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映画『大樹は風を招く』

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【2016年/香港/97min.】
<季正雄の場合>
街中で職質してきた警官を殺し、逃走した季正雄は、廣州で二人の手下を雇い、宝飾店の強盗を計画。
香港に戻ると、彼を“潮哥”と呼び、慕う古い弟分・大輝をこっそり訪ね、家に数日間泊めてもらうことに。
ところが大輝は気付いてしまう、潮哥が家のテラスから、向かいの宝飾店の様子を窺っていることを…。
タイ人女性と結婚し、娘をもうけ、今はもう静かに暮らす大輝は、面倒に巻き込まれる不安を感じ始める。

<葉國歡の場合>
死者を出す大胆な強奪事件でまんまと大量の金の延べ棒を手に入れた葉國歡であるが、
それを最後に、銃を置き、商売に転向する決意を固める。
彼が目を付けたのは、大陸で高値で売れる携帯電話や家電の密貿易。
廣州で“大寶電器”を設立し、スーツを着て、一端の会社社長として働き始めるが、
便宜を図ってもらうため、来る日も来る日も役人たちの接待に振り回されることになり…。

<卓子強の場合>
大富豪・何裕基の息子を誘拐し、巨額の身代金を手に入れることに成功した卓子強。
決定的な証拠を掴めずにいる警察を鼻で笑い、悠々自適な生活。
そんな頃、「3人の大盗賊、季正雄、葉國歡、卓子強が、香港返還前に一大事件を起こす」という噂が
実しやかに流れる。
この噂に真っ先に飛び付いたのは、退屈していた卓子強。
早速、ホットラインを設け、有力情報提供者には多額の懸賞金も払い、
あとの二人、行方の分からない季正雄と葉國歡を探し出そうとするが…。



第17回東京フィルメックスでクロージング作品として上映された香港映画。
鑑賞してから、随分時間が経ってしまった…。

原題は『樹大招風~Trivisa』。
香港藝術發展局が主催する短編映画のコンテスト、鮮浪潮 Fresh Wave International Short Film Festivalで
受賞歴のある、許學文(フランク・ホイ)、歐文傑(ジェヴォンズ・アウ)、黃偉傑(ヴィッキー・ウォン)
の3人が監督を務めた作品で、杜峯(ジョニー・トー)と游乃海(ヤウ・ナイホイ)がプロデュース。

私がフィルメックスで観たその日、本作品は、台北で開催の第53回金馬獎で、
最佳原著劇本(最優秀脚本賞)と最佳剪輯獎(最優秀編集賞)の2賞を受賞している。おめでとうございます!
ちなみに、フィルメックスの上映では、西島秀俊も観ていましたヨ。



物語は、中国への香港返還を間近に控えた頃を背景に、
かつて名を馳せた伝説のギャング3人それぞれの心情と生き様を描く人間ドラマであり犯罪活劇

主人公の3人、季正雄、葉國歡、卓子強は、
それぞれに季炳雄(1960-)、葉繼歡(1961-)、張子強(1955-1998)という実在の犯罪者をモデルにしており、
彼らの人生をヒントに物語が創られている。

季正雄は、大きな仕事はせず、宝飾店などを狙う確実な強盗を繰り返す。
葉國歡は銃を捨て、家電の密貿易で、フツーの(?)ビジネスマンに。
卓子強は誘拐で大金を手に入れ、大富豪。

香港返還という歴史的大転換を控えた90年代の暗鬱とした空気がそうさせるのか、
三人三様に生きていたギャングたちが、一緒に手を組んでデカい事しようゼ!とコラボ案が浮上する。
言い出しっぺは、大富豪になったものの、面白い事が無く、退屈気味の張子強。
当初乗り気ではなかった季正雄と葉國歡の二人も、現状に行き詰まりを感じ、
鬱積した不満を爆発させるかのように、仕舞いにはコラボへの参加を表明。


本作品がユニークなのは、監督が3人だからといって、
それぞれが手掛けた独立した短編を合わせたオムニバス映画にはしていないところ。
許學文監督季正雄、歐文傑監督葉國歡、黃偉傑監督卓子強と、
“一監督一ギャング”で撮り、ひとつの作品に仕立て上げている。
それぞれに個性の異なる監督が、一人の登場人物を担当することで、
各々の登場人物の個性がより際立つという、至極当たり前の手法。
当たり前だけれど、なかなか行われないから、新鮮で面白い。


ちなみに、原題の『樹大招風』は、中国語の四文字熟語で、
“樹が大きければ風当たりも強い”、“注目の的になると人に妬まれ面倒が起き易くなる”ことを意味する。
映画は、もちろん“招風(面倒を引き起こす)”な“樹=3人のギャング”の物語。

また、英文タイトルの『Trivisa』は、仏教で諸悪の根源となる3ツの煩悩、
貪(とん:貪欲)・嗔(じん:怒り)・癡(ち:愚かさ)を指す“三毒”を意味するサンスクリット語。
三毒は、この映画のテーマであり、
主人公3人がそれぞれ、卓子強が貪、葉國歡が嗔、季正雄が癡の象徴。
3人は皆自分がもつ煩悩のせいで、最終的に失敗している。
大陸と対峙する香港人が抱える困惑を暗に示しているようにも読み取れ、興味深い。





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出演は、小さな強盗を繰り返している季正雄に林家棟(ラム・カートン)
家電の密貿易で稼ぐ葉國歡に任賢齊(リッチー・レン)
そして、誘拐で莫大な富を得た卓子強に陳小春(ジョーダン・チャン)

タイプが違うから、それぞれに印象的なのだが、取り分け記憶に焼き付いたのは、
任賢齊扮する“嗔”の象徴・葉國歡かしら。
凶悪犯だった過去を描く最初の登場シーンから、スクリーンに目が釘付け。
葉國歡は、その事件で指名手配され、廣州に逃げ延び、会う人ごとに名を変え、商売を始めるのだが、
過去と現在で演じる任賢齊の雰囲気がぜんぜん違う!

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監督からの要請でスポーツ刈りにした任賢齊は、気のせいか顔の肉が削げ、目付きが悪く、
普段の“良き家庭人”のイメージとはまるで違い、凶悪犯そのもの。梁家輝(レオン・カーフェイ)っぽいかも。
廣州で商売人になると、見た目は、普段の任賢齊に戻る。

この葉國歡は、大陸という巨大市場と、
かの地では携帯電話や家電が香港の4倍もの高値で売れることに目を付け、密貿易を始める。
もう銃は置き、ビジネスマンとして生きる道を選んだのだが、
役人の腐敗が激しい大陸で、何かにつけ、賄賂や接待を要求され、徐々に鬱憤を溜め込んでいく。
挙句、香港で通りすがりの警察官から「大陸喱(大陸野郎)」と見下され、ドッカーンと爆発。

この人物のモデルになった葉繼歡は、未だ赤柱監獄で服役中。
実のところ、彼は生粋の香港人ではなく、廣東省海豐の出身で、17歳の時、不法入国で香港に移民し、
その地で大物ギャングにのし上がっている。
日本では“香港明星”と認識されている黎明(レオン・ライ)だって王菲(フェイ・ウォン)だって
北京からの移民だし、香港人のアイデンティティの問題は、結構複雑だと感じる。
もっと広く言えば、そういうアイデンティティの問題は、台湾人にも通じる。
この葉國歡を演じている台湾明星・任賢齊も大陸にルーツをもつ外省人だし、
「大陸野郎」と見下されて怒り爆発のシーンは、なんとも言えないものがある。



陳小春(ちん・こはる)は、映画に出ているのを見るのは、多分なかり久し振り。
年を重ね、50歳近くなったこともあり、元々似ていた林家木久扇に益々近付いてきた。

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少なくとも、息子の二代目林家木久蔵より、小春の方が木久扇に似ている。
…って事は、小春は、もう少しすると、大陸俳優・李雪健(リー・シュエチェン)にも似てくるのかしら。
李雪健の林家木久扇激似っぷりは、『サンザシの樹の下で』(2010年)を観た時に、驚かされた。

そんな陳小春が本作品で扮する卓子強は、あとの二人と違い、何か重い物を背負っている感じがせず、
香港で悠々自適に暮らしているから、見ていて息苦しくないし、
成金風情のやり過ぎちゃった感が可笑しくて、好きなキャラ。
“貪”の象徴である彼は、欲を出して大量の爆薬に執着し、結局御用となってしまうのだけれどね。

この卓子強のモデルになった張子強は、
1996年、香港の大富豪、あの李嘉誠の息子・李澤鉅を誘拐し、多額の身代金を受け取ったとされる。
(→後に廣東省江門で逮捕され、死刑。)

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大胆不敵にも、自ら李家の邸宅へ出向き、身代金額を提示した張子強に対し、
李嘉誠が「今は10億しか現金が用意できない」などと言って交渉したくだりは、この映画でも描かれている。




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脇では、季正雄の古い友人で、今はタイ人の妻子と静かに暮らす大輝に姜皓文(フィリップ・キョン)
葉國歡の闇商売を手助けする方に林雪(ラム・シュ)など、
杜峯監督作品でお馴染みの俳優も、ちゃんと出ております。






3人のエピソードが約一時間半の尺にコンパクトに収まり、テンポよく進むから、
最後まで飽きることなく楽しめた。
3人の登場人物を3人の監督が撮り、よく上手くまとまっているなと感心する。
金馬獎の脚本賞と編集賞は納得。
一見お気楽なエンタメ作だが、深読みしようとすれば、
大陸に対峙する香港人の困惑や思惑が、いくらでも読み取れそうなので、
機会があれば、もう一度観直したい。最近観たこの手の香港映画の中で、一番好きかも。

これ、内容が内容なので、案の定、大陸では公開されていないけれど、
“未公開=観られていない”ではないのが中国。観ようと思えば、観る方法はいくらでも有るので、
実はかなりの人が観ており、「近年で一番の香港映画」、「大陸市場を放棄した香港映画には名作が多い」
などと評判は上々のようだ。
中国政府は、「駄目!」と言えば言うほど、人々がそれに食い付くということを分かっていない。
禁じられたものほど魅惑の香りがするものなのヨ。


そうそう、日本人にも食い付き所が有ります。
沢田研二の<時の過ぎゆくままに>の広東語カヴァー<讓一切隨風>が流れるのだ。
広東語カヴァーで有名な鍾鎮濤(ケニー・ビー)版ではなく、
女性シンガー・高少華(シルヴァー・コー)で新たにレコーディングした物。(↓)こちら。


郷愁に駆られますねぇ~。


念の為、本作品が脚本賞と編集賞を受賞した第53回金馬獎については、こちらを。

大陸ドラマ『皇后的男人 紀元を越えた恋~相愛穿梭千年』

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2015年、春節を目前に控えた2月。
アルバイトに明け暮れ、ドラえもんの着ぐるみのまま、
新作ドラマ『新趙飛燕』のオーディション会場に駆け込む新進女優の湘湘。
得意の歌を披露し、手応えを感じるも、会場に突如入って来た韓于飛を見て動揺。
人気男優・韓于飛は、湘湘の元恋人。なんとこの新作ドラマで漢の成帝を演じる主演男優は彼だったのだ!
お陰でオーディションはガタガタ…。ドラマ出演のチャンスをまた逃したと気落ちする湘湘。
ところが、そんな湘湘の携帯電話が鳴る。
『新趙飛燕』の楊監督から直々に許皇后を演じてくれと出演オファー。

永始元年(紀元前16年)、
成帝が天下を治める前漢の時代。
忠義に篤い諫議大夫・公明は、趙飛燕を寵愛する成帝が、許氏から皇后の位をはく奪した裏に、
王一族が仕掛けた罠があることに気付く。
王一族の一員である幼馴染の王莽は公明に言う、
「時勢を読め。国は傾きつつある。民が求めるのは名君だ。取って代わって何が悪い。」
公明は、野心を隠さない王莽に失望し、その場を去るが、
追ってきた王莽の手下・子修の剣に胸を突かれてしまう。

目を開いた公明は、自分が置かれた煌びやかな未知の世界に戸惑う。ここはどこだ?私は死んだのか?!
道路上で右往左往し、車に轢かれそうになる公明を助けたのは、
新作ドラマで許皇后を演じることが決まり浮かれる湘湘であった…。


2016年7月末、BSジャパンで始まった大陸ドラマ『皇后的男人 紀元を越えた恋~相愛穿梭千年』が、
約4ヶ月半後の12月10日、全20話の放送を終了。
大陸時代劇を観慣れると、ナンてことない全20話ポッキリ、
しかも週一放送というゆったりペースなので視聴した。
正直言って、後半は、同じ事の繰り返しで、ダレ気味にも感じたが、気楽に観るには悪くないドラマ。

★ 概要

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本作品は、韓国ドラマ『イニョン王妃の男~인현왕후의 남자 仁顯王后的男人』の中国版リメイク。

メガホンをとったのも、韓国人の張英宇(チャン・ヨンウ)監督(代表作『ホテリアー』等)だが、
物語の設定を完全に中国に置き換え、華人キャストによる中国語作品に作り替えられている。

この中国版リメイクは、
『相愛穿梭千年貳:月光下的交換~Shuttle Love Millennium』というタイトルで、すでに続編も制作。
続編の監督さんは、韓国オリジナル版を手掛けた金炳洙(キム・ビョンス)にチェンジ。
同じく韓国オリジナル版で主演女優だった劉寅娜(ユ・インナ)が、主要キャストで出演予定であったが、
韓国がミサイルTHAADを配備した事への制裁措置として中国当局が発令したと噂される
中国市場からの韓流締め出し令、通称“限韓令/禁韓令”により、
その役は台湾の郭雪芙(パフ・クオ)に選手交代。


なお、本ドラマの中文原題『相愛穿梭千年』は、“千年を行き交う相思相愛”の意。
邦題『皇后的男人 紀元を越えた恋』は、“こうごうのおとこ ときをこえたこい”と読むそう。
『皇后的男人』は、韓国オリジナル版『イニョン王妃の男』の中国語タイトル『仁顯王后的男人』を意識?

技術的特徴としては、大陸ドラマにしては珍しく、アフレコではなく、同時録音で撮影されている。
なので、大半の出演俳優は、地声を自然な形で聞けますヨ~。

★ 韓国オリジナル版『イニョン王妃の男』

中国でリメイクされるくらいだから、韓ドラ『イニョン王妃の男』は、大陸でよほどヒットしたのかというと、
実は、さほど話題になっていない。
私は、不発の原因を、中華圏でヒットした別の韓国ドラマ…

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『星から来たあなた~별에서 온 그대 來自星星的你』のせいだと思い込んでいた。その理由は以下の通り。

両作品は共に、現代女性と過去からやってきた男性との時空を越えた恋物語

現代女性が崖っぷちに立たされた女優であること、
過去からやって来た男性が、馬鹿ッ丁寧な時代劇口調で喋る、礼儀正しい紳士であることも共通。

キャスティングに雲泥の差

『星から来たあなた』の主演女優が韓国のトップスタア・全智賢(チョン・ジヒョン)であるのに対し、
『イニョン王妃の男』の主演女優は、整形顔も露骨な二流女優・劉寅娜(ユ・インナ)。

しかも劉寅娜は『星から来たあなた』の脇役女優

『イニョン王妃の男』の主演女優・劉寅娜は、
実は『星から来たあなた』にも、全智賢のライバル役で出演している。
『星から来たあなた』へに、ガッツリお直し顔のサイボーグ・劉寅娜を敢えて起用したのは、
全智賢のナチュラル・ビューティーっぷりを際立たせるための“お引き立て役キャスティング”ではないかと
私は疑い、そんな出演オファーを受けた劉寅娜のある種の勇気には感服。


つまり、『イニョン王妃の男』は、ヒット作『星から来たあなた』の“二番煎じ感”が否めないわけ。
しかも、その二番煎じを、二流のキャストでやってしまった“廉価版『星から来たあなた』”、
“亜流『星から来たあなた』”という印象。これじゃあ、ヒットしなくて当たり前。

…が、私のこの推測は誤りであった!
『イニョン王妃の男』は、制作も放送も2012年で、『星から来たあなた』より先なのだ。
(『星から来たあなた』は地元韓国で2013年12月に放送開始、大陸でもほぼ同時期にネットで配信。)

つまり、つまり、“二番煎じ”は実は『星から来たあなた』の方。
『イニョン王妃の男』を“廉価版『星から来たあなた』”、“亜流『星から来たあなた』”と表現するより、
『イニョン王妃の男』を豪華キャストでパクった『星から来たあなた』を
“ゴージャス進化版『イニョン王妃の男』”と表現した方が正しいのかも。
(しかも、『星から来たあなた』は、韓国の人気コミック<ソルヒ~雪姬>のパクリ疑惑でも騒がれたので、
もう何がナンだかよく分からない。)

大陸ドラマ『皇后的男人』は、ヒット作『星から来たあなた』の元ネタ(?)『イニョン王妃の男』を
大陸スケールの豪華さで正々堂々とリメイクしているので、
ある意味、『星から来たあなた』より正統派と呼べるかも知れない。

★ 物語

時の皇帝・成帝から寵愛を受ける趙飛燕の陰謀で、皇后の座を廃された許氏を救おうとし、
趙飛燕を支持する皇帝の外戚でもある王一族から追われる羽目となった諫議大夫・公明が、
殺害されそうになるも、不思議な玉佩の力で、どういう訳か現代の中国にタイムワープし、
奇遇にも、テレビドラマで許皇后を演じる新人女優・林湘湘と出逢い、
幾多の困難と時空を乗り越え、恋を成就させるまでを描くラヴ・ストーリー


一度現代にやって来た漢代の諫議大夫・公明は、それっきりずっと現代に居続けるわけではない。
現代、…つまり公明にとっては“未来”に迷い込み、そこで史書を目にすることで、
我が漢の行く末を知ってしまう。
史書で自分の周囲の人々の危機を知る度に、過去に戻り、ひと仕事。
このように、過去と現代を行き来することで、いつの間にか歴史を変えてしまうことに。

一方、現代の中国で公明と恋に落ちた新人女優の湘湘は、タイムワープ出来ない。
公明が漢に戻る度に、連絡が途絶え、再会できるかも分からず、胸を痛める。
現代と漢という“超遠距離恋愛”に悩むオトメ心は、
「アメリカに住む彼となかなか会えない…、私たちどうなっちゃうの?!」と悩む女子たちと変わらない。

★ 時代背景

このドラマ、物語の大筋は基本的に韓国のオリジナル版と同じ。
決定的に違うのは、時代背景。

韓国版では、李氏朝鮮第19代皇帝・肅宗(1661-1720)の時代を背景に、
仁顯王后(1667-1701)を廃し、王妃にのし上がった禧嬪張(1659-1701)が、
再び格下げされ、仁顯王后が復位する1694年の“甲戌換局”という史実をベースにしている。

一方、中国版の時代設定は、ずっと大昔の紀元前に遡り、前漢(西漢)。
漢朝第12代皇帝・成帝(紀元前51-紀元前7)が天下を治め、
また、成帝の生母・王政君の実家である王一族が朝廷に深く関与するようになった時代。
趙飛燕が成帝からの寵愛を受け、許皇后が廃された史実をベースにしている。


こういうドラマを観ても、「さすがは中国、ネタの宝庫!」と感心してしまう。
韓国の時代劇をリメイクする場合でも、
長い歴史の中から、似たようなエピソードをちゃんと用意できるのが中国なのだ。
逆だと、なかなかこういう訳にはいかない。
清朝康熙年間の史実、康熙帝の9人の息子たちによるドロドロの後継者争い
“九王奪嫡”をモチーフにしたドラマ。
これは、史実が巧く絡んでいるから面白いのであり、史実が絡まなければ、ただの乙女ちっくなラヴストーリー。
韓国でリメイクされると知った時、「リメイクしようがないのでは…?!」と懸念したが、出来上がったドラマ、
『麗<レイ> 花萌ゆる8人の皇子たち~달의 연인-보보경심 : 려 月之戀人-步步驚心:麗』は、
案の定、アイドル俳優の出演を売りに、史実をほとんど無視した胸キュン恋物語になってっぽくないか…?
歴史とスケールで中国を越えられる国は、アジアにはやはり無いと感じる。

★ キャスト その①:主人公~時空を越え、運命の赤い糸で結ばれた二人

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鄭爽(ジェン・シュアン):林湘湘~新作時代劇『新趙飛燕』で漢の許皇后役に抜擢された駆け出しの女優

『イニョン王妃の男』 劉寅娜(ユ・インナ):崔熙進(チェ・ヒジン)

オリジナル版の主演女優・劉寅娜を“典型的な韓流お直しをガッツリ施した二流女優”と見下す私であるが、
リメイク版の主演女優・鄭爽もまた100%の天然ではない。…但し、微調整程度であろう。
どこをどういじったのか分かりにくいし、お直しをあっさり認めてしまっている点が、劉寅娜とは違う。
この鄭爽は、お顔の工事のみならず、張翰(チャン・ハン)との交際も(すでに別離)ケロッと告白しているし、
アッケラカンとした今どきの明星という印象。そういう素の部分が、湘湘のキャラクターに合っている。
いや、素の鄭爽がアッケラカンとしているから、演じる湘湘もそういうキャラクターになったのだろうか。
初めて聞く鄭爽の地声やタドタドしい喋り方は意外であったが、それも含め、湘湘にピッタリだと思った。
(余談になるが、出身地が相手役の井柏然と同じ遼寧省瀋陽であるため、
休憩時間の彼との会話は東北弁だったらしい。
鄭爽が甘ったるい声で喋る東北弁って、どんな感じなのでしょう?!)
“絶世の美女”というより、手の届く範囲にいるカワイ子ちゃんという感じなので、
ティーンの女の子だったら、この鄭爽扮する湘湘の髪形やファッションも「可愛い♪」と真似たくなるかもね。

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湘湘の居場所は常に現代だが、時代劇に出演する女優なので、昔のお姫様ルックも見られます。
(時代劇の髪飾りは、金属が黄色過ぎて、チャチィですねぇ。 …苦笑)



井柏然(ジン・ボーラン):公明~漢の諫議大夫 皇帝と国を思う忠臣

『イニョン王妃の男』 智鉉寓(チ・ヒョヌ):金鵬道(キム・ブンド)

オーディション番組『加油!好男兒(頑張れイイ男)』出身の井柏然も、今やすっかり売れっ子俳優。
ただ、日本ウケするルックスかどうかはビミョー。
私自身、彼がカッコイイのだか、不細工なのだか、よく分からないでいたのだけれど、
ヒット映画『モンスター・ハント』(2015年)の続編、『捉妖記2』のクランクイン時の画像を見たら…

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ナンなの、この小顔&長身!?明らかに、周囲の人々とボディーのバランスが違っていて、カッコイイ。

この『皇后的男人』では、現代に迷い込む漢代の諫議大夫を演じているので、
湘湘役の鄭爽以上に、時代劇と現代劇、二種類の扮装の井柏然を楽しめる。

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私は、古代人ヴァージョンの方が好み。
井柏然は顔立ちがスッキリして、古風な雰囲気があるから、時代劇の扮装が合う。

あと、彼の場合、額は出した方が男前なのでは…?

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現代の方は、前髪に1ミリの隙も無いお椀をかぶせたような髪型が、ひたすら滑稽…。

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前髪を額にもっとベッタリ押し付けるニット帽も、井柏然には危険なアイテムと判明。

まぁ、このドラマで井柏然に興味をもった方は、取り敢えず『モンスター・ハント』でも御覧ください。
井柏然が妊娠して(!)、大根を出産していますから(…!!)。

★ キャスト その②:現代の人々

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黃柏鈞(デニー・ホァン):韓于飛~人気俳優 元恋人の林湘湘に未練

ABC(AmericaでBornしたChinese)の黃柏鈞は、
台湾偶像劇で演じる弟キャラ、子分キャラのイメージが強かったけれど、
いつの間にか30も半ばになり、結婚して、子供をもつ父親になっておられた。
ドラマで久しぶりに見た、そんな黃柏鈞が演じているのは、これまでの子分キャラとは対極の俺様キャラ。
共演の若い俳優たちと比べると、醸す雰囲気が大人で、月日の流れを感じるのであった。
ほとんどの出演者が地声で演じている中、黃柏鈞の声が声優による吹き替えなのは、少々残念ではあるが、
台湾系アメリカ人だったら、仕方がないかナ。


謝彬彬(シエ・ビンビン):吳天秀~韓于飛のマネージャー 金晶と夏曉南から目をつけられたイケメン君

韓于飛のマネージャー吳天秀を演じる謝彬彬クンは、オーディション番組『快樂男聲』出身、
もう直21歳になる北京電影學院在学中の学生スタア。若ーい…!
身長ほぼ190センチの黃柏鈞と並んでも見劣りしない長身に、ポツンと乗っかった小顔は童顔。
日本のアイドルよりずっとレベル高し。


謝依霖(シエ・イーリン/イボンヌ・シエ):金晶~林湘湘のマネージャー

台湾からは、バラエティ出身の“Hold住姐”こと謝依霖も出演。
私が、本ドラマを観ようと思った理由の一つは、この謝依霖が出演しているから。
謝依霖は、彭浩翔(パン・ホーチョン)監督作品『愛のカケヒキ』(2014年)で演じた阮美が、
えらく面白くて、記憶に焼き付いた。
本ドラマで扮する金晶も、狙った獲物(男)を追うハンター気質は、『愛のカケヒキ』と共通。
ただ、『愛のカケヒキ』より、かなり薄味に感じた。もっと肉食度の高い濃いぃー謝依霖を見たい人には、
『愛のカケヒキ』をお薦めいたします。
それにしても、この謝依霖、湘湘役の鄭爽と一歳しか違わない1990年生まれとは、信じ難い。
子供をポンポン3人くらい産み、もはや何事にも動じない中年女性の貫禄が感じられる。
ちなみに、謝依霖は台湾人でも、声優の吹き替えではなく、地声が使われている。


楊森(ヤン・セン):夏曉南~林湘湘のヘアメイクさん 林湘湘の良き相談相手

同性愛者の夏曉南は、金晶といつもセット。ゲイとオバちゃんキャラという濃密なコンビは、
中華圏で近年よく使われる表現でいうなら、“閨蜜(guīmì 同性の大親友)”な関係で、大の仲良しではあるが、
男の趣味が似ていて、恋のライバルでもある。
しかし、この夏曉南も、金晶と同じで、今ひとつ薄味。
娯楽要素の強いこういうドラマだったら、もっと大袈裟なキャラ設定でも良かったかも。
東北地方出身の朴訥とした楊森が、金髪に染め、ゲイを演じているというギャップは、評価。

★ キャスト その③:漢代の人々

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陳翔(チェン・シャン):王莽(紀元前45-23)~野心が強く、考えの違いから幼馴染・公明と仲違い

陳翔って、なんだか最近出演作が激増していないか?やけに目にする機会が増えた気がする。
最近の陳翔は、いつもクールな二枚目キャラ。
私の好みではないが、韓流スタアを彷彿させる切れ長の目をもつ陳翔は、
主演男優・井柏然より、もしかしてここ日本では、需要があるかも知れない。
私個人的には、そんな彼が演じる悪名高き奸臣・王莽が、どのような解釈で扱われているかに注目。
女子に人気のイケメン俳優が演じているので、やはり極悪人ではなく、どこか“救い”のある役であった。
髪色も、漢代に有るまじきミルクティーだしね(笑)。陳翔クンが捨て身になるには、まだ時間を要しそう。


周雨彤(チョウ・ユートン):影月~一緒に育った公明に仕える剣士

影月は架空の人物。オリジナル版『イニョン王妃の男』では、尹月という妓生であったが、
こちらのリメイク版では、剣士に設定替え。
この人物が、密かに想いを寄せる男性に贈る摩訶不思議なお守りも、
オリジナル版では、今にも破れそうなペラペラな紙切れのお札であったのに対し、
リメイク版では、耐久性のある玉佩に替えられている(←耐久性を考慮して設定替えしたとは考えにくいが。
紙自体は前漢で発明されたという説アリ。でも、当時はまだ超貴重だったとか…?)。
影月に扮している周雨彤は、まだ出演作がそう多くはない、1994年生まれの新星。
このドラマだと、日本人男性が好みそうな、奥ゆかしく耐え忍ぶ古風な美人に見えるけれど、
私が初めて彼女を見た映画『20歳よ、もう一度』(2015年)では…

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…こんな感じ。鹿(ルー・ハン/ルハン)の先輩役でチラリと出演。影月より、もっとずっとワイルドであった。


鳳翔(フォン・シャン):張恆~公明の師

張恆は、公明の師匠で、要所要所で彼からの相談にのる結構重要な役なのに、
演じている鳳翔に関する情報は非常に少ない。
王莽役の陳翔と同じ“翔”という名前なのに、イケメンじゃないと、こうも扱いが悪くなるのか(笑)。
この鳳翔は、脇でボチボチ出演作のある中堅俳優のようだが、現地でも知名度は高くないみたい。
微博のフォロワー数も、超大国・中国の芸能人としては“皆無”に等しいほど極めて少ない163人。
フォロワー全員、親族と友人だったりして…。
そんな彼がなぜ気になったかというと、歯が黒かったから。
あれは昔の人を演じるために役作りで黒く塗ったのか、はたまたリアルに黒く汚れているのか知りたくて、
普段の鳳翔の画像を探したが、残念ながら、口を開けている物は見付からなかった。どうなのでしょう…??

