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映画『カンフー・ジャングル』

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【2014年/中国・香港/100min.】
香港・中區の警察署に、警察の武術教官・夏侯武が、人を殺めたと自首してくる。
合一門を率いる彼は、一門の名を挙げようと参加した対戦で、誤って相手を殺してしまったのだ。

3年後、赤柱刑務所で服役中の夏侯武は、
テレビで、拳術の達人が何者かに殺害されたというニュースを見て、
事件を担当する巡査部長・陸玄心に、調査協力をするから仮釈放してくれと直訴。
夏侯武は「拳術の次は足技、次に擒拿、武器、外から内へ」とこの先起こるであろう同種の殺人事件を予測。さらに、「佟正亭、譚敬堯、曹子安、阮清洋、方文希、符升泰、方六」と具体的な名前を挙げ、
次に必ずこの7人の中の誰かが被害に遭うと断言。
当然そんな話には耳を貸さない陸玄心であったが、
間も無くして、夏侯武の予言通り、譚敬堯という名の芸術家が無残な姿で発見される。
夏侯武はついに仮釈放され、捜査に協力することになるが…。



陳森(テディ・チャン)監督、『孫文の義士団』(2009年)以来の久々の新作。

今年初め、この映画が、<The Wall Street Journal ウォール・ストリート・ジャーナル>の
“2014年の注目すべき香港映画5本”に入っているのを見て、私は当ブログに、
「近い将来、邦題『カンフー・ジャングル』と命名され、シネマート六本木辺りで上映されそうな予感…。」
と書いている。(→参照
邦題ビンゴ。こんなに簡単に当てられるなんて、配給会社がいかに邦題命名に頭を使っていないかが分る。
一方、シネマート六本木は2015年6月に閉館。
そんなわけで、上映館の予想は外し、新宿武蔵野館で本作品を観賞。


主人公は、“合一門”という流派を引き継いだ武術の達人で、香港警察の武術教官も務める男・夏侯武。
合一門の名を挙げようと意気込み取り組んだ対戦で、誤って相手を殺してしまい、
自首して、収監されるところから物語は始まる。
それから3年後、赤柱(スタンレー)刑務所で服役中の夏侯武は、
拳術の達人が、何者かに自身が得意とする技で衝かれ、殺害されたことを知り、
この先立て続けに起きるであろう同種の殺人事件の被害者を予測。
捜査協力と引き換えに仮釈放となり、
予測通り次々と発生する武術家殺人事件の犯人に迫っていくカンフー・アクション映画

この不可解な殺人事件を起こしている犯人が封于修という男だということは、早々に判る。
封于修は武術に憑りつかれた根っからの武術狂で、
ひとつの流派に留まらず、それぞれの流派の頂点に立つ者を、その流派の技を使って打ち負かし、
真のナンバーワンに成りたいと思っている。

そもそも、中文原題『一個人的武林(一人の武林)』の“武林”とは、武術界の意。
中国の武術界には多くの流派が存在し、
それぞれの流派で師匠が門下を抱え、自分たちの武術の継承に努めている。
Aという流派に所属する者は、Aの技の習得に努め、Bという流派に所属する者は、Bの技を磨く。
そういう単体で構成されているのが“武林”。

本作品の封于修の場合、ひとつの流派に留まらず、どの流派にも通じているから“お一人様武林”状態。
音楽だと、一人でピアノもヴァイオリンもパーカッションもこなし、“一人オーケストラ”をやる人が居るけれど、
つまり、封于修は、あれの武術版って感じのオールマイティな武術家。
コンピューターゲームのように、対戦相手を替え、技を替え、どんどん勝ち進んで、頂点を目指す。




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主演は、服役中の合一門後継者で、謎の殺人事件に調査協力する夏侯武に甄子丹(ドニー・イェン)
“お一人様武林”状態で殺人を繰り返すツワモノ封于修に王寶強(ワン・バオチャン)

甄子丹は主演兼アクション監督。
甄子丹扮する夏侯武は、前半、収監されているので、囚人服を着ているのだけれど、
足元に目をやると、“良家の子女”風の可愛らしいサンダルを着用。
夏侯武のみならず、囚人役は、皆このサンダルを履いている。
赤柱(スタンレー)の刑務所では、本当にこのような恰好をするのかが、やけに気になってしまい、
帰宅後“赤柱監獄”、“刑服”といったワードでググってみた。

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赤柱に収監されているホンモノの囚人の皆さまは、“良家の子女”風ではなく、
“お便所スリッパ”のようなゴムサンダルを履いておられた。
あのサンダルは、現実を再現しているのではなく、映画用に選ばれた衣装だったのですね。
確かに、お便所スリッパだと簡単に脱げてしまうから、
アクションシーンには、ストラップできっちり足に収まる“良家の子女”風サンダルは必須と納得。


そんな甄子丹のアクションは相変わらず素晴らしいが、
本作品の売りは、より新鮮味のある王寶強のアクションの方かも知れない。王寶強と言えば…

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6歳で武術を始め、8歳の時、在家で嵩山少林寺に入門し、修業を積んだ本格派。
カンフー・キッズは可愛らしいですね~。

このように、本物の武術を子供の頃から叩き込まれているにもかかわらず、
彼を俳優として一躍有名にした映画『イノセントワールド ~天下無賊』(2004年)で演じたのは、
他のどの出演者よりもドン臭い青年の役。
中華圏では、武術ができることが、映画で役を得る近道にも思えるけれど、王寶強はその後も武術を封印。
それが吉と出たのかどうかは分らないが、個性派俳優として開花。
私は特に近年の『ミスター・ツリー』(2011年)、『罪の手ざわり』(2013年)での演技に圧倒された。

そんな王寶強が、甄子丹主演作『アイスマン』(2014年)でついに武術を全面解禁。
『アイスマン』は未見のままなので、私はこの『カンフー・ジャングル』で初めて俊敏な王寶強を見ることになった。
子供の頃からの修練で武術が骨身に染みつているだけあり、さすが動きが切レッキレッ!
長い空白期間があっても、こんなに動けるものなのだろうか。それとも、人知れず訓練を続けていたの…?

今回の役では、得意分野のアクションに頼るだけではなく、
前出の2作、『ミスター・ツリー』『罪の手ざわり』の演技にも通じる、
どこか不気味でサイコパスちっくなキャラ作りにも注目。




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封于修から勝手に対戦を仕掛けられ、バッタバッタとやっつけられてしまう武術の達人たちに扮しているのは、
やられる順に、“北腿王”譚敬堯に釋延能/釋行宇(シンユー)、“擒拿王”王哲に喻亢(ユー・カン)
そして、“兵器王”洪葉に樊少皇(ルイス・ファン)

「次に狙われるのはきっと“兵器王”。そうだ、陳伯光の所へ行こう」と夏侯武が目星をつけて、
陳伯光の元へ行くと、陳伯光はすっかり人の好い屋台のおじちゃんになっていて、
その間に武術狂の封于修が現役の“兵器王”洪葉を倒してしまうという予想の読み違いが起きる。
獄中生活3年の間に、世代交代していた武術界の変化に気付かなかった“浦島太郎状態”から起きた悲劇が
なんだか可笑しかった。




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女性陣は、事件を担当する女巡査部長・陸玄心に楊采妮(チャーリー・ヤン)
夏侯武の妹弟子・單英に白冰(ミシェル・バイ)、封于修の妻・沈雪に思漩(クリスティ・チェン)

私個人的には、この映画に色恋は不必要とも思ったが、
女性がちょこちょこと出た方が、やはり作品が華やぐだろうか。
それに、封于修にとっては、妻・沈雪を失うというのが、彼を狂気に駆り立てる一つの要因にもなっているし。
單英は、最初から夏侯武の妻なのかと思っていたら、
どうやら“互いに想い合いながらも、その気持ちを内に秘めている同門の兄妹弟子”という設定のようだ。
女性陣で一番重要な楊采妮扮する刑事の陸玄心には、恋の話は出てこない。



そう、あと、この作品は、ただバタバタと闘っているカンフー映画ではなく、
過去のカンフー映画へのオマージュになっているのが泣かせる。
これまでカンフー映画を支えてきた俳優や関係者たちが大勢カメオ出演。
(中には、ポスターや映画のワンシーンという形で登場する場合も有り。)

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ここに挙げたのは、ごくごく一部で、監督・プロデューサー・俳優の徐小明(ツイ・シウミン)
武術指導で有名な袁和平(ユエン・ウーピン)の実弟でもある俳優・袁祥仁(ユエン・チュンヤン)
兄・秦沛(チン・プイ)、異父弟・爾冬陞(イー・トンシン)といった
芸能一家生まれの俳優・姜大衛(デビッド・チャン)
多くの武侠ドラマに出演した女優・楊盼盼(シャロン・ヨン)
かの嘉禾(ゴールデン・ハーベス)を設立し、李小龍(ブルース・リー)や成龍(ジャッキー・チェン)の
大ヒット映画を世に送り出した香港映画界のドン・鄒文懷(レイモンド・チョウ)
そして、本作品の監督・陳森(テディ・チャン)

他にも、ホント、いっぱい。
それぞれが一瞬しか出てこないし、若い頃とかなり容貌が変わっている人も居るから、
かなりのカンフー映画ヲタ、香港電影ヲタでも、全員誰かを言い当てるのは、非常に困難だと思う。
裏方さんと言えど超有名な鄒文懷でさえ、
私、一瞬、今年亡くなった日本の政治家、“塩爺”こと塩川正十郎と見紛ったもん。
でも大丈夫、作品の最後にテロップ入りで各人を紹介してくれるから、答え合わせができます。





最近の甄子丹作品にはガッカリさせられることが多いし、
日本で公開される香港映画を全体的に考えても、近年私の満足度は低め。
そんな事情で、本作品への期待度は非常に低く、“時間の都合が合う”という程度の理由で観たら、
展開がスピーディで案外面白かった。“香港映画の最高傑作”と手放しで讃えることはなくても、
少なくとも、ほぼ同時期に観た台湾映画『ハーバー・クライシス~都市壊滅』よりは、こちらの方が気に入った。
『ハーバー・クライシス』も本作品も、近年有りがちな大陸との合作であるが、
本作品からは、まだちゃんと“香港らしい”特徴が感じられる。
『ハーバー・クライシス』の方は、もはや台湾映画らしさが感じられない。
大陸との合作で、台湾/香港の俳優と大陸俳優を共演させる場合は、
キャスティングや役の設定に無理矢理な印象を受けることも多いけれど、
本作品は、香港の甄子丹と大陸の王寶強を組ませ、成功している珍しい例のようにも感じる。
主体はアクション映画でも、王寶強扮する封于修が、なぜ武術の達人ばかりを狙うのか、
この男は一体何者なのか、夏侯武とはどのような関係があるのか、
といった謎に迫るミステリーの要素があるのも良かったのかも知れない。
あとは、カンフー映画とそれを支えた人々へのオマージュになっているのが、よろしい。
画面から、もうカンフー愛が止まらない!って感じが溢れているわけ。
そこまでどっぷりカンフー映画を愛していない私が見ても、なんだか心が和んだ。

邦題はねぇ、英語タイトルをそのまま片仮名にするだけの能無し芸無し邦題ではなく、
“武林(ぶりん)”という単語を上手く生かした邦題にして欲しかった。
“武林”は日本でも結構知っている人の多い単語だし、知らない人には新鮮に響く。
“武林”を“Kung Fu Jungle”と英訳するのは、
固有名詞である“赤壁(せきへき)”を“Red Cliff”と直訳してしまったあの映画と同じくらい馬鹿げている。
もっとも、中華料理の“春巻”が英語で“Spring Roll”と呼ばれていることからも分るように、
漢字の直訳英語はもはや華人の伝統なのであろう。
しかし、英語圏ではなく、中国と共通の漢字文化がある日本で、
ヘンテコ直訳英語をそのまま片仮名にするのは愚の骨頂ですから!

2015東京・中国映画週間オープニングセレモニー

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今年で10回目になるという東京・中国映画週間
オープニング作品の『モンスター・ハント~捉妖記』は、この夏中国で大ヒットした映画。
実はこの映画にものすごく興味があったという訳ではないのだけれど、
上映日の午前中、ちょうど映画館の近所で仕事の予定が入っていたので、
午後、そのまま中国映画週間のオープニングセレモニー付き上映へ行くことに決めた。

…ところが、前日、突然風邪をひいてしまった。
カコナールを飲んで、早々に床についたが、軽い頭痛と吐き気が収まらず…。
仕事が終わったら、さっさと帰宅したいぐらいダルかったけれど、
不味いカコナールをもう一本グビッと飲んで、いざ会場へ。

★ 会場

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会場は、TOHOシネマズ日劇。
中国映画週間の他の作品の上映は、同じ系列のTOHOシネマズ日本橋だが、
オープニングだけは、946人というキャパ大きめの日劇スクリーン1で実施。

今年の東京中国映画週間は、いつもにも増してオーガナイズが悪く、宣伝もほとんどされていなかったせいか、
チケット発売日のお昼頃、ふらりとチケットぴあへ寄った私でも、座席は選び放題であった。
映画だけなら後方が良いけれど、セレモニーもあるので、G列を確保。
(希望すれば、もっと前のかぶりつきシートも購入可能であった。)


入り口を入ると、すぐに例年通りのブ厚いパンフレットをくれる。
…が、中国映画週間名物だったSOYJOYの配布は無し。
(私は不参加だった昨年の事は分らない。いつの間にか大塚製薬はスポンサーを降りていたようだ。
自分では積極的に買ったことがないSOYJOYなのに、中国映画週間に行く時だけ、
「今年は何味をくれるのかしら」とちょっとだけ楽しみにしていた。)


チケット販売の出足は遅かったように思えたが、会場に入ると、ほぼ満席。
毎度のように中国人率非常に高し。
私の周囲に日本人らしき人はほぼ皆無で、地元・東京に居ながら、アウェイ感がハンパない。
日本にお住いの人民の皆さまにとっては、恐らく一年に一度の楽しいイベントになっているのであろう。
このまま夜はグランドプリンスホテル高輪で開催のレセプションパーティーにも出席する予定なのだろうか、
特に女性は、ばっちりおめかししている人が多い。

★ 霍尊

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オープニングセレモニーは、定刻通り午後2時10分にスタート。
開会を彩るのは、2012年、東方衛視のオーディション番組『聲動亞洲 Asian Wave』で
頭角を現したシンガー霍尊(フオ・ズン)の歌。
日本語の男性司会者が、霍尊を“ボー・ズン”と紹介するのが、なんだか“坊主”に聞こえて気になってしまった。
歌ったのは、霍尊の代表曲<まきすだれ~卷珠簾>。
独特のコブシをきかせた綺麗な声。
私の近くの女性たちは、霍尊のファンらしく、“霍尊”と書かれた応援グッズも持参していたが、
それもほとんど使いことなく、彼の歌にうっとり聴き惚れておられた。

★ 主催者&来賓の御挨拶

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歌の後は、中国映画週間実行委員会理事長・耿忠、
駐日中国大使館文化参事官・陳諍、日本映画監督協会理事長・崔洋一と挨拶が続く。

このイベントでイヤだったのは、上映される作品の監督・出演者とは関係の無い人の挨拶が、
気が遠くなるほど長いことだったが、年々改善。
今でも、イヤだった頃の記憶が鮮明なため、挨拶が始まると、ついつい時間を計ってしまうのだが、
今回は、耿忠女史7分、陳諍参事官5分、崔洋一監督4分であった。

紀念すべき10周年という事で、スピーチの内容は、その年月の日中関係が決して平坦ではなく、
映画祭の開催を続けるのも楽な道ではなかった事などが主に語られた。
耿忠女史も苦労が色々有ったようだが、それでも頑張って継続し、
「日中関係を経済効果だけでは計れない物が得られたと思う」と語ったのが印象に残った。
日本語の達者な陳諍参事官は、感覚ももはや日本人的で、
「皆さん、監督や俳優さんのお話の方が聞きたいでしょうから」と控えめに話を締められた。
崔洋一監督は、初めて中国へ渡ったのが1994年で、
その時、今回特集が組まれている吳天明(ウー・ティンミン)監督の『變臉 この櫂に手をそえて』を
北京で観たんですって。

★ 上映作品監督+キャスト登壇  …が、写真撮影禁止だとー??!

開会して30分ほどが過ぎた2時40分頃、いよいよ上映作品の監督や俳優さんたちが登壇。

その前に、写真撮影禁止のお達し。
このイベントは、日本語と中国語の2ヶ国語で進行されるが、
なぜか写真撮影禁止のお達しに限り、いつも“日本語”でだけ発せされる。気に食わない…。

納得できない理由
以前は写真撮り放題だったのに、なぜ禁じるようになったのか?
こういうイベントで写真撮影を禁じているのは、世界的に見ても、日本くらい。
中国映画週間がなぜ今更、そういう所だけ、日本を真似るのか?
そんな日本でさえ、映画祭では撮影を許可している。
しかも、禁止のお達しに限って、なぜ日本語だけなのか?


もっとも、来場している華人のほとんどは、恐らく日本在住者で、日本語も理解していると察するが、
誰もお達しに従わず、結局のところ、写真は撮り放題。
中年は撮るだけで満足し、学生くらいの若い子は撮りながら次々と微博を更新していた。
実のことろ、私も何枚か撮ったのだが、写真の整理に時間がかかりそうなので、
ほとぼりが冷めた頃に、この記事にひっそりと写真を載せておく。
取り敢えず今日は、以下、写真ナシで、ザッと登壇者について。

★ 『黒ネコ警部 宇宙船グリーンスター~猫警長之翡翠之星』より

一人目は、アニメ作品『黒ネコ警部 宇宙船グリーンスター~猫警長之翡翠之星』を手掛けた
于勝軍(ユー・ションジュン)監督。
日本に来たのは2度目なんですって。

★ 『再愛~約定倒計時』より

『再愛~約定倒計時』からは、謝升皓(シエ・ションハオ)監督と主演女優の倪景陽(ニー・ジンヤン)。
謝升皓監督は、なかなかの男前。
倪景陽は182センチの長身。
さらにハイヒールを穿いているから、集団の中で一人だけ頭ひとつ分ニョキッと飛び出ている。

★ 『君といた日々~匆匆那年』より

『君といた日々~匆匆那年』からは、張一白(ジャン・イーバイ)監督。
オムニバス『アバウト・ラブ~関於愛』やモックンも出ている『夜の上海』などを手掛けている張一白監督は
日本とのゆかりも深く、「尊敬する崔洋一監督にお会いでき光栄。監督の『血と骨』が好き」と。
来年は自身の作品の日本公開が控えているとの事。
日本でも撮影が行われている『在世界的中心呼喚愛』のことか?

★ 呂麗萍

1987年、第2回東京国際映画祭でグランプリと主演男優賞を受賞した
故・吳天明(ウー・ティンミン)監督の『古井戸』にも出演している女優・呂麗萍(リュウ・リーピン)は
その時初参加した東京国際映画祭の想い出などを語った。

★ 『ひだりみみ~左耳』より

『ひだりみみ~左耳』チームは、ついに監督業を始めた台湾アイドル・蘇有朋(アレック・スー)と
出演者の馬思純(マー・スーチュン)、歐豪(オウ・ハオ)が登壇。
蘇有朋は、やはり人気があるようで、彼の登場で会場に歓声が上がった。
馬思純は、ドラマ『ハッピー・カラーズ 僕らの恋は進化形~摩登新人類』で見た時は、
陳柏霖(チェン・ボーリン)の恋のお相手には役不足のようにも感じたが、実物は清潔感があり可憐。
笑顔も可愛らしい。
若い歐豪クンは、緊張しているようにも見え、初々しい。

★ 花束贈呈

一通りの挨拶が済むと、翁倩玉(ジュディ・オング)登場。
日本語と中国語で御挨拶(やはり中国語より日本語の方が楽みたい)。貫録も華もありました。
さらに、スポンサーmiki houseの服を着た子供たちが登場し、監督さんや俳優さんに花束を贈呈。
私個人的には、スポンサーはmiki houseより、SOYJOYの方がいいわ(←しつこい?)。




最後にフォトセッションがあり、約一時間のイベント終了。
今回の中国映画週間で、『愛のカケヒキ~撒嬌女人最好命』が上映される彭浩翔(パン・ホーチョン)は、
プロデュースした『レイジー・ヘイジー・クレイジー~同班同學』が東京国際映画祭でかかるため、
現在来日中だから、もしかしてこちらのセレモニーにもサプライズ登壇してくれるかなぁ~、
なんてちょっと期待したけれど、来なかった。
色々改善の余地もある中国映画週間だけれど、まぁ、ナンだカンだいって、今年も楽しめました。
来日してくれた監督、明星の皆さま、ありがとうございます!
日中関係が落ち着き、来年以降、もっと盛り上がっていってくれることを切に願います。

(この日撮った写真はその内シラーッと載せておくかも。
シンガーの霍尊クンは、私が想像していたより人気があるようで、微博の方にちょっと写真を出したら、
数分の間に“讚”が付きまくっていた。)

『風の中の家族』王童監督+プロデューサー唐在揚Q&A

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現在開催中の第28回東京国際映画祭で、
台湾の王童(ワン・トン)監督、久々の新作『風の中の家族~風中家族 Where the Wind Settles』を観賞。
この作品の上映は、10月24日(土曜)と25日(日曜)の2回。
週末の上映ということもあり、チケットは早々にソールドアウト。

私が観たのは一回目の上映、昨日土曜日の方。
上映終了後には、来日した王童監督とプロデューサー唐在揚(デヴィッド・タン)によるQ&Aを実施。
映画祭の公式サイトに記されていた登壇者は王童監督のみ。
唐在揚Pの登壇は告知無しであった。

★ 『風の中の家族』 王童監督+唐在揚プロデューサー Q&A

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東京国際映画祭プログラミング・ディレクター石坂健治を司会進行役に約30分のQ&Aがスタート。
王童監督は、以前から石坂氏と面識はあったそうだが、東京国際映画祭への参加は実は今回がお初。
以下、気になったお言葉のみをピックアップしておく。



王童監督
この映画の背景には様々な背景があります。
当時、国民党と共に台湾へ渡った当人たちの多くは80歳以上になっています。
私も、そういう中の一人でしたが、映画には身内の話を描きたかったわけではありません。
血の繋がった本当の子ではない子供と父親、本当の兄弟ではない義兄弟といった“縁”を描いています。
私が描きたかったのは、戦争そのものではなく、そういう部分です。



質問
王童監督自身が台湾へ渡ったのは、映画の中に登場する子供・奉先くらいの時ですか?

王童監督
はい、あの子くらいの時です。
戦争というのは、本当に様々な事を変えてしまいますから、私は戦争には絶対反対です。




質問
この作品は大陸でもプレミア上映されましたが、あちらでの反応は?

唐在揚
この映画は、大陸からの出資も受けています。
大陸では、蔣介石と共に台湾へ渡った人々がその後どのように生きていったのかという事に興味があり、
上海電影節でのプレミアでも、大変熱心に観てもらいました。




質問
あの時代を知らない若い役者は、過去の歴史をどのように受け止め、作品に臨んだのか?

