南北朝時代の北涼。
3日続いた吹雪がぴたりと止み、黄金の光が差した瞬間、皇宮で、小さな公主・馮心兒が産声を上げる。
公主の誕生を見届けた一人の僧侶がこう予言する、
「公主は鳳凰の目をもつ。これが吉か凶かは分からない。
鳳凰は炎に焼かれ、生まれ変わる。公主も死線を越え、天高く飛翔なさるやも…」と。
公主誕生の喜びも束の間、北魏の使者がやって来て、
北涼皇帝に降伏状を携え、平城へ向かうよう命を下す。
抵抗することなく、その命に応じる北涼皇帝。
北魏への帰順は、民を戦禍に巻き込まないための苦渋の選択であった。
北涼の国が涼州に、北涼皇帝が河西王と名を改め、長い年月が流れたある日、
平城で軟禁されていたその河西王が、母の生まれ日を祝うため、ようやく帰郷を許される。
赤子だった公主・馮心兒は、今や活発な少女に成長。
久し振りに再会を果たした父王と共に、祖母の誕生日を祝おうと、準備した天灯を夜空に放つが、
有ろう事か、何者かが、その天灯を打ち落とし、中から毒が散布され、周囲は混乱。
それは、北魏の将軍・叱雲南と、彼の従兄である李尚書の息子・李敏峰が仕掛けた罠であった。
涼州で鉄鉱山を発見した叱雲南が、それを皇帝に上奏せず、独り占めにするため、
河西王を逆賊に仕立て上げようと画策したのだ。
父・河西王が殺されるのを、物陰からじっと見ているしかない馮心兒…。
叱雲南と李敏峰の執拗な追跡は止まず、祖母も殺害。
「あなたは北涼の唯一の子孫。なんとしてでも生き延びるのです!」という祖母の最後の言葉を胸に、
馮心兒は必死の逃走を続けるが、高い崖から転落。
気を失った馮心兒を救ったのは、心優しい李未央。
白水村の粗末な小屋で暮らす李未央は、
実は自分が北魏の尚書・李蕭然の娘であることを馮心兒に告白。
母親が、尚書府の大夫人・叱雲柔の足湯を担当する下女であったため、
叱雲柔から邪魔者にされ、屋敷を追われ、
母に会うことも許されぬまま、こんな寒村で育ったのであった…。
2017年9月初旬、
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チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ
『王女未央-BIOU-~錦繡未央』が、
それから約2ヶ月後の11月中旬、全54話の放送を終了。
何かと話題を振りまいたドラマだったので(←ネガティヴな意味で)、
まったく期待せずに観始めたのが良かったのか、意外にも楽しめ、あっという間のゴールイン。
★ 概要
手掛けたのは、
李慧珠(リー・フイジュ)監督。
大陸のお騒がせプロデューサー于正(ユー・ジョン)制作のドラマを数多く手掛け、
ヒットさせてきた香港出身の女性監督。
(本作品は、于正制作のドラマではない。)
原作は、于正のもと、脚本の執筆に携わってきた脚本家であり作家の女性、
秦簡(チンジエン)が
2012年にネット上で発表した同名小説<錦繡未央(別名:庶女有毒)>。
前述のように、“ネガティヴな意味で話題を振りまいた”のが、この原作小説。
2016年、なんと、約200もの小説からの盗用を指摘され、内11人の作家が連名で訴えを起こし、
また、つい最近の2017年春にも、<四大名捕>の溫瑞安(ウェン・ルイアン)など
著名人も含む12人の作家から、18の作品の著作権侵害を訴えられている。
200って…。
(あくまでも、もしそのパクリ疑惑がが本当だとしたらだが…)
バラバラだった200もの盗用を、部品のように組み込み、新たな一つの作品に創り上げられていたら、
我々一般人には、もはやそれがオリジナルで、どこがどうパクられているのか、判別不可能。
ポジティヴな話題もあり、過去にも3度共演し、以前から交際が噂されていた主演の男女、
唐嫣(ティファニー・タン)と羅晉(ルオ・ジン)が、このドラマで遂に恋人関係を公表。