★ テーマ曲

ドラマのオープニングは、短いインストゥルメンタル曲をバックに、主演の二人を紹介する簡素な物。
エンディング曲は、前後半で変わり、魏晨(ウェイ・チェン)の<相愛不能見>
主演の二人、井柏然と鄭爽のデュエット<不能忘>
どちらも歌詞は中国語であるが、一発で韓流バラードと判る、韓国の特徴が非常に出たメロディ。
後者の<不能忘>は、現地ではオープニング曲に使われていたはず。
私の想像でしかないけれど、日本では、放送時間等の都合で、オープニングを簡素に済ませたため、
使えなかった<不能忘>を、ドラマ後半戦のエンディングにもってきたのでは。
ここには、主演の二人が湖南衛視の『小年夜春晩』で<不能忘>を歌った時の動画を。
鄭爽の歌唱力は「・・・。」だけれど、井柏然は歌上手い。






普段、ポップな偶像劇しか観ず、重い歴史モノを退屈と感じる人でも、抵抗なく受け入れられそうなドラマ。
逆に、普段は歴史モノが好きで、軽い偶像劇など物足りないという人も、
漢代の成帝や許皇后、趙飛燕、王莽らの史実が、
アイドル総出演のこの手のドラマで、どのように扱われているかに着目すると、意外と観られる気がする。
もちろん、オリジナルの『イニョン王妃の男』を視聴済みの人なら、比較という楽しみ方もできる。
キャストのファンとか、韓国語を耳にしたい、とにかく韓国が好き!
といった理由で韓ドラを観る人も多いと察するが、
そこまでの強い思いが無く、ニュートラルな気持ちで鑑賞できるのであれば、
映像でもスケールでも格段上の、こちらの『皇后的男人』の方が確実に面白いであろう。

私自身は、どっぷりハマることはなかったけれど、
週に一度、お茶でも飲みながら、何も考えずに観るのに丁度よく、当初想像していたより楽しめた。

登場人物の名前を全て漢字表記にし、
漢代の人には日本語の音読みを平仮名、現代人には中国語の音訳をカタカナでルビにした日本語字幕も
工夫があって良かった。
これ、香港映画を配給している会社などだと、平気で“ワン・マン(王莽)”なんて字幕を付けちゃうから。
中華作品の日本語字幕は、今や映画よりドラマの方が改善と進化が感じられる。

出演男子の中から、お気に入りを一人だけ選ぶのであれば、
ナンだカンだ言って、やはり井柏然・公明かしら~。
やたら馴れ馴れしい男性は苦手なので、公明の礼儀正しさには惹かれる。
公明は、漢代から持ってきたコンディションの良いお品を、現代の骨董屋で現金化しているため、
意外にも懐が温かで、羽振りが良いのも、魅力の一つ(笑)。
どんなに見目麗しくても、女のお財布をアテにするような男だったら、2千年の恋も冷めてしまうというものヨ。
演じている井柏然本人に関しては、現時点で、カッコイイ!大好き!とは思わないけれど、
ああいう顔は、30代、40代と年を重ねるにつれ、渋みを増して、素敵になっていく気がする。
私、井柏然は十年、二十年と寝かせ、イイ感じに熟成するのを待つワ。

あと、そう、そう…

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お約束のRIOは、相も変わらず飲まれまくっております。
大陸ドラマ(現代劇限定)を観ると、中国で水以上に爆飲みされているのはRIOだと錯覚を起こす。


この『皇后的男人 紀元を越えた恋~相愛穿梭千年』は、
今度はLaLaTVで、2017年1月4日(水曜)から放送されるそう。
BSより視聴が限られてしまうけれど、観られる環境の方は、その機会に。

<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>夢枕獏

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著    :夢枕獏
発行:角川書店



趣味は読書などと言っていた頃が噓のよう…。昔に比べ、読書量がめっきり減った私。
最近は、何かキッカケが無いと本に手がのびず、そのキッカケは大抵映画。今回も例外ではない。

その映画は、(↓)こちら。

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大陸の巨匠・陳凱歌(チェン・カイコー)監督最新作『空海 KU-KAI~妖貓傳/妖猫传』。
染谷将太×黃軒(ホアン・シュエン)ダブル主演の日中合作映画。
湖北省襄陽に唐の街を再現した巨大セットを作り、2016年夏にクランクインしたのは、こちらに記した通り。

お気に入りの俳優・黃軒が、陳凱歌監督最新作に出演、
しかも、日本の染谷クンと共演なんて聞くと、私はもうとっても興味をソソられちゃうわけ。

そんな映画の原作が日本の小説、夢枕獏のこの<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>なのだ。
夢枕獏はファンが多そうなので、言いにくいけれど、
エッセイをちょっと読んだことがあったり、テレビのコメンテーターとしてご本人を知っている程度で、
実は小説をただの一冊も読んだことがない。
この<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>も、どんな内容なのかまったく知らず。

是非読んで、映画の予習をしなくては!と思い、早速本屋さんへ。
…が、まさか全4巻もあって、しかも一冊一冊がブ厚かったのは、予想外。
取り敢えず購入したものの、量の多さに怯み、しばらくは放置状態。
しかし、いざ手を付けたら、これが案外読み易い。
物語の世界にぐいぐい引き込まれたし、一見多いように感じる量も、実は大して多くはない。
私は色々事情があって、途切れ途切れに読む羽目となってしまったけれど、
その気になれば、一日一冊、4日で完読できる量だと感じる。

★ 概要

これ、何かの雑誌に掲載された小説を単行本化したものだと勝手に思い込んでいた私。
いや、実際、そうなのだけれど、“お引越しに次ぐお引越し”の末に完成した小説らしい。

1987年12月に書き始めた小説の第1回が掲載されたのは、1988年2月号の<SFアドベンチャー>。
著者・夢枕獏が、ちょうど密教のおもしろさに気付いた頃で、
元々好きだった空海を主人公に、彼が唐の長安で妖怪と闘う話にしようと、見切り発車。
夢枕獏ご本人も当初は2~3年で書き上げるつもりでいたそうだが、
手探りで、楊貴妃を、李白を、…と加えながら物語が膨らんでゆき、
その間、諸々の事情で掲載誌が4回も変わり、2004年6月号の<問題小説>でついに最終回。
つまり、17年もの歳月をかけ、完結した小説なのですって。
夢枕獏が心血を注いだ17年分を、途切れることなく、4冊で一気に読めた私はラッキーだったのですね。


そんな小説<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>は映画化される前に…

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なんと、空海=市川染五郎、橘逸勢=尾上松也という配役で歌舞伎の演目にもなって、
2016年4月に公演されていた。
うわぁ~残念…!気が付いていたら、観に行っていたのにぃーっ…!
もっとも、その頃はまだ原作小説を読んでいなかったし、映画化の話も公になっていなかったので、
仮に宣伝などを目にしていても、気に留めなかったのでしょうね…。

★ 物語

物語の幕開けは、西暦804年、唐代の中国。
唐朝第12代皇帝・宗(742-805)晩年の頃。
この時、遣唐使船で、儒学生の橘逸勢(782-842)らと、留学僧として入唐した若き日の空海(774-835)が、
唐の都・長安で、様々な怪異に遭遇し、それらを解決しながら、
青龍寺の恵果和尚(746-806)のもと、留学の目的だった密を見事手に入れ、大阿闍梨の灌頂を受け、
第14代皇帝に即位したばかりの憲宗(778-820)から許可を得て、
唐をあとにするまでの約2年間を綴った伝奇小説。


物語のベースは、天才的僧侶・空海が、本来20年のはずの留学期間を、たったの2年で済ませ、
しかも、その間に青龍寺の恵果から密教の奥義を伝授され、大阿闍梨の灌頂を受け、
帰国の途に就いたという歴史的事実。
事細かなエピソードにも史実は盛り込まれているし、実在の人物も数多く登場。

それだけだったら、ただの伝記なのだが、本書では、様々な方面に長けていたと語り継がれる天才・空海を、
さらにその上をいく超人的人物像に仕立て上げ、物語を独創的なファンタジーに膨らませている。

生まれながらの比類なき天才・空海と、
充分頭は良いが、空海と比べるとどうしても凡人になってしまう橘逸勢が、
行動を共にし、唐で起きる不思議な事件に挑む“バディもの”、“推理もの”の要素も。


また、時代背景に関しては、基本的には804年から806年という空海留学期間の2年間だけれど、
唐朝第6代皇帝・玄宗(685-762)から寵愛を受けた楊貴妃(719-756)の死の謎に迫る部分、
つまり、さらに約50年遡った頃も、物語の中で重要な要素として描かれる。

★ 映画版では…

人気小説が映像化されると、原作のファンから「イメージが違う!」と必ず批判が出るものだ。
日中合作映画『空海』は、全貌が明らかになっていない現時点でも、
すでに原作とはかなり違う物なのではないかと私は推測。

『妖猫伝』という中文原題からも想像がつくように、
映画は特に小説の中の妖猫のエピソードを中心に進行するようだ。ミステリーっぽい感じ…?
邦題『空海 KU-KAI』だと、空海の伝記映画を想像してしまうけれど、それは多分違うと思う。

さらに、空海&橘逸勢コンビが活躍するバディものである原作小説と異なり、
映画で空海とコンビを組んでいるのは白楽天(772-846)。

のちに唐代を代表する大詩人・白居易となる白楽天は、
小説の中では、詩作の才にはすでに目を見張るものがあっても、まだ一介のお役人。
倭国からやって来た2歳年下の空海と知り合い、共に楊貴妃の死の謎を追うようになる。
空海帰国の直前には、玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードを謳ったかの<長恨歌>を書き上げ、
それを空海に贈る。

今調べたら、<長恨歌>って、本当に空海が唐を離れた年、806年に創られた作品だったのですね。
空海と白楽天、そして楊貴妃のエピソードを巧く絡めたフィクションと、感心。
本当に唐で空海と白楽天は交流していたかも…、と想像を掻き立ててくれる。

★ 映画『空海』キャスト その①:主人公

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私が本書を読んだのは、映画『空海 KU-KAI』の予習だったので、ここで映画のキャストも少し見ておく。
小説を読み始める前に、すでに主人公2人の配役は知っていた。


空海:染谷将太

“空海=おじいさん”のイメージがあったので、染谷将太が演じると知り、当初はピンと来なかった。
でも、どんなおじいさんにも、青年時代はあるのだ。
そして、そんな若かりし日の空海を描く本書を読み始めてすぐに、この空海は染谷クンにピッタリ!と感じた。
天才といってもガリ勉タイプではなく、本当に天から才を授かったような人で、なんでもサラリとやってのけ、
凡人には真意が読めない神秘性も持ち合わせ、それでいて人をたらし込む愛嬌さえある物語の中の空海が、
染谷クンにばっちり重なった。
問題は、“唐人並みに上手かった”とされる唐語。
染谷将太は、中国語の台詞を頑張っているそうだが、
すでに成人した日本人が中国人並みの発音で中国語を喋るのは、まず不可能だと思う。
最終的には、中国では当たり前の吹き替えに頼るのか、
はたまた“中国人並み”ではなくても、本人の声が使われるのか、どちらでしょう…?


白楽天:黃軒(ホアン・シュエン)

黃軒については、こちらの“大陸男前名鑑”を参照に。
黃軒は、この映画で私が最も期待しているキャスト。
小説の中では、実は橘逸勢より扱いがずっと小さい。
映画は日中合作なので、橘逸勢の代わりに、この白楽天を空海の相棒としたのであろう。
“大陸男前名鑑”にも記した通り、黃軒の曽祖父・黃文中(1890-1945)は、日本に留学経験のあり、
白楽天所縁の地でもある西湖で過ごした時期に、多くの詩作を遺した文人でもある。
私は、黃軒の芸術家的感性に、その曽祖父の血を感じずにはいられないので、
白楽天を演じると知り、これまたハマリ役の予感がした。
但し、映画のメイキング映像を見ると、この白楽天は、私が小説から受けたイメージとやや異なり、
陳凱歌監督は、“知識人ではあるが、子供っぽく、すぐカッとなり易い性格”とイメージしている事が分かる。
落ち着いた空海との対比にもなるので、それはそれで“アリ”。
黃軒が、どのように子供っぽくて、ちょっとやんちゃな白楽天を演じるのか期待。

★ 映画『空海』キャスト その②:その他の登場人物

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現時点で判明している他のキャストについても、軽く触れておく。
こちらに記した、2016年11月発表のものと変わっていない。)


陳雲樵:秦昊(チン・ハオ)

金吾衛の役人。原作に出てくるのは“劉雲樵”。
映画で、この人物の姓が“陳”になっているのは、報道の誤りなのか、
はたまた映画版では敢えて姓を変えたのか、現時点では不明。
とにかく、原作では、この雲樵という金吾衛の屋敷に、猫の妖物が住み付き、彼の妻を寝取るという事件が
物語序盤の大きな山になっている。
婁(ロウ・イエ)監督や王小帥(ワン・シャオシュアイ)監督といったアート系作品で重用される秦昊が、
陳凱歌監督の大作でどう調理されるのかも注目。



春琴:張雨綺(キティ・チャン)

陳雲樵の妻。金吾衛・雲樵の添え物的な、ただの美人妻ではない。この妻に妖猫が憑依してしまうのだ。
なので、怪しげで、艶っぽい役になるのではないかと想像。
張雨綺は、本作品への出演が判明した当初、
楊貴妃役とも伝えられていたけれど、結局この春琴を演じるのですね。
彼女は、確かに猫系の顔かも。英語名も“キティちゃん”だし(笑)。
なお、張雨綺は撮影真っ只中の2016年秋、実業家と電撃再婚しております。



玉蓮:張天愛(チャン・ティエンアイ)

胡玉樓の妓生。胡玉樓は、その名の通り、西域の民族・胡の女性が集まる妓楼。
玉蓮もまた胡の女性で、胡の事情に詳しかったり、仕事柄人脈もあるので、空海の調査を何かと助ける。
演じる張天愛は、主演した低予算ネットドラマ『太子妃升職記』がマサカのヒットとなり、
一躍スターダムにのし上がった注目の若手女優。陳凱歌監督作品に抜擢され、益々箔が付いていきそう。
女優になる前、一時期日本に留学し、日本語も喋れるという噂もあるので、
日本の観衆が親近感を抱く存在になるかもね。



丹龍:歐豪(オウ・ハオ)

胡の道士・黄鶴の弟子。
物語には序盤から、空海に要所要所で助言を与える丹翁という不思議な道士が登場するのだが、
後半戦に突入すると、その丹翁が、実はその昔、“丹龍”と呼ばれていた黄鶴の弟子であったことが判明する。
映画で、若い歐豪が、この丹龍を演じているということは、
空海が唐に留学中の“現在”と、もう一つ、かなり遡った時代も、同時進行で描かれるのか?
年を取った丹龍、つまり丹翁も、年配の別の俳優が演じて映画の中に登場?
若い丹龍を演じる歐豪は、若手シンガー兼俳優。
2015年、東京・中国映画週間のために来日しているので、私もナマで見たことあり。(→参照



白龍:劉昊然(リウ・ハオラン)

白龍もまた黄鶴の弟子で、小説の中では、いつも丹龍とセットで登場。
劉昊然は、1997年生まれ、中央戲劇學院に在学中のまだ十代の学生ではあるが、
ここ1~2年で人気も知名度も急上昇し、
『琅琊榜之風起長林』の主人公に大抜擢された大陸芸能界の超優良株。
この『空海』では、白龍を演じるために、10キロも減量したのだと。
小説の中で、白龍&丹龍コンビは、十代半ばのはずなので、少年っぽさを出すために、痩せたのかもね。



阿倍仲麻呂/晁衡:阿部寛

阿倍仲麻呂(698-770)は、空海よりずっと前、楊貴妃を寵愛した唐朝第9代皇帝・玄宗(685-762)の頃に、
唐へ渡った遣唐使。
小説の中では、実際に交流があったとされる李白(701-762)に宛てた阿倍仲麻呂の手紙が、
楊貴妃の謎を解く鍵となる。
日本人の役なので、演じるのは勿論日本人で阿部ちゃん。
中華圏での知名度は染谷将太よりずっと高いので、
あちらでは、目玉の大物キャスト扱いになっているように見受ける。



あと、こちらに記したように、日本人俳優は他にも、松坂慶子の出演が、
第29回東京国際映画祭での記者会見で発表されている。
演じているのは、日本から唐へ渡った白玲という女性。
小説には日本人女性は登場しないので、映画のために新たに作られたキャラクターであろう。
なお、松坂慶子は2016年9月に中国へ渡り、すでに撮影済み。
衣装を身に着けた松坂慶子のスチールは、今のところ未公開。

他にも、もし映画の中に玄宗皇帝や楊貴妃が登場するなら、この先、演じる俳優が公表されるだろう。
どの美人女優が“傾国の美女”楊貴妃なのでしょう。

原作小説を読んだことで、映画が益々楽しみになってきた。
長い小説の妖猫の部分をどうまとめて一本の映画にしているのか知りたいし、映像美への期待も大きい。
撮影が行われている湖北省襄陽の“唐城”で撮られたスチール写真は、どれもタメ息が漏れる美しさ。
文字でしかなかった小説<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>の世界が、
あの風景の中で実際に動く絵になるのだと考えると、ワクワク。
早く出来上がった映画を観たい。

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

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【2016年/アメリカ/133min.】
帝国軍のオーソン・クレニック長官は、
滞っているデス・スターの開発に不可欠な科学者ゲイレン・アーソの居場所をついに突き止める。
接近してくる敵に気付いた父ゲイレンから、逃げるように命じられた彼のまだ幼い娘ジンは、
ひっそりと隠れた草むらの中で、母が殺され、父が連れ去られて行くのを目にしてしまう。
孤児になったジンは、過激派のソウ・ゲレラに育てられるが、
戦乱の折り、そのソウ・ゲレラとも生き別れ、帝国軍に拘束。

数年後、混乱に紛れ逃走を図ろとしたジンは、
反乱軍の情報将校キャシアン・アンドーと、彼と行動を共にする警備ロイドK-2SOに助けられ、
そのまま反乱軍の本拠地まで連れて行かれる。
ちょうどその頃、帝国軍が開発したデス・スターについて探っていた反乱軍では、
鍵を握る人物ソウ・ゲレラに接触するため、彼に育てられたジンに協力を要請。
早速、ジンは、キャシアン、K-2SOらと出発し、
道中、巻き込まれたゴタゴタから救出してくれた盲目の僧侶チアルート・イムウェと
彼の相棒ベイズ・マルバスも合流して、なんとかソウ・ゲレラのアジトに辿り着く。
そこでジンが目にしたのは、子供の頃に生き別れた父ゲイレン・アーソからのホログラムのメッセージ。
父はジンに説明する、帝国軍に服従しているフリをして開発したデス・スターのリアクターに弱点を作った事、
そのリアクターの破壊には設計図が必要な事を。

本拠地に戻ったジンは、このメッセージを伝えるが、メッセージの信憑性を疑う者さえ居て、
上層部からの同意が得られず、設計図奪取の計画は潰されてしまう。
独自に行動すると心を決めたジンに、キャシアン、チアルート、ベイズらも同調。
彼らは無断で飛び出し、設計図が収められている惑星スカリフを目指そうとするが…。



イギリスのギャレス・エドワーズ監督が手掛ける『スター・ウォーズ』シリーズ最新作。

前作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)は、wowowで放送した物を録画したまま放置して未見。
シリーズ他の過去作品は、全作ではなく、恐らく7~8割観ている。
私は昔から、ハリウッド娯楽超大作には興味が無かったので、積極的鑑賞ではなく、
あぁ、世間ではこういうのが流行っているんだぁ、と知るため程度の鑑賞。
物語も登場キャラクターも、これっぽちも脳裏に残っていないし、
観た私自身が、面白いと感じたのか、ツマラないと感じたのかさえ、記憶にない。

そのように、『スター・ウォーズ』に何の思い入れも無い私が、
それでも、この新作を観たのは、今回はキャストに興味を引かれたから。
『スター・ウォーズ』の熱心なファン並みに、公開直後に映画館へ行ってしまったー。
鑑賞前に、過去の作品もwowowのシリーズ一挙放送でおさらいしようかと考えたけれど、
それはやはり面倒くさいので、やめた。
今更マニアックなファンと張り合おうとは思わないし、
本作品で『スター・ウォーズ』初体験の女子高生などと同じように、
何の知識も無く、真っ新な気持ちで観たら、どう感じるのかを知るのも、悪くない。



本作品は、幼い頃、著名な科学者である父ゲイレン・アーソを、帝国軍に連れ去られ、
孤児となった女の子ジン・アーソが、騒乱の中、自分を救出してくれた反乱軍に加わり、
ある任務を遂行したところ、父ゲイレン・アーソが、帝国軍のために開発したデス・スターに、
実は弱点を隠している事を知り、その設計図を入手するため、身内である反乱軍の反対を押し切り、
志を同じくする仲間たちと“ローグ・ワン”というはみ出し者の精鋭部隊を組んで、
帝国軍のデータが集まる惑星スカリフへ飛び、
命懸けで設計図入手の闘いを繰り広げる様子を描く宇宙活劇

1977年に公開されたシリーズ第1弾『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の冒頭で、
反乱軍が、デス・スターの設計図を盗み出すことに成功したと説明される。
では、その設計図は、どのような人々が、どのような犠牲を払って盗み出したのか?
この新作は、シリーズ第1弾『スター・ウォーズ エピソード4』ではバッサリ割愛されているその部分、
設計図入手のために命懸けで闘った反乱軍戦士たちを描き、
『スター・ウォーズ エピソード4』に繋がっていく“『スター・ウォーズ』外伝”なワケ。

そもそも、1977年に初めて『スター・ウォーズ』が公開された際、
関係者は、それが寅さんの如く、延々と続くシリーズ物になるなんて、考えていなかったであろう。
過去の作品の中から、新たなネタになりそうなほんの些細なエピソードを見付け出し、
そこから物語を膨らませて、新作にするという作業を繰り返し、
よくぞ壮大なシリーズに成長させたものだ。
(意地悪な言い方をするなら、ハリウッドもネタが尽き、
確実な動員が見込める過去のヒット作の続編やリメイクに頼らざるを得ないのかとも思う。)


では、この新作で重要になっている“デス・スターの設計図”とは。
科学者ゲイレン・アーソは、帝国軍に捕らえられ、不本意にも帝国軍の為にデス・スターを開発させられるが、
従順を装いながら、実は、そのデス・スターのリアクターモジュールに密かに弱点を作る。
父ゲイレン・アーソと、幼い頃に生き別れた娘のジン・アーソは、父からのメッセージで、その事実を知り、
デス・スターのリアクターを破壊するために必要な設計図を入手しようと動く。

タイトルになっている『ローグ・ワン』の“rogue ローグ”とは、
“群れに属さない一匹狼”とか“はみ出し者”の意味。
主人公ジーン・アーソは、父からのメッセージを信じ、設計図入手の必要性を説くのだけれど、
身内の反乱軍内に反対意見が多く、その作戦は却下されてしまう。
そこで、ジンと志を同じくするほんの数人だけが、組織の反対を無視して、
設計図が保管されているスカリフに向けて飛び立つ。
で、ある地点を通過する際、管制塔からコードを求められ、咄嗟に口にした「rogue…」が、
そのままチームの名前になる。
組織に従わず、正義のために、危険を顧みず飛び出した彼ららしい自虐的チーム名。
ちなみに、中華圏でのタイトルは、まんま『俠盜一號』。





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気になった出演者をちょっとだけ見ておくと、主人公ジン・アーソにフェリシティ・ジョーンズ
ジンと対立しながらも、やがて信頼できる仲間になっていくキャシアン・アンドーにディエゴ・ルナ
帝国軍に捕らえられ、幼い娘・ジンと生き別れた著名な科学者ゲイレン・アーソにマッツ・ミケルセン等々。

ギャレス・エドワーズ監督と同じイギリス出身の女優、フェリシティ・ジョーンズと言えば、
『博士と彼女のセオリー』(2014年)で演じたスティーヴン・ホーキング博士の妻ジェーンの印象が強い。
理論物理学者の妻を演じた後、この新作では科学者の娘を演じたわけね。“学者の身内”系女優…?
気難しい天才学者に振り回されても耐え、陰で支えるジェーンとはガラリと異なり
(まぁ、あのホーキング博士の妻をやるのも、ある意味、壮絶な闘いだとは思うが)、
このジン・アーソは、命を顧みず果敢に闘う“少女戦士”。
1983年生まれ、すでに33歳のフェリシティ・ジョーンズだが、実年齢を感じさせない少女っぽさがあった。


非英語圏からは、ディエゴ・ルナが、『スター・ウォーズ』初参戦。
ディエゴ・ルナは、ガエル・ガルシア・ベルナルと何かとセットで記憶に残るメキシコ人俳優。
扮するキャシアン・アンドーは、当初、“腹に一物ある”と思わせる男。
上からの命令で、ジン・アーソを監視していたことが、本人にバレ、益々不仲になるが、
共に闘う内に、絆が深まり、やがて恋に発展?と匂わす。


北欧からは、すでにハリウッド作品でもお馴染みのデンマーク人俳優、マッツ・ミケルセン。
マッツ・ミケルセンには、ついつい悪役とかクセ者のイメージを抱いてしまうけれど、今回は終始善良。
余談になるが、私、このマッツ・ミケルセンとミッツ・マングローブがたまにゴッチャになり、
“ミッツ・マケルセン”と呼んでしまうことがある。   皆さまは、そういう間違いありませんか?



