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大陸ドラマ『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』

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一応大学は出たものの、何の取り柄もない22歳の女の子・薛杉杉は
幸運にも誰もが憧れる上海の大企業・風騰集團に採用され、上京。
慣れない仕事に奮闘しながら一ヶ月が過ぎようとしていたある晩、一本の電話で起こされる。
「薛杉杉さん、下に待たせている車に乗って、至急上北医院の産婦人科に来て下さい。」
わけも分らぬまま、車に乗り込んだ杉杉を病院で待っていたのは
なんと風騰集團の総裁・封騰であった。
なんでも封騰の妹・封月が出産するのに、封月の血液型、RHマイナスAB型の備蓄が足りないため、
同じ血液型の杉杉に輸血に協力して欲しいというのだ。
杉杉はこの申し出に快く応じ、封月は無事子供を出産。

妹の恩人・杉杉に、小切手でも渡そうかと考える封騰。
ところが封月は、それでは心がこもっていないと、兄をたしなめる。
そして、毎日ランチタイムに、封家のコックが作ったお弁当を届けようと提案。
こうして杉杉の元に、造血作用のあるレバーが入ったお弁当が来る日も来る日も届けられるようになり…。



2015年2月、ホームドラマチャンネルで開始した大陸ドラマ『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』
約5ヶ月後の7月、全33話の放送を終了。
私は、録画しておいた最終話を、この連休に鑑賞し、ようやくゴールイン。

★ 概要

大陸の人気ネット小説、顧漫(グー・マン)による<杉杉來吃>を
『シンデレラの法則~S.O.P女王/勝女的代價』、『ずっと君を忘れない~熱海戀歌』などを手掛けた
台湾の脚本家集団好故事工作坊(グッド・ストーリー・インク)が脚本におこし、
『P.S.男~偷心大聖PS男』、『絶対彼氏~絕對達令』などでお馴染みの台湾のヒットメーカー、
劉俊傑(リウ・ジュンジエ)が監督した偶像劇。

原作者の顧漫は、1981年生まれの女性の作家。
あちらでは人気があるようで、作品の映像化はこれだけではない。
例えば、<何以笙簫默>は、本作に引き続き劉俊傑監督がまたまたドラマ化しているし、
黃曉明(ホアン・シャオミン)、楊冪(ヤン・ミー)、Angelababy、佟大為(トン・ダーウェイ)ら豪華キャストで
楊文軍(ヤン・ウェンチュン)監督に映画化もされている。
(この映画は『ユア・マイ・サンシャイン』の邦題で、東京・中国映画週間2015で上映予定)。


今回のこの『お昼12時のシンデレラ』は、舞台も出演者も大陸なので
一応“大陸ドラマ”と位置付けたが、上記のように裏方が台湾なので、実のところ中台合作ドラマ。
近年、台湾では、様々な分野で、大陸と手を組むケースが増えているけれど、
ドラマの世界でも、それは同じで、表面的には大陸で中身は台湾という“陸皮台骨”な合作が益々盛ん。
もはや“台湾ドラマ”、“大陸ドラマ”といった区分は困難なので、
無難に“華流ドラマ”とまとめるべきかとも思うが、その表現があまり好きではないので、もうちょっと様子見。


原題にある“杉杉(shānshān)”は、主人公の名前。
ドラマのタイトルも本来原作小説と同じように
“杉杉が食べに来る”を意味する『杉杉來吃(shānshān lái chī)』になるはずであったが、
“ゆっくり遅れてやって来る”を意味する熟語“姍姍來遲(shānshān lái chí)”に発音が酷似しているため、
当局から、テレビの前のお子ちゃまたちが間違いを覚えるといけないと御指摘があり、
改名させられたのだとか。(相変わらず厳格というか、まぁはっきり言って面倒くさいお国柄…。
むしろ、敢えて言葉遊びで“姍姍來遲”にかけ“杉杉來吃”と命名したのだと思うのだが…。)

