北宋崇寧年間。
江湖の好漢とも交流があり、“及時雨”と称され、その人柄で崇められている鄆城の押司・宋江は、
知事の代理で、皇帝に献上される花石綱の運送に加わるが、
「身分が低い」、「小役人」と一行から嫌がらせを受け、道中任務から外されてしまう。
その一部始終を見ていた公孫勝という道士は、宋江を見込み、一人とぼとぼと去っていく彼を追い、
ある物語を話して聞かせる。
それはまだ宋江も生まれていない昔のこと。
竜虎山から百八の魔星、三十六の天罡星と七十二の地煞星が放たれ、人界に転生したという物語。
さらに、その天罡地煞の一人こそが宋江だと断言し、
宰相・蔡京の誕生日に娘婿・梁中書が贈る十万貫の生辰綱、
そもそもは梁中書が民から搾取した財宝である生辰綱を強奪しようと持ち掛ける。
宋江が、そんな胡散臭い話を信じるわけもなく、一笑に付すと、姿をくらます公孫勝。
ところが、この一件で、宋江は“公孫勝を逃がした共犯者”という疑いを掛けられてしまう。
身の潔白を証明するただ一つの方法は、公孫勝を見付け、捕らえてくること。
早速、雷横らを連れ、捜索に出ると、東渓村で晁蓋という立派な保正と出会う。
宋江は、晁蓋に、公孫勝の事を話し、生辰綱強奪を持ち掛けられても信じるなと忠告するが…。
2016年1月12日、
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チャンネル銀河で始まった大陸ドラマ
『水滸伝 All Men Are Brothers~水滸傳』が
約2ヶ月後の3月10日に全86話の放送を終了。
これ、確か一年以上前に同局ですでに放送済み。
その際は、100分にまとめた先行放送のダイジェスト版のみを鑑賞。
しかし、なにぶん超無理のある“86話→100分”。つまり、2話/86話程度の長さ。
予告編としては思いっ切り長いが、端折り過ぎていて、“あらすじ”にすらなっておらず、チンプンカンプン。
全86話という長さには恐怖心さえ湧いてくるけれど、一度はちゃんと観ておこうと思い、
今回の再放送でついに重い腰を上げた。
★ 概要
中国で明代に書かれた歴史通俗小説<水滸伝>を
鞠覺亮(ジュ・ジャオリャン)監督がドラマ化。
鞠覺亮は、“武俠教父”と称されるほど、時代劇、武俠ドラマでよく知られる香港出身の監督で、
古くは劉華(アンディ・ラウ)版『神俠侶』(1983年)や
梁朝偉(トニー・レオン)版『鹿鼎記』(1984年)を手掛けているが、その後は活動の場を台湾→大陸へと広げ、
李亞鵬(リー・ヤーポン)版『射英雄傳』、胡軍(フー・ジュン)版『天龍八部』、
黃曉明(ホアン・シャオミン)主演『岳飛伝~精忠岳飛』、
鍾漢良(ウォレス・チョン)主演テレビドラマ版『孫文の義士団~十月圍城』などなど
相も変わらずヒット作話題作を発表し続けている。
<水滸伝>の映像化は、今回が初めてではない。
それどころか、もう何度も何度もスクリーンやお茶の間に登場している人気の題材。
日本人にも興味深い物だと、香港の邵氏公司(ショウ・ブラザーズ)が1972年に手掛けた
姜大衛(デビッド・チャン)主演の映画『水滸伝』があり、これにはなんと丹波哲郎や黒沢年雄も出演。
また、完全日本製では、1973年に中村敦夫主演で『水滸伝』というテレビドラマが放送されているそう。
鞠覺亮監督が手掛けたこの『水滸伝』は、2011年制作のドラマ。
過去の『水滸伝』との一番の違いは、ずばり“スケール”。