キャストに関する本題はここから。
『ローグ・ワン』公開直後の映画館に、私の足を運ばせた要因は、以下の中華な二人。

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フォースを信じる盲目の僧侶、チアルート・イムウェ役の甄子丹(ドニー・イェン)と、
フォースを疑いながらも、相棒チアルートと共に闘うベイズ・マルバス役の姜文(チアン・ウェン)

アメリカを抜くのは時間の問題と目される、発展著しい中国の映画市場。
ハリウッドも、そんな中国を無視できる訳もなく、スリ寄りを始め、
ここ数年は、中米合作映画が激増しているし、ハリウッド作品の中で華人俳優を目にする機会も増えた。
そのような華人俳優は、あからさまに中国市場を狙った客寄せパンダ的に、
作品の中に添え物程度に登場することも多いのだが、今回はガッツリとメインキャスト!
しかも、世界的に人気のあの『スター・ウォーズ』で、…である。
『スター・ウォーズ』にアジア人俳優が登場するだけでも驚きだが、さらに演じるのが主要登場人物とは、
時流の変化を感じずにはいられない、ちょっとした歴史的事件。
日本がイケイケだったバブル期でも、日本人俳優には、そんな機会は無かった。
映画界でも、中国の勢いを感じます。

“宇宙最強”と称されるアクション・スタアで、英語をネイティヴ並みに喋る香港の甄子丹は、
成龍(ジャッキー・チェン)、李連杰(ジェット・リー)に続く“ハリウッドに一番近い華人俳優”だと思っていたので、
『スター・ウォーズ』シリーズに出ると知り、あぁ、やっぱりね、と納得。
これまでにもハリウッド作品には、ちょこっと出てはいたけれど、遂に大舞台に立つべくして立ったという印象。
それでも、この度、“宇宙最強”の男が、本当に宇宙で座頭市になっている姿を実際に見て、鳥肌が立った。
…が、正直言って、物足りなさもアリ。
本作品での甄子丹は、あくまでもローグ・ワンの一員チアルート・イムウェであり、
『ローグ・ワン』は彼の武術の腕をとことん見せるための作品ではないのだ。
甄子丹を堪能したかったら、やはり中華電影ですね。


本作品で甄子丹に興味を抱いた日本の皆さまのために(?)…

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2017年4月、甄子丹主演作『葉問3~IP MAN 3』が新宿武蔵野館他でロードショウ公開。
甄子丹のアクションは、こちらの方が凄いハズ。
宇宙から地上に降りてきた甄子丹は、あのマイク・タイソンとも一戦を交えるそう。

ちなみに、“破格”と言われるハリウッド映画のギャラだが、
『ローグ・ワン』で大金を手にしたのは主演女優・フェリシティ・ジョーンズで、
周りの男性キャストは、彼女よりずっと少ないらしい。
少ないと言ってもハリウッドなので、それなりの額だろうが、
近年中国はギャラが高騰しているので、甄子丹クラスのトップスタアにとっては、
中国での稼ぎよりガクッと落ちる額なのだと。



当たり前のようにハリウッド進出した甄子丹より、私をずっと驚かせたのは、こちらの方。

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中高年男性をこよなく愛す私mangoが、大陸一エコ贔屓しているオヤジ・姜文!
英語はブロークン、アクションもやらない五十男が『ローグ・ワン』に出演すると知り、当初、冗談かと思った。

大陸ではまだ公開されていなこともあり(2017年1月6日公開)、
キャスティングの経緯など、姜文に関する裏話は、今のところ、まだあまり出ていない。
私の想像だが、監督やプロデューサーといった裏方さんの中に、姜文ファンが居るのでは…?
『ローグ・ワン』のエンディングで、主要キャストが次々と紹介され、
最後の最後に“and Jiang Wen”と特別扱いでクレジットされているのを見ても、彼に対する敬意を感じた。
アメリカや日本での姜文の知名度は、甄子丹より下かも知れないが、
俳優のみならず監督としても活躍し、ヨーロッパの映画祭で幾度となく受賞している彼は、
カリスマ性と存在感がある個性派で、同業のプロからも受けるタイプだと思う。

そんな姜文は、大の『スター・ウォーズ』ファンである二人の子供から
熱烈にせがまれ、出演オファーを受けたものの、
自身は、冷戦の影響で、『スター・ウォーズ』を観たことが無いと語っている。
その事をギャレス・エドワーズ監督に話したら、「そのまま観ないで。撮影が終わってから観て」と頼まれたそう。
確かに、扮するベイズ・マルバスは、自分たちが命懸けで手に入れた設計図が、
その後どうなるかなどという未来を知らずに闘っているのだから、姜文が何も知らないのはリアルである。

このベイズ・マルバスは、チアルート・イムウェの良き相棒。
一般的なコンビと同じように、このコンビも、まったく似ていない二人がセットになっており、
神秘的な雰囲気を漂わす盲目の僧侶・チアルートに対して、ベイズ・マルバスは豪快で朴訥とした雰囲気。
心も体も大きい、あの大陸的な豪快さは、まさに私が感じる姜文の魅力なので、
ベイズ・マルバスは姜文を念頭に宛て書きしたキャラなのではないかと想像してしまう。


『ローグ・ワン』で初めて姜文を知り興味をもった日本の皆さまには、彼の出演作、監督作の鑑賞は勿論の事、
離婚発表で昨今ちょっとした話題の香川照之の著書中国魅録~「鬼が来た!」撮影日記もお薦め。

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『鬼が来た!』は、2000年第53回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した姜文監督作品で、
香川照之が“実力派俳優”として注目されるキッカケにもなった中国映画。
その撮影の記録が綴られた著書では、数々の“姜文ゴーカイ伝説”にも触れられる。
香川照之は、自著に、自分をいたぶった姜文監督に対する恨みツラミを書き綴る一方、
彼を“全知全能の神”、“現人神”とまで称賛している。





過去の『スター・ウォーズ』を知らなくても、独立した一本の作品として楽しめると思う。
勿論シリーズ他作品を観ていれば、食い付き所もさらに増えるであろう。

私自身は、うーン、そうねぇ、やはり私好みのジャンルではないと思った。
それなりに楽しめはしたけれど、「最高!」と手放しで大絶賛する世間の人々とは距離を感じる
冷めた自分がいる。

鑑賞中、チラッと重なったのは、今秋、東京国際映画祭で観た林超賢(ダンテ・ラム)監督の『メコン大作戦』
“チーム一丸となって、危険な敵に立ち向かい、壮絶なバトルを繰り広げる中、仲間がバタバタ殉職していく”
という大筋が、『メコン大作戦』と共通。
『メコン大作戦』も、私好みとは言い難い作品ではあるが、
心臓バクバク度は、実は『ローグ・ワン』より遥かに高かった。
今思うと、『メコン大作戦』は、あの手のクライム・アクションが好きな人にはタマラない秀作なのかも。

『ローグ・ワン』の方は、『スター・ウォーズ』ファンにとっては、“お祭り”的作品でもあるのだろう。
まぁ『ローグ・ワン』と限らず、ファンは、次々と発表される新作を“お祭り”、“イベント”として楽しむ感覚も
少なからず有ると見受ける。
自国のトップスタアが出ているとなると、なおの事で、
1月に大陸で公開されたら、相当なヒットを記録するのでは。

クリスピー・クリーム・ドーナツ:限定ドーナツ2種(+『ローグ・ワン』北京プレミアとかテレビ雑記とか)

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中国では、2017年1月6日(金曜)の公開を控え、昨日12月21日(水曜)、北京でプレミア上映を開催。



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会場は、北京五輪の水泳競技場として知られる“水立方”こと北京國家游泳中心(北京国家水泳センター)。
そこにIMAXスクリーンを設置。
極寒の北京で、何時間も前から、コスプレした熱心なファンが集まり、大層盛り上がったという。
さすが中国、大規模&豪華。元々未来的な建築の水立方に、凝った演出が施され、
まるで本物の宇宙ステーションのよう。『スター・ウォーズ』のプレミアにぴったりではないか。
『スター・ウォーズ』ファンではない私でも、ワクワクしちゃう雰囲気。



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登壇したのは、イギリスからギャレス・エドワーズ監督と、ジン・アーソ役のフェリシティ・ジョーンズ、
メキシコからキャシアン・アンドー役のディエゴ・ルナ、香港からチアルート・イムウェ役の甄子丹(ドニー・イェン)、
そして地元在住、ベイズ・マルバス役の姜文(チアン・ウェン)も当然ながら。
(フェリシティ・ジョーンズ、恐らく氷点下であろう冬の夜の北京で半袖は、相当キツイはず。
それでも笑顔を浮かべ、ファンサービスの女優魂!私、絶対に無理。命に係わる…。)


甄子丹は、妻と二人の子を連れ、北京入りし、レッドカーペットにも一家揃って登場したそう。
息子クンは、パパが演じたチアルート・イムウェに大満足で…

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チアルート・イムウェのコスプレで出席。
この子も、いつか世界的アクションスタアになるのでしょうか。
お年頃のお姉ちゃんの方は「『スターウォーズ』?別に興味ないしぃー」と冷めているかというと、そうでもなく…

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お姉ちゃんもやっぱり『スター・ウォーズ』ファンで、実はストームトルーパーの衣装を持っている。
二人とも、子供用でサイズがピッタリということは、東急ハンズみたいな所で既製の物を買ったのではなく、
フルオーダーで作らせたのだろうか。さすが、金持ちの子。


それはともかく、プレミアと同日、記者会見も開催。

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甄子丹も姜文も、『ローグ・ワン』に出て良かったのは、やはり子供が喜んでくれた事みたい。パパですね。

他、監督としても有名な姜文は、「イギリス人は働き者で、朝4時から撮影を始める」と発言。
それに対し、ギャレス・エドワーズ監督は、「いや、朝4時に呼び出したのは、姜文だけ」と返答。
「一度、朝4時に起きて、夕方4時までひたすら待機し、結局その日自分の撮影は無いと知らされたことがあった」
と姜文はボヤいたという。

さらに、姜文は、自分が演じたベイズ・マルバスについて、“宇宙版張麻子(アバタの張)”と説明。
張麻子は、姜文の監督&主演作『さらば復讐の狼たちよ』(2010年)の中で、自身で演じた山賊のこと。
言われてみれば、そんな感じかしら。
監督とかプロデューサーの中に、『さらば復讐の狼たちよ』を観た人が居て、
ベイズ・マルバスにあのイメージを重ね、姜文をキャスティングしたのだろうか…?
『ローグ・ワン』でベイズ・マルバスや姜文に興味が沸いた方は、
参考に『さらば復讐の狼たちよ』を観るのも、良いかも知れませんね。




続いて、日本の話。近々放送の要予約テレビ番組を。

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まずは、明日、12月23日(金曜・祝)、フジテレビ午前の情報番組『ノンストップ』
ほとんど観たことが無い番組なのだけれど、祝日のこの日に、どうやら香港特集を組んでいるようなので録画。
香港7回目の千秋が、千秋流香港の楽しみ方を紹介するみたい。蓮香居で飲茶か?
目新しい情報はあまり無いように想像するが、それでも香港なら観る。




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同日の夜は、NHK BS1のドキュメンタリー番組、『BS1スペシャル』
今回は、“文化大革命50年 知られざる‘負の遺産’~語り始めた在米中国人”という文革特集。
1966年から十年続いた文化大革命が終焉し、今年で50年。
中国本土では未だ事実の検証が進まない文革だが、
歴史を風化させてはならないと語り始めたのが、アメリカ在住の中国人たち。
彼らの証言からは、従来の見方とは異なる文革の実態も見えてくるという。
文革モノには目が無い私、当然ながら、この番組も必見。




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12月24日(土曜)は、NHKで『渡辺直美 世界のポップアイコンへ~おこがましくてゴメンナサイ』
ビヨンセのモノマネでお馴染みの渡辺直美が、
芸歴十年の今年、初めて挑戦したワールドツアーに密着したドキュメンタリー番組。
回ったのは、2014年に留学したNY、エンターテインメントの聖地LA、
そして母の出身地である第2の故郷・台湾。
他、ファッションブランドをプロデュースする彼女のミラノでのお仕事にも密着しているという。


最後は再放送の番組をついでに一本。
12月25日(日曜)朝、BSプレミアムで放送の『桃源紀行』
取り上げるのは、北京の什刹海。近くに練習場がある舞踊団で働く女性が街案内をする。
私、これ、以前に観たかしら、それとも観逃した回かしら…??
覚えていないくらいだから、仮に初見ではなくても、新鮮な気持ちで楽しめそう。
什刹海は、天安門の北に位置する人造湖。
冬、凍った湖面で北京っ子がアイススケートを楽しむ場所として、
また、夜はネオン煌めくバー街として、外国人観光客にも有名。
昨秋、東京・中国映画週間で上映された『ロクさん~老炮兒』(2015年)もこの辺りで撮影されているので、
この映画が好きな人や、吳亦凡(ウー・イーファン)君のファンも、どうぞ。




ところで、日本初上陸時には、大いに話題となり、大行列ができたアメリカ発のドーナツ屋さん、
クリスピー・クリーム・ドーナツ(公式サイト)が、
最近、どんどん店舗数を減らし、経営を縮小しているのだとか。
日本第1号店の新宿サザンテラス店も、2017年1月3日(火曜)を最後に閉店するという。
「甘過ぎて、日本人の口に合わなかったからだ」と言う人もいるけれど、
元々激甘党の私は、クリスピー・クリーム・ドーナツを甘過ぎると思ったことはない。
我が辞書に“甘過ぎる”の文字は無し(笑)。

“経営縮小”というより、そもそも日本上陸当初、アメリカのたかが庶民派ドーナツが、実力以上に騒がれ、
経営を拡大し過ぎたのが、今、本来のあるべき規模に戻りつつあるだけと感じる。
進出しているアジアの他の国でも、大行列ができ入手困難なんて話は聞いたことが無いし、
日本が特別だったのでは。日本は宣伝が上手い上、それにひょいひょい乗っかる人が多いのかもね。

それより、今回の閉店のニュースで、
新宿サザンテラスの大行列が報じられたのが、もう十年も前の事だったのだと、改めて知り、ビックリ。
せいぜい5~6年前だと思っていた。
こうやって月日が光速でビュンビュンと流れ、老いていくのかと考えると、恐ろしくなる…。


この十年に数える程しか食べたことない、そんなクリスピー・クリーム・ドーナツを、久し振り食べた。
姪っ子が買ってきて、皆で食べたらしい。出遅れた私には、選択権など無かったけれど…

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箱を開けたら、ちゃんと2個残されていた。
何がナンでも食べたい物ではないが、だからといって、“皆で全部平らげ、私の分はゼロ”なんてことになると、
結構カチン!と来ちゃうものなのヨ。2個残されていたお陰で、無駄にイラつかずに済み、良かったわ。


2ツとも、12月25日(日曜)までの限定商品。クリスマスらしいデザインで可愛い。

★ チョコカスター・ボックス

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大きさは、だいたい7センチ角。
中にカスタードクリームを詰めて、チョコアイシングをかけ、
ゴールドのパウダーとチョコのリボンで飾ったドーナツ。




ひとつめは、“チョコカスター・ボックス”
定番の“チョコカスター”のホリデーヴァージョンとのこと。
つまり、普段は、おリボンが無く、チョコアイシングをかけただけのシンプルな状態で売られているのだろうか。
おリボンをかけるという、ほんのひと手間を加えただけで、クリスマスっぽい雰囲気に変身。

私は、定番の“チョコカスター”とやらを知らないので、
大きなクッションのようなドーナツの中に、クリームがたっぷりパンパンに詰まっているものだと想像。
ところが、カットしたら、中はほとんどが生地で、
クリームは中央一直線に棒状に流し込まれているだけだったので、ちょっと肩透かしを食らった…。
でも、まぁ、そのドーナツ生地は、見た目通りクッションのように弾力があり、なかなか。

本当は電子レンジで温めたら、生地が出来立てのように蘇り、もっと美味しく頂けたのではないかと思うが、
チョコアイシングが溶けるのではないかと懸念し、断念。
画像は、光の加減が悪く、ドーナツが不味そうに見えてしまい、残念。

★ スノーマン・チョコレート

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大きさは、長さ約11センチ、幅約7センチ。
生チョコ入りチョコレートクリームを詰め、表面をホワイトチョコで覆い、
ストロベリー・ピューレ入りナバージュを巻いて、雪だるまに見立てたドーナツ。




こちらは、“スノーマン・チョコレート”
毎年販売されているようだが、今年は、中のチョコレートクリームに生チョコを混ぜ、より贅沢にしたらしい。

“たい焼きをどこから食べるか”と同じように悩んだ末、私は、愛嬌のあるお顔は残し、胴体から攻めることに。
ところが、チョコレートクリームは胴体にしか入っておらず、頭部は生地だけだった。
そうと知っていたら、胴体はお楽しみにとっておき、お顔から食べたのに…。嗚呼、後の祭り。残念…!

全体を覆っているホワイトチョコの方は、想像していたより量が多く、結構厚い層になっている。
中の柔らかなチョコレートクリームと違い、こちらはしっかり固まり、パリッとした食感。
マフラー部分は、甘酸っぱいストロベリーが、チョコレートとの相性が良く、味のアクセントにもなっている。

ホワイトチョコが好きなので、“チョコカスター・ボックス”より、こちらの方が気に入った。
なにより、雪だるまが可愛らしい。

北京2016:前門・大柵欄

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撮り過ぎた写真の整理がつかず、すっかり滞っている2016年度版北京備忘録。
年内にせめて一つくらい…、と久し振りに更新。


今回更新するのは、夕方の空いた時間にちょこっと散策した前门(前門)、大栅栏(大柵欄)近辺について。

前門は、紫禁城を中心とした内城を取り囲む城壁に構えられた9ツの城門、“九門”の内、
北京城の中軸線上、南端に建つ紫禁城内城の中でも最も重要な正門に当たる“正阳门(正陽門)の俗称。
そこからさらに南側にずーっとのびる前门大街(前門大街)という通りは商業エリア。いわゆる“城下町”。
それら詳しい歴史や位置関係については、以前記したこちらをどうぞ。

★ 箭楼

天安門広場のちょうど南端なので、ここら辺は天安門広場へ行ったついでに立ち寄るのも良いであろう。
広場からちょっと歩いて南下すれば良いだけ。

この日、私は、他の場所から地下鉄2号線でやって来て、前门(前門)駅で下車。
地上に出て、前門の箭楼(城門を防御するための櫓)をくぐり抜け、前門大街へ出ようとしたら…

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その箭楼が修復工事中で閉鎖…!
みすみすトンネルの向こうに前門大街が見えているのに、
通り抜けられないので、ぐるーーーっと回って目的地に向かう。

★ 前門大街

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そして、はい、こちら前門大街。
北京オリンピックに合わせ大改修され、2008年8月に全面開放となった歩行者天国の商業エリア。




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通りに入ってすぐ右手に建つ星巴克咖啡(スターバックス)は、
チャイナなテイストが可愛らしい建物で、外国人観光客なら必ず写真を撮ってしまいますよね。
中国にはこういうチャイナなスターバックスが結構ある(北京もここ一ヶ所ではない)。
東京のスターバックスももっと和テイストにすれば、外国人観光客が喜ぶのに…、といつも思う。




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北京の杜莎夫人蜡像馆(マダム・タッソー)があるのも、この前門大街。
入場料を払わなくても、誰でも見られる、入り口の蝋人形は、しばしば入れ替えている模様。
この時、正面でお出迎えしていたのは成龍(ジャッキー・チェン)。
次から次へと人がやって来て、成龍とのツーショットを撮っていた(無料)。


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私が北京を去ったほんの一週間ほど後、このマダム・タッソーでは、
劉濤(リウ・タオ)扮する霓凰郡主の蝋人形がお披露目。

ちなみに、以前こちらにも記したように、
通常、宗主・梅長蘇は上海、靖王は武漢のマダム・タッソーにそれぞれ展示されているのだけれど…

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近々、お三方が北京で集結展示予定。この特別展示の期間は、マダム・タッソーの微博などでお調べ下さい。





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清代末期から民国時代初期の街並みを再現している前門大街では、
街灯、プランター、ゴミ箱、マンホールなど、細部までレトロにしております。

★ 大柵欄

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前門を背に、前門大街を南下し、間も無くして右手に見えてくる横道、大栅栏(大柵欄)へ。
ここも歴史は古く、明代から商人が集まる商業エリア。
その昔、北京では、治安維持のため、各通りの入り口に、盗賊の侵入を防ぐ木製の柵が設置されていたが、
中でも、地元商人たちの出資で建てられたこの地域の柵は大きく立派だったため、“大柵欄”と呼ばれ、
それがそのまま地名に。

前門大街と比べると、ずっと道幅が狭く、短い通りだけれど、
今でも、ここには創業百年を超える北京の老舗が数多く集まっている。
大柵欄の詳しい歴史や、ここにある老舗等については、以前に記したこちらを参照。



今回、私が立ち寄ったのは、こちら。

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薬の老舗、同仁堂。たかが薬屋、されど薬屋。薬屋さんにしてはやけに立派な店構え。
同仁堂は、雍正帝の時代から清朝が滅亡するまでの188年、
その間、歴代8名の皇帝のお薬を請け負った“清朝御用達薬局”。

漢方薬はカサ張るし、税関で引っ掛かる素材などもありそうで、面倒なので、買わないが、
同仁堂では他にも、漢方を活かしたオリジナルのコスメやサプリも販売している。
それらが売られているのは地階。

店内撮影禁止の表示があったので、画像は無い。
お店の入り口を入ったら、右側にある階段から、地下へ下がりましょう。
2年前に来た時ちょうど改装中だった地階は、明るい雰囲気にリニューアルされていた。


綺麗になった店内をゆっくり見て回ることもなく、目的の品をさっさと購入。

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いつも買っている面贴膜(フェイシャルマスク)。
ホワイトニング効果がある“美白润肤面贴膜(美白潤膚面貼膜)”と
肌にハリをだす“紧致活肤面贴膜(緊致活膚面貼膜)”。
フェイシャルマスクは種類豊富。色々あるので、皆さまも、お好みの物を探しましょう。
あと、今回は、“金芝护手霜(金芝護手霜)”というハンドクリームも買ってみた。
金芝というのは、漢方でよく使われるサルノコシカケ科の植物・霊芝(れいし)の一種、
黄芝(おうし)の別称らしい。



◆◇◆ 同仁堂 Tongrentang ◆◇◆
北京市 西城区 大栅栏 商业街 24号

OPEN: 8’00am~8’00pm

★ 大柵欄さらに奥

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まだ多少時間があったので、大柵欄をさらに西の方向へ散策。
奥へ行けば行くほど、人は少なくなり、
古いけれど雰囲気のあるお店、欧米人バックパッカーが集い、昼間から呑んでいるお店、
地元庶民が買い物をする日用品店などが増えてくる。ここら辺では、裸族(?)も気兼ねなく闊歩。




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多爾袞(ドルゴン)の好物だと言っていたので気になっていた伝統菓子“格格酥”を売るお店や、
何種類もの山査(サンザシ)菓子を売るお店も。
大柵欄入り口付近では、3.5~4元で売られていた北京名物の壺入りヨーグルト・老北京酸奶も、
奥の方では3元と、ちょっとお安くなっていた。
ちなみに、ヨーグルトの後ろにチラリと見えるアイスクリームの広告は、
林更新(ケニー・リン)&楊穎(アンジェラベイビー)。

★ 蘇りのフットマッサージ

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歩いていたら、小さなマッサージ店が目に飛び込んできた。
普段、旅行中のマッサージは、夜、ホテルの近くの店へ行き、その日一日の疲れを取るのだが、
この日はヘロヘロで、夕方すでに足がパンパン。
このままでは残りの予定をこなせない、取り敢えず応急措置的に揉み解してもらいたい!と思い、
その店に飛び込んだ。

お姐サマばかり3人が、つまみ食いをしながら井戸端会議をしている気の置けない店内は、
まるで寂れた田舎街を舞台にした中国映画に出てくる美容院のよう。
マッサージのメニューを見せてもらったところ、一番簡単なフットマッサージが75元/45分だったので、
50元(≒8百円)で20分だけやってもらえるか尋ねたところ、OKの回答。

お手軽マッサージでも、桶に薬剤を入れた湯で足を温め、洗うところからちゃんとやってくれたし、
この20分で本当に生き返った…!

「今度は一時間たっぷりで全身マッサージやりに来て」と言われた。
明朗会計だし、この地域でヘロヘロになったら、また寄ってもいいかも。
表に出ている看板は、“御足堂(おみあしどう)”だけれど(笑)、
正式な店名は、“京兰玉康乐堂(京蘭玉康樂堂)”というらしい。
宋玉兰(宋玉蘭)というお姐サマが経営しています。


◆◇◆ 京兰玉康乐堂◆◇◆
北京市 宣武区 大栅栏 铁树斜 24号

足疗(フットマッサージ):75元/45min.

一日遅れのお一人様ブッシュドノエル(+『空海~妖猫伝』新キャスト発表)

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湖北省襄陽に再現された巨大な唐城で撮影が続く
陳凱歌(チェン・カイコー)監督が手掛ける日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』

主演の染谷将太、黃軒(ホアン・シュエン)他、これまで公表されていたキャストについては、
最近読み終えた原作小説、夢枕獏の<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>についてのエントリに記した通り。

2016年最後の日曜日だった昨日25日、新たなキャストが公表された。
ちょっとしたクリスマスプレゼント?



まずは、どの俳優が演じるのか気になっていた2ツの役を見ておこう。

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張魯一(チャン・ルーイー):唐玄宗(685-762)

美女・楊貴妃に溺れ、絶頂期の唐を衰退させたと言われる唐朝第9代皇帝・玄宗。
演じる張魯一は、30代半ばの中堅俳優。
画像によって、胡歌(フー・ゴー)似の美男子に見える時と、Every Little Thingの伊藤一朗に見える時があり、
私は、彼がカッコイイのか、それほどでもないのか、よく分からなかったのだけれど、
あちらでは女性にかなり人気があるようで、今回の発表で最も反響が大きい一人。
最近、『老九門~The Mystic Nine』、『麻雀~Sparrow』といった話題のドラマにも出て、
注目度の高い俳優さんであることは確か。


張榕容(チャン・ロンロン):楊貴妃/楊玉環(719-756)

日本でも有名な“傾国の美女”楊貴妃は、張雨綺(キティ・チャン)が演じるという噂があったけれど、
その張雨綺が妖猫が憑依した春琴役だと判明してからは、「じゃあ誰が楊貴妃?」と気になっていた。
“中国四大美女”の一人に挙げられる楊貴妃だから、人々の関心もついつい高まるが、
結局、台湾の張榕容だったのですね~。
私個人的には、実は張榕容の顔はあまり好みではないのだけれど、
楊貴妃は西域出身という説が根強いので、バター臭い顔の張榕容は、案外正しいキャスティングかも。
あと、張榕容出演作だったら、私は、梁朝偉(トニー・レオン)&金城武らと共演している
『擺渡人~See You Tomorrow』も観たーい!




続いて、昨日公表された他の配役もチェック。

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田雨(ティエン・ユィ):高力士(684-762)

高力士は、玄宗皇帝に仕える宦官。
原作小説では、この高力士が、死の直前に、阿倍仲麻呂に宛て、したためたとされる手紙の中で、
楊貴妃の出自に関する驚愕の事実が明かされる。
演じる田雨は、かなりの数の映画やドラマに出演しているアラフォー男優。
恐らく田雨の出演作を観たことが無い私が、なぜ彼を知っているかというと、
かつてあの湯唯(タン・ウェイ)と恋の噂があったから。今はもうどちらも別のお相手と結婚しております。


劉佩(リウ・ペイチー):黄鶴

架空の人物・黄鶴は、胡の道士。丹龍&白龍のお師匠さん。
安禄山の乱の折、楊貴妃を処刑せざるを得ない状況に迫られた玄宗皇帝に、
尸解(しかい)の法を用いて、彼女を取り敢えず仮死状態にして埋蔵し、後で掘り出すという大胆な提案をする。
さらに、物語終盤、実はこの黄鶴が楊貴妃の実父で(…!)、
唐の滅亡を企てていたという仰天の事実が明るみになる。
このクセ者を演じるている劉佩は、陳凱歌監督2002年の作品、
『北京バイオリン』の、あの田舎の純朴な父親ですヨ~。
最近は、ドラマ『武則天 秘史~武則天秘史』の上官儀役で見た。


辛柏青(シン・バイチン):李白(701-762)

李白は、“詩仙”と称される唐代を代表する詩人。
原作小説の中では、阿倍仲麻呂と交流があったとされる。
って事は、阿倍仲麻呂役の阿部寛との絡みの演技も見られるかも…?
公表されたスチールを見ると、私がイメージする李白より、随分気さくな雰囲気(笑)。
扮する辛柏青は、映画、ドラマの他、舞台でも活躍する40代の俳優。
奥さんは、『海洋天堂』(2010年)で末期癌の李連杰(ジェット・リー)を支えるご近所の女性・柴嫂を演じていた
朱媛媛(ジュー・ユアンユアン)。


成泰燊(チェン・タイシェン):丹翁

丹翁は、入唐したばかりの空海と出逢い、
その後も要所要所で彼に幻術を見せたり、助言を与える不思議な道士。
演じているのは、日本でも中華電影マニアにはそこそこ有名な成泰燊。
結構な数の出演作が、国際映画祭で受賞しているし、
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品『BIUTIFUL ビューティフル』(2010年)では、
ハビエル・バルデムとも共演している、ちょっとした国際派。ドラマニアも要注目!だってね…

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『琅琊榜之風起長林』に、東海の国主・墨淄侯の役で出演することが発表されている。
その『琅琊榜之風起長林』の主演男優は、こちら『空海』で白龍に扮する劉昊然(リウ・ハオラン)君。

『空海』の丹翁に話を戻すと、
物語後半になると、若かりし日のこの丹翁が、実は黄鶴の弟子・丹龍であることが判明。
つまり、歐豪(オウ・ハオ)君がオッサン化すると→成泰燊になる、ということ。


李淳(メイソン・リー):執事官

李淳は、著名な映画監督・李安(アン・リー)の息子。
アメリカ育ちゆえ、苦手だった中国語を克服して出演した映画『風の中の家族~風中家族』(2015年)が、
日本だと、第28回東京国際映画祭でお披露目されている。
日本公開作品だと、『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』(2011年)等に出演。
ルックスは、伊藤淳史と似たタイプで、はっきり言って、二枚目俳優ではない。
この度『空海』で演じている役は執事官らしいが、役名など詳細は不明。


秦怡(チン・イー) :?

秦怡は、『クィーンズ 長安、後宮の乱~母儀天下』で、晩年の王政君役でチラリと出てくる女優さんと言えば、
大陸時代劇を観ている人なら、お分かりになるだろうか。
1922年生まれ、来月なんと95歳になる大ベテラン!未だ現役とは信じ難い。
この『空海』で演じる役名は、公開されていない(少なくとも、私は見付けていない)。
原作小説に、機織りをする老婆が出てきたかどうか、一生懸命記憶を辿っているのだけれど、…うーン。
大きな可能性は2ツ有るように思う。
一つは、老いた楊貴妃。そして、もう一つは、妖猫が憑依した春琴。
なんとなく、後者の可能性の方が高い気がする(勿論、両方間違っている可能性も否定できない)。
もし正解なら、張雨綺(キティ・チャン)が老いると→秦怡になる、…という事。



最後は、日本人出演者について。
昨秋の東京国際映画祭で、出演が発表された(→参照松坂慶子のスチールが、やはり昨日公開された。

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松坂慶子が演じているのは、原作には登場しない、日本から唐へ渡った白玲という女性。
楊貴妃の謎を解く秘密を知る重要な役とのこと。



前回のキャスト発表では、フレッシュな顔ぶれを出してきたが、今回は実力派が中心という印象。
下はアイドル系の十代から、上は一世紀近く生きている大ベテランまで、色んな意味で俳優の幅が広い。
あと、安禄山や、順宗皇帝に仕える宰相・王叔文、王叔文の側近・柳宗元なども、もし映画の中に登場するなら、
この先、新たにキャストが発表されるかも?

