民国期の中国。
代々薬を扱う商家の白家では、
亡くなった異母兄・乾楓に代わり当主となった乾笙の誠実な経営で信用を得て、繁栄を極めていた。
唯一の問題は、なかなか跡継ぎに恵まれないこと。
5年前に嫁いできた正妻・馬馥芳が妊娠しないため、家を取り仕切る乾笙の義母が、次々と嫁を迎え、
乾笙の妻は全部で4人になったものの、子供は第2夫人・梅香が産んだ女児の名月のみ。
どの妻にも分け隔てなく接する乾笙であるが、実は密かに想い続けているのは、幼馴染の采薇だけ。
兄・乾楓と恋仲だった采薇は、乾楓の死後も彼を人生で唯一の男性と信じ、ひとり身のまま。
乾笙は、采薇の気持ちを尊重しながらも、彼女を自分に振り向かせ、娶りたいと考えるが、
采薇のせいで愛息・乾楓は死んだと未だに憤る義母が、許すはずもなく…。
2016年11月、
![]()
チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ
『名家の妻たち~愛情悠悠藥草香』が、
年を跨ぎ、2017年1月末に全48話の放送を終了。
女性主人公の顔がどうしても駄目で、当初「これ、観続けるのキツイかも…」と尻込みしていたのだけれど、
いやいや、なんの、苦手な顔をも忘れさせる怒涛の展開に、最後まで観入った。これ、なかなか面白いです。
★ 概要
このドラマのメガホンをとったのは、
香港の
蔣家駿(チャン・カーチェン/ジェフリー・チアン/ジャン・ジャーシュン)監督。
過去に、劉華(アンディ・ラウ)、王祖賢(ジョイ・ウォン)主演映画、
『九龍帝王 ゴッド・オブ・クローン』(1992年)などを撮っている監督さん。
90年代後半から活動拠点を徐々に大陸へ移し、数多くのテレビドラマを手掛け、
胡歌(フー・ゴー)主演作『THE MYTH 神話~神話』のようなスマッシュヒットも出している。
ちなみに、これは、日本でも公開された成龍(ジャッキー・チェン)主演映画『THE MYTH/神話』(2005年)を
ドラマ化したもので、成龍自身がプロデュース。
その後ブームとなる、俗に“穿越”と呼ばれるタイムワープものの先駆けとも言われている。
2013年度作品であるこのドラマ『名家の妻たち』に関しては、
蔣家駿監督は、2011年に始動し、
![]()
脚本家に
程婷(チェン・ティンユー)を抜擢。
このドラマには原作小説があるわけではなく、オリジナル脚本らしいが、
脚本家・程婷についての情報は、ほぼ皆無。
最近脚本を手掛けた作品だと、唐嫣(ティファニー・タン)主演ドラマ『錦繡未央~Princess Weiyoung』が
知られているようだけれど、『名家の妻たち』以前のお仕事は不明。
つまり、『名家の妻たち』に大抜擢され、成功し、徐々に注目を集めてきている新進気鋭の脚本家なのかも?
★ 物語
民国期の中国で、薬を扱う富商、白家の主である次男・乾笙に、
第5夫人として嫁いだ善良な女性・采薇が、誠実な夫から純粋に愛されながらも、
他の夫人たちからの嫉妬や権力争いに巻き込まれ、徐々に逞しく成長していく姿を軸に、
封建社会で翻弄されるオンナたちの生き残りを賭けた壮絶な争いを描く群像劇(ドロドロ)。
時代背景は民国初期。
具体的な説明が無いので、よく分からないが、少なくとも1912年以降であることは確実。
ドラマの最後、“十年後”として描かれる戦場のシーンは、第一次国共内戦(1927-1937)だろうか。
その十年前だとすると、1917年から1926年の間辺りと考えるのが妥当かも。
舞台となるのは、薬の商いをする白家という裕福な一族の邸宅。
清朝が崩壊し、新たな時代が到来しても、まだまだ封建制度が残る頃なので、
白家唯一の男性・乾笙は、お世継ぎを得るため、継母から命じられ、本妻を含め、すでに4人の妻をもっている。
そこに5人目として加入するのが、主人公の采薇。
その後、訳あって、もう一人加わるので、乾笙の妻は計6名。
一人の男性を巡り、女がこれだけ居たら、嫉妬が渦巻き、色々と問題が起きるもの。
それら6名をまとめるのは、夫・乾笙より、むしろ乾笙の継母。
この継母、乾笙の兄にあたる彼女の実子・乾楓が死亡してしまったため、乾笙に白家を継がせたのだが、
なんと5年も経ってから、死んだはずの実子・乾楓が、まさかの生還!