総製作費は4.5億人民元。主な撮影は、実際に梁山泊があったとされる山東省東平縣で、
東京ドーム6.5個分の敷地に巨額を投じ建造したオープンセットで決行。
ここは、水滸影視城(水滸伝パーク/Shuihu Movie City)という名のテーマパークとして、
★ 水滸伝
ここで今一度
<水滸伝>について簡単に。
<水滸伝>は明代に書かれた歴史通俗小説で、“中国四大名著”や“中国四大奇書”のひとつに挙げられる。
(四大名著の他の3作品は<三国志演義>、<西遊記>、<紅楼夢>、
四大奇書だと、他3作品は<三国志演義>、<西遊記>、<金瓶梅>となるらしい。)
作者には諸説あり、最有力とされる施耐庵の他、羅貫中、施惠、郭託などの可能性も。
本ドラマでは、オープニングに“原著”として、施耐庵と羅貫中の両名がクレジットされている。
日本には江戸時代に入って来て以来支持され続けている人気の物語。
曲亭馬琴の<南総里見八犬伝>は、<水滸伝>に倣っていると言われるし、
ヤーさんの間で刺青の習慣が広まったのは、
刺青を入れた<水滸伝>の英雄たちへの憧れがあった等という説があるくらい、
この中国の小説がlここ日本に及ぼした影響は大きい。
日本人が日本語で小説化、漫画化した作品も多く、
特に北方謙三の小説や横山光輝の漫画は広く読まれているようだし、
<水滸伝>をモチーフにしたゲームも大人気。
…が、私は、小説<水滸伝>を読んだことが無いのだ。
物語は大雑把には知っているが、詳細は知らないので、
集英社文庫から出ている人気の北方謙三版を、読んでみようと考えたことがあるのだけれど、
全19巻と知り、たじろぎ、それっきり。
このドラマを観たのも、“手軽に水滸伝を学べる”という理由が大きい。
(実際には、86話もドラマを追い続けるくらいなら、19冊の本を読んだ方が楽だったかも知れない…。
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)
★ 物語
官吏の不正で民が苦しむ腐敗しきった宋朝末期、
様々な事情で世の中からはじき出された108人の好漢が梁山泊と呼ばれる要塞に集結、
“替天行道”を掲げ、悪を成敗し、朝廷の招安を受け、お国のために尽くそうと奮闘する世直し任侠物語。
物語を大きく分けると、最初の2/3で、それぞれの好漢がそれぞれの事情で梁山泊へ向かう様子が描かれ、
残りの1/3で、終結した108人が朝廷の奸臣に立ち向かい、招安を受ける様子が描かれる。
私が特に興味深く観たのは、前の2/3の方。
好漢が梁山泊入りする経緯は、ざっくり3パターン。
止むを得ない事情奸臣に嵌められ罪人にされたり、義侠心で人を殺めてしまい、行き場を失い、梁山泊を目指すパターン。
こういう人の多くは、朝廷に真面目に仕える忠臣から落草(山賊になる)した人。
梁山泊の好漢への憧れ梁山泊に居る尊敬する好漢と共に世直しをしたくて、自ら進んで梁山泊入りを志願するパターン。
このパターンには、官吏から、民間人だのコソ泥だの、様々な人種が。
スカウトまったく興味なんて無いのに、梁山泊の好漢から一方的に才能を買われ、スカウトされるパターン。
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と
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は自分の意思だから、別に構わないが、問題は
