ジュディ・オング頼み”や“アグネス・チャン頼み”という選択肢もあり。)

★ 今年は藤原紀香が初登場

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今年は小巻やジュディに加え、さらに“藤原紀香頼み”らしい。

かつて映画『SPY_N』(2000年)に出演し、
(ガセだとは思うが)共演した郭富城(アーロン・クォック)との恋の噂も囁かれた紀香は
中華圏進出にも意欲的と見受けるし、
オファーがあれば中国映画週間のオープニングセレモニーに登壇するのは分るけれど
今回はオープニングのみならず… (訂正:↓下方を参照)

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周迅(ジョウ・シュン)&佟大為(トン・ダーウェイ)主演作
『更年期的な彼女~我的早更女友』の上映時にも舞台挨拶を行うという。

なぜかと不思議に思っていたら、中国映画週間の公式サイトには記されていないが、
上映館のTOHOシネマズ日本橋のサイトには…

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この『更年期的な彼女』の上映が“日本語吹替版”であると明記されている。
えっ、つまり、紀香が周迅の声を吹き替えたのか…?


こういう映画祭で上映される作品を観に行く人は、
“年に数回だけシネコンにハリウッド大作を観に行く”というような人たちとは層が違うから、
日本語吹き替え版の需要など無いと思うが。
せっかく普段なかなか日本で観ることができない中国映画に触れられる良い機会なのだから、
吹き替えは有り難いどころか非常に迷惑。
そもそも、期間中、小さな劇場で2度しか上映されない作品のために、
吹き替え制作に大枚をはたいちゃったワケ…?!
それとも、この『更年期的な彼女』は、すでに一般劇場公開が決まっているのでしょうーか?
それならそれでOK。その際は、オリジナル言語での上映をヨロシクお願いいたします。

(それにしても、韓国映画『猟奇的な彼女』をモジッた何とも言い難いタイトルは、イヤでも記憶に残る。
更年期がテーマの映画なのかしら?)(追記:↓下方を参照)



訂正
藤原紀香は、夜プリンスホテル高輪で行われるレセプションパーティーに登場と公表。
オープニングセレモニーの方は不明。『更年期的な彼女』の舞台挨拶は確定。

追記
この『更年期的な彼女』は、そもそもが『猟奇的な彼女』の韓国人監督・郭在容(クァク・ジェヨン)の作品で
どうやら日本でも2016年の公開が決まっているようだ。
紀香の吹き替えではなく、オリジナル中文音声で観たい人は、中国映画週間で慌てて観ずに、
来年の一般劇場公開を待った方が良いかも知れない。

★ 日本語字幕

中国映画週間が日本語吹き替え版を上映するのは、恐らく今年が初の試み。
これまで、日本語字幕があまりにも不評だったため、いっそ吹き替え版と考えたのだろうか。

中国映画週間の日本語字幕は、映画の中に登場する男性がチンピラでもイケてる二枚目でも、
台詞がなぜかオネェ言葉になってしまいがちな、確かにお粗末な物であった。
シリアスなドラマでもコメディと化してしまうのだから、評判が悪くても当然。

しかし、近年、字幕の質は明らかに改善。私が観た作品に限って言えば、まったく問題ナシであった。
私は、あのオネェ言葉の“中国映画週間名物日本語字幕”が嫌いじゃなかったので(←恐らくかなりの少数派)
改善され、一抹の淋しさを感じているくらい。

今年は日本語字幕の質の向上に益々力を入れているそうなので、
過去に懲りている人も恐らく安心して鑑賞できることでしょう。
(逆に、噂の“オネェ言葉字幕”を一度体験したいと切望している物好きな皆さまの期待には、
今後もう応えてくれないと思う。)

★ 今年の売れ筋作品

スケジュールなどの発表が遅かったり、映画ファンの心理も分らず、吹き替え版を上映してしまったり、
運営に大いに問題アリの東京・中国映画週間ではあるが、
大して宣伝していないにも拘わらず、発売開始早々すでに売り切れ作品が出ているのには驚いた。
上映されるのがキャパの小さなスクリーンという事もあるけれど、
それにしても平日のチケットが早々にソールドアウトなんて、これまでには無かった事。
売れ行きが特に良いのは、(↓)こちらの2本。


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真っ先に売り切れたのは、
徐靜蕾(シュー・ジンレイ)監督作品『あの場所で君を待ってる~有一個地方只有我們知道』
監督としても女優としても徐靜蕾がそこまで日本で大人気とは思えないのに、どうしてかと思ったら、
K-PopアイドルユニットEXOを脱退した中国人メンバー吳亦凡(ウー・イーファン)が主演であった。
同じようにEXOを抜けた中国人メンバー鹿(ルー・ハン)主演の映画、
『20歳よ、もう一度』が日本で公開された際も、韓流色を打ち出した日本の宣伝に違和感を覚えたが、
いざ映画館へ行ってみたら、館内は一見して“LOVE韓流”と分る女性で溢れており、
上映前、周囲に飛び交う「○○ssiってぇ~」「□□ペンだから~」という会話の波の中で、
非常にアウェイな居心地の悪さを感じた私であった…。
しかし、それで、“韓流推しの宣伝は満更間違いではなかった”と納得。
今回の中国映画週間でも、韓流関連が動員力を証明。
もしこの『あの場所で君を待ってる』が、一般公開される運びとなったら、私はその時観させていただきます。


次に売れ行き絶好調なのが『ユア・マイ・サンシャイン~何以笙簫默』で、
こちらも日によっては、すでにソールドアウト。
こちらは、黃曉明(ホァン・シャオミン)&楊冪(ヤン・ミー)主演作で、
実生活で黃曉明のお嫁サマになられた楊穎(Angelababy)も出演。
原作はドラマ『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』と同じ顧漫(グー・マン)による同名小説で
映画のみならずドラマ化もされている。
ドラマ版は日本に入ってきていないし、顧漫の原作小説も翻訳されていないのに、
この映画のチケットは、なぜそんなに売れ行きが良いのでしょう…??


あと、今年の東京・中国映画週間では、昨年亡くなった吳天明(ウー・ティエンミン)監督の特集を組み、
『変臉(へんめん)この櫂に手をそえて』など6本の作品を上映するのもウリのひとつ。
吳天明監督作品『古井戸』にも出演する女優・呂麗萍(リュウ・リーピン)も来日して登壇予定。




私も観たいのが何本かあるけれど、東京国際映画祭やシッチェスの事も考えると、
なかなかチケットに手が出ない。グズグズせず、サッサと決めなければなりませんね。

なお、オープニングセレモニーの日本側登壇者は、前述の栗原小巻、ジュディ・オング、藤原紀香に加え、
お笑いのココリコも決まったようだ。(
以前、NHKの中国語講座に出演してたココリコ田中は、今でも中国語学習を続行しているだろうか。
壇上では、彼の中国語も披露されるかもね。
(う~ん、でも、やはり中国からのゲストが寂しいのは残念でならない。
国交の状況があからさまで、近年中華圏の明星たちは、釜山へは行くのに、東京へは来ない。
また大物の明星にいっぱい来てもらえるよう、平和な世の中を望みます。)


訂正
オープニングセレモニーへの登壇が発表されているのは、今のところジュディ・オングで、
栗原小巻、藤原紀香が登場するのは、プリンスホテル高輪で行われるレセプションパーティーらしい。
ココリコがどちらに現れるかは不明。

栗蒸し羊羹3種(+『あやしい彼女』とかテレビとか)

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今朝、テレビの情報番組(多分日テレ『ZIP』)をつけっ放しにしていたら、
「多部未華子が新作映画で20歳に戻ったおばあさんを演じる」と言って、その撮影風景が流れた。
作品の詳細は語られなかったが、これはどう見ても、同じ脚本を韓国と中国で
それぞれ『怪しい彼女』、『20歳よ、もう一度』という映画にした、あの企画である。

今、ちょこっと検索したら、やはりそう。
日本のタイトルは『あやしい彼女』で、メガホンをとるのは『舞妓Haaaan!!!』(2007年)等の水田伸生監督。
撮影はすでに9月末から始まっており、11月上旬にクランクアップを予定しているそう。