王童監督
日本と同じで、台湾も若い人は歴史を知りません。
でも、役者たちにはやる気があり、2~3年かけて、本や資料を読んで、当時のことを学びました。
衣装やセットも助けになり、そういう物を見ることで、またどんどん役に入っていきました。
戦争のシーンを最初に撮ったので、そこでさらにあの時代に入っていき、
また、当時まだそんなに親しくなかった彼ら同士もぐっと近付いていきました。

唐在揚
こういうテーマで映画を撮るのは、とても手間ひまがかかる上、ヒットするかも分らないので、
皆なかなか出資したがらず、あまり制作されません。
でも、今回役者たちは、王童監督と仕事をしたくて、大変なチャレンジをしました。
例えば、成長した奉先を演じている李淳(メイソン・リー)は、映画監督・李安(アン・リー)の息子なのですが、
アメリカ育ちで、この映画を撮るために、台湾へ戻ってきたばかりの時は、北京語が喋れませんでした。
それから一年かけ学んだ北京語は、映画で御覧いただいた通りです。




質問
邱香の父親が逮捕されるシーンでは、逮捕の理由が特別説明されませんが
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)で逮捕された父親と同じ理由でしょうか?

王童監督
そうです。この映画は『牯嶺街少年殺人事件』とほぼ同じ年代を描いていますから。
当時は言論の自由がありませんでした。
音楽でも、例えば李香蘭の音楽は駄目だったし、小説でも駄目な物がありました。




王童監督
今の台湾は自由で、どんなテーマでも大丈夫です。
ただ、観客が、青春モノとか楽しげな物を好むので、出資の問題があり、こういう映画はまだまだ少ないです。

唐在揚
ここ20年くらいの台湾は自由なので、どんな思想でも問題ありません。
50~60年代は統制がありましたけれど。




質問
映画の中で麗君(テレサ・テン)の<甜蜜蜜>が流れるのは『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』、
年をとった主人公が心臓発作で倒れるのは『ゴッド・ファーザー』の影響、
もしくはそれらの作品に敬意を表しているのでしょうか?

王童監督
『ゴッド・ファーザー』は確かに私の中にありました。
でもあちらはマフィア、こちらは軍人です。
<甜蜜蜜>は、まさにあの時代の台湾を代表する曲です。
私からも質問があります。
実は作品の中に、日本の小津安二郎監督へのオマージュがあるのですが、どこだと思いますか?
それは、息子が結婚した後、父親が自分の家へ帰り、淋しそうにしているシーンです。





御年73歳、キャリアの長い王童監督が、東京国際映画祭初参加とは意外な感じ。
このQ&Aでは、李安監督の息子・李淳が出演しているという話に
反応する観客が多かったように見受けたが、
私自身は、彼が出演している事、言葉や馴染みの無い歴史、文化で苦労した話を
台湾メディアの情報で以前から知っていたので、驚きは無かった。

私はそれより、息子をお婿さんに出し帰宅した主人公・盛鵬のシーンが、
小津安二郎へのオマージュだったという方に反応。
本作品は、小津テイストとはまったく異なるメロドラマなので、
あのシーンがまさか小津へのオマージュだったとは夢にも思わなかった。
そういうつもりで、今一度作品を観直してみたくなった。

この話のキッカケになったのは、
↑上にも記したような、会場からの「『○○』へのオマージュですか」という質問であった。
日本で麗君といえば、<時の流れに身をまかせ>や<つぐない>かも知れないが、
中華圏では<甜蜜蜜>も誰もが口ずさめるスタンダードナンバーで、数多くの映画にも使われており、
ズバリ『甜蜜蜜(邦題:ラヴソング』(1996年)と題された作品まで有るくらい。
なので、わざわざ『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』を持ち出してきた質問には、ズッコケそうになったが、
王童監督もサラリと流し、“小津へのオマージュ”の話に繋げてくれたので、
結果的には悪くない質問だったかもね。

★ 王童監督サイン会

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Q&A終了後は、場所を映画館の建物外に移し、王童監督の即席サイン会を実施。
せっかくなので、私もサインをいただきました~。
画像では消しているが、王童監督が書いてくれた私の名前、めっちゃくちゃ達筆でございます。
自分の名前ばかりをン十年も書き続けている私でさえ、こんなに上手く書けない…。




映画『風の中の家族~風中家族 Where the Wind Settles』の詳細は、また後日。

『百日草』林書宇監督&石頭Q&A

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第28回東京国際映画祭で、
台湾の林書宇(トム・リン)監督最新作『百日草~百日告別 Zinnia Flower』を観賞。

これはとても観たかった作品。私と同じように、この作品に注目している人が多いように見受けたので、
チケット発売日には、真っ先にこれを押さえた。
案の定、間も無くしてソールドアウトになったので、無事チケットを取れた事に安堵。

本作品の上映は、10月24日(土曜)、25日(日曜)、28日(水曜)の計3回。
内、週末に上映される2回は、監督と主演男優“石頭”こと石錦航(シー・チンハン)のQ&A付き。
私は、土曜の上映へ。

★ 『百日草』林書宇監督&石頭Q&A

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私がナマで林書宇監督を見るのは、同じく東京国際映画祭で『九月に降る風』が上映され、
Q&Aが行われた2008年以来。(→参照
改めて考えると、えぇーっ、もう7年も前…?!光陰矢のごとし…。
その時、林書宇監督が、ジャケットの下に
あだち充の漫画に出てくる女の子をプリントしたTシャツを着ていたことばかりが、やたら鮮明に記憶されている。
今回も、Tシャツ+ジャケット+パンツという似たようなカジュアルスタイルなのだが、
Tシャツが黒無地でアダルトになっておられた。

そして今回は主演男優の“石頭(シートウ/ストーン)”こと石錦航も同伴。
石頭は人気バンド五月天(Mayday)のギタリスト。
尖閣問題が勃発して以降、中華圏の明星は釜山へは行っても、東京国際映画祭にはパッタリ来なくなり、
仮にQ&Aが行われるとしても、登壇するのは大抵監督のみという状況が続いている中、
石頭レベルの大物がよく来てくれたと嬉しく思う。
会場には石頭や五月天ファンと見受ける人も多く、心なしか他の上映より熱気が感じられる。

上映終了後、そんなお二方を迎え、
東京国際映画祭プログラミング・ディレクター石坂健治を司会進行役に、約30分のQ&Aがスタート。
以下、気になったお言葉のみをピックアップしておく。



質問
二人の主演俳優、石頭と林嘉欣(カリーナ・ラム)はどうだったか?

林書宇監督
役を決める時には、すでにこの人をキャスティングしたらどうなるかが僕には見えています。
この二人なら大丈夫だと確信していたし、実際、結果的にそうなりました。

石頭
監督から初めてこの話をいただいた時は、このような役に責任を負えるのかと緊張もしましたが、
監督の過去の作品が好きで、五月天のMVも撮ってもらっていますから、結局出演を決めました。




質問
撮影はどのように?

林書宇監督
林嘉欣は香港に家庭があり、普段はあちらに暮らしていますから、彼女のパートはまとめて撮るようにして、
次は石頭のパート、という感じです。
撮影の順番は、ほぼ脚本の流れ通りでした。




質問
息子との結婚も決まっていた女性に対し、彼の親の態度が冷たかったり、
日本とは感覚が違うように思えましたが…。

林書宇監督
僕の作品の中で描かれている事が台湾を代表しているわけではありません。
ただ、親は子供の死に対し憤りがあり、時に礼儀を欠いてしまう事があるのも、また事実です。




質問
作中流れるショパンなど、音楽はどのように選んだのですか?

林書宇監督
ショパンのエチュードは、慰め、愛、哀しみが表現できる曲は何が良いかと
ピアノの先生に相談して決めました。
プロのミュージシャンでもある石頭にも相談し、音楽の分析を色々聞かせてもらい、決めていきました。

石頭
ショパンに対しては、この映画を撮る前と後とでは、印象が変わってしまいました。
撮影中もずーっとショパンを聴いていたので、聴くと役の気持ちになり、悲しくなってしまいます。




質問
主人公を一人にして、その一人を掘り下げるという方法もあったと思いますが、
なぜ二人にしたのですか?

林書宇監督
哀しみの出口を見付ける方法は、僕自身が経験した方法だけではなく、色々です。
例えば、出口を見付けようとする鼠でも、箱の中をぐるぐる回って出口を探る鼠もいるし、
あちこちぶつかりながら探す鼠もいるけれど、どちらの鼠が早く出口を見付けられるかは分かりません。



質問
男性主人公・李育偉が、事故で怪我した腕のギプスをいつ外すのかと気にして見ていましたが、
結局ずっとつけっ放しでした。

石頭
実は、石膏のギプスを腕から外したシーンも撮影しています。
一度ギプスを外すのですが、哀しみから回復したくないという気持ちから、またギプスを付けてしまうのです。
あのギプスは、役を演じる上でも重要で、僕はあの石膏のギプスを付けていることで、
自分は“李育偉”なんだと思えました。



質問
二人の主人公が悲しみを乗り越える方法が似ているけれど、それは華人ならではのものなのか?

林書宇監督
二人が向き合う悲しみは似ていても、それぞれの心境は違うように描いたつもりです。





ちゃんと質問を聞いていなかったので不確かだが、
観客から「似ている」と指摘された二人の主人公が悲しみを乗り越える“方法/行為”は、
性行為の事を指していたのだろうか。
私は、それが“華人ならでは”の手段だとは、まったく思わなかったけれど、
非常に誠実な感じがする二人の主人公が、いくら悲しみで我を忘れたからといって、
知人と関係してしまうのはどーヨ?!と、少し戸惑わされたのは確か。
育偉だけならまだしも、心敏までもが義弟と崩れ落ちていった時には、「心敏、お前もか…」と。

このQ&A、私にとっての興味深い質問は出ず、今一入り込めなかったのだけれど、
奥方の死から3年ほど経っているとはいえ、その死を思い起こさせる自身の作品について、
静かに淡々と語る林書宇監督の姿は印象的であった。
あっ、別に冷淡だとかそういう批判的な意味ではなく、林書宇監督にとっては、百日の法要と似た感覚で、
映画を撮る事で、故人への想いを自分の中で整理しながらその人を供養する、
という一種の禊(みそぎ)になっているようにさえ感じた。



ちなみに、石頭が言っていた、林書宇監督に撮ってもらった五月天のMVとは、
こちらの楽曲、<如煙>のこと。



林書宇監督は、私が好きな方大同(カリル・フォン)のMV
<Nothing's Gonna Change My Love For You>も撮っているが、どちらも郷愁を誘う雰囲気が共通。

★ フォトセッション

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Q&Aの後は、フォトセッション。
それまで椅子に座っていた観客も立ち上がり、写真をバシバシ。
いつも以上に熱心に撮影する観客が多いように感じるのは、やはり石頭が居るからだろうか。
私が想像していた以上に、石頭ファンは日本に多いようです。

こうして、上映終了後の約30分のQ&Aセッションはおしまい。
石頭は、日本語で「またね」と言いながら、舞台袖へ消えていったのであった…。

★ オマケの『レイジー・ヘイジー・クレイジー~同班同學』チーム

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通常、Q&Aが終了すると、外でサイン会が始まるので、私も取り敢えず会場を出ると、
ホールに人垣が出来ている。
何かと思って覗いてみると、この後上映を控えている香港映画、
『レイジー・ヘイジー・クレイジー~同班同學』のメンバーたちが取り囲まれていた。

画像は、プロデューサーの彭浩翔(パン・ホーチョン)と出演の3人娘、
郭奕芯(クォック・イッサム)、廖子(フィッシュ・リウ)、麥芷誼(マック・チーイー)。

彭浩翔、この時のお召し物は、
ミスターハリウッドのジャケット(恐らく、日本のブランドNハリウッドの神宮前にある旗艦店の事だと思う)、
アメリカのスケボーブランドHUF(ハフ)のTシャツ、コム・デ・ギャルソンのジーンズ、
そしてメゾン・マルタン・マルジェラの靴でコーディネート。
彭浩翔は、レッドカーペットでも、コム・デ・ギャルソンの短パンを穿いていたし、
東京国際映画祭に出席する時は、お召し物に日本の物を取り入れるというお気遣いがあるようです。


この『同班同學』、私は結局鑑賞を諦め、
同時刻に東京・中国映画週間で上映の『愛のカケヒキ~撒嬌女人最好命』の方を優先してしまったのだが、
彭浩翔の微博によると、この晩、『同班同學』のQ&Aでは、登壇した廖子ちゃんが、日本語で
「実は私のアイドルは三上博史さんです。彼にもこの映画を観て欲しいな」と御挨拶したそうで。
若いのに趣味が随分渋いですねー。
私からも三上博史に、この映画を是非観るようにお願いしたい気持ちになったわ。

(念の為申し上げておきますと、↑上の画像で、3人娘の間に立っているお姐サマは、私とは一切無関係。)

★ 林書宇監督&石頭サイン会

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『同班同學』チームに気を取られている間に、建物の外が慌ただしく。
林書宇監督と石頭のサイン会が、どうやら階下で行われるとかで、皆ゾロゾロと階段を下りていく。
私も下へついて行き、すでに始まっていたサイン会の列に並んだが、
係員が「もう受け付けは終了しました!これから並んでもサインはしてもらえませんっ!」と無情に宣言し、
私の数人前でブチッと切られてしまった…。
はっ…?!“受け付け”ってナンなのよ…?!希望者を募っていたなんて話、聞いていませんでしたけれど…。

まったく腑に落ちないが、ゴネたところで、何も変わらないと判断したので、
さっさと列を抜け、お二方がサインをしている所を見に行った。
そこもすごい人垣ができており、通りすがりの人から「誰が居るんですか?」と聞かれた女性が
「台湾のMaydayという、すごく有名なバンドのギタリストですっ!
日本でも武道館でコンサートをやるくらい人気なんです!日本の所属はアミューズです!」
と質問者の疑問に充分過ぎるほどの答えを捲し立てておられた。ファン心理ですねぇ~(笑)。




この映画『百日草~百日告別 Zinnia Flower』については、また後日。
東京国際映画祭では、あともう一回、明日28日(水曜)に上映あり。

映画『モンスター・ハント』

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【2015年/中国・香港/118min.】
昔々の中国。
山奥の妖魔の世界で内乱が勃発。
妖王は殺され、妖王の子を身籠っている妖妃は逃走。
そんな事とは無縁の静かな村・永寧村に、
ある日、竹高・胖瑩という怪しげな夫婦、そして小嵐という女の子が次々とやって来る。
実は、竹高・胖瑩夫妻は人間を装った妖魔で、妖妃を救うため行方を捜索中、
小嵐は妖魔狩りの天師だったのだ。
にわかに騒がしくなった永寧村で、村長を務める善良な青年・天蔭は、
皆が行方を追っている妖妃と出くわし、彼女から卵を託され、
訳も分からぬままそれを飲み込み、まさかの妊娠!
生まれてくる妖魔の王子を売り、ひと儲けしようと目論む小嵐に拘束され日々を過ごす内、
おなかはどんどん大きくなり、ついに妖魔の赤ちゃんを出産するが…。



クリス・ミラーと共同監督した『シュレック3』等、取り分けドリームワークスの作品で知られる
香港出身のアニメーター許誠毅(ロマン・ヒュイ/シュー・チョンイー)が、
満を持してアメリカから故郷へUターンして監督し、2015年夏、大陸で大ヒットを記録した作品を、
2015東京・中国映画週間のオープニングで観賞。


本作品は、怪異譚を蒲松齡(1640-1715)がまとめた清代の小説集
<聊齋志異>の中の<宅妖>をベースにした物語。
同じく<聊齋志異>の中のお話なら、<畫皮>がドラマ化映画化もされヒットしているが、
こちらの<宅妖>が、中華圏でどれ程度親しまれている物語なのか、
そもそもどんな内容なのかも、私にはまったく分からない。



時は昔むかしの中国。
かつては共存していた妖魔たちを山奥へ追いやり、人間たちが天下を欲しいままにし、
人間界へ降りてきた妖魔は、妖魔狩りの“捉妖天師”に捕えられてしまうという、
妖魔たちにとっては受難の時代。
辺境の村・永寧村の若き村長、天蔭は、妖魔の世界で起きた反乱で追われる妖王の王妃から、卵を託され、
男でありながら、有ろう事か妊娠(…!)。
その頃、村へやって来た天師・小嵐に監視される中、大根に似た(…!!)小さな妖魔を出産(…!!!)。
“胡巴”と名付けたその子と過ごす内に、天師の小嵐までもが、彼に愛情を抱くようになるが、
そんな矢先、胡巴は売り飛ばされ、登仙樓に囚われてしまう。
敵対していた天蔭と小嵐も、胡巴救出という共通の目的でいつしか絆を深め、
共に悪に立ち向かっていく姿をアニメと実写の融合で描くファンタジーがこの映画である。


これ、どれ程度原作の<宅妖>に則しているのだろうか。
日本にも、お化けや妖怪の話は色々と語り継がれているけれど、
“山奥の村で村長をやっている青年が妊娠して大根に似た妖魔の王子様を産む”などという
あまりにも奇想天外な話は聞いたことがない。さすがは中国、発想も想定外でエキセントリック。

さらに、人間が我がもの顔で暮らしている物語の世界では、
人間に捕えられた妖魔たちは、食材として食べられてしまうのだ。
間違いなく珍味中の珍味だろうけれど、どんなに希少価値があっても、私は気味悪くて食欲が湧かない…。
“椅子と母親以外足のある物は全て、飛行機以外飛ぶ物は全て食べる”という中国ならではか。



人間の男性・天蔭が産み、“胡巴”と名付けられた妖魔の王子様は、(↓)こんな感じ。

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胡巴は許誠毅監督のデザイン。(右の画像は、大根を手に微笑む許誠毅監督。)
許誠毅監督がキャラクターデザインに関わっている『シュレック』と、肌のムニュムニュ感が似ているが、
『シュレック』がそんなに好きではない私は、この胡巴も特別可愛いとは感じない。
目が離れた愛嬌のある平顔のようでいて、よく見ると実は案外鼻筋が通った色男というアンバランス、
しかも髪型がまるでつのだ☆ひろだから、手放しで「カワイイ♪」とメロメロにはなれない。
ただ、牙のように尖った小さな犬歯で、胡巴が人にガブッと噛みつくシーンでだけ、
不覚にも一瞬彼を可愛らしいと感じてしまった。




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実写の出演者は、胡巴を代理出産する永寧村の村長・宋天蔭に井柏然(ジン・ボーラン)
妖魔狩りで村にやって来た女天師・霍小嵐に白百何(バイ・バイフー)


宋天蔭の役は本来…
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台湾の柯震東(クー・チェンドン)で撮影されていたが、例の大麻事件でおじゃん。
プロデューサー江志強(ビル・コン)は、柯震東の姿をどうにか上手く処理しようと、
『ベンジャミン・バトン』でアカデミー視覚効果賞も受賞しているアメリカのVFX制作会社・デジタルドメインに
相談をもちかけるも、処理の難易度が高く、かかる費用の割りに相応の効果が得られないことが判明。
だったらいっそ撮り直し!と決断したちょうどその頃、江志強Pが携わっていたもう一本の映画
『黃飛鴻之英雄有夢~Rise of the Legend』に出演していたことで、井柏然に白羽の矢が立ったようだ。
代役で出演した作品が、結果的に自身の代表作になるほど記録的ヒットとなるとはラッキー。
制作側にしても、撮り直しで余計にかかったお金が充分取り戻せる程ヒットして、良かったではないか。

この度実際に本作品を観たら、この天蔭、柯震東にピッタリな役だっただろうなぁと想像した。
お薬なんかに手を出し、多くの人に迷惑をかけた上、
与えられたチャンスも自分自身で潰してしまったのだから、愚かだったわよねぇ…。

井柏然は井柏然で良かった。これまでに観た何本かの出演作より、コミカルな要素も加わっていて。
ただ、今回は時代劇仕様の髪型のせいか、一度“時代劇をやっている時の北村有起哉”に見えてしまったら、
その後、もうずっと北村有起哉にしか見えなくなってしまった…。


白百何は、この前に観た出演作『最後の晩餐』(2013年)よりずっと活き活きしていて
(あちらはベタな韓流テイストの作品で、病魔に冒されている役だから当たり前だが…)、魅力的。
単純に顔立ちも好みで、白百何と彼女に似ていると言われている王珞丹(ワン・ルオダン)、
どちらもノッペリさっぱり系の顔が好き。




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脇を固めているのは、香港から曾志偉(エリック・ツァン)、吳君如(サンドラ・ン)、鍾漢良(ウォレス・チョン)、
台湾から金燕玲(エレイン・ジン)、そして大陸からは姜武(ジャン・ウー)、閆妮(イエン・ニー)、
湯唯(タン・ウェイ)、姚晨(ヤオ・チェン)等々と豪華。

この中で一番大きな役についているのは、
妖魔の世界で謀反を起こし、権力の座につこうとしている葛千户に扮する鍾漢良。今回は悪役。

湯唯や姚晨は、本来出演予定はなく、柯震東降板の一件で撮り直しする際、加えられたらしい。
脇がより豪華になったのは、柯震東が事件を起こしたお蔭だったという事か。
両者とも美人さんだが、本作品ではハジケた役どころ。
特に麻雀好きな質屋の女将さんを演じる湯唯がキュート。



日本からは、美術で種田陽平が参加。
張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品だの『セデック・バレ』だの、中華圏でも大活躍の種田サン。
今回は、村の小さな家屋から、贅を尽くした伏魔殿まで幅のある美術に注目。
氏は本作品について「中国映画初の家族向けファンタジー映画で、かわいいモンスターが主役です。
CGのクオリティも高く、世界に通用する娯楽映画になったと思います。日本でも公開されると嬉しい。」
と仰っております。

あと、衣装は、香港の奚仲文(イー・チョンマン)が担当。
特に、エスニックな匂いがする白百何や湯唯の衣装が可愛い。




多分、映像に古臭さも野暮ったさも痛さもなく、
むしろ洗練された印象の映画なのだろうと想像して観賞したら、その通りであった。
ネタの宝庫でありながら、『カンフー・パンダ』や『ムーラン』に代表されるように、
これまで長いこと、そのネタをハリウッドに奪われ、成功を指をくわえて見ているしかなかった中国が、
自分たちのネタを自分たちの手で料理し、世に送り出すべく、
ハリウッドで腕を磨いた世界レベルの華人を呼び戻し、ついに反撃に出たーっ!という印象を受けた。
Made in AmericaだろうとMade in Chinaだろうと、
許誠毅監督が手掛けるということは“Made by Chinese”に変わりなく、
当然のことながら、ドリームワークスやピクサーといったアメリカ大手と比べても、技術的に遜色はないし、
“村長が妊娠して大根を産む”というネタもユニーク。
しかし、“記録的大ヒットを飛ばした作品”のつもりで観ると、何かが物足りない。
やはり、ウケるポイントには、中国人と日本人の感覚の差があるような気がする。
日本語吹き替え版を制作するなど、色々工夫してこの映画を日本で一般劇場公開したところで、
うちの小さな姪っ子がこれに夢中になるとも、『カンフー・パンダ』のようなヒット作になるとも、思えないのだ。
一体何が欠けているのでしょう…??!