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である。
梁山泊にまったく興味の無い人を仲間に迎い入れるのは至難の業で、普通の説得など、大抵通用しない。
そこでよく行うわれるのが、目を付けた対象を罠にハメ、退路を断ち、もう世間に居られないという状況を作り、
梁山泊に来るよう仕向けるという荒業。
一番悲惨なのが、立派なヒゲを蓄えた“美髯公”朱仝のケース。
ワケあって流刑になるも、流刑地・滄州の知事に気に入られ、穏やかな生活が再び始まったばかりの頃、
知事の幼い息子を連れ、夜店に行ったのが、朱仝の運の尽き。
梁山泊から派遣されてきた雷横に話し掛けられている間に、
同じく梁山泊からやって来た李逵が、知事の息子を連れ去り、誤って殺害。
知事に合わす顔の無い朱仝に残された選択肢は、梁山泊へ行く事だけになってしまったのだ…。
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どっひゃぁー。梁山泊の好漢がスカウトのために行ったこの行為は、
ハッキリ言って、集団ぐるみの詐欺、幼児誘拐、そして殺人である。
通常のヒーローものでは到底考えられない、このようなエゲツない事も、サラリと描かれてしまう所に、
『水滸伝』、広くは、“フツー”が通用しない大国・中国ならではの歴史の面白さが有るように感じる。
どんな方法であれ、梁山泊に108人の好漢が揃ったら、最後のパートは朝廷の奸臣排除である。
キーワードは“招安”(=支配者が反抗者に帰順を勧めること)。
梁山泊の中でも意見は分かれるが、最終的にリーダー宋江らの決断で、招安を受けるという選択肢を取る。
彼らはただの反逆的な賊などではなく、お仕えしたいのはあくまでも皇帝、
きちんとした朝廷の役人として、世直しに貢献したいという強い思いから、招安を受けようとするが、
朝廷にはびこっている奸臣たちが彼らの帰順を歓迎するわけがなく、
梁山泊の好漢VS朝廷の奸臣で激しい闘いに突入していく。
★ キャスト その①:梁山泊の好漢たち
梁山泊の豪傑は非常に多く、その数なんと108人。
以前、ネットで“水滸伝”と入力したら、自動的に“仲間多過ぎ”という第二検索ワードが現れ、苦笑い。
やはり皆さま、そうお思いなのですね。
このドラマでは、さすがに108人全員が主要人物として登場することは無い。
しかし、重要な役回りで登場する人物だけでも、通常のドラマ5本分くらいの数に上ってしまうので、
ここには、私の印象に残った人物を、絞りに絞って数人だけ挙げておく。
張涵予(チャン・ハンユ):“及時雨”宋江~山東鄆城の人望厚い押司 ある事件を閻婆惜に知られ罪人に
本ドラマ出演陣の中で、私のお目当てだった一人が、この張涵予。
キャリアの割りに、日本に入ってきている出演作がそう多くないため、知名度もイマイチのように感じるが、
以前、
こちらに記したように、かの吳宇森(ジョン・ウー)監督が、
“風格のある俳優”として、我が愛しの金城武と共にこの張涵予の名を挙げたこともあり、
今回扮している宋江は、この物語の実質主人公といって良いであろう。
“黒三郎”と称される風采の上がらない男という設定ゆえ、
ドーランも目元のシャドーも、腎臓疾患を疑ってしまうほどドス黒い。
吹き替えの声も特徴的。張涵予が、この役を演じたのは、40代後半の時だが、
声の印象は、その実年齢を大きく上回る“翁(おきな)感”漂うシガレ声。
