Quantcast
Channel: 東京倶樂部★CLUB TOKYO
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

大陸ドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』②

$
0
0
イメージ 1


2017年4月初旬、チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』が、
約2ヶ月後の6月、全50話の放送を終了。


今回、ドラマの詳細は、以下のような2部構成で記載。

物語やキャストなどについて。

『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』②
衣装や音楽などについて。


今回は、いよいよ後半です。

★ この度の毒物

陰謀渦巻く宮廷ドラマには、敵を害する数々の毒薬が登場。
我々も、いざという時に備え(←どんな“いざ”でしょう …笑)、ドラマを通し、漢方の知識が学べる。
例えば、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』以降、不妊や流産を引き起こす作用があるとして、
麝香(じゃこう)はもうすっかりお馴染みの毒薬。

この『女医明妃伝』は、主人公が女医なので、作中、漢方の知識が散りばめられているかと思いきや、
期待ほどではなかった。
第1話で、人参より効力のある貴重な薬草として鉄皮石斛が出てきたり、
終盤、汪美麟が允賢を害するために金剛石(ダイヤモンド)を使ったのは、記憶に残る。
食べ物に混ぜ込まれた粉末状の金剛石は、胃の中を荒らし、死に至らしめるのだと。
しかも、無味無臭で、証拠も残らないという。
(天然鉱物の中で随一の固さを誇るダイヤモンドを、
明代の技術で、どうやって粉末にできたのか?という疑問が残るが…。)


…が、それら以上に印象的だったのが、(↓)こちら。

イメージ 2

聖女果(プチトマト)。
朱祁は、愛してもいない皇后・汪美麟に、表面上優しく接し、
安南(ベトナム)から献上された貴重な品だと言い、汪美麟に聖女果を贈る。
朱祁の心遣いに喜び、汪美麟は、来る日も来る日も聖女果を食べ続けるのだが、
実はこの聖女果、汪美麟を妊娠させないための避妊薬だった…、というオチ。

プチトマトで妊娠できないというのは、いくらなんでも無理があるのでは。
中国のプチトマト農家からクレーム来ないのか…?!
陰性の食物で体を冷やすから、女性には良くないということだろうか。

★ 明の男の身だしなみ

映画やドラマでは、時代を感じられる衣装も、注目ポイントですよね?
目を楽しませてくれるのは、往々にして女性の衣装であるが、
この『女医明妃伝』で、私の目が行ったのは、男性の頭部。

イメージ 3

礼儀の回帰を重んじた明朝では、
服装に関しても、蒙古による前王朝・元の制度を破棄し、漢族の習俗を元に一新。
その一つが、“烏帽 Wūmào”とか“烏紗帽 Wūshāmào”と呼ばれるお帽子の復活。
直訳すると、“ブラック・ハット”、“ブラック・ガーゼ・ハット”って感じか。
つい撫で撫でしたくなる黒くコロンとした形。

(↓)こちら、お馴染み豊臣秀吉公。

イメージ 4

日本で、この手の男性用被り物、及びアレンジされた物を“烏帽子(えぼし)”と呼ぶのは、
元を辿ると大陸に行き付くからなのでしょうね~。


例えば、唐代の文人の肖像などを見ても分かるように、
中国では、元々職業に関係なく、烏紗帽は男性に被られていたようだが、
それが、官職に就いている男性専用のお帽子になったのは、どうやら明代らしい。
それ以降、現代に至るまで、中国語の“烏紗帽”という単語は、“官職”、“官位”の代名詞としても使われている。

天子にお仕えする官吏のみならず、お仕えされる天子も被っているけれど、天子の物には豪華版も。
明代のそのような皇帝特有のお帽子は“烏紗翼善冠 Wūshāyìànguān”と呼ばれる。

イメージ 5

画像右2ツは、北京にある明の十三陵の一つ、萬曆帝(1563-1620)の定陵から出土された烏紗翼善冠。
本ドラマで黃軒が演じている代宗は、萬曆帝より7代も前の皇帝だが、
衣装の烏紗翼善冠は、実際に発掘されたこういう物を参考にデザインされているのであろう。

ドラマには出て来ないけれど、萬曆帝の陵墓からは、(↓)このような、さらなる豪華版も出土されている。

イメージ 6

金糸を編んで作ったゴージャスなお帽子、その名も“金翼善冠”!
一級の芸術品ですわ。明代の工芸技術の高さに舌を巻く。


以上のようなお帽子は、日本の皆さまも、他の映像作品や肖像画などで、すでに見慣れていることでしょう。
そうなのです、私が烏紗帽以上に気になったのは、その烏紗帽を被っていない時の…

イメージ 7

「頭に網タイツ?!」と若干変態趣味があると疑わせる殿方の頭部。
明代を背景にした別のドラマ『傾城の雪~傾城雪/美人如畫』を視聴した時も、
私は同様に殿方の頭部の網タイ(?)に目が釘付けになったものの、
その時は“昭和の物書き風ネット”と表現し、それ以上突っ込むことは無かった。