番宣と疑う人も少なからず居たようだが、その後もお付き合いは順調に続いている模様。
★ 物語
北魏の将軍・叱雲南らの策略に嵌り、一族を皆殺しにされ、一人生き延びた北涼の公主・馮心兒が、
心に復讐を誓い、北魏の尚書・李蕭然の次女・李未央に成りすまし、尚書府で暮らし始め、
宿敵であるはずの北魏太武帝の孫・拓跋濬と不覚にも道ならぬ恋に落ち、
様々な困難を乗り越え、北魏の太后に君臨するまでを描く
歴史恋愛ドラマ。
ドラマには幾つかの柱が有り、
まず、一番大きな支柱となっているのは、実際に北魏で起きた皇位を巡る権力闘争。
そこに、さらに、亡国の公主・馮心兒が李未央として敵国に乗り込み、一族の仇を討とうとする復讐劇、
北魏の皇族・拓跋濬が、父・景穆太子を冤罪で死に追い遣った何者かを敵討ちする、もう一つの復讐劇、
元々は対立関係にあったはずの李未央と拓跋濬の障害多き恋物語、
そして、その李未央が様々な困難を乗り越え、遂には北魏の太后に登り詰めるまでの成長記、
…といった要素で肉付けされている。
馮心兒は、もうずっと李未央に成りすましたまま生涯を終えるのか、
はたまた、どこかでバレるのか…、と前半はハラハラ。
結局のところ、比較的早い段階でバレてしまうのだけれど、それでも物語は上手い具合に先に進んで行く。
拓跋濬との恋に関しては、
李未央は当初、「彼は敵。愛してはいけない人」と自分に言い聞かせ、拓跋濬を遠ざけ続けるのだが、
それでも結局、自分の心を欺けず、二人は互いの強い想いを確認し、相思相愛に。
でも、それを許さないのが李未央の義姉・李長樂。
李長樂は、昔から一途に想い続けてきた拓跋濬を、李未央なんかに取られてたまるかと、
李未央排除にあの手この手。
さらに面倒なのが、北魏太武帝の息子で、拓跋濬の叔父にあたる拓跋余までもが、
李未央に惹かれてしまったこと。
密かに拓跋余に片想いする李未央の義妹・李常茹が、嫉妬に狂い、
優しい羊の皮を被ったまま、李未央を貶める策略に走りだす。
李未央の弟分・李敏も、実は李未央に姉以上の感情を抱いているし、
結局のとこと、モテる女は、もう大変っ!モテない女たちの逆恨みは怖いわぁ~!
…と、李未央のモテッぷりをこれでもかというほど見せ付けてくれる物語(…という気がしてきた)。
★ 背景
お気楽な恋愛ドラマのようであっても、物語の背景には、ちゃんと史実あり。
このドラマが取り上げているのは、
鮮卑系の拓跋氏が建てた南北朝時代の北魏(386-534)で起きた、血で血を洗う皇位継承者争い。
具体的には、第3代皇帝・太武帝拓跋(408-452)が天下を治めていた頃。
(太武帝の在位期間は、423年から453年)。
日本だと、その頃は、まだ古墳時代…(苦笑)。
【史実】
太武帝は、周辺国を滅ぼし、華北を統一させた皇帝。
長男である拓跋晃(428-451)を寵愛し、自分の後を継ぐ太子とするも、
拓跋晃と対立が深まっていた宦官・宗愛(?-452)の讒言の結果、拓跋晃は死亡。
拓跋晃の死を悼む太武帝からの断罪を恐れた宗愛は、452年、太武帝を殺害。
次期皇位に、太武帝の第3子・東平王拓跋翰(?-452)を押す声が多い中、
東平王拓跋翰と不仲だった宗愛が彼を殺し、
代わりに、以前から協力関係にあった太武帝の末の息子・南安王拓跋余(?-452)を皇帝に擁立するが、
南安王が宗愛に疑念を抱きだすと、身の危険を感じた宗愛は南安王も殺害。
(南安王の在位期間はたったの232日で、正統な皇帝とは認められず。)
この事件で、尚書の陸麗、羽林郎中の劉尼、殿中尚書の源賀らが立ち上がり、宗愛を殺し、
正統な北魏第4代皇帝・文成帝に擁立したのが、亡き太子・拓跋晃の長男、高陽王拓跋濬(440-465)。
…なんだけれどぉ、この文成帝は短命で、即位からほんの十数年後の465年、20代半ばで急逝。
【ドラマ】
