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大陸ドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』②

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2018年8月、チャンネル銀河で始まった大陸ドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』が、
約3ヶ月半後の11月半ば、全74話の放送を終了。


本ドラマに関しては、以下の2部構成で記録を残す。

概要、歴史上の周瑩、時代のキーワード、物語、主人公・周瑩等について

『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』②
その他のキャスト、音声、リンク集、音楽などについて


では、後半、行きます。

★ キャスト その②:周瑩が愛した男たち

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何潤東(ピーター・ホー)吳聘~吳家東院御曹司 周瑩の夫

実際の吳聘は、長いこと肺の病を抱え、死期迫る中で周瑩と形ばかりの婚姻関係を結んだようなので、
二人の間に愛情が有ったかは疑問だし、若死にだから、事業でも足跡を残せず、存在が希薄。
しかし、ドラマでは、貧しく、ろくに大切にされたことの無かった周瑩を、
初めて一人の人間として扱い、優しく接してくれたのが吳聘で、
彼女の人生において重要な人物として描かれる。
史実と同じように早死にするため、早い時点でドラマから消えるけれど、
その後、数々の波乱に巻き込まれる周瑩にとって、一番穏やかで幸せだった時期の象徴のような人物。

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中国語の原題『那年花開月正圓(あの年、花は開き月はまん丸だった)』は、
後年、周瑩が人生を振り返った時、一番幸せだった頃に、吳聘と見上げたお月様を指していると思われる。

懐かしの“皮蛋何(ピータン・ホー)”こと何潤東は、孫儷と『玉観音~玉觀音』以来の共演。
結婚し、四十代にもなり、一時の人気が落ち着いていた彼は、
このドラマで“國民好老公(国民的よき夫)”と、奥様方の注目を再度集めるように。
欲を言わせてもらうなら、清代の御曹司を演じるなら、筋肉は少し落として、役に臨んで欲しかった。
四十過ぎたら、筋肉キャラは封印した方が、俳優としての好感度は高い。



陳曉(チェン・シャオ):沈星移~沈家の次男坊

このドラマの本当の男性主人公は、吳聘ではなく、沈星移である。
沈星移は、陽で吳家に次ぐ富商・沈家の次男坊。
典型的な金持ちの次男キャラで、ドラマ前半は、身勝手し放題。
しかし、我がままも、裏を返せば、素直な証拠。
裕福な家庭で大切に育てられた沈星移は、真っ直ぐなのです。
このドラマのサイドストーリーは、我がままボンボンが、志のある一人の男性に変わっていく成長記でもある。
杜明禮に頭が上がらない父・沈四海が、堕ちてクズ化すればする程
(もっとも、沈四海も根っからの悪人ではなく、致し方ない事情があり、泥沼に嵌ってしまったのだが)、
反比例するように、息子・沈星移の実直さ、精悍さが際立ち、素敵に見えてきた。

ところがこの沈星移、アッサリと死んでしまう。
“ナレ死”どころか、「沈星移は亡くなった」という脇キャラの台詞で、
その死が判明するほどアッサリだったので、私は「これは死んでいないパターン」と生存を確信した。
そしたら、案の定、元気な姿で再度登場。
こっそり日本へ逃亡し、多くを学んでの帰国。
康卓文”の偽名を使い、腐敗した朝廷の改革を訴えるようになる。
沈星移は、架空の人物であるが、
日本へ渡り、変法を説いた清末の“康”姓の人物となると、康有為(1858-1927)を連想する。

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実際の康有為は広東省出身だし、周瑩と接点が有ったなどという言い伝えも無い。
朝廷の腐敗に怒りを覚えた沈星移が、当時改革の先鋒だった康有為に感銘を受け、
あやかって自分も“康”姓を名乗り、改革を広める運動に突き進んで行った、…という設定なのかも?
ちなみに、北京にある康有為の故居は、現在億ションになっており、
2014年、房祖名(ジェイシー・チェン)と柯震東(クー・チェントン)が、お薬で逮捕された現場。(→参照


美形の陳曉は、見た目通りの王子様的な役より、
沈星移のようなヤンチャな役を演じている時の方が、活き活きしているし、面白みがある。
作中、女装も披露しております。

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罰ゲーム的に装った低クオリティ版と、本気の女形の2パターンあり。
並みの女より綺麗。

★ キャスト その③:周瑩を愛した男たち

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任重(レン・ジョン):趙白石~清廉潔白なお役人

腐敗した世の中で、正義を貫くお役人。
当初はお下劣な周瑩を嫌っていたが、実は正義感が強く、自立した女性であると気付いてからは、
どんどん惹かれていくも、堅物すぎる超硬派ゆえ、想いを口にできず仕舞い。
しかも、その生真面目さで、吳漪の“ミサオ奪われちゃいました作戦”にまんまと騙され、
取らなくてもいい責任を取って、愛してもいない彼女を娶り、二人して不幸に。
周瑩とは義兄妹の契りを交わし、気持ちに整理が付いたのかと思いきや、実のところ彼女への愛は変わらず。
扮する任重は、正統派美男ではなく、どちらかと言うと胡軍(フー・ジュン)のような、やや泥臭い雰囲気で、
これまで無関心だったのだけれど、このドラマの趙白石だと、本人が持つ無骨さが活かされていて魅力的。



高聖遠(アーチ―・カオ)圖爾丹~新疆迪化の大商人

圖爾丹は、遠く迪化まで商売に行った周瑩が出逢う現地の大商人。
周瑩の豪快さや頭の良さを敬い、良き友となり、吳家に商売を任せるようになる。
圖爾丹の周瑩に対する気持ちは、あくまでも“同志”だと思っていたら、実は一女性としても愛しており求婚。
アメリカ華人俳優で、『CSI:科学捜査班』等でお馴染みだった高聖遠は、
2014年、周迅(ジョウ・シュン)と結婚してからは(→参照)、大陸の事務所とマネージメント契約を結び、
お仕事も中華圏がベース。
見た目がバタ臭く(実際には両親とも華人らしいが)、中国語もタドタドしいせいか、
エキゾティックな“ガイジン枠”で役が与えられがちですね。



つまりね、この『月に咲く花の如く』は、
聡明でチャーミングな周瑩が、出逢った男性たちを、片っ端からトリコにしていくという
周瑩モテモテ伝説”を描いたドラマでもある。
こういう完璧なモテ女の役は、林心如(ルビー・リン)の大好物。
林心如が演じるとイラっとさせられるのに、孫儷だと、同性の視聴者も魅了されてしまうって、
二人の女優の差は一体ナンなのでしょう…。

★ キャスト その④:吳家旦那衆

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周瑩が嫁いだ吳家は、東院を頭に、西院、南院、中院から成る。
それぞれの家長は4兄弟で、全員の名前を長男から順に並べると、“文武雙全(=文武両道)”となる。


張晨光(チャン・チェングアン):吳蔚文(1830-187)~吳家東院 吳氏兄弟長男 吳聘の父

長男・吳蔚文は、実在の大物塩商人兼朝廷の高官。
張晨光は、名門一族の頂点に立つ人物に相応しい威厳あり。


侯長榮(ホウ・チャンロン):吳蔚武~吳家西院 吳氏兄弟次男

吳蔚文が死んだ直後は、この次男・吳蔚武じゃ吳蔚文の代わりは務まらない…と思ったけれど、
徐々に威厳が出てきましたね~(弟たちが駄目過ぎるから、イヤでもシッカリしてくるのかも)。
侯長榮は国家一級演員。ほっそりスラリと長身で、“清代名家の旦那様”のイメージにぴったり。


田小冰(ティエン・シャオビン):吳蔚雙~吳家南院 吳氏兄弟三男

惚れた弱みで、妻・柳氏の尻に敷かれっ放し。
良くも悪くも無頓着で、簡単に柳氏に言いくるめられ、そのせいで南院を崩壊に導いてしまう…。


譚希和(タン・シーホー):吳蔚全~吳家中院 吳氏兄弟四男

占い大好きオジさん(笑)。いつも手に数珠はマストアイテム。
実際の周瑩も、厄払いで重病人・吳聘に嫁がされたというくらいだから、
当時、今以上に迷信や占いが人々の身近にあり、信じられていたのは、確かであろう。
私自身は、一般現代人と比べても、現実派なので、いちいち占いの話を出されると、「うざっ…」と思うが、
吳蔚全くらいシツコイと、逆に、面白くて、好きになっちゃうワ。
扮するは譚希和。譚希和と言えば…

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『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』で、いつも梁帝のお側にいた高公公ですよねー。
控え目なようでいて、実は結構世渡り上手な高公公は、若干不気味で印象に残ったが、
『月に咲く花の如く』の占いオジさんも、ウザ面白くて、ドラマの良いアクセントになっておりました。


ついでなので、吳家の御夫人からも、一人挙げておく。
小さな役ながら、とっても気になったのが、陳氏。

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何が気になるって、髪型とか顔の雰囲気とか、よく絵に描かれている清代の女性のまんま!
演じた孫儷以上に、周瑩の肖像画にも似ているし。
この陳氏は、吳家西院・吳蔚武の妻で、演じているのは陳劍月(チェン・ジェンユエ)
実はこの陳劍月…

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私生活でも吳家西院二爺・吳蔚武(侯長榮)とリアル夫婦。
今では、一人娘も結婚して、孫をもつおじいちゃま・おばあちゃまになっておられます。

★ キャスト その⑤:クセ者

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劉佩(リウ・ペイチー):周老四~周瑩の養父

お金に困る度に、幼い内に拾った周瑩を、転売するような男だから、ろくな養父じゃない!と思っていたが、
実のところ、周老四なりに周瑩を大切にしており、周瑩もそれを分かっていて、二人の絆は強固。
縛られることが嫌いな自由人だし、博打好きな上、手癖も悪く、しばしば周瑩に迷惑を掛けるけれど、
劉佩がとにかく上手く、しょーもない周老四が憎めない愛されキャラに。
本ドラマの周老四は、劉佩が日本で広く知られるようになった『北京ヴァイオリン』(2002年)の劉成と並ぶ
劉佩田舎モン二部作”に挙げたいハマり役。

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同じ無教養な田舎モンでも、『北京ヴァイオリン』の劉成は純朴系で、
本ドラマの周老四はガメツイ系と一見正反対なのだけれど、根っこが善良なのは同じ。

『月に咲く花の如く』で劉佩好きになっちゃったー!もっと劉佩を見たーい!という皆さま、
比較的最近日本に入ってきた他の劉佩出演作には、上官儀に扮したドラマ『武則天秘史~武則天秘史』や、
黃鶴に扮した映画『空海 KU-KAI』(2017年)等がございます。



胡杏兒(ミョーリー・ウー)胡詠梅~胡家のお嬢様

胡詠梅は、古月藥材行を営む父・胡志存が、吳蔚文と親しいこともあり、幼馴染みの吳聘の許婚になる。
吳聘が昏睡状態に陥った時、沖喜”で邪気を払うため、予定を前倒しして結婚してくれ!と吳家から頼まれ、
心底LOVE吳聘な胡詠梅は、当然その要望に応じるつもり。
胡詠梅に関するここら辺のくだりは、言い伝えられている実際の周瑩のエピソードを使ったものと思われる。
ところが、このドラマでは、父・胡志存が、可愛い娘・胡詠梅が寝たきりの吳聘に嫁ぐことを阻止したため、
結局代わりの周瑩が沖喜”で吳聘の妻になってしまったから、胡詠梅は彼女に憎悪を募らせる。
当の吳聘は、周瑩を大好きで、胡詠梅には興味が無いのだから、逆恨みなのだけれどねぇ…。
胡詠梅にはストーカー気質があり、「本当は吳聘は私と一緒になりたかった」と思い込み、
周瑩に逆恨みして暴走するから、タチが悪い。
但し、彼女の攻撃は詰めが甘いので、どうせ周瑩は負けないという安心感で見ていられる。
演じているのは、日本にもファンが多い胡杏兒。
香港小姐(ミス香港)出身の胡杏兒は、長身でスタイル抜群、個性的な顔立ちの、とても香港的な女性。
その香港っぽい“クセ”のある顔立ちが、ウザい胡詠梅に妙にマッチしていて、かなり印象に残る役であった。



俞灝明(ユー・ハオミン)杜明禮

陽の隆升和を任されている“貝勒”の配下・杜明禮は、
権力と悪知恵を駆使し、吳蔚文を排除し、沈四海からは金を吸い上げる謎多き外道。
陝西商人たちを破滅に追い込むクズだが、彼自身が貝勒の操り人形。
幼少期に情けをかけてくれた胡詠梅を一途に愛すも、実は男性機能を失った太監ゆえ、
彼女に真実を告げることも、添い遂げることも出来ない、可哀相な人…。
私が、このドラマを観て、抱いていたイメージを最も覆された俳優は、この杜明禮を演じた俞灝明である。

俞灝明と言えば、中国版『花より男子』、『一起來看流星雨~Let's Watch The Meteor Shower』F4メンバー。

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オリジナル版で花沢類に当たる端木磊を演じたのが俞灝明。
慕容雲海(=道明寺司)役の張翰(チャン・ハン)は正統派の美男子で、ブレイクを予感させたが、
俞灝明は、当時、私は、正直なところ、「いや、いや、これは違うでしょ」とミスキャスティングだと感じた。
それから間も無くの2010年秋、俞灝明の名がニュースに。
ドラマ『我和春天有個約會(後に“愛在春天~Love In Spring”に改名)』撮影中、
俞灝明は、台湾S.H.E.任家萱(セリーナ・レン)と共に爆破事故に見舞われ、
命こそ助かったものの、全身の39%にも及ぶ重度の火傷。
治療を続け、復帰は果たしたが、火傷の痕は、今でもはっきりと見てとれる。
芸能人じゃなくても、20代前半の男の子が、あんな大火傷を負ったら、精神的にもキツかろう…。
そして、そんな俞灝明を、私が久し振りに見たのが、この『月に咲く花の如く』の杜明禮だったのだが、
上手い、とにかく上手い!俞灝明って、こんなに演技が出来る人だったの?!とびっくり。
複雑な生い立ちで、屈折した杜明禮の感情表現は勿論の事、
京劇好きで、気分が乗ると、鼻歌感覚で、いきなり歌ったり舞ったりする素っ頓狂な杜明禮に、目が釘付け。
人生の最後でも、裏切り者・張長清を刺した直後に、いきなりノドを披露し、
視聴者を戸惑わせておいての唐突の自害。
ちなみに最期の歌は、京劇『霸王别姬』、“四面楚歌”の段(←歌のセレクトが自分の立場にちゃんとリンク)、
追い詰められた虞美人に自分を重ね、刃を首元に当てる杜明禮なのであった…。
見直しちゃたわ、俞灝明。爆破事故に遭って良かったなどとは全然思わないけれど、
もしあの事故が無く、中途半端にアイドル道を進んでいたら、
30歳で今の俞灝明に成れたのだろうか?とは考えてしまいます。



謝君豪(ツェ―・クワンホウ)沈四海~沈家の当主 沈月生、沈星移の父

根は悪い人ではないけれど、吳家への妬みや商売への野望を杜明禮に巧みに利用され、
泥沼に嵌ってしまう沈四海
長男・月生を死に追い遣った敵に、長年へコへコし協力し続けていたと判った時の虚しさよ…。
演じているのは、謝君豪from香港。最近は、“社長キャラ”が定着。
私が最近見た出演作では、『名家の恋衣~抓住彩虹的男人』で演じた染織工房経営者が、
『月に咲く花の如く』と時代が近く、役の設定も近かった。
ちなみに、そちらで演じている経営者の姓は、『月に咲く花の如く』のライバル一族と同じ“吳”です。
謝君豪は、1963年生まれの五十代半ば。
『月に咲く花の如く』の沈四海は、当初、油ののった等身大の謝君豪の雰囲気なのだけれど、
後半になると、謝君豪がもつ香港明星らしいギラギラ感は失せ、60代、70代のような老け込みようで、
沈四海の心労が滲み出ていた。

★ キャスト その⑥:清朝ロイヤルファミリー

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周瑞(ジョウ・ルイ):光緒帝・愛新覺羅載湉(1871-1908)

奚美娟(シー・メイチュアン):慈禧(1835-1908)

『月に咲く花の如く』は、宮廷ドラマではないので、
宮中の人々は、台詞の中に名前こそ出ても、姿を現すことは無いと想像していたのだけれど、
いえいえ、出てきましたねー。
特に、奚美娟が、実際の“西太后”慈禧にえらく似ていたので、驚いた。
『蒼穹の昴~蒼穹之昴』慈禧に扮した田中裕子も、かなり似ていると言われていたが、
奚美娟は、田中裕子超えしましたね。

★ 音声

『月に咲く花の如く』技術面の特徴で挙げられるのは、90%以上が同時録音で撮影されている事。
つまり、声優による吹き替えではなく、俳優本人の地声が採用されている。
同時録音が当たり前の日本だと、「えっ、だから…?」って感じだが、
大陸のドラマ、取り分け時代劇では非常に珍しい。
これは、丁監督のコダワリでもあったようだ。

大陸の吹き替えは良く出来ているので、日本人視聴者は違和感を抱くどころか、気付きもしなかっただろうが、
我々が耳慣れた孫儷の声は、実のところ、“配音女王(吹き替えの女王)”と称される
超売れっ子気声優・季冠霖(ジー・グアンリン)による吹き替えなので、
地声で演じている孫儷を見られるのは、案外貴重。

もっと驚きなのは、中国語に訛りがある香台の俳優も、多くは地声が採用されていること。
香台の俳優の声が吹き替えられていると、目くじら立てる日本人ファンが居るけれど、
それは、中国語が聞き取れないから、おかしさに気付かないのであって、
発音の微妙な差異を聞き取れてしまう中華圏では、吹き替えは必然。
例えるなら、日本の時代劇で、京都のお公家さん集団の中に、一人東北訛りのある俳優が混ざっていたら、
おかしいでしょう?!そういう事。
なのに、本ドラマで、丁監督は、香台の俳優も同時録音の地声を採用したのである。

結果、胡詠梅を演じる香港の胡杏兒は、まったく訛りが無いと、北京語圏の人々からお墨付き。
歌手活動もしている胡杏兒は、やはり音に敏感なのだろうか。

香港人の両親をもち、台湾で英語教育を受け育った吳聘役の何潤東は、
どんなに意識して一字一句正確に発音しようとしても、どうしても抜けない訛りがあり、
プレッシャーも大きかったようだ。
実際、放送が始まると、時代劇らしからぬ彼の訛りが、若干の物議を醸したようだけれど、
丁監督は、「何潤東ならではの優しく温かな語感は、吹き替えでは再現し切れない彼独特のもの」と
何潤東の声を吹き替えなかったことの正しさを主張している。


私自身が、声の演技も上手い!と感心したのは、杜明禮役の俞灝明。
太監らしいマイルドな声色とか、京劇の歌声とか、絶妙であった。

★ リンク集

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『月に咲く花の如く』に登場する食べ物等に関し、過去に記した記事をリンク。
本ドラマに登場する食べ物は、舞台となった陝西の名物が中心です。

★ テーマ曲

テーマ曲、オープニングは、主演女優・孫儷が歌う<忘不掉>
エンディングは、譚維維(タン・ウェイウェイ)が歌う<行走在茫茫月光的中間>
共に、韓紅(ハン・ホン)作曲のとても良い歌。
孫儷は、単独で聴けば、充分上手いのだけれど、
プロ歌手・譚維維と比べてしまうと、どんなにエコーかけて、加工しても、聴き劣りしてしまいますね。






時代背景が近い“民間人モノ”だと、
『月に咲く花の如く』が突出して面白かった。

主人公・周瑩が、若くして未亡人となり、婚家の家業を引き継ぎ、
男尊女卑の時代にも拘わらず、天賦の商才で成功を収めた、という大筋だけ史実で、
肉付けの90%はフィクションだが、
清末の動乱を背景に、巧いエンターテインメント作品に仕上げていると感心。
70話以上の長いドラマなのに、大波小波が絶え間なく押し寄せる練り込まれた脚本も、俳優の演技も、
共に優秀で、まったく飽きることが無かった。

史劇と言っても、難しい知識は不要で、朝ドラ感覚で気楽に観られるドラマなので、
(本心を言えば、歴史の知識は、無いより有った方が、ドラマを絶対により楽しめると思う)、
日本、韓国、台湾等のドラマくらいしか観たことがないという大陸史劇初心者にもお勧め。
一応“朝ドラ”と形容したが、衣装、美術、セット等々、日本の朝ドラと比べ、規模もクオリティもずっと上です。


チャンネル銀河、平日夜11時枠、この『月に咲く花の如く』の後は、
2018年11月13日に、すでに『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』が始まっている。
『月に咲く花の如く』で孫儷ファンになった視聴者を、そのまま掴んで離さない!という目論見なのでしょう。
『月に咲く花の如く』が朝ドラなら、『羋月』は大河ドラマって感じ。

第55回金馬獎受賞結果+勝手にファッションチェック♪

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2018年11月17日(土曜)、台北の國父紀念館にて、第51回金馬獎の授賞式開催。
私は、friDay影音のライヴ中継をyoutubeで観ていたのだけれど、
日本時間の夜9時20分頃、急に画面が真っ暗になり、あれこれいじってみたのだが、以降復旧せず。
結局、friDay影音は諦め、台視のライヴに切り替えたら、問題なく視聴できたのだが、
例年通り長々と続くイベントなので、何度も寝落ちし、途中見逃してしまった箇所多数。
皆さまは、金馬獎授賞式、ご覧になりましたか?

今年の金馬獎では、最多ノミネート数12部門の張藝謀(チャン・イーモウ)監督最新作『影~Shadow』や、
2番目に多い8部門にノミネートされた、台湾唯一の希望『誰先愛上他的~Dear Ex』が、
どこまで結果を残せるのかといった点に注目。
また、ノミネートされている作品の多くが、現在開催中の東京フィルメックスのラインナップに入っているので、
日本の映画ファンも例年以上に注視していたことでしょう。


では、行きます。
今年の金馬獎、影后/影后の座に就いたのは、(↓)こちらのお二方。

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『誰先愛上他的~Dear Ex』の謝盈萱(シエ・インシュエン)と、
『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』の徐崢(シュー・ジェン)。

最佳女主角(最優秀主演女優賞)も最佳男主角(最優秀主演男優賞)も、強豪揃いの大接戦枠。
そんな中、主演女優賞のトロフィを手にしたのは、
ノミニーの中で最も知名度の低い台湾の謝盈萱であった。
台湾映画は全体的にノミネート数が少ないので、台湾の人々の国民感情を意識して、
“同情票”のような形で、何か賞を与えることになったら、イヤだと私は懸念していたのだが、
謝盈萱の受賞なら、大納得。
謝盈萱は、長いこと舞台を中心に活動してきた“劇場女神”と称される女優さん。
映像作品への出演はまだ少なく、知名度もイマイチだが、実力は折り紙付き。
この受賞を機に、活動の幅が広がるかも知れませんね~。
(かなり個人的な事だが、今回この授賞式を見ていて、
謝盈萱が、私の知り合い、長崎出身のKちゃんと瓜二つであることに気付いた。)

徐崢に主演男優賞をもたらした『ニセ薬じゃない!』は、今秋、東京・中国映画週間で上映された作品。
徐崢はコメディの印象が強いけれど、その『ニセ薬じゃない!』では、
序盤はイメージ通りの胡散臭い徐崢で、徐々にシリアスに変化し、最終的に感動させてくれる。
この主演男優賞は、私個人的には、
『迫り来る嵐』の段奕宏(ドアン・イーホン)に獲って欲しかったという気持ちも無きにしも非ずなのだが、
徐崢の演技も確かに良かったのヨ。
ほったらかしになっている『ニセ薬じゃない!』の作品詳細は、近々当ブログに挙げます。



最佳劇情長片(最優秀長編作品賞)も気になりますよね?

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最優秀長編作品賞に輝いたのは、『象は静かに座っている~大象席地而坐』。
2017年10月、こんな輝かしい日が来ることを知らぬまま、
29歳の若さで自ら命を絶ってしまった胡波(フー・ボー)監督の遺作。
本作品は、最優秀長編作品賞以外にも、最佳改編劇本(最優秀脚色賞)も受賞。
監督不在のため、代わりにトロフィを受け取ったのは、胡波監督のママ。
観客席を抜いたカメラでは、あちらこちらで有名俳優たちも、涙していた…。
この『象は静かに座っている』も、今年のフィルメックスのラインナップに入っているのだが、
上映は本日のたった一回ポッキリ。
約4時間という長尺と、商業性の低さがネックになりそうだけれど、
どこか勇気ある配給会社が買ってくれることを切に願います。



その他、日本人でも関心が高い重要な項目に絞り、(↓)以下に受賞結果を。

最佳劇情片(最優秀作品賞)
『象は静かに座っている~大象席地而坐』:胡波(フー・ボー)監督

最佳導演(最優秀監督賞)
張藝謀(チャン・イーモウ)監督:『影~Shadow』

最佳男主角(最優秀主演男優賞)
徐崢(シュー・ジェン):『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』

最佳女主角(最優秀主演女優賞)
謝盈萱(シエ・インシュエン):『誰先愛上他的~Dear Ex』

最佳男配角(最優秀助演男優賞)
袁富華(ベン・ユエン):『トレイシー~翠絲』

最佳女配角(最優秀助演女優賞)
丁寧(ディン・ニン):『幸福城市~幸福城市』

最佳新導演(最優秀新人監督賞)
文牧野(ウェン・ムーイエ):『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』

最佳新演員(最優秀新人俳優賞)
鍾家駿(ジョン・ジアジュン):『海だけが知っている~只有大海知道』

最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)
文牧野、韓家女(ハン・ジアニュウ)、鍾偉(ジョン・ウェイ):『ニセ薬じゃない!』

最佳改編劇本(最優秀脚色賞)
胡波(フー・ボー):『象は静かに座っている』


結果、最多ノミネート数だった『影』が、4部門でトロフィを獲り、やはり最多受賞。
次いで、『ニセ薬じゃない!』、『誰先愛上他的』、
そして、『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮)~地球最後的夜晚』の3部門受賞と続く。
畢贛(ビー・ガン)監督作品『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』は、上の表には記載が無いけれど、
最佳音效(最優秀音響効果賞)、最佳攝影(最優秀撮影賞)、
最佳原創電影音樂(最優秀オリジナル映画音楽賞)で受賞の大健闘。
これも今年のフィルメックスで上映されるが、一回ポッキリのレイトショウのため、私は泣く泣く断念。
でも大丈夫、すでに日本で配給が付いています!


あとねぇ、今年は日本人も受賞しております。

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谷垣健治が何鈞(ホー・ジュン)嚴華(イエン・ホア)と共に『邪不壓正~Hidden Man』でのお仕事が評価され、
最佳動作設計(最優秀アクションデザイン賞)を受賞。
「中国語は苦手で」と言いながらも、
タドタドしい中国語でスピーチする様子は微笑ましく、会場を和ませていた。
(私、谷垣健治は広東語は喋れても北京語はカラッきし駄目だと思っていたので、
実はコミュニケーションとれるレベルまで喋れたのかと、逆に驚いた。)
この谷垣健治、『邪不壓正』にみならず、
『モンスター・ハント2~捉妖記2』でも、単独でこの部門でノミネートされていたの。
アクションの本場・中華圏で、一人の日本人が、2作品のアクション設計で評価を受けるなんて、凄い事ですヨ。
おめでとうございます!



