第4代皇帝・仁宗が天下を治める北宋。
16歳で責務を担い、8年間国境を守ってきた葉昭率いる葉家軍が、遼の猛将・耶律達丹を遂に討つ。
この吉報に沸く朝廷。
仁宗は、大手柄を立てた葉昭を、宣武侯及び天下兵馬大將軍に封じると決め、帰還を命じる。
間も無くして、仁宗の元に、当の葉昭から文が届く。
そこに綴られていた告白に、驚きを隠せない仁宗。
なんと、恐れを知らないあの武人・葉昭は女子だというのだ…!
女子であることを隠していたのは主君を欺く重罪との奏上もでる中、劉太后は仁宗に言う、
「国を盤石にするには喜ばしいこと。もし良縁を授けてやれば、妻としての本分を守るであろう」と。
しかし、葉昭ほどの女子を娶る勇気のある男が、一体どこにいるのか…?!
困り顔の仁宗に劉太后は続ける、「葉昭を娶れば、その者の品行も正されるであろう」。
都で一番の青樓、杏花樓。
賑わう店内では、純白の衣を身にまとった美男の登場で、客の歓声が上がる。
優雅に舞い始めたその美しい男は、趙玉瑾であった…。
大陸ドラマ『花と将軍 Oh My General~將軍在上』、全60話視聴完了。
2018年10月初旬にスタートしたアジアドラマチックTVでまず手を付け、週3話ペースで追っていたが、
その約20日後、今度はBS12トゥエルビでも始まり、こちらは平日毎日の週5話ペース。
ゆったり進行のアジアドラマチックTVに追い付き、追い越した時に、私はBS12に乗り換え、早めにゴールイン。
週に5話も追うのは、本当はキツイのだけれど、
“サッサと観終えて自由になりたい”という課せられていもいない束縛からの解放を願い、
やっつけ仕事的に視聴→完走。
でも、やはりアジアドラマチックTVで、ゆっくり観るべきだっただろうか。
アジアドラマチックTVだと、CMが入らないし、多分ノーカットよねぇ…?
一方、BS12だと、もしかして、カットされている部分が結構有るのかも知れない。
しっかり丁寧に視聴したい人には、アジアドラマチックTV放送版の方が、多分お勧めかも。
★ 概要
橘花散里の小説<將軍在上我在下>のドラマ化。
一躍スタア監督の仲間入りした侶皓吉吉(ルー・ハオジジ)が、
次に手掛ける作品として、制作発表当初から注目されていたドラマである。
いざ企画が進んで行くと、監督さんは文杰(ウェンジエ)と霍耀良(フォ・ヤオリャン)の両人が担当、
侶皓吉吉は、芸術監督という立場で、作品に参加。
裏方さんには、多くの日本人も参加している。
衣装はワダエミ、音楽は岩代太郎、そして美術指導は小澤秀高が担当。
国際的に活躍するワダエミはあまりにも有名。
岩代太郎も、『レッドクリフ』(2008年)の“パ・パ・パ・パッパラッパ♪”により、中華圏でも注目が高まり、 以降、吳宇森(ジョン・ウー)監督作品にボチボチ参加。
小澤秀高は、日本映画を支えてきた美術さんという印象でしょうか。
★ 物語
第4代皇帝仁宗が天下を治める宋の時代、劉太后の提言で、夫婦となった二人、
女性でありながら著しい軍功を立てた男装の猛将・葉昭と、仁宗のひ弱な甥っ子・趙玉瑾が、
ギクシャクしながらも、次第に絆を深めていく様子を描く、猛女と美男、凸凹夫婦のラヴ・ストーリー。
並みの男性より逞しい女性・葉昭と、並みの女性より美しい男性・趙玉瑾。
“似たもの夫婦”というのも有るが、この二人の場合は、見た目も性格も正反対。
“割れ鍋に綴じ蓋”で、互いが補い合い、案外いい夫婦になっていくのです。
この夫婦愛以外に、もう一つ作品に軸になっているのが、
時の皇帝・仁宗と、その異母兄である祈王・趙睿との確執。
表向きは、仁宗の優しい兄、そして信頼できる臣下として振る舞いながら、
その実、兄を差し置き、皇位についた仁宗に深い恨みを抱いている祈王が、
敵国・西夏と通じ、謀反の機会を窺う逆恨みの復讐劇と、
また並行して、その西夏の内紛が描かれる。
作風は基本的に軽いタッチでコミカルだが、要所要所には史実も盛り込まれている。