北魏の後継者争いのキーパーソンとなる宦官・宗愛は、本ドラマの中にも、太武帝お付きの宦官として登場。
最終的に太武帝に手を下すのは、確かにこの宗愛だが、物語を掻き回す程の存在感はない。
本ドラマで、皇位継承順位一位であった景穆太子・拓跋晃の謎の死をはじめ、
皇族の後継者争いに絡む事件の黒幕は、南安王拓跋余。
また、その拓跋余に弱みを握られ、彼の手先となって暗躍するナンバー2の悪役は、叱雲南。
叱雲南は、大きな権力を掌握する叱雲家の息子で、北魏の大将軍という設定の、架空の人物である。
では、北魏第4代大皇帝・文成帝(高陽王拓跋濬)には、
亡国の公主・馮心兒から尚書の娘・李未央と身分を替えた皇后が本当にいたのか?
こちらの答えは、うーン、ビミョー…?
文成帝の皇后は、一般的に“文成文明皇后”と呼ばれる馮氏(441-490)。
【史実】
馮氏の父親は、北燕第3代天王・昭成帝馮弘(?-438)の次男・馮朗。
継母の迫害を恐れ、遼西に逃亡し、北燕が北魏に滅ぼされると、北魏に帰順。
様々な官職に就き、西郡公に封じられるも、事件に連座し、処刑。
父を亡くした娘の馮氏は、北魏第3代皇帝・太武帝の左昭儀だった叔母を頼り、後宮に入り、
14歳で、太武帝の孫・高陽王拓跋濬の貴人に選ばれ、
後に、高陽王拓跋濬が4代皇帝・文成帝になると、彼女も皇后となるが、文成帝は若くして逝去。
文成帝の李貴人が産んだ嫡男・拓跋弘(454-476)が、次いで第5代皇帝・獻文帝に即位すると、
皇太后として彼をを補佐するが、対立が生じ、獻文帝を皇帝の座から下ろし、
獻文帝の息子・元宏(467-499)を第6代皇帝・孝文帝に立て、太皇太后に。
ところが、皇位から引きずり降ろされた獻文帝も黙っておらず、太皇太后の寵臣・李奕を殺害。
これに怒って、獻文帝を毒殺し、北魏の政権を完全掌握…!
晩年には、色々老害も振りまいたようだが、
政治手腕は相当なもので、北魏の実質女帝であったと言い伝えられている。
【ドラマ】
つまり、歴史では、文成帝の皇后が、
北魏の尚書の娘に成りすまして復讐にやって来た女の子などという史実は無い。
元々は“馮”姓で、北魏に滅ぼされた国の皇族であること、
非常に頭の切れる女性であることをベースに、
フィクションで膨らませていったのが、本ドラマの李未央と言えよう。
また、本ドラマでは、李未央自身が拓跋濬との愛の結晶、
太子・拓跋弘を産んだように匂わせているけれど(←かなり不透明な描き方)、
前述のように、史実では、その拓跋弘は、“李”姓の貴人が産んだ子である。
李貴人は、「子が君主の後継となった時、その子を産んだ母は死ななければならない(…!)」という
北魏の何とも理不尽な“子貴母死”という古い制度に従い、死んでいるの。
史実をそのままドラマに描いてしまうと、価値観にあまりにも違いがある現代人の視聴者には、
ラヴロマンスではなく、ホラーになってしまうかも知れませんねー。
★ キャスト その①:絶対の愛で繋がる運命の二人
唐嫣(ティファニー・タン):馮心兒/李未央(442-490)~北涼の公主から北魏尚書の娘に
北魏に滅ぼされた北燕にルーツをもち、父が罪人でありながら、
北魏を牛耳る太皇太后にまで上り詰めた実在の馮氏をモデルにした主人公・馮心兒。
ドラマの中で、彼女が成りすます“李未央”は、
北魏の李尚書が、大夫人・叱雲柔の足を洗う係りだった下女に産ませた子。
当然、大夫人・叱雲柔は、そんなお手付けお女中の娘などを認めるはずもなく、田舎に追い遣るが、
それでも飽き足らず、配下を送り、成長した李未央の殺害を命じる。(↓)こちら、ホンモノの李未央。
リアル李未央を演じているのは李依曉(リー・イーシャオ)。
幼い内にド田舎に飛ばされ、そこで育った李未央を見たことのある人なんて居ないのだから、
成りすますのに、似ていようがいまいが、問題ナシ!
