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祝・張震御生誕記念イヴ♪(+懲りない東京国際映画祭にタメ息…。)

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本日は、第31回東京国際映画祭のチケット発売開始。
皆さま、お目当ての作品のチケットは押さえられましたか?

ダブルブッキング、料金重複請求等々、
チケット販売で大混乱を起こした2016年から早3度目の東京国際映画祭。
今年も昨年と同様、映画祭公式サイトを通し、
部門別に、本日10月13日(土曜)と14日(日曜)、計4回に分け、チケットを販売。
この販売方法を知り、東京国際映画祭に“3度目の正直”は無い、“2度あることは3度ある”なのだと察した。
相も変わらずサーバーが脆弱なままだから、せめてアクセスを分散させるよう、
部門別に販売日時をズラすという超アナログな手段をとったのであろう。

案の定、今年も、多くの人は、購入ページにさえ辿り着けず、
PCやスマホの画面を見つめながら、不毛に時間を過ごした模様。
反省もせず、当然改善などしない映画祭の運営に対し、
「映画ファンを馬鹿にしている!」とお怒りの方も多いようだが、
私は、もしかして、この映画祭の運営は、映画ファンを侮って、改善する気が無いのではなく、
単純に頭が悪いだけで、システムを強化する技術的能力が無いのではないかと思えてきた。
これが、世界に誇るジャパンテクノロジーの現実よ。
東京国際映画祭が、後発の釜山に抜かれ、上海にも抜かれたのが、よく分かる。
これでいつまでも“国際”映画祭を名乗っているのだから、本当に痛々しい。
斜陽国ニッポンの現実を見せ付けられているようで、キツイ…。

今秋、東京の映画祭は、ただでさえ東京フィルメックスの方がラインナップが充実しているし、
東京国際映画祭はチケット取りのストレスが大き過ぎるので、私はもう最低限のチケットしか購入せず。
チケット販売システムを改善する事は、集客や、
また、広く映画祭を盛り上げるという意味でも、重要だと思う。
チケット取りだけのために、週末丸々2日間を潰したい人なんて居るわけないでしょ。
本来なら瞬殺になるはずの上映でも、購入ページに入れる人が少ないから、なかなか売り切れないって、
どんだけショボいサーバーなのだか…。
(チケット販売方法に関しては、東京・中国映画週間にも言いたい事が山ほどあるが、それは後日改めて。)




暗い話は、もうやめにして、別の話題。
(正確には、東京国際映画祭のチケット取りで無駄に時間を持て余したから、ブログを更新。)
さて、明日10月14日は、私が溺愛する張震(チェン・チェン)の御生誕記念日。

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ほんの数日前、金城武御生誕を祝したばかりで、今度は張震ですヨ。
不思議と、10月のこの時期は、私好みの男前の生まれ日が集中。
1976年生まれの張震、間も無く42歳です。


その張震の最新出演作は、つい先日、第23回釜山国際映画祭のニュー・カレンツ部門に選出され、
お披露目となった崔斯韋(ツイ・スーウェイ)監督の『雪暴~Savages』。
釜山はワールドプレミアなので、張震をはじめ出演者の登場に期待したけれど、
結局、現地に赴いたのは、監督とプロデューサーだけであった。

(↓)こちら、共演者の面々。

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左から、廖凡(リャオ・ファン)、張震、倪妮(ニー・ニー)そして黃覺(ホアン・ジュエ)と
私好みのキャスティング。
特に張震×廖凡という両岸実力派の初共演は、見所になりそう。二人とも大っ好きな俳優。
この画像だと、映画の内容が伝わって来ないが、
大雪に閉ざされた辺境の地で展開する警察と賊のせめぎ合いを描いたサスペンスっぽい。


撮影は、零下30度にもなる吉林省延邊朝鮮族自治州の長白山で行われたというから、
南国育ちの張震には、さぞやキツかったであろう。

長白山は、朝鮮半島側では“白頭山”と呼ばれ、しばしば両国で呼称問題や領有権問題でもめるあのお山。
素晴らしい大自然が広がっている場所とのことで、
撮影が始まった2016年11月から、張震は幾度か現地で撮った写真を微博などで公表している。

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張震が映画の撮影で訪れた現場で写真を撮り、公表することは結構珍しいので、
その地に余程感動したのかも知れない。
この画像は、長白山の頂上にできたカルデラ湖・天池。
張震にとっては、人生2度目の高山湖なのですって。


その映画『雪暴』の公式微博でも、昨年の10月14日、張震のお誕生日を祝っていた。
(今年は当然まだ。)

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画像に添えられたメッセージは、
「颜值“春光乍泄”,演技“卧虎藏龙”,有你的日子都是“最好的时光”。張震 男神,生日快乐!」

顔のレベルは『春光乍洩(春の光が差したばかり)=ブエノスアイレス』(1997年)、
演技は『臥虎藏龍(伏せる虎、隠れた龍の如く秘められた才能)=グリーン・デスティニー』(2000年)、
あなたのいる日々はいつも『最好的時光(最良の時)=百年恋歌』(2005年)と、
これまでの張震出演作のタイトルに掛け、お誕生日を祝しております。

私も、日本人らしく邦題を使って張震出演作で想いを綴るなら、
あなたは私の『愛の神、エロス』(2004年)、見つめられたら『ブレス(息)』(2007年)絶え絶え、
いっそ『黒衣の刺客』(2015年)と化し刺しちゃって、…って感じでしょうか。
馬鹿っぽいですね、私(笑)。
東京国際映画祭にイラついているので、馬鹿でも言っていないと、やっていられないワ。


では、一足早い御生誕イヴにフライングで、張震サマ、おめでとうございます。
『雪暴』だけではなく、『無問西東~Forever Young』も観たい!



追記
本日2018年10月13日閉幕の第23回釜山国際映画祭で、『雪暴』の崔斯韋(ツイ・スーウェイ)監督が、
アジアの優れた新人監督に贈られるニュー・カレント賞を受賞。
おめでとうございます!
お誕生日を目前に、出演作が受賞とは、ダブルでおめでたいですね。
ちなみに、今年の釜山では、日本の俳優・國村隼も、ニュー・カレンツ部門の審査員であった。

撮影詩人~孫郡の世界

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大陸の女性フォトグラファー陳漫(チェン・マン)に関しては、当ブログでも何度も取り上げているが、
実はもう一人、男性で、大大大っ好きなフォトグラファーが居て、彼に関しても、書き残しておきたくなった。
まぁ以前からちょこちょこと記しているのだけれど、私にとっては物足りないものだったので、
芸術の秋だし、今回改めて。


まずは、こちら(↓)、当ブログにも幾度となく出しているお写真。

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孫儷(スン・リー)&超(ダン・チャオ)結婚5周年記念の家族写真。
普通の人が写真館で撮るいわゆる家族写真とは趣きが随分異なる。
懐かしい雰囲気を醸しながらも、モダンで独創的。なんて趣味が良いのでしょう。


このお写真を撮ったのが、(↓)こちら。

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孫郡(スン・ジュン)。


ごくごく簡単なプロフィール。

氏名   :孫郡 (拼音:Sūn Jùn)

生年月日:1978年
出身地  :浙江省紹興
学歴      :中國美術學院


子供の頃、近所に老画家や、古典文学好きなお兄さんお姉さんが居る環境で、
伝統文化に慣れ親しみながら、7歳で絵を学び始めた孫郡。
成長すると、中國美術學院に進学。
在学中、母親からプレゼントされた一眼レフカメラに夢中になり、毎週末、友達と撮影に出掛けたという。
卒業後は、上海の広告会社に就職し、グラフィックデザイナーになるも、その仕事に喜びを見い出せず、
2年後の2002年、辞職し、写真の世界へ。
それから3年後には、まだ若くして、中国トップクラスのフォトグラファーになっているのだから、
やはり非凡なのでしょうね。
孫郡は、後に成功の秘訣を尋ねられ、
「自分の好きな事をする。なぜなら、好きな事こそが、自分の潜在能力を発奮させるから」と答えているが、
いやぁー、そもそもその潜在能力の時点で、才能豊かな人と凡人では、大差が有りそう…。

★ 新文人畫攝影

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写真?それとも絵画…?!
どちらとも見分けが付かない不思議な雰囲気を醸す孫郡作品だけれど、れっきとした写真である。
簡単に言ってしまうと(安っぽい言い方になってしまうが…)、加工写真。
撮った写真の上に、工筆(中国伝統絵画の密画)の技法で、着色しているの。
孫郡が考案した方法で、“新文人畫攝影(新文人画撮影)”と呼ばれる。
物にもよるけれど、一枚仕上げるのにかかる時間は、平均20日ほど。
モダンで洗練された中に、中国の伝統や、懐古趣味を感じさせる作風が、特徴的。
まるで詩の如く雰囲気のある作品を創作していることから、孫郡は“攝影詩人”とも称される。

<茶經>、<雲間茶隱>、<百花錄>といった有名なシリーズ作品がいくつか有り。
上の画像は、<茶經>と<百花錄>から、それぞれ一作品ずつ。

被写体は必ずしも人物ではなく、中国伝統の山水画を思わせる物や、花鳥風月もよく撮られる。

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自身の作品を発表しながら、ファッション誌や広告の写真も数多く手掛ける孫郡。
これは、イタリアの高級家具メーカー、ポルトローナ・フラウが、上海に旗艦店をオープンした際に、
孫郡が手掛けた同社の4脚の椅子を使った作品。

ヨーロッパのブランドは、芸術家とのコラボに積極的で、
中国現代アートに対しての関心も、日本より高いと感じることがよくある。


動画も有ります。
孫郡の簡単なプロフィールや、撮影風景も見られる。


★ 明星(女子の部)

有名なスタアも大勢被写体になっております。
まずは、女性を数人ピックアップ。

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左から、周冬雨(チョウ・ドンユィ)、范冰冰(ファン・ビンビン)、楊穎(アンジェラベイビー)。


さらに…

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李冰冰(リー・ビンビン)、倪妮(ニー・ニー)、劉濤(リウ・タオ)。


世界的なスーパーモデルも勿論撮っている。

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中国人スーパーモデルの草分け杜鵑(ドゥ・ジュアン)と、
<フォーブス>誌の“世界で最も稼ぐモデル”リストに
初めて入ったアジア人モデルとしても知られる劉雯(リウ・ウェン)。
中国人スーパーモデルは大好き。
東洋的な顔立ちと、パーフェクトなボディのバランスが絶妙で、孫郡の芸術を表現できる人たち。

★ 明星(男子の部)

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続いて、男子の部。
トップは、吳彥祖(ダニエル・ウー)。


やはり、いかにも孫郡の世界観に合う男性明星は撮られており、
また、実際、彼らは作風に非常に馴染んでいる。

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左から、霍建華(ウォレス・フォ)、韓東君(エルビス・ハン/ハン・ドンジュン)、陳坤(チェン・クン)。
怪しい魅力が漂っております。


勿論、この人も。

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私の御贔屓・張震(チェン・チェン)。
デカダン。撮影場所がヨーロッパであっても、孫郡ならではの品性は変わらず。

★ 映像世界

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映画やドラマのポスターも色々手掛けているので、
アートに無関心な日本人でも、中華圏の映像作品を好んで観る人なら、
知らず知らずの内に、孫郡の作品を目にしている可能性は高い。
上の画像は、孫儷主演ドラマ『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』の物。
孫儷は、プライベートな記念写真もお願いするくらいだから、孫郡の作品が本当に好きなのでしょうね。


他、日本に上陸しているドラマだと、例えば…

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『孤高の花~孤芳不自賞』や『擇天記 宿命の美少年~擇天記』。
実は、『擇天記』では、な、な、なんと、人気女性シンガー何潔(ハー・ジェ)とのデュエットで、
<故意>という挿入歌まで歌っている。
日本だと、人気フォトグラファーがドラマのポスターを手掛けたついでに、挿入歌も歌っちゃった、
…なんて話は聞いたことが無い。見掛けによらずチャレンジャーなんですね。
ちなみに、下手ではない。


映画では…

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『楊貴妃 Lady Of The Dynasty』や、日本未上陸の『宮鎖沉香~The Palace』など。
『楊貴妃』は肝心な映画自体がクズでも、ポスターだけならマスターピース。



こういうグラフィック作品の著作権とか使用権といった諸々の権利は、どこが有するのだろうか。
中国のドラマや映画が日本で公開される際、
現地で使われたポスター等のヴィジュアルデザインを、日本でそのまま使わせてもらうことは出来ないの?
映画/ドラマ購入にかかった額とはまた別に、使用料がかかるの…?
近年、中国の映画ポスターには、デザインの優れた素敵な物がとても多い。
一方、日本のポスターは、無残な程ダサい物が多く、
私は、映画自体のイメージまで悪くなると懸念しているので、そんな疑問がふと湧いた。
監督ら映画の制作者サイドだって、
自分の大切な作品が悪趣味なポスターで宣伝される事なんて望まないと思うのよねぇ…。

★ 京都

街や風景では、中国を撮った物が当然多いが、
孫郡は、日本の京都が好きで、実は京都でもかなり撮っている。

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京都は、ただ古い物が残っているというだけではなく、洗練された文化が受け継がれているから、
孫郡が好むのも、分かる気がする。




ここに挙げたのはごくごく一部で、他にも素敵な作品がまだまだいっぱい。
今のところ、日本で写真展が開催される華人フォトグラファーは夏永康(ウィン・シャ)くらい。
そろそろ他にも目を向けるべき時期でしょー!?
東京で孫郡作品を見たいので、写真展を是非企画して頂きたい。
キュレーターさん、よろしく。

蘭陵王が陸貞を娶ったのだと。

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本日10月16日は、女優・趙麗穎(チャオ・リーイン)のお誕生日。
1987年生まれの彼女、まだまだ少女のようにも見えるけれど、31歳になりました。

いやいや、注目はそこではなく…

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お誕生日に結婚を発表。


お相手は…

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馮紹峰(ウィリアム・フォン)…!
うわぁぁぁ、ビックリ。蘭陵王が陸貞を娶っちゃった。いや、杉杉を娶ったというべき…?


二人は、近年…

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映画『西遊記女兒國~The Monkey King 3』と
ドラマ『知否?知否?應是肥紅瘦~The Story Of Ming Lan』で二度共演し、
“嘘から出た実”で劇中同様私生活でも恋人同士?!と交際の噂が出たものの、
本人たちは回答を避け、あやふや状態。

そしたら、本日、午前10時07分、二人揃ってそれぞれの微博で、いきなり結婚発表。
ちなみに、馮紹峰の方は1978年生まれで、
彼もまた、つい最近の10月7日にお誕生日を迎え、40歳になったばかり。
そう、微博で結婚を発表した10時07分というのは、馮紹峰のお誕生日を表した時間なのです。

幸せの絶頂の日に、過去を掘り起こして悪いんだけれど、
馮紹峰は共演者との噂が絶えず、特に倪妮(ニー・ニー)や林允(リン・ユン)との記憶が鮮明なので、
自分よりずっと若い勝気な美女に振り回されるのが好きなのかと思っていたけれど、
結婚相手には癒し系を選んだのですね。
趙麗穎は馮紹峰のタイプではないと交際の噂を聞き流していたので、
唐突の結婚発表に、「えっ、ガセじゃなくて、本当に付き合っていたの?!」と少々驚いた。
(もっとも、趙麗穎も見た目こそ癒し系でも、
生き馬の目を抜く大陸芸能界の第一線で活躍し続けている人気女優なのだから、
中身はかなり逞しいシッカリ者なのかも知れない。)



海の向こうで、また大物のメオトが誕生ですね。
趙麗穎サマ、馮紹峰サマ、末永くお幸せに!

映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟 -再生-』

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【2017年/中国/109min.】
2017年大晦日の夜。
3人組の阿傑、小波、彤彤は、ある女性実業家を襲撃し、逃走。
“無名雑貨店”と看板が掲げられた古い店を見付け、そこに身を隠すことに。
誰もいない薄暗い店内では、日めくりカレンダーが1993年12月31日のまま。
間も無くして、時計の針が12時を指し、新年を迎えると、シャッターの郵便受けに一通の手紙が。
なんと、ミュージシャンを夢見る青年が1993年から送ってきた手紙で、
故郷に帰って家を継ぐべきか悩んでいるという。
3人組は、試しにいい加減な返事を書き、店の裏の牛乳箱に入れておくと、
誰も来た気配が無いのに、その手紙は忽然と消え、
驚いた事に、また1993年のあの青年から手紙が届いたのであった。
3人組は、店内に放置されていた古い新聞記事から、
この店の店主が、当時、手紙で人々の悩み相談を受けていたことを知る…。



中国語の原題は『解憂雜貨店』。憂いを解く雑貨店。
東野圭吾の小説<ナミヤ雑貨店の奇蹟>を、中国の韓傑(ハン・ジェ)監督が映画化。


日本でも廣木隆一監督が映画化しており、2017年9月に公開。

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中国版は、ここ日本でその約一年後の公開となったわけだが、
中国では、中国版の公開が2017年12月、日本版の公開は2018年2月と順序が逆。
なので、制作時期を考えると、“中国版は日本版のリメイク”という訳ではなく、
恐らく、同じ題材を両国で同時期に映画化するプロジェクトだったのではないだろうか。

私は原作小説未読で、日本版映画は鑑賞済み。
本来、この手の作品にはあまり興味が無く、
中国版も当初、「どうせただのアイドル映画でしょ…」と冷めていたのだが、
監督が『ミスター・ツリー』(2011年)の韓傑で、
しかも、キャストも映画ファン好みの顔ぶれが意外にも多く起用されていると知り、俄然興味が湧いた。

但し、配給が、『空海 KU-KAI』(2017年)と同じ角川という点は、かなり引っ掛かった。
なにせ、『空海』を日本語吹き替え版のみで“日本映画”として上映した、あの角川である。
幸い、『空海』は上映方法で観衆から大バッシングを浴び、
慌ててオリジナル中国語版を公開する羽目となったので、
さすがの角川も、この『ナミヤ雑貨店の奇蹟』では、『空海』の轍は踏まず、
お陰で私も安心してオリジナル中国語版で鑑賞できることとなったわけ。ホッ…!
もし『空海』のONLY日本語吹き替え版上映が成功していて、
それがその後を決める“前例”になっていたら…、と想像するとゾッとする。




本作品は、2017年の大晦日に、
孤児院・彩虹之家(虹の家)で一緒に育った阿傑、小波、彤彤の3人が、
裕福な女性実業家を襲い、逃げ込んだ朽ち果てた雑貨店で、
1993年から届く悩み相談の手紙を受け、二十年以上昔の人々と時を超えてやり取りする内に、
今に繋がる彼らの歩みや想いを知ることとなるファンタジー群像劇


原作小説未読の私は、無意識の内に日本版映画と比較しながら鑑賞していたのだが、
日本版も中国版も大筋に極端な差は無いように見受けた。

時代設定は、両者でやや異なる。
日本版は現在が2012年で、過去が1980年。
中国版は現在が2017年で、過去は1993年。
日本版が32年も遡るのに対し、中国版は24年しか遡らないのだ。
これは、お国の事情に合わせて考えられた時代設定であろう。
中国では、文化大革命の終結が1976年、小平の指導下で改革開放が始まったのが1978年だから、
1980年だとまだ混沌の時期。
1990年に入ると、一度中断していた改革開放政策が再び推し進められ、
中国はそこから短期間にグワーッと発展し、様々な状況が激変するから、
過去を1993年に設定したのは妥当に思えるし、
中国の24年は、我々現代日本人が考える24年より、ずっと濃密である。


過去から手紙を送って来る人々のエピソードは、
中国版では、<小城音樂人(小都市のミュージシャン)>、
<迷途的汪汪(迷える子犬)>、<傑克遜和解憂爺爺(マイケル・ジャクソンと解憂じいさん)>と、
オムニバス風に3ツの話を分けて紹介し、最終的にそれらが繋がる作り。

勿論細かなアレンジは色々有るのだけれど、日本版と一番大きく異なるのは、
雑貨店のおじいさんが、それまで良かれと思ってやってきた悩み相談に疑問を感じ、
悩むキッカケとなるエピソード。
原作小説から選択したエピソードが、どうやら日中で異なるようだ。
日本版で取り上げているのは、不倫で妊娠した子を産むべきかどうか雑貨店に相談するも、
結局は、車ごと海に突っ込み亡くなる女性と、彼女の娘のエピソード。
一方、中国版は、父親の借金で、裕福な生活から一転、夜逃げをする身となり、その道中、両親を亡くし、
後に有名画家となるマイケル・ジャクソンに夢中な少年のエピソードとなっている。
これ、原作小説では、マイケル・ジャクソン好きではなく、ビートルズ好きの少年が登場する模様。
中国版映画の時代背景を考えると、ビートルズよりマイケル・ジャクソンの方が確かにシックリくる。
1977年生まれで、映画の時代背景である1993年当時16歳の少年だった韓傑監督にとって、
中国でのマイケル・ジャクソン人気が、記憶に残るムーヴメントだったとしても、不思議ではない。




現代と過去に跨る物語なので、日本版で“ひと昔前の日本”を覗けたように、
中国版でも、“懐かしい中国”は、一つの見所。
前述のように、中国は急速な発展を遂げたため、
日本人の私にとっては“つい最近”に思える90年代がとてもノスタルジック。
北京の胡同には、下町情緒が溢れ、まだ個々の家に電話も無い。

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ドラマでは、『新白娘子伝奇~新白娘子傳奇』がヒット中で、
崔建(ツイ・ジェン)のロックが若者の心を掴んでいる。

ちなみに、本作品では、近年映画監督もしている作家の韓寒(ハン・ハン)が芸術指導に当たっている。
現在と過去を繋ぐ話で、過去の時代設定は同じく1990年代であった(具体的には1998年)。
韓寒は1982年生まれで、韓傑監督と年も近いし、
その世代の中国人にとって、懐かしかったり、強烈な印象に刻まれているのが、やはり90年代なのでしょうね。





主要キャストを日本版と合わせてチェック。

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無名雑貨店の老店主に成龍(ジャッキー・チェン)
孤児院・彩虹之家で一緒に育った3人組のリーダー格・阿傑に董子健(ドン・ズージェン)
内気な少年・ 小波に王俊凱(ワン・ジュンカイ)
紅一点・彤彤に迪麗熱巴(ディルラバ・ディルムラット/ディリラバ)


雑貨店店主個人の背景は、中国版は、日本版に比べ、描き方がアッサリしている。
本作品一の大物・成龍が演じているわけだが、
描き方がアッサリしている分、登場シーンも少な目で、存在感はやや希薄。
アクションをまったく披露せず、それどころか、ヨレヨレの老人を演じる成龍の挑戦は買うけれど、
メイクに若干のワザとらしさがあり、日本版の西田敏行の方が、自然に“味のある老人”に感じられた。


主人公の3人組で最も大きな違いは、日本版が男子3人組なのに対し、
中国版では男子2人+女子1人の混成3人組に変えられている事。
韓傑監督曰く、
「韓寒とミーティングした時、二人して同時に、3人組を男子だけに限定したくないと同意見が出ました。
衝動と理性の相乗でドラマが生まれるこのような物語には、陰陽の調和があるべきだ」と。
陰陽バランスを持ち出し、女性をキャスティングするなんて、中国っぽいですね。

こうして設定された女の子・彤彤に扮する迪麗熱巴は、
維吾爾(ウィグル)族らしいエキゾティックな顔立ちで、昨今引く手あまたの若手美人女優。
普段はロングヘアでお人形のように愛くるしい迪麗熱巴は、
奇抜なブルーのショートヘアで、見た目からイメージ一新。

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但し、この髪はズラ。
「映像で見ると深い色だけれど、実物はかなり派手な紫。
初めてこのカツラを被った時は、ヴィヴィッド過ぎて躊躇した」と迪麗熱巴本人が語っている。
彤彤は見た目のみならず、性格も少年っぽいので、これまでの迪麗熱巴とはちょっと違う感じ。


男子の方に目を向けると、小波役には超人気アイドルユニットTFBOYSの王俊凱、
リーダー格・阿傑には実力派の董子健と、対照的な二人。
王俊凱と迪麗熱巴だけだったら、ただのアイドル映画になってしまいそうなところ、
董子健を加わえ、引き締めたのが、巧いキャスティング。

董子健については、こちらの“大陸男前名鑑:董子健”を参照。
(数年前に記した物で、情報はアップデートしていない。
董子健、今では結婚して、一児の父になっております。若いパパ!)



