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今年もやらかしてくれたワ、東京国際映画祭…(タメ息)。

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2017年の今年、節目の30回を迎える東京国際映画祭。
本日、10月14日(土曜)は、そのチケット発売日。

私の脳裏に、未だ生々しく焼き付いているのは、
オンラインチケット販売のシステム障害で大混乱を起こした昨年の悪夢…。
サーバーが容量を超え、アクセスできないなんて、当たり前。
ようやく購入ページに辿り着けても、一枚のチケットに対し、20枚分もの請求が来るというボッタクリ商法。
日を改め、販売を仕切り直しても、また同じ事の繰り返し。
電話をすると、主催者側は「何事も起きていない」と言い張り、責任逃れ。
結局、余分な請求は取り消され、私に経済的損失は無かったけれど、あの惨事はトラウマとなった。

主催者側にとっても、あのような大失態は、経済的にも労力の面でも、大きな負担になったはず。
失敗は誰にでもある。でも、人間は学ぶ生き物。
あれから一年、あの脆弱なシステムを徹底的に見直し、強化したはずである。


…が、今年発表された東京国際映画祭のチケット販売方法を見て、脳裏をよぎった一抹の不安。
今年は販売方法を一新。
10月14日(土曜)12時、10月14日(土曜)16時、10月15日(日曜)12時、10月15日(日曜)16時と、
部門別に販売日時をズラすという方法。
マサカとは思うが、もしかして、これって、ただ単にアクセスを分散させようとしているだけで、
あの脆弱なシステムは、今年も依然脆弱なままなのではないだろうか…??


去年はチケット購入だけで、ホント、精も魂も尽き果てたし、今年も改善が望めないという疑惑が残るので、
今回は激戦が予想される作品や日時はもう避け、最初から最低限の安全牌しか押さえない!と心に決めた。

★ チケット販売スタート♪

そして、迎えた本日12時。

ハイ、またまたやらかして下さいました、東京国際映画祭。
販売開始時刻の12時に、なんと、販売ボタンが出てこないという前代未聞の事態発生。
今年は、クレジットカードの重複請求という問題を避けるため、売ること自体をやめたのか(笑)?!
東京国際映画祭の不手際は、もはや、栗、松茸、サンマと並ぶ、秋の風物詩。


そもそも、公式サイトでの説明が不充分なので、
今年初めて東京国際映画祭のチケットを購入しようとした人たちは、
どこからどう買えるのか分からず、困惑したであろう。

購入方法は、まず、東京国際映画祭の公式サイトで、お目当ての作品のページを開く。
すると、各々の作品ページの横に、チケット情報が記された赤枠がある。
販売開始時刻になると、そこに「オンラインチケットサイトへ」という赤いボタンが出現。
そう、本来は、(↓)このような感じ。

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この赤ボタンをクリックすると、販売ページにアクセスできるはずなのだが、
今日のお昼は、この赤ボタンが、待てども暮らせども出現しなかったのです。
ようやく出現したのは、発売開始時刻から約15分後のこと。

もしかして、この赤ボタン、担当の係り員が開始時刻ピッタリに
「ボタン、ONに入れま~す!」と手動でやっているとか…?!
で、今朝は、大役を担ったその人が緊張のあまり、おなかが痛くなって、12時におトイレに駆け込んじゃって、
ONに入れるのが遅れたとか…??!
冗談のような話だが、あのショボい東京国際映画祭なら、充分有り得る。



約15分遅れの赤ボタン出現で、ついに購入へ一歩近付いたわけだけれど、今度は…

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ずぅーーーーーーーーーっと、延々と、「混雑中です」。
このページ、見飽きた…。

腱鞘炎になるほど何度も何度もクリックを繰り返し、
私がようーーーーやく一枚のチケットを購入できたのは、午後1時05分。
週末出勤している人が、お昼休みを利用し、チケットを購入しようとしたのに、一向に繋がらず、
→諦め、仕事に戻ったので→サーバーが空いて→私も買えた、…って事はないか…?
(そもそも、本当にそんなにアクセスが集中していたのかさえ疑問。
客5人でいっぱいいっぱいになる“カウンターひとつの繁盛店”のようなキャパの問題かと。)


今回の事で感じたのは、作品の人気/不人気や、上映日時に関係無く、
全体でアクセスが集中すると、どこにも繋がらなくなるのではないかという事。

昨年よりマシと感じるのは、チケット一枚に対し、一枚分の金額請求しかない事(笑)。
まぁ、当たり前の事なのだけれど、そんな当たり前さえ出来ないのが、東京国際映画祭。

チケットを売るという基本中の基本も出来ない運営の酷さも、この映画祭が盛り上がらない一因に違いない。
だって、東京国際映画祭のチケットを買うのって、本当にストレスだもの。
“国際”とは名ばかりで、購入者の大半は国内の人だろうに、
それ程度の人数もさばけないって、どんだけショボいシステムなのだか…。
こんなだから、釜山に抜かれ、今や上海にも抜かれてしまったのでしょうヨ。
こういう所からも、日本の技術力の低下や、世界での地位の低下が、如実に感じられ、
怒りを通り越して、もの哀しさを覚えるワ…。

去年の閉会式では、システム障害の大騒動には一切触れず、
登壇した小池百合子が確か「東京国際映画祭への支出予算は、昨年より増やしております。
つまり、必要な所にはお金をかけているんです!」みたいな事を言って、
文化事業に力を入れているとアピールしていませんでしたっけ…?
以前からお金の流れが不透明だと言われていたこの映画祭で、
余分に投入された都民の血税が、どこに消えているのか、甚だ疑問。



東京国際映画祭のチケット獲り、明日が初参戦となる皆さま、
「12時に開始したら、サクサクッと買って、その後お出掛け♪」なんて甘い考えは、
捨てた方が良いかも知れません。
東京国際映画祭は、去年の轍を踏みまくり。これっぽっちも学んでおりません。
私も、明日の事を考えると、今からすでに気が重い…。

★ オマケの東京・中国映画週間

ついでに、東京国際映画祭の提携企画、東京・中国映画週間についても少々。

スケジュール調整中だった『ナーガの真珠~鮫珠傳』の舞台挨拶、
公式サイトから「舞台挨拶(予定)」の文字が完全に削除されてしまいましたねぇ~。
この作品にはあまり興味が無いので、王大陸(ダレン・ワン)だったらパスでも、
もし張天愛(チャン・ティエンアイ)が登壇してくれるなら、観に行きたかった…。
張天愛の公式初来日ならず。残念…!


ドラマ『太子妃狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』で大ブレイクの女優・張天愛については、
こちらの“大陸美女名鑑:張天愛”をご参考に。

北京2017:宝源餃子屋

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北京では、今回も去年と同じ北京四季酒店(フォーシーズンズ・ホテル)に宿泊したので、
ホテルから程近い宝源饺子屋(寶源餃子屋/宝源餃子屋)にも、またまた行った。


具体的な場所などについては、昨年記したこちらの“北京2016:宝源餃子屋”を参照。

★ 宝源餃子屋

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一年ぶりの宝源餃子屋。
今年も、半端な時間に行ったため、店内には先客が4~5組いる程度。
ここら辺は外国人が多く暮らすエリアで、このお店も、在住者/観光客を問わず外国人に人気だけれど、
この時は中国人客ばかりであった。



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店内の客が少ないと、皆まとめてホールの方へ座らされることが多いような気がするのだが、
今回、試しに、「道路側のテーブルに座ってもいい?」と聞いたら、OKだったので、そちらへ。
窓の無いホールより、横が全面窓になっている道路側の席の方が明るくて、私は好き。


テーブルの片隅で微笑んでいるのは…

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去年も同じように佇んでいた黃曉明(ホアン・シャオミン)。こちら、楊枝入れ。
お酢などの調味料と一緒に生ニンニクが常備されてるのも、あちらならでは。
(生ニンニクをかじりながら、餃子を食べると美味しいというのが、私にはよく分からない。)


ブ厚いメニューには、英語も併記。

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値段は、1两(1両=50グラム)単位。このお店では、どの餃子でも1両=6個と設定。
一種類の餃子ごとに最低オーダーが2両と決められているお店が一般的と見受けるけれど、
宝源は1両からOK。その方が、色んな種類に挑戦でき嬉しい。



以下、この度我々が食べた物。

★ 老北京豆皮

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これまでは餃子ばかりをオーダーしてきたが、今回は母も居たので、前菜になるような品も頼んでみた。
それが、この“老北京豆皮”。一皿18元也。
中華のお豆腐の加工品が好きなので、なんだかよく分からないまま、これを選択。

運ばれてきた物は、私がなんとなく想像していた物に近い豆腐皮を使った冷菜であった。
“豆腐皮”は、製法によって大きく2種類に分けられる。
一つは、温めた豆乳の表面にできる薄膜で、いわゆる湯葉。
もう一つは、圧縮して作られる、いわゆる押し豆腐。
“豆腐干”と呼ばれる物に非常に近いが、
正確には、豆腐干より薄べったい物を“豆腐皮”と呼び、区別するらしい。

これは、麺のように平たく長い押し豆腐に、人参などの野菜を少々加え、味付けした冷菜。
見た印象からは、ほんのり甘く煮付けた醤油味を想像するが、
実はピリ辛で、ビールが進みそうな味。(飲まない私が言うのもナンですが…。)
押し豆腐自体は、ゴム並みに弾力がある。この食感は、好き嫌いが分かれるかも。

私はこういう冷菜、結構好きなのだけれど、なにぶん量が多い。
4~5人は余裕でいけるのでは。
しかも、弾力があって、咀嚼回数が増え、満腹中枢が刺激され、早々におなかが膨れるから、
母と二人では、とてもとても食べ切れなかった。

★ 水餃子3種盛り

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水餃子は3種類頼んだら、全部大皿にまとめてドカーンとやって来た。
いっぺんにまとめて茹でているようで、お皿の上でもゴッチャ混ぜになっており、
「だいたいこのエリアがこの餃子」という区域分けが無く、どれがどの具材なのかまったく見当がつかない。
一種類につき6個なので、母と平等に3個ずつと決めていたのだけれど、
トランプの神経衰弱のようなゲーム感覚でつつき、同じ具材ばかりを立て続けに取ってしまうことも。
見分けるために、せめて一種類は、“鲜蔬五彩饺子(鮮蔬五彩餃子)”でオーダーすれば良かった。
鮮蔬五彩餃子は、野菜の色素で色付けしたカラフルな皮のことで、
どの具材でも、プラス1元でカラフル餃子にしてくれる。


以下、一種類ずつチェック。

★ 猪肉芹菜

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“猪肉芹菜(豚肉芹菜)は、一両16元也。

ベースは基本の豚肉。そこにセロリを合わせたこの餃子は、毎度オーダーしているお気に入り。
爽やかなセロリで、豚肉がさっぱり。
セロリ好きなセロリストの皆さまにはお薦め。

★ 猪肉香茹

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“猪肉香茹(豚肉香茹)”は、一両23元也。

こちらも豚肉ベースで、そこに混ぜられているのは、刻んだ椎茸。
ちょっとだけトロみが付いている。
椎茸の味はシッカリ出ていて、豚肉との相性良し。
これは、初めて頼んだ水餃子だけれど、“当たり”であった。

★ 茄子皮、鶏蛋、粉条、野山椒、尖椒

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“茄子皮、鶏蛋、粉条、野山椒、尖椒”は、一両16元也。

お茄子の皮をメインに、たまご、粉条(平たい春雨のような物)、野山椒、唐辛子を混ぜた餡。
日本料理では、お茄子は中の白い果肉の部分だけを食べることが多いので、
敢えて皮をメインにしているのが、日本人の私にはちょっと不思議な感じ。
実は、お茄子の皮は、抗酸化作用のある“ナスニン”というアントシアニンの一種を多く含んでおり、
果肉の部分よりむしろ栄養豊富なのだと。

いくら体に良くても、不味かったらイヤだけれど、味に変なクセは無く、ゴワゴワした食感も無い。
…と言うか、他の食材と融合していて、「あっ、これがお茄子の皮ね」と意識させられることすら無かった。
とにかく、そんなお茄子の皮がメインでは物足りないかとも思ったが、ピリッと辛い味付けで、食が進む。

ちなみに、辛さの耐性が平均的日本人の私は、“ピリ辛”程度と感じたけれど、
苦手な母には、結構辛かったよう。





具材が何であれ、中国の手作り水餃子は、モチッと弾力のある皮が美味。
日本のスーパーで売られているペラペラの餃子の皮とは、まったくの別物。
中の餡も、今回のセレクトは成功。
適当に選んだけれど、結果的に、サッパリ系(セロリ)、コク系(椎茸)、そしてピリ辛(茄子皮)と、
味がカブらない3種類を楽しめ、どれも美味しかった♪



◆◇◆ 宝源饺子屋 Baoyuan Dumpling Restaurant ◆◇◆
北京市 朝阳区 麦子店街 6号

地下鉄10号線・亮马桥(亮馬橋)駅B/C出口から徒歩約15分

大陸ドラマ『シンデレラはオンライン中~微微一笑很傾城』

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微微は、帝都にある慶大で、女子の少ない情報学部に学ぶ美人のリケジョ。
趣味はゲームで、腕は一流。
大人気ゲーム<倩女幽魂>では、女性で唯一ランキング6位に食い込み、
彼女のID“蘆葦微微”は、プレイヤーの間で広く知られた名前。
その日も、いつものようにパソコンに向かい、<倩女幽魂>を始めると、
ゲームの中の伴侶・真水無香から、一方的に離縁の申し出。
どうせ任務(クエスト)のために結んだ縁組だったので、微微はその申し出をあっさり承諾。
ところが、その直後、別の女性・小雨妖妖を娶った真水無香。
蘆葦微微は、皆から陰口を叩かれ、笑い者に。
そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは、誰からも一目置かれるランキング一位の一笑奈何。
一笑奈何は、華やかな式を挙げようと、蘆葦微微に結婚を申し込む。

一笑奈何の正体は、慶大4年の肖奈。
文武両道で容姿端麗、女生徒たちから“男神”と崇められる存在。
微微も例に漏れず、肖奈に憧れているけれど、
4年生の彼をキャンパスで見掛ける機会は、最近はもうそうそう無い。
実は肖奈、ゲームを開発する会社を自らの手で興そうと準備中。
叔父が経営するネットカフェの奥で、叔父にその夢を語り、帰ろうとしたその時、
店内で、“蘆葦微微”のIDを使いゲームに興じる女の子を偶然見掛け…。


2017年3月半ば、ホームドラマチャンネルでスタートした大陸ドラマ、
『シンデレラはオンライン中~微微一笑很傾城』が、約7ヶ月後の10月半ば、全30話の放送を終了。

“ゲーム好きな女子大生が、ゲームの中で知り合った男性と現実世界でもそのまま恋に落ちてゆく話”
という認識だったため、もはや女子大生でも、ゲーム世代でもない私には、無縁の世界で、
取っ掛かりが無いまま、取り敢えず消極的視聴を始めたら、案の定、ピンと来るもの無し。
それでも週一という緩いペースの放送だったので、録画してダラダラ観続けていたら、
仕舞いには「案外悪くない」と思えるようになっていた。
決して「ハマった」とは言えないけれど、まるで義務付けられているかのように観ていた最初の頃に比べたら、
中盤以降、楽しめるようになっていたのは確か。

★ 概要

このドラマを監督したのは林玉芬(リン・ユーフェン)
1989年に、中央戲劇學院の導演系を卒業して以降、
大陸を拠点に多くの作品を手掛けている香港出身の女性監督。
香港出身者の場合、通常日本では、広東語の発音で“林(ラム)”さんと呼ばれるが、
この監督はメディアが“林(リン)”さんの名で紹介し続けているので、一応それに従っておく。

過去に手掛けたドラマは、他の監督との共同監督作品も多いので、数知れず。
楊冪 (ヤン・ミー)+趙又廷(マーク・チャオ)主演のドラマ『三生三世十里桃花~Eternal Love』が、
大ヒットしたのは、記憶に新しい。


ただ、日本でこのドラマがより注目されているのは、
監督の名前より、原作者が顧漫(グーマン)である点であろう。
顧漫のネット小説は、『マイ・サンシャイン~何以笙簫默』、
『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』といったタイトルで映像化されており、いずれもヒット。


本作品の原作小説<微微一笑很傾城>は、
2010年に中國網絡文學節で最佳作者獎(最優秀作家賞)を受賞。

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井柏然(ジン・ボーラン)+楊穎(アンジェラベイビー)主演で映画化もされており、
2016年、『ラブ020』の邦題で、東京・中国映画週間で上映されたので、観た人もいるのでは(私は未見)。

顧漫は、ドラマ版でも映画版でも脚本に関わっているようだけれど、
現地では「ドラマ版の方が原作により忠実で良い」という評をチラホラ見掛ける。
まぁ、ドラマ版の方が尺が長い分、事細かに描けるという利点が有るからだとも思うが…。



中文原題の『微微一笑很傾城』は、無理矢理直訳するなら、
“‘微微一笑(ちょっとの微笑み)’で‘傾城(街を傾ける)’”といった感じか。
中国語の四字熟語“微微一笑”に、女性主人公の名前“微微(ウェイウェイ)”を合わせた
掛け言葉になっていることは言うまでもない。
主人公・微微が、笑顔一つで皆を魅了するほどの傾城の美女と言いたいのであろう。

邦題の『シンデレラはオンライン中』は、先に日本に上陸した同じ顧漫原作のドラマ、
『お昼12時のシンデレラ』と“シンデレラ”で関連付けたものと推測。

★ 物語 

物語は、人気ゲームの中で、ランキング1位の一笑奈何からの求婚を受けた女子大生・微微が、
現実の世界でも、誰もが憧れる大学の男神・肖奈からアプローチされ、
その正体がまさか一笑奈何とは知らないまま、肖奈と恋に落ちてゆく次元を超えたラヴ・ストーリー


二次元での出逢いが、そのまま三次元でリアルな交際に発展していくという点が、
昭和の時代には起こり得なかった恋物語。
現代では、ゲームと限らず、ネット上での出逢いがキッカケになる人が、本当に結構居そう。
でも、ゲームの中で憧れの君だった美男子が、実際に会ったら、加齢臭漂う不細工なオッサンだった、
…なんていう落胆も、相当数あるはず。
肖奈のような非の打ち所がない青年に出逢う確率は限りなく低い…、それが厳しい現実。
しかも、ドラマでは、そのパーフェクトな美男子が、脇目もふらずに自分のことだけを一途に追ってくるのだ。
つまり、このドラマは、身近な題材を扱っているようでいて、
実は、今どきの若い女の子でさえ「そんな事あるわけ無い…」と薄々気付いている非現実を、
あたかも現実のように描いている現代版シンデレラ・ストーリー、夢物語なのです。



物語の性質上、現実の世界と同じ登場人物で、ゲームの世界が描かれているのも、本ドラマの特徴の一つ。
元々、中国の武俠だの仙俠だのといった映画/ドラマは、ゲームの世界観に通じるものが有るので、
本ドラマでも、ゲームの中のシーンの表現がなかなか巧い。

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元々通じる物が有るからといって、劇中劇として、余分に仙俠ドラマのパートを撮っているという感じではなく、
ゲームの中では、俳優の顔のテクスチャー等を加工して、
多少人工的な“ゲームの中のキャラ”っぽさを出している。
ゲームにまったく興味の無い私でも、細部まで手を抜かずに表現するコダワリには、感心させられた。

★ 帝都

主人公たちが通う慶大がある帝都は、架空の都市。

撮影は、主に上海の華東政法大學、及び、他6校の大学がキャンパスを置く、上海の広大な学生街、
松江大學城(松江ユニバーシティ・タウン)周辺で行われている。


(↓)こちらがその華東政法大學。

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随分立派な大学ですね~。確かに、こういう感じの建物が、ドラマの背景にチラホラ映っている。
華東政法大學は、1952年創立のそう古くない大学なのだけれど、
建物は、元々ここにあった聖約翰大學(聖ヨハネ大学)の物。
聖約翰大學は、かの宋家の三姉妹の男兄弟・宋子文(1894-1971)や、
香港嘉禾(ゴールデン・ハーベスト)会長の鄒文懷(レイモンド・チョウ 1927-)等々、
各界の有力者を数多く輩出した、“東洋のハーバード”とも称された1879年創立の名門大学。


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これは、華東政法大學の松江キャンパスにある図書館らしい。



松江大學城は、ドラマ『シンデレラはオンライン中』のみならず、井柏然&楊穎の映画版や、
周迅(ジョウ・シュン)&黃曉明(ホァン・シャオミン)主演の映画『愛のカケヒキ』(2014年)等、
多くの映像作品でロケ地に使われております。
部外者が校舎に入れるかは不明だが、松江大學城をブラブラするくらいなら誰でも可能。
興味のある方は、上海へ遊びに行った際にどうぞ。

なお、女性主人公・微微は、中国に実在する都市、湖北省武漢の出身という設定。

★ キャスト その①:オンラインでもオフラインでもホットな二人

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楊洋(ヤン・ヤン):肖奈~ゲームID“一笑奈何” 慶大情報学部4年生にして致一科技の経営者

肖奈は、見た目よし、頭よし、おまけに性格は誠実、大学生のクセに経営者で羽振りもよし。
大学では、女生徒たちから“男神”と呼ばれ、モッテモテだが、チャラチャラしたところがまったく無く、
クールで、どちらかというと口数も少ないが、だからと言って、いわゆる“ツンデレ”とも違い、
好きになった微微にひたすら一途で、ありのままの彼女を受け入れ、守ろうとする。あら、肖奈、サイコーじゃん。
現実には存在し得ない完璧な男性像は、同じ顧漫原作のドラマ『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』で、
張翰(チャン・ハン)が演じた封騰に通じる。
本ドラマで肖奈を演じる楊洋、映画版肖奈の井柏然、そして『お昼12時のシンデレラ』の張翰は、
3人とも“古風な男前”という点で共通。
絶対にこんなの存在するわけないっ!というほど完璧な王子様を演じる俳優は、
仮に美男子でも、中身のチャラさが少しでも表に出ちゃう人だと、視聴者はそれを見透かすから、駄目なのヨ。
その点、楊洋は、さすが人民解放軍藝術學院出身の硬派だから(笑)、
ゴハンを食べている時まで、軍仕込みのシャキッとした姿勢で、
ある意味、現実離れしていて、王子様感満載であった。
ただ、若い女子高生、女子大生が見て、肖奈のような中身が成熟し過ぎた男性ってどうなのでしょう。
現実社会では、彼と釣り合う若い女の子はもっとチャラめなイケメンを好みがちで、
むしろ母親世代が“自分の娘と付き合って欲しい男の子”と評価するタイプにも思える。

ナチュラルで非常に整ったお顔にも、ついつい見入ってしまった。
私には、賈寶玉を演じ注目を集めた『紅楼夢 愛の宴~紅樓夢』での少年っぽい楊洋の印象が未だ強いので、
この『シンデレラはオンライン中』を見て、随分大人っぽくなったなぁ~と。
楊洋、オトナの男に、上手い具合にシフト中。(←若い頃に可愛い男の子は、これが案外難しい。)
本ドラマより2年ほど前に撮られ、日本での放送時期が重なったもう一本の出演作
『四大名捕 都に舞う侠の花~少年四大名捕』だと、まだあどけなさが残る弟キャラなのにねぇー。

ちなみに、楊洋扮する肖奈の両親は、共に大学教授。
パパの大切なコレクションは、徐悲鴻(1895-1953)と吳冠中(1919-2010)らしい。

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両芸術家の作品は、今では美術館級。普通の大学教授のお給料では、とてもとても手が出ないハズ。
パパはメディアに引っ張りダコのカリスマ教授で、出した教育本がバカ売れ、…とか?



鄭爽(ジェン・シュアン):貝微微~ゲームID“蘆葦微微” 慶大情報学部2年 ミス慶大2位

微微は、聡明で美人。かと言って、それを鼻に掛けず、善良で明るく、同性にも好かれる女の子。
悪い部分がぜんぜん無いので、嫌いにはならなかったが、印象にも特別残っていない。
いえ、ただ単に、肖奈に集中し過ぎて、微微への私の関心が薄れてしまっただけかも知れません。
そもそも、演じる鄭爽が、私にとっては、興味の対象外の女優さん。
でも、高校生から大学生くらいの若い女の子が憧れるタイプだというのは、よく分かる。
精神不安定や拒食症などを噂されるほど細ぉ~い小枝のような足も、
それくらいのお年頃の女子は憧れるものだ。
顔までゲッソリやつれていたら興醒めだろうけれど、
お顔は可愛くふっくら+小枝のあんよだったら、女子が憧れる“成りたい自分”。
若い同性から「細~い!可愛い!」と羨まれる容貌の面では、日本の桐谷美玲などにも通じる。



なお、このドラマでは、鄭爽以外の主要キャストはほとんど地声。

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楊洋も例に漏れず、自分で吹き替えを行っております。
『四大名捕』だと、声優により、少年っぽい声に吹き替えられてしまっているけれど、
こちらの『シンデレラはオンライン中』では、楊洋の地声が聞けるし、
何より、彼の落ち着いた低音は、紳士的な肖奈の役に合っている。

長年、慣習的に続いてきた中国の吹き替え文化が、ここ最近崩れ、俳優本人の声を使い始めたのは、
昔はあまり居なかったアイドルの台頭が、大きな要因の一つであろう。
「彼の本当の声が聞きたい!」というのがファン心理。
つまり、時代の流れで需要が変化すると、自ずと吹き替え文化は廃っていくという事。
私は断然地声派なので、最近のこの変化は大歓迎。

★ キャスト その②:その他

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毛曉彤(マオ・シャオトン):趙二喜~微微のルームメイトにして大親友

微微には、3人のルームメイトがいるのだけれど、曉玲と田絲絲の存在感は極めて希薄。
唯一大きく取り上げられているのが、毛曉彤扮するこの二喜。
黒目がちの愛くるしいお顔を生かし、純情可憐なお姫様を演じている印象が強い毛曉彤だが、
本ドラマの二喜は、よく食べる、元気であっけらかんとした女の子。これはこれで合っている。
童顔で、大学生役に馴染んでいる毛曉彤は、1988年生まれで、実はアラサー。
プライベートでは、『神俠侶』(2014年度版)での共演を機に…

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陳翔(チェン・シャン)と交際。
その『神俠侶』では、主演の二人、陳曉(チェン・シャオ)と陳妍希(ミシェル・チェン)が
やはり交際に発展し、結婚にまで至ったが(→参照)、
毛曉彤&陳翔の方は、つい最近の2017年10月初旬、別れたと報道されている。
陳翔ファンの皆さま、今ならチャンスかもよ…?!まずは陳翔と共演しないとね!(←無理?)



馬春瑞(マー・シュンルイ):孟逸然~ミス慶大 肖奈に片想い

典型的な“イケ好かないお嬢様”ポジションで登場する孟逸然。
ミス慶大になるほどの美人で、しかも家は金持ち。
何でも手に入る孟逸然なのに、片想いの肖奈が、どういう訳か、自分より格下の微微に夢中。
孟逸然は、一方的に微微をライバル視し、彼女から肖奈を奪おうと画策。
ただ、微微に対する肖奈の想いはまったく揺るぎが無いので、
我々視聴者は、恋敵のあの手この手にも、ハラハラさせられることは、これっぽっちも無い。
しかも孟逸然、終盤にはあっさり素直なイイ人になっているし。
そういうのを“安心感”と捉えるか、ツマラナいと感じるかは、人それぞれであろう。
1994年甘肅天水生まれ、身長172センチ、上海戲劇學院卒の馬春瑞は、
2013年、ビキニのコンテストで優勝し、モデルとして頭角を現し、映像の世界に入ったのは2014年。
まだまだ伸びしろがある、これからの女優さん。




張赫(チャン・ホー):甄少祥~ゲームID“真水無香” ゲームの中で微微の元夫 真億科技の御曹司

甄少祥も、本ドラマの悪役。
ゲームの中では、妻だった蘆葦微微をあっさり捨て、小雨妖妖に乗り換え。
実際の蘆葦微微、つまり微微に会ってからは、彼女を追うようになるが、相手にされず。
この甄少祥、実は孟逸然の従兄で、父親が真億科技を経営する御曹司。
その立場をフルに生かし、微微の恋人・肖奈が経営する致一科技を倒しにかかろうとするが、
知性派・肖奈と、金持ちのバカ息子の対決は、見る前から結果が知れている。
扮する張赫は、もう一本の出演作『三国志 趙雲伝~武神趙子龍』が、本ドラマと同時期にwowowで放送。
そちらでは、耿純(?-37)を演じているのだけれど、これがまたイヤな奴なの。
張赫って、顔立ちが下手に端正で、イケ好かない男の役が合っちゃうのよねぇー。
卑劣な張赫2連発で、彼を本気で嫌いになりかけたワ。
余談になりますが、韓国の俳優チャン・ヒョクも漢字で書くと、同じ“張赫”です。



白宇(バイ・ユー):曹光~ゲームID“微光” 慶大外国語学科の秀才 誤解から微微を逆恨み

曹光はねぇ、悪人という程ではないのだけれど、小賢しい。
物語の核に食い込む大きな役ではない割りに、印象に残るのは、
そのウザさと、インパクトのある髪型のせいであろう。
こんなくるくるパーマの大学生なんて、そうそう居ないでしょ。

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こんな個性的なくるくるパーマにしているのは、アジア広しといえ、
曹光と、「どうもスミマセン!」でお馴染みの初代林家三平くらい。
(実の息子・林家こぶ平、改め林家正蔵ですら、こんなくるくるパーマにしていない。)

白宇は、キャストほぼ総入れ替えの映画版でも同じ曹光の役で出演。
でも、そちらでは、くるくるパーマ封印。(←それはそれで残念。)



張彬彬(チャン・ビンビン):KO~食堂の料理人 実は凄腕のハッカー

ドラマ後半からの登場で、出演シーンも決して多くない割りに、存在がどうも気になってしまうKO。
“怪しい色香漂うアウトロー市原隼人”といった佇まいで、寡黙なスポーツ刈りの板さんという
おおよそ青春アイドルドラマらしからぬ人物。
板さんは表の顔で、実は凄腕のハッカーという設定は、なんとなく想像もついたのだけれど、
肖奈のルームメイトで致一科技の社員でもある郝眉へのあの熱い視線は、予想外。
郝眉に対するKOの想いは一体どう理解すべきなのでしょーか…?!