★ 背景
ドラマの背景は、第4代皇帝・仁宗趙禎(1010-1063/在位1022-1063)が天下を治める北宋。
私が、このドラマを観ようと思った理由の一つは、そこである。
『開封府』で仁宗を演じていたのは、こちら(↓)
幼少期を買正心(マイ・ジェンシン)、そして成長してからは姜潮(ジャン・チャオ)。
『開封府』での仁宗は、嫡母・劉氏による垂簾聴政で、全てを取り仕切られ、おとなしくしているしかない青年。
『花と将軍』だと、劉太后(968-1033)はもう高齢で、政務を仁宗に委ねることもあり、母子関係はまぁ良好。
当時の北宋はどんなだったか。
仁宗の父である第3代皇帝・真宗は、
景元年(1004年)、侵攻を続ける北方の遼と“澶淵の盟”と呼ばれる盟約を結び、
遼に金品を支払うことで、その後百年以上戦争の無い名目上の友好関係を続ける。
その関係が破綻するのは、1120年、北宋と金が、遼を挟撃するために“海上の盟”を締結した時。
つまり、北宋第8代皇帝・徽宗の在位中に、関係が破綻。
ドラマ『花と将軍』は、そのずっと前の第4代皇帝・仁宗の時代を描いているにもかかわらず、
北宋と遼の戦いで第1話の幕を開けるので、これは史実に反する。
北宋にとって、遼以外でもう一国、頭の痛い外敵は、西夏。
当時、西夏は、李元昊(1003-1048)が国のトップ。
北宋は、西夏と結んだ和議で、西夏を臣従させる代わりに、
膨大な歳幣を贈り続けることを余儀なくなれていた。
ドラマでは、弟・仁宗に恨みを抱いている北宋の祈王が、密かに西夏と結託するが、そういう史実は無い。
それ以前に、実際の北宋には、仁宗と敵対した祈王なる兄は存在しない。
仁宗は、第3代皇帝・真宗の第6子であるが、上の5人の兄たちは、どの子も片っ端から夭逝。
本来存在したはずの仁宗のお兄ちゃんたちは、皆子供の内に死んでしまっているから、
生き残った仁宗が皇位を継承したわけ。
が、祈王なる北宋の皇族が西夏と結託した事実は残されていなくても、
ドラマの後半に描かれる西夏の内紛は、史実がベースになってる。
ドラマで描かれているのは、西夏を興した李元昊(1003-1048)の晩年。
名君と名高い李元昊だが、晩年は酒に溺れ、国を混乱させたと言い伝えられている。
西夏に起きた内部のゴタゴタは、ザッと以下の通り。
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国に貢献した忠臣で、李元昊の皇后・野利皇后の兄である野利旺榮(?-1042)と野利遇乞(?-1043)が、
北宋の名将・種世衡(985-1045)の反間計(間者が偽情報などで敵の内部を攪乱させる策)にかかり、
死に追いやられ、野利氏一族が衰退。野利氏も皇后を廃され、庶人に。
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西夏の権臣・沒藏訛龐(?-1061)の妹で、
元々は野利遇乞の妻でありながら、李元昊の情婦だった沒藏氏(?-1056)が、李諒祚(1047-1068)を出産。
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息子である太子李寧林格の美しい妻・沒移氏に李元昊パパが惚れ込み、自分の新たな皇后に。
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太子を廃され、さらに妻まで奪われ、恨みを募らせる李寧林格が、父・李元昊を殺害するも、
李寧林格自身、沒藏訛龐に捕らえられ、父親殺害の罪という名目で処刑。
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李元昊の崩御で、沒藏氏が産んだまだ1歳の李諒祚が即位し、
沒藏訛龐&沒藏氏兄妹が、西夏の権力を掌握。
…とこんな感じ。