お悩みを相談する人たちもチェック。

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ミュージシャンを夢見る青年・秦朗に李鴻其(リー・ホンチー)
家系を支えるためホステスとして働く張晴美に陳都靈(チェン・ドゥリン)
その後成長し、実業家となる張晴美に郝蕾(ハオ・レイ)
子供の頃、裕福な生活と両親を失う経験をした有名画家・張默/林浩博に秦昊(チン・ハオ)等々。


李鴻其は、主要キャストの内、唯一の台湾人俳優。
張作驥(チャン・ツォーチ)監督の『酔生夢死』(2015年)でデビューし、その年の金馬獎で新人賞を受賞。
東京フィルメックスでの上映の際には来日したので…

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私もナマ李鴻其を間近で見た。
見た目の印象は、“ごくごく普通の台湾人青年”。
こういうタイプは、台湾偶像劇には起用されにくいし、
ましてや、大陸となると、猛者揃いで、競争が激しく、フツーの台湾俳優ではとてもとても食い込めない。
ところがである、この李鴻其は、『酔生夢死』出演後間も無くして、
どういう幸運が巡って来たのか、大陸でマネージメント契約を結ぶことに成功。
今や台湾に縛られることなく、“秀作”と称される映画にボチボチと起用されるようになったダークホース。
最近では、マレーシア出身監督・何蔚庭(ホー・ウィディン)最新作、
『幸福城市~Cities Of Last Things』での演技が認められ、
もう直発表の第55回金馬獎で助演男優賞にノミネートされている。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で演じているのは、売れないミュージシャン秦朗。
90年代の中国ヤサグレ風来坊的な雰囲気が出ている。
アイドル上がりの半端なイケメン台湾人俳優の多くが大陸進出で苦戦する中、
李鴻其は、長身美男じゃない事をむしろ武器にして、かなり健闘していますよね。



貧しいホステスから実業家に転身する晴美役は、日本版では尾野真千子一人で演じ切っているけれど、
中国版では、若手と中堅実力派の2名がそれぞれ晴美の過去と現在を演じている。
特に若い晴美を演じる陳都靈は、これまでのイメージを覆す役作りに挑戦。
現在、日本ではちょうど陳都靈主演ドラマ『プロポーズ大作戦~求婚大作戰』が放送中。

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『プロポーズ大作戦』では、陳都靈本人のイメージ通りの清純派。
一方、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』では、初登場シーンが、濃いぃ水商売メイクだったため、
当初、それが陳都靈だとは判らなかった。
彼女がまさかホステスを演じるとは意外。
でね、“香港銅鑼灣で顔が効く蘇”を装い、広東語訛りで喋る張龍という男に騙されそうになるの(あらら…)。
4年後に香港返還を控えた当時の中国では、“香港”は人々を惑わす魔法のワードだったのかも。

3人組からのアドバイスが有ったお陰で、晴美は詐欺に遭わずに済み、
しかも、どんな“未来”が来るのかも教えられ、ビジネスで成功者に。
この成功した実業家・晴美は郝蕾が演じているが、
どうなのでしょう、陳都靈が成長すると郝蕾になるだろうか…?
二人はあまり似たタイプの容姿ではないような…。

その点、日本版は尾野真千子が一人で演じ切っているので、似ている/似ていない問題は無い。
問題が有るとしたら、若い晴美にちょっと無理があること。
でも、中年の晴美は、「地方の中小企業の女社長にこういう人、居る、居る!」というリアリティの有る外見。
郝蕾扮する中国版の中年晴美の方は、日本版よりずっと大きな企業のやり手中国人女社長のイメージ。
無から起業した女性が、大企業を動かす大物経営者になれるのもまた中国のリアル。



中国版で秦昊が演じている浩博/默に相当する日本版の役は女性で、山下リオ扮する川辺映子。
これは、前述のように、そもそも日中で原作から取り上げたエピソードが違うから。
中国版に登場するマイケル・ジャクソン好きな浩博は、
原作小説では、ビートルズ好きな浩介という少年で、
親を亡くし、養護施設に保護されてからは、“博”という偽名を使い、後に彫刻家になるらしい。
一方、中国版映画の方だと、元々は林永飛の息子・林浩博で、
保護された孤児院で身分を伏せ、ダンマリを決め込んでいたから、“默”と名付けられ、成長して画家になる。
ちょっと影のある画家の役は、秦昊にお似合い。


他にも…

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日本版で萩原聖人が演じた雑貨店のおじいさんの甥っ子に邢佳棟(シン・ジャードン)
小林薫が演じたミュージシャンの父親に成泰燊(チェン・タイシェン)
あと、そのミュージシャンの妹(日本版にも妹は出てきましたっけ?)に李夢(リー・モン)等がチラリと出演。
邢佳棟は、最近観たドラマ『昭王 大秦帝国の夜明け~大秦帝國之崛起』の白起が渋くて素敵だったので、
この映画で思い掛けず目にし、なんか得した気分であった。






109分の中国版は、129分の日本版より20分も短い。
日本版は尺が長い分、良く言えば、各人物の背景やエピソードの描写が丁寧で分かり易い、
悪く言えば、説明的で、広く大衆狙いの娯楽映画という印象。
中国版は、尺が短いので、各エピソードをオムニバス風に分け(←実際には、オムニバスとも違うが)、
簡潔にまとめたのは正解かも知れない。
日本版とは逆で、説明が足りないので、良く言えば、観る者の想像に託す文芸作品っぽい雰囲気が有り、
悪く言うと、分かりにくいかも。
私自身は、日本版で、登場人物の背景などは知っていたので、物語がスッと入って来たけれど、
何も知らずに、この中国版をいきなり観た人が、どこまで理解するのかは不明。
もっとも、そんな小難しい話ではないが。

日本版、中国版、どちらを好むかは、人それぞれ。
中国では、日本版の方が高い評価を得ているけれど、
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に限った事ではなく、日本オリジナルの作品が、中国で映像化されると、
中国の人々は自国の物に厳しい評価を下す傾向がある。
まぁ、日本でも、海外のヒット映画の日本版リメイクや、人気小説の映画化は、
オリジナルのファンから批判されがちなので、想定内の反応。

私自身は、東野圭吾のファンではないし、
日本版映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』にも特別な思い入れが無いので、この中国版映画は結構楽しめた。
韓傑監督がバリバリの娯楽作を撮ることには、少なからず抵抗があるのだけれど、
懸念していたほど作風が軽過ぎなかったし、
董子健、李鴻其、郝蕾、秦昊、成泰燊ら、映画ファン好みのキャスティングは、やはりオイシイ。
日本版も決して悪くはないのだが、
主演を山田涼介にしてしまったのが、どうしても私の好みには合わなかった。


中国版で残念に思ったのは、日本語字幕で、登場人物の名前を、
最初の一回だけ“漢字+片仮名ルビ”で出し、2度目から片仮名表記にするという古いタイプだったこと。
それ、何の意味があるの…??ずっと漢字+片仮名ルビで良いではないか。
日本のオリジナルに寄せた名前や、意味を込めた名前が有るのに、片仮名にしたら伝わらない。


日本側のお仕事に関してもう一つ、ポスター/チラシについても言及。
近年、中国製の映画のポスターにはセンスの良い物が多く、
反対に、日本は、昭和を引きずった野暮ったく悪趣味な物がやたら目に付き、
悲しいかな、こういうデザインの分野でも、日中の立場は完全に逆転してしまっている…。
この中国版『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のポスターも例外ではない。
…ところが、シネマート新宿に本作品を観に行った時のことである。
会場に入る際、映画館のスタッフが、観客一人一人に、この映画のチラシを手渡している。
なぜ今さらチラシ?と疑問に思ったら、新デザインのチラシであった。
いや、“新”ではなく、正確には、中国で使われたポスターのデザインそのままに、日本語を配したチラシ。

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左が元々あった日本製デザインのチラシで、右が映画鑑賞時に配られた中国製デザインの新チラシ。
やっぱり中国デザインの方が遥かに良い。悪足掻きせず、最初から、こちらを使えば良かったのに…。

日本で趣味の良いデザインが出来るのなら、勿論日本でオリジナルのポスター/チラシを作るべき。
多種多様なデザインが登場し、各国の個性を比べられた方が当然楽しい。
でも、もし今の日本にもはやその能力が無いのなら、
悪趣味なポスターで映画自体のイメージまで悪くするより、中国のデザインをお借りする方が有益。

映画『僕はチャイナタウンの名探偵2』

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【2018年/中国/121min.】
推理能力を競うクリマスター犯罪大師の世界ランキングで今や第2位の大学生・秦風は、
叔父・唐仁の結婚式に招かれニューヨークへ降り立つ。
早速唐仁に連れられ結婚式会場へ行くと、そこにはなぜか世界中から集まった名探偵たちがズラリ。
そう、結婚式は嘘だったのだ。
会場に現れたのは、アメリカ華人社会を牛耳る七叔。
この七叔の孫ジェイソンは、7月1日、チャイナタウンの荒神廟で、心臓をえぐられた無残な遺体で発見。
高齢で余命いくばくもない七叔は、
ここに集めた世界中の優秀な探偵たちを競わせ、犯人探しの大会を開催。
一週間の期間内に、犯人を探し当て、差し出した勝者には500万ドルもの賞金を贈るという。
高額賞金に目がくらんだ唐仁に騙され、この場に駆り出された秦風も、成り行きで大会参加者となり、
ニューヨーク警察の美人刑事・陳英からの説明で、
七叔の孫ジェイソンが殺された数日前に、腎臓がえぐられた白人女性の遺体も発見されており、
現場にはいずれも、謎の鎮靈符が残されていたことを知る。
2ツの案件は、被害者の人種性別、抜き取られた臓器にも共通点が無く、犯人の目的は掴めないものの、
秦風は同一犯による連続殺人事件と断定。
第3の被害を防ぐべく、事件解決にのりだす…。



2018東京・中国映画週間で鑑賞。

原題は『唐人街探案2~Detective Chinatown Vol. 2』。
2016年の同映画祭で鑑賞した『僕はチャイナタウンの名探偵』(2015年)の続編で、
監督も脚本も前作と同じ陳思誠(チェン・スーチェン)





本作品は、唐仁と秦風の叔父+甥コンビが、ニューヨークを舞台に、
現在進行形で発生続けている連続殺人事件の真犯人を突き止めようと奔走する7日間を
コミカルに描く探偵ミステリー。 


タイを舞台に描かれた前作のラストで暗示していた通り、この続編の舞台はニューヨーク。
前作と大筋に大差は無く、唐仁と秦風という不出来な叔父と優秀な甥のコンビが、
事件の犯人捜しをする7日間を描いている。

コメディ要素とミステリー要素の比率は、前作が7:3だとすると、続編のこれは5:5くらいか。
前作は、往年の香港B級コメディを彷彿させるドタバタが多かったけれど、
続編は、くだらない笑いを盛り込みながらも、ミステリー要素を強化したように感じた。


『夏、19歳の肖像』(2005年)の項でも記したように、
その映画の原作者でもある日本のミステリー作家・島田荘司は…

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本作品の陳思誠監督と交流があり、どうやらこの続編を、アドバイザー的な立場でサポートした様子。
(島田荘司は、陳思誠監督と将来的にコラボする意思を口にしているけれど、
『僕はチャイナタウンの名探偵2』の時点では、
恐らく本格的に顧問という程の立場ではなく、あくまでも助言するくらいだったのかも…?
映画のオープニングやエンディングに正式に“島田荘司”の名がクレジットされていたかも、私は未確認。
元々陳思誠監督はミステリー好きな人だと見受けるし、
島田荘司の協力などを得ながら、ただのコメディには収まらないミステリー映画として
観応えのある作品を目指したのかも知れませんね。


舞台をアメリカ・ニューヨークに移した今回、
唐仁と秦風は、アメリカ華人・ジェイソンが心臓をえぐられ殺された事件をキッカケに、
同一犯による連続殺人事件の謎を解くことになる。
被害者の人種性別、抜き取られた臓器、発生現場や日時がバラバラで、共通点が無いように思える事件だが、
マンハッタンに陰陽図を重ね、陰陽五行に照らし合わせながら、
事件現場や抜き取られる内臓を解明するという、チャイナ要素を盛り込んだミステリーに仕立てている。




レギュラー出演者は…

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お調子者で駄目ダメな中年・唐仁に王寶強(ワン・バオチャン)
唐仁の甥っ子でクリマスター犯罪大師ランキング世界第2位の天才・秦風に劉昊然(リウ・ハオラン)
容疑者から一転、唐仁&秦風コンビと事件を追うことになる宋義に肖央(シャオ・ヤン)

唐仁&秦風コンビは相変わらず。
165センチの王寶強と185センチの劉昊然は、文字通りの“凸凹コンビ”で、何から何まで対照的。

王寶強は、近年、少林寺で修業した武術の腕を活かしたハードなアクション映画への出演も増えているが、
『僕はチャイナタウンの名探偵』シリーズでは、前歯を金歯にして、コテコテのコメディアンに徹している。
扮する唐仁は、綺麗な女性に滅法弱く、前作では、タイのチャイナタウン一の美女・阿香に、
続編では、ニューヨーク警察の美人刑事・陳英に夢中になって、玉砕。
もしかして、この先、『僕はチャイナタウンの名探偵』シリーズは、
惚れっぽい駄目中年・唐仁が、放浪の旅に出て、行く先々で恋してはフラレる
中国版『男はつらいよ』“フーテンの唐仁さん”的ロードムーヴィになっていくのではないだろうか。


唐仁の甥っ子・秦風は、大学生になり、吃音がちょっと改善された。
演じている劉昊然は、私が前作『僕はチャイナタウンの名探偵』を観た後…

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出演した大作が立て続けに日本でも公開され、乗りに乗っている若手。
『空海』も『琅琊榜<弐>』もシリアスな作品だけれど、
『僕はチャイナタウンの名探偵2』では一転、女装のナース姿も披露しております(←結構可愛い)。
上半身を脱ぐシーンでは、腋を凝視したが、毛はやはり無く、ツルツルだった。
(劉昊然腋毛問題に関しては、こちらを参照。)


肖央は、前作から引き続き起用されている一応“レギュラー出演者”だけれど、
同じ役で出演し続ける王寶強や劉昊然とは違い、演じる役が2作品で異なる。
前作で演じていたのは、唐仁のアニキ的存在の刑事・坤泰で、本作品の宋義とは何の関係も無い。
この宋義は、主人公コンビのオマケ程度の立ち位置だと思っていたが、
映画を最後まで観たら、実はとても重要な役であった。



脇を固めるキャストもチェック。
まずは、お馴染みのベテラン俳優 from香港。

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アメリカ華人社会を牛耳る七叔に曾江(ケネス・ツァン)
唐仁の師匠で、莫家拳館を運営する武術家・莫友乾に元華(ユン・ワー)


曾江が演じるのは、アメリカのチャイナタウンの顔役・七叔。
この七叔が、孫を殺した犯人を探し出すために、大会を開催したことで、物語が動き出すので、
出番は決して多くはないが、作品のプロローグを担う役と言える。
ちなみに、前作で、タイのチャイナタウンを牛耳っていた閆先生は、
台湾の金士傑(ジン・シージエ)が演じていた。

コメディのできるアクションスタア・元華の出番は、曾江以上に少ないけれど、充分笑わせてくれる。
秦風のことをうら若き乙女と思い込み、目を細める演技は、ベタだが、笑える。
このボケ気味の武術家を演じている元華本人は1952年生まれで、
実は1935年生まれの曾江より20歳も若い。
…と言うか、あの曾江がもう83歳という方が信じられない。お元気ですよねぇー。



女性で印象に残るのは(↓)こちら。

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ニューヨーク警察の華人刑事・陳英(ローラ・チェン・イン)に劉承羽(ナターシャ・リウ・ボルディッツォ)
大会に参加するクリマスター犯罪大師世界ランキング第5位のキコに尚語賢(シャンユーシエン)


唐仁の今回のマドンナ・陳英刑事を演じている劉承羽は、
イタリア人の父と中国人の母をもつ、オーストラリア出身の女優さん。
抜群のルックスに加え、幼い頃から武術をたしなみ、アクションも出来るため、近年頭角を現してきた注目株。
混血にしては目が腫れぼったく、小ざっぱりした顔がミステリアスでクール。
冨永愛に、西洋の血を少し混ぜた感じで、私好みの顔立ち。お綺麗です。

あっ、そうそう、前作で唐仁をトリコにした佟麗婭(トン・リーヤー)扮する阿香も、ゲスト出演程度に登場する。
映画のラスト、私生活で佟麗婭の夫である陳思誠監督と揃って登場するというサービスシーン。
この阿香は、今後も唐仁にとっての本命という位置で、シリーズにずっと出てきそうな気がした。
(2017年1月、陳思誠監督の浮気発覚で、夫婦仲危機説が噴出したため、
万が一離婚なんてことになったら、阿香はシリーズから消えるかも…?そうならない事を祈りますが。)

余談になるが、前出の日本人ミステリー作家・島田荘司は、佟麗婭のファンみたいで、
彼女をモデルにした北京が舞台のショートストーリーを執筆中。
陳思誠監督が映画化してくれないかな」とラヴコールを送っております。



話を戻して尚語賢。彼女もまた注目の新進女優。
私が過去に尚語賢を見たのは…

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共に、元EXOの中国人メンバーが主要キャストで出演する二本の映画、
『ロクさん』(2015年)と『カンフー・ヨガ』(2017年)のみ。
いずれもチョイ役で、正直言って、特別印象には残らなかった。

ところが、『僕はチャイナタウンの名探偵2』では、重要な役を与えられ…

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普段の尚語賢とは別人に化けて演じている。
ブルーグリーンの髪をツインテールにまとめ、見た目からしてインパクト大。
名前が“KIKO”だし、日本を意識した二次元美少女っぽい雰囲気。

尚語賢でハッとさせられたのは、見た目のインパクトのみならず、英語力も。
『僕はチャイナタウンの名探偵2』で、彼女の台詞は多くが英語で、練習に苦労したと語っているけれど、
発音もスピードも、中国育ちの中国人が中国で覚えた英語とは到底信じ難いレベル。
日本の俳優はどんなに頑張っても、なかなかこのレベルにはならないのよねぇ…。
複雑な発音の中国語を喋る中国人は、母音が5ツしかない日本語に慣れた日本人と違い、
元々自分の中に微妙な音が沢山ストックされているのでしょうね。
なお、この尚語賢は、今年、間も無く、来日し、東京・中国映画週間の閉幕式に登壇予定。楽しみ。



そして、我々日本の観衆がイヤでも注目してしまうのが、(↓)こちらのキャスト。

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妻夫木聡…!
演じているのは、クリマスター犯罪大師世界ランキング第3位の日本人・野田昊。

以前、こちらに記したように、陳思誠監督が元々ブッキーのファンだったことから、出演をオファー。
ブッキーは、中国映画市場に詳しくないため、
『黒衣の刺客』(2015年)での共演で親しくなった張震(チャン・チェン)に相談したところ、
意外にも張震が『僕はチャイナタウンの名探偵』ファンで、
ブッキーに「絶対に出るべき!」と、強力に出演を勧めたのだという。