良い事ばかりではなく、今年は(…と言うか、今年“も”?)、政治臭漂う両岸問題が勃発。
好きな映画の仕事をしたいだけの映画人たちが、
政治に利用されたり、問題に巻き込まれるのは、本当に気の毒に思う。
(さらに言うと、もっとイヤなのは、中華圏とは何の関係も無いクセに、
中台の問題になると熱くなり、台湾代表気取りで大騒ぎする外野の日本人が居ること。
中華圏や映画に詳しくない人程よく吠える。
そういう日本人の大騒ぎを目にしてしまうと、本当にゲンナリさせられる…。)



受賞結果を確認した後は、
当ブログ恒例(…実際には、気が向いた時にしか更新しておりませんが)、
毎度の“勝手にファッション・チェック♪”を簡単に。
今年の金馬獎は、大物俳優がズラリと出席し、圧巻であった。
こんな豪華な顔ぶれ、近年最強じゃない…?!

★ 男子の部

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超(ダン・チャオ)

妻・孫儷(スン・リー)と『影』で共演し、それぞれ主演女優賞/主演男優賞にノミネートされ、
夫婦揃って金馬に出席。
超は正統派ブリオーニで決め、奥方とのバランスもバッチリ。



胡歌(フー・ゴー)

胡歌は、ピアジェのイメージキャラクターという身分で、金馬獎に出席し、
ピアジェの女性CEOシャビ―・ノウリをエスコートしながら、レッドカーペットに登場。
お召し物も、同じくイメージキャラクターをしているジョルジオ・アルマーニ。
主演ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』は台湾でも大ヒットを記録したため、
レッドカーペッに胡歌が登場すると、けたたましいまでの歓声が。
今回の金馬獎会場では、
「つい最近まで一緒に撮影していた小鎂(=桂綸鎂 グイ・ルンメイ)にバッタリ遭遇した」そう。
その共演作は、『薄氷の殺人』(2014年)の刁亦男(ディアオ・イーナン)監督最新作、
『南方車站的聚會~Wild Goose Lake』を指しているものと思われる。コレ、超観たい…!
そんな胡歌、台湾には、本来4泊5日の滞在予定であったが、
政治問題勃発の為か、3泊で切り上げ、すでに帰国。



劉華(アンディ・ラウ)

クラシックかつフォーマルなエルメネジルド・ゼニアで身を包んだ劉華もまた
レッドカーペットに登場した時の歓声が凄かった。
57歳で未だこんなに黄色い声が上がるのかと、ビックリ。
初めて金馬獎に出席したのは1987年で、撮った作品はすでに150本だってー。



張震(チャン・チェン)

男性のフォーマルは、どのブランドも基本的に似ていて、面白みに欠けるものだが、
ちょっと違ったのが、今回、最優秀主演男優賞のプレゼンターとして出席した張震。
縦縞が入ったダブルのスーツは、ヴィヴィアン・ウエストウッド。
張震は、シンプルカジュアルも、如何サマ英国紳士風の(?)こういうモード系も、どちらもイケる。
時計は、イメージキャラクターをしているカルティエです。



彭暢(ポン・ユーチャン)

『象は静かに座る』で主演男優賞にノミネート!
彭暢は、最近、日本で、映画『閃光少女』(2017年)も小規模ながら公開されてるけれど、
まさか、『象は静かに座る』のような作品に出演する実力派だったとは。
現在24歳の彼は、今年の金馬獎、最優秀主演男優賞の最年少ノミニー。
実年齢以上に若く見え、18歳と言っても通じそうな彭暢は、一張羅のディオールで。
この子、大陸明星らしからぬ普通っぽさで、まるで七五三のお祝いのようで、可愛らしい。

★ 女子の部:モノトーン

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男性より華やかな女子の部、行きます。
まずは、定番のブラック&ホワイトから。

桂綸鎂(グイ・ルンメイ)

桂綸鎂は、声を担当したアニメ『オン ハピネス ロード~幸福路上』が、
最佳動畫長片(最優秀長編アニメーション)にノミネートされ、金馬獎に出席。
同時に、その部門のプレゼンターも務め、偶然にも自ら『幸福路上』の受賞を発表。
お召し物は、大きくVに開いた胸元と、ハイウエストの太いベルトが特徴的なシャネル。
桂綸鎂は、数年前にも、こういうシルエットのディオールを着て、映画祭に出席していた記憶が。
多分、このシルエットが好きなのでしょうね。
彼女はいつも無い胸を無理に寄せたり上げたりせず、堂々と貧乳を晒し、服をモード系に装うのが上手い。



孫儷(スン・リー)

『影』で主演女優賞にノミネートされた孫儷は、同作品で主演男優賞にノミネートされた夫・超と揃って出席。
身ごろは色もシルエットも至ってシンプルで、胸元のゴールドの大きなおリボンがアクセント。
左部分は、本来、肩にかけるようデザインされているが、
孫儷は、両方落とし、完全な肩見せスタイルに。
ショートヘアだから、何を着ても、セクシーになり過ぎたり、甘くなり過ぎず、
程度にモード感が出るのが良いですよね。



周迅(ジョウ・シュン)

岩井俊二監督初の中国語作品『你好、之華~Last Letter』で、主演女優賞にノミネートされた周迅は、
シャネルのオフホワイトのガウンで登場。
手にしているクラッチバッグもシャネル。
周迅は、乾隆帝の皇后を演じた清宮ドラマ『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』も最近大ヒット。
今回の金馬獎では…

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『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』で雍正帝の妃を演じた孫儷と共にノミネートされた事から、
“娘娘対決”などとも言われた。



趙濤(チャオ・タオ)

夫・賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督最新作『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト~江湖兒女』で、
主演女優賞にノミネートされた趙濤が選んだのは、ラルフ&ルッソ、2014年SSコレクションからの一着。
肩からケープがかかった白のシルクサテン。
全体にピンクの小花が散りばめられているため、一つ間違うと、ガーリーになりそうだけれど、
アラフォー趙濤は、上品に着こなしております。
なお、趙濤主演の『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト』は、今年のフィルメックスのクロージング作品。
チケットはすでに完売しているが、日本での配給がすでに決まっているので、ご安心を。

★ 女子の部:色モノ

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無難なモノトーンだけではなく、色モノも有り。
今年の金馬獎では、特にヴィヴィッドなカラーが結構出ております。

曾美慧孜(クロエ・マーヤン)

今秋東京国際映画祭で上映された陳果(フルーツ・チャン)監督最新作
『三人の夫~三夫』で主演女優賞にノミネートされた曾美慧孜は、鮮やかなイエローのミュウミュウで。
ミュウミュウって、どちらかと言うと、若くてキュートな女の子のイメージがあるけれど、
個性派の曾美慧孜が着ると迫力。



徐若瑄(ビビアン・スー)

最佳剪輯(最優秀編集賞)、最佳劇情短片(最優秀短編作品賞)、
そして最佳紀錄片(最優秀ドキュメンタリー作品賞)のプレゼンターとして出席した徐若瑄の
マーメイドラインの真っ赤なザック・ポーゼンも、会場で目を引いた。リップも、装いに合わせ、真っ赤。
一つ残念だったのは、歩き方。
ドレスの裾に隠れている足元は、恐らく相当高いヒールを穿いているものと思われる。
まるで竹馬に乗っているかのような、ギコチナイ歩き方になってしまったのが、惜しい。



許晴(シュイ・チン)

真っ赤なら、許晴も。
『邪不壓正~Hidden Man』で助演女優賞にノミネートされた許晴は、
真っ赤なスパンコールで埋め尽くされたアルベルタ・フェレッティのパンツスーツで出席。
許晴は、最近、カチッとしたシルエットや、マニッシュな物を好んで着ているように見受け、今回もその傾向。
一つ間違えば「ゲッツ!」のダンディ坂野になってしまいそうだけれど、
お洒落な許晴は、服に負けておらず、エレガントでとても素敵であった。
ちなみに、出演した『邪不壓正』は、谷垣健治に最優秀アクションデザイン賞をもたらした
姜文(チアン・ウェン)監督最新作です。



惠英紅(カラ・ワイ)

昨年、『血觀音~The Bold, the Corrupt and the Beautiful』で影后の座に就いた惠英紅が、
今年、『トレイシー~翠絲』で助演女優賞にノミネートされ、早くも金馬獎に戻って来た。
お召し物は、シルエットも柄も、レトロで可愛らしい印象のドルチェ&ガッバーナ。
惠英紅、実は昨年の金馬獎でも、ドルチェ&ガッバーナを着用。
但し、色は、総ブラックだったけれど。
58歳のクールビューティ惠英紅が着る花柄ガウンは、とても柔らかで、素敵に似合っていて、
昨年のブラックより、私は好き。

★ 女子の部:光モノ

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メタリックな光モノも、女優さんに人気です。

謝盈萱(シエ・インシュエン)

これまで舞台を中心に活動してきたため、金馬獎とは御縁の無かった謝盈萱は、
『誰先愛上他的~Dear Ex』での初ノミネートを、“金馬”だけに、ゴールドの装いで決め、見事影后の座に!
幸運をもたらしたこのゴールドのガウンは、林薇(リン・ウェイ)という台湾のブライダルブランドの提供。



丁寧(ディン・ニン)

実は、その林薇(リン・ウェイ)を着て、トロフィを手にした女優がもう一人。
『幸福城市~幸福城市』で助演女優賞を獲得した丁寧である。
丁寧のは、正面から見ると、Vに開いた胸元も、スリットの入った足元も大胆で、“布使い少な目”なのだが…

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横から見ると、はみチチで、
後ろから見ても、お尻の割れ目ギリギリまで、ガバッと開いていて、さらに布使い少な目。
適度に脂が乗った48歳の背中が、これまたやけに艶めかしい。
セクシーを超越したマニアックな世界を感じる。
もー良いのか悪いのか、私にはよく分かりませんが、キョーレツなインパクトを残したのは確か。
とにかく、今年、二人の女優に賞をもたらした事で、
この先、林薇は、縁起を担ぎたい台湾女優たちの御用達となるでしょうか。



劉嘉玲(カリーナ・ラウ)

劉嘉玲は、事務所の後輩・張震と、主演男優賞のプレゼンターを担当。
ブルーブラックに光り輝くお召し物はアトリエ・ヴェルサーチ。
寄って見ると、ウロコのような物が幾多にも重なった凝った作りで、まさに鯖。
鯖みたいで変!と言っているのではなく、光モノをシックに着こなしていて、素敵であった。



鞏俐(コン・リー)

大物中の大物・鞏俐は、今年の金馬獎の審査委員長。
お召し物の色味は、劉嘉玲と似たダークなシルバーだが、
肌見せは控えめなストイックなシルエットで、
長く垂らしたシンプルなベルトがアクセントになっているジヴァンシー。
一挙手一投足がいちいちドラマティックで、迫力の鞏俐お姐サマであった。
張藝謀監督が、最優秀監督賞を受賞した際には、元交際相手の鞏俐をカメラが何度も抜いて撮っていたが、
そういう時にも堂々としておられた。圧巻…!




今年の金馬獎は、出席者の顔ぶれがとにかく豪華で、それだけでも華やかであった。
映画も、観たいのがいっぱい。
その内、何本が日本で公開されるでしょうか。

映画『ニセ薬じゃない!』

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【2018年/中国/117min.】
2002年、中国・上海。
小さな店で、インド製強壮剤を売りながら細々と生活しているバツイチ中年男・程勇のもとに、
慢性骨髄性白血病を患う呂受益という男性から、インド製治療薬密輸の依頼が舞い込む。
なんでも、中国で正規に使われているスイス製の治療薬グリニックは3万7千元もし、
多くの患者の経済的負担になっているが、
それがインドだと、同じ効果のある治療薬がずっと格安で買えるのだという。
それを中国に密輸し、5千元で売れば、買う患者はいくらでも居るから、商売になると説得されても、
さすがに密輸は危険だと躊躇する程勇であったが、
手術が必要な老父や、元妻に奪われそうな一人息子・小澍のことを考え、
金儲けのために、意を決していざインドへ。
早速、治療薬の製造工場を訪ねるが、実績も信用も無い程勇に、先方も怪訝な顔。
程勇は、中国市場の可能性を説き、一ヶ月で売り切ると断言し、
なんとか百瓶の治療薬を譲ってもらい、帰国。
白血病の娘を抱えるダンサーで、患者に広いネットワークをもつ女性・思慧と知り合い、
彼女のツテで、インド製治療薬を5千元で販売し始めると、次から次へと注文が舞い込み、
あっと言う間に百瓶完売。
お陰で、印度の製薬会社とも代理店契約を結ぶことに成功。
患者たちは格安で薬が入手できることを喜び、程勇も商売を順調に広げてゆくが、
そんなある時、そのインド製の非正規治療薬で病が悪化したという苦情が入り…。




原題は『我不是藥神~Dying to Survive』。
2018東京・中国映画週間の閉幕上映で鑑賞。
(→東京・中国映画週間の閉幕式については、こちらから。)

2018年7月、現地中国で公開されるやいなや、大ヒットを記録した話題作。
つい先日閉幕した第55回金馬獎でも、
最佳新導演(最優秀新人監督賞)、最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)、
そして、最佳男主角(最優秀主演男優賞)の3部門で受賞の快挙。
(→第55回金馬獎については、こちらを参照)

その新人監督賞を手にしたのは、
1985年生まれ、本作品が初の長編監督作品となる文牧野(ウェン・ムーイエ)
私が観た過去の文牧野監督作品は、オムニバス映画『恋する都市 5つの物語』(2015年)の中の一篇で、
楊冪(ヤン・ミー)と鄭開元(チェン・カイユアン)を主人公にした
チェコ・プラハで巻き起こるショートストーリーのみ。
文牧野監督の力量を計るにはあまりにも短い小品だったので、
その後に同監督が撮ったこの長編作品が、どのような物になっているのか、想像しにくかった。

最優秀脚本賞受賞の脚本は、
文牧野監督が、韓家女(ハン・ジアニュウ)、鍾偉(ジョン・ウェイ)と共に記した物。




本作品は、スイス製の高額な薬が買えず、困っている慢性骨髄性白血病の患者・呂受益から
インド製のジェネリック薬を密輸してくれと頼まれ、
自分もお金が必要だったため、私欲で、この話に乗った程勇が、
次第に、薬を本当に必要とする患者たちの為を考えるようになり、危険な闇商売を続け、
やがて世の中をも動かしていく社会派人間ドラマ


本作品が現地で公開された時、よく使われていたのが、“中国版『ダラス・バイヤーズクラブ』”という表現。

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監督ジャン=マルク・ヴァレ×主演マシュー・マコノヒーによる2013年度のアメリカ映画。
エイズは同性愛者がかかる病という誤った情報が信じられていた80年代、
アメリカの中でも特に保守的な地・テキサス州で、
同性愛を小馬鹿にしていた超女好きなカウボーイが、HIV感染で余命30日の宣告を受け、
病気について調べ始めたところ、政府と製薬会社の癒着で毒性のある薬が出回っていることを知り、
メキシコから未承認の治療薬を密輸入し、同じ病に侵され人々にそれをさばいていくという
実在のアメリカ人ロン・ウッドルーフの実話を元にした物語。


“中国版『ダラス・バイヤーズクラブ』”『ニセ薬じゃない!』も、実話がベース。
主人公・程勇のモデルになったのは…

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1968年生まれ、無錫に暮らす陸勇という男性。
この陸勇氏は、2002年に、慢性骨髄性白血病の診断を下される。
骨髄移植を希望したところで待ち時間が長く、その間、薬で体を維持する必要があるのだが、
当時、中国で主に使われていた治療薬は、非常に高価なスイス製のグリヴェック(イマチニブ)。
自己負担になるため、一年分の薬代だけで、約30万人民元(≒480万円)、
さらに検査費など諸々含めると、計35万人民元(≒565万円)の出費は必至。
陸勇氏は工場経営者の跡取りで、地元では比較的裕福な男性であったが、
百万人民元あった蓄えの内、70万元が、2年間の治療で消えていったという。

英語のできる陸勇氏は、海外の患者たちとネットでの交流を通し、
インドにグリヴェックを模した薬があり、効果も上々であることを知り、
日本経由で、一ヶ月分を約4千元(≒6万5千円)で購入、
自ら服用することで、効果が有ることを確認。
当然、日本経由ではなく、インドから直接買った方が安いので、
薬の瓶に記されていた生産工場にコンタクトをとり、以降、毎月約3千元(≒4万8千円)で購入を続行。

薬の効果や自分の経験を、同じ病に苦しむ人々に伝えたり、薬の購入を手助けしている内に、
彼を頼り、コンタクトをとって来る人々がみるみる増え、いつしか陸勇氏のこのサポートは仕事に。
前述のように陸勇氏は裕福な男性なので、この仕事は儲け度外視で、
あくまでも同じ病に侵された人々を助けたいがためである。

それから十数年程の間に、慢性骨髄性白血病患者の間ですっかり有名になった陸勇氏は、
“藥神”、“藥俠”と呼ばれるまでになっていたのだが、
2013年11月、ニセ薬を販売した容疑で一度逮捕され、後に保釈。
実際にはニセ薬ではないのだけれど、
法律上、医薬品として登録されていない物は“ニセ薬”扱いになってしまう。

続いて2015年には、クレジットカード管理妨害とニセ薬販売の容疑で起訴。
陸勇氏自身は無罪を訴え続け、また、多くの患者たちが署名を集め、
結果、裁判所は陸勇氏の起訴を撤回。
「自分では良い事をしていたつもりが、被告になってしまい、正直、心が折れました。
でも、同じ患者の皆さんが、署名を集め応援してくれたことで、
自分がやってきた事が、人々に喜ばれていた証に感じられ、とても感激しました」と陸勇氏。

これら一連の出来事は、大手メディアに取り上げられ、医療制度に対する国民の関心も高まったという。
さらに、この実話は、『ニセ薬じゃない!』という映画にもなり、大ヒット。
映画の最後に出る説明によると、
その後、中国では、輸入薬の関税撤廃や、保険の適応など、様々な改善策が打ち出されたようですね。




映画の主要キャストをチェック。

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薬の密輸と密売を手掛けることになる程勇に徐崢(シュー・ジェン)
程勇に治療薬の密輸を依頼する慢性骨髄性白血病患者・呂受益に王傳君(ワン・チュエンジュン)
白血病の娘を抱え、患者たちに広いネットワークを持つダンサー劉思慧に譚卓(タン・ジュオ)
程勇の仕事を手伝うことになる病魔を抱えた出稼ぎ労働者“黃毛”こと彭浩に章宇(ジャン・ユー)
英語ができるため、程勇の通訳に駆り出される劉神父に楊新鳴(ヤン・シンミン)
程勇の元義弟で、ニセ薬の捜査を担当する刑事・曹斌に周一圍(ジョウ・イーウェイ)等々。


映画が現実の話と最も違う点は、実際の陸勇に当たる主人公・程勇を、白血病患者に設定していない事。
陸勇氏も、「主人公の設定が自分と違うため、
映画公開後、観衆の誤解から、自分に負の影響が出るのではないか…」と懸念を吐露している。

映画の主人公・程勇は、小さな店でインドの怪しい強壮剤を売り、なんとか生活している男。
本来は、密輸なんて大それた事に手を出す気など無い小者だが、
老父は寝たきりだし、息子・小澍も別れた元女房に取り上げられそうだし、
どうしてもお金が必要で、切羽詰まって薬の密輸と密売を請け負うことになる。

「自分が誤解されてしまう」という陸勇氏の懸念はよく分かるけれど、
一映画作品として、物語をより面白くするなら、
“主人公・程勇自身は患者ではなく、お金のために密輸を始めた男”という設定は“アリ”だと、
出来上がった映画を観て思った。
この映画は、のらりくらりと暮らしていた程勇の心に、遅ればせながら、善意が目覚め、
他者のために動く市井の小さな英雄になっていく、しがない中年男の成長記でもあるのです。


主演の徐崢は、東京・中国映画週間に来てくれました~。

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10分程度ではあるけれど、本作品について語ってもくれた。

徐崢はコメディ俳優の印象が強く、
実際、この映画でも、序盤は、我々観衆がイメージする通りの胡散臭い徐崢。
それが患者たちの苦境を知ったり、仲間の死を目の当たりにして、変わってゆく。
胡散臭い中年男がいきなり聖人に化けたら嘘臭いけれど、
警察の捜査を知り、仕事から手を引くという、患者たちにとっては裏切りともとれる行動に出るなど、
紆余曲折もきちんと描かれている。
もし自分が逮捕されたら、病気の老父や一人息子はどうなるのかと考えたら、
これ以上危険な仕事は続けられないと思うのは当たり前であり、
いきなり聖人になるより人間味も現実味も感じられる。
徐崢は、程勇という中年男性の心の変化を丁寧に演じている。

そんな訳で、前述のように、徐崢は、つい最近、第55回金馬獎にて…

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最佳男主角(最優秀主演男優賞)を受賞。おめでとうございます!



脇も、クセ者がいっぱい。
程勇に最初に密輸の話を持ち掛ける白血病患者・呂受益に扮する王傳君は、
ヒットドラマ『愛情公寓~iPartment』で演じた横浜出身の日本人漫画家・關穀神奇で広く知られ…

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胡歌(フー・ゴー)に似ているなどとも言われ、つまりは、一応イケメン枠の俳優だったのかも知れないが、
最近は個性派にシフトしていて、ついにはこの『ニセ薬じゃない』の呂受益ですヨ。
呂受益は悪い人ではないのだけれど、掴み所が無く、見た目キモイ系で、非常に印象に残る。


黃毛役の章宇は、胡波(フー・ボー)監督の遺作で、
今年の金馬獎・最佳劇情長片(最優秀長編作品賞)受賞作である
『象は静かに座っている~大象席地而坐』の主要キャストだったのですねー。

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先日の金馬獎にも、主演男優賞ノミニー彭暢(ポン・ユーチャン)ら『象は静かに座っている』チームと共に
章宇も出席していた。
『ニセ薬じゃない』では、孫悟空みたいなダサい金髪にした農村出身の20歳の青年を演じているけれど、
実際は1982年生まれで、30代半ば。
元々若く見える中年俳優がハタチに扮しているのではなく、
元々は年相応の章宇が、農村出身のハタチに化け切っていることに驚く。


劉神父は、英語ができるため、通訳として白羽の矢が立つ。
聖職者である彼は、当初、違法行為に手を染めるなど言語道断と拒絶するが、人助けと説得され、仲間入り。
何かにつけ「神の御加護を」、「アーメン」と口にするのは、ベタだけれど、笑える。
(中国の映像作品で、僧侶が何かにつけ口にする「阿弥陀佛~」の代わりに言っている感覚。)


紅一点の劉思慧を演じているのは、『スプリング・フィーバー』(2009年)で見て以来大好きな女優・譚卓。
その後も、企画の大小にこだわらず、作家性、芸術性重視の映画を中心に活動してきた譚卓だが、
最近になって変化。この『ニセ薬じゃない』のみならず…

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大ヒットドラマ『延禧攻略~Story of Yanxi Palace』に高寧馨役で出演し、メジャー入り。
譚卓がまさか于正(ユー・ジョン)ドラマに出演するとは想像していなかった…。
メジャー入りしたことで、芸風が軽く、安っぽくなったかというと、そんな事はなく、
『ニセ薬じゃない』でも、どこか影のあるシングルマザーを譚卓らしく演じており、魅力的。


ニセ薬売買案件を追う警察側では、曹斌に注目。
刑事の曹斌は、程勇と離婚した元妻の弟でもある。
ニセ薬の売買を取り締まり、主犯格を捕えることが刑事としての使命だが、
患者の苦境を目の当たりにしたことで、その使命を果たせなくなり悩む曹斌を、周一圍が好演。
周一圍は、日本では、ドラマ『蒼穹の昴~蒼穹之昴』の梁文秀で知られるようになった俳優だが、
私は、彼の濃過ぎる顔立ちが好みではないため、その後も特別注目することはなかった。
でも、最近、際立って良い演技をするようになっていない…?!
特にドラマ『少林問道~少林問道』の程聞道役で見て、そう感じた。





中国で大ヒットした中国映画が、必ずしも自分の好みに合うとは限らないのだけれど、
これは、噂に違わず、面白かった。
社会問題にスポットを当てた社会派映画とも呼べるが、
いわゆる“社会派映画”の硬さは無く、あくまでもエンターテインメント作品。
題材の似た『ダラス・バイヤーズクラブ』と比べ、最初の方はコメディ要素が強く、笑えるのだけれど、
それが徐々にシリアスになり、終盤では、あちらこちらからすすり泣く声が。
社会性を備えながらも、人間ドラマがしっかり描かれた、とても良く出来た作品だと感じた。
日本でも知られた人気のアイドル俳優などが一切出て来なくても、純粋に一作品として勝負できるハズ。
これは、日本で正式に公開すべき作品でしょー。
元々中華圏の映画が好きな層や、中華なドラマを好んで見る女性層に限らず、
映画は年に数本程度という一般男性まで、幅広い層が楽しめる気がする。



本作品の主演男優・徐崢も来日して行われた2018東京・中国映画週間閉幕式については、こちらから。

徐崢が主演男優賞を受賞した第55回金馬獎については、こちらから。

『幸福城市』何蔚庭監督Q&A

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第19回東京フィルメックスへ。

オフィス北野の内紛が芸能ニュースをちょこっと賑わせたのは、今から9~10ヶ月程前の事だっただろうか。
あの報道を見て、たけし軍団の行く末より、東京フィルメックスの行く末を案じた映画ファンは多いはず。
案の定、間も無くして、フィルメックスの最大スポンサーであったオフィス北野は、映画支援を撤退。
一時は、存続さえ危ぶまれたフィルメックスだけれど、
木下グループという新たなスポンサーが付き、2018年も何とか開催の運びに。
いざ蓋を開けたら、上映ラインナップが、例年以上の豊作で、あれも観たい、これも観たいと嬉しい悲鳴。
豊作すぎて、日程に組み込み切れなかったのか、
以前なら会期中最低でも一作品2度はあった上映が、一度ポッキリになっていたり、
私個人の予定が合わなかったりで、結局最低限の数本しか観られないという皮肉…。


そんなこんなで、今年のフィルメックス、私の鑑賞一本目は、
コンペティション部門で上映の『幸福城市~幸福城市 Cities Of Last Things』
つい先日閉幕した第55回金馬獎で、4部門にノミネートされ、
内、王姐役の丁寧(ディン・ニン)が、最佳女配角(最優秀助演女優賞)を受賞した
マレーシア出身の何蔚庭(ホー・ウイディン)監督最新作。

今回のフィルメックスには、何蔚庭監督が来日し、上映終了後にQ&Aを実施。
何蔚庭監督のお話を聞くのは、2009年、第10回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで、
『ピノイ・サンデー~台北星期天』が上映された時以来、実に9年ぶり。
(そう言えば、NHKアジア・フィルム・フェスティバルも無くなっちゃいましたね。残念…。)

★ 一年ぶりの東京フィルメックス

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色々とゴタゴタは有ったけれど、会場は毎度の有楽町朝日ホール。
やっぱり“毎度”で、会場にはブラブラしているアミール・ナデリ監督のお姿も。

“毎度”じゃなかったのは、映画上映前に流れるCM。
これまで、毎回、上映前に5本は見せられていたビートたけし出演CMが、一切無くなっていた。
オードリー春日&若林が画面に映った瞬間、
「あっ、そう言えば、オフィス北野はもうスポンサーじゃなかったのね」と改めて実感。

★ 『幸福城市~幸福城市 Cities Of Last Things』 何蔚庭監督Q&A

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映画『幸福城市』終了後には、予定通り、何蔚庭監督によるQ&Aを実施。
司会進行役は市山尚三、今回の使用言語は英語。
以下、お話の中で気になった部分を覚え書き程度に残しておく。


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質問
この作品をフィルムで撮ったのはなぜ。

何蔚庭監督
私は、フィルムで撮るのが得意だからです。
幸運にも、台湾にはまだ現像所が有ります。
しかも、フランスのスタジオに、未使用の富士フィルムの在庫を見付けたんです。
映画を撮っている若い人に言いたいです、
どこかに35ミリが残っていることがあるから、諦めずに探してみて!