ところが、後々の台詞で、宋江の年齢は30そこそこと知り、「じゃぁ、なんでわざわざこの声?」と違和感…。
でも、よくよく考えたら、人生五十年の時代なら、30歳はもう初老。この声は“アリ”であると納得した。
…と、こういう書き方をすると、張涵予版宋江に魅力が無かったかのようだが、そんな事はぜんぜんない。
策略の才でも武力の才でも、ナンバーワンになる程ではない彼が、組織のトップに立てたのも、
懐が深くて、人望に厚い人物だったからという魅力が伝わって来る。
人はあまりにも完璧過ぎると、お高く止まっているように見え、嫉妬されたり、嫌われたりしがちだが、
プライベートでも、つまらない女で人生を棒に振っている脇の甘い宋江には、人間味が感じられ、
世の男性たちは、彼に親近感を抱いちゃうのかもねぇ~。なんか宋江人気が分かった気がする。
李宗翰(リー・ゾンハン):“智多星”吳用~梁山泊の軍師 宋江の右腕
李宗翰というと、私はなぜかアクションをやっている姿ばかりを思い出してしまうのだけれど、
本ドラマでは、腕力より知力が勝負の軍師を演じているので、他のキャストより動きがおとなしい。
髭をチョロチョロ生やした涼しげなお顔といい、羽毛の孔明扇を手にした佇まいといい、
見た目は人々がイメージする通りの“宋代の軍師”なのだが、
「さすが天才軍師!」とうならせてくれる程の策略があまり出てこなかったのが、ちょっと残念。
王建新(ワン・ジェンシン):“玉麒麟”盧俊義~北京の大商人から一転、妻と李固に嵌められ罪人に
物語もかなり後半になってから登場する盧俊義だが、梁山泊では第2位につく好漢。
理性も風格も備わった大商人でありながら、不貞の妻・賈氏と、彼女と繋がっている都管・李固の嘘を
いとも簡単に鵜呑みにした結果、罪人にされ、梁山泊入り。
腹黒女房にすっかり騙され、自分に常に忠実だった息子同然の燕青を切り捨てるくだりの盧俊義は、
あまりにも愚かで情けなくなったけれど、基本的には素敵なおじ様で、堂々と風格のある王建新に相応しい役。
…ところが、その“素敵なおじ様”王建新、実は、見た目ほどは“おじ様”ではないのだ。
「同い年なんて信じられなーい!」とジジィ扱いされたが、実はこの王建新もまた、彼らと同じ1970年生まれ。
王建新と陳建斌は同じ年に見えるけれど、吳奇隆と比べちゃうと、“父親世代”っぽいわよね…(笑)。
ちなみに、前述の70年代香港映画『水滸伝』で丹波哲郎扮するのが、この盧俊義とのこと。
嚴屹(イェン・イークァン):“浪子”燕青~大商人・盧俊義に育てられた孤児 別名“小乙”
2013年に現在の“嚴屹”に改名した彼は、このドラマではまだ旧名の“嚴(イェン・クァン)”でクレジット。
唐の中国統一に貢献した秦瓊を威風堂々と演じていたが、今回は仲間たちより年下の“弟キャラ”を演じている。
自分を拾い、育ててくれた盧俊義に恩義を感じ、忠誠を誓い、仕えてきたのに、
その盧俊義に誤解され、絶縁されるも、なお御主人様に尽くし続ける忠犬のようなとことん善良な青年。
胡東(フー・ドン):“豹子頭”林沖~禁軍の教頭 妻が上司の養子に見初められたばかりに悲劇が襲う
林冲は、戯曲にもなるほど人気のキャラ。
日本でも、前述の和製ドラマ『水滸伝』は、この林冲を主人公に描かれ、中村敦夫が演じているそう。
なぜそんなに人気なのだろう…?世の人々は、悲劇的なヒーローがそんなに好きなのだろうか。
禁軍の真面目な教頭・林冲は、妻と静かに暮らしていたのに、
上司である太尉・高俅の養子・高衙内が、その妻に横恋慕したがため、高俅から邪魔者にされ、