こうして出演することとなった本作品で、ブッキーは、英語と中国語の台詞に挑戦。
尚語賢ほど上手くはないけれど、頑張っております。
扮する野田昊は、お金に困っていないため、500万ドルの高額賞金にも無関心で、
物語前半の内に、サッサと帰国してしまうが、かなり印象に残る役である。
特に、ナルシスト設定の野田昊の自撮り画像には、笑った。

ちなみに、役名・野田昊の“昊”は、日本ではあまり名前に使わない漢字。
中国だと、本作品の主演俳優・劉昊然(リウ・ハオラン)とか、秦昊(チン・ハオ)とか、
有名人でもこの字を使った名前の人がボチボチ居るけれど。
日本語では、確か“のだ・ひろし”と自己紹介していた。でもね…

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何度か画面に、“野田ハオ”という表記も出るのヨ。こういう粗い仕事は、案外嫌いじゃない。



他にも、王迅(ワン・シュン)、楊金賜(ヤン・ジンツー)、白靈(バイ・リン)等々
顔だけでもキョーレツな印象を残すクセ者たちが多数出演。



映画のラストは、前作と同じように、
出演者たちがニューヨークの街で、ノリノリの曲に合わせ、
賑やかに歌って踊るという賀歲片(お正月映画)らしい幕締め。
<Happy 扭腰>という曲で、歌っているのは、
前作の<薩瓦迪卡>と同じ、大陸の3人組ユニット・南征北戰 NZBZ


ブッキーもノリノリで踊っております。日本ではなかなかお目に掛かれない弾けたブッキー。
(日本人のブッキーは、動きが心なしか、志村けんっぽい。)





前作同様、非常にクダラない映画で、良いのか悪いのか、私にはもう判断が付かないのだけれど(笑)、
何も考えずに観るにはよろしい。
それに、今回はブッキーが出演しているので、日本人は評価が3割増しになるのでは。
実際、上映会場では、ブッキーが登場する度に、ザワメキや笑いが起き、反応が良かった。

前述のように、ブッキー扮する野田昊は、物語前半で帰国してしまうのだが、
ラストにもう一度登場し、シリーズ第3弾の舞台が東京であることを匂わせる。
一作目を観た時の感想に、私は、「チャイナタウンは世界中あちらこちらに有るので、シリーズ化できそう。
陳思誠監督、3作目は横浜中華街でいかがですか?」と記したが、早くもそれが現実に。
『僕はチャイナタウンの名探偵3』は、2020年1月の公開が予定されており、妻夫木聡も続投予定。
日本が舞台なら、他の日本人俳優にも出演の可能性あり…?
恐らく、第3弾も、前2作と基本的には同じで、東京で起きた事件を解決する7日間が描かれ、
唐仁はまた新たなマドンナに恋をして、一週間後に玉砕していることでしょう。
第2弾では明かされなかったクリマスター犯罪大師ランキング世界首位の“Q”なる謎の人物も、
その内判明するのか…?
シリーズを3本まとめて、日本で正式上映してくれると良いですねー。

あと、第3弾の東京編では叶わないかも知れないけれど、
陳思誠監督にとって張震は、ずっと一緒に仕事がしたいと思っている俳優で、
その張震がブッキーに第2弾に出演するよう背中を押し、間接的に協力してくれたことを喜んでいるし、
何より、当の張震が『僕はチャイナタウンの名探偵』ファンと言っているのだから、相思相愛で、
その内、出演してくれないかしら…。
張震が出たら、『チャイナタウンの名探偵』が一気に高級な映画になりそう(笑)。


シリーズ第1弾、『僕はチャイナタウンの名探偵』をリンク。

秋の和菓子2種(+テレビとか映画とか諸々)

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つい先日、正面から歩いて来る中年男性に、「なんか見覚えがあるけれど誰だろう??」と考え込み、
通り過ぎてから、NHK Eテレ『テレビで中国語』の前任講師、三宅先生だったことに気付いた。
テレビで見て想像していたより長身だったから、分かりにくかったのかも知れない。

三宅先生と遭遇したことで、10月23日(火曜)、思い出したように、久し振りに『テレビで中国語』を観た。
そうしたら、監督&主演作『妻の愛、娘の時』(2017年)のプロモーションで
7月に来日した張艾嘉(シルヴィア・チャン)が、恵比寿ガーデンシネマで行った舞台挨拶の模様が流れた。

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流れた映像はほんのちょっとだったのだが、
行きたくても行けなかった舞台挨拶の様子を、僅かでも思い掛けず覗けて、嬉しかった。


『妻の愛、娘の時』は、お墓問題に端を発した3世代の女性それぞれが抱える想いを描いたドラマで、
物語も、出演俳優の演技も、なかなか良かった。
本妻さんであるおばあさんを演じている吳彥姝(ウー・イエンシュー)は、
ずっと舞台を中心に活動してきたため、大ベテランでありながら、日本ではまだほぼ無名だが…

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陳可辛(ピーター・チャン)がプロデュースする岩井俊二監督初の中国語作品で、
周迅(ジョウ・シュン)主演映画『你好、之華~Last Letter』にも出ているので、今後注目度が高まりそう。
タイトルにある“之華”は、最初見た時、「えっ、ナニ、“~の、はな”…??」と意味が分からなかったが、
周迅扮する主人公の名前であった。

この映画は、来月発表の第55回金馬獎で、
周迅が主演女優賞、張子楓(チャン・ヅ―フォン)が助演女優賞、
そして岩井俊二がオリジナル脚本賞の、計3部門にノミネート。

出演は他にも…

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秦昊(チン・ハオ)、杜江(ドゥ・ジアン)、そして胡歌(フー・ゴー)と、日本の中華電影ファン好みの顔ぶれ。
まぁ、胡歌は友情出演程度だと思うが、
かねてから岩井俊二監督ファンを公言し、交流を重ねてきた胡歌が、
こうして岩井俊二監督作品に出演するのは、日本の映画ファンにとっても喜ばしい。
公表されたポスター画像で見ると、ラフな髭面&温厚な眼差しで、
岩井俊二監督作品仕様になっていますよね。役名は“張超”とのこと。

映画『你好、之華』、中国での公開は、間も無くの2018年11月9日、
香港では、11月25日、香港亞洲電影節のクロージング作品としてお披露目、
台湾では詳細未定で、2019年初頭と言われている。
日本でも公開されると信じたい…。

なお、話を戻して、張艾嘉が出演する『テレビで中国語』は、11月25日(木曜)午前6時に再放送あり。
『妻の愛、娘の時』は、東京での上映は終わってしまったが、これからの地方にお住いの方はどうぞ。



ドラマでは…

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2018年10月19日(金曜)、LaLaTVでスタートした
『永遠の桃花 三生三世~三生三世十里桃花』を、取り敢えず第3話まで観てみた。
唐七公子の小説の映像化で、ドラマ版は大ヒットし、映画版は大コケした、アレ。
私は、この夏、カリコレ2018にて、先に映画版の『ワンス・アポン・ア・タイム 闘神』を鑑賞。
観て、大コケの理由が何となく分かった。
…と同時に、そもそもこの手のファンタジー時代劇に無関心な私にとっては、
ベストセラー小説をどんなに上手く調理したところで、
やはりその映像作品にも、どうせハマれないのではないかという疑問が湧いた。

ドラマ『永遠の桃花』初回視聴で、私が抱いていた懸念は、的中した気がした。
オープニング映像を観た瞬間に、
同じ林玉芬(リン・ユーフェン)監督の『花千骨 舞い散る運命、永遠の誓い~花千骨』が重なった。
監督のカラーって、結構出るものですね。

うーン…。ど、ど、ど、どーなんでしょう、コレ…?!
話題作なので、放送されたこの機会に観ておくべきという気持ちも無きにしも非ずなのだが、
最近大陸ドラマは豊作なので、絞らないと、録画の消化にばかり追われ、廃人道まっしぐら。
最近長いドラマに慣れっ子になっているため、全58話程度の尺だと驚きは無いけれど、
だからと言って、好みに合わない物を、ムキになって58話も観る必要は無いだろうし…。
ビミョー…。取り敢えず10話までは頑張って観て、それで継続か捨てるか決めようかしら…。



日本で新たに放送が始まったドラマはもう一本。

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2018年10月22日(月曜)、アジアドラマチックTVでスタートした『最上のボクら~最好的我們』
現地で高く評価されている青春ドラマだが、
私自身が“青春”って年でもないし、何がナンでも観たい!と欲していた物ではない。

劉昊然(リウ・ハオラン)+譚松韻(タン・ソンユン)主演という程度の知識で、取り敢えず第1話を観た。
時代背景は2003年、舞台は優秀な学生が集まる進学校・振華。
約15年前に高校生で、現在30代の、いわゆる“80後”と呼ばれる中国人たちが、
懐かしいと感じる物語なのだと想像する。

初回冒頭は、主人公が高校に入学して一年が経った2004年の夏で、
仲間とテレビでアテネ・オリンピックの陸上競技を観戦、劉翔の金メダルに湧くシーン。
「そう言えば、劉翔は大人気だった」と私まで懐かしい気持ちに。

すぐに一年遡って、2003年になると、主人公たちが入学したばかりの高校で…

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いきなり軍事訓練。
へぇー、進学校にもあるのですね、軍事訓練。しかも、マスゲームもやっちゃうし。
日本だと、My迷彩服を持っている高校生なんて、あまり居ないわよねぇ??(ファッションは別として。)


BGMでは、ほんのワンフレーズだが、その昔、デヴィッド・ボウイとクイーンがコラボした
<Under Pressure>が流れ、ハッとさせられた。
この手の大陸現代劇で、あの時代のイギリスのヒット曲が流れるのを、聞いたことが無かったので。
<Under Pressure>は一体いつの曲だったのかと疑問に思い、調べてみたら、1981年発表であった。
文革終結、改革開放政策スタートから数年が経った頃。
1987年生まれの原作者・八月長安は勿論、
メガホンをとった新鋭・劉暢(リウ・チャン)監督も1988年生まれの80後。
この世代の中国人は、まだ生まれる前の世界的ヒット曲を、
やはり高校生くらいになってから、後追いで聴くようになったのだろうか。


さらにその後、劉昊然扮する余淮が、譚松韻扮する耿耿にイヤホンを貸し、
ポータブルプレーヤーで音楽を聴かせるシーンがある。
やはり、ほんのワンフレーズであったが、
イヤホンから漏れ聞こえた音楽は、明らかに周杰倫(ジェイ・チョウ)の<晴天>であった。
こちらも、いつの曲か調べたら、2003年7月発表。
つまり、余淮は、発表されたばかりの台湾人気シンガーの曲を聴いていたのですね。


ちなみに、(↓)こちらが、デヴィッド・ボウイ&クイーンの<Under Pressure>。


タイトルが<Under Pressure>で、冒頭いきなり東京の通勤電車が映るMVに、時代を感じる。
日本の働きっぷりや経済は、今じゃもう世界からそんなに注目されていないから…。


そして、(↓)こちらが、周杰倫の<晴天>。





中国の音楽学校を舞台にした映画『閃光少女』(2017年)も、日本の学校とは全然違う雰囲気だったし、
こういう映像作品を通し、現地の人々が通った青春を、第三者的な目で見るのは、面白いものですね。
現地人が懐かしむ気持ちは共有できないが、
大陸青春モノは、日本にあまり入って来ていないので、興味深い。
お椀カット&ジャージ姿の劉昊然がダサ可愛いし、
歴史モノではないのに、字幕で、人名が“漢字+片仮名ルビ”なのも高評価。
あっ、あと、エンディングに、劉美含(リウ・メイハン)が“日本女孩”役でクレジットされていたのも気になった。
名前が無いくらいだから、大きな役ではないと察するが、
日本の女の子が中国の青春ドラマにどう絡むのかは気になる。
予定外だが、この『最上のボクら』は視聴続行とする。



ついでに、近々放送の要録画番組を一本だけ。

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明日、10月25日(木曜)、NHKで放送の『世界は欲しいモノにあふれてる』
今回は、“極上の美食ベトナミーズを探す旅”と題し、
西麻布のベトナム料理店オーナーシェフが、現地の最新美食トレンドを探す旅を紹介。
個性派カフェや、問屋街のキッチン雑貨なども紹介するみたい。
近年日本のテレビは、近場で安く取材できるアジアを取り上げる機会が激増したように見受けるけれど、
この番組に限って言えば、意外と非アジアが多いので、今回は楽しみ。




最後はお菓子。
今回は、秋限定の和菓子を2ツ。

★ 笹屋伊織:くるみの森

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大きさは、直径約5センチ。
肉桂で香り付けをし、刻み胡桃を混ぜ込んだ餅で、つぶ餡を包んだお菓子。




一つめは、笹屋伊織(公式サイト)“くるみ餅”

胡桃を混ぜ込んだお餅で餡を包んだお菓子で、要は胡桃大福である。
ちょっと変わっているのは、シナモンで香り付けをしている事。
箱を開けた途端、ふわっと立ち上るシナモンの香りを感じた。

お餅は柔らかで、中には素朴なつぶ餡。
所々にある胡桃が香ばしく、食感のアクセントにもなっている。


餡+胡桃+シナモンは、和菓子より中華菓子にある組み合わせという印象。
和の大福でも、よく合っている。
お日持ちは製造当日で、お店では勿論「本日中にお召し上がり下さい」と言ってはいるけれど、
一日置き(もしくは、冷蔵保存し)、お餅が固くなっても、オーヴンなどで表面を焼いたら、
これ、かなり美味しいのではないだろうか。
販売期間中に、もう一度食べる機会が有ったら、試してみたい。
勿論、このままでも充分美味。

★ 鈴懸:照柿

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大きさは、直径約4センチ。
刻んだ干し柿を混ぜ込んだ練り切りで餡玉を包み、柿に見立てたお菓子。




もう一つは、鈴懸(公式サイト)“照柿”
名前は、“てるがき”と読む。
鈴懸が秋に販売している商品の中でも、特に好きなお品。

果物に見立てた上生菓子はよくあるけれど、
大抵は、形だけ果物で、味は普通の練り切りだったり、餅菓子だったりするものだ。
これは、柿の形で、味も柿。
まぁ、“味も柿”と言ってしまうと大袈裟だが、
普通の練り切りではなく、刻んた干し柿が結構な量混ぜ込まれている。
干した柿は、フレッシュな柿より甘みも旨味もギュッと凝縮されているから、
練り切りにしっかりと柿の味を感じる。


刻んだ干し柿で、表面が少々ボコボコになった感じや、オレンジ色のグラデーションの出し方、
さらに、本物のヘタを付け、精巧に作られたミニチュア柿の可愛さったら…。
見た目が良くて、味も良し。
この照柿は、例年10月いっぱいの販売。

ドラマの美食(グルメ):『月に咲く花の如く』編

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チャンネル銀河では、目下、大陸ドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』が放送中。
すでに後半戦に突入。皆さま、楽しんでいらっしゃいますか。


当ブログでは、同ドラマに登場する“甑糕(ナツメ餅)”や“葫蘆雞(ひょうたん鶏)”について取り上げてきたが、
今回は、お飲み物で“ドラマの美食(グルメ)”を更新。

取り上げるのは、お茶。

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『月に咲く花の如く』にしばしば登場するお茶関連の言葉は、
大紅袍(武夷の岩茶)、磚茶(圧縮形成した緊圧茶)、そして茯茶の3ツであろう。
大紅袍と磚茶に関しては、過去に幾度か記しているので、今回はパス。
私が気になったのは、茯茶である。

★ 茯茶

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“茯(フー)茶”は、普洱(プーアール)茶などと同じで、全発酵の黒茶に属す。

中国では、唐代以降、お茶は専売制となり、茶商は政府が発行するお茶売買の許可証“茶引”をもって、
茶馬交易を行う官営市場・茶馬司で取り引きが行われ、
各茶引ごとに、取り引き量や納税額が細かく定められていた。
このような制度のもと、政府に買い取られたお茶は、“官茶”もしくは“府茶”と呼ばれる。
当時、政府は、お茶交易の促進に積極的だったため、茶馬司での決済後、
茶商に残ったお茶を、政府指定の場所で各自販売する権限を与えており、
そのお茶は“附茶(Fùchá)”と呼ばれていたのだが、
それが次第に発音の近い“茯茶(Fǘchá)”に取って替わったというのが、語源という説あり。


茯茶は、いくつもの複雑な工程を経て、何度も発酵を繰り返し、時間と手間を掛け、ようやく出来るお茶。
同じ黒茶の普洱茶と違うのは、普洱茶が茶葉バラバラの散茶状態で発酵させるのに対し、
茯茶は、ブロック状に圧縮して発酵させる。
その発酵の過程で…

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茶葉に“金花(金の花)”と呼ばれる黄色い麹菌の一種が発生。
これを“發花(発花)”と呼ぶ。


普洱茶も、脂肪燃焼など、ダイエット効果がよく語られているけれど、
茯茶の栄養価や成分の優秀さも、近年の研究で、相当なものであることが実証。
特に、脂肪燃焼や血糖値を下げる作用が注目されており、
長期間飲み続けることで、新陳代謝を良くしたり、体質改善、アンチエイジングにも効くと言われている。

中国大陸西北部に暮らす遊牧民たちは、厳しい環境で、食生活が偏りがちなため、
不足する栄養分を茯茶で補うほど、彼らにとっては必需品。
自分たちでは作れない茯茶を、古くから茶馬貿易で、漢人と取り引きを続けてきた。




ドラマ『月に咲く花の如く』、第54話から第55話にかけてのエピソードでも、
問題は、異民族との商いの際に発生。
主人公・周瑩は、蒙古の商人・布和と、お茶の大口取り引きを結ぶ事に成功。
顧客を奪われたライバル沈家は、密かに人を雇い、
貨物船を浸水させ、積んであった周瑩の大量の茯茶を全て駄目にする。
改めて大量の茯茶を仕入れるのは不可能で、泣く泣くこの大口取り引きを諦める周瑩であったが、
そこに、マサカの展開。

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波止場で働く労働者の一言で、浸水した茯茶が、発酵し、
意外にもまろやかで美味しいお茶になっていた事を知る。

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周瑩は、このお茶に、“金花茯茶”という雅な名をつけ販売し、大評判になるのであった。



我々が現在普通に口にしている酒類とかチーズとかでも、
実は大昔、怪我の功名的に生まれたものだった、…という食品は、世界中に沢山ある。
果たして、金花茯茶も、その手の物なのか?
清代の陝西陽に実在した女富商・周瑩(1868-1908)の商売上の痛い経験から生まれ、
彼女が命名し、世に広まったのか…?

★ answer

現在、茯茶の産地として有名なのは、湖南であるが、
史書に最初に登場する茯茶は、陝西陽で誕生したものと記載。
つまり、茯茶が、周瑩のお膝元・陝西陽の名産であったことは事実。
あまりにも人気になったため、陝西で原材料不足となり、次第に湖南へ移っていったという。

ドラマでは、布和という蒙古の商人が、茯茶を仕入れに陝西陽にやって来るが、
周辺の異民族にとって茯茶が重要な品だった事も、古くから漢人と茶の取り引きをしていた事も事実。
シルクロードへの玄関口である陝西が、地理的に商売し易かったのも、想像に容易い。

…が、周瑩の痛い経験の中から、まろやかな味の金花茯茶が生まれたという話や、
命名したのが周瑩という話は、ドラマのフィクション。

そもそも…
浸水で発酵は促されない
余分な水分を吸った茶葉では、金花は育たず、
お茶は本来の味を失うばかりか、有害な菌類が発生する恐れさえ有り。

発花の時間が足りない
ドラマの中では、浸水から数日後に、美味しい金花茯茶が出来上がっているけれど、
実際には、こんな短期間に仕上がるお茶ではない。
ドラマの時代背景である清代では、茶葉作りの温度が、完全に自然任せだったため、
茶葉に黄金色の金花が出てくるまでには、2~3ヶ月必要だったはず。
長年の開発の成果で、1953年、湖南省に、温度制御できる乾燥機が登場すると、
発花の時間は劇的に短くなるが、それでも28日はかかり、
ドラマのように、ものの数日で金花茯茶を作るのは不可能。

冬は不向き
ドラマの中で、蒙古の商人・布和が、大雪で道が閉ざされることを恐れ、帰路を急ごうとする事から、
季節が冬であることが窺える。
しかし、茯茶の発花は、一定の温度と湿度の条件が揃わないと、培養しにくいもので、冬は不向き。


…との事です。

茯茶は6百年以上の歴史があるお茶で、
しかも、そもそも、金花が発生していない物は“茯茶”と呼べないので、
清末の女富商が発見したのでは、時代が遅すぎる。
一説には、茶馬貿易で、異民族が漢人から購入したお茶を、馬やロバにのせ、何ヶ月もかけ輸送する際、
風雨に晒され、想定外の微生物発酵が起きたのが、茯茶の由来とも。


でもまぁ、茯茶は周瑩の地元・陝西陽の特産なので、彼女と無縁だったわけではない。
周瑩の茯茶にまつわる実際のエピソードを一つ。

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それは、清・光緒27年(1909年)、日本では俗に“西太后”と呼ばれる慈禧(1835-1908)が、
北京に迫って来た八ヶ国連合軍から逃れ、西安へ落ち延びた時のこと。
周瑩の代理で、養子の吳念が西安まで赴き、慈禧に謁見し、10万両の白銀と、地元特産の茯茶を献上。
味もさることながら、茯茶の“茯(Fǘ)”と縁起の良い“福()”が同音であるため、
慈禧は福茶好、茯茶好!」と喜び、周瑩を一品誥命夫人に封じたという。
ここら辺の話には諸説あり、慈禧が周瑩を乾女兒(義理の娘)にした等という言い伝えもあるようだが、
よく分かっていないみたい。



お茶の世界は深い。
皆さまも、清代の女富商・周瑩に想いを馳せながら、茯茶で一服どうぞ。
美容と健康にも良さそうですね。



『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』に出てくる“甑糕(ナツメ餅)”については、こちらから。

『月に咲く花の如くに』に登場するお料理“葫蘆雞(ひょうたん鶏)”については、こちらから。

『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』に出てくる中医薬、“血竭”や“阿膠”については、こちらから。

2018東京・中国映画週間閉幕式

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今年も行って参りました、東京・中国映画週間の閉幕式へ。

昨2017年は、“ゴールド・クレイン賞授賞式”の名目で、
日本人ばかりを讃えるイベントと化していたため、
内心「金返せ…」という気も少し沸いた。
大陸の大物ゲストの登壇もキャンセルされていたし、何か致し方のない事情が有ったのであろう。

ところが一転、今年は来日ゲスト多数。
しかも、イベント終了後に上映される映画は、大ヒットを記録した話題作『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』。
舞台挨拶が無くても、観たかった映画。
中国映画週間の開催期間中、閉幕式の日一回しか上映されないので、
何がナンでもチケットは押さえたかった。

★ チケット販売方法に喝ッ…!!