ドラマを観ると、一応この史実に則した流れで話が展開していることが分かる。
★ キャスト その①:花と将軍 凸凹夫婦
盛一倫(ション・イールン):趙玉瑾~22歳 皇帝仁宗の甥っ子
趙玉瑾は、子供の頃から虚弱体質ということもあり、母・趙太妃に溺愛され、
結果、しょーもない放蕩息子に育ってしまった北宋の皇族。
でも、育ちが良いから、素直。
子供の頃から良い物に囲まれて生活しているから、目利きでもあり、しかも実は聡明でもある。
“活閻王(生き閻魔)”と噂されていた葉昭を、最初こそ恐れ、毛嫌いしていたが、
徐々に彼女の善良な性格に気付き、惹かれてゆく。
盛一倫は、硬派でストイックな齊晟で人気を博したのだから、当分あの路線で行くのかと思いきや、
『花と将軍』ではガラリと一転、趙玉瑾は、ひ弱で女々しいクセに軟派という役どころ。
ドラマ最初の登場シーンでは、お化粧して妓楼で舞っているし。
盛一倫は整った顔立ちの美男ではあるが、お化粧はあまり似合わないかも…。
梁國榮(レスリー・チャン)よりは京本政樹って感じ。
さらに…
『太子妃狂騒曲』では有り得なかったこんな表情も見せております。
最初は、どーしちゃったの盛一倫?!と戸惑ったが、
見ている内に、素直な趙玉瑾がどんどんお茶目で可愛く思えてきた。
私にとっては、恋人や夫にしたい男性と言うよりは、舎弟にしたい男の子。
『太子妃 狂想曲』の齊晟とはまったく違う雰囲気で、コメディ対応も可能な事を証明し、結果正解。
馬思純(マー・スーチュン):葉昭~24歳 男装の猛将
葉昭は、女性でありながら、幼い頃から武芸に長け、
男装して戦場でバッサバッサと敵をなぎ倒してきた事から、
“活閻王(生き閻魔)”と恐れられる北宋随一の猛将。
そんな男勝りの葉昭だが、子供の時に出逢った美しい趙玉瑾を、一途にずーっと好き。
だから、皇帝から、思い掛けず趙玉瑾との結婚を賜り、ウッキウキ。
当の趙玉瑾が、自分との結婚に乗り気じゃないのも分かっているが、
好かれる努力と、あの手この手の策で、次第に彼の心を掴んでいく。
演じているのは馬思純。
どういう訳か、当ブログには、“馬思純”検索で、やって来る訪問者が、常にコンスタントに居る。
馬思純が気になっている人が、結構いるの?それなら、ちょっとおさらい。
馬思純は、1988年、安徽省生まれ、回族の女優。母方の叔母も女優で、蔣雯麗(ジアン・ウェンリー)。
蔣雯麗は、山崎豊子原作の有名なドラマ『大地の子』で、上川隆也の妻を演じた女優さん。
叔母と姪なのに、母と娘みたいに似ていますよね。
また、この蔣雯麗の夫は、映画監督兼撮影監督の顧長衛(グー・チャンウェイ)。
つまり、馬思純は、元々芸能の世界が身近にあった人で、初めて映画に出たのは、7歳の時。
メインキャストとして出演した作品が、日本で初めて紹介されたのは、
その時は、なんかパッとしない若手女優だと思ったが、その後、人気も実力も伸びてきて、
映画『七月と安生~七月與安生』(2016年)では、
共演の周冬雨(チョウ・ドンユィ)と共に、金馬獎の最佳女主角(最優秀主演女優賞)を受賞。(→参照)
美女というよりは、愛嬌のあるカワイイ系で、女の子っぽいふんわりしたイメージのある馬思純。
だから、この『花と将軍』での“活閻王”役は、意外性があり、ちょっと新鮮。
童顔ということもあり、小柄な女性を想像するが、
実際には身長が170センチで、スラリとしているので、甲冑もお似合い。
馬思純にイラっときた視聴者も、『花と将軍』の男勝りの葉昭なら、受け入れられるのでは?
ちなみに、私がナマ馬思純を見たのは…
2015年、出演した映画『左耳』を携え、東京・中国映画週間のために来日した時。(→参照) 私生活では、この映画で共演した歐豪(オウ・ハオ)と恋仲に発展するも、結局お別れとなり、
最近では、『左耳』を監督した蘇有朋(アレック・スー)と噂が出たけれど、どうなのでしょうかねぇ…??