高俅側に寝返った親友・陸謙に嵌められ、宝刀を手に白虎堂に入り、“殺意あり”と濡れ衣を着せられ、
流刑され、離れ離れになった愛する妻は自害…、と踏んだり蹴ったり。
あまりにも悲劇的なため、線が細く弱々しい男を想像するが、豹のような顔の、身の丈八尺の大男という設定。
宋代の一尺は31.2センチ、つまり林冲の身長は、2メートル49センチ(…!)ということになる。
演じる胡東は、さすがに2メートル半には遠く及ばないけれど、充分高い186センチという身長と、鋭い目付きで
“豹子頭”林沖の雰囲気を醸している。
晉松(ジン・ソン):“花和尚”魯智深~官吏だったが、義侠心から罪を犯し、身を隠すため寺で和尚に
魯智深は、木を根っこごと抜き取るほどの怪力の持ち主で、普段は豪快なのに、
止むを得ない事情で、お寺で剃髪される時、よほどイヤだったのか、往生際が悪く、涙を流す姿が、まるで少女。
その後は、大酒は飲むは肉は食らうはの、文字通りの“生臭坊主”。
良く言えば豪傑だが、あまりにも人迷惑な行動が多く、どうも好きになれなかったけれど、
物語後半は自分勝手が抑えられ、スケールの大きな男らしさだけが良いように残って、魅力が増した。
この魯智深も林冲同様、身長は八尺、つまり2メートル49センチで、
演じる晉松の身長も、胡東と同じ186センチ。
しかも、かつて、水泳や近代五種競技、ボディビルで好成績を残しているだけあり、さすがのボディ。
ただひたすらにムッキムキではなく、適度にアブラがのった“デブ一歩手前”な感じが、よろしい。
首から下げた超大ぶりの佛珠も、大きなボディにお似合い。
康凱(カン・カイ):“黒旋風”李逵~梁山泊一の怪力男 別名“鉄牛”
ドラマ後半、生臭坊主・魯智深を好きになったのは、同じ“デブ枠”のこの李逵との比較で、
魯智深がマシに思えてきたからかも知れない。
酒と博打くらいならまだ目も瞑れるが、李逵の無鉄砲は、私の許容範囲を超えている…。
この無知で無作法な男が、「それでも素直なイイ奴」と梁山泊で愛されキャラになっているのが理解できない。
見た目は、三国志に出て来る張飛を彷彿させると思ったら、すっかり忘れていたけれど、
演じている康凱は、実際ドラマ『三国志 Three Kingdoms~三國』で張飛をやっていた。
陳龍(チェン・ロン):“行者”武松~人食いトラを退治し都頭に出世するも、自分を好いた兄嫁から逆恨み
陳龍もまた、私がこのドラマをわざわざ観た理由の一つ。
大ヒットドラマ『琅琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす』で演じた猛将・蒙摯がカッコよかったので、
他の出演作も観たいと思ったのだ。
この『水滸伝』で演じている武松も、“知力より腕力”、“単純なイイ奴”という点で、『琅琊榜』の蒙摯に通じる。
武松は、獰猛なトラを退治し、英雄になったばかりに、
ある意味トラより獰猛な(?)兄嫁・潘金蓮に狙われてしまったのが、悲劇の始まり…。モテる男は、つらいね。
酔いに任せたリアル“酔拳”で人食いトラを倒すというエピソードも印象的だが、この武松は衣装も印象に残る。
ジョニー・デップ風だったり(『パイレーツ・オブ・カリビアン』限定)、
ワンダーウーマンのようなアメコミ・ヒロイン風だったり。
終盤、方臘との激しい交戦で、命こそ助かったものの、武松が左腕を失うシーンが激しかった~。
<水滸伝>の武松へのオマージュだったのか…?