ラストにもやや拍子抜けしたが、あれは続編の制作を意識しているからだろうか。
私がこの映画で一番食い付いたのは、妊娠した天蔭がどうやって出産するかという点。

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両足を開かせて、股間を見詰め待機したところで、一体どこから赤ん坊が出てくるのか、と。
胡巴がどのように生まれるかは、皆さま是非映画でご確認くださいませ。

同じように“子供でも楽しめる中国映画”なら、
少なくとも昨年末に観た『西遊記 はじまりのはじまり』よりはずっと良かったので、
もしかして、もしかして、日本公開も有り得る、…かも??

梅花亭のお菓子2種(+テレビ雑記)

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録画しておいた10月30日(金曜)深夜放送の『孤独のグルメ』台湾編後編を観る。
出演が予告されていた台湾版・伍郎、趙文瑄(ウィンストン・チャオ)が、
放送開始から20分が過ぎても登場せず、「えぇー、もう番組、終わっちゃうじゃないの…」と焦ったその時、
井之頭五郎と同じ豆花を食べる中年スウィーツ男子としてチラリと登場。

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出演シーンは短かったけれど、舞台裏では皆和気藹々(画像は趙文瑄の微博より)。

この『孤独のグルメ』台湾編後編には、方大同(カリル・フォン)の楽曲<聽 Listen>のMVに出演し、
最近は、映画『我的少女時代』で大ブレイクの台湾若手俳優・王大陸(ワン・ダールー)と
付き合っているんじゃないの?と噂される劉奕兒(ユージェニー・リウ)も、
井之頭五郎が豆花を買うお店・古早味豆花の店員として出演。
台湾で、劉奕兒が楊穎(Angelababy)に激似!と言われている意味が私にはまったく分らないので、
動いている姿で確認したかったのだけれど、彼女の出演シーンは非常に短く、顔はほとんど映らなかった。
でも、まぁ、こういう日台コラボは楽しいから、またやって欲しい。

オマケ。(↓)こちら、『孤独のグルメ』では扱いが小さかった劉奕兒が音符の精役で出演している
方大同(カリル・フォン)のMV<聽 Listen>。


べいべーに似ている?!ロングヘアの混血という以外の共通点が私には見当たらず…。




他、気になるテレビでは、まず今晩、11月1日(日曜)、TBSで放送の『旅ずきんちゃん』
田中みな実、南明奈、原幹恵の3人が、シンガポールを旅する後編。
まったく興味が湧かない顔ぶれだが
(どうせなら、スタジオで司会進行役をしている大久保佳代子と友近に旅してもらいたかった)、
後編には食べ物が結構出てくるようなのでチェック。
ついでに記しておくと、来週はこの番組に、
久々に、あのM字開脚の創始者(?)インリン・オブ・ジョイトイが出演するらしい。




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明日、11月2日(月曜)、NHK BS1『Asia Insight』は“中国文化に魅せられた外国人たち”と題し、
異文化に敬意を払いつつ、中国と真正面から向き合う人々を、外国人が最も多く暮らす上海で取材。
私の周囲を見渡しても、近年“上海好き”というイタリア人が非常に多い。




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11月5日(木曜)、NHK BSプレミアムで放送の『世界入りにくい居酒屋』は、
約ひと月前、台北の居酒屋を紹介したのに引き続き、またまた台湾からで、今度は高雄。
台北のお店は、とっくの昔に離婚した元夫婦で切り盛りしているというのが、なんか可笑しかったけれど、
今度の高雄はどうでしょう。土地柄、台北よりさらにユルい感じかも?


台湾は、他にも、11月7日(土曜)の朝、フジで放送の『にじいろジーン』
“ジーンちゃんがキキコミ!世界ピカイチ☆ツアー”のコーナーでも。こちらは台北を取材。
台湾を取り上げる番組は非常に多く、ネタももう出尽くしているようにも見受け、あまり期待はできないけれど、
取り敢えず録画。




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その11月7日(土曜)の晩は、NHK総合の『アジア巨大遺跡』第3集、
“地下に眠る皇帝の野望~中 国始皇帝陵と兵馬俑”を放送。
杏がナビゲーターを務める4回シリーズの第3弾は、私が最も観たかった回。
兵士の像がザックザックと発見されたのは今から41年前だが、
兵馬俑の謎を解く手掛かりは、今でも次々と見付かっているという。
番組は、最新の研究結果を交え、始皇帝の中国統一の秘密に迫る。




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翌、11月8日(日曜)は、BS朝日で放送の『大和田兄弟ぐるり鉄道旅』を。
これまで、タイ、ベトナム、マレーシア、台湾など、アジアを巡ってきた兄弟が、今度は香港・マカオへ。
大和田兄弟の旅番組は、“父親にお薦めしたいおじさん向け旅番組”という印象で、
正直なところ、私の興味とはズレを感じるのだが、
香港を取材する番組は、台湾取材の番組より少なく、貴重なので、有り難く拝見いたします。



週をまたぎ、11月10日(火曜)、NHK BSプレミアムで放送の『世界ふれあい街歩き』は、
マレーシアの首都クアラルンプールを特集。
断食明けのお祝いをするマレー系の人々、移民してきた先祖を祀る霊廟に集う中国系の人々、
インドのお洒落に興じるマレー系の女性たちなど、様々な民族文化が共存する街をお散歩。





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テレビ番組表をチェックしていたら、やたら高倉健主演映画の放送が目立つ。
もしかして…、と思ったら、案の定、11月10日は昨2014年に亡くなった健さんの命日。
もう一周忌なのですねぇ。時の経つのは速い。
11月に放送される健さん主演映画は、ここに挙げ切れない程かなりの本数あり。

特番だと、11月7日(土曜)、NHK BSプレミアムが『拝啓 高倉健様』を放送。
様々な形で高倉健に関わった人々が“拝啓 高倉健様”と寄せた手紙や証言を中心に
不世出のスタアの謎に迫る番組。
初回放送ではないけれど、その前日11月6日(金曜)には、NHK BS1で『10億人が愛した高倉健』を再放送。
何らかの形で高倉健やその作品に影響を受けた中国の人々を取材した番組。(→参照

なお、『追捕』のタイトルで公開され、中国に健さんブームを起こし、
今度また吳宇森(ジョン・ウー)監督によりリメイクの制作が決まっている『君よ憤怒の河を渉れ』は、
11月9日(月曜)にNHK BSプレミアムで放送。

先日、第28回東京国際映画祭で“SAMURAI(サムライ)賞”とやらを受賞し、来日した吳宇森監督によると、
リメイク版『追捕』は、中国・日本・韓国の3ヶ国チームで制作され、2016年1月にクランクイン、
ロケ地には、日本の東京、大阪、福岡なども予定されているという。
肝心のキャストについては明かされていないが、
「主役の二人の男性を中国と日本の俳優に演じてもらう」としており、あくまでも明言はしていないけれど…

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“氣質(風格)”のある俳優として、金城武や張涵予(チャン・ハンユー)を挙げたようだ。
金城クンは、前から主演男優候補に名前が挙がっていて、
期待ばかりが高まったしまっているので、ホント、出て欲しい。
張涵予は、日本だと、他の大陸男優に比べ、まだマイナーかも知れないが、
確かに硬派な男気が感じられ、『追捕』向きという気がする。
この二人、実際のとこと、どうなのでしょう…?!出るの、出ないの…??
あともう一人重要な役となる女性は(オリジナル版で中野良子が演じた役?)、
新人女優を起用するとのこと。

ロケ地に関しては、当初「2015年秋、ソウルでクランクイン」と言われていたけれど、
MARSの感染拡大を懸念し、白紙に。日本はその後、撮影誘致に成功したのでしょうか。
クランクインが先送りになったので、制作国のひとつである韓国でも、勿論撮影される可能性はあるだろうが。
それに日本も、この冬万が一妙な伝染病でも流行ってしまったら、撮影予定が白紙に戻される恐れがあるから、
日本の皆さま、せめてうがいと手洗いで、ささやかながら病気の予防に努めましょう。

初回放送が2015年6月なので、情報はもはややや古いけれど、
今週6日(金曜)に再放送される『10億人が愛した高倉健』の中でも、
リメイク版『追捕』に関する吳宇森監督のインタヴュが流れるので、以前観逃した方は、この機会に。




お菓子は、神楽坂の和菓子屋さん、梅花亭(公式サイト)の物をふたつ。

★ いの子餅

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大きさは、長さ約5センチ、幅約3.5センチ。
金胡麻入りの外郎生地で黄身餡を包み、炒った大麦粉をまぶした季節菓子。




ひとつめは、“いのこ餅”
ここのお店では、平仮名表記だが、漢字にすると“亥の子餅”。

亥の月(旧暦の10月)、亥の日、亥の刻(午後10時前後)に食すと無病息災とされる、
この時期ならではの伝統菓子。

平安時代に中国から伝わった儀式が由来なのだとか。
事実、このお菓子はかの<源氏物語>にも登場しているらしい。
亥は、陰陽五行説で極陰の水性に当たるため、火災を逃れるという言い伝えがあり、
江戸時代には、亥の月の亥の日に囲炉裏や炬燵(こたつ)、火鉢を出すという風習ができたり、
茶の湯の世界では、炉開きの日になっている。
また、イノシシが子沢山であることから、子孫繁栄の意もあり、
<源氏物語>の中では、火災予防ではなく、子宝祈願で食べられているようだ。

そんな亥の子餅は、同じ伝統菓子でも、柏餅、チマキ、はなびら餅等と比べ、
知名度も普及率もまだまだのように見受ける。
私自身、幼少期には食べた記憶が無い。
もう少し大きくなってから、当時茶道をかじっていた母が、炉開きの時に食べるこのお菓子を買ってきて
食べたのが、恐らく私の亥の子餅初体験だったような気がする。
世間一般でも、昔よりむしろ最近の方が、
この時期になると、店頭に亥の子餅を出す和菓子屋さんが増えているように思う。

かと言って、私は、色々なお店の亥の子餅を何個も食べ比べたことがないので、
“亥の子餅のスタンダード”がどのような物かは、よく分からない。

この梅花亭の物は、生地が金胡麻入りの外郎(ういろう)であることが特徴的。
外郎は、米粉と白玉粉と葛粉を混ぜた生地で、
いわゆる“お餅”より透明感があり、瑞々しくシットリした軽い生地。
そこに混ぜられた金胡麻が、ほんのり香ばしい。

中の餡にもこれといった決まりはなく、お店によってまちまちみたいだけれど、
ここのは北海道産手亡豆と大福豆の白餡に卵黄を加えた黄身餡。
玉子が懐かしい甘さの餡。小豆餡ほど主張がないので、軽めの外郎生地にも合っている。

外にまぶされた粉は、一見きな粉のようだが、実は、炒った大麦の粉らしい。


以前、梅花亭の亥の子餅を食べた時は、確かお餅の背中に焼きゴテで線が入れられていて、
より“亥の子”っぽく見えていた。
でも、今年は焼きゴテの線無し。入れ忘れたということはないだろうから、デザイン変更か。
私は、亥の子っぽい焼き印入りも好きだったけれどね。

★ ほろほろ糖

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大きさは、だいたい3センチ角×厚さ1センチ。
和三盆を使ったお干菓子。




こちらの“ほろほろ糖”は初めて。
和紙に、薄いタイル状のお干菓子が2枚包まれている。

見た目は、完全に落雁。
ところが、食べてみたら、なんだか落雁とは違う…!

主原料は、和三盆糖と卵と寒天。
要は、乾燥させた淡雪かん。

“ほろほろ”という表現は、むしろ落雁の方が合っているかも知れない。
こちらは、非常に軽く、かじるとホロッというより、サクッとした歯応えがある。
ところが、その“サクッ”も、口の中に入ると、
中に含まれている寒天がじわじわ溶けていくような、少々トロみのある質感に変わっていく。

見た目が落雁なので、もっと甘い物を予想したが、その予想も外れ、甘さはかなり控えめ。
糖分よりも、卵の優しい味が後に残る。

予想を裏切る、お干菓子の変化球であった。

GAP中国進出5周年記念広告

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日本でもお馴染みのアメリカのカジュアルブランドGAPが中国進出5周年らしい。
えっ、まだ5周年?という印象。もっと前からあると思っていた。
もっとも日本に入ってきたのも、案外遅かったけれど。

GAP自体に特別な関心があるわけではないので、別にそれはどうでもよい。
それより、今回のこのキャンペーンは、私も好きな香港出身のフォトグラファー夏永康(ウィン・シャ)
アジアの6人の明星を撮り下ろしたという事で気になった。

6人は、男女それぞれ2人ずつに分かれ、3組に。
第1グループは、私が溺愛する張震(チャン・チェン)+大陸女優・白百何(バイ・バイフー)コンビ。
第2グループは、その白百何との共演作、中国大ヒット映画『モンスター・ハント~捉妖記』
最近観たばかりの井柏然(ジン・ボーラン)+日本の水原希子コンビ、
そして第3グループは、シンガポール出身のシンガーソングライター“JJ”こと林俊傑(リン・ジュンジエ)
K-Popユニットf(x)のメンバー鄭秀晶(クリスタル)コンビ。



では、お写真を見てみましょう。

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白百何+張震



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水原希子+井柏然



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鄭秀晶+林俊傑



お婿サマになってしまっても、パパになってしまっても、張震、やっぱり素敵。
その横に居るのが私以外のオンナというのが残念なのだけれど(←まぁ、端から相手にされていないが)、
白百何の地味めなサッパリ顔もまた好みなのだ。

井柏然は、先日『モンスター・ハント』で久し振りに見たら、
北村有起哉とダブッてしまうほど大人っぽく感じたが、前髪を下ろしていると、見違えるほど若い。

いえ、それより、その井柏然とコンビを組んでいる水原希子である。
この6人の中で、私にとって一番のサプライズ起用は、実はこの水原希子であった。


彼女は、2015年10月8日に上海展覽中心で執り行われた、
一説には費用2億元(≒38億元)とも言われている、ちょっとした国家行事並みの
黃曉明(ホアン・シャオミン)&楊穎(Angelababy)結婚披露宴にも、ちゃっかり出席していて、私を軽く驚かせた。

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我々日本人が想像している以上に、何かおいしいコネクションを持っていそう。
案外侮れない、水原希子。

映画『百日草』

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【2015年/台湾/97min.】
トラック運転手の過失による大きな交通事故が発生。
この事故で、育偉は妻・曉雯と彼女のおなかの中の子供を同時に突然失う。
ピアノ教師だった曉雯の生徒が、何も知らずにレッスンにやって来るが、
育偉は耐え切れず、その子を追い返してしまう。

同じ事故で、心敏は、料理人だった婚約者・仁佑を亡くす。
手元に残っているのは、まだ発送されていない二人の結婚式の招待状。
早速執り行われた葬儀では、仁佑の親族と遠く離れた席でたった一人祭壇を見つめるばかり。

そんな育偉と心敏が、それぞれバスに乗り、山奥の寺へ。
二人は初七日から節目ごとにこの寺を訪れ、黙々と経を唱えるようになるが…。



台湾の林書宇(トム・リン)監督最新作『百日告別』が『百日草』の邦題で、第28回東京国際映画祭に登場。
とても観たかった作品なので、真っ先にチケット入手。
上映終了後には、監督&キャストによるQ&Aも実施。

林書宇監督作品は、この前の『星空~Starry Starry night』(2011年)が日本でも公開されるだろうと
何の根拠も無く漠然と信じて待っていたのに、大阪アジアン映画祭で上映されただけで、それっきり。
結局『星空』未見の私は、『九月に降る風』(2008年)以来、実に7年ぶりの林書宇監督作品観賞となった。

その空白期間に林書宇監督は人生で一大事を経験。
2002年に結婚した奥方・黃若璇が、
なんと2012年、病魔に勝てず、37歳の若さでこの世を去ってしまったのだ…。
突然の死ではなく、その前から結構な期間病床に伏していたらしいが、
それにしても、80年以上生きるのがちっとも珍しくない現代において、30代の死は想定外の悲劇で、
衝撃も悲しみも大きかったに違いない。
本作品は、そのような経験をした林書宇監督が、妻の死後初めて手掛けた映画。



物語は、同じ交通事故でそれぞれに大切な人を失った二人の男女、
妊娠中の妻を亡くした李育偉と、結婚を間近に控え、婚約者を亡くした心敏が、
受け入れ難い現実と少しずつ向き合い、気持ちを整理し、故人を送るまでの百日を描いたヒューマンドラマ

私は、林書宇監督が妻を亡くして映画を撮った事も、
その映画の主人公が男女二人である事も、事前に知っていた。
なので、男性主人公・育偉が林書宇監督自身、女性主人公・心敏はその妻という夫婦の設定で、
死んだ妻・心敏は回想という形で登場するものだと想像していたら、ぜんぜん違った。

実際には、育偉と心敏は他人で、それぞれがパートナーを亡くした遺族。
(心敏は、恋人とまだ婚姻関係が無かったので、“遺族”という表現は正確ではないかも知れないが。)
遺された者が、大切な人の死をどう受け入れ、乗り越えていくかを、
仏教の百日の法要になぞらえ2パターン描いているのが、この物語なのだ。

仏教の法要とは、頭七(初七日)、五七(五七日 いつなぬか)、七七(四十九日)、百日(百力日)を指す。
初七日や四十九日は知っていたけれど、他は知らなかった。
それぞれの法要がもつ意味は、作中説明されている。
映画の中で順を追って見ていると、昔からあるこれらの仏事は、
人が自然に心の整理をしていくリズムに巧く合うよう、もしくは、その方向へ巧く導くよう、
かなり合理的に作られているように思えてくる。
似たような事は、道教のお葬式をコミカルに描いた、まったく作風の異なる作品、
『父の初七日』(2010年)を観た時にも感じた。




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二人の主人公を演じるのは、妊娠中の妻を亡くした李育偉に“石頭”こと石錦航(シー・チンハン)
結婚を間近に控え婚約者を亡くした心敏に林嘉欣(カリーナ・ラム)

五月天(Mayday)のギタリスト石頭を映画で初めて見たのは、本人役で出演している『五月の恋』(2004年)。
前述のように『星空』(2011年)は未見で、
私が次に観た『ウィル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロー』(2013年)では、ほのぼのとした感じが良かった。
そして今度は妻を突然亡くした悲痛な夫の役。演じる役の難易度がどんどん上がってきている感じ。
石頭は、いわゆる美男子ではないけれど、朴訥とした雰囲気に味があるし、内面が繊細。
私も映画で見る度に、どんどんファンになってしまう。

本作品では、そんな朴訥とした石頭でさえ、現実が受け入れられず、憤ったり、自暴自棄になったり。
石頭扮するこの育偉に、当時の林書宇監督がそっくりそのまま投影されているとは思わないが、
普段冷静で穏やかな男性でも、我を忘れ、心を乱してしまうという基本の部分は、本人そのものなのでは。
元々激情型の男性が、感情を爆発させる姿より、控え目な男性が悶々と悩み苦しんでいる姿の方が
見ていて胸が締め付けられる。


林嘉欣の新作主演作を観るのは、2008年の東京国際映画祭で観た『親密』以来。
御無沙汰している間に二人もお子を産み、すっかりママとなった林嘉欣だけれど、
本作品で演じている心敏は、嫁入り前の女の子。二児の母を感じさせない初々しさは、さすが女優。

この心敏のパートには、日本の沖縄で撮られたシーンがある。
心敏は、料理人の婚約者・仁佑と新婚旅行で沖縄グルメ旅を計画。
行きたいお店を仁佑と一冊にまとめた美食ノートを手に、彼の死後、一人沖縄を訪れるのだ。

このくだりは、林書宇監督自身の経験をアレンジ。
林書宇監督の奥さんは北海道へ行きたがっていたが、仕事に追われ、旅行は決行されぬまま、奥さんは死去。
その後、林書宇監督は、奥さんの遺品の中から、彼女が購入した北海道関連の本3冊と
<ノルウェイの森>を見付け、四十九日の後、それらを持って北海道へ行ったという。
(この話には続きがある。電車の中で、林書宇監督は<ノルウェイの森>がなくなっていることに気付く。
「もしかして妻が読ませないようにしているのではないだろうか…」とも思うが、
妻が居なくなり、本もなくなり、彼女に関する全てがこの世から消えてしまうことが恐くなり、
何がナンでも探し出そうと、駅員に紛失物探しのお手伝いを依頼。
幸運にも、本は札幌駅に届けられ、林書宇監督は感激するも、その本を北海道大学付属図書館に寄贈。
その北海道旅行から2ヶ月後、林書宇監督は初めて奥さんの夢を見たという。
なんだか林書宇監督の映画にそのままなりそうなお話で、しみじみしちゃう…。)

計画に終わった旅を、本来居るはずの同伴者無しに、一人で巡るって、どんな気持ちか?
後悔や悲しみがより深まってしまいそうな気がするけれど、
悲しい時に、自らとことん悲しみに浸ろうとする気持ちも、分らなくもない。


この沖縄のシーンには、日本人女優も出演。

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沖縄の“おばあ”女優・吉田妙子(…よねぇ?クロージングで確認しそびれたので100%の自信が無い)。
彼女が喋っている沖縄の言葉は、日本人にも字幕無しでは判らないが、
故にそのシーンの心敏と自分が重なり、呪文のようなおばあの声が優しく心に響いてくる。




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その他の出演者は、生前ピアノ教師だった育偉の妻・曉雯に柯佳嬿(アリス・クー)
料理人だった心敏の婚約者・仁佑に馬志翔(マー・ジーシアン)
その仁佑の弟・仁毅に張書豪(チャン・シューハオ)、心敏の妹・心庭に李千娜(リー・チェンナー)など。

柯佳嬿は、私が東京国際映画祭でハシゴして観た本作品と『風の中の家族』の両方に出演しており、
その日はちょっとした“柯佳嬿祭り”であった。
実は、当ブログ、「アリス・クー ひげ」で検索してくる人が結構多いのだけれど、
念の為申し上げておきますと、本作品は“引き”で撮っている上、
回想シーンは紗がかかったようなホンワリした映像なので、彼女のヒゲは確認ほぼ不可能です。

今回はなにせ故人の役なので、登場シーンが短いけれど、
『風の中の家族』や日本で放送されているテレビの偶像劇より、
この『百日草』のような作品の方が、透明感のある彼女の個性には合っているように感じる。

張書豪は好きな台湾若手実力派男優の一人で、本作品でもイイ感じなのだが、
馬志翔とはあまりにも見た目のタイプが異なるから、いくら服装を似せても兄弟という設定はやや不自然かも。
(それを言っちゃうと、李千娜も、姉役・林嘉欣よりスタイルが良過ぎて、姉妹っぽくない。)