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ちなみに、郝眉を演じているのは、鄭業成(ジェン・イェチェン)
本筋以上に、KOと郝眉の行く末が気になっってしまった私。



黃柏鈞(デニー・ホァン):封騰~風騰集團の総裁

封騰は、大人気ゲーム<倩女幽魂>などを手掛ける大手企業・風騰の総裁。
風騰?封騰??この名に聞き覚えのある人も多いことでしょう。そう…

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『お昼12時のシンデレラ』で、張翰が演じていたのが、まさにこの風騰集團の総裁・封騰。
こちらの『シンデレラはオンライン中』では、近年、大陸を拠点に活動する台湾系アメリカンの黃柏鈞が演じる。
作品を跨いだ登場人物がいる、こういうちょっとしたお遊びは楽しいですね。
皆さんは、どちらの封騰がお好みでしょう。
黃柏鈞は、本ドラマの主演女優・鄭爽とは、『皇后的男人 紀元を越えた恋~相愛穿梭千年』で共演済み。

★ テーマ曲

まず言わせていただきます。
このドラマもなぜオープニング&エンディングで、キャストやスタッフのクレジットを消し去り、
日本語訳だけを付けた歌をダラダラと流しているのか…?!
あそこは、結構情報が詰まっているの。
歌の歌詞も、中国語を消し、日本語訳だけだから、カラオケ映像にすらなっていない。
あれでは、ただのイメージ映像(しかも、フルコーラス流れ、やたら長い…)。
日本側で余計な手を加えるのは、ホント、やめて欲しい。

気を取り直して、テーマ曲。
オープニングは、脇を固める若手男性陣5人、張赫(チャン・ホー)、白宇(バイ・ユー)、
張彬彬(チャン・ビンビン)、鄭業成(ジェン・イェチェン)、崔航(ツイ・ハン)で歌う<一笑傾城 >
エンディングは主演の楊洋による同名曲<微微一笑很傾城>
歌唱力抜群!とは言い難いけれど、ここはやはり主演男優・楊洋の歌で締めましょう。
このMV、変テコな日本語訳が付いていて面白いの。


「ロマンチックな発酵はあなたのためだけを望みます」って、どんな状態なのだか…。
(ちなみに、中文のオリジナル歌詞は「浪漫在發酵 只願為你」。
日本放送用の訳では、問題の「浪漫在發酵」の部分は「この想いを温めて」となっている。妥当。)
微微の台詞「肖師兄 好巧啊(=肖先輩、偶然ですね)」の“肖師兄”を、
お馴染み香港の“ショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟)”に変換するマニアックな訳は、間違いでも、嫌いではない。





最終回は、大学を卒業したばかりの微微が、実業家として成功した肖奈と結婚することとなり、
結婚準備を着々と進める中、二人でかつてネットカフェだった場所へ行き、
実はここで見掛けた微微に肖奈が一目惚れして全てが動き始めたという事実に微微が気付き、
幸せいっぱいの中でThe End。

中国には、非常に若くして大成功する実業家がかなり居るので、こういう話もあながち嘘とは言い切れない。
日本でも、昔だったら、例えばうちの母も、短大を出てすぐに、経営者である5歳年上の父と結婚し、
以降、幸せに“共白髪”。
でも、最近の斜陽ニッポンでは夢のまた夢。
大学を出たばかりの女の子が、2歳しか年上じゃない先輩なんかと結婚したら、
カツカツの割り勘生活が目に見えている。
そんな現代日本に生きる女子大生たちは、こういうドラマをどう見るのでしょう。
「嘘くさっ…」とシラケるのか、
はたまた「私も、あんなハンサムなお金持ちに愛され、今すぐ結婚した~い♪」と憧れるの…?

私自身は、ゲームにも青春学園モノにも興味の無い昭和なオトメ。
そんな私が、このドラマを意外にも受け入れてしまったのは、
物語も中盤以降になると、ゲームより現実世界に、学校生活より仕事をする社会人の生活に、
比重が移っていったのが、大きな要因の一つだと感じる。
主人公・肖奈が、最初から最後まで“学園のアイドル”みたいな存在だったら、ソソられないけれど、
途中からは、一端の社長風情で、スーツ似合っているし、気前いいし、
私ってば、彼がまだ大学生であることをすっかり忘れ、
「肖奈とだったら、付き合って上げてもいいワ」くらいに思うように。(←あくまでも上から目線でスミマセンね。)

但し、楊洋鑑賞作品としては優秀でも、『お昼12時のシンデレラ』との比較になると、
全体的な出来は、あちらの方に軍配を上げる。
『お昼12時のシンデレラ』の方が、女性主人公がキュートで魅力的に描かれていたように感じる。
まぁ、あくまでも私個人の感覚ではありますが…。
こちらの『シンデレラはオンライン中』では、主人公の二人はもうどーでも良くて、
KOと郝眉の“その後”を描く禁断のスピンオフに興味あり。


ホームドラマチャンネル、水曜深夜のこの枠は、この後、2017年10月25日より、
『ときめき♡旋風ガール~旋風少女』のシーズン2、『旋風少女2(原題)~旋風少女 第二季』を放送。
シーズン2の邦題は『ときめき♡旋風ガール2』じゃなくて、『旋風少女2(原題)』なの?
“(原題)”まで含めての邦題…??ホームドラマチャンネルのサイトにそう記してあるのだが…。
“(原題)”付きは、中華ドラマの邦題として、かなり斬新(笑)。
私は、前作に特別ハマらず、何の思い入れも無いが、
新シリーズは日本人キャストが出ていたり、日本で撮影された部分も有るので、取り敢えず視聴予定。

映画『上海キング』

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【2017年/中国/111min.】
アヘン戦争に敗れ、南京条約により開港を迫られ、
諸外国の租界が置かれ、西洋と東洋の文化が猥雑に交差、
利を得ようとする者たちが暗躍する二十世紀初頭の上海。
一品樓の女将・黛玉に買われ、浦東からやって来た孤児の月桂は、
纏足をしていない大きな足を小馬鹿にされ、下働きをさせられているが、
そんな月桂を、物好きな宋守備がどういう訳か気に入り、彼女の初めての床入りの権利を買うと申し出る。
月桂の気持ちなどお構いなしに、願ってもない話と、積極的に事を進めようとする女将・黛玉。
窮地に追い込まれた月桂を救ってくれたのは、洪門の首領・常力雄。
同じ浦東出身で、自分の母親と同じ大きな足をもつ、勝気な月桂を気に入り、
宋守備を敵に回してまで、彼女の面倒を見ることを決意。
月桂もそんな常力雄を慕い、愛するようになるが、常力雄は命を狙われ、
「洪門の中に裏切り者がいる。お前を守ってくれる男にこれを託せ」と月桂に剣を渡し、息絶える。
常力雄の子を宿していた月桂は、ひっそりと女児を産んだものの、後ろ盾を失くし、浦東へと去ってゆく。

苦労を重ねた月桂は、やがて上海に戻り、歌い手として舞台に立っていたある日、
黄佩玉と思い掛けず再会。
常力雄と義兄弟の契りを結んでいた黄佩玉は、常力雄の死後、2代目の上海王に君臨していた…。



2017東京・中国映画週間で鑑賞。

2003年に発表された著名女性作家虹影(ホン・イン)による同名小説<上海王~Lord of Shanghai>を
胡雪樺(シャーウッド・フー)監督が映画化。

この小説は早々にドラマ化権も映画化権も買われ…

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ドラマ版は2008年に発表されている。

上海出身の胡雪樺監督は、上海に関する映画を撮りたいと思っていた2003年冬、
お食事の席で虹影と出逢い、
彼女が創作中だという上海の裏社会を支えた女性の物語のあらましを読ませてもらい、
小説が発表されるより前に映画化権を取得。
その後、ある脚本家に脚本を書かせ始めたものの、それに納得できず、
結局、自分と原作者の虹影とで執筆。約十年の歳月をかけ、練り上げたという。

虹影の原作小説はとても面白そうなのだけれど、残念ながら、今現在、日本語版は出ていない。
胡雪樺監督に関しては、私が観たことがあるのは、
中国映画週間の前身、中国★上海映画祭のオープニング作品として上映された
『ヒマラヤ王子』(2006年)のみ。
これがビミョーだったため、『上海キング』も手掛けたのが胡雪樺監督という点に一抹の不安が…。




物語は、20世紀初頭、洪門の首領として上海灘を牛耳る常力雄、
常力雄の死後、その座を継いだ黄佩玉という二人の“上海王”に愛された筱月桂という女性の目を通し、
混沌とした時代の闇と、人々の愛憎を描く歴史ヒューマン・ドラマ

もう一人、幼い頃から常力雄に仕える余其揚という男がいて、彼が第3代上海王になるはずだが、
この映画では、第1代の常力雄と第2代の黄佩玉に話が集約されており、
余其揚はまだ大物の下でチョロチョロしているだけ。
余其揚が第3代上海王にのし上がっていく様子は、続編の『上海王Ⅱ』の方で描かれているものと推測。

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ただ、前編の一ヶ月後に公開予定とされていたその『上海王Ⅱ』は、実際に公開されました…?
まったく噂を聞かない。もしかして、お蔵入りになっているのでは。

とにかく、前編+後編を通し、1905年から1925年の足掛け20年の間に、
上海裏社会で暗躍した3人の男が物語の軸。
言うなれば、“上海版『ゴッドファーザー』”。
但し、男たちが代替わりしようと、物語の中に常に居続けるのは筱月桂という女性。
結局のところ、男たちの物語のようでいて、実はしたたかに生きる一人の女の物語。
そういう所は、原作者・虹影の女性視点ならではなのかも知れない。




主要人物のキャスティングは、ドラマ化も映画化もされる前、原作者の虹影は漠然と、
第1代上海王・常力雄=姜文(チアン・ウェン)、第2代上海王・黄佩玉=梁朝偉(トニー・レオン)、
第3代上海王・余其揚=劉(リウ・イエ)、筱月桂=周迅(ジョウ・シュン)が理想と考えていたみたい。
確かにこれは理想的。こんな豪華キャストだったら、観たくなっちゃうでしょー!
その後、映画の企画が進むと、例えば、第1代上海王・常力雄に
周潤發(チョウ・ユンファ)や成龍(ジャッキー・チェン)といった
超メジャー級の大物を起用する話も上がったらしいけれど、
実際には、まったく異なる俳優たちが起用されている。

まず、3人の上海王を見てみましょう。

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第1代上海王・常力雄に胡軍(フー・ジュン)、第2代上海王・黄佩玉に秦昊(チン・ハオ)
そして第3代上海王・余其揚に鳳小岳(リディアン・ヴォーン)


あの時代には、実際、上海灘に君臨した闇の上海王は存在し、
中でも、杜月笙(1888-1951)は、これまでに数多くの映像作品に取り上げらている。
…となると、本作品の3人の上海王にも実在したモデルが居るのか?というのは、気になるところ。

ザッと調べたところ、第1代の常力雄は不明。

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第2代・黄佩玉は黄金榮(1868-1953)、第3代・余其揚は、前述の杜月笙と考える人が多いようだ。


この映画の中だと、3人は個性がそれぞれ異なり、
特にモデル不明の常力雄は、裏社会の人間といっても、男気があって、素敵。
胡軍は、決して美男子ではないが、
『レッドクリフ』(2008年)の精悍な趙雲を見て、突如胡軍フリークに転じた女性は多かったはず。
あの女性たちにお薦めしたいのが、この『上海キング』での胡軍。
義に厚いだけではなく、大物の存在感も加わり、カッコイイ。


第2代の黄佩玉は、先代よりモダンで洗練された智略の人という印象。
若い京劇女優・露蘭春(1898-1936)に劇場を与え、妾にし、
芝居好きな軍閥の息子・盧筱嘉と、彼女を巡り争いになり、拉致された
“露蘭春事件”を思わすエピソードが描かれていることからも、
この人物のモデルは、やはり黄金榮なのであろう。
本当の黄金榮は、もっと泥臭いおっさんのイメージだが(←私の勝手な想像)、
秦昊が演じると、スタイリッシュで、なおかつ、ちょっとマイルドな雰囲気。
私個人的には、秦昊は、この前に日本で公開された『ブラインド・マッサージ』(2014年)のような、
もっと芸術性の高い文芸作品で見る方が好みなのだけれど、まあ、これはこれでアリか。
次は、陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品『空海 KU-KAI』の日本公開も控えてまります。


第3代の余其揚は、前述のように、本作ではまだ下っ端。
モデルと目される杜月笙は、生粋のアジア人だが、演じているのは、台英混血の鳳小岳。
他の台湾明星と同じように、近年は、徐々に大陸進出を進めているみたいだけれど、
大陸は時代劇が多いので、西洋的な顔立ちの鳳小岳は、それだけで間口が狭まってしまいそう。
この役も、ドラマ版だと、アジア人顔の香港明星・鐘漢良(ウォレス・チョン)が演じているが、
映画版では、鳳小岳を起用するにあたり、混血という設定にわざわざ変えたらしい。
鳳小岳は、設定を変えてまでの起用に応えるべく、撮影一年前から、老上海に関する歴史資料を読んだり、
上海語、乗馬、武術、京劇の所作まで学んだという。
続編だと、きっともっと大物感漂う鳳小岳が見られるのでしょうねぇ~。
下っ端を演じる本作品では、清朝末期を描く前半の(↓)こんな髪形に目が釘付け。

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今まで有りそうで無かった“ハチマキ辮髪”!
左団扇で暮らしている紳士たちは、長い辮髪を優雅にシャランシャランしていられるけれど、
下層の労働者にとっては、確かに、あんな物は邪魔なだけ。
お洒落より実用性。お仕事し易いように、ねじりハチマキ風に額に巻き付けるのはグッドアイディア。



女性主人公・筱月桂は、二人の女優が演じる。

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うら若き筱月桂は李夢(リー・モン)、熟女・筱月桂は余男(ユー・ナン)

共に、アイドル女優というより、文芸作品などでお馴染みの実力派女優。

私が、李夢を初めて見たのは、恐らく賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督作品『罪の手ざわり』(2013年)。
1990年生まれだから、もう二十代後半になったわけだけれど、
田舎から出てきた、ちょっと野暮ったい生娘(それでいて、どこか妖艶)の役に合っている。

李夢から筱月桂を引き継ぐ余男がまた独特な存在感を放つ女優。
同じ役を演じるのだから、顔立ちの似た女優を二人キャスティングするのが自然である。
これまで、私は、少女っぽい李夢と個性派・余男を似ているなんて考えたこと無かったけれど…

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本作品で見たら、二人ともポッテリ唇で、なんとなく雰囲気が似ているの。
李夢が大人になったら余男になった、…という流れを自然に受け入れられた。



他の出演者にもちょっとだけ触れておくと…

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清の軍事組織・緑営の守備、宋に劉佩(リウ・ペイチー)
歴代上海王を傍で支える洪門の師爺に曹可凡(ツァオ・クーファン)
筱月桂を巡り、黄佩玉を逆恨みする軍閥の息子・盧公子に蒲巴甲(プー・バージャ)
一品樓の女将・新黛玉に白靈(バイ・リン)などなど。

劉佩は、『北京ヴァイオリン』(2002年)の父親に代表されるような、素朴なおじさんのイメージが強いが、
本作品では悪役。

曹可凡は有名な司会者。
演技をしている曹可凡を見るのは、
王小帥(ワン・シャオシュアイ)監督作品『我らが愛にゆれる時』(2008年)に続き、恐らく2度目。
『我らが愛にゆれる時』では、話題作りのゲスト出演という感じだったけれど、
今回はしっかり存在感のある役を演じてる。

“ヒマラヤ王子”蒲巴甲も出演。
初主演映画でお世話になった御縁なのか、この胡雪樺監督最新作に特別出演程度に顔を出す。
演じているのは軍閥・盧将軍のバカ息子。
『ヒマラヤ王子』の頃よりカッコよくなっていて、最初の登場シーンでは、誰だか分からなかった。

特に注目なのは、アメリカで成功した中国人女優の先駆けとも言えるお馴染み白靈である。
セクシーな格好をしたり、万引きでニュースになっちゃったり、何かと話題を振りまく白靈は、
本作品でも異彩を放っている。
妓楼の女将らしいスレたやり手ババァの雰囲気は、白靈自身の個性に合っているし、
見た目も“着飾った久本雅美”って感じで、キョーレツ。






ここまで壮大な物語を、2時間に収めるのは、そもそも無理なのでは。
詰め込み過ぎで、全体が薄くなってしまっており、
物語の世界に深く入り込めないまま、上海灘の一大ドラマをダイジェストでサーッと見流したという印象。
その割りに、胡雪樺監督の悪い癖なのか、たまに大袈裟なドラマティック演出があるから、
そういう部分が悪目立ち。
効果音や音楽の使い方も、鬱陶しく感じる場所がかなり有った。
(それでも、『ヒマラヤ王子』よりは遥かにマシ。成長しました、胡雪樺監督。)

題材が良く、俳優も良し。衣装や美術もなかなかだから、余計に残念に感じてしまう。
私は、あの時代の“魔都・上海モノ”が好きなので、退屈はせず、
いや、それ以上に、ちゃんとそれなりに楽しめもした。
でも、この物語なら、もっと面白くなる上手い調理法があったハズである。
ドラマ版の方はどうなのでしょう…?

中国映画週間の上映作品というと、日本語字幕の質を懸念する人も多いだろうが、
これは格段向上しているので、心配ナシ。
但し、人物名をカタカナ表記にしているのだけは、分かりにくくて、絶対にNG。
現代モノでも許し難いのに、本作品は一種の時代劇である。ちゃんと漢字で表記して欲しかった。
日本では、中国語作品の場合、今では映画よりドラマの方が字幕の質がずっと高い。
私は、中国映画週間の関係者に是非言いたいですよ、
未だに昔からの悪習を引きずる映画字幕などは見習わず、ドラマの方を参考にしてっ!と。


本作品は、まぁ、敢えてお薦めはしないが、『上海グランド』のような“魔都・上海モノ”が好きな人は、
取り敢えず観ておいても良いかも。
東京・中国映画週間開催中、あともう一回、2017年10月24日(火曜)の夕方に上映あり。
上映終了後には、胡雪樺監督監督と李夢ちゃんの舞台挨拶も行われますよ~。


私はと言うと、こうなったら、似た題材を扱う『羅曼蒂克消亡史~The Wasted Times』(2016年)も観たい。
そちらでは、杜月笙をモデルにした人物を葛優(グォ・ヨウ)、
京劇女優・露蘭春をモデルにした人物を章子怡(チャン・ツィイー)が演じる他、
日本からは浅野忠信も出演しています。(→参照

可愛らしい秋の和菓子2種(+テレビ雑記)

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日本の明るい未来がこれっぽっちも想像できず、悶々とするので、もうサッサと寝ようと思うが、
その前に、近々放送の要録画予約のテレビ番組を3本だけ。




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一本目は、2017年10月26日(木曜)、NHK BSプレミアムで放送の『ザ・クローゼット』
世界のある街で、様々な職に就く女性たちに、クローゼットを見せてもらい、
そこから彼女たちのライフスタイルを浮かび上がらせるというドキュメンタリー番組。
たまたま観た2本のNY編がなかなか面白かった。
その時は、特番なのかと思っていたが、今度は韓国ソウル編を放送するという。
レギュラー放送化したのかしら…?
で、この度取材しているのは、K-Popを裏で支える女性たちのクローゼット。
K-Popアイドルが取材対象だったら、私は興味ないのだけれど、
番組は、スタイリスト、振り付け師、メイクアップアーティスト、ヴォイストレーナーを紹介するの。
なんだか面白そう。
この番組、対象をアジアにまで広げ、レギュラー化したのなら、是非中国のクリエイターを取材して欲しい。
色んな意味で、想像を超越した規格外のものが見られそうだから。




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10月28日(土曜)もNHK BSプレミアムで、
『秘境中国 謎の民 天頂に生きる~長江文明を築いた悲劇の民族』という番組。
タイトル、長っ…。
日本のテレビ番組が取り上げる“中国秘境の謎の民”って、結構多いんだけれど(笑)、
今回の“秘境”は、中国四川省、大涼山の山頂で、
“謎の民”は、シャーマンを中心に、不思議な暮らしを営む彝(イ)族。
最近の研究によると、ここの人々は、約5千年前、
黄河文明と並ぶ長江文明を築いたある王国の末裔であることが判ってきたらしい。
番組は、彝族の伝統的な暮らしから、知られざる歴史の謎を紐解くミステリー紀行仕立てになっているみたい。




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10月28日(土曜)、その後の深夜0時は(つまり、正確には日曜0時)、
TBSの『7つの海を楽しもう!世界さまぁ~リゾート』
先週から引き続きの台湾特集で、今回は題して“台湾 王道&いいね!スポットSP!”。
台湾を紹介する番組は、ここ数年多過ぎて、内容もカブリまくり、正直、食傷気味なため、
台湾南部のビーチエリアを紹介する前回の放送も、まったく期待せずに観たら、意外と面白かった。
まぁ、確かに、内容にはこれといった新鮮味は無かったのだが、
“エスター”と名乗る現地レポーターが、たどたどしい日本語でノリノリにレポートする様子が、面白いの。
今週はもうあの子、出てこないのかしら…。
ちなみに、前回の放送時、台湾の有名人も来る人気店と紹介されたお店で、
具体的やって来た有名人の写真が出たのだけれど、
李安(アン・リー)監督、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督が、
それぞれ“アン・リー”、“ツァイ・ミンリャン”と紹介されたのに対し、
吳宗憲(ジャッキー・ウー)だけは、なぜか“ご・そうけん”であった。

ちなみに、(↓)こちらが、その“ご・そうけん”サン。

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台湾エンタメをそこそこ知っている人なら、どこかしらで必ず目にしている大物司会者です。




お菓子は、和の物を2ツ。
どちらも、秋の味覚を、小さく、可愛らしく表現した物で、毎年リピート購入しているお気に入り。

★ 仙太郎:生渋栗

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大きさは、幅約4センチ。
渋皮付きの栗を丸々一個、こし餡で包み、ケシの実をまぶし、栗に見立てた生菓子。




一つめは、仙太郎(公式サイト)“生渋栗”

簡単に言ってしまうと、栗をこし餡で包んだだけのお菓子なのだけれど、
そのこし餡が、一般的なこし餡とも少々違っていて、みずみずしく、サッパリしている。
ちょうど餡子と水羊羹の間くらいの感じ、…とでも説明しようか。
中の栗はホクホクの食感。

仙太郎のお菓子は、素朴で、ドカンと大きめな物が多いので、こういうのは珍しい。
ケチらず、気取らず、食べ応えのある大きさは、仙太郎の良い所ではあるけれど、
それとは対極の、このお菓子もまた大好き。

★ 鈴懸:照柿

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大きさは、直径約4センチ。
干し柿を混ぜ込んだ煉り切りで餡玉を包み、柿に見立てた上生菓子。




もう一つは、鈴懸(公式サイト)“照柿”

黄みがかった色から赤っぽい色まで、オレンジのグラデーションを巧くだし、
トドメには、上部にホンモノの柿のヘタまで被せ、リアルな柿を表現。

果物や野菜を模した和菓子はよく有るけれど、
これは、見た目を柿に似せているだけではなく、柿を一素材として使っているのも特徴。
干し柿を細かく刻み、練り切りに混ぜ込んでいるの。
柿は、日本人に馴染みのある果物のだが、食べ方はナマか干し柿の2種類に限定されがちで、
お菓子の材料になることは、洋モノでも和モノでも、有りそうであまり無い気がする。

中に包まれているのは、こし餡。
鈴懸ならではの藤色の上品なこし餡だが、水分は通常の物より少なめと感じる。


一種の“あんこ玉”のようなお菓子なのだけれど、ほんのり柿の味がして、フルーティー。
混ぜ込まれている柿の量は決して多くはないが、干し柿だから、甘さや旨味が凝縮されているのだろう。
そして、とにかく、可愛らしい。
リアルで小さな“おもちゃ柿”って感じで、キュート。
販売期間は、例年、大抵10月いっぱい。
その年、その年で、若干前後するかも知れないので、
具体的にいつまで販売しているか知りたい人は、お店に直接尋ねるべし。

東京国際映画祭『空海 KU-KAI~妖猫伝』フッテージ上映

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まずは、真っ先に申し上げます、私mango、悲願達成ですっ…!!


節目の30回を迎える今年も懲りずにチケット販売でやらかし、映画ファンをイラッとさせた東京国際映画祭。
それでも、2017年10月25日(水曜)、なんとか開幕。

レッドカーペットがあっても、オープニングの日に行くことは通常まず無いのだけれど、
今年は例外で、その日の晩に、わざわざ六本木ヒルズまで。
なぜなら、企画が発表された時から、公開を楽しみにしている
陳凱歌(チェン・カイコー)監督による日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』のお披露目が有るから!

この『空海』が、オープニング作品・クロージング作品と並び、
“第30回記念オープニングスペシャル”という名目で公開されると発表された時は、
てっきり本編がワールドプレミアとして、ここ東京でお披露目されるものと思い込んだが、
後に、実際にはほんの10分程度のフッテージ上映であることが判明。
一応、この映画祭のために用意された“世界最速解禁の特別フッテージ”という名目である。
陳凱歌監督は、2017年12月22日の中国公開に向け、
今まだ必死に最後の追い込み作業をしている最中なのでしょう。

とにかく、東京国際映画祭では、例えほんの数分のフッテージ上映でも、
キャスト他による舞台挨拶を行うという。
入場は無料で、先着200名の招待制。
登壇者未発表のまま募集が始まったので、私も取り敢えず応募。
注目度が低いのか、比較的若い番号で、いとも簡単に、入場証代わりとなるメールが送られてきた。

でもねぇ、その時点では、心さほど躍らず…。
私が、みすみす日本公開が決まっている『空海』を、敢えて東京国際映画祭で観たいと思った理由は、
染谷将太とダブル主演の大陸明星・黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン)が、
来日して登壇する可能性が高いと踏んだ、その一点に尽きる。
しかし、たかが数分のフッテージ上映となると、
今や超売れっ子の黃軒が、それだけのために来日するか疑問…。
登壇者は、染谷将太をはじめ、阿部寛、松坂慶子といった日本人キャスト、
原作者の夢枕獏、そして監督の陳凱歌くらいであろうと推測。


…ところが、嬉しい想定外。
上映一週間前にようやく発表された登壇者のリストに、
な、な、なんと黃軒の名前が入っていたのです!バンザイ。

具体的な登壇者リストは以下の通り。

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染谷将太 : 空海役
黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン) : 白楽天役
辛柏青(シン・バイチン/シン・ボーチン   : 李白役
松坂慶子 : 白玲役
阿部寛   : 阿倍仲麻呂役


私が来日を予想していた陳凱歌監督は欠席。
今の時期は、撮影がすでに終わっている俳優たちより、むしろ監督が多忙な時期なのでしょう。
代わりに、中国から出演者が2人も!
黃軒が来るだけでもビックリなのに、辛柏青まで来るとは。
辛柏青は、東京国際映画祭の公式サイトでは、“シン・ポーチン”と表記されているけれど、
これまで日本ではずっと“シン・バイチン”の名で紹介されてきた40代半ばの中堅俳優。
黃軒のことも“ホアン・シュアン”と記しているし、
角川は、日中合作映画を作っておきながら、
中国語が解る人や、中国芸能に通じている人が、居ないのか…??!呆れる…。
(確かに、“柏”という漢字には、“Bó”もしくは“Bò”の発音も有るが、
俳優・辛柏青の場合は、“Bǎi”が正解とされている。)

角川に言いたい文句は色々有るけれど、
とにかく、この登壇者リストを見て、フッテージ上映に対する私の期待は一気に高まった。
欲を言えば、玉蓮役で出演している張天愛(チャン・ティエンアイ)にも来て欲しかった。
(東京・中国映画祭の方で、当初、張天愛の主演作
『ナーガの真珠~鮫珠傳』の舞台挨拶が予定されていたので、
もしかして彼女も来日して、2ツの映画祭に出席する調整をしていて→結局ポシャッたから、
フッテージ上映に辛柏青を呼んだのかしら…、と推測しているのだが、どうなのでしょう、裏事情。)


東京国際映画祭を意識したのか、前日10月24日(火曜)には、中国側で…

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登壇者3名それぞれをフィーチャーしたこんな新ポスターも公開♪

★ 当日

そして、迎えた10月25日。
送られてきた招待メールは、そのまま入場券にはならないので、
まずは、六本木ヒルズ2階のTIFFチケットセンターで、メールを提示し、座席券と引き換え。
事前の問い合わせで、メールに記されている登録番号も、引き換え時間も関係無く、
座席はアットランダムに割り当てられると聞いていたが、
念の為、猛ダッシュで夕方5時半頃、六本木へ。


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結果、D列の席を確保。
最前列はプレス用なので、実質前から3列目。
予想していたよりは、悪くない。でも、もっと早く引き換えていれば、もっと前だったの?
(後の祭りなので、考えないようにいたします。)

★ レッドカーペット

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その頃、六本木ヒルズのアリーナでは、レッドカーペットのイベントが、終盤に突入。
ふと、大モニターに目を向けると、な、な、なんと『空海』組が映し出されているではないか…!
チケットが無いとアリーナには入れないし、
建物上方から遠まきに見学しようとしても、柵が張られ、近付けないようになっている…。
結局、レッドカーペットはほとんど見ることが出来ないまま終了。

★ 周辺ブラブラ

それでもまだ時間が余っていたので、ブラブラしていたら、
4~5人に囲まれ、サインをしている女の子発見。
近寄って、覗き見したら、門脇麦だった。
麦ちゃんって、小柄なのですね~。
レッドカーペットを終え、ビルケンシュトックのような、ペッタンコの楽ちんサンダルに履き替えていたが、
それを考慮しても、小さかった。

その直後、今度は、見覚えのある若い男の子が、やはりサインに応じているのが目に入った。
誰だか分からないまま、私もドサクサに紛れ、なぜかサインをもらってしまった。
これ、誰のサインだか判る人います…?!