ちなみに、本日、『空海』の公式微博には、「据悉,妖猫已潜入帝都,三天后将掀风浪
(なんでも、妖猫はすでに帝都に潜入。3日後、波風が巻き起こる)」と意味深な書き込み。
3日後に何が起こるのでしょうか。

この映画の原作小説、夢枕獏の<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>や、
すでに発表されていたキャストに関しては、こちらを参照

私mangoの一押しキャストは、白樂天を演じる主演の黃軒(ホアン・シュエン)。
彼については、こちらの“大陸男前名鑑”を。





『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』の話が出たので、ついでに記しておくと、
本日12月26日は、飛流役・吳磊(ウー・レイ)のお誕生日。
「你好,我的十七岁(僕の17歳、こんにちは)」というコメントと共に、(↓)このような画像を微博に載せている。

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あの小生意気な飛流が17歳ですよぉ。まだ17歳と言おうか、まだ17歳と言おうか…。
とにかく、美男子に成長中。吳磊クン、17歳のお誕生日、おめでとうございます!




“ついで”をもう一つ。昨日食べたケーキをば。
クリスマスは過ぎてしまったが、食べた記録として残しておく。

★ ル・フレザリア・パティスリー:ビュシェット・マロン・カシス

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大きさは、長さ約7センチ、幅約4.5センチ。
マロンとカシス、2種類のムースを重ね、上部にマロンクリームを絞ったケーキ。




今年食べたのは、ル・フレザリア・パティスリー(公式サイト)“ビュシェット・マロン・カシス”
クリスマスは、やはりブッシュ・ド・ノエルかしら…、と思い、“お一人様ブッシュ・ド・ノエル”をセレクト。

主の部分は、マロンとカシス、2種類のムース。とても柔らかで軽い。
表面に塗られたカシス・コンフィチュールの酸味が利いている。

一方、洋酒はあまり利いていない。
同じシリーズで、“ビュシェット・フレーズ・ピスターシュ”という、洋酒をまったく使っていない、
苺、ピスタチオ、ホワイトチョコのケーキも売られていて、
私は敢えて、洋酒使用のこちらを購入したのだが、その洋酒の風味をあまり感じられず、残念。
クリスマスケーキは、子供も食べることを意識して作っているのだろうけれど、
2種類有るのなら、一つは子供に媚びないオトナ仕様のケーキにしても良いのでは。

画像に、少量映っている生クリームは、板チョコを留める糊の役割をしているだけの物。
その板チョコは、正直言って、あまり美味しくなかった。
ちなみに、側面に飾られているメタリックに輝く雪の結晶もチョコレート製で、もちろん食べられます。


不味くはないけれど、無難かも。量が少ないのも、やや不満。
“お一人様ブッシュ・ド・ノエル”なら、その昔、ルコントで販売されていた物が好き。
洋酒もバタークリームもしっかり使った、ガッツリ系。ああいうのをまた食べたい。

映画『疫病神』

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【2014年/中国/95min.】
牧羊をしながら暮らす中年男・拉條子は、ある日、街中で、まだ若い一人の乞食を見掛ける。
包子を恵んでやったところ、彼は影のように拉條子に付きまとい、ついには家にまでやって来てしまう。
妻の金枝子は怒り、早く帰せと拉條子に催促するが、ろくに口もきけない乞食には、何を言っても通じない。
夫婦は、この乞食を“勺子”と呼び、仕方なく、食事を与え、温かな羊小屋に寝床も用意。
…結局、そのまま勺子に居つかれてしまうことになる。
拉條子は、本当の名前さえ分からない勺子の身内を探してやろうと考え、尋ね人の広告を出すと、
早速名乗り出てきた勺子の家族を、知り合いの李親分が家まで案内して連れて来る。
その家族は、拉條子に礼金を渡すと、勺子を連れ、去って行く。
勺子を無事家族に引き渡し、ホッとする拉條子であったが、
間も無くして、なぜかまた別の家族と名乗る者がやって来て…。


東京・中国映画週間2016で特別上映された『一個勺子~A Fool』鑑賞。
(観てから随分日が経ってしまったけれど、なんとか2016年度内に駆け込みで詳細を…!)

これ、付け足したかのように、後から急に上映が発表された作品。
『疫病神』という邦題が付けられているのに、日本語字幕は無く(字幕は中国語・英語)、
しかも、他の作品と一緒にTOHOシネマズ日本橋で上映されず、
中国文化センターの一角で地味ぃーに一回きりの公開。
なぜ、こんなドタバタの駆け込み上映になったのだろうか。
とても興味があった作品なので、上映が決まり嬉しかったけれど、欲を言えば、もっと良い環境で観たかった。


本作品は、俳優として有名な陳建斌(チェン・ジェンビン)の初監督作品。

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そう、日本では、ドラマ『三国志 Three Kingdoms~三國』の曹操や、
『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の雍正帝でお馴染みのあの陳建斌が、自ら脚本を書き、監督してしまったのだ。
この初監督作品が認められ、2014年、第51回金馬獎では、
最佳男主角(最優秀男優賞)と最佳新導演(最優秀新人監督賞)を受賞。

原作は、胡學文(フー・シュエウェン)の短編小説<奔跑的月光>。
原作者・胡學文は、この映画のために、陳建斌と共に脚本も手掛けている。



主人公は、甘肅の田舎で牧羊をしながら妻・金枝子と二人で暮らす44歳の男・拉條子。
物語は、街でたまたま会い、ちょっと優しくしてやったばかりに、
家にまで付いてきてしまった口のきけない乞食の青年を“勺子”と呼び、
匿ったことで、夫婦が次々と巻き込まれていく不運をユーモアを交えて描く人間ドラマ


タイトルにもなっている“勺子”は、一般的な中国語では、お匙の意味。

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なので、映画のプロモーションも、(↑)このようにお匙を使って展開。
しかし、この“勺子”、中国西北部の方言では、“傻子(バカ)”を意味するそう。

つまり、本作品は、一人のお馬鹿さんに懐かれてしまった事に端を発する
純朴な村人に襲い掛かる不運の連鎖を描いた物語。

“バカ”など呼んだら、日本なら人権問題になりそうだが、この青年は知的障害者で、
街で出会った拉條子にくっついて来て、彼の家に居ついてしまう。
家族を探して引き取ってもらおうと考え、拉條子が尋ね人の広告を出したところ、
早速、知り合いのヤクザ者・李が、勺子の親族を連れて、やって来る。
この親族が、拉條子に礼金を渡し、勺子を連れ帰り、一件落着かと思いきや、
またまた親族を名乗る別の者が出現。拉條子が礼金を受け取っていたと知ると、
金目的で勺子を売り飛ばしたと騒ぎたて、その礼金をふんだくり、怒り心頭で去って行く。
このように次から次へと現れる“自称・親族”に、さすがにおかしいと気付いた拉條子。
実は拉條子・金枝子夫妻には、収監されている同じ年頃の息子がいることもあり、
情の湧いた勺子をなんとか探し出し、救出してやろうと奔走する。

中国って、純朴な人はとことん純朴で、それを食い物にするズル賢い奴はとことんズル賢く、
ある意味、非常に人間らしい人間がかなり居ると感じる。
この映画を観ていても、拉條子の純朴っぷりや、自称・親族らの狡猾ぶりには、思わず笑ってしまうのだが、
物語の背景には、実際に中国の農村で多発する知的障害者の人身売買があるようなので、笑うに笑えない。





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出演は、牧羊を生業にする44歳の男、“拉條子”こと馬吉に陳建斌(チェン・ジェンビン)
拉條子の妻・金枝子に蔣勤勤(ジアン・チンチン)
拉條子の家に居ついてしまう“勺子”に金世佳(ジン・シージア)
ヤクザ者の李に王學兵(ワン・シュエビン)など。

陳建斌は“自作自演”で、脚本、監督のみならず、主演も。
俳優・陳建斌は、日本では、前述のように、
曹操や雍正帝といった歴史上の大物役で認識している人も多いみたいだけれど、
私には、『人山人海』(2011年)で演じた老鐵に代表されるような労働者の役が上手いというイメージが強い。
今回演じている拉條子は、田舎で細々と牧羊をやっている男なので、
私が抱くイメージに近い陳建斌を久々に見ることができた。

ドカタ焼けだか酒焼けだか分からないけれど、ほっぺがピンクの赤ら顔だし、服装も粗末。

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映画を観ながら、私、ずっと、ビートたけし扮するキャラ・鬼瓦権造や、『北の国から』の田中邦衛が、
この拉條子にダブって見えてしょうがなかった。

陳建斌は、物語の舞台になっている新疆出身の回族。
劇中、よく分からない訛りで喋っているのだが、ネイティヴの新疆方言なのであろう。
「〇〇さぁ~」と喋る沖縄の方言にも似た、ゆったりとした響き。
その耳に心地よい新疆方言で、拉條子が益々朴訥としたお人好しに見えてくる。ホント、上手いわ、陳建斌。



拉條子の妻・金枝子を演じている蔣勤勤は、私生活でも本当に陳建斌と夫婦。
今年、東京・中国映画週間が設定した金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)というよく分からない賞の
最優秀主演女優賞を受賞し、同時期に開催の東京国際映画祭のレッドカーペットにも登場している。

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お綺麗です。
そんな受賞の事情で、この『疫病神』が中国映画週間で急遽上映されることになったのだろうか。
ちなみに、同賞で主演男優賞を受賞したのは、上の画像で後姿が写っている吳亦凡(クリス/ウー・イーファン)。

陳建斌は、この映画には、本来、新疆方言を喋れる女優をと考えていたため、
重慶出身の妻・蔣勤勤を出すつもりは無かったようだが、結局出演して、初監督を飾る夫をサポート。
演じている金枝子は、レッドカーペットで惜しげもなく美乳を晒している蔣勤勤とはぜんぜん違う田舎の主婦。
モソッとした夫・拉條子にあれやこれや口うるさく指示するシッカリ者。
当初は、拉條子にくっ付いてきた勺子にも、キツイ言葉を浴びせていたが、
たどたどしく「媽~!(お母さん)」などと呼ばれている内に、情が湧き、彼の面倒をせっせと見るようになる。
一見荒っぽいが、根はイイ人。頭に被ったカラフルなスカーフも可愛らしい。



金世佳扮する勺子は、まるでバガボンドのように化けているから、誰だかまったく分からない。
実はメイクに3時間もかけているらしい。



王學兵は、陳建斌と同じ新疆出身で、しかも中央戲劇學院の同級生。同郷同窓の大親友。
扮する李は、なんともズル賢い男で、息子を減刑にできると騙し、拉條子から5万元巻き上げている上、
今度は、人身売買のブローカーをして、拉條子に勺子の親族と名乗る者を引き合わせる。

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ベタでも笑える最後のハゲ頭。あれはどのように撮影したのだろう。ハゲズラか?よく出来ている。

王學兵の狡猾な演技もとても良くて、彼もまた金馬獎の最佳男配角(最優秀助演男優賞)にノミネートされたが、
なんと結局その賞は、『軍中樂園~Paradise in Service』でノミネートされていた陳建斌が獲ってしまったのだ!

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つまり、その年の金馬獎では、主演男優賞も助演男優賞も、そして新人監督賞も陳建斌が獲ったというわけ。

でも、親友に賞を譲った王學兵の演技も本当に素晴らしい。
残念なのは、大陸での公開を2ヶ月後に控えた2015年3月、この王學兵が薬物使用で御用となったこと。
お蔵入りか?!と一時期危ぶまれた本作品は、結局公開されたから良かったものの、
もし本当に封殺されてしまっていたら、大親友にどう責任をとるつもりだったのだか…。





大陸では、監督業に乗り出す俳優が続出しているけれど、私が最近観た中では、陳建斌が突出。
まさか、こんな才能があったとは。
娯楽作品を撮る俳優出身監督が多い中、小規模な文芸路線で来たセンスも褒めたい。
知的障害者の人身売買という深刻な社会問題を扱いながら、
ブラックなユーモアを交え、人の滑稽さや優しさを描いた秀作。

私は、西の方の文化にあまり興味が無いので、
映画の舞台が新疆という点には、当初それほど惹かれていなかったのだけれど…

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キッチュでカラフルなインテリアなどは可愛らしく、画的にも魅力的な作品。
あ、あとねぇ、映画に出てくる子羊もすごく可愛い!(絞められて、おもてなし料理にされちゃうが…。


これ、ちゃんと日本語字幕を付けて、日本でも公開して欲しいわぁ~。
どうでもいい中華電影の駄作がガンガン日本に入って来る割りに、
こういうのが一向に公開に至らないという現実が哀しい…。
整った鑑賞環境でなくても、中国語・英語字幕でもOKという人は、気にしてチェックしていれば、
その内、中国文化センターでまた上映があるのでは。
台詞は特別多くないし、高度な中国語能力は不要だが、
目で追う中文字幕と、耳から入って来る新疆方言に差があるので、最初はちょっと戸惑うかも。

日中合作映画『空海~妖猫伝』ついにクランクアップ!(+オマケに『鐵道飛虎』)

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こちらでチラリと触れたように、2016年12月26日、
陳凱歌(チェン・カイコー)監督が手掛ける日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』の公式微博に、
「据悉,妖猫已潜入帝都,三天后将掀风浪
(なんでも、妖猫はすでに帝都に潜入。3日後、波風が巻き起こる)」という意味深な書き込みがあった。


気になっていたところ、3日後にあたる昨日12月29日(木曜)…

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北京・三里屯の某クラブで、約5ヶ月の撮影を終えた映画『空海』のクランクアップ発表会が開催された。

“夜貓趴(夜猫パーティー)”と題されたこの発表会には、監督を始め、主要キャストが出席。
画像左から、白龍役・劉昊然(リウ・ハオラン)、
監督の妻で本作品のプロデューサーでもある陳紅(チェン・ホン)、
丹龍役・歐豪(オウ・ハオ)、陳雲樵役・秦昊(チン・ハオ)、玄宗皇帝役・張魯一(チャン・ルーイー)、
楊貴妃役・張榕容(チャン・ロンロン)、陳凱歌監督、春琴役・張雨綺(キティ・チャン)、空海役・染谷将太、
高力士役・田雨(ティン・ユィ)、白楽天役・黃軒(ホアン・シュエン)、李白役・辛柏青(シン・バイチン)。




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秦昊の招き猫柄(?)のニットを、「こういうのは一体どこで売っているのだろう?」とか、
歐豪のシャツを、「あら、若いのに、トムとジェリーを知っているのかしら?」などと
当初、不思議に思いながら見ていた私でありますが、
恐らく、この日のドレスコードが、映画にちなみ、“猫”だったのであろう。
猫柄ではない普通のスーツ姿の男性は、手作り風の猫ブローチを胸元に付けているし、
張榕容は首に黒猫のタトゥーシールを付け、皆さま、お猫サマを意識している。




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今回、海外作品初主演となった染谷将太は、その感想を聞かれ、
「自分の人生の中で宝物になるとても良い経験ができたと思っています」、
「尊敬していた監督さんに呼んでいただけ、
そして、優秀な役者さんと共演させていただけ、本当に素晴らしい機会になりました」と発言。
黃軒は、陳凱歌監督の作品に出演した事、初めての日本映画だった事など色々な思いがあって、
クランクアップの時、感極まって、泣いてしまったそう。
また、共演した染谷将太に関しては、
物静かな美男子という印象なのに、映画の撮影で覚えたラップが出来ると知り、驚いた、と語っている。
(園子温監督作品『TOKYO TRIBE』のこと?)

この会では、キャストが2人ずつ登場し、
陳凱歌監督から、それぞれのコンビにちなんだお酒が振る舞われるのだが、
染谷将太&黃軒コンビには、日本酒が運ばれ、二人で飲み交わしております。
(その際、「サケ」と短いながら、黃軒が発した珍しい日本語も聞ける。
ちなみに、黃軒の曽祖父は、日本へ留学し、日本の書籍の翻訳もした黃文中。)




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マルコメ君のような染谷クンは、大きなお仕事を終え、ホッとしているのか、笑顔が自然だし、
みんな仲良さそうで微笑ましい。



なお、この『空海 KU-KAI』は、あちらで、2017年12月22日に公開。
日本は、いつになるだろうか…??



この映画の原作小説、夢枕獏の<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>や、
主要キャストに関しては、こちらから。

その後、追加発表されたキャストについては、こちらから。

さらに、私mango一押しのキャスト、白楽天役の黃軒に関しては、こちらの“大陸男前名鑑”を!

★ オマケの『鐵道飛虎~Railroad Tigers』

ついでに、最近の“日本人俳優in中華電影”ネタをもう一つ。
実は、池内博之が、成龍(ジャッキー・チェン)最新主演映画『鐵道飛虎~Railroad Tigers』に出演し、
やはりつい最近、北京で行われたプレミア上映に参加している。


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画像右から6番目に池内博之。
右から4番目には、大ヒット大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす』で、
最近日本でも人気急上昇の王凱(ワン・カイ)の姿も。
あの靖王殿下が、池内博之と同じステージに立っているなんて、軽く感動。


そして、(↓)こちらは、成龍とのツーショット。

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左下のゴミ箱がちょっと目障り(苦笑)。もう少しマシな場所で、記念写真を撮れなかったのか?


通常、成龍作品は、日本で公開される確率が非常に高いし、
そこに日本人俳優が出演しているとなれば、なお歓迎だろうけれど、
これは、抗日戦争を背景にした作品なので、昨今の日本のピリピリした風潮を考えると、ビミョーか?
ちなみに、池内博之出演作で、同じように抗日戦が背景にある『イップ・マン 序章』(2008年)は、
小規模ながら、ちゃんと日本でも公開されている。



“靖王殿下”こと王凱に関しては、こちらの“大陸男前名鑑”を。

映画『ストームブレイカーズ 妖魔大戦』

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【2015年/中国/95min.】
王大錘は、多少の妖力はもつものの、イマイチ発揮しきれない残念な青年妖怪。
彼が想いを寄せるのは、幼馴染みの小美。
小美の父は、その昔、妖怪に連れ去られたまま、それっきり。
父が彼女に残した銭包がお金でいっぱいになる頃、父は戻って来ると信じ、その銭包を大切にしている。
そんな彼らが暮らす石牛鎮に、ある日、凶暴な虎妖がやって来て、ひと暴れ。
普段は静かな小さな村が不穏な空気に包まれ、しかも、小美は大事な銭包を失くしてしまう。

一方、玄奘とその弟子たちは、西方への道中、突如魔王の力に封じ込められてしまう。
一行の中でただ一人、その封から逃れた悟空は、
遠く飛ばされ、草むらで身動きが取れなくなっていたところ、たまたま通りがかった王大錘に助けられ…。



シネマート新宿にて、2週間限定の特集上映、アルティメット・ムービー・フェスタ2016のラインナップの中から、
叫獸易小星(ジョシュア・イ・シャオシン)監督作品を、2016年末に、本年最後の一本として鑑賞。


原題は『萬萬沒想到:西遊篇~Surprise』。
同監督によるネットドラマ『萬萬沒想到』シリーズが好評につき、
映画版を作っちゃいました~!というのが、この作品。
私は未見のそのネット配信ドラマは、一話が10分前後で、気負わずに観られるコメディと察する。
シリーズ共通のお題『萬萬沒想到』は、“まったく夢にも思わなかった”の意。



物語は、小さな村・石牛鎮に暮らす青年・王大錘が、想いを寄せる女の子・小美や悟空と手を組み、
人々を恐怖に陥れる凶暴な妖魔たちを成敗するため、闘う姿を描くアクション・コメディ

うーン、あのねぇ、物語は有って無いようなもの。
原題に『西遊篇』とあるように、映画には、確かに三蔵法師らも登場し、
金丹を失い、一人飛び出した孫悟空が、またご一行様に戻る一年前を描いてはいるようだが、
“<西遊記>外伝”と呼べるような話ではない。


B級感満載のはちゃめちゃなドタバタコメディで、
周星馳(チャウ・シンチー)など、かつての香港映画を彷彿させる雰囲気も無きにしも非ず。
1984年生まれの叫獸易小星監督は、同世代の他の大陸男子と同じように、
恐らく、子供の頃、周星馳作品を夢中で観ていたのでは?
『萬萬沒想到シリーズを絶賛する若者の中には、
この叫獸易小星監督を“ネットから生まれた新たな周星馳”と褒め称える声もチラホラあるようだし…

実際、叫獸易小星監督は、周星馳と接点あり。

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きっと叫獸易小星監督にとって周星馳はアイドルで、
知らず知らずの内に受けている影響は、かなり有ると察する。


しかし、(映画一本だけで判断しては申し訳ない気もするけれど…)
叫獸易小星監督作品には、周星馳には遠く及ばない、コメディとして致命的な欠陥アリ。
それは、“これっぽっちも面白くない”という事。
1時間半が3時間にも感じ、その間、どのポイントで笑えば良いのか分からぬまま、The End。
ここまで面白くないとは、タイトル通り『萬萬沒想到(夢にも思わなかった)』。





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出演は、多少ながら不思議な妖力を持つ冴えない青年・王大錘に白客(バイ・クー)
王大錘が想いを寄せる幼馴染みの女の子・蘇小美に楊子姍(ヤン・ズーシャン)
王大錘や小美と共に、闘うことになる孫悟空に劉循子墨(リウシュンズーモー)
表の顔は道家の高貴なイケメン公子、実は法術を操る慕容白に馬天宇(マー・ティンユー)
旅の途中、妖魔の力で閉じ込められてしまう唐僧玄奘に陳柏霖(チェン・ボーリン)
玄奘の弟子・猪八戒にพิรัชต์ นิธิไพศาลกุล(披拉·尼迪裴善官 ピーラット・ニティパイサーンクン)等々…。

ここ日本では、これら出演者の中で最も日本での知名度が高い陳柏霖の主演作のように宣伝されているが、
実のところ、本作品の主演男優は白客。
白客は、これまでの『萬萬沒想到』シリーズでも王大錘を演じているので、
大陸の観衆には、白客不在の『萬萬沒想到』なんて有り得ないであろう。
白客は、もう直日本でも公開される周星馳監督の大ヒット映画『人魚姫』にも出演しているようなので、注目。


実は脇役の陳柏霖が演じているのは、日本では一般的に“三蔵法師”と呼ばれる唐僧玄奘。
約2ヶ月前、『大唐玄奘』(2016年)で見た黃曉明(ホアン・シャオミン)扮するストイックな玄奘とは大違い。
コメディ映画なので、僧侶にもかかわらず煩悩まみれで、かなりの俗物(笑)。


その陳柏霖と『20歳よ、もう一度』(2015年)で共演している楊子姍も出演。
彼女は、主人公・王大錘から想いを寄せられる本作品のヒロイン。
相変わらず若々しいが、ああ見えて、私生活では、すでに30歳の人妻。
2015年、私も好きな吳中天(マット・ウー)のお嫁サマになられた。


馬天宇も童顔で若く見えるけれど、楊子姍と同じ1986年生まれの30歳。
普段映画よりドラマをよく観る人の間では、最近は、もしかして陳柏霖以上に知られた明星かも…?
今回演じている慕容白は、最初の内こそ、人々がイメージする通りの馬天宇。
ルックスの良い高貴な公子で、村の女性たちにモッテモテ。
ところが、その後、ブラックな正体が暴かれ、結局のところ悪役であった。

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馬天宇は、カワイイ系の童顔なので、アイシャドー入れた悪人メイクは、ちょっと違和感。

あと…

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『西遊記 はじまりのはじまり』(2013年)で、羅志祥(ショウ・ルオ)が演じた空虛公子に似ているという声あり。
確かに、衣装のみならず、顔色の悪さなども共通。





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その慕容白の父親・慕容皓役で、趙文瑄(ウィンストン・チャオ)もちょこっと出ていた。
趙文瑄と限らず、本作品には、結構な有名人がカメオ出演程度にあちらこちらに出ている。
土地公公役で香港の曾志偉(エリック・ツァン)、蠍子精役で錫伯(シベ)族の女優・佟麗婭(トン・リーヤー)
奔波兒灞役で、2016年秋自ら命を絶ってしまった(→参照喬任梁(キミー・チャオ)などなど。

裏方との兼任も結構居て、終盤、玄奘の馬・白龍馬役でゲスト出演している作家の韓寒(ハン・ハン)は、
本作品では、美術指導も担当。
白龍馬は、御主人様・玄奘を見捨て、逃走。戻って来た韓寒扮する白龍馬は草を食べている。…馬なので。)
マルチに活躍する韓寒は、『いつか、また』(2014年)で映画監督デビューを果たした時、
新たな一面にまた驚かされ、随分才能がある人なのだなぁ~と感心したけれど、
この『ストームブレイカーズ 妖魔大戦』で、美術指導を担当してしまった事は、
キャリアの中で汚点になる気がするワ…。
また、叫獸易小星監督自身も、沙僧(沙悟浄)の役で出演している。





出演者の豪華な顔ぶれを見ても感じるが、
本作品は、ネットドラマ『萬萬沒想到』ファンのための“お祭り映画”であり、
元のネットドラマを知らない部外者には、駄作でしかない。
日本の観衆の多くは、その“部外者”であるから、映画館の中の空気は凍り付きっ放し。
会場の中で、ここまで笑い声が漏れないコメディ映画も珍しい。

私にとっては、2016年の最後に観たこの映画が、2016年のワースト作品に。
しかも、他を寄せ付けないブッチギリのワースト。
非常に活気があり、毎年腐る程沢山製作されている中国映画の中から、
日本の配給会社が、わざわざ買ったのが、なぜこれなのか、まったく理解できない。
タダ同然の激安だったのか、
はたまた、配給のH社は、お金をドブに捨てるのも惜しくないほどウッハウハなのか…?!