ただ、エセ李未央(馮心兒)は、「田舎育ちなのに、手がきれい」とか、
「ろくな教育を受けていないはずなのに頭がキレる」と人々から疑惑の目を向けられることにはなる。
(私の目には、リアル李未央も、無教養な田舎モンに見えませんが…。)
そう、李未央は、容姿端麗な上、頭脳明晰な女性。
恋のお相手・拓跋濬のみならず、周囲の男性を片っ端からメロメロにしてしまう李未央。
そんな彼女の“モテモテ伝説”を見せつけられても、
本ドラマ視聴者の大半を占めるであろう女性たちから反感を買わないのは、
李未央が男に媚びを売る女ではなく、毅然として、聡明だからであろう。
甘く可愛らしい顔立ちの唐嫣は、こういうキリッとした女性を演じた方が、同性の好感度は高い。
主人公だけあり、色んな扮装でも、視聴者の目を楽しませてくれる。
左から、通常バージョン
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ミリタリーファッション
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婚礼衣装
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天下の皇太后!
そして番外編で、大陸時代劇のお約束、女だとバレバレで奇怪でしかない男装も(苦笑)。
羅晉(ルオ・ジン):高陽王・拓跋濬(440-465)~北魏第3代皇帝・太武帝の孫 後に第4代皇帝・文成帝
拓跋濬は、亡くなった景穆太子拓跋晃の息子。
実際の拓跋濬が馮氏を娶ったのは、15~6歳の時だったはず。
このドラマでは、一体どのような年齢設定になっているのでしょーか…?
扮する羅晉は…
韓国の權相佑(クォン・サンウ)に似た顔立ちが、私好みではなく、
今まで一度も良いと思ったことはない。
しかも、このドラマだと、唇が赤くなぁーい?!もしかして、口紅を塗っているのか…?
…ところが、演じている拓跋濬が、真っ直ぐな好青年だから、徐々に素敵に見えてきてしまった!
李未央に「都を離れ、私と母上と三人で静かに暮らそう」と遠回しなプロポーズをした時だけは、
李未央をイビリまくっている母親が、なんで漏れなく付いてくるんだ?!
女性を口説く時は、「私と“二人”で静かに暮らそう」でしょーがっ!とイラッとさせられたけれど、
あとは基本的に素敵な拓跋濬。
權相佑に似ていて苦手だった顔も、ふと見せる表情が、台湾の邱澤(ロイ・チウ)似であることを発見。
そう、公表こそしていなかったが、唐嫣がかつて交際していた、あの邱澤である。
このドラマで、時々邱澤の面影を感じさせる羅晉を見ながら、
「女性が好む男性のタイプはそうそう変わるものではない」と再確認。
ちなみに、唐嫣が邱澤と別れたのは、邱澤が李毓芬(ティア・リー)と二股をかけたことが原因で、
この事で唐嫣を非常に傷付けたと噂されている。
邱澤は、別れた女性たちから、恨まれる傾向あり。お付き合いする時は、誠実にねぇ~!