質問
印象的に使われている曲について。

何蔚庭監督
80年代に流行った台湾の有名な曲で、劉文正(リウ・ウェンジェン)が歌っています。
物語の中の母親が育った頃の曲を探していて、これを見付けました。
しかも、これ、タイトルが<Don't Give Me Too Much Love~愛不要給太多>なので、
物語にもピッタリで、採用を決めました。



質問
キャスティングについて。

何蔚庭監督
台湾で、タフガイの雰囲気をもつ俳優と言ったら高捷(ガオ・ジェ)で、他には居ません。
五月天(メイデイ)の石頭(ストーン)/石錦航(シー・チンハン)に関しては、
一見悪くは見えない悪人をグーグルで探していた時、
たまたま見付けた石頭の写真が、お金持ちで表面的には良い人っぽいけれど、
実は悪そうな雰囲気だったから。



質問
時間を遡っていく手法について。

何蔚庭監督
その手法は、シャワーを浴びている時に思い付きました。
その手法が初めて使われた作品は、
恐らくジェーン・カンピオン監督の『ルイーズとケリー~Two Friends』(1986年)ではないでしょうか。
李滄東(イ・チャンドン)監督もやっています。
私は、ギャスパー・ノエ監督の『アレックス』(2002年)が好きで、これが決定的で、
自分も試してみたいと思いました。

物語に関しては、偶然が起き過ぎる、メロドラマちっく過ぎると、批判も受けました。
しかし、物語は、台湾で実際に起きたニュースにインスパイアされて作ったものです。
離れ離れになり二十年も経ってから、警察で再会した親子のニュースは、実際に有った話です。



質問
撮影監督をフランス人のジャン=ルイ・ヴィアラールにした理由。

何蔚庭監督
私は、ヨーロッパ的な審美眼が好きです。
また、フィルムでちゃんと映画が撮れる人であることも重要です。
フランスに富士フィルムの在庫がある事を教えてくれたのも、実は彼なんですよ。
デジタルは映像がクリア過ぎます。
私は、フィルムの柔らかな風合いが好きなのです。
ピントがズレて見えたりすることがあっても、完璧じゃないのが、むしろ良い。
メイクに関しても同じ。いかなるシチュエーションでも、きちんと化粧しているのは好きではないので、
俳優たちには、ほとんどノーメイクで演じてもらっています。



質問
タイトルについて。

何蔚庭監督
台湾では、広告などにやたら“幸福”の二文字を使う傾向があり、“幸福”で溢れかえっています。
英語のタイトルに関しては、アピチャートポン・ウィーラセータクン監督から、
ネット検索して、他の人が使っていないか確認しろと教わり、『Cities Of Happiness』では駄目でした。
『Cities Of Last Things』は、アメリカの作家ポール・オースターの
<最後の物たちの国で~In the Country of Last Things>を意識しています。




『幸福城市』というタイトルを信じて作品を観ると(…いや、別に最初から信じていなかったけれど)、
えっ、超アンハッピーじゃないの!と唖然としてしまう内容なのだが、
そもそも何蔚庭監督は、皮肉ってこういうタイトルに決めたのですね。

中華圏の監督が撮った中国語作品のQ&Aを英語で進行する事に関しては、
メリットもデメリットも感じた(まぁ、他のどんな事でも、メリットとデメリットは両方有って普通だが)。
より多くの観衆が、監督の言葉をダイレクトに感じ取れるのは、より広く知られた英語だからこそだけれど、
「ここは中国語の方が分かり易い」と思ってしまう部分は、正直言って、やはりボチボチ有った。

★ サイン会

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Q&A終了後は、ロビーでサイン会。
私も、サインを頂きました。
約十年前、NHKアジア・フィルム・フェスティバルに『ピノイ・サンデー』を観に行った事を伝えたら、
何蔚庭監督は「今度はもっと早く日本に戻って来れるようにしたい」と言っておられた。
余談になるが、何蔚庭監督は、小柄な見た目からは想像できない、低音の渋い良い声をしていますよね。


今日は、このあと立て続けに『轢き殺された羊~撞死了一隻羊』を観て、そちらもとても気に入ったので、
記憶がハッキリしている内に、萬瑪才旦(ペマツェテン)監督のお話を覚え書きしておきたのだけれど、
睡魔が襲ってきたので断念いたします。

映画『幸福城市~幸福城市 Cities Of Last Things』 の詳細もまた後日。

『轢き殺された羊』萬瑪才旦+格才讓Q&A

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第19回東京フィルメックス、コンペティション部門で上映の萬瑪才旦(ペマツェテン)監督最新作、
『轢き殺された羊~撞死了一隻羊 Jinpa』を鑑賞。


本作品は、あの王家衛(ウォン・カーウァイ)がプロデュースを手掛け、
今年9月開催のヴェネツィア国際映画祭では、オリゾンティ部門で脚本賞を受賞した話題作。
萬瑪才旦監督は、フィルメックスではお馴染みの監督さんなので、
「新作も11月のフィルメックスで上映されれないかしらぁ~」と願っていたら、
その後発表された上映ラインナップにちゃんと入っていたので、有り難くチケット入手。

★ 『轢き殺された羊~撞死了一隻羊 Jinpa』萬瑪才旦監督+格才讓Q&A

映画『轢き殺された羊』は、
次仁羅布(ツェリンノルブ)の<殺手(人殺し)>と萬瑪才旦監督の<撞死了一隻羊(轢き殺された羊)>
という2ツの短編小説を原作にしているという情報以外何も知らずに観たのだけれど、良かった!
好きなタイプの作品であった。

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上映終了後には、市山尚三司会進行で、萬瑪才旦監督によるQ&Aを実施。
当初予定されていなかった録音技師の格才讓(ドゥッカルツェラン)も監督と一緒に登壇。
以下、印象的だった部分を備忘録程度に書き残しておく。


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質問
2作の短編小説をどのように融合したのか。

萬瑪才旦監督
次仁羅布の<殺手(人殺し)>を読み、映画にしたいと思いました。
しかし<殺手>は、5~6千文字の短い小説なので、一本の映画にするには難しい。
そこで、自分の短編小説<撞死了一隻羊>と合わせようと考えました。
<殺手>は、父の敵討ちをする男の話が軸で、
<撞死了一隻羊>は、轢き殺してしまった羊の魂を再生させようとする話が軸です。



質問
王家衛(ウォン・カーウァイ)監督は、どのような経緯でプロデューサーに?

萬瑪才旦監督
映画の脚本は、4年前にはできていました。
当時、王家衛監督の澤東(ジェットトーン)が、チベットを題材にした映画を作ろうと色々と模索していました。
その時すぐには成立しなかったけれど、後に声が掛かりました。



質問
印象的に使われている曲<O Sole Mio>について。

萬瑪才旦監督
西藏病人(チベットの病人)というバンドで、実は、金巴(ジンパ)役の俳優の実弟が歌っています。
かつて人を殺め、悔いながら生きている瑪扎(マルツァ)が登場する映画の内容と、
歌の歌詞が合っています。



質問
チベットの人々にとって、夢と現実は結び付いているものなのか。

萬瑪才旦監督
そうです。
そういう感覚は、チベットの人々には分かり易いけれど、他の人々には分かりにくいかも知れないので、
映画の冒頭に、あのような箴言をもってきました。
また、運転手の金巴と人殺しの金巴、どちらが夢でどちらが現実なのかはハッキリさせず、
観客の判断に委ねるようにしています。
二人の金巴は表裏一体で、一人の人間の二面性を表しているとも言えます。
実は、小説では、二人は同じ名前ではありません。
“金巴”とは、チベットの言葉で、他者のために施しをするという意味です。
映画の中で、二人がそれぞれ自分の名前を言うシーンでは、
敢えて一人一人別々に映し出し、鏡に映っている人物のようにしています。



質問
録音技師の格才讓について。

格才讓
監督として、映画を一本撮る予定です。
音楽の要素がある遊牧民のロードムーヴィで、
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督と萬瑪才旦監督の協力のもと撮ることになっています。




原作小説が2作品あるという点が気になっていたので、その話が出てきて良かった。
あとねぇ、チベット語版<O Sole Mio>は作中本当に印象的な使われ方をしていて、
この映画を観た人なら、絶対に忘れられなくなるから!
それから、萬瑪才旦監督作品に大抵関わっている録音技師の格才讓って、
雰囲気のある素敵な人だったのですね。

★ サイン会

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Q&A終了後、おトイレへ行き、ホールへ出たら、片隅でサイン会が始まっていた。

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私もサインを頂きました。
サインは、解読不能なチベット文字ではなく、案外フツーに漢字(簡体)であった。

で、萬瑪才旦監督は、いつの間にか、首から白いスカーフ“カタ(…でしたっけ?)”を掛けておられた。
試しに、作品の公式微博を覗いたら…

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格才讓(右から3番目)他、お仲間も首にカタ。
一体いつの間に、どなたが準備を…?
フィルメックス側は、そこまで気が回らないと思うしねぇ…。
以前、東京・中国映画週間の前身、中国★上海映画祭に、『ヒマラヤ王子』(2006年)を観に行った時、
来日した西藏(チベット)族の主演男優・蒲巴甲(プー・バージャ)の首に
在日西藏族ファンの女性たちが、やはりカタを掛けて歓迎していたのを思い出した。




映画『轢き殺された羊~撞死了一隻羊 Jinpa』については、また後日。
東京フィルメックスの会期中、本作品の上映はもう一度も残されていないけれど、
これは正式な一般劇場上映が決まりそうな気がしているのだが、どうでしょうね。
もう一回観直したい。

叶匠壽庵:五穀餅(+蔣勁夫案件とかテレビとか)

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御存知の方も多いと思うが、
ここ数日、“中浦悠花(なかうら・はるか)”という日本人女性の名が、
中華圏の芸能ニュースに繰り返し取り上げられている。
台湾の芸能ニュースに、私のような一般日本人女性が知らない日本人女性が取り上げられている時は、
大抵、日本のAV女優が訪台してイベントを行ったという記事なのだが(苦笑)、今回は違います。
その女性は、日本でも出演作が何本か入ってきている大陸明星・蔣勁夫(ジャン・ジンフー)の交際相手。

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蔣勁夫は、胡歌(フー・ゴー)も所属する大陸大手・唐人の若手俳優で、将来を期待されていたのに、
2018年4月、芸能界を実質引退し、念願の日本に留学。
東京の語学学校に入り、「彼女はいません」と自己紹介している動画などが出回っていたが、
夏には恋人ができたことを公表し、9月には、その女性を伴い、一時帰国。

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その女性こそが、この度、中華圏を賑わせている中浦さん。
当時、“日本の有名モデル”と報道されていたので、私は「・・・・?」。

その後、幸せなハズの蔣勁夫は、行方不明となり、最近久し振りに芸能ニュースを騒がせたのは、
お相手の中浦さんが、蔣勁夫からDVを受けたと、アザだらけになった自身の写真をインスタにアップしたため。
雲隠れしていた蔣勁夫は、11月20日、久々に微博を更新し
「この一ヶ月、後悔の念に苛まれている。
どんな事情が有ったとしても、衝動的に悠花を傷付けてしまい、申し訳なかった。
自分が行った行為への責任をとり、如何なる罰も受けるつもり」と、ひたすらの平謝りで、暴力行為を認めた。
えぇ~、あんなにおっとりおとなしそうな蔣勁夫が暴力?!と、私はちょっと驚いたのだが、
とにかく、本人が起こした事実を認めた事で、この話も終わるのかと思いきや、話が二転三転。

昨日、女性側は、インスタ上で、「蔣勁夫におなかを蹴られ、宿していた彼の子を流産」と主張、
それに対し、蔣勁夫の友人が、そもそも妊娠などしていなかったと反論。
彼女の名前や品川のクリニックの名や医師の名前もハッキリ記された、
妊娠の兆候が見られない診断書も、ネット上に出回っている。
蔣勁夫は彼女から告げられた偽りの妊娠を信じ、結婚するつもりだったのだから、結婚詐欺だという。
妊娠以外にも、学歴や家族に関する話に怪しい点が多かったり、
夜遊びや男性関係といった素行も疑問視され、周囲には蔣勁夫を心配する人も少なからず居たようだ。

この一ヶ月、蔣勁夫が行方不明になっていた事に関しても、
友人は、「蔣勁夫はヤクザ者に追われ、身を隠すしかなかった」と擁護し、
弁護士とのやり取りを記した文書を公表している。
日本語で書かれた文書なので、中華圏の人々の大半は読めないでしょうが、
そこには、準暴力団“怒羅権(ドラゴン)”の関係者を名乗る者から、
「蔣氏に10億円支払うよう伝えてくれ。我々は、中国にある蔣氏の家も蔣氏の両親の家も知っている。
10億円を払わなければ、追い込みをかける」と脅された事など、ヤクザ映画さながらのヒェ~!な内容が、
有楽町の法律事務所の弁護士の実名入りで、克明に記されている。
示談交渉もあったようだが、女性側が2億5千万円以上の額にこだわったため、話がまとまらなかった旨で、
その文書は終わっている。

“怒羅権(ドラゴン)”って、以前NHKでも特集した、中国残留日本人孤児の子孫たちを中核にした組織よねぇ?
お金を持っている有名人の蔣勁夫は、いいカモで、最初から狙われていたという事はないの?
あまりにも短期間に色々と起き過ぎているし。
もし、この文書の内容が事実なら、
蔣勁夫は自業自得とはいえ、かなり面倒な事件に巻き込まれたのかも知れない。
暴力団絡みなら、ただの痴話ゲンカでは済まされない事件性があるように感じるけれど、
こういう場合、警察は動かないものなのだろうか。

なお、日本に入って来ている蔣勁夫出演作には、



近々放送の要録画番組もちょっとだけ。

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一本目は、2018年11月28日(水曜)、NHK BSプレミアムで放送の
『ぐっさんの台湾トラック旅~夏木マリ&ベッキーが爆笑!ディープな台湾もいっぱい!』
ドライブ大好きなぐっさんが、日本を飛び出し台湾へ。
“2回に分け、台湾を一周”との事なので、2週続けて台湾特集を放送するのかも。
一回目の今回は、高雄から台北まで西海岸を縦断。
地元を知り尽くしたトラックドライバーを案内役に、台湾最大級の夜市他、ディープな台湾の魅力を紹介。



続いて、BS12トゥエルビの『China Hour~あなたの知らない中国』

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中国で制作・放送された傑作ドキュメンタリーを紹介する、知る人ぞ知るBSトゥエルビの隠れた名番組。

これまで放送してきたのは、『舌尖上的中國~A Bite Of China』。

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『舌尖上的中國』は、食に関する良質のドキュメンタリー番組で、
かなり話題になったので、日本でもタイトルくらい目にしたことがあるという人は多いと思う。
番組の総顧問の一人は、かつて『料理の鉄人』で審査員を務めたため、
日本でも知られる香港の蔡瀾(チャイ・ラン)。
『舌尖上的中國』は、あまりにも評判なので、ずっと観てみたいと思っていたのだが、
録画したドラマの消化にアップアップで、なかなか手が回らずにいた。
そうしたら、思い掛けずBSトゥエルビで放送が始まったので、ようやく観始めたら、噂に違わぬ興味深い内容。

私は、最近、ドラマ『三国志 司馬懿 軍師連盟~大軍師司馬懿:軍師聯盟/虎嘯龍吟』や
『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』に登場する食に興味をもち、ちょっと調べてみたら、
えっ、この食べ物ってこんな風に生まれたの?とか、こんな調理法がそんな大昔から有ったの?!
と驚かされる事がいっぱいだったのだが、
『舌尖上的中國』は、そういう諸々を凝縮して紹介してくれるドキュメンタリー番組で、
中国の食の世界の奥深さに、改めて感嘆させられる。

そんな『舌尖上的中國』も、BSトゥエルビの放送は、本日の第7回で終了。
当然、第2シーズン、第3シーズンと放送が続いていくのかと思いきや、
BSトゥエルビでは、ここで一端打ち切り、『China Hour~あなたの知らない中国』枠では、
2018年11月29日(木曜)より、他のドキュメンタリーシリーズの放送に入る。それが、(↓)こちら。

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『功夫少林~The Kung Fu Shao Lin』。
2016年、CCTV中央電視台で放送された、これまた評価の高いドキュメンタリー番組である。
『絕學』、『秘笈』、『神兵』、『江湖』、『天下』の計5回から成り、
中国伝統の功夫と少林武術の歴史や超絶技などを紹介している模様。
中国は、食のみならず、伝統武術の世界もまた奥深いですよね。

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元リアル少林武僧の俳優・釋延能(シー・イェンノン)が登場する回もあるはずだから(恐らく第4回)、
映画ファンも必見!



あと、数回目の再放送になるけれど、
同日、その後、NHK BS1では、『中国のゴッホ 本物への旅』をまたまた放送。これは…

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『世界で一番ゴッホを描いた男』の邦題で、先月公開されたドキュメンタリー映画を、
テレビ向けに短く編集した物。
でもね、私には、それ以上に再見したいNHKのドキュメンタリー番組があるの。
『中国のゴッホ』と同じように、深圳の大芬で複製画を描き続ける画家を取材した回の『地球イチバン』、
“世界一の油絵村”と題された回。
その年に観たドキュメンタリーの中で最も秀逸であった。
あれこそ是非ぜひ再放送して欲しい…!



お菓子は、和の物を一つだけ。
短期間の限定販売なので、取り急ぎ。

★ 叶匠壽庵:五穀餅

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大きさは、直径約6センチ。
五穀でこし餡を包み、秋の豊穣の喜びを表した餅菓子。




こちら、叶匠壽庵(公式サイト)の期間限定商品“五穀餅”
きな粉の物×一個+通常の物×2個の計3個をセットにして販売。
残念ながら、画像は、自分が食べた通常の物しか無い。

5種類の雑穀で餡を包んだ一種のおはぎである。
5種類の雑穀とは、もち米、豆、麦、粟(あわ)、黍(キビ)を指す。
中の餡は、こし餡。
私は食べていないきな粉のだと、つぶ餡が入っているらしい。

似た商品として、私もよく購入している仙太郎の“七穀ぼた”を思い出す。
叶匠壽庵のこの五穀餅は、米粒をかなり残した仙太郎の七穀ぼたと比べ、お米をよりしっかりとついている。
とは言っても、雑穀なので、通常の米のお餅より、ずっと弾力があるし、
雑穀の種類による食感の違いは、それなりに出ている。



米粒をしっかり残した生地でつぶ餡を包んだドカンと大きな仙太郎の七穀ぼたは、
素朴な田舎風の“お食事系ぼた餅”という印象、
滑らかなこし餡を包んだ小ぶりな叶匠壽庵の五穀餅は、より“お菓子”っぽく、上品な印象。
どちらもそれぞれに美味しい。

なお、叶匠壽庵のこの五穀餅は、毎年販売期間が晩秋の約一週間と非常に短く、
今年は、11月11日(土曜)から23日(金曜)まで。
興味のある方は、駆け込みで!

映画『幸福城市』

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【2018年/中国・アメリカ・フランス/107min.】
2049年冬のある晩。
初老の張冬陵は、医師に成りすまし、病院内で、政治家・石志偉が入院する個室に潜入。
目を覚ました石志偉は、見知らぬ男がベッド脇に立っていることに困惑。
それが、あの張冬陵だと気付いても、時すでに遅し。
張冬陵は、枕で石志偉の顔を押さえ付け、息の根を止める。
病院をあとにした張冬陵は、続いて妻・玉芳の交際相手を殺害し、帰宅すると、
玉芳はすでにその事を知っており、二人は口論に。
感情を抑えきれなくなった張冬陵は、玉芳の首にあてた手を緩めず、彼女はそのまま息絶える…。

遡ること30年。
警察官の張冬陵は、気を利かせた同僚の勧めで、巡回を抜け出し、
妻・玉芳を驚かせようと、自宅に立ち寄ったがばかりに、彼女の浮気現場を目撃してしまう。
あろう事か、浮気の相手は、張冬陵の上司・石巡査部長であった…。



第19回東京フィルメックスのコンペティション部門で上映された何蔚庭(ホー・ウイディン)監督最新作。
原題は『幸福城市~Cities Of Last Things』 。

1971年生まれの何蔚庭は、ニューヨーク大学で映画を学んだ後、ニューヨークとシンガポールで働き、
2001年からは台湾を拠点に活動するマレーシア出身の華人映画監督。
これまで、日本で監督作品が正式に公開されたことは多分無いはず。
私自身、NHKアジア・フィルム・フェスティバルで『ピノイ・サンデー』(2010年)を一本観たことがあるだけ。

この新作の『幸福城市』は、今年、第55回金馬獎にて、4部門にノミネートされ、
内、最佳女配角(最優秀助演女優賞)を受賞。(→参照
その授賞式から間も無く開催のフィルメックスの上映には、
何蔚庭監督が来日して、Q&Aを行ったので、私も観に行ってきた。




本作品は、張冬陵という男性の人生の転機を、3ツの時代に分け、
2049年から遡り、3部構成で描く愛憎の人間ドラマ

幕開けは、2049年の近未来。
初老の張冬陵は、このパートで、3人の女性と関わる。
一人は水商売の白人女性、一人は娘、そして一人は妻。

張冬陵は、病院に潜入し、どういう事情でか、入院中の政治家・石志偉を殺害。
風俗店で指名した若い白人女性には、“アラ”という女性を重ね、過去を偲び、肉体関係を持とうとしない。
さらに、海外移住前で忙しい娘を、勤務先まで訪ね、
「落ち着いたら一緒に暮らしましょう。もうお母さんと離婚してあげて」と諭されるも、
妻の恋人を殺し、帰宅すると、妻・玉芳と口論になり、結局玉芳のことも手にかけてしまう。

作品は、この初老の張冬陵を、、働き盛りの青年期、18歳の学生時代と遡っていくことで、
彼がなぜあの政治家を殺害し、妻・玉芳にどういう感情を抱き、どのように白人女性アラと出逢い、
後年あのような張冬陵になったのかを紐解いていく。

ただ、張冬陵の人生観や女性観に最も強く影響したであろう女性は、
妻でも娘でもアラでもなく、最後のパートに登場する王秋霞であろう。
何かしらの事情があり、まだ幼かった張冬陵を置いて、家を出て、それっきりになっていた彼の実母である。
人生で数多くの女性と関わっても、男性にとっての原点は、良くも悪くも母になる。
この映画は、人生で、母をはじめとする数人の女性に複雑な感情を抱き、執着し続け、
結果、破滅していった男の物語とも言える。


タイトルの『幸福城市』とは程遠い悲惨なお話。
何蔚庭監督は、台湾の広告に溢れかえる“幸福〇〇”というキャッチコピーを皮肉って、
この作品を『幸福城市』と名付けたようだ。
確かに、『幸福城市(=幸福な街)』というタイトルが白々しく、虚しくカラ回りして感じられる悲惨な物語…。

ちなみに、『ピノイ・サンデー』の中には、台湾のド派手な選挙戦の模様がチラリと描かれているのだが、
あれは、マレーシア人・何蔚庭監督の目に奇怪に映った台湾の風景として、作品に取り入れたみたい。
広告の“幸福〇〇”もだけれど、
何蔚庭監督の作品には、生粋の台湾人監督が撮る台湾映画とはちょっと違った
異邦人目線の台湾がやはり少し取り込まれているのかも。
私自身が台湾人ではなく、何蔚庭監督と同じように、異邦人目線で台湾を傍観しているわけだから、
何蔚庭監督描く台湾は、より“台湾らしい台湾”に感じられることがある。



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舞台となる街は、台湾の街だと感じさせるが、敢えて特定はしていない。
この映画、英語のお題は『Cities Of Last Things』。
単数の“City”ではなく、複数の“Cities”であることからも、
映画の中で描かれているような話は、ある街限定ではなく、
いたる所で起こり得る普遍的な悲劇であることを意味しているのかなぁ~と想像。
ちなみに、撮影は、高雄などで行った模様。


作中、印象的に使われている歌は、
劉文正(リウ・ウェンジェン)、80年代のヒット曲愛不要給太多~Don't Give Me Too Much Love>。


何蔚庭監督は、タイトルが物語の内容に合うと感じ、この曲を採用。
ほのぼのとした懐メロの旋律が、悲惨な物語に素っ頓狂に響き渡り、
タイトルの『幸福城市』同様、とてもシニカルに感じられる。





主人公・張冬陵を演じる3人は(↓)こちら。

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第1部・初老の張冬陵に高捷(ガオ・ジェ)、第2部・働き盛りの警官・張冬陵に李鴻其(リー・ホンチー)
そして、第3部・18歳の張冬陵に謝章穎(シエ・ジャンイン)

一人の人物を3人の俳優が演じているわけだが、それら3人は、正直言って、あまり似ていない。
(強いて言えば、李鴻其と謝章穎の二人は、なんとなく感じが似ているかも…。)
首の後ろのアザで、3人が同一人物だと、観衆に分からせる。
何蔚庭監督は、似ている/似ていないより、自分好みの俳優をキャスティングしたのでは。

高捷に関しては、「台湾で、タフガイと言ったら、高捷しか居ない!」という事で起用。
確かにね、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督など全盛期の台湾映画が好きな世代にとって(私を含む)、
黙して背中で語る“不器用ですからぁ”系台湾人俳優と言ったら、高捷である。
人生で幾度となく裏切られ、内面に色んなオリを溜め込んで生きている本作品の孤独な張冬陵も、
高捷の個性に合っている。


2番目の李鴻其は、張作驥(チャン・ツォーチ)監督の『酔生夢死』(2015年)でデビューし、
その年の金馬獎で新人賞を受賞し、注目されるようになった俳優。
お世辞にも美男とは言い難いため、
“台湾の文芸作品の脇で重宝される俳優”くらいに納まってしまうのかと思いきや、
その後、大陸の事務所とマネージメント契約を結び、畢贛(ビー・ガン)監督の
『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト~地球最後的夜晚』のようなアート系話題作から、
中国版『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のようなエンタメ作にまで幅広く起用され、
半端にルックスの良い台湾アイドル俳優たちより、余程良い仕事を得て、着々とキャリアを積んでいる。
本作品では、“裏切られパート”を担当。
警察官になり、“良き人”であろうとする張冬陵だが、妻・玉芳に浮気され、
しかも、その相手が自分の上司・石志偉で、石志偉から仕事でも理不尽な目に遭わされ、
心をズタズタに打ちのめされてしまう。
1990年生まれ、現在28歳の李鴻其が、実年齢よりずっと若く見えてしまうのは、
良いのか悪いのか、よく分からなかった。
李鴻其に、踏みにじられた青年役は、とても合うのだけれど、妻帯者の雰囲気には、やや欠けるかも。


3番目の謝章穎は、本作品が銀幕デビューの若手。
第55回金馬獎では、3年前に李鴻其が受賞した最佳新演員(最優秀新人賞)にノミネート。
本作品では、“憤りパート”を担当。心の中に抱えているのは、若者らしい鬱憤。
幼かった自分を捨てた“瞼の母”に対し、恋い慕う気持ちと怒りの入り混じった複雑な感情を抱いた18歳。
新人・謝章穎に関する情報は、あまり出回っていないのだが、
今年20歳で、撮影当時は、役の張冬陵と同じ高校生。
これまた役と同じで、謝章穎はまだ1~2歳の頃に両親が離婚しており、
祖父母のもとで育てられたのですって。
自分の状況と重ね、張冬陵を演じ易かったかもね。
ちなみに、謝章穎が目標とする俳優は、彭于晏(エディ・ポン)と黃渤(ホアン・ボー)なのだと。
この二人の共通点が、私には分からない。
時には、彭于晏のように、肉体を駆使して動ける二枚目を演じられ、
時には、黃渤のように、コメディ対応できる実力派でいたい、…って事??