ところが、“網巾 wǎngjīn”と呼ばれるコレは、明の初代皇帝・朱元璋(1328-1398)が広めた、
実のところ、明代を象徴するそこそこ重要なアイテムであった。

網巾は、明代以前から細々と存在。ロン毛で髷を結っていた昔の男性の中には、髪の乱れを防ぐため、
頭のてっぺんから髷が飛び出るように網巾を被っていた人もいたらしいが、
ヒットアイテムと呼べる程の流行には至らなかった模様。
初めてその網巾を見た朱元璋は、これを明の統治に利用しようと思い付き、
全国津々浦々の成人男性に網巾の着用を命令。学校の制服とか、清代の辮髪のような役割か?
素材は、最も一般的な物が、お馬さんの毛(←網タイのようなストレッチ性は期待できなさそう)。
こちらは、烏紗帽と異なり、貴賤に関係なく、全ての成人男性が、以後3百年近く着用し続けた
まさに明代を象徴する被り物なわけ。



この網巾ブームは、明朝の影響を特に強く受けていた朝鮮とベトナムにも流布。
韓ドラを観る人には、網巾はお馴染みのアイテムのはず。
例えば、(↓)こちら、李氏朝鮮を背景にした韓ドラ『太陽を抱く月~해를 품은 달 擁抱太陽的月亮』。

イメージ 8

金秀賢(キム・スヒョン)の頭部にも、やっぱり網巾。
(頭部どころか、全身ほぼ“まんま明朝ルック”。李氏朝鮮が、いかに明の影響を強く受けていたかが窺える。)


お姐サマ方の永遠の心の恋人・勇浚(ぺ・ヨンジュン)だって、被っています。
初めてエロスに臨んだ映画『スキャンダル』(2003年)では…

イメージ 9

ぺ様の頭部には、やっぱり網タイ、…もとい、網巾。


韓国では網巾を“망건(manggeon マンゴン)”と呼び、なんと今でもその製法が受け継がれており、
1980年には、指定重要無形文化財に登録。

イメージ 10

本場・中国では、伝統が途絶えてしまったようなので、
網巾を装着して本格的に“明朝ごっこ”をしたい人は、韓国で入手を。

★ テーマ曲

テーマ曲、オープニングは徐佳瑩(ララ・スー)の<大雨將至>
エンディングは劉惜君(リウ・シージュン)の<直到那一天>
ここには、エンディング曲の方を。透明感のある声が綺麗です。






このドラマ、前述のように、なんか既視感がある。
もし『宮廷女官 若曦』を観ていなかったら、まぁまぁ高く評価したかも知れないが、
現実には、私は『若曦』を観てしまっている訳だから、どうしても新鮮味に欠ける。

ラヴ・ストーリーとしては、あまり評価できず。
主人公・允賢を巡る二人の男性が、揃ってクズというのは、恋物語としては致命的。

でも、史劇としてなら悪くない。
“中国古代4大名女医”の一人、明代の談允賢という女性について知ることが出来たし、
土木の変(1449年)から奪門の変(1457年)に至る、英宗と景泰帝の争いを
お気楽なエンターテインメント作品として観られたのは、良かった。
明朝の“その後”を知りたい方は、『王の後宮~後宮』をどうぞ。

朱祁に扮した黃軒(ホアン・シュエン)については、まったく納得しておりません、…色んな意味で。
文芸青年の匂いがする黃軒は、あまりチャラい作品では見たくない。
染谷将太とダブル主演の日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』に期待。
そして、配給会社には、“ホアン・シュアン”などといういい加減な表記は直ちに訂正しろ!と言いたい。

このドラマで初めて黃軒を見た人は、きっと黃軒が大嫌いになったことでしょう。分かります。
クズだし、しかも、最終回なんて、目の周りクマだらけで、顔も土色だしね(←いくらなんでも病的すぎた)。
でも、近年ブレイクしたのには、それなりの理由がある。
今後まだまだ伸びる実力派だと確信しているので、皆さまも、今の内に、黃軒について知っておきましょう。




チャンネル銀河、平日夜11時のこの枠は、2017年6月12日(月曜)より、
侯夢瑤(ホウ・モンヤオ)&高雲翔(ガオ・ユンシャン)主演の『皇貴妃の宮廷~多情江山』を放送。
似たような邦題が多過ぎて、混乱…(汗)。
清朝第3代皇帝・順治帝(1638-1661)の時代を描いた物語なので、
ちょうど『宮廷の泪 山河の恋~山河戀·美人無淚』から続いていく時代。
香港の袁詠儀(アニタ・ユン)扮する順治帝の母・孝莊太后も結構大きく取り上げられているようだ。
清宮ドラマだったら、私は、乾隆年間を描いている『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』が
待ち遠しいのだが、差し当たり、こちらの『皇貴妃の宮廷』も観ておきます…?

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1332

Trending Articles