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サインを頂いておきながら、大変失礼なのですがぁ、
近くに居た人に、「あの方、どなたでしょか」と尋ねたら、北村匠海だと教えて下さった。

続いて、今年の東京国際映画祭で審査員を務める永瀬正敏が近くを素通り。
永瀬正敏が居るなら、もしかして趙薇(ヴィッキー・チャオ)もいたりして…、などと空想していいたら、
目の前に、本当に、真っ赤なローブの趙薇が…!
スタアのオーラをビシバシ発していた。非常に艶やかで、お美しかった。

★ 会場

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そうこうしている内に時間になってしまったので、会場へ。
場所は、TOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン9。
全9スクリーン有る内、3番目に大きいとは言え、収容人数は256人。


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私の席は、前が通路になっていて、見通しがとても良い。

★ 『空海』フッテージ上映 舞台挨拶

開演は夜7時半。…のハズが、登壇者も出席しているオープニングレセプションが押し、始まらず。

7時50分頃、ようやく司会の八雲ふみねが登場し、映画『空海』の説明を約5分ほどした後、
ステージ右そでから、いよいよゲスト入場♪

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入って来たのは、辛柏青、黄軒、阿部寛、松坂慶子の順。

角川、及び、東京国際映画祭の名誉のために言っておくと、
この舞台挨拶で、辛柏青は、“シン・ポーチン”から“シン・バイチン”に訂正され、紹介された。

一般客に写真撮影は許されなかったので、ここに掲載の物は、中華芸能ニュースから拝借したお写真です。
(撮らせてくれればいいのにっ…!)

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以下、舞台挨拶でのやり取りを簡単に残しておく。


染谷将太
染谷と申します。『空海』を持って、この場に立てることを誇りに思っております。


阿部寛
阿倍仲麻呂を演じた阿部寛です。
この作品は、全編中国で撮影を行いましたが、
スタッフもキャストも皆さん友好的で、とても良い雰囲気の中やらせていただきました。


松坂慶子
阿倍仲麻呂を慕っている白玲を演じました。阿倍仲麻呂亡き後も、ずっと慕っている女性です。
尊敬する陳凱歌監督と御一緒させていただき、とても光栄でした。


黃軒
大家晩上好!白楽天を演じた黃軒です。こうして、皆さんにお目に掛かれ、嬉しく思います。
日本の優秀な俳優さんたちと共演でき、素晴らしい経験になりました。
良い作品なので、是非、映画館へ足を運び、御覧ください。


辛柏青
大家晩上好!私は、この映画で李白を演じました。
李白は唐代を代表する詩人で、中国では、小さな子供も詩を暗記します。
そんな広く知られている大詩人を演じさせていただき、光栄に思います。



陳凱歌監督の現場はどんな感じ?

染谷将太
監督は、大胆かつ繊細な方です。
真の美とは何か、この映画を通し、見付けたいと仰っていて、自分はそれがとても素敵な言葉だと思いました。


阿部寛
身の引き締まる思いで、現場に入りました。
監督は、やはり怖いんですよ。でも、怖くて優しい。妥協が無いんです。
エキストラも5百人とか、それ以上いるのですが、その隅々にまで監督の熱意が伝わっていると感じました。
非常に存在感のあるカリスマです。


松坂慶子
本当に広大な大唐時代が再現されていて驚きました。
6年だか、8年だか掛けて造ったそうで、
私も半日かけ見せていただいたのですが、とても見切れませんでした。
まるで文化遺産の中に居るようでした。
監督は優しくて、私が合流したのは夏の暑い時だったので、
「暑かったら言って下さい」と気遣って下さいました。


黃軒
陳凱歌監督は、映画のために生まれ、映画に全てを捧げているような人です。
私も影響を受け、自分はまだまだ足りていないと思いました。
監督は、ワンカット撮るごとに、皆で確認させたり、呼吸一つにも拘ります。
染谷将太さんとは、5ヶ月一緒にいて、彼のプロフェッショナルな所を尊敬しました。
彼の台詞は全て中国語だったので、毎晩、勉強して大変だったと思います。


辛柏青
今、私は、ここで優秀な俳優の皆さんと御一緒させていただいていますが、
実は、私の出番は皆さんと同じ時代ではないので、一緒に撮影させていただいていないのです。
機会があれば、皆さんと同じ時代の役を演じ、共演したいです。



舞台挨拶が終わったのは、8時18分頃。
その後、フォトセッションがあり、最後は染谷将太の言葉で締め、8時25分頃、ゲスト退場。
我々は、会場に残り、フッテージ上映を鑑賞。

最初の2~3分は、陳凱歌監督が英語で直々に説明するメイキング映像で、
あとは長めの予告編映像って感じ。
スケールの大きさは、その10分で、充分伝わってきた。映像も綺麗で素晴らし。
染やんは、台詞を喋っている映像が少なかったので、よく分からなかったけれど、
もしかして吹き替えかも…?


ちなみに、黃軒、本日の装いは、(↓)こんな感じ。

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ディオールです。
シュッとしていて、素敵だったわぁ~。
辛柏青が喋っている時に、黃軒に向け、手を振ったら、微笑んで下さいました、私にぃーーーーっ…!
(皆「私に!」と思い込んでいるけれど、それは勘違い!と思うでしょ?!でもね、本当ですから…!!)

あの会場の約250人の中で、
「ナマ黃軒に会いたいっ!」という思いが一番強かったのは、間違いなく私だったと思う。
今日の私は、絶対に変なオーラを発していたに違いない。
ナマ黃軒を拝むことは、私の悲願だったので、もうホントに嬉しい…!
約30分間、六本木の片隅で、黃軒と同じ閉ざされた空間に居たなんて、夢のよう。
ドーパミンだのアドレナリンだの、ありとあらゆる興奮物質を分泌し過ぎて、頭ギンギンで、眠れませんわ。
東京国際映画祭初日にして、もう終わったって感じ(笑)。
あとね、辛柏青も実物を見たら、かなり私好みであったことを、一応告白しておきます。
映画も益々楽しみになりました。



この映画の原作小説、夢枕獏の<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>や、
主要キャストに関しては、こちらから。

その後、追加発表されたキャストに関しては、こちらから。

白楽天を演じる、私mango一押しの俳優・黃軒については、こちらの“大陸男前名鑑:黃軒”を。

今回残念ながら来日が叶わなかった玉蓮役の張天愛については、こちらの“大陸美女名鑑:張天愛”を。

2017東京・中国映画週間ゴールド・クレイン賞授賞式

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2017東京・中国映画週間の金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)授賞式へ。
授賞式の後には、現地での大ヒットが記憶に新しい『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー~戰狼2』の上映。
私が、TOHOシネマズ日劇で行われる中国映画週間のビッグイベントへ行くのは2年ぶりか…?


そもそも、以前はこういうイベントを“開幕式”と呼び、中国映画週間の初日に開催していたのだけれど、
恐らく東京国際映画祭の日程との兼ね合いがあって、
初盤に地味目に開幕式、そしてもう一度派手なお式を終盤にやるという形態に、変えたのであろう。

そこで、去年、降って湧いたように制定されたのが、“金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)”なる謎の映画賞。
作品をはじめ、監督や俳優に贈られる賞であるが、選考委員や審査員は不明。
中国の広電総局が中心になって、プロモートしたい作品や俳優をテキトーにセレクトし、
その中からスケジュールの合う人に受賞させているのではないかと私は想像しているが、真相は闇の中。
とにかく、何の権威も影響力も無い形ばかりの賞であるとは思う。

それでも、中国映画週間のイベントは独特な面白さがあるので、ついつい行きたくなってしまう。
昨年も当然行く気マンマンだったのに、
チケットがものの数分で売り切れるという中国映画週間に有るまじき想定外が起き、行くことができなかった。

今年は、日本でも映画ファンの間では話題になっている『戦狼2』の上映があるし、
去年しくじった教訓もあったので、
チケット発売時刻前からパソコンの前にスタンバり、スタートと同時にチケ取りに挑んだ。

結果、肩透かしを食らうほど、いとも簡単にチケット入手。
吳亦凡(クリス・ウー)来日という大きな目玉があった去年との違いは歴然。
目玉になるゲストが居ない上、『戦狼2』が同時期、シネマートでも上映されるのにも拘わらず、
今年は、料金を2千円から一気に3千円に値上げしたのも、
多くの人が購入を控えた一因になったであろう。
(百万円が百万千円に値上げされても驚かないが、2千円→3千円って、5割り増しですから。)

チケットぴあの場合、ネットで購入すると、
さらにシステム使用料だの発券手数料だの、訳の分からない料金が加算されるので、
私が支払った料金は具体的には3324円である。
…にも拘わらず、ネット購入だと、座席すら自分で選ばせてもらえない。
(チケットぴあの利用は久し振りだったので、そんな事、すっかり忘れていた。
いざアクセスしたら、あちらから勝手に座席を指定され、そのシステムを思い出した。
他作品と同じように、TOHOシネマズのサイトを利用して販売することは出来ないのか…?)
しかも、このチケット、一向に売り切れる気配ナシ。
こんな事なら、チケットぴあの店頭へ出向き、せめて好きな席を選びたかった…、と激しく後悔。


あのねぇ、中国映画週間実行委員の皆さま、
映画を観る人というのは、それぞれに自分お気に入りの“定位置”があって、席にコダワるものなの。
売れ行きが悪かった今年を教訓に、販売方法や価格などを見直すべし。

★ 2017年のゲスト

当日登壇するゲストは、開催の約一週間前になってようやく発表。
これら登壇者の面々に目を通し、改めて湧く失望感…。

中国からは、『ボーン・イン・チャイナ~我們誕生在中國』の陸川(ルー・チュアン)監督、
『君のいる世界から僕は歩きだす~從你的全世界路過』の張一白(チャン・イーバイ)監督、
『上海キング~上海王』の胡雪樺(シャーウッド・フー)監督、
同作品に出演している女優・李夢(リー・モン)、
『ウーマン・イン・レッド スキャンダラスな夫~情聖』に出演の韓国人女優・李成敏(クララ/イ・ソンミン)、
そして、作品上映の無い女優・江鎧同(ジャン・カイトン)と俞白眉(ユー・バイメイ)監督も。

日本からは、『カノン』の雑賀俊郎監督、
その『カノン』に出演している二人の女優、佐々木希と鈴木保奈美。


『桃花絶佳 ワンス・アポン・ア・タイム~三生三世十里桃花』の劉亦菲(リウ・イーフェイ)は、
当初、来日が予定されていたのに、いつの間にかシレーッとキャンセルになっているし、
『ナーガの真珠~鮫珠傳』からも、当初は誰かしらの来日舞台挨拶が予定されていたので、
私は密かに張天愛(チャン・ティエンアイ)が来ることに期待していたのだけれど、
こちらもいつの間にか全キャンセル。

私が、この面々の中で、興味があるのは李夢だけ。
どうせ8割りは目撃済みの人たちだし…。

日本側だと、鈴木保奈美のみ目撃済み。
『始皇帝暗殺』(1998年)北京プレミアの時、私のすぐ近くで、鞏俐(コン・リー)と並んで座っていた。
長身で手足がスラリと長い西洋人的な体形の鞏俐の横で、
よりによって昭和な短足&大根足が際立つサブリナパンツを穿いて出席している鈴木保奈美を見て、
「鞏俐に引けを取らない日本人女優をなぜ呼ばなかったんだ?!」と心底ガッカリしたのを覚えている。



うーン、正直言って、この顔ぶれだと、例年から一気に5割りもの値上げは高いっ!と感じる。
去年の吳亦凡クラスの人を呼んでくれないと…。
ただ、裏にかなり複雑なオトナの事情があるのではないかと想像するし、
日中関係がまったく改善しない中、このようなイベントを開催する主催者や登壇者への敬意もあるので、
強く意見もできないのよねぇ…。
(実際、この度、このイベントに参加し、“複雑なオトナの事情”は絶対に有った!と強く確信した。)

★ 会場

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会場は、近年ずっと東京・中国映画週間のセレモニーに使われているTOHOシネマズ日劇のスクリーン1。
収容944人という、東京の映画館としては、規模の大きなスクリーン。
最近、このTOHOシネマズ日劇が、2018年2月に閉館されると発表されたけれど、
来年以降の中国映画週間はどうなるのでしょう。
この規模の映画館は、東京には他にもう無いと思うけれど、多分…。


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私が、自分で選べず、勝手に割り当てられたと憤慨している席は、前から7列目のG列。
私は、どんなに広い映画館でも、映画は極力後方で観たいので、G列は前過ぎる。
しかも、舞台挨拶を見るには端っこ過ぎる…、と良いことナシ。



入場の際には、例年通り、ブ厚い公式パンフレットを無料で配布。

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帰宅後、初めてこのパンフレットを開き、愕然…。

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登壇者を紹介する“ゲスト紹介/嘉宾介绍”というページに、
な、な、なんと黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン)がシッカリ載っているではないか…。
私が当初予想していた通り、黃軒は、東京国際映画祭の『空海 KU-KAI』フッテージ上映と(→参照)、
中国映画週間の両方に出席する予定での来日だったのだ、…本来は。
予定が滞りなく決行されていれば、私、2日連チャンで黃軒を拝めていたのですね…。
知ってしまい、益々空しさが…。
が、逆に考えると、複雑な事情が有ったであろう中、
黃軒はよく東京国際映画祭のレッドカーペットと『空海』フッテージ上映に参加できたものだ…、とも思う。

★ 予定は未定

まずは、この日のスケジュールをざっくりと。

開場    : 13:30
授賞式   : 14:00~15:20
映画上映 : 15:50~17:33


これはあくまでも予定。
本来の開始時刻、午後2時になっても、始まる気配は無く、
2時8分頃、受賞者等のゲストがゾロゾロと会場の中に入ってきて、前方の席に着席。
2時15分から、スクリーンに映画の予告が流され、
2時20分、司会進行役の言葉で、イベントようやく開始。



以下、イベントの流れを見ていきます。

写真はねぇ、一応撮ったけれど、ボケボケで全然ダメ…!
ただでさえ、撮影には不向きな席だったのに、
ゲストがステージに立つと、一斉にフラッシュがたかれるので、
画面が白んでしまい、ピントが余計に合わないの。

★ 開会のお言葉

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開会のお言葉は、中国側からは、大使館の張社平参事官、日本側からは、毎度の栗原小巻。

栗原小巻は、1945年生まれ、もう72歳とは思えない、ハリのある声。
そういう所は、いくつになっても、さすが女優だと感心するし、
長年変わることなく、ずーっと日中の文化交流に尽力し続けているのには敬服する。

(俳優らに一切喋らせず、日中双方のいわゆる“お偉いさん”が、まるでド田舎の結婚披露宴のように、
主役そっちのけで、交互に延々とスピーチを続けていた以前と比べると、
挨拶が二人だけで数分で終わるようになった現在は、大した改善。)

★ 金鶴獎(日本)

開会の挨拶が終わると、すぐに、金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)の授賞式。
今年から、CCTVの協力を得て、ネットユーザーの投票も、賞に考慮されるようになったという。
(但し、ノミネート作品、及び、受賞結果を見ると、本当にそんな投票が有ったのか?と疑いたくなる。)

私は、中国の作品を対象にした授賞式が始まるものと、当然のように思い込んでいたが、
なんと始まったのは、日本の作品を対象にした授賞式。
毎年、上海で行われている日本映画週間との関連企画みたいな説明であった。
結果は、以下の通り。

最優秀監督賞
三島有紀子 『幼な子われらに生まれ』

最優秀作品賞
『カノン』 雑賀俊郎監督

最優秀主演女優賞
上戸彩 『昼顔』

最優秀主演男優賞
斎藤工 『昼顔』 

最優秀助演女優賞
鈴木保奈美 『カノン』審査員特別女優賞佐々木希 『カノン』



ステージに上がり、トロフィを受けたのは、当初の予定通り、『カノン』組の面々のみ。

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最優秀助演女優賞のプレゼンターを務めた張一白監督は、
リップサービスだか本心かは知らないけれど、若い頃から鈴木保奈美のファンだと言っておられた。


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上戸彩と斎藤工からは、ビデオメッセージが。


この時、時計はすでに午後3時10分…。
去年も、日本人を対象にしたこんな賞の授与、有ったの…?!
確か、斎藤工もメッセージの中で、「この賞を日本人が獲るのは初めてと聞きました」と言っていたけれど…。
“初めて”も何も、この賞は、去年が初回。
もしかして、今年は、中国側の登壇者がことごとくキャンセルになったため、
埋め合わせで、急遽、日本人に賞を授与する企画を入れたのでは…?
この会場に集まった日本の中国映画ファンの多くが期待してるのは、
いつでも身近にいる日本人を賛美する授賞式ではなく、中国映画人との貴重なイベントのはずで、
この授賞式には違和感しか無かった。

★ 音楽タイム

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途中で、C;ON(シーオン)という日本のガールズユニットの演奏。

歌や演奏も、これまでは中国の物だったが、今年は日本のユニット。
(不参加だった昨年の事情は、私は知らない。)
決してこのC;ONを否定するつもりはないけれど、
中国で行われる日中交流イベントならともかく、日本で日本の音楽を紹介するのは、この場合、不自然。
音楽タイムにも、何かオトナの事情アリ、か?

★ 金鶴獎(中国)

今度こそ、中国作品を対象にした、金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)の授賞式。
結果は、以下の通り。

最優秀新人賞
李夢(リー・モン) 『上海キング~上海王』

最優秀主演女優賞
劉亦菲(リウ・イーフェイ) 『桃花絶佳 ワンス・アポン・ア・タイム~三生三世十里桃花』

最優秀主演男優賞
吳京(ウー・ジン) 『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー~戰狼2』

最優秀監督賞
吳京(ウー・ジン) 『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー~戰狼2』

最優秀作品賞 
『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー~戰狼2』 吳京(ウー・ジン)
『君のいる世界から僕は歩きだす~從你的全世界路過』 張一白(チャン・イーバイ)



今回、一番興味があった李夢の写真が、一番ボケボケで残念。

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「すでに6年女優をやっているので、今、新人賞を頂くのは不思議な感じ」と李夢。
金鶴獎は、本当に“新人”かどうかより、授賞式に出席できるか否かが、重要と見た(笑)。
この時のプレゼンターは、フォトグラファーの蜷川実花。
蜷川実花は、ドラマ『蘭陵王』のポスターや、
スーパーアイドル鹿(ルー・ハン/ルハン)のアルバムジャケット(→参照)、MVを撮ったり(→参照
上海での大規模個展を控えていたりと、中国でも大活躍ですね。



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吳京は、3ツも受賞しているにもかかわらず不在で、ビデオメッセージのみ。
恐らく、吳京も本来は出席予定だったのであろう(だからこそ、3ツもの賞を与えたに違いない。)
代理でトロフィを受けたのは、俞白眉(ユー・バイメイ)監督。
自身の監督作品が上映されない俞白眉が、なぜ今回居るのか当初分からなかったが、
プロデューサーの身分での出席であった。



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最優秀作品賞を、今年は2作品にしたのも、受賞者があまりにも不在ばかりだとシラケるので、
出席している張一白(チャン・イーバイ)監督に、急遽受賞させたものと推測。
(急過ぎて、準備が間に合わなかったのか、スクリーンに受賞者・張一白の名は映し出されず…。)
「鈴木保奈美さんでドキドキして、それがまだ収まらない内に、受賞でまた次のドキドキです」と張一白監督。
張一白監督のこの『君のいる世界から僕は歩きだす』も、
実のところ、『戦狼』と同じで、俞白眉が関わっている会社の作品らしい。

プレゼンターには、俳優の渡辺裕之や榎本孝明も。

★ 特別賞

金鶴獎の授与が終わっても、授賞式はまだ続く。
なんと、今年は、NPO日中映画祭実行委員会が、独自に3ツの特別賞を制定したという。
結果は以下の通り。

人気女優賞
李成敏(クララ/イ・ソンミン) 『ウーマン・イン・レッド スキャンダラスな夫~情聖』

映画芸術貢献賞
胡雪樺(シャーウッド・フー)監督 『上海キング~上海王』

日中映画交流貢献賞
陸川(ルー・チュアン)監督 『ボーン・イン・チャイナ~我們誕生在中國』




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日中交流イベントで、韓国人の李成敏に賞を与えるくらいだから、
主催者は、登壇者不在に本当に頭を悩ませたのであろう。
この時のプレゼンターは国分佐智子。
夫の家が、中国と御縁が深いという事情で、お呼びが掛かったらしい。
林家三平のうちって、中国と所縁があるの…?




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最後にプレゼンターとして登場した、日中映画祭実行委員会の渡辺満子副理事は
(画像で、クリームイエローのワンピースの女性)、
「祖父・大平が、田中角栄総理と、命懸けで中国へ行った時からの御縁。
周恩来総理と天国で喜んでいると思う」と話していたということは、故・大平正芳元のお孫さんなのかしら。

ちなみに、胡雪樺監督の過去の作品は、『ランリン・プリンス』、『ヒマラヤ・プリンス』と訳されていたが、
それぞれ『蘭陵王』(1995年)、『ヒマラヤ王子』(2006年)のことである。
また、約10年前の2006年、中国映画週間の前身・中国☆上海映画祭に、
胡雪樺監督を連れて来た師匠は、“しゃ・きん監督”と訳されたけれど、
『芙蓉鎮』(1986年)で有名な謝晋(シエ・チン)監督のこと。


授賞式が全て終わった時点で、すでに4時7分(笑)。

★ 花束贈呈

それでも、まだイベントは終わりません。
これも近年恒例、スポンサーMIKI HOUSEの服を着た子供たちによる花束贈呈。

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私はてっきり、MIKI HOUSEがスポンサーから下りたから、
チケット代を値上げしたのだと思ったが、ちゃんとまだスポンサーであった。



今度こそ、本当に終了。時間は午後4時20分…!
映画、3時半から始まるハズだったのですが(笑)。
日本では考えられないユルさだけれど、
中華圏全般で、結婚式などの宴会も、こういうダラダラした流れという印象がある。
金馬獎や金曲獎の中継を観ていても、ベルトコンベア式に、次々と賞の授与が続き、
盛り上げるための演出もあまり無いし。恐らく、あちらでは普通なのであろう。
日本に居ながらにして、今年も異文化体験をさせていただきました。

登壇者のキャンセルが相次ぎ、結局、地味な顔ぶれになった事に関しては、
実際にイベントの様子を見て、絶対に何か抗えない力が働いたのだと確信した。
数年前、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督が、出席予定だった金馬獎を突如キャンセルした際、
皮肉たっぷりに「どういう訳か分からないけれど、急に出国できなくなった」と言っていたが、
そんな事を口にできちゃうのは賈樟柯監督だからで、
普通の俳優は何も言えないだろうし、言わないのが賢明だと思う。

中国映画週間のオーガナイズの悪さには、言いたい文句がいっぱい有っても、
大きな力に理不尽に振り回されているのだろうと想像が膨らむから、何も言えない。
むしろ、毎回、毎回、ギリギリまで振り回されながら、よくちゃんと継続して開催できているものだ。
公には口外できない、相当な苦労があるに違いない。関係者各位に感謝。
これからも続いていくことを願うばかりです。


今回、このイベントの後に上映された『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー~戰狼2』については、また後日。


なお、今回登壇がキャンセルされた黃軒については、こちらの“大陸男前名鑑:黃軒”を。

その黃軒が登壇した東京国際映画祭『空海 KU-KAI』フッテージ上映に関しては、こちらから。
今思うと、あの時、黃軒の登壇は奇跡…。

映画『ウーマン・イン・レッド~スキャンダルな夫』

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【2016年/中国/113min.】
ワケあって、ホテルの窓から、建物の外へ飛び出した中年サラリーマン・肖瀚。
「飛び降りようとしている男がいる!」、「自殺だ!」と警察、消防、野次馬が次から次へと集まり、大騒ぎ。
連絡を受けた妻の沈紅も現場に駆け付け、怒っていない、許すから飛び降りるなと叫んでいる。

それは今からひと月前のこと。
肖瀚の親友・王鯤が、ジョギング中に、ぽっくり死亡。
仕事ひと筋で、恋さえ知らぬままの、あっけない死であった。

肖瀚も、いつ何が起きるか分からないと案じた妻・沈紅から、
腕に心拍計を装着され、いつものように車で出勤。
会社に到着すると、駐車場で、肖瀚は、赤いワンピースを身にまとった一人の美しい女性に目を奪われる。
数値をみるみる上昇させる腕の心拍計。
肖瀚は、名前も知らないこの女性にひと目惚れ。

意外な事に、肖瀚は、その女性と社内で再会。
なんと、彼女は、肖瀚の会社の広告用に雇われたヨーヨーというモデルだったのだ。
これは好都合。
勇気を振り絞り、ヨーヨーに電話し、ディナーに誘うと、嬉しいことにOKの返事。
あとは夜どうやって家を抜け出すか…?肖瀚は、友人たちに協力を要請するが…。



2017東京・中国映画週間で鑑賞。

原題は『情聖~Some Lile It Hot』。
宋曉飛(ソン・シャオフェイ)董旭(ドン・シュー)による共同監督。
宋曉飛はカメラマンとして、董旭は録音技師として、これまで多くの映画に携わってきた二人が、
初めて挑んだ監督作品である。

邦題からなんとなく想像がつくように、本作品は、アメリカ映画『ウーマン・イン・レッド』(1984年)のリメイク。
そもそも、そのアメリカ映画が、
1976年のフランス映画『Un éléphant ça trompe énormément』のリメイクなので、
リメイクのまたリメイクという事。

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私は、アメリカ版ならテレビで観たことがあって、フランス版は未見。
まぁ、アメリカ版も、観たと言っても、あまりにも前のことで、内容はぜんぜん覚えていない。
今回、この中国版を観ることで、記憶が蘇ってくるかと思いきや、これっぽっちも思い出せなかった…。
お陰で、新鮮な気持ちで鑑賞はできたものの、比較できなかったのが残念。




物語は、美しいモデルのヨーヨーを偶然見掛けたことで、
久し振りに心のトキメキを覚えた、ごく平凡な既婚のサラリーマン肖瀚が、自分の気持ちに従おうと決意し、
友人たちの助けを借りながら、彼女を射止めようと奮闘する姿を描く不倫未遂ラヴ・コメディ

平凡な冴えないオッサンにとって、若いモデルは高嶺の花。
身の程知らずにも、何とか彼女を振り向かせようとするのだから、それだけでもう充分困難が予想される。

この物語ではさらに、想定外の“障害”が発生。
肖瀚がヨーヨーに掛けたお誘いの電話を、
ちょっとしたミスで、上司の馬麗蓮が受け、自分が肖瀚から誘われているものと勘違いしてしまったのだ。
さらなる想定外は、馬麗蓮にとって、肖瀚からのアプローチが“満更でもなかった”こと。
想う相手にはなかなか接近できず、何とも想っていない相手からは、積極的に攻め込まれ、肖瀚は困惑。
どうにか馬麗蓮を避けたいが、なにぶん彼女は肖瀚の上司。
邪険にすることも出来ず、泥沼にズブズブ…。

そもそも、普段はおとなしい肖瀚が、恋に積極的になったのには、キッカケが有る。
それは、親友・王鯤の突然の死。
王鯤は、36歳にして、何もかもを手に入れた成功者。
ただ、その成功を得るため、ずっと仕事に懸命で、恋などしているヒマは無く、
ようやくビビッと来る女性と運命的に出逢った直後、突然の御臨終。

妻子との幸せな家庭も、安定した仕事もあるものの、この先、一生この生ヌルい生活が延々と続くのか?
やり残した事は本当に無いのか?もうドキドキしたり、ワクワクすることは無いのか…?!
肖瀚は、親友の若過ぎる死を機に、そんな焦燥感に突き動かされてしまったのであろう。
本作品は、ベタでハチャメチャなラヴコメなのだけれど、
そのベースに有るのは、誰もが多かれ少なかれ陥るミドルエイジ・クライシス。
そう、これは、もう一度トキメキたい世の中年男性たちに贈る“オッサン応援映画”なのです!
(&お調子に乗って羽目を外さず、今ある幸福を大事にしろヨ!という警告映画。)





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主な出演は、妻子と3人で暮らすアパレル会社勤務の平凡なサラリーマン肖瀚に肖央(シャオ・ヤン)
肖瀚がひと目惚れするモデルのヨーヨーに李成敏(クララ/イ・ソンミン)
肖瀚の女性上司に馬麗蓮に閆妮(イェン・ニー)

大陸芸能界は人材豊富で、脇役まで日本なら主役級の美男美女が出まくっている作品が多いため、
逆に、主人公が親しみのある冴えないオッサンという本作品は、
気負いのない我が家のような感覚で(?)、やけに落ち着く。

演じているのは、人気ユニット・筷子兄弟(チョップスティック・ブラザーズ)の片割れ、肖央。
彼、現地では絶大な人気を誇るスタアなのだろうけれど、日本ではぜんぜんお目に掛かることは無い。
私が本作品の前、最後に肖央を見たのだって…

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昨年の東京・中国映画週間で上映された『僕はチャイナタウンの名探偵』だもん。
(夜店のテキ屋みたいな恰好で、演じているのは警察官。)
本人の意思に関係無く、もうすっかり中国映画週間専門役者のポジション。

今回は普通のサラリーマンの役なので、『僕はチャイナタウンの名探偵』と比べおとなしめ。
お着替えのサービスシーン(?)では、適度にアブラが乗った白ムチのお肌を披露。
(でも、上半身に比べ、足は細く真っ直ぐ。ああ見えて、肖央もまたスタイルの良い大陸体形であった。)


ちなみに、同じく『僕はチャイナタウンの名探偵』に出ている小瀋陽(シャオシェンヤン)も…

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本作品に出ていて、肖瀚の親友・劉磊を演じている。
劉磊は、肖瀚と違い、かなりの遊び人。
浮気現場から猛ダッシュで帰宅し、平静を装い、裸にエプロンを付け、餃子を包んでいるシーンは、
ベタだけれど、笑えた。


肖瀚が憧れるマドンナ、ヨーヨーを演じているのは、韓国の“クララ/Clara”こと李成敏。
中国には、中国語を喋れない外国人俳優には有り難い“吹き替え”の文化が根付いてるので、
これまで韓国人も、中国人の役で多くの中国作品に出演。
しかし、「本当にこの役に、この韓国人俳優が必要?」、
「この役だったら、もっと優秀な中国人俳優が演じた方が良いのに…」と考えさせられてしまうことも多々あり。
本作品の李成敏も、そんな無理矢理にネジ込んだキャスティングで、
喋らないで顔だけ見せる、もしくは中国人声優による吹き替えなのだろうと想像していたら、
ヨーヨーは韓国人モデルという設定で、韓国語の台詞も面白おかしく生かされていた。
髪型が、懐かしの“麻丘めぐみカット”だったのは気になった。
ああいうの、今また流行っているの?日本では見掛けないけれど。


でもねぇ、女性で目立つのは、やはり断然、肖瀚の上司・馬麗蓮を演じる閆妮なのです!
今まで、日本でいう藤山直美的立ち位置の、気の置けないオバちゃんを演じることが多かった閆妮。
本作品の馬麗蓮も、盛りの付いたお局サマ上司みたいな役なのだけれど、
綺麗で、一瞬、誰だか分からない!

