【2017年/中国・香港/103min.】
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音楽学校の民族音楽科で揚琴を学ぶ女の子、“神經”こと陳驚は、
西洋音楽科でピアノを学ぶ先輩・王文に一目惚れ。
思い切って告白するが、あっさりフラれた上、揚琴のことまで馬鹿にされてしまう。
揚琴を知ってもらい、王文に認めてもらうには、バンドを組むしかない!
そう考えた陳驚は、仲の良い男友達“油渣”こと李由の助けを借り、メンバー集めに奔走するも、
誰も相手にしてくれない。
最後の手段で、502宿舎にひっそりたむろする変わり者のヲタクたちをフィギュアで釣り、
中国伝統楽器のバンドをなんとか結成。
バンド名は、3次元の陳驚や李由と、2次元のヲタクたちの間をとり、“2.5次元樂團”に決定。
即席で組んだ変人ばかりのバンドだが、
幸運にも、その内の一人の古箏奏者が、ネットの動画サイトで人気の“千指大人”だったのだ。
その千指大人の提案で、2.5次元樂團は、コミケのステージに出演。
2.5次元樂團がステージに現れると、アイドル目当ての若者たちはシラケるが、
演奏が始まると一転、誰もがステージに引き寄せられ、会場は熱気に包まれる。
自信をつけた陳驚は、改めて王文先輩に告白するけれど、心ない言葉を浴びせられ、再度撃沈。
すっかり気を落とし、絆が生まれ始めていた2.5次元樂團までもを解散。
そんな時、追い打ちをかけるように、学校の主任から、不人気な民族音楽科の縮小が発表される。
こんな事でいいのか…?!
陳驚は、民族音楽の素晴らしさを伝えるため、再び仲間たちと立ち上がり、
エリート集団・西洋音楽科相手に一か八かの勝負に挑もうとするが…。
王冉(ワン・ラン)監督長編デビュー作をカリテ・ファンタスティック!シネマ・コレクション2018で鑑賞。
脚本を手掛けたのは、妻の鮑鯨鯨(バオ・ジンジン)。
『閃光少女』は夫婦のコラボ作である。
私が王冉監督作品を観るのは当然初めてだが、鮑鯨鯨なら、過去に関連作品を鑑賞済み。
鮑鯨鯨の小説を自ら脚本にし、現地でヒットした映画『失戀33天~Love is Not Blind』(2011年)である。
この新作『閃光少女』も、人気小説やコミックの映画化ではなく、鮑鯨鯨の書下ろし。
ちなみに、“アワビ”&“クジラ”と海産尽くしのユニークな名前“鮑鯨鯨”はペンネームで、
本名は、同音の“鮑晶晶”です。
本作品は、音楽学校で隅に追いやられている民族音楽科で揚琴を学ぶ女の子、“神經”こと陳驚が、
ピアノを専攻する王文先輩にこっぴどくフラれたのを機に、
仲間たちと団結し、エリート集団・西洋音楽科に、伝統音楽の良さを認めさせようと立ち上がり、
奮闘する様子を描く青春音楽映画。
昨今、世界中どこの国でも、伝統の継承は困難になりつつあるようだ。
舞台となる音楽学校には、民族音楽科と西洋音楽科があるけれど、
主人公が専攻する前者は不人気で、入学希望者も減るばかり。
一方、後者は期待を担うエリート集団。
生徒の身なりからして違い、西洋音楽科は皆洗礼されおり、民族音楽科はダサいと馬鹿にされっ放し。
完全にスクールカーストが形成されているのだ。
民族音楽科の生徒自身、カーストの下層にいることに、すっかり慣れっ子。
そもそも主人公の陳驚は、親の勧めで何となく学んでいるだけで、揚琴への愛着も希薄。
ところが、西洋音楽科の王文先輩にフラれた上、伝統音楽を小馬鹿にされたことで、
自分の中で眠っていた揚琴や伝統音楽への深い想いが目覚め、奮起することになる。
本作品は、そのように、中国伝統音楽×西洋音楽のバトルと(最終的には、勝ち負けではなく共存)、
陳驚をはじめとする若者たちの成長物語の2本を主軸にした青春映画。
