香港ヒット映画『インファナル・アフェア』が、
日本でリメイクされ『ダブルフェイス』というドラマに。


私自身にとってもソソるものがまったく無いので、未見のままだが(←実際には部分的に観ている)、
日本のリメイクは出演者の顔ぶれに惹かれる。 先ほど録画しておいた後編(10月27日放送)を鑑賞。
★ オリジナル作品『インファナル・アフェア』
そもそもオリジナルの『インファナル・アフェア』とは。刑事という身分を隠し、一ヤクザとして犯罪組織に潜入する陳永仁と
本来ヤクザ者でありながら、組からの指示で一刑事として警察に潜入する劉健明という
逆の立場でスパイ活動をする男ふたりが陥る無間地獄を描く三部作の映画。
手掛けたのは、
劉偉強(アンドリュー・ラウ)、麥兆輝(アラン・マック)の両監督。

★ 日本リメイク版『ダブルフェイス』
一方、日本のリメイク版
TBSとWOWOWの共同制作で、2時間ドラマ×2回の二部構成。
犯罪組織に潜伏する刑事を中心に描く前編『潜入捜査編』はTBSで
警察に潜入したヤーさんを中心に描く後編『偽装警察編』はWOWOWでと、放送局を跨ぎ前後編を放送。
主人公ふたりをバラして、それぞれで一本の作品にするという形は、新しい。
でも、タダで観られるTBSで人々を惹き付けておいて
「後編は(お金を払って)WOWOWでどうぞ!」という方式は、腑に落ちない人も多いことでしょう。
前編は、WOWOWへの加入を促進するための豪華すぎるCMみたいだものねぇ(笑)。
しかし、取り敢えず前編を観て思った。
キャストも映像も作り全般が映画的で、通常の地上波のドラマとは違い、WOWOWクオリティである、と。
TBSは、約5年前に、『インファナル・アフェア』をパクッたとしか思えないドラマ『輪舞曲~ロンド』を
竹野内豊&チェ・ジウ主演で撮っているので、『インファナル・アフェア』絡みは、実は今回が初めてではない。
あの頃は、所詮『輪舞曲』がTBSクオリティだったわけだ。 ところが、今回WOWOWとタッグを組んだことで
「やれば出来る子だったのね」と視聴者に思ってもらえるドラマを発表できたのだから
それなりに恩恵に与れたのでは。
肝心の物語だが、舞台こそ香港から横浜に変えられているものの
特に前編は、細かいエピソードまで、ほぼ“まんま『インファナル・アフェア』”。
よく言えば原作に忠実、悪く言えば工夫が無い。 リメイク(作り直し)というより“完コピ”に近いかも。
後編には、いくらかのアレンジが加えられている。
まぁ、とにかく、地上波ゴールデンタイムのドラマにしては、視聴率稼ぎのアイドルなどを起用せず
実力派の俳優陣を揃えているので、息を呑む演技で魅せてくれる。
★ 日香キャスト比較 ① : メインキャスト
(クリックで拡大)

梁朝偉(トニー・レオン) : 陳永仁役 / 西島秀俊 : 森屋純役
梁朝偉も西島秀俊も好きなので、好きな人がやった役を日本リメイク版でも好きな人が演じてくれた、って感じ。
今まで両者が似ているなんて思ったこと無かったけれど
このドラマで西島秀俊を見ていると梁朝偉が重なる。
影のある表情、抑えた表現の中に、そこはかとなく漂う色気。 今回のキャストの中で一番良かった。

劉華(アンディ・ラウ) : 劉健明役 / 香川照之 : 高山亮介役
基本的に香川照之は好きだけれど、今回は表情に力が入り過ぎていないか…?
最近歌舞伎を始めたから、見えを切るクセが付いちゃったのかしら。
劉華は絵に描いたようなエリート刑事の雰囲気だったが、香川照之はエリート刑事を装っても
元々体内に流れるヤクザ者の血を隠し切れず、殺気を発しているように見えてしまった。
★ 日香キャスト比較 ② : 脇のこんなキャスト
(クリックで拡大)

黄秋生(アンソニー・ウォン) : 黄志誠役 / 角野卓造 :小野寺役
潜入捜査官の上司=黄秋生というイメージが焼き付いていた私にとって
角野卓造は本ドラマ一番のサプライズ人事。
黄秋生が、順調に出世街道を歩み続けてきたエリート警視という印象だったのに対し
角野卓造は、地方の派出所出身の叩き上げで、取り調べの時に、容疑者に「故郷(くに)のおふくろさん、
今年いくつになるんだい?」とか言いながら、
カツ丼を差し出すタイプの刑事に見える(笑)。