★ キャスト その②:北宋ロイヤル兄弟
蘆芳生(ルー・ファンション):仁宗趙禎(1010-1063)~北宋第4代皇帝
父帝の崩御で、幼くして皇帝に即位したため、嫡母・劉太后による垂簾聴政が長年続き、
なかなか実権を握れなかった仁宗であるが、
このドラマでは、劉太后の尻に敷かれて弱々しいとか、劉太后への鬱憤を募らせているという印象は無い。
性格は温厚、でも、リーダーシップも善悪を見極める目も持っているマトモな皇帝。
劉太后との仲は良好。祈王のことも、唯一残された血縁の兄だからこそ、信頼し、また大切にしている。
そのせいで、祈王の企みを見抜けなかったのだけれど…。
仁宗に扮する蘆芳生は、日本に所縁のある俳優さん。
日中大学間の交流のため、日本に派遣された大学教授の父親に伴い、小学校卒業後、日本へ渡り、
以降、千葉大学経済学部を卒業するまで11年も日本で暮らした帰国子女。
大学での成績は優秀で、三菱に就職する話もあったのだけれど
(三菱銀行なのだか三菱電機なのだか詳細は不明)、演技への興味が抑えきれず、
安定した大企業への就職を捨て、親の猛反対も押し切り、北京電影學院へ進学。
日本での生活が長かったためか、あちらでは、醸す雰囲気が日本人男性っぽいと思われるようだ。
子供の頃から11年も日本で暮らしていたのなら、日本語もきっとネイティヴ並みなのでしょうね~。
俳優業を始めてから当分の間は、軍人など日本人役のオファーが多かったが、今では役の幅も広がり、
こうして『花と将軍』の仁宗なども演じているわけです。
朱泳騰(チュウ・ヨントン):祈王趙睿~第3代皇帝・真宗の皇子 第4代皇帝・仁宗の異母兄
祈王の生母は、皇帝・真宗にお手付にされた侍女。
生母の身分が低いため皇帝になれなかった、本来皇帝になるべき人物は自分だったという思いが強く、
皇位を継承した異母弟・仁宗に、深い恨みを募らせているが、
表面的には良き兄を演じ、密かに敵国・西夏と結託し、謀反の機会を窺っている。
前述のように、史実では、北宋第3代皇帝・真宗の子は、ことごとく夭逝してしまい、生き残ったのは仁宗だけ。
なので、この祈王は架空の人物であり、当然、謀反の話もフィクション。
もしこの祈王にモデルが居るならば、よく<楊家將>といった小説や戯曲に
“八王爺/八賢王”の呼び名で登場する人物ではないかと推測されているみたい。
北宋の“八王爺/八賢王”には、二人候補がいて、
一人は、真宗の8番目の弟で、仁宗の叔父に当たる趙元儼(986-1044)。
もう一人は、北宋初代皇帝・太祖趙匡胤の第3子で、真宗の従兄に当たる趙芳(927-976)。
ちなみに、ドラマ
『開封府』にも、物語前半の悪役として、八賢王は登場。
王仁君(ワン・レンジュン)扮する八賢王は、趙文瑄(ウィンストン・チャオ)扮する真宗の弟という設定だが、
モデルは趙芳と言われている。
★ キャスト その③:LOVE葉昭な人たち
丁川(ディン・チュアン):胡青~26歳 葉家軍の軍師 またの名は“狐狸”
胡青は、戦場で葉昭と生死を共にしてきた知的で頼れる軍師。
葉昭が実は女性だと知ってからは、彼女に恋心を抱くが、
その気持ちを封印して、葉昭とは義兄弟の立場を貫き、彼女の幸せを影ながら願う。
この胡青、架空の人物と捉えがちだが、祈王の臣下と偽り、西夏に乗り込むドラマ後半部を観ると、
反間計で西夏を混乱させ、野利旺榮と野利遇乞を死に追いやった北宋の名将・種世衡(985-1045)を
モデルにしていると推測できる。
ストイック系の超イイ人で、私好みなのだが、
演じている丁川は、出演作が少なく、彼自身に関しての情報も極めて少ない。
分かっているのは、1992年北京出身、中央戲劇學院で学んだ俳優さんという事くらい。
『花と将軍』で丁川を知り、もっと他の作品でも見たい!と思っている人は、私以外にも結構多いのでは。
王楚然(ワン・チューラン):柳惜音~葉昭の美しい従妹
惜音は、子供の頃から葉昭のことが大好きな美人の従妹。
葉昭のお嫁さんになることを夢見てきたのに、当の葉昭がボンクラの玉瑾なんかに嫁いでしまったから失望。
玉瑾に逆恨みし、卑劣な策で葉昭を取り戻そうとする惜音は、見ていて、イラッ…!