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閆妮は、ドラマ『王大花的革命生涯』の役作りのため、人生最重量の63キロまで増量し、
その後、今度は15キロもの減量をしたのだと。
私、閆妮とだったら、並んでツーショット写真を撮っても良いと思っていたけれど、絶対にイヤだわ(笑)。
まぁ、元々小顔だし、モデル役の韓流スタア李成敏より長身の169センチだし、
痩せると、こんなに綺麗になっちゃうんだぁー!とビックリ。
だからと言って、本作品で、退屈なただの美女に成り下がったわけではなく、ちゃんとコメディエンヌ閆妮なの。


他のキャストで、要注目は…

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肖瀚の親友であり、成功者の王鯤に扮する超(ダン・チャオ)
イケメンほぼ不在の本作品で、唯一の“目の保養パート”を受け持つ超。
ハンサムなお金持ちなんて、モテそうだが、36歳の童貞という設定。
しかも、物語が始まって早々に登場したと思ったら、死んで居なくなるのも早かった。





余計な空き時間を作らないための消極的鑑賞で、まったく期待していなかったこともあるけれど、
意外にも楽しめ、不覚にも幾度となく吹き出した。
二度もリメイクされているくらだから、きっと元々のプロットがよく出来ているのでしょうね。
確かに、昔のフレンチ・コメディっぽい軽やかな情事のお話で、
それでいて、上手い具合に現代中国に置き換えられている。
大陸のエンタメ作品なのに、イケメンほぼ不在という珍しさもあるし(文芸作品ならイケメン皆無も珍しくない)、
興味のある方は、もしまた観られる機会が訪れるなら、その際にどうぞ。
もっとも、その“観られる機会”は二度と訪れないという予感もするが…。
傑作とは言わないけれど、何も考えずに楽しむのには悪くない作品です。


なお、本作品からは、ヨーヨーを演じた李成敏が来日し、
有楽町で行われた2017東京・中国映画週間ゴールド・クレイン(金鶴獎)賞授賞式に参加し、
NPO日中映画祭実行委員会が今年独自に制定した特別賞で、人気女優賞を受賞。
今年の中国映画週間は、登壇予定だったスタアの来日キャンセルが、例年以上に続出したため、
スケジュールを押さえ易かった李成敏を来日させ
→辻褄合わせに急遽新たな賞を制定し、彼女に与えたのではないかと想像している。

2017東京・中国映画週間ゴールド・クレイン賞授賞式については、こちらから。

映画『記憶の中の殺人者』

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【2017年/中国/122min.】
T國、2015年。
医療の進歩で、人の脳から部分的に記憶を取り出せるようになった時代。
しかし、その技術は必ずしも安全とは言えず、手術を認めない国も多い。
妻・張代晨との関係が破綻した作家の江豐は、記憶を取り出す手術を受けたものの、
張代晨から“記憶を戻すこと”を離婚の条件に提示され、
止むを得ず、一度取り出し保管されていた記憶を再び脳に戻す手術を受ける。
ところが、それを機に、女性を殺める様子が、江豐の脳裏に断片的に浮かび上がってくるように。
どうやら、医療機関のミスで、殺人犯の記憶を埋め込まれてしまったようだ。
江豐は、頭の中で少しずつ蘇ってくる殺人の記憶を、警察で語るが、
「さすがは作家、想像力が逞しい」と相手にされない。
しかし、刑事の沈漢強は、話の信憑性から、徐々に江豐を信じるようになり、
彼と協力し、捜査を進めようとするが…。



2017東京・中国映画週間で鑑賞。

原題は『記憶大師~Battle of Memories』。
近年大陸を拠点に活動する台湾出身の監督、“ちん・まさみち”こと陳正道(レスト・チェン)の最新作で、
本年度、中国映画週間上映作品の中で、私が最も気になったもの。

ただ、自分の中でちょっと引っ掛かっているのは…

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マサミチ2014年の作品『催眠大師~The Great Hypnotist』を未見であることだ。
『記憶大師』は『催眠大師』の続編ではないけれど、タイトルには関連する流れを感じるし、
実際、『記憶大師』は当初、『催眠大師2』という仮称で呼ばれていた時期もあった。


両作品は、脚本を担当しているのも同じ人物で、今やマサミチの片腕となっている任鵬(レン・ポン)

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“毒気を抜いた陳正道”って感じの任鵬。(画像左が任鵬で、右がマサミチ。)
監督&脚本家コンビが、ここまで血縁者並みに似ているのも珍しい。

任鵬は、本来脚本家志望ではなく、西南交通大學を卒業した理系の男性。
不動産会社に勤めながら、大好きな推理小説を執筆していた頃、友人を介しマサミチと知り合い、
当時マサミチが準備していた『ラブ・オン・クレジット』(2011年)の脚本を読み、
自分の意見をズケズケと述べたところ、マサミチは黙していたものの、内心は怒り爆発。
こんな最悪の出会いだったにも拘わらず、マサミチは友人の薦めで任鵬の小説を読み、
任鵬に電話を入れ、『催眠大師』のプロット作りに興味がないかと打診。
ムカついた第一印象が打ち消されるほど、任鵬の才能に惹かれたのか?
こうして、2011年、29歳の任鵬は、不動産会社を辞め、北京へやって来たという。

その後、任鵬は、『101回目のプロポーズ SAY YES』(2013年)、
『20歳よ、もう一度』(2015年)といった推理サスペンス以外のマサミチ作品でも脚本を担当。
但し、これら2作品は、原案が片や日本、片や韓国。
完全オリジナルの推理サスペンス『記憶の中の殺人者』の方が、マサミチ&任鵬の本領発揮でしょうか…?




物語は、手術で人の記憶を出し入れ可能になっている近未来、
作家・江豐は離婚を前に記憶を消す手術を受けるが、
妻・張代晨からの要求で、再び記憶を戻す手術を行ったところ、
医療機関のミスで、殺人犯の記憶を埋め込まれ、脳内に断片的に殺人の記憶が浮かび上がるようになり、
それらを紡ぎながら、警察と協力し、真犯人を探し当てようとするSF推理サスペンス

問題となる“記憶を入れ直す”という部分は、マサミチのアイディアで、
任鵬はそこから物語を膨らませ、脚本にしていったらしい。

“記憶を消す=脳ミソ真っ新な記憶喪失状態になる”ではなく、
手術により、部分的に記憶の中の感情を取り出し、それは保管される。
そして、その保管されている記憶は、もう一度脳に入れ直すことが可能。
但し、脳に入れ直されても、一気に鮮明に蘇ることはなく、徐々に徐々に思い出されてゆく。
それが、その人にとってイヤな記憶なら、再び消去することも可能だが、
手術は72時間以内に行わなくてはならない。
それを超えると、その記憶は、今度は永遠に定着し、もう一度取り出すことは不可能になる。

つまりね、早く真犯人を知りたくても、断片的にしか蘇らない記憶を、
パズルのピースのように少しずつ合わせていくことしか出来ないの。
その間、その真犯人は、野放しにされたままで、新たな殺人事件を起こすかも知れない。
しかも、江豐が再手術を受けるためには、72時間というリミットがある。

江豐の脳に誤って入れられた記憶の中に浮かび上がる殺人事件は2件。
被害者は、いずれも夫からDVを受けている女性。
江豐はやがて自分の妻・張代晨にも魔の手がのびていると危険を察知し、
その前になんとか真犯人を突き止め、第3の殺人事件を食い止めなければと躍起になる。

私が、このお話上手いなぁ~と感心する点の一つは、
これ、今どきの中国映画の割りに、ミニマムな作りで、登場人物も最低限の人数しか出てこないのに、
なかなか真犯人が見えてこなくて、最後に不覚にもハッとさせられてしまった事。



映像の特徴を一つ挙げると、
現実のシーンはカラー、記憶の中のシーンはモノトーンで表現されている。
どちらにしろ、全体にダークなトーンで、特に印象的なのはブルー。
『花蓮の夏』(2006年)もブルーが印象的な作品だったし、ブルーはずっとマサミチお気に入りの色なのでしょう。
“マサミチ・ブルー”と呼ばせていただきます。


さらに特徴的なのが美術。
担当しているのは、マサミチ御用美術デザイナー羅順福(ルオ・シュンフー)
俳優・吳中天(マット・ウー)が手掛けた初監督映画『天亮之前~One Night Only』でも美術を担当し、
2016年、第53回金馬獎で、最佳美術設計(最優秀美術デザイン賞)にノミネートされたクリエイター。
(『天亮之前』は美術のみならず、制作・陳正道、脚本・任鵬という、マサミチ組の作品。)

『記憶の中の殺人者』は、2015年という近未来を舞台にした作品であるが、美術は極めて懐古調。
SFに無関心な私が好きな数少ないSF映画、
テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』(1985年)を重ねた。
でも、実際に参考にしたのは、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(1995年)らしい。





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出演は、医療ミスで殺人犯の記憶を埋め込まれてしまう作家の江豐に黃渤(ホアン・ボー)
江豐の妻・張代晨に徐靜蕾(シュー・ジンレイ)
事件を担当する刑事・沈漢強に段奕宏(ドアン・イーホン)
警察署医務室の医師・陳姍姍に楊子姍(ヤン・ズーシャン)など。

主演俳優は、マサミチ監督作品2度目の登板となる黃渤。
初登板は、『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢(=オリジナル版で武田鉄矢が演じた主人公)。
マサミチは、その時、コミカルではない黃渤を撮りたい!と思ったそう。
確かに、コメディのイメージが強い黃渤だけれど、
この前に、子供を誘拐される父親を演じる『最愛の子』(2014年)を見ているので、
非コミカルな黃渤にすでに免疫あり。
シリアスな演技も味が有ってとても良いので、これからどんどんこういう役が増えていくのではないだろうか。
役名の“江豐”は、この字ヅラから、私は、日本の元プロ野球選手・江夏豊を連想してしまった。


江豐の妻・張代晨役の徐靜蕾は、マサミチ監督作品初登板。
最近は、女優業より監督業に忙しそうな徐靜蕾。
演じるとしたら、自身の監督作品の中くらい。
他の監督の作品に、純粋に女優として出演している徐靜蕾は、久し振りに見た気がする。
徐靜蕾と黃渤を夫婦にするって、なかなか思い付かないキャスティング。
それとも、“美女と野獣”の典型で、案外シックリ…?
この二人、実年齢は、1974年生まれの同い年。
徐靜蕾は、40代になっても、相変わらず知的&薄幸なサッパリ顔で、お綺麗。
でもね、徐靜蕾扮する張代晨の、コンサート会場でのマナーに、心の中でイエローカードを出してしまったワ。
だって、演奏中に、電話の電源を切らず、着信のバイブをブルブル音させるに留まらず、
張代晨ったら、電話に出て、喋りだしちゃうんですもの。
まぁ、外国はこういうの平気な人が多いので、このシーンに反応してしまう私が、とても日本的なのでしょう。


刑事・沈漢強に扮する段奕宏は、中国映画週間で、本作品と『潜入捜査~非凡任務』、
東京国際映画祭で『迫り来る嵐~暴雪將至』と、
この期間中、出演作が3本も日本のスクリーンでお目見え。
実のところ、ひっそりとノリに乗っている段奕宏なのだ(そして、現在、東京滞在中♪)。
以前は、台湾の李康生(リー・カンション)に顔が似ていて、特別美男子だと思わなかったけれど、
年を重ね、いい具合に熟してきた。
刑事を演じているこの『記憶の中の殺人者』でも、カッコイイ。でも…。

ちなみに、この刑事・沈漢強の部下は、(↓)こんな人が演じております。

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梁傑理(パトリシオ・アントニオ・リャン)という新進の俳優。
…と言っても、多分30歳は超えている。
元々はラグビー選手で、台湾で広告に出て注目を集めるようになったみたい。
まだあまり売れていないため、情報も少ないが、
恐らく母親が台湾系アルゼンチン華人で、本人はアルゼンチン生まれの台湾人だと思う。

マサミチの故郷・台湾からは、他にも…

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記憶の中で被害に遭う女性の役で、許瑋(ティファニー・シュー)も出演。
許瑋は最近、“張榕容(チャン・ロンロン/サンドリーナ・ピンナ)に続く台湾混血実力派女優”
みたいな位置づけで頭角を現してきている。


中盤から登場する女医・陳姍姍を演じているのは、
『20歳よ、もう一度』で主人公のおばあさんを演じた楊子姍。
『20歳よ、もう一度』の御縁で、この新作にも友情出演程度に顔を出したのかと思いきや、
いやいや、かなり重要な役であった。
(さらに言うと、陳姍姍は、前出の陳正道プロデュース作品『『天亮之前』を監督した台湾の俳優・吳中天と
2015年に結婚している。横の繋がりがかなりアリ。)
女医・陳姍姍の、被害女性たちへの接し方が、
ただの親切なのか、友情からなのか、はたまたそれ以上の感情からなのかが分からず、ハラハラ。





マサミチは、とても早熟な監督さん。
すでに学生時代に注目され始め、『花蓮の夏』を発表した時は、まだ20代半ば。
『花蓮の夏』を彷彿させる台湾青春映画の企画で、きっと色々と引き合いも有っただろうに、
サッサと大陸へ拠点を移し、あれよあれよと言う間に、ヒットメーカーの一人に成長。
丁度その頃、“お正月映画の巨匠”と称される馮小剛(フォン・シャオガン)監督が、
年を重ね、シリアスな作品を撮るように変わってきたので、
私には、マサミチが“次世代の馮小剛”に思えることもしばしば。
好みかどうかは別として、マサミチが手掛ける娯楽作品は、
上手いことツボを押さえていて、単純に面白いから、器用な監督さんなのだと感心させられる。
でも、私は元々『花蓮の夏』が好きで、マサミチの作品に注目するようになったくらいだから、
そろそろお気楽だけじゃない作品を観たかったのヨ。そうしたら、この『記憶の中の殺人者』。
これも、大好き!と手放しで絶賛してしまう作品ではないけれど、
映像もストーリーも洗練されているし、昨今の監督作品とは毛色が違っていて、新鮮に楽しめた。

物語の舞台となっている架空の国“T國”というのは、どこを意識しているのだろう。
マサミチの故郷・台湾の“T”?それとも、一部撮影を行ったタイランドの“T”?
美術を見ると、建物の雰囲気が上海っぽく感じる部分があったり、
窓からの風景が北京っぽく感じる部分もある。

『催眠大師』の方は、どんな感じだろうか。
あちらの主演は、徐崢(シュー・ジェン)と莫文蔚(カレン・モク)。
コメディが得意な三枚目と、知的でスリムな美女という組み合わせが、
こちらの『記憶の中の殺人者』とも似たキャスティングだと感じる。

『迫り来る嵐』董越監督+段奕宏Q&A

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第30回東京国際映画祭、コンペティション部門に出品された中国映画、
『迫り来る嵐~暴雪將至 The Looming Storm』を鑑賞。


上映は、2017年10月29日(日曜)と11月1日(水曜)の2回あり、
私がチケットを取ったのは、2回目の方。
映画上映後には、両日ともQ&Aを実施。
当初の予定では、登壇者は、監督の董越(ドン・ユエ)と、
出演者二人、段奕宏(ドアン・イーホン)と江一燕(ジャン・イーイェン)。

段奕宏は、この期間、東京国際映画祭での本作品以外に、
東京・中国映画週間の方で、『記憶の中の殺人者~記憶大師』と『潜入捜査~非凡任務』も上映され、
実のところ、地味にノリに乗っている中堅俳優。
私は、この『迫り来る嵐』という映画自体に興味を引かれたと同時に、
今回の映画祭で、ナマ段奕宏にお目に掛かれることを、かなり楽しみにしていた。

江一燕の方は、最近、日本では、出演作『修羅の剣士』(2016年)が公開されている女優さん。


その後、残念ながら、江一燕の方は、登壇がキャンセルになってしまったのだけれど…

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どういう訳か、10月25日(水曜)、開幕のレッドカーペットに彼女の姿。
開幕の日から映画上映の日まで、間が空いてしまうので、
本当にスケジュールのやり繰りが難しく、Q&Aの方はキャンセルせざるを得なかったのかも知れない。
(ちなみに、江一燕のレッドカーペットでのお召し物は、フィロソフィ・ディ・ロレンツォ・セラフィ-ニです。)

開幕のレッドカーペットで、さらに気になってしまったのは、
登壇がキャンセルされた江一燕が居るのに、登壇予定の段奕宏が居ないこと。
東京・中国映画週間の方では、今年、大物の登壇が容赦なくガンガンとキャンセルになったし、
段奕宏も、映画上映の日に、本当に六本木に姿を現してくれるのだろうか…?!とよぎる不安…。


初回登壇前日、北京首都空港だろうか…

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東京行きの飛行機に搭乗したらしいことは確認。
私、段奕宏は、“美男子ではないけれど、渋くて素敵”と思っていたが、
こうやって見ると、やはり、私の周囲の四十男とは明らかに垢抜け度が違い、カッコイイ。


翌29日、段奕宏は、予定通り、『迫り来る嵐』上映終了後、EXシアターの舞台に立ったことも確認。
その日は、登壇した時のお召し物のまま、(↓)このようなお写真も公表。

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和室に段奕宏…。ふぅ~、ダブルで渋い。
ちなみに、この日のお召し物は、ディオール・オム。

★ 会場

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そして迎えた当日。
本日の会場は、THOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン9。
東京国際映画祭開催初日、『空海 KU-KAI~妖貓傳』のフッテージ上映が行われたのと同じ場所。
ここの収容人数は、第1回目の上映が行われたEXシアターよりずっとコンパクトな256人ほど。
それでも、TOHOシネマズ六本木ヒルズの中では、3番目に大きなスクリーンで、
しかも、上映は平日の午前中。
…にもかかわらず、チケットは早々に完売。
地味な作品だと思っていたが、案外注目度が高いのだろうか。

私の席は、これまた『空海』フッテージ上映の時と同じG列。
もちろん段奕宏かぶり付きシートは魅力的だが、その前に映画の上映があるからねぇ…。
映画鑑賞に私の目が耐えられるギリギリの前方ということで、この席をチョイスした次第。

★ 『迫り来る嵐』董越監督+段奕宏Q&A

映画『迫り来る嵐』の詳細は、また後日とし、
今ここには、とても私好みの作品であったとだけ書き残しておく。

上映終了後には、予定通り、監督の董越と、主演俳優・段奕宏によるQ&A。

董越監督は、先日、東京・中国映画週間の金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)授賞式で、
『幼な子われらに生まれ』の三島有紀子監督が受賞した監督賞のプレゼンターとして登壇した時に見た。
本日も、私と同じ列で、自身の監督作品を、最初の方だけ、客席から観ていた。
(で、最初の方だけで席を立ち、出ていってしまったのだが、何かチェックしたい部分が有ったのだろうか?)

段奕宏は、この目で御本人を確認するまで、本当に来るのか、ハラハラであったが、
ちゃんと来てくれて良かった~。
ナマ段奕宏を拝めると思ったらドキドキで、前日は寝付きが悪かったのよ、私。

写真は、少し撮ったけれど、ものの見事に全てボケボケ…!
想い出として、一応数枚だけ載せておく。

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EXシアターで行われた1回目のQ&Aの時は、
質問者として当てられたのが、中国のお客さんばかりだったようだが、
2回目の今回は、早々に、「日本のお客さんの意見に興味があります。
申し訳ありませんが、今回は日本の方の質問を受けさせて下さい」と董越監督。
わざわざ外国まで行ったら、自国民との交流より、
現地の人の反応を知りたいのは、日本人監督でも同じだと思う。

以下、Q&Aの中で、私個人が気になったお言葉のみ、簡単に残しておく。


質問
なぜこの役のオファーを受けたのですか?

段奕宏
俳優は、キャリアの中でしばしばターニングポイントと言えるような作品に出逢います。
この作品は、脚本を見せられ、スタッフたちにも会ったら、皆の意欲が素晴らしかったし、
この役の不確かな感じにも引かれました。
これまで自分がやってきたことが邪魔になるのではないかという心配も有りましたが、
俳優としての挑戦となり、ターニングポイントになると感じました。



質問
雨が多く、重い雰囲気の作品だし、
最後、出所した主人公が乗ったバスがエンストしたのにも、閉塞感を感じたのですが…。

董越監督
その理解で正解です。気象と人の運命は、大きく関係しています。
気象が、主人公の運命や未来を暗示しています。



質問
雨の撮影で大変だったエピソードは?

董越監督
雨季が過ぎてからの撮影だったので、雨を降らせるのが大変でした。
制作スタッフが頑張ってくれたので、良い効果が出せたと思います。



質問
推理映画のように始まり、主人公の内面に変化が出て、またその後覆ったり、
さらに気象も大きく関係したりしていますが、最初からそういうつもりで作品を作り始めたのですか?

董越監督
人間と天候の関係には、興味をもっていました。
最初は、閉鎖される工場に人がやって来て、過去を懐かしんでいるという構想が、元々あったのですが、
それだけではツマラない。
そこで、一人の人間に会うことで、全てが変わってくる、さらに天候の関係も絡めていこうと考えました。

私自身、目の前で起きていることに、よく懐疑的になります。
現実をそのまま受け止めると、真実が見えなくなり、疑うことで、真実を知るものです。
主人公が模範工員として表彰されたことなど無かったという、映画のあのラストは、
幻想かも知れないし、証明できないだけで、現実かも知れない。どちらにも取れるようにしました。



最後に

段奕宏
俳優としては、皆さんがこの映画を好きになって、映画館に観に行きたいと思っていただけると嬉しいです。

董越監督
質の高い質問をしていただき、皆さんの情熱が伝わってきたし、私も鼓舞されました。
また次に新たな作品を撮って、この美しい街・東京へ戻ってきたいです。





質問者には、段奕宏サマのサイン入りお写真プレゼントとのことだったが、
あの場で咄嗟に、質問は思い浮かばないものだ。
たまに、お見当違いな質問をする人が居ると、
心の中で「限られた貴重な時間を、そんなクダラない質問で無駄にするな…」と呟いてしまう私だけに、
私自身が、その“お見当違いな人”になってはいけないという思いもあるし。

映画を観て、主人公が模範工員として表彰された過去が否定されたシーンを
どう受け止めるべきか考えてしまったけれど、
撮った董越監督本人が、「どちらとも取れる」と言ってくれたことで、モヤモヤは払拭された。

★ 去り行く董越監督と段奕宏

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Q&A終了後、一本電話をかけ、出入り口の方へ向かうと、
1階のエレベーターに乗り込み、去って行く董越監督と段奕宏を目撃。

でも、建物の外に目を向けると、サインを求め、列を作る人々。
監督と段奕宏は、戻って来て、サイン会をしてくれるのでしょうか…?
私も、試しに、そこでちょっと待ってみたら、
間も無くして、係りの女性がやって来て、「予定が押しているので、サイン会は行われません」とアナウンス。
残念…!ナマ段奕宏を、もっと近くで見たかった…!

それに、日本には、“隠れ段奕宏ファン”が結構多いはずなのだが、
今日のQ&Aでは、御本人はその実感はあまり得られなかっただろうから、
サイン会が有ったら、「おぉ~、日本でも、自分には結構ファンがいる」
と分かってもらえたかも知れないのにねー。
ちなみに、共演を機に結婚した段奕宏の奥方・王瑾(ワン・ジン)は、
“中村幸子”という日本名と日本国籍をもつ華人。
結婚後は、あまり公に出ていないようなので、女優業は実質引退状態なのかも知れない。

董越監督は、見た目が、映画監督というより、IT企業に勤める技術者っぽい雰囲気。
日本人は、“中国人=大雑把”と思いがちだが、
董越監督は、映画の冒頭を客席からチェックしたり、質問者を日本人に限定したり、
また、熱心な話しぶりやその内容などからも、
かなり真面目で、冷静で理知的に物事を考える人という印象を受けた。
作る映画も緻密なのだが、同時に、御本人からは想像が付かない鬼気迫る雰囲気や迫力もあって、圧巻。
とても気に入ったこの『迫り来る嵐~暴雪將至 The Looming Storm』はまた後日。
東京国際映画祭、閉幕の日、何か賞を獲ってくれるといいなぁ…。

『老いた野獣』周子陽監督+王超北Q&A

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第30回東京国際映画祭、アジアの未来部門に出品された中国映画、
『老いた野獣~老獸 Old Beast』を鑑賞。


期間中、上映は、2017年10月28日(日曜)と、11月1日(水曜)の2回あり、
その両方で、周子陽(チョウ・ズーヤン)監督によるQ&Aを実施。
私がチケットを取ったのは、2回目、11月1日の方。

世間では特別注目されているようには見受けない作品だが、
王小帥(ワン・シャオシュアイ)がプロデュースしている事、
また、今年、第54回金馬獎で、最佳新導演(最優秀新人監督賞)、最佳攝影(最優秀撮影賞)、
最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)、最佳男主角(最優秀主演男優賞)
の4部門にノミネートされている事から、私個人の注目度はとても高い。

★ 会場

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会場は、TOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン3。
収容138人という小ぶりな会場。
超人気作品というわけではないと思うが、今年もチケットのWeb販売で、システム上のゴタゴタがあり、
希望通りの席は取れなかった…。

でも、ここ、客席とスクリーンの間に充分な距離があり、傾斜もしっかりついているので、
狭いながら、映画は案外観易い。

★ 『老いた野獣~老獸 Old Beast』周子陽監督+王超北Q&A

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映画の後は、Q&A。
予定されていた監督の周子陽のみならず、
主人公の長男・楊冰を演じた王超北(ワン・チャオベイ)も来てくれた。


1回目、10月28日のQ&Aでは、さらに…

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主人公の愛人・莉莉を演じた王子子(ワン・ズーズー)も登壇したそう。
登壇予定だった人がキャンセルになってしまうのは悲しいけれど、
予定に無かった人が余分に来てくれるサプライズなら嬉しいものだ。


しかし、私が行った2回目の上映で使われたスクリーン3は、Q&Aや舞台挨拶を行うには、不向き。 

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前述のように、映画は案外観易いのだが、
ステージがガクッと下がった場所で、しかも、フェンスに遮られているため、
まるで登壇者は動物園のオリの中で見世物になっている“老獣”ならぬ“珍獣”のよう…。


とにかく、以下、Q&Aの中で、私個人の記憶に残った部分をピックアップして記しておく。


質問
映画の舞台になっている場所について。

周子陽監督
主な舞台は、私の故郷である内蒙古の鄂爾多斯(オルドス)です。
鄂爾多斯では、とても景気が良い時期があって、その時は、人の良い部分も悪い部分も見えてきました。
主人公の末の娘が住んでいるのは、陝西省北部の楡林(ユーリン)という街です。
楡林は伝統が残る場所ですが、ここも近年変わってきています。



質問
妻と兄弟の間に挟まれ大変な主人公の長男を演じてどうでしたか?

王超北
私自身は、まだ結婚しておらず、子供もいないので、
結婚している周囲の友人などを役作りの参考にしました。
結婚をしていると、家庭の問題が色々起きます。
よく冗談で、「自分の妻と母親が川に落ちたらどちらを助けるか」と言いますが、難しいものです。



質問
キャストについて。

周子陽監督
出演者全員がモンゴル人というわけではありません。
長男・楊冰と愛人・莉莉を演じている俳優はモンゴル人ではなく、他は大体モンゴル人です。
モンゴル人ではない人の場合は、台詞を言う時の方言に気を付けました。
また、プロではない人も多く出演しています。
有名なスタアを使うという話もありましたが、話が嘘くさくなりそうなので、
あまり有名ではない人をキャスティングしました。



質問
物語の最初の方には老楊に恩義を感じている人も出てきますが、
その後老楊はどんどん孤立し、残酷な話になっていきます。それは、元々考えてそうしたのですか?