そうなったら、血縁の無い乾笙を追いやり、実子・乾楓を一族の主に立てたいのが、母心。
こうして、女たちの寵愛争奪戦や嫁姑問題に加え、兄弟間の後継者争いも勃発。
つまり、このドラマ、時代こそ民国で、登場人物たちは民間人であるけれど、
やっている事は宮廷ドラマと何ら変わりがない。
大奥様は、言うなれば“白王朝”の皇太后、乾笙の第1夫人・馥芳は皇后、以下の夫人たちは側室で、
彼女たちが居る場所は後宮。
そこで繰り広げられているのは、嫉妬や権力が絡むドロッドロの争い。
そう、『名家の妻たち』は、民国期を背景にした“小規模民間人版・宮廷ドラマ”なのです。
★ キャスト その①:一夫多妻でもラヴラヴ夫婦
婁藝瀟(ロウ・イーシャオ):黃采薇~白家に仕える黃景文の娘 乾笙の第5夫人
本ドラマの主人公・采薇は、白家に仕える黃景文の娘で、白家の二人の御曹司とは幼馴染み。
その御曹司の内、兄の方、乾楓と恋仲になるが、乾楓が死亡したので、一生独り身を通すつもりでいたが、
色々あって乾楓の弟・乾笙の第5夫人に。
采薇は乾楓を生涯でただ一人の男性と信じていたので、
当初、弟・乾笙との結婚は受け入れ難いものだったのだけれど、
自分を一途に愛してくれる乾笙に徐々に惹かれてゆき、ついには相思相愛。
ま、その後また一波乱も二波乱も起きるのだが…。
納得できないのは、演じる婁藝瀟が、モンチッチのような泣き顔で、
二人の御曹司から熱烈に愛されるヒロインにしては、イマイチなこと。
独身時代のおかっぱ頭は取り分け滑稽。
おかっぱだって色々あるだろうに、何故よりによって、このおかっぱなのか?!
あちらでは、「まるで、ちびまる子ちゃん」という声も出ているけれど、並べてみたら、似ていない。
采薇のボソボソに裾広がりのおかっぱは、かなりオリジナリティがある。
あの顔、この髪形で、“善良で聡明なモテモテ女子”という設定が、どうも腑に落ちない私であったが、
貶められ、否が応でも逞しく成長し、策略家の顔を覗かせる中盤以降は、多少許せるようになった。
韓棟(ハン・ドン):白乾笙~白家の次男 異母兄・乾楓が死亡し白家の主に繰り上げ昇格
乾笙サイコー!ハンサムで性格の良いお金持ちなんて、もろ私好み(笑)。
乾笙は本当にイイ人で、7歳の時から一途に愛しているのは采薇だけでも、
「自分の妻になったからには責任をもたなくては」と、他の女性たちも分け隔てなく、誠実に接しようと努める。
なんでも、第1夫人の元へは月4回、他の夫人たちの元へはそれぞれ月2回訪れるのが、お約束らしい。
つまり、一ヶ月の約半分は、おブスだろうとおバカだろうと誰かしらと過ごすのが、もう“お仕事”なわけで、
多くの妻を抱えるお金持ちも楽ではないと思ったわ。
この乾笙が、あまりにも完璧な男性なので、そんな彼をなかなか受け入れない采薇が、余計にムカついた。
采薇程度のオンナには、勿体なすぎる御縁ヨ。私だったら、第15夫人くらいでも有り難く嫁ぐ。
このドラマに韓棟は、地毛のスポーツ刈りで出演。
→その後もカツラ要着用の時代劇出演多数→よって扱い易いスポーツ刈りにしていたのかもね。
仮に便宜上だったとしても、私は韓棟のこのスポーツ刈りに不思議とトキメいたわ(笑)。