強いて擁護するならば、この作品、お金を払ってスクリーンで観るには堪えないレベルでも、
深夜放送やネット配信で、タダで観られるのであれば、
“あの陳柏霖も出ているB級映画”として受け入れてくれる層があるかも知れない。
そもそもがネットドラマなわけだし、映画版もその域を越えていないのヨ。

私は、常々、映画を観る画面の大きさは、満足度と深く関係があると感じている。
例えば、映画館で観て駄作と感じた作品でも、後日テレビの放送で再見すると、案外面白く感じることがある。
私の場合、映画館のスクリーン→テレビ→パソコン→スマートフォンと画面が小さくなるにつれ、
無意識下で作品に対するハードルが下がり、簡単に満足できるようになる。
この『ストームブレイカーズ 妖魔大戦』も、所詮スマートフォン規格のチャチィ作品だと割り切って
小さなマートフォンの中でチマチマ観たら、それなりに楽しめるのかも知れない。


あと、他に褒めるなら、そうそう、映画の中に出てくるお犬サマは可愛かった。

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初めて見た、甲冑つけている時代劇装備のお犬サマ。
(逆に言うと、他に褒める所が無い。)


年が明けても、最初の一週間はまだ上映しているので、物好きな方はどうぞ。
新年一本目がこれだったら、その後観る2017年の映画は、どれもずっとマシに思えて、良いかも知れません。
(但し、満額の1800円を払って観たら、「金返せ!」と殺意も沸きかねないから、要注意。)

2017甘味お食い初め(+テレビ雑記)

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明けましておめでとうございます。
今年の干支、酉をモチーフにした赤絵の香合を12年ぶりに取り出し、迎えた新年。
今年も、地味ぃーにブログを更新していきます。
皆さま、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。


さて、皆さま、お正月はいかがお過ごしでしょうか。
この時期のテレビ番組は、旧年中に収録されたやたらダラダラと長いバラエティ番組、お笑い番組、
日本各地からの当たり障りのないマッタリした中継、ドラマや映画の一挙放送、その他の再放送などなど、
わざわざ観たい物が無いのだけれど、三箇日も過ぎると、少しずつ通常に戻ってくるので、
テレビ好きとしては、有り難い。
いや、2017年、新年第一週の後半は、“通常”どころか、通常より余程観たい番組が多いかも。



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一本目は、1月4日(水曜)深夜、正確には、5日(木曜)になったばかりの午前0時に
BS日テレで放送の『旅してHappy』
深夜30分のこの旅番組では、今週から4週に渡り、藤田可菜の台湾編を放送。
第1回の今回は、台北・象山歩道で台北101を望む景色や、かき氷などの台湾グルメを堪能。
ちなみに、旅人の藤田可菜は、福岡を中心に活動するタレントらしい。




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台湾なら、同日、1月5日(木曜)に、こちらも。
大晦日にすでに地上波で放送されたが、新年はBSで。
これは、人気番組の映画版。いつもは日本中を旅している太川陽介&蛭子能収のコンビが、国を飛び出し、
ローカル路線バスで台湾を縦断してしまおう!という企画。
私は、どうせすぐにテレビで放送されるんだろうなぁ…、と思いつつ、2016年2月に映画館で鑑賞。
期待せずに観たせいか、案外ハラハラさせられた記憶が。
この機会に、今一度テレビで再見。




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台湾、まだ有ります。
1月6日(金曜)、毎度の日テレ『アナザースカイ』
新年一回目のゲストは篠原涼子。彼女の“アナザースカイ”は、23年前、アイドル時代に訪れた台湾。

私は、2016年12月半ば、ほぼ日課の中華芸能チェックをしていたところ…

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「日本超人氣女演員・篠原涼子が、日本のテレビ番組『anothersky』の収録で、
23年前、1994年の足跡を辿るため台湾を訪れた」という記事を読み、
放送されるのはいつなのかと、気になっていた。
収録から放送まで随分時間が空いてしまうこともあるけれど(放送が真冬なのに、収録が明らかに夏とか)、
今回は3週間程度で観ることができるのですね。

その23年前、篠原涼子が台湾で何をしたかというと、東京パフォーマンスドールのメンバーとして
『金曲龍虎榜』、『鑽石舞台』といった台湾のテレビ局・華視の番組に出演。
今回、2泊3日の旅程で再訪した台湾では、その想い出の華視にも出向き、
『天才衝衝衝』の収録を見学し、現地の芸能人とも交流。
司会者・徐乃麟(シュー・ナイリン)とは久々の再会に感激する一方、
彼が57歳には見えない若さを保っていることに驚愕していたという。

また、(こちらは『アナザースカイ』で放送されるのか分からないが…)
篠原涼子自身、現地でインタヴュを受け、美容のために、時間があればホットヨガをすること、
台湾の麻辣鍋が好きなこと、好物の香草をたっぷり入れて麻辣鍋を食べると幸せを感じること、
今回の再訪では九份まで足を運んだこと、台湾の美食も堪能したことなどを語った模様。
ちなみに、篠原涼子が所属していた東京パフォーマンスドールは、あちらでは“東京勁舞娃娃”。




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そして、台湾から大陸へ。
1月7日(土曜)は、TBSの『世界ふしぎ発見!』
今回は、“ダイナミック・チャイナ!14億人のパワースポット”と題し、ミステリーハンター宮地眞理子が、
観光スポットとして大注目の広州と、最も開発に力を入れている雲南省を取材。
“開発に力を入れている”と言っても(そもそも誰が何の開発に力を入れているのか説明不足で分からない)、
最先端ばかりを取材している訳ではなく、圧縮して作る緊壓茶(緊圧茶)の一種、磚茶(たんちゃ)等のお茶や、
納西(ナシ)族が聖山と崇める玉龍雪山など、少数民族が多い雲南省ならではの文化も紹介するみたい。
私は、磚茶は買わないのだけれど、他の緊圧茶・沱茶(とうちゃ/だちゃ)や、普洱茶といった
雲南茶は結構買っているので、お茶に関する取材は、特に見たい。
基本的に田舎より都会派なので、もちろん大都会・広州の取材も興味あり。





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翌1月8日(日曜)には、NHKの『巨龍中国:14億人の消費革命~爆発的拡大!ネット通販』
経済の鈍化で、“世界の工場”から“国内で消費し、内需を拡大”という構造転換期に来ている中国で、
急成長しているのがネット通販。
店の無い農村部にも急速に広がり、市場規模は60兆円で、今やアメリカを抜き、世界第一位。
番組では、膨れ上がる市場で一攫千金を求め群がる若者たちや、
14億人の消費革命、またそこで格闘する人々を取材。




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同日、その後、NHK BS1の『ドキュメンタリーWAVE』でもチャイナ。
“チャイナマネーが見る夢~中国の投資家と起業家たち”と題し、
こちらも、産業構造の転換が迫られる中国での新たな傾向として、
ベンチャー企業に流れ込む、国や民間の巨額のチャイナマネーを取り上げている。



私はこれまで何かにつけ、当ブログで“中国13億人の・・・”と記してきたが、
これらテレビ番組では、もはや“中国14億人”と、一億人増加されている。
改めて人口をチェックしたところ、2016年の時点で、大陸の人口は13億7千万人を優に超えていた。
四捨五入すると14億だし、実際、直に14億に達するであろう。
そんな訳で、当ブログでも、この新年を機に、“中国13億人”改め“中国14億人”とさせてただきます。




ところで、私の新春甘味お食い初めの前に、気になった別のお菓子ネタを一つ。
陳凱歌(チェン・カイコー)監督が手掛ける日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』の撮影がついに終了し、
クランクアップ発表会が北京で開催されたのは、年末、こちらに記した通り。
映画の公式微博によると、その発表会にも出席した主演の染谷将太が、お礼のお菓子を贈ったそう。

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これ、向島の青柳正家(公式サイト)の包みよねぇ…?!
“生菓子”と書いてあるが、日持ちしない和菓子を日本からわざわざ運んだのか…?
いや、それより、染谷クンはジャンクな物を食べているイメージを勝手に抱いていたので(←スミマセン…)、
青柳正家という渋いセレクトが、あまりにも意外で驚いた。
日本の普通の24歳の男の子は絶対に選ばないでしょー。
菊地凛子のイメージとも違うし、実家の親か所属事務所関係者の手配?
この手の和菓子を中国人が好んで食べるかどうかは別として、
外国人に東京バナナやロイズのチョコを贈ってしまうセンスは、日本人として許し難いものがあるので、
この渋いセレクトで、私は染谷クンを見直してしまいましたヨ。
ちなみに、青柳正家は、名物の菊最中も良いけれど、私は春限定の桜餅が好き♪



本題はこちら。2017年も激甘党でいきます!
まぁ年頭に食す甘味は、例年ほぼお約束になっている物ばかり。

★ 井上蒲鉾:二色玉子

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まずは、毎年お正月に欠かさず購入している井上蒲鉾(公式サイト)“二色玉子”
お正月限定商品ではないので、鎌倉のお店に行けば、いつでも買えるのだけれど、
東京のデパートで取り扱っているのは、新年用の買い出し客で賑わう年末のみ。

白身の部分が、蒲鉾のように練り過ぎておらず、ホロホロ崩れる質感が良し。
何より、おめでたい松の形がお気に入り。

ちなみに、画像には写っていない玉子焼きは、王子の老舗・扇屋の物を購入。
新宿高島屋に常設で入っていた時は、しょっちゅう買っていたのだけれど、
撤退してしまったので、なかなか食べられなくなってしまった…。悲しい…。
扇屋の玉子焼きは、東京の玉子焼きの中で一番好きな味。
また新宿高島屋に戻ってきて欲しい。デパートへの出店は、負担が大きく、採算が合わないのでしょうか…?

★ 叶匠壽庵:花びら餅

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大きさは、幅約10センチ。
ごぼうの甘露煮と人参の甘露煮を一本ずつ、味噌餡と共に、近江羽二重餅で包んだ季節菓子。




続いて、叶匠壽庵(公式サイト)“花びら餅”
ひと箱に5個入り。バラ売りしているかは未確認。

近年、東京でも、多くの和菓子屋さんが売るようになった花びら餅。
“宮廷雑煮”と呼ばれるように、ゴボウと人参をはさんだ、お菓子らしからぬ珍しいお菓子。
お雑煮をお菓子で再現しているくらいだから、餡はもちろん味噌餡。
白いお餅の下にピンクのお餅を重ね、表面に薄っすら赤味を透けさせるのが、本来の形だろうけれど、
叶匠壽庵では、お餅を二重にせず、その代わり、中に薄紅色に染めた味噌餡を包んでいるのが特徴。

ゴボウと人参は、ほんのり甘く、歯応えを残しつつも柔らかに炊けている。
羽二重餅は、まるでお座布団のように、ふっくら柔らか。
微かに塩気のある、上品な甘さの味噌餡が、全てを繋ぎ、巧く調和して美味。

販売は、1月8日(日曜)までなので、まだ買える。食べたい方は、今週中にお店へ!

★ ジャン=ポール・エヴァン:ロンシャン・ショコラ・レ

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大きさは、直径約5センチ、高さ約5センチ。
中にメレンゲを隠したショコラ・ムースを、アーモンド入りミルクチョコレートで覆ったケーキ。




最後は洋菓子。
近年、一年の初めに口にするケーキは、なぜかジャン=ポール・エヴァン(公式サイト)が、ほぼ定番。
2017年初頭に食べたのは、こちらの“ロンシャン・ショコラ・レ”
本当は同じケーキでダークチョコレートを使った“ロンシャン・ショコラ・ノワール”の方が好きなのだが、
無かったので、仕方がない。

空気を沢山含んだふんわりムースの中に、サックリ軽いメレンゲ。
それだけだと軽過ぎるが、全体を覆うチョコレートで、濃厚な味をプラス。
チョコレートに混ぜ込まれたアーモンドの歯応えもいい感じ。

プラリネのような香ばしいコクを感じるのは気のせい?
仮に気のせいだったとしても、美味しいからOK。
これよりもっと好きなロンシャン・ショコラ・ノワールは、もう販売しないのだろうか。あちらもまた食べたい!

金城武×陳曼for<Harper's BAZAAR>

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現在、中華圏で主演映画『擺渡人~(The Ferryman改め)See You Tomorrow』が絶賛公開中の
我が愛しの金城武。
普段は世捨て人の如く隠遁生活を送っているゆえ、生存の確認さえ困難な金城クンであるが、
映画が公開されると、それと連動して、露出が増えるのが、嬉しいですね。
ここのところ、『擺渡人』のプロモーションで、
(共演のお仲間ほどではないにしも…)会見だのインタヴュなど、俗世にボチボチお姿を現していたけれど、
今度は、中国版<時尚芭莎(ハーパース バザー)>、2月のヴァレンタイン特集号に登場することが判明。




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ぎゃー、素敵。
良い具合に年を重ね、目尻にちょっと皺が出た感じとか、相当ツボで、萌えまくり。
私mango、新年に立てる2017年の目標は、例年通り“金城武に嫁ぐ!”とさせていただきます。
(夢は限りなく大きく。)

<時尚芭莎>のお写真、まだ続きます。

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撮影を担当したのは、私も大好きな大陸女性フォトグラファー陳曼(チェン・マン)。
大好きな金城クンを、大好きなフォトグラファー陳曼が撮ったという事も嬉しい。
陳曼は、かなりドラマティックな攻めの写真も多いのだけれど、今回は正統で来たという印象。
真の男前を撮るのに小細工は不要!という事でしょうか。
陳曼、金城クンのことは「男神中男神」と称えております。同感。

念の為、陳曼に関しては、以前軽く触れた、こちらを参考に。)



今回の金城クンの撮影はもしかして日本?
実は陳曼、お仕事でかなりの頻度で日本へ来ている。
最近だと、同じ<時尚芭莎>の1月号のグラビアも、陳曼が日本で撮影。

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こちらのモデルは、昨年大いに話題になったBLをテーマにしたネットドラマ『上癮~Addicted』に出演し、
一気に注目を集めるようになった22歳の新星・許魏洲(シュー・ウェイジョウ)君。
これは、京都ですよねぇ…?



今回の金城クンの写真だと、背景がほとんど写っていないので、
情報がほとんど出ていない現時点では、シューティング場所を特定しにくいが、
星野リゾートが絡んでいるのは確か。
手掛かりとなる、かなり特徴的な小紋を思わせる影から…

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私は、ここを丸の内にある星のや東京(公式サイト)と推測。
実際、陳曼は、星のや東京がオープンして間も無い2016年9月に、そこを訪れており、
かなり気に入った様子が、彼女の微博からも感じられた。
金城クンの撮影は、その時行われたものなのか、もっと後なのかは不明だが、
高確率で、場所は星のや東京で正解だと私は睨んでおります。


ちなみに、陳曼×星野リゾート×<時尚芭莎>というと…

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約1年前のホワイトデー特集で
胡歌(フー・ゴー)と霍建華(ウォレス・フォ)を撮ったのが、やはり北海道の星野リゾートトマムであった。
(その時の<時尚芭莎>に関しては、こちらから。)



陳曼は、来日の度に、日本の写真を自身の微博で素敵に紹介してくれている。
普通の人々が発信する情報も勿論大切だが、日本はアジアのリゾート地やヨーロッパ等と比べ、
中流が充実していても、“高級”な部分が弱いので、
海外のヒップなクリエーターや富裕層に訴えかけ、来てもらうためには、
陳曼のようなセレブリティが発信してくれる情報は有益。
私は、陳曼の微博を、いつも有り難いと思いながら、見ております。

★ オマケの蜷川実花

一方、日本のフォトグラファー蜷川実花も、近年、中華圏でかなりのお仕事をこなしており、
比較的最近だと先月、北京と重慶に子連れ出張をしていて、
微博に、現地の写真を載せながら、「とても好きな芸能人を撮った」と記していたので、
それが誰なのか気になっていたのだが、どうやら…

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雑誌<紅秀 GRAZIA>用に、シンガーの李宇春(クリス・リー)のグラビア、それと、あと…


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スーパーアイドル鹿(ルー・ハン/ルハン)君のニューアルバム<Xplore>のジャケ撮りだったようです。

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鹿by蜷川実花の写真は、他にもまだ有るので、ファンの方々はご自身でお探し下さいませ。
私のブログのこのエントリは、一応“金城武ネタ”なので。



日中両国の女性クリエーターが、共に国の枠を軽く越え、
しなやかに、平和的に活躍している事を、嬉しく思う。

あと、金城クンが出演している映画『擺渡人』が日本に入って来て欲しいわぁ~。
久し振りに日本のスクリーンで金城クンを拝みたい。
一応、『擺渡人』のトレーラーを貼っておく。


笑いあり、涙ありって感じ?

★黄金芒果奬2016!

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2017年に入り、あれよあれよと言う間に一週間が過ぎてしまったところで
遅ればせながら、昨年度の我が映画&ドラマ鑑賞を振り返り、
独断と偏見だけで、例年通り、勝手に表彰させていただきます。


今回設定した賞は以下の通り。
最優秀作品賞に当たる黄金芒果奬(ゴールデン・マンゴ賞)、
テレビドラマを対象にした芒果電視劇奬(マンゴTVドラマ賞)、
逆に、映画、テレビドラマそれぞれの苦手作品には
当ブログ版“ラジー賞”、臭榴槤獎(くっさ~いドリアン賞)
また、注目の俳優には芒果演員獎(マンゴ俳優賞)を昨年に引き続き設定。


【ノミネートの条件】
映画賞の対象は、2016年度、私mangoが 映画館、映画祭など、
劇場のスクリーンで観た初見の作品のみとする。
よって2016年度劇場公開された作品でも、私にとって初見でなければ、対象外の扱い。
また、テレビやDVD等で鑑賞した作品も、対象外とする。
芒果電視劇奬に関しては、2016年度内に観終えたドラマのみ対象で、鑑賞途中のものは含まない。

★ 臭榴槤獎~くっさ~いドリアン賞

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台湾の“偶像劇”と呼ばれるアイドルドラマには、つくづく失望させられているここ数年。
私と同じ思いの人も多く、大した需要が有るようには見受けないけれど、
それでも、ホームドラマチャンネルがコンスタントに放送しているので、ボチボチ視聴。
でも、案の定、ビビッと来る物にはなかなか出会えない。
中でも2016年取り分けイケていなかったのが、この『幸せが聴こえる~聽見幸福』
セレブ男性と庶民派女子のシンデレラ・ストーリーと聞いただけでも、イヤな予感がよぎるけれど、
そこに、さらに、失明だの、幼少期に生き別れた姉妹だの、心臓移植で死者が憑依だのと
昭和ちっくなベタベタ要素がテンコ盛りで、どっぷり昭和育ちの私でさえゲンナリ。
お世辞にも二枚目俳優とは言えない王傳一(ワン・チュアンイー)に、
ずっとこの手のセレブ男性を演じさせるのも問題。台湾芸能界の人材不足を露見させているだけ。
ちなみにこの賞、次点は、『元カレはユーレイ様!?~我的鬼基友』


映画では、大陸のアクション・コメディ『ストームブレイカーズ 妖魔大戦』
12月に入り、今年のワーストは『ドラゴン・クロニクル 妖魔塔の伝説』かしら、それとも『団地』かしら?
なんて考え始めていたのだが、年の暮れ、最後の最後に観た『ストームブレイカーズ』は、
他作品のネガティヴな記憶を全て綺麗サッパリ忘れさせるほどのブッチギリの駄作。
通常、コメディを観に行くと、仮に私自身の好みには合わず、笑えなくても、
他の観客の笑い声を聞き、「へー、世間の人々にとっては、こういう部分がツボなのね」と理解するのだけれど、
この『ストームブレイカーズ』では、映画館の中は一時間半凍り付きっ放し。
ここまで観衆を戸惑わせる、笑えないコメディも珍しい。

★ 芒果電視劇奬~マンゴTVドラマ賞

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日本『沈まぬ太陽』/台湾『結婚なんてお断り!?~必娶女人』




日本のドラマは、この年もやはりwowowが優秀。
中でも、wowow開局25周年記念作品として制作された『沈まぬ太陽』は、
同局のドラマとしては長い全20話の力作。
山崎豊子の同名小説のドラマ化で、描いているのは、ナショナル・フラッグ・キャリア国民航空の闇。
この国民航空が、JAL日本航空であることは明らかで、当時の半官半民企業の体質や、
1985年に起きた御巣鷹山の日航機墜落事故について知ることができ、大変興味深い内容。
あくまでもフィクションだが、かなりのリアリティあり。日本も、大企業の闇は、底無しにエグい。
こういう社会派ドラマは、地上波の通常の民放では流しにくいので、wowowならではのお仕事。
主演は、同じく山崎豊子作品をドラマ化した『大地の子』でも主人公を演じた上川隆也。


台湾は、ここ数年ずっと不作続きなので、消極的決定で、『結婚なんてお断り!?~必娶女人』
アラサーOLを主人公にした、ライトで洗練されたラヴ・ストーリーで、
『イタズラな恋愛白書~我可能不會愛你』を好きな女性が楽しめそうなドラマ。
『イタズラな恋愛白書』と同列で語ってしまうのは褒め過ぎで、手放しの絶賛は贈れないが、
もはや氷河期と言われている台湾偶像劇の中では、かなり健闘していると思う。
林宥嘉(ヨーガ・リン)が歌うエンディングの<兜圈>も良い曲で、これ聴くとドラマのシーンが蘇る。
主人公・蔡環真を演じた柯佳嬿(アリス・クー)は、このドラマの演技が認められ、
第51回金鐘獎では、主演女優賞を受賞。


『琅琊榜』に始まり『琅琊榜』に終わった一年と言っても過言ではない。
…と言うか、これは、2016年とか、国の枠とか越えて、ドラマ史上に名を刻む、名作中の名作でしょー?!
本来の私がまったく興味の無い、架空の王朝を舞台にした復讐劇に、こんなに夢中になるとは、予想外。
複雑に入り組んだ物語で、あちらこちらに伏線が敷かれているから、観る度に新たな発見が有り、
結局3度も鑑賞してしまった。それでも、まだ飽きない不思議。
そのように、緻密に練られた脚本はもとより、
演出、映像、美術、衣装、音楽、キャストと、どこをとってもパーフェクト。
表に立つ俳優でも、裏方さんでも、14億から頭角を現した才能の結集とは、こういうものなのか!と
ドラマ界でも勢いづくチャイナ・パワーを感じずにはいられない。
ついにドラマが映画を超えてしまったかも…、と思い知らされた一本でもある。

★ 芒果演員獎~マンゴ俳優賞

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主人公・梅長蘇を演じた胡歌(フー・ゴー)を取り上げたのに、
同ドラマで私をメロメロにしたもう一人の男性、靖王役の王凱(ワン・カイ)をスルーしたことが、
ずっと気になっていた。なので、今回は、その王凱に。
王凱は、1982年生まれで、すでに30代半ば。
以前からそここそ知られてはいても、“大ブレイク”と言えるのは、比較的最近の『琅琊榜』や、
同じスタッフで立て続けに撮られたもう一本のヒットドラマ『偽裝者~The Disguiser』なので、やや遅咲き。
若い頃アイドル的人気を誇りながらも、それゆえ若さにシガミつき朽ちていく痛い中年俳優より、
若い頃鳴かず飛ばずでも、年を重ね、味を出していくタイプの方が、むしろずっと良い。
それなりに経験を積んでいる王凱の実力は折り紙付きだし、しかも、見目麗しく、低音の声まで素敵。
日本で彼を知る人は、今のところ、ほぼドラマニアに限定されてしまっているようにも見受けるが、
成龍(ジャッキー・チェン)主演作『鐵道飛虎~Railroad Tigers』や、
中華版『容疑者Xの献身~嫌疑犯X的獻身』といった映画出演作も続いているので
(王凱が演じるのは日本では福山雅治が演じた湯川学)、映画ファンも注目しておいて損は無い俳優。
もっとも、私が日本公開を望んでいるのは、それら2本より、
チョイ役で出ている許鞍華(アン・ホイ)監督作品『黄金時代』(2014年)なのだけれど…。


この王凱については、こちらの“大陸男前名鑑”を参照。

★ 黄金芒果奬~ゴールデン・マンゴ賞

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婁(ロウ・イエ)監督作品の脚本でお馴染みの梅峰(メイ・フォン)が初めて自ら監督した作品で、
老舎の短編小説の映画化。
大半の人は、ユル過ぎる、退屈と感じるのではないかと想像するけれど、
私にとっては、充分エンターテインメント性のある作品で、クスッと笑ったり、先の展開が気になったり。
1940年代、重慶の農場で起きる何てことない出来事や人間関係を奇を衒うことなく、さり気なく綴りながら、
それでいて、風刺が効き、案外深い内容。物語の世界に私を惹き込む梅峰の巧な脚本力に改めて感心。
キャストも良ければ、モノクロで表現された映像の雰囲気も好み。
とても文芸的、芸術的と思える作品で、単純に私と波長が合った。
超大作化が進む大陸の映画界には憂いも感じているので、
このような作品が人材育成プロジェクトの一環として企画されたという点も、期待を込めて評価したい。
本作品は、第29回東京国際映画祭で最優秀芸術貢献賞を、
主演の范偉(ファン・ウェイ)は、第53回金馬獎で最優秀主演男優賞を、それぞれ受賞。



以下、印象に残った作品を絞りに絞ってもう10本。
『マンダレーへの道』:ミャンマー出身監督による台湾人以上に従来の台湾テイストを醸す作品
『ゴッド・スピード』:Mr.Boo!許冠文(マイケル・ホイ)×鍾孟宏(チョン・モンホン)監督異色の組み合わせ
『ロクさん』:北京を舞台に描くオフビートな任侠映画
『帰ってきたヒトラー』:奇想天外なようでいて、実はリアルに右傾化する現代を風刺する問題作
『疫病神』:俳優・陳建斌(チェン・ジェンビン)初監督作品はブラックなユーモアを交えた意外な秀作
『怒り』:人間ドラマとしてもミステリーとしても観応えあり
『リップヴァンウィンクルの花嫁』:不思議な味わいのある大人の御伽噺
『海よりもまだ深く』:是枝裕和監督らしい家族のささやかな物語
『大樹は風を招く』:中国への返還前夜を描く、香港若手3監督による変わった作りの犯罪活劇
『台湾新電影(ニューシネマ)時代』:私も大好きな台湾新電影に関するドキュメンタリーに胸が熱くなる


近年、中華圏の映画がかなりの本数日本に入って来ているけれど、その大半は好みに合わない物ばかり。
そのせいか、ここに挙げた作品も、半数以上が、一般劇場公開で観た物ではなく、
映画祭で観た物になってしまった。その内の何本が、公開に漕ぎつくことになるのだろうか…?

『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』といった考えさせらえる内容のヨーロッパ映画が印象深い。

日本の映画は今年、結構気に入った物が多くて、
本当は他にも『オーバー・フェンス』『永い言い訳』なども入れたかった。
国内で大ヒットを記録した日本映画2本、『シン・ゴジラ』と『君の名は』に関しては、
前者は、日系アメリカ人を演じた石原さとみのゴジラ以上の破壊力に、内容をすっかり消し去られ、
後者は、私と映画の趣味の合う二人から「観る必要ナシ!」と断言されたのと、
「ヒットの要素を詰め込んだ映画」、「日本の映画はそろそろ女子高生とタイムスリップからそろそろ離れないと」
という是枝裕和監督の言葉がやけに腑に落ちたため、スルー。
直にテレビで放送されるだろうから、その時は一応観るだろうけれど、
恐らくハマらないという確信に近い予感あり。






2017年は、年明け早々から、中華電影公開ラッシュ。
一番嬉しいのは、ずーーーっと日本上陸を待ち望んでいた婁(ロウ・イエ)監督作品、
『ブラインド・マッサージ』がよーーーーやく公開されること。
この作品に出演する黃軒(ホアン・シュエン)は、
陳凱歌(チェン・カイコー)監督最新作で、染谷将太とダブル主演の『空海 KU-KAI~妖貓傳』も
公開を控えている(日本での公開は2018年らしい)。
日本にもやっと黃軒の時代が到来しそう。
彼の演技を日本のスクリーンで堪能できる機会が増えるのは、一ファンとして、喜ばしい。
『空海』を制作する角川には、今後日本でも知名度が上がるであろう俳優・黃軒の名前を
“ホアン・シュアン”と誤表記するのはやめろ!とだけ言いたい。
(黃軒については、こちらの“大陸男前名鑑”を参照。)

台湾映画では、昨年、日本での配給が決まったという噂が流れた
易智言(イー・ツーイェン)監督久々の新作『コードネームは孫中山~行動代號:孫中山』が、
噂が噂のまま立ち消えになったようだけれど、一体どうなっているのだか…。
一方、ワケ有りで長年お蔵入りになっていた故・楊昌(エドワード・ヤン)監督の名作
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)が、紆余曲折を経て、
日本でも3月に奇跡的にスクリーンに戻ってくるのは、涙が出るほど嬉しい。
DVDも出ますよね…??出たら、絶対に買う。

ドラマは、大陸モノだと選択肢も豊富だが、台湾モノは「・・・・。」
もう偶像劇は要らない。現在、ホームドラマチャンネルで放送中の『アニキに恋して~愛上哥們』だって、
近年珍しく現地でヒットした偶像劇なので、取り敢えず観始めたものの、
全30話の内、半分近くまで進んでも、まったく面白くなる気配ナシ。
すでに30代も後半の雅妍(メーガン・ライ)に男装させたラヴストーリーなんて、痛々しいだけ。
需要は皆無ではないだろうから、偶像劇撲滅は叫ばないが、
徐々に公視などの観応えのあるドラマが放送されるように、変わっていって欲しい。
一年前も同じ事を書いたが、台湾ドラマで取り敢えず観たいのは『一把青~A Touch of Green』くらい。



以上、共感されにくいだろうけれど、私の結果はこんな感じ。
皆さまは、2016年度、どんな映画やドラマに心打たれたり、逆に幻滅させられましたでしょうか?!