日本は、中韓の共同企画に乗ったわけではないらしく、記事には「韓国映画のリメイク」と明記されている。
但し、これらの日本の記事は、中華版も“韓国版のリメイク”と誤った説明がされているので、何とも言えない。


この新作映画『あやしい彼女』での多部ちゃんのスタイリングを見ると…

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まぁ確かに韓国版の主人公を意識した感じ。
韓国版で20歳に戻った主人公は、若い頃好きだったオードリー・ヘップバーンを真似、
中華版の主人公は、憧れの香港女優・尤敏(ユーミン)の髪型を真似、
大好きな歌手・麗君(テレサ・テン)から名前を拝借する。
多部ちゃんの衣装も、『ローマの休日』でのオードリー・ヘップバーン風。


ちなみに、20歳に若返る前の70代の主人公を演じるのは倍賞美津子。

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こちらも、かなり韓国版のおばあさんを意識した感じ。
うーん、どうなのでしょう…??
私の中では、こういうチリチリパーマは“典型的な韓国の田舎のおばあさん”のイメージ。
日本のおばあさんにしては違和感があるし、ましてやこのおばあさんは“元々はお嬢様”という設定。
例え没落しても、この髪型は違うと感じる。

日本も、韓国版を忠実に再現するだけではなく、
中華版のように、もっと“自国らしさ”を取り入れたアレンジを加えても良かったように思う。
もっとも、出来上がった映画を観ないことには、どう料理されたのか分らないけれど。


まだ発表されていない他の配役はどうなのでしょう。
20代、30代それぞれのイケメン枠も気になるところだが、もっと小さな役でも、例えば…

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韓国版をそんなに忠実に再現したいのなら、
主人公にずっと想いを寄せる元使用人のおじいさんの娘役に、森三中の黒沢かずこなどいかがでしょう。

なお、この日本版『あやしい彼女』は2016年4月1日全国公開予定。





気になるテレビ番組では、まず、明日10月7日(水曜)放送のNHK『歴史ヒストリア』

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“満州のプリンセス 愛の往復書簡~夫婦の心をつないだ55通”と題し取り上げるのは、
そのお題からも想像がつくように…

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清朝のラストエンペラー愛新覺羅溥儀の弟・愛新覺羅溥傑と
彼に嫁いだ日本の侯爵家の娘・嵯峨浩の夫婦の絆の物語を紹介。

ドラマ『流転の王妃・最後の皇弟』では、竹野内豊と常盤貴子が演じた夫婦を
この番組では、中村靖日と原史奈が演じているようだ。
私、中村靖日には、未だ『運命じゃない人』(2005年)のイメージが強く、
高貴な殿方の役がハマるとはとても思えないのだけれど、番組自体は面白そう。
“時代に翻弄”という表現が合い過ぎる夫婦のドラマティックな物語は、すでに何度も紹介されているが、
今回番組の中で取り上げる夫婦が交わした往復書簡は、テレビ初公開らしい。




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好評につき、この秋、第2シーズンがスタートしたNHK BSプレミアム『世界入りにく居酒屋』
10月8日(木曜)に放送される新シリーズ第2弾は、台北の知る人ぞ知るディープな居酒屋を紹介。
過去の放送も全て観たわけではないけれど、取り上げるそれぞれの街の小規模な飲み屋を通し、
そこに集う人々の人間模様を浮き彫りにしたドキュメンタリーで、下戸の私でも楽しめた。
勿論、興味のない街より興味のある街を取り上げる回の方がより楽しめるので、今回の台北は必見。




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あと、10月10日から毎週土曜、NHK BSプレミアムであの『大地の子』の再放送が開始。
初回放送は1995年だって。その時は全7話で放送され、
翌年再編集して改めて放送した全11話の方を、今回再放送するらしい。
初めてこのドラマを観た時は、随分見応えのあるドラマだなぁ~とか、
上川隆也の中国語がやけに“それらしい”と感心したが、今観たら私はどう感じるのでしょう。

その原作者で、昨年亡くなった山崎豊子を取り上げた番組で
9月27日(日曜)に放送された『作家 山崎豊子~戦争と人間を見つめて』もとても良かったのだが
一部観逃してしまったので、再放送を希望。




秋だからお菓子は栗!しかも、栗蒸し羊羹限定で3店舗から。

★ 仙太郎:栗むし

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大きさは、幅約9センチ、厚さ3センチ弱。



ひとつめは、仙太郎(公式サイト)“栗むし”

羊羹の上部を大粒の栗が覆っている。目測1個半分くらいか。
今回食べた3ツの中では、最もスタンダードな栗蒸し羊羹。

仙太郎がこの時期に販売している栗を使ったお菓子なら、
栗の形を模した“生渋栗”が可愛らしくて、一番好きだけれど、あれは小ぶりなので、
もっとガツンと食べたい時には、こちらも良い。
この商品は店頭でも“季節のおすすめ”としてプッシュされていた。

★ 鈴懸:栗蒸し

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大きさは、幅約9センチ、厚さ約3センチ。



続いて、鈴懸(公式サイト)“栗蒸し”

栗は、熊本県産の物を渋皮付きで使用。
上部には、極力カットを避けた丸々と太った栗が渋皮付きのままゴロゴロのっているから、
栗の存在感が非常にある。
しかも、羊羹の中にも、刻まれた栗が入っている
これは、大粒栗2個半分くらい使っているかも知れない。

羊羹の色が、他の2ツより薄く、鈴懸特有のこし餡と同じような、上品な藤色なのも特徴。

栗の使い方が豪快で贅沢、それでいて上品な栗蒸し羊羹。
栗を渋皮付きで丸々と使っているからホクホク。栗を存分に楽しめる、本当に栗が主役の栗蒸し羊羹。

★ 紀の国屋:栗蒸し羊羹

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大きさは、大体5センチ×3センチ×厚さ3センチ。



最後は、紀の国屋(公式サイト)“栗蒸し羊羹”

ここのは、三角形ではなく、四角い積み木型。
前出の2ツと比べ、蒸された羊羹によりもっちり感があるのも特徴。
原材料を見ると、小麦粉とわらび粉が入っている。
なるほど、わらび粉効果が、蒸し羊羹の質感に現れているのか。

栗は上部にはのせられておらず、刻んだ物が羊羹の中に混ぜ込まれている。
そのため、外側からは栗が少ないようにも見えてしまうけれど、
これも大粒栗が恐らく1個半から2個分くらいは使われている。

上品というよりは素朴な印象の栗蒸し羊羹だが、これもまた美味。
値段にも注目で、一個160円也(税込み)と、鈴懸の物の約1/3値。
他より安いからといって、栗をケチっていないし、丁寧に作られているし、
これはコストパフォーマンスの良さでも満足度高し。

映画『全力スマッシュ』

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【2015年/香港/108min.】
輝かしい活躍で“バドミントンの女王”と称された吳久秀が、
暴力事件を起こし、バドミントン界から追放され、いく久しい。
兄が経営する食堂で雑用係りをしながら無気力に生きる現在の吳久秀に、かつての面影はない。
そんな彼女が、ある晩、シャトルの形をした巨大な隕石が落ちてくるのを目撃。
驚いて逃げ込んだ元朗・赤鹿尾村の古びた建物で、不気味な男たちと遭遇。
実は、劉丹をリーダー格とするこの男たちは、12年前に強盗をはたらき逮捕された元凶悪犯。
刑期を終え、出所した今は、バドミントン同好会を結成し、
この建物を拠点に、日々トレーニングに励んでいるのだ。
会に勧誘されても、二の足を踏む吳久秀であったが、
意外にもバドミントンに真剣に取り組む彼らを見ている内に、
吳久秀の中にも忘れかけていた情熱がふつふつと湧き上がってくる。
さらに、あの晩見たシャトルの隕石が啓示だったように思え、ついに入会を決意。
コーチとして迎えられた吳久秀は、劉丹らと共に、
テレビ局主催のバドミントン大会出場を目指し、猛特訓を開始するが…。