この惜音も、胡青と同じように、架空の人物かと思いきや、
ワケ有って西夏に流れ着くドラマ後半部を観ると、
西夏の太子・李寧林格の妻でありながら、その美しさで義父・李元昊に見初められ、
李元昊の新皇后に即位する沒移氏/沒移皇后(?-?)がモデルであると判る。
ドラマでは、北宋からやって来た異民族の美女が、自国のために命懸けで、敵国・西夏の男たちをメロメロにし、
西夏を滅亡に導いていくという設定にアレンジされているわけ。
モテモテの美女だから、それなりに色香が漂い、オトナっぽいのだけれど、
演じている王楚然は、なんと1999年生まれのまだティーンエイジャー!
最近の子は、早熟ですわねぇ。
初出演ドラマであるこの『花と将軍』で見ると、たまに日本の武井咲に似ていると感じることがあったが、
王楚然は身長172センチでスタイルも抜群だから、実物は武井咲よりかなり美女度が高そう。
本ドラマのキャストの中で、最も知名度を上げたのも、彼女だと見受ける。
侶皓吉吉が監督し、侶皓吉吉の父・海岩(ハイ・イェン)が脚本を担当する話題の新ドラマ
『崑崙歸』にもメインキャストで出演するし、これからまだまだ人気が出そうな王楚然。
★ キャスト その④:北宋その他の人々
于波(ユー・ボー):范仲淹(989-1052)~北宋の名臣
『開封府』など様々な映像作品にも出て来る北宋に実在した名臣・范仲淹も登場。
本ドラマでは、『開封府』より、范仲淹の存在感が大きく、
劉太后の甥である劉太傅や宰相・呂夷簡ら、力のある者たちと対立し、
やはりしばしば左遷の憂き目に遭っている。
ドラマ『孤高の花~孤芳不自賞』の司馬弘の印象が強いだろうか。
マイルドな雰囲気の美中年ですよね。
『花と将軍』の范仲淹は、映像作品史上最も美男の范仲淹かも。
潘時七(パン・シーチー):秋水~葉昭の配下
秋水は架空の人物。
葉昭と同じように、女性でありながら軍服に身を包み、妹の秋華といつもコンビで、葉昭を支える親兵。
実は密かに胡青に片想いしているが、胡青の葉昭への気持ちを分かっているから、一歩を踏み出せない。
物語上、無くてはならない役とまでは思わないけれど、
頬骨の辺りの骨格が、日本の松嶋菜々子にソックリ(…&鼻が不自然)なので、画面に映る度に見入った。
お顔が手付かずかお直しかはさて置き、
その後は、嘉嬪役で出演したドラマ『瓔珞<エイラク> 紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~延禧攻略』も大ヒットし、
ノリに乗っている潘時七なのであります。
張瑤(チャン・ヤオ):趙太妃~趙玉瑾の母 葉昭の姑
趙太妃は、趙玉瑾が虚弱体質だったこともあり、溺愛しまくり、結果、放蕩息子にしてしまった盲目な母。
前出の秋水以上に、出番の少ない役ではあるが、
このドラマを視聴中の2018年10月、東京国際映画祭で観た映画
『詩人』の中に
たまたま趙玉瑾ママを見付けたことで、演じている張瑤が気になった。
そもそも『詩人』は、『花と将軍』とは毛色の異なる文芸作品で、演じているのは、主人公の同僚の女工さん。
趙玉瑾ママとはまったく別の顔の張瑤を見て、演技の幅の広さに感心。
その東京国際映画祭で、私がナマ張瑤を見ることは無かったけれど…
来日して、レッドカーペットも歩いたんですよ~。洋装だと若く見える。
まぁ、実際、張瑤は1980年生まれで、
『花と将軍』で息子を演じた盛一倫とは、ひと回りしか違わないのだけれど。
ちなみに、その『詩人』で張瑤の友人を演じる主演女優は、
綾野剛初の中国映画
『破陣子(はじんし)~The Ugly Town』で相手役を務める宋佳(ソン・ジア)。(→参照)★ キャスト その⑤:西夏のロイヤルファミリー
王策(ワン・ツォ):西夏王李元昊(1003-1048)
この西夏王は、明らかに李元昊がモデル。
私、李元昊が出てくる映像作品なんて、過去に観たことが無いと思い込んでいたのだけれど…
佐藤純彌監督が手掛けた日本映画『敦煌』(1989年)で、
渡瀬恒彦が演じていたのが、李元昊だったのですねぇ~。
日本人俳優・渡瀬恒彦がどんな李元昊を演じていたか、まったく記憶に無い。
『花と将軍』で漢族の俳優・王策が演じる李元昊は、ワイルド&エロ!