他には、(↓)このような俳優が出演。

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警察官の張冬陵が、ひょんな事から出逢い、一時を共に過ごす白人女性アラにルイーズ・グリンベルク
張冬陵の妻・玉芳に劉瑞(リュウ・ルイチー)
張冬陵の上司である巡査部長・石志偉に“石頭(ストーン)”こと石錦航(シー・チンハン)
張冬陵の実母“王姐”こと王秋霞に丁寧(ディン・ニン)等々…。


ルイーズ・グリンベルクは、青年期の張冬陵が出逢うアラと、初老の張冬陵が会う風俗嬢の一人二役。
物語や役の質は全然違うのだけれど、
台湾人の男の子とフランス人の女の子が一緒の画面に映っているというただ一点だけで…

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楊昌(エドワード・ヤン)監督作品『カップルズ』(1996年)を重ねてしまった。
ちなみに、『カップルズ』の男女は、柯宇綸(クー・ユールン)&ヴィルジニー・ルドワイヤン。


劉瑞は、近年、台湾偶像劇の母親役に重宝されちゃって、実はあまり映画には出ていないのだが、
久し振りにスクリーンで見たら、上品な美しさと凄みに、香港の惠英紅(カラ・ワイ)に近いニオイを感じた。

この劉瑞扮する玉芳の交際相手は…

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どうも当初、張國柱(チャン・グォチュウ)が演じるはずで、クランクインの時には居たのに(画像右端)…

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いつの間にか選手交代して、林明森(リン・ミンセン)になっていた。
それにしても張冬陵の女房は、熟年になっても、ヒョウ柄のボディコン着て濃密社交ダンスとは、
なんともホットな女性ですねー。


イメージを覆す役に挑んでいるのは、五月天(メイデイ)の石頭。
演じてる石志偉は、部下・張冬陵の妻を寝取り、バレたところで、焦りも畏縮もせず、
それどころか、追い打ちをかけて張冬陵をズタズタにするクズ中のクズ。
ベッドの上で、お尻も丸出しにしております。
ミュージシャン石頭は、出演作こそまだ少ないけれど、
映画に出演する度に、それまでのイメージを覆す難しい役に挑んでいる。
今後は、演技のお仕事の比重も徐々に増やし、任賢齊(リッチー・レン)のような道を歩んで行くのだろうか。
任賢齊には、ずっと“良き家庭人”のイメージがあり、
悪役をするようになったのは、俳優業を始めてから、かなり経ってからだったが、
その点、石頭は、イメージをかなぐり捨てるのが早いですね。


そして、丁寧。
“ていねい”と書いて、“ディン・ニン”と読む。“丁”が苗字で、“寧”が名前。
中国の有名卓球選手にも、同姓同名の女性がいますよね。
この丁寧が、本作品の王姐役で認められ、
第55回金馬獎にて、最佳女配角(最優秀助演女優賞)を受賞。(→参照

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おめでとうございます!
映画を観て、丁寧の受賞に納得した。
私、“台湾社会の底辺で這うように生きる女”を演じさせるなら、
柯淑勤(コー・シューチン)の右に出る者は居ないと思っていたけれど、
丁寧のウラブレッぷり、スレッ枯らしっぷりも、かなりのものであった。





本作品の一番の特徴である、時間を遡って描く手法に関しては、
正直なところ、まったく目新しさは感じなかったし、最後にハッとさせられることも無かった。
何蔚庭監督自身、この手法を“自分があみ出した斬新な手法”などとは言っておらず、
フィルメックスのQ&Aでも、「最初にこの手法が使われた作品は、
恐らくジェーン・カンピオン監督の『ルイーズとケリー~Two Friends』(1986年)。
私はギャスパー・ノエ監督の『アレックス』(2002年)が好きで、
自分もこの手法で撮ってみたかった」と語っている。

目新しさも驚きも無いから、つまらなかったかというと、そんな事もなく、
作品が醸す雰囲気は、結構私好みであった。
生粋の台湾人監督が撮る昨今の台湾映画より
台灣新電影(台湾ニューシネマ)の頃のニオイを感じたのは、
前述のように、何蔚庭監督が台湾の異邦人で、
非台湾人目線で、台湾映画に触れてきた人だからなのかも知れないと感じる。



第19回東京フィルメックス
『幸福城市』上映終了後に行われた何蔚庭監督のQ&Aについては、こちらから。

第19回東京フィルメックス閉幕

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2018年11月24日(土曜)、有楽町朝日ホールにて、第19回東京フィルメックス授賞式開催。
(当ブログこのエントリの表題には“閉幕”と記したが、映画の上映は本日25日まで行われるので、
セレモニーが行われた昨晩は、正確には“閉幕”ではない。)

私、そのお式自体には特別興味が無かったのだけれど、
授賞式の後に上映されるクロージング作品、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督最新作、
『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト~江湖兒女 Ash Is Purest White』がどうしても観たかったので、
チケットを入手。
もっとも、この映画は、すでに配給が付いているので、ちょっと待てば、日本でも確実に観ることが出来る。
でも、でも、それでもいち早く観てみたかったのよねぇ…。

とても面白かった賈樟柯監督最新作については、また後日に改めるとして、
ここには、第19回東京フィルメックスの受賞結果を簡単に残しておく。
以下、発表された順番通りに記します。

★ 観客賞 Audience Award

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近浦啓監督『コンプリシティ~程梁 Complicity』



近浦啓の長編監督デビュー作である日中合作映画。
「北京で編集作業をしている時、
プロデューサーの耐安(ナイ・アン)から何度も、これで観客に伝わるのか?と問い続けられました。
この賞を頂いた事で、少しは観客の皆さんに伝わったのではないかと思えました」と近浦啓監督。

日中合作映画だし、藤竜也が出演しているので、きっとすぐに正式劇場公開されると高を括り、
フィルメックスでの鑑賞はスルーしたのだけれど、配給どうなるでしょう。
しかも、これ、婁(ロウ・イエ)監督作品や應亮(イン・リャン)監督作品などでお馴染みの
女性プロデューサー耐安が手掛けていたのですね。

ちなみに、(↓)こちらが近浦啓監督。

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井浦新系の雰囲気のあるアラフォーで、ご本人も俳優ができそうなほどカッコイイ。
監督がカッコイイからという訳ではないが、『コンプリシティ』、是非公開して欲しい。

★ 学生審査員賞 Student Jury Prize

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畢贛(ビー・ガン)監督
『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト~地球最后的夜晚 Long Day's Journey into Night』



長回しの3D映像が話題の畢贛監督最新作。とーっても観たかったけれど、観に行けなかった…。
来日できなかった畢贛監督に代わり、プロデューサーの單佐龍(シャン・ゾーロン)が受賞のご挨拶。

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「未来を担う若い世代に評価されて嬉しい」と單佐龍P。
これは、すでに配給が付いており、公開が決まっているので(2019年夏頃を予定)安心していたのだが、
よくよく考えたら、ちゃんと3Dの設備が整った映画館で公開されるのか?!と心配になってきた…。
イメージフォーラムとかユーロスペースで、ひっそり2D公開という事になったら、
3D上映されたフィルメックスで観逃したことを、かなり後悔しそう…。
あと、正式に公開の際には、
中国語の原題『地球最后的夜晚』を活かしたもっと雰囲気のある良い邦題にして下さい。

★ スペシャル・メンション Special Mention

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広瀬奈々子監督『夜明け~His Lost Name』



是枝裕和監督や西川美和監督の助手を務めた広瀬奈々子の長編監督デビュー作。
「私ではなく、主演の柳楽優弥さんが受け取るべき賞。彼の繊細な演技のお陰です。
柳楽さんと一緒に喜びを分かち合いたい」と広瀬奈々子監督。
柳楽くん、一体どんな演技をしているのでしょう。気になる。

★ 審査員特別賞 Special Jury Prize

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萬瑪才旦(ペマツェテン)監督『轢き殺された羊~撞死了一隻羊 Jinpa』



これは、私も大変気に入った作品。
おめでとうございます!
「これが夢についての映画なら、私の夢はより多くの日本の皆さんとこの夢を共有したい、
より多くの日本の方々にこの作品を観て頂きたい」と萬瑪才旦監督。
ですよね。今度こそ日本での正式公開に期待できる萬瑪才旦監督作品なのでは?

作品上映後に、萬瑪才旦監督が行ったQ&Aについては、こちらから。

★ 最優秀作品賞 Grand Prize

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セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督『アイカ~Ayka』



『トルパン』(2008年)のセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督最新作。
モスクワに出稼ぎに来た25歳のキルギス人女性の過酷な日々を描いた作品らしい。
「今回賞を頂いたことで、我々の文化が日本の文化と近いのではないかと感じた。
私自身、小津安二郎、溝口健二、黒澤明といった日本の映画監督を尊敬しています。
この映画に描いた難民や移民の問題は、キルギスに限った事ではなく、
世界中で起きている問題」とセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督。

★ 審査員

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ちなみに、今年の審査員長は、
『スモーク』や『ジョイ・ラック・クラブ』でお馴染みの王穎(ウェイン・ワン)監督。
フィルメックスにやって来たのは、昨年に続き2度目。
「この映画祭は、レッドカーペットが無くて良い」と笑いながら語っておられた。

他の審査員は、モーリー・スリヤ監督(インドネシア)、ジャーナリストのジーン・ノ(韓国)、
東京テアトル株式会社映画興行部長・西澤彰弘(日本)、イラストレーターのエドツワキ(日本)であった。

★ 集合写真

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最後は、全受賞者と審査員団が集まり記念撮影。





私は観ていないので、何とも言えないのだが…

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胡波(フー・ボー)監督の遺作で、
先日の第55回金馬獎でも最佳劇情長片(最優秀長編作品賞)に輝いた(→参照
『象は静かに座っている~大象席地而坐』が無冠に終わった事に関しては、
皆さま、どう受け止めているのでしょうか。
受賞国が一国に集中しないよう、賞の決定はバランスも考慮していると察するので、
そういう意味では、妥当な結果なのだろうか(そもそも、賞の数も少ないわけだし)。
ただ、映画の世界でも、中国に勢いがあり、多種多様な秀作が発表され続けているのは、紛れもない現実。
『象は静かに座っている』は、約4時間という長尺で、一般ウケは期待できない作品なので、
受賞して、多少なりとも日本での配給に繋がれば…と期待していた私は、少々残念。

あと、そう、昨年まで本映画祭のディレクターを務め、セレモニーで挨拶をしていた林加奈子女史が、
舞台上に登場しなかった事で、スポンサー降板による一連の騒動を改めて思い出した。
フィルメックスの役員名簿から名前が消えた俳優・西島秀俊も、
例年なら必ず会場で見掛けるのに、今年は一度も見掛けなかった。
どんな裏事情があるのかは分からないけれど、
にしじぃ、一映画ヲタクとして、また有楽町朝日ホールにお戻り下さいませ。

あの騒動が有ったことで、近年、“11月に開催されて当然”と心の片隅で思い込んでいたフィルメックスが、
実のところ、いつ無くなって不思議ではないという危うさにも気付かされた。
フィルメックスは好きな映画祭なので、
存在する有り難さを噛みしめつつ、来年以降も継続する事を切に願います。


クロージング作品『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト~江湖兒女 Ash Is Purest White』の詳細は、
また後日に改めて。
日本公開情報にだけ軽く触れておくと、
2019年夏、文化村ル・シネマ、新宿武蔵野館他で公開予定とのこと。

台北2018:ホテル①~全般

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ホテル好きにとっては、ホテル選びに迷うのも、実は旅の一つの楽しみになっていますよね?
嗚呼、なのに、なのに、台湾は、私にとっては“ホテル砂漠”…。
ファミリー旅行や、格安旅の旅行者が多いので、
どうしても中級以下のホテルに集中していて、泊まりたい!と思わせるホテルがあまり無い。

現時点の台北で、最もラグジュアリーなホテルは、
2014年開業の台北文華東方酒店(マンダリン・オリエンタル台北)と見受けた。
同行の友人Mも同意見だったので、文華東方酒店に即決。
幸か不幸か、選択肢に乏しいので、迷わずササッと決められる。

今回は友人との二人旅なので、
台北文華東方酒店の行政樓層(クラブフロア)の中から、
最もスタンダードなツインのお部屋を選び、予約完了。
他のホテルと同じで、クラブフロア宿泊客は専用ラウンジが利用できるのは勿論の事、諸々のサービスあり。
ちなみに、台北文華東方酒店では、専用ラウンジを“東方匯(オリエンタルクラブ)”と呼んでいる。

★ アクセス

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台北文華東方酒店が建つのは、台北中心部北東の敦化北路。

多くの日本人観光客は、勿論飛行場から台北入りすることでしょう。
台北にある二つの空港の内、松山機場(松山空港)は、台北文華東方酒店のすぐ近く。
荷物さえ無ければ、歩いたところで、大した距離ではないはず。
特に東京在住者は、羽田便で台北に飛ぶと、その松山機場に着くから、アクセスがとても良い。

今回の私の場合、台中行きをキャンセルしてでの台北行きだった事もあり、
行きの飛行機は、成田発で、台北市中心部からは離れた桃園機場(桃園空港)着の便。
弾丸旅行なので、時間の節約も考え、空港からホテルへは、お車がベストと判断。


事前にホテル側にメールで問い合わせたところ、価格の目安は以下の通り。

ホテル提供のリムジン・サービス
メルセデスS350(乗車2~3人/ラゲージ1~2個)  NTD3000
メルセデスMini Van(乗車6~7人/ラゲージ5~6個) NTD3500

タクシー
NTD1300前後

所要時間
交通渋滞など状況により40~60分


その後、日本のMKタクシーが、現地のタクシー会社と提携し、
NTD1200の定額で、桃園機場から台北市内までの送迎サービスを予約制で実施している事を知る。
(深夜や、行き先によっては、追加料金が派生。)
これは良心的な価格設定。
余程予約を入れようかと考えたが、万が一飛行機が定刻より早く到着した場合、
空港のロビーで運転手が来るのを待たなければならない。
それでは時間の節約にならないので、
結局、MKタクシーには予約を入れず、一般のタクシーを利用することにした。


当日、飛行機はやや早めの正午頃に台北に到着。
両替したり、友人は交通ICカード・悠遊卡を買ったりと、ちょっとした雑用を済ませ、タクシーに乗車。
交通渋滞も無く、順調に走行し、結局、所要時間約35分、運賃NTD1115でホテルに到着。

ちなみに、近場の松山機場からホテルへの所要時間は、交通がスムーズだと5分程度。
帰りは、道を迂回しないといけないので、もう少し時間を食う。
それでも、我々の場合、所要時間約10分で、運賃NTD110であった。
東京じゃぁ考えられませんよね、10分ワンコインで国際空港に行けちゃうなんて。



台北滞在中は、市内の移動の利便性も気になる。
文華東方酒店、最寄りの捷運(地下鉄)駅は、文湖線/松山新店線の南京復興。
(よくよく考えると、未だ南京に思いを馳せる強い執念が伝わる駅名。)

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ホテルの正面エントランスは、南北をはしる大通り・敦化北路に面しているが、
ホテルの裏側から、斜めにはしる通り・慶城街に出て、ひたすら直進すれば南京復興駅。
土地勘が無い最初は、駅まで結構歩いた気がしたけれど、一度分かれば、7~8分程度の距離。
南京復興駅からホテルに戻る際は、出口7から地上に出ると、そこが慶城街。

★ 台北文華東方酒店

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で、こちらが、台北文華東方酒店。
敦化北路に面したアプローチの横には、マンダリンオリエンタルお馴染みのお扇子のロゴ。
建物は、古典的なヨーロピアンスタイル。
建物の全貌は、遠く離れた場所からでないと、カメラのアングルに入り切れないため、ございません。
知りたい方は、ホテル公式サイトや旅行サイト等からどうぞ。
17階建てと特別高い建物ではないけれど、台北は高層建築が少ないので、
近隣で道に迷った時、上空に飛び出た薄ピンクの欧風建築は、目印になり、案外便利であった。


アプローチをさらに進むと…

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正面エントランス。


中に入ります。

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ネオクラシックなエントランスホール。
古典的な建物外観とは赴きがやや異なり、
基調の白に黒いラインで螺旋を描いたデザインが、モダンな印象。
こじんまりしているが、置かれているのは、2脚の椅子だけとミニマムで、明るく気持ちの良い空間。
アクセントは、ステンドグラスと、高い天井から下げられた大きなシャンデリア。
これは、琥珀色のクリスタル5万個を繋げた
直径4メートル、高さ3・9メートル、総重量1400キロのシャンデリアで、
チェコのアーティストによるデザインだという。
非常に豪華だが、重苦しくなく、明るくモダンな空間にマッチ。


エントランスホールを左に折れると…

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そのすぐ脇にレセプション。
我々は、行政樓層(クラブフロア)に部屋を取っているので、ここへは立ち寄らず、
さらに奥にあるエレベーターに案内される。


少々話は反れますが、滞在中、そのエレベーターを利用する度に、気になっていたのが、
エレベーターホール脇に置かれている(↓)こちらの小さなブロンズ彫刻。

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何が気になるって…

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なんか“オトナになった高島屋のローズちゃん”って感じだったから。


まぁ、そんなどうでもいい話はさておき、我々は6階へ直行。

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クラブフロア宿泊者は、6階にあるこの専用ラウンジ“東方匯(オリエンタルクラブ)”でチェックイン。
当然ながら、ホテル退出の最終日は、チェックアウトもここで行われる。
手続き終了を待っている間、冷たいお茶が出された。
クコの実やナツメの甘みがほんのりあって、美味。
台北文華東方酒店のクラブ・ラウンジ、東方匯については、また後日。



台北2018:ホテル②~客室へ続く。



◆◇◆ 台北文華東方酒店 Mandarin Oriental Taipei ◆◇◆
台北市 敦化北路 158 號

+886-2-2715-6888

文湖線/松山新店線・南京復興駅 7出口から慶城街を北東に直進し徒歩約8分

ベルナルド・ベルトルッチ監督逝去。

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映画ファンに留まらない多くの皆さまがすでに御存知の事と察するが、
昨日、2018年11月26日朝7時頃、イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が、
ローマはトラステヴェレの自宅で、家族に見守られ、永眠。享年77歳。
近年、車椅子で公けの場に出ていたが、やはり長いこと癌を患っていたらしい。




『暗殺の森』(1970年)、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(1972年)、『シェルタリング・スカイ』(1990年)等々、
日本でも話題になった監督作品は色々。
でも、日本で、いや、世界でも、最も知られるベルナルド・ベルトルッチ監督作品と言えば…

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そう、間違いなく、1987年の作品、『ラストエンペラー』
清朝最後の皇帝、宣統帝・愛新覺羅溥儀(1906-1967)の生涯を描いた伝記映画で、
1988年第60回米アカデミー賞では、な、な、なんと、作品賞、監督賞をはじめ、
撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣装デザイン賞、美術賞、作曲賞と計9部門もでオスカー獲得。

数年前に久し振りに観たら、やはり素晴らしかった。
清朝の話なのに、皇族も太監も皆が皆英語ペラペラとか、川島芳子がエロ過ぎるとか、
多々有るツッコミ所にも目が瞑れる程、
作品自体がもつパワーが強烈で、物語の世界に引き込まれた。
衣装や美術は西洋人が担当しているのだけれど、かなり研究されており、視覚的美しさもタメ息もの。


さらに、この作品でスゴイのは、北京にあるホンモノの紫禁城(故宮)で、撮影を行っていること。

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修復に来た大工でもないのに、故宮の屋根に登っちゃって、お咎めが無いなんて、現在では信じられない…。
故宮は、この映画が撮影された直後の1987年、ユネスコの世界文化遺産に登録。
昨今、紫禁城を舞台にした映像作品の多くは、
紫禁城とほぼ同スケールで作られたセットがある浙江省の横店影視城で撮られており、
北京のリアル紫禁城で全編撮影なんて、もはや有り得ない贅沢である。
横店のセットも充分リアルなのだけれど、久し振りに『ラストエンペラー』を観た時に、私、呆然としたのです、
ホンモノが放つ威光は何物にも代え難い…、と。


ベルナルド・ベルトルッチ監督が亡くなったことで、
テレビではまた『ラストエンペラー』の追悼放送があるかも知れない。
でも、それ以上に、私が「この機会だからこそ是非!」と公開を切望しているのは、こちら(↓)

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『L'ultimo Imperatore 3D~ラストエンペラー3D』!
以前、当ブログのこちらにも記したように、
3D版に修復され、2013年のカンヌ国際映画祭でお披露目され、
2015年には、上海國際電影節でも上映されている。
イタリアでは、3D Blu-Rayが発売されているので、まぁ入手は可能だけれど、
これは、絶対に映画館で観なきゃ駄目な作品じゃなぁーい…?!
80年代の名作を3Dにしてしまう事に対しての批判も少なからず有るようだが
(そもそも、フツーに撮った映画を、どうやって3D映像に変換できるのかが、私には皆目分からない…)、
日本でも、是非ぜひ劇場公開して欲しい。


最後に改めて、
Addio al grande regista del cinema italiano, ベルナルド・ベルトルッチ監督安らかに。



ついでに。
映画『ラストエンペラー』で溥儀を演じる尊龍(ジョン・ローン)を見て、
辮髪の負のイメージを覆された日本人も多いですよね?
そんな皆さま、こちらの“辮髪(べんぱつ)大特集♪”をどうぞ。
当ブログで、なぜか常にアクセスされ続けている隠れた人気記事の一つです。

映画『8人の女と1つの舞台』

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【2018年/香港・中国/100min.】
香港・中環。
間も無く、新作舞台『壹世人兩姐妹』の記者発表が行われようとしている香港大會堂。
袁秀靈は落ち着かない。
かつては香港演劇界で人気を博した彼女だけれど、表舞台に立つのは5年ぶり。
夫の程俊が、航空機事故で死亡したため、復帰を決意したのだ。

復帰第一作の相手役は、今をときめく何玉紋。
主演を務めた映画『胭脂案(ルージュ事件)』で、“遅咲きの新人”として注目を集め、
スターダムをのし上がった何玉紋は、今回がキャリアで初の舞台経験。

実は、何玉紋を有名にしたその『胭脂案』は、本来袁秀靈の主演映画。
5年前、墨子監督に近付き、袁秀靈から役を奪い、彼女を引退に追い込んだ女優こそが何玉紋。
因縁の女優二人が、姉妹役で同じ舞台に立つカウントダウンが始まる…。



第19回東京フィルメックスで、特別招待作品として上映された關錦鵬(スタンリー・クワン)監督最新作。
原題は『八個女人一台戲~First Night Nerves』。

關錦鵬監督って、常に第一線で活躍している印象があるけれど、
自ら映画を監督するのは、『長恨歌』(2005年)以来、実に13年ぶりなのだと…!
以前なら、中華圏の有名監督の新作映画なら、ほぼ確実に入って来ていた日本だが、
近年は、もうまったくアテにならないので、
フィルメックスを逃したら、二度と鑑賞の機会は巡って来ないかも知れないと懸念し、チケット購入。
で、その後、上映日直前になって、關錦鵬監督の緊急来日が決定。
思い掛けずラッキー!と喜んだのも束の間、關錦鵬監督がQ&Aに登壇するのは、
私が観に行く翌日の上映回であった…。
ガーン!残念!
そんな訳で、私は純粋に映画だけ鑑賞して参りました。




本作品は、夫の事故死を機に復帰する袁秀靈と、
5年前、袁秀靈から仕事を奪い、彼女を引退に追い遣った何玉紋という因縁のある二人の女優が、
姉妹役で共演する舞台『壹世人兩姐妹』の記者発表会から開演初日までの一週間を描く群像劇


作中、重要な場所として登場するのは、
香港・中環(セントラル)にある有名な香港大會堂(香港シティホール)。

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關錦鵬監督にとっても想い出深いこのホールが、取り壊されるという話を聞いたのが、
本作品を撮るキッカケになったという。
(もっとも、その後、その取り壊し案は撤回され、改装して存続することになったらしい。)


映画は、その香港大會堂で上演される舞台壹世人兩姐妹』の裏側一週間を描く
いわゆる“バック・ステージもの”である。
タイトルは『八個女人(8人の女)~』であるけれど、
“8人”って、どの8人なのだか、私は混乱し、よく分かっていない。
袁秀靈と何玉紋という、因縁のある女優二人が、物語の実質的な主人公であり、
彼女たちを中心に綴られる群像劇である。




ライバル女優を演じるのは、こちら(↓)

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夫・程俊が事故死したのを機に復帰することになった舞台女優・袁秀靈に鄭秀文(サミー・チェン)
袁秀靈から仕事を奪い、人気女優の道を駆け上った何玉紋に梁詠(ジジ・リョン)


袁秀靈は、かつて“舞台天后”と称された演劇界の人気女優。
『胭脂案(ルージュ事件)』の主演を何玉紋に奪われたのを機に引退し、アメリカで暮らしていたが、
夫・程俊が事故死し、演劇界に復帰を決意。
愛する夫を突如亡くし心にポッカリ穴が開いてしまった未亡人…、ともちょっと違う。
実は、夫・程俊には、ニコルという愛人がいて、死亡したのも、彼女と一緒に搭乗した飛行機の事故。
正妻・秀靈にお金を残さずこの世から消えたため、経済的事情から、働かざるを得なくなり、復帰。
しかも、イギリス留学中の一人息子には、同性の恋人ができ、困惑。

実際にも、こういう香港女優は、結構居そうな気が。
袁秀靈にモデルがいるのか考えてしまった。
近いのは、關錦鵬監督作品『赤い薔薇 白い薔薇』(1994年)等にも出演し、
アメリカの富豪華人実業家との結婚を機に引退したものの、
2012年、(一説には夫の事業失敗のため)芸能界に復帰した葉玉卿(ヴェロニカ・イップ)とか。