いよいよ明日、2015年10月10日、(元)体育の日に日本公開を控えている香港映画。
私は、先月、第8回したまちコメディ映画祭で鑑賞。それから随分日が経ってしまった…。

本作品を手掛けたのは、郭子健(デレク・クォック)黃智亨(ヘンリー・ウォン)の両監督。
郭子健は過去に観た監督作品が、『燃えよ!じじぃドラゴン』(2010年)は大き過ぎた期待に及ばず、
『ファイアー・レスキュー』(2013年)は平均的な香港映画と感じ、
周星馳(チャウ・シンチー)監督と共同で撮った『西遊記~はじまりのはじまり』(2014年)に至っては
私の好みにカスリもしなかった。

もう一人の黃智亨監督は1979年生まれ。
これまで多くの作品で視覚効果を手掛け、オムニバス『重口味~Hardcore Comedy』の中の一篇、
郭子健がプロデュースした『驚嘩春夢』で監督デビュー(私は未見)。
(↓)こちら、日本の漫画やアニメも好きだというその黃智亨監督が描いたイラスト。

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上手いっ!…そして古い(笑)。『巨人の星』や『アタックNo.1』をもち出してくる30代の香港人というだけで、
充分マニアックな人だと想像がついた。


そんなお二方の新作『全力スマッシュ』は、
当初、劇場公開されたら取り敢えず観ようかしらぁ~程度に考えていたのだが、
したコメの上映ではキャスト&スタッフ総勢6名による豪華舞台挨拶が行われると知り、チケットを購入。
その時の楽しい舞台挨拶の模様は、こちらから。



原題『全力扣殺』の“扣殺”とは、中国語で“スマッシュ”の意。
つまり、原題を直訳しただけの邦題なのだが、短く、キャッチーな良い邦題だと思う。

スマッシュは、テニスにもピンポンにもあるけれど、本作品が取り上げているのはバドミントン。

物語は、暴力事件で地に堕ちて以降、ただただ無気力に生きているかつてのバドミントン女王・吳久秀が
不思議な啓示を受け、導かれるように、ワケあり中年男たちが結成するバドミントン同好会に加入、
彼らに触発され、すっかり忘れていた情熱を取り戻し、皆で共に手を携え、
バドミントン・トーナメントの頂点を目指す、負け犬たちの人生復活劇を描くスポ根ドラマ

バドミントン版『少林サッカー』と称されているように、
スポ根、負け犬たちの人生復活劇、お馬鹿コメディなど、共通する要素はとても多い。
違いを挙げるなら、『少林サッカー』のメンバーが、サッカーの素人でも少林拳の達人であったのに対し、
『全力スマッシュ』のメンバーは、バドミントンの元チャンピオンと、元受刑者のズブの素人という
極端にレベルの違う上級者&初級者で構成されている点。

元チャンピオンは“昔取った杵柄”で、徐々に勘を取り戻していくけれど、問題は3人の受刑者。
『少林サッカー』のメンバーのように、せめて武術の達人なら、
バドミントンの未熟さもカバーできるかも知れないが、彼らにはこれといった特技が無い。

それどころか、一人は聴覚に、一人は視力に問題があり、
残りの一人はなんと義手(利き手とは逆の左手だったのが、せめてもの救い)。

さらに、身体のハンデ以上にハンデになるのが、世間から向けられる好奇の目や偏見。
どんなに努力して更生しても、一度貼られた“犯罪者”のレッテルを剥がすのは困難。
これは、どこの国も同じね…。
バドミントンの技や訓練を見所にするスポ根以上に、
そういう世間との戦い、自分自身との戦いを描く“人生リセット再生物語”に重きが置かれている。





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バドミントン同好会・劉丹羽毛球同好會のメンバーに扮するのは、
地に堕ちたかつての“バドミントンの女王”吳久秀に何超儀(ジョシー・ホー)
出所して同好会を結成した強盗犯で聴覚に問題がある劉丹に鄭伊健(イーキン・チェン)
劉丹の弟分で弱視の馬坤に劉浩龍(ウィルフレッド・ラウ)
同じく劉丹の弟分で義手の林昭に梁漢文(エドモンド・リョン)
吳久秀と共に同好会に入ることになってしまう梅おばさんに邵音音(スーザン・ショウ)
そして、元バドミントンチャンピオンで今はただの呑んべいの戚コーチに林敏驄(アンドリュー・ラム)

吳久秀役の何超儀は、実際、子供のころからバドミントンを続け、
カナダ留学中にはオンタリオ州第2位の好成績を残したほどの腕前らしい。
勝手な思い込みだが、バドミントンに“金持ちのスポーツ”というイメージが無かったため、
かのカジノ王・何鴻燊(スタンレー・ホー)の娘である何超儀がバドミントンの名手だったとは意外。
自分が夢中になったバドミントンが題材という事で、思い入れも一入であろう本作品では、
主演のみならずプロデューサーも兼任。

そう言えば、作品後半の澳門(マカオ)での試合のシーンでは、会場に、
同腹の弟・何猷龍(ローレンス・ホー)が運営する“新濠天地 City of Dreams”のロゴが映りまくっていた。
身内からのサポートもあるし、さすが富豪一族出身の何超儀は、最強プロデューサーである。

演技も良かった。落ちぶれた女王の役作りも入念。体型に締まりがなく、髪もボサボサ。
元々美人女優だと思ったことはないけれど、それにしても今まで見た何超儀で一番不細工だった。
特に肌がリアルで、シミで荒れた久秀の顔は、“女優肌”には程遠い。
あれはスッピンで演じているのか?はたまた老けメイクを施しているのか…?


鄭伊健、劉浩龍、梁漢文が演じるのは、かつて共に犯罪に手を染め、現在共に更生中の3人の義兄弟。
それぞれ難聴、弱視、義手という障害あり。
身体的な障害をギャグにするのは、昨今の日本では難しい気もする。
特に“色も長さも合わない黒人用義手”のくだりは、障害に加え、人種問題も絡むからねぇ…。
香港映画は、相変わらず果敢にタブーに挑んでいるわ。

この3人の中では、リーダー格の劉丹に扮する鄭伊健が、やはり一番印象的。
結構キャリアの長い鄭伊健なのに、これまであまりコメディのイメージが無かったので。
物語前半、暗闇でパーカーをかぶり、ヌボーッと現れる劉丹を見ていたら…

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したコメの公式サイトにも使われていた黃智亨監督の肖像写真がダブった。
こういう狂気や妖気を発する不気味な佇まいは、黃智亨監督好みなのかしら。


邵音音が演じる梅おばさんは、実は物語上別に居なくてもさほど支障が出ない人物にも感じた。
それでも、監督にとっても、ファンにとっても、
邵音音が出ている!という邵音音の存在そのものに有り難味があるのです、…多分。


一番飛ばしているのは、林敏驄扮する戚コーチ!
20年前は名選手で、今はただの呑んだくれ。呑むだけではなく…、吐くっ…!
しかもその吐きっぷりが豪快で、壊れたマーライオンの如くゴーゴーと吐き続ける。

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かつての香港映画には、ゲロと白ブリーフという“二大お約束要素”があった。
ところが、香港も下着界のグローバル化の波に呑み込まれたのか、いつの間にか白ブリーフは姿を消し、
スクリーンの中の香港明星たちは、小ジャレたパンツを穿くのが当たり前になってしまった。
そんな時代の変化に物寂しさを覚える私だが、ゲロは健在であった。ありがとう、ゲロ。(←なに、それ)




同好会のメンバー以外で非常に印象に残るのが、
久秀の金持ちの親戚で、劉丹たちを潰しにかかる吳久祥を演じる鄭中基(ロナルド・チェン)

コメディをやる鄭中基は、本当に面白い。
『低俗喜劇』(2012年)で見た時にも思ったけれど、
本作品で見ても、顔はやはり梁家輝(レオン・カーファイ)似だ。

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今回は、さらに髪型とヒゲが『おそ松くん』のイヤミのようだから、見た目のインパクトが強烈。

この吳久祥は、劉丹たちの“同好”に対抗し、“精武”というチームを作って挑んでくる。“精武”だけに…

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チームのジャージが李小龍(ブルース・リー)のトラックスーツを彷彿させるイエロー。