★ キャスト その②:叱雲家
李心艾(リー・シンアイ):李長樂~北魏の尚書・李蕭然の長女
李尚書の娘・李長樂は、母親・叱雲柔が李尚書府を取り仕切る大夫人である上、
母の実家・叱雲家が膨大な権力を握る一族であるため、ワガママに育ったお嬢様。
実際、北魏一の美人で聡明と称えられてもいたのだが、李未央の出現で、その地位が揺るぎ、
しかも、ずっと想い続けてきた拓跋濬まで李未央に取られ、彼女へ激しい憎悪の念を募らせ、
あれやこれやと李未央ツブシの策を講じる。
ただ、この人、利口なようでいて愚かで、脇が甘いものだから、何かたくらむと、必ずしっぺ返しに。
だから、李長樂の謀は安心して見ていられるの。
架空の人物ではあるけれど、後に第5代皇帝・獻文帝に即位する拓跋弘の生母で、
文成帝の側室である李貴人(?-456)がモデルであろう。
扮する李心艾は、
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ロシアのクオーター。
学生時代、演技のレッスンを受けるため、台湾へ渡った際、
偶然出会った劉畊宏(ウィル・リウ)から、周杰倫(ジェイ・チョウ)に紹介され…
周杰倫監督作品第2弾『天台~The Rooftop』(2013年)のヒロインに抜擢された超ラッキーガール。
周杰倫は、薄い自分の顔とは極端に違うバター臭い顔の女性が好きなんでしょうね~。
李心艾も、周杰倫に見出された“J女郎”なら、芸能界での将来は安泰と想像するが、
その後、枕営業を疑われる写真の流出もあり、必ずしも順調とは言い難い。
でも、黃軒(ホアン・シュエン)主演の話題の超大作、
『九州·海上牧雲記~Tribes and Empires-Storm of Prophecy』にも出ているし、これから挽回でしょうか。
この『王女未央』の李長樂役は、印象に残る悪役ではあっても、
目尻を盛り過ぎたツケマが、もはや古臭く、安っぽいオンナに見えちゃうのが、残念。
李心艾は薄化粧でも、充分濃いぃ顔だから、盛り過ぎメイクは要注意。
田麗(リリー・ティエン):叱雲柔~北魏の尚書・李蕭然の大夫人 李長樂の母
叱雲柔は尚書府を取り仕切るの大夫人で、李長樂を溺愛し、とんだワガママ娘に育てた母。
一般的に、封建社会の嫁というのは、婚家で弱い立場という印象があるけれど、
叱雲柔の場合は、実家の叱雲家が大きな力を持っているから、夫の李尚書も遠慮がちだし、
ましてや、尚書府の他の女性たちは、彼女にひれ伏すばかり。
叱雲柔&李長樂は、“この親にしてこの子あり”って感じの母娘。
顔立ちも揃って派手で、母娘の雰囲気あり。
この母・叱雲柔を演じているのは、台湾のセクシー番長・田麗!
娘役の李心艾はロシア血統だが、母親役の田麗の方は、鄒(ツォウ)族のハーフ。
田麗、久しく見ない内に、大陸に拠点を移し、時代劇に出るようになっていたのですねぇ~。
しかも、いつの間にか、バツ2になっておられた。
アラフィフ田麗、これからもっとハジケちゃって下さい。
金瀚(ジン・ハン):叱雲南~北魏の大将軍 叱雲柔の甥 叱雲家の勢力拡大に躍起
叱雲柔には元々、李長樂の兄にあたる李敏峰という息子がいたのだが、
それが使えないバカ息子で、結局李未央の腹心・君桃に殺されてしまう。
それでも、叱雲柔には、もっと使える叱雲南という甥っ子が存在。
叱雲南は、野心も腕っぷしも非常に強く、叱雲家の勢力拡大のためなら、悪事にも進んで手を染める。
架空の人物であるけれど、皇帝の後継者争いに絡み、裏で暗躍する点から、
前述のように、実在の宦官・宗愛の要素を備えた悪役が、南安王拓跋余と、この叱雲南と言えるであろう。
扮する金瀚は、オトナっぽく見えるが、1993年生まれの24歳。
2015年、新人発掘番組<中國好男兒>で3位を獲得し、注目され、時代劇の出演は『王女未央』がお初。
その割りには、貫禄なぁーい…?!