鄭秀文は、關錦鵬監督の前作『長恨歌』の主演女優。

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關錦鵬監督が13年ぶりにメガホンをとるにあたり、抜擢した主演女優は、またまた鄭秀文だったのですね。
『長恨歌』は、それまでラヴコメの女王として君臨していた鄭秀文のイメージを
ガラリと覆した作品だと感じた。
今回の袁秀靈もキビキビした姐御肌の鄭秀文の印象とは、またちょっと違う。
頭の痛い事情を抱えながらも、現実と向き合い、前に進んで行こうとする袁秀靈は、
時に迷いや弱さが見え隠れし、見ていて、応援したくなる女性。


美人の梁詠も、40過ぎて、スレた役をやるようになったと、面白く見た。
扮する何玉紋は、『胭脂案』の監督・墨子にスリ寄り、本来の主演女優・秀靈から役を奪い、
その年の金像獎で新人賞を獲得し、人気女優の道を歩み出したというシタタカな女性。
でもねぇ、梁詠が演じると、どこか可笑しくて、憎めないの。

そう言えば、關錦鵬監督が、金像獎で初めて最佳影片(最優秀作品賞)を受賞した作品は、
『胭脂案』ならぬ『胭脂扣(邦題・ルージュ)』であった。
梅豔芳(アニタ・ムイ)&張國榮(レスリー・チャン)主演の1987年の作品。

關錦鵬監督作品『ルージュ』のキャスティング時に、
梁詠扮する何玉紋のような女優がいたのかは知らない。
でも、何玉紋の台詞にも、芸能界のリアルを感じる物が沢山散りばめられていた。
例えば、知人との電話で、最新出演映画について語る時。
「私の北京語が訛っているとか言って、吹き替えられた!この映画は、広東語版で観て!」と憤りつつも、
何玉紋は、北京語のレッスンを受けるため、良い先生を探している最中なの。
現実でも、大陸のエンタメ界が発展して以降、そこに食い込もうとする香港明星たちには、
北京語の訛り問題が付きまとっていますよね。



他、気になるキャストは…

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袁秀靈の親友・傅砂に白百何(バイ・バイホー)
袁秀靈のアシスタント李妮妮に齊溪(チー・シー)
舞台のプロデューサー程に趙雅芝(アンジー・チウ)


傅公子”こと傅砂のモデルは、誰もが、趙式芝(ジジ・チャオ)だと想像することでしょう。
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2012年、香港の不動産王・趙世曾(セシル・チャオ)が、娘が同性愛者であることに頭を悩ませ、
50億香港ドルの謝礼金をエサに、世界中で花婿募集をした事は、かなり話題になった。
中華圏は、大富豪伝説に事欠きませんよねー。

演じているのは、香港人ではなく、大陸の人気女優・白百何。
白百何なのに、役の設定は、モデル(であろう)趙式芝と同じまま香港の大富豪の娘。
白百何はこの役を演じるために、広東語の練習に随分苦労したらしい。
…って事は、吹き替えではなく、本人の広東語が採用されているのだろうか。
広東語が得意な皆さま、白百何の広東語は如何でしょうか。
一応、傅公子は生粋の香港っ子ではなく、12歳の時、北京から移住して17年という設定になっているので、
多少の訛りは許容範囲かと。
まだ広東語もろくに喋れなかった頃に秀靈と知り合い、以降、友情を育んでいる傅公子
宝塚女優のように髪をタイトに整え、中性的な装いで、広東語を喋っている白百何は新鮮。

ちなみに、日本で白百何の片仮名表記は、
“バイ・バイホー”、“バイ・バイハー”、“バイ・バイフー”の3種類が存在し(笑)、統一されていない。
中国語の複雑な発音を片仮名にするのは不可能。華人の名前は、ちゃんと漢字で覚えましょう。


李妮妮役の齊溪も、大陸の女優さん。
婁(ロウ・イエ)監督作品『二重生活』(2012年)で、秦昊(チン・ハオ)の愛人を演じていたあの女優である。
今回は『二重生活』の愛人とは全然違う雰囲気で、秀靈の若々しいアシスタント妮妮を演じている。
妮妮は、密かに映画監督になる夢を抱いており、
北京電影学院に合格したのを機に、秀靈に夢を打ち明け、彼女のもとを去ることになる。
秀靈さん、私が映画を撮ることになったら、出演して下さい」と言い残して。


舞台のプロデューサー程は、実は秀靈の亡き夫・程俊の実姉でもある。
一見、秀靈に理解の無い冷たい鉄の女のようだが、
実は、駄目な弟の尻拭いをしながら、秀靈の事もちゃんと考えてくれている。
演じている趙雅芝は1954年生まれで、もう60代半ばだとは、信じ難い。
セレブ感漂い、お綺麗です。名家出身のやり手プロデューサー役にぴったり。


あと他に、周家怡(キャサリン・チャウ)扮する何玉紋のアシスタント漪蓮や、
商天娥(ション・ティンオー)扮するスタッフ毛小姐が居るけれど、
それらを足しても、“7人の女”にしかならない。
8人目は?

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唯一考えられるのが、甘國亮(カム・コクリョン)扮するトランスジェンダーの舞台監督・歐陽鞍。
これで“8人の女”という事で正解よねぇ?間違っています…?





小難しい話ではないし、大ドンデン返しのようなサプライズが待っている訳でもない。
対立する二人の女優が、一週間の間に、大親友にはならないまでも、
互いを尊重し始め、関係の第二幕に進んでいく様を、
小洒落た雰囲気の中、ウィットに富んだ台詞で見せてくれる楽しい作品。
同性愛者の令嬢に花婿募集のような実際にあった話や、
“香港あるある”、“中華芸能あるある”が沢山散りばめられているのも、見ていて楽しい。

残念だったのは、日本語字幕。
何度も言っているように、人名を片仮名表記にするのは、本当にいい加減やめて欲しい。
登場人物が、ラムとチャンとウォンの3人だけなら、まだいいのよ。
大勢出て来る群像劇の場合、片仮名だと似たり寄ったりの名前が氾濫し、紛らわしく、
人名が覚え切れないし、関係が頭に入って来づらくなる。
さらに言うと、近年の香港映画は、本作品もそうだけれど、作中広東語と北京語の両方が飛び交い、
例えば、“林”さんという同一人物が、時に“ラム”と呼ばれたり、時に“リン”と呼ばれたりもする。
今回は、映画祭での上映だったため、中文字幕が併記されていたのが良かった。
同じ香港映画なら、『29歳問題』(2017年)の日本語字幕を見習って欲しい。


ちなみに、本作品は、最後に、陳自強(ウィリー・チャン)に捧げられたことが記される。
成龍(ジャッキー・チェン)を大物に育てた敏腕マネージャーとして知られ、
2017年10月、76歳で亡くなった、あの陳自強である。
陳自強と親しかった關錦鵬監督は、
本作品の舞台となる香港大會堂にも、彼との様々な想い出があるのかも知れない。

和菓子2種(+少林関連番組にコーフン!)

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今日の東京は12月とは思えぬ温かさ。
寒いのが苦手なので、ずっとこんなだったら有り難いけれど、そういう訳にもいかないであろう。
この先、冬らしくなったら、気温差で余計に寒さが身に沁みそう…。


ところで、唐突ですが、最近観た少林関連番組2本が、とても面白かった。
一本は、言うまでもなく、こちら(↓)

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中国で制作・放送された傑作ドキュメンタリーを紹介する
知る人ぞ知るBSトゥエルビの名番組『China Hour~あなたの知らない中国』で、
『舌尖上的中國~A Bite Of China』に続き、
2018年11月29日(木曜)より新たに始まった『功夫少林~The Kung Fu Shao Lin』
計5回から成るシリーズで、初回の放送、テーマは『絕學』。

多分面白いであろうことは想像していたのだけれど、
これねぇ、その想像を超える面白さで、観ていて、鳥肌立った。
番組冒頭に登場する二人の少林僧は、一人は40代、もう一人は50代。
いわゆる美男ではない、中年のおっさんなのだが、
ワザを披露するお姿があまりにも素敵で、危うく惚れかけた!
伝統武術は、“機敏!”とか“強そう!”というだけのものではない。
中国映画/ドラマの中に見る所作等もそうだけれど、
伝統武術の型も、一種の様式美の集大成で、ウットリしてしまうほど美しい。

勿論超人技も次から次へと紹介され、
特に弱いと言われる咽喉を鍛えるため、首を吊って、20分呼吸を止める“亀息功”に、目が点…。
普通、5分で息絶えます…。
「良い子は真似をしないように」とテロップを添えないと放送できないような荒業であった。


番組内容自体は素晴らしいのだが、
一つ残念だったのが、日本語字幕で人名を片仮名表記にしてしまっている事。
登場する少林僧がことごとく“シーさん”なのは…

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第4回『江湖』に出演しているであろう元リアル少林武僧の俳優・釋延能(シー・イェンノン)と同じで、
釋(Shì)”が僧侶特有の姓だから。
日本の芸能人・釈由美子も然り。
(“”は、大陸式簡体字だと“释”、日本式簡体字だと、さらに略し、“釈”となる。)

釋延能は、本名が張淑武で、少林寺に出家した時、“釋行宇(シー・シンユー)”の法号を授かり、
還俗して俳優になった当初も、その法号を芸名に使用していた。
私は釋行宇”という名を見た時、うぁ~いかにも坊主っぽい名前!と思ったのヨ。
なのに、彼の出演作を買った日本の配給会社に“シン・ユー”にされてしまった…。
まるで、“シン”が苗字で、“ユー”が下の名前みたいだし、
これじゃぁ彼が元リアル少林武僧である事も伝わりにくい。

『功夫少林』も、せっかくドキュメンタリーの秀作なのに、
まったく趣きが感じられない片仮名人名にしてしまっている事が、残念でならない。
でも、番組自体は本当に面白いから、興味のある方は、お試しを。
第2回『秘笈』は、BSトゥエルビで12月6日(木曜)に放送。




もう一本の番組は、最近ヤラセが問題視された日テレの『世界の果てまでイッテQ!』
その渦中の番組が、この日曜の12月2日、河南省登封でロケしたものを放送。

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嵩山少林寺のお膝元に数多くある武術学校の内、塔溝武校に6人の女芸人を送り込み、
同校で有名な“萬人武術操表演(万人武術体操)”を2日間で習得させ、
写真を撮って、カレンダーにしようという企画。
(↑)こんな画像では、武術操がどんな物か分かりにくいですよね。(↓)こういうのです。


人の多さだけでも圧巻。

『イッテQ』では、2017年3月にも、かの地にみやぞんを送り込んでおり、
水上に浮かべた板の上を走り切る輕功水上漂”を、2週間で習得させている。
どこかに動画が出回っていたら、是非ご覧ください。それは本当に凄かった。
今回の女芸人は、みやぞん程の運動神経を持ち併せているとは思えないし、
ましてや、武校の生徒とでは、元々の身体能力にも年齢にも格段の差があるので、
たった2日間ポッキリで大した事が出来るとは到底思えない。

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実際、女芸人たちは、2日間でキレッキレの武人には変身しないのだけれど、
なんとか3万6千人の生徒たちに交じり、武術操を披露するまでになるの。

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上手い下手はともかく、ズブの素人がひと通りの型を覚えるだけでも、大変だと思う。
それに、今回の放送は、女芸人たちの2日間を追ったドキュメントという以上に、
塔溝武校や同校の生徒たちを取材したドキュメントとして、私は楽しめた。


この塔溝武校って、つい数ヶ月前の2018年8月には…

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あの甄子丹(ドニー・イェン)も訪問しているのヨ。
こういう学校だと、アクション映画好きな子が多いだろうから、甄子丹の来訪は、嬉しかったでしょうねぇ~。

でねぇ…

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甄子丹主演作『大師兄~Big Brother』のヒットを祈願し、生徒たちが“大師兄”の人文字を披露。
甄子丹サマも感激したに違いない。


私は特別アクション映画ファンではないけれど(むしろ、無関心な方)、
少林の超絶技などは、一度ナマで見てみたい。
毎年、中国の年越し番組『春晚』の中の演武のコーナーを見る度に、
こういうのを日本でショウとしてやってくれれば良いのに…、と切望している。
京劇などの公演は結構あるけれど、
実は演武の方が、より広い層に取っ付き易く、しかも分かり易くキョーレツな感動を与えられると思うのよねぇ。



ついでに、近々放送の要録画番組を2本だけ。

12月6日(木曜) 夜7時 NHK BS1
『隠された日本兵のトラウマ~陸軍病院8002人の“病床日誌”』

11月末に放送され、評判だった番組。観逃したけれど、再放送。今度こそ録画。
戦時中、精神障害兵士が送られた国府台陸軍病院にl密かに保管されていた病床日誌(カルテ)から、
戦場の衝撃に加え、精神主義による制裁や住民への加害の罪悪感が発病に繋がっていたことを分析。
また、番組は、発病の多い中国での治安戦の実態も取材。
観たら、気分がドンヨリ重くなりそうだけれど、興味深い。


12月9日(日曜) 午前11時25分~ テレビ東京
『男子ごはん』

こちらは、明るく楽しそうな番組。
“マカオ料理をガッツリ食べて学ぶ!”という海外編。
以前、香港編があったけれど、今度は澳門(マカオ)なのですね。
多分、これ、最低でも2週続けて澳門特集であろう。




最後にお菓子。今回は、和の物を2ツ。
一つは(私にとっての)お馴染みの品で、もう一つはお初の物。

★ 亀屋:はけの小路

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大きさは、幅約5センチ×厚み約3.5センチ×高さ約4センチ。
小豆、手亡豆、うぐいす豆をはさみ、四角くカットした、白と桃色二色の軽羹。




一つめは、亀屋042-385-8181)の“はけの小路”
当ブログに、すでに複数回登場しているお菓子。

アレンジした軽羹(かるかん)である。
正統派と呼ばれる軽羹は、白くて他に何の添え物もないシンプルを極めたお菓子であろう。
それに餡子を入れた物などもあるけれど、
これは、白と桃色の二色づかいで、間にお豆を挟んだアレンジ。

メインとなる生地は、しっとり、モッチリした軽羹特有の食感。
そこに、ほんのり甘いお豆が味のアクセント。


パンチの無いボケた味で、超地味なお菓子だけれど、好き。
このままでも美味しいけれど、電子レンジで20~30秒程温めると、
出来立てホヤホヤっぽくなり、それもまた美味しい。

★ 宝来屋:焼栗鹿の子

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大きさは、直径約5センチ。
中に求肥を隠した栗餡を、軽く炙った栗で覆った鹿の子。



もう一つは、宝来屋(公式サイト)“焼栗鹿の子”
宝来屋は、桜のシーズンにたまたま食べた味噌餡入り道明寺を大層気に入り、
それ以降そればかり購入しているため、他の商品を試す機会がなかなか無い。
今回は、宝来屋他商品に初チャレンジ。

宝来屋では、栗の季節になると、2種類の栗鹿の子を販売。
一つは、栗の甘露煮とこし餡を合わせた、ごく一般的な栗鹿の子で、もう一つがコレ。
白餡ベースの栗餡と、炙った栗を合わせている。
正直言って、火で炙った食品特有の香ばしさは、期待していた程感じられなかった。
でも、栗はホクホクで、甘露煮にした物より、栗本来の旨味を活かした自然な味。
中の餡は、適度に甘いが、周囲の炙り栗を殺してしまうような濃密な餡ではなく、
二つの素材はいい具合にバランスがとれている。


奇を衒った感じではなく、ちゃんと伝統的な和菓子なのに、
有りそうであまり無いタイプの栗鹿の子。
栗の甘露煮&小豆餡の物より、あっさりマイルドで上品な味わい。
これはこれで美味。

映画『轢き殺された羊』

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【2018年/中国/86min.】
広大な平原がどこまでも続く可可西里(ココシリ)をトラックで走行する運転手の金巴は、
何かにぶつかった鈍い震動を感じ、停車。
道に横たわっていたのは、息絶えた一匹の羊。
金巴は、轢き殺してしまったその羊をトラックに乗せ、再び発車すると、
今度は、ボロをまとった若い男が視界に入ってくる。巡礼者か?
聞くと、その男が目指すのは、薩嘎だという。
それなら、自分と行く方角が同じだと、男をトラックの助手席に乗せ、アクセルを踏む金巴。
ところが、この男、金巴に親切にされたにもかかわらず、ろくに口を開こうともしない。
「無礼だな」という金巴に対し、ポツリポツリと話を始めた男。
なんでも、この男は、康巴の出身で、名は運転手と同じ“金巴”。
薩嘎へ向かうのは、20年前に父を殺した犯人に復讐するためだという…。



第19回東京フィルメックスのコンペティション部門で上映された萬瑪才旦(ペマツェテン)監督最新作。

プロデュースにあたったのは…

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あの王家衛(ウォン・カーウァイ)。


原題は『撞死了一隻羊~Jinpa』。
原作は、次仁羅布(ツェリンノルブ)の<殺手(人殺し)>と
萬瑪才旦監督自身が記した<撞死了一隻羊(轢き殺された羊)>。
2ツの短編小説を合わせて、一本の作品に映画化しているのだ。

王家衛が萬瑪才旦監督作品をプロデュースという意外性に加え、
2018年9月、第75回ヴェネツィア国際映画祭では、オリゾンティ部門で脚本賞を受賞と、話題性あり。
萬瑪才旦監督は、フィルメックスではお馴染みの監督さんなので、
今年のフィルメックスで上映してくれないかしらぁ~と切望していたら、
期待通り上映が発表されたので、有り難くチケット入手。
実は、私、萬瑪才旦監督の前作『タルロ~塔洛』(2015年)を、まだ観ていない。
本当は、制作年度順に鑑賞したかったのだけれど、仕方が無い。

当日、上映終了後には、来日した萬瑪才旦監督によるQ&Aあり。
また、本作品は、その第19回東京フィルメックスで、最終的に、審査員特別賞を受賞している。




本作品は、同じ“金巴(ジンパ)”という名を持つ二人の男、
トラック運転手と、父の敵討ちをしようとする男の出逢いとその後の行方を、
夢と現実を交差させながら描くロード・ムーヴィ


「如果我告訴你我的夢,也許你會遺忘它
(あなたに私の夢を話したところで、あなたはそれを忘れてしまうかも知れない)
如果我讓你進入我的夢,那也會成為你的夢
(私の夢の中にあなたを入れたら、それはあなたの夢になる)
If I tell you my dream, you might forget it. If I act my dream, parhaps you will remember it.
But if I involve you, it becomes your dream too.」
という藏(チベット)族の箴言で幕を開ける物語。

作品には、“他者への施し”を意味する“金巴(ジンパ)”という名を持つ二人の男が登場する。
一人は、豪快で荒っぽい印象のドラック運転手。
トラックで轢いてしまった羊を、僧侶に頼んで、きちんと成仏させようとするなど、
見掛けによらず、心優しく、律儀な面がある。
もう一人は、行者のような風貌の康巴(カンパ)出身の男。
実は、20年前に父を殺した瑪扎(マルツァ)に復讐するため、薩嘎を目指している。

同じ名前でも、まったく感じの異なるこのような二人が出逢ったことで、物語は動き出すのだが、
作中描かれている諸々の出来事は、現実のようにも、はたまた夢のようにも捉えられる。
二人の金巴に関してもそう。
トラック運転手と康巴の復讐者では、どちらが実在していて、どちらが夢の中の人物なのか…?
まさに作品冒頭に記される箴言通りで、チベット的な神秘の世界に誘われる。



では、ひたすら神秘的でシュールな夢物語、…悪く言うと、退屈な作品なのかと言うと、そんな事はなく、
さり気ないユーモアが、あちらこちらに散りばめられている。
日本ではあまり知られていないチベットの文化が覗けるのも、楽しい。

特に印象に残っているのが、トラック運転手の金巴が立ち寄る茶館のシーン。

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金巴が入店早々オーダーするのは、肉1キロ(!)と、包子15個(!!)。
お一人様にそぐわないこの量を聞いて、漠然と、お持ち帰り用だと受け止めていた私。
…ところが、イートインであった(笑)。
確かにこの金巴は、大柄な男だが、それにしても、随分な大食漢。
しかも、運ばれてきた包子を見て、「小さい」とボヤき、もう15個を追加オーダー。ひえぇ~。

食事のお供はビール。
ブランドもんと、そうじゃないのが2種類あって、
トラック運転手の金巴は、ブランドもんのバドワイザーをオーダーするのだが、
店主の女将が運んできたのは、ラベルの付いていないビール瓶。
本当にこれがバドなのか?と疑う金巴に、
「剥がれたラベルを貼り直し忘れた」と、客の目の前で、悪びれずに、瓶にラベルをペタリと貼り付ける女将。

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このシーン、可笑しくて、大好き。
女将も、無駄にフェロモン振りまいているし。



私は、本作品鑑賞前、原作小説が2ツ有ることが気になっていたのだが、
それに関しては、萬瑪才旦監督が、東京フィルメックスのQ&Aで答えている。
曰く、萬瑪才旦監督は、次仁羅布の<殺手>を読み、映画化したいと思ったのだけれど、
5~6千文字の短い小説を一本の映画にするのは困難なので、
自身の短編小説<撞死了一隻羊>との融合を決意。
映画の中の父の敵討ちをする男の部分は、次仁羅布の<殺手>から、
轢き殺してしまった羊の魂を再生させようとする部分は、自身の<撞死了一隻羊>からとの事。




“金巴(ジンパ)”という同じ名前を持つ二人の男を演じているのは…

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トラック運転手の金巴に金巴(ジンパ)
父の復讐を目論む康巴出身の金巴に更登彭措(ゲンドゥン・プンツォ)

どちらも北京電影學院で学んだ藏(チベット)族の俳優。
特に、トラック運転手の金巴が、強烈な印象を残す。
演じている俳優・金巴は、ご本人の微博に記されているプロフィールによると、1958年生まれというから、
えっ、もう還暦…?!と驚いたが、どうも1985年生まれの間違いのようだ。
過去には、萬瑪才旦監督の前作『タルロ~塔洛』(2015年)や、
張楊(チャン・ヤン)監督作品『皮繩上的魂~Soul on a String』(2016年)に出演。

本作品では、革ジャン+サングラス+エスニックなアクセサリーを身にまとい、
“西藏ロッカー”って感じのトラック野郎で、カッコイイ。
見た目は強面なのだが、内面は、“金巴”の名の通り、他者に施し功徳を積む善人というギャップがまた良し。


もう一人の金巴は、一見痩せ細ったひ弱な行者だが、実は内には強い復讐心を秘めており、
やはり外見と内面にギャップあり。
二人の金巴は、一人の人間が抱える二つの面を表現したような人物でもある。

父の敵討ちをしようとするこの金巴を演じる更登彭措は、
1985年生まれというから、もう一人の金巴と同じ年。
本作品では、ボロをまとい、顔もススけているので、気付きにくいけれど…

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素は、なかなかの美男であった。
右の画像は、『轢き殺された羊』を携え、ヴェネツィア国際映画祭に出席した際の更登彭措。
角度や画像にとって、韓流スタア鄭雨盛(チョン・ウソン)に似て見える。チベット版鄭雨盛。




そう、あと、本作品で忘れてはならないのが、日本でもお馴染みのナポリ民謡<'O Sole Mio>。
なんと、その'O Sole Mio>のチベット語版が、作中幾度か印象的に流れる。
フィルメックスの時の萬瑪才旦監督のお話によると、
西藏病人(チベットの病人)というバンドの物で、
歌っているのは、本作品でトラック運転手を演じている金巴の実弟なのだと。
私、初めて聴きましたよ、チベット語の'O Sole Mio>。
あっ、でも、最後に流れる'O Sole Mio>は、
非イタリア人と判る外国人訛りがあるけれど、イタリア語版であった。
萬瑪才旦監督は、何か意図があって、2ツを使い分けたのだろうか。
例えば、夢の中ではチベット語版で、夢から醒めたらイタリア語版、…とか。




日本に入って来るチベットを舞台にした映画は、
雄大な自然を背景にひたむきに生きる人々を描いたドキュメンタリー風の作品や、
厳しい現状を描いたシリアスな社会派作品、
もしくは、逆に、ほのぼの系と、これら3種類に集約されているように見受ける。
『轢き殺された羊』は、それらどれとも毛色が違う。
チベットを舞台にした西部劇であり、
それでいて、チベットの人々の中に根付いた信仰や夢をシュールに描いた作品。
通常なら共存しない2ツの要素を上手いこと融合させた、なんとも不思議な世界観に魅了され、
スクリーンを見詰めている私までもが、夢と現実の狭間で浮遊した感じ。

もう一度観たら、また違う発見が有りそうな気がしている。
これは、日本で初めて正式に公開される萬瑪才旦監督作品になりそうな予感がしているのだが
(あくまでも、期待を込めての予感だけれど)、どうなる事でしょう。
イヤらしい言い方になるかも知れないが、「藏族の有名監督の新作!」、「海外で受賞!」という以上に、
王家衛がプロデュースしたという事実が、公開の運びに大きな助けになる気も。
かなり効力あると思う、王家衛ブランド。



第19回東京フィルメックスで行われた萬瑪才旦監督のQ&Aについては、こちらから。

『轢き殺された羊』が審査員特別賞を獲得した第19回東京フィルメックス授賞式については、こちらから。

レピキュリアン:ケーキ2種(+あゝ、台湾版MeToo…)

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2日前から、台湾の芸能ニュースを覗くと“鈕承澤(ニウ・チェンザー)”の名で溢れかえっている。

その2日前の2018年12月5日、何が有ったかと言うと、鈕承澤監督が、性的暴行で訴えられたから。
訴えたのは、任賢齊(リッチー・レン)が主演する鈕承澤監督最新作『跑馬』の現場で働く女性スタッフAさん。

事件が起きたのは、11月下旬。
鈕承澤監督は、体調不良を理由に、本来予定されていた会議をキャンセル。
その後、自宅に集まろうということになり、呼び出されたAさんも参加。
夕方5時くらいに着くと、すでに結構な人数の友人知人がいたが、
そんな彼らも次々とそれぞれに帰宅してしまい、
結局Aさんのみ残され、その後、かなり強引に性的暴行をされたという。
病院で検査を受けたAさんの下半身には幾つかの裂傷、腕には青アザも…。
このAさんが、警察に被害届を出し、事件が明るみになったのが、12月5日であった。

かなり芸能ニュースを騒がせるも、当の鈕承澤監督自身は雲隠れ。
その間も、過去のセクハラ疑惑や、今回の案件について、様々な憶測が。
鈕承澤監督は、一年分の給与として、Aさんに60万元(≒225万円)を支払うと申し出たのだが、
Aさんは、これを口止め料と考え、拒否したのだとか。



そして、本日12月7日、午前8時35分、雲隠れしていた鈕承澤監督が、公けの場に。

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頭をまるめた姿で、台北市警大安分局に出頭、
取り調べを受け、午前11時16分に同署をあとにしている。



うーン…。
鈕承澤監督が、Aさんに性行為を迫ったのは、間違いのない事実のようですね。
(但し、鈕承澤監督は、Aさんとは恋愛関係にあったという方向でもっていくようにも見受ける。)