最後に登場するバドミントン選手、鮑春來(バオ・チュンライ)王琳(ワン・リン)
“ホンモノ感”が漂っていると思ったら、やはり大陸の本物のバドミントン選手で、
しかも、共に自己最高記録が世界ランキング1位の超有名選手らしい。
日本でも、バドミントン好きの間では知られた存在らしいけれど、私はこの映画で初めて見た。





かなり雑な部分が多く、『少林サッカー』より完成度はずっと低い。
でも、大陸との合作で、どんどん大作化し、個性を失いつつある昨今の香港映画に辟易している私は、
その雑な作りにさえ郷愁と愛おしさを感じた。
過去の郭子健監督作品はどちらかというと苦手だったのに、これはOKだったという事は、
郭子健監督作品に新たな息吹を吹き込んだ黃智亨監督のテイストが、私と相性が良いという事だろうか。
黃智亨監督は、相当なヲタと見た。今後の作品にも注目。

そんな訳で、正直言って、荒削りだし、何か物足りなく、消化不良だけれど、
お馬鹿でB級感漂うかつての香港映画のニオイがするという点では評価できる。
シンプルかつインパクト大な邦題も、近年日本に上陸した香港映画の中では秀逸。
気取って片仮名を並べただけの邦題は、むしろ痛々しいし、どれも似ていて記憶に残らない。
香港映画の配給を手掛ける会社は、いい加減頭を切り替え、
まずは“ドラゴン”と“カンフー”を使わずに邦題を付ける努力をすべし。


第8回したまちコメディ映画祭で行われた
『全力スマッシュ』スタッフ&キャスト総勢6名による舞台挨拶については、こちらから。

こんがり茶色く焼けた和洋菓子2種(+祝・金城武御生誕記念!)

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本日10月11日は、1973年生まれの金城武、42回目の御生誕記念日。
金城クン、おめでとうございます!
年を重ね、ますますイイ男。
私、若い男の子にこれっぽっちも興味が無いので、これから先もどんどん年をとってくださって結構です。

今月22日に開幕する第28回東京国際映画祭では、
吳宇森(ジョン・ウー)監督が“SAMURAI(サムライ)賞”とやらが贈られるというので、
もしかして、金城クンも出演している吳宇森監督作品『太平輪~The Crossing』が
東京国際映画祭でお披露目されるのかしらぁ~と想像していたのだが、
発表されたラインナップに本作品は入っていなかった。
ま、これには、長澤まさみも出演しているし、その内日本でも公開されると、気長に待たせていただきます。



ここのところ、目立った動きはなく、仙人か道士のように、すっかり世俗を離れ、
安否確認さえなかなかできない金城クンでありますが、
御生誕記念ということで、台湾メディアも一応なけなしのネタで記事を出してる。


そのひとつが、最近Facebook上で行われた“木村拓哉V.S 金城武 宣傳台灣決定戰!”。

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キムタクが、前出の吳宇森監督が手掛ける台湾観光CMの撮影のために、台湾へ飛び、
現地で大変歓迎されたことは記憶に新しい。(→参照) そのキムタク+吳宇森監督のCMと、
かつて日本の航空会社JAAがシリーズで作っていた金城武+志村けんコンビのCMでは、
どちらが良いかを問う投票“廣告裁判”が一般ネットユーザーのFacebbokで行われたというもの。

(↓)こちらが、その“廣告裁判”の動画。



金城+志村けん版の方は画質が非常に悪い。
それでも、この動画をFacebookに17時間公開した結果、
キムタク+吳宇森監督10ポイント、金城武+志村けんコンビ122ポイントで、
金城+志村組の圧勝だったという。

これはねぇ、仮に私が金城贔屓じゃなかったとしても、やはり金城+志村組に一票だわね。
若いお嬢さん方は知らないでしょうけれど、
当時のJAAのこのシリーズCMは、台湾への旅情を掻き立てる傑作であった。(→参照
キムタクの方は、吳宇森監督が手掛けるということで、過度な期待をしてしまい、
いざ観たら、「ま、こんなものか」と凡庸に感じてしまった(期待通りお約束の鳩を飛ばしてくれた点は評価)。



あとは、金城クンのこれまでの芸能生活を振り返る記事が多い。
そうすると、やはりどうしても出てきてしまうのが、“四小天王”の内の一人とされていたアイドル時代。

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うわぁ~、ダサ…、いや、初々しいですねぇー(笑)。それでも私は当時からブッチギリで金城支持。
画像に全員の名前が入っているけれど、念の為記しておくと、他の3人は、
人気番組『爸爸去哪兒』に出演し、最近は良きパパとしても知られる
(奥方が双子の息子を妊娠中、また家族が増えることを発表したばかりの)林志穎(ジミー・リン)、
今月、初監督作品『ひだりみみ~左耳』をひっさげ、
東京・中国映画週間のために来日予定の蘇有朋(アレック・スー)、
共演した劉詩詩(リウ・シーシー)との年の差再婚も果たした吳奇隆(ニッキー・ウー)。
浮き沈みの激しい芸能界で、4人とも未だ大活躍とは、立派です。

とにもかくにも、金城武さま、改めて、お誕生日おめでとうございます!



話は変わって、テレビ。
『孤獨的美食家』のタイトルで中華版も制作され、
日本ではこの10月第5シーズンがスタートしたテレ東の人気ドラマ『孤独のグルメ』
10月23日、30日放送の第4話、第5話では、
松重豊扮する主人公・井之頭五郎が初の海外出張で台湾へ飛び、
中華版で趙文瑄(ウィンストン・チャオ)が扮する主人公・伍郎とも一緒にお食事をするのだと。

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これは楽しみ。
(趙文瑄って、案外背が低い?)

私、本当は『孤独のグルメ』は他人様が言うほど面白いとは思っていないのだけれど、
中華版だと、高捷(ガオ・ジェ)、太保(タイポー)、張國柱(チャン・グォチュー)、李天柱(リー・ティエンジュー)、
乾門(ガン・ダーメン)、修杰楷(シュウ・ジエカイ)、陳建州(ブラッキー・チェン)、陸明君(ルー・ミンジュン)等々
台湾の映画やドラマでお馴染みの顔が毎回登場するので、興味がある。
日本で放送の予定はないのだろうか。
つまらない偶像劇をタレ流しにするくらいなら、『孤獨的美食家』を放送してくれた方がよほど有り難い。


さらに言ってしまうと、私は『孤独のグルメ』より『深夜食堂』派。
街の食堂ガイド的な『孤独のグルメ』より、毎回一話完結の人間ドラマになっている『深夜食堂』の方が好み。
この『深夜食堂』も、『花より男子~流星花園』、『ブラック&ホワイト~痞子英雄』などでお馴染みの
蔡岳勳(ツァイ・ユエシュン)監督の手で中華版が制作され、
一話に映画並みの予算を注ぎ込み、毎話毎話両岸三地の人気俳優をゲスト出演させる計画と
ひと月ほど前に発表。
これ、蔡岳勳監督が版権を獲得しているらしいのだが、大陸側の出資者・華錄百納から
反日的な風潮に考慮し、日本人俳優を重要な役では使わないとか、日本文化をあまり濃く出さないとか、
色々条件もあるようで、キャスティングなど詳細は未だ聞こえてこない。
せっかく日本オリジナルなのに、国家間の関係が上手くいっていないと、
日本人俳優はなかなか外へ出て行けない。エンタメ界でも、アジアの中で日本の孤立が益々進む…。
(もっとも、私はこの状況が必ずしも日本にとって“損”だとは思っていないが。
人というのは、「どうぞどうぞ」と勧められるものより、「駄目!」と封印されたものに惹かれるものなのです。)




あと、本日10月11日(日曜)は、もう直、夕方6時半からBSジャパンで放送の
『日経スペシャル~私の履歴書』で、2014年9月に亡くなった李香蘭こと山口淑子を(→参照
今週と来週の2週に渡り取り上げる。
本日放送の前編では、“李香蘭”として生きた中国時代を紹介するようだ。