下まぶたにもアイラインを入れ、西域のエキゾチックな雰囲気を醸したエロおやじでございます。
趙磊(ジャオ・レイ):哈爾敦(1032-1048)~西夏王と野利王后の間に生まれた太子
美しい妻を父親に奪われてしまった西夏の太子・哈爾敦は、もちろん寧令哥がモデル。
西夏は、北宋にとって敵国であるが、哈爾敦は誠実な太子として描かれる。
愛した惜音に対しても、とことん誠実で優しい。
なのに、哈爾敦のその優しさも、葉昭と自国・北宋のために惜音が利用していると思うと、遣る瀬無かったが、
最後の最後で、惜音が毒酒をあおり、哈爾敦と共にあの世に旅立ったので、
これで少しは哈爾敦も報われたでしょうか。
哈爾敦は、胡青と同じくらい、私mangoが「お付き合いして上げてもいいわよぉ~」と思える(上から目線)
素敵な男性キャラ。
扮する趙磊の個性的な顔立ちがまた良し。
正統派美男ではないから、余計に純粋で誠実な男性に見える。
坊主頭の上で、細い三つ編みを螺旋状に巻いた、シナモンロール系(?)の不思議な髪型もインパクト大。
王維琳(ワン・ウェイリン):沒藏雲(?-1056)~野利遇乞の妻から西夏王の寵妃に
沒藏雲は、西夏の第2代皇帝・李諒祚(1047-1068)の生母、沒藏氏/沒藏太后がモデル。
演じているのは、まさに“西域美女”といった感じの彫りの深い顔立ちの女優さん。
中国では、迪麗熱巴(ディリラバ)や古力娜扎(グリナザ)といった
維吾爾(ウィグル)族の美人女優がかなり活躍しているので、
沒藏雲役もそんな女優の一人なのだと想像していた。
そうしたら、名前からして漢族っぽいこの王維琳は、実際、台湾出身のバリバリの漢族。
まぁ、漢族と言っても、1/4オランダ血統。だから、彫りが深いんですねー。
武漢大學在学中から、キャンパスの女神として、注目されていたみたい。
日本だと、東西混血の女優は、時代劇に起用されにくいけれど、
中国の時代劇だと、“西域”枠が必要だから、混血女優も活躍し易い。
★ 衣装
本ドラマに関わった日本人スタッフの中でも、取り分け注目度が高いのは、衣装のワダエミ。
黒澤明監督の『乱』(1985年)で、日本人女性で初めて米アカデミー・衣装デザイン賞を獲得したワダエミは、
中国の大物監督とのコラボも多く、
中でも、張藝謀(チャン・イーモウ)監督の『HERO』(2003年)や『LOVERS』(2004年)の衣装は有名。
でも、お仕事はあくまでも映画が中心で、ドラマはやらない。
しかも、1937年生まれのワダエミは、すでに高齢で、近年は仕事をセーヴしているという。
そんなワダエミを“一生的偶像”、“唯一的女神”と讃える侶皓吉吉が、
三顧の礼をもって、参加してくれるよう口説き落としたとのこと。
では、そこまで熱烈に迎えられたワダエミが手掛けた『花と将軍』の衣装や如何に。
近年の大陸史劇は、どんどん本物志向になっており、独創性より、史実に即したデザインが増えてきている。
予算がある場合は、ファブリックや刺繍など細部にこだわり、それはそれは、豪華で美しい。
一方、『花と将軍』は、独創性勝負。
低予算の中でアイディア勝負した侶皓吉吉監督の前作『太子妃狂騒曲』の衣装を、
コンセプトをそのままに、増えた制作費で、豪華に進化させた、…という印象。
つまり、ズバリ“色”勝負。