そう言えば、そもそも『捜査官X』に出て来る危険な集団は“七十二地煞”だったし、
<水滸伝>に何らかの影響を受けて撮られた武俠映画と捉えて、間違いないであろう。
当時はそんな事を考えなかったが、そのつもりで『捜査官X』を観直したくなった。
王春元(ワン・チュンユエン):“矮腳虎”王英~元盗賊 梁山泊一の小男
王英は、“短足タイガー”を意味する“矮腳虎”と呼ばれているように、
身長が五尺(156センチ)にも満たない梁山泊一の小男。
しかも、タイガー並みの肉食系で、無類の女好き。
気に入った女性を見付けると、すぐに襲い掛かるから、タチが悪い。
容姿には恵まれなかったが、自分なりに色男を演出しているのか、
頭にカーニバル風の飾りを付けているのが、目を引く。宋代に本当にそんなファッションが有ったのか、疑問。
演じている王春元は、色んなドラマでよく見る顔だが、プロフィールがあまり出回っていない。
身長は、一説には160~165センチ。
五尺の王英よりは大きいけれど、大陸男優の中では貴重なプチサイズ。
それも、この役に抜擢された理由かもね。
韓棟(ハン・ドン):“九紋龍”史進~豪農の息子 トレードマークは体に彫られた九条の青龍
韓棟は、想像していたより出番が少なかった。
…いや、結構出ているけれど、周囲に強烈キャラが多いため、存在が薄く感じしまうのかも知れない。でも…
上半身に九条の青龍を施した大胆な“九紋龍”の刺青は、
正統派の二枚目で、王子系の役が多い韓棟にしては、挑戦している感じ。
★ キャスト その②:物語を彩る女性たち
“男たちの物語”にも、もちろん♀女性は登場する。
…が、この物語に出てくる若い女性の大半はビッチ(笑)。
ここには、代表して2名のアバズレだけを挙げておくが、
他にも、お金に汚いのとか、貞操観念が甘いのとか、登場するスレた女は、決して少なくない。
袁詠儀(アニタ・ユン):林娘子~林冲の妻
お久し振りです、袁詠儀!香港の袁詠儀は、一時日本でも出演映画が多数公開されていたけれど、
結婚してママになってからの作品は、ほとんど入ってきていないのでは?
かつて『香港大夜総会 タッチ&マギー』(1998年)なる日本映画で、
香取慎吾と共演していた事を覚えている人も、もはや少なくなっていることでしょう。
ミス香港出身で、以前はヒョロ~ッとスレンダーな女の子という印象だったけれど、
中年になり、それなりの貫禄が出た。
今回演じている林冲の妻は、登場する女性陣のビッチ率が非常に高いこのドラマにおいては
非常に希少な貞淑な妻。善人には報われて欲しいけれど、残念ながら、ビッチの皆さまと同じように、
最後に待っているのは、死…。但し、無残に殺されるのではなく、自害なのが、マシな点か。
甘婷婷(ガン・ティンティン):潘金蓮~万頭売り・武大の美人の女房 武大の弟・武松に恋心
潘金蓮は、<水滸伝>のみならず<金瓶梅>にも登場する美女。
冴えない万頭売りの武大と、質素に暮らしていたのに、
武大の弟で、トラ退治で一躍英雄となった武松に出会ってしまってからは、盛りが付いた猫のように発情。
分かり易いまでの色目を使い武松に迫りまくるが、身持ちが堅く、兄想いの武松は相手にしてくれない。
逆ギレした潘金蓮は、そんな武松にひと言、「私が
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トラより怖いとでも言うのっ…?!」。
ハイ、発情したアナタ様は、トラよりよほど怖いです。あんなに獰猛に狙われたら、武松じゃなくてもビビるって。
結局、潘金蓮は自分に一目惚れした西門慶と不倫に走り、邪魔な夫・武大を毒殺。
その事が武松にバレ、殺されてしまう。艶のある甘婷婷は、潘金蓮を演じるに相応しい。
熊乃瑾(ション・ナイジン):閻婆惜~妓女から宋江の内縁の妻に
閻婆惜もビッチだが、前出の潘金蓮よりは、同情の余地がある。
閻婆惜は宋江に囲われて以降、彼を困らせ続けるけれど、
それはどんなに宋江を好きでも、自分は宋江から相手にされていないと感じているからだと理解できる。
解釈の違う作品だったら、この閻婆惜は、封建的な男社会の犠牲者として、
同情される女性になっていたかも知れない。
でも、この『水滸伝』では、あくまでも英雄・宋江を貶めた悪女だし、
何より、いかんせん、演じている女優・熊乃瑾の顔が人工的過ぎて、感情移入も同情もできなぁーーいっ…!