普段観ないタイプだけれど、気になって録画の予約をしたのは、10月16日(金曜)テレビ朝日で放送の
『はじめまして日本の芸能人です!まさかのキャラかぶってましたSP』という番組。
アメリカで渡辺直美ようにビヨンセのモノマネをする人や、
ベルギーで活躍するとにかく明るい安村のような裸芸人を紹介するようだが、
私が観たいのは、香港の地下鉄に貼られていたポスターで見つけた
ナイナイ岡村にそっくりな猿キャラの人物を捜索するのと、
成龍(ジャッキー・チェン)のスタントチームに所属するやられ役・リアクション俳優を
出川哲朗が訪ねるという、いずれも香港パート。

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この画像で見る限り、“岡村にそっくりな猿キャラ”って、岡村のソックリさんというより、孫悟空の扮装をした人。
確かに、まんま“猿キャラ”だけれど…。
出川が訪ねるリアクション俳優とやらは、香港映画で私も顔を見たことがある俳優さん?
それとも、完全に裏方のスタントマン?そこら辺は金曜日のお楽しみ。



新作ではなく再放送になるが、10月13日(火曜)、パリコレを取材した
NHK BSプレミアム『世界で一番美しい瞬間(とき)』、“ファッションの最高峰 輝く5日間 フランス・パリ”には、
先日黃曉明(ホァン・シャオミン)とのド派手挙式で話題になった楊穎(Angelababy)や、
范冰冰(ファン・ビンビン)がカンヌで着たゴージャスなお召し物“東方祥雲”で有名な(→参照
中国人デザイナー勞倫斯許(ローレンス・シュー)がほんのちょっとだけだけれど登場するので、
興味のある人は要チェック。(べいべーは、確かディオールのショーに来たセレブとして数秒映るだけ。
但し“アンジェラベイビー”と名前入りで紹介されている。)




お菓子は、せっかくの金城武御生誕記念日なのに、地味…。
こんがり茶色く焼き色のついた素朴なお菓子を、和風、洋風ひとつずつ。

★ うさぎや:どらやき

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大きさは、直径約10センチ。
2枚の生地でつぶ餡をはさんだどら焼き。




ひとつめは、和の代表、上野・うさぎや(公式サイト)“どらやき”
東京のどら焼きファンに大人気のお品。

ムラ無くふっくら綺麗に焼けた生地には、レンゲの蜂蜜が入っているらしい。
その生地にはさまれているのは、北海道十勝産の小豆を使ったつぶ餡。
適度に甘く炊かれており、量は多過ぎず、少な過ぎず。

“どら焼き、こうあるべし!”という感じの正統派のどら焼きで、
東京のどら焼きファンからの支持率も高い。
味に保守的なうちの父も、ここのどら焼きが好物。
私は、特別どら焼き好きというわけではないので、わざわざ買いに行くことはないけれど、
有れば食べるし、食べれば、まぁ美味しいと思う。
上野のうさぎやなら、私は、母がたまに食べるというソフトクリーム“どら餡ソフト au lait”の方が興味あり。
北海道オホーツク・興部ノースプレインファームの牛乳ソフトに、
うさぎやがどら焼きに使っている餡子を練り込んだソフトクリームなのだと。
これ、私、多分好き。でも、お店に行かないと食べられないので、なかなか機会がない…。

★ チーズガーデン五峰館:御用邸チーズケーキ

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大きさは、だいたい直径18.5センチ、高さ6センチ。
シュウ種類のクリームチーズをブレンドし、
3段階の温度でじっくり一時間焼き上げたベイクド・タイプのチーズケーキ。




洋の代表は、チーズガーデン五峰館(公式サイト)“御用邸チーズケーキ”
父がゴルフ場で戴いてきたらしい。
私は、チーズケーキは普段積極的に買うことがないので、こういう機会でないと、なかなか食べない。
このチーズケーキは、以前、デパートの催事のチラシで目にしたことがあるような気がする。

平べったっかったので、1/4にカットしたら、実は結構目が詰まっていて、ドッシリ重い。
普通は、1/6くらいが一人分かも。小食な人なら1/8でも良いくらい。

手にして重量があるように感じたが、いざ口にしたら、“重い”、“濃厚”という印象はなく、
むしろふっくらと軽いくらい。
チーズのクセも無く、まぁ食べ易いけれど、それはすなわち決定的な特徴も無いということで、
私にはやや物足りない。

次に冷やして食べてみたら、生地がもっと密になり、質感もよりシットリ。
気のせいか、味も濃厚になった。私は、冷やしたこの感じの方が好み。
そのままでも良いけれど、マーマレードを添えて食べても、爽やかで美味しかった。

なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか

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久々にネット上で「なるほど」と思える記事を読んだ。
<なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか>というプレジデントの記事がそれで、
私が東京国際映画祭について以前から釈然としないでいたかなりの事に、色々と裏付けがされる記事で、
納得すると同時に怒りも込み上げてきた。

東京国際映画祭が、東京都なり国なりから支援を受けて運営されていることは、
これまでも漠然とは分かっていたけれど、
改めて「予算の半分以上が税金で賄われる公益性の高いイベント」と読み、ちょっとビックリ。

以前から東京国際映画祭に通っている人なら知っている事だけれど、
この映画祭は、昨2014年に様々な方向転換が行われた。
そこには、政府が進める“クールジャパン”の恩恵もあり、
一昨年まで約6億円だった事業費も約倍額の10億9656万円に大幅拡大したという。

大金が注ぎ込まれ、より良いものに変わりつつある兆候が見えるなら、まだ納得できるけれど、
昨年の東京国際映画祭でそう感じた人が、果たしてどれ程度居るものか。
大手配給会社が配給する作品の“有料試写会”状態は相変わらずだし、
開幕のレッドカーペットを闊歩するのは、ほとんどが国内の俳優と、
そうでなければ、ウルトラマンやドラえもんといった着ぐるみばかり。
あの着ぐるみ軍団に、政府が推し進めるお見当違いな“クールジャパン”を見せ付けられた気がした。

何の改善も感じられないのに、約11億円ものお金が、どこに消えたのかと不思議に思ったら、
その内の66.6%もを占める7億3052万円は“委託費”として、
非常に偏った委託先に支払われているという。
そこでは健全な競争は排除され、一定のグループが公益事業の運営、事業費を独占。
(記事には組織名も明記。)

東京国際映画祭と限らず、例えば、今年カンヌ国際映画祭で日本が5年ぶりに出したジャパンパビリオン等も
経産省と総務省による共同基金“ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金”、
通称“J-LOP”からの助成を受けているが、
問題は、そのような助成金の支援は現場には届かず、
映画会社や広告代理店といった“映画村”の中だけで多くの事が計画、実施されているという現状。
J-LOPの基金管理は、映像産業振興機構に委託され、
そこには、東京国際映画祭の運営も任されているクオラスの社員が出向。
また、同映画祭を主催する公益財団法人ユニジャパン理事13人中7人は、映像産業振興機構の理事も兼任。
さらに、J-LOPの予算の提言を行っている経団連のコンテンツ部会や政府の知的財産戦略本部など
多数の公職にもこれらの理事が名を連ねているという。


あまりにもベタベタな癒着に、もう何がナンだが分らなくなってしまうが、要は…
日本では国際的な実務能力を持たない“映画村”の人間たちが、
政府から税金を引き出し、利権を貪っているという前時代的な利権構造が定着し、
日本の映画産業の国際的な発展の障壁になっている。

…という話。
この記事は、「“国際映画祭”というひとつの実例をとってみても、
産業に責任をもたない人間たちによって、無責任な未来がデザインされている。
日本映画を次世代につなぐには、この利権構造との決別が急務である。」と締めている。御尤もでございます。



ちょっと話はズレるけれど、東京国際映画祭のみならず、毎年日テレで放送されている
(“アカデミー”とは名ばかりで、まったくアカデミックじゃない)日本アカデミー賞などからも、
日本の映画界を蝕むベタベタな癒着はずっと前からムンムンと漂っていた。
確か昨年、ビートたけしが、「日本アカデミー賞は、松竹、東宝、東映、たまに日活の持ち回り。
それ以外が獲ったことはほとんど無い。(賞を選定する)アカデミー会員なんてどこにいるんだ。
汚いことばかりやっている。」と発言した時は、私、ぜんぜんビートたけしのファンではないけれど、
「よくぞ言った」と溜飲が下がる思いであった。
その後、日本アカデミー賞協会会長の東映・岡田裕介会長が発した反論も、勿論知っているけれど、
まったく説得力が感じられなかった。