まず最初に、チケット販売方法について言わせていただきます。

今年の中国映画週間の会場は、閉幕式のみTOHOシネマズ日比谷で、
開幕式及び一般上映は惠比壽の東京都写真美術館。
チケットの販売は、どちらもチケットぴあ。
前売り券の価格は、閉幕式が2300円、その他が1500円。

2017年は、いきなり3千円に値上げしたにも拘わらず、
私にとってはどうでもいい日本人ばかりが登壇したので、釈然としない気持ちに陥った。
今年は、価格を戻した点は評価するけれど、“販売はまたまたチケットぴあ”と聞き、イヤな予感…。

案の定、である。
今年もチケットぴあの購入ページに入ると、機械的に望んでもいない座席が割り当てられた…。
これは、TOHOシネマズ、写真美術館、どちらも。
(チケットぴあ店頭で購入の場合は、座席指定可能。)

この事に関しては、昨年も記したけれど、今どき、座席指定が出来ない映画祭なんて他に知らない。
映画ファンというのは、それぞれに自分お気に入りの“定位置”があって、席にコダワるものなの。
しかも、チケットぴあは、システム手数料、発券手数料というワケの分からない名目で、
計324円の手数料を取る。
それで、座席指定すら出来ないなんて、有・り・得・なーいっ…!!!


信じ難いことに、日本の中国映画週間実行委員は、“座席指定不可能”という事実を知らない。
チケット販売は、チケットぴあに丸投げしていて、詳細を何も知らないの。
もし観客から不満の声でも上がれば、気付いて、改善も有り得るだろうけれど、
日本の観客はずっとこの状態に甘んじているし
(毎年会場に大勢居る在日中国人客や、招待客が文句を言うとは思えない)、
私一人がここで叫んだところで、無力なものヨ…。

そもそも、TOHOシネマズで開催するなら、なぜTOHOのシステムを使わせてもらわないのか…?!
TOHOシネマズのシステムなら、手数料無料で座席も選べるのに…。

中国映画週間は、日中関係に左右されたり、登壇者が急に変更になったり、裏で様々なゴタゴタが有って、
実行委員は大変な思いをしながら、これまで開催を続けてきたと見受けるので、
あまり文句は言いたくなくのだけれど、
チケットの販売方法は、日本側の実行委員会で決められるはずである。
チケットぴあのような古臭いシステムに丸投げして、何も知らないなんで、無責任。
閉幕式は、毎年、放っておいても、最終的にチケットがさばけているから、気にも留めないのだろうが、
一般上映の方の売れ行きがイマイチな理由は考えたことがあるのか…?
チケットの販売方法を改め、きちんと情報を発信すれば、もっと売れます。
(ちなみに、写真美術館での上映前売り券を、チケットぴあのサイトから買うと1824円になるが、
写真美術館は様々な優待が効くので、私の場合、当日券なら1500円で買える。
みすみす座席が余っている上映のために、
当日券より高く、座席さえ選べない前売り券を、誰が買いたがるんだか…。)

★ 会場

去年まで数年に渡り使用されてきた会場は、TOHOシネマズ日劇のスクリーン1。
収容944人で、東京の映画館としては、非常に規模の大きなスクリーンだったのだけれど、
2018年2月で閉館してしまったので、次はどこで開催するのかと気になっていた。
そうしたら、発表されたのは、前述のように、TOHOシネマズ日比谷のスクリーン5。
2018年3月末にオープンしたばかりの新しい映画館は、言うまでもなく清潔。
…が、ここ、全館の総収容人数は都内最大級でも、各スクリーンは小規模で、
今回使用のスクリーン5は、387席ポッキリ。
日劇スクリーン1の約4割に激減です…。

座席数が少ないことを知っていたのも、
私が、チケットぴあ店頭ではなく、販売サイトからチケットを購入した大きな理由。
2016年、座席を選びたいがため、チケットぴあのお店に並んだら、
順番が回ってくる前に完売という苦い経験をしたから。
その年は、吳亦凡(クリス・ウー)来日という目玉がある年であった。




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映画館が入る東京ミッドタウン日比谷は、かなり前から東京国際映画祭仕様に飾られている。

(↓)こちら、スクリーン5の内部。

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前3列は、登壇ゲストや関係者席。
その後方にプレス向けや、花束贈呈をする子供たちと、彼らの親の席も設けられているから、
私のように、自分でチケットを買って来ている客は、3百人以下なのでは。


例年通り、入場時には、ブ厚いパンフレットもくれます。

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中は、登壇ゲスト、上映作品の紹介、日中両国で行われた映画祭アーカイブ等。




本来、午後2時開演のはずが、
これも例年通りで、遅れ(笑)、2時20分にスタート。
以下、イベントの流れをザっと記す。
写真はねぇ、席がステージから遠かったので、もう全部ボケボケ。
でも、せっかくの想い出なので、一応何枚か貼っておきます。

★ 崑劇

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イベントは、崑劇のパフォーマンスで幕開け。演目は『扈家莊(こかそう)』。
ステージが崑劇用の設えになっていないため、雰囲気はイマイチだが、パフォーマンス自体は一流。
日本のガールズユニットがパフォーマンスを披露した昨年より、ずっと良いです。

その後、中国映画週間開催中に上映された映画『崑劇映画‐景陽鐘~崑劇電影‐景陽鐘』から、
夏偉亮(シア・ウェイリャン)監督、プロデューサー谷好好(グー・ハオハオ)、
そして、崑劇俳優の黎安(リー・アン)、陳莉(チェン・リー)が挨拶。
崑劇のような伝統芸能では、濃厚なメイクを施すため、俳優本人の顔は分かりにくものだけれど、
素顔の黎安さんは、美男子でした。

★ 主催者挨拶

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今年、このイベントの主催は、
NPO法人日中映画祭実行委員会、中国電影股份有限公司、北京電影學院の3団体。
内、北京電影學院の侯光明(ホウ・グアンミン)理事長と、毎度の栗原小巻嬢がご挨拶。

挨拶が終わった時点で、2時47分。
イベント終了予定時間は3時なのに(…苦笑)。
主催者側、日中政治家等の挨拶が延々と続いた以前に比べれば、かなりの改善である。

★ 登壇ゲスト

終演時間近くなり、ようやく映画ファンのお目当てであるゲストの登壇(笑)。
最初に登場したのは、日中合作映画『逢いたい~在乎你』チーム。

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左から、畢國智(ケネス・ビー)監督、木下彩音、兪飛鴻(ユー・フェイホン)。

以下、他も個別に掲載したいところだが、
ベルトコンベア式に、次から次へとステージに上がってくるので、
もう何がナンだか分からなくなってしまった…。

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ふと気付いた時には、すでに大勢のゲストが壇上に。
ゲストの大半が日本人だった昨年とは大違いで、今年は豊作なのだけれど、
時間が無いから、当然、各人の紹介や挨拶はごくごく簡素。
こんなにスタアの無駄遣いをするイベントも珍しい。

確認できた人だけ名を挙げておくと…
閉幕式上映作品『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』と
『プレイヤー A to B~幕後玩家』から徐崢(シュー・ジェン)、
同じく『プレイヤー A to B~幕後玩家』から王麗坤(ワン・リークン)、
『オペレーション:レッド・シー~紅海行動』から海清(ハイ・チン)、黃景瑜(ホアン・ジンユー)、
『カイジ 動物世界~動物世界』から韓延(ハン・イェン)監督、
『灰色だった空を見上げ、僕らは明日に向かう~拿摩一等』から阿年(アーニエン)監督、邱林(チョウ・リン)、
『南極の恋~南極之戀』から吳有音(ウー・ヨウイン)監督、
『僕はチャイナタウンの名探偵2~唐人街探案2』から尚語賢(シャン・ユーシエン)、
開催数日前に降って湧いたように加わった『母になる~牛油果的春天』から
范慶(ファン・チン)監督、林鵬(リン・ポン)、陳思誠(チェン・スーチェン)。
陳思誠は、『僕はチャイナタウンの名探偵』シリーズの監督で俳優の、あの陳思誠ではなく、子役の少年。

終盤、“スペシャルゲスト”の名目で、
今回出演作の上映が無いはずの愛新覺羅啟星(あいしんかくら・けいせい)と
魏一(ウェイ・イー)も加わった。

登壇するものだと思い込んでいた雷佳音(レイ・ジャーイン)が来なかったのは、非常に残念。
東京国際映画祭のレッドカーペットには登場したので、来日はしたはずなのだけれどね…。



ちょっとだけ個別画像も。

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今回一の大物・徐崢。
あっ、後方に写っている帽子の少年が、あの陳思誠と同姓同名の陳思誠クン。


(↓)こちらは、今回一のキレイどころスリーショット。

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左から、海清、黃景瑜、王麗坤。
海清には“気さくなアラフォー”のイメージがあったので、意外にも綺麗で、ハッとさせられた。
勝手に抱いていたイメージと実物のギャップが一番大きかったのは、彼女かも。
王麗坤は想像していた通りのクールビューティー。
黃景瑜は、今朝、“すでにバツイチ子持ち”報道を見たばかりだったので、
御本陣は内心穏やかでいられないのではないかと、想像してしまった。
(子供をもうけた後、6歳年上の女性とスピード離婚という報道は、実際のとこ、どうなのでしょう。)

★ 花束贈呈

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最後は近年お約束になっている、スポンサーmiki houseの服を着た子供たちからの花束贈呈。




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ブーケを手にした畢國智監督、木下彩音、兪飛鴻、そして尚語賢。
兪飛鴻は清潔感があって、とても綺麗。
尚語賢は、『僕はチャイナタウンの名探偵2』で先日見たばかり。
今回、お召し物が一番派手だったのは、彼女。



花束贈呈をする事自体は良いのだが、
イベント終了後、映画の上映が始まっても、その子たちを館内に残すのは、如何なものか。
「トイレ行きたい」だの、「映画いつ終わるの?」だのと、上映中終始お喋りが止まなかった。
他の多くの観客は、お金を払って映画を観に来ているという事を、考慮して頂きたい。


予定の3時を少し回ったところで、閉幕式終了。

★ 『ニセ薬じゃない!』舞台挨拶

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イベントが終了したので、映画が始まる前に、おトイレに行っておこうかと思ったら、
上映作品『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』の主演俳優・徐崢(シュー・ジェン)とプロデューサーが
ステージ上に残り、約10分の舞台挨拶。

「実際に中国で起きた社会問題を扱った作品ですが、9千万人を動員しました。」
「実際の人物が、映画の主人公と違う所は、本人も慢性骨髄炎であることです。」
「中国では、李克強首相もこの映画を観て、医療制度が注目されました。」
「今回は、時間的な問題で、
この作品を東京国際映画祭のコンペティションに出品することができませんでしたが、
次回、機会があれば、他の作品で参加したいです」等々と徐崢。

こうして、午後3時20分頃、今度こそ本当に閉会式終了。




映画祭のイベントにもかかわらず、
これまでは、閉会式で上映される作品の関係者が、その作品について語ることは無かった。
徐崢本人に『ニセ薬じゃない!』について語らせたのは、中国映画週間にしては、大した進歩。
お偉いさんの挨拶も、昔に比べたら、超短縮されているし、日本語字幕も劇的に良くなったし、
ゆったりペースではあるけれど、実行委員の皆さまの努力のお陰で、中国映画週間は良くなってきている。
だからこそ言いたい、次に改善すべきは、チケットの販売方法と、子供の扱い。

映画『ニセ薬じゃない!』は、噂通り、とても面白い作品で、これには大満足。
詳細は、また後日に。

『詩人』劉浩監督+宋佳・朱亞文Q&A

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第31回東京国際映画祭、コンペティション部門に出品された中国映画『詩人~詩人 The Poet』を鑑賞。


10月27日(土曜)、29日(月曜)の2回ある上映の内、私がチケットを入手したのは、前者。
チケット発売時には発表されていなかったが、
その後、劉浩(リウ・ハオ)監督と、出演者の二人、宋佳(ソン・ジア)、朱亞文(チュー・ヤーウェン)が来日し、
Q&Aを行うことが判明。
コンペティション部門での上映なので、誰かしらがQ&Aを行う事は想像していたけれど、
宋佳と朱亞文、両方揃っての来日は無理かも知れないと控えめに考えていた。
この二人、今回の東京国際映画祭、華人俳優の中では、一番の大物ゲストではないだろうか。
お二方の出演作は結構観ているし、特に朱亞文は好きなので、とても嬉しい。

★ 会場

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会場は、EXシアター六本木。
東京国際映画祭で使用している会場の内、最も大きな場所だけれど、
週末の上映ということもあり、お客さんでいっぱい。

★ 映画『詩人』Q&A

寝不足で上映に臨んだので、この手の映画だと、ウトウトしちゃうかも知れないと心配していたのだが、
いざ始まったら、作品の世界にぐいぐい引き込まれていった。
そして、約2時間の映画が終わると、Q&A。



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司会進行役は、東京国際映画祭プログラミングディレクター矢田部吉彦、
登壇者は、前述の劉浩(リウ・ハオ)監督、
出演者の宋佳(ソン・ジア)、朱亞文(チュー・ヤーウェン)に加え、プロデューサーの周強(チョウ・キョン)。
周強Pは、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督作品などで有名なプロデューサー(…よねぇ?)。

皆さま、我々と同じ会場で、一緒に映画鑑賞していたらしく、名前を呼ばれ、座席からステージへ。
私の近くにいた大学生くらいの中国人女子二人組は、どうやら宋佳と朱亞文の大ファンらしく、
彼らの登場で、興奮と喜びが混ざったような涙を流しておられた。

ステージには上がらなかったけれど、『詩人』チームは実は大所帯で来日しており、
作品に張義の役で出演している鄭家彬(ジェン・ジャービン)も、客席からご挨拶。
あと、出演者ではないけれど、朱亞文の妻・沈佳妮(シエン・チアニー)も一緒に来ていたみたい。
沈佳妮は…

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最近、ドラマ『昭王 大秦帝国の夜明け~大秦帝國之崛起』に、
白起の妻・趙蔓の役で出ているのを見たばかりなので、
現代人の恰好をしたプライベートのお姿も、ちょっと見てみたかった。
会場のどこに座っていたのでしょう。どなたか、沈佳妮に気付いた方、いらっしゃいます?


まぁ、沈佳妮は、今回は作品に関係が無いので、良しとして、
宋佳も朱亞文も、長身でスタイルが良くて、雰囲気があって、とても素敵であった。
(宋佳は173、朱亞文は諸説あり、180~183。)

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朱亞文のこの日のお召し物は、恐らくダンヒルだと思う。
最初の自己紹介は、「毛糸のパンツをほどくのが好きな李五を演じた朱亞文です」。
これ、映画を観た人なら、分かりますよね。



以下、Q&Aの中で、記憶に残った話を抜粋して、残しておく。

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質問
作品の時代背景は、80年代から90年代初頭ですが、なぜその時代を選んだのですか?

劉浩監督
私は1969年生まれなので、若く、色々な経験をしたのがその頃で、興味のある時代なのです。
自分の実体験を描いた作品ではありませんが、会った人や、見て来た人たちを集めています。



質問
場所は、新疆・維吾爾(ウィグル)自治区ですよね?

劉浩監督
撮影した場所はそうですが、物語の舞台というわけではありません。
(ちなみに、物語の舞台は、“褐家山”という炭鉱の街という設定。)



質問
日本には、男女がスレ違う“スレ違い映画”というのが有るのですが、
監督は、『詩人』の二人をなぜスレ違わせ、会わせなかったのですか?

劉浩監督
二人は、映画の中でスレ違ったので、こうして東京で会わせました。

質問
シツコイようですが、なぜスレ違わせのでしょう。

劉浩監督
劇作上の必要性です。
会わせたら、違う話になってしまいます。



質問
夫婦を演じるにあたり、二人で申し合わせた事は有りましたか。

宋佳
朱亞文とは、革命的なドラマで共演して以来、十数年来の友人です。
『詩人』で演じる妻は、夫の影も匂いも残したいという難しい役ですが、
相手が朱亞文だったのでやり易かったです。

朱亞文
中国で、妻以外で一番よく知っている女優が宋佳です。
『詩人』は誠実な映画だと思います。だから、映画の中で嘘は演じられません。
あの時代の感じを再現できるよう努力しました。

(二人の共演ドラマとは、『闖關東』を指しているのだと思う。
私の近くに居た中国人の女の子たちも、過去の出演作の話が出たら、興奮気味に『闖關東』!と言っていた。
私は未見だけれど、『闖關東』で宋佳と朱亞文のファンになった人は、きっと多いのでしょうね。)



質問
宋佳さんは、息子と接するように夫と接する妻を、どのような感情で演じたのですか。

宋佳
女性には元来母性があり、男性は元来息子のようだと言う人もいます。
多くの夫婦は、多かれ少なかれ、母と息子のような関係なのではないでしょうか。
『詩人』の夫婦は、独特な情感で繋がっていて、それが美しいと思いました。

★ フォトセッション

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Q&Aの最後はフォトセッション。

主演二人のツーショットも。

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映画はシリアスだけれど、監督も出演者も朗らかで、終始和やかな雰囲気のQ&Aであった。

★ サイン会

全てが終わり、帰ろうとしたら、建物上階へ向かう階段に列ができている。
係り員に何の列なのか、試しに尋ねたところ、『詩人』を観た人のためのサイン会だと言う。
宋佳も朱亞文も人気者なので、取材等で時間が押していて、サイン会など無いと思い込んでいた。
危うく、知らずにとっとと帰ってしまうところであった。係りの人に尋ねて良かった。

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2階が、サイン会の会場。
沢山の人が並んでおります。
残念だったのは、朱亞文が居なかったこと。
もし朱亞文が居たら、血迷って、抱きつき→係り員に取り押さえられ、
気味の悪い危険人物として朱亞文のトラウマになっていたかも知れないので、
居てくれなくて、むしろ良かったのかも知れない。

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劉浩監督も宋佳も、一人一人丁寧にサインや写真に応じてくれる。
二人とも気さくで、にこやかで、超感じイイ。
劉浩監督が、サイン以外に書いてくれたのは“万事遂意”。
最後に、宋佳は、「謝謝、Thank you、ありがとう」と、ご丁寧に3ヶ国語で謝意を言って下さった。




楽しかった~。
映画『詩人~詩人 The Poet』については、また後日。

若死にした高陽王拓跋濬が現世で改めて未央を娶ったって。

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かねてから交際を公にしていた唐嫣(ティファニー・タン)と羅晉(ルオ・ジン)が、
2018年10月28日の本日午前9時9分(現地時間)、
それぞれ「新娘是我(花嫁は私)」、「新郎是我(新郎は僕)」のコメントと共に、
自身の微博で結婚したことを報告。

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二人は2015年、ドラマ『ダイヤモンドの恋人~克拉戀人』で共演した際、交際の噂が出るも、
それを認めることのないまま他作品でも共演を続け、
2016年、『王女未央-BIOU-~錦繡未央』でようやく恋人関係を公開。
その後は、仲良しぶりがしばしば報じられ、多くの人が結婚は秒読みと見ていたので、
驚きは無いけれど、“ついに”って感じですね。

結婚を発表した9時9分は、“9Jiǔ”と同音の“久Jiǔ”にかけ、
末永い幸せ“長長久久”を願ったものと思われる。




結婚写真も公開されております。

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まるでドラマのワンシーンですね。
甘い雰囲気の唐嫣に合ったロマンティックなお写真。


伝統の婚礼衣装ヴァージョンもございます。

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素敵。
この伝統の婚礼衣装は、これまでにも、吳奇隆(ニッキー・ウー)&劉詩詩(リウ・シーシー)、
黃曉明(ホァン・シャオミン)&楊穎(アンジェラベイビー)、
陳曉(チェン・シャオ)&陳妍希(ミシェル・チェン)といった多くの明星カップルが、
結婚の際にお召し物を依頼した大陸の女性デザイナー郭培(グオ・ペイ)のデザイン。

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特に花嫁のお衣装は、金糸をあしらた豪華な物で、当然かなり手が込んでおり、
完成には4506時間をも要するそう。

ちなみに、「“郭培”って、誰ヨ…?!」って方、(↓)これなら見たことあるかも?