周子陽監督
物語の参考にする出来事が、実際に私の周囲でも有りました。
例えば、バブル期に“王總(王社長)”と呼ばれていた人が、
不景気になった途端、子供の頃の呼び名で呼ばれるようになったりします。
景気の良し悪しが、呼び名さえ変えるのです。
私は、もう十年ほど北京で暮らしていますが、故郷に帰る度に「儲かっているか?」と聞かれます。
私が、24~5歳の時に、李安(アン・リー)監督の
「中国人の情感は涙で作られ、失望の中に愛と感動を享受する」といった言葉を聞きましたが、
今はもっと悲惨で、その感動すら無いように感じます。



質問
高齢化など日本の問題にも通じるし、
主人公が『男はつらいよ』の寅さんとも似ているように思えたのですが、意識しましたか?

周子陽監督
山田洋次監督の作品は、他の物なら観たことがありますが、『男はつらいよ』は観ていません。
私は、強烈な社会の変化に伴う人間の変化に興味があり、それを映画に描きたいと思っています。
この作品は、内蒙古の話ではありますが、他の世界でも通じるでしょう。
日本の監督だと、黒澤明、小津安二郎、山田洋次、是枝裕和、
ヨーロッパだと、クシシュトフ・キェシロフスキなどが好きです。
社会性があるものが好きです。



質問
老楊は伝統的な人とのことですが、サウナへ行ったり、愛人を囲ったりして、矛盾していませんか?

周子陽監督
老楊は複雑な人物です。
確かに、莉莉と付き合ってはいますが、妻が病気になって6~7年経ったので、莉莉を求めたのです。
家庭でも、元々は妻や子供、特に下の娘にはよく仕えてきました。
でも、子供たちは、そんな昔を忘れ、どんどん老楊を追い詰めていきます。



最後に

王超北
蒙古の家族を描いた物語ではありますが、
日本の是枝裕和監督や山田洋二監督にも通じるので、
日本の皆さんにも共感していただける部分があると思います。

周子陽監督
この映画を作るのに、十年かかりました。その間、良い事も大変な事も色々有りました。
正式に上映されるようになることを期待します。




周子陽監督は、まだまだ喋りたい事がいっぱい有ったようで、Q&Aの制限時間内では、到底足りず。
搜狐SOHUのインタヴュでは、もっと具体的に話しているので、そちらを読んでくれとのことであった。

質問で一度『男はつらいよ』が出てから、
話の中にやたら山田洋次監督の名前が出るようになったが、
周子陽監督が本当に山田洋次監督や山田洋次監督作品に興味があるのか疑問…。
小津安二郎、是枝裕和、キェシロフスキ等を好む人は、
一般的に、山田洋次監督ファンとは対極にいるものだ。
質問者が『男はつらいよ』を挙げたため、
山田洋次監督の名前を出すと、日本人により親近感をもってもらえると理解し、
山田洋次を連発したということはなぁーい…??

★ サイン会

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Q&Aの後は、会場を移し、サイン会。


私も、お二方からサインを頂きました~。

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周子陽監督が、色紙の大部分を使ったので、王超北のサインは隅っこにちっちゃく。
監督からは「一切順利」のお言葉も。
この王超北は、映画の中で演じているのを観ている時、
俳優もやっている台湾のマルチタレント張兆志(チャン・チャオチー)にソックリだと思ったが、
近くで見ても、やはり似ていた。
ただ、俳優さんに、他の芸能人に似ているというのは、ちょっと失礼だと思い、口には出さなかった。
映画の中では、キレたりもしていたけれど、腰の低い、とても優しい人であった。



映画『老いた野獣~老獸』は、普遍的と共感できる部分もあれば、腑に落ちない部分もあるのだが、
だからこそ面白かった。
詳細は、また後日。

東京国際映画祭『迫り来る嵐』ダブル受賞♪

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第30回東京国際映画祭は、本日、2017年11月3日閉幕。

コンペティション部門にノミネートされていた唯一の中国映画、
『迫り来る嵐~暴雪將至 The Looming Storm』が私好みだったので、
何か賞を獲らないかしらぁ~という期待から、
受賞の発表があるクロージングセレモニーのライヴ配信を、ちょこっと“ながら鑑賞”。


観始めて、間も無く、『迫り来る嵐』は早速、最優秀芸術貢献賞を獲得。

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Q&Aの時は、生真面目な理系男子のように見えた董越(ドン・ユエ)監督が、
心なしか声を震わせ、受賞に興奮しているのが、こちらにも伝わって来る。

ただ、まるで義理を果たすかのように、最優秀芸術貢献賞だけを与え、終わらされてしまう気がして、
私は何とも腑に落ちない。

昨年もこの賞を受賞したのは中国映画。
婁(ロウ・イエ)監督作品の脚本で知られる梅峰(メイ・フォン)が初監督した
気に入って、もう一度観たいと思い続けているけれど、日本での一般劇場公開には至っていない。
確かに一般ウケする作品だとは思わないが、
“東京国際映画祭で受賞=一般公開”とは行かないのが、
東京国際映画祭の影響力の弱さであり、不景気ニッポンの厳しい現実…。
『迫り来る嵐』も、最優秀芸術貢献賞を受賞したところで、結局は埋もれて行ってしまうのかとタメ息。


そうこうしている内に、審査員・趙薇(ヴィッキー・チャオ)がプレゼンターとして登場し、
最優秀主演男優賞の発表。名前を呼ばれたのは…

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『迫り来る嵐』で主人公・余國偉を演じた段奕宏(ドアン・イーホン)であった…!
コンペティション部門の他の作品を全然観ていない私が言うのもナンですが、これはもう納得の受賞でしょ。
だって、段奕宏の演技に本当に飲み込まれたもの。
段奕宏サマ、おめでとうございます!

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Q&Aの時は、ほとんど董越監督が喋り、その横で、表情を変えずにジッと座っていた段奕宏であったが、
この受賞には精神的高揚がかなりあったように見受け、
思い詰めたような顔つきから満面の笑みまで、表情豊か。
受賞のスピーチは、さすが俳優!といった感じのドラマティックな喋り方で、これにもまた引き込まれた。

2ツも賞を獲ったのだから、普通の映画館で改めて公開されて欲しい。
全国のシネコンで大々的に公開するような作品ではないが、
新宿武蔵野館辺りでの上映なら、充分アリの作品である。



そして、段奕宏繋がりで、私がもう一本期待しているのが、
東京国際映画祭の提携企画、東京・中国映画週間で今年上映された『潜入捜査~非凡任務』。

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黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン)×段奕宏×祖峰(ズー・フォン)というゴールデントリオによる作品。
私は今回観に行けなかったのだが、
香港の麥兆輝(アラン・マック)と莊文強(フェリックス・チョン)がガッツリ絡んでいる作品なので、
ちょっと待てば、どうせ日本でも公開されると高を括り、大して気落ちすることもなかった。
…しかし、よくよく考えてみたら、このゴールデントリオは、あくまでも私個人にとってのゴールデントリオであり、
日本で客を呼べる顔ぶれとは言い難い。
この3人の内一人でも名前を挙げられる日本人は、百人中2人くらいのものであろう。
でも、黃軒は日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』の公開を控えているし、
段奕宏も主演男優賞受賞となれば、少なくとも映画ファンの間では、注目度が高まること間違いナシ。

『迫り来る嵐』と『潜入捜査』、是非ぜひ日本公開ヨロシクお願いいたします!期待。


ちなみに、今回の映画祭で観た中で、
金城武&周冬雨(チョウ・ドンユィ)主演の『こんなはずじゃなかた!~喜歡·你』は、
国際映画祭でかけるようなタイプの作品だとはまったく感じない、王道のラヴコメだけれど、
ちゃんとお客を呼べる、興行的にリスクの低い作品だと思った。これ、一般公開アリじゃない…?



今年の東京国際映画祭でダブル受賞に輝いた『迫り来る嵐~暴雪將至 The Looming Storm』の詳細は、
また後日、改めて。

上映終了後に行われた董越監督と主演男優・段奕宏によるQ&Aについては、こちらから。

映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』

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【2017年/中国/123min.】
戦いで、同僚の俞飛を犠牲にし、恋人・小雲をも失い、特殊部隊・戦狼を除籍された冷鋒は、
国を去り、一人アフリカへ。

それから3年。
すでにこの地にも慣れ、気ままに楽しく過ごしてるかのように見える冷鋒だが、
小雲失踪の鍵を握る銃弾を肌身離さず胸元に付け、犯人への復讐を忘れることはなかった。
そんなある時、いきなり反政府ゲリラによるクーデターが勃発。
市街地で激しい銃撃戦が起き、一般市民からも犠牲が続出。
冷鋒は、実の息子同様に面倒を見ているアフリカ人少年・トゥンドゥを連れ、
中国政府が差し向けた船で、アフリカから避難しようとするが、トゥンドゥが泣いて乗船を拒否。
工場に閉じ込められている母親を置いて、中国へは行けないと言うのだ。
確かに、避難できずに恐怖に怯えている人々は数多く居れど、
現状では、地元政府は何も出来ないし、中国の人民解放軍も、国連の承認無しには動けないという。
元戦狼の誇りに突き動かされた冷鋒は、
自ら人々の救助を申し出て、たた一人で危険な占領地域へ向かい…。



2017東京・中国映画週間で、金鶴獎(ゴールド・クレイン賞)受賞イベントの後に上映された、
同映画祭、本年度の一押し作品。

アクション俳優として超有名な吳京(ウー・ジン)が監督&主演。

原題は『戰狼2~Wolf Warriors2』。
“2”と言うくらいだから、“1”も有る。

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2015年発表の前作『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ 傭兵部隊vsPLA特殊部隊』は、
日本でも2016年にDVDが出ているけれど、私はまったく興味が無いジャンルで、未見。

続編のこちらも、私好みの作品とは思えないのだけれど、取り敢えず、観ておきたかった。
なぜなら、これ、中国で興行記録を塗り替える大ヒットとなり、
「スゴイ愛国映画が出てきた!」と、その噂は日本にも伝わり、
早い内からアクション映画や中華映画のファンを中心に注目を集めた話題作。
私も、仕舞いには、どう凄くて、どれ程度愛国的なのか、自分の目で確かめたくなった。
で、どうせなら、この手の作品は大スクリーンで体験したいので、中国映画週間で鑑賞。




作品は、特殊部隊“戦狼”を除籍された男・冷鋒が、
失踪した恋人・小雲が残した弾丸を手掛かりに、アフリカへ流れ着き、そこで気ままに暮らしていたある時、
現地でクーデターが勃発し、国は大混乱に陥るが、
元戦狼の冷鋒が、危険を顧みず、自ら激戦地帯へ身を投じ、
そこから人々を脱出させようと奮闘する姿を描くアクション映画

前作を観ていないので、よく分からないのだけれど、
主人公の冷鋒は、義侠心から事件を起こし、仲間や恋人・小雲を失い、
所属していた特殊部隊・戦狼も除籍され、人生のドン底で、アフリカに流れ着き、
3年が過ぎ、今は気ままに暮らしているように見えるが、
実は、小雲失踪の手掛かりとなる弾丸を肌身離さず持ち歩き、犯人への復讐を心に誓っている男のようだ。

そんな折り、“紅巾軍(レッド・スカーフ)”と呼ばれる反政府ゲリラが、一般市民をも巻き込む暴動を起こす。
アフリカにも大勢の中国人が居るわけだが、
人民解放軍は、国連の承認無しでは、他国の戦乱に介入できない。
在アフリカ中華人民共和国大使館も、外交ルートを使って、事態を収めようとするが、こちらも上手く行かず。

中国人たちは、中国政府が差し向けた船で、アフリカを脱出することになり、
冷鋒も息子のように可愛がっているアフリカ人少年・トゥンドゥを連れ、乗船しようとするのだが、
そこでトゥンドゥが、「工場で働いているお母ちゃんを置いて、中国へ行くのなんてイヤだ…!」と号泣。
これを機に、元・戦狼の正義感に火がつき、
「よーし!母ちゃんのことは任せろ!俺が皆を救ってみせるっ!」と、
冷鋒は単身敵の占領地帯へ飛び込んでいくことになる。

あとはもう戦いに次ぐ戦い。
銃弾がガンガン飛んできたり、戦車にドドドーッと追われたり、ただでさえ大変なのに、
冷鋒は死に至る“ラマンラ”なる奇病にまで侵されてしまう。
ラマンラ?何ソレ?初耳と、私、帰りの車中でググっちゃいましたよ。
どうやら架空の伝染病みたいですね。
だから、冷鋒も、パーシャという特殊な抗体を持つアフリカ人少女の血を打ったら、都合よく回復。




特殊部隊“戦狼”を除籍され、アフリカに流れ着いた男・冷鋒を演じるのは、吳京(ウー・ジン)

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日本でも人気のアクション俳優・吳京は、『狼牙 ライジング・フィスト』(2008年)で監督デビューし、
2本目の『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ 傭兵部隊vsPLA特殊部隊』に続き、
本作品が3本目の監督+主演作にして大ヒットを記録。
李小龍(ブルース・リー)にしても、成龍(ジャッキー・チェン)にしても、甄子丹(ドニー・イェン)にしても、
アクション俳優は、自分の理想のアクションを極めるために、
自らの手でアクション映画を監督したくなるものなのでしょうねぇ、多分。
この『戦狼』は、おなかいっぱいになるほど、吳京と吳京のアクション満載で、
あぁ、吳京は自分の想いを全部ここに詰め込んだのだなぁ~と思った。
他の監督が手掛けた作品の中でも、吳京はもちろん凄いアクションを披露してはいるけれど、
ここまでの“吳京堪能映画”は、かつて観たことがない。

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吳京に代わり、「ファイト、一発!」と叫びたくなるシーンしばしば。

基本的には、常に着衣状態なのだが、脱いだらやっぱりスゴかった。

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若いイケメン俳優が、入浴やベッドシーンで脱ぐことを、よく“サービス・シーン”と称するが、
最近、私は、年のせいか、そういう脂っこいのが全然ダメで、見ているだけで、胃もたれしちゃって、
「サッサと服着てくれ…」と心の中で呟いてしまうことが多いのだけれど、
四十男の吳京が、アフリカでも故郷のお酒・茅台酒(マオタイ酒)をかっくらい、
気分良くなって、服脱いで、サッカーしているシーンには、どういう訳か、目が釘付け。
茅台酒飲んでいる地味顔の中年男と、鍛え抜かれた無駄の無いボディという落差に、ギャップ萌えでしょうか。



脇を固めるキャストも見ておきます。

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セント・フランシス病院に勤める医師レイチェル・スミスに盧靖姍(セリーナ・ジェイド)
アフリカの中国系工場の工場長を務める卓亦凡に張翰(チャン・ハン)
その工場で保安隊長を務める退役軍人・何建國に吳剛(ウー・ガン)
最大の敵となる傭兵隊長、通称“ビッグ・ダディ”にフランク・グリロ等々…。


男臭い戦いの物語で、そこにちょっと色を添えているのが、女医・レイチェル。
扮する香港明星・盧靖姍は…

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成龍(ジャッキー・チェン)の『スネーキー・モンキー 蛇拳』(1978年)、
李小龍(ブルース・リー)の『死亡の塔』(1989年)などに出演しているアメリカ人俳優、
ロイ・ホラン(Roy Horan 羅伊·霍蘭)の娘。

盧靖姍は、初めて出た映画が、吳京初監督作品『狼牙 ライジング・フィスト』という御縁で、
本作品でも、女性の中で一番重要な役で起用。
香港は、こういうハーフ顔の女優さんが結構多いので、
正直言って、私は本作品で盧靖姍を見ても、印象があまり残らず、
彼女だけが持つ他とは違う突出した“何か”という物は、ほとんど感じられなかった。
でも、英語と中国語が共に流暢というのは強みだし、
この『戦狼』が大ヒットしたから、これから活躍の場がどんどん広がっていくでしょうねぇ~。


他の出演者では、アメリカのフランク・グリロは、
普段中華圏の作品を観ない日本人には、“本作品一番の大物キャスト”か…?
悪役を憎々しく演じております。


私が気になったのは張翰。
張翰と言えば、口数の少ない硬派、品性漂う御曹司といった、正統派二枚目路線できた俳優である。
本作品で演じている卓亦凡も、裕福な家庭で育ったお坊ちゃまなので、
その点は、これまでの張翰のままなのだが、
“育ちの良さが滲み出ている貴公子キャラ”ではなく、あちらで“富二代”と揶揄されるようなバカ息子なの。
もっとも、その後、冷鋒に触発され、正義に目覚め、共に戦うことになるのだけれど。
そう言えば、“亦凡”繋がりで、元EXOの人気スタア吳亦凡(クリス・ウー)が
『ロクさん』(2015年)で演じたのも、この手のバカ息子であった。

張翰は、ちょっとしたイメチェンを計った出演作が大ヒットして、成功だったと言えよう。
ただ、これまであまり張翰出演作を観たことの無い日本人女性が、
本作品を観て、いきなり張翰オチするとは考えにくい。
襟足&モミアゲは軍隊仕様のスッキリ刈り上げなのに、前髪だけふっくらボリューミーな髪型がビミョーで、
本作品における張翰のイケメン度は低め。





想像以上でも以下でもナシ。
事前に漠然と予期していた通り、どきどきハラハラの連続で、鑑賞の時間は楽しめても、
決して自分好みの作品ではなかった。
林超賢(ダンテ・ラム)監督の『オペレーション・メコン』(2016年)と近いニオイを感じるので、
あちらが好きな人は、こちらも好きかも。

私がこの映画で一番気に入ったのは、エンディングのメイキング映像かも。
周囲に気遣いをする吳京の、明るく優しいお人柄が伝わってくる映像で、これ観ると吳京にホレる。

“愛国映画”という表現に関しては、えっ、これ程度で?って感じ。
これ、戦火の広がるアフリカで、正義の名のもと大活躍する人民解放軍を英雄視する物語などではないのヨ。
それどころか、映画の中のアフリカでは、人民解放軍も在アフリカ中国大使館もお手上げ状態。
軍隊のような政府の大組織が傍観するしかない中、
たった一人で、危険地帯に飛び込んで行く一民間人のお話なので、“愛国映画”という印象とは違うかナ、と。
アメリカ人が好むヒーロー物に近いかも。
(まぁ、アメリカ人も、とかく愛国的と言われるが。)

強いて、愛国的な部分を挙げるなら…

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終盤、主人公・冷鋒が救助した人々を引き連れた主人公・冷鋒が、
腕に五星紅旗を巻き付け、封鎖地区に入っていく所とか…?
ただ、こういう風に「我々は敵国の人間ではありません、撃たないで!」と訴えたい場合は、
友好国である自国の国旗か白旗を掲げるのが妥当だろうから、これも“愛国的”とは言い切れない。

最後の最後、中華人民共和国のパスポートが映し出され、
「あなたがもし海外で危険に晒されても、諦めないで!
どうか覚えていて下さい、強い祖国があなたを守ってくれる事を」といったテロップが流れる所が、
強いて言えば、一番愛国的。
(実際には、中国のパスポートに、このような記述は無いとのこと。)

でも、せいぜいそれ程度のものなので、もっと愛国的なプロパガンダ映画を期待していると、肩透かしを食らう。
私は、例えば、馮小寧(フォン・シャオニン)監督の『超強台風』(2008年)などの方が、
余程愛国プロパガンダ臭が鼻についたけれど。
ちなみに、『超強台風』の主演男優は、日本で“ウー・ガン”と紹介されているが、
本作品に出演の“ウー・ガン(吳剛)”とは別人の“ウー・ガン(巫剛)”ですので。
日本の映画配給会社は、いい加減、華人の名前をカタカナで表記する悪習を改めて欲しい。
それは、日本語字幕の中でも同じ。

それにしても、中華圏では、よくまあ次々とスタア級のアクション俳優が出てくると感心する。

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成龍が還暦でおとなしくなっても、甄子丹が大活躍し、今こうして吳京がガーッと登り詰めてきているけれど、
そのすぐ次には、張晉(マックス・チャン)や吳樾(ウー・ユエ)等が控え、
釋延能(シー・ヤンネン/シー・イェンノン)や王寶強(ワン・バオチャン)といった“リアル少林僧”もいる。
吳樾は、日本の映画ファンの間では、まだ認知度が低いようにも見受けるが、
葉偉信(ウィルソン・イップ)監督作新作『殺破狼·貪狼~Paradox』に、
古天樂(ルイス・クー)、林家棟(ラム・カートン)と並ぶメインキャストとして出演しているので、
そろそろ日本にも吳樾の時代が来そう…、と密かに予想。


参考までに、2017東京・中国映画週間ゴールド・クレイン賞授賞式については、こちらから。

ムラングシャンティ3種(+日々の雑記)

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BS12トゥエルビで放送中の、楊穎(アンジェラベイビー)&鍾漢良(ウォレス・チョン)主演の大陸ドラマ、
『孤高の花 General & I~孤芳不自賞』にどうも乗れない…。
もういい加減捨てるつもりで、これが最後と!と先週放送の第23話を観たら、
鍾漢良がくっきり二重のパッチリお目々になっていて、ビックリ。
しかも、その次のシーンでは、一重瞼に戻り、離れ離れになっていたべいべーと再会を果たし、
さらに、その次のシーンでは、片目一重、片目二重で、床の中で愛を語っておられた。
たった一話の中で3種類の鍾漢良が楽しめるとはオイシイ!なんて思ったら、
退屈なドラマをまた捨て損ねてしまった…。

年を重ねるにつれ、瞼の脂肪が落ち、一重から二重になる人って、結構居るけれど、
鍾漢良も恐らくそのタイプなのであろう。
数年後には、完全な二重瞼になっているような気がする。
皆さま、その時は、くれぐれも「お直しした!」なんて言わないであげて下さいませ。彼の場合は体質ですヨ。
ただ、このドラマで見た限り、鍾漢良は、二重より、腫れぼったい一重瞼の方が、断然素敵であった。



ところで、以前から告知されていたように…

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今週末、2017年11月11日(土曜)から、フォトグラファー蜷川実花が、上海で大規模個展を開催。

それに先立ち、色んな著名人から、開催応援コメント動画が寄せられているのだが、
その中に、黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン)の物も。
音量が非常に小さく、ほんの数秒で終わるので、注意。)


黃軒は、雑誌の撮影をした後に、蜷川実花のためにこの動画を撮ってくれたらしい。
先月、第30回東京国際映画祭『空海 KU-KAI~妖貓傳』フッテージ上映のために来日した際、
日本で撮影したのだろうか…?
雑誌は、日本の雑誌?それとも、あちらの物…?
蜷川実花がどんな風に黃軒を撮ったのか、見てみたい。


ちなみに、今回上海で行われる蜷川実花の個展は、自身初の最大級の規模を誇るものらしい。
上海へご旅行予定の方は、ついでにどうぞ。

【上海・蜷川実花展】
会期: 2017年11月11日(土曜)~2018年1月10日(水曜)
場所: 拉法耶藝術設計中心 LAFAYETTE ART & DESIGN CENTER
中國 上海市 黄浦區 復興中路 323號





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黃軒繋がりで、最近たまたま読んだ…
…と題された記事もリンクしておく。

“黃軒が高橋一生似”という点には、正直、まったく同意できないのだが、
彼の名前について、「日本の予告編やチラシでは“シュアン”と表記されていますが、
ここでは敢えて正しい発音に近い“シュエン”と表記」と書いてくれていることには、
おぉ~、ちゃんとこういうライターさんもいる、と感激。
無責任に“ホアン・シュアン”という誤表記を広めた、
黃軒出演ドラマを日本に入れた某配給会社や『空海』の角川には、
私、一ファンとして、ハラワタ煮えくり返っているので。
(“シュアン”表記は、中国語と日本語両方をきちんとできる人に確認せず、
“Xuan”という拼音をそのまま日本語のローマ字風に読んでしまったとしか思えない。)

この記事の中で、一ヶ所、訂正があるとしたら、
黃軒が、張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品『王妃の紋章』(2006年)のキャストから外された理由を、
「役柄の年齢設定が変更されたせい」と記されているけれど、
私個人的には、単純に「周杰倫(ジェイ・チョウ)に役を取られた」という説の方が有力だと思っている。
当時、黃軒と周杰倫では、知名度に雲泥の差があったので。

そんな黃軒の、さらなる情報については、こちらの“大陸男前名鑑:黃軒”をご参考に。

黃軒が来日した、第30回東京国際映画祭『空海 KU-KAI』フッテージ上映については、こちらから。




テレビはねぇ、最近、これといって惹かれる番組が無く、要録画は一本。

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2017年11月10日(金曜)、BS朝日で放送の『地球大紀行』
今週は、“兵馬俑~最新研究で蘇る始皇帝の最強軍団”という兵馬俑特集♪
兵馬俑博物館とロンドン大学が共同で行った研究を独占取材して、明らかになった真実を紹介するらしい。
兵馬俑はずっと研究され続けているので、
番組は本当に新たな情報を提供できるのか?と少々疑ってもいるのだが、
一度は西安へ行って、ホンモノの兵馬俑をこの目で見たいと思っているので、
仮に目新しさが無くても、興味はある。

兵馬俑人気は、中国好きや遺跡好きに限られているものと思い込んでいたが、
番組紹介が冒頭「累計発行部数3000万部を超える漫画<キングダム>で描かれる
秦の始皇帝による中華統一」で始まっているように、
最近、私からしてみると意外と感じる層の若人が、漫画を通じて、秦の時代に興味をもっているのよねぇ…。
そんなに面白いんでしょうか、<キングダム>。


再放送になるが、偶然にもその翌日の11月11日(土曜)、朝6時、
NHK BSプレミアムの『桃源紀行』も、西安の特集を放送する。


ついでに、もう一本再放送。
同じ“しん”でも、“秦”ではなく“清”だが、翌週、11月13日(月曜)、
やはりNHK BSプレミアムのプレミアムカフェで
『近代中国に君臨した女たち~西太后 王朝の幕を閉じた“悪女”』を再放送。

2011年に初回放送したシリーズで、西太后、婉容、宋慶齢、江青の4人を取り上げており、
面白かったので、私は、当ブログでも、こちらに書き残している。
西太后だけではなく、他の3人についても、再放送希望。





お菓子は、洋モノ。
大好物のおフランス伝統菓子、ムラング・シャンティを3ツ。

★ ヴォワザン:ムラング・シャンティ・ココ

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大きさは、直径約7センチ、高さ約4センチ。
ココナッツ・クリームとコーヒー・クリームを、ココナッツ・メレンゲの中に詰め、
刻みアーモンドを混ぜたホワイトチョコレートで覆ったお菓子。



一つめは、浜田山のケーキ屋さん、ヴォワザン(公式サイト)“ムラング・シャンティ・ココ”

見た目からして、伝統的な物とは異なるドーム型。
このドームを形成している素材がメレンゲで、その中にクリームを詰めている。
クリームは2種類で、ココナッツとコーヒー。
コーヒー味は単独なら好きだけれど、このお菓子にはどうかしらぁ…と恐る恐る口にしたら、
いやいやどうして、ココナッツにも合っている。
表面を覆うパリパリに固まったホワイトチョコが、口の中で溶けていく感じも良い。


いわゆるムラングシャンティではないけれど、
私はホワイトチョコが好きなので、このアレンジ版は気に入った。
チョコの濃厚な味が加わることで、軽いムラングシャンティに深みが出て、美味しい。

★ ブロンディール:ムラング・シャンティ

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大きさは、幅約6センチ。
キャラメリゼしたシチリア産アーモンドを混ぜ焼き上げたメレンゲ2ツで、生クリームをはさんだお菓子。




続いて、ブロンディール(公式サイト)“ムラング・シャンティ”
埼玉県ふじみ野市のブロンディールは、
日本人の好みに媚びない本格的なフランス菓子を提供する隠れた名店だが、
なにぶん場所が不便…、とボヤいていたら、約2年前に石神井公園に移転。
東京に来てくれたら、買える機会が増えるかと思いきや、
実際にはそうでもなく、埼玉県時代と変わらずなかなか口にする機会に恵まれず…。
そんな訳で、このムラングシャンティを食べるのも久し振り。

久し振りのムラングシャンティは、少々変化。
確か以前は、一つのメレンゲに生クリームを盛っていたはずだが、
現在は、他店と同じように、2ツのメレンゲで生クリームをはさむ形になっている。
この方が安定感があって食べ易いかも。

形は変わっても、味は基本的に同じ。
混ぜられたアーモンドの香ばしさや、キャラメリゼの甘さが、
全体の味に変化をつけるアクセントになっている。

★ ロートンヌ:ムラング・シャンティ

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大きさは、幅約7センチ。
低音でじっくり焼いたメレンゲ2ツで生クリームをはさみ、トップに砕いたサブレを散らしたお菓子。




最後は、ロートンヌ(公式サイト)“ムラング・シャンティ”
こちらは、今回当ブログに出した3ツの中で最も伝統に則した基本形であり、
私が近年最も気に入っているムラングシャンティ。

とにかく、ムラングシャンティを構成するたった2ツの要素、メレンゲと生クリームが、それぞれに美味しいの。
メレンゲは水分を吸い易いデリケートな食材だが、
ここのは多少時間を置いても、不思議と軽くサクッとした食感が変わらず。
それでいて、ひとたび口の中に入ると、サーッと消えていってしまう。
わざわざ謳っている“低温焼き”の効果なのだろうか。メレンゲだけでも充分美味しい。
ロートンヌはマカロンも美味しいし、メレンゲ使いが巧いお店なのかも知れない。