亀屋:2017年吉祥上生菓子4種(+テレビとかアイドルMVとか諸々)

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2017年が明けてすぐの約一週間前、こちらに記したように、
1月6日(金曜)に放送された『アナザースカイ』、篠原涼子の台湾編を楽しみに録画予約。
楽しみにしていた割りに、放置し、昨日ようやくその録画を観た。

番組の中で、篠原涼子が訪ねた台湾のテレビ局・華視の壁に、
大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』のポスターが貼ってありましたねー。
…しかも、2枚も。日本の『琅琊榜』ファンの皆さま、お気付きになりましたか?
台湾での初放送からもうかなり経つのに、テレビ局の正面玄関にポスターを貼っているとは、
華視、随分な『琅琊榜』依存(笑)。
まさか、篠原涼子の台湾編で、宗主にお目に掛かれるとは思っていなかったので、得した気分。


それはそうと、その『アナザースカイ』で初めて知りましたよ…

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平山秀幸監督の映画で有名な『愛を乞うひと』(1998年)が、
篠原涼子主演でドラマ化され、1月11日(水曜)、日テレで放送されるという事を。

篠原涼子が演じるのは、もちろん映画版で原田美枝子が演じた母娘二役、陳豊子と山岡照恵。
映画版では、“ビッチと修道女”ほど掛け離れた原田美枝子の凄まじい演技が、大きな見所の一つだったので、
正直言って、篠原涼子がそれを越えらえるのか、越えないまでも並べるのか?!と少々心配もある。
でも、私はアイドル時代の篠原涼子を知っている世代だから、大丈夫なの~?!と思ってしまうだけで、
もしかして今の中高校生にとって彼女は“オバさんなのにカッコイイ実力派女優”なのかもね。
そもそも、原田美枝子が『愛を乞うひと』に出演したのは、今の篠原涼子より数歳若い時なのだ。

あと、『愛を乞うひと』の面白さの一つに、台湾でのロードムーヴィ的要素があるけれど、
それはドラマにもちゃんと有って、嘉義や阿里山を中心に撮影された模様。
映画版では、おかしなタクシー運転手が登場し、ヘヴィな物語にちょっとした笑いを添えてくれるが、
ああいう運ちゃんは、ドラマにも登場するのでしょうか。


(↓)こちら、台湾での1シーンの映画版×ドラマ版比較。

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質素な“修道女感”は、やはり原田美枝子の方が勝っている気が。
映画版で野波麻帆が扮した山岡照恵の娘・深草を演じるのは広瀬アリス。
広瀬アリスの起用は、民放のゴールデンタイム向けと感じてしまい、現時点での私の期待は低め。

他の重要なキャストでは、豊子が生涯で唯一愛した台湾人の夫、映画版では中井貴一が演じた陳文雄を、
ドラマ版では上川隆也が演じる。
映画版では、中井貴一に台湾語の台詞があるのだが、私自身が台湾語を解さないので、
上手いのだか下手なのだか分からなかった。
上川隆也というと、『大地の子』で大量の中国語の台詞をこなしていたけれど、台湾語はどうでしょう。
中国語に関しては、中国語をまったく判っていない人が丸暗記だけで台詞を口にしているとは信じ難いほど
“それっぽい”と感心したのを覚えている。

台湾で豊子たちが会う陳文雄の親戚たちを、ちゃんと台湾人俳優が演じているのかは、今のところ不明。
例えば金士傑(ジン・シージエ)のような
台湾の有名なベテラン俳優が特別出演していてくれれば嬉しいけれど、それは贅沢過ぎる望みか。
腹に一物あるあの遠縁のおじいさんを金士傑が演じたら、合うと思うんだけれど…。まぁ無理よね…。
とにかく、ドラマ版『愛を乞うひと』は要チェック。



その晩、…正確には日を跨ぎ、12日(木曜)になったばかりの午前0時、
BS日テレで放送される『旅してHappy』は、先週から引き続き、藤田可菜が紹介する台湾編の第2回なので、
こちらも録画を予約。




あっ、そうそう、あと、映画監督としても活動する日本のフォトグラファー蜷川実花が、
大陸のスーパーアイドル鹿(ルー・ハン/ルハン)の新曲<微白城市>のMVを手掛けたのは、
数日前、こちらに記した通り。そのMVが発表されたので、一応ここに貼っておく。


ファンの皆さま、残念ながら、鹿クンはMV撮影のために来日しておりません。
蜷川実花センセが中国へ飛び、北京で撮影。
舞台となっているお部屋は、蜷川実花のご自宅に通じる雰囲気がありますね。
つまりは、蜷川ワールドが充分表現されているか、と。






さて、皆さま、お正月気分はもうすっかり抜けているとはお察しいたしますが、新春のおめでたいお菓子を。
父が頂いた物で、亀屋042-385-8181)の“2017年吉祥上生菓子”という縁起菓子。
箱に沢山入っていた物の内、私は4個をお裾分けしてもらった。

★ 梅一輪

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大きさは、直径約4センチ。
中につぶ餡を包み、上部を小さな梅の花と金箔で飾ったきんとん。



ひとつめは、“梅一輪”
赤い色、金箔、一輪の梅の花…、とお正月らしく華やかな雰囲気。
反して、中の餡は、素朴なつぶ餡。
きんとんは、ふんわりと盛られ、口の中でほぐれていく感じ。

★ 万寿

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大きさは、幅約4センチ、高さ約3センチ。
中につぶ餡を包み、上部に“壽”の文字を型押しした柚子の煉り切り。



続いて、“万寿”
六角形のお菓子の上に“壽”の文字を型押し、ちょっとミニ月餅のよう。
上生菓子の定番・煉り切りで、作りも今回食べた4ツの中で一番単純なのだけれど、
その煉り切りが柚子風味というのは、有りそうであまり無い。
さり気なく感じる爽やかな柚子の風味が、餡とマッチ。

★ 水仙

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大きさは、幅約4センチ。
外郎生地で栗餡を包み、上部に水仙の花を飾ったお菓子。



3ツ目は“水仙”
これは、餡を包んでいる表の生地が外郎(ういろう)。
外郎特有のもっちりした食感が良い。
中の餡は、この画像だと分かりにくいが、よく見ると、細かく刻んだ栗が混ぜ込まれている。
上に飾られた小さな水仙が可愛らしい。

★ 若竹

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大きさは、幅約4センチ、高さ約2.5センチ。
浮島と羊羹を合わせ、上部を煉り切り製の笹の葉と金箔で飾ったお菓子。



最後は“若竹”
浮島と羊羹を、寄木細工のように組み合わせたお菓子。
“和風スポンジケーキ”浮島は、しっとりした質感。
甘さ控えめのさっぱり味なので、甘い羊羹の部分と一緒に食べると、味に深みが出て、なお美味しい。
この緑色の羊羹は、抹茶羊羹なのだろうか。
抹茶特有の苦みがもっと前に出ていたら、さらに良かった気がする。

<ブラインド・マッサージ>畢飛宇

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著  :畢飛宇(ビー・フェイユイ)
訳  :飯塚容(いいづか・ゆとり)
発行:白水社




観たい!とずーーーっと言い続けていた婁(ロウ・イエ)監督作品『推拿~Blind Massage』(2014年)が…

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今週末、2017年1月14日、『ブラインド・マッサージ』の邦題で、よーーーやく日本公開。バンザイ。

随分待たされたが、日本のスクリーンで観られることとなり、素直にi嬉しい。
しかも、映画の公開に先駆け、2016年8月には、
原作小説の<ブラインド・マッサージ>という翻訳本が発売。
(もっとも、私が翻訳本の出版に気付いたのは、つい最近。)
よほどの超大作ならともかく、まさか婁監督作品の原作本が日本語で読めるとは思いもしなかった。
そもそも、日本で中国の小説というと、<三国志>や<水滸伝>といった大昔の作品が主流なので、
現代文学の出版自体が珍しい。

★ 概要

本書の作者・畢飛宇(ビー・フェイユイ)は、1964年、江蘇省興化の生まれ。
1987年、揚州師範學院中文系を卒業と同時に教員となり、
1990年、処女作である中編小説<孤島>を文学雑誌<花城>に発表。
1992年、<南京日報>の記者となり、
1997年、<哺乳期の女~哺乳期的女人>で魯迅文學獎の短編小説部門で受賞して以降、
数々の作品で、様々な文学賞を受賞している。
現在は、江蘇省作家協會の副主席であり、南京大學の教授。

かなり著名な作家でありながら、訳者のあとがきによると、
ここ日本で、畢飛宇作品が翻訳紹介されたのは、これまで短編小説がいくつか雑誌に掲載されただけで、
単行本の刊行は、この<ブラインド・マッサージ~推拿>がお初なのだと。

<ブラインド・マッサージ>は、2009年に発表された長編小説で、
2011年、第8回茅盾文學獎(ぼうじゅん文学賞)を受賞。
この年、ノーベル賞作家・莫言(ばく・げん/モウ・イェン)の<蛙鳴(あめい)>も一緒に同賞を受賞してる。

私は、婁監督が映画にしたことで注目したわけだが、
映画化の一年前の2013年、康洪雷(カン・ホンレイ)監督により、テレビドラマ化もされている。
こちらは、あまりヒットしなかった上、原作者・畢飛宇に無許可で、ドラマの脚本<推拿>が出版されたため、
脚本家の陳枰(チェン・ピン)と西苑出版社が訴えられたようだ。あららぁー…。

婁監督の映画『ブラインド・マッサージ』の方は、そのような問題は無く、
脚本を手掛けた馬英力(マー・インリー)は、第51回金馬獎で最佳改編劇本(最優秀脚色賞)を受賞。

★ 物語

小説<ブラインド・マッサージ>の目次は、以下の通り。

プロローグ:定義
第1章 :王先生
第2章 :沙復明
第3章 :小馬
第4章 :都紅
第5章 :小孔
第6章 :金嫣と泰来
7章 :沙復明
第8章 :小馬
第9章 :金嫣
第10章:王先生
第11章:金嫣
第12章:高唯
第13章:張宗
第14章:張一光
第15章:金嫣と小孔、泰来と王先生
第16章:王先生
第17章:沙復明と張宗
第18章:小馬
第19章:都紅
第20章:沙復明、王先生と小孔
第21章:王先生
エピローグ:夜宴


見ての通り、プロローグとエピローグ以外は全て人名で埋め尽くされている。
内、高唯以外は全員盲人のマッサージ師。高唯は盲人ではないが、他の皆と同じ職場で働く同僚女性である。
その職場とは、南京にある盲人マッサージの店・沙宗マッサージセンター(沙宗推拿中心)。

本書は、その沙宗マッサージセンターで働く盲人たちの(正確には、高唯のような健常者も少数含む)
日々の生活や、人生の中の悲喜こもごもを綴った群像劇。

ひと言で“盲人”といっても、先天的に目が見えない人、後天的な人、全盲の人、弱視の人と様々で、
それによっても、人生観や性格が変わってくるもの。
例えば、病気や事故など何らかの事情で後天的に盲人になった人は、
それまで当たり前のように有った光を突如失い、生活も一変してしまう訳だから、
それが後の性格形成に大きく影響することもある。
勿論、障碍が有ろうと無かろうと個性は人それぞれ。
普段はあまり注目されることの無い人々、
街の片隅の小さなマッサージ店で働く盲人たち一人一人が背負う人生の中に詰め込まれた
ささやかなドラマの数々に、不思議とぐいぐい引き込まれる。

また、小説に描かれる彼らの人生の中に、愛と性が大きく含まれるのは、特徴的。
それは、我々健常者が、ついついタブー視して触れないようにしている部分かも知れない。
しかし、もしこの部分が無く、本書が、盲人を取り巻く社会問題や、
社会的弱者のけな気な生き様ばかりを綴った“イイ話”に終始していたら、
それはわざわざ婁監督が映画にする題材ではなかったであろうと想像する。

★ 登場人物

映画『ブラインド・マッサージ』が、どれ程度原作小説に忠実に撮られているのか、
もしくは原作小説のどの部分を重点的に取り上げているのか、といった詳細は今の時点では不明。
だが、小説の中で主要となっている人物たちの多くは、一応映画の方にも登場するようだ。

そこで、ここには、小説の中で描かれる主要人物たち個々の背景を簡単に記し、
映画の中で取り分け大きく取り上げられているであろう人物に関しては、
演じるキャストの名と画像も挙げておく。


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王先生
映画:郭曉冬(グオ・シャオドン)

南京出身。技術の高いマッサージ師で、経済が絶好調だった時代に、当時働いていた深圳でひと財産を築く。
同じように盲人で、マッサージ師の小孔を大切に想い、一日も早く故郷で自分のマッサージ店を開き、
彼女をその店の店長夫人にしてやりたいという気持ちから、株式投資に手を出し、失敗して、財産を失う。
小孔を連れ、南京に戻り、止むを得ず、旧友・沙復明が経営する店、沙宗マッサージセンターで、
小孔共々雇ってもらうことになる。
そこで働きながら、コツコツと貯めたお金を、弟の借金返済に充てる羽目となり、抑えていた気持ちが爆発。
自分の体を包丁で切って、116針縫う。


小孔
映画:張磊(チャン・レイ)

安徽省・蚌埠出身。深圳で知り合った王先生に誘われ、覚悟を決め、
美容院へ行き、ハイヒールとトリンプの下着とシャネルの5番を買って、春節休みに彼の実家がある南京へ。
そのまま王先生と恋人関係になり、駆け落ち同然で南京に残り、沙宗マッサージセンターで働くようになるが、
全盲の男との結婚を反対する親を欺くため、2台の携帯を持ち、親には深圳に居ると偽り続ける。


小馬
映画:黃軒(ホアン・シュエン)

9歳の時、交通事故で失明。親に連れられ、あちらこちらの病院を巡るも、回復は不可能と知り、
自殺を計ろうと茶碗の破片を突き刺した傷が今でも首に残る、20歳そこそこの青年。
会った人は口をそろえて「典型的なイケメン」と言うし、見たところ健常者と変わらないが、
それゆえ他の盲人よりトラブルに見舞われ易く、大変な無口になる。
“姉さん”と慕う小孔に寄せる想いは報われず、同僚の張一光に連れられて行ったヘアサロン(洗頭房)で、
初めて関係をもった娼婦・小蠻にハマり、幾度も幾度も彼女を訪ね、やがて警察に見付かってしまう。


沙復明
映画:秦昊(チン・ハオ)

南京で沙宗マッサージセンターを経営する店長。
盲人でありながら昔から商才に長けていた沙復明は、自分が開く店には腕の良いマッサージ師が必要と考え、
旧友の王先生を厚待遇で迎え入れようとしたが、断られ、
結局、張宗との共同出資で沙宗マッサージセンターをオープン。
その後、財産を失い、南京に戻って来た王先生に頭を下げられ、
かつて自分の誘いを断った彼を、恋人・小孔と共に、店に雇う。
自分の店に雇っている別の女性マッサージ師・都紅が美人と聞き、
自分の目では見たことがない美しい彼女に惹かれていく。


都紅
映画:梅婷(メイ・ティン)

盲学校の先生に音楽の才能を見出され、勧められて始めたピアノがみるみる上達するも、
中学2年の時、演奏会で大失敗をし、漢方マッサージに進路変更して、
李婷婷の紹介で沙宗マッサージセンターにやって来たが、ハッキリ言って下手くそ。
ところが、(盲人なので、自分では自分の容姿を知らないのだけれど)美人なので、客がつく。
テレビドラマ『大唐朝』のスタッフが来店した際には、
彼女が盲人だと気付かない監督から、スカウトされかけたほど際立って美しい。
店長の沙復明から想いを寄せられるが、彼女の方は彼に興味はなく、気になっているのは小馬。
仲違いしてしまった李婷婷が結婚退職すると知り、衝撃を受け、関係修復を図ろうとした時、
不運にも、休憩室の扉で、右手親指を断裂してしまう。


張一光

35歳まで健常者だった元炭鉱夫。2001年、江蘇省の炭鉱で起きた爆発事故が原因で、視力を失う。
すでに40歳近く、2人の子供をもつ彼は、若いマッサージ師が多い店で、異色。
張一光の最大の特徴は、度を越すこと。
人付き合いが巧く行っている時は、自分の内臓を取り出して酒のつまみにできないのを残念がる程だが、
仲が悪くなると、極端に相手を憎み、すぐに手を出す。
小孔への想いがままならず、悶々とする小馬を見かね、自分が通うヘアサロン(洗頭房)に彼を連れて行き、
惜しみながらも、一番気に入っている女の子・小蠻を譲る。


小蠻
映画:黃璐(ホアン・ルー)

“ヘアサロン(洗頭房)”の娼婦。この仕事に就く前、2年間の恋愛経験あり。
容貌は人並みで、厳密に言えば、美人ではない。しかも自尊心が強い。
本当は条件の良い大きな店で働きたかったが、競争に勝てず、みじめな気持ちになるのがイヤで、
仕方なく、労働者相手のヘアサロンで働き始める。
ベッドの上では至れり尽くせりであるため、張一光が“最も寵愛する妃”であったけれど、
今度はその張一光の紹介で相手をした小馬から常に指名されるように。
一人前の娼婦は無情でなくてはならないと知りながらも、小馬の清らかな“視線”に囚われてゆく。


張宗

1歳の時、医療事故で失明。
上海で知り合った沙復明と共同出資で、南京に沙宗マッサージセンター(沙宗推拿中心)をオープン。
店名は、沙復明の姓“沙”と、張宗の名“宗”を合わせたもの。
内向的が度を越し、ほとんど自閉症に近く、滅多に口をきかない。
そのため、表立った仕事は沙復明任せであったが、
お店に不穏な空気が漂い始めると、その均等も徐々に崩れていく。
愛読書は<紅楼夢>。


金嫣

大連出身。10歳の時、黄斑変性症で目を悪くすが、多少の視力あり。
地元に居た頃、徐泰來と小梅の話を伝え聞き、会ったこともない徐泰來に勝手に恋をして、
彼を追って上海、南京とやって来て、沙宗マッサージセンターで働くようになり、徐泰來に積極的にアタック。
どう見ても釣り合わない二人であったが、紆余曲折を経て、意外にもカップルに。望む愛は“溺愛”。


徐泰來

先天性の盲人。身長176センチ。左利き。蘇北出身で、強い蘇北訛り。
“妹妹(メイメイ)”を“ミーミー”と発音するのは蘇北人だけなので、すぐ出身地がバレる。
他にも、FとHが逆になってしまうため、“回鍋肉(ホイコーロー)”を“肥鍋肉(フェイコーロー)”、
“分配(フェンベイ)”を“婚配(ホンベイ)”などと発音。
初恋の相手は陜西省出身の小梅で、交際10ヶ月足らずで破局。
この初恋で傷ついたせいもあり、とても臆病で、金嫣のアプローチになかなか応じない。
最終的に金嫣と付き合うことになった時、彼女から何度も“綺麗”と褒めることを強要されるが、
先天性の盲人で、“綺麗”の意味が分からず、口にした言葉は「紅焼肉よりも綺麗だ」。
)この徐泰來は、映画では“徐泰和”と微妙に役名が変えられているみたい。






小さな不満や問題は多々あれど、表面的には平和を保ってきた沙宗マッサージセンターは、
まかないの羊肉が公平に配られていなかったという些細な事件を機に、
徐々にホコロビ始め、店長・沙復明が大量の吐血で運ばれた病院で、物語は幕を下ろす。
沙復明は回復するのか、店がどうなるのか、先の見えない幕締めは、悲劇的にも見えるけれど、
居場所を失いかけながらも、崩壊寸前の絆を取り戻す盲人たちが、
新たな一歩を踏み出そうとする力強さも感じられ、案外清々しいラストであった。

盲人マッサージ師たちを主人公した小説を、私は他に知らない。
それは、盲人マッサージ師を主人公にしても、そこにドラマが生まれない、面白くならないと思われ、
扱われないからではないだろうか。
私自身、婁監督の映画が無かったら、“盲人マッサージ師の話”という情報だけでは、
この小説を手にしなかった気がする。本書と出逢わせてくれた婁監督に感謝。

これ、物語自体がとても面白く、引き込まれたのだけれど、
所々に出てくる生活文化、時流を感じさせるくだりにも興味を引かれた。
例えば、都紅をスカウトしようとする監督が撮っているテレビドラマ『大唐朝』。
これは、架空のドラマよねぇ…?唐代を描くドラマは多数あっても、『大唐朝』は有りそうで無いような…。
歌の引用は2ツあって、いずれも台湾の歌手のものであった。
今は大陸発のヒット曲も多いけれど、ちょっと前まで中華圏のミュージックシーンを牽引していたのは、
やはり台湾なのだと感じる。
ちなみに、一曲は、障碍者の歌手・鄭智化(ジョン・ジーホワ)の<船乗り~水手>、
もう一曲は、齊秦(チー・チン)、1985年のヒット曲<北国から来た狼~狼>。
齊秦の歌は、『天使の涙』(1995年)の中の<思慕的人>や
『ウィンター・ソング』(2005年)の中の<外面的世界>といった具合に、
映画の中で印象的に使われていることからも、
中華圏である世代以上の人々にとっては、過去のどこかに必ず刻まれている想い出深いものなのであろう。

曲のタイトル等もそうなのだが、
本書を読みながら、中国語の原文ではどう書かれているのだろう?と気になる部分は多々あった。
例えば、「南京の人は“金を稼ぐ”とは言わない。
金を稼ぐのは苦しいから“金を稼ぐ”ことを“金を苦しむ”と言う」というくだりがある。
これって、ちょっと前に観た王兵(ワン・ビン)監督のドキュメンタリー『苦い銭~苦錢』と同じか?
私が読んだ王兵監督のインタヴュでは、労働者がよく使う表現で、
お金を稼ぐのは大変なことだから“苦錢 kŭqián”という、…との説明であった。


間も無く公開される映画『ブラインド・マッサージ』が楽しみ。
キャストでは、取り分け黃軒(ホアン・シュエン)の演技に期待している私。
小説を読み、小馬役に彼が選ばれたことを、やけに納得した。
口数が少なく、内に溜め込むタイプの美男子を、黃軒なら繊細に演じてくれていそう。

黃軒については、こちらの“大陸男前名鑑”をご参考に。

映画『疾風スプリンター』

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【2015年/香港/中国/125min.】
自転車ロードレースのチーム・光(レディエント)と契約した仇銘と邱田は、
共にアシストとして、エースの鄭知元と組むことに。
3人は、チームの主力選手として力を発揮。
競合の幽靈隊(ファントム)から受ける卑劣な妨害にも怯まず、台湾各地で熱戦を繰り広げる。
そんな時に知り合ったのが、女性サイクリストの詩瑤。
性格のまったく異なる仇銘と邱田であるが、
肺の病を克服し、再起をかけ、黙々とトレーニングを続ける彼女の一途な姿に、二人は同時に惹かれていく。
恋ではライバルでも、互いに切磋琢磨し、友情を深め、チーム光はついにレースの頂点に!
ところが、喜びも束の間、チームは資金難で運営が立ち行かなくなり、
仇銘、邱田、鄭知元の3人は、それぞれ別のチームへの移籍を余儀なくされる。
それまで一緒に力を合わせてきた3人は、ライバルとして競うこととなり…。



2015年、原題通りの『破風』というタイトルで、第28回東京国際映画祭にて日本初お披露目となった
林超賢(ダンテ・ラム)監督作品が、『疾風スプリンター』と邦題を変え、一般公開。

私は、林超賢監督作品の大ファン!って程ではないし同監督の作品は日本で公開される確率も高いので、
東京国際映画祭の時はパス。
翌2016年、第29回東京国際映画祭では、林超賢監督の最新作『メコン大作戦』(2016年)を観たので、
私の場合、鑑賞の順番が制作の順番と逆になってしまった。

この『疾風スプリンター』の一般公開では、初日の初回に行ったら、
会場の新宿武蔵野館スクリーン1が、ほぼ満席で驚いた。
上映終了後には、宇都宮ブリッツェン所属の鈴木真理選手による約20分のトークショー。
ショー開始冒頭、「この中でこういうロードバイクに乗る方」という問いに、会場の半数くらいが挙手。
私は、宇都宮ブリッツェンも、鈴木真理選手も、まったく知らなかったので、
こういう作品は、中華圏の映画や俳優に興味のある人が観に行くものだと思い込んでいたけれど、
案外自転車ファンが集まっていたのですね。




物語は、互いに切磋琢磨し、絆を築いていった自転車ロードレースのチーム光(レディエント)に所属する
仇銘、邱田、鄭知元という3人の青年が、運営の立ち行かなくなったチームから、3人バラバラに放出され、
ライバル関係となり、それぞれに問題や挫折を経験するが、そこから這い上がり、
再び友情で結ばれていく様子を描く、自転車アスリートたちの熱いスポ根ヒューマンドラマ

自転車のことはぜんぜん知らないし、また興味も無いので、知ろうともしない私。
林超賢監督の前々作で、MMA(総合格闘技)をテーマにした『激戦 ハート・オブ・ファイト』(2013年)の時も、
MMAなんて興味無いしぃーと期待せずに観たら、
スポ根より人間ドラマに比重を置いた作品に仕上がっており、案外楽しめた。

その経験から、この『疾風スプリンター』も、
自転車ロードレースの知識は特別無くても楽しめるエンターテインメント作品なのではないかと想像していた。
案の定、作品の多くの部分は、友情あり、恋あり、挫折ありの青春物語に割かれていた。


重要登場人物は、仇銘、邱田、鄭知元というプロの若きロードレーサー。
中でも、最重要人物は仇銘で、次いで性格などあらゆる面で正反対の邱田。
映画の冒頭で、「うさぎと亀の話は知っている?なんでうさぎは負けたのだと思う?」と
仇銘が邱田に質問を投げ掛けるのだが、それがこの作品の一貫したテーマでもあり、
性質の異なる二人がぶつかり合いながらも成長していく姿が、物語の軸になっている。

この二人は、詩瑤という同じ女性を好きになり、恋でもライバル関係に発展。
詩瑤も同業者で、アマチュアながらサイクリスト。
肺塞柱症というアスリートには致命的な病を患いながらも、再起をかけ、日々練習を積む逞しい女性。
恋でも自転車でも山あり谷ありの彼女の生き様も、本作品の重要なサブ・ストーリーとして描かれる。





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出演は、チーム光(レディエント)に所属する3人のロードレーサー、
仇銘に彭于晏(エディ・ポン)、邱田に竇驍(ショーン・ドウ)、鄭知元に崔始源(チェ・シウォン)

韓国出身の鄭知元は、チームのエースであるが、それゆえ、ちょっと上のスタア的存在で、
前述のように、彼を目標とするアシストの二人、仇銘と邱田の方が物語の軸になっている。

仇銘と邱田は、光と影のように正反対。
仇銘は、良く言えば、率直で明るい性格、悪く言うと、お調子者の俺様タイプ。
気持ちを抑えないから、怒りに任せ、チームメイトに手を上げ、
メディアから“暴力選手”とスキャンダラスに報じられたのを機に、色々な事が悪い方へ転がっていってしまう。

扮する彭于晏は、テレビドラマから映画へのシフトを成功させた数少ない台湾明星で、
映画では、『激戦 ハート・オブ・ファイト』(2013年)、本作品、そして『メコン大作戦』(2016年)と、
林超賢監督作品に3本も出て、今やすっかり“林超賢監督御用俳優”。
3本どの作品でも肉体を酷使。『激戦』の時は、ホンモノのMMAに参戦できるのでは?!と思ったけれど、
本作品でも、プロのロードレーサーになれそうな勢い。
内面に関しては、太陽のような明るさや、素直な所は、彭于晏の得意分野。
見せた真っ直ぐな彭于晏を、ちょっと思い出した。


もう一方の邱田は、仇銘とは違い、非常に生真面目。
感情を表に出さない、…と言うより、出せないタイプ。
太陽のような邱田に照らされ、影になっている自分に次第に悶々とし、ついに過ちを犯してしまう。
そう、おとなしそうな人に限って、一気に爆発しゃちゃうものだ。
ドーピングを機に、それがバレて→失踪→ギャンブルで借金→釜山に流れ着く、
…という絵に描いたような転落人生。

演じているのは、『サンザシの樹の下で』(2010年)で張藝謀(チャン・イーモウ)監督に見出された竇驍。
『サンザシの樹の下で』で、初めて見た時は、カナダ育ちにも関わらず、
涼しげな目元から醸される古風な雰囲気が、文革期の青年にピッタリ!と思った反面、
現代劇に対応できるのか?!と案じもしたが、本作品では邱田の繊細さが感じられ、とても良かった。
これまでは映画中心に活躍してきた竇驍だけれど、今後はテレビドラマにも出るようで、
話題作『九州·海上牧雲記~Tribes and Empires-Storm of Prophecy』では、
黃軒(ホアン・シュエン)と並ぶ重要な役を演じているみたいなので、今後も注目。


韓国の崔始源は、他の韓流スタアと同様に、禁韓令/限韓令の影響で、
この先、活動の軌道修正を余儀なくされてるのではないかと察する。
この『疾風スプリンター』も、公開が一年ズレ込んでいたら、華人俳優に選手交代させられていたかもね。
“主人公3人の内の一人が崔始源”だと信じ、彼目当てでこの映画を観るファンは、
実は主人公ではなくてガッカリするかも知れないけれど、
『疾風スプリンター』は、これまでに崔始源が出た中華電影の中では、登場シーンが最も多い。
声も、当初、韓国語訛りの声優による吹き替えかと思っていたけれど、
どうやら崔始源の地声が採用されているらしい。
崔始源は、「自転車も大変だったけれど、中国語の台詞を覚えるのも大変だった」、
「彭于晏と竇驍が中国語の発音の先生になってくれた」などと語っている。




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女性陣も見ておくと、肺病を克服しロードレース復帰に奮起する黃詩瑤に王珞丹(ワン・ルオダン)
チーム光(レディエント)のサブマネージャー陳意蕎に歐陽娜娜(オーヤン・ナナ)
仇銘の母・笑薇に柯淑勤(コー・シューチン)などなど。


本作品のマドンナ黃詩瑤を演じているのは王珞丹。

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美女度の高いドラマ『賢后 衛子夫~衛子夫』や、
アンニュイな映画『いつか、また』(2014年)の王珞丹が好きな私にとっては、
本作品の詩瑤は、フツーのイイ子っぽくて、物足りなく感じるのだけれど、
映画を観た日本人男性には「カワイイ」と概ね好評のよう。
日本人男性は本当にフツーっぽい女子に弱いですよねー。
上映終了後のトークショーでも、同業者との恋は無いのかと尋ねられた鈴木真理選手が、
「実際には詩瑤みたいな可愛い女性選手なんて居ませんから。
…あっ、スミマセン、居ます、居ます、沢山居ますっ!」と慌てて言い直していたのが、可笑しかった。
この作品では、彭于晏をはじめとする男性たちの肉体改造が語られがちだが、
私は サイクリストの役作りは、むしろ女性の王珞丹の方が酷だったのではないかと想像。
だって、太モモを太く鍛え上げて自転車体形にしたい女優さんなんて、あまり居ないでしょー?!