今回の事で、張作驥(チャン・ツォーチ)監督の一件を思い出した。(→参照
2013年5月、やはり大勢が集まる酒宴で、
最後にたった一人残された女性脚本家に性的暴行を働き、訴えられた張作驥監督に下されたのは、
3年10ヶ月の実刑判決。
2015年11月、東京フィルメックスで、『酔生夢死』が上映された時、
メガホンをとった張作驥監督は刑務所に居たため、当然来日などできる訳もなく、
代わりにプロデゥーサーと出演俳優二人、李鴻其(リー・ホンチー)と王靖婷(ワン・チンティン)がやって来て、
Q&Aを行った。(→参照
張作驥監督は、結局、2年4ヶ月服役し、2017年8月の仮釈放され、新作映画も撮っているけれど、
仮釈ギリギリ前に、高齢の母親が亡くなっちゃっているのよねぇ…。


台湾版MeTooですね。
被害女性が声を上げられるよう、社会の風潮が変わってきているのは、良い事だし、
どんな人物であろうと、加害を加えた者が、擁護されるべきではないと思うけれど、
鈕承澤監督も張作驥監督も、作品が良いだけに、残念でならない。


嗚呼、馬鹿よねぇ…。なんでそんな事をしてしまったのだか。失う物が多過ぎる。
文芸寄りの作品を撮り続けている張作驥監督と違い、
鈕承澤監督は、メジャーな作品を撮っているし、
自身も9歳から子役として表に出て、顔が広く知られているから、
報道のされ方は、張作驥監督の時以上の大きさ。

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台湾と同レベルとは言わないが、
日本も、張作驥監督はコアな映画ファンしか知らないだろうけれど、
鈕承澤なら、出演作なり監督作品を一度くらい観たことのある人がそこそこ居るはず。

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特に、監督して出演もしている『モンガに散る』(2010年)とか。
映画なら『ビバ!監督人生』(2008年)が特に好き。
俳優としてなら、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品『風櫃の少年』(1983年)が印象深い。



今回の事件で、『跑馬』チームは取り敢えず解散。この映画は、当面お蔵入りとなった。

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主演俳優の任賢齊は、この映画の役作りで、3ヶ月かけ、74キロだった体重を100キロまで増量したという。
監督の不祥事で、任賢齊の26キロのお肉が無駄に…。文字通りの“贅肉”になってしまいました…。

あと、余談になりますが、
台湾でも、何か不祥事を起こした時は、
頭を丸め、90度の角度で深々と反省や謝罪の意を表すものなのですね。
ちなみに、台湾でこの手の性犯罪を犯した場合、刑は通常3年から10年とのこと。




気を取り直して、お菓子を。
久ぁーーーし振りにレピキュリアン0422-46-6288)のケーキを食べた。
久し振り過ぎて、その間に、お店の色々な事が変わったみたい。

まず、定休日。
以前は、水曜を定休日にしていたが、実際には、水曜以外にも変則的に休む日が多く、
いざお店に行ったら、シャッターが閉まっていた!なんて惨事が頻繁に有った。
そのように、わざわざ足を運んでくれた客を失望させないためか、
現在では、定休日を月曜、火曜、水曜、木曜に設定。
いや、ここまで休みが多いなら、営業日を言った方が簡単ですね。
はい、金曜と週末のみの営業です。

しかも、具体的な開店時間は、“だいたい”昼12時頃。
しかも、しかも、その開店時に買えるのは、焼き菓子程度で、
ナマもののケーキは、おおよそ午後1時からの販売となる。
じゃぁ、遅く行けば良いのかと言うと、そうでもなく、遅いと、すでに品薄になっている事もあるようだ。

ここまで潔く働かないお店は、東京では珍しいですよね(笑)。
オーナーシェフの金子哲也氏は、
例えば、他でもお店を経営しているとか、製菓学校の講師をしているとか、
何か別の用件で忙しいのでしょうか。
無駄足を運ばずに、確実にレピキュリアンのケーキを入手したい人は、
事前にお店に営業時間等を確認した方が良いかも。


今回、何とか有り付けたのは、以下の2ツのケーキ。

★ レピキュリアン

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大きさは、直径約5.5センチ、高さ約4センチ。
タルト生地の中に、ソテーし刻んだリンゴとフランを詰め、
その上に、フランボワーズをひと粒隠したクレームシブーストを盛り、
上部をキャラメリゼしたケーキ。




一つめは、“レピキュリアン”
要は、おフランス伝統のケーキ、シブーストである。
シブーストは、以前から売られていたと思うけれど、
名前は確か、普通に“シブースト”とか“シブースト・オ・ポム”だったような…。
敢えて、店名を冠したということは、自信作なのでしょう。
私は、シブーストがレピキュリアンの人気商品だったなんて知らなかったので、
これまで一度も食べたことが無い。
レピキュリアンに限定せず、他店の物だったとしても、シブースト自体が久し振り。

レピキュリアンのシブーストは、台にタルト生地を使用。
中に詰められているフランは、クリーミーで滑らかな舌触り。
玉子の風味を感じる柔らかな甘さで、そこに混ぜられたリンゴが爽やか。

二層構造の上は、ふわふわ食感のクレームシブースト。
画像には映っていないけれど、実は中にフランボワーズがひと粒隠されている。


全体的には、マイルドな甘さだけれど、
キャラメリゼされた上部に、濃厚な甘みと、キャラメル特有のほのかな苦味。
さらに、リンゴとフランボワーズの爽やかさも加わって、味に幅がある。

★ サルヴァドール

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大きさは、大体長さ6センチ×幅2.5センチ×高さ4.5センチ。
チョコレートのビスキュイ、チョコレートのクリーム、そしてフランボワーズのムースを層にし、
トップをひと粒のブラックベリーで飾ったケーキ。




こちらは、“サルヴァドール”

フランボワーズを合わせたチョコレートケーキ。
濃厚なチョコレートを、酸味爽やかなフランボワーズが中和し、
重過ぎず、軽過ぎず。


チョコレートとフランボワーズは、絶対に間違いの無い組み合わせ。
マーブル模様と言うか、モアレ模様(?)にした上部のデザインが、シック。

映画『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト(仮)』

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【2018年/中国・フランス/135min.】
2001年、山西・大同。
金銭でモメる仲間の仲裁に入った斌哥は、関羽像を前に、手際よく皆を納得させ、問題を解決。
斌哥は、周囲からの信頼も厚い兄貴分。
仲間たちと酒を囲み、改めて義兄弟の契りを交わす。
斌哥の恋人・巧巧は、彼の仲間たちから“姐御”と慕われる立場を理解しながらも、
自分は江湖の人間ではないと、平凡な幸せを求める女性。
宏安鉱山の閉山で、職を失った父を連れ、斌哥と共に新疆へ引っ越そうと考えるが、
斌哥はどうも結婚には積極的ではない。
ある晩、二人を乗せた車が、繁華街で若いチンピラたちの襲撃に遭う。
車から降り、若造たちからボコボコにされる斌哥。
巧巧は咄嗟に、斌哥が隠し持っていた拳銃を発砲し、暴徒を抑えるも、
斌哥をかばい、銃を自分の所持品だと主張し、収監。

2006年。
巧巧は、5年の刑期を終え、出所するが、
収監中、父はこの世を去り、一度たりとも面会に来なかった斌哥も、そのまま音信不通。
なんとか斌哥の消息を掴もうと、巧巧は巴東に居る潮州商会の林家棟を訪ねるため、
船で三峡を渡るのだが…。



第19回東京フィルメックスで、クロージング作品として上映された
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督最新作を鑑賞。
原題は『江湖兒女~Ash Is Purest White』。

今年は、フィルメックスに、賈樟柯監督、来日せず。代わりに…

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会場では、ビデオメッセージが流された。




本作品を一言で表現すると、
『江湖兒女(江湖の男と女)』のタイトル通りで、
ヤクザな稼業で生きている男・郭斌と、彼を愛した女・巧巧の17年に及ぶ腐れ縁を描いたラヴ・ストーリー


物語の幕開けは、2001年の山西省・大同。
“斌哥”こと郭斌はヤクザ者であるが、仲間たちからの信用は厚い頼れる兄貴分。
その恋人の巧巧は、誰からも“姐御”と認められており、二人は夫婦も同然の仲。

ところが、平穏な日々は続かず、ある晩、繁華街で、斌が彼に恨みを持つ若者たちから集団で襲撃される。
巧巧は、暴徒を抑えるため、斌哥が隠し持っていた拳銃で発砲。
銃の所持は勿論違法。
巧巧は、斌哥をかばって、5年の刑に処せられる。

5年の歳月は、人を変える。
巧巧はようやく出所するも、かばった斌哥は迎えに来るどころか、音信不通。
風の便りに、斌哥の行方を追って、船で三峡を渡り、巴東を目指す。

ここら辺から、作品は、大陸横断のロード・ムーヴィの様相に。
撮影は、賈樟柯監督の故郷・山西にはじまり、三峽、新疆と、7700キロもに及んだという。


また…

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船で三峡を渡るこのシーンを見ると、『長江哀歌』(2006年)を思い出す。
このシーンと限らず、作中所々に賈樟柯監督の過去の作品とリンクする要素があるため、
本作品が、“賈樟柯監督の集大成”と言われる理由に納得。


賈樟柯監督自身に、本作品を“集大成”と位置付ける意思が有ったのかは分からないけれど、
江湖の物語を撮りたいという想いは学生時代から有り、それを遂に実現させたのが、本作品との事なので、
長年抱き続けてきた構想を形にしたという意味で、確かに賈樟柯監督の集大成なのかも。

ちなみに、分かるようで分かりにくいキーワードの“江湖”。
最近、日本に入って来ている大陸時代劇等では、“俠客の属する世界”と注釈が付けられていますよね。
本作品の日本語字幕では“渡世”と訳されている。
賈樟柯監督自身が定義する“江湖”は以下の通り。
方々に危険をはらむ環境。
複雑な人間関係。
至る所が住みか。
決して無くならない情義。

<水滸伝>から80年代の香港映画に至るまで、なぜ我々は江湖の物語を語りたがるのか?
それは、恐らく、江湖は興味深い“視点”であり、
その視点から、激しく変革する社会や、社会で起きている問題を覗き見ることが出来るのではないか?
それは、私が過去の作品ではやってこなかった事で、非常に新鮮に感じ、
この新作で、遂に江湖の物語を撮る決意を固めた、…と賈樟柯監督はインタヴュで語っている。



英語のタイトル『Ash Is Purest White(=灰は最も白い)』にも触れておく。
このタイトルに繋がる言葉は、主人公の斌と巧巧が、山を臨む平原を訪れるシーンに出て来る。

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「あの山は活火山かしら、死火山かしら?」、
「高温で焼かれているから、火山灰は一番綺麗なんじゃない?」、
「煙草の灰が一番綺麗ということはないわ」という巧巧の言葉。
賈樟柯監督は、どうやら“人”を“灰”に例えたようだ。
「どんな人も根底は純白、本作品の登場人物も、皆欠点は有っても、誰もが尊い存在」であると。
また、「世の大半の人々は、最終的に何の痕跡も残さず、灰のように散ってしまう。
だからこそ、我々が経験する事柄や、個々が向き合う問題を収めたのが、この映画」とも。

煙草の灰を引き合いに出したのは、昔、煙草の灰に消毒や止血の効果があると信じられ、
スリ傷ができた時などに、患部に塗っていたからで、
だから、今でも、喫煙時にジョークで、「タバコの灰は最も清潔だから」なんて言う事があるみたい。
私にとっては初耳だったけれど、
日本でも、ほぼ同様の理由で、煙草の灰や葉っぱを使う民間療法は有ったようですね。

ちなみに、撮影された場所は、山西省・大同の火山群の内、標高が二番目に高い金山。
賈樟柯監督は、『罪の手ざわり』(2013年)の時から、映画の脚本は、北京を離れ、大同で執筆。
この山は、賈樟柯監督が滞在する場所から、車で小一時間の距離にあり、
執筆に疲れた時などに、よく訪れる監督の秘密基地なのだと。





江湖の男女を演じているのは、(↓)こちらのお二方。

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ヤクザ者の“斌哥(斌アニキ)”こと郭斌に廖凡(リャオ・ファン)、斌哥の恋人・巧巧に趙濤(チャオ・タオ)

斌&巧巧と言えば、2001年の山西省・大同を背景に描いた作品、
『青の稲妻』(2002年)に登場する主人公の男女と同名!

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『青の稲妻』では、趙濤扮する主人公のおかっぱ頭が、かなり印象的だったが、
この新作でも、若い巧巧を演じる趙濤は、おかっぱ頭で、『青の稲妻』の巧巧を彷彿させる。
新作も、物語の幕開けは、2001年の山西省・大同だし、
つまり、『青の稲妻』の斌&巧巧の“その後”を想像して描いたのが、本作品なのかも知れない。

また、主演女優の趙濤が、一人の女性の長期間を演じ切るという点では、
前作『山河ノスタルジア』(2015年)で演じた沈濤に近い。
それら諸々からも、本作品は“賈樟柯監督の集大成”という印象で、
監督は本作品でもう趙濤を撮り尽くしたのではないだろうか?
趙濤が賈樟柯監督監督作品で主演を張るのは、これが最後なのではないだろうか?という疑問さえ湧く。
でも、次回作『在清朝』の主演コンビも、本作品と同じ、廖凡&趙濤という噂なので、私の考え過ぎですね。


で、その廖凡は、賈樟柯監督作品初出演。
大好きな俳優・廖凡が、賈樟柯監督作品に出るという期待も、私が本作品をいち早く観たかった大きな理由。
賈樟柯監督もまた私と同じで、廖凡のファンで、特に『薄氷の殺人』(2014年)が好きなのだと。

だからだろうか。
趙濤主演作『山河ノスタルジア』と廖凡主演作『薄氷の殺人』は…

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それぞれ主人公が妙なダンスで観衆を戸惑わせるのが面白い、私お気に入りの“中国二大ダンス映画”。
賈樟柯監督は、それら2作品の主演俳優、趙濤と廖凡に、本作品で一緒に踊らせているの。

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新たな“中国ダンス映画”、ここに誕生。
(今気が付いた!巧巧の衣装が『青の稲妻』の時と同じ蝶柄キャミと赤いシフォンの上着!)
『パルプ・フィクション』(1994年)のユマ・サーマンとジョン・トラボルタの如く、
おかっぱ頭の趙濤と廖凡にディスコで踊らせたこのシーンだけでも、私個人的には、本作品は及第点突破。
二人がディスコでノリノリに踊る曲は、1978年のヒットナンバー、ヴィレッジ・ピープルの<YMCA>。
あともう一曲、<YMCA>と同じくらい印象的に使われる歌が有って、
そちらは、イタリアのユニット、フィンツィ・コンティー二80年代のヒットナンバー<CHA-CHA-CHA>。
<CHA-CHA-CHA>は、社交ダンスにハマった斌の兄貴分・二勇哥が連れ歩いている
世界チャンピオンのダンサーが、踊りを披露する時に、いつも使っている曲。

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世界チャンピオンは、二勇哥のお葬式でも<CHA-CHA-CHA>。
日本では有り得ないお葬式シーンで、面白い。

西洋の曲ばかりではなく、もちろん中華圏の曲も使われており、
中でも効果的に使われているのが、葉倩文(サリー・イップ)1989年のヒット曲<淺醉一生>。
広東語の曲だけれど、当時大陸では、香港カルチャーが全盛期だろうし、
この曲は、『狼 男たちの挽歌・最終章』(1989年)のテーマ曲でもあったので、
若き日の賈樟柯監督もよく聴いたのではないだろうか。


趙濤と廖凡のダンスに興奮し、話がすっかり反れてしまった…。
軌道修正して、その廖凡扮する斌哥。
斌哥のモデルは、賈樟柯監督がまだ6~7歳の頃、地元にいた江湖の兄貴分。
カッコよくて、義理人情に厚く、屈強で、拳で問題を解決するその兄貴は、賈樟柯少年の憧れだったという。
その後、大学生になり、帰郷した時、うずくまって麺をススッている小太りで、髪の薄い中年男を目撃。
その中年が、あのカッコよかった兄貴だと気付いた瞬間、
賈樟柯監督は、時間の流れというものに、非常に強い感慨を覚えたという。

廖凡は、25~6歳から40代までの斌哥を演じているが、
まさに賈樟柯監督がかつて覚えた感慨をそのまま表現した人物像である。
作品前半の斌哥は、義侠心があって、周囲に人がいつも集まってくるカッコイイ兄貴分。
色々あって、音信が途絶え、巧巧の前に久し振りに姿を現す作品終盤の斌哥は、
長年の不摂生から脳内出血を起こし、車椅子生活を余儀なくされ、
身体の衰えから精神的にも衰えが進み、かつての覇気はこれっぽっちも無い、孤独な中年男…。
廖凡は、ギラギラの男も、枯れた男も、どちらを演じさせても、非常に上手い俳優だと再確認。

ただ、廖凡がいくら優秀な俳優で、賈樟柯監督も“ファン”を自認していても、起用には一つ問題が。
湖南省・長沙出身の廖凡は、賈樟柯監督作品には必要不可欠な山西方言を喋れない。
(趙濤が、賈樟柯監督作品御用達女優なのは、彼女が私生活で監督のパートナーだというだけではなく、
山西省出身で、山西方言を自然に喋れるのが、大きいとのこと。)
そこで、賈樟柯監督は、山西省の話劇院の先生に台詞を録音してもらい、それを廖凡に渡し、3ヶ月特訓。
結果、クランクイン時、廖凡の山西方言は、6割方出来上がっていたという。
キビシィ―!6割?!でも、私を含む多くの日本人には、完璧な山西方言に聞こえるから、大丈夫。
賈樟柯監督自身、「私の英語より、廖凡の山西方言の方がずっと上手い」と一応誉めてはいる。




他、脇には、同じ映画界の監督仲間や、
過去の賈樟柯監督作品に出演した俳優たちが、小さな役で沢山出演しているので、
そういうのを探すのも楽しみ。一例を挙げておくと…

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潮州商會の林家棟に刁亦男(ディアオ・イーナン)監督、
奉節のレストランで巧巧が騙そうとする男に張一白(ジャン・イーバイ)監督、
奉節のレストランで巧巧が次に騙そうとする男に張譯(チャン・イー)
巧巧が被害を訴える奉節警察の警官に董子健(ドン・ズージェン)
巧巧が車中で出逢う克拉瑪依(カラマイ)出身の男に徐崢(シュー・ジェン)等々。

真面目ななようでいて胡散臭い徐崢は、面白い。
一番分かりにくいのは、制服を着ている上、顔があまり映らない董子健かも。
張一白監督は、これまでにも、他の監督の作品に数多く顔を出しているので、
本作品で見ても、あまり驚きが無いけれど、
『薄氷の殺人』の刁亦男監督の出演は珍しい。
そもそも、普段から、“映画監督”というより、普通の“勤め人”で充分通用する見た目だし、
演技も至ってナチュラル。
刁亦男監督を見たことが無い人は、林家棟を演じている人物を、プロ俳優だと思うのでは?
それにしても、役名がなぜ“林家棟”なのだか…??林家棟といったら…

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お馴染みの香港明星・林家棟(ラム・カートン)でしょー。
本作品の日本語字幕では、この役名・林家棟を、
北京語読みの片仮名表記で、確か“リン・ジアドン”にしてしまっていた…。
人名を片仮名表記にすることで、似たり寄ったりの名が増え、紛らわしくなるだけではなく、
本来有る意味も伝わらず、面白みを半減させるから、ホント、やめて。
(なお、本作品の“林家棟”に関しては、賈樟柯監督が香港のあの林家棟を意識したかは不明です。)


あと、脇キャラでは、実は、馮小剛(フォン・シャオガン)監督が、
半身不随になった斌哥を診察する医師の役で出演している。
馮小剛監督は、日本でも報道された范冰冰の脱税問題で、やはり渦中の人となってしまったため、
彼のシーンは大陸ではカットされて公開。
よって、本作品の大陸公開版は、本来の141分から136分に短縮。
一方、日本では、第19回フィルメックスの公式サイトに、オリジナル版と同じ“141分”と明記。
ところが、当日、上映前に、市山尚三Pが、「上映時間は2時間15分(=135分)です。
本当はもう少し短くしてもらえたら良かったんですけれど」とプロデューサー目線のジョーク。
つまり、フィルメックス上映版も、大陸公開版と同じで、
馮小剛監督のシーンは切られているのだと理解し、映画を観始めたら、
いえいえ、馮小剛監督、白衣を着て、ちゃんと出てきました。
どうやらフィルメックス上映版は、オリジナル版のままだったようだ。
但し、本作品が、日本で正式に公開される際、そのシーンがどうなるのかは、不明。






賈樟柯監督×廖凡コラボというだけでも観応えあるし、
その廖凡が、趙濤と踊ってくれるなんて、この映画、私mango的にはもうサイコー。
過去の賈樟柯監督作品をずっと観てきている人たちは、色々な“仕掛け”の発見を楽しめるから、
この新作を気に入るのではないだろうか。
賈樟柯監督作品初心者が、どう感じるのかは、初心者ではない私が想像することは不可能だけれど、
決して難解な作品ではないので、取っ付き易いとは思う。
所々にユーモアも散りばめられており、
船内でお財布をスラれ、無一文になった巧巧が、メゲるどころか、
裕福そうな男性を騙し、お金を巻き上げたり、祝いの長桌宴に紛れ込んでタダ飯にありついたり、
挙句、スリ寄って来たバイク運転手から、バイクを奪い取った上、
姿をくらました斌哥を身元引き受け人に仕立て、自分を迎えに来さす等々
彼女の悪知恵と逞しさに笑いが漏れた。

治療の甲斐あって、歩けるようになった斌哥が、お世話してくれた巧巧のもとを、
またまた去って行ってしまうという不義理なラストは、
皆さま、どう受け止められたのでしょうか。私は…
巧巧の世話になる事を、斌哥の自尊心が許せなかった。
江湖の男というものは、一ヶ所に落ち着くことが出来ない。
…という2点を理由に考えた。
特に大きな理由は前者かも。


本作品は、2019年夏頃、文化村ル・シネマ、新宿武蔵野館他にて、公開がすでに決まっている。
それまでに、良い邦題を付けて欲しい。
出来れば、日本語字幕も、人名をきちんと漢字表記の分かり易い物にやり直して正式公開して頂きたい。



追記
全て書き終わり、画像あさりをしていて、気付いた。
本作品で、趙濤扮する巧巧の衣装が、過去の賈樟柯監督作品で趙濤が演じた女性と同じなのは、
『青の稲妻』だけではなかった…!

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本作品で、船で三峡を渡り、奉節へ向かった巧巧が身に着けている
クリーム色の綿シャツやバイカラーのショルダーバッグは、
『長江哀歌』で、三峡を渡り、奉節の行った山西の女性・沈濤とほぼ同じ…!
うしろで一つに束ねた髪形も。
勿論、ダム建設に伴い、近隣の多くの街が、間も無く水の底に沈む2006年という時代設定も同じ。
うわぁ、やはり本作品は、“賈樟柯監督の集大成”ですねー。
作中、あちらこちらに遊びが散りばめられていて、面白い。
益々映画を観直したくなった。2019年夏の正式公開が楽しみ。

和洋菓子2種(+今度は綾野剛!)

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綾野剛が海外初進出で、中国映画に出るという。

綾野剛って、海外作品初めてでしたっけ…?
何かに出ていた気がしていたけれど、私の思い違いだったようだ。


綾野剛が出演するのは、こちら(↓)

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董天翼(ドン・ティエンイー)監督の『破陣子(はじんし)~The Ugly Town』。
私は、この董天翼という監督を知らなかった。
あまり情報が無いのだけれど、どうも北京電影學院を出てから、主に舞台の脚本を手掛けていた人みたい。
北京電影學院に入学したのが2007年とのことなので、
綾野剛よりちょっと年下の若い監督さんである可能性が高い。


この『破陣子』も、董天翼が脚本を担当した不条理コメディ舞台の映画化。

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のべ660万人を動員した人気の舞台だという。
抗日戦争期にあった山西の物語からインスピレーションを得て書かれた
北宋末期を時代背景にしたお話。
元の山西の物語は悲劇らしいが、この舞台劇には、コメディ要素を取り入れている。

『破陣子』は、同じく舞台劇を映画化した
『驢得水~Mr.Donkey』(2016年)を成功させた至樂匯(JoyWay Drama)が手掛ける第2弾作品。

映画版のストーリーが、舞台版とほぼ同じなのか、はたまたかなりのアレンジが加えられているのかは不明。
とにかく映画版は、壇ノ浦の戦いで海に身投げした日本の貴族が、
漂流の末、南宋の村・白虎蕩に辿り着き、現地の女性と恋に発展していくという乱世の恋の物語。

綾野剛が演じるのは、勿論主人公であるその日本の貴族。
補足しておくと、この『破陣子』は、日中合作映画ではなく、純然たる中国映画。
中国映画で、日本人俳優が単独で主演を務めるのは、お初なんですって。



で、本日2018年12月10日、映画『破陣子』が北京でクランクイン。

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綾野剛も、中華圏ではお約束の儀式に参加し、お線香を手にお祈りしております。
で、一緒に写っている帽子の男性が董天翼監督。


このクランクインの儀式には写っていない
綾野剛と恋に落ちる現地女性を誰が演じるのかも、気になりますよね?

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相手役は宋佳(ソン・ジア)。
演技が上手く、雰囲気のある良い女優さん。
中華圏の人々は、日本の俳優は小柄というイメージを抱いているだろうけれど、
綾野剛は180あるから、173センチの宋佳をキャスティングし易かったかも。
まぁ、どちらの起用が先に決まったのかは知らないけれど。


宋佳は、約2ヶ月前、『詩人~The Poet』の上映のため、
東京国際映画祭に来てくれた時にナマで見たばかり。(→参照

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日本に入って来ている出演作では、大抵影のある女性を演じているが、
実際の宋佳は、明るく朗らかな、とても感じの良い女性であった。
あの時、実は、新作映画『破陣子』で綾野剛と共演することがすでに決まっていたのだろうか。


『破陣子』で綾野剛は、中国語の台詞にも挑戦するそう。
今気付いたのだけれど、綾野剛、数日前にすでに微博も開設していて、
現時点のフォロワー数は約2万5百人。
そこで、中国語で挨拶をする動画も見られる。
正直言って、まだ、あんまり上手くないのだが、頑張っていて、すでに沢山のコメントや“贊”をもらっている。
「中国の友人の皆さん、僕のことを“剛子Gāngzi”と呼んで」だって。
日本でも、これからは“剛子(ごうこ/つよこ)”と呼びたくなる。


うわぁ~、綾野剛&宋佳の共演、楽しみ。
この『破陣子』、中国での公開は、2019年を予定。
日本でも絶対に公開して欲しい。




ついでに、近々放送予定の要録画番組を2本だけ。

12月12日(水曜) テレビ東京 夜10時~
『未来世紀ジパング』

今回は、スタジオを飛び出し、沸騰現場へ赴き、徹底取材する拡大スペシャル。
題して、“日中友好ムードは本当か? 中国“キレイ”革命の最前線”。
シェリーは、中国初上陸らしい。
どうやら上海で取材しているみたい。



12月16日(日曜) TBS 夜11時15分~
『情熱大陸』

今回取り上げるのは、パンダ飼育員の阿部展子。
…って誰?ですよね。
1984年新潟生まれの女性。
3歳の時に祖母がくれたパンダのぬいぐるみを偏愛し、
大学では、パンダの母国語=中国語を勉強するために、中国語専攻。
その後、四川農業大学に留学し、成都大熊貓繁育研究基地でも一年半、パンダの飼育と繁殖を学び、
上野動物園で力力(リーリー)&真真(シンシン)の飼育を6年担当し、
昨年5月からまた成都の繁育研究基地で勤務している女性とのこと。
パンダ愛と情熱がスゴイ!