★ 物語

たまたま珍しい血液型・RHマイナスAB型だったため、
有名な大企業・風騰集團に運よく採用されたごく平凡な女の子・薛杉杉が
その血液を、若き総裁・封騰の妹、封月が出産する際に提供し、恩人となったことで始まる
大企業に“血液型採用”の女の子と二枚目セレブ総裁の恋を描くロマンティック・ラヴ・ストーリー


学歴、家柄、ルックス、どこをとっても秀でた所が無いごくごく平凡な女の子が、
学歴、家柄、ルックス、どこをとっても超一流の御曹司に見初められ、大玉の輿に乗るのだから、
絵に描いたように分かり易いシンデレラ・ストーリーである。

但し、白馬の王子様との夢のようなデートを綴るキラキラのシンデレラ・ストーリーとは少々異なる。
オノレをよく分かっている主人公・杉杉本人には、分不相応な玉の輿願望などこれっぽちも無く、
大富豪・封騰が、まさか自分程度の人間に気があるなどとは夢にも思いもよらないため、
彼からのアプローチも、いちいち“無い裏”を読み、恋が一向に進行しない。

これだけだと、無欲な女の子に降って湧いた綺麗すぎる純愛物語になってしまうが、
杉杉とは対照的に、自分の娘を玉の輿に乗せたくて仕方が無いガツガツした親戚の叔母さんを登場させ、
拝金主義を皮肉ったり、杉杉のような地方出身者と都会のセレブとの格差を描いたり、
所々に昨今の中国が抱える問題を織り交ぜた社会派ドラマになっている(←嘘。そこまで大袈裟ではない)。

また、何の取り柄も無かった杉杉が、セレブなダーリンに釣り合う女になろうと、
会計士の資格を取ったり、社交ダンスを習ったり、最終的には経営者にもなったりと、
努力を重ね、自分を磨き、変わっていく様子を描く成長物語でもある。

★ 吹き替え…?

シンデレラ・ストーリーはもう世の中に溢れているから、もしこれが台湾偶像劇だったら、
「またか…」とゲンナリしていたに違いない。
しかしこれが大陸の偶像劇になると、案外ささやかな事さえも新鮮に感じられるもの。
そのひとつが声。

大陸ドラマといえば、吹き替えが当たり前。
中国語で台詞を喋っている俳優に、声優が同じ中国語で声を当てるため、口の動きが合っており、
日本の吹き替えと比べ、ずっと自然に感じられることは認めるが、
それでもやはりどこかにギコチなさが残るもの。
ところが、本ドラマでは、俳優の地声を採用していることが一目瞭然!(←いや、一耳瞭然?)
他国では当たり前でも、これが大陸ドラマだと思えば、非常に画期的。
それに、どんなに上手い声優の声より、俳優自身の声の方が本人の個性に合っているに決まっている。

大陸ドラマに起きたこのようなささやかな変化の一つ一つが、
在り来たりのシンデレラ・ストーリーをも新鮮に感じさせている気がする。

★ キャスト その①:シンデレラと王子様

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趙麗穎(チャオ・リーイン):薛杉杉~風騰集團に就職した地方出身の女の子

『蒼穹の昴~蒼穹之昴』『後宮の涙~陸貞傳奇』といった時代劇でしか見たことがなかった趙麗穎。
初めて現代劇で見た第一印象は、「眉毛、太っ…!」
確かにこの頃太眉ブームが来ていたけれど、取って付けたような彼女の太眉にオシャレ感はなく、
毒っ気を抜いた“癒し系クレヨンしんちゃん”にしか見えない。
しかし、よくよく考えてみたら、そもそも田舎モンの杉(スギ)ちゃんにオシャレ感なんて不要なのだ。
杉ちゃんが醸す野暮ったさは、太眉の賜物ヨ。
それに、太眉はまだマシな方で、メイクやファッションに無頓着な杉ちゃんは…

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下手に張り切ると、方向性を見失いがち…(笑)。

さらに、見た目以外で彼女を野暮ったく見せているもう一つの要素が声。
初めて地声で演じる趙麗穎を見たが、声質にも喋り方にも独特のモッタリ感があり、杉杉のキャラにぴったり!
滑舌のよい声優では、このモッタリ感は出せない。声も俳優の一部、喋り方も演技の内だと、改めて思った。