あちらでは、林更新(ケニー・リン)に似ていると言われている。
長身で体格が良く、ちょっと“ワル”の雰囲気は、元EXOの吳亦凡(クリス/ウー・イーファン)にも近いニオイ。
女優・趙麗穎(チャオ・イーリン)の個人事務所が、今年契約した新人二人の内一人が彼とのことだし、
こういうタイプは結構需要があるから、これから人気が出るかも…?
毛曉彤(マオ・シャオトン):李常茹~李尚書の弟の娘
架空の人物・李常茹は、同じ尚書府に暮らす従姉・李長樂に見下され、
ずっと窮屈な思いをしてきた内気な女の子。
李長樂に対抗できる強者・李未央の出現で、少なからず救われ、
李未央を慕い、補佐するようになり、二人は強い絆で結ばれる。
…が、それは表面的な事。実はこの李常茹、誰よりも計算高いシタタカな女。
李未央からの厚い友情と信頼を利用し、のし上がることを密かに画策。
さらに、長年想い続けている南安王拓跋余が、李未央に気が有ると知ると、
彼女を逆恨みし、羊の皮を被ったまま、排除工作を開始。
李常茹のドス黒さは、回を追うごとに増してゆく…。
演じているのは、黒目がちな小動物系のカワイ子ちゃん、お馴染み毛曉彤。
日本で同時期に放送されたもう一本の出演作、
高飛車な美人より、こういう腹黒い童顔カワイイ系の方が、同性をイラつかせるものだ。
本ドラマで、李常茹は、李長樂以上に厄介な存在。
吳建豪(ヴァネス・ウー):南安王拓跋余(?-452)~北魏第3代皇帝・太武帝の息子 拓跋濬の叔父
拓跋余は、北魏第3代皇帝・太武帝の息子で、主人公の拓跋濬の叔父に当たる。
このドラマ、見ていて、最初の内、混乱するのは、登場人物に見た目の世代差が無いこと。
拓跋余と拓跋濬は、同世代にしか見えないのに、叔父と甥っ子なの。
日本もそうだけれど、昔は兄弟が多いし、皆若い内に親になるからねぇ~。
実際、拓跋濬は、父・拓跋晃が12歳の時に(!)生まれた息子だから、
叔父ともさほど年齢差は無かったはずである。
扮する吳建豪は、テレビドラマだと、もしかしてこれが初の時代劇…?
拓跋余は、母親の身分が低く、日陰で育ってきたせいか、性格が歪み、
控えめな態度を取りながら、実は虎視眈々と皇位を狙う悪賢い男。
誰も信用しない冷血漢なのだが、
李未央に対してだけは、これまで感じたことのない愛情を抱いてるという複雑な役。
ここまでの悪役は吳建豪にとってお初でも、ちょっとした悪役なら…
陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品『道士下山』(2015年)ですでに経験済み。
『道士下山』で演じているのも、変わった役であった。
髪型が奇抜なのも、両作品で共通。今回の『王女未央』では、なんとドレッドヘア!
ドレッドヘアは大陸時代劇で近年しばしば目にするけれど、これほどの総ドレッドはあまり無いかも?
生え際をジックリ見ても、不自然ではない。
恐らく、モミアゲを除いた顔回りは地毛を使い、エクステでドレッドにしているのではないだろうか。
拓跋余に変身するのは、手間と時間が相当かかる大仕事。
『道士下山』と『王女未央』を観て思った、
吳建豪はF4出身にも拘わらず、イケメン役に執着せず、彼自身が変わった役を面白がって演じているのだと。
元F4の中で、一番の個性派俳優に成長中かも。
梁振倫(リャン・ジェンルン):李敏/元烈~李尚書府に引き取られた養子 実は柔然の王子
李常茹までもが実は相当な悪女だと判明する尚書府で、李未央が本当に信頼できるのは、この李敏だけ!