熊乃瑾は、以前
こちらにも記したように、特にヒアルロン酸を注入し過ぎた唇と、
プロテーゼの形がハッキリ分かるアゴばかりに目が釘付けになってしまうから、
彼女が出てくるとシーンでは、気が散って物語に集中できなくなってしまう。女優の皆さま、お直しはほどほどに。
安以軒(アン・アン):李師師~皇帝からの寵愛を受ける都一美しい芸妓
活動拠点を大陸に移して幾久しい台湾女優・安以軒。
以前とほとんど変わらないように見えるけれど、もう35歳なのだと。
本ドラマでは、皇帝から寵愛を受ける美人芸妓・李師師役で、物語も終盤に差し掛かってから、ようやく登場。
徽宗のような風流な皇帝の心を掴んだ“当代きっての美女”の割りには、
美女度も気高さも才気も今ひとつに感じてしまったのは、私だけか?
それに、皇帝の寵愛を受ける身でありながら、燕青との道ならぬ恋に発展していくくだりも
予想していたほど膨らまず、存在感イマイチな李師師であった。
★ キャスト その③:その他の気になる登場人物
杜淳(ドゥ・チュン):西門慶~武大の女房・潘金蓮との不倫がバレ、武松に殺される富豪
大陸でなぜか“イケメン枠”に入っているのが、どうも理解できずにいたが、
この前に、
『隋唐演義』で演じている李世民を見て、ちょっと見直した杜淳。
ところが、この『水滸伝』では、またまたおかしな男を演じており、もう良いのか悪いのか、分からなくなった…。
今回扮している西門慶は、胡散臭いやり手ババアの仲介で、一目惚れした人妻・潘金蓮との不倫に走る男性。
お金持ちで、遊びを知っている風流な男性ということで…
頭にはいつも
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一輪の花。
これ、西門慶に限ったことではなく、劇中登場する風流な男は、大抵お花のヘアアクセを付けている。
宋代の男性の間では、本当に、こういうファッションが有ったの…??!
李子雄(レイ・チーホン):高俅~宋朝の太尉(?-1126)
香港の李子雄が、高俅役で出演。
高俅は、林冲を無実の罪で罰し、彼を不幸に陥れた朝廷の奸臣。本ドラマ一番の悪役といって良いであろう。
李子雄の濃ゆ~い顔が、嫌味たっぷりで、悪役・高俅にぴったり。
楊子(ヤン・ヅー):宋徽宗~宋朝第8代皇帝(1082-1135)
言わずと知れた宋代の有名な皇帝で、一流の芸術家でもあった徽宗(きそう)。
演じているのは、中國巨大集團の総裁で俳優でもある、異色の経歴の持ち主・楊子。
前妻と離婚後、『カンフー・ハッスル』(2004年)で名を挙げた女優・黃聖依(ホアン・ションイー)と結婚している。
企業のトップという実際の身分や、あまりクセの無い柔らかな顔立ちは、芸術家皇帝に合っているかも?
佟大為(トン・ダーウェイ):蘇東坡~宋代の政治家、詩人、書家(1037-1101)
最後は、出演作
『最愛の子』が日本でも公開されたばかりの佟大為。
中華電影ファンの間では、本ドラマ出演者の中で最も知られた俳優の一人かも。
でも、ドラマのオープニングに彼の名がクレジットされているのに、待てども暮らせども出てこない。
メイクや衣装で変身し過ぎていて、見落としたのかも…、と疑いだしたら、物語も終盤になって、ようやく登場。
演じているのは、豚の角煮“東坡肉(トンポーロー)”でも知られる、宋代の文人・蘇東坡(そとうば)。
“カメオ出演”程度の、ほんの一瞬の登場であった。
だが、蘇東坡が出てくることで、『水滸伝』とは、そういう有名人を沢山輩出した時代の物語なのだと再認識。
★ テーマ曲
このドラマでは、オープニングとエンディングで、流れる曲に中文歌詞のみならず、
拼音(アルファベットの発音表記)、さらに日本人が不得手な四声の記号まで付くのが、親切かつ斬新!