大切な人を失った者の百日の心の変化を淡々と、でも丁寧に綴った作品で、
感動を押し付ける“お涙頂戴”系ではないから、余計に切ない。
林書宇監督作品は、ホロ苦い青春映画『九月に降る風』も良かったけれど、
しっとりとした大人の映画、こちらの『百日草』も秀作。
林嘉欣、石頭、二人の抑えた演技にも引き込まれた。
特に、専業俳優ではない石頭の繊細な表現には見入り、彼の俳優としての今後も楽しみに。

私は無宗教で、この先も何かに入信することはまず無いとほぼ確信しているけれど、
この作品を観ていたら、法要というものは、逝った人を丁寧に弔うという形をとりながら、
実は遺された者自身が癒されるためにあるのかも知れないと考えさせられた。
クリスチャンであるはずの林書宇監督も、そのような法要を行ったり、またそれを行ったことで何かを感じ、
こういう映画を撮ったのだろうか?
作中、クリスチャンに関する会話があったので、ふとそんな疑問が湧いた。

もし、日本で一般劇場公開されるなら、もう一度観直したい。
邦題は『百日草』も悪くはないのだけれど、『百日告別』という原題がとても好きなので、
これをなんとか上手く生かした邦題は作れないものかとも思う。
故人に、そして様々な想いに告別する百日の物語なので。
あと、やはり『星空』が観たい…!“今更”と言わずに日本でも公開して欲しい。



第28回東京国際映画祭で、上映後に行われた林書宇監督と石頭によるQ&Aについては、こちらから。

映画『ミッドナイト・アフター』

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【2014年/香港/121min.】
2012年、深夜の香港。
麻雀に熱中するミニバス運転手・阿雪のもとに、同僚から一本の電話は入り、
妻が産気づいてしまったから、仕事を代わって欲しいとの依頼。
阿雪は、借金の返済期限を延ばす条件で、深夜運行を引き受ける。

恋人・阿怡とデートのつもりが、断られてしまった阿池。
仕方なく、家に帰ることに決め、すでに人で埋まりつつあるミニバスに乗り込む。

午前2時28分、阿雪がハンドルを握る大埔行きのミニバスは、16人の客を乗せ、旺角を出発。
順調に走行していたミニバスだが、獅子山トンネルを抜けると、乗客たちは異変に気付く。
なんと、バスの中の自分たち以外、街から人とという人が消えてしまっていたのだ…。




昨2014年、第27回東京国際映画祭でチケットを取りそびれた香港映画が、
シッチェス映画祭ファンタスティックセレクション2015で上映。
一年遅れとはいえ、このような形で再度観賞のチャンスが訪れて、嬉しい。

本作品を手掛けたのは、陳果(フルーツ・チャン)監督。
原作は、Mr.Pizzaによる同名ネット小説<那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN >。

陳果監督作品を観るのは、オムニバス『香港四重奏』(2010年)の中の一篇『黄色いサンダル』以来。
長編作品は、ものすごーく久し振り。『トイレ、どこですか?』(2002年)以来かも。


今回のお話の舞台は深夜の香港。
主な登場人物は、旺角発大埔行きの深夜運行のミニバス、通称“紅VAN”の運転手一人と、
そこに乗り合わせた16人の乗客、計17人。
『那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』(あの夜の未明、僕は旺角発大埔行きの紅VAに乗った)
という原題通り、この紅VANが大埔を目指して旺角を出発し、獅子山隧道(獅子山トンネル)を抜けると、
バスの外の世界で全ての人間が消失。この世に残された17人が、不安や恐怖に駆られながらも、
何が起きているのか模索し、彷徨う姿を描くSFミステリー

<ウォールストリート・ジャーナル>が、この作品について「公開から数ヶ月後に起きる“雨傘革命”と重ねると、
様々な部分が現実のメタファーと感じられる」と説明していたのを読んでいたため、身構えて観賞。
作品の裏に隠された本来の意味を探ろうと張り切り過ぎ、深読みしてしまったかも知れない。


ザックリ大筋だけ見てみると、まず…
香港を代表する繁華街・旺角から、中国深圳にほど近い大埔まで17人を運ぶ乗り物が、
そもそも“紅VAN(赤いバス)”。

香港精神の象徴ともいえる獅子山を抜け、やって来た世界は6年後の2018年。
(中央政府は、次回2017年の香港行政長官選挙から“普通選挙”の導入を予定していた。
つまり、2018年の香港で行政長官を務めているのは恐らく中央政府に近い人物。)

人々は事の真相が分るかも知れない大帽山を目指そうとするが、謎の団体に行く手を阻まれる。

そこに降っているのは赤い雨。

…と、まぁ、これだけでも、拡大する中央政府の支配や民主主義崩壊への不安や恐怖が窺える。


深読みしまくったので、気になった細かい部分を挙げたらキリがない。
気になっただけで、何の隠喩なのだか読めない物も多いし、そもそも何も意味していないのかも知れない。

例えば、無人の劇団からお金を盗もうとする、ルイ・ヴィトンのバッグを持っている女性、通称“LV”ことLavina。
後に粤劇(広東オペラ)の女優であることが判明するLVは、拝金主義の象徴のようにも思える。
だったら、なぜ彼女はわざわざカツラと入れ歯で敢えて醜く変装をしているのか?
しかも、なぜ金髪の青年・飛機に強姦されるのか?
さらにこの飛機は、なぜLVを強姦した事で皆から責められ、滅多刺しにされるのか?
周囲に同調し、吊し上げた一人の人物を大勢で攻撃する様は、
狂気に駆られた文革中の紅衛兵のように見えなくもない。
でも、そう考えると益々「じゃぁLVは何だったの…?」と疑問が湧く。

あと、そう、この物語には華人のみならず、北朝鮮人や日本人も出てくる。
日本人は、ガスマスクで防御し、「フッドゥ」という意味不明の言葉を残し姿をくらます謎の男。
その「フッドゥ」という言葉は“福倒”のことか、いや“福島”じゃないか?!と人々は推理。
“ガスマスク”、“福島”とくれば、当然原発事故を連想。
どうやら6年前に大帽山から謎の信号が発せられ、大爆発が起きたらしいと知った人々は、
そのせいで香港が福島のように人っ子一人居ない陸の孤島になったのではないかと推測し、
真相を探るために大帽山へ行こうと決めるのだ。
ではそのガスマスクの日本人が、日本とは縁もゆかりも無い阿池という香港人青年に
「僕たちは小学校の同級生」と告げた意味は何なのか。うーん、どう繋がるのかまったく分らない…。



さらに、17人を乗せる紅VAN自体も気になった。
商品広告を施したラッピングバスなのだが、宣伝している商品が…

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彭浩翔(パン・ホーチョン)監督作品『低俗喜劇』(2012年)で注目を集めた爆炸糖(ぱちぱちキャンディ)!
エロ用途で話題になった爆炸糖にまで何か意味を見い出そうとする私は、やはり深読みのし過ぎか?





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気になった出演者を一部挙げておくと、紅VANの運転手・阿雪に林雪(ラム・シュ)
デートの予定が潰れ帰路についた青年、“阿池”こと游梓池に黃又南(ウォン・ヤウナム)
セクハラを受け、仕事をクビになったばかりの女の子Yukiに文詠珊(ジャニス・マン)
仕切り屋の中年男“發叔”こと黃曼發に任達華(サイモン・ヤム)
不可思議な事を口にし“神婆”と呼ばれる保険のセールスレディ・穆秀英に惠英紅(クララ・ワイ)
冷静なコンピュータープログラマー阿信に徐天佑(チョイ・ティンヤウ)
ヤク中の盲輝に李璨琛(サム・リー)、ガスマスクの日本人に周國賢(エンディ・チョウ)など。

それぞれキャラが立っている個性派揃いの群像劇で、香港の俳優を若手からベテランまで網羅。
まぁ運転手役の林雪などは、“毎度の雪(ゆき)ちゃん”という感じだが、
發叔役の任達華は、普段との落差に目を疑ったがった。
浅黒い肌にもっさりリーゼントヘア、服装は野暮ったく、小脇にはセカンドバッグ。
下流感ムンムンのおじちゃんによくぞ化けきったものだ。
根っこは悪い人ではないけれど、お世辞にも教養があるとは言い難く、
喋りだすとちょっと鬱陶しい、こういうおじちゃん、本当に居そう。


私も好きなカッコイイおばさん惠英紅は、最近香港映画よりテレビの大陸時代劇で見る機会の方が余程多い。
未見だが、趙文瑄(ウィンストン・チャオ)がラストエンペラー溥儀に扮している2014年度の大陸ドラマ
『末代皇帝傳奇~The Last Emperor』はどうなのでしょう?
西太后と同じ葉赫那拉(エホナラ)氏の末裔である惠英紅が、
このドラマで西太后の姪っ子で光緒帝に嫁いだ隆裕太后を演じているのが興味深い。…ま、余談ですが。
今回のこの映画では、昨今の大陸時代劇で見る威厳のある惠英紅とは異なる
少々胡散臭いオバさんを演じていて新鮮。

若手では、男性二人組ユニットShineの黃又南と徐天佑が両方とも出演。
“若手”なんて書いたけれど、二人とももう30を過ぎていた…。
役のせいもあるが、阿池役の黃又南は未だ青い男の子という印象。
対して、阿信役の徐天佑は、眼鏡をかけて、なんか大人っぽくなっているではないか。
時折り、角度によって、若い頃の郭富城(アーロン・クォック)のようにも見え、カッコイイ。

ガスマスクを付けた謎の日本人は、日本人が演じているのかと思ったら、
香港のシンガーソングライター周國賢であった…!
周國賢は恐らくある程度日本語を喋れるとは察するが、
いくらなんでも発音が完璧すぎるので、吹き替えよねぇ…?
特に“Google”のような外来語の発音が、日本人英語だったので、そう思った。
(そのGoogleの通訳機能が、広東語に優しくないというくだりも笑えた。)




音楽では、デヴィッド・ボウイの<Space Oddity >が印象的に使われている。



アポロ11号の月面着陸に世界中が湧いていた頃に発表された曲で、
宇宙に飛び立った歌の中の主人公major Tom(トム少佐)が、宇宙船の外へ出て、自分の無力さを感じ、
そのまま広大な宇宙の果てに漂流し、やがて地上管制塔との連絡も途絶える、という内容の歌。
特に「For here am I sitting in a tin can far above the world,Planet Earth is blue and there’s nothing I can do
(世界の遥か上空でブリキ缶に座っている 地球は青い 僕にできる事は何もない)」という部分の歌詞が
この映画とリンクするよう上手く使われている。

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映画の中では、香港のインディーズバンド觸執毛(チョチュクモ)のヴォーカリストJan Curious扮する
紅VANの乗客の一人・歐陽偉がカヴァーして歌うのだけれど、これがとても良い。
オリジナルのデヴィッド・ボウイ版より好きかも。





映画は観る人それぞれに解釈があって然るべきで、だからこそ面白いのだろうけれど、
この映画の細部を考えだすとモヤモヤが止まらないので、
もし陳果監督が意図して所々に隠喩を散りばめこの作品を撮ったのであるならば、
いっそそれらを全て箇条書きにして私に教えていただきたい。
それを頭に入れて、もう一度観賞し直したら、また別の面白さが得られそうな気がする。

でもまぁ、そういう政治的隠喩を抜きに観ても、映像の雰囲気が好みで、
夜の香港を捉えた一番最初のカットから一気に引き込まれた。
ただ、政治的隠喩を抜きにして観ると、ミステリー作品としては、腑に落ちない部分が多いかも。
色々伏線が敷かれているようでいて、結局投げっ放しで、答えに辿り着けないモドカシさも無きにしも非ず。

それにしても、香港で人っ子一人居ないシーンを、いつどのように撮影したのだろう。
人口があそこまで密集した街では、深夜でも早朝でも、
必ず誰かしらフレームに入り込んでしまいそうな気がするけれど。

映画『風の中の家族』

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【2015年/台湾/126min.】
1949年1月、国共内戦で国民党の敗戦の色濃い江蘇省の戦場。
肩を負傷しながらも、激しい戦火をどうにか切り抜けた盛鵬と、彼の二人の部下、順子、小范は、
親を亡くし、たった一人で彷徨う小さな少年を救出し、自分たちと一緒に連れて行くことを決意。
自分の名前も覚えていなかったこの子は、
三人の父がいたと言い伝えられる<三国志>の呂布にちなみ“奉先”と命名される。

間も無くして、国民党ついに撤退。
盛鵬ら4人もなんとか乗船し、聞いたこともない“台湾”という新天地に向け、出航。

そして、1949年3月、彼らを乗せた船は基隆港に到着。
戦場で深い傷を負っていたため、上官の計らいで退役を許された盛鵬は、
奉先を連れ、台北を目指そうとするが、なんと順子と小范までもが軍に無断で彼ら二人に追随。
逃走兵は重大な軍規違反だが、順子と小范の決意は固い。
4人は共に歩いて歩いて、ようやく台北の中心地・大稻埕に辿り着くが…。




台湾の王童(ワン・トン)監督、久々の新作を、第28回東京国際映画祭で観賞。


物語は、国共内戦で親を亡くした孤児・奉先を連れ、
台湾へ渡った国民党の3人の軍人にして義兄弟、盛鵬、順子、小范が、
見知らぬ土地に根を下ろし、生きていく歳月を描く、血の繋がらない外省人家族の戦後台湾史

本作品は王童監督の自叙伝ではないけれど、1942年生まれの監督自身もまた安徽省出身の外省人で、
台湾へ渡ったのは、映画の中の孤児・奉先と同じ年くらいの頃だったという。

外省人監督による外省人の物語は
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『童年往事 時の流れ』(1985年)とか
楊昌(エドワード・ヤン)監督の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)とか、これまでにも結構有るが、
“外省人”と呼ばれる人々が、大陸からいかに台湾へ渡り、見知らぬその地に根付いていったのかを、
国共内戦から事細かに追っている作品は、有りそうであまり無いかも。

台湾へ向かう船の中で、「一年中暖かで、四季の区別が無いらしい」とか「言葉も通じないらしい」などと
人々が不安まじりにまだ見ぬ土地について語るシーンさえ新鮮。
台湾へ渡った国民党の軍人というと、蔣介石以下地位の高い軍人を真っ先に思い浮かべてしまうけれど、
下々の者は、嘔吐物の臭いが充満する暗い船底に寿司詰めにされ、命からがら台湾へ向かったのだなぁ、と。


ただ、このような題材は、映画作品にはあまり取り上げられていなくても、テレビドラマになら有る。
“外省人の悲喜こもごもを長いスパンで捉えた群像劇”という共通点から
2008年の台湾ヒットドラマ『光陰的故事~Time Story』が重なった。

『風の中の家族』の場合、血縁の無い者同士が見知らぬ土地で“擬似家族”を形成し、
共に生きていく様子が核になっているのが特徴的だが、
“外省人の戦後台湾史”という点では『光陰的故事』と似ている。


物語の中心となるこの疑似家族の大黒柱・盛鵬には、実は大陸に残した巧玲という妻がいる。
止むを得ず生き別れ、その後も連絡のとりようがなく、行方知れず。
1987年、台湾で戒厳令が解除され、外省人たちの里帰りもようやく許可されるが、
皮肉にも盛鵬はその年に人生の幕を下ろしてしまう。

でも、もし1987年に盛鵬がまだピンピンに元気だったら?と考えたら、
王全安(ワン・チュエンアン)監督の『再会の食卓』(2009年)に繋がった。
台湾を主な舞台にしている『風の中の家族』と異なり、大陸を主な舞台にしている『再会の食卓』では、
国民党の軍人だった夫が、1949年台湾へ渡ってしまい、大陸に取り残された女性が、
生きるために共産党員の男性と再婚し、長年上海で平穏に暮らしていたのに、
大陸と台湾の往来が解禁となったことで、なんと元夫が台湾から訪ねて来るという想定外が起き、
現夫との不思議な三角関係に発展していくお話。

離れ離れになった家族や友人と再会できた人、それが果たせなかった人、
果たせてもそれを素直に喜べない状況に陥った人…。
当時、こういう話は本当にいっぱい有ったのではないかと想像する。




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4人の疑似家族に扮するのは、戦中は部隊の連長で兄貴分的存在の盛鵬に楊祐寧(トニー・ヤン)
義兄弟の真ん中で、“順子”こと黃順に李曉川(リー・シャオチュアン)
義兄弟の中では末の弟分“小范”こと范中岳に胡宇威(ジョージ・フー)
そして3人の養父に育てられた孤児・盛奉先に李淳(メイソン・リー)

血の繋がらない義兄弟、疑似家族の群像劇だが、
中でも物語の中心となる盛鵬を主人公と位置付けてしまっても良いであろう。
扮する楊祐寧は、未だに『僕の恋、彼の秘密』(2004年)の印象が鮮明で、
“可愛い弟キャラ”と捉えてしまいがちだけれど、1982年生まれのもう33歳。
主要キャストの中で見ると、すでにベテランの貫録があり、演技力もピカイチ。
青年期からシニアまで盛鵬の約40年を一人で演じ切る楊祐寧は、本作品の見所のひとつ。

2番目のお兄ちゃん、順子役の李曉川は、主要キャストの中では唯一の大陸男優。
美男美女を揃え過ぎ、ややリアリティに欠けているこの映画で、
順子役の李曉川だけが辛うじて画面に現実味を醸してくれている。こういう存在は大切ヨ。
それに、役の設定上、台湾訛りのない中国語を話す俳優は不可欠。


逆に役の設定からは程遠い俳優も二人。
本作品のキャストについては、随分前から幾度となく
「二人のABC(AmericaでBornしたChinese)が慣れない歴史モノで奮闘」といった記事を読んでいた。

二人の内一人は、小范役の胡宇威。
胡宇威は、アメリカから台湾へ渡り、ドラマを中心に芸能活動を初めてから、もう十年程経つので、
中国語はもはや問題ナシであろう。
ルックスは抜群。しかも、フォレスト・ガンプを彷彿させる知的障害のあるピュアな青年を演じるドラマ
『モモのお宅の王子さま~愛就宅一起』では、演技力もなかなかだと感心したのに、
その後の出演作が、偶像劇の王子様ばかり…。さらには、“武虎將”なるアイドルユニットにまで組み込まれ、
慢性的なアイドル不足に悩む台湾芸能界の犠牲に甘んじているようにも見受けた。
幸い武虎將は数年の活動で解散したものの、いい加減方向転換しないとマズくない?と思っていたら、
満を持して本作品でいよいよスクリーンデビュー。
演じる役も国民党の軍人で、これまで演じてきた偶像劇の王子様とは180度異なる。

結果から言うと、本作品で見ても「胡宇威がこれまでの殻を打ち破った!」という程の驚きは無かった。
軍人なのに、茶髪がまだ完全に抜け切れていないし、存在感も同じ年の楊祐寧と比べると弱い。
でも、ちょっとでも方向性を変えた本作品が、胡宇威のキャリアの新たなスタートになるかも知れない。
好みのタイプの二枚目なので、これを機に、良い方向に進んでくれるといいなぁ~と今後に期待。


もう一人のABCは、3人の養父に育てられる孤児・奉先に扮する李淳。
こちらは本当に中国語がマズかったらしい。
映画監督・李安(アン・リー)の次男で、
まだ赤ん坊の頃、パパが手掛けた『ウェディング・バンケット』(1993年)でスクリーンデビュー。

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あの赤ちゃんが、こんなに大きくなったのかと思うと、感慨もひとしお。

実は大人になった姿も、『風の中の家族』より前に日本のスクリーンですでにお披露目済み。

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一本は、私は未見の『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』(2011年)。
私が観たものだと、リュック・ベッソン監督作品『LUCY ルーシー』(2014年)に、
ホテルのドアマン役でチラリと出演。

そんな李淳、中華圏でも活動するようになり、苦手だった中国語も短期間でマスターしたから
「親も喜んでいる」とのこと。
見た目はお世辞にも二枚目とは言い難い。
今どきの俳優にしては背が低いし、顔もチビノリダー伊藤淳史似(あっ、計らずも“淳”繋がり!)。
今後は個性派路線で行くのだろうか。

ちなみに、この李淳扮する奉先が、おじいさんになり、養父の親族を探すため、
大陸へ渡る2010年のシーンでは、李淳の面影がぜんぜん無い陶傳正(タオ・チュアンジェン)が演じている。
パパの李安、もしくは伯父の李崗(リー・ガン)が演じるサービスシーンにしても、面白かったかも。

ついでに記しておくと、2010年、大陸へ渡った奉先が接触する養父の妻の親族に扮し、
ほんのちょっとだけ出演しているのは、台湾の俳優・樊光耀(ファン・グァンヤオ)
樊光耀は、ドラマ『光陰的故事』では、台湾へ渡った元国民党士官を、もの凄い上手い河南訛りで演じている。
そんな事もあって、今回この役に抜擢されたのかナ、と思った。





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女性キャストも見ておくと、順子と結婚する台湾人女性・阿玉に柯佳嬿(アリス・クー)
盛鵬と微妙な関係になるピアノ教師・邱香に郭碧婷(グオ・ビーティン/ヘイデン・クオ)
邱香の妹で、後に奉先と結婚する邱梅に郭采潔(アンバー・クオ)

女性陣は男性陣以上に今どきのカワイ子ちゃんを寄せ集めた印象で、
あまり時代の雰囲気を感じられなかった。

この3人の中なら、サッパリ顔の柯佳嬿だけが、昔から現代までの全時代対応型。
柯佳嬿は台湾らしい透明感のある女優さんで、
(テレビドラマはさて置き映画では)さり気ない感じや儚げな感じの役が多かった。
が、一人の女性の長い年月を演じる本作品では…

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ついに、ちりちりパーマのオバちゃんに挑戦!こんな柯佳嬿を見るのは初めてだ。

一方、そんな柯佳嬿とほぼ同世代の郭采潔は、アラサーでまだJKやっていた(笑)。
私生活では、2011年頃から交際していた楊祐寧と最近別れたと言われているが、
この映画の中では、その楊祐寧の養子と結婚。





本作品、私の好みから言うと、“映画”としては、やや軽く感じてしまった。
よく出来た歴史モノなのに、演出がベタなメロドラマ調なのと、
(恐らく集客を意識して揃えたであろう)出演者にテレビドラマ的な面々が多いのが原因だと思う。
でも、テレビの2時間ドラマだと思って観れば、誰にでも分かり易い歴史教材のようでもあり、面白い作品。
似た題材を扱ったドラマ『光陰的故事』も面白いけれど、あちらは全54話と長いので、
外省人が台湾で歩んできた歴史を知りたければ、コンパクトに2時間にまとめた『風の中の家族』は最適。

近年、日本では、台湾に関心を示す人が増えてきているので、台湾を色々な角度からより深く知るために、
こういう外省人目線で描かれた戦後台湾史の映画が公開されても良いと思う。