李敏は尚書府に引き取られた養子で、養母の周雪梅と共々、大夫人・叱雲柔らから蔑まれている。
が、後に、その正体が柔然の可汗の息子、元烈王子であったことが判明…!!
男版シンデレラのように、義兄弟たちから蔑まれていた尚書府の養子が、実は一国の王子だったなんて、
随分出来過ぎた話だが、実際、この李敏は、歴史上存在しない架空の人物。
誠実な好青年で、李未央とは義姉弟の強い絆で結ばれ(李敏は李未央に対し姉以上の想い)、
何かにつけ、彼女を助けるけれど、柔然の臣下たちのせいで、しばしば困った事態にも巻き込まれてしまう。
演じている梁振倫は、私にとっては、初めて見る俳優。
主役を張る華やかなスタア性は無くても、李未央を懸命守ろうとする優しく誠実な義弟役には合っている。
なんか、日本とか、かつての台湾アイドルに居そうな、フツーで素朴な印象のカレ、
梁振倫は、西安出身、身長180センチ、卒業した北京舞蹈學院ではミュージカルを専攻。
年齢は、少なくとも現時点では、非公開。
2006年に北京舞蹈學院に入学しているので、16歳くらいに見えても、実はアラサーの可能性高し。
ドラマ出演を始めたのが、2015年辺りと、少々遅かったので、
少女ファンのハートを掴むため、敢えて実年齢を伏せているのだろうか。
私みたいなオッサン贔屓も世の中には結構いるので、伏せる必要など無いと思うけれどね。
★ 衣装
時代劇は、お衣装を楽しみにしている視聴者も多いことでしょう。
この『王女未央』も、衣装には強いコダワリがあり、巨額を投じたという。
担当したのは、香港出身のの陳樂勤(ジョイベル・チャン/チャン・ロッカン)。
唐嫣主演の別のドラマ『金蘭良縁~金玉良缘』や、
最近だと、陳喬恩(ジョー・チェン)&陳曉(チェン・シャオ)主演ドラマ『獨孤皇后~Queen Dugu』、
あと、現代モノでは映画『左耳』(2015年)の衣装などを手掛けている女性。
(↑)上の画像、左下の婚礼衣装は、実際に着用すると、(↓)こんな感じ。
ゴージャスです。
なんでも陳樂勤は、このドラマのために、約5百着にものぼる衣装を自らデザインし、
内、主人公・李未央の物だけでも、約90着もあるらしい。
デザインには、時代のエッセンスは取り入れているようだが、
時代考証に完全に則しているかと言うと、必ずしも則してはいないという意見あり。
少数民族である鮮卑族が建てた北魏では、確かに漢化政策が進められたのだが、
それは主人公の2代あと、第6代皇帝・孝文帝の時代。
このドラマの時代だと、“胡服”と呼ばれる鮮卑族特有の服装がより一般的なはずで、
ドラマの衣装は漢服の様式が濃いとのこと。
服のスタイル以前に、鮮やかなピンクやブルーといった色は、あの時代にしては発色が良過ぎると、私も思う。
★ 吹き替え
演じている俳優自らがアフレコに当たることが徐々に増えているように見受ける大陸ドラマだが、
この『王女未央』は、
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声優による吹き替え。
私個人は、俳優自身の声を聞きたいけれど、
制作サイドに言わせると、大物声優を集結させ、吹き替えにまで力を入れた自信作!ということらしい。
『王女未央』で、全てを取り仕切る吹き替え監督は、
数々の人気超大作を手掛けてきた国会一級演員の廖菁(リャオ・ジン)。
主人公・李未央は、
『宮廷の諍い女』や『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』の孫儷(スン・リー)をはじめ、
人気作品で人気女優の声をあまたと当ててきたことで、“配音女王(吹き替えの女王)”、
“大明星共同的聲音(大スタア共通の声)”などと称される季冠霖(ジー・グアンリン)が担当。