陳意蕎役の歐陽娜娜は、日本でもお馴染み、あの歐陽菲菲(オーヤン・フェイフェイ)の姪っ子ちゃん。

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若き天才チェロ奏者として注目される彼女は、
ルックスの良さで映画界からもお声が掛かり、すでに数本の作品に出演。
(ぜんぜん関係ないけれど、歐陽菲菲の御主人・式場壮吉氏って、去年亡くなっちゃたのよねぇ…。
ちょうどその頃、日本では、蜷川幸雄逝去のニュースばかりだったので、私は、台湾の報道で知った。
おしどり夫婦と言われていたので、歐陽菲菲が心配。この先も日本で暮らすのだろうか。)


仇銘の母・笑薇には、ウラブレた女をやらせたら台湾で一、二を争う実力派の柯淑勤。
この前に観た出演作、ドラマ『結婚なんてお断り!?~必娶女人』では、
珍しく、陽気でハジケた母親を演じていたけれど、
今回は、“幼い仇銘を捨てた酒場の女”という設定で、安定の下流感(笑)。
但し、後半は、駄目な母親なりに、イイ所を見せる。


女性キャストで気になったのが、もう一人。

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ひじょーーーっに中途半端な登場をする、洛詩(ルオ・シー)扮する女性記者。
邱田を追っているらしく、劇中、意味有り気に何度かチラッチラッと現れるのだけれど、ただそれだけ。
もしかして、林超賢監督は、詩瑤にフラれた邱田と、この女性記者が、恋に発展する所まで描きたかったの?
で、あまりにも詰め込み過ぎなので、ばっさりカットしたとか…??




撮影場所は、台湾だけかと思っていたら、他にも、香港、上海、甘粛省の騰格里沙漠、韓国・釜山、
そして、ヨーロッパまで飛び、イタリア、スイスも。
私は、人やお店がいっぱいの日常の街中が好きなので、あまりビビッと来なかったが、
自転車やバイクが好きな人は、自分がその風景の中で風を切って走っている気になれるかも…?





林超賢監督らしい感動のツボを押さえた人間ドラマで、ベタだが良く出来た娯楽作。
自転車に無関心な私でも楽しめたけれど、その“林超賢監督らしさ”は、私の好みとは違うので、
一年後、本作品を私の“2017年度ベスト映画10本”に入れることは、まず無いと確信している。

私の好みはさて置き、広く世間一般では、ウケるのでは。
林超賢監督作品というと、激しい銃撃戦やバタバタと人が死ぬクライム・アクションも多いが、
そういうのが苦手な人でも、これならきっと大丈夫。
イケメン俳優が出てくるし、ラヴ・ストーリーの要素もあるから、気に入る女性も多いかも。

自転車好きな人は、どう受け止めるのでしょうねぇ…?!
上映後のトークショーによると、ロードレースを扱ったこれまでの作品に比べ、これは観易いとのご意見。
それは、過酷な競争に大半を割くのではなく、
登場人物それぞれが抱える人間ドラマや恋を描いた娯楽作仕上げになっているからという事であろう。
現在40代の鈴木真理選手は、スポンサーなど様々な関係者からの重圧があり、何がナンでも勝たなければ!
と躍起になっていた若い頃の自分を重ねたと語っておられた。


あと、そうそう、本作品上映中の新宿武蔵野館には…

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撮影に使われたというロードバイク2台が、出演者のサイン入りで展示されていた。


余談になるが、私のパソコンは、“はやし ちょーかしこい”と入力すると、
“林超賢”監督の名が出てくるようになっている。

映画『人魚姫』

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【2016年/中国・香港/94min.】
一代で巨万の富を成した実業家の劉軒は、大金をはたき、美しい自然保護区・青羅湾を買収。
出資者や研究者からの助言で、そこに強力なソナーを設置し、海洋生物を湾から追い出し、
埋め立ての許可を得て、順調にリゾート開発を進める。
一方、青羅湾から追い出された人魚族たちは、難破船に避難したものの、
多くの仲間をソナーで傷付けられ、このままでは絶滅の危機。
そこで、タコの八哥を中心に、諸悪の根源である劉軒の暗殺を計画、
清純可憐な人魚の珊珊を人間に変装させ、劉軒への接近を試みるが…。



2016年、大陸の映画興行成績を塗り替える大ヒットを記録した
周星馳(チャウ・シンチー)監督、『西遊記 はじまりのはじまり』(2013年)以来の最新作を鑑賞。

私にとって周星馳作品のピークは『少林サッカー』(2001年)。
コテコテの香港B級映画の雰囲気を残しながら、広く一般ウケする娯楽大作に仕上げたバランスが絶妙。
それ以降の作品は、前者が減り、後者ばかりが際立ち、
もはや香港映画ではなく、大陸市場向けコメディ巨編になってしまったように感じた。

“大陸で大ヒットを記録したコメディ”である点も、私にとっては鬼門。
『人魚姫』が出てくるまで、“興行成績歴代1位”と言われ続けていた『モンスター・ハント』(2015年)も、
そこまで面白いとは思わなかったし…。

以上、2ツの理由から、『人魚姫』には過度な期待を抱かず、公開初日に鑑賞。
前作『西遊記 はじまりのはじまり』が、日本で大して話題にならなかったせいか、
東京での上映はシネマート新宿の一館のみ。しかも一日たったの2回しかかからない。
限られた選択肢の内、より好都合だった初回の方へ行ったら、
立ち見が出る程の大盛況だったのでビックリ。
上映回数が少ないことも大きいけれど、昨今、中国語作品にこれだけの人が集まるって、珍しくない?!
今でも“周星馳”は集客に効果を発揮する魔法の名前なのだろうか。
それとも、どこか有名なサイトやテレビ番組で取り上げられたの…?




物語は、大富豪・劉軒が、自然保護区を買収し、強引なリゾート開発に乗り出したがため、
住む場所を追われた人魚たちが、諸悪の根源である劉軒を暗殺しようと
仲間の珊珊を人間に化けさせ、劉軒に近付けるとという美人計を企てるも、
劉軒が珊珊に惹かれるだけではなく、有ろう事か珊珊までもが劉軒を愛してしまうという想定外が起き、
それぞれの計画、リゾート開発も暗殺も難航し、事態が思わぬ方向へ発展していく様子を描く
人間と人魚の禁断のラヴ・ストーリー(コメディ仕立て)。


人魚姫というと、アンデルセンの有名な童話を真っ先に思い浮かべる。
愛してはいけない王子様を愛し、人間の姿で近付くも、報われず、
人魚の姿に戻るために、王子様の血が必要になっても、彼を殺せず、結局、海の泡になってしまうという悲劇。

この映画の人魚・珊珊は、大富豪・劉軒を暗殺するために送り込まれる言わば刺客。
人魚であることを隠し、人間のフリをすることや、愛してしまった劉軒を殺せなくなる点は、
アンデルセンの童話と近い。
ただ、仲間からキスの仕方を教わるなど、オトコを落とす手練手管を習得し、
組織ぐるみで企てられた美人計で敵に近付くも、その敵を愛してしまい、暗殺の任務を遂行できないという点は、
汪兆銘政権の特務機関員・易を殺し損ねる『ラスト、コーション』(2007年)の国民党抗日工作員、
湯唯(タン・ウェイ)扮する王佳芝っぽいかも。

もっとも、「愛してはいけない人を愛してしまった…!」というこの手の禁断の恋は、古今東西よく有る話で、
悲恋の定番の一つなのだけれどねー。
周星馳監督作品だから、当然ながら、それを悲劇ではなく、喜劇にしている。

また、自然環境破壊の問題も大きなテーマとして、ラヴ・ストーリーの背後に。
中国の急速な発展の裏で、深刻化する環境破壊に、警鐘を鳴らす、案外真面目な作品。
ただ、『ザ・コーヴ』(2009年)か?と思わせる血生臭いイルカ捕獲のシーンや、日本の悪女も登場するので、
日本人も笑ってばかりはいられない。





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主な出演は、金儲けのため強引なリゾート開発を進める大富豪・劉軒に超(ダン・チャオ)
劉軒を暗殺するために送り込まれる人魚・珊珊に林允(リン・ユン)
劉軒のビジネスパートナー李若蘭に張雨綺(キティ・チャン)
珊珊ら人魚族のリーダー的存在、タコの八哥に羅志祥(ショウ・ルオ)


この映画、私が想像していた以上に超が主人公の“超映画”だったのですねー。
超は、日本でこれまであまり大きく取り上げられたことがなく、
“孫儷(スン・リー)の夫”として紹介される程度であった。

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実際、2010年に結婚した女優・孫儷とのオシドリ夫婦っぷりは有名だし、
彼女との微博上のやり取り等からも、美男なのに明るく気取らないお人柄が垣間見え、あちらでは人気者。
日本に入ってきている出演作だと、カッコイイ超ばかりを見ることになるのだが、
今回は初めて超のハジケた部分に触れられる。特に踊るシーンや歌うシーンは面白かった。

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やけに周星馳っぽい見覚えのある踊りだと思ったら、
やはり振り付けby周星馳で、直々に熱い御指導があったみたい。


ヒロイン珊珊に抜擢された新たな“星女郎(シンチー・ガール)”は林允。

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12万人の中から選ばれた時は、モデルの仕事はしていたものの、まだ演技経験の無い18歳。
身長168センチ、体重47キロのスレンダーボディで、
顔は台湾の“大S”こと徐煕媛(バービィー・スー)と舒淇(スー・チー)を合わせた感じと言われている。
私も、映画を観ながら、若い頃の大Sに似ていると思った。新たな星女郎、確かに可愛いです。

しかし、星女郎は可愛いだけでは務まらない。
銀幕デビューの『人魚姫』では、かつて多くの星女郎たちが経験してきたように…

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星女郎のお約束、不細工メイクも披露。林允ちゃん、映画の初登場シーンがこの顔(笑)。

周星馳や張藝謀(チャン・イーモウ)に見出された若手女優は、将来がほぼ約束されたようなもの。
林允ちゃんもデビュー作が大ヒットという華々しいスタートを切り、着実にキャリアを積んでいる。
日本でも人気が出そう。でも、すでにスキャンダルもあって…

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18歳年上の馮紹峰(ウィリアム・フォン)とのおデートを激写されている。
10歳年下の倪妮(ニー・ニー)といい、この林允といい、馮紹峰って娘みたいに若い子が好きよね。
(もっとも、自分よりずっと年上のオバさんが好き!という男性の方が珍しいだろうから、普通か。)
映画の中の人魚・珊珊のように、林允ちゃんにはずーっとピュアでいて欲しいと願う男性ファンには
このようなスキャンダルはショックだろうが、これくらい逞しくないと女優として大成しないという気もする。


この映画では、新旧の星女郎が共演しているのだが、
『ミラクル7号』(2008年)に抜擢された“旧”の方の星女郎・張雨綺だって、
良くも悪くも色々と話題を振りまき、清純派だった昔より、今の方が女優としてずっと輝いている。
今回演じてる若蘭は、かなりのビッチ。私、悪役を演じている張雨綺を見るのは、初めてかも。
劇中、劉軒に対して言う「どうせ昨晩は安っぽい娼婦と遊んでいたんでしょ」という台詞は、
張雨綺の留守中に買春で御用となった映画監督の元夫・王全安(ワン・チュアンアン)の一件が重なった。
張雨綺は、その後、王全安監督とは離婚し、2016年実業家と再婚したのだが、
映画の中で、自虐的とも思えるキワドイ台詞を吐けるなんて、彼女も吹っ切れたものだ。
美人でスタイルも良いし、張雨綺が演じる悪役、サイコー。

ちなみに、彼女が演じる役の名は、日本語字幕で“ルオラン”と片仮名表記にされているため分かりにくいが、
漢字で書くと“若蘭(じゃくらん)”。
そう、大ヒット大陸ドラマ『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』に登場する主人公・若曦の姉と同じ名前。
ドラマの中では、後の雍正帝、“四爺”こと愛新覺羅胤と、
姉・若蘭の夫である“八爺”こと愛新覺羅胤禩との間で揺れる若曦だけれど、
この映画の中にも、④様と⑧様は登場。
監督や脚本家は、役名を考える時、絶対に『宮廷女官 若曦』を意識したでしょう?!

映画の中で、“四爺”と呼ばれる男性は、若蘭の父親。

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演じているのは、徐克(ツイ・ハーク)監督。
作中何度も「四爺」と呼ばれているが、日本語字幕では完全にスルーされている。
中国語が分からなくても、ドラマを観ていた人なら、“すーいえ(四爺)”と耳に入って来るから分かるはず。


⑧様の方は、“小豬”こと羅志祥扮する8本足をもつタコの八哥。
『西遊記 はじまりのはじまり』に続き、またまた周星馳監督からお呼びが掛かった羅志祥。
前作以上にハジケた演技を見せている。
私は、これまでの羅志祥出演作の中で、最もハジケていたのは
ドラマ『僕のSweet Devil~海派甜心』だと思っていたけれど、それを軽く超えた。
小豬の凄い所は、一応“イケメン枠”のアイドル出身なのに、捨て身になれる所ヨ。
日中関係の悪化で、日本での活動を停止した小豬だけれど、この映画でファンになる日本人は多いと思う。
ちなみに、TRFのSAMから“SHOW”と命名してもらい、
日本では今後その名前で活動する!と明言した事実は無かったことになったのか、
映画の配給会社さえ“ショウ・ルオ”と表記し、今や誰も“SHOW”を使っていない(苦笑)。



カメオ出演程度に出ている豪華な面々も一部見ておくと…

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珍獣博物館の見学者に白客(バイ・クー)、同じく見学者に田啟文(ティン・カイマン)
修理工に林子聰(ラム・ジーチョン)、劉軒に開発の説明をする日本人に松岡李那
警察官に文章(ウェン・ジャン)、劉軒を訪ねてくる奨学金生に吳亦凡(クリス/ウー・イーファン)等々。

白客は、ちょっと前に観た主演映画『ストームブレイカーズ 妖魔大戦』(2015年)だと時代劇の扮装だが、
本作品では、現代風なので、雰囲気がまったく違う。
こういう賀歲片(お正月映画)にカメオ出演するくらいだから、
『ストームブレイカーズ』を含む彼の主演ドラマ『萬萬沒想到』シリーズは、あちらでは人気なのでしょう。
『ストームブレイカーズ』は、本当にツマラナかった…。)

雰囲気が違うと言えば、吳亦凡も。
髮を黒くし、真面目な奨学金生を演じていると、普段のイメージとは別人。
(なぜこの松ぼっくりのような髪形にしてしまったのかは疑問…。)


あと、日本人は、映画の中で突如耳にする日本語についつい食い付いてしまうはず。
あの悪女は、香港を拠点に活動する日本人・松岡李那(まつおか・りな)。
今後は、演技のお仕事も積極的に増やしていくのか、
台湾で実写ドラマ化され、放送待機中の『ちびまる子ちゃん~櫻桃小丸子』にも、野口さん役で出ているらしい。




なお、ロケ地は、深圳を中心とした南部が多いみたい。例えば…

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劉軒が出資者の四爺らと会合をする場所は、南沙の高級ヨットクラブ、南沙遊艇會(Nansha Marina)、
劉軒が珊珊とチキンを食べて遊ぶ遊園地は、深圳の東湖公園(Shenzhen Donghu Park)。
他、劉軒が買収した自然保護区の“青羅灣”と設定されている場所は、深圳の楊梅坑、
劉軒の豪華なオフィスは、同じく深圳にある高級別荘エリア・懿軒といった具合。





本作品、日本でも大変好評と見受ける。
私個人の率直な感想は、“やはり『少林サッカー』超えは無かった”。
しかし、『カンフーハッスル』(2004年)以降に限定すれば、周星馳監督作品の最高峰。
子供から大人まで、皆が一緒に楽しめる、とても賀歲片(お正月映画)らしい作品という印象。
私は、子供には見せられないような毒のあるものが好みなので、これくらいだと、やや物足りない。
日本ではなかなか注目されない超が主人公として登場し、愉快な演技を見せてくれているので、
その点は、「ようやくうちの超も日本の皆さまに知っていただき…」と、
まるで超の親戚にでもなったかのように、喜んでいる。
女優では、新たな星女郎・林允の新鮮でキュートな魅力は勿論のこと、
ひと皮剥けた張雨綺の悪女っぷりが記憶に残る。
永遠に清純派を続ける吉永小百合のような女優より、悪女も演じられる毒を秘めた女優の方が、私は好き。
張雨綺は、陳凱歌(チェン・カイコー)監督最新作『空海 KU-KAI~妖貓傳』で、
妖猫が憑依した春琴に扮してるので(→参照)、そちらの公開も待ち遠しい。

『人魚姫』という邦題に関しては、原題の『美人魚』の方が良かったのに!という声も多いようだが、
私は別に『人魚姫』でも…、と積極的賛成もしなければ、反対でもなかったのだけれど、
今ちょっと“人魚姫”で検索をかけてみたら、<人魚姫の椅子>という小説と
<人魚姫のごめんねごはん>という漫画ばかりが引っ掛かってくる。
区別させるなら、やはり『人魚姫』は失敗で、『美人魚』の方が良かったかも知れない。

叶匠壽庵のお菓子3種(+テレビ雑記やちょっとした建築ネタ等々)

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今現在追っている物の中では一番楽しんでいる
チャンネル銀河で放送の大陸ドラマ『名家の妻たち~愛情悠悠藥草香』が本日で最終回らしい。
これ、多少心臓に負担が掛かっても、悪女たちの壮絶なドロドロに度肝を抜かれてみたいという人には、
生ヌルい『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』などより、実は余程お勧めしたいドラマ。

で、週明け、2017年1月23日(月曜)からは、林心如(ルビー・リン)+袁弘(ユエン・ホン)主演のドラマ、
『秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛~秀麗江山之長歌行』が始まるらしいのだが、これ、どうなんでしょうねぇ?!
袁弘が出演しているから、興味が無いわけではないけれど、
アラフォーで未だガーリーを引きずる林心如は、どうも苦手。
お試しで第1話だけ観たら、案の定キャピキャピだった。
全50話だって。どうしましょ。取り敢えず、一週間分は録画か。


ちなみに、その『秀麗伝』でガーリー林心如の相手役・袁弘は、
お仕事で、今週火曜日まで開催されていたミラノ・ファッションウィーク(Milano Moda Uomo)に行っていて、
微博に現地で撮った写真をボチボチ出していた。

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ここ、絶対にプリンチペ・ディ・サヴォイアでしょ。
私、ここで、天皇・皇后両陛下と遭遇し、わざわざ足を止めてご挨拶していただいたことがある。
恐らく、私が人生の中で“偶然に出くわした有名人”の中で一番の大物。
さすがにサインや写真のおねだりは控えた(そもそもカメラを持っていなかったし)。
ミラノは街が小さいので、有名人遭遇率が非常に高い。あぁ、袁弘にも会いたかった…。




さて、テレビ。
中国を扱う興味深い番組が、明日から目白押し。
近年、日本のテレビは、国内の空気を読み、“中華圏”というと当たり障りの無い台湾ばかりを取り上げ、
中国というとネガティヴな報道ばかりを垂れ流し。
いい加減ウンザリしているので、取り敢えず明日からの一週間は新鮮に楽しめそう。


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まずは明日、1月20日(金曜)、NHK BS1の『地球タクシー』
毎回ディレクターが外国の街を訪れ、タクシーを乗り換え、
現地をよく知るタクシードライバーとだからこそ触れられる街の側面を紹介する紀行ドキュメンタリー。
今回の舞台は、“魔都”上海。
SF的な現代建築と歴史的な洋館が不思議なハーモニーを奏でるこの街で、
上海蟹を求め、あちらこちらを彷徨ったり、庶民の生活感を肌で感たり、B級グルメを食べ、
上海の様々な表情を体感。

“SF的現代建築”は沢山あるから、番組でどこが映るのか分からないけれど
(建築やアートの番組ではないので、そもそも具体的に紹介しない可能性が大)、
例えば、日本では新国立競技場の計画が白紙に戻された故ザハ・ハディッドの作品は、
中国にはかなり有って、その内の一つ、凌空SOHOは…

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『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』や『歡樂頌~Ode to Joy』といった
上海を舞台にしたドラマの撮影にも頻繁に使われている。
なぜ、私が今わざわざそんな事を書いているかというと、
“お昼12時のシンデレラ ロケ地”、“お昼12時のシンデレラ オフィス どこ”といった検索で、
当ブログに起こしになる方がボチボチいらっしゃるからでございます。




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同日、その後は、毎度の日テレ『アナザースカイ』
今回のゲストは、ザハ・ハディッド案却下で、新国立競技場の設計を手掛けることになった建築家・隈研吾で、
中国出張の3日間に密着し、北京、上海、そして“東洋のハワイ”と称される三亞を巡る。
『アナザースカイ』で大陸を取り上げるのは、多分、2012年の岡本玲以来。待ってました!って感じ。

その大陸には、隈研吾の作品がかなり有り、日本人でも知らず知らずの内に目にしている物も。

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例えば、(↑)こちら。
北京市内から一時間ちょっと、万里の長城からほど近い場所に、
アジア12人の建築家がそれぞれデザインしたヴィラで構成された
長城腳下的公社(Commune By The Great Wall)という施設があり(ホテルとして宿泊可)、
その内の一棟が、隈研吾による“竹屋(Bamboo Wall)”。
ここは以前、吉永小百合が出演するシャープAquosのCMに使われていたので、覚えている人も多いのでは。
あと、北京を中心に撮られている彭浩翔(パン・ホーチョン)監督作品『恋の紫煙2』(2011年)にも出てくる。


他、(↓)こちらもとても有名。

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北京・三里屯に建つホテル、瑜舍(The Opposite House)。
最寄りの地下鉄駅・団結湖から、距離がそこそこ有るので、
私のホテル選びの条件には合わず、一度も宿泊したことが無いのだけれど、多分良いホテルだと思う。
(ただ、以前泊まろうと思って調べたら、客室のお風呂に仕切りが無く、完全に丸見えだったので、
人と一緒に泊まる場合は、要注意かも。)
上の画像は、前回の北京旅行の時に撮った物。
写真の整理がつかず、ブログの旅記録がすっかり滞ってしまっているのだが、
三里屯附近についても、その内更新いたします(…多分)。


隈研吾の比較的新しい作品in北京には、(↓)こんなのもある。

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紫禁城東大門正面辺りに建つ四合院を改築した北京茶室(Beijing Tea House)。
超素敵。但し、ここ確か会員制と聞いた記憶が…。
わざわざ行っても、非会員は中を見られない気がする。残念です。

今回の『アナザースカイ』で巡る3ヶ所の内でも、私が最も興味あるのは、やはり北京。
番組の中で、北京に行った隈研吾は、手掛けた胡同地区のプロジェクトの完成を見届けるらしい。
隈研吾だか誰だかが、前門東區の辺りの開発を手掛けると以前何かで読んだのだけれど、それかしら?
北京で行きたい場所、見たい場所が、またまた増えてしまいそう。
ちなみに、隈氏、番組司会者と並んでいる上の画像を見ても分かるように、
実はあの世代の日本人とは信じ難い長身で、190センチ近くもあるらしい。




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週末、1月22日(日曜)の朝、NHK BSプレミアムの『桃源紀行』は、
久し振りの新作で、中国の最南端、海南省の瓊海(Qiónghǎi けいかい)を紹介。
行ったことがないので、よく分からないが、『アナザースカイ』で隈研吾が訪れる三亞の近くよねぇ…?
まだ三亞ほどではなくても、リゾート開発が進んでいる場所ではないだろうか。
特にビーチリゾートに興味がある人には、面白い回かも。
私自身は、ビーチリゾートにはあまり興味が無いけれど、
瓊海は三亞ほどメディアで紹介される機会が無いので、結構楽しみ。




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そして、1月25日(水曜)は、NHK BSプレミアムの『中国王朝 よみがえる伝説』
このシリーズ、濱田岳をレポーターに、皇帝たちの権力の秘密に迫った前回から約一年、
今回は、“悪女”と非難されてきた女性たち、西太后、楊貴妃、趙姫の実像に迫る3本立て。
新たなレポーターは、戸田恵梨香(&毎度の浅田次郎が同行しているみたい)。
月一の放送で、第一回目では、清の西太后を取り上げる。
皇帝を差し置き、実権を握り、政敵を残虐に殺害、
王朝が存亡の危機にあるにもかかわらず、別荘建築に金を湯水のように使うなど、
私欲から国を滅ぼした悪女とされる西太后だが、
番組では、急速に進む考古学の発掘や新資料から、彼女の知られざる素顔に迫る。

NHKでは、数年前、『近代中国に君臨した女たち』というシリーズでも西太后を取り上げているが
(他の“君臨した女たち”は、婉容、宋慶齢、江青。このシリーズも面白かった)、
今回はアップデートして、ちゃんと新ネタが用意されているみたい。内一つが西太后のお墓の副葬品。
これまで、清朝滅亡後、盗掘され、副葬品は根こそぎ奪われたとされてきたけれど、
実は文革のさなかに研究者たちが再調査し、土の中に埋もれていた副葬品の一部を
大切に保存していたことが判明。NHKは、海外メディアとしては初めてそれらの撮影に成功。
中国国内でも数度しか公開されていない貴重なお品とのこと。
また、台湾師範大学が、光緒帝のアドバイザーだったイギリス人、
ティモシー・リチャード(中国名:李提摩太)の新発掘の資料を分析し、
光緒帝が国政の改革にあたり伊藤博文を重用しようとしていたことも判明。
様々な新事実からは、国難に真摯に向き合う西太后の素顔が見えてくるという。

浅田次郎に西太后といえば、日中合作ドラマ『蒼穹の昴~蒼穹之昴』を思い出す。
浅田次郎は、きっと西太后に対する関心も高いのでしょう。
戸田恵梨香は、歴史モノのイメージがぜんぜん無いのだけれど、
“歴史上の女性の生き方に関心を寄せる女優”と紹介されている。今回、どんなレポをしてくれるでしょうか。

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戸田恵梨香in中国。兵馬俑は、最後の趙姫の回か。
趙姫はこれまでこの手の番組で取り上げられていなかったから、特に新鮮に視聴できる気がする。



最後はちょっと番外で、1月26日(木曜)、NHK BS1の『BS世界のドキュメンタリー』
海外のテレビ局やプロダクションが制作した多岐に渡るテーマのドキュメンタリー作品を紹介するこの番組。

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最近は、酉年にちなんだ鳥関係のドキュメンタリーを放送しているが、
今回は2014年にアメリカで制作された『将軍のチキンを探して~The Search for General Tso』

“ツォ将軍のチキン(General Tso's chicken 左宗棠雞)”とは、鶏の唐揚げを甘辛いソースで和えた中華料理。

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料理の中国語名を見ても分かるように、
この“ツォ将軍”は、清朝末期の著名な大臣、湖南省出身の左宗棠(1812-1885)のことを指す。
その左宗棠の名を冠したこのお料理は、アメリカの中華レストランでは定番メニューだが、
実は御本家・中国には存在しない。
そこで、各地の飲食店オーナー、グルメライター、歴史家、フォーチューンクッキー製造業者、
左将軍の子孫らを取材し、ルーツを探り、蔣介石にこの料理を提供した料理人にまで辿り着くと同時に、
さらにそこから中国系移民が辿った苦難の歴史を浮き彫りにしている作品らしい。




お菓子は、叶匠壽庵(公式サイト)の物ばかりを3ツ。
全国に多くの支店をもつお馴染み・叶匠壽庵であるが、以下の物は、買える場所が限定されている商品。

★ あかい~東京限定セット

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こちら、“あかい”という商品。
叶匠壽庵の人気商品らしいが、私は食べたことが無く、どのようなお菓子かも知らなかった。

この箱入りは、定番の“黒蜜きなこ”と、東京限定の“みたらし”を詰めた東京でしか買えないセット。
黒蜜きなこ2個とみたらし3個の計5個入り。

★ あかい~黒蜜きなこ

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容器の大きさは、だいたい長さ7センチ×幅4.5センチ×高さ3センチ。
黒須きな粉をまぶした求肥餅に、黒蜜をかけていただくお菓子。




まずは定番の“黒蜜きなこ”から。

主となる求肥は、近江羽二重粉を使用。1パックに3切れ入り。
それにまぶされているのは、黒須きな粉。
しっかり焙煎した深入りきな粉を“黒須きな粉”とか“京風きな粉”と呼ぶそう。
添えられている小袋は、沖縄産の黒糖で作られた黒蜜。

羽二重餅粉の求肥は、とても柔らか。
黒須きな粉は、一般的なきな粉より、明らかに色が濃く、見た目からして違うし、
味もより香ばしく、旨味の中にかすかな苦みが感じられる。
ぜんぜんイヤな苦みではなく、むしろその苦みが黒蜜と合わさって、深い味わいになっている。

高級版・桔梗屋信玄餅って感じ。
信玄餅より、きな粉が濃厚で、より大人っぽい味。

★ あかい~みたらし

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容器の大きさは、だいたい長さ7センチ×幅4.5センチ×高さ3センチ。
求肥餅に、醬油を甘辛く仕上げたみたらしのタレをかけていただくお菓子。



そして、こちらが、東京限定の“みたらし”

近江羽二重の求肥は、きな粉がまぶされた前出の定番商品と異なり、裸で真っ白なまま。
柔らかで、これ自体に、ほんのり甘みがある。
みたらしのタレは、まろやかな甘さで、醬油の塩分がアクセント。

まぁ美味しいけれど、私は、そもそもみたらし団子があまり好きではないので、
こちらより、定番の黒蜜きなこの方が気に入った。
みたらし団子が好きな人は、みたらし味の求肥もきっと気に入るのでは…?