もう一つの主役、生クリームがこれまた軽---いっ…!
味は、生クリームと言うより“ミルク”、“鮮乳”。
不〇家のショートケーキに舌が慣れてしまっている人に、この本物の生クリームを食べさせたい…。

シンプル。これぞムラングシャンティの王道。
日本全国のムラングシャンティ・ファンに、お薦めいたします。

映画『迫り来る嵐』

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【2017年/中国/120min.】
1997年、中国湖南省。
余國偉は、国営工場・中南鋼鉄廠で、保安部に所属する工員。
工場内で起きる窃盗事件では、必ず犯人を探し出す凄腕。
人付き合いも良く、同僚たちからは“神探”と誉められ、悪い気はしない。
ある日、工場の近所で、女性の遺体が発見される。
余國偉は早速、現場に潜り込み、馴染みの刑事・老張にも取り入り、自主的に捜査協力を開始。
老張の話では、こういう女性の遺体が発見されるのは、これで3回目。
殺害の手口から、同一犯の犯行が疑われるという。
余國偉は、部下の小劉を助手に、独自の捜査を進め、遂に犯人らしき男と接触するが…。



第30回東京国際映画祭で、コンペティション部門に出品され、
結果、最優秀芸術貢献賞と主演男優賞をダブル受賞した中国映画。

原題は、『暴雪將至 The Looming Storm』。
監督したのは、撮影出身で、これが初の長編監督作品となる1976年生まれの董越(ドン・ユエ)
上映終了後には、監督&キャストによるQ&Aあり。(→参照




物語は、1997年、中国湖南省にある国営工場の保安部に所属する工員・余國偉が、
近所で起きた連続女性殺人事件に、刑事気取りで首を突っ込み、取り憑かれたように、捜査にのめり込み、
知らず知らずの内に事態をこじらせ、負から負を生んでしまうヒューマン推理ミステリー

“1997年”と聞き、パッと思い浮かべるのは、香港返還である。
90年代の中国は好景気でイケイケのイメージがあるけれど、
1997年香港が返還され、良くも悪くも変化が求められるように。
物語の中で、主人公・余國偉と微妙な関係にある水商売の女性・燕子は、
いつか香港で自分の美容院をもつことを夢見て、「香港も簡単に行けるようになるかしら」と呟いたりする。

物語幕開けの頃、主人公・余國偉は、まだお気楽なもの。
工場内で起きる小さな泥棒事件などでは、必ず犯人を見付け出すから、
「余國偉は神探だ!」、「公安にもなれる!」と周囲に持ち上げられ、本人も満更ではない様子。
遂には、1997年度の模範工員に選ばれ、表彰される。
…が、これが彼のピーク。
その頃から、社会には徐々に暗雲が立ち込め、余國偉が務める鋼鉄工場では、大胆な人員削減。
模範工員である余國偉までもが、リストラされてしまう。

まさか自分がリストラ対象になるなど想像だにしていなかった余國偉は、
居抜きで美容院を購入し、太っ腹にも燕子にプレゼント。
その直後、リストラにあうも、燕子から「大丈夫よ、美容院があるじゃない」と慰めの言葉。
つまり、“髪結いの亭主”状態か…?
美容院の場所は、松柏街というちょっとした繁華街。
連続殺人犯が、ターゲットにする女性たちに目を付けたと言われる曰く付きのエリアである。
余國偉はたまたまこの場所に見付けた空き物件を買い、純粋に燕子を喜ばせたかっただけなのか、
はたまた、犯人をおびき寄せるために、敢えてこの場所を選び、
そこにオトリとして燕子を常駐させたかったのか…?
余國偉の行動は、どんどん読めなくなっていく。



作品の大きな特徴は、雨、雨、雨と、雨のシーンが非常に多いこと。
これ、恐らく、私が今まで観てきた作品の中で、最多降雨量映画。
スクリーンに漂う陰鬱な雰囲気は、まるで社会や主人公の閉塞感を表しているかのよう。

主な撮影場所は、湖南省衡陽市。
私、映画を観ながら、本当の雨なのか人工雨なのか考えていたのだけれど、
上映終了後のお話によると、現地ではすでに雨季が終わっていたため、人工的に雨を降らせたのだと。
昔の映画だと、“ホースで水を撒いています!”とモロ分かりの雨が結構有ったが、
最近は随分リアルになったものだ。





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主な出演は、国営工場の保安部に勤務する余國偉に段奕宏(ドアン・イーホン)
余國偉と交流する水商売の女性・燕子に江一燕(ジャン・イージャン)など。


段奕宏は、本作品での演技が評価され、第30回東京国際映画祭で、最優秀主演男優賞を受賞。

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おめでとうございます!受賞は大納得…!

この作品で、段奕宏は、変化していく余國偉で、色んな顔を見せてくれる。
最初の内は、同僚たちから持ち上げられ、名探偵気取りで、気を良くしている男。
決して悪人ではない。純朴な小者なのだ。
90年代、中国の田舎には、こんな工員がいたに違いないと思わせる。
粋がったり、頑張る様子は、ユーモラスでもある。
そんな余國偉が変わり始め、彼からユーモラスでお茶目な部分が消え、
遂には何かに憑かれたかのように、事件に固執。
目が据わり、変な気を発する余國偉は、まるで触れてはいけないナイフ。
時がぐぐーっと流れ、2008年になると、出所した余國偉からは、毒っ気が一切抜けている。
更生して優しさを取り戻したというより、生気が失われたようにも見える。
変わり続ける段奕宏の演技からは目が離せず、ホント、圧巻であった。


燕子に扮する江一燕は、薄幸顔が特徴的な女優さん。
この前に日本で公開された出演作は『修羅の剣士』(2016年)。
主人公・三少爺の元恋人という複雑な役を、薄幸顔を活かし、幽霊のような雰囲気を醸し、演じている。
そんな江一燕は、私にとっては、これまで特別好きでもなければ嫌いでもないという位置であったが、
この『迫り来る嵐』では、段奕宏のみならず、江一燕もかなり良いのだ。
儚げで幸薄い顔は、やはり今回もフルに活かされているし、
“香港行きを夢見る90年代の田舎町のお水”という役がシックリ。

余談になりますが、第30回東京国際映画祭で、Q&Aの登壇はキャンセルになったものの、
オープニングとクロージングには来てくれた江一燕。

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東京で、ちょっとした自由時間も楽しんだ模様。
ここは、渋谷の井の頭通りと公園通りが交差する場所ですよね…?



もう一人気になった脇の登場人物は小劉。

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小劉は、主人公・余國偉の舎弟みたいな青年。余國偉アニキに従う純朴な良い子。
映画を観ていて、私は、この小劉に見覚えがあると感じたのだが、思い出せずモヤモヤ。
イケメンじゃないし、どこにでも居そうな顔だから、私の気のせいかも知れない。
…ところが、気のせいではなかった。エンディングでクレジットされていた名前は“鄭偉”。
そう、主人公の子供時代などを演じ、多くのドラマに出ていた売れっ子子役の鄭偉(チェン・ウェイ)である。
特に多いのは大陸ドラマだが、台湾ドラマ『晴れのちボクらは恋をする~幸福最晴天』にも出ているし、
映画にだって出ている。例えば(↓)こちら。

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『捜査官X』(2011年)では、甄子丹(ドニー・イェン)と湯唯の長男を演じていた。

2000年12月生まれというから、もう直17歳になるのですねぇー、あの子が。
私は鄭偉を可愛いと思ったことが一度もなく、むしろ、こましゃくれていて嫌いで、
なんでこんな子が売れているのだか理解できなかったのだけれど、
成長した彼が、この『迫り来る嵐』で演じる純朴な小劉は、とても良いの。
同世代の子役出身俳優で、美形のまま成長した吳磊(ウー・レイ)などとは違うが、
見た目イマイチでも、培ってきた経験と実力を活かせば、神木隆之介のような俳優になら成れるのでは?



最後に、ついでの作品プチ情報。
本作『迫り来る嵐』で、題字を担当したのは…

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江蘇省出身の女性書家・許靜(シュー・ジン)。この画像では、左の女性が許靜。

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張藝謀(チャン・イーモウ)監督の『HERO~英雄』(2002年)、
陳可辛(ピーター・チャン)監督の『捜査官X~武俠』(2011年)、
王家衛(ウォン・カーウァイ)監督の『グランド・マスター~一代宗師』(2013年)などなど
大物監督御用達の書家でございます。ダイナミックな書!






映画の終盤、2008年、出所した主人公・余國偉が、取り壊しの決まった懐かしい工場へ足を運び、
そこでお掃除をしている老人から、自分が模範工員になったという過去を完全否定されたシーンでは、
何が現実で何が幻か分からなくなり、まるで狐にでもつままれたような気分に。
このシーンを観た後、1997年の表彰式のシーンを振り返ると、
機械の故障でステージ上に降ったニセの雪が意味深に感じられてくる。

そして、その表彰式のシーンでは…

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表彰される余國偉が、赤いおリボンを斜め掛けにしている姿も印象に残っている。
“大紅花球”と呼ばれるこの赤いおリボンは、結婚式で新郎が掛けているのをよく見るが、
会社主催の表彰式くらいのイベントでも使うのですね。
(↑の画像を見て、今気付いたのだけれど、
表彰される余國偉の後方に座っている工場の幹部って、董越監督なのでは…??)

ジャン=ジャック・アノー監督の『神なるオオカミ』(2015年)を観た時も…

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文革中、内蒙古に下放される馮紹峰(ウィリアム・フォン)が、
まるで新郎のように、胸元に付けた大きいな赤いお花に、目が釘付けになったのであった。
現代の都会でも、おめでたい時なら、結婚式以外でも、こういうお花を付ける人はまだ結構居るのだろうか。
日本には無い感じで、とても中国っぽい。


『迫り来る嵐』で、もう一つ気になったのは、居抜きで買った美容院の室内のシーン。
髪型の参考に沢山貼られたアイドルの写真の中に、酒井法子が。
のりピーばかりにどうしても目が行ってしまい、
美容院のシーンでは、ちょっとばかり集中力を欠いてしまった…。


連続殺人犯を探す推理ミステリーなのかと思いきや、
陰り始めた社会の底辺で変わっていく労働者の男を描いた人間ドラマ。
…ところが、終盤では、やはり殺人事件のタネ明かしをちゃんとしてくれており、
推理ミステリーとしても、きちんと成立。
文芸作品のようでいて、適度にエンターテインメント性もあるし、
物語が単純に面白く、俳優たちの演技も素晴らしくて、
スクリーンに釘付けになったまま、あれよあれよと言う間の2時間であった。

似た映画として、韓国映画『殺人の追憶』を挙げる人が結構いるようですね~。
雨の日に連続殺人事件が起きるとか、
ソン・ガンホが初盤にユーモラスな演技を見せるように、段奕宏も初盤はユーモラスだったり、
確かに通じる部分はあるかも知れない。
あと、映画がもつ雰囲気は『薄氷の殺人』(2014年)にも近いものがある。
なので、そういう作品が好きな人は、この『迫り来る嵐』も気に入るかも…?
今回の東京国際映画祭でも好評だったし、これは是非日本で一般劇場公開して欲しい。

もし、そうなった際は、日本語字幕のやり直しを希望。
中国語の人名だと、最初の一度だけ“漢字+片仮名ルビ”で出し、あとは片仮名で統一という
無意味で古臭い日本語字幕を、映画業界は一体何十年続ける気か…?!
ドラマの方では、字幕は年々改良され、進化し続けているというのに…。
今回、映画祭での上映では、日本語と一緒に英語と中国語の字幕も付いていたので、分かり易かったけれど、
日本語字幕だけなら、あれではNG。
日本人の名前なら、解読不可能なキラキラネームでも漢字で表記するクセに、
漢字の国・中国の人だと無理矢理な片仮名で表記し(←でも、歴史上の人物と政治家なら漢字という矛盾)、
“チャン”だの“チェン”だのと、わざわざ分かりにくくする悪習は、いい加減絶つべし。



第30回東京国際映画祭で上映終了に行われた董越監督+段奕宏によるQ&Aについては、こちらから。

『迫り来る嵐が』ダブル受賞に輝いた第30回東京国際映画祭閉幕式については、こちらから。

映画『Have a Nice Day』

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【2017年/中国/74min.】
中国南部のとある街。
小張は、運転していた車を止め、
同乗の趙を脅し、彼が抱えていた百万元もの大金が入ったバッグを掴み取り、
ネットカフェに逃げ込むと、早速パソコンの前に座り、恋人の古宛てにメッセージを送る。
「大金が手に入った。駅前の鉄道商務賓館301号室で落ち合おう。」

そこにやって来たのは江湖の黃眼。
最新のハイテク眼鏡で、小張が抱えるバッグの中に大金を透視。
「若造がこんな大金を持っているなんて、ワケ有りに違いない…」と直感し、
小張を殴り、バッグを持って、逃走。

その頃、ヤクザ者の劉叔は、趙に運ばせた自分の百万元が盗まれたことを知り、
馴染みの殺し屋・瘦皮に、犯人を追うよう依頼するが…。



第30回東京国際映画祭で、ワールド・フォーカス部門に出品された
劉健(リウ・ジエン)監督によるアニメーション作品。

これ、2017年2月、第67回ベルリン国際映画祭で、
中国アニメとして初めてコンペティション部門に出品された時から、とぉーーーっても気になっていた作品。
ベルリンと限らず、カンヌ、ヴェネツィアでも、
これまで中国の長編アニメがコンペティション部門に入ることは無かったので、
本作品は“世界三大映画祭に食い込んだ初の中国アニメーション”ということになる。

さらに、2017年11月25日(土曜)発表の第54回金馬獎でも、
最佳動畫長片(最優秀長編アニメーション作品)は勿論のこと、
最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)と
最佳原創電影歌曲(最優秀オリジナル映画歌曲賞)にまでノミネート。


しかし、そんな話題作であっても、実写映画ならともかく、アニメとなると、
日本の映画祭でかかる可能性は極めて低い…。
そのように、まったく期待していなかっただけに、
東京国際映画祭での上映を知った時は、意外で驚いたと同時に、
この機会に絶対に観たい!という欲がふつふつ。


原題は『好極了 Have a Nice Day』。
…だったのだが、その後、中国国内の審査を受け、“微調整”を行い、タイトルも『大世界』に改名され、
2018年の春節に中国で公開予定。
今回、東京で上映されたのも、微調整された後の物と推測。
(実は、2017年6月、本作品は、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭にも出品予定だったのだが、
中国当局からの“海外上映の許可が取得されていない”という唐突な指摘で、
映画祭主催者は止むを得ず、開催直前に急遽上映を取り下げている。)




まずは簡単に監督の劉健について触れておく。

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劉健監督は、1969年生まれ、江蘇省の出身。
南京藝術學院では中国画を専攻し、1993年卒業。
絵画を中心とした芸術活動から、アニメを手掛けるようになり、
2007年、南京に、アニメーションスタジオ・樂無邊 le-joy animationを設立。
2009年、長編アニメーション映画一作目『刺痛我~Piercing I』を発表し、
世界各地の映画祭で上映され、高評価を獲得。
『Have a Nice Day』は、劉健監督が3年がかりで完成させた2作目の長編アニメ。

劉健監督は、元々絵を描いていたわけだけれど、
押井守の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、次いで今敏の『東京ゴッドファーザーズ』を観たのが、
アニメを手掛けるキッカケになったとインタヴュで語っている。
(今敏自身は、2010年、46歳の若さで亡くなっているが、
今敏作品のプロデューサーや御夫人とは、今でも交流があるらしい。)



では本題。
『Have a Nice Day』は如何なる映画か。
まず、映画を観る前から、物語を知らなくても、惹き付けられるのが、本作品の画風。
やはり絵のスタイルやキャラクターのデザインは、
そのアニメの良し悪しや、観る側の好き嫌いを左右する重要な要素である。
日本をアニメ大国と呼び、誇りに思っている日本の皆さまには、誠に申し訳ないが、
非国民と言われようと、私はいわゆる日本のアニメの画風が大嫌い。
勿論日本にも良いと思う画風のアニメはある。
私が苦手なのは、一見して日本のアニメと判る、典型的な日本的画風の商業アニメ。
念の為、申し上げておきますが、それらを否定しているわけではありません。
これは、幼い頃から一貫している私個人の好みの問題だから仕方が無い。
私が好きなのは、基本的にアート系アニメーション(中国モノだったら、レトロな上海アニメも好き)。

そんな私にドンピシャなのが、この『Have a Nice Day』!
夜のお話ということもあるけれど、全体的に色調はダーク。
世間では、緻密に絵を描き込んだり、微妙な色合いを出すことが良しとされる傾向もあるが、
本作品はシンプルで、アウトラインの内側を一色でベタ塗り。
登場キャラの肌が、グレーやモスグリーンだったりすることもあるのだけれど(笑)、
そうして塗られた色と色の組み合わせに、センスが光る。


さらに、背景や小道具に、リアルな中国が描かれているのも良し。

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描かれているのは、中国にはこういう場所、あるある!と頷いてしまう日常の中国なのだが、
このアニメの中ではそのリアルさが不思議とシュール。




画風が良くても、お話がおざなりだったら、アニメもただの“動く絵”で、映画としては退屈ですよね…?
ご心配なく。
前述のように、これ、アニメ作品でありながら、
金馬獎で最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)にもノミネートされているのだ。

で、その肝心な物語は、運転手の小張が、ヤクザ者・劉叔の100万元を盗んだのを機に、
欲に目がくらんだ多くの人々が、この金を巡り強奪戰を繰り広げる一夜を描く
犯罪群像劇(ブラック・コメディ仕立て)。


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そもそも普通の青年・小張が、大胆にもお金を盗んだ動機は、
整形に失敗したガールフレンド・古に、韓国で再手術を受けさせてあげたい一心から(笑)。
小張が早速古に電話して、「大金が手に入ったよ。これで韓国で再手術できるよ」と言っているのに、
当の古が「でも、韓国も必ずしも安全じゃないって、うちの親が言っているし…」などと躊躇している間に、
江湖の盗賊・黃眼が、ハイテクVR眼鏡で金の存在を感知し、小張から奪い取ったのも束の間、
ワケあって黃眼が倒れ、今度は黃眼の連れ合い・二姐がその金を持って逃走。
一方、古の母親と友人関係の洝洝も、大金の存在を知り、参戦しようとするし、
盗まれた劉叔だって、黙っているわけがなく、瘦皮という殺し屋を送り込み、金を取り返そうとする。

お金、お宝、薬などを巡り、多くの人々が競い合う犯罪群像活劇は、
例えば、ガイ・リッチー監督の『ロック、ストック&トゥ・スモーキング・バレルズ』(1998年)とか、
これまで世界中で沢山作られており、実はそう珍しいものではない。
でもね、それを現代中国に置き換え、市井の人々にやらせちゃうと、めっちゃくちゃ面白いの!
14億近い人口を抱える巨大国家・中国では、実際、ナチュラルに不思議な人をしばしば目にするので、
この作品の中の登場人物たちにも、やけにリアリティを感じ、ちょっとした言動にも、幾度となく吹き出した。


物語の舞台は、敢えて特定せず、“中国南部の小都市”となっているが、
劉健監督が暮らす南京を意識していると考えて、ほぼ間違いなし。
作中、何度か出て来る“橋北新村”という地区も、南京に実際に存在。

登場人物たちの喋りにも、ちらほら南京訛り(…らしい)。
もっとも、私は、どういうのが南京訛りなのか知らないのだけれど、恐らく、南部訛りの一種なのであろう。
上海人や台湾人にも近い感じで、
特に、ヤクザ者の親分・劉叔は、ソリ舌音が無く、シーシースースー言っている。

こういう吹き替えは、プロの俳優ではなく、劉健監督の南京アート界のお仲間が担当。
どの役かは不明だが、劉健監督自身も、吹き替えをしている。
いえ、吹き替えどころか、劉建監督曰く、本作品は「95%自分だけで作った映画」。
原画を描くのは当たり前で、脚本も編集も何から何まで劉健監督が自分自身で行っている。
だからこそ、監督自身の個性が強烈に反映されたアート作品になっている。
多くの人の意見を取り入れたり、分担作業で作られると、
個人の感性をここまで押し出した芸術にはなりにくい。





文句ナシの面白さ…!
お話がポンポンとスピーディーに展開し、しかも全てが潔く1時間15分ほどに納まっているから、
退屈する余裕なんて無いの。
実写版で撮っても充分面白いプロットだと思うが、
絵のセンスが抜群だし、アニメーション作品だからこその魅力も感じる。
劉健監督って、天才なんじゃなぁーい…?!
私と同じように、日本的な商業アニメは苦手で、アート系しか受け付けない!という人には、もう絶対にお薦め。
また、そもそも、商業作品だろうがアート作品だろうが、アニメ自体に興味が無い人でも、これは楽しめるはず。
前述のように、物語自体がとてもよく練られていているし、
そこにブラックな笑いが散りばめられていて、ホント、面白い。

ちなみに、劉健監督は、アニメの世界に入るキッカケになった押井守や今敏を除き、
好きな映画監督に(インタヴュによって、答えはマチマチなのだけれど…)、
ジョエル&イーサン・コーエン兄弟、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、
あと日本人だと三池崇史や北野武などを挙げている。
これらの名前からも、劉健が好むテイストは、なんとなく想像が付くかも知れない。
ま、だからと言って、これらの監督の焼き直しなんかには全然なっていなくて、
ちゃんと劉健監督オリジナルのスタイルが確立されていて、本当に素晴らしいのです。
mango、久々にアニメを絶賛。


最後に、参考までに、予告編を貼っておく。


この予告編で、車のラジオから流れているのって、
米大統領選でドナルド・トランプが勝利した時のスピーチよねぇ?
「I congratulated her on a very, very hard-fought campaign.
(私は、彼女に、この厳しい選挙戦を闘ったことを称賛しました)」と、
“Her=ヒラリー・クリントン”にお情けをかけ、勝ち誇った部分でしょ?
東京で上映された物にもコレありましたっけ?観た方、覚えていらっしゃいます?
もしかして、“微調整”されたのって、ここかしら…。映画を冷静にもう一度観て、確認したい。
(中越戦争に触れている映画『芳華』は、2017年国慶節の上映予定が、いきなり無期延期にされたが、
その理由は、習近平が出席するAPECの主催国・ベトナムと、
訪中するトランプへの配慮ではないか…という噂が流れた。)



私、『Have a Nice Day』一本で、劉健監督のファンになってしまいました!

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こうなったら、もう、長編監督作品第1弾の『刺痛我~Piercing I』も観たーいっ…!
…と思ったら、なんと、2011年、『ピアシング I』の邦題で、中国インディペンデント映画祭で上映され、
劉健監督も来日し、Q&Aを行っていたという事実を、今更知る…。
6年前、私は、なぜそこに行かなかったのだろう?!私の馬鹿ぁぁぁーーーっ!あぁ、ショック…。
頼むから、どこかで、もう一度、『Have a Nice Day』と『ピアシング I』を2本立てで上映して欲しい。
中国アニメでは、2015年大ヒットを記録した『西遊記之大聖歸來~Monkey King: Hero Is Back』が、
『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』の邦題で、2018年1月公開が決まったけれど、
アート系にも目を向けて欲しい。
アニメに限らず、中国の映画は、近年ヴァリエーションに富むが、日本に入って来る物は偏り過ぎている…。

映画『星空』

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【2011年/台湾・中国/99min.】
欣美は、都会で両親と3人で暮らす13歳。
仕事が忙しい母親は家を空けることが多く、家に居ても、父親と顔を合わすと、口論ばかり。
広く素敵な家も、中の空気はギスギスし、空しいばかり。
よく思い出すのは、夜空に星がいっぱいに輝く田舎に暮らす優しいおじいちゃん。
しかし、そのおじいちゃんも体を壊し、静かにこの世から去り、
両親もまた遂に離婚することを欣美に告げる。
一人、部屋の窓から外を眺めていた欣美は、見知らぬ男の子が、近所の家に出入りするのを目にする。

ある朝、学校で、欣美の7年3組に、転校生がやって来る。
“宇傑”という名のこの転校生は、そう、欣美があの日窓から見掛けた男の子。
いつもスケッチブックを持ち歩き、誰とツルむこともなく、一人で行動する神秘的な宇傑が
ついつい気になり、声も掛けられずに、遠くから見ているだけの欣美。
ところが、クラスの悪ガキ陳威翔は、そんな宇傑を放っておかず…。



林書宇(トム・リン)監督、『9月に降る風』(2008年)に続く長編第2弾が、ようやく日本公開。
原作は、台湾の人気絵本作家幾米(ジミー・リャオ)の同名絵本。

もう6年も前の作品である。
林書宇監督作品は、これより後の第3弾『百日告別』(2015年)でさえ、
2017年2月に日本で公開されている。
『百日告別』より、『星空』の方が、広く一般にウケそうな内容だと想像するし、
原作者の幾米は日本にも多くのファンをもつので、
まさかここまで日本公開が難航するとは思っていなかった。
(まぁ、待たされたものの、結局は公開され、観ることができたから、良いのだけれど。)

原作絵本の<星空>は、幾米、2009年の作品。
2017年1月には日本版も発売され、
それを記念し、幾米が来日し、トークショウ&サイン会を実施。(→参照
この時はまだ映画の日本公開は決まっていなかった。
…いや、もしかしたら決まっていたのかも知れないけれど、公表はされていなかった。
とにかく、その幾米来日の際、私もサインをもらうために<星空>を購入。
(但し、日本版ではなく、台湾オリジナル版の方。)
この度、改めて絵本を読み直し、映画鑑賞に臨んだ。




物語は、裕福だが両親が不仲な上、大好きだった祖父まで亡くした少女・欣美が、
無口で影のある転校生・宇傑と出逢い、孤独な者同士少しずつ心を通わせ、友達になり、
星空を見るため一緒に旅にも出るが、やがて離れ離れになるまでの思春期の一時を幻想的に描く、
オトナ未満・子供以上の揺れるガール・ミーツ・ボーイ映画


映画は、基本的には、原作の流れに則して展開。
しかし、原作絵本は、絵をじっくり鑑賞せず、文字を追うだけなら、10分もあれば読み切ってしまうお話である。
それを一時間半の映画にするのだから、
想像で膨らませた部分や、設定を変えた部分は、沢山有っても当然。

原作と最も異なる部分は、主人公二人の家庭環境かも。

女の子・謝欣美の場合
原作では、そもそも登場人物たちに名前が無い。
主人公の女の子は、都会に暮らすごく平凡な家庭の娘。
映画では、“小美”と呼ばれる謝欣美は、裕福な家庭の娘だが、
母は出張で家を空けることも多く、両親は会うと口喧嘩が絶えず、遂には離婚。

男の子・周宇傑の場合
原作に登場する男の子は、父親が船乗りのため、引っ越しが多く、転校ばかりで、友達もいない。
主人公の女の子とは通じ合うものがあり、仲良くなるが、結局またいつものように、その地を去っていく。
映画で、“小傑”と呼ばれる周宇傑は、
9歳の時、工場勤めだった父が事故で指を切り落とし、人格がすっかり変わり、荒れてしまったので、
母子は、その父から逃げるように各地を転々。
小傑には、ようやく小美という友達ができるも、居場所を父に嗅ぎ付けられ、この地も去る羽目となる。


“金は有っても愛は無い”と、“貧乏でDV”という、分かり易いまでの貧富両家庭である。
私は特に、金持ちには絶対に愛人がいるとか、いくら買い物をしても愛情に飢え心が空洞といった、
お金持ちをとかく不幸にしたがるステレオタイプの金持ち家庭像が大、大、大っ嫌い!なのだけれど、
これはそもそも原作が絵本だし、
主人公の少年少女の孤独を、1時間半の映画で明確に表現するには、分かり易い設定もアリだと思った。



では、原作絵本の中でモチーフになっている名画は、映画では如何に。

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原作絵本<星空>には、まさに星空を描いたゴッホの有名な<星月夜>、
また、ルネ・マグリットの<人の子>も、ちょっとしたモチーフとして登場。

映画にも、やはりゴッホの<星月夜>は登場。
さらに、モネの<日傘を差す女>、ミレーの<落穂拾い>等々、原作絵本以上の数の名画が出てくる。
それらは、複製画とかポスターとか、ましてやホンモノが出てくるのではなく、ジグソーパズルという形で登場。
ジグソーパズルは、当初、主人公の欣美が両親と一緒に作り上げていく
家族の幸せの象徴として映画の中で扱われているのかと思った。
でも最後まで観ると、それだけではなく、これがなかなか上手い使われ方をしているのです。



原作絵本には無く、映画オリジナルのシーンで印象に残るのは、ダンスのシーン。

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おフランスに傾倒する欣美の母親が、その昔、映画を観ながら覚えたというダンス。
レストランでお食事中、母親が娘におもむろに「踊ろう」と言って、母娘で店内で踊りだすの。
私が娘だったら、「やだ、ママ、恥ずかしい!やめてっ!」と阻止するだろうが、
母親に従い、一緒に踊ってあげる欣美は良い子だ。
欣美は宇傑と星空を見る旅に出た際も、雨宿りした教会で、このダンスを彼に伝授。
↑上の静止画像だと、まるで「掘ってぇ、掘ってぇ、また掘って」と盆踊りを踊っているようだが、
実際に映画で、母娘が店内で踊っているところは、もっと軽やかな動きで、
そのシーンを観ながら、私は「うわぁ、アンナ・カリーナみたい」と思ったのであった。

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…そうしたら、ビンゴ。
本当に、ジャン=リュック・ゴダール監督1964年の作品、
『はなればなれに』にインスパイアされたダンスシーンであった。
(『はなればなれに』の中国語タイトルは『不法之徒』というのですね。)





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主人公の少年少女を演じるのは、裕福な家庭の一人娘“小美”こと謝欣美に徐嬌(シュー・チャオ)
転校生の“小傑”こと周宇傑に林暉閔(リン・フイミン)


周星馳(チャウ・シンチー)監督主演作『ミラクル7号』(2008年)に大抜擢され、
一気に注目を集めた小さな“星女郎(シンチー・ガール)”徐嬌。

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『ミラクル7号』で演じたのは、なんと男の子…!
それから3年後のこの『星空』では、もうすっかり女の子らしい女の子に。
欣美を演じるにあたっては、台湾の発音に慣れるため、台北の公立中学校に体験入学したそう。

但し、この映画、撮影場所が台湾であることを完全に隠さないまでも、敢えて強調もしていないのが、特徴的。
一番台湾らしさが表れている場所は、校舎。
あとは、あまり台湾を感じる場所は出てこないし、
例えば、家などは、ヨーロッパとか絵本の世界を感じるインテリア。
絵本が原作の幻想的な物語なので、生活臭を出したくなかったのかも知れない。
終盤、宇傑が突如いなくなり、しばらくすると、ひと皮剥け、少し成長した欣美の内面を表すかのように、
周囲に現実的な街が映し出されるようになる。

そんな徐嬌も、1997年生まれで、もうハタチですよ。シミジミ…。
彼女に“子役出身者の悲劇”は当て嵌まらず、
その後も活躍しているし、コスプレも有名で、今でも目にする機会は多い。
驚いたのは…

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『星空』日本公開直後の10月30日(月曜)、新宿K's cinema、13時10分の回、
徐嬌は、ちゃんと満額払って、お忍びで自身の主演作を鑑賞しているのだ…!
その回で映画を観た人たち、スクリーンの中の主演女優と、
あの小さな映画館で一緒に映画鑑賞できたなんて、ラッキーですねー。
自分のすぐ近くに“小美”徐嬌が居るって、気付きました…?!