本ドラマの後も、『十月圍城~The Stand-In』、『鹿鼎記~鹿鼎記』といった辮髪必須ドラマをやっているから、
結局、韓棟に髪を伸ばすヒマ無し。
実は、これら二人の俳優、婁藝瀟と韓棟は、
日本での放送時期が『名家の妻たち』と重なったその『鹿鼎記』でも共演している。
両作品で共通なのは、韓棟が複数の妻をもつ男性を演じていること。
但し、主人公・韋小寶に扮する『鹿鼎記』では、『名家の妻たち』とは立場が逆で、
建寧公主に扮する婁藝瀟から一方的に慕われ、執拗に追い回されて、辟易。
このドラマでは、『名家の妻たち』とはまるで別人の二人が見られます。
特に婁藝瀟は、おブスで面倒くさい女・建寧公主をコミカルに演じている『鹿鼎記』の方が魅力的に感じる。
★ キャスト その②:白家の面倒な母子
夏台鳳(シア・タイフォン):~白家前当主の正妻 乾楓の生母
白家の大奥様を演じるのは、台湾のベテラン夏台鳳。相変わらずキョーーーーレツですっ…!
相当引っ張っているであろう人工的な顔立ちに、違和感を覚える日本人視聴者も居るだろうが、
私はあの妖怪感(?)が、伏魔殿の主にピッタリだと思った。
この夏台鳳、近年は大陸でのお仕事が多く、この手のコワイお姑さんをよく演じていることから、
“惡婆婆專業戶(鬼姑専業女優)”などとも称されている(笑)。
そんなキョーレツな夏台鳳であるが、私生活では、このドラマのちょっと後、
2015年に一人息子・鄒少官を癌で亡くしている(享年40歳)。
『名家の妻たち』の中で、一人息子・乾楓を溺愛する姿を見ると、私生活での喪失感が辛い…。
錢泳辰(チエン・ヨンチェン):白乾楓~乾笙の異母兄 采薇の元恋人
5年前に盗賊に襲われ死んだという設定の乾楓が、物語に登場し、
「あら、このドラマって“殭屍(キョンシー)モノ”だったの?!さすがは中国!」とびっくり。
実際には殭屍ではなく、ちゃんと生存していた彼が都合よく現れることにより、
乾笙という一人の男性を巡る女たちの嫉妬が中心だったドラマに、
白家の主の座を巡る争いなどが加わり、物語はより複雑化していく。
どうしても納得できないのは、采薇がずーーーっと想い続けていたこの乾楓が、
仕事ができない上、性格も卑屈なセコイ男であった事。
こんな乾楓にゾッコンだったなんて、采薇って男を見る目が無いんじゃない…?!
★ キャスト その③:白家の主・乾笙の妻たち
宣萱(ジェシカ・へスター):馬馥芳~乾笙の第1夫人 馬國安の娘
白王朝は、皇太后(大奥様)がキョーレツなら、皇后(第1夫人)も負けず劣らずキョーレツ…!
馥芳は、“乾笙の妻”というより、“乾笙の母親の友達”といった方が相応しい貫禄。
嫁軍団の中に、一人だけオバさんが混入しているのは不自然だが、
台詞などから推測するに、この馬馥芳、意外にも20代半ばくらいの年齢設定。
容貌も物言いも青木さやかを彷彿させるフテブテしさで、相当なインパクト。
演じている香港女優・宣萱は、1970年生まれで、実際にも他の嫁役女優たちより、ずっと年上。
若い女優なんていくらでも居るのに、敢えて宣萱を起用した事に疑問を抱いたり、
彼女を目にするのがイヤで、ドラマの視聴を断念する視聴者もいるだろうが、
ここまで印象に残るのだから、正解のキャスティングだったのでは?