日本にも有りがちなベタな青春映画である。
実際、脚本の鮑鯨鯨の頭の中には、イメージする日本の作品があったらしい。
鮑鯨鯨のお気に入りだというその2本の日本の作品とは…
『スウィングガールズ』(2004年)と『のだめカンタービレ』。
偶然にも、共に上野樹里主演作。
王冉監督もこの2本を観たことで、脚本の鮑鯨鯨が表現したい世界観を掴んだという。
確かに、私も、『閃光少女』を観ながら、
『スウィングガールズ』や『リンダ リンダ リンダ』(2005年)といった日本映画を重ねた。
さらに、“なんとなく日本風”というだけではなく、
作品のあちらこちらに、日本文化、特にヲタク文化の影響がハッキリと見られるから、
我々日本人には、そういう点も興味深い。
元々、王冉監督&鮑鯨鯨夫婦は、揃って二次元好きとのこと。
鮑鯨鯨は、何でも片っ端から読み漁るタイプで、
王冉監督は、友情、奮闘、勝利などが描かれた<ワンピース>のような王道系が好きなのですって。
映画の中のバンドのメンバーにも、日本のメイドさんとかロリータみたいなコスプレをした
(↓)このような琵琶奏者と中阮奏者が。
彼女たち、初めて自己紹介する時も、
それぞれ「塔塔ちゃん(塔塔醬)」、「貝貝ちゃん(貝貝醬))」と日本風に“チャン付け”で挨拶していた。
(…が、日本語字幕では、ただの「ターター」、「ベイベイ」になっていて残念…。
記憶に残りにくい上、意味も伝わらないのに、字数ばかりを食う固有名詞の片仮名表記は、断固反対。)
じゃぁ、完全に日本のコピーかというと、そんなことはなく、古箏奏者の千指大人は、(↓)こんな感じ。
中華圏で若者を中心に人気のファンタジー系時代劇を彷彿させる中華テイストなコスプレ。
この千指大人をはじめとするヲタクたちは、中国史にも詳しい大変な歴女でもある。
日本のヲタク文化に、このような中華テイストを融合させ、独自の世界観を創り上げているのは、
実際の現代中国ヲタク文化をそのまま表しているように見受ける。
このようなメンバーたちによって構成されているのが2.5次元樂團。
中国伝統楽器を使ってノリノリの曲を演奏。
“ヲタク版女子十二楽坊”のよう。本当にこのようなバンドが存在したら、日本でウケる気がする。
撮影は、多くが天津で行われている。
天津は、かつて外国租界がおかれていた街で、
今でも重厚な歴史的建造物が数多く残り、“プチ上海”のような雰囲気を醸す。
作中、学校の外観に使われている建物も非常に立派。
これは、天津外國語大學とのこと。
他にも、天津二十中學、天津音樂聽、天津大劇院、北安橋等々で撮影が行われている。
出演者は、青春映画なので、やはり生きのいい若手が中心。
中でも気になった数人を抜粋。
揚琴を学ぶ主人公、“神經”こと陳驚に徐璐(シュー・ルー)、
陳驚と仲の良い男友達で、大堂鼓を学ぶ“油渣”こと李由に彭暢(ポン・ユーチャン)、
2.5次元樂團に加わるネットで人気の古箏奏者“千指大人”こと小霾に劉泳希(リウ・ヨンシー)、
陳驚が憧れる西洋楽器科のピアニスト王文に駱明劼(ルオ・ミンジエ)等々…。
本作品で脚本を担当した鮑鯨鯨は、
最終的に北京電影學院の文学系を卒業し、作家兼脚本家になっているけれど、
実は11歳から17歳までは、中央民族大學音樂學院の附属校で揚琴を専攻。
当時、自分たち伝統音楽の学生たちは、西洋音楽専攻の学生たちから、
「ダサい」、「バッハを知らないだろ」等と、何かと見下されていたという。
そう、この『閃光少女』には、そんな当時の鮑鯨鯨の実体験が盛り込まれており、
主人公・陳驚のモデルは鮑鯨鯨自身なのだ。
その陳驚に扮する主演女優・徐璐は、日本でも、大陸史劇を観ている人なら、一度くらい目にしているかも?