実は台湾を大して知らないのに、“中国憎し”の反動から、無意味に台湾をヨイショするネトウヨが、
台湾で何か日本に不都合な事が起きる度に「どうせ外省人の仕業」と片付けたがるのは、まだ分るけれど、
最近、映画『KANO』などの影響もあるのか、ごく普通の日本人の間にも
“本省人は善良な親日家、日本が去った後に台湾へやって来た外省人が最悪だから、本省人は益々親日”
という偏った見方を漠然と抱いている人が居るのが恐ろしい。
好む好まざるに拘わらず台湾へ渡り、生き抜いてきた人々の物語を見ると、
戦争に翻弄され、人生を狂わされてしまうのは、何人でも同じだと感じる。

それに、監督や作家など世界的に有名な台湾の文化人でも、日本人女性も好きな台湾芸能人でも、
彼らが外省人である確率は非常に高く、外省人抜きに戦後の台湾文化を語るのは不可能だと感じる。
多くの日本人が、バリバリ土着の台湾人だと思っているあの徐若瑄(ビビアン・スー)でさえ、
確かに母親は台湾原住民の泰雅(タイヤル)族だが、父親は外省人。
そのような混血ももはや多く、大陸にルーツを持つ台湾人は数知れず。
日本は移民に慣れていない上、“台湾は親日”と思い込みたいがゆえ、
本省人と外省人、台湾と中国をハッキリ線引きして、安直に良し悪しを語りたがるのかも知れないが、
台湾人のアイデンティティとか、そもそも何を以て“台湾人”と呼ぶかだって、日本人が思っている以上に複雑。

映画祭のQ&Aで王童監督も言っていたように、こういう歴史映画はまだまだ少数かも知れないが、
テレビドラマの方ではむしろ増加傾向。
近い将来放送開始予定のドラマの中にも、私の興味をソソる物アリ。
名作ドラマ『ニエズ~孽子』と同じ原作者、外省人の著名作家・白先勇の著作を
新たに映像化する公視の新ドラマ『一把青』がソレ。
原作を読む限り、国民党空軍の軍人やその家族たちの物語だと推測。
さらに遡り、国民党がやって来る以前の日本統治時代を描いた歴史ドラマでは、
今年台湾で放送された『春梅 HARU』は、日本人なら興味深く観賞できる作品だと思う。
映画でもテレビドラマでも、台湾のこういう歴史モノが、どんどん日本に入ってくるようになると嬉しいです。



第28回東京国際映画祭で本作品上映後行われた
王童監督とプロデューサー唐在揚によるQ&Aについては、こちらから。

『イッテQ』イモトin中国で紹介された驚愕食品2種(+リメイク版『追捕』始動)

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2015年11月9日(月曜)の本日、
NHK BSプレミアムでも放送があった高倉健主演映画『君よ憤怒の河を渉れ』
中国で大ヒットしたこの映画のリメイクを手掛ける吳宇森(ジョン・ウー)監督が、ついに始動した模様。
東京国際映画祭のインタヴュでは、2016年早々にクランクインと語っていたが(→参照)、
すでに日本国内でお仕事を始めたみたい。

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画像左は昨日、右は本日、それぞれ吳宇森監督の微博で発表された物。
左の画像は、美術の相談中か?顔がよく見えない真ん中の男性は、ひょっとして種田陽平?
種田陽平は、吳宇森がプロデュースした『セデック・バレ』でも美術を担当しているから有り得ない話ではない。
本日は、奥方とビリケンさんにお参りをしたのでしょうか。

近い将来、キャストの発表もあるかも知れない。ドキドキ。
明日は健さんの命日だから、吳宇森監督もまだ日本に留まりそうな予感。




本題はこちら。
昨晩、11月9日(日曜)に、日テレで放送の『世界の果てまでイッテQ!』を観た。
普段はほとんど観ることのない番組なのだが、
イモトアヤコが5年ぶりに中国を訪れ、パンダを取材していると知り、珍しく視聴した次第。


珍獣ハンターのイモトは、パンダ以外の生き物、中国大山椒魚や中国原産のブサカワ犬3種も紹介。

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左から、チャウチャウ(鬆獅狗/獢獢)、シャーペイ(沙皮狗)、チャイニーズ・クレステッドドッグ(中國冠毛犬)。
人は、いかにタルミを防ぐかに躍起になるのに、
ぶよぶよタルタルが売りになるのだから、羨ましいです、シャーペイが。
私は、この中で、チャイニーズ・クレステッドだけは、何度見ても慣れず、
あの毛の無い肌を不気味に感じてしまうのだが、
イモトは「皮膚が人間みたい。人間の赤ちゃんを抱いているようで、これが一番母性が湧く」と言っていた。


イモトは珍獣ハンターだから、このように、希少動物パンダや珍種の犬を取材しているだけなのかと思ったら、
他にも、流行りモノから、有名景勝地・九寨溝まで、広く中国を紹介していて、この番組、殊の外面白かった。


その中で私が取り分け気になった食べ物がふたつ。

★ 人参果

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ひとつめは“人参果 rénshēnguŏ”。日本語では“にんじんか”と発音。


かの<西遊記>の中で、三千年に一度開花し、三千年に一度実を付け、さらに三千年かけて熟し、
見た目は人間の子供に似ており、香りを嗅ぐだけで360歳生きられ(…!)、
一個食べると4万7千年生きられる(…!!)と言い伝えられている幻の果実。

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<西遊記>は、日本でも親しまれている物語だけれど、
大抵は子供用の絵本や日本で制作されたテレビドラマを通して知るため、
中国の本当の<西遊記>を細部まで知る日本人は案外少なく、人参果の知名度も低い。
かく言う私も、<西遊記>に出てくる果実では桃のイメージの方がずっと強い。

が、中国では、この人参果、
<西遊記>の中の<偷吃人参果(人参果を盗み食い)>という段でよく知られているらしい。
旅の途中、万寿山の五荘観に立ち寄った際、寺の弟子に人参果を振る舞われた三蔵は、
赤ん坊の形に驚き、どんなに勧められても食べられないと断るが、
これが長寿の果実であると知った悟空、八戒、沙悟浄がこっそり盗んで食べてしまうというお話。

物語の中に登場する幻の長寿フルーツを、本当に作ってしまったのですね~。
本当に食べられる果実なのに、人型とは…!

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水と一緒に瓶詰めにすると、胎児のホルマリン漬けっぽくて、益々不気味。三蔵が拒んでしまったのも分る。


これ、フルーツ&ベジタブル・カーヴィングのように、彫って作っているのではない。

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とても原始的な方法で、実がまだ小さい内に型を被せ、その中で成長させていく。
日本でもこの方法で、四角い西瓜などが作られているけれど、
果実にこんなに細かい細工を施すのが可能だとは思わなかった。もしかして中国伝統の月餅がヒントか?
そもそも人型の果実を作ろうなんて、日本人にはまず無い発想。

一説には、2003年、河北省邯鄲市魏縣で試験栽培が始まり、2009年辺りから市場に出始めたようだ。
特にここ最近は、大陸のあちこちで出回っているみたい。
原理が簡単なので、真似る農家が増えてきているのでしょう。
ザッと見た限り、値段は一個10元から60元とまちまち。
デザインは、生産者によって少しずつ異なる。私は、おなかに“福”の字が入った人参果が欲しい。
見れば見るほどキモカワイイ。


型さえ変えれば、他の人型もできるし、他の果実にも応用できる。

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日本でも、こういうのを作る農家が出てくるかも?
千疋屋やタカノで売られていたら、私、贈答用に買います、絶対。


こういう型は、中国大手ショッピングサイト淘宝(タオバオ)をちょっと探せば、いくらでも出てくる。
趣味で家庭菜園をやっている日本の皆さまが、簡単に試せそうな物も。
プロの農家じゃないと、難しいことはできないだろうけれど…

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星型やハート型の胡瓜くらいなら、素人でも栽培できそうな気が。
最近、キャラ弁とか、お弁当にこだわる人が多いから、自分で作った可愛い胡瓜も活かせそう。



この人参果について色々読んでいて、ふと朝鮮人参を思い出した。
あれ、まさに“人のような形をした不老長寿の妙薬”ではないか。
もしかして、<西遊記>が書かれた明代に、とても貴重だった朝鮮人参が、
架空の果実・人参果のヒントになったって事はないの?

★ 工藝棉花糖

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番組中、もうひとつ私の目を奪ったのが、綿あめ。
たかが綿あめ、されど綿あめ、ポップで可愛い工藝棉花糖(gōngyì miánhuatáng工芸綿あめ)である。
色の違うお砂糖の綿を順番に巻いていき、大輪のお花に!


作る工程が見られる動画は、(↓)こちら。



アメージングでございます。誰が思い付いたのでしょう。

綿あめは、子供の頃に食べたことがあるけれど、それっきり。
特別美味しいというほどの物ではないから、残りの人生で食べることは、もう無いと思っていたが、
こんな綿あめを見掛けたら、思わず買ってしまうだろう。(…そして、食べ切れないし、持ち帰れないしで困る。)




人参果にしても工芸綿あめにしても、すごく単純な物だが、発想の勝利。
春秋航空の立ち席などもそうだけれど(→参照
中国人は既成概念に囚われていなくて、発想がとても自由でエキセントリック。

今回の『イッテQ』では、人参果と工芸綿あめに気を取られ、
すっかり印象が薄れてしまったが、パンダちゃんも勿論可愛かったです。




追記:2015年11月10日
『世界の果てまでイッテQ~珍獣ハンターイモト ワールドツアーin中国』の追加情報で、ブログを更新。
九寨溝でイモトの熱唱に翻弄された“香港の長澤まさみ”については、こちらから。

續『イッテQ』イモトに翻弄された“香港の長澤まさみ”in九寨溝

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2015年11月8日(日曜)、日テレで放送された『世界の果てまでイッテQ』について、
昨日は食べ物の話に終始し(→参照)、書き忘れたが、気になった部分がもうひとつ。

それは、“珍獣ハンターイモト ワールドツアーin中国”の終盤の出来事。
イモトアヤコは中国の有名な景勝地・九寨溝を訪れ、真っ青な湖・五花海をバックに
PV撮影のため、絢香の<みんな空の下>を大熱唱。

ところが、実は、この時、同じ場所で、香港のドラマクルーもお仕事中。
シリアスなシーンを撮るため、主演女優がじっと気持ちを作っている最中だったのだ。
ブスの嫌がらせにも堪え、役作りに集中し、ドラマの撮影を終え、
現場を離れていく“香港の長澤まさみ”らに対し、イモトは「ソーリー…」と恐縮することしきり。



私は、香港映画は観ても、香港ドラマはまったく観ないので、詳しくないのだが、
どうやら『小城大愛』という新ドラマの撮影だったらしい。
制作は香港のTVBと、その関連会社、上海のTVBC翡翠東方。近年よくある大陸と香港の合作ドラマ。

この新ドラマは、独立した6ツのお話から成るオムニバス形式で、
香港の馬國明(ケネス・マー)や楊怡(タヴィア・ヨン)も出演。
九寨溝で撮影していたのは、馬國明&楊怡が出演するパートとはまた別のパート。

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家を飛び出したワガママお嬢様・何靜宜が、かつて夢の中に出てきた秘境・九寨溝にやって来て、
善良なガイドに出会い起きる悲喜こもごもを描いた物語らしい。
『イッテQ』のカメラは、階段を駆け上がる女性主人公を、ガイドの青年が追い駆けるシーンを捉えている。
ワガママ病を発症したお嬢様に、青年が振り回されているシーンでしょうか。



そんなお嬢様・何靜宜を演じている“香港の長澤まさみ”が、(↓)こちら。

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孔千千(コン・チエンチエン)ちゃん。
イモトがなぜ彼女を“香港の長澤まさみ”と形容したのか、私にはよく分からないけれど、
スラッとのびた四肢と清々しい雰囲気は長澤まさみっぽい?


簡単なプロフィールも。
氏名     :孔千千 (Kŏng Qiānqiān)
本名     :孔文娟 (Kŏng Wénjuān)
ニックネーム:葩葩 (Pāpā)
生年月日  :8月4日
出身地    :廣東省深圳市
学歴    :廣東舞蹈學校(民間舞)卒/北京電影學院(表演系)卒
身長    :168cm.

代表作:『白蛇伝説』(2011年)、『咒·絲~The Deadly Strands』(2013年)等々…


イモトは“香港の長澤まさみ”と呼んでいたが、同じ広東語圏でも香港のお隣の深圳出身の大陸新進女優。
なので、正確には、“香港TVB制作ドラマに出演の大陸の長澤まさみ”、
もしくは、もっと簡単に“深圳の長澤まさみ”。

日本における長澤まさみの知名度ほど、孔千千の知名度は現地でもまだそんなに高くはないようなので
(微博のフォロワー数約12万人は、大陸の明星としては少ない方)、
出回っている情報も乏しく、素性が分りにくい。

年齢はどうやら非公開。
デビュー当時は本名の“孔文娟”で活動していたようだし、“孔馨葉”という名を使っていたこともあるみたい。
それらの名前や、北京電影學院関連情報で、おおよその年齢が分ると思ったら、甘かった。
個人情報がっちりガード。でも、多分アラサーくらいではないかと想像。

さらに気になる未確認情報では、2007年、北京のレストランで食事中、
エイベックスの総裁(松浦勝人か?)にスカウトされ、日本に来てレッスンを受けたという話もある。
同じ年、中国人監督による映画にも出ているので、
仮にその話が事実でも、長期間日本に滞在したとは考えにくいが、最低限の日本語は知っているらしく、
『イッテQ』では、孔千千が九寨溝の撮影現場を去る時、
平謝りのイモトに対し「ダイジョウブ!」と日本語で声を掛けているところが映っている。


日本でも簡単に観られる過去の出演作は、恐らく『白蛇伝説』くらい。

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アクション監督としても有名な香港の程小東(チン・シウトン)監督が手掛けた映画。
キャストは、李連杰(ジェット・リー)、黃聖依(ホァン・シェンイー)、蔡卓妍(シャーリン・チョイ)、
林峯(レイモンド・ラム)、文章(ウェン・ジャン)、徐若瑄(ビビアン・スー)など。
私、これ観たはずなのに、まったく覚えていない…。孔千千はチラッとしか出ていないと思う。




『イッテQ』では、イモトが“香港の長澤まさみ”と称したため、孔千千ばかりに注目が集まったけれど、
実は、日本の中華ドラマニアには、孔千千の相手役の男優の方が知られた顔かも。

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はい、こちら王崢(ワン・チェン)
ドラマ『蘭陵王』で、陳曉東(ダニエル・チャン)扮する武帝の側近・宇文神舉を演じていた
あの王崢でございます。宇文神舉は脇役ながら、日本人女性にも好評でしたよね。
前髪を下ろした現代劇だと若々しくて、別人のよう。


(↓)こちらは、イモトと遭遇した五花海で撮った王崢の写真。

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微博で、この画像に添えられているのは、「这么美的景色,怎能让人不心醉!我先醉一会儿。
(こんなに素晴らしい景色が、人々を魅了しないわけがない、僕は先にちょっと酔わせてもらうよ。)」
という王崢のコメント。
この後、イモトの熱唱で、王崢も酔いからすっかり醒めたと思います(笑)。

それでも、五花海を去る時、孔千千の「ダイジョウブ!」より前に、「Good luck!」とイモトに声を掛けていた。




なお、2015年11月8日(日曜)放送の『世界の果てまでイッテQ』で
イモトが紹介した中国のアメージングな食品については、こちらから。

映画『愛のカケヒキ』

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【2014年/中国・香港/97min.】
張慧と小恭は、男女の垣根を越えた大親友。
…が、実は張慧、大学時代から密かに小恭を想い続けている。
家が裕福ではないため、恋愛どころではなく、とにかくまず仕事で成功したいという小恭の気持ちを汲み、
その内彼が振り向いてくれることを信じ、大学卒業後は、彫刻家の夢を捨て、小恭と同じ会社に入社。
ずっと気心の知れた親友として付き合い続けてきたのだ。

ところが、ある日、仕事で二人一緒に覆面調査に行ったレストランで、
満面の笑みを浮かべた小恭が、張慧に予想だにしなかった告白をする、「恋人ができたんだ」と。
なんでも相手は、先月台湾出張へ行った際に知り合った“蓓蓓”という台湾人女性だという。
甘く優しい蓓蓓に、小恭はもうメロメロ。
阮美ら事情を知った女友達たちは、ホラ見たことかと張慧をお説教。
男性の心を掴むのは、なんといっても甘え上手な女だという彼女たちから、
張慧は小恭を取り戻す秘策を次々と伝授されるが…。



彭浩翔(パン・ホーチョン)監督作品を東京・中国映画週間2015で観賞。

私は、大阪アジアン映画祭で上映された『アバディーン~香港仔』(2014年)を観ていないので、
『低俗喜劇』(2012年)以来の彭浩翔監督作品。

それにしても、“香港度”が高く、とかくエロやお馬鹿が盛り込まれがちな彭浩翔監督作品が、
よりによって中国映画週間で上映されるとは思わなかった。
もっとも、本作品は香港を舞台にしていない非広東語作品。
このような作品は、北京で撮られた北京語作品『恋の紫煙2』(2012年)以来。


本作品には羅夫曼の<會撒​​嬌的女人最好命>という原作が“一応”アリ。
この本のタイトルを訳すなら<甘え上手な女は超ラッキー>って感じか。
どうやら小説ではなく、男女関係をより良くするための指南を女性読者向けに書いた本みたい。
なので、よくある“小説の映画化”とも恐らく違い、
この指南書をヒントに物語を膨らませてできた映画だと推測。

で、その物語は、大学時代からずっと密かに片想いし続けている小恭を、
甘え上手な台湾女・蓓蓓にあっさり奪われてしまった男勝りな女性・張慧が、
女友達の指南で、男好きのする可愛い女に変身しようと奮闘しながら、
あれやこれや小恭奪還作戦を繰り広げるラヴ・コメディ

蓓蓓の出現で、上海と台湾で恋の両岸バトル勃発!
小恭はいつか自分の方に振り向いてくれると漠然と信じていた張慧にしてみれば、
台湾からの寝耳に水の奇襲攻撃ですわ。
しかも小恭ってば、いとも簡単に陥落…。
隣の芝は青いのです。大陸男を落とすのには、甘ったるい台湾訛りさえも立派な武器。



そんな訳で、今回の主なロケ地は上海台湾
彭浩翔監督作品が台湾で撮影されるのはお初なので、どういう所が出てくるのか注目していたら、
やはり夜市が出てきた。
日本人と同じように、香港人にとっても上海人にとっても、
台湾と言えば夜市は外せない観光スポットなのであろう。

しかし、日本人とは少々違うと感じるのが、夜市のB級グルメ。
日本のメディアが必ず取り上げる台湾夜市のB級グルメといったら、
蚵仔煎(牡蠣オムレツ)、雞排(フライド・チキン)、香腸(ソーセージ)、胡椒餅、
そして罰ゲーム的に臭豆腐、って感じではないだろうか。

ところが、この映画の中で、台湾を訪れた上海女・張慧が、目を輝かせ、真っ先に飛びついたのは…

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“烏梅番茄(烏梅トマト)”なのだ。
2015年10月末に放送された『孤独のグルメ Season5』台湾編にも、似た物は登場。
主人公・井之頭五郎は、アンズ飴と間違え、
トマトと烏梅を交互に串刺しにし、飴がけした糖葫蘆(タンフールー)を購入
トマトをフルーツとして食べるなんて考えもしなかったというコメントはあったが、
トマトと烏梅のコンビネーションに関しては、井之頭五郎の言及ナシ。
私は烏梅番茄を食べたことがないのだが(…食べてみたいと思ったことすらない)、どうなの??
他を差し置いてまで飛びつきたくなる程の物なのか。
私には、味だけではなく食感も、烏梅とトマトではしっくり馴染みにくいように思うのだけれど…。


さらに、美術にも関心の高い彭浩翔監督作品では、作中に出てくるアート作品やアート・スポットにも注目。
上海のシーンに出てくる上海當代藝術館(MOCA上海)は、日本人でも行く人が多いであろう。
撮影時は、中国現代アート展が開催中だったらしく、
私も好きな夏小萬(シア・シャオワン)の作品も(→参照)、張慧の後方にずっと映っていた。

そんな張慧が、台湾で訪れるアート・スポットは…

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台湾を代表する彫刻家・朱銘(ジュウ・ミン/しゅ・めい 1938-)の作品を集めた朱銘美術館。
ここは日本人がなかなか足を運ばない場所なのでは?