宇傑役の林暉閔の方は、オーディションで選ばれた地元台湾出身の男の子。
私は、後にも先にも、林暉閔出演作は、この『星空』でしか見ていないのだけれど、
微妙なお年頃の悶々とした感じがよく出ている。
顔は、角度によって、陳乃榮(ナイロン・チェン)を幼くしたようにも見えるし、
大きな鼻が特徴的で、このまま成長したら、吳奇隆(ニッキー・ウー)に似てくるかも…と想像。
林暉閔は、『星空』の演技が認められ、
2012年、第49回金馬獎では、最佳新演員(最優秀新人賞)にノミネートされたのだけれど、
学業優先で芸能活動は控えめ。
彼も、徐嬌と同じ1997年生まれだから、もうハタチで、
2016年には、臺北藝術大學の電影創作學系に入学した大学生。
表に出るだけではなく、裏方さんのお仕事にも興味があるのでしょうか。

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特に左の画像は、超近影。サイドの刈り込みが台湾っぽいですね。



脇を固める大人たちもチェック。

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謝欣美の母親に劉若英(レネ・リウ)、謝欣美の父親に庾澄慶(ハーレム・ユー)
田舎に暮らす謝欣美の祖父に曾江(ケネス・ツァン)、周宇傑の母親に蔡淑臻(ジャネル・ツァイ)
謝欣美&周宇傑の学校の先生に石錦航(シー・チンハン)

劉若英扮する欣美ママは、おフランスに傾倒し過ぎのきらいがあって、若干ウザい(笑)。

欣美パパは、気が強い女房に押し切られている印象だが、
扮する庾澄慶自身が、伊能靜との夫婦時代、
不思議ちゃんな妻に振り回されていた優しい夫のイメージがあるので、なんか役にしっくり。

香港の曾江は、80を過ぎた今でも精力的に俳優活動を続けているため、見る機会も多いが、
台湾の作品となると、もしかして、私生活でのリアル女房と夫婦役で出演したドラマ、
『流星花園Ⅱ』以来かも…。

蔡淑臻は、モデル出身の華やかなイメージが強いので、今回の母親役にはちょっとだけ意外性あり。
…いや、演じているのが蔡淑臻かどうかという以前に、
宇傑の母親が、生活に疲れ、スレてしまった女性という事が意外であった。
前述のように、原作絵本では、男の子の父親はDV夫などではなく、船乗り。
父親が不在がちではあっても、家庭が荒廃した様子は無いので、
その妻ももっと穏やかで素朴な女性を私は想像していたわけです。

五月天Maydayの“石頭(ストーン)”こと石錦航は、
予想していたよりずっと出番が少なく、“特別出演”という程度。
でも、きっとこれがキッカケになって、林書宇監督の次の作品『百日告別』では
主人公に抜擢されたのでしょうね。



そう、“特別出演”と言えば、(↓)こちら。

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成長した謝欣美の役で桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が出演。
となると、成長した周宇傑の方も、誰が演じているのか気になってしまうが、そちらは出てこない。
出さなくて、正解だったと思う、私は。


あともう一人、カメオ出演の人がいる。
旅に出た欣美と宇傑が、荷台に乗せてもらう西瓜を運ぶトラックの運転手の顔を見たら、
なんと陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督であった。
陳玉勳監督は、手掛けた監督作品の数より、他人様の作品へのカメオ出演の方が多い気がする(笑)。






林書宇監督作品なら、胸がヒリヒリするような作品が観たい!子供が主人公のファンタジーなんてどうヨ?!
…という懸念を抱く映画ファンは少なからず居る気がする。
恐らく、私自身、無意識下でそういう懸念を抱いていたのであろう。
とても観たいと思う反面、観るのが怖くもあり、期待し過ぎないよう自制していたせいか、とても楽しめた。
誰が監督しようと、現実離れしたファンタジーには、元々さほど興味が無いのだけれど、
『星空』の場合、おフランスかぶれの母親が、いきなりレストランで踊りだす素っ頓狂なシーンなど、
しばしば困惑させられながらも、嫌いにもなれず、結果、観終えてから、ホッコリした気分に。
懸念していたほどメルヘンちっくではなかったのも、私には良かったのかも知れない。
主演の十代二人の瑞々しい存在感も良し。

原作が絵本で、主人公が子供にもかかわらず、
登場人物たちの名前をちゃんと漢字で表記している日本語字幕も、高く評価。
他の配給会社も見習って欲しい。

字幕は合格なのだけれど、K's cinemaのロビーに貼ってあったオリコンの記事で…

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この『星空』を監督したのが周星馳(チャウ・シンチー)と記されていた(苦笑)。
この記事を読み、周星馳監督作品と信じて『星空』を観に行っちゃった人なんて、まさか居ませんよね?!



幾米作品の映画化は、これで4本全部観たことになる。

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具体的には、杜峯(ジョニー・トー)&韋家輝(ワイ・カーファイ)監督の『ターンレフト・ターンライト』(2003年)、
馬偉豪(ジョー・マ)監督『サウンド・オブ・カラー 地下鉄の恋』(2003年)、
黎妙雪(キャロル・ライ)監督作品『恋の風景』(2003年)、そして、この林書宇監督の『星空』(2011年)。

この中で一番のお気に入りは、一番くだらない『地下鉄の恋』かも…。
『星空』は、子供を主人公にしている唯一作品ということもあり、より“絵本が原作”と感じられるし、清らか。
これはこれで好き。


林書宇監督は、次回作にどんなものを撮るのでしょう。
最近は、夏于喬(キミ・シア)との交際報道ばかりしか目にしないが、新作の報告もお待ちしております。



2017年3月、新宿紀伊國屋書店で行われた
幾米(ジミー・リャオ)による原作絵本<星空>出版記念トークイベント&サイン会につぃては、こちらから。

大陸ドラマ『王女未央-BIOU-~錦繡未央』

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南北朝時代の北涼。
3日続いた吹雪がぴたりと止み、黄金の光が差した瞬間、皇宮で、小さな公主・馮心兒が産声を上げる。
公主の誕生を見届けた一人の僧侶がこう予言する、
「公主は鳳凰の目をもつ。これが吉か凶かは分からない。
鳳凰は炎に焼かれ、生まれ変わる。公主も死線を越え、天高く飛翔なさるやも…」と。

公主誕生の喜びも束の間、北魏の使者がやって来て、
北涼皇帝に降伏状を携え、平城へ向かうよう命を下す。
抵抗することなく、その命に応じる北涼皇帝。
北魏への帰順は、民を戦禍に巻き込まないための苦渋の選択であった。

北涼の国が涼州に、北涼皇帝が河西王と名を改め、長い年月が流れたある日、
平城で軟禁されていたその河西王が、母の生まれ日を祝うため、ようやく帰郷を許される。
赤子だった公主・馮心兒は、今や活発な少女に成長。
久し振りに再会を果たした父王と共に、祖母の誕生日を祝おうと、準備した天灯を夜空に放つが、
有ろう事か、何者かが、その天灯を打ち落とし、中から毒が散布され、周囲は混乱。

それは、北魏の将軍・叱雲南と、彼の従兄である李尚書の息子・李敏峰が仕掛けた罠であった。
涼州で鉄鉱山を発見した叱雲南が、それを皇帝に上奏せず、独り占めにするため、
河西王を逆賊に仕立て上げようと画策したのだ。
父・河西王が殺されるのを、物陰からじっと見ているしかない馮心兒…。
叱雲南と李敏峰の執拗な追跡は止まず、祖母も殺害。
「あなたは北涼の唯一の子孫。なんとしてでも生き延びるのです!」という祖母の最後の言葉を胸に、
馮心兒は必死の逃走を続けるが、高い崖から転落。

気を失った馮心兒を救ったのは、心優しい李未央。
白水村の粗末な小屋で暮らす李未央は、
実は自分が北魏の尚書・李蕭然の娘であることを馮心兒に告白。
母親が、尚書府の大夫人・叱雲柔の足湯を担当する下女であったため、
叱雲柔から邪魔者にされ、屋敷を追われ、
母に会うことも許されぬまま、こんな寒村で育ったのであった…。



2017年9月初旬、チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ『王女未央-BIOU-~錦繡未央』が、
それから約2ヶ月後の11月中旬、全54話の放送を終了。

何かと話題を振りまいたドラマだったので(←ネガティヴな意味で)、
まったく期待せずに観始めたのが良かったのか、意外にも楽しめ、あっという間のゴールイン。

★ 概要

手掛けたのは、李慧珠(リー・フイジュ)監督。
大陸のお騒がせプロデューサー于正(ユー・ジョン)制作のドラマを数多く手掛け、
ヒットさせてきた香港出身の女性監督。
(本作品は、于正制作のドラマではない。)

原作は、于正のもと、脚本の執筆に携わってきた脚本家であり作家の女性、秦簡(チンジエン)
2012年にネット上で発表した同名小説<錦繡未央(別名:庶女有毒)>。

前述のように、“ネガティヴな意味で話題を振りまいた”のが、この原作小説。
2016年、なんと、約200もの小説からの盗用を指摘され、内11人の作家が連名で訴えを起こし、
また、つい最近の2017年春にも、<四大名捕>の溫瑞安(ウェン・ルイアン)など
著名人も含む12人の作家から、18の作品の著作権侵害を訴えられている。

200って…。
(あくまでも、もしそのパクリ疑惑がが本当だとしたらだが…)
バラバラだった200もの盗用を、部品のように組み込み、新たな一つの作品に創り上げられていたら、
我々一般人には、もはやそれがオリジナルで、どこがどうパクられているのか、判別不可能。



ポジティヴな話題もあり、過去にも3度共演し、以前から交際が噂されていた主演の男女、
唐嫣(ティファニー・タン)と羅晉(ルオ・ジン)が、このドラマで遂に恋人関係を公表。
番宣と疑う人も少なからず居たようだが、その後もお付き合いは順調に続いている模様。

★ 物語

北魏の将軍・叱雲南らの策略に嵌り、一族を皆殺しにされ、一人生き延びた北涼の公主・馮心兒が、
心に復讐を誓い、北魏の尚書・李蕭然の次女・李未央に成りすまし、尚書府で暮らし始め、
宿敵であるはずの北魏太武帝の孫・拓跋濬と不覚にも道ならぬ恋に落ち、
様々な困難を乗り越え、北魏の太后に君臨するまでを描く歴史恋愛ドラマ


ドラマには幾つかの柱が有り、
まず、一番大きな支柱となっているのは、実際に北魏で起きた皇位を巡る権力闘争
そこに、さらに、亡国の公主・馮心兒が李未央として敵国に乗り込み、一族の仇を討とうとする復讐劇
北魏の皇族・拓跋濬が、父・景穆太子を冤罪で死に追い遣った何者かを敵討ちする、もう一つの復讐劇
元々は対立関係にあったはずの李未央と拓跋濬の障害多き恋物語
そして、その李未央が様々な困難を乗り越え、遂には北魏の太后に登り詰めるまでの成長記
…といった要素で肉付けされている。

馮心兒は、もうずっと李未央に成りすましたまま生涯を終えるのか、
はたまた、どこかでバレるのか…、と前半はハラハラ。
結局のところ、比較的早い段階でバレてしまうのだけれど、それでも物語は上手い具合に先に進んで行く。

拓跋濬との恋に関しては、
李未央は当初、「彼は敵。愛してはいけない人」と自分に言い聞かせ、拓跋濬を遠ざけ続けるのだが、
それでも結局、自分の心を欺けず、二人は互いの強い想いを確認し、相思相愛に。
でも、それを許さないのが李未央の義姉・李長樂。
李長樂は、昔から一途に想い続けてきた拓跋濬を、李未央なんかに取られてたまるかと、
李未央排除にあの手この手。
さらに面倒なのが、北魏太武帝の息子で、拓跋濬の叔父にあたる拓跋余までもが、
李未央に惹かれてしまったこと。
密かに拓跋余に片想いする李未央の義妹・李常茹が、嫉妬に狂い、
優しい羊の皮を被ったまま、李未央を貶める策略に走りだす。
李未央の弟分・李敏も、実は李未央に姉以上の感情を抱いているし、
結局のとこと、モテる女は、もう大変っ!モテない女たちの逆恨みは怖いわぁ~!
…と、李未央のモテッぷりをこれでもかというほど見せ付けてくれる物語(…という気がしてきた)。

★ 背景

お気楽な恋愛ドラマのようであっても、物語の背景には、ちゃんと史実あり。
このドラマが取り上げているのは、
鮮卑系の拓跋氏が建てた南北朝時代の北魏(386-534)で起きた、血で血を洗う皇位継承者争い。
具体的には、第3代皇帝・太武帝拓跋(408-452)が天下を治めていた頃。
(太武帝の在位期間は、423年から453年)。
日本だと、その頃は、まだ古墳時代…(苦笑)。

史実
太武帝は、周辺国を滅ぼし、華北を統一させた皇帝。
長男である拓跋晃(428-451)を寵愛し、自分の後を継ぐ太子とするも、
拓跋晃と対立が深まっていた宦官・宗愛(?-452)の讒言の結果、拓跋晃は死亡。
拓跋晃の死を悼む太武帝からの断罪を恐れた宗愛は、452年、太武帝を殺害。
次期皇位に、太武帝の第3子・東平王拓跋翰(?-452)を押す声が多い中、
東平王拓跋翰と不仲だった宗愛が彼を殺し、
代わりに、以前から協力関係にあった太武帝の末の息子・南安王拓跋余(?-452)を皇帝に擁立するが、
南安王が宗愛に疑念を抱きだすと、身の危険を感じた宗愛は南安王も殺害。
(南安王の在位期間はたったの232日で、正統な皇帝とは認められず。)
この事件で、尚書の陸麗、羽林郎中の劉尼、殿中尚書の源賀らが立ち上がり、宗愛を殺し、
正統な北魏第4代皇帝・文成帝に擁立したのが、亡き太子・拓跋晃の長男、高陽王拓跋濬(440-465)。
…なんだけれどぉ、この文成帝は短命で、即位からほんの十数年後の465年、20代半ばで急逝。

ドラマ
北魏の後継者争いのキーパーソンとなる宦官・宗愛は、本ドラマの中にも、太武帝お付きの宦官として登場。
最終的に太武帝に手を下すのは、確かにこの宗愛だが、物語を掻き回す程の存在感はない。
本ドラマで、皇位継承順位一位であった景穆太子・拓跋晃の謎の死をはじめ、
皇族の後継者争いに絡む事件の黒幕は、南安王拓跋余。
また、その拓跋余に弱みを握られ、彼の手先となって暗躍するナンバー2の悪役は、叱雲南。
叱雲南は、大きな権力を掌握する叱雲家の息子で、北魏の大将軍という設定の、架空の人物である。




では、北魏第4代大皇帝・文成帝(高陽王拓跋濬)には、
亡国の公主・馮心兒から尚書の娘・李未央と身分を替えた皇后が本当にいたのか?
こちらの答えは、うーン、ビミョー…?
文成帝の皇后は、一般的に“文成文明皇后”と呼ばれる馮氏(441-490)。

史実
馮氏の父親は、北燕第3代天王・昭成帝馮弘(?-438)の次男・馮朗。
継母の迫害を恐れ、遼西に逃亡し、北燕が北魏に滅ぼされると、北魏に帰順。
様々な官職に就き、西郡公に封じられるも、事件に連座し、処刑。
父を亡くした娘の馮氏は、北魏第3代皇帝・太武帝の左昭儀だった叔母を頼り、後宮に入り、
14歳で、太武帝の孫・高陽王拓跋濬の貴人に選ばれ、
後に、高陽王拓跋濬が4代皇帝・文成帝になると、彼女も皇后となるが、文成帝は若くして逝去。
文成帝の李貴人が産んだ嫡男・拓跋弘(454-476)が、次いで第5代皇帝・獻文帝に即位すると、
皇太后として彼をを補佐するが、対立が生じ、獻文帝を皇帝の座から下ろし、
獻文帝の息子・元宏(467-499)を第6代皇帝・孝文帝に立て、太皇太后に。
ところが、皇位から引きずり降ろされた獻文帝も黙っておらず、太皇太后の寵臣・李奕を殺害。
これに怒って、獻文帝を毒殺し、北魏の政権を完全掌握…!
晩年には、色々老害も振りまいたようだが、
政治手腕は相当なもので、北魏の実質女帝であったと言い伝えられている。

ドラマ
つまり、歴史では、文成帝の皇后が、
北魏の尚書の娘に成りすまして復讐にやって来た女の子などという史実は無い。
元々は“馮”姓で、北魏に滅ぼされた国の皇族であること、
非常に頭の切れる女性であることをベースに、
フィクションで膨らませていったのが、本ドラマの李未央と言えよう。

また、本ドラマでは、李未央自身が拓跋濬との愛の結晶、
太子・拓跋弘を産んだように匂わせているけれど(←かなり不透明な描き方)、
前述のように、史実では、その拓跋弘は、“李”姓の貴人が産んだ子である。
李貴人は、「子が君主の後継となった時、その子を産んだ母は死ななければならない(…!)」という
北魏の何とも理不尽な“子貴母死”という古い制度に従い、死んでいるの。
史実をそのままドラマに描いてしまうと、価値観にあまりにも違いがある現代人の視聴者には、
ラヴロマンスではなく、ホラーになってしまうかも知れませんねー。

★ キャスト その①:絶対の愛で繋がる運命の二人

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唐嫣(ティファニー・タン):馮心兒/李未央(442-490)~北涼の公主から北魏尚書の娘に

北魏に滅ぼされた北燕にルーツをもち、父が罪人でありながら、
北魏を牛耳る太皇太后にまで上り詰めた実在の馮氏をモデルにした主人公・馮心兒。
ドラマの中で、彼女が成りすます“李未央”は、
北魏の李尚書が、大夫人・叱雲柔の足を洗う係りだった下女に産ませた子。
当然、大夫人・叱雲柔は、そんなお手付けお女中の娘などを認めるはずもなく、田舎に追い遣るが、
それでも飽き足らず、配下を送り、成長した李未央の殺害を命じる。(↓)こちら、ホンモノの李未央。

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リアル李未央を演じているのは李依曉(リー・イーシャオ)
幼い内にド田舎に飛ばされ、そこで育った李未央を見たことのある人なんて居ないのだから、
成りすますのに、似ていようがいまいが、問題ナシ!
ただ、エセ李未央(馮心兒)は、「田舎育ちなのに、手がきれい」とか、
「ろくな教育を受けていないはずなのに頭がキレる」と人々から疑惑の目を向けられることにはなる。
(私の目には、リアル李未央も、無教養な田舎モンに見えませんが…。)

そう、李未央は、容姿端麗な上、頭脳明晰な女性。
恋のお相手・拓跋濬のみならず、周囲の男性を片っ端からメロメロにしてしまう李未央。
そんな彼女の“モテモテ伝説”を見せつけられても、
本ドラマ視聴者の大半を占めるであろう女性たちから反感を買わないのは、
李未央が男に媚びを売る女ではなく、毅然として、聡明だからであろう。
甘く可愛らしい顔立ちの唐嫣は、こういうキリッとした女性を演じた方が、同性の好感度は高い。

主人公だけあり、色んな扮装でも、視聴者の目を楽しませてくれる。

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左から、通常バージョンミリタリーファッション婚礼衣装天下の皇太后!
そして番外編で、大陸時代劇のお約束、女だとバレバレで奇怪でしかない男装も(苦笑)。



羅晉(ルオ・ジン):高陽王・拓跋濬(440-465)~北魏第3代皇帝・太武帝の孫 後に第4代皇帝・文成帝

拓跋濬は、亡くなった景穆太子拓跋晃の息子。
実際の拓跋濬が馮氏を娶ったのは、15~6歳の時だったはず。
このドラマでは、一体どのような年齢設定になっているのでしょーか…?
扮する羅晉は…

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韓国の權相佑(クォン・サンウ)に似た顔立ちが、私好みではなく、
今まで一度も良いと思ったことはない。
しかも、このドラマだと、唇が赤くなぁーい?!もしかして、口紅を塗っているのか…?
…ところが、演じている拓跋濬が、真っ直ぐな好青年だから、徐々に素敵に見えてきてしまった!
李未央に「都を離れ、私と母上と三人で静かに暮らそう」と遠回しなプロポーズをした時だけは、
李未央をイビリまくっている母親が、なんで漏れなく付いてくるんだ?!
女性を口説く時は、「私と“二人”で静かに暮らそう」でしょーがっ!とイラッとさせられたけれど、
あとは基本的に素敵な拓跋濬。
權相佑に似ていて苦手だった顔も、ふと見せる表情が、台湾の邱澤(ロイ・チウ)似であることを発見。

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そう、公表こそしていなかったが、唐嫣がかつて交際していた、あの邱澤である。
このドラマで、時々邱澤の面影を感じさせる羅晉を見ながら、
「女性が好む男性のタイプはそうそう変わるものではない」と再確認。
ちなみに、唐嫣が邱澤と別れたのは、邱澤が李毓芬(ティア・リー)と二股をかけたことが原因で、
この事で唐嫣を非常に傷付けたと噂されている。
邱澤は、別れた女性たちから、恨まれる傾向あり。お付き合いする時は、誠実にねぇ~!

★ キャスト その②:叱雲家

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李心艾(リー・シンアイ):李長樂~北魏の尚書・李蕭然の長女

李尚書の娘・李長樂は、母親・叱雲柔が李尚書府を取り仕切る大夫人である上、
母の実家・叱雲家が膨大な権力を握る一族であるため、ワガママに育ったお嬢様。
実際、北魏一の美人で聡明と称えられてもいたのだが、李未央の出現で、その地位が揺るぎ、
しかも、ずっと想い続けてきた拓跋濬まで李未央に取られ、彼女へ激しい憎悪の念を募らせ、
あれやこれやと李未央ツブシの策を講じる。
ただ、この人、利口なようでいて愚かで、脇が甘いものだから、何かたくらむと、必ずしっぺ返しに。
だから、李長樂の謀は安心して見ていられるの。
架空の人物ではあるけれど、後に第5代皇帝・獻文帝に即位する拓跋弘の生母で、
文成帝の側室である李貴人(?-456)がモデルであろう。

扮する李心艾は、ロシアのクオーター。
学生時代、演技のレッスンを受けるため、台湾へ渡った際、
偶然出会った劉畊宏(ウィル・リウ)から、周杰倫(ジェイ・チョウ)に紹介され…

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周杰倫監督作品第2弾『天台~The Rooftop』(2013年)のヒロインに抜擢された超ラッキーガール。
周杰倫は、薄い自分の顔とは極端に違うバター臭い顔の女性が好きなんでしょうね~。
李心艾も、周杰倫に見出された“J女郎”なら、芸能界での将来は安泰と想像するが、
その後、枕営業を疑われる写真の流出もあり、必ずしも順調とは言い難い。
でも、黃軒(ホアン・シュエン)主演の話題の超大作、
『九州·海上牧雲記~Tribes and Empires-Storm of Prophecy』にも出ているし、これから挽回でしょうか。
この『王女未央』の李長樂役は、印象に残る悪役ではあっても、
目尻を盛り過ぎたツケマが、もはや古臭く、安っぽいオンナに見えちゃうのが、残念。
李心艾は薄化粧でも、充分濃いぃ顔だから、盛り過ぎメイクは要注意。



田麗(リリー・ティエン):叱雲柔~北魏の尚書・李蕭然の大夫人 李長樂の母

叱雲柔は尚書府を取り仕切るの大夫人で、李長樂を溺愛し、とんだワガママ娘に育てた母。
一般的に、封建社会の嫁というのは、婚家で弱い立場という印象があるけれど、
叱雲柔の場合は、実家の叱雲家が大きな力を持っているから、夫の李尚書も遠慮がちだし、
ましてや、尚書府の他の女性たちは、彼女にひれ伏すばかり。
叱雲柔&李長樂は、“この親にしてこの子あり”って感じの母娘。

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顔立ちも揃って派手で、母娘の雰囲気あり。
この母・叱雲柔を演じているのは、台湾のセクシー番長・田麗!
娘役の李心艾はロシア血統だが、母親役の田麗の方は、鄒(ツォウ)族のハーフ。
田麗、久しく見ない内に、大陸に拠点を移し、時代劇に出るようになっていたのですねぇ~。
しかも、いつの間にか、バツ2になっておられた。
アラフィフ田麗、これからもっとハジケちゃって下さい。



金瀚(ジン・ハン):叱雲南~北魏の大将軍 叱雲柔の甥 叱雲家の勢力拡大に躍起

叱雲柔には元々、李長樂の兄にあたる李敏峰という息子がいたのだが、
それが使えないバカ息子で、結局李未央の腹心・君桃に殺されてしまう。
それでも、叱雲柔には、もっと使える叱雲南という甥っ子が存在。
叱雲南は、野心も腕っぷしも非常に強く、叱雲家の勢力拡大のためなら、悪事にも進んで手を染める。
架空の人物であるけれど、皇帝の後継者争いに絡み、裏で暗躍する点から、
前述のように、実在の宦官・宗愛の要素を備えた悪役が、南安王拓跋余と、この叱雲南と言えるであろう。

扮する金瀚は、オトナっぽく見えるが、1993年生まれの24歳。
2015年、新人発掘番組<中國好男兒>で3位を獲得し、注目され、時代劇の出演は『王女未央』がお初。
その割りには、貫禄なぁーい…?!
あちらでは、林更新(ケニー・リン)に似ていると言われている。
長身で体格が良く、ちょっと“ワル”の雰囲気は、元EXOの吳亦凡(クリス/ウー・イーファン)にも近いニオイ。

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女優・趙麗穎(チャオ・イーリン)の個人事務所が、今年契約した新人二人の内一人が彼とのことだし、
こういうタイプは結構需要があるから、これから人気が出るかも…?

★ キャスト その③:その他

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毛曉彤(マオ・シャオトン):李常茹~李尚書の弟の娘 

架空の人物・李常茹は、同じ尚書府に暮らす従姉・李長樂に見下され、
ずっと窮屈な思いをしてきた内気な女の子。
李長樂に対抗できる強者・李未央の出現で、少なからず救われ、
李未央を慕い、補佐するようになり、二人は強い絆で結ばれる。
…が、それは表面的な事。実はこの李常茹、誰よりも計算高いシタタカな女。
李未央からの厚い友情と信頼を利用し、のし上がることを密かに画策。
さらに、長年想い続けている南安王拓跋余が、李未央に気が有ると知ると、
彼女を逆恨みし、羊の皮を被ったまま、排除工作を開始。
李常茹のドス黒さは、回を追うごとに増してゆく…。
演じているのは、黒目がちな小動物系のカワイ子ちゃん、お馴染み毛曉彤。
日本で同時期に放送されたもう一本の出演作、
『シンデレラはオンライン中~微微一笑很傾城』で演じている明るくアッケラカンとした二喜とは、えらい違い。
高飛車な美人より、こういう腹黒い童顔カワイイ系の方が、同性をイラつかせるものだ。
本ドラマで、李常茹は、李長樂以上に厄介な存在。




吳建豪(ヴァネス・ウー):南安王拓跋余(?-452)~北魏第3代皇帝・太武帝の息子 拓跋濬の叔父

拓跋余は、北魏第3代皇帝・太武帝の息子で、主人公の拓跋濬の叔父に当たる。
このドラマ、見ていて、最初の内、混乱するのは、登場人物に見た目の世代差が無いこと。
拓跋余と拓跋濬は、同世代にしか見えないのに、叔父と甥っ子なの。
日本もそうだけれど、昔は兄弟が多いし、皆若い内に親になるからねぇ~。
実際、拓跋濬は、父・拓跋晃が12歳の時に(!)生まれた息子だから、
叔父ともさほど年齢差は無かったはずである。
扮する吳建豪は、テレビドラマだと、もしかしてこれが初の時代劇…?
拓跋余は、母親の身分が低く、日陰で育ってきたせいか、性格が歪み、
控えめな態度を取りながら、実は虎視眈々と皇位を狙う悪賢い男。
誰も信用しない冷血漢なのだが、
李未央に対してだけは、これまで感じたことのない愛情を抱いてるという複雑な役。
ここまでの悪役は吳建豪にとってお初でも、ちょっとした悪役なら…

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陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品『道士下山』(2015年)ですでに経験済み。
『道士下山』で演じているのも、変わった役であった。

髪型が奇抜なのも、両作品で共通。今回の『王女未央』では、なんとドレッドヘア!
ドレッドヘアは大陸時代劇で近年しばしば目にするけれど、これほどの総ドレッドはあまり無いかも?