ビートたけしがああ発言した後の今年の日本アカデミー賞にしたって、
『永遠の0』が圧巻の8冠獲得!と称賛され、何も変わらない体質に絶句、
…と言うか「やっぱりね」とやけに納得。
受賞の席で「こういう賞は普通文芸作品などしか評価されないものですが、
日本アカデミー賞はちゃんと娯楽作品にも光を当ててくれる」と感激した様子の山崎貴監督のスピーチを聞き、
いや、監督、“ほぼ娯楽作品にしか光を当てない”のが日本アカデミー賞でしょ、と訂正したくなった。
多くのシネフィルは、“興行成績に関係無く、質で賞を選定するのが映画賞”と
頭の片隅で勝手に思い込んでいるから、日本アカデミー賞の結果を見ると、唖然とするのだ。
(唖然とする以前に、そういう人たちは最初から日本アカデミー賞の結果など気にも留めないと思うが。)
もちろん、『永遠の0』のような娯楽作品に、多くの日本人が感動させられているのは紛れもない事実。
だから、日本アカデミー賞は、最初から「正しく選定しています」などと苦し紛れの言い訳をせず、
動員数や収益などハッキリと数字に表れた興行成績順で賞を決めます!と宣言すれば良いのだ。
映画界を経済的に潤すことだって、映画界への立派な貢献と言えるであろう。
まぁ文化的には衰退し、日本映画の世界的地位は益々失墜の一途を辿ると思うけれどね…。

『海角七号』が一定の興行成績を収めたことで、国内需要にシフトを切り替えてから、
国際競争力を失った台湾映画界が良い例。
しかし、この記事によると、その台湾でさえ、政府の支援で、昨年、
遠藤周作原作でマーティン・スコセッシ監督がメガホンをとる日本が舞台の日本語時代劇、
『沈黙』の撮影誘致に成功。
また、台湾映画界は、今や映画市場が世界第2位にまで成長した中国ともがっちりタッグを組んでいる。
韓国も大陸との合作が進んでいるし、後発の釜山映画祭が、東京国際映画祭をしのぐ盛況ぶり。
もはや日本は、“全世界”どころか“アジア”の中でも孤立状態の劣等生…。



私は、何でもカンでもグローバル化することには、むしろ反対だけれど、
それにしても、日本の大きな組織の上層部や政治家を見ていると、
島国根性が骨の髄にまで染み付き、あまりにも国際感覚に欠け、
(映画と限らず様々な分野で)これでは国際競争力が無くて当然と、呆れてしまうことが多い。
日本の10年後、いや、3年後を考えても、気分真っ暗ヨ…。


国民の税金をガッポリせしめながら、今年チケット代をまた値上げした東京国際映画祭に、
何か良い変化が起きているとは考えにくいけれど、
こういう記事が出ると、ファンの目もどんどん厳しくなるだろうから、今後の動向に注目。
今年は最低限「ニッポンは、世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく。」、
「TOKYOが、カンヌ、ベネチア、ベルリン、を超える日が、やってくる!?」などという
ドン引きの愛国キャッチコピーを英訳と共にポスターに刷るなどという無粋は控えていると信じております。
(そのポスターが、東京五輪のロゴ問題で一躍時の人となった佐野研二郎デザインであることにも、
公共事業の根深い癒着を感じた私。)
“国際”と名乗るのが小っ恥ずかしいくらいドメスティックな映画祭、
東京“国内”映画祭、…もとい、東京国際映画祭の改善に期待。
…さもないと、その内「税金泥棒!」の声が上がります。


プレジデントの<なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか>を全文読みたい人は、こちらへ。

映画『ハーバー・クライシス~都市壊滅』

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【2014年/台湾/126min.】
台湾・海港城(ハーバー・シティ)で、橋や鉄道、高層ビルといった重要なインフラ、建造物が
次々と破壊されるという大規模な連続爆破事件が発生。
この事件を起こしているのは、全員指名手配中の犯罪者であることが判明。
南區分局に所属する刑事・吳英雄も、外出中、何者かに狙われ、辛うじて命は助かったものの、車は大破。通り掛かった東區分局所属の若手刑事・陳真の車に成り行きで同乗すると、
そこに局の同僚から一報が入る。
なんと、指名手配されている事件の容疑者の中に、
一年前、英雄が死亡を偽装し、逃亡を手助けした徐達夫が含まれているというのだ。
状況が理解出来ず戸惑う英雄だが、
偶然にも、その徐達夫が運転する車が、英雄らの横を猛スピードで走行するのを目撃。
追い詰め、事情をただすと、徐達夫は、妊娠中の妻・小晴を人質に取られ、海港城に連れ戻され、
今でも脅され続けているという。
その犯人は、“夜行者”という武装組織。
英雄と陳真は、徐達夫に代わり、今でも行方の分からない彼の妻・小晴の捜索をする内に、
夜行者が小晴の体内でウィルスを培養し、人類滅亡を目論んでいるという恐ろしい計画を知り…。



台湾の大ヒットドラマ『ブラック&ホワイト~痞子英雄』の映画版、
監督は、ドラマ版からずーっと同じ蔡岳勳(ツァイ・ユエシュン)



ドラマも含め第3弾(映画版としては第2弾)となる今回の舞台は、これまでと同様、
台湾の架空の都市・海港城(ハーバー・シティ)。…実のところ高雄。

その海港城で、橋や高速道路、鉄道などが破壊される大規模な爆破事件が立て続けに発生。
南區分局所属の熱血刑事・吳英雄は、成り行きから東區分局所属の若手刑事・陳真とタッグを組み、
捜査を進める内に、生物兵器で街を破滅させようとしている武装組織・夜行者の計画を知る。
果たして英雄と陳真は、このおぞましい計画を阻止し、
市民を守ることができるのか?!をスリリングに描く刑事ドラマ

第1弾のドラマ版は、視聴者を人間不信に陥れるほど、誰が善人で誰が悪人か見分けがつかず、
結局事件も解明されず、“何やら巨大な権力が背後に”と不気味な謎を残して幕を閉じる。

その後制作の映画版で様々な謎が解明されるのかと思いきや、
キャストの変更など致し方ない事情もあったのか、方向性が変わり、
ドラマ版とはほとんど関係のない内容の映画になった。
その作品で主人公・英雄の新たな相棒になったのは、同業の刑事ではなく、ヤクザ者の徐達夫。
事件解決後、徐達夫は、英雄の計らいで、死亡したことにしてもらい、逃亡して、映画は幕を下ろす。

第3弾となる本作品では、前作で逃亡したその徐達夫が、妻を人質に取られ、
やむを得ず海港城に舞い戻ってくるという前作からの繋がりはあるものの、ほぼ独立した物語。
前2作品未見の人でも楽しめるという利点はあるが、
逆に、ドラマ版から観ている人にとっては、もはや何の統一性も感じられないという欠点。

時系列も明らかに変。
第1弾ドラマ版の時代設定は2008年。
第2弾映画版は、その3年ちょっと前、2004年8月を描いたドラマ版の前日譚。
第3弾の本作は、第2弾の最後で逃亡した徐達夫が、
約一年半後に海港城に戻ってきたところから始まる話なので、時代設定は2006年春。
この映画の2年後が、あのドラマの話に繋がっていくとは、到底思えない…。
あそこまで壊滅した海港城も、たったの2年で、ドラマの中で完全復興しているし…。
細かい点を色々考えると、辻褄の合わない事だらけ。




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今回、事件解明に乗り出すコンビを演じているのは、
海港城南區分局に所属する刑事・吳英雄に趙又廷(マーク・チャオ)
東區分局に所属する若手刑事・陳真に林更新(ケニー・リン)