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2015年のMet Galaで、リアーナが着用し有名になったあのドレスのデザイナーです。
郭培については、ドキュメンタリー映画
『メットガラ~ドレスをまとった美術館』(2016年)でも少し触れているので、興味のある方はどうぞ。

あと、こちらは未確認だが、伝統衣装の婚礼写真は、作風が孫郡(スン・ジュン)のように思える。
私も大好きなフォトグラファー孫郡に関しては、こちらを参照。




ほんの2週間ほど前に発表された趙麗穎(チャオ・リーイン)&馮紹峰(ウィリアム・フォン)に続き、
またまたビッグカップルの結婚ですねー。(→趙麗穎&馮紹峰については、こちらから)
何はともあれ、唐嫣サマ、羅晉サマ、末永くお幸せに!

『トレイシー』李駿碩監督+姜皓文Q&A

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第31回東京国際映画祭、アジアの未来部門で上映の香港映画『トレイシー~翠絲 Tracey』を鑑賞。


内容がとても面白そうで、純粋に一作品として興味がある上、
主演俳優で私も大好きな姜皓文(フィリップ・キョン)が来日し、Q&Aをやってくれることが判っていたので、
この作品は真っ先にチケットを押さえた。
東京国際映画祭のおんぼろチケット販売システムのせいもあり、
多くの作品のチケットがなかなかさばけない状況の中、
『トレイシー』はいち早く完売したところを見ると、やはりこの作品に興味ある人は多いのでしょうね。

★ 会場

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会場は、毎度のTOHOシネマズ六本木ヒルズで、使用するのはスクリーン2。
収容350人弱のスクリーン。
私、今年の東京国際映画祭は、ほとんどチケットを取っていないし、
先日観た『詩人』はEXシアターだったので、六本木ヒルズに来たのは久し振り。
ポスターや旗で、例年通り映画祭仕様に飾られている。

★ いきなり姜皓文

実はこの日、私は、朝から強い頭痛に襲われ、体調最悪。
薬をのみ、家で取り敢えず午後まで寝て、それでも体調は期待していたほど改善しなかったのだが、
ナマ姜皓文を拝める機会は、今後もうそうそう無いかも知れないし、気力を奮い立たせ、いざ六本木へ。

TOHOシネマズ六本木ヒルズに到着したのは、上映開始の15分ほど前。
上映開始前におトイレにも寄れる丁度良い時間と思いながら、建物に入ると、
出入り口すぐ脇に人混みができている。

何かと思って覗いたら…

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ギャーッ!姜皓文がファンの皆さまと写真を撮ったり、サインをしたりしている。
一体いつからここに居たの…?!
(充分に光が入る好条件の場所だったのに、焦りと興奮で写真のピントが合わなかったのが残念!)

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私もサインを頂きました。
広東語チンプンカンプンの私は、姜皓文には何語で喋れば良いのか迷い、
取り敢えず英語で、「前からファンです!」、「東京に来てくれて有り難う!」、「会えて感激!」、
「今日これから観る映画に期待していますっ!」等々と言ったハズだが、
興奮していて、もう何がナンだったのか、よく覚えていない。
もっと冷静に感動をお伝えしたかった…。


姜皓文は、美男と言うよりは個性派で、ゴツゴツとした無骨なイメージを抱いていたのだけれど、
実物は、スラリと長身で小顔。手足が長くて細ーい華人らしい体形。
スーツ姿もビシッと洗練して決まり、香港明星ならではのオーラを発しておられた。
元々ファンではあったけれど、まさか実物がこんなにカッコイイとは想像していなかったので、ちょっと驚いた。

★ 映画『トレイシー』Q&A

映画『トレイシー』は、東京国際映画祭がワールドプレミア。
地元・香港でもまだお披露目されていないためか、
会場には、広東語を喋るお客さんがあちらこちらにかなり居た。


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そして、上映終了後は、Q&Aのコーナー。
登壇者は、先程から何度も名前が出てきている主演俳優・姜皓文と、監督の李駿碩(ジュン・リー)。
『トレイシー』は、李駿碩にとっての長編監督作品デビュー作、
1991年生まれ、若干27歳の新鋭。
今年、東京国際映画祭・アジアの未来部門出品作品の中では、最年少の監督さんとのこと。


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以下、Q&Aの中から印象に残った部分を抜粋して残しておく。

質問
いつものハードボイルドな役とは違いましたが、どうでしたか?

姜皓文
初めて脚本を見た時から不安でした。
ボスの古天樂(ルイス・クー)から、次にどんな役をやりたいかと尋ねられ、
ラヴ・ストーリーや刑事モノと言ったのですが、「女をやれ」と言われ、この映画に出ることになりました。
結局、この役は、三十数年の自分の俳優人生の中で、非常に重要な役になりました。



質問
錚々たる俳優さんたちが揃う中、思う存分に演出できましたか?

李駿碩監督
最初から今に至るまで、緊張しっ放しです。
でも、同時にワクワク感もありました。
『トレイシー』の制作は、若いチームなので、エネルギッシュでもありました。



質問
どういう思いでキャスティングをしましたか?

李駿碩監督
役に合った俳優を充てたかった。
姜皓文は、優しく温かな面のある人なので、そこを引き出せば、トレイシー役にピッタリだと感じました。
妻は、歌が歌える、強い人なので、惠英紅は合っています。
夫婦の子供たちも、それぞれキャラクターに合う俳優を選びました。



質問
プロフィールによると、監督は大学でジェンダー論を学ばれたそうですが、
以前からこのテーマに興味があったのですか?

李駿碩監督
2013年、香港で同性婚を求める運動が起きた時、
彼らと交流するようになり、色々と話を聞かせてもらうようにもなりました。
確かに留学先では、性別研究哲学を学びました。
プロデューサーからこの映画の企画を聞かされた時、
元々興味があったテーマなので、やりたいと思いました。



質問
近年は特に若い人の間で、カジュアルなトランスヴェスタイトが増えているし、
性転換手術をし、身体的に女性になったとしても、子供を産むことはできません。
女性の定義とは何だとお考えですか。

姜皓文
女性を演じるにあたり、女性の服装を着ただけの人物にするのはイヤでした。
広東語では、“女性は水でできている”と言います。
涙とか、香水とか、スープとか、そういう色々な水が合わさったのが女性だと。
普段強く生きていても、弱った時に寄り添える人がいたり、喜びを分かち合える、
そんな人が良いと思いました。



質問
主人公は、性転換手術の後も、声が元と変わらないのは、なぜですか。

李駿碩監督
様々な資料を見て、研究をしましたが、性転換手術をしても、体の変化は人それぞれです。
見た目から女性のようになる人もいれば、
女性の恰好で職場に行き、自動車の整備をして、また女性の恰好で帰っていく人もいます。
この映画を撮るにあたり、主人公をどういう設定にしたら良いかと考えて、こうなりました。



質問
主人公と妻の喧嘩のシーンが印象的でした。
あの喧嘩の裏にも、何かストーリーがあるように思いました。

姜皓文
監督が、どんな裏のストーリーを考えたかは知りませんが、
あのシーンを撮った後、知らず知らずの内に、プレッシャーを抱え、自分の中に抑え込んでいた物があり、
それらを噴出させたということに気付きました。
誰もが生活の中で、多かれ少なかれ抑圧を抱えて生きているわけで、
映画の中の夫婦のように、それらを出さず、ずっと溜め込んでいると、大変な事になってしまうでしょう。



今、李駿碩監督のプロフィールを見たら、
確かにケンブリッジ大学に留学しており、そこで國際關係と性別研究哲學というので修士をとっている。
映画作りは、どこでどう学んだのでしょうね。
長編初監督とは思えぬ出来であった。

姜皓文は、気のせいか、目に涙を浮かべているように見えた。
これまで数え切れぬほど多くの映画に出演している姜皓文だけれど、
主演で、しかも、こんな印象的な役を演じたのは初めてだろうから、
この作品に対する想い入れは大きいであろう。
息子ほど年の若い李駿碩監督を立てながらも、時折さり気なく助け舟を出す姜皓文を見て、
気遣いの人だとも感じた。
ボスの古天樂が、姜皓文の出演作に結構な権限を持っていると知ったのも、ちょっと意外だったかも。
古天樂は俳優としての印象が非常に強いけれど、マネージメントでも才覚があるのですね。
姜皓文に『トレイシー』の仕事を受けさせたのは、大正解だと思った。

★ フォトセッション

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Q&Aの後はフォトセッション。

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監督とのツーショットを撮り終え、今度は会場の観客をバックに撮影しようとした時、
後方から、妻の殷寧を呼び寄せた姜皓文。
奥方も、これまでお写真で見ていたより、実物の方がずっと綺麗。
(この画像は、私が撮った物ではなく、香港メディアから拝借。)

奥方もずっと会場内に居たようだ。

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前方ブロックと後方ブロックの間をはしる通路から2列目の席で、夫の晴れ姿を見ていたのですね~。

★ オマケにタイランドのイケメン

全てが終了し、会場の外に出ると、人だかりができていた。
『トレイシー』よりちょっと早く終わった映画の監督か出演者が、サイン会をしているのだと察した。
覗き込んでみたら…

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囲まれてるのは、若い美男子。
周囲の人々が話している内容から、タイ映画
『ブラザー・オブ・ザ・イヤー~น้อง.พี่.ที่รัก Brothe of the Year』の主年俳優、
サニー・スワンメーターノンであったことが判明。
私が撮ったこの画像は、シャッターのタイミングが悪く、良く撮れていないけれど、美男子でしたヨ。

ちなみに、姜皓文も、その後場所を階下に変え、サイン&撮影会を行ったようだが、
私は、体調が悪かったので、撤退いたしました。





香港映画『トレイシー』はあと一回、2018年10月31日(水曜)の上映あり、
姜皓文は帰国してしまったが、李駿碩監督がQ&Aに登壇予定。
チケットはすでにソールドアウトだけれど、当日券が出るだろうし、興味のある方はどうぞ。
仮に、今回の映画祭で観逃しても、日本に買われ易いタイプの作品にも思える(希望的予想)。
日本に入って来る香港映画と言えば、クライムサスペンスに偏っている現状と、
主演の姜皓文の知名度が、スタア級の煌びやかな香港明星と比べると、どうしても劣ってしまうのが、
日本に入って来る/入って来ないのビミョーな分かれ道かも。
個人的には、こういう作品を入れていかないと、日本における香港映画は滅びると感じる。

そんな映画『トレイシー~翠絲 Tracey』の詳細は、また後日。

武俠小説の大家 金庸逝去。

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武俠小説の大家、金庸(きん・よう)が、
2018年10月30日午後5時頃、香港跑馬地の養和醫院にて、肝臓癌のため逝去。享年94歳。


私が物心ついた頃には、すでにビッグネームで、
おかしな話、現存の人物なのか、なたまたすでに故人なのかも分からないほど伝説化していた。
「金庸は清代の作家」と説明されれば、真に受けてしまうような、そんな感じ。
なので、正直なところ、訃報を知っても、当初ピンと来なかった。
金庸先生は、日本にも根強いファンが大勢いるから、そんな事を言ったら、怒られてしまいそうですね。
(“きんよう”で一発漢字変換できる数少ない現代華人作家である。)

金庸小説を一冊も読んだことが無い私が、それでも金庸に一種の親しみを感じるのは、
<射英雄傳>、<神俠侶>、<天龍八部>、<笑傲江湖>、<鹿鼎記>等々
映像化された作品が多いのも一因。
それらは、一度に留まらず、何十年も前から未だ現在進行形で繰り返し映像化され続けている。
日本だと、どんなにベストセラーでも、ここまで何度も何度も繰り返し映像化される小説は無いのでは。
なんでも、<神俠侶>は8回、<射英雄傳>に至っては10回も(!)映像化されているのだとか。
作品に登場する人気キャラを演じるのは、
美男美女俳優にとっての出世街道だったり、名誉にもなっているように見受ける。


例えば『射英雄傳』。

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1983年版で黃蓉を演じ、大ブレイクした香港の翁美玲(バーバラ・ヨン)は、
その後間も無く26歳の若さで亡くなり、話題騒然。


『神俠侶』だと、日本で現在放送中の2014年版では、
親しみ易さがウリでポッチャリ気味の陳妍希(ミシェル・チェン)が、
美女のハズの小龍女を演じるには役不足、“小龍女”ならぬ“小籠包”!とバッシングされたが、
それも注目度が高いゆえであろう。

ちなみに、過去の『神俠侶』だと…

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こちら、1983年版『神俠侶』で楊過&小龍女を演じた
お馴染み劉華(アンディ・ラウ)&陳玉蓮(チャン・ヨクリン)。

比較的最近だと…

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2006年版の黃曉明(ホァン・シャオミン)&劉亦菲(リウ・イーフェイ)コンビは好評。



直接的な映像化以外にも、例えば、<射英雄傳>からインスピレーションを得て撮られた…

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王衛家(ウォン・カーウァイ)監督の『楽園の瑕』(1994年)のような作品もあるし、
中華圏では一般人のみならず、映像作家も金庸の洗礼を受けて成長した人が多いのでしょうね。




そんな訳で、中華圏では、昨晩から、
映像化作品で金庸小説を回顧したり、金庸絡みのエピソードが語られたり、金庸の訃報で持ち切り。
映像化作品が多いため、当然、それらを撮った監督ら制作者も演じた俳優も大勢いて、
それぞれが、微博などを通し、哀悼のコメントを発表している。

2008年度版『射英雄傳』の郭靖役が好評だった胡歌(フー・ゴー)もそんな一人。

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胡歌は、2006年、『射英雄傳』の撮影中に、死者を出すほど大きな交通事故に遭い、顔を激しく損傷。
そのせいで撮影はストップし、制作者側は、資金が途絶えることと、版権の満期が迫る危機に陥るのだが、
事情を知った金庸は、諸権利の延期要求を快諾。
胡歌に対しては…

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「渡过大难,将有大成,继续努力,终成大器
(大きな難を乗り越えれば大成し、努力を続ければ遂には大器と成す)」という直筆のメッセージを送り、
励ましたという。
そんな事もあり、胡歌は、『射英雄傳』にも、原作者・金庸にも、深いは思い入れが有るのでしょう。
「人生の困難な時期に、先生の励ましと支持が無かったら、自分も唐人も今日までやって来られなかった。
先生の義侠心は小説の中にとどまらず、先生の生命にまで宿っていた。」と哀悼をメッセージを出している。




私自身は、全然武俠マニアではないけれど、
それでも、金庸ほど文学、芸能の世界に強い影響を及ぼし、一時代を築いた作家となると、
ただただ感服するのみ。
金庸小説の日本語訳版が、文庫化されるとかいう話は、その後どうなったのでしょう?
もしかして、もう文庫本になっているの?
もし、まだなら、この機会に、文庫化が進めば良いですよね。

最後に改めて、金庸先生、安らかに…。

北京2017:天津百餃園

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なかなか終わりが見えません、2017年北京旅行の備忘録…。

今回はお食事処を一つ。
種類豊富な水餃子で有名な天津発のお店、天津百饺园(天津百餃園)へ。
店名は“百餃”だが、実際には、なんと229種類もの水餃子があり、
あのギネスに“the most varieties of dumplings(餃子の種類世界一)”として登録されたらしい。
ポジティヴな意味で“看板に偽りあり”のお店。

その天津百餃園は、北京にも2店舗あり、近年私は北京滞在中必ず一度は行っているので、
この度の滞在でも、母を連れて行ってきた。

★ アクセス

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私が行くのは、2軒の内、いつも西单(西単)店の方。
日本では、“北京の渋谷”などと称されることもある西単。
それは、大通り・西长安街(西長安街)をはさみ北側の商業施設が集中するエリアをイメージした言葉であろう。

天津百餃園があるのは、その反対側、南のエリア。

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最寄りの駅は地下鉄1号線/4号線・西单(西単)駅。
お店に一番近い出口は、4号線のJ1出口。
1号線を利用した場合は、E出口から地上に出れば良い。
(E出口から出た場合は、地上で道路を横断することになる。)

地上に出たら、南北にはしる大通り・宣武门内大街(宣武門内大街)を南下し、
新文化街という通りで右折し、直進していると、間も無く、左手に…

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天津百餃園の建物が見えてくる。

★ オーダー

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早い時間だったので、先客はまだ少なく、窓際の広々した席に案内された。



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一年ぶりの来店で変わっていたのは、食器。
以前は普通に卓上に置かれていた食器類が、ビニールでパックされている。
衛生的であることのアピールか?
別に元々不衛生な印象など無かったけれど。
一年経っても変わっていなかったのは、卓上で微笑む黃曉明(ホァン・シャオミン)。これ、楊枝入れです。
黃曉明サマは、現在日本では、チャンネル銀河で、
素敵な蕭平章から楊枝入れまで、幅広くご活躍。



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メニューは、写真付きで、外国人にもイメージし易い。
価格は、一般的な他の水餃子店と同じように、“两(両 liăng=50グラム)”単位で記されている。
もっとも、正確に重さを計っているわけではなく、このお店では、どの餃子でも1両=5個という設定。

沢山あって迷うけれど、母はこのお店が初めてだし、
私のお気に入りを中心に適当に選び、それぞれ1両ずつ注文。

補足しておくと、北京の水餃子屋さんの多くは、通常、最低2両からのオーダー。
実は、天津百餃園もそうで、私がそれぞれ一両ずつ注文したら、
ウェイターの男の子から「2両からです」と言われたのだか、
「でも、いつも一両で受けてくれている」と言ったら(←これは嘘ではない、本当に毎回1両でオーダー)、
「あぁそうですか」とアッサリ一両ずつのオーダーを通してくれた。
ガチガチにマニュアル通りのサービスで“おもてなし”とか言っている日本より、
臨機応変に対応してくれる中国の方が良いと思うことが度々ある。

★ 食前準備

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オーダーを終えたら、食べるための準備を。
店内中央には、水餃子の付けダレが置かれた台があるので、各自セルフで調達。



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付けダレは色々。
中国北方の定番は、ニンニクを黒酢に漬けた腊八蒜(臘八蒜)。
私は、ニンニクがあまり得意ではないので、無難に陈醋(黒酢)と辣板油(辣油)。
“生柚”というタレも試せば良かったと、後になって後悔。



試したかったと言えば、蕎麦湯ならぬ“饺子汤(餃子湯)”も。
このお店では、お水(白湯)もセルフサービスで、付けダレの台の近くに、給湯器(?)が置かれている。

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いつもは、ここに同じ給湯器が2台置かれている。
一つは白湯用で、もう一つが餃子湯。
でも、この日は、行った時間が早かったので、まだ充分餃子の茹で汁が出来ていなかったのであろう。

私は、茹で汁を飲むなんて考えたこともなく、これまで餃子湯には無関心だったのだけれど、
よくよく考えたら、餃子湯は、色んな食材からダシが出た美味しいスープなのではないかと思えてきて、
今回初挑戦する気でいた。
なのに、なのに、無くて残念…!
仕方が無い。餃子湯は、次回のお楽しみにとっておきます。



以下、食べた物を一品ずつ。

★ 金桔檸檬

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普段は食事中、水かお茶しか飲まないけれど、母がジュースを飲みたいと言うので、私も珍しくオーダー。
頼んだのは“金桔柠檬(金桔檸檬)”
台湾など南方で飲まれている印象が強い金柑とレモンのジュース。
お砂糖入りかと尋ねたら、有糖無糖どちらでも作れるというので、無糖で注文。
一杯16元也。

爽やかで良いお味。
うーん、でも、生温くて、期待していたスッキリ感がイマイチ。
この日は暑かったから、キリッと冷えていたら、もっと美味しく感じられたハズ。
もしくは、冬ならいっそホットとか。

ちなみに、私は、普段、飲み物はほとんど常温か熱い物しか飲まない。
そんな私が、この金桔檸檬を半端に生温いと感じたので、
普段、夏場にキンキンに冷えた物ばかり飲んでいる人は、これ、駄目だと思う。

★ 蝦仁芹菜

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いよいよメインの水餃子。
ひと品目は、お気に入りの“虾仁芹菜(蝦仁芹菜)”で、1両9.8元也。

エビとセロリを組み合わせたサッパリ系水餃子。
台湾だと、似た感じで、エビにヘチマを合わせた小籠包が有り、今や定番になっている。
定番になるくらいだから、多くの人が好きなのだろうけれど、
ヘチマにクセが無さ過ぎて、私にはまったく物足りない。
その点、セロリには、特有の香りがあるから、サッパリしていてもパンチが効いている。
セロリのシャキッとした食感が良いし、エビとの相性も良し。
当然、セロリ嫌いの人には勧めない。

★ 猪肉尖椒

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こちらもお気に入りで、“猪肉尖椒”。1両8.8元也。

豚肉に青唐辛子を混ぜた餡。
刻まれた青唐辛子は、シャキッとした食感が残っている。
結構な量が入っているけれど、耐えられない辛さではなく、ピリ辛程度。
日本の万願寺唐辛子に近い感じかも。
豚肉の脂と青唐辛子のピリ辛が絶妙に調和。

ちなみに、大抵の餃子は、ベースになるお肉を、豚、牛、羊などからセレクトできる。
例えば、私がオーダーしたこの水餃子は豚肉だけれど、牛肉を使った“牛肉尖椒”なんていうのも有る。

★ 津味素

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最後の水餃子は、天津特有の津味素
天津百餃園は天津のお店なのに、一度も食べたことが無かったので、頼んでみた。
1両6.8元也。

“素餃”と言うからには、お肉を使わないベジタリアン餃子なのであろう。
餡には色んな物が入っている。
確認できた物は、もやし、干豆腐、香菜など。
お肉らしき物も入っているが、これは恐らくグルテンだと思う。

味付けは、お味噌っぽく、やや濃厚で、日本人には馴染みの無い、なんとも説明し難い味。
私は、そもそも香菜がまったく駄目なので、これは気に入らなかった。
一度経験したので、次回は頼まない。

★ デザート

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天津百餃園は、ある時から、デザートのラインナップが増え、
テーブルにもデザートメニューを貼って、プッシュするようになった。
香港風のデザートが多いように見受ける。

これまで天津百餃園ではお食事だけして、デザートは別の場所と決めていたのだけれど、
香港の甘味は私も好きだし、今回は母も居たので、試しに二種だけオーダーしてみた。


母のオーダーは(↓)こちら。

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“红豆糯米(紅豆糯米)”で、25元也。
牛乳に浸った小豆と黒もち米で、甘さは無く、見たまんま牛乳と小豆と黒もち米の味。
注文する前に、母に多分そういう物だと教えたのに、どうしてもそれが良いというからオーダー。
結果、期待していた甘いデザートとは掛け離れており、母は後悔。
しかも、これ、もち米だから、とてもとても食後に食べられるボリュームではない。


私が選んだのは、(↓)こちらを。

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“冰皮麻薯(冰皮麻糬)”
注文は一個から。2人分2個をオーダー。1ツ6.5元也。

“麻薯/麻糬”はお餅のこと。
“冰皮”は、90年代頃から急速に人気になった香港発の餅皮月餅“冰皮月餅”の“冰皮”でしょう。
つまり、日本人がイメージする“お餅”より、柔らかでしっとりした餅生地のお菓子。
中に包まれているのは、ひんやりしたマンゴー餡。
餡子と言うより、アイスクリームに近い感じで、これ、そう、まるで“マンゴー餡入り雪見大福”!