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出演は、大学時代から小恭に片想いし続ける男勝りの女性・張慧に周迅(ジョウ・シュン)
張慧の気持ちに気付かず、仲の良い親友関係を続ける小恭に黃曉明(ホアン・シャオミン)
小恭が交際を始める甘え上手な台湾人女性・蓓蓓に隋棠(ソニア・スイ)
張慧に男性攻略法を伝授する親友・阮美に謝依霖(イボンヌ・シエ)等々。

彭浩翔は、香港から北京に拠点を移して間もない2010年に、
周迅主演のネット上のショートフィルム『指甲刀人魔』をプロデュースしており、
その頃からもう本作品を周迅で!という構想があったようだ。

本作品の周迅は、ショートヘアがお似合いで、お召し物もお洒落で目に楽しい。
サバサバした“女に好かれる女”を好演しており、とにかくキュートで魅力的。
色気の無い張慧に、女友達が勧める勝負下着が“血滴子(フライング・ギロチン)”だったというくだりでは、
「勝負し過ぎ…!」と苦笑。

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あちらでは、映画関連グッズをこの血滴子で色々作ってしまったようだ。
画像は、キーホルダーとイヤホンジャック用アクセサリー。



彭浩翔監督は、女性のみならず男性を魅力的に演出するのも上手い。
私が、黃曉明を本心から“良い”と感じたのは、『恋の紫煙2』である。
美男子があまりにも美男子然としていると、その美貌が鼻に付いてしまうことがあるけれど、
彭浩翔監督はそれを逆手にとって、笑いと愛嬌に変えることに長けている。
例えば、黃曉明のむきむきボディも、もし韓ドラのようなベタなラヴストーリーの中で見たら、
ゲンナリし、「さっさと服着ろよ…」とボヤいてしまいそうだが、
本作品の中で見ると、無駄に鍛え上げられた彼の胸筋にさえ、笑みが洩れてしまうワケ。

黃曉明扮する小恭のシーンでは、
“カーリングの中継を目を閉じて聞いているだけで興奮できる”というくだりにも笑った。単純。
彭浩翔監督作品に描かれる“男って馬鹿よねぇ”なネタは、いつも面白い。


台湾の隋棠は彭浩翔監督作品初登板。
“嫌味になりがちな美を逆手にとって笑いに変える”テクは、女性の隋棠にも生かされている。
近年隋棠が、ドン臭い女の子やくたびれた主婦を演じてきたのは、
“モデル上がり”の汚名を返上したかったのが大きな要因と見受けるが、
逆に本作品では、足枷になっていた美を武器に、“女に嫌われる女”を演じ、コメディエンヌのセンスを発揮。

まぁ実際には、ここまで綺麗だと同性も嫌わないと思うけれど。
特に日本の場合、世界的に見ても稀な“フツー”を好む男性が多いので、
隋棠レベルの美女は例え甘え上手でも、男性が怖気づいてしまい、案外モテないものなのです。
日本だったら、もっと小柄でフツーっぽい女性、例えば田中みな実や皆藤愛子などが、
例の「討厭~」をやったら、5割の男性を落とせ、8割の女性から叩かれると思います(笑)。


台湾からは、隋棠のみならず、張慧の親友・阮美役でバラエティ出身の“Hold住姐”こと謝依霖も出演。
演じているところは初めて見たけれど、面白い。
決して美人ではないので、“おばさんくさいお節介な女友達”みたいな立ち位置なのかと思っていたら、
男性を知り尽くし、狙った獲物は必ず落とす女豹だったという意外。
通常の映画だと、こういうお笑い担当の三枚目は、モテない役回りだが、
本作品のこの阮美の場合、狙われた男性は彼女のトゥーマッチなお色気にドン引きするどころか、
面白いようにコロッと落ちてしまうのだ。





(↓)こちら、自ら“血滴子”を装着したり、
共演者の隋棠、Hold住姐と甘えん坊ポーズをして、映画を宣伝する黃曉明。

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彭浩翔監督作品で黃曉明を見る度に
「もしかしてこの人本当に性格いいんじゃないかしら?」と思えてくる。

この『愛のカケヒキ』も、そもそも良いキャストを揃えているけれど、それぞれの魅力も上手く引き出されている。
さらに、画作りが洗練されていて、飽きさせないストーリー展開…、と完成度の高いエンターテインメント作品。
結果が分りきった単純なラヴコメなのに、すごく楽しい。
中国映画週間で本作品を観るために、東京国際映画祭で同日同時刻上映の彭浩翔プロデュース作品
『レイジー・ヘイジー・クレイジー~同班同學』を諦めたので、
もし『愛のカケヒキ』がつまらなかったら、当分悔いを引きずりそうと恐れたが、そんなの要らぬ心配であった。
(『同班同學』も次に機会が訪れれば、もちろん是非観たい。)

香港の似たり寄ったりのアクション映画やノワールはどんどん入って来るのに、
彭浩翔監督作品がなかなか公開に漕ぎ着けない日本の感覚が、私にはまったく理解できない…。
そんなだから、香港映画の上映館に行くと、おばちゃんばかりで、ファン層が広がらないのでは。
『愛のカケヒキ』は、ストーリーが分かり易いし、お洒落っぽいし、
近年ドラマから中華エンタメに入る女性が好む台湾や台湾明星も出てくるから、
公開したら、少なくとも他の香港映画よりは広く一般にウケる気がする。
落ち込んでいる時に、これを観たら気分が上がりそうだから、私はDVDも欲しい。

あとは、やはり『アバディーン~香港仔』も観たーいっ!
大阪アジアン映画祭でお披露目されたままお蔵入りなんてもったいない。東京でも上映お願いいたします。

ケーキ3種(+テレビ雑記)

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先程、フジの『ザ・ノンフィクション』、放送開始20年記念特番、“私は誰?消えた父を探して”を観る。

今回の主人公は、シンガポールの実業家、70歳のジョン・ホー氏。
マレーシアに生まれ、自分は華人だと信じていたが、42歳の時、女手ひとつで育ててくれた母親から、
「父親は大阪出身の“カズオ”(姓も判っているが、番組では伏せている)」と打ち明けられる。
1945年の終戦で父親は日本へ帰国。その時すでに身籠っていた母親は、その後一人でホー氏を出産。
当時、日本人との関係がバレるのは、とても危険だったので、母親は父に関する全てを処分。
息子のホー氏にも長年何も語らずにいたが、真実を打ち明けると2年後に死亡。
今でも父親が存命だとは考えにくいが、ホー氏は、自分のルーツを知りたい、
もし日本に親族がいるなら会いたいという強い思いから、日本の友人の助けを借り、父親捜しを始める。

終戦までマレーシアに居た大阪出身者と判っていても、
ホー氏とその父親を繋ぐ証拠が何も残っていないため、個人情報の保護が壁となり、捜査は難航。
ありとあらゆる手を尽くし、幸い、番組の最後で、ついに父親の消息に辿り着く。
父親は案の定、1995年にすでに他界していたが、父の息子が2人、東京と横浜で暮らしていることが判明。
ホー氏の母親はいわゆる“現地妻”などではなく、
父親は戦後日本に戻ってから結婚し、これら2人の息子をもうけていた。
父親がどのような人かと思い続けてきたホー氏にとっては、ささやかでも、そんな事実も救いになったであろう。

…が、日本の息子2人にとっては、異国に異母兄がいたなんて寝耳に水。
どうやら、来週2015年11月22日(日曜)に放送の後編で、
異母兄弟の対面や、その他の真実が明らかになるらしい。

まさに“事実は小説より奇なり”。下手な映画より、よほどハラハラどきどきしながら画面を追い続けた。
戦争は、本当に普通の人の人生を狂わしてしまう。ホー氏のような人は、他にもまだまだ居ると思う。
日本に暮らす異母弟にしたって、戦後70年も経って、血の繋がった兄の存在を知るとは、どんな気持ちか。
これ、今年観たドキュメンタリー番組のベスト10に必ず入る。来週放送の後編も待ちきれない。





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残留孤児といえば、NHK BSプレミアムで毎週土曜に再放送中のドラマ『大地の子』
20年も前のドラマなので、映像の古臭さは否めないけれど、内容は今観ても秀逸。
当時やけに“それらしく”聞こえた主演男優・上川隆也の中国語だって、
今改めて耳にしたら、下手くそに感じるのかと思っていたら、なんのなんの、やはり“それらしい”。
まったく中国語を解さない人が、耳だけで覚え、あそこまで発音できるって、スゴくないか…?!
近年、出演作のプロモーションなどで中華圏へ赴く日本の芸能人も、
即席で覚えた中国語で「こんにちは!○○です。」などと簡単な挨拶をするが、お世辞にも上手とは言い難い。
『大地の子』で上川隆也の中国語を聞いていたら、
他の日本の芸能人は努力がまったく足りていないと思えてきた。
短い挨拶程度なら、必死に練習すれば、上川レベルにもっていけるハズ。もっと本気出して欲しいワ。


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あと、その上川隆也扮する陸一心の妻・江月梅を演じる蔣雯麗(ジアン・ウェンリー)。
当時はまだ20代半ば?童顔で今でも若々しい印象ではあるけれど、本当に若かった当時の姿は、
先日、東京・中国映画週間のために来日した姪っ子・馬思純(マー・スーチュン)を彷彿。
広い額、丸く小さな鼻、つぶらな瞳…、と二人はソックリ。叔母と姪でも、こんなに似るものなのですね~。

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蔣雯麗は『師父』で、馬思純は『左耳』で、
共に今週末発表される第52回金馬獎の最佳女配角(最優秀助演女優賞)にノミネートされている。
叔母&姪対決、どうなるでしょうか。





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“東京・中国映画週間”で、
昨晩、11月7日(土曜)放送の東京MX『明日、どこ行くの!?~明天去哪儿!?』を思い出した。
今回は、日本在住中国人の中から選出されたVIVI Girl Chinaとやら4人が、2人ずつに分かれ東京をレポート。
特に、先月開催された東京国際映画祭と東京・中国映画週間を取材する前半を興味深く観る。

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郝杰(ハオ・ジエ)監督作品『僕の桃色の夢』のために来日した俳優・包貝爾(バオ・ベイアル)が
(↑上の画像、右の坊主頭が包貝爾。左後方にはなぜか山村紅葉嬢。)、
日本は初めてかと尋ねられ、「いえ、母が20年ほど日本に住んでいますから」と答えていたのが意外。
最近、コミックリリーフとして重宝されている彼、子供の頃父親と離婚した母親は、日本在住だったのですね。
他にも番組のカメラは、私は行っていない中国映画週間のレセプションパーティーにも入っており、
日本語で<四季の歌>を歌う呂麗萍(リュウ・リーピン)なども少し流れた。

ちなみに、番組後半は、代官山にある香港カフェcondensedや、ハロウィンに湧く渋谷の街を取材。
11月24日(火曜)、26日(木曜)に再放送あり。



これからの放送では、11月19日(木曜)、BS TBSの『地球バス紀行』に注目。
“見て食べて!もっと台湾 穴場めぐり”と題した台湾特集。
B級グルメの他、アマチュアカメラマンの聖地になっている大稲埕(ダーダオチェン/だいどうてい)埠頭や、
世界6大猫スポットに選ばれた猴硐(ホウトン)などを紹介とのこと。
誰がどのような形で選んだ“世界6大猫スポット”なのだろうか。
むしろ、あとの5ヶ所がどこなのかが気になってきた。
台湾を紹介する番組は、近年非常に多く、内容がカブリまくっているので、
今回も本当に“穴場”が紹介されるとは考えにくいが、一応録画の予約。


翌、11月20日(金曜)は、NHK『妄想ニホン料理』
月一程度の頻度で不定期に放送されている番組で、今回のテーマは“ぼたん鍋”。
フランス高級リゾート地のシェフと、中国・雲南省の料理人が、
簡単なヒントを頼りに、独自のぼたん鍋を作るそう。


ちょっと硬いところでは、11月22日(日曜)のNHK BS1『ドキュメンタリーWAVE』
“中国 株暴落に揺れる人々~上海 広東路の秋”。
中国株式市場は、取り引きの約80%をも個人投資家が占めるらしい。
大手証券会社がある上海の中心部・広東路には“街頭株式サロン”と呼ばれる一角があり、
この夏、世界の金融市場を襲った同時株安で資産を失った個人投資家たちの多くもそこに集い、
その数は、週末には200~300人にものぼるという。
夫が遺したなけなしの蓄えを失い、株で取り戻そうとする女性、
本業そっちのけで株取引にのめり込む経営者、株取引に見切りをつけ、新たな投資先を探す富裕層など、
激動の夏を経験した個人投資家たちの秋を追った番組。




お菓子は、最近和菓子ばかりが続いたので、ケーキを3ツ。

★ ヴィタメール:サンバ

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大きさは、直径約5センチ、高さ約5.5センチ。
ミルクとビター、2種類のチョコレートムースを、スポンジ生地と共に重ねたケーキ。




ひとつめは、ヴィタメール(公式ケーキ)“サンバ”
ヴィタメールで人気の定番ケーキで、私も幾度となく食べている。

これ、要はチョコレートムースのケーキ。
充分に気泡が入った軽いムースなので、どんどん胃の中に入ってしまう。
チョコレートムースは、ミルクチョコ一種類だけでなく、ビターチョコが加わっているので、甘過ぎず、味に深みも。
トップのグラサージュ・ショコラも、少量ながら、いい仕事しております。
こういう濃厚な味が加わらないと、このケーキは軽過ぎるかも。

ケーキの下の部分は、ちょっと手の込んだ細工になっており、
細く切ったチョコレートを均等に並べ、縦ストライプの模様に。

特別珍しいケーキではないけれど、間違いのないお味。

★ キャトル・キャール:和栗のモンブラン

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大きさは、直径約5.5センチ、高さ約5センチ。
メレンゲに生クリームをのせ、その上からマロンクリームを絞り、
トップを、渋皮付きの栗半個とチョコレートで飾ったモンブラン。




続いて、キャトル・キャール(公式サイト)“和栗のモンブラン”
ここのモンブランは以前にも食べているが、それはこのような紙のケースに入った物ではなかった。
もしかしたら、和栗と、そうではない栗、2種類のモンブランを提供しているのかも知れない。

メレンゲ+生クリーム+マロンクリームという基本の3種類だけで構成された、
私が好きなタイプの伝統的なモンブラン。
宮崎県産の栗を使用したマロンクリームは、さっぱり上品な味。
メレンゲは、チョコレートでコーティングされ、サックサックの食感。
生クリームは甘さ控え目で、量も少な目。

まったく無駄の無いモンブランで、まぁ美味しいが、私には味がアッサリし過ぎで、やや物足りない。
和栗を使っているだけに、和菓子に近いモンブランにも感じる。
以前食べた同店の別のモンブランの方が、生クリームの量が多く、全体的な味も、もう少し濃厚で、
激甘党の私好みであった。

★ リュー・ド・パッシー:キャラメル・サレ

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大きさは、たいたい長さ8センチ×幅3センチ×高さ5センチ。
キャラメル風味のパン・ド・ジェンヌ生地とキャラメル・クリームを幾層にも重ねたケーキ。




最後は、リュー・ド・パッシー(公式ブログ)“キャラメル・サレ”
“Caramel Salé (キャラメル・サレ)”、つまり、塩キャラメルのケーキ。

主になっている“pain de Gênes(パン・ド・ジェンヌ)”は、“ジェノヴァのパン”の意で、
アーモンドプードルをたっぷり使った生地のこと。
よくあるスポンジ生地と少々異なり、適度にムッチリした弾力がある。

そこにはさまれているキャラメル・クリームはふんわりまろやか。
一方、ケーキ上部を覆っているキャラメルは、トロリと濃厚。
ゲランド産の岩塩の塩分と、キャラメル特有の焦げた苦味が効いていて、
味に甘いだけではない奥行きが。

見た目はやや地味だけれど、想像していたよりずっと美味しかった。
リュー・ド・パッシーは、キャラメルも人気商品なので、
そのキャラメルが存分に活かされたケーキなら、手堅い選択。

今回の3種類の中では、このキャラメル・サレが一番気に入った。

映画『FOUJITA -フジタ-』

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【2015年/日本・フランス/126min.】
1920年代、フランス・パリ。
27歳でこの地にやって来て早十年。
藤田嗣治が描く乳白色の肌の裸婦は評判で、日本人でありながら、パリでは引く手あまたの有名人。
モンパルナスのカフェ、ラ・ロトンドで、時代の先端をいく画家やモデルたちと集う華やかな日々。

1940年、第二次世界大戦を機に日本に帰国。
5番目の妻・君代と静かに暮らしながら描いているのは戦争協力画。
決戦美術展覧会では、自分の絵に打ち震える大衆を目の当たりにし、一種の感動をおぼえる。



小栗康平監督、『埋もれ木』(2005年)以来十年ぶりの新作を観賞。

今回改めて小栗康平監督のプロフィールを見たら、1945年生まれの70歳。
『泥の河』(1981年)で監督デビューし、この新作で6作目とは、手掛けた作品が非常に少ない。
一本一本が濃密なせいか、もっといっぱい撮っているような錯覚を抱いていた。




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この新作は、ズバリ、画家・藤田嗣治(1886-1968)の半生を描いた作品。

一般的な伝記映画は、ある人物の人生を履歴書のように追いながら紹介していくものだが、
小栗康平監督がそのような映画を撮るとは考えにくいと思っていたら、案の定違った。

藤田嗣治がフランスへ渡ったのは、
第一次世界大戦が始まる一年前、1913年(大正2年)、27歳の時だけれど、本作品の幕開けは1920年代。
下積み時代はふっ飛ばし、藤田嗣治はすでにパリの寵児。
2人目の妻フェルナンド・バレエには浮気されるが(あの相手は小柳正?)、
“ユキ”ことリュシー・バドゥと3度目の結婚をし、パリの有名人たちと交流。
描く絵も勿論高く評価され、後続の日本人たちも羨む存在。
このように、作品前半は、藤田嗣治のパリでの華やかな日々が描かれる。

その後藤田嗣治はユキとも別れ、マドレーヌ・ルクーを4人目の妻に迎えるも、1936年、彼女は急死。
1939年には第二次世界大戦が勃発し、1940年5月、陥落直前のパリを脱出。

…が、映画では、そこら辺はバッサリ端折られ、
舞台は華やかなパリから一気に戦時下の日本へ移る。
すでに白髪交じりの藤田嗣治の傍らには、5人目の妻・君代。
戦争協力画を描き、日本の画壇からも軍からも一目置かれる存在となっていく。
このように、作品後半は、敗戦の色濃い日本での日々が描かれる。

実際の藤田嗣治は、戦後、戦中戦争協力画を描いたことで批判され、日本を去って、再び渡仏。
フランス国籍も取得し、カトリックの洗礼を受け、“Léonard(レオナール)”の洗礼名を授かり、
2度と祖国の土を踏むことはなかったのだが、本作品ではそこまで描いていない。

藤田嗣治についてよく語られる
“フランスでリベラルに生きてきた画家が、なぜ一転して戦争協力画を手掛けたのか?”とか
“その後本人はその事実をどう感じていたのか?”といった事は、
含みを持たせ、観衆に想像の余地を残している。




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そんな藤田嗣治(1886-1968)を演じているのはオダギリジョー

藤田嗣治といえば、坊ちゃん刈りに丸眼鏡とチョビ髭がトレードマーク。
おまけに名前が、“レオナルド熊”を彷彿させる“レオナール・フジタ”だから、
私が子供の頃に抱いていたイメージは、著名な画家というより、コメディアンに近い変テコなおじさん。
その後も、容姿に関しては、“面白い”、“唯一無理”とは思っても、“素敵♪”と思ったことは無いので、
一応美男に分類されるオダジョーがこの藤田嗣治を演じると知った時は、ピンと来なかったが、
役の扮装をしている写真を見たら、笑っちゃうくらいモロ藤田。
オダジョーは美男でも個性派だから、案外ハマってしまうのですねぇー。
この扮装に耐え得る俳優が他に居るだろうか。考えたが、まったく思い付かない。

喋り方などは、私がイメージしていた藤田嗣治本人よりおっとり穏やか。
勿論実際どうだったかを知らないので、こういう藤田像も大いにアリ。



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妻・君代(1911-2009)に関しては、どういう人だったのか、あまり考えたことすら無かった。
当時の“25歳も若く美しい日本人妻”といったら、
いつも夫より3歩下がっている慎ましやかな女性を想像してしまいがちだけれど、
中谷美紀が表現する君代は、そういう感じではない。
遠目には着物が上品な純和風マダム。でも、近寄ると、眉を極細アーチに描いたモガ。
性格は、出しゃばりとまではいかないまでも、へつらわず、結構ズバズバと歯に衣着せぬ物言い。
確かに、フランスに20年暮らし、3人のフランス人女性と結婚歴のある男性が、
奥床しいだけの日本人女性に満足する訳がない、と中谷美紀版君代像に説得力を感じた。

ふたつの反物を手にどちらが良いかと悩んでいる君代に、
藤田嗣治が言う「両方買えばいい。女の人はお金をかけた方が美しくなる」という言葉からも、
すでにフランス的になっている彼の感性や、
求めているのが“当時の日本人らしい日本人女性”ではない事が感じられる。
そういう所にはうちの祖父が重なり、親近感が湧いた。



フランス人の前妻たち、マリー・クメール扮する2人目の妻フェルナンド・バレエ(1893-1974)も
アナ・ジラルド扮する3人目の妻“ユキ”ことリュシー・バドゥ(1903-1964)も実在の人物だが、
後で登場する君代の方が個性が強いせいか、私の中で印象が薄れてしまった。


アンジェル・ユモー扮する“キキ”ことアリス・プランは(1901-1953)は、少ない登場シーンでも記憶に残った。
多くの著名芸術家のモデルとなった“モンパルナスのキキ”は、
取り分け、愛人関係にあったマン・レイの写真で有名。

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日本でも、誰もが一度はこのキキを目にしたことがあるのではないだろうか。

この映画の中のキキは、交友関係の広い人気者には見えるけれど、
多くの芸術家たちにインスピレーションを与えたミューズならではの神秘性やカリスマ性は
あまり感じられないかも。気風のいいリーダー格のオバちゃんって感じ。





芸術家は純粋に作品で評価されると信じたいが、
実際には(特に欧米では)、作品以上に自己プロデュース力が重要になると感じることがしばしばある。
藤田嗣治は、故意か無意識かは不明だが、まさにそこに長けていた人に思える。
極東の島国からやって来た黄色人種は、下手すれば、フランス社会の中で見下されただろうに、
藤田嗣治はマイノリティであることを逆手にとって、自分を稀少で神秘的な存在に昇華させ、
自分自身と作品の評価を高める才が有ったように思う。
本作品を観ると、彼のそういう“時代や環境のニーズを捉え、適応していく”という才能は、
戦時下の日本でも発揮されていたのではないかと思えてくる。
当時の日本人には珍しく、外の世界を知っていた藤田嗣治が、いくら身内に軍関係者が多いからといって、
日本に帰国した途端、国粋主義に走ったとは考えにくく、当時の軍や国の空気を読み取り、
良くも悪くも柔軟に現実を受け入れ、供給したのが戦争協力画だったのかなぁ、と。
パリで描いていた東洋的で繊細な絵と、戦時下の日本で描いたヨーロッパ古典主義的な絵が
あまりにも異なるのも、“需要に合せた供給”と思ってしまう要素。

そのように片付けてしまうと、藤田嗣治は芸術家というより、まるで計算高い商人のようだが、
逆に、己の気持ちに正直に従ってしまう芸術家中の芸術家であったという、相反する想像も湧いてくる。
戦争協力画に関しても、もしかして、絵を描くことがあまりにも好き過ぎて、
「こんな時代でも絵を描き続けたい!」とか「これまで描いたことのないタイプの絵に挑戦したい!」という
芸術家としての純粋な欲求から描いた気もする。
実際の藤田嗣治の心の内はもはや知ることは出来ないが、
この映画の中の彼は、日本が行っている戦争をかなり冷めた目で見ているのだ。
「絵は所詮絵空事」とか、陸軍から与えられたマントを着ながら
「絵描きは放っておくとどんどん洗練されてきてしまうから、ゲスで悪趣味でも、たまにはこういうのが必要」
といった台詞が印象に残る。

また、「私は、十字架に張り付けにされたキリストを20年も見てきた」という台詞も意味深。
映画の最後の最後には、1966年、御年80の藤田嗣治がフレスコ画を手掛けた
フランス・ランスに現存するChapelle Foujita(シャペル・フジタ/フジタ礼拝堂)が映し出される。

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キリストの磔刑図の右側に描かれた群衆の中には藤田嗣治自身の姿。
2度の世界大戦体験や、戦争協力者の罪を被され、二度と戻ることのなかった日本に
どのような想いを抱きながら、晩年の藤田嗣治がこのフレスコ画を描いたのかと、想像が膨らむ。


…と、こうも色々書くと、
本作品が観ていてワクワクさせられるドラマティックな伝記映画だと勘違いする人が居るかも知れないけれど、
それを期待して観ると、恐らく激しく失望することでしょう。
人物にしても時代背景にしても、具体的な情報を事細かに観衆に与えてくれる親切な作品ではないので、
一般ウケするとは思えない。私だけ覚醒し、周囲は爆睡という状況は、『黒衣の刺客』以来。

でも、映像はほとんどの人が美しいと感じるだろうし、軽妙な台詞なども無いわけではない。
フランス人の前妻たちを絹やヴェルヴェットに例え、
最後に「私は布に例えると何かしら」と尋ねてきた君代に、
「今は物資が不足している時代だからね」と言葉を濁す藤田嗣治にはユーモアを感じた。

それにしても、後世で映画になるような人は、当たり前だが、やはりどこか人とは違う変わり者である。
藤田嗣治って、石川啄木や谷崎潤一郎と同じ年らしい。
あの時代の日本に、耳輪している男性なんて他に居る…?!