野暮だのモッタリだのと散々に評しているが、これは賛辞。
セレブに見初められ玉の輿に乗る杉杉が、同性の視聴者からヒガまれ反感を買うどころか、応援されるのは、
彼女が猫を被ったアバズレではなく、根っから純朴な女の子に見えるから。
それだけに、妊娠が発覚した時は(←後に間違いだったと判明)、
えっ、恋愛経験ゼロでオクテなはずの杉ちゃんが、
いつの間に封騰とあぁーんな事とかこぉ~んな事とかしちゃっていたの?!と軽くショックを受けた…。

ちなみに、そんな杉ちゃんに幸運をもたらした血液型、RHマイナスAB型を
中国語で俗に“熊貓血(パンダ・ブラッド)”ということを、このドラマで知った。
熊猫みたいに絶滅が危惧されるほど珍しい血液型ってこと…?




張翰(チャン・ハン):封騰~風騰集團の若き総裁

人気者の張翰が演じるのは、案の定、“高富帥(背が高くてお金持ちでカッコイイ)”なパーフェクトな男性。
髪型は、当時中華圏で流行っていた韓ドラ『星から来たあなた』の金秀賢(キム・スヒョン)を彷彿させる
前髪重めの韓流スタイルで、カラーは明るいブラウン(←黒髪な分、金秀賢の方がまだマシ…)。
信じ難い事に、わざわざこんなヘアのために、韓国から美容師を招聘。
その美容師は、二十日に一度は大陸へ渡り、張翰の髪に手を入れたという。

私にとっては、見た目でまったく惹かれない張翰扮する封騰であったが、回を重ねる内に、中身にホレた!
口数が少ないというだけでも好きになれるが、さらに、責任感が強く、恋には一途、
しかも莫大な経済力がある上、ケチケチしていない、…と女性を魅了する要素がテンコ盛り。
NHKの朝ドラ『花子とアン』で、吉田鋼太郎扮する嘉納伝助が人気になったのと本質的には同じ。
嘉納伝助と封騰では、年齢も見た目もまったく違うが、一見ぶっきら棒でも根は誠実な昭和の男タイプで
金払いがさり気なく、かつ豪快な大富豪は、やはり女性にとって魅力的なものなのです。

見た目が好みじゃないなどと記したが、張翰自身も30を過ぎ、どんどん素敵になってきた。
スッと涼しげでクラシックな顔立ちだから、黒髪にして、ドラマ版『上海グランド~新上海灘』で
黃曉明(ホアン・シャオミン)が扮した許文強のような役を演じたら、絶対に合うと思うわぁ~。
(だから、頼むから誰か張翰に韓流ヘアは田舎臭いって教えてあげて。)

★ キャスト その②:脇を固めるキャラクター

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黃明(ホアン・ミン):鄭棋~封騰の古い友人にして仕事上のパートナー 両親はアメリカ在住

こちら、その黃曉明(ホアン・シャオミン)から“曉(シャオ)”を抜いた黃明。
このドラマで元々私のお目当ては、張翰ではなく、この黃明であった。
扮する鄭棋は、ちょっと軽くて、女好きな花花公子。
でも、実は根っこは優しく、真面目で、女性にも一途な“イイ奴”であった。
『王子様をオトせ!~就是要你愛上我』で藤岡靛 DEAN FUJIOKAが演じた役と似た立ち位置。



李呈媛(リー・チョンユアン):元麗抒~封家の兄妹の幼馴染み ずっと封騰に片想い

ラヴ・ストーリーには欠かせない恋のライバルは、本ドラマではこの麗抒。
麗抒は、封騰と一緒にアメリカ留学していたこともある幼馴染み。
杉杉とは雲泥の差で、ライバル視することすらおこがましい美人で知的な“出来るオンナ”。
もっとも当の封騰は、終始“雲”より“泥”の方に御執心なので、麗抒の独り相撲。
麗抒は蔭で杉杉のことを「容姿も学歴も家柄も、どこを取っても大したことがない」と見下すが
そんな麗抒自身が実は封家にお仕えしていたお手伝いさんの娘だと判明した時は
「おいおい、オマエが家柄云々を言っちゃうかっ!」と呆れた…。
いや、自分の事を棚に上げてケチつけているのは家柄だけではなく、容姿もである。
麗抒は確かに美人さんではあるが、ナチュラル感に乏しい。