お菓子は、洋モノと和モノをそれぞれ一つずつ。
どちらも比較的シンプルなお菓子。

★ レ・アントルメ国立:国立バウム

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大きさは、直径6センチ、厚さ3センチ。
生クリームを添えた小ぶりのバウムクーヘン。




“洋”からは、レ・アントルメ国立(公式サイト)“国立バウム”

国立バウムは、レ・アントルメ国立が出している人気商品。
直径20センチ程あり、カットして食べる、いわゆるバウムクーヘン。
私がたまに食べているこちらは、同じ名前でも、お一人様サイズに作られた物で、
さらに、生クリームが添えられている。

生地は、しっとり。適度に弾力も。
米粉やタピオカ粉が混ぜられているらしい。
生クリームは、真ん中の穴の中にも詰まっているから、たっぷりな量である。
バウムクーヘン本体の周囲に付いた糖衣のパリッとした食感も、いい感じ。


ふわふわに盛られた生クリームには、目から食欲をそそられる。
バウムクーヘンだけでも美味しいのだろうけれど、生クリームが好きなので、
生クリームが添えられていたら、なお嬉しい。
自分で生クリームさえ泡立てれば、バウムクーヘンだけ買ってきて、似たような物は作れるだろうけれど、
生クリームを泡立てることすら面倒くさい私には、すでにこの状態で売られているのが有り難い。

★ 笹屋伊織:水仙

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大きさは、直径約5センチ。
生地でこし餡を包み、水仙の花に見立てた上生菓子。




“和”からは、笹屋伊織(公式サイト)“水仙”
これは、初めて食べるお菓子。
水仙の花には、新年のイメージがある。
もうそんな時期なのですねぇ…、しみじみ…。

小麦粉、餅粉、味葛粉などを混ぜて焼いた生地は、薄くてもモッチモチの食感で、
ほんのり甘みがある素朴な味。
この味、強いて言えば、すあまに似ているだろうか。
クレープのように、ヒダに折りたたんでいるので、
重なった部分がまたちょっと変わった食感を生み出している。
その中に包まれたこし餡は、生地が素朴な味わいな分、適度に甘い。


何だか分からず、期待もせずに食べたのだけれど、
見た目で受けた印象からは想像していなかったモッチリした食感が面白く、案外、美味しかった。

台北2018:ホテル②~客室

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2018年初冬、色々事情が有って、友人Mと思い掛けず訪れることとなった台北で
宿泊したのは台北文華東方酒店(マンダリン・オリエンタル台北)
台北2018:ホテル①~全般に引き続き、ここでは客室について。


建物は17階建てで、総部屋数は296。
商業施設・日本橋三井タワーの中に入居している東京のマンダリンオリエンタルなどと比べると、
台北の文華東方酒店は、独立した一棟の建物丸々がホテルなので、規模は大きめ。
かと言って、日本人観光客からの支持が高い台北の人気ホテル、
20階建て+総客室数538の台北晶華酒店(リージェント台北)のような大型ホテルとも違い、
適度に“隠れ家”感のあるこじんまりした雰囲気が保たれている。

そんな台北文華東方酒店の特徴の一つに挙げられるのは、スタンダードな客室でも55㎡あること。
土地の狭い台北で、この広さの客室を提供できるホテルは、まだまだ貴重。

また、台北文華東方酒店は、他国のマンダリンオリエンタルと同様に、クラブフロアを設置。
中国語で“行政樓層”と呼ばれるそのクラブフロアは、上層階、16階と17階の2フロア。
私と友人Mは、行政樓層の中から、最もスタンダードなツインのお部屋を予約。


以下、我々のお部屋をザッとチェック。

★ ベッドルーム

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扉を開き、部屋に足を踏み入れると、廊下の奥にメインのベッドルーム。
到着したのは真っ昼間であったが、
逆光+閉じられた紗のブラインド+ムーディな照明と
3要素が悪い具合に重なった状況下で撮ったこれら画像からは
お部屋の雰囲気が伝わりませんね(苦笑)。
本当は、この画像より、もっと素敵なお部屋でした。
その後は、照明が消せることに気付き、自然光で撮影。


ふたつ並べられたベッドはゆったりサイズ。

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マットレスは柔らかめ。
最近は、高反発な物が主流になりつつあると見受けるし、私自身、本当は、硬めが好み。
この柔らかマットレスだと、ベッドに入った瞬間、身体が沈んでいく感覚があり、
最初、ちょっと心地悪く感じだが、私は、デリケートではなく、いつでもどこでも爆睡できる人なので、
このマットレスにも、すぐに慣れた。



ベッドの向かいの壁には、スマートテレビ。

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通常のテレビ放送以外にも、ホテルからのインフォメーション等、色々見られる。
…のだけれどぉ、これはちょっと“問題あり”なテレビで、リモコンの反応が極端に悪かった。
普段はザッピングしまくっている私だけれど、このテレビは、オン/オフも、音量調整もひと苦労なので、
一度つけたら、それっきり放置。
我々が滞在したのは、第55回金馬獎授賞式の直前だったので、金馬獎の広告がよく流れていましたヨ。



テレビの横には、デスク。

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到着時、このデスクの上には、
台北文華東方酒店オリジナルの鳳梨酥(パイナップルケーキ)が2箱置かれていた。
ブルーの箱が可愛らしい。
この鳳梨酥は、ホテル1階のケーキショップ、文華餅房で購入可。


デスク周辺には…

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電話やステイショナリー。
インターネット接続は勿論無料。
今どきのホテルなので、
これは、クラブフロアと限らず通常の客室でも適応されているサービスと察するが、未確認。



窓際に戻ります。

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窓際には、ちょっとした寛ぎスペース。
もっとも、この長椅子は、私と友人Mの荷物置き場と化してしまいましたが…。


窓の外は、(↓)こんな風景。

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敦化北路をはさみ、真向かいには、長庚紀念醫院が建つ。
客室は一応全室“シティ・ヴュー”という触れ込みだが、
そもそも台北は、NY、香港、上海のような摩天楼が臨める大都会ではないので、
“シティ”は、ごくごく素朴な“シティ”である。
あっ、でも、目をこらすと、南東方向に、台北101が、辛うじてマッチ棒程度に小さく見えます(笑)。
ただ、この申し訳程度に頭を覗かせる台北101も、工事中のビルが完成したら、どうなることか…。
もう少し都会っぽい夜景を楽しみたい方々には、信義エリアの方がお勧めかも。
ちなみに、客室の窓は開かないよう固定されている。



窓の側から反対に部屋を見渡すと、(↓)こんな感じ。

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壁が白く、天井が高めなので、圧迫感が無く、スッキリした印象。

★ ミニバー

壁際のキャビネットを開くと…


そこはミニバー。

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自分で購入したお土産の収納などに使いたいので、
事前にホテル側に送ったメールで「ミニバーは空」とリクエスト。

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ティーバッグは、台湾のアパレルブランドがプロデュースしているCHA CHA THÉの物、コーヒーはイリ―。

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コーヒーは、ネスプレッソを入れているホテルが多いので、イリ―は珍しいかも。
あと、湯沸かし器も、昨今は、高速でお湯が湧かせるティファールのような電気ケトルが多いけれど、
ここでは象印の湯沸かし器。
東京だと、やはり帝国ホテルがこれと同じ物を導入しているので、一度使ってみたことがあるのだけれど、
お湯を沸かすのに、大層な時間を要する。
私個人的には、高速でお湯が湧かせる電気ケトルの方が、ホテルに有ったら便利だと感じるが、
お茶を飲むことを考え、沸かす事より、保温できる事を重視しているのだろうか。
もっとも、我々は、飲み物はラウンジで飲んおり、客室の飲み物には、ほとんど手を付けていないので、
コーヒーがどこのメーカーだろうと、お湯の沸き時間が遅かろうと、あまり関係無かった。

★ バス・ルーム

さらに玄関側に戻ると、バスルーム。
部屋を広く見せるため、解放的に“見せるバスルーム”にするホテルが最近多いけれど、
人と一緒に宿泊する場合は、気になっちゃいますよね?

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このホテルでは、紗のカーテンの引き戸で、水回りのスペースを区切れるようにしている。
あくまでも“紗のカーテン”なので、覗こうと思えば、ある程度は見えてしまうだろうけれど、
まぁ、普通、そこまでムキになって覗こうとする人と一緒に泊まることは無いから、大丈夫。


この区切られたスペースの中央を占めているのは…

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洗面所。で…

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左側がおトイレ。

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右側がバスルーム。
バスタブ&シャワーが、おトイレから離れ、独立したスペースになっているのは、
日本人にとって、ポイントが高いであろう。
独立したスペースになっているからこそ、バスタブの外を、日本で言う“洗い場”感覚で使える。
さんざん語っておいてナンですが、
実は、我々は、毎晩サウナに行っていたので、このお風呂を一度も使っていない。



備品。

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ヘアドライヤーは、充分な風量。
ミネラルウォーターは、洗面所以外にも、ベッドサイドなどに常に補充されている。
他にも、櫛、歯ブラシ、コットン等々、大抵の物は揃ってる。



アメニティ。

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アロマキャンドル等で有名なおフランス初のフレグランスのメゾン、diptyque(ディプティック)の物。
ボディローションを使ってみた。
ベタつかず、でもシットリする質感は良いけれど、
コダワリのフレグランスが、いかにもヨーロッパ女性好みする香りで、私にはちょっとキツイ。
石鹸等では、気にならなかった。

★ クローゼット

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バスルームの向かい側には、ウォークインのクローゼット。
左右に、服を掛けるスペース有り。

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でも、引き出しは、たった2ツと少ない。
内、一つには、ランドリーバッグや、服用ブラシが収納されている。
アイロンやアイロン台も有り。
もっとも、服のプレスは、滞在中3枚までは無料のサービス。



なかなか見付からず、友人Mと二人で探しまくったのが、セイフティボックス。
通常、クローゼットかデスクの近くに有るセイフティボックスが、探せど探せど、見付からず…。
ようやく見付けたのは、やはりクローゼットの中であった。

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クローゼットの壁面と同じ木目調の扉で覆われていたため、気付かず…。
その小さな扉を開けたら、中にセイフティボックスが。
仕掛けがいっぱいの忍者屋敷みたい(笑)。

★ ヴァレット・ボックス

このホテルで、優れモノと感じたのは、ヴァレット・ボックス。
玄関ドアの横に、もう一つ、縦長の収納スペースが有り、その中に…

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このような木枠(?)が入っている。
最初、これが何なのだか、サッパリ分からなかった。
実は、これ、靴磨きをお願いする時に使う物。
ここに、磨いて欲しい靴を置き、収納扉の中に入れ、さらに…

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玄関扉真横に設置されている“Valet 収件箱”のボタンを押しておく。
(もしくは、収納スペースの奥の壁にあるボタンでもOK。)
すると、客室内にいる我々と顔を合わすことなく、
廊下側の鍵付き小窓から、収納扉の中の靴を回収し、磨いて、また元に戻しておいてくれるの。

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磨き終えた靴には、南国らしく蘭のお花が添えられて、戻ってきます。

一般的には、朝出掛ける前に出しておけば、帰って来る時分には、仕上がって戻ってきている。
でも、時間帯に関係無く、急なリクエストでも対応してくれる。
また、靴だけではなく、クリーニングも同様の方法で預けられる。
ちなみに、靴磨きは無料、服のプレスは滞在中3着までは無料のサービス。



台北2018:ホテル③~クラブ・ラウンジへ続く。



◆◇◆ 台北文華東方酒店 Mandarin Oriental Taipei ◆◇◆
台北市 敦化北路 158 號

+886-2-2715-6888

文湖線/松山新店線・南京復興駅 7出口から慶城街を北東に直進し徒歩約8分

大陸ドラマ『最上のボクら~最好的我們』

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2003年8月末。
中国で猛威を振るったSARSの影響で、受験科目が減り、
奇跡的に難関の振華に合格したラッキーな女の子・耿耿。
今日はいよいよ入学式。
日々の生活を記録しようと、カメラを手に意気揚々と学校へ向かうが、
有ろう事か、その大切なカメラを落とし、しかも、拾おうと無理をして、鉄柵から頭が抜けなくなってしまう。
そんな間抜けな耿耿を小馬鹿にしながらも、助けてくれたのは、通りすがりの青年。
お陰で何とか学校に到着した耿耿は、クラス分けの掲示を見て、自分が5組に入った事、
そして、その5組に、さっき鉄柵に挟まった自分を小馬鹿にした青年もいる事を知る。
早速5組の教室に行くと、なんとあの青年が隣の席。
彼の名は余淮。
師範大付属中から入学した余淮は成績優秀で、すでに多くのクラスメイトが彼の事を知っていた。
一方、十三中から奇跡的に名門校に入学できた耿耿は、先生に存在さえ忘れ去られる始末。
初日から踏んだり蹴ったりだが、こうして高校生活は幕を開け…。



2018年10月下旬、アジアドラマチックTVで始まった大陸ドラマ『最上のボクら~最好的我們』
12月半ば、全24話の放送を終了。
現地で評価の高い作品ではあるが、“今の私の気分”ではなかったため、大した期待も無く、
週3話の放送なら、無理せず追えるという理由で、何となく観たら、実のところ案外楽しめた。

★ 概要

2016年春に、愛奇藝 iQIYIで初配信された青春ドラマ。

原作は、人気女性作家・八月長安の“振華三部曲”の内の一作<最好的我們>。
それを劉暢(リウ・チャン)監督がドラマ化。
(“振華三部曲”他二作品は、<你好,舊時光>と<暗戀· 橘生淮南>で、全て映像化。)



劉暢監督は、北京電影學院で学んだ1988年生まれの新鋭。

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コンクールに出品した自作自演の8分間の短編作品『李晚我想和你好』が、
大ヒットwebドラマ『匆匆那年~Back in Time』を制作した北京小糖人文化傳媒の創設者で
プロデューサーの朱振華(ジュウ・ジェンホア)の目に留まり、
当時、小糖人と愛奇藝との間ですでに企画が進んでいた新ドラマ『最上のボクら』の監督に、
新人でありながら、大抜擢。
結果、『最上のボクら』は好評を博し、劉暢監督自身注目され、次々と新作を手掛けるようになり、
現在は、張超(チャン・チャオ)主演の新ドラマ『獨家記憶』が、すでにクランクアップし、公開待機中。


劉暢監督は、運命を変えた短編作品『李晚我想和你好』で自作“自演”しているように、
その気になれば、自身も表に出て演じられる人なので、『最上のボクら』でも、終盤、2015年のシーンで…

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主人公の嫌味なお見合い相手Andyの役で、チラリと出演している。

私生活では、『最上のボクら』が初配信され、成功した後の2017年に…

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女優の周放(チョウ・ファン)と結婚。
成功者になった途端、いきなり有名女優にスリ寄られた訳ではなく、
二人は幼少期から仲良しの同級生で、大学時代は北京と上海で離れ離れとなり、音信が途絶えるも、
十年後に再会し、初恋を実らせての結婚。
『最上のボクら』を地で行っているワケ。
ついでに補足しておくと、その『最上のボクら』終盤2015年のシーンで、
リメイクされたドラマ『還珠格格』にハマッた主人公の父親が、
「柳紅は、新版の女優がいいね」という台詞がある。
2011年度版『新還珠格格』でその柳紅を演じている女優こそが、劉暢監督の奥方・周放ですヨ。


余談になるが、映像関係の仕事をする親戚がいたこともあり、
早い時分から漠然とその世界に興味を持っていた劉暢監督の想いを決定付けたのは、一本の日本の作品。
岩井俊二監督の『PiCNiC』(1996年)なんですって。
日本向けインタヴュで語った話ではないので、リップサービスではないはず。

★ 物語

2003年、進学校・振華に入学した耿耿、余淮ら、高校生たちの日常を綴った青春ドラマ

…なのだけれどぉ、高校卒業から十年後の現在2015年を描く最後の2話を見ると、
その高校時代に出逢った運命の二人、
耿耿と余淮の紆余曲折の恋を描いたラヴ・ストーリーであったと感じる。

タイトル『最上のボクら~最好的我們』も、
当初は、青春時代をキラキラと生きる高校の仲間たち全体を表しているのだと思っていたが、
ドラマを最後まで観ると、耿耿と余淮の二人こそが“最好的我們(最上のボクら)”なのかなぁ~、と。



背景に触れておくと、1987年生まれの女の子・耿耿を主人公にした本ドラマは、
ズバリ、1987年生まれの原作者・八月長安の青春時代をヒントに描かれているものと思われる。

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八月長安、本名・劉婉薈(リウ・ワンフイ)は、1987年、黒龍江省・哈爾濱(ハルピン)の生まれ。
“八月長安”のペンネームで小説を書き始めたのは、まだ北京大學光華管理學院在学中。
(なんでも八月長安は、日本への留学経験もあるらしく、
ダブルディグリープログラムで、早稲田大学でも政治経済学の学位を取得している。)

ふんわりした女性に見えるけれど、相当頭が良いのでしょうね、八月長安サン。
通っていた高校・哈爾濱市第三中學も、
毎年卒業生の約10%を北京大学か清華大学へ送り込んでいる黒龍江省トップレベルの重点校らしい。

本ドラマの撮影は、主に山東省青島で行われている。
舞台となる振華高中は、青島二中分校(青島市南區江西路70號)が撮影に使われているけれど、
モデルは、八月長安の母校である哈爾濱市第三中學だと言われている。

本ドラマは、監督の劉暢も、八月長安と同世代の1988年生まれ。
劉暢監督の母校で、日本でも中華芸能をちょっとでも知っている人にはお馴染みの北京電影學院も
カメラ好きな主人公・耿耿が受験する大学として、ちょこっと出てくるから、我々にも食い付き易い。

このドラマは、八月長安や劉暢監督と同世代のアラサー中国人たちが観て、
懐かしさを感じる青春ドラマなのであろう。

★ キャスト その①:運命の二人~耿耿於懷

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主人公の男女は、名前からして運命の二人。
二人の名、耿耿(GěngGěng)と余淮(YǘHuái)を足すと、
同音で、心に引っ掛かって忘れられない事を意味する四字熟語“耿耿於懷”となる。


劉昊然(リウ・ハオラン):余淮~物理とバスケが得意な男の子

本ドラマの主演男優は、あれよあれよと言う間に有名になった新星・劉昊然クン。
現時点で正式に日本に入って来ている出演作、映画『空海 KU-KAI』(2017年)や
ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐>風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』より前の18歳の時の主演作がコレ。
母親世代に可愛がられそうな素朴な顔立ち+184の長身というアンバランスで、
シャープな二枚目には無い親近感や安心感を見る者に適度に与えながらも、
「でもやっぱり普通の人よりちょっとカッコイイかも…」と思わせる絶妙な立ち位置の劉昊然は、
進学校に通う真面目な優等生でありながらバスケも得意という余淮に適役。
下手にオシャレ感を狙った学園アイドルドラマじゃないから、
ヒロインを魅了する男性主人公なのに、髪型がお椀ヘアという野暮ったさが、これまたよろしい。

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もっとも、高三になると、洒落っ気が出て、分け目を付けたアダルト仕様に変わるのだが。
私個人的には、ダサダサお椀ヘアの方が、愛嬌があって好き(←多分、少数派)。

劉昊然はまだ21歳なので、これからも制服を着て演じる機会はあるかも知れないけれど、
まるで演じていないかのように初々しく高校生を演じているこの『最上のボクら』は、
それが正に等身大だったからで、二度と再現できない十代の貴重な記録。
終盤、現在のシーンまで観ると、高校時代キラキラ輝いていた余淮の挫折や内に秘めた悩みが判り、
ちょっぴり切なくなりますヨ。



譚松韻(タン・ソンユン):耿耿~カメラが好きな女の子

耿耿は、あまり勉強は得意ではないのに、奇跡的に進学校・振華に合格したカメラ好きな女の子。
明るく朗らかな性格で、誰からも好かれる彼女だけれど、実は家庭はちょっと複雑。
両親が離婚しており、父と父の再婚相手、その再婚相手の息子・林帆との4人暮らし。
決して絶世の美女ではないが、タイプの異なるイケメン二人、余淮と路星河の両方から好かれるモテッぷり。
ちなみに耿耿(ゴンゴン)は、“林耿耿”でも“陳耿耿”でもなく、“耿”が苗字で、もう一つの“耿”が下の名前。
日本人に例えるなら、“森森(もり・もり)”とか、“山田山田(やまだ・やまだ)”みたいな感じ。


演じている譚松韻は…

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そう、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の“淳ちゃん”こと淳常在。
あどけない少女だった淳ちゃん(譚松韻)も、
実のところ、1990年生まれで、今では30に手が届きそうな28歳。
相手役の劉昊然は1997年生まれだから、実際は譚松韻の方が7歳もお姉さん。
さらに言うと、耿耿の父親を演じている趙岩松(チャオ・イェンソン)は1984年生まれで、
耿耿(譚松韻)との年齢差・6歳ポッキリ。

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同級生のボーイフレンドより年齢差の少ないパパと並んでも、ちゃんと父娘に見える不思議。
童顔で未だティーンエイジャー対応できる譚松韻だが、
こういう童顔カワイ子ちゃんタイプって、一気に中年のオバちゃんにもなれちゃうものなのヨ。
先日、通販番組で麻木久仁子を見ていて、ふと譚松韻が重なった。
リアル十代のピチピチ女優が大勢いる中、『最上のボクら』で敢えて耿耿役に譚松韻を抜擢したのは、
現在を描く最も重要な最後の2話に焦点を合わせたからかも知れないとも想像した。


ついなので、オマケにもう一つ記しておくと、
耿耿と血の繋がらない弟・小林帆を演じている2006年生まれの榮梓杉(ロン・ズーシャン)という子役…

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賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『山河ノスタルジア』(2015年)で、趙濤(チャオ・タオ)の息子を演じて以降、
短期間で多数の話題作に出演している売れっ子。
ちなみに、『山河ノスタルジア』では、この榮梓杉が成長すると、董子健(ドン・ズージェン)になる。

★ キャスト その②~その他

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王櫟鑫(ワン・ユエシン):路星河~絵やギターが得意な芸術家肌

路星河は、余淮とはタイプが違い、ちょっと不良のニオイがする男の子。
でも、実は家はお金持ちで、性格も明るく自由でのびのびとしている。
耿耿へのアプローチも、ストレート。
正統派の美男子ではないけれど、“愛嬌のあるワル”って感じで、彼もまた可愛らしい。
日本だと、和田正人がやりそうな役回りかしら。

演じている王櫟鑫は、オーディション番組『快樂男聲』出身の歌手で俳優。
実年齢は、譚松韻のさらに上で、1989年生まれ(出た、80年代生まれ!)。
年齢以上に驚きなのは…

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2015年に結婚し、すでに二人の子を持つパパ(内訳は、理想と言われる一姫二太郎)。
二児の父親でも、制服のジャージ、まだイケますね。



董晴(ドン・チン):蔣年年~耿耿の親友 ニックネームは“β(ベータ)”

ベータは率直な性格。
担任の方文強先生に片思いしているが、その想いも実ることなく、卒業前に北京へ転校。

実年齢の話ばかりして悪いんだけれど、蔣年年役の董晴は、路星河役の王櫟鑫の年齢をさらに更新。
1988年生まれである。
アラサーでセーラー服はキツイが、中国の制服はジャージだから、
シックリくる年齢の幅が広いんでしょうかねぇ…??



方文強(ファン・ウェンチアン):張平~5組担任の物理の先生

張平は、真面目で優しく、生徒たちから慕われるお兄さんのような新米先生。
自分に対すベータの気持ちも分かっているが、それに応えてあげることは出来ず。
ドラマの中では、張平先生自身の恋もちょこっと描かれる。
憧れの後輩とおデートの時は…

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ワイシャツの下には、中国だけに、五星紅旗を思わせる鮮やかな赤のランニングシャツ!
これって、中国では普通なのか?!と少々驚いたが、
その後、街中で偶然出くわしたベータから、「下に赤いシャツは着ない方がいい」と注意されていたので、
どうやら、中国でもNGらしい。

俳優・方文強は、自分に想いを寄せる生徒ベータ(董晴)より、実のところ年下の(!)1990年生まれ。
なので、新ドラマ『忽而今夏~The Words of Love』では…

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方文強もまたジャージの制服を着ておられる。
オヤジ贔屓で若い子にはまったく興味の無い私としては、
学生役の方文強より、先生役をやっている方文強の方が好みかも。
張平先生は、学園ドラマにありがちなギラギラ熱血漢とも違い、ごくごく平凡で、温厚な感じが、とても良い。


ちなみに、方文強が出演しているその『忽而今夏』を監督しているのは呂赢(リュィ・イン)。
呂赢は、『最上のボクら』の監督チームの一人でもあり、さらに…

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保護者会にやって来るベータのニセモノのパパ役で出演もしている。
(ベータの父親は外科医のハズなのに、何か様子が変…、と疑われ、偽パパだとバレてしまう。 …笑)

ついでに言っておくと、この呂赢監督は、過去に、『レッドクリフ』(2008年)、
有名監督による有名な映画にも多数関わっている。だから…

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我が愛しの張震(チャン・チェン)にも、頭ナデナデしてもらっていて、羨ましい…。
(画像は『ブレイド・マスター』の現場です。)



劉啟恆(リウ・チーハン):徐延亮~余淮たちの同級の親友

方文強先生には振り向いてもらえないベータだけれど、そんなベータの事を想ってくれている男性が。
それが、この徐延亮。
ポッチャリ眼鏡の徐延亮も、私は結構好きなキャラ。

演じている劉啟恆は、劉暢監督が本ドラマの監督に抜擢されるキッカケとなった自作自演の短編作品
『李晚我想和你好』に劉暢監督の友人役で出演している。
北京電影學院では、劉暢監督の3年後輩なので、そんな事もあって、古くからの付き合いなのだろうか。

この劉啟恆、かなり頻繁に日本に来ているみたい。
一番最近だと、2018年12月上旬。
京都では、柊屋で、三島由紀夫がかつて過ごした33号室に、東京ではアマンに宿泊している。

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意外と丸の内の夜景が似合う(?)オトナの男。
ポッチャリ徐延亮クン(劉啟恆)は、そこそこ小金を持っている気がする。
皆さま、彼、狙い目です。どーヨ…?!

★ キャスト その③:日本人…?!