ちなみに、タイトルのスペルは、日本語のローマ字に倣った『FUJITA』ではなく、
フランス語の発音に寄せた『FOUJITA』。“U”じゃなくて“OU”。正しい『FOUJITA』を入力しているのに、
「『FUJITA』の検索結果を表示しています」なんて要らぬお節介ですわ。

アート・オブ・ブルガリ~130年にわたるイタリアの美の至宝

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<アート・オブ・ブルガリ~130年にわたるイタリアの美の至宝>
2015年9月から、東京国立博物館・表慶館で開催中の展覧会。

母が今になって「随分前に友達からもらった入場券が有るけれど、行かないわよねぇ?」と言って、
無料招待券を出してきた。どうやら捨てるつもりだったらしい。
捨てるくらいなら私が行く!と、そのチケットをもらい、会期終了間近の東博へ。
チケットが有るなら、もっと早く教えてくれれば良かったのに…。
つい先日、<始皇帝と大兵馬俑>を観に行ったばかりだったので、
短期間に2度も東博へ足を運ぶ羽目になってしまった。
(そして、せかっく上野まで来たのだからと、ブルガリ展の後にまたまた兵馬俑展を見学してしまった…。)

★ ブルガリ

BVLGARI(ブルガリ)は、ギリシャのエピルスで銀細工を生業にしていた
ソティリオ・ブルガリ(Sotirios Voulgaris/Σωτήριος Βούλγαρης 1857-1932 )が
1884年、ローマに創業した老舗宝飾メーカー。

企業名ブルガリは、創業者の名字から。
通常のイタリア語なら“BULGARI”と綴るはずだが、ロゴを“BVLGARI”と表記しているのは、
古いラテン語の表記では“U”が“V”にとって替わるため。

そんなブルガリ、日本で特に人気なのは、ジュエリーと腕時計だろうか。
他にも、香水や、バッグなどのレザーグッズが有ったり、ホテル経営にも乗り出し、
現在では世界中で幅広い事業を展開している。

★ 東京国立博物館・表慶館

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本日、出先から上野へ直行し、東京国立博物館に到着したのは正午頃。
近年、東博は平成館ばかり行っているので、表慶館は久し振り。
こちら、1900年(明治33年)、当時皇太子だった後の大正天皇の御成婚紀念に計画され、
1909年(明治42年)に開館した美術館。
ドーム屋根をもつネオ・バロック式のこの建物を設計したのは、
旧・東宮御所(現・迎賓館)などを手掛けた宮廷建築家の片山東熊(1854-1917)で、
1978年には重要文化財に指定されている。
平成の上野に居ることを忘れさせてくれる、明治末期の香り漂う建物は、ジュエリーの展覧会にぴったり。

★ アート・オブ・ブルガリ~130年にわたるイタリアの美の至宝

本展は、130年の歴史の中でブルガリが手掛けてきた貴重な名品を約250点集めて紹介する回顧展で、
2009年にローマでスタートし、パリ、北京、上海、サンフランシスコ、ヒューストンに続き、
東京は7番目の開催都市。

会場では、古い物から展示されているので、順路に沿って見学していくと、
ブルガリの歴史や、ジュエリーのトレンドが分るようになっている。




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Room0
エントランスをくぐるとまず迎えてくれるのは、ブルガリ家の故郷、ギリシャはエピルスの民族衣装と
メーカーのルーツである銀細工の数々で、全て1870年代から1890年代に制作されたもの。
エスニック感ムンムンで、現代のブルガリとは大層異なる。




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Room1
1920年代から1960年代初頭のコレクション。
20年代、30年代は、プラチナとダイアモンドを使用したアールデコ調で、
これらもまた現代のブルガリとは似ても似つかないデザイン。
40年代は戦争の影響もあり、宝石は控えめで、地金を多用。
画像は小さなイヴニングバッグ(1955年)。宝石キラキラな物に比べたら、質素かも知れないが、
ダイアモンドをあしらったゴールドのバッグなんて、今では考えられない贅沢な代物。
このバッグを溶かしたら、一体金歯が何本作れるんだ…?!




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1960年代のコレクション。
この頃からイタリアらしいカラーストーンを多用。色の合わせ方がインド風にも見える物も多い。
まかり間違って、この展示室からどれかひとつタダでくれると言われたら、
私はトルコ石のシリーズからチョイスするつもり。




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Room3
1960年代末から1970年代のコレクション。
蛇を意味する“Serpenti セルペンティ”シリーズがいっぱい。
この夏、東博・平成館で開催された<クレオパトラとエジプトの王妃展>でもローマ時代の蛇型ブレスを見た。
蛇は、あの時代から、イタリアに脈々と受け継がれているデザインなのだ。
現在、“ブルガリのセルペンティ”と聞き、真っ先に思い浮かべるのは、地金のシンプルな物だけれど、
昔はゴージャスで、宝石やエナメルで彩られている物が多い。
ゴージャス蛇がパカッと口を開けると、中が時計の文字盤になっているのも面白い。




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Room4
この展示室で一番気になったのは、日本や東洋を意識した品々。
珊瑚、オニキス、翡翠、白蝶貝などを使うことで、オリエンタルな雰囲気を出している。
富士山と松の木をデザインしたブローチなんて、日本で作ったら、民芸品になってしまいそう…。
(富士山がダイアのパヴェ、松の葉がエメラルドという豪華仕様。)
右の画像は、古い物ではなく、今年、東京のこの展覧会のためにデザインされたロングネックレス。
日本らしい銀杏の葉をモチーフにし、そこに東洋的な翡翠や珊瑚の他、
クリソプレーズ、スピネル、ダイアモンド等をあしらっている。予価38610000円也。




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時計のコレクション。
驚いたのは、“ブルガリ・ローマ”と命名された1975年に発表されたレザー&麻のストラップを付けた腕時計。
これ、なんとデジタル時計!あの時代、高級宝飾商ブルガリまでがデジタル時計を作っていたとは驚き。



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1980年代から1990年代のコレクション。
なんか見覚えのある“これぞブルガリ!”なコレクション。

★ エリザベス・テイラー ルーム

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最後は、ブルガリを愛用した女優、エリザベス・テイラー(1932-2011)のコレクションを集めた展示。
本展覧会のポスターにもなっているサファイアのネックレスもここに。
横から見ると、山のように盛り上がっており、想像していたよりかなり大きい。



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あと、ここには、ジュエリーだけでなく、映画『クレオパトラ』(1963年)で身に付けた衣装や、
1964年、リチャード・バートンとの結婚式で着た服も展示。
エリザベス・テイラーには豊満なイメージを抱いていたが、
服を見ると、ウエストの辺りとか、かなりホッソリしている。
(正直に言って、“豊満”という以上に、“ズングリムックリ”という印象さえ抱いていたのは、
私の中で、おばあさんになってからのエリザベス・テイラーばかりが記憶されていたからかも知れない。)

映画の衣装は、所詮衣装だからかも知れないが、刺繍などは案外雑(笑)。
中国人に依頼したら、もっと緻密に刺繍するのに、…と思ってしまった。

★ その他

この展覧会では、要所要所に設置されたモニターで、ブランドや時代、ジュエリー等の解説がされており、
同時にそこに、代わる代わるブルガリのジュエリーを身に付けた王侯貴族や女優などが映し出されている。
近年の写真だと、映画祭のようなイベントで撮られたハリウッド女優が多い。
アジア人はほぼ華人で、私が気付いたものだと、大陸の江一燕(ジャン・イーイェン)、王麗坤(ワン・リークン)、
董璇(ドン・シュアン)、周韵(チョウ・ユン)、あと台湾の林心如(ルビー・リン)など。



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(↑)こちらの画像は、夫・姜文(チアン・ウェン)の監督作『陽もまた昇る』をひっさげ、
2007年カンヌ国際映画祭へ参加した時の周韵。
このダイアモンドとエメラルドの豪華なチョーカー(1989年製)も展示されていた(…ような気がする、不確か)。

ブルガリと限らず高級ジュエラーが、映画祭などで女優に商品を提供するのは、
広告の意味が大きいだろうから、新作を中心に貸し出しているのかと思っていたが、
今回の展覧会を見ていたら、過去のコレクションからかなり重要なアイテムが貸し出されている事が判った。


日本人で写真が出ていたのは、私が見た限り、宮沢りえと夏帆くらい。

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今年、出演作『海街diary』でカンヌに初参加した夏帆が(→参照
イヴ・サンローランのブルーのガウンに合わせていたのが
ブルガリのタクティカットのイヤリングとブレスだったそう。

日本は、ジュエリーが売れる市場ではないし、
そもそも女優が着飾って国際的なイベントに出席する機会も少ないので、
高級ジュエラーとはどうしても縁遠いくなってしまうのですよねぇ…、残念だけれど。

★ オマケ

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せっかく上野まで足を運んだので、どら焼きで有名なうさぎや(公式サイト)に寄り道。


目的は、(↓)こちら。

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かねてから一度食べてみたいと思っていた、“どら餡ソフト au lait”。
北海道ノースプレインファームの牛乳ソフトクリームに、うさぎやがどら焼きに使っている餡子を混ぜた物。
店内のショウケースの所で注文すると、店員さんが奥に入って、作ってもってきてくれる。
サッパリしたミルクのソフトクリームに餡子が合っていて美味。
食べ進めていったら、底の方に餡子が入っていて、得した気分。
これで300円は良心的。




顧客向け内覧会のような商品プロモーション的展覧会だったらイヤだなぁ~と思っていたのだが、
ちゃんと芸術的価値が感じられる展覧会で、とても良かった。
日本は到底かなわないヨーロッパの宝飾文化にタメ息の連続。
日本だと、例えばミキモトのような老舗の真珠商がジュエリーにも幅を広げているけれど、
歴史がぜんぜん違うし、市場に需要が無いから、成長のしようもない。
高級宝飾が売れなくなってきているのは、ヨーロッパも同じだが、
今でも、石のセッティングひとつ見ても、レベル違いで、
日本がこの先百年頑張っても絶対に追いつけない分野。
仮にジュエリーにあまり興味が無かったとしても(…私は大アリだが)、小さな芸術品として観賞の価値あり。
現在に至るまでの130年の中で、流行の流れが分るのも面白い。

人の入りは、お隣の<始皇帝と大兵馬俑>展より、ずっと少ない。
しかし、2~3人のお友達グループで来る女性が多く、
お喋りしながらショウケースの前を独占し、なかなかどいてくれないから、多少イラッとさせられることも。
結局2回も見学してしまった、その<始皇帝と大兵馬俑>については、また後日。



◆◇◆ アート・オブ・ブルガリ~130年にわたるイタリアの美の至宝 ◆◇◆
東京国立博物館・表慶館

会期:2015年9月8日(火曜)~11月29日(日曜)

9:30~17:00 (基本的に月曜)

勝手に金馬獎ファッションチェック2015♪

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昨日、2015年11月21日(土曜)、台北の國父紀念館で
“台湾版アカデミー賞”こと第52回金馬獎 Golden Horse Awardsの授賞式が開催。

私は、イベントのライヴ配信をしているFriday影音で、レッドカーペットの途中から観賞。
スリーズしないし、画質も良く、何のストレスも感じずに観ていたのに、
夜10時(現地時間9時)を過ぎた頃、いきなりブチッ!と停止。
新浪の中継に乗り換えたが、こちらは画面が動いている時の方が珍しく、
結局後半部分はほとんど観られなかった。



前半は問題ナシ。
今年の司会は、黃子佼(ミッキー・ホアン)と林志玲(リン・チーリン)の身長差コンビ。
しじゅーを超え、十年ぶりに大役を任された林志玲からは、捨て身の覚悟が感じられた。

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まずは、今年大ヒットした台湾映画『我的少女時代~Our Times』の主人公・林真心を真似た
女学生ルックで登場し、小芝居。
これだけでも充分頑張りを感じるが、さらに、かつて林志玲と交際が噂され、
『我的少女時代』では林真心のお相手・徐太宇の“その後”を演じた言承旭(ジェリー・イェン)が
舞台背後に大きく映し出されると、はにかみながら「好久不見…(久し振り)」と自虐ギャグ。
さらに、自分よりずーっとプチサイズの共同司会者・黃子佼を“公主抱(お姫様だっこ)”してあげる場面なども。
アラフォー林志玲、吹っ切れております。



肝心の受賞結果は、ここには、主要中の主要部門のみを。
最佳劇情片(最優秀作品賞)
『黒衣の刺客』

最佳導演(最優秀監督賞)
侯孝賢(ホウ・シャオシェン):『黒衣の刺客』

最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)
賈樟柯(ジャ・ジャンクー):『山河故人~Mountains May Depart』

最佳男主角(最優秀男優賞)
馮小剛(フォン・シャオガン):『老炮兒~Mr. Six』

最佳女主角(最優秀女優賞)
林嘉欣(カリーナ・ラム):『百日草~百日告別 Zinnia Flower』

最佳男配角(最優秀助演男優賞)
白只(バイジー):『踏血尋梅~Port of Call 』

最佳女配角(最優秀助演女優賞)
呂雪鳳(リュイ・シュエフォン):『酔生夢死~醉.生夢死 Thanatos, Drunk』

最佳新演員(最優秀新人賞)
李鴻其(リー・ホンチー):『酔生夢死~醉.生夢死 Thanatos, Drunk』


今回の金馬獎では、最優秀作品賞にノミネートされていた5本の内、
受賞に輝いた『黒衣の刺客』は日本公開済み、
『酔生夢死~醉.生夢死』、『タルロ~塔洛 Tharlo』、『山河故人~Mountains May Depart』の3本は、
現在開催中の第16回東京フィルメックスで上映。
つまり、『踏血尋梅~Port of Call 』を除く4本が日本でも観賞可能なのが嬉しい。



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受賞争いは、なんとなく想像していた通り、『黒衣の刺客』と『酔生夢死~醉.生夢死』のせめぎ合い。
結局、『黒衣の刺客』が、作品賞、監督賞、衣装デザイン賞、撮影賞、音響効果賞の5部門に輝き、
本年度最多受賞作品に。

意外だったのは、大陸の著名な映画監督・馮小剛(フォン・シャオガン)が、強力なライバルたちを押しのけ、
監督としてではなく、俳優として、主演男優賞を受賞したこと。
馮小剛はこれまでもに演技経験があり、確かに上手いのだが、
私が観たのは脇役としてチラッと出演するものばかりであった。



賞レース以外では、明星たちのお召し物チェックも私の楽しみ。
この晩の台北はあいにくの雨だったらしく、ギャラリーのファンも明星本人たちも大変だったみたい。
以下、気になったものをピックアップ。

★ 男子の部

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超(ダン・チャオ)

まずは大陸勢。『烈日灼心~The Dead End』で主演男優賞にノミネート。
初参戦の金馬に選んだのはエルメネジルド・ゼニアのスーツとピアジェの腕時計。



陳建斌(チェン・ジェンビン)

その超の奥方・孫儷(スン・リー)を清代で娶っていた雍正帝(『宮廷の諍い女』)陳建斌は昨年の金馬影帝。
どこの物かは不明だが、エンペラーというより刑事の風情。
…と思ってしまうのは、『西部警察』や渡哲也を彷彿させるからか。



董子健(トン・ ツージエン)

『少年バビロン~少年巴比倫』と『少年班』の2作品をひきさげ、
先月東京国際映画祭に来たばかりの董子健が、今度は『蘭』で主演男優賞にノミネートされ金馬に。
東京に来た時は、七五三を祝う男児みたいだったのに、金馬では雰囲気がぜんぜん違う!
着ているのは日本のブランドThe Viridi Anne(ザ・ヴィリディアン)。
日本で一体彼の身に何が起きたのか?!故郷に残したお母ちゃんが泣いていないか心配(笑)。



王大陸(ワン・ダールー)

名前は“大陸”でも、地元・台湾出身。今年『我的少女時代』でいきなり大ブレイク。
この晩、レッドカーペットでの声援も、
先にブレイクしたものの、例の大麻事件で立場が完全に逆転してしまった親友・柯震東(コー・チェンドン)より、
明らかに大きかったと言われている。
そんな乗りに乗っている王大陸は、ディオール・オムのスーツにティファニーの腕時計で。



張震(チャン・チェン)

私の一番のお目当ては張震♪この日は、ジャケットもパンツもネクタイもみんな水玉のジヴァンシー。
スタイリッシュな張震は、何を着てもお似合い。
こんな水玉尽くしに違和感が無いのは、アジア中どこを探しても、張震と草間彌生くらい。
フツーの男性が着たら、パジャマか全身水疱瘡に見えてしまうから避けた方が無難。



郭富城(アーロン・クォック)

香港からは、『踏血尋梅』で主演男優賞にノミネートされていた郭富城。
受賞は逃したものの、レッドカーペットでの凄まじい声援に、未だ衰えぬ人気を思い知らされる。
今回のお召し物は、郭富城にしては庶民的なJ.クルーのスーツに、
長年イメージキャラクターを務めているロンジンの腕時計を合わせて。



任達華(サイモン・ヤム)

同じ香港明星でも、正統派の装いをする郭富城と異なり、
任達華は遊び心のあるアン・ドゥムルメステールをチョイス。
それでも普段よりはおとなし目に感じたが、足元に目をやったら、ブーツが真っ赤。
相変わらずのちょい悪っぷりに、ホッとした私であった。



妻夫木聡

日本からは、『黒衣の刺客』に出演した妻夫木聡。
他の明星は、レッドカーペットを歩き終えると、服のブランドを聞かれるのだけれど、
日本語対応の記者が居なかったせいか、ブッキーは服に関して答えておらず、どこの物か不明。
現地では「サラリーマン風でセレモニーの華やかさに欠ける」とも評されてしまっているが、
確かに無難にまとめ過ぎている気が。かといって、あまりギンギンな服はに合わないだろうし、難しいところ。

服装はともかく、お人柄は好評。
金馬でのブッキーはVIP待遇で、主演男優賞という最も注目される賞の一つでプレゼンターに抜擢。
日本語の通訳を務めた林志玲からも、「笑顔が爽やかで台湾の女性は皆好き」とお褒めの言葉。
(↓)こちら、その時の映像。



ブッキー、ノミニーの名前を中国語で呼んでおります。
彼が一人呼び終えるごとに、私は手に汗握って、次を待機。
ブッキーがちゃんと言えるか、多分本人以上にハラハラしていたわぁ~。


あと、(↓)こちらは、張震の微博から。

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ブッキーは、初めての金馬や仲間との再会を、楽しまれたことでしょう。

★ 女子の部 その①~ボリューム系

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林志玲(リン・チーリン)

まずは、今年の金馬の司会者・林志玲。
レッドカーペットで着ていたのは、
ハリウッド・セレブや石油王にも人気のレバノン出身のデザイナー、ズハイル・ムラドのガウン。
夜空を彩る花火のようで、これはこれで綺麗なのだけれど、
林志玲は、この晩、多分6着くらい衣装替えしており、実は私はこのレッドカーペットの物より、
イベントの間に着ていたラルフ&ルッソのペール・ピンクのガウンの方がずっと好き。



林嘉欣(カリーナ・ラム)

『百日草~百日告別』の演技で本年度の影后の座に就いた林嘉欣は
台湾の新鋭デザイナーApujan 朴に、デビアスのジュエリーを。
金馬に出席ということで、台湾に敬意を示し、台湾デザイナーを選んだのかも知れないが、うーん…。

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このデザインだと、胸が貧乳なのにタレ気味、しかも左右に広がって見えてしまう上、下半身がボワボワ。
ここまで女優を不格好に見せる服も珍しい。
林嘉欣は、受賞の時に着ていたイヴ・サンローランのシンプルなラインのガウンの方が似合っていた。



桂綸鎂(グイ・ルンメイ)

ショートヘアがお似合いの桂綸鎂は、ディオールで。
当ブログに毎度お越しの方はお気付きでしょうが…

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桂綸鎂は、綾瀬はるかに比べ、ずっと細いので、“起き上がり小法師”感は薄れるけれど、
だからと言って、素敵!ってほどでもない。
会場内で着ていたヴァレンティノの方がずっと桂綸鎂に似合っていた。

★ 女子の部 その②~スタイルに自信がないと着れない高露出度系

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許瑋(ティファニー・シュー)

阮經天(イーサン・ルアン)との破局で、何かと話題の許瑋は、
任達華にエスコートされ、レッドカーペットに登場。
正面から見ると、襟元が詰まっていて、ストイックな印象さえあるが、
後方から見るとガバッと背中の開いたセクシーなガウンは、台湾の星・吳季剛(ジェイソン・ウー)のデザイン。
合せているのは、カルティエのジュエリー。
スタイルの良い許瑋に合っていて、“360度死角ナシ”と讃えられている。



楊千霈(ヤン・チエンペイ)

レッドカーペットでの司会を務めた楊千霈は、ウェディングドレスを多く扱う台湾ブランドMS. IDEASで。
この背中の開きっぷりは、許瑋超え。
素材はヴェルヴェットだが、背中から脇腹まで大胆に開いており、温かなような冷えるような…。



宋芸樺(ヴィヴィアン・ソン)

大ヒット作『我的少女時代』で、主演女優賞にノミネート。
映画のスチールではドン臭い彼女も、
この日は、ボデイラインがハッキリ出るアレキサンダー・マックイーンのペールブルーのガウンを見にまとい、
オトナの女の雰囲気。ペッタリ撫で付けた髪もお似合い。
授賞式では、田馥甄(ヒビ・ティエン)が歌う映画の主題歌<小幸福>を披露するシーンも。



舒淇(スー・チー)

『黒衣の刺客』で主演女優賞にノミネートされた舒淇は、今年の金馬一番の大物女優。
お召し物は、上半身の生地使用量が非常に少なく、かつ素材がスケスケという
なんとも大胆なアトリエ・ヴェルサーチのお品。
この日は雨だったので、シフォンの裾が水分を吸い、ペッタリしてしまったのが残念。

★ 女子の部 その③~ブルー/ブラック系

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張艾嘉(シルヴィア・チャン)

監督だのプロデューサーだのマルチな才女・張艾嘉は、『華麗上班族~Office』で主演女優賞にノミネート。
この日は、鮮やかなロイヤル・ブルーのディオールに、ティファニーのジュエリーを合わせて登場。
これで御年62とは信じ難い…!
なお、張艾嘉は、今年の東京フィルメックスの審査員でもある。もう来日している?ホントに多忙ですね。



趙濤(チャオ・タオ)

夫・賈樟柯の監督作品『山河故人』で主演女優賞にノミネートされた趙濤。
彼女個人の受賞は叶わなかったが、御主人はオリジナル脚本賞を受賞。
お召し物は、紫がかったブルーのTADASHI SHOJI。
近年、趙濤のTADASHI SHOJI着用率は非常に高い。国際映画祭などでは、大抵着ている。



謝欣穎(ニッキー・シエ)