しかし、丸顔でハゲという親しみ易いルックスでありながら、目の奥が笑っていないから、なかなか怖かった。

曾志偉(エリック・ツァン) : 韓琛役 / 小日向文世 :織田大成役
ふたりの共通点は、背が低いことくらいか。 片やポッチャリで、片やホッソリ。
普段柔らかな印象の小日向文世が極道を演じたら、意外にも凄味があった。
オリジナル版の曾志偉は、後のエピソードで人情味を醸すので
普段温厚そうな小日向文世の方が、むしろ血も涙も無い冷酷な極道に見える。

杜汶澤(チャップマン・トウ) : 徐偉強役 / 伊藤淳史 : ヒロシ役
オリジナル版でこのチンピラは、将来何をやりたいと夢を語っていましたっけ? 思い出せない。
リメイク版では、
ラーメン屋をやりたいと言っている。

だったら、小野寺警視正(角野卓造)の口利きで、取り敢えず幸楽で修業を積んだらどうかしら、なんて思った。
どうせTBS繋がりだし。 漏れなくピン子が付いてきてしまうが。
★ 日香キャスト比較 ③ : 女子部
(クリックで拡大)

陳慧琳(ケリー・チャン) : 李心兒役 / 和久井映見 : 西田奈緒子役
この役は、スラーッとプロポーション抜群で華やかな陳慧琳の印象がインプットされていたので
和久井映見が演じると知った時、随分シミッタレた精神科医になってしまったなぁ~なんて思ったのだが
いざ見たら、しっとり落ち着いた大人の雰囲気で、良かった。 今回の
“意外にも良かったで賞”を贈ります。


鄭秀文(サミー・チェン) : Mary役 / 蒼井優 : 末永万里役
この役は、オリジナル版では小説家だが、リメイク版では政治家の娘だと聞き、設定を変えたのかと思ったら
実際には“小説家を目指す政治家の娘”であった。
精神科医役とは逆で、蒼井優でオリジナル版よりずっと若返りを図ったキャスティングが
正解だったのか不正解だったのか、なんとも言い難い。
偽装警察と父娘ほどの年齢差が有る上、ふたりの気持ちの描写が足りないので、切なさ、遣る瀬無さに欠ける。
★ あの名シーンも…
(クリックで拡大)
数々の名台詞、名シーンを生んだ『インファナル・アフェア』であるが
取り分け印象に刻まれるのが、ビルの屋上で、陳永仁が劉健明に
銃を付き付けるシーン。

これ、リメイク版でも、ちゃんとやっている。
もしかして香港の摩天楼に負けないような絵を撮りたいがために
ロケ地を相応しい屋上が有った横浜に決めたのでは。
このシーンで、強いて難点を挙げるなら、潜入捜査官と偽装警察の身長差か。
オリジナル版では、両者の身長は同じくらいだが、リメイク版だと身長差がかなり有り
撮る角度によっては、潜入捜査官の銃が上方から覆い被さるように下方にシナ垂れ過ぎてしまっている。
しかも、銃を突き付けられた偽装警察の顔が力み過ぎで、アダモちゃんみたいだから、吹き出してしまった。
薄々感付いてはいたが、やはり“松岡先生”が林家棟(ラム・カートン)だったのねぇー。 これってネタバレ?
敢えて前編と後編を比べるなら、よりスリルを感じた前編に、僅差で軍配を上げる。
後編は、後半ぐぐーっと盛り上がるが、前半ちょっとダレているようにも感じる。
西島秀俊
香川照之で、西島秀俊の方が気に入った事も、前編に軍配を上げた一因。

でも、WOWOWはCMが入らないから、映画感覚で一気に観られるのが良い。
オリジナル版のファンからは、厳しい御意見も出ているようだし
私自身、羽住英一郎が『海猿』シリーズの監督だと知り、好みに合わないと、期待せずに鑑賞したが
結局のところ、かなり楽しめた。
元々が面白い物語なので、それを忠実に再現すれば、つまらなくなる訳が無い (それ故、
より忠実に再現した前編が、アレンジを加えた後編より面白いのかも)。
他の部分を見ても、日本の一般的なテレビドラマより格段高品質だし、特に出演者の演技は見応えがある。
そのキャスティングに関しては、本ドラマを観た香港人のブログの覗いたら
偽装警察は本木雅弘か堺雅人か唐沢寿明、ヤクザの親分は大杉漣か北大路欣の方が良かったのでは、
…と日本人でも「なるほど」と思える御指摘があったので驚いたけれど。![]()

まぁ、とにかくこのドラマ、良い脚本が有って、優秀な俳優を起用すれば
それ相応の物に仕上がると証明したのでは。 オリジナルの『インファナル・アフェア』も観直したくなった。