一応、現代風のお召し物の宣萱を載せておくと、(↓)こんな感じ。
かつて蔡少芬(エイダ・チョイ)らと共にTVB香港無綫電視の“四大女優”に挙げられただけあり、
普通の40代より綺麗だと思う。このドラマだとオバさんくさいが、身長171センチでスタイルも良いし、
実物はかなりイケているのではないかと想像。日本にもちょくちょく遊びに来てるようですヨ。
いやぁ、それにしても、この馬馥芳が、お義兄サマにヨロメいたのは、想定外の展開であった。
倪虹潔(ニー・ホンジエ):陳梅香~乾笙の第2夫人
梅香は、聡明で冷静な人という印象。
他の妻たちによる采薇イジメにも加担せず、むしろ彼女を助け、親しくなっていく。
しかし、たまーに見せる邪悪な表情から、腹に一物あるクセ者であることは、最初の内から匂わせる。
梅香は、乾笙の唯一の子供である女児・名月を生んだ母親なのだが、
実は名月と一緒に、双子で臨東という男児も生んでおり、
その子を馬馥芳に殺され、彼女に強い怨みを抱いているのだ。
頭がキレるので、他の妻たちのようにギャーギャー騒がず、
馬馥芳の決定的な弱みを握り、徹底的にやり込める機会を窺っているわけ。
徒党を組めると踏んでいた采薇が、案外使えない女だと判断すると、采薇にも牙を剥いてくるし、
分かり易いお馬鹿さんより、余程コワイ利口者なのです。
仝曉燕(トン・シャオイエン):秋琳~乾笙の第3夫人
梅香とは正反対、こちらはその“分かり易いお馬鹿さん”。
いつも騒ぎまくって自滅してくれるから、嫁軍団の中では大した敵ではない。
しかも、終盤には采薇の策に嵌り、幼馴染の常勝と密通し、不義の子を妊娠という大失態。
演じている仝曉燕は、“Dカップの關之琳(ロザムンド・クワン)”などと称され、一時注目を集めたものの、
豊胸や整形の疑惑や、亞洲小姐競選(Missアジア・ページェント)出場辞退など、
ネガティヴな噂が多かったせいか、出演作はあまり無いみたい。
私は、整形くさいと言われる彼女の顔もさほど気にならずにドラマを視聴。
(日本のモデル橋本麗香に似ているので、これくらいの顔なら居るかナと、すんなり受け入れた。)
金銘(ジン・ミン):桂琴~乾笙の第4夫人
実家が貧しく、白家に売られてきた桂琴は、嫁軍団の中で最も質素で、唯一の善人。
采薇も、彼女の事だけは全面的に信頼。
しかし、馬馥芳に弟の命運を握られ、脅され、利用された挙句、あの世行き…。
扮する金銘は、名家の妻らしからぬ朴訥とした雰囲気が、女のドロドロとは無縁の善良な桂琴役にぴったり。
私は、初めて彼女を見たのだけれど、人気子役出身で、北京大学卒の才媛なのだと。
本当は、敵に回したら怖いキレ者かもね。
孫雅(スン・ヤー):碧荷~采薇の使用人から乾笙の第6夫人にのし上がる野心家
嫁軍団の中で、私の神経を最も逆撫でしたのは、使用人から乾笙の第6夫人にのし上がるこの碧荷。
“叩き上げ系”特有の野心と卑しさを併せ持つ彼女は、ありとあらゆる手を使い、乾笙に接近。
ベリーダンスも舞っちゃうしサ(当時、漢民族の間でどれ程度ベリーダンスが普及していたかは疑問が残るが)。
兎にも角にも、碧荷のキャラ設定に虫唾が走るのだけれど、それに加え、演じる孫雅自身にも問題アリ。
いくらナンでも、あの顔は人工的過ぎるでしょー?!特に鼻とアゴの不自然さは、直視できないレベル。
碧荷も第6夫人にまでのし上がると、大奥様役の夏台鳳と同じで、
人類離れした顔が“伏魔殿に潜む魔物”の凄みに感じ、まだ受け入れられるのだが、使用人時代は浮きまくり。
身売りされるほど貧しい家の娘が、お顔をガッツリ工事できるわけがない。配役ミス!