宋代には存在しなかったであろうヴィヴィッドな色、色、色の洪水で見せる衣装。
その特徴が顕著なのが、(↓)こういう軍服。
これを見て、連想した他作品がある。
この映画は、時代背景をハッキリとは特定していないけれど、
実は『花と将軍』と同じ、北宋・仁宗の時代を描いていると捉えられている。
部隊ごとに色分けし、それぞれ単色で表現された衣装の軍服は、『花と将軍』に非常に近い。
ちなみに、『グレートウォール』の衣装担当は、メキシコ出身の女性衣装デザイナー、マイェス・C・ルベオ。
あと、(↓)このように
布の色と動きで見せるという点では…
同じく張藝謀監督作品で、ワダエミが担当した『HERO』の衣装が重なる。
全ての衣装が時代から逸脱したオリジナリティ勝負なのかと言うと、そんな事もなく…
例えば、この仁宗の衣装などは、残されている肖像画に近いですよね。
衣装の話からは反れるが、
ヴィジュアル面で、もう一つ気になったのが、風を送って黄色く色付いた銀杏の葉を舞わすシーン。
銀杏のシーンと言えば、やはり張藝謀監督の『HERO』の印象が強い。
侶皓吉吉の頭の中には『HERO』の色彩のイメージが有って、
それを『花と将軍』に取り入れたかったのではないだろうか。
だからこそ、『HERO』で衣装を担当したワダエミに参加して欲しかったのでは…?
正直言って、『花と将軍』の衣装は、私好みではなかった。
私個人が好む史劇の衣装は、色味がもっとシックで、刺繍など手が込んだ物。でもね…
こういう衣装は、色からもデザインからもポストモダンな雰囲気を醸しており、
ポスター等に使うと、インパクトがあって、素敵ですね。
★ テーマ曲
テーマ曲、オープニングは、崔子格(ツイ・ズーグー)と主演男優・盛一倫のデュエット曲<愛在上>、
エンディングは、盛一倫が単独で歌う<忠貞>。
声質が、切ないバラード向きなのかも。
本当はエンディング曲の方が好きなのだけれど、公式MVがYoutube上に見当たらないので、
ここには問題の無いオープニング曲<愛在上>の方を貼っておく。
かと言って、本格史劇と比べるとチャラく、なんとも中途半端、…というのが第一印象。
が、作風がライトなので、テキトーに流すには丁度良く、ダラダラ視聴を続けていたら、
意外にも物語に史実が上手いこと絡んでいると気付き、
結果的には、“ハマった”という程ではないにしても、案外楽しめてしまった。
『開封府』と時代が重なっているので、“もう一つの『開封府』(コメディ版)”として観るのも、良いかと。
史劇は観る本数が増えると、頭の中で、色んな作品の時代や人物がパズルのように組み合わさっていき、
知らず知らずの間にお勉強になっている。
あと、主人公の二人、趙玉瑾と葉昭の掛け合いは、見ていて和んだ~。
趙玉瑾のことが大好きで、趙玉瑾をやたら褒めちぎる葉昭の可愛らしいこと…!
よく“夫は褒めて育てる”などと言うけれど、葉昭には、そんな計算は無いの。
趙玉瑾は最高!と心底思っているからこそ、何も考えずに思ったままを口にしている。
単純明快な葉昭は、チャーミング。
『武則天-The Empress-』や『ミーユエ 王朝を照らす月』では、女に嫌われる女を演じていた馬思純も、
『花と将軍』では、同性に支持されそう。
褒められて満更でもない様子の趙玉瑾を演じる盛一倫もまたお茶目でありました。