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映画『夏休みの宿題』

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【2013年/台湾/109min.】
夏、小学校の学期末のある日、台北に暮らす10歳の少年・小寶は
両親が忙しいため、屈尺の祖父に預けられる。
随分前に祖母を亡くし、田舎のこの家にひとりで暮らす祖父の生活は、台北での日常と異なりギコチない。
間も無くして、全校でたった27人の生徒しかいない地元の小学校に編入するが
ここにも溶け込めず、どこか冷めた小寶。
そんな小寶にも、やがて孤児の名詮、近所に暮らす大熊といった友達ができ
田舎での生活を楽しむようになるが…。
 
 
第14回東京フィルメックスのコンペティション部門で上映されたものを鑑賞。
本作品は『愛が訪れる時~當愛來的時候 』(2010年)以来の張作驥(チャン・ツォーチ)長編監督7作目。
張作驥はお気に入りの監督であるが、残念ながら日本で鑑賞できる機会は非常に限られている。
『きらめきの季節~美麗時光』(2001年)を最後に、日本では一本も一般劇場公開されていないのでは。
そんな日本の事情もあり、今回のフィルメックスで、私が一番観たかったのは本作品。
上映終了後には、Q&Aも実施。当然張作驥監督が来日するものだと思い込んでいたが
なぜか監督はやって来ず、代わりに来たのは小さな主演男優であった。
私のフィルメックス史上最年少のQ&A。(→参照
 
 
 
舞台は台湾、新北市新店の屈尺。都市部からそう遠くないはずだが、自然がいっぱいの長閑な田舎町。
物語は、親の都合で、その屈尺に暮らす祖父の家に預けられた小学生・小寶が
様々な経験を通し、少しずつ変化していく様子を描く少年のひと夏の成長記
 
田舎の祖父の家、都会育ちの少年、小さな妹、そして父が運転する車で田舎をあとにするラストまで
侯孝賢(ホウ・シャオシエン)監督の『冬冬の夏休み』(1984年)を髣髴。
そう、これは、張作驥監督が手掛ける現代版『冬冬の夏休み』。
 
ただ、同じ都会育ちでも、30年近く前の都会っ子・冬冬より、現代の都会っ子・小寶の方が
なまじ頭がいい分スレている。
長閑な田舎に幻想を抱かず、むしろちょっと見下し、退屈している様子。
そのクセ、夏休みの宿題=日記には、屈尺がいかに退屈かなんて一切記さず
大人が読んで喜びそうな“理想の子供の日記”を綴る器用者。
 
ところが、そんな小寶にも友達ができ、徐々に屈尺に馴染んでいく。
また、良い事ばかりではなく、両親が離婚に向け協議中である事や
先生だと思い込んでいた人が叔母さんであった事など、家庭内の問題も少しずつ浮かび上がってくる。
 
そして事件勃発。この事件が小寶を決定的に変える。
日記もこれを機にガラリと変化、小寶は初めて心情をありのままに綴る。
日記は、小寶の成長のバロメーター。
 
 
 
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出演は、都会育ちの10歳の少年・管小寶に楊亮俞(ヤン・リャンユー)、
屈尺に暮らす小寶の祖父に“管管”こと管運龍(グワン・ユンロン)、
小寶の父に“星星王子”こと閻永恆(ニック・イエン)などなど。
 
子役は、監督が色んな小学校を廻り、探してきた子たちらしい。
2001年生まれの楊亮俞クンも、そのように選ばれ、映画初出演で、いきなり主役。
楊亮俞クン自身、物語の舞台となった小学校・屈尺國小に通っていたそうなので、地元っ子ということか。
洗練されたスッキリ整った顔立ちなので
映画の中では“都会からやって来た男の子”という雰囲気が出ている。
子供の頃の張震(チャン・チェン)に似ているという人も居るけれど、えぇっ、そうかしら…?!
言われてみれば、似ているように見えなくもない…?
映画の中の台詞では、「ニックネームは大雄(のび太)」と言っているが、のび太には似ていない。
阿凡達(アバター)みたい」と言われる台詞もある。
 
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眉間から鼻にかけてのスッとしたラインは、確かにアバター似。
この台詞以降、もう彼がアバターにしか見えなくなってしまった…。
 
 
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他の子役たちも、子供らしく、自然でのびのび。
事件の当事者となる謝名詮(シエ・ミンシェン)クン、ちっちゃくって、ちょっとお調子者で
『Orzボーイズ!』に登場する2號クンみたい。
“大雄(のび太)”と同じ発音の“大熊”という名を持つ少女は、スラッと長身で、将来に美人さんになりそう。
小寶のおしゃまな妹・蒟蒻(ジュルオ)ちゃんは
うちの姪っ子と喋り方がそっくりで(姪っ子が喋っているのは日本語だが…)親近感。
ちなみに、英文字幕では、“蒟蒻”が“Seaweed”と訳されていた。
蒟蒻(コンニャク)って、海藻じゃなくて、イモ科じゃないの…?
 
 
子供だけでなく、大人も専業の俳優じゃない人を多く起用しているようだ。
祖父役の管管は詩人、父親役の星星王子は、なんと占い師なのだと。
 
 
 
 
シンガポール映画『ILO ILO』と本作品、
忙しい親に構われず、心と生活がちょっと荒んでしまった10歳の少年の物語を
偶然にも2本立て続けに鑑賞。
どちらもそれぞれに良かったが、敢えてより私好みの一本を挙げるなら、この『夏休みの宿題』の方。
その理由を具体的に説明するのは困難。作品が醸す雰囲気がより私好み、…としか言いようがない。
 
 
『夏休みの宿題~暑假作業』上映終了後に行われた主演男優・楊亮俞Q&Aについては、こちらから。

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