ドラマ版『ブラック&ホワイト』でデビューし、いきなり人気者になった趙又廷は、
本シリーズ3作品全てに英雄役で出演。
今回の英雄は、前作の事件解決で…

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海港城警察の警察官募集ポスターのモデルにも抜擢されるほど、街の人気者になったらしい。
こういうポスター、実際に有りそう~。


その英雄の相棒は、3作品で全て違う人物。

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改めて、過去作品の相棒を見てみると、(↑)こんな感じ。


このシリーズの中文原題『痞子英雄』とは、“痞子(ゴロツキ)”と“英雄(ヒーロー)”の意。
そのタイトル通り、第1弾のドラマ版は、周渝民(ヴィック・チョウ)扮する刑事らしからぬチャラい陳在天と、
趙又廷扮する“名が体を表している”正義感の強い吳英雄という凸凹コンビの“バディもの”であった。

このコンビは大人気だったのに、周渝民が役を続投しなかったことで(←理由は諸説あり)、事態が急変。
シリーズ第2弾・映画版では、ゴロツキどころか、本物のヤーさん・徐達夫を英雄の相棒にして、
刑事&ヤクザという不思議な“バディもの”に変更。


第3弾で、英雄の相棒になるのは、陳真という若い刑事。この“陳真”という役名に注目。

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“陳真”は、かの『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972年)で李小龍(ブルース・リー)が演じた役。
20世紀初頭の上海日本租界で、中国人を屈辱する日本人に耐え切れず、一人果敢に立ち上がり、悪を成敗。
架空の人物ながら、中華圏では正義のヒーローとして大人気で、その後も多くの映像作品に登場。
甄子丹(ドニー・イェン)がこの陳真を演じている。

でも、現代モノ、しかもポリス・アクションに“陳真”が登場するのは初めて見た。
この若手刑事は最初の登場シーンで、切羽詰った状況にもかかわらず、自撮りを始め、“痞子”っぷりを発揮。
吳英雄との新たな“痞子英雄”コンビを予感させるが、実は彼、結構生真面目で、
国を救うため日本人に立ち向かった“陳真”のように、やがて彼も海港城を救うため、悪に立ち向かっていく。
融通が利かず、ルールも無視して暴走しがちな吳英雄の方が、もはや“痞子”という印象も…。

陳真に扮する林更新は、ドラマ『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』
“⑭様”こと愛新覺羅胤禵を演じ、大ブレイクした大陸の新星。
あのドラマのヒットで、映画出演のオファーも急増。
日本でこの前に公開された映画『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』(2013年)でも
趙又廷とコンビを組んでいるが、作中での存在感はさほど大きくは感じられなかった。
林更新を堪能するなら、断然こちらの『ハーバー・クライシス』。
辮髪がエレガントだった『若曦』とはまた異なる、より等身大の青年を演じている感じ。



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他の出演は、妻を人質に取られ、海港城に戻って来た三聯會の元組員・徐達夫に黃渤(ホアン・ボー)
人質になった徐達夫の妻・杜小晴に關穎(テリー・クアン)
英雄の同僚で鑑識官の藍西英に張鈞(チャン・チュンニン)
武装組織・夜行者の指揮官で、なんと藍西英の実兄でもある藍西恩に蔡岳勳(ツァイ・ユエシュン)
英雄に憧れる見習い刑事・李小牧に古力娜扎(グリナザ)等。

黃渤は、前作からの流れで、友情出演程度に登場するのかと思っていたら、結構しっかり出ていた。

もっと予想に反しシッカリ出ていたのは、蔡岳勳監督!
蔡岳勳監督は、前作のジャパンプレミアが行われた際、会場入りするところを偶然お見掛けし、
握手してもらったことがある。
間近で見た蔡岳勳監督は、想像していたよりずっと長身で、俳優もできそうなナイスミドルであった。
そんな蔡岳勳監督が、今回は本当に俳優として出演しているのだが、
演じているのは、実際のナイスミドル蔡岳勳監督とはまったく異なり、
ロン毛で首にまでタトゥを入れている極悪人。
御本人も別人格に扮するのが楽しくて、カメオ出演程度に出たのだろうと想像していたら、
事件の黒幕という重要な役で、登場シーンもかなり有った。
(ただ、元々の顔が穏やかなので、扮する藍西恩に、あまり狂気は感じられなかった。)


女子の部で注目は、英雄の部下・李小牧役で、シリーズ初登場の古力娜扎。
今年、大陸の人気俳優・張翰(チャン・ハン)との交際が明らかになった維吾爾(ウイグル)族のあの女優。
はっきり言って、居ても居なくても、どうでも良い役に感じた。
“その他大勢”の中に、バター臭い顔が一人混ざっているのが、なんだか不自然。
こういう“無理矢理ネジ込んじゃいました”という配役は、近年の中台合作の悪い所。
(まぁ中台合作と限らず、中香合作にも中韓合作にも、物語を無視したこういうネジ込み配役は多く、
様々な打算で行われる合作の負の側面を見せ付けられているようで、ゲンナリする。)


あと、脇は、警察関係、政府の要人、特殊部隊、謎の組織の人間など、ドラマ版からの出演者多数。




生物兵器・“伊魯康吉(イルカンジ)”だとか、謎の武装組織が進める“枯草計畫”だとか、
現実離れしていて何だかよく分からないけれど、とにかく、得体の知れない巨大な魔の手によって、
人類が滅亡の危機にさらされるという点は、シリーズ3作品全てに共通。
私、“伊魯康吉(イルカンジ)”なんて、この映画の創作だと思い込んでいたら、
オーストラリアのアボリジニ・イルカンジ部族から命名された、
猛毒を持つ“イルカンジくらげ(Carukia barnesi/Irukandji jellyfish)”というクラゲが本当に居るそうな。
人質になった徐達夫の妻・杜小晴は、そういう猛毒ウィルスを、体内で培養されていた訳か。怖っ…。

でも、まぁ、退屈しのぎにはなっても、わざわざ映画館に足を運んでまで観る必要の無い映画と感じた。
多額の予算を注ぎ、ハリウッド並みの迫力映像を撮れるようになった
現在の台湾映画の実力を見せたかったのも、分らなくもないけれど、
私が台湾映画に求めるのは、そのようなものではない。
予算も無く、限られた条件の中で細々と撮られてきたこれまでの台湾映画は、
素朴で、ローカル臭がムンムン漂っており、それが結果的に台湾映画の魅力になっていた。
つまり、意図しようとしまいと、台湾映画界は、苦境を強みにしていたわけだ。
勿論、外国人が求める台湾映画のイメージに固執せず、新たな挑戦をするのもまことに結構な事だけれど、
果たして日本にどれ程度そのようなハリウッド風台湾映画の需要があるのか疑問。
ドラマ『ブラック&ホワイト』のブームもすっかり落ち着いてしまい、
前作の映画から3年も経って日本公開というタイミングも悪い。
大した需要も無く、タイミングも逃した映画が、よくぞ公開に漕ぎ着けたと思う。
(でも、案の定、映画館はガラガラだった…。)

毛髪の有る林更新をスクリーンで拝めたのは、良かった。
声も、⑭様仕様の吹き替えではなく、地声が聞けるのが良い。
でも、蔡岳勳監督作品なら、映画は取り敢えずは当分お休みし、
制作が発表されたテレビドラマ、台湾版『深夜食堂』が観たい。日本でも放送してくれる?