運ばれてきた現物を見た瞬間に、私好みのお菓子じゃないとピンと来た。
食べたら案の定まったく好みに合わなかった。
機械で大量生産されたコンビニ菓子の味。
当然、店内で手作りしているわけなどなく、お菓子メーカーから卸しているものと思われる。





今回、母が同伴だったため、いつもとは違う注文をしてみて、学びました。
天津百餃園は、あくまでも水餃子が得意なお店で、デザートには期待してはいけない、と。
次回からは、これまでやってきたように、
天津百餃園で水餃子を食べた後、デザートは他のお店へ移動して楽しむことにいたします。
時間等の都合で、どうしてもここで食後のデザートを、という場合は、
無難に“椰汁西米露(タピオカのココナッツミルク)”でも頼んでおけば、外さないと思う。

デザートはイマイチでも、水餃子はやはり美味。
ムチッと弾力のある皮だけでも美味しいし、中の餡の種類がやたら豊富で、迷うけれど、選ぶ楽しみも。
日本には、餡にこれだけ選択肢がある水餃子店は無いから、北京で堪能。




◆◇◆ 天津百饺园 Tianjin Hundred Dumplings Park ◆◇◆
北京市 西城 区 新文化街甲 12号

LINCH 10:30~14:30/DINNER 14:30~21:30

地下鉄1号線/4号線・西单(西単)駅、J1出口から徒歩8分程度

北京にはもう一軒、地下鉄5号線・刘家窑(劉家窯)駅近くに方庄(方莊)店という支店あり

映画『詩人』

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【2018年/中国/123min.】
80年代、中国辺境の炭鉱の街・褐家山。
陳は、夜学に通いながら、不向きな肉体労働に従事する鉱山労働者・李五を支える、彼の妻。
陳自身、上司の洪から、進学の推薦話を持ち掛けられるが、
李五が試験に受かれば、肉体労働から離れられる、詩人の夢に近付けるという思いで、
自分の事は二の次に、李五を世話する道を選択。
その甲斐もあって、李五の詩が<詩刊>に掲載。
この事は、職場でも瞬く間に知られるようになり、
“詩人”李五は、宣伝課の劉課長の引き立てで、鉱山労働から宣伝課に転属。
著名な詩人・張目の来訪時には、同行を任されることになる。

一方、陳は、妹分の李莉を通し、張義という青年と知り合う。
李五の詩をもっと広く知ってもらいたいという思いから、
張義に口利きしてもらい、彼の知人・沈燕賓が営む印刷店で機材を使わせてもらうことに。
こうして陳は、李五には内緒で、毎晩、工場の仕事が終わると、印刷店へ足を運び、
李五の詩をコツコツとガリ版刷り。
ある晩、いつものように、印刷の作業を終え、自宅の前まで張義に送ってもらった陳。
彼女は知らなかった、家の中から、その様子を李五が見ていたことを…。



第31回東京国際映画祭、コンペティション部門に出品された中国映画を鑑賞。
上映終了後には、監督、プロデューサー、出演者によるQ&Aを実施。

原題は『詩人~The Poet』。
メガホンをとったのは、劉浩(リウ・ハオ)監督。

1968年生まれで、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督、婁(ロウ・イエ)監督、
王小帥(ワン・シャオシュアイ)監督等々とも年齢が近い劉浩監督は、
中国の“第六世代”と呼ばれる映画監督の一人。
…なのだけれども、それら同世代の監督と違い、日本に入って来ている作品が、もしかして今まで皆無?

この新作は、2005年、釜山国際映画祭のPPP釜山プロモーション・プラン
(現・APMアジアン・プロモーション・マーケット)に選出されているので、
企画自体が始動したのは、もう十年以上前のようだ。
映画作りって、時間がかかるのですねー。




本作品は、詩作を続ける鉱山労働者の夫・李五と、
夫の夢と才能を信じ、彼を支える妻・陳の長きに渡る独特な関係を綴るラヴ・ストーリー

背景は、1980年代から90年代にかけての中国。
我々日本人が考える中国の80年代と言えば、
改革開放が始まり、色々な事が大きく変わり始めた時代という印象だろうか。
1968年生まれの劉浩監督曰く、80年代は文学復興の時代。
本作品の主人公・李五も、昼は炭鉱で不慣れな肉体労働をし、夜は夜学に通いながら、詩作を続ける、
ある種ロマンティックな男性。

陳は、そんな李五の影も匂いも残したいと言うほどゾッコンで、
また、李五の才能を信じ、彼を詩人として大成させるべく、ひたすら支え続ける献身的な妻。

ところが、その後、偶然なのか、はたまた時代の変化が夫婦関係にも影を落としたのか、
二人は、ちょっとした誤解から別れ、別々の道を歩んでいくことになる。
その90年代というのは、市場経済が一気に加速していった時代。
80年代にはまだ残っていた旧時代の価値観や精神性が、ガラガラと崩れ、
“詩人”さえ過去の遺物と化し、陳を失った李五は、もう詩を綴れなくなっている。
“文学芸術界連合会会長”という肩書きは持っているものの、
詩を書けない李五はもはや詩人ではなく、ただのお役人。
方々に頭を下げるも、イベント開催の金策に苦慮。

李五自身は知らなくても、そんな李五を影で支え続け、お金までポンと出してくれるのは、やはり陳なのだ。
“足長おじさん”ならぬ、“足長元女房”。
夫婦の事は夫婦にしか分からないとよく言うけれど、
この夫婦の絆というか、腐れ縁は、確かに、彼らだけにしか分からない深い物だと感じる。



物語の舞台となるのは、褐家山という鉱山がある架空の街。
鉱山区を舞台に選んだのは、劉浩監督に、国営企業の物語を撮りたいという想いがずっと有ったから。
劉浩監督は、両親の仕事の都合で、
幼少期を、鉱山区を含む、大規模な国有企業が集まる安徽省蕪湖で過ごしたという。
本作品は劉浩監督の実体験を描いた物ではないけれど、
会った人や、見聞きした事を集めたと語っているので、
かつて過ごした鉱山の街の印象を、映画の中で再現したのかも知れない。


撮影が行われたのは、新疆に作ったオープンセット。

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作中登場する小道具の大半は、美術スタッフが集めてきた80~90年代当時のオリジナルで、
時代の質感を再現。
我々観衆は、街中に掲げられたスローガンや看板などから、時代の移り変わりを見て取れる。
ちなみに、90年代、李莉の部屋の壁に貼られている明星ポスターは、
張國榮(レスリー・チャン)や麗君(テレサ・テン)であった。





主人公の夫婦を演じたのは、こちら(↓)

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詩人の李五に朱亞文(チュー・ヤーウェン)、その妻・陳に宋佳(ソン・ジア)

このお二方、東京国際映画祭のために揃って来日してくれました~。

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朱亞文、素敵だったわぁ。

二人は、過去に…

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ドラマ『闖關東~Great Northern Wilderness』、映画『陸垚知馬俐When Larry Met Mary』で共演しており、
気心の知れた親しい仲だという。
(他にも、二人とも、明星大放出映画『建国大業~The Founding of an Army』等にも出演し、
間接的に共演しているので、細かい事を言うと、過去の共演作は2作品だけではない。)

三たびの共演となる本作品で演じているのは、二人にしか分からない強い情で結ばれた夫婦。
生活力イマイチで、大好きな詩作に没頭する李五は、
批判的な表現をすると“体(てい)のいいヒモ”、“知性派のヒモ”である。
でもね、陳は、夫・李五の才能を信じ、見返りを求めず、ひたすら献身的に彼をサポート。
そんな陳の李五に対する愛は、息子に対する母の愛に近い。

この陳は、男性目線の理想の妻であるようにも感じてしまった。
聖母のように寛大な妻や、“体のいいヒモ”亭主を、好きか嫌いかと聞かれたら、
私自身は本来、どちらも別に好きではないのだけれど、
この映画の陳と李五には、不思議と嫌悪感が湧かず、むしろ純粋な愛を感じられた。
演じる宋佳と朱亞文の魅力や、詩的に描かれた美しい作風のお陰だろうか。



脇で気になったのは、陳と同じ工場で働く妹分・李莉。

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演じているのは、張瑤(チャン・ヤオ)

なんで気になったかって、今ちょうど日本で張瑤出演ドラマ『花と将軍~將軍在上』が放送中だから。

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そのドラマで張瑤が演じているのは、
盛一倫(ション・イールン)の母で、馬思純(マー・スーチュン)の姑にあたる趙太妃。
どたばたコメディのお姑さんから、文芸作品の女工まで、演技の幅が広いですね。
同時期に偶然、二人の別人に成り切っている張瑤を見たから、あまりの違いに驚いた。
1980年生まれ、30代も後半の張瑤は、年齢的には、もう時代劇のお姑さんの方がシックリなのだが、
この映画で演じているどこか夢見がちな女工・李莉にも、まったく違和感ナシ。


出演は他にも、有名な詩人・張目に周里京(チョウ・リージン)
李莉の恋人で、実は張目の息子である張義に鄭家彬(ジェン・ジャービン)等々…。


ちなみに…

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Q&Aでの登壇は無かったけれど、張瑤も鄭家彬も来日し、開幕のレッドカーペットには姿を現している。






観た直後より、後になってからの方が、ジワジワ来ている。
平たく言ってしまうと、前述のように、
“体のいいヒモ”と、別れた後まで“足長おじさん”的に人知れず彼を見守り続ける聖母のような妻の
他人には分かり得ない深い愛情の物語でしかないのも知れないが、
全然陳腐ではなく、独特な世界観に引き込まれた。

80年代から90年代にかけての中国社会の変化や、あの時代の精神性を、
市井の夫婦という個人に投影して描いた作品といっても良いかも。
そう言えば、日本での公開を控えている董越(ドン・ユエ)監督の『迫り来る嵐』(2017年)も、
設定が90年代で、国営工場が閉鎖され、社会に蔓延する閉塞感が漂っていた。
あの時代の空気感は、90年代を実体験した中国人にしか絶対に分からないはずで、
『詩人』を観たところで、私はそれを共有することも、汲み取ることも出来ないけれど、
第三者だからこそ、時代の変換期を興味深く傍観できた気もする。



第31回東京国際映画祭での上映終了後に行われた
監督+プロデューサー+出演者によるQ&Aについては、こちらから。

ならは:季節のフルーツ大福3種(+映画とかテレビとか諸々)

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すでに多くの映画ファンが御存知でしょうが、
2018年10月30日、94歳で亡くなった武俠小説の大家・金庸に引き続き(→参照)、
その僅か3日後の11月2日、かの嘉禾鄒(ゴールデン・ハーベスト)の創設者の一人で、
香港映画の黄金時代を築いた大物プロデュサー鄒文懷(レイモンド・チョウ)もお亡くなりに。享年91歳。

鄒文懷が制作、もしくは投資した映画は、6百本以上、
李小龍(ブルース・リー)、成龍(ジャッキー・チェン)という大スタアを世界に送り出した他、
吳宇森(ジョン・ウー)、徐克(ツイ・ハーク)といった映画監督を発掘。
また、香港に留まらず、アメリカと組んで実写版『ミュータント・ニンジャ・タートルズ』のような
世界規模の大ヒットも飛ばした超大物プロデューサー。
私も、鄒文懷関連の作品は、随分観させていただきました。

最後に公の場に姿を現したのは、昨冬、陳自強(ウィリー・チャン)の葬儀の時。
死因は明かされていないけれど、まぁ、普通に考えたら、年齢的なものでしょうか。

バタバタと金庸、そして鄒文懷と居なくなってしまうと、
“ひとつの時代の終焉”を感じて、シミジミしちゃいますね。
香港では今年他にも、
王家衛(ウォン・カーウァイ)監督が『花様年華』(2000年)のヒントにした小説<對倒>等を記した作家、
劉以鬯(ライ・イーチョン)が6月に百歳で、
ノーベル賞物理学者・高錕(チャールズ・カオ)が9月に84歳で亡くなっているので、
古天樂(ルイス・クー)は微博で、
今年多くの大物を失った香港人の喪失感と惜別の想いを“巨人”と題し、綴っている。

私も、鄒文懷サマに、長年楽しませていただいた感謝と共に、哀悼の意を捧げます。
(それにしも、香港は、御長寿が多いですね。)




映画と言えば、岩井俊二監督初の中国語映画『你好、之華~Last Letter』。
間も無く11月9日の公開を控え、岩井俊二監督も、中国各地でプロモーションをしているようですね。

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数日前には、主演女優・周迅(ジョウ・シュン)が歌う映画の主題歌<樣子>のMVも公開。


あぁ、癒しのメロディ…。
周迅が歌を披露するのは4年ぶりとのこと。
岩井俊二監督がピアノ、陳可辛(ピーター・チャン)Pがギターで伴奏。
所々に挿入されている映画のシーンを見る限り、『你好、之華』は私好みの作品という気がする。
観たーい!日本で絶対に公開して欲しい。




ついでに、近々放送の要録画番組を簡単に4本。

2018年11月6日(火曜) 午後8時~
NHK BSプレミアム『世界ふれあい街歩き』

今週は、台湾の対岸、福建省の街・泉州。
かつて“海のシルクロード”の出発点として世界有数の繁栄を誇った港町。
遠くアラビアにまで至った異国との繋がりを偲ばせ、繁栄の面影が漂う古都で、
豊かな文化を受け継ぎながらゆったり暮らす人々を取材。


2018年11月10日(土曜) 午前6時~
NHK BSプレミアム『桃源紀行』

この番組で久し振りに中国の新作。
取り上げているのは、湖南省の通道・侗(トン)族自治区。
実りの秋、棚田では黄金の稲、山では山ブドウや木苺、
小川では“ハナマガリ”という味の良い魚が採れるこの村に暮らす少数民族・侗(トン)族の若い女性が、
自分たちの生活を動画にしてネットで流したところ、
都会から、村の特産物を送ってくれと注文が舞い込むように。
素朴な彼らの暮らしと、村の新ビジネスを紹介するのが、今回の『桃源紀行』。
そう言えば、日本でも、老人たちが山で集めて来た葉っぱを、
都会の料亭に売るビジネスで成功した村が有りましたよねぇ?


2018年11月11日(日曜) 深夜0時
TBS『7つの海を楽しもう!世界さまぁ~リゾート』

今回は、ベトナムのニャチャン。
なんでも、一番安いリゾートホテル探しをするのだとか。
(どうせなら、一番ラグジュアリーなホテルを見てみたいのだが…。まぁ仕方が無い。)


2018年11月11日(日曜) 夜10時~
NHK BS1スペシャル『婚活38度線~脱北女性・南北融和の中で』

南北融和ムードの中、韓国で加熱する韓国人男性と脱北女性との婚活を取材する番組。
昨今の融和の流れで、南北の男女を仲介する結婚相談所では、登録者が2.5倍に急増。
しかし、金正恩体制以降、かつての“健気でつましい北の女性”というイメージは一変。
近くて遠い韓国と北朝鮮。北緯38度線を超えた男女は分かり合えるのか?
…だって。これは面白そう。





お菓子は、ならは(公式サイト)のフルーツ大福ばかりを3種類。
このお店は、普通の和菓子屋さんで、通常の和菓子も勿論取り揃えているが、
季節のフルーツを使った大福を常に数種類店頭に出しているらしい。
私も、以前食べたことがあるのだけれど、今回久し振りに食べたら、
「えっ、こんなに美味しかったでしたっけ?」と軽く感動。
私が、過去の記憶を消してしまっただけなのか、はたまたお店が商品の改良をしたのか、分からない。

★ ピオーネぶどう大福

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大きさは、直径約4センチ。
ピオーネ一粒を白餡と共に餅で包んだ季節の大福。



一つ目は、“ピオーネぶどう大福”
これは以前食べたことがある物。
その時の商品名は、簡単に“ぶどう大福”だったと記憶する。

中には大粒のピオーネが皮ごと丸々一粒。
果肉が引き締まっており、噛むと皮がプチッと破れ、中から果肉がジュワーッ。

お餅は、とろける柔らかさ。
餡の量は少な目で、つまり、葡萄粒の大きさが、大福全体の大きさとほぼ同じ。


以前食べた時も、確か「美味しい」と感じたハズだが、それでも、ここまで美味しかったかしら…??
二度目の今回の方がやけに美味しく感じる。
ピオーネは、味も香りも濃厚で、白餡に合う。

★ シャインマスカット

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大きさは、直径約4センチ。
シャインマスカット一粒を白餡と共に餅で包んだ季節の大福。



こちらは初めて試す葡萄の大福で、“シャインマスカットぶどう大福”
基本的には、先のピオーネぶどう大福と同じ。
違うのは、葡萄の品種だけ。

こちらのシャインマスカットも大粒で、身がキュッと締まっている。
ピオーネよりサッパリ爽やかで、繊細な味わい。
餡もきめ細やかで繊細な白餡だから、シャインマスカットの特徴を殺していない。


これも美味。
それぞれ違った美味しさだから、ピオーネかシャインマスカット、どちらか一つは選べない。
濃厚な味を求めている時はピオーネで、サッパリ爽やかが良い時はシャインマスカット。
ちなみに、どちらも種無しです。

★ いちじく大福

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大きさは、直径約5.5センチ。
無花果一個を白餡と共に餅で包んだ季節の大福。



最後も初めて食べる物で、“いちじく大福”
無花果は大好きな果実の一つなので、これは楽しみ。

無花果がどのような状態で入っているのか知らずにカットしたら、
な、な、なんと、これも生で丸ごと一個ドカンと中に収まっていた。
なので、当然ながら、葡萄の大福より、ひと回り大きい。

無花果はよく熟しており、柔らかで果肉がネットリ。
甘いけれど、無花果特有の爽やかさも。

フレッシュ無花果は、洋菓子だと、カスタードクリームと合わせ、タルトにすることが多いけれど、
白餡との相性も良いですね。



今回食べた3種類は、どれもリピートしたい美味しさで、甲乙つけがたい。
どれか一つをレア感で選ぶなら、いちじく大福か。
葡萄を使った大福は他店にも有るけれど、無花果を使った物は、他で見たことが無いので。

なお、これら3種類は、そろそろ店頭から消えるらしい。
どのフルーツも入荷状況によるから、お店側は具体的な販売期間が分からないみたい。
これから冬に突入すると、みかん大福やいちご大福が定番。
ならはのフルーツ大福は、大抵白餡を使用しているが、苺だけは小豆餡らしい。

間も無く開催!第51回金馬獎ノミニーお写真

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2018年11月17日(土曜)、台北の國父紀念館にて、第51回金馬獎の授賞式開催。
それに先駆け、例年通り、最佳導演(最優秀監督賞)、
最佳男/女主角(最優秀男優/女優賞)ノミニーたちのお写真を公開。

今年は、台湾の著名スタイリスト・劉大強(ローレンス・リウ)と、
香港の制作会社Secret9所属のフォトグラファーCK(陳錦強)の担当で、
台北、上海、北京の3ヶ所で撮影を実施。
(“今年は”と記したが、確か昨年もこのコンビだった気がする。)
残念ながら、『邪不壓正~Hidden Man』でノミネートされている姜文(チアン・ウェン)監督は、
都合がつかず、お写真がございません。



まずは、今年の金馬獎で絶対に外せない(↓)こちら。

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『影~Shadow』の張藝謀(チャン・イーモウ)監督。
張藝謀監督のお写真も、“影”を意識した物になっている。
本作品のノミネート12部門は、今年の金馬獎最多ノミネート数。

今年の金馬で注目なのは…

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『影』から超(ダン・チャオ)&孫儷(スン・リー)夫妻が、
それぞれ主演男優賞、主演女優賞にノミネートされていること。
メオト受賞となるか…?!ならなくても、レッドカーペットを夫婦揃って歩く姿は見られそうですね。
超は、3年前、やはり主演男優賞にノミネートされ、レッドカーペットに現れた時、
サービス精神が旺盛で、ギャラリーの歓声が物凄かった。
超&孫儷夫婦は、揃ってルックスが良いのに、性格も明るく、感じが良くて大好き。

この『影』、韓国版ポスターはすでに出ているので、韓国では近々確実に公開されるのだろうけれど、
じゃぁ、日本は…?
ただでさえ張藝謀監督作品で、しかもこれだけの話題作なら、日本でも公開されると信じて良いですよね…?