『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』で、孫儷(スン・リー)扮する甄嬛の末の妹で、
最終的に慎郡王の福晉になる甄玉嬈の役で登場する、あの若手女優である。
『宮廷の諍い女』の撮影は8年程前だから、1994年生まれの徐璐は、当時まだ16歳くらいだったのですね。
現代人の恰好をしているとまるで別人。
しかも、この『閃光少女』の陳驚は、“神經”と呼ばれる程の変わり者。
お年頃なのに洒落っ気が無く、眼鏡をかけ、髪はボサボサで、紫禁城の中の娘娘とは大違い。
私は、この陳驚が、ラストには見違えるのほどの美人に変身するという
在り来たりの流れを予想していたのだが、
実際には、眼鏡を外し、多少身なりが良くはなっても、激変はしなかった。
彼女、表情によって、中越典子に似ているかも。
陳驚の親友・李由に扮する彭暢もまた、大陸ドラマニアなら、すでに知った顔であろう。
籬に片想いしている太監・強公公でチラリと出演していたのが、この彭暢。
『太子妃狂想曲』の強公公同様、『閃光少女』の李由も、ちょっぴり情けない感じの男の子で、
ニックネームは“油渣(油かす)”。
中盤、歯列矯正と眼鏡をやめると、なかなかのイケメンだったという展開になるのだが、
私は、中途半端なイケメンより、ドンくさい彭暢の方が好み。
中国には、長身のイケメンが山ほど居るので、むしろ彭暢のようなフツーな男の子は貴重に感じる。
本作品に出演の若手は、クランクイン前、皆楽器の特訓を受けたとのことだけれど、
千指大人役の劉泳希は、6歳で古箏を始めており、実際、相当な腕だという。
容姿は、この作品の中だと、中性的な雰囲気だが、普段は女性らしい綺麗な女優さん。
王文先輩役の駱明劼は、2015年にデビューした男性ユニットMr.BIOのメンバーで、
銀幕デビューはこの『閃光少女』。
私が彼を見るのも、本作品がお初。
向井理の線を細くして、もっと若くして、あとちょっと楊洋(ヤン・ヤン)風味を足した感じの美男子。
勿論、オトナの俳優も出ております。目玉は、こちら(↓)
陳奕迅(イーソン・チャン)!
学校に視察に来る教育部の高官役という、陳奕迅本人とは程遠い意外性のある役を、
ズラ感満載の七三ヘアで演じている。
『So Young~過ぎ去りし青春に捧ぐ』(2013年)で趙又廷(マーク・チャオ)が被っていたズラを思い出した。
オトナは他にも、陳驚の両親役で、閆妮(イェン・ニー)と耿樂(グン・ロー)が出演。
小さな映画館で週末の上映ということもあるけれど、この『閃光少女』は、前日までにチケット完売。
私は、そこまで人気と踏んでいなかったので、出遅れ、良席を確保できなかった。
それでも、まぁ、観ることができて、良かった。
好みのタイプという訳ではないけれど、途中幾度となく笑い、とても楽しく鑑賞。
ベタな青春映画でも、それが中国産なら、今の日本では充分レアである。
日本に入って来る中華圏の作品は、未だ歴史超大作と香港系の犯罪アクションに偏っており、
客層がまったく広がっていないのに、変化の兆しが見られず、残念。
『閃光少女』は、これを面白がって観る層が、日本には絶対に居る気がするし、
これを観ることで、中国に対し漠然と抱いている“怖い国”というイメージが払拭される人も多い気がする。
カリコレでの数回の上映で終わってしまうのだろうか?正式上映の予定ナシ…??
だとしたら、もったいない。
現時点で分かっている事は、映画館での上映は本日で全て終わり、
残すは2018年8月25日(土曜)と9月7日(金曜)のオンライン上映のみ。
正式上映やソフト化の予定は不明なので、興味のある方は、そのオンライン上映を逃さぬよう。
ちなみに、カリコレのチケット料金は、今年も例年通り、新作一本1500円で、
その半券を提示すると、2本目からは1200円に割り引き。
私は先に『ワンス・アポン・ア・タイム 闘神』を1500円で観ていたので、『閃光少女』は割り引き鑑賞。
細かい事になるが、出来れば、こちらの『閃光少女』に1500円を払い、
『ワンス・アポン・ア・タイム 闘神』を割引料金で観たかった…。
どのような順番で鑑賞しようと、
私のお財布から出る合計金額が2700円で変わらない事くらい分かっております。
あくまでも、気持ちの問題…。