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生え際をジックリ見ても、不自然ではない。

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恐らく、モミアゲを除いた顔回りは地毛を使い、エクステでドレッドにしているのではないだろうか。
拓跋余に変身するのは、手間と時間が相当かかる大仕事。

『道士下山』と『王女未央』を観て思った、
吳建豪はF4出身にも拘わらず、イケメン役に執着せず、彼自身が変わった役を面白がって演じているのだと。
元F4の中で、一番の個性派俳優に成長中かも。



梁振倫(リャン・ジェンルン):李敏/元烈~李尚書府に引き取られた養子 実は柔然の王子

李常茹までもが実は相当な悪女だと判明する尚書府で、李未央が本当に信頼できるのは、この李敏だけ!
李敏は尚書府に引き取られた養子で、養母の周雪梅と共々、大夫人・叱雲柔らから蔑まれている。
が、後に、その正体が柔然の可汗の息子、元烈王子であったことが判明…!!
男版シンデレラのように、義兄弟たちから蔑まれていた尚書府の養子が、実は一国の王子だったなんて、
随分出来過ぎた話だが、実際、この李敏は、歴史上存在しない架空の人物。
誠実な好青年で、李未央とは義姉弟の強い絆で結ばれ(李敏は李未央に対し姉以上の想い)、
何かにつけ、彼女を助けるけれど、柔然の臣下たちのせいで、しばしば困った事態にも巻き込まれてしまう。

演じている梁振倫は、私にとっては、初めて見る俳優。
主役を張る華やかなスタア性は無くても、李未央を懸命守ろうとする優しく誠実な義弟役には合っている。

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なんか、日本とか、かつての台湾アイドルに居そうな、フツーで素朴な印象のカレ、
梁振倫は、西安出身、身長180センチ、卒業した北京舞蹈學院ではミュージカルを専攻。
年齢は、少なくとも現時点では、非公開。
2006年に北京舞蹈學院に入学しているので、16歳くらいに見えても、実はアラサーの可能性高し。
ドラマ出演を始めたのが、2015年辺りと、少々遅かったので、
少女ファンのハートを掴むため、敢えて実年齢を伏せているのだろうか。
私みたいなオッサン贔屓も世の中には結構いるので、伏せる必要など無いと思うけれどね。

★ 衣装

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時代劇は、お衣装を楽しみにしている視聴者も多いことでしょう。
この『王女未央』も、衣装には強いコダワリがあり、巨額を投じたという。
担当したのは、香港出身のの陳樂勤(ジョイベル・チャン/チャン・ロッカン)
唐嫣主演の別のドラマ『金蘭良縁~金玉良缘』や、
最近だと、陳喬恩(ジョー・チェン)&陳曉(チェン・シャオ)主演ドラマ『獨孤皇后~Queen Dugu』、
あと、現代モノでは映画『左耳』(2015年)の衣装などを手掛けている女性。


(↑)上の画像、左下の婚礼衣装は、実際に着用すると、(↓)こんな感じ。

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ゴージャスです。

なんでも陳樂勤は、このドラマのために、約5百着にものぼる衣装を自らデザインし、
内、主人公・李未央の物だけでも、約90着もあるらしい。
デザインには、時代のエッセンスは取り入れているようだが、
時代考証に完全に則しているかと言うと、必ずしも則してはいないという意見あり。
少数民族である鮮卑族が建てた北魏では、確かに漢化政策が進められたのだが、
それは主人公の2代あと、第6代皇帝・孝文帝の時代。
このドラマの時代だと、“胡服”と呼ばれる鮮卑族特有の服装がより一般的なはずで、
ドラマの衣装は漢服の様式が濃いとのこと。
服のスタイル以前に、鮮やかなピンクやブルーといった色は、あの時代にしては発色が良過ぎると、私も思う。

★ 吹き替え

演じている俳優自らがアフレコに当たることが徐々に増えているように見受ける大陸ドラマだが、
この『王女未央』は、声優による吹き替え。
私個人は、俳優自身の声を聞きたいけれど、
制作サイドに言わせると、大物声優を集結させ、吹き替えにまで力を入れた自信作!ということらしい。


『王女未央』で、全てを取り仕切る吹き替え監督は、
ドラマ『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』や映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ等、
数々の人気超大作を手掛けてきた国会一級演員の廖菁(リャオ・ジン)

主人公・李未央は、『宮廷の諍い女』や『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』の孫儷(スン・リー)をはじめ、
人気作品で人気女優の声をあまたと当ててきたことで、“配音女王(吹き替えの女王)”、
“大明星共同的聲音(大スタア共通の声)”などと称される季冠霖(ジー・グアンリン)が担当。

お相手・拓跋濬は、『新・笑傲江湖~笑傲江湖』や『金蘭良縁~金玉良缘』の霍建華(ウォレス・フォ)、
『鹿鼎記 ロイヤル・トランプ~鹿鼎記』の韓棟(ハン・ドン)、
『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』の盛一倫(ション・イールン)等々、
イケメン俳優御用達の邊江(ビエン・ジアン)が担当。
(でも、この邊江、声優としての初仕事は、日本のドラマ『奥様は魔女』の原田泰造だったらしい。…笑)

張天愛(チャン・ティエンアイ)扮する男勝りの張芃芃の声を当てた喬詩語(チャオ・シーユー)は、
こちらの『王女未央』だと、腹黒ぶりっ子・李常茹の担当。
この喬詩語という声優は、他作品だと、唐嫣の声も随分当てているようである。

そして、『王女未央』一の卑屈な悪役・南安王拓跋余の声は、
『イップ・マン 葉問』シリーズなど数々の作品で甄子丹(ドニー・イェン)の声になってきた
“甄子丹御用声優”陳浩(チェン・ハオ)

★ テーマ曲

オープニングに流れるのは、A-Linの<天若有情>
エンディングは、主演コンビ唐嫣&羅晉のデュエットで<天賦>
オープニング曲の方は、実は、シンガポールの人気シンガーソングライター、
黃義達(ホァン・イーダ)の作曲であった。
でも、ここには、やはり私生活でもドラマの中でもラヴラヴのお二方が歌うエンディング曲を。
羅晉って、歌、上手いんですね。







このドラマ、ハッキリ言って、重厚感は無いのだが、
次から次へと事件が起き、ポンポンとテンポ良く展開するから、
飽きずにサクサクと観ることができ、あっという間のゴールイン。

最終回は、李未央と拓跋濬の御成婚→拓跋濬の皇帝即位→拓跋濬の死、
→そして、幼い拓跋弘の即位と駆け足の展開。
あまりにも高速展開なので、降って湧いたように出現した拓跋弘が、誰の子なのか分からない。
史実では、拓跋弘は、拓跋濬と李貴人との間にできた子だけれど、
このドラマで李貴人にあたる李長樂は、拓跋濬の寵愛を受けられぬまま、毒酒を賜って死んでいる。
ドラマの中で生まれた拓跋サンちの子って、李常茹が産んだ拓跋余の子だけなのよねぇ。
“拓跋濬の皇后は出産していない”という史実を曲げないまま、
それでも李未央と拓跋濬は深く愛し合っていたと綺麗に幕を閉じるため、
拓跋弘の出自に関しては、敢えてボカして描いたのかも知れないとも想像している。

いとも簡単に顔を変えられる“易容術”を使い、犯人が別人に成りすまして起こす事件と、
死んだはずの人間の蘇生、この二つの演出は、さすがに使い回しが多過ぎて、いくらナンでも安直だと感じる。
あまりにも頻発するものだから、
仕舞いには、誰かが死んでも、それが物語上重要な人物の場合は、
「どうせ生き返るんでしょ…」と、一視聴者である私は、その死を軽視するようになり、
実際、その人物は、私の予想を裏切ることなく復活する(笑)。

『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす』のような重厚な観応えを期待しては駄目だけれど、
『蘭陵王』のようなエンタメ色の強い史劇が好きな人は、これもきっと楽しめることでしょう。
繰り返しますが、これ、日本なら古墳時代のお話ですからね(笑)。
仮に日本で、古墳時代を題材にした時代劇を制作したところで、こんなに面白くはならないのでは…?
中国史はやはりネタの宝庫で、ナンだカンだ言って、ドラマのレベルも高いと感じる。

今回、この『王女未央』を観逃し、悔しい思いをしている方々、ご安心を。
2017年12月29日(金曜)から年始にかけ、一挙放送があるので、その際にどーぞ!


さて、チャンネル銀河では、平日午後1時のこの枠は、2017年11月20日(月曜)より、
『名家の恋衣~抓住彩虹的男人』を放送。
『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』と同じ桐華(トンホア)の小説が原作で、
清末から民国初期にかけての名門染色工房を舞台に、
劉威(ハウィック・ラウ)&鄭爽(ジェン・シュアン)が主演するドラマ。
その時代を背景にした『名家の妻たち~愛情悠悠藥草香』が意外にも拾い物だったのだが、
こちらはどうでしょう。

秋の和洋菓子2種(+映画『空海~妖猫伝』に喝ッ!)

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陳凱歌(チェン・カイコー)監督の最新作である日中合作映画、
『空海 KU-KAI~妖貓傳』の日本版最新トレーラーが、今週公開された。
皆さま、もう御覧になりました?




火野正平が空海の師父役で出演しているのは、知らなかった。
阿倍仲麻呂役の阿部寛の中国語は吹き替えっぽいですね。
でも、阿部ちゃんの実際の声にかなり近い上手い吹き替えで、不自然さは感じない。

ネガティヴな面も語らせていただくと、
白楽天を演じる私の御贔屓、黃軒(ホアン・シュエン)は、
もうすっかり“ホアン・シュアン”の誤表記のまま定着させられているのは勿論のこと、
今度は新たに、高力士役の田雨(ティエン・ユー)も“ティアン・ユー”にされている…。
玉蓮役の張天愛(チャン・ティエンアイ)の“天 Tiān”と、“田 Tián”は、同じ発音なのだから、
田雨が“ティアン・ユー”なら、張天愛も“チャン・ティアンアイ”になっちゃうんだけれど…?!

さらに、分からないのは、私の聞き間違いでなければ、
白楽天が「你的意思是說皇帝的死跟一隻貓有關。(皇帝の死が一匹の猫に関係していると言うのか?)」
と言っている部分が、「王妃の死と猫に関係が…」になっているのだが…。
“皇帝”と“王妃”では、別人ではないか。

もっと言ってしまうと、ナレーションでも何度か“王妃”という言葉が使われているのだけれど、
その“王妃”は楊貴妃のこと…?
楊貴妃は、“貴妃”の位についている“楊”という姓の女性であり、“貴妃”と“王妃”は別モノ。


この予告編を見て、ビビッと来ました。
『空海』の字幕って、中国語や中国文化に暗い英語の翻訳者にやらせているでしょう?違います…??!
日本語の“あいうえお”に当たる、中国語の拼音の基礎も分かっていないから、
“Xuan(軒)”や“Tian(田)”を、見たまんま日本語のローマ字読みにしてしまっているのだろうし、
楊貴妃を“王妃”としてしまったのでは…?

ちょっと前、トロントで、陳凱歌監督が『空海』について英語で答えているインタヴュを見たのだが、
その中で監督は、“楊貴妃”を確か“Concubine Yang Guifei”と表現していたように記憶する。
“Concubine”を“王妃”と訳してしまったのなら、その翻訳者は、言語、文化、歴史、全て分かっていない。

張藝謀(チャン・イーモウ)監督初の英語作品(…と言っても、英語と中国語半々くらい)
『グレートウォール』(2016年)の日本語字幕でも、
英語の台詞の中の“Palace”を、皇帝が暮らす皇宮にも拘わらず、“王宮”と訳しているのが気になった。


もうさぁー、中国語映画を、英語経由で、英語翻訳者に訳させる悪習は、いい加減やめて欲しい。
今どき、中国語から直接日本語に訳せる人なんて、いくらでも居るでしょーが。
新作映画のプロモーションに、映画とは縁もゆかりも無いお笑い芸人やアイドルを呼んでみたり、
舞台挨拶で一般客の撮影を禁じ続けたり、邦題やポスターがダサダサだったりする事からも、
日本の映画業界は、昭和の頃のまま思考が停止しているとしか思えない(そして、それが機能していない)。
頼むから、もういい加減、進化して下さい…。
『空海』の字幕担当が英語翻訳者かどうかは、現時点では未確認。
映画公開時には、ちゃんとした字幕が付くことを祈ります!)




『空海』関連で、もう一つ。
同作品で、金吾衛・雲樵の妻である春琴という女性を演じている張雨綺(キティ・チャン)について。

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原作小説だと、この春琴に妖猫が憑依するのだが、
張雨綺も“キティちゃん”という名前だけあり、猫顔の美人。

この張雨綺、私生活では、自分の留守中に買春で御用となった王全安(ワン・チュアンアン)監督と離婚し…

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2016年秋、実業家の男性と再婚。
その後、今年6月には妊娠を発表。
…そんな事、すっかり忘れていたら、昨日、張雨綺のマネージャーが、
10月に無事双子を出産していたことを、ベイビーの写真と共に公表。

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ミノムシみたいで可愛い!!!!
身に付けている物全てが洗練されていて素敵だし、
なにより、肝心のベイビーが、新生児とは思えない程、すでにお顔の整った美男美女。
なんて可愛い子たちなのでしょう。

他にも、(↓)こんなお写真が。

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こちらもキュート。
出産を控えている女性は、我が子でこんなお写真を撮りたくなってしまうのでは?
ホント、可愛いわぁ~。



ついでに、要録画番組を一本だけ。
いつの間にか、フジテレビで日曜午後1時に始まっていた『ぐっさん家』という番組。
明日、2017年11月19日(日曜)と来週25日(日曜)は、2週連続で、香港スペシャルを放送♪
これ、元々は東海テレビの番組らしく、あちらでは、もう随分前に放送された内容なのかも知れない。
どうせ私は初見だから、多少古くても、構わないが。




お菓子は、秋の味覚、栗と葡萄を使った物を。
和風の物と洋風の物で計3ツ。

★ 紀の国屋:栗蒸し羊羹

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大きさは、大体幅3センチ×長さ5センチ×厚さ3センチ。
栗を閉じ込め、四角くカットした栗蒸し羊羹。




まずは栗を使った和モノで、紀の国屋(公式サイト)“栗蒸し羊羹”
“相国最中”や“おこじゅ”で有名な紀の国屋が、毎年秋から冬にかけて販売している生菓子。

近年、栗蒸し羊羹は、
三角形にカットし、上に栗を盛り付けた、リッチな雰囲気の物が増えている気がするけれど、
ここのは、おうちで手作りしたような素朴な物で、羊羹の中に栗を入れ、四角くカットしている。

生地は、栗蒸し羊羹特有の、ちょっともっちりした食感。
小豆に何を混ぜ、もっちり感を出すかは、お店によってレシピが違うだろうが、
紀の国屋の場合は、小麦粉とわらび粉を使用。

中の栗はホクホク。
量も結構ある。栗一個半分くらいは入っているだろうか。


素朴で基本的な栗蒸し羊羹。
普通と言ってしまえば普通なのだが、だからこそ飽きがこない。
そして、紀の国屋の栗蒸し羊羹で、私が感心するのは、価格である。
このクオリティで、今どき一個160円は良心的!

★ アステリスク:モンブラン

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大きさは、直径約5.5センチ、高さ約7センチ。
アーモンド入りメレンゲを台にし、その上に、マスカルポーネ入り生クリームを盛り、
さらにマロンクリームをかぶせたモンブラン。




栗が続きます。
でも、こちらは洋モノで、代々木上原のケーキ屋さん、アステリスク(公式サイト)“モンブラン”
このお店はモンブランが有名と聞いたことがあったので、食べてみたいと思っていた。

ここのモンブランは、私が好きな“メレンゲ+生クリーム+マロンクリーム”という伝統を守った基本形。
でも、ほんのちょっとだけアレンジあり。

まず、メレンゲにはアーモンド入り。
ナッツの風味が香ばしい。

生クリームには、マスカルポーネチーズが混ぜられている。
恐らく無糖なのであろう。
甘くなく、かすかにマスカルポーネの味を感じる生クリーム。

肝心のマロンクリームには、愛媛県産の栗を使用。
和栗の特徴が出たサッパリめのマロンクリームで、和菓子の“栗きんとん”を彷彿させる。


まぁ美味しいけれど、私は、アンジェリーナのような、おフランス風のコックリしたモンブランの方が好み。
これだと、アッサリし過ぎていて、日本人離れした舌を持つ私には、甘さもコクも足りない。
実は、これ、メレンゲとその下の容器を接着させる糊代わりに、
アプリコットのコンフィチュールが使われているのだけれど、
そのフルーティーな甘みと酸味が、本体のモンブランに混ざると、
味のアクセントになって、より美味しく感じられた。
確かに、私は、基本に忠実な伝統的なモンブランが好きだけれど、
これくらいアッサリしたモンブランなら、
アプリコットコンフィチュールを効かすようなアレンジが有っても良いという気がした。
勿論、それは、あくまでも私個人の好みの問題で、
甘い物が苦手な一般的な日本人のお口には、この繊細なモンブランはとても合うと思う。

★ キャトル・キャール:ナガノパープルのタルト

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大きさは、直径約6センチ、高さ約7センチ。
アーモンドクリームを入れ焼いた生地の上に、カスタードクリームと大粒ぶどうを4個のせ、
上にたっぷりのぶどうクリームを盛った季節のフルーツタルト。




締めのこちらも洋モノ。
でも、栗ではなく、葡萄を使ったお菓子で、
キャトル・キャール(公式サイト)“ナガノパープルのタルト”

“ナガノパープル”という品種の葡萄を使った季節のフルーツタルトである。
“ナガノパープル”って、なんだか競走馬を連想させるネーミング(笑)。

葡萄は、丸々と太った大粒の物が4ツのっている。
このナガノパープルは、皮ごと食べられることを売りの一つにしているようだが、
習慣的に、どんな葡萄でも、皮ごと食べる私には、あまり関係ない。
その皮は、他と比べ、特別薄いとも厚いとも感じず。
他との違いは、例えば、一般的な巨峰に比べ、身がしっかり締まっているという印象。
強烈な甘さは無く、むしろサッパリめで、ジューシー。
種が無いので、食べ易いのも良い。

(↓)こちら断面。

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上に盛られた紫色のホイップクリームも、ほんのり葡萄味。
下のタルト生地は、サックサクの食感で、アーモンドの風味が香ばしい。


無駄に手は加えず、美味しい葡萄を活かすために、極力シンプルに作ったタルトという感じ。
特に、主役の葡萄と、下のタルト生地が美味♪

第18回東京フィルメックス開幕+『相愛相親』張艾嘉Q&A

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東京国際映画祭が終わると、次はこちら。
2017年11月18日(土曜)の昨日、第18回東京フィルメックが開幕。

ここ数年、開会式の日にフィルメックスに行くことは無かったのだけれど、
今年は、観たいと思っていた作品が、オープニング上映だったので、チケット購入。

アクセス数にもかなりの違いが有るだろうから、単純な比較はできないが、
フィルメックスは、東京国際映画祭と違い、チケット購入がスムーズなのが嬉しい。

★ 会場

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フィルメックスの会場といえば、有楽町朝日ホールであるが、
開会式だけは違い、TOHOシネマズ日劇のスクリーン1で開催。

チケットも、開会式だけは、TOHOシネマズのVitで買えるから、余計に楽ちんであった。
収容人数が都内最大級のこの日劇は2018年2月で閉館してしまうのだが、
東京・中国映画週間もそうだけれど、フィルメックスも、来年以降はどこでやるのでしょう…?
(フィルメックスの開会式は、以前、東京国際フォーラムで開催されていた記憶も…。)

当日、満席とはいかなくても、客の入りは上々で、会場は賑やか。
席に着いて、横に目をやったら、私と同じ列に西島秀俊氏がおられた。
にしじぃー、今回はお一人様ではなく、お連れの男性と。

あと、帰り際には、ワダエミを見掛けた。
とても小柄な女性なのだけれど、
真っ白な髪を真っ赤なおリボンでまとめているのが印象的で、目立っていた。

★ 開会式

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映画上映の前には、開会式。




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今年の審査委員長は、『ゆきゆきて、神軍』(1987年)など
鋭い切り込みのドキュメンタリー作品でお馴染みの原一男監督。

他、4人の審査員も開会式に出席。
画像左から、韓国の映画プロデューサー、エレン・キム、
日本の映画プロデューサー國實瑞惠、
審査委委員長・原一男監督を挟み、
ドイツのアルセナール芸術監督、ミレーナ・グレゴール、
そして、香港の映画評論家・徐匡慈(クラレンス・ツィ) 。


まずは、東京フィルメックス林加奈子ディレクターが、
新作公開にあたる日に、会場を貸してくれた日劇に感謝の言葉を述べると共に、映画祭の開会宣言。

そうでした、忘れていたけれど、
新作公開が集中する土曜日は、映画館にとっては、大切な書き入れ時のはずである。
私からも、有り難う、日劇。


続いて、今年の審査委員長・原一男監督からご挨拶。
「プレス向けの説明会で、林加奈子さんと市山尚三さんが熱心に話すのを聞き、
“あなたたちに映画を読み解けるのか”と挑発されているような気がした。
皆さん一人一人も、審査をするつもりで映画を観て下さい。
そして、我々と皆さん、どちらが深く読み解けているか競いませんか。」と。

相変わらず、自身の監督作品の雰囲気からはかけ離れた飄々としたキャラの原一男監督であった。
原一男監督は、昨年、第19回上海国際映画祭では、ドキュメンタリー部門の審査委員長をやっている。
今回、ドキュメンタリーと限定されないフィルメックスのコンペティション部門では、
どういう判断を下すのでしょうか。

★ 第18回東京フィルメックス オープニング作品『相愛相親』

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私が観たいと思っていた今年のオープニング作品は、
張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督&主演作『相愛相親(そうあいそうしん)~相愛相親 Love Education』
上映終了後には、勿論、張艾嘉によるQ&Aあり。


張艾嘉は、2年前の第16回東京フィルメックスでは、審査員も務めている。
毎年この時期は、金馬獎が有るから、
中華圏の著名な映画人を来日させるのは難しいのではないかと懸念もするが、
今年、第54回金馬獎の授賞式は、11月25日(土曜)で、フィルメックスとちょっとだけズレているのだ。
…いや、正確には、フィルメックスの閉会式と丸カブリなのだけれど、
その前に上映すれば、来日のスケジュールに問題ナシ。

この『相愛相親』も、今年の金馬獎で、最佳劇情片(最優秀作品賞)、最佳導演(最優秀監督賞)、
最佳男主角(最優秀主演男優賞)、最佳女主角(最優秀主演女優賞)、最佳女配角(最優秀助演女優賞)、
最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)、最佳原創電影歌曲(最優秀オリジナル歌曲賞)と、
なんと7項目もでノミネートされているので、
フィルメックスの開催が一週間先だったら、張艾嘉は来てくれなかったでしょうねぇ。

今年のフィルメックスは、意識的に金馬とかち合わないようにスケジュールを組んだのだろうか。
それとも、ただの偶然…?
(会期中に一日祝日が入るのは、例年通りなので、金馬とはたまたまズレた可能性が高い。)

★ 『相愛相親』張艾嘉 舞台挨拶+Q&A

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約15分の開会式の後、映画上映前に、張艾嘉監督がステージ上に登場し、簡単なご挨拶。
この日のお召し物は、ベロアのパーカーに、プリーツスカート。
フォーマルという程ではないけれど、カジュアル過ぎもせず、フィルメックスのオープニングに相応しい装い。
「招待して下さったフィルメックスに感謝いたします。
テレビでもiPadでもスマートフォンでもなく、この大きなスクリーンで作品を観ていただけて嬉しい」
と張艾嘉監督。


挨拶に続き上映された映画『相愛相親』の詳細は、また後日として、
ここには、上映終了後、再び登壇した本作品の監督兼主演・張艾嘉による約30分のQ&Aの内、
私がビビッと来た部分を以下に簡単に残しておく。

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質問
田壯壯(ティエン・チュアンチュアン)監督をなぜ起用?

張艾嘉監督
十年ほど前、田壯壯監督の『呉清源 極みの棋譜』(2006年)に
小さな役で出演させていただいた時に出会いました。
普段の田壯壯監督は、監督をしている時とは違い、とても暖かな人です。
私は、『相愛相親』の脚本を書いている時、田壯壯監督の事がどうしても脳裏に浮かんできてしまったので、
電話して、出演を依頼したら、かなり驚いた様子で、何の役か聞いてきたので、「私の夫」と答えました。
結局、その依頼を受けてはくれましたが、「演技ができない」と言うので、
いつもの彼のままでいてくれれば良いと言いました。



質問
一番テイクを重ねたシーンは?

張艾嘉監督
今回は、狭く、しかも真ん中に棚まで置かれたセットだったので、
カメラの李屏賓(リー・ピンビン)と相談し、動きながら撮ることに決めました。
さらに李屏賓は、ズームレンズを使って撮りたいと言いました。
ズームレンズを使い、自然光で撮ろうとすると、フォーカスが合いにくくなります。
特に、私が、娘の部屋をドアをノックするシーンは、
なぜだか分かりませんか、ピントがハズレまくり、何テイクも撮り直すことになりました。



質問
“ジャスティン・ビーバー”と書かれたバッグを持っていたのはなぜ?

張艾嘉監督
小道具の人が用意したのを見せられ、気に入りました。
娘の物を借りてきたという設定で、良い小道具だと思いました。



質問
おばあさんの家に掛けられた女書の意味は?

張艾嘉監督
あの女書は、あの姥姥(おばあさん)が、別の県から来た人であることも表しています。
この映画では、“人は移動する”ということも大きなテーマとして描いています。
その移動は、結婚のためかも知れないし、夢を追うためかも知れないし、様々な要因があります。



質問
おばあさんを演じているお二方は、元々女優さんなのですか?

張艾嘉監督
そうです、二人とも女優です。
私の生みの母親に扮してル女優さんは、村に暮らす姥姥役を選ぶオーディションに来てくれたのですが、
彼女は洗練され過ぎていました。
それでも、村で撮った写真など色々送ってきてくれたので、自分の母親役をやってもらうことにしました。
姥姥を選ぶのは、とても難航しました。
選んだ彼女は、元々舞台を中心にやっていて、
最近2本のコメディ映画に出演したことで、知られるようになった女優さんです。
実は、一度出演依頼をし、断られました。夫を亡くしたばかりで、この役は辛すぎると。
でも、脚本を気に入ってくれて、結局は受けてくれました。
彼女とは良い友達になり、今でも毎朝、微信WeChatで、挨拶を送り合う仲です。



質問
相手に譲る決意をした主人公とおばあさんは、あのままだとスレ違ってしまいそうですが、
ラストをどう考えていますか?

張艾嘉監督
私にとって、物事の終わりというのは、始まりでもあります。
あの二人も、新たな関係が始まり、もしかして一緒に東京に行くことだってあるかも知れません。
二人は、相手を想い合える仲になったのです。



質問
家族の物語を撮ろうと思った動機は?

張艾嘉監督
2012年、脚本家の女性から出された案に目を通し、感動しました。
彼女自身が抱える問題を元にしたお話なのですが、
それだけではなく、他にも色々なテーマを盛り込める余白が有ったことが、とても良いと思いました。




物語の比較的前の方で、張艾嘉扮する主人公が肩から下げている
「I ❤ Justin Bieber」とプリントされたトートバッグに、目が釘付けになってしまった私。
よりによって何故ジャスティン・ビーバー?!と気になって気になって仕方が無かったのだが、
まさかそこを質問してくれる人が居るとは思わなかった。
あの男性に、今回の“ベスト質問賞”を差し上げたい。私に代わり、聞いてくれて、ありがとう!

二人登場するおばあさんの内、冒頭で早々に亡くなってしまう主人公の母親を演じているのは、
もしかして映画ファンには馴染みが無いのかも知れないけれど、
大陸ドラマを観ている人なら、しばしば目にしているであろう王麗媛(ワン・リーユエン)である。
日本で、ほんの数日前に最終回を迎えたドラマ『王女未央-BIOU-~錦繡未央』にも、
主人公・未央の祖母にあたる尚書府の老夫人役で出ていたので、
映画『相愛相親』の冒頭で、病床に伏している彼女を見て、
「おぉ~、未央のおばあさんが、現代人の扮装で、張艾嘉の母親になって、今にも死にそうになっている!」
と何だか不思議な気持ちになった。

俳優として、張艾嘉の夫を演じている田壯壯監督にも注目で、これまた良い味を出しております。


それにしても、張艾嘉は、相変わらずハツラツとして、素敵な女性であった。
あまり年齢を言うべきではないかも知れないが、あの若々しさで64歳は、信じ難い。
あっ、ちなみに、張艾嘉の挨拶やQ&Aは、今回全て英語で行われました。

映画も、とても楽しめた。
もしかして、私にとって、張艾嘉監督全作品の中で、ベスト3に入るかも。
その映画『相愛相親(そうあいそうしん)~相愛相親 Love Education』の詳細は、また後日。
あと一度、2017年11月24日(金曜)午後3時20分に上映が有るから、
興味のある方は、是非、有楽町朝日ホールへ!
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