張藝謀以外の最優秀監督賞ノミニーをチェック。
前述のように、『邪不壓正』の姜文監督は、お写真ナシ。

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左から、『弾き殺された羊~撞死了一隻羊』の萬瑪才旦(ペマツェテン)監督、
『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮)~地球最後的夜晚』の畢贛(ビー・ガン)監督、
そして、『風中有朵雨做的雲~A Rain Cloud in the Sky』の婁(ロウ・イエ)監督。

内、『弾き殺された羊』と『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』は、
嬉しい事に、間も無く開催の第19回東京フィルメックスで上映される。
…が、すンごく観たい『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』は、
開催中たった一回、レイトショウのみの上映なので、泣く泣く諦めた…。
でも、大丈夫。この作品は、すでに日本で配給が付いております。
正式公開の際には、原題の『地球最後的夜晚』を活かした、もっと雰囲気のある邦題をつけて頂きたい。

婁監督作品は、比較的日本で公開され易いので、この『風中有朵雨做的雲』の上陸にも期待。
婁監督では、他に、日中合作の『蘭心大劇院~Saturday Fiction』の公開も待たれる。
そちらには、鞏俐(コン・リー)やオダギリジョーが出演。(→参照



多くの映画ファンはお気付きだろうが、ここまで見てきて、台湾人は一人もノミネートされていない。
かつては、国際映画祭の舞台にも立てていたのに、
近年、台湾映画界の衰退っぷりは、本当に深刻だと感じる。
(台湾映画界終わりの始まりは、『海角七号』の現地大ヒットだと思えてならない…。
あれ以降、台湾映画の内向き傾向と安っぽさが加速。)
そんな斜陽台湾映画界が、今年、一縷の望みをかけている作品がある。

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人気脚本家の徐譽庭(シュー・ユーティン)が、
新人の許智彥(シュー・ジーイエン)と共同監督した『誰先愛上他的~Dear Ex』。
ノミネート数は8部門で、『影』の12部門に次ぐ多さ。
邱澤(ロイ・チウ)と謝盈萱(シエ・インシュエン)も、それぞれ最優秀主演男優賞/女優賞のノミニーに。
邱澤は、この映画で認められれば、偶像劇から脱却し、実力派に転身できるビッグチャンス。
謝盈萱は、舞台中心の活動が長かったので、
台湾云々という以前に、映像世界のこの手の賞とはあまり縁が無かった女優さん。
この映画で、一気に知名度が上がり、活躍の場も広がりそうですね。



まだ挙がっていないノミニーたちを、最後にまとめて。
まずは最優秀主演女優賞のノミニー。

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左から、『三人の夫~三夫』の曾美慧孜(クロエ・マーヤン)、
『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト~江湖兒女』の趙濤(チャオ・タオ)、
そして、『你好、之華~Last Letter』の周迅(ジョウ・シュン)。

『三人の夫』は、つい先日閉幕した第31回東京国際映画祭で上映され、
曾美慧孜も、陳果(フルーツ・チャン)監督と共に来日。
私は、これ、観られなかったのだけれど、ご覧になった皆さま、どうでしたか?

賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督最新作『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト』は、
今年のフィルメックスのクロージング作品。
観に行けない方、大丈夫です。すでに配給が付いますから。
但し、これにも『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト~地球最後的夜晚』と同じリクエスト。
正式公開の際には、原題『江湖兒女』を活かした、もう少し趣きのある良い邦題をぷりーず。

周迅は今年の金馬・最優秀主演女優賞ノミニーの中で、一番の大物と言えるであろう。
『你好、之華』は、岩井俊二監督初の中国語作品なので、日本での公開に期待。



最優秀主演男優賞の残りのノミニーも。

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左から、『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』の徐崢(シュー・ジェン)、
『象は静かに座っている~大象席地而坐』の彭暢(ポン・ユーチャン)、
そして、『迫り来る嵐~暴雪將至』の段奕宏(ドアン・イーホン)。

『ニセ薬じゃない!』は、今年の東京・中国映画週間のクロージング作品で、
徐崢もセレモニー出席のため来日してくれた。(→参照
コミカルで胡散臭さムンムンから、徐々にシリアスに変わっていく徐崢の演技には、確かに見入った。
作品についての詳細は、また後日。

胡波(フー・ボー)監督の遺作にして話題作『象は静かに座っている』も、間も無くフィルメックスで上映。
今年のフィルメックスのラインナップは、なんか、本当に凄くなぁーい…??!
さらに、驚きなのは、その『象は静かに座っている』の主演男優が彭暢だという事。
彭暢は、日本の映画ファンの多くには、まだ馴染みの無い名前であろう。
中華ドラマニアの皆さんなら、分かりますよね?
最近では、出演した映画『閃光少女』(2017年)が小規模ながら、日本で公開されてるけれど、
あの彭暢が、まさか『象は静かに座っている』のような作品で主演を張るとは意外。
実は守備範囲の広い、実力派だったようだ。

段奕宏は、すでに一年前の東京国際映画祭にて、この『迫り来る嵐』で主演男優賞を受賞。
段奕宏の演技は本当に素晴らしいし、映画自体も秀作。
日本でも、2019年1月5日(土曜)に正式公開が迫っております。



どの部門のノミニーも、甲乙つけ難い顔ぶれ。
約十日後に迫った結果発表が気になる。


ついでなので、日本の映画祭についてもちょっと。
本日11月6日(火曜)の朝日新聞、文化・文芸欄では、先日閉幕した東京国際映画祭を取り上げている。
今年審査委員長を務めたブリランテ・メンドーサ監督の苦言などを例に挙げ、
同映画祭の在り方、課題を記した記事で、東京国際映画祭を知る日本の映画ファンなら、納得の内容。
(開催時期や、国際映画祭レベルとは言い難い娯楽作品をコンペに選出してしまう方針等々。)
そして、記事は、東京国際映画祭のオフィシャルパートナーである木下グループが、
今年から東京フィルメックスの特別協賛に入った事にも言及。
最後に記者は
「わずか1ヶ月の間に東京で大規模な国際映画祭を二つも開くことの非効率はずっと指摘されてきた。
木下グループが両方を支援することになった今、
東京の国際映画祭を一つにまとめる絶好の機会ではないだろうか」とまとめている。
ちょっと、ちょっと、それだけは勘弁。
最後のこの言葉にだけは、ゼーッタイに同意できないっ…!
頼むから、フィルメックスは東京国際映画祭と組まず、独立性を保って欲しい。
両映画祭が組んだら、失う物が多いのは、フィルメックスの方という気がしてならない…。

北京2017:馬連道茶城

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終わりが見えません、2017年北京旅行の備忘録…。

今回はお茶屋さんについて。
と言っても、お茶を飲む茶房のことではなく、茶葉の購入について。
中華圏に旅行へ行ったら、お土産にお茶を買う日本人は多いですよね?

北京では、有名な老舗のお茶屋さん等が、至る所に支店を出しているので、
観光の合間にもサッと買えて、便利。
でも、時間に少し余裕があるならば、马连道(馬連道)へ。
馬連道は、何軒ものお茶問屋が集まるお茶屋街で、大陸北方地区では最大のお茶交易市場。
(“大陸全土”となると、恐らく、お茶の産地である雲南や福建など南部に、
馬連道以上の規模の場所があるのではないだろうか。←あくまでも推測)

以前は行くのがやや面倒だったのだが、
2014年に地下鉄7号線・湾子(灣子)駅が開業し、俄然便利になった。
但し、今回は母が一緒だったため、私はタクシーを利用。
具体的なアクセス方法は、一年前に記したこちらをどうぞ。

★ 馬連道茶城

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地下鉄駅から地上に出ると、その名もズバリ“马连道路(馬連道路)”という南北にのびる道が有り、
その両脇にお茶屋さんが軒を連ねているのだが、私は大抵马连道茶城(馬連道茶城)へ直行。
馬連道茶城は、馬連道のランドマーク的存在で、
全国の茶葉は勿論、お茶に関する物なら何でも揃う、いわば“お茶の総合デパート”。
この画像には写っていないけれど、
建物の前には、お茶に関する知識を網羅した書<茶經>を記し、
“茶聖”と呼ばれる唐代の著名な茶学者、かの陸羽(733-804)の像が建っている。




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建物は4フロアから成り、内1~3階までがお茶売り場で、最上階はなぜか撮影機器売り場。
お茶屋さんは、壁で囲まれた比較的しっかりとした店舗を構えている茶商から、
一坪ショップ的な物まで無数。


また、前述のように、茶葉のみならず、お茶に関わるありとあらゆる物が売られている。

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茶壺や茶杯といった茶器なんて当たり前で、他にももっと大掛かりな物が色々有るし、種類も豊富なので、
中国茶樓開店を考えている人は、ここにさえ来れば、取り敢えず必要な物は一式揃うはず。


同伴の母は、日本の茶道はやってはいても、中国茶には詳しくなく、“有れば飲む”って程度の人。
でも、建物内をブラブラしていて、茶器には興味津々で、特に茶宠(茶寵)に心惹かれた様子。

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“茶寵 Chá chǒng”は、英語だと無理矢理“Tea Pet”と訳されることが多いみたい。
中国茶を淹れる台の上に、茶道具と一緒によく置かれているあの飾り物のこと。
素材は、茶壺などと同じように紫砂でできている物が多い。
中国人はお茶を淹れながら、たまにその飾り物にお茶を掛け、“育てている”。
まさに、可愛がっているペットと同じ。
(長期に渡り、お茶を掛け続けることで、紫砂製の物はツヤが出て来る。)
ハッキリ言って、無くてもお茶を飲むには困らないのに、
そんな無用とも思える物を置いておくなんて、茶人の遊び心ですね。


母は、小さなカエルがくっ付いたシリーズの茶寵を大層気に入り、全種類買うと言いだした。
私もカエルのモチーフは大好きで、そのシリーズの茶寵も気に入ったのだけれど、
「全部はやめておけ」と、数種類に絞らせた。
(母はいつも見た物を何も考えずに片っ端から全部買ってしまうが、
それらを持って帰るという力仕事は、私の役目になってしまうので…。)
で、(↓)こちらが購入した物。

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どれでも一個60元也。
どうせ小さくて軽いのだから、今回ばかりは母の言う通りに全種類買っておけば良かったかも…、
と後になってちょっと後悔。
(特にそら豆…!なんでそら豆を買わなかったのヨ、私…?!)


その後、店内をさらにブラブラしていたら、あるお茶屋さんの店頭で、似た茶寵を発見。
西瓜の上にカエルが乗ったデザインで、購入した物より大きい。

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試しに値段を聞いたら、40元だと言う。
大きい上に安かったから、こちらも購入。
でもね、帰国後、先に買った物と後で買った物を比べてみたら…

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先に買った小さくて高い方が、明らかに作りが精巧であった。
後で買った方のカエルは、ユルユルのゆるキャラ系。
(画像は、左が先に買った物で、右が後で買った物。)

★ お茶購入

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茶寵購入のついでに、そのお店で茶葉も購入することにした。
馬連道茶城の3階、南区13号に出店する欣茶缘(欣茶緣という福建の茶商。
前年に買って気に入った“小青柑”を売っていたのも、このお店を選んだ一因。

“小青柑 Xiǎoqīnggān”というのは、直径3センチ程の小さな柑橘系のフルーツ。
日本語でも英語でも、何て言うのか、誰に聞いても分からない。
この時も、お店の男性がネットで調べてくれたが、
結果は“カラフト柑”という私は聞いたことの無い物であった。
もしかして、まったく同じ物は日本に無いのかも知れないが、
私は、カボスやライムに近い物なのではないかと想像している。
その小青柑の中に、普洱茶(プーアール茶)を詰めたのが、お目当ての商品。

欣茶縁では、2種類の小青柑を販売。
安いのは一斤350元、高いのは一斤600元。
中に詰められているのは、雲南産の普洱茶。
あっ、ちなみに、こういう形状のお茶でも、他の茶葉と同じように、価格は一斤(500g)単位で記されている。
(確かに、不定形で、一個一個大きさも重さも違うから、価格が違ってきて当然。)


もちろん試飲もさせてもらえます。

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高いのと安いのでは、もうね、香りが全然違うの。
高い方は香りが非常にフレッシュで、普洱茶のお味も濃厚なのにまろやか。


そんな訳で、迷うことなく、高い方を購入。

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他の茶葉も買ったが、写真を撮り忘れた。
ホテルに戻って、袋の中を見たら、オマケに菊茶も入っていた。


母は母で…

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知らぬ間にどこかで花茶を買っていた。
お茶自体はどうでもよく、巾着袋に入った陶器の壺が欲しかったみたい。




馬連道は、中国茶好きな人には楽しい場所。
日本人が買いたがるようなお茶は、大抵ここで買えるはず。

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日本での放送がもう直最終回を迎えるドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』にしばしば登場する
大紅袍や茯茶も、勿論有り。…しかも選択肢豊富に。
(→『月に咲く花の如く』で、アクシデントから生まれたお茶“金花茯茶”については、こちらを。)

一国の首都で、この規模のお茶屋街を、私は他に知らない。
北京で、時間に多少余裕が有るのなら、中心部でお茶を買わずに、
馬連道まで足をのばしてみても良いかも知れません。



◆◇◆ 北京马连道茶城 Maliandao Tea City ◆◇◆
北京市 宣武区 马连道路 11号 

 地下鉄7号線・湾子(灣子)駅
D出口から出て、馬連道路を南下 徒歩15分程度

映画『トレイシー』

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【2018年/香港/119min.】
佟大雄は、眼鏡店・大光明を経営する51歳の男性。
長女・碧兒は結婚して家を出、今は妻・安宜、留学を控えた息子・立賢との3人暮らし。
平凡でも幸せに見える大雄だが、長年、誰にも打ち明けられない秘密を抱えている。
毎朝、眼鏡店に出勤すると、誰も居ない上階へ行き、女性物の下着を付けるのが日課になっているのだ。
そんなある日、大雄は、見知らぬ青年からの一本の電話を受け、ショックを受ける。
学生時代の大親友で、戦場カメラマンになった高正が、シリアで命を落としたという報告であった。
大雄は、早速、もう一人の大親友・池俊と、空港へ行き、
高正の遺骨を持って香港へやって来た青年・邦を出迎える。
初対面の邦が、自分を“高正の夫”と自己紹介したことに、驚きを隠せない池俊。
高正と邦は、ロンドンで正式に結婚したものの、香港ではそれが証明できないため、
税関で差別を受けた上、高正の遺骨を収めた大切な骨壺を取り上げられてしまったという。
「高正を二度亡くしたようなもの」と、怒りと悲しみで涙ぐむ邦。
大雄は、弁護士である娘婿ジェフリーに相談し、
遺骨を取り戻す準備を進めるべく、しばしば邦とも会うようになり…。



第31回東京国際映画祭、アジアの未来部門に出品された香港映画を鑑賞。

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上映終了後には、監督&主演俳優のQ&Aを実施。(→参照


原題は『翠絲~Tracey』。
メガホンをとったのは、これが長編監督デビュー作となる李駿碩(ジュン・リー)
1991年生まれ、27歳の李駿碩は、本年度の東京国際映画祭アジアの未来部門最年少の若い監督さん。
一方、プロデューサー兼脚本は、ベテランの舒(シュウ・ケイ)




本作品は、トランスジェンダーであることを封印し、長年妻子と共に生活してきた中年男性・大雄が、
学生時代の親友であり、初恋の人でもある高正の死を機に、
葛藤しながらも、ありのままの自分になっていく姿を描く人間ドラマ

主人公・大雄には、経営している眼鏡店があり、妻子がいて、長女は結婚して妊娠中で、
つまりは間も無くおじいさんになる五十男。
これまでの50年と同じように、残りの人生数十年も、
たとえ心にモヤモヤを抱えていても、惰性で生きていくことは可能だっただろうし、
本人もそうするつもりだったのであろう。

ところが、自分が同性愛者であることを、何の躊躇いもなく口にし、
ありのままに生きている邦という青年と出逢ったことで、
自分自身も周囲の人々も欺き続け、それを当たり前として諦めていた生き方が揺らぎ始め、
殻を破る物語である。




主な出演は…

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トランスジェンダーである事を隠しながら生きている
51歳の眼鏡店経営者・佟大雄に姜皓文(フィリップ・キョン)
大雄と長年連れ添う妻・安宜に惠英紅(カラ・ワイ)
亡くなった高正の夫で作家の邦に黃河(リバー・ホアン/コウ・ガ)
大雄が昔働いていた店で世話になったダーリン哥に袁富華(ベン・ユエン)等々。


私が、新人監督・李駿碩の作品を、何がナンでも観たい!と思った一番の要因は、
あの姜皓文がトランスジェンダーを演じているという意外性。
これも偏見だと思うが、トランスジェンダーを演じる男優は、線が細く綺麗な人が選ばれがち。
(もしくは、敢えてゴツイ男優に女性の扮装をさせ、笑いをとるというパターン。)
そういう意味では、これまで数多くの香港映画で、ヤクザ者を中心に強面の男を演じてきた姜皓文に、
トランスジェンダーを演じさせるのは、意表を突いたキャスティング。
でも、意外でありながら、絶対に役にハマる!と予感させるキャスティングでもあった。

実際に作品を観たら、予感は当たっていた。
ギョロっとムキ出した大きな目が特徴的で、
映画の中では、いつもギラギラに暑苦しいまでの存在感と気迫に満ちた姜皓文だけれど、
素では、優しさや奥ゆかしさが滲み出ており、この『トレイシー』では、そこが巧く引き出されている。
もう人生後半戦に突入している大きな体の中年・大雄の遣る瀬無い思い、葛藤、悲哀は、見ていて胸を打つ。


出演本数こそ多くても、長年脇役で、賞とも無縁だった姜皓文が、
『ショック・ウェイブ 爆弾処理班』(2017年)での演技が認められ…

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今春、第37回香港電影金像獎で助演男優賞を獲得した時は(→参照
私まで本当に嬉しくなっちゃったのだが、
本作品の大雄役は、あれ以上のインパクト。
姜皓文のキャリアの中で、絶対に代表作になると確信させられる演技であった。


少々気になったのは、役名。
若い頃からずっと男性であることに違和感を抱き続けてきた主人公の名前が、
皮肉にも、“大きなオス・大雄”なんて雄々しい名前…。
さらに言うと…

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『ドラえもん』に登場する野比のび太の中国語名がまさに“大雄”。
中華圏の人の多くは、“大雄”と聞いたら、真っ先に野比のび太を思い浮かべるのでは。
『ドラえもん』の野比のび太も、『トレイシー』の大雄も、温厚で優しい反面、臆病な所があるのは共通点。


で、『トレイシー』の大雄が、性転換手術で、身体的にも女性になった後、自分で新たに付けた名前が、
映画のタイトルでもある“翠絲(トレイシー)”。
これは、大雄の母親の名前を拝借。
最後に、その母が、名前の由来を息子・大雄に語る。
曰く、母の父親には二人の妻がいて、一人は“翠婷”、一人は“風絲”だったので、
一字ずつ取って、娘に“翠絲”と名付けたのだと。
昔にしてはモダンな洋風の名前かと思いきや、実のところ、封建時代だからこその名前だったのだ。
自分の殻を打ち破り、堂々と女性として生き始めた大雄なのに、
新たな名前が、封建時代の象徴のような名前だった、…というオチにしたのには
李駿碩監督や脚本の舒に何か意図があったのでしょうか…??
そこんとこ、私、かなり気になっているのですが…。


妻・安宜役の惠英紅と、ダーリン哥役の袁富華は、
もう直発表の第51回金馬獎で、それぞれ助演女優賞、助演男優賞にノミネート。
どちらも、ノミネートされるに相応しい素晴らしい演技。

妻の安宜は、物語前半は、
どうでもいい事で大騒ぎする面倒なおばちゃんという印象なのだが(←それが面白かったりもする)、
中盤以降、感情移入し易い役でもあった。
仮にトランスジェンダーに対し差別意識が無い女性だったとしても、
夫からそれを知らされずに、何十年も結婚生活を続け、ある時突然真実を告げられても、
それを上手く受け止められず、怒りや哀しみが爆発するのは、自然と感じる。

安宜は、粤劇(広東オペラ)好きな主婦という設定なので…

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この作品では、戲曲の衣装を身に着け、歌い舞う惠英紅のお姿も見られる。


称賛されて当然のベテランと違い、驚きがあり、本作品で新境地を開いたと思えたのは、邦役の黃河。
メインキャストの中で唯一の台湾人俳優で、台詞も彼一人だけ北京語である。
香港ではほぼ無名の黃河が起用されたのは、
彼を発掘した映画監督で、事務所のボスでもある易智言(イー・ツーイエン)の推薦みたいですね。
易智言監督は、2年前に同性愛者であることを公にしているし、
『トレイシー』の企画にも早くから関わっていたのだろうか。
易智言監督は、映画のエンディングで、“Special Thanks”の所にクレジットされていた。

黃河が日本で初めてお目見えしたのは、恐らく台湾観光ドラマ『君につづく道~這裡發現愛』
そのドラマに黃河は、主人公・周渝民(ヴィック・チョウ)の少年時代でチラリと出演。
目鼻立ちがハッキリした正統派アイドル顔の周渝民の少年時代にしては、薄ーい顔でガッカリな黃河であった。
実力派としてなら芽が出るかも知れない人材を、アイドルとして売っちゃって失敗した、という印象。
近年も、日台合作映画『南風(なんぷう)』(2014年)で演じた役が、
モテモテのイケメン設定だった事に、違和感が…。

そうしたら、この『トレイシー』。本作品で初めて素直に「あら、いいじゃない、黃河」と思えた。
芸術家肌で、性を超越した雰囲気の邦という青年は、黃河の個性が活かされた役。