お相手・拓跋濬は、『新・笑傲江湖~笑傲江湖』や『金蘭良縁~金玉良缘』の霍建華(ウォレス・フォ)、
『鹿鼎記 ロイヤル・トランプ~鹿鼎記』の韓棟(ハン・ドン)、
イケメン俳優御用達の邊江(ビエン・ジアン)が担当。
(でも、この邊江、声優としての初仕事は、日本のドラマ『奥様は魔女』の原田泰造だったらしい。…笑)
張天愛(チャン・ティエンアイ)扮する男勝りの張芃芃の声を当てた喬詩語(チャオ・シーユー)は、
こちらの『王女未央』だと、腹黒ぶりっ子・李常茹の担当。
この喬詩語という声優は、他作品だと、唐嫣の声も随分当てているようである。
そして、『王女未央』一の卑屈な悪役・南安王拓跋余の声は、
“甄子丹御用声優”陳浩(チェン・ハオ)。
★ テーマ曲
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オープニングに流れるのは、A-Linの
<天若有情>、
エンディングは、主演コンビ唐嫣&羅晉のデュエットで<天賦>。
オープニング曲の方は、実は、シンガポールの人気シンガーソングライター、
黃義達(ホァン・イーダ)の作曲であった。
でも、ここには、やはり私生活でもドラマの中でもラヴラヴのお二方が歌うエンディング曲を。
羅晉って、歌、上手いんですね。
このドラマ、ハッキリ言って、重厚感は無いのだが、
次から次へと事件が起き、ポンポンとテンポ良く展開するから、
飽きずにサクサクと観ることができ、あっという間のゴールイン。
最終回は、李未央と拓跋濬の御成婚→拓跋濬の皇帝即位→拓跋濬の死、
→そして、幼い拓跋弘の即位と駆け足の展開。
あまりにも高速展開なので、降って湧いたように出現した拓跋弘が、誰の子なのか分からない。
史実では、拓跋弘は、拓跋濬と李貴人との間にできた子だけれど、
このドラマで李貴人にあたる李長樂は、拓跋濬の寵愛を受けられぬまま、毒酒を賜って死んでいる。
ドラマの中で生まれた拓跋サンちの子って、李常茹が産んだ拓跋余の子だけなのよねぇ。
“拓跋濬の皇后は出産していない”という史実を曲げないまま、
それでも李未央と拓跋濬は深く愛し合っていたと綺麗に幕を閉じるため、
拓跋弘の出自に関しては、敢えてボカして描いたのかも知れないとも想像している。
いとも簡単に顔を変えられる“易容術”を使い、犯人が別人に成りすまして起こす事件と、
死んだはずの人間の蘇生、この二つの演出は、さすがに使い回しが多過ぎて、いくらナンでも安直だと感じる。
あまりにも頻発するものだから、
仕舞いには、誰かが死んでも、それが物語上重要な人物の場合は、
「どうせ生き返るんでしょ…」と、一視聴者である私は、その死を軽視するようになり、
実際、その人物は、私の予想を裏切ることなく復活する(笑)。
『蘭陵王』のようなエンタメ色の強い史劇が好きな人は、これもきっと楽しめることでしょう。
繰り返しますが、これ、日本なら古墳時代のお話ですからね(笑)。
仮に日本で、古墳時代を題材にした時代劇を制作したところで、こんなに面白くはならないのでは…?
中国史はやはりネタの宝庫で、ナンだカンだ言って、ドラマのレベルも高いと感じる。
今回、この『王女未央』を観逃し、悔しい思いをしている方々、ご安心を。
2017年12月29日(金曜)から年始にかけ、一挙放送があるので、その際にどーぞ!
さて、
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チャンネル銀河では、平日午後1時のこの枠は、2017年11月20日(月曜)より、
『名家の恋衣~抓住彩虹的男人』を放送。
清末から民国初期にかけての名門染色工房を舞台に、
劉威(ハウィック・ラウ)&鄭爽(ジェン・シュアン)が主演するドラマ。
こちらはどうでしょう。