★ キャスト その④:その他
趙多娜(ドナ・チャオ):翠屏~采薇の使用人
翠屏は、采薇が嫁ぐ時、実家から連れてきた信用できる使用人。この子は本当にイイ子。
顔も、マナカナや池脇千鶴のような庶民的な感じで、純朴な使用人役にぴったり。
女優さんは、美女ばかりでなく、こういう使用人役をできる素朴な人材も必要よねぇ~、
なんて感心していたのだけれど…
使用人用のダボダボの衣装を脱いだら、案外いいカラダしていた。身長171センチ、体重48キロだって。
このドラマでは、ナイスなボディと色香を封印し、随分化けていたわけですね。
これくらいアグレッシヴだったら、使用人ではなく、“名家の妻”の方も演じられそう。
辛新(シン・シン):范貴~乾笙の使用人
こちらは、乾笙お付きの使用人。彼も誠実なイイ青年!
…と思っていたのだが、ずっと片想いしている同郷の碧荷に、その気持ちを利用され、
乾笙に接近するための踏み台にされた上、忠実に仕えてきた御主人様・乾笙を裏切ることとなってしまう。
愛は盲目とは言え、ここまで鈍く、碧荷に振り回されているのを見ると、純朴を越えてただのバカに思えてくる。
曾江(ケネス・ツァン):馬國安~馬馥芳の富商の父
馬國安は、乾笙の妻として娘の馬馥芳を送り込み、ゆくゆく白家を乗っ取ろうと目論んだり、
阿片で儲けようとする悪徳商人。白家は、馬國安の援助で、経済的困難から脱した過去があるので、
彼の思惑に気付いていても、真っ向から排除に踏み切ることが出来ない。
演じているのは、香港の大ベテラン曾江!
香港明星・宣萱(馬馥芳)のパパは、やはり香港の大御所から選んだのですね。
最近も精力的に仕事をしているので、まだまだ若いものだと思っていたら、1935年生まれ、御年81歳だと!
悪役を演じるこのドラマでも、存在感が有るし、眼鏡の奥の笑っていない目に凄みがあるし、流石の曾江!
★ 見所その①:旗袍
本ドラマが“旗袍作品”であることは、見所の一つであろう。
“旗袍(Qípáo ちーぱお)”とは、日本で俗に“チャイナ・ドレス”と呼ばれる女性のお召し物のこと。
1911年、辛亥革命以前を背景にした王朝モノの衣装だと、豪華さも売りの一つ。
最後の封建王朝・清朝が崩壊し、新たな時代に突入した民国期を背景にした本ドラマでは、
徐々に西洋の文化を取り入れ、着易くなった民間人の(でもお金持ちの)旗袍が沢山見られる。
“旗袍作品”の最高峰と言えば、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品『花様年華』(2000年)!
当時、あの映画を観た女性はみんな旗袍を着て張曼玉(マギー・チャン)になろうと思いましたよね(笑)。
60年代の香港を背景にした『花様年華』の旗袍は、
西洋のワンピースに近く、長さも膝丈で、かなり着易い日常着になっている。
そのように旗袍にも流行があって、時代が遡り、民国期を背景にした本ドラマだと、くるぶしまであるロング丈。
“電影級”を謳う本ドラマでは、張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品
『金陵十三釵~The Flowers Of War』(2011年)で衣装を担当したチームが、
女優一人一人を採寸し、それぞれに合った旗袍を制作。
スタイリングは周星馳(チャウ・シンチー)監督御用チームが担当したという(コメディ映画と同じなんだ…笑)。
『金陵十三釵』の衣装デザインは、『花様年華』と同じ、かの張叔平(ウィリアム・チャン)だが、
その張叔平がこのドラマに関わっているという訳ではないので、誤解せぬよう。
もし張叔平がデザインしていたら、安っぽいパステルカラーのレース等は使わなかったと思う。
まぁ、このドラマの衣装の、よく見るとチープなそういう部分も、キッチュで可愛くて、私は結構好きだけれど。
ちなみに、『金陵十三釵』も“旗袍作品”。
この映画、美術担当は種田洋平だし、日本の有名俳優も出演しているが、
南京事件を扱っているため、張藝謀監督作品でありながら、日本ではお蔵入り状態。観たい…!