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肝心な曲は、ドラマ前後半で変わる。
前半のオープニングは、景崗山 (ジン・ガンシャン)が歌う<兄弟無數>、
エンディングは、、李玟(ココ・リー)が歌う<四海盟約>。
後半、49話からはいきなり変わり、オープニングは毛阿敏(マオ・アミン)が歌う<四海盟約>、
そしてエンディングは初瑞(チュウ・ルイ)による<自從你走後>となる。
なんで前後半で変えちゃったのだろう?!オープニングは<兄弟無數>が断然イイのに~!
ここにはもちろんその<兄弟無數>を。
暑苦しいーーっ(笑)!でも、士気上がるわぁ~。
これ聴くと、戦闘態勢にスイッチが入る(…別に闘う予定は無いけれど)。
この『水滸伝』は、ちょっと前に観た
『隋唐演義』と、内容もキャストもかなりカブるので、
2作を同時進行で観たら、混乱しちゃいそう…。放送時期がズレていて良かった。
腐敗した世の中で英雄たちが立ち上がるこれら2作の違いは、
『隋唐演義』の目標が現朝廷を打倒し、自分たちの新たな国を作ることであるのに対し、
『水滸伝』では、排除したいのはあくまでも腐った奸臣であり、仕えるお上は常に現在の皇帝でOKという点。
終盤は、非業の死を遂げる者が続出し、あれよあれよと言う間に生存者が数えるほどに。
中国は基本的に勧善懲悪だと感じるので、
正義のために立ち上がった好漢の多くが、奸臣たちにハメられ、命を落とした上、
平安の世が訪れたとも言い難い遣る瀬無いラストには、やや意外性あり。
私は闘いのシーンにあまり興味が無いので、そういう部分では、少しダレてしまったけれど、
それぞれの好漢が梁山泊へ向かう経緯を描く前半2/3は、
個性的なキャラクターが沢山登場し、各々のエピソードを楽しめた。
前述の、“優秀な人材確保のための、集団詐欺、誘拐、殺害”のように、
現代日本人的な感覚では考えも及ばない型破りがサラーッと行われてしまう事に、
唖然とさせられるのだけれど、だからこそ面白くもあった。
ただ、物語の基本は、古今東西、どこでもいつでも通じるものだと感じる。
先日最終回が放送されたばかりのwowowのドラマ、浅田次郎の小説が原作の『きんぴか』も、
それぞれに裏切られたり、濡れ衣を着せられ、居場所を失った、まったく職種の異なる3人、
ヤクザ(中井貴一)、政治家秘書(ユースケ・サンタマリア)、自衛官(ピエール瀧)が、あるアジトに集い、
筋を通して復讐するという話で、まさに“現代日本小規模版『水滸伝』”であった。
まぁ、とにかく、ザックリとしか知らなかった<水滸伝>の物語を、
86話もの長編で知ることができたので、私の中では納得。
もちろん、ちゃんと事前に小説を読んでいれば、
思い入れのあるキャラクターがどのように描かれているか気にしたり、解釈の違いを見付けたり、
もっとずっと楽しめたかも知れないとも思うけれど。
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チャンネル銀河、平日午後1時のこの枠は、明日、2016年3月14日(月曜)から
香港の江若琳(エレイン・コン)主演の大陸ドラマ『ムーラン~巾幗大將軍』を放送。
袁弘(ユエン・ホン)が出ているから、ちょっと惹かれもするのだけれど、あまり興味の無い題材。
それが終わると、4月11日(月曜)から、ついに私の大本命、
『琅琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす~琅琊榜』が放送開始なので、
やはり『ムーラン』はパスして、体力温存期間にしようかしら…。