『黒衣の刺客』に出演している謝欣穎は、ヴェラ・ウォンのシンプルなガウンを着て、
大きく開いた胸元にはブルガリの大ぶりペンダント。
横から見たら、すごーく痩せていて驚いた。もう少し太ってもいいかも、って感じであった。



林心如(ルビー・リン)

林心如は、蘇有朋と撮影賞のプレゼンターを担当。
詰まった丸首に半袖、ストンと落ちるシンプルなシルエットで、ウエストに細ベルト。
このヴァレンティノのガウン、超可愛い。合せているのは、ブルガリのジュエリー。
東博で開催中の<アート・オブ・ブルガリ>展でも、彼女の写真を見たので、
恐らく台湾地区でブルガリのイメージキャラクターをしているのであろう。
ちなみに、桂綸鎂が、会場内で着ていたヴァレンティノも、
林心如のこれに似た雰囲気の物で、やはり素敵であった。

★ 女子の部 その④~柄物/カラー系

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馬思純(マー・スーチュン)

蘇有朋(アレック・スー)初監督作品『ひだりみみ~左耳』が上映される東京・中国映画週間のために、
先日来日したばかりの清純可憐な馬思純が、その映画で助演女優賞にノミネートされ、
シャネルの新作とティファニーのジュエリーを身に付け、今度は金馬に。
サバやサンマの青魚に見紛うほどキラキラ輝いております。
同部門に同じくノミネートされた叔母の蔣雯麗(ジャン・ウェンリー)は欠席であった。



簡嫚書(ジエン・マンシュー)

こちらも清純派の簡嫚書。
いや、でも、なんか大人っぽく綺麗になっていて、一瞬誰だか分らなかった。
普段はラフな印象の彼女も、この日はフォークロアな雰囲気のランヴァンのシフォンのガウンに
ハリー・ウィンストンのジュエリーを合わせて、なかなか素敵であった。



阿洛.卡力亭.巴奇辣

鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督作品『太陽的孩子~Wawa No Cidal』に出演し、
新人俳優賞にノミネートされた阿美(アミ)族のシンガーソングライター。
エキゾチックな濃いぃお顔は、大胆なデザインの真っ赤なお召し物にも負けていない。



金燕玲(エレイン・ジン)

ベテラ金燕玲は、『踏血尋梅』で助演女優賞にノミネート。
レッドカーペットでは周囲の声がうるさく、インタヴュの内容が聞き取れなかったのだが、
このお召し物は、お友達のデザインと説明していたような…。
ハリと光沢のあるシルクシャンタンで、色は赤と黒の大胆な組み合わせ。
私もいつかは手本にしたい熟女ならではのお洒落。





金馬獎は、日本には無いタイプの華やかな映画の祭典で、観ていてワクワクするし、
一大中華圏のパワーをも感じてしまう。
今後観る映画の参考になるのは勿論のこと、明星たちのお召し物も目に楽しい。
今回挙げた中で、一番のお気に入りは、林心如のヴァレンティノかしら。
いつもは“ガーリーおばさん”とコケにしている林心如だが、今回の装いは素直に素敵だと思った。
あと、いつもより“攻め”に出た簡嫚書が、意外と良い。
逆にワースト・ドレッサーは、主演女優賞の栄誉を打ち消すようで申し訳ないが林嘉欣。
皆さまは、どの明星の装いがお気に召したでしょうか。

来年の金馬獎も楽しみにしているので、もっとスムーズに観られるネット中継を希望いたします。

『最愛の子』陳可辛監督Q&A

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第16回東京フィルメックスで、特別招待作品として上映の『最愛の子~親愛的 Dearest』を観賞。

とても観たい作品ではあるが、みすみす2016年1月に一般劇場公開が決定済み。
フィルメックスでは、公開未定の作品を選びたいところだけれど、
せっかく確実に行けると分っている祝日の上映だったので、チケットを入手。
その後、(まぁ、なんとなく予想はしていたが…)陳可辛(ピーター・チャン)監督の来日が発表されたので、
チケット入手も無駄ではなかったと納得。

私がナマで陳可辛監督のお話を聞くのは、
勿論その9年の間にも、監督作品は発表されている訳だが、
日本の景気後退と共に、中華電影関連のイベントが激減し、監督や俳優をナマで拝める機会は珍しくなった。
それどころか、そもそも中華電影の日本公開自体が減ったので、
東京・中国映画週間で上映されただけで、日本ではお蔵入り状態。
以前だったら、陳可辛監督作品は、比較的日本で公開され易かったのにねぇ…。


とにかく、そんなわけで、有楽町朝日ホールへ行ってきた。
映画の詳細はまた後日として、ここには予定通り上映終了後に行われた陳可辛監督のQ&Aについて。

★ 映画『最愛の子』 陳可辛監督Q&A

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司会進行役は、フィルメックスのプログラムディレクター市山尚三、通訳は周サン。
周サンだから広東語かと思いきや、陳可辛監督が英語で喋りだし、結局最後まで英語であった。
もしかして何の前触れもなく英語だったとか…?周サンがやりにくそうに見えたので、そう思った。
英語だと、監督の言っている事がダイレクトに分るから、それはそれで有り難いけれど、
例えチンプンカンプンでも、せっかくなので、たまには広東語の響きに触れたいという欲求もあり、
どちらが良いかビミョー…。


今回のQ&Aは、市山尚三氏と陳可辛監督とのプロローグ的なやり取りはほとんど無く、
いきなり会場からの質問を受け付けという形式。
…ところが、陳可辛監督のトークがやたら長いため、質問に受け答えするというより、
監督の独演会に近い状態であった。
なので、その中から、気になったお言葉を以下にいくつかピックアップしておく。



この作品は、実話が元になっています。
テレビで、誘拐の報道を観た時、力強いものを感じて、この題材で映画を撮ろうと思いました。


誘拐()には、背後に、貧富の差や地方の遅れた教育等、現在の中国が抱える様々な問題があります。
過去30年行われてきた一人っ子政策もそうです。
女児が生まれてしまうと、男児を欲しがる傾向があったり、人手を欲しがったりします。
中国では年間約20万人もの子供が誘拐され、一万元程度で買われています。


誘拐された子供は、養母のもとで育ち、やがて実の親に見付けられます。
そして、その実の親元に戻ることになりますが、
養母に慣れている子供にとっては、また新たに誘拐されるようなもので、辛い経験です。


私くらいの年齢になると、物事を一方からだけではなく、両方向から見るようになります。
子供を誘拐された親は大変ですが、養母も悪い人ではない。むしろ、とても良い母親です。
子供を見掛け、バスから降りてきた養母を、寄ってたかって叩く人々は、まるでモンスターです。


メディアを通して社会問題を発信しても、人々はなかなか関心をもってくれません。
映画という形で観てもらうことで、人々が問題に気付き、その問題が注目されるようになることがあります。


この映画の中の趙薇(ヴィッキー・チャオ)はノーメイクです。
化粧をしないで映画に出るのは、彼女にとって初めてでした。ファンデーションすら塗っていません。


現在の中国は良い俳優が揃っています。
伝統的な訓練を受け、スキルがあり、それでいて著名というバランスの俳優が、どの世代にも居ます。


この年になると、純粋な娯楽作品は、もう撮りたくなくなります。
人生を描きながら、娯楽性も加味した作品をと考えています。


中国には、戸籍の無い子供が8百万人()も居ます。
そういうテーマも撮りたいです。


次回作では、テニスプレイヤーの李娜(リー・ナ)を取り上げます。
中国も日本も、個人の社会ではなく、集団の価値観が大切にされます。
でも、1982年生まれの李娜は、“我々”ではなく“私”で考える個人主義です。
彼女のような一人っ子世代、“80後”の若い世代は違います。
『李娜』は、2017年に発表予定です。
それまで、また長らく日本へ来られませんね。



補足。
:Q&Aでは、全て“養子にする(adopt)”、“養子(adoption)”に訳されていたが、
陳可辛監督が繰り返していたのは、“abduct”、“abduction”だったので、私はここに“誘拐”と記しておく。

:確か“eight million”と聞いたはずなので、ここには“8百万”としたが、
Q&Aでは“8千万”と訳されていた。“eighty million”だったのかしら…?
何語でも私の耳は数字向きではないので、自信が無い。要確認。
ただ、いくら中国が問題山積みでも、人口13億人で、戸籍の無い子が8千万人は、
いくらなんでも、いささか多過ぎる気が…。



このQ&Aで質問数が少なかったのは、陳可辛監督の話が長いということもあるが、
質問者が質問以上に個人の感想を長く述べ過ぎたきらいも無きにしも非ず。
いきなり質問するのも失礼だから、取り敢えず感想を伝えなくては、という気持ちもよく分るけれど、
ほどほどにして、より多くの質問をサクサク受けてくれた方が、話は広がり易いかもね。

『ラヴソング』からの陳可辛監督作品ファンで、作中の張曼玉(マギー・チャン)も良かったという女性が
「この映画で、(張曼玉のように)ヴィッキー・チャオもこれから有名になると思った」と述べ、
会場がドヨメいた事もやたら記憶に残った。
映画祭というのは、自分では普段選ばない未知の映画と出逢う機会でもあり、
会場に居るのは、必ずしもコアな中華電影マニアだけではないから、そういう感想が出ても不思議ではない。
ただ、そのような感想は手短に済ませ、サッサと質問に移っていただきたかった。

でも、まぁ、興味のあった作品を観て、さらに陳可辛監督直々のお話も聞け、全体的には満足。
馮小剛(フォン・シャオガン)監督などもそうだけれど、ずっと娯楽作品できた監督も、
ある程度の年齢に達すると、人生とか社会を考える、
重厚感のある作品にシフトしていきたくなるものなのですね。
新作『李娜』は、話を聞いただけだと、今回の『最愛の子』に比べ、
社会問題を提起するような作品にはなりにくいような気がするが、どうなのだろう。。
また、まだ30代前半で、多くの人々に知られている李娜を、どの女優が演じるのかも、ちょっと気になる。


映画『最愛の子』は、2016年1月16日、シネスイッチ銀座他で公開とのこと。
詳細は、また後日。

和菓子3種(+さよなら、原節子)

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今朝のニュースで、女優の原節子(1920-2015)が、
今年9月5日、神奈川県内の病院ですでに亡くなっていたことを知る。享年95歳。
もしかして、もう百歳を超えているかも知れないと想像していたので、
年齢を聞き、案外と若いとさえ思ってしまった。どちらにしても、平均寿命を悠々越える大往生である。
女優としての現役時代をリアルタイムでは知らない私だけれど、
学生時代好んで鑑賞していた小津安二郎監督作品で親しんでいたので、なんだか淋しい。

原節子の女優としての活動期間は約28年。
1963年、小津安二郎監督の葬儀に現れたのを最後にすっかり雲隠れし、50年以上。
それでも、こうして大きく報道されるのだから、まさに“伝説の女優”。

オードリー・ヘップバーンのように、高齢になっても表舞台に出たり、
自分の知名度を生かし、ボランティア活動を続ける女優さんも、勿論素晴らしいとは思うけれど、
年をとった姿は一切見せない!というマレーネ・ディートリッヒや原節子のような女優を
現代では珍しい“ホンモノの銀幕女優”、“伝説の女優”と、カッコよく思ってしまう。
もう随分前になるが、神奈川の自宅に居る原節子を隠し撮りした週刊誌があったように記憶しているが、
本人の思いを打ち砕くような強引な取材に、怒りさえ感じた。

原節子さま、やすらかに。御冥福をお祈りいたします。



原節子逝去のニュースを知った日のお菓子は、洋菓子よりやはり和菓子でしょう。
ここには3種類の和菓子を。

★ 井上耕養庵:若狭葛ようかん

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大きさは、だいたい12センチ×17センチ×厚さ2センチ。
小豆を葛でかためた羊羹。




バラク・オバマのアメリカ大統領就任で、俄然注目を集めるようになった福井県小浜市の和菓子屋さん、
井上耕養庵(公式サイト)“若狭葛ようかん”

私は福井県小浜市と縁もゆかりも無いどころか、
実のところ、オバマが大統領になるまで小浜市という街の名前さえ聞いたことがなかった…。
このお菓子を食べるのも初めて。
なんでも、秋元康と結婚して芸能界を引退した元おにゃんこクラブの麻巳子夫人が福井県小浜市で、
この“若狭葛ようかん”や“丁稚ようかん”といった井上耕養庵をお菓子を好物だと
しばしばメディアで発言しているのだとか。

葛と言うと、奈良県の吉野葛を真っ先に思い浮かべるけれど、こちらは地元・福井の若狭葛を使用。
産地によりどのような違いがあるのか、正直なところ分らないが、商品に付いていた説明書によると、
江戸時代の文人・頼山陽(らい・さんよう)も、母親の病気見舞いに熊川葛を送り、そこに添えた手紙に
「熊川は吉野より よほど上品にて 調理の功これあり」と記しているのだと。

使用している葛が熊川だからかどうかは不明だけれど、プルンプルン…!
とても柔らかで滑らかだが、適度な弾力もあり。

甘さはかなり控えめで、小豆の風味を生かしたさっぱり味。
このお菓子を簡単に説明するなら、甘さの少ない薄ーいおしるこを葛で固めた感じ。
…なんて表現してしまうと、不味そうだけれど、ちゃんと美味です。

まぁ、要は、よく“あん豆腐”といった名前で売られている一種の水羊羹。
本来夏向きのお菓子なのかも知れないけれど、
秋冬でも、食後にひと口何か甘味が欲しい時に、ノド越しがよく、サッパリしていて最適。

★ 紀の国屋:芋金時

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大きさは、直径約4センチ。
金時芋を少量の寒天と砂糖で煮詰めた芋羊羹。




こちらはもっと今の季節に相応しいお菓子で、紀の国屋(公式サイト)“芋金時”という商品。

要は芋羊羹なのだが、茶巾型にまとめられている。
中に何か隠れているのかと思い、割ってみたら、中まで全部芋羊羹であった。
甘さは控えめで、お芋本来の味と甘みがほんのり。

私には、和菓子としてやや物足りないが、
特別甘党ではない人が、何かちょっと口淋しい時に、お芋の自然な甘さで胃を充たすのには良さそう。

★ 赤坂青野:赤坂もち

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容器の大きさは、だいたい幅5.5センチ×奥行3.5センチ×高さ3センチ。
胡桃と黒糖を練り込んだ餅に、きな粉をまぶしたきな粉餅。




最後は、1899年創業、東京赤坂の老舗・赤坂青野(公式サイト)“赤坂もち”
同店のお菓子はごくたまに食べることがあるが、これは看板商品でありながら、実は今回が初めて。


容器を包んでいる風呂敷は、日本画家・加山又造のデザイン。
大きさといい、風呂敷包みになっているこの形式といい、かの桔梗屋信玄餅を彷彿。
しかし、赤坂青野の説明によると、「餅をとり、きな粉に付けて食べるというお菓子は、初代の時から製造」、
「ひとつの器に入れ、一個ずつ風呂敷包み式にしたのは3代目の工夫」、
「今でこそこの種の商品は多く見掛けるようになりましたが、元々は青野本店がはじめたもの」とのこと。
つまり、昭和43年(1968年)に発売された桔梗屋信玄餅はパクリです、と暗に示しているのでしょう。

その桔梗屋信玄餅とは、“蜜をかけるかかかけないか”という違いがある。
その事に関しても、「黒蜜をかけない点も、一般的なきな粉餅と異なる特徴」、
「素材本来の香ばしさと口当たりの良さが堪能できる」、「自然の甘さを実感できる」と説明されている。

でも、蜜をかけないと、味は?と心配になるが、赤坂もちには、餅本体に、黒糖が練り込まれているのだ。
しかも、かなりはっきりと味付けされていて、お餅がちゃんと甘い。
食感は非常に柔らかで、口の中で溶けるよう。
しかも、その中にさらに細かく刻まれた胡桃が混ぜ込まれているので、
柔らかなだけでなく、歯応えに変化がある。

まぁ美味しいけれど、私は特別きな粉が好きではないので、
何度も繰り返し食べたいというほどの物ではないかも。
蜜をかけるタイプだと、蜜の水分で、きな粉もしっとり食べ易くなるが、
赤坂もちには、水分が加わらないから、乾いたきな粉が気管に入り、ゲホゲホしてしまい、食べにくい。
きな粉をケチらず、たっぷり添えているので、きな粉好きな人にはお薦め。

『酔生夢死~醉‧生夢死』キャスト&プロデューサーQ&A

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本日、2015年11月26日(木曜)、第16回東京フィルメックス、コンペティション部門で上映の台湾映画、
『酔生夢死~醉‧生夢死 Thanatos, Drunk 』を観賞。

今回のフィルメックスで一番観たかった作品。
理由は、単純に、張作驥(チャン・ツォーチ)監督作品が好きなのと、
好きだけれど、なかなか日本では一般劇場公開されず、こういう機会でないと観賞しにくいから。

また、本作品は、このフィルメックスの直前に開催された第52回金馬獎でも、多くの部門にノミネートされ、
結果、最優秀助演女優賞、最優秀新人俳優賞、最優秀オリジナル・サウンドトラック賞、最優秀編集賞の
5部門で受賞に輝いた話題作(→参照)。 期待が高まります。

ただ、フィルメックスのチケット発売前から、この作品の上映にはQ&Aが付くと発表されていた事に、
疑問に感じていた。だって、張作驥監督は、女性脚本家から強姦を訴えられ、
裁判で争うも負け、今春から刑務所で服役中。(→参照
いくら台湾がユルくても、「東京の映画祭でQ&Aに参加してきます」で仮出所なんて有り得ないでしょ。

一体、誰が来るんだ…?!と不思議に思っていたら、フィルメックス開催のちょっと前に、
出演者の李鴻其(リー・ホンチー)、王靖婷(ワン・チンティン)、
そしてプロデューサー高文宏(カオ・ウェンホン)の来日が発表された。

そういえば、2013年に同じくフィルメックスで前作『夏休みの宿題~暑假作業』が上映された際も、
あの時も、なぜ監督不在で子供が一人で?と疑問に思ったら、その後、事件の事を知り、察しがついた。


今回も張作驥監督が来ないのは残念ではあるけれど、そういう状況下でよく新作を撮れたなと感心もしている。
それに、今回来日する李鴻其は、日本での知名度はまだまだでも…

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金馬獎で新人賞を受賞した注目株。受賞直後に日本でお話を聞けるのは、楽しみでもある。

★ 『酔生夢死~醉‧生夢死』上映前

会場はいつもの有楽町朝日ホール。
本当はQ&Aは前方が好ましいけれど、
本気で観たい作品だったので、映画観賞のし易さを重視して、やや後方の席をとってしまった。

比較的近い席には、今回審査員を務めている張艾嘉(シルヴィア・チャン)が座っている。
還暦を過ぎているとは信じ難い若々しさ。
“頑張って若作りしている”という痛々しさが微塵も無く、自然にお美しい。
ずっと若い私の方が、なんでクタビレているんだ?!と反省も。

上映開始数分前には、Q&Aに登壇する3人も会場に入り、左寄りの席に着席し、我々と共に作品観賞。

★ 『酔生夢死~醉‧生夢死』キャスト&プロデューサーQ&A

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映画の上映が終了すると、フィルメックスのプログラムディレクター市山尚三を司会進行役に、いよいよQ&A。
市山氏が、「では、お呼びしましょう」とまだ言っている最中に、
主演男優の李鴻其がふらふらステージに入ってきた。

今回は、なんでだかよく分からないけれど、全員立ちっ放しでQ&Aが実施された。
お蔭で、後方の席からも、お顔は見え易いが、距離があるため、写真はあまりきれいに撮れていない。

以下、気になったお話だけいくつか抜粋。


質問
どこか面白いと感じて、これを映画にしたのですか?

高文宏P
李白の詩<將進酒>と南管の音楽にインスピレーションを得て、映画にすることにしました。




質問
出演の経緯や、張作驥監督の演出について。

王靖婷
私は元々張作驥監督のスタッフとして演出部で働いていました。
ミーティングの時、監督から出てみないかと言われ、どうせ少ないシーンだと思ってやることにしました。

李鴻其
張作驥監督からは自由にやらせてもらえました。
演じる僕自身が感じる気持ちに合せ、そのままを表現させてもらえた。




質問
時系列が行ったり来たりしますが…。

李鴻其
人生はそのようなものかと思います。
イヤな事があっても良い事があっても、それが何月何日の事だとか覚えていないものです。
自分自身が感じる気持ち、情緒が時間軸なのかも知れません。

王靖婷
撮影中は、なんだかよく分かっていませんでした。
出来上がった作品を最初に観た時は、監督がこのように編集していたのかと驚きました。

李鴻其
出来上がった作品を何度か観てみますが、十回観ても十回分りません。
映画が詩のようです。観る人によって解釈が違い、その解釈の幅が広い。でも、何かが残ります。

高文宏P
張作驥監督には、好きなように編集してもらいました。
たとえ、海外の映画祭などに出した時、分らないと言われるような物になっても、です。



質問
中国の原題『醉‧生夢死』だと、“醉”と“生”の間が空いていて、“・(点)”が入りますが、何か意味が?

高文宏P
想いを込めて、この“・(点)”を入れています。
“醉”に象徴されるのはアル中の母親、“生夢死”は他の男性たちを意味しているので、
タイトルでそれらの間を空けるのが理想的です。

李鴻其
僕個人の考えですが、“醉”は生きたまま死んでいるような、死んでいるようで生きている母、
“生”は“生存”の“生”で、ホストの仕事をしている仁碩、
“夢”は良い学校を出て、期待の大きかった兄・上禾、そして“死”は僕が演じた老鼠ではないかと。
でも、死は、そこからの始まりを意味しているかも知れません。





中文原題にある“・(点)”には想いが込められているそうなので、
日本で公開する際には、邦題に“・(点)”を入れてあげてネ!…と言いたいところだけれど、
日本ではなかなか一般公開に漕ぎ着けにくい作品だと思う。
なにせ張作驥監督作品が日本で公開されたのは、『きらめきの季節 美麗時光』(2002年)が最後ですから…。

主演男優の李鴻其は、映画の中だと、ひねっこびたチンピラだが、
実物は爽やかな好青年で、えらくギャップがあり、自分の言葉できちんと話せる頭の良い人。
見た目の印象よりずっと大人っぽい声も印象に残る。渋い低音で素敵なのです。

主人公の従姉・大雄を演じた王靖婷は、元々裏方さんとは意外。
台湾の裏方さんって、容姿のレベルが高いのですね。裏か表か、今後はどちらの道へ進むのだろう。

★ 李鴻其&王靖婷サイン会

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約30分のQ&Aが終了した後は、ホールに出てきた李鴻其と王靖婷が、希望者にサイン会を実施。
私は、李鴻其にだけサインをいただいた。一人一人にとても丁寧にサインしてくれておりました。



映画『酔生夢死~醉‧生夢死 Thanatos, Drunk 』については、また後日。
私個人的にはとても気に入ったが、好き嫌いが分かれる作品だと思う、…とだけ今は記しておく。
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