★ 見所その②:豪邸
もう一つ見所に挙げられるのが、富商・白家の邸宅。
撮影に使われているのは、浙江省東陽市にある盧宅。
これは、明の永樂年間に盧睿(1389-1462)が進士に登第して以降栄華を極めた一族・盧氏が
敷地面積約25000㎡の中に建てた建築群。
“北有故宮,南有盧宅(北に故宮、南に盧宅)”、“民間故宮”などとも称され、
1988年には、全國重點文物保護單位に登録されている立派な邸宅。
中軸線から左右対称で、さらに前方に公的な建物、後方に一族の私的な建物を配するという様式が
故宮(紫禁城)とまったく同じなのも、“民間故宮”と呼ばれる一因であろう。江南建築の傑作。
ちなみに、『名家の妻たちは』は、ここで撮影が行われた唯一のドラマではない。
こんな立派な場所を撮影に使っちゃうなんて、日本人には信じ難いですね。
★ テーマ曲
![]()
テーマ曲は、オープニングが張婧(ジェニー・チャン)の
<最初的年華>、
エンディングが曹軒賓(シェーン・ツァオ/ツァオ・シェンビン)の<一朝芳草碧連天>。
ここにはエンディング曲を。曹軒賓は作曲家として、黃義達(ホァン・イーダー)や王心凌(シンディ・ワン)ら
他の歌手にも楽曲を提供しているアーティストで、このエンディング曲も自らの作曲。
東洋的な懐かしさが漂い、周杰倫(ジェイ・チョウ)が作りそうな曲という印象を受けた。
最後の2話で、死亡率が
![]()
一気に右肩上がり。
十年後を描く物語の最後の最後の2分で、従軍看護婦になった采薇が、
死んだはずの乾笙と奇跡の再会を果たすのは、あまりにも都合の良過ぎるハッピーエンディングで、
「別にズタズタの惨劇のまま幕を閉じても良かったのに…」と若干シラケたが、
基本的には、ずーっと策略に次ぐ策略、命懸けの足の引っ張り合いが続き、観ていて呼吸さえ忘れそうに。
前述のように、これは、まるで“小規模民間人版・宮廷ドラマ”であり、
「なんだパクリか」と呆れる人も居るだろうが、同じように
『宮廷の諍い女』のパクリと言われた
あちらが“C級コピー”なら、こちらは“スパーコピー”。
原作者や脚本家が
♀女性なのに対し、
『武則天』の脚本家は
♂男性。
女尊男卑(?)と捉えられてしまいそうな発言は控えたいところだけれど、
智略を巡らす物語は、リアリストな女性の方が向いている傾向があるのかも知れない。
男性には夢見るロマンティスト多し。
『武則天』なんて、悪女と名高い武則天を主人公にしているにも拘わらず、
策略は生ヌルく、乙女ちっくなラヴストーリーに終始してしまっている。あれでは“武則天の無駄遣い”。
『名家の妻たち』の主人公のことは、最後まで好きになれなかったが、
それでもドラマを面白く感じたのは、脚本が巧いのでしょう。
でも、じゃぁ、もう一度最初から観直したいかと聞かれたら、答えはNOかも。
嫉妬や欲が絡んだオンナの争いはやはり見苦しいもので、
傍観者のこちらまで、体力がやけに消耗されていくのです。一度完走しただけで、私、果てた…。
体力に自信のある方は、このドロドロの世界を一度体感してみて下さいませ。
ちなみに、薬屋さんが舞台ということで、ちょっと期待していた中薬の知識は、ほとんど無かった。
頻繁に出てくるのは、主に止血に効く貴重な植物・田七くらい。