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小ぶりでツンと上向きな鼻は、典型的なMade in Korea。
私は麗抒に扮する李呈媛という女優をこれまで知らなかったので、
本ドラマでの最初の登場シーンで見た時、韓国女優が声優の吹き替えで出演しているのかと勘違いした。

李呈媛は中央戲劇學院出身でありながら、これまでお芝居ではあまり目立っていなかったが
上品で爽やかな笑顔は評判で、広告モデルとしてはそれなりに活躍していたみたい。
そのため、女優として売れる以前の画像もぼちぼち残っているので、見てみると…

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鼻は完全に黒。
目は、昨今、メイクでも整形級に変えられるので断言はしにくいが、まぁ限りなく黒に近いグレーでしょうか。
元々ブスではないのだから、量産型の安っぽい韓流顔なんかにしない方が良かったのにねぇ…。



張楊果而(チャンヤン・グオアル):封月~封騰の妹 出産時杉杉から輸血してもらう

この張楊果而、張翰より大人っぽく見えるから、封騰=弟、封月=姉に思えてならなかった。
見た目だけではなく、すでに結婚し、出産もしている封月は、封騰よりある意味“人生の先輩”で、
封騰の結婚相手の心配までしている世話焼きだから、妹というより姉のように感じられるのかも知れない。
現実にも張楊果而は、張翰より1歳年下で、結婚も出産もしている“人生の先輩”。
『お昼12時のシンデレラ』クランクインほんのちょっと前に結婚した私生活でのパートナーは…

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劇中、封月の逆玉の輿夫・言清を演じている百克力(バイ・カーリー)
2015年1月、二人の間には、ドラマと同じように子供が生まれており、
幼名は、夫・百克力の名前をもじり、巧克力(チョコレート)と命名。
一方、ドラマの中で、杉ちゃんに輸血してもらってまで産んだ子は、その後の存在感が非常に薄く、安否不明。



石安妮(シー・アンニー):薛柳柳~杉杉の従妹 玉の輿狙いの母の勧めで裕福な游承浩と交際

服装のせいで野暮ったい印象だが、よくよく見ると顔は綺麗。
こういう柳柳みたいな女性は、中国の街中で結構見掛けるので、スタイリングにリアリティを感じた。
この柳柳は杉杉の従姉(従姉妹同士で、片や“ヤナギ”で片や“スギ”)。
杉ちゃんの叔母の養女なので、従姉といっても血縁は無い。
中国で他から子供をもらう場合、家を継がせるとか、老後の面倒を見てもらうなどという理由で、
一般的には男児が好まれるようだが、女の子の柳柳は一体どういう経緯で薛家の養女になったのだろう。
柳柳は、自分が養女であることに負い目を感じていることもあり、玉の輿狙いのガメツイ養母の言いなりで、
気乗りしないまま裕福な游承浩との交際を続行。仮初めにも恋人の游承浩は人間的に難アリで、
浮気だけならまだしも、ドラマ終盤には1千万元分の仮想通貨を盗んで逃走するダメンズ。
養女になった幼少期から今日までを一本のドラマにできるほど、実は人生波瀾万丈な柳柳なのです。



王汀(ティナ・ワン・ティン):陸雙宜~杉杉の親友の小説家 

雙宜は、上京したばかりの杉杉を自分の家に居候させる親友。 
サバサバしていて、同性に好かれるタイプ。私もこの雙宜、好きだわ~。
演じている王汀を検索にかけると、第2検索ワードで“日本”と出てくる。
で、プロフィールを見てみると、2007年に日本で演技を