★ 銘物 匠壽庵きんつば(小豆)

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大きさは、長さ約6.5センチ、幅約3センチ、厚さ約2.5センチ。
小豆の餡に、水で溶いた生地を付け、店内で焼き上げる出来立てきんつば。




最後は、“銘物 匠壽庵きんつば”
店内で焼き上げるコダワリのきんつばで、東京では紀尾井町店のみで購入可。
週末限定や季節限定といった限定の味もあるらしいけれど、私が試したこれは定番の小豆。

見た目からして、普通のきんつばと違う。
きんつばは、日本刀の鍔(ツバ)が語源であるように、元々は鍔をイメージした丸く平たい形だったという。
でも、私が現在東京のお店で買う一般的なきんつばは、大抵が正方形で、全面生地で覆われている。
ところがこれは、拍子木のような形で、生地は上下の2面のみ。
2枚の白い生地でサンドされた餡のように見える。

その生地には、近江米のもち米を使用。
一般的なきんつばの生地は、水で溶いた小麦粉だと思うので、そこも違う。
小麦粉生地より、シットリしているように感じる。

メインの餡は、30年かけて育てたオリジナルブランド、滋賀県産の“浅井大納言小豆”を使用。
一粒一粒がふっくら炊けており、甘さはあっさり。
水分を多く含み、瑞々しい。餡子でもない、羊羹でもない、紛れもなく小豆!って感じ。

元々きんつばは餡を楽しむお菓子だと思うけれど、これは特に小豆を堪能できる。
ワンランク上のきんつば。作られてから時間が経った物を家で食べて、充分美味しいのだから、
出来立てなら、もっと美味しいのかも。
今回、定番の小豆を食べたので、次は限定の味も試してみたい。

大陸ドラマ『名家の妻たち~愛情悠悠藥草香』

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民国期の中国。
代々薬を扱う商家の白家では、
亡くなった異母兄・乾楓に代わり当主となった乾笙の誠実な経営で信用を得て、繁栄を極めていた。
唯一の問題は、なかなか跡継ぎに恵まれないこと。
5年前に嫁いできた正妻・馬馥芳が妊娠しないため、家を取り仕切る乾笙の義母が、次々と嫁を迎え、
乾笙の妻は全部で4人になったものの、子供は第2夫人・梅香が産んだ女児の名月のみ。
どの妻にも分け隔てなく接する乾笙であるが、実は密かに想い続けているのは、幼馴染の采薇だけ。
兄・乾楓と恋仲だった采薇は、乾楓の死後も彼を人生で唯一の男性と信じ、ひとり身のまま。
乾笙は、采薇の気持ちを尊重しながらも、彼女を自分に振り向かせ、娶りたいと考えるが、
采薇のせいで愛息・乾楓は死んだと未だに憤る義母が、許すはずもなく…。


2016年11月、チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ『名家の妻たち~愛情悠悠藥草香』が、
年を跨ぎ、2017年1月末に全48話の放送を終了。
女性主人公の顔がどうしても駄目で、当初「これ、観続けるのキツイかも…」と尻込みしていたのだけれど、
いやいや、なんの、苦手な顔をも忘れさせる怒涛の展開に、最後まで観入った。これ、なかなか面白いです。

★ 概要

このドラマのメガホンをとったのは、
香港の蔣家駿(チャン・カーチェン/ジェフリー・チアン/ジャン・ジャーシュン)監督。
過去に、劉華(アンディ・ラウ)、王祖賢(ジョイ・ウォン)主演映画、
『九龍帝王 ゴッド・オブ・クローン』(1992年)などを撮っている監督さん。
90年代後半から活動拠点を徐々に大陸へ移し、数多くのテレビドラマを手掛け、
胡歌(フー・ゴー)主演作『THE MYTH 神話~神話』のようなスマッシュヒットも出している。

ちなみに、これは、日本でも公開された成龍(ジャッキー・チェン)主演映画『THE MYTH/神話』(2005年)を
ドラマ化したもので、成龍自身がプロデュース。
その後ブームとなる、俗に“穿越”と呼ばれるタイムワープものの先駆けとも言われている。


2013年度作品であるこのドラマ『名家の妻たち』に関しては、
蔣家駿監督は、2011年に始動し、脚本家に程婷(チェン・ティンユー)を抜擢。
このドラマには原作小説があるわけではなく、オリジナル脚本らしいが、
脚本家・程婷についての情報は、ほぼ皆無。
最近脚本を手掛けた作品だと、唐嫣(ティファニー・タン)主演ドラマ『錦繡未央~Princess Weiyoung』が
知られているようだけれど、『名家の妻たち』以前のお仕事は不明。
つまり、『名家の妻たち』に大抜擢され、成功し、徐々に注目を集めてきている新進気鋭の脚本家なのかも?

★ 物語

民国期の中国で、薬を扱う富商、白家の主である次男・乾笙に、
第5夫人として嫁いだ善良な女性・采薇が、誠実な夫から純粋に愛されながらも、
他の夫人たちからの嫉妬や権力争いに巻き込まれ、徐々に逞しく成長していく姿を軸に、
封建社会で翻弄されるオンナたちの生き残りを賭けた壮絶な争いを描く群像劇(ドロドロ)


時代背景は民国初期。
具体的な説明が無いので、よく分からないが、少なくとも1912年以降であることは確実。
ドラマの最後、“十年後”として描かれる戦場のシーンは、第一次国共内戦(1927-1937)だろうか。
その十年前だとすると、1917年から1926年の間辺りと考えるのが妥当かも。

舞台となるのは、薬の商いをする白家という裕福な一族の邸宅。
清朝が崩壊し、新たな時代が到来しても、まだまだ封建制度が残る頃なので、
白家唯一の男性・乾笙は、お世継ぎを得るため、継母から命じられ、本妻を含め、すでに4人の妻をもっている。
そこに5人目として加入するのが、主人公の采薇。
その後、訳あって、もう一人加わるので、乾笙の妻は計6名。
一人の男性を巡り、女がこれだけ居たら、嫉妬が渦巻き、色々と問題が起きるもの。
それら6名をまとめるのは、夫・乾笙より、むしろ乾笙の継母。

この継母、乾笙の兄にあたる彼女の実子・乾楓が死亡してしまったため、乾笙に白家を継がせたのだが、
なんと5年も経ってから、死んだはずの実子・乾楓が、まさかの生還!
そうなったら、血縁の無い乾笙を追いやり、実子・乾楓を一族の主に立てたいのが、母心。
こうして、女たちの寵愛争奪戦や嫁姑問題に加え、兄弟間の後継者争いも勃発。

つまり、このドラマ、時代こそ民国で、登場人物たちは民間人であるけれど、
やっている事は宮廷ドラマと何ら変わりがない。
大奥様は、言うなれば“白王朝”の皇太后、乾笙の第1夫人・馥芳は皇后、以下の夫人たちは側室で、
彼女たちが居る場所は後宮。
そこで繰り広げられているのは、嫉妬や権力が絡むドロッドロの争い。
そう、『名家の妻たち』は、民国期を背景にした“小規模民間人版・宮廷ドラマ”なのです。

★ キャスト その①:一夫多妻でもラヴラヴ夫婦

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婁藝瀟(ロウ・イーシャオ):黃采薇~白家に仕える黃景文の娘  乾笙の第5夫人

本ドラマの主人公・采薇は、白家に仕える黃景文の娘で、白家の二人の御曹司とは幼馴染み。
その御曹司の内、兄の方、乾楓と恋仲になるが、乾楓が死亡したので、一生独り身を通すつもりでいたが、
色々あって乾楓の弟・乾笙の第5夫人に。
采薇は乾楓を生涯でただ一人の男性と信じていたので、
当初、弟・乾笙との結婚は受け入れ難いものだったのだけれど、
自分を一途に愛してくれる乾笙に徐々に惹かれてゆき、ついには相思相愛。
ま、その後また一波乱も二波乱も起きるのだが…。
納得できないのは、演じる婁藝瀟が、モンチッチのような泣き顔で、
二人の御曹司から熱烈に愛されるヒロインにしては、イマイチなこと。
独身時代のおかっぱ頭は取り分け滑稽。

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おかっぱだって色々あるだろうに、何故よりによって、このおかっぱなのか?!
あちらでは、「まるで、ちびまる子ちゃん」という声も出ているけれど、並べてみたら、似ていない。
采薇のボソボソに裾広がりのおかっぱは、かなりオリジナリティがある。
あの顔、この髪形で、“善良で聡明なモテモテ女子”という設定が、どうも腑に落ちない私であったが、
貶められ、否が応でも逞しく成長し、策略家の顔を覗かせる中盤以降は、多少許せるようになった。



韓棟(ハン・ドン):白乾笙~白家の次男 異母兄・乾楓が死亡し白家の主に繰り上げ昇格

乾笙サイコー!ハンサムで性格の良いお金持ちなんて、もろ私好み(笑)。
乾笙は本当にイイ人で、7歳の時から一途に愛しているのは采薇だけでも、
「自分の妻になったからには責任をもたなくては」と、他の女性たちも分け隔てなく、誠実に接しようと努める。
なんでも、第1夫人の元へは月4回、他の夫人たちの元へはそれぞれ月2回訪れるのが、お約束らしい。
つまり、一ヶ月の約半分は、おブスだろうとおバカだろうと誰かしらと過ごすのが、もう“お仕事”なわけで、
多くの妻を抱えるお金持ちも楽ではないと思ったわ。
この乾笙が、あまりにも完璧な男性なので、そんな彼をなかなか受け入れない采薇が、余計にムカついた。
采薇程度のオンナには、勿体なすぎる御縁ヨ。私だったら、第15夫人くらいでも有り難く嫁ぐ。

このドラマに韓棟は、地毛のスポーツ刈りで出演。
その前に『宮廷の泪・山河の恋~山河戀·美人無淚』のような辮髪が必須の清朝ドラマなどを撮り
→その後もカツラ要着用の時代劇出演多数→よって扱い易いスポーツ刈りにしていたのかもね。
仮に便宜上だったとしても、私は韓棟のこのスポーツ刈りに不思議とトキメいたわ(笑)。
本ドラマの後も、『十月圍城~The Stand-In』、『鹿鼎記~鹿鼎記』といった辮髪必須ドラマをやっているから、
結局、韓棟に髪を伸ばすヒマ無し。



実は、これら二人の俳優、婁藝瀟と韓棟は、
日本での放送時期が『名家の妻たち』と重なったその『鹿鼎記』でも共演している。

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両作品で共通なのは、韓棟が複数の妻をもつ男性を演じていること。
但し、主人公・韋小寶に扮する『鹿鼎記』では、『名家の妻たち』とは立場が逆で、
建寧公主に扮する婁藝瀟から一方的に慕われ、執拗に追い回されて、辟易。
このドラマでは、『名家の妻たち』とはまるで別人の二人が見られます。
特に婁藝瀟は、おブスで面倒くさい女・建寧公主をコミカルに演じている『鹿鼎記』の方が魅力的に感じる。

★ キャスト その②:白家の面倒な母子

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夏台鳳(シア・タイフォン):~白家前当主の正妻 乾楓の生母

白家の大奥様を演じるのは、台湾のベテラン夏台鳳。相変わらずキョーーーーレツですっ…!
相当引っ張っているであろう人工的な顔立ちに、違和感を覚える日本人視聴者も居るだろうが、
私はあの妖怪感(?)が、伏魔殿の主にピッタリだと思った。
この夏台鳳、近年は大陸でのお仕事が多く、この手のコワイお姑さんをよく演じていることから、
“惡婆婆專業戶(鬼姑専業女優)”などとも称されている(笑)。
そんなキョーレツな夏台鳳であるが、私生活では、このドラマのちょっと後、
2015年に一人息子・鄒少官を癌で亡くしている(享年40歳)。
『名家の妻たち』の中で、一人息子・乾楓を溺愛する姿を見ると、私生活での喪失感が辛い…。


錢泳辰(チエン・ヨンチェン):白乾楓~乾笙の異母兄 采薇の元恋人

5年前に盗賊に襲われ死んだという設定の乾楓が、物語に登場し、
「あら、このドラマって“殭屍(キョンシー)モノ”だったの?!さすがは中国!」とびっくり。
実際には殭屍ではなく、ちゃんと生存していた彼が都合よく現れることにより、
乾笙という一人の男性を巡る女たちの嫉妬が中心だったドラマに、
白家の主の座を巡る争いなどが加わり、物語はより複雑化していく。
どうしても納得できないのは、采薇がずーーーっと想い続けていたこの乾楓が、
仕事ができない上、性格も卑屈なセコイ男であった事。
こんな乾楓にゾッコンだったなんて、采薇って男を見る目が無いんじゃない…?!

★ キャスト その③:白家の主・乾笙の妻たち

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宣萱(ジェシカ・へスター):馬馥芳~乾笙の第1夫人 馬國安の娘

白王朝は、皇太后(大奥様)がキョーレツなら、皇后(第1夫人)も負けず劣らずキョーレツ…!
馥芳は、“乾笙の妻”というより、“乾笙の母親の友達”といった方が相応しい貫禄。
嫁軍団の中に、一人だけオバさんが混入しているのは不自然だが、
台詞などから推測するに、この馬馥芳、意外にも20代半ばくらいの年齢設定。
容貌も物言いも青木さやかを彷彿させるフテブテしさで、相当なインパクト。
演じている香港女優・宣萱は、1970年生まれで、実際にも他の嫁役女優たちより、ずっと年上。
若い女優なんていくらでも居るのに、敢えて宣萱を起用した事に疑問を抱いたり、
彼女を目にするのがイヤで、ドラマの視聴を断念する視聴者もいるだろうが、
ここまで印象に残るのだから、正解のキャスティングだったのでは?
一応、現代風のお召し物の宣萱を載せておくと、(↓)こんな感じ。

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かつて蔡少芬(エイダ・チョイ)らと共にTVB香港無綫電視の“四大女優”に挙げられただけあり、
普通の40代より綺麗だと思う。このドラマだとオバさんくさいが、身長171センチでスタイルも良いし、
実物はかなりイケているのではないかと想像。日本にもちょくちょく遊びに来てるようですヨ。
いやぁ、それにしても、この馬馥芳が、お義兄サマにヨロメいたのは、想定外の展開であった。



倪虹潔(ニー・ホンジエ):陳梅香~乾笙の第2夫人

梅香は、聡明で冷静な人という印象。
他の妻たちによる采薇イジメにも加担せず、むしろ彼女を助け、親しくなっていく。
しかし、たまーに見せる邪悪な表情から、腹に一物あるクセ者であることは、最初の内から匂わせる。
梅香は、乾笙の唯一の子供である女児・名月を生んだ母親なのだが、
実は名月と一緒に、双子で臨東という男児も生んでおり、
その子を馬馥芳に殺され、彼女に強い怨みを抱いているのだ。
頭がキレるので、他の妻たちのようにギャーギャー騒がず、
馬馥芳の決定的な弱みを握り、徹底的にやり込める機会を窺っているわけ。
徒党を組めると踏んでいた采薇が、案外使えない女だと判断すると、采薇にも牙を剥いてくるし、
分かり易いお馬鹿さんより、余程コワイ利口者なのです。



仝曉燕(トン・シャオイエン):秋琳~乾笙の第3夫人

梅香とは正反対、こちらはその“分かり易いお馬鹿さん”。
いつも騒ぎまくって自滅してくれるから、嫁軍団の中では大した敵ではない。
しかも、終盤には采薇の策に嵌り、幼馴染の常勝と密通し、不義の子を妊娠という大失態。
演じている仝曉燕は、“Dカップの關之琳(ロザムンド・クワン)”などと称され、一時注目を集めたものの、
豊胸や整形の疑惑や、亞洲小姐競選(Missアジア・ページェント)出場辞退など、
ネガティヴな噂が多かったせいか、出演作はあまり無いみたい。
私は、整形くさいと言われる彼女の顔もさほど気にならずにドラマを視聴。
(日本のモデル橋本麗香に似ているので、これくらいの顔なら居るかナと、すんなり受け入れた。)



金銘(ジン・ミン):桂琴~乾笙の第4夫人

実家が貧しく、白家に売られてきた桂琴は、嫁軍団の中で最も質素で、唯一の善人。
采薇も、彼女の事だけは全面的に信頼。
しかし、馬馥芳に弟の命運を握られ、脅され、利用された挙句、あの世行き…。
扮する金銘は、名家の妻らしからぬ朴訥とした雰囲気が、女のドロドロとは無縁の善良な桂琴役にぴったり。
私は、初めて彼女を見たのだけれど、人気子役出身で、北京大学卒の才媛なのだと。
本当は、敵に回したら怖いキレ者かもね。



孫雅(スン・ヤー):碧荷~采薇の使用人から乾笙の第6夫人にのし上がる野心家

嫁軍団の中で、私の神経を最も逆撫でしたのは、使用人から乾笙の第6夫人にのし上がるこの碧荷。
“叩き上げ系”特有の野心と卑しさを併せ持つ彼女は、ありとあらゆる手を使い、乾笙に接近。

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ベリーダンスも舞っちゃうしサ(当時、漢民族の間でどれ程度ベリーダンスが普及していたかは疑問が残るが)。
兎にも角にも、碧荷のキャラ設定に虫唾が走るのだけれど、それに加え、演じる孫雅自身にも問題アリ。
いくらナンでも、あの顔は人工的過ぎるでしょー?!特に鼻とアゴの不自然さは、直視できないレベル。

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碧荷も第6夫人にまでのし上がると、大奥様役の夏台鳳と同じで、
人類離れした顔が“伏魔殿に潜む魔物”の凄みに感じ、まだ受け入れられるのだが、使用人時代は浮きまくり。
身売りされるほど貧しい家の娘が、お顔をガッツリ工事できるわけがない。配役ミス!

★ キャスト その④:その他

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趙多娜(ドナ・チャオ):翠屏~采薇の使用人

翠屏は、采薇が嫁ぐ時、実家から連れてきた信用できる使用人。この子は本当にイイ子。
顔も、マナカナや池脇千鶴のような庶民的な感じで、純朴な使用人役にぴったり。
女優さんは、美女ばかりでなく、こういう使用人役をできる素朴な人材も必要よねぇ~、
なんて感心していたのだけれど…

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使用人用のダボダボの衣装を脱いだら、案外いいカラダしていた。身長171センチ、体重48キロだって。
このドラマでは、ナイスなボディと色香を封印し、随分化けていたわけですね。
これくらいアグレッシヴだったら、使用人ではなく、“名家の妻”の方も演じられそう。


辛新(シン・シン):范貴~乾笙の使用人

こちらは、乾笙お付きの使用人。彼も誠実なイイ青年!
…と思っていたのだが、ずっと片想いしている同郷の碧荷に、その気持ちを利用され、
乾笙に接近するための踏み台にされた上、忠実に仕えてきた御主人様・乾笙を裏切ることとなってしまう。
愛は盲目とは言え、ここまで鈍く、碧荷に振り回されているのを見ると、純朴を越えてただのバカに思えてくる。


曾江(ケネス・ツァン):馬國安~馬馥芳の富商の父

馬國安は、乾笙の妻として娘の馬馥芳を送り込み、ゆくゆく白家を乗っ取ろうと目論んだり、
阿片で儲けようとする悪徳商人。白家は、馬國安の援助で、経済的困難から脱した過去があるので、
彼の思惑に気付いていても、真っ向から排除に踏み切ることが出来ない。
演じているのは、香港の大ベテラン曾江!
香港明星・宣萱(馬馥芳)のパパは、やはり香港の大御所から選んだのですね。
最近も精力的に仕事をしているので、まだまだ若いものだと思っていたら、1935年生まれ、御年81歳だと!
悪役を演じるこのドラマでも、存在感が有るし、眼鏡の奥の笑っていない目に凄みがあるし、流石の曾江!

★ 見所その①:旗袍

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本ドラマが“旗袍作品”であることは、見所の一つであろう。
“旗袍(Qípáo ちーぱお)”とは、日本で俗に“チャイナ・ドレス”と呼ばれる女性のお召し物のこと。
1911年、辛亥革命以前を背景にした王朝モノの衣装だと、豪華さも売りの一つ。
最後の封建王朝・清朝が崩壊し、新たな時代に突入した民国期を背景にした本ドラマでは、
徐々に西洋の文化を取り入れ、着易くなった民間人の(でもお金持ちの)旗袍が沢山見られる。


“旗袍作品”の最高峰と言えば、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品『花様年華』(2000年)!

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当時、あの映画を観た女性はみんな旗袍を着て張曼玉(マギー・チャン)になろうと思いましたよね(笑)。
60年代の香港を背景にした『花様年華』の旗袍は、
西洋のワンピースに近く、長さも膝丈で、かなり着易い日常着になっている。

そのように旗袍にも流行があって、時代が遡り、民国期を背景にした本ドラマだと、くるぶしまであるロング丈。
“電影級”を謳う本ドラマでは、張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品
『金陵十三釵~The Flowers Of War』(2011年)で衣装を担当したチームが、
女優一人一人を採寸し、それぞれに合った旗袍を制作。
スタイリングは周星馳(チャウ・シンチー)監督御用チームが担当したという(コメディ映画と同じなんだ…笑)。
『金陵十三釵』の衣装デザインは、『花様年華』と同じ、かの張叔平(ウィリアム・チャン)だが、
その張叔平がこのドラマに関わっているという訳ではないので、誤解せぬよう。
もし張叔平がデザインしていたら、安っぽいパステルカラーのレース等は使わなかったと思う。
まぁ、このドラマの衣装の、よく見るとチープなそういう部分も、キッチュで可愛くて、私は結構好きだけれど。

ちなみに、『金陵十三釵』も“旗袍作品”。

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この映画、美術担当は種田洋平だし、日本の有名俳優も出演しているが、
南京事件を扱っているため、張藝謀監督作品でありながら、日本ではお蔵入り状態。観たい…!

★ 見所その②:豪邸

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もう一つ見所に挙げられるのが、富商・白家の邸宅。
撮影に使われているのは、浙江省東陽市にある盧宅
これは、明の永樂年間に盧睿(1389-1462)が進士に登第して以降栄華を極めた一族・盧氏が
敷地面積約25000㎡の中に建てた建築群。
“北有故宮,南有盧宅(北に故宮、南に盧宅)”、“民間故宮”などとも称され、
1988年には、全國重點文物保護單位に登録されている立派な邸宅。
中軸線から左右対称で、さらに前方に公的な建物、後方に一族の私的な建物を配するという様式が
故宮(紫禁城)とまったく同じなのも、“民間故宮”と呼ばれる一因であろう。江南建築の傑作。
ちなみに、『名家の妻たちは』は、ここで撮影が行われた唯一のドラマではない。
こんな立派な場所を撮影に使っちゃうなんて、日本人には信じ難いですね。

★ テーマ曲

テーマ曲は、オープニングが張婧(ジェニー・チャン)の<最初的年華>
エンディングが曹軒賓(シェーン・ツァオ/ツァオ・シェンビン)の<一朝芳草碧連天>
ここにはエンディング曲を。曹軒賓は作曲家として、黃義達(ホァン・イーダー)や王心凌(シンディ・ワン)ら
他の歌手にも楽曲を提供しているアーティストで、このエンディング曲も自らの作曲。
東洋的な懐かしさが漂い、周杰倫(ジェイ・チョウ)が作りそうな曲という印象を受けた。





最後の2話で、死亡率が一気に右肩上がり。
十年後を描く物語の最後の最後の2分で、従軍看護婦になった采薇が、
死んだはずの乾笙と奇跡の再会を果たすのは、あまりにも都合の良過ぎるハッピーエンディングで、
「別にズタズタの惨劇のまま幕を閉じても良かったのに…」と若干シラケたが、
基本的には、ずーっと策略に次ぐ策略、命懸けの足の引っ張り合いが続き、観ていて呼吸さえ忘れそうに。

前述のように、これは、まるで“小規模民間人版・宮廷ドラマ”であり、
もっとハッキリ言ってしまうと、“多少設定を変えただけの『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』”に過ぎない。
「なんだパクリか」と呆れる人も居るだろうが、同じように『宮廷の諍い女』のパクリと言われた
『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』と比べたら、こちらの方が格段クオリティが高い。
あちらが“C級コピー”なら、こちらは“スパーコピー”。
原作者や脚本家が女性なのに対し、『武則天』の脚本家は男性。
女尊男卑(?)と捉えられてしまいそうな発言は控えたいところだけれど、
智略を巡らす物語は、リアリストな女性の方が向いている傾向があるのかも知れない。
男性には夢見るロマンティスト多し。『武則天』なんて、悪女と名高い武則天を主人公にしているにも拘わらず、
策略は生ヌルく、乙女ちっくなラヴストーリーに終始してしまっている。あれでは“武則天の無駄遣い”。
『名家の妻たち』の主人公のことは、最後まで好きになれなかったが、
それでもドラマを面白く感じたのは、脚本が巧いのでしょう。
でも、じゃぁ、もう一度最初から観直したいかと聞かれたら、答えはNOかも。
嫉妬や欲が絡んだオンナの争いはやはり見苦しいもので、
傍観者のこちらまで、体力がやけに消耗されていくのです。一度完走しただけで、私、果てた…。
体力に自信のある方は、このドロドロの世界を一度体感してみて下さいませ。

ちなみに、薬屋さんが舞台ということで、ちょっと期待していた中薬の知識は、ほとんど無かった。
頻繁に出てくるのは、主に止血に効く貴重な植物・田七くらい。
『宮廷の諍い女』同様、敵を流産させたい時は、やはり麝香(じゃこう)であった。

第28回ジュエリーベストドレッサー賞

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現在東京ビッグサイトでは、例年通り、IJT東京国際宝飾展が開催中。
例年と違うのは、開催初日が月曜だったこと。
そのせいで、私はちょっと予定を狂わされてしまい、なぜ今年に限って開催日をズラしたのかと疑問に思ったら、
今年は1月28日(土曜)が春節であった。
中国の景気が減速などと言っても、日本よりは遥かにマシなわけで、
中国の業者さんに来てもらうためには、春節を避けないと、…ですわよね。

そして、開催2日目の本日には、恒例のジュエリーベストドレッサー賞の授賞式。


28回目となる本年の受賞者は以下の通り。

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10代    :中条あやみ
20代    :西内まりや
30代   :柴咲コウ
40代   :石田ゆり子
50代    :賀来千香子
60代以上:桃井かおり

男性 :三浦春馬

特別賞女性:福原愛
特別賞男性:内村航平



今年は、近年の中では、一番の豊作かも。
HNKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』が始まったばかりの柴咲コウや、新婚の福原愛など、
話題性のある人も入っている。

しかも、私がすでにナマで見たことがあるのって、多分桃井かおりだけ。あとはお初。
なので、どの人もそれぞれ見てみたいが、
“特に”なら、うーん、毎週『アナザースカイ』で見ている中条あやみか。
(余談になるけれど、『アナザースカイ』前回の隈研吾の北京編、久々の名作であった。)
中条あゆみは、昨年、この10代の部で受賞した小松菜奈に近いニオイがするというか、
ミステリアスな雰囲気があって、将来、女優として映画で活躍してくれそうな期待もあるので。
福原愛ちゃんもとても見たいけれど、欲を言うなら、イケメン亭主・江宏傑クンとのセットなら、なお良し。


さて、受賞発表の後の会場内お練りで、私はどの明星をハントできるのでしょうか。

★ 結果

最初に結果を申しますと、今年はmango史上最悪の惨・敗っ…!
授賞発表開始と同時に、私は、知り合いの台湾夫人と遭遇。
久し振りの再会を喜んでくれている夫人を放置し、パパラッチしに行ったら人間失格だと思い、
あちらこちらで飛んでいる「キャーッ!」という黄色い歓声を耳にしながらも、
夫人と向き合って席につき、ジッと我慢(明らかに、、気もそぞろ…)。
後から同業の友人から
「mangoちゃんの後ろを、芸能人がガンガン通り過ぎて行ったわよ」と言われ、ショック隠せず…。

無礼を承知で、夫人を残し、少しだけ席を外し、一番観たかった中条あやみは取り敢えずクリア。
しかし、証拠物件のお写真は…

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中条あやみちゃんの頭頂部のみ…。


で、(↓)こちら、今回バッチリ見ることの出来た、たったの一人の明星。

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はい、三浦春馬くんです。
大勢の女性に取り巻かれておりました。



知り合いに聞いて回ったのだけれど、愛ちゃんは目撃情報ナシ。
恐らく、御縁の深い中国や台湾の方々が多い場所をお練りしたのではないだろうか。
あぁ~あ、残念。
でも、人として最低限のマナーは守り、ロクデナシにまでは堕ちずに済んだので、
今回はこれで良しといたします。
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