その邦で、一つ引っ掛かってしまったのは、
亡きパートナー高正が同性愛者であったことを、高正の旧友にアッサリ喋ってしまった点。
生前の高正は、その事実を親友に打ち明けなかったのに、邦が勝手に言っちゃって良いのだろうか。
勿論LGBTがありのままに生きられるのが良い社会だが、隠したいのなら、隠すのもまた自由なはず。
邦の言動にいちいち文句を付けると、物語が先に進まないので、まぁ良しとしますが。

ちなみに、この黃河は、日本でずっと“ホァン・フー”または“ホァン・ハー”と紹介されていた。
ところが、『南風』のプロモーションで来日した際、今後日本では“コウ・ガ”でいくと自ら宣言。
なのに、この『トレイシー』では、“リバー・ホアン”にされましたね。
華人の名の多くは、漢字に意味が込められているのだから、アルファベットしか持たない西洋人ならともかく、
日本人はムキになって無意味な片仮名で表記する悪習は止めて、漢字で表記するべき。
彼の名は勿論中国大陸を流れる雄大な川・黃河(こうが)を意味している。






LGBTを扱う作品として、特別斬新な物語だとは思わない。
何となく予想していた通りに展開していったので、驚きは無かったけれど、
これまでとは全然違う一面を見せた姜皓文の演技に見入った。
姜皓文が、益々好きになってしまった。

また、主人公・大雄はトランスジェンダーだが、特殊な話ではなく、
何かを我慢したり諦めている誰もに置き換えられ、
自分の殻を打ち破り、新たな一歩を踏み出そう!と背中を押してくれる前向きな映画だとも感じた。

日本に入って来る香港映画が、アクションと犯罪モノに偏り過ぎている現状に、もうウンザリしているので、
ヤクザ者も銃撃戦も出て来ない『トレイシー』が、正式に公開されることを願います。


余談になるが、台湾アイドル炎亞綸(アーロン)の、男性とのキス写真やSNSでのやり取りが流出し、
彼が3人の男性に三股かけていたという疑惑が、ここ数日、台湾を中心に中華圏で話題になっている。
自分の意思ではなく、私生活が明かされたことで、少なからず傷付き、動揺もしているだろうし、
仕事関係や周囲の人々に影響が出るかも知れない。
でも、炎亞綸は、思った事を率直に口に出し、隠し事できないタイプと見受けるので、
これを機に、ありのままでいられるなら、この先、彼は楽になれるのかも知れないとも思った。
悶着は有っても、仮面を外せ、心の平静を手に入れた『トレイシー』の大雄みたいに…。
(相手が男性だろうと女性だろうと、三股はもし本当なら、誠実には感じられないけれど。)




第31回東京国際映画祭での上映終了後に行われた
李駿碩監督と主演俳優・姜皓文によるQ&Aについては、こちらから。

台北2018:ワケあって台北弾丸

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2017年度の北京旅行備忘録も未だ終わっていないというのに、台北です。
ワケあって、弾丸で台北へ飛んできた。



近年、私は、一年に一度のペースでしか海外へ行っていない。
年に一度だと、“日本人女性の平均寿命-現在の年齢”で、
自分が残りの人生で、あと何回海外へ行けるのかが、ザッと分かってしまい、
人生は思っていたより短いという事に気付いてしまった。
だったら、もう本当に行きたい国、本当に好きな場所にしか行かない!と決心。
本当に興味があって行きたい所といったら、断然中国大陸、次いで香港であり、
台湾は私の“海外渡航先リスト”から迷うことなく消去された。
(金城武と結婚する時に、あちらの御両親にご挨拶するため、一度行くことになりそうですが。 …笑)

ところが、遡ること数ヶ月。
父が、初冬台中で開催の某式典に出席することになり、
台湾の人々に「娘を連れて参ります」と言い触れていることが判明。
なんか、いつの間にか、私も行くことになっていたのだ。
父はおとなしい人なので、何も言わないけれど、
きっと未だに私のことが大好きで、一緒に行きたいのでしょう。
勿論お断りすることも出来たのだけれど、これも親孝行だと観念。

それから間も無く、人間ドックで、父に病が発覚。
父はこれまで大病をしたことが無いので、平静を装ってはいるけれど、かなりのショックを受けている様子。
一緒に台湾へ行くと決めたものの、内心憂鬱で「あぁ、行きたくない…」と思い続けてしまったせいで、
父が病気になったのではないかと、私は酷く後悔した。
こうして、私と父の台湾行きはキャンセルに。

その後、幸運にも、父の治療が順調に進んだため、
急に前向きになった父が「これなら海外旅行も問題ない」と言い出し、台湾行き案が復活。
私は、「父のためにも、今度は例え心の中でも“行きたくない”なんて思わない!」と努めたのだが、
そこは人間なので、やはり憂鬱。
せめてもの解決案が、台中で用が済み、父が帰国した後、一人でちょっとだけ台北に残るという旅程。

これを友人Mに話したら、彼女が台北にやって来て、私と合流する事が、とんとん拍子で決定。
仲良しの友達との休暇なら、その場所が、たとえ興味の薄い台湾であっても、楽しいはず!
これで憂鬱だった台湾行きが俄然楽しみになった。

ところが、ところが、まだ続きがあるのです。
順調だった父の治療が頓挫し、お医者さんから旅行不可のお達し。
父は私に「mangoは行きたければ、行ってきなさい」と言い、自分の分の旅行を全てキャンセル。
父不在なのに、父が出席予定の台中の式典に、娘だけ居るって、なんか変…。
しかも、私、別に式典に行きたくないし…。
治療が頓挫したとはいえ、幸い父の体調は最悪の状態ではなかったので、
私は、台中行きの飛行機をキャンセルして、
本来“台湾旅行の終盤戦”だったはずの台北にだけ、友人Mと一緒に行くことになった。




長い説明になりましたが、このような紆余曲折があり、
この度私は弾丸で台北に行ってきたワケでございます。

滞在中、台北の空がカラッと晴れることはほとんど無く、ドンヨリ目ではあったけれど、
降ると言われていた雨が降らなかったのは幸いだったし、
なにより親友との久し振りの旅行は、と~っても楽しかった。
行くまでには色々有っても、結果的に良い休暇であった。
この先、気が向いたら、ボチボチと旅の備忘録綴ります。
(2017年の北京旅行備忘録が終わっていないのが、自分の中で非常に引っ掛かっているのだけれど…。)

大陸ドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』①

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清朝光緒年間の陝西・陽。
養父・周老四と大道芸をしながら気ままに暮らしている周瑩。
その日、仲間たちとつるみ、詐欺紛いの芸で、いつも以上に儲け、
父からたっぷりの小遣いをもらい、賑やかな街を散策していると、
裕福な御曹司の馬車が貧しい青年とぶつかった事故で、野次馬が集まる現場に出くわす。
幸い御曹司は、通りすがりの男性の助け舟で、難を逃れるが、
相手が当たり屋だと知りながらも、責めずに、ただただ困惑する人の好さそうなその彼を見て、
周瑩はピンと閃く。
早速、逃げた当たり屋の妹を装って御曹司に近付き、“兄”の無礼を詫びながら、
「父は死に、母は重病、弟に食わせる食べ物も無い。
おまけに故郷は2年も干ばつで逃げるようにここへやって来た」と悲劇的な身の上をでっち上げ、
二束三文の玉佩を差し出し、この家宝を買い取ってくれと懇願。
御曹司は、玉佩を受け取らずに、周瑩に5両を与えたばかりか、
何か困った事があったら訪ねて来るようにと、自分の名帖を渡し、去って行く。
名帖に書かれていた名は、“吳聘”であった。

収穫を得て、宿に戻った周瑩は、父の周老四が賭場でスッカラカンになった上、
15両もの借金を背負ってしまったため、周瑩を名家に売り飛ばしたことを知らされる。
周瑩にとっては毎度の事で、今さら驚きは無い。
いつものように、数日働いたら逃げ出し、城外で父親と落ち合う約束をして、売られた先の邸宅へ。
今回の職場は、陽で二番目の商家である沈家。
到着するやいなや周瑩は、この家の次男・星移付きの侍女に任命される。
星移は、誰もが手を焼くとんだ放蕩息子だが、周瑩はその上をいく強者。
星移に怖じ気付くこともなく、逃走までの数日を、働きながら淡々と過ごすまで。

一方、陽一の商家、吳家東院には、見ず知らずの男性が、吳聘を訪ねてやって来る。
当たり屋の窮地から救ってくれたあの男性であった。
彼は名を杜明禮といい、都で仕えている貝勒から、陽の隆升和を任されているという。
この杜明禮から、厄介な頼まれ事をされてしまった吳聘は、
角が立たぬよう、武夷の大紅袍を贈り、暗に辞退の意を示すが、
この事で、吳家東院は、杜明禮を敵に回してしまい…。



2018年8月、チャンネル銀河で始まった大陸ドラマ『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』が、
約3ヶ月半後の11月半ば、全74話の放送を終了。
これ、以前、こちらに記したように、
2017年、休暇で北京滞在中に現地で放送開始したのをチラリと観て、興味が湧き、
ちゃんとしっかり鑑賞したいと思っていたので、約一年後の日本上陸は嬉しかった。
北京で抱いた第一印象通りのドラマで、とても楽しめた。


本ドラマに関しては、以下の2部構成で記録を残しておく。

『月に咲く花の如く~那年花開月正圓』①
概要、歴史上の周瑩、時代のキーワード、物語、主人公・周瑩等について

その他のキャスト、音声、リンク集、音楽などについて


★ 概要

『玉観音~玉觀音』や、『大秦帝国』シリーズの内の二本、『大秦帝国 縦横 強国への道~大秦帝國之縱』、
『昭王 大秦帝国の夜明け~大秦帝國之崛起』等で知られるヒットメーカー丁(ディン・ヘイ)監督が、
その『玉観音』の主演女優・孫儷(スン・リー)と再びタッグを組んで撮った2017年現地放送のドラマ。

脚本を担当したのは、作家で脚本家の蘇曉苑(スー・シャオユエン)
過去に脚本を担当した作品は、侯夢瑤(ホウ・モンヤオ)主演ドラマ『花木蘭傳奇~The Story of Mulan』等。
蘇曉苑脚本作品が正式に日本に入って来たのは、もしかして『月に咲く花の如く』が初めてかも。

★ 周瑩

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娯楽要素が強く、まったくのフィクションに思える本ドラマであるが、
主人公・周瑩(1868-1908)は、清朝末期に実在した女性富商。
一般的には、“吳周氏”、“安吳寡婦”と呼ばれることが多い。

女性の場合、余程の大事に関わらない限り、皇族でさえ記録に残されなかった時代だし、
尾びれ背びれが付いて、民間に噂が伝承されているようで、
私が目にした周瑩に関する記載も完全には統一されていない。
以下、周瑩の生い立ちをザックリと記すが、真偽は各自の判断にお任せいたします。


1868年(清・同治7年)、陝西三原(現・陝西省咸陽市三原縣)に生を受けた周瑩は、
幼い頃から親が無く、間も無く周家の養女となる。
曽祖父にあたる周梅村は、清朝嘉慶年間の富商で、その後も周家は商売で繁栄し続け、
周瑩の父・周海潮もまた有名な大富豪。
そんな裕福な家で育った周瑩は、16~17歳の時、陽安吳鎮安吳堡の吳聘に嫁入り。
吳聘の父・吳蔚文(1830-187)は、江蘇、安徽、江西まで手広く商売をする有名な塩商人にして朝廷の高官。
つまり、吳家は、豪商・周家と家柄が釣り合った嫁ぎ先と言える。


結婚に関しては、大きく2ツの説あり。
周瑩の両親はすでに他界していたため、16歳の時に、兄嫁の取り計らいで結婚が決定。
周瑩が輿入れした際、新郎の吳聘はすでに病人。
おめでたい結婚式を挙げることで、吳聘に憑いた疫病神を祓おうとする古くからのしきたり、
いわゆる“沖喜”のための結婚であったが、そんな“沖喜”の効果は無く、結婚から僅か十日で吳聘は死亡。

周瑩の結婚は、周瑩がまだ幼い内に、親同士が取り決めた縁談、いわゆる“娃娃親”。
確かに吳家は、申し分のない家柄であったが、一つだけ周家に隠し事あり。
吳聘は子供の頃から、当時不治の病とされていた肺結核に侵されていたのだ。
本来、周瑩が18歳になったら結婚との取り決めであったが、
17歳の時、「子供たちはもう充分に成長した」との理由で、吳家の方から積極的に結婚前倒しの申し出。
実のところ、吳聘の病が悪化していたため、
おめでたい結婚により邪気を祓って、吳聘を回復させる狙いであった。
周瑩は輿入れしてから初めて吳聘が重病人であることを知り、一時、驚き、怒りもしたが、
気持ちを立て直し、前向きになり、吳聘との生活を受け入れる。
しかし、幸せな時は長くは続かず、約一年で、吳聘死亡。


どちらにしても、周瑩は十代の若さで未亡人。
吳聘のみならず、吳聘の父・吳蔚文まで立て続けに死亡し、跡継ぎの居なかった吳家は没落しそうになるが、
18歳の若き未亡人・周瑩が家業を継ぎ、天賦の商才とたゆまぬ努力で、
元々あった塩の商いに留まらず、絹糸、綿花、綿布、薬剤、茶葉等々、事業を多方面に広げ、
吳家の商売を国内有数の大企業に成長させる。


また、周瑩はただのガメツイ商人ではなく、今で言う慈善事業にも熱心で、
文廟の修復、教育、被災者支援などに力を入れ、民衆から“活菩薩(生き菩薩)”と称えられたという。

清・光緒26年(1900年)、日本では俗に“西太后”と呼ばれる慈禧(1835-1908)が、
北京に迫って来た八ヶ国連合軍から逃れ、西安へ落ち延びてきた際には、
養子の吳念を西安へ送って、0万両の白銀を献上し、
慈禧直筆の護國夫人”の扁額を贈られると共に、
誥命夫人(皇帝から女性に授けられる封号)の内最高位である一品誥命夫人に封じられている。

慈禧は、多額の献金に対する感謝のみならず、
早くに夫を亡くし、男社会で頑張ってきた者同士として、親近感を覚え、
周瑩を乾女兒(義理の娘)にしたという言い伝えもあるが、事実は判明していないみたい。


そんな周瑩であるが、清・光緒34年(1908年)2月9日に病死。享年42歳。
当時吳家は、50畝もの広大な陵園を有していたが、
しきたりにより、子のいない未亡人の周瑩は、そこに入れず、
2百キロほど東北に離れた場所に埋葬されたと言い伝えられているけれど、
現在、彼女の墓は見付かっていない。

周瑩は、百年以上も後年に、こうしてドラマにもされる大成功を収めた女傑だけれど、
結婚の経緯や、死後の処理を知ると、やはり男尊女卑の時代の犠牲者と思える面がある。
そんな時代だったからこそ、周瑩が手に入れた成功は、
我々現代人が想像する“女性の成功”とは比べ物にならないほど稀有なものなのでしょう。

★ 時代のキーワード

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『月に咲く花の如く』は、清朝末期の物語。
当時天下を治めていたのは、光緒帝・愛新覺羅載湉(1871-1908)。
同治帝が早世したため、叔母である“西太后”慈禧(1835-1908)により、3歳で擁立された幼帝で、
権力を実質掌握していたのは慈禧。
光緒15年(1889年)に、親政を開始すると、改革派の光緒帝側と保守派の慈禧側が対立。
紆余曲折を経て、光緒帝は失脚し、光緒34年(1908年)崩御。
真相は不明だが、光緒帝崩御の翌日、立て続けに慈禧もこの世を去っていること等から、
慈禧による暗殺説が未だ根強い。


ドラマには、もう一人、朝廷側の実在の人物で、影のキーパーソンが存在する。

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愛新覺羅·載漪(1856-1922)。
光緒帝の父方の従兄にあたる皇族で、ドラマでは後半までずっと姿を現さず、“貝勒”の爵位だけで登場。
ドラマでも、その後は、現実と同じように、貝勒から郡王に封じられている。
この載漪は、慈禧の弟・葉赫那拉·桂祥の三女を娶っており、
つまり、慈禧にとっては、姪っ子の婿であり、近しい存在。
光緒25年(1899年)、慈禧は、載漪の15歳の息子・愛新覺羅·溥儁を大阿哥に擁立し、
そのまま光緒帝を廃し、溥儁を新帝に立てようと目論むが、
外国公使らの支持が得られず、それは断念している。
しかし、その事などからも、載漪が、当時、“太上皇”にも近い大物であったことは察しがつく。
洋務運動が起きた時期は、反対派の中心人物で、
その後も、“扶清滅洋(清をたすけ洋を滅ぼせ)”をスローガンに掲げる義和団を、
欧米列強排除のために積極的に利用することを主張。



『月に咲く花の如く』は、軽いエンタメ作品なので、歴史的知識が無くても楽しめるでしょう。
でも、(特に後半は)清朝の歴史を知っている人と、知らない人では、
感じ取れる面白さに、かなりの差が出るはず。
清の歴史に暗い視聴者は、最低限、以下の2ツくらいは、頭の片隅に置いておいておくと、
物語の理解の助けになるかも。

洋務運動
西洋の進んだ技術を取り入れ、国力の強化を目指した清朝末期に起きた運動。

戊戌の変法(ぼじゅつのへんぽう)
清・光緒24年(1898年)=戊戌の年、6月11日から9月21日の103日間という短期間に、
康有為、梁啟超らの提唱、光緒帝の主導で行われた政治改革運動。
経済、教育、軍事、政治、官僚制度など広範囲に渡り、清の弱体化を招いた旧体制を大改革しようというもの。
あまりにも急進的な改革は、朝廷を混乱させ、当初同調していた人々もの反発を招くこととなり、
皮肉にも、光緒帝と対立する慈禧(西太后)ら保守派の力を強めてしまう。
6月11日、慈禧側保守派が、光緒帝を幽閉するクーデター、“戊戌の政変”を起こし、終幕。


ここら辺は、ほぼ同時代を背景にするドラマ『蒼穹の昴~蒼穹之昴』にも描かれてる。
『蒼穹の昴』で朝廷側目線、『月に咲く花の如く』で民間人目線、それぞれの清末を観比べるのも良いでしょう。

★ 物語

養父・周老四と大道芸をしながら自由気ままに暮らしていた周瑩が、
ひょんな事から吳家東院の御曹司・吳聘に嫁ぐも、早々に夫を亡くし、吳家の大黒柱となり、
様々な障害に打ち勝ちながら、事業を発展させ、家を繁栄させる様を描く清末の女一代記


周瑩が事業に邁進するモチベーションは、
夫・吳聘と義父・吳蔚文を殺した犯人を探し出し、報復してやる!という強い思い。
本ドラマは、周瑩が長い年月をかけ、事件の真相に迫り、犯人を追い詰めていく復讐劇でもある。
また、周瑩が生涯に愛した二人の男性、吳聘と沈移星との儚い恋も描かれる。
…と言っても、延々に続くベタベタに甘ったるいラヴ・ストーリーではない。
ドラマにラヴ要素は不要!くらいに思っている私でも耐えられるレベル。
日本では、未だに“女性はラヴ・ストーリーが大好き♪”という思い込みがまかり通っているけれど、
私みたいな女性は結構いるはず。
このドラマは、そういう方々も、安心して御覧になれるのでは。

★ キャスト その①:主人公・周瑩

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孫儷(スン・リー):周瑩(1868-1908)

ドラマはスタート地点から史実と異なり、お嬢様・周瑩を、しがない孤児の旅芸人に設定。
当時、下層階級の女性だと、文盲も多かっただろうし、
まかり間違っても、名家に嫁ぐのは不可能だっただろうから、
ドラマは、最初の設定で大嘘をついているわけだが、
この大嘘設定が、周瑩というキャラクターや、ドラマ自体をも面白くしているのかも。

お目々パッチリのカワイ子ちゃん系で、作品のお飾りになりがちだった孫儷が、
トップ女優に君臨したのは、清の雍正帝の妃・孝聖憲皇后を演じた『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』

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その後、秦の始皇帝の高祖母を演じた『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』もヒットしたことから、
“娘娘女優”の印象が強くなった孫儷だけれど、
この『月に咲く花の如く』では大きく方向転換し、出自の卑しい旅芸人に。
お姫様ばかりではなく、逞しく生きるビンボー人を演じても上手いわヨ!って事を証明した。

女性の一代記なので、孫儷は、周瑩の娘時代から晩年までを演じ切る。
(↓)こちら、孫儷七変化。

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私生活では、30代半ば、二児の母なのに、
痛々しくなく、それどころか活き活きと十代の娘に成り切れる孫儷の凄さよ…。
大陸史劇のお約束、“まったく男性に見えない男装”や、囚人ルック(胸に“囚”の字が分かり易い)、
さらに、遥々迪化まで商売に行った際には、コスプレして、ペルシアのお姫様に成りすます等、
色んな孫儷を楽しめます。

見た目で成長が一番分かり易いのは前髪の有る/無しで、お召し物も徐々に名家の奥方らしく良くなっていく。
が、どんなに外見がセレブっぽく変化しても、“三つ子の魂百まで”で…

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所構わず“お便所座り”や立膝をしてしまうビンボー時代の習慣は抜けず(笑)。
あと、お茶をお急須の口から直接ワイルドに飲む習慣も、生涯続けておられた。
他にも、果実の種をペッと吐き出す等、下層出身者丸出しの行動をあまりにも自然にやってのける周瑩が、
可笑しくて、可笑しくて。
孫儷って、本当に上手い女優さんですわ。

そんな孫儷ついては、こちらの“大陸美女名鑑・孫儷”を参照。



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