シリーズ第1弾、ドラマ『ブラック&ホワイト~痞子英雄』については、こちらから。

シリーズ第2弾、映画『ハーバー・クライシス~湾岸危機』については、こちらから。

東京銀座で行われた『ハーバー・クライシス~湾岸危機』ジャパンプレミアについては、こちらから。

フルーツ餅2種(+テレビ雑記)

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昨晩始まったTBS日曜劇場『下町ロケット』。世間の皆さまの反応はいかがでしょう?
私は、4年前に先にドラマ化したあまりにも完璧なwowow版『下町ロケット』とついつい比較してしまうためか、
TBS版の初回は、それなりに面白くても、一話だけでググーッと惹き込まれることはなかった。
池井戸潤の同じ小説を原作にしていても、2本のドラマは演出に大きな差がある。
TBS版の方は、日曜夜の民放ということで、分かり易く誇張された演出。
主人公・佃航平を演じる阿部寛が、特許侵害の賠償金の額、90億円の文字を見て、
松田優作が乗り移ったかのように思わず口走った「 なんじゃこりゃぁっっっ…!」を聞いて、
おぉこのドラマはこの路線で行くのねぇ、と察した。

この先、ドラマ後半部分は、現在朝日新聞で土日に掲載されている
池井戸潤の書き下ろし小説<下町ロケット2>に繋がっていくという。
こうなると、wowow版とはまったく違う展開になっていくので、これはこれで楽しみ。
先週末で第6回まで掲載された朝日新聞の<下町ロケット2>を読む限り、
佃製作所は、ロケットから医療分野へシフトしていくようだ。


TBS×wowowのドラマといえば、
香港映画『インファナル・アフェア』をリメイクした全2話のドラマ『ダブルフェイス』
今晩、10月19日(月曜)と来週26日(月曜)にTBSで再放送。
このドラマ、香港映画ファンには悪く言う人も結構多いみたいだけれど、
私はかなりレベルの高いリメイクだと思っている。




他のテレビで注目は、明日10月20日(火曜)、NHK BS1で放送の『BS世界のドキュメンタリー』
今回この番組では、2012年に初回放送があった
中国のドキュメンタリー制作者・陳為軍による『中国 教育熱のゆくえ~出路』を放送。

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「大学さえ出ていれば豊かさを手に入れられる」という思いから、
中国の親たちは貧しくても多くの犠牲を払い、子供たちを大学へ送るために頑張ってきたが、
近年、大学を出ても就職できない若者が増加傾向。
このドキュメンタリーでは、1997年の大学民営化を機に、高等教育がビジネスとなり、
詐欺まがいの手口で学生を勧誘する私立大学の講師や、
娘を大学に行かせるため、片手を失っても肉体労働を続ける貧しい母親などを追い、
中国社会の夢と病んだ現実に切り込んでいるようだ。う~ん、これ、以前観たような、観ないような…。
仮に視聴済みでも、変化の速い中国では、2012年からまたすでに状況が変わっているだろうから、
今改めて観ておくのも悪くない。


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これを撮った陳為軍という監督は、河南省のエイズ村でエイズに冒された家族を追った
『好死不如活著~To Live Is Better Than To Die』で、
サンダンス、アムステルダムといった映画祭やアメリカのピーボディ賞等を、
また、武漢の小学校で行われる級長を決める選挙を追った『請為我投票~Please Vote For Me』で
(日本のメディアが誇らしげに言っていた「中国人はAKB総選挙で初めて民主的な選挙を体験するんです!」
ってあれは一体ナンだったんだ…?!)カナダやアシュランド・インディペンデント映画祭等々、
他にも海外で数々の賞を受賞しているドキュメンタリー作家。
どの作品も内容が内容なので、中国国内だと堂々と上映(もしくは放送)するのは
困難なのかも知れないけれど、私はせっかく日本に居るのだから、この機会に観賞させていただきます。
(NHKの放送枠は50分なので、残念ながらカットされているとは思う。)




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10月22日(木曜)は、NHK BSプレミアム『世界遺産「黄山」に遊ぶ~片岡鶴太郎 中国“仙境”への旅』を。
今やすっかり画家の鶴ちゃんが、日本の雪舟や東山魁夷などにも影響を与えた水墨画のふるさとを
中国の水墨画の第一人者・傳益瑶と共に巡る番組。





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翌10月23日(金曜)、TBS『ぴったんこカンカン』は、吉田羊in台湾の後編を放送。
前回安住アナと台湾を飲み歩いた吉田羊、後編でも飲みまくるのか…?
(↑上の画像は、前回の物。高雄・左營、火鍋の店・天水玥秘境鍋物殿にて。)

前回放送時は、ナイナイ岡村in香港がお目当てで、裏番組の
『はじめまして日本の芸能人です!まさかのキャラかぶってましたSP』の方を楽しみにしていたのだが、
録画して、いざ両方を観たら、下戸の私にも吉田羊in台湾の方が面白かった。
安住アナって、もしかして少し中国語を勉強したことがあるのかしら?
現地の人々と筆談でやり取りするのだが、値段を尋ねるのにちゃんと「多少銭」と書いていた。
中国語をまったくやったことがない人に限って、「中華圏は筆談で何でも通じるから」などと軽く言うが、
実際には、そこまで単純なものでもなく、値段を尋ねるのに「多少銭」は
“謝謝”と“你好”しか知らない日本人からは、まず出てこない。
吉田羊は、『アナザースカイ』で台湾を紹介し、また今回も台湾と、
位置付けが“台湾好き芸能人”となりつつある。その内台湾観光大使に任命されるかもね。



あと、ちょっと先になるけれど、杏をナビゲーターに、4回シリーズで
これまでカンボジアのアンコール、ミャンマーのバガンを紹介してきたNHK『アジア巨大遺跡』が、
11月7日(土曜)、第3回目の放送で中国・始皇帝陵の謎に迫る。
来週、10月27日(火曜)に幕を開ける東京国立博物館<始皇帝と大兵馬俑>は
この番組を観てから行くべきか…?




お菓子は、中にフルーツを包んだ和のフルーティな餅菓子を2種類。

★ 聖和堂:桃太郎葡萄大福

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大きさは、だいたい直径4.5センチ。
マスカットを丸々ひと粒、白餡と共にお餅で包んだ大福。




ひとつめは、岡山のお店、聖和堂(公式サイト)“桃太郎葡萄大福”

フレッシュなフルーツを包んだ大福。
包まれているそのフルーツは、“桃”太郎という名前なのに、葡萄。
桃太郎という品種のトマトなら知っているけれど、葡萄は知らなかった。
グザルカラとネオ・マスカットを交配させ、岡山を中心に栽培されている“瀬戸ジャイアント”という品種があり、
その中でも基準を充たしたものが“桃太郎”と呼ばれるらしい。
そんな桃太郎が、丸々ひと粒、白餡と共にお餅に包まれている。

第一印象は、粒の大きさ。丸々と太った立派な実である。
皮付きなので、噛んだ時、口の中でプチッと弾ける感じが良いし、種無しなので、食べ易い。
果肉はシッカリしていて、ジューシー。
味は、渋みや酸味が無く、甘いけれど、しつこい甘さではなく、爽やかな甘さ。
一緒に包まれている白餡は、葡萄のそのデリケートな味を殺さないよう、控え目で柔らかな味。

フルーツ大福の代表格と言えば、苺大福だが、葡萄の大福も美味。こちらの方がスッキリした味。
また食べてみたいけれど、桃太郎は一年中収穫されているわけではないので、
このお菓子の販売も、9月から11月末までの限定。

★ 三陽:黄金餅

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大きさは、約4センチ。
金柑の甘露煮を白餡と共にお餅で包んだお菓子。




ふたつめは、三陽042-383-7400)の“黄金餅”
住宅街にひっそり佇む小さく、ごくごく平凡な店構えだが、
麩饅頭が評判でメディアにもしばしば取り上げられる和菓子屋さん。
噂の麩饅頭は確かに美味しいけれど、私は麩饅頭なら他にも美味しいお店が有ると思っているので、
ここの一番のお気に入りはこちらの黄金餅。

とても柔らかなお餅の中に白餡と共に包まれているのは、その名の通り、黄金色に輝く金柑。
金柑特有の苦味のある爽やかな味が、まろやかな白餡と相俟っ良い感じ。
金柑は甘露煮になっているので、柔らかで(でもピールに適度な歯応え)、
噛むと中から甘いお汁がジュワァ~。

看板商品の麩饅頭は通年売られているが、こちらの黄金餅は冬の期間限定なので要注意。
これからの季節、他のお店でも金柑を使ったお菓子がぼちぼち出てくるけれど、
私のベスト・オヴ・金柑和菓子は、今のところコレ。金柑好きにはお薦め。
今回撮影した黄金餅は、中の金柑が潰れてイビツなのが残念。真ん丸だと、もっと美人に写るのに…。
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