『最上のボクら』には、日本人(?)も登場。
舞台となる高校・振華に、国際交流で、東京桜中学の生徒たちがやって来るのだ。
東京桜中学の学生代表を演じているのは、こちら(↓)

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劉美含(リウ・メイハン)
そう、日本人ではありません。
かつて、中国・韓国・タイの女性混合アイドルユニットi Meに所属していた頃、
私、多分、日本のテレビで、見た記憶が…。
かなり日本語が喋れて、ニックネームは“ミカン”ちゃん。
(卒業した北京外國語大學でも、専攻は日本語。)
『最上のボクら』では、ゲスト出演程度だが、
「十年の日本語学習は、この為だったかのよう」と自身の微博で呟いている。
確かに、上手な日本語だし、ちょっとした動き等も、日本の女の子を研究し尽くしている感じ。

★ あゝ、近くて遠い国…。

ドラマの見方、感じ方は人それぞれ。
『最上のボクら』を観ながら、自分の青春を重ね、郷愁を感じたり、
高校生は中国も日本も変わらないと、親近感を覚えた視聴者も多いことでしょう。
私自身は、青春っぽい事に無関心な冷め切った高校生だったため、
どの国の青春映画/ドラマを観ても、自分の過去を重ね、懐かしく感じることは、まず無い。
じゃぁ、『最上のボクら』は退屈だったかと言うと、そんな事はなく、
中国の高校という未知の世界を覗けて、とても興味深かった。
特に興味深いのは、日本との共通点より、相違点。


ドラマ序盤ですでに軽いカルチャーショック。

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学校で、女生徒もみんな本格的に迷彩服を着て、軍事訓練をするの。
『最上のボクら』の舞台・振華のような進学校でも、軍事訓練やるんですねぇー。


あと、友人同士が集う席には、おビール。(※中国では、違法ではない。)

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世界を見渡すと、法的にハタチまでお酒を飲めない日本は、厳しい方かも知れない。
ヨーロッパ等も、国によっては、お酒にはかなり寛容である。
でも、西洋人は大人びて見えるせいか、ティーンがお酒を飲んでいても、ハッとさせられることは無い。
ところが、容姿が日本人と変わらない中国人高校生(しかも進学校に通う真面目な高校生)が、
堂々とビール瓶を何本も空けている様子を目にすると、ドキッ!

特に、北京へ引っ越してしまうベータとの最後の女子会のシーン。
本格的な中華料理をつまみながら、ビールを飲みまくっている様は、
“社会に出て最低でも3年は経ったOLが、金曜の晩、会社帰りに同僚たちと新橋で集い、
社の待遇や上司の悪口で盛り上がっている”図にしか見えなかったー(笑)。
貫禄あるわぁ~、中国のJK!
あんな若い時から飲み慣れているのだから、中国人に酒豪が多いのも納得。



台湾の懐かしい系青春映画だと、男子高校生の大半がヘビースモーカーなのよねぇ。
台湾人高校生の喫煙にはとっくに慣れっ子だった私も、中国人高校生の酒豪っぷりには、驚かされた。
他にも、お国柄が表れているシーンは色々とあり、日本と違うからこそ面白かった。
皆さまが『最上のボクら』で感じたカルチャーショックは何ですか?

★ 耿耿のリュックサック

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ドラマを観ていて、ボカシの入った耿耿のリュックサックが気になってしまった視聴者も居ることでしょう。
ボカシやモザイクは、目を細めると見える!という都市伝説を信じ、試したところで、無駄。
普通に調べた方が早い。
ディズニーアニメ『フィニアスとファーブ』に登場するカモノハシペリー/エージェントPであった。

★ テーマ曲

このドラマにオープニング曲は無い。
webドラマという事もあるのだろうか。テレビ放送向けに作られたドラマより、あっさり始まる。
エンディングには曲アリ。
台湾の王笑文(ワン・シャオウェン)が歌う<耿耿於懷>
映画『あの頃、君を追いかけた』(2011年)のテーマ曲<那些年>を思い起こす
懐かく、甘酸っぱい雰囲気のメロディ。





大陸には有りそうで無かったタイプの青春ドラマという印象。
大事件など起きないし、奇想天外な展開も無い。
人生の中から、数年の学生時代を切り取り、その日々を綴ったさり気ない作風が映画的。
それが、私が意外にもこのドラマを気に入った理由の一つ。

じゃぁ、最後までまったく何も起きず、ひたすら学生生活を描いたドラマなのかと言うと、実は違う。
このドラマでは、高校生活のクライマックスになるハズの大学受験の結果をバッサリ割愛し、
何の説明も無いまま、最後の2話で、いきなり卒業から十年後の現在に飛ぶ。
それを観ると、高校時代を描いたその前の22話は、
最後の2話のために用意された長~いプロローグだったのか!という気がしてくる。
その大胆な構成の意外性にハッとさせられた。
長いプロローグである(?)前の22話に関しては、
前述のように、未知の世界だった中国の高校生活を覗き見でき、面白かった。

日本側の作業に関しては、現代モノ、しかも、学生を主人公にした青春ドラマにもかかわらず、
日本語字幕で、人名を漢字+片仮名ルビで表記していた事を、高く評価。
簡單(かんたん)ちゃんや周末(しゅうまつ)クンなんていう同級生も出てくるのに、
これが全部片仮名で“ジエン・ダン”、“チョウ・モー”にされていたら…、と想像するとゾッとする。
片仮名表記にしてしまうと、本来の意味が失われる上、
記憶に残りにくく、字数もやたら食う等々…百害あって一利ナシ。
他社もこれを見倣い、今後“漢字+片仮名ルビ”表記が定着していく事を切に願います。

また、その日本語字幕や注釈で、実在の歌手や俳優の名前、曲名、映像作品名等が、
きちんと記されているのも、当時の中国の流行に触れられ、見ていて楽しかった。
このちょっと前に、ホームドラマチャンネルで放送していた某台湾偶像劇では、
そういう実名が全て“芸能人”、“美人女優”といった訳にされていたのが、ガッカリであった。
(別に実名を伏せたかったわけではなく、そのドラマの日本語字幕は、人名を片仮名で表記していたため、
字数が収まり切らなかったのだと想像する。)

あと、たまに、ドラマの最後に、メイキング映像が流されるのも、良かった。
あれ、通常日本で放送される大陸ドラマには付かないから。

ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェのマンゴープリン(+張柏芝が3児の母♪)

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謝霆鋒(ニコラス・ツェー)との間に二人の男児をもうけながらも、2011年に離婚し、
以降、独身生活を続けている張柏芝(セシリア・チャン)だが、
11月下旬、香港メディアが
「11月25日、香港養和醫院にて秘密裡に3人目となる子を出産」という特ダネを報道。
その記事によると、子の父親は、飲食チェーンの株主にして上場企業を経営するシンガポールの大富豪。
現在38歳の張柏芝より27歳年上の65歳で、二人は今年3月に出逢ったばかりだという。

病院近くで報道陣に捕まった張柏芝のママは、「産んでいない、まさか」と簡単に答え、足早に退去。
12月1日には、張柏芝の友人である作家の朱庭萱(ボニー・チュウ)がインスタグラムで、
張柏芝とのツーショット写真を公表。

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その後、張柏芝の第三子出産の噂について尋ねられた朱庭萱は、
「私は本当に何も知らないの。でも、彼女の様子は、赤ちゃんを産んだばかりには見えなかった」と回答。
シンガポールの富豪男性についても、「張柏芝に新しい恋人がいるとは聞いていない」と。


私自身、張柏芝第3子出産の噂はガセだとサラリと流していた。
3月に出逢ったばかりの男性の子を、11月にもう産み落とせるのか?!という疑問が有ったし、
公表された張柏芝の写真が、とても出産直後の女性には見えなかったから。



ところがである。
本日、2018年12月17日朝、張柏芝の事務所は公式微博を通じ、
張柏芝が11月に第三子“小王子”を出産したことを公表。

間も無くして、張柏芝自身も、まったく使っていなかった自分の微博に初投稿。

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「My Love」のコメントと共に、赤ちゃんを抱くママのイラスト。


中華芸能によく有る根も葉もないガセネタだと思い、サラリと流していたのに、マサカ事実だったとは!
常識に囚われてしまっている凡人には、張柏芝の現実の行動さえ、“ガセ”に思えてしまうという事ですね。
ちなみに、第3子の父親に関しては、何も明かされていない。
この先も、明かす気が無く、その男性と結婚する気も無いのかも知れない。
張柏芝は、富豪男性に頼らなくても、一人で3人の子を育てる充分な経済力があるだろうし、
ただただ産める内に三人目の子供が欲しかったのかも知れない。

母親を明かさないまま子供を養育しているシングルファーザー陳坤(チェン・クン)の女性版か。
中華圏は、結婚観や道徳観が日本以上に厳格だと感じることが多いけれど、
そういう陳坤や張柏芝のような有名かつ人気のある俳優も居るんですよね。



そうそう、5年前、こちらにも記したけれど、
私、國際兒童節の休暇に、二人の息子を連れ、東京に遊びに来ていた張柏芝を、
新宿伊勢丹で見掛けたことがあるのです。
その時、張柏芝の傍らに居たのは、謝霆鋒との間に生まれた長男だったけれど、
さすが両親とも芸能人だけあり、可愛い男の子であった。


何はともあれ、張柏芝サマ、第3子のお誕生、おめでとうございます。
家族4人お幸せに!
その内、御子息3人全員を引き連れ、またまた日本へお越し下さいませ。
それにしても、出産直後も出産した様子に見えず、元気で若々しい張柏芝に、ちょっとビックリだわ。




お菓子は、香港繋がりで、半島酒店(ペニンシュラホテル)の芒果布丁(マンゴープリン)。
最近かなりの頻度で食べているお気に入り。

★ ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ:マンゴープリン

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容器の大きさは、一番ふっくら太い部分で直径約6センチ、高さ約8センチ。
底にココナッツ・ミルク、上に刻んだマンゴー果肉とクコの実を混ぜたマンゴー・ソースを添え、
グラスに閉じ込めたマンゴープリン。



こちらが、そのザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ(ホテル公式サイト)“マンゴープリン”

ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェは、有楽町にあるペニンシュラ東京の地下1階にあるお店。
半島酒店(ペニンシュラホテル)は、言わずと知れた香港発のホテル。
香港系のホテルやお店が出している芒果布丁(マンゴープリン)なら
絶対に美味しいだろうなんて考えたら間違いで、結構マズイのも多い。
さらに言うと、有楽町にあるペニンシュラで売られてるこのマンゴープリンは、
香港の半島酒店から受け継いだレシピではなく、
当時、ペニンシュラ東京のエグゼクティヴ・ペストリー・シェフだった日本人・野島茂が考案した物らしい。
(その野島茂パティシエは、なんでも現在は独立し、福岡でお店をやっているのだとか。)


私にとっての不味いマンゴープリンには、色んな条件が有るけれど、
質感で言えば、ゼラチンでプリンプリンに固めた物は、ほぼ確実に不味い。
ペニンシュラのこのマンゴープリンは、グラスに入っているので、
食べる前から、プリンプリンに固められていないことは、何となく想像出来た。
実際にスプーンを入れ、予感的中。
とても柔らかで滑らかな質感。

上にかかったソースは濃厚。
ソースに混ぜられたフレッシュマンゴー果肉は結構な量。
数えてみたら、塊が7個。
甘くて、トロリと滑らかなマンゴーで、これだけでも美味。
(だったら、わざわざマンゴープリンに加工するな!と言われてしまいそうですね。
生でそのまま食べても美味しいマンゴーをプリンに加工してしまっているのだから、美味しい訳なのヨ。)

さらに食べ進めていくと、下から白い液体がジワーッと出て来た。
外からは見えないが、実は底部に、ココナッツミルクを忍ばせている。
これが加わることで、さらにお味がまろやかに。




マンゴーの果実味がシッカリ濃厚に出ており、甘くて、それでいて爽やか。
質感も好み。
これ、国内に限定せず、近年食べたマンゴープリンで一番の美味しさ。
大層気に入り、結構な頻度で食べている。
こんなに美味しいのなら、もっと前から買っていれば良かったと、ちょっと後悔。

でも、最近になるまで買わなかったのには、理由がある。
私の記憶違いでなければ、
以前、“ザ・ペニンシュラ・ブティック”の名で、ペニンシュラブランドのお菓子等を売っているお店が、
あちらこちらのデパ地下に入っていませんでしたっけ?
そこのマンゴープリンを食べたら、大して美味しくなかった。
それ以来、ペニンシュラのスウィーツに良い印象が無かった。
今思えば、あのザ・ペニンシュラ・ブティックは、
恐らく日本の大手企業がライセンスを取って運営していたお店で、
現在有楽町にあるザ・ペニンシュラ ブティック&カフェとは、まったくの別モノだったのでしょうね。
アパレル関係等でも、日本の企業がライセンスを取得し、日本市場向けに悪趣味な中流品を大量生産し、
本来のブランドイメージを壊してしまった例は、とても多い。

もし、私のように、以前デパ地下のペニンシュラで買ったマンゴープリンに悪い印象があって、
“ペニンシュラのマンゴープリン=不味い”と思い込んでいる人が居るのなら、
試しに、有楽町のペニンシュラで、こちらのマンゴープリンをお買い求め下さい。
思い違いで抱き続けてきた負のイメージが一新されるかも知れません。

映画『台北暮色』

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【2017年/台湾/107min.】
道のド真ん中で相棒の赤いスズキがエンストを起こし、困惑する張以風。
電話でレッカー移動を頼むと駅へ向かい、地下鉄に乗車。
同じ頃、別の地下鉄の車中には、徐子淇と李立。
李立は、徐子淇が手に抱えている小箱が気になって仕方が無い。
箱に小さな穴が沢山開けられているのを見付け、
徐子淇に「中に入っているのは鳥でしょう?」と確信を持って何度も尋ねるが、
彼女は「後にして。後で見せてあげるから」と素っ気ない。
やがて、古亭駅に停車すると、席を立って、下車する徐子淇と李立。
ホームでスレ違う張以風とは、まだこの時は面識が無い…。



1975年生まれの女性・黃熙(ホアン・シー)の長編監督デビュー作。
プロデュースに当たったのは、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。

原題は『強尼·凱克~Missing Johnny』。
第18回東京フィルメックスでは、『ジョニーは行方不明』の邦題で上映。
その時は、観たくても、観に行けなかった。
近年、台湾ブームに沸く日本では、台湾映画がそこそこ入って来ているけれど、
多くは、テレビの2時間ドラマのようなお気楽な物。
キラキラのアイドル映画とは思えない本作品は、
フィルメックスで逃したから、日本のスクリーンではもう観られないと、半ば諦めていた。

ところが、嬉しい意外が起き、あのフィルメックスから約一年後に正式公開。バンザイ。
邦題が、『ジョニーは行方不明』とは似ても似つかない『台北暮色』に変えられていたため、
コレがアノ映画だと気付くのに、多少の時間は要してしまったけれど、スルーしてしまわず、良かった~。




本作品は、インコと生活する女性・徐子淇、彼女の近所に住むコミュニケーション下手な少年・李立、
そして赤い車を寝床にしている青年・張以風という3人を中心に、
台北の片隅でひっそりと暮らす孤独な人々を描く群像劇


あまり事細かに説明すると、野暮になってしまいそうな作品。
“孤独な人々”などと在り来たりの形容をしてしまったが、
登場人物たちは決して今にも死にそうなブルーな顔で生きているわけではない。
むしろ、フツー。
普通に出掛けているし、普通に喋っているし、笑顔を浮かべることだってあるし、
とにかく、普通に日々を淡々と生活している。

…でも、普通にフツーが綴られているからこそ、掴み所が無い。
李立は一体何歳なのか、徐子淇の生活の糧は何なのか、
張以風がしばしば訪ねる家の人々とはどういう関係なのか…、等々、小さな「?」がいっぱい。

作品を観進めていく内に、バラバラだった3人が、周囲の人々をも含め、徐々に繋がっていき、
さらに個々の背景も紐解かれてゆく。
すると、当初私の中に湧いた疑問の数々も、なるほど、そうだったのかと納得できてくるのだけれど、
全てがクリアになる訳ではなく、60%程度に留めているので、余計に想像を掻き立てる。



フィルメックスで使われていた邦題『ジョニーは行方不明』の“ジョニー(強尼 Johnny)”は、
最初から最後まで未知の人物。
ある時から徐子淇に、このジョニー宛ての間違い電話が頻繁にかかってくるようになる。
相手は、そのジョニーの元妻らしき女性だったり、親だったり、友達だったり。
彼らは皆、徐子淇の電話番号をジョニーの電話番号だと思い込んで、電話をしてくるの。

よくよく考えてみると、気味の悪い話である。
近親者なら、電話番号くらい知っているはずなのに、
皆が皆、赤の他人である徐子淇の番号を、ジョニーの物と勘違いして、電話してくるなんて…。
もし私にそんな電話が立て続けに掛かって来たら、
私の個人情報が漏れているのだろうか?新手の詐欺か?!と恐怖感さえ抱いてしまいそう。

でも、この映画で、そんな電話を受ける徐子淇は、怒らないし、気味悪がりもしない。
電話を掛けている側も含め、みんな優しい。
恐らく黃熙監督には、このジョニーなる謎の人物の正体を解明する推理サスペンスを撮る気なんて、
元々無かったに違いない。
(同じ間違い電話が掛かり続けるエピソード自体は、
黃熙監督の友人に実際に起きた話を映画に取り入れている。)
ジョニーは、人と人を繋げる架け橋だったり、
誰もが探し求めている、ホッとできる心の拠り所の象徴なのかなぁ~と想像。


作中、もう一つ行方不明になるのが、インコ。
元々インコを一羽飼っていた徐子淇は、そのお仲間に、もう一羽を連れ帰るのだが、逃げられてしまう。
この失踪したインコもまたジョニーと同じように、
喪失感や、人々が手に入れたがる心の安らぎの象徴にも思えるし、
人と人を繋げるツールにもなっている。
実際、インコ探しをすることで、徐子淇、李立、張以風の3人が繋がり、物語が動き出す。




“物語が動き出す”などと言っても、その先も、大事件が起きたり、急展開が待っている訳ではない。
何も特別な事など起きないのだ。
そんな本作品の魅力の一つを挙げるなら、台北という街を素敵に見せていること。
現代の台北のシンボル的存在になっている台北101や夜市は、恐らく一度も出てこない。
スクリーンに映し出されるのは、ちょっとした小路や住宅街といった生活者目線の台北なのだけれど、
それがむしろ良いのです。

ロケ地の選択のみならず、映像の雰囲気も、
昨今持て囃されてる台湾エンタメ映画とは趣きがまったく異なり、
台灣新電影(台湾ニューシネマ)の頃を思い起こさせる。
黃熙監督に、侯孝賢監督のもとで働いた経験があったり、
その侯孝賢が本作品のプロデューサーを務めていることで、
どうしても侯孝賢監督作品との関連性が語られがちだが、
黃熙監督は、小学校卒業後に台湾を出て、
シンガポール、バンクーバーと移り住み、アメリカNYで映画を学んだ人だし、
プロデューサーとしての侯孝賢は、実のところ、彼女の作品に余計な助言はしなかったらしいので、
黃熙監督が直接的に侯孝賢や侯孝賢監督作品から受けた影響は少ないのではないだろうか。
むしろ、黃熙監督が生粋の台北人でありながら、海外に出ていた期間の長い人だからこそ、
“身の丈の台北”を捉える事が、すなわち“台北のツボ”になることを、
感覚的に分かっているのではないかという気がする。


ちなみに、黃熙監督にとっての侯孝賢は、師匠という以前に、パパのお友達だったみたい。
黃熙監督の父親・黃忠は、侯孝賢と高校の同級生で、
侯孝賢主演の楊昌(エドワード・ヤン)監督作品『台北ストーリー』(1985年)に
資金援助をする程の大親友。
資金調達に苦労したその『台北ストーリー』は結局4日間で上映打ち切りとなってしまったため、
『悲情城市』(1989年)のヒットまで、借りたお金を返済できなかったというのは、有名な話。
『憂鬱な楽園』(1996年)のプロデューサーの一人として名を連ねている“黃忠”も、
恐らく、黃熙監督のパパのことだと見受ける。

大親友の娘・黃熙の監督デビュー作で、プロデュースを買って出た侯孝賢は、
必要以上のお節介を焼かず、彼女に自由に撮らせて上げたわけだけれど、
裏方さんに、信用のおける自分の御用スタッフを準備して上げたのも、また事実。
映画のクロージングを見ていたら、撮影に姚宏易(ヤオ・ホンチー)、編集に廖慶松(リャオ・チンソン)、
音楽に林強(リン・チャン)等がクレジットされていた。


あまりも“侯孝賢”の名を出されて比較されることに、
黃熙監督自身はもう「ウザッ…」と呆れているだろうけれど、
でも、本作品を観ていて、やっぱり侯孝賢監督っぽ~い!と思ってしまったシーンは幾つか有った。
内容ではなく、視覚的、表面的な部分である。
例えば、トンネルや夜の歩道橋(?)のシーンは『ミレニアム・マンボ』(2001年)、
電車が互い違いに走行してゆくシーンは『珈琲時光』(2003年)といった具合に。




中心となる3人を演じているのは、こちら(↓)

イメージ 2

赤いポンコツ車を寝床にしている青年・張以風に柯宇綸(クー・ユールン)
インコを飼っている一人暮らしの女性・徐子淇に瑞瑪·席丹(リマ・ジタン)
徐子淇と同じ建物に住むコミュニケーション下手な少年・李立に黃遠(ホアン・ユエン)


日本の映画公式サイトには、3人とも黃熙監督が出逢った実在の人物がモデルと記されているけれど、
私が読んだ台湾のインタヴュ記事には、張以風と徐子淇には、明確なモデルがおり、
李立だけは架空と記されていた。どちらの情報が正しいのかは、不明。

とにかく、3人とも、当初、どういう背景で、何をして生活している人たちなのか、よく判らない。
張以風は、工務店のような便利屋のような仕事をしていて、人々から頼りにされている。
彼自身、頼られる事を嫌がらず、自然に笑顔で応対する“イイ人”。
でも、その内、そんな明るく穏やかな彼にさえ、
親の離婚や、故郷を離れた台北での孤独な暮らしといった影の部分があることが見えてくる。
今の台湾で、この手の映画で、この手の役を演じられる、その世代の俳優といったら、
柯宇綸か莫子儀(モー・ズーイー)の二択という気がするので、
柯宇綸のキャスティングは正解に感じたし、実際に良かった。


もう一人の男性・李立を演じている黃遠は、二世俳優。

イメージ 3

歌手から俳優に転身した黄仲昆(ホアン・チョンクン)が最初の妻との間にもうけた長男。
顔は可愛らしいのに、頭一つ分父親より小さなプチサイズなので、
いくら親が有名人でも、売れないだろうと思っていたが、
本作品で見て、こういう使われ方が有ったのかと感心した。
黃遠は、1991年生まれだから、30に手が届く青年。
扮する李立の年齢設定は不明。何らかの発達障害を持っていると思わせる。
20代ももう後半の黃遠が、そんな純粋でデリケートな幼い子供のような男の子・李立に成り切っているの。

この李立が、たまに鋭い事を言う。
「飛んでいる鳥でも、一瞬は止まっている。じゃぁ、次の瞬間は?」とか。
フィルムの一コマ一コマのように、一瞬一瞬は止まっているけれど、それらを繋げることで前進する、
人も同じで、歩みを止めることがあっても、それでも前に進んで行く…、という前向きな表現と私は捉えた。



瑞瑪·席丹扮するヒロイン・徐子淇も謎多き女性である。
職業を聞かれ、ヨガ講師と答えているが、ヨガを教えているシーンは無く、
安ホテルのレセプションで仕事をしているシーンなら有る。
見た目は明らかに混血で、喋ると、中国語(北京語)の中に、しばしば英語が混ざる。
その後、広東語まで喋っているから、益々「・・・?」
で、後々、香港に7歳の娘がいると判明。
徐子淇に経済的援助ができる台中在住の王志偉という男性と付き合っているけれど、
彼が娘の父親とは考えにくい。

演じている瑞瑪·席丹は、レバノン人の父と台湾人の母をもつ混血。
これまでモデルや司会業をしていて、本作品で長編映画デビュー。

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第54回金馬獎では、最佳新演員(最優秀新人賞)を受賞しているので、期待して本作品を観たのだが
(画像左は、金馬獎授賞式のレッドカーペットを歩く瑞瑪·席丹と黃熙監督)、
正直言って、私好みの女優さんではなかった。
ミスキャストと言っているのではない。むしろ役には合っている。
混血の容姿や、数ヶ国語を流暢に喋る様子は、
徐子淇が、色んな国々を漂流し、その度に色んな物を背負ってきた女性であることを想像させる。
但し、侯孝賢監督作品における舒淇(スー・チー)のような魅力は、瑞瑪·席丹には感じなかったし、
他の映画でもまた彼女の演技を見てみたい!という気は起きなかった。



他、脇では…

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張以風の高校時代の恩師で、友人・張致豪の父親でもある張啟元に張國柱(チャン・グォチュウ)とか、
その張啟元と親しい角叔に高捷(ガオ・ジェ)といった、台湾映画でお馴染みのベテランが配されている。


そういう“いかにも”な俳優ではなく、私がキャスティングを“サプライズ”と感じたのは、
徐子淇の恋人・王志偉の役で出演している、タイの華人俳優・唐治平(タン・ジーピン)である。
超久し振りに見ました、唐治平!すでに40歳だって。

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でも、無駄に鍛えた胸筋は相変わらず。
少ない登場シーンなのに、その約1/3は、半裸であった(笑)。





私は、原題と掛け離れた邦題を付けることや、
正式公開の際に、映画祭上映時と異なる邦題を新たに付ける事に、基本的には反対。
昨今、映画好きな人は、大抵かなり前から、ネットを通じ、現地情報で作品を知っているため、
日本ならではの邦題を付けられてしまうと、混乱するし、
わざわざ工夫を凝らして付けた日本ならではの邦題に、趣味が良いと感心できる物が、ほとんど無いから。
事実、本作品も、原題の『強尼·凱克』や、フィルメックス上映時の『ジョニーは行方不明』で記憶していたため、
『台北暮色』と聞いても、当初ピンと来なかった。
また、その邦題から、近年の台湾ブームにまんまと乗った、台湾大好き女子を狙った
陳腐なオシャレ映画を想像してしまった。
ところが、実際に本作品を観たら、確かに『台湾暮色』というタイトルがシックリはまる作品であると感じた。
「結局のところ、台湾大好き女子を狙った陳腐なオシャレ映画だった…」と言っているのではなく、
台北の黄昏た雰囲気を上手く捉え、台北という街を魅力的に表現した作品であったという意味。
他人からは分かりにくい、小さな問題や悩みを抱えたごく平凡な人々の日常を淡々と描きながら、
時に立ち止まることがあっても、それでも少しずつ前進していくと感じさせる物語も、
ホッコリとした余韻を残してくれて、良かった。

敢えて残念ポイントを挙げるなら、主演女優・瑞瑪·席丹を見て、
「この作品を通し、また大好きになれる新たな女優さんに出逢えた!」と感激できなかったこと。
キャスティングについて黃熙監督も、「そもそも台湾には女優の選択肢がそんなに無い」と語っているように、
台湾芸能界の人材不足は深刻だと感じる(もちろん、日本も他人事ではないが…)。


本作品の主演女優・瑞瑪·席丹が最佳新演員(最優秀新人賞)を受賞した
第54回金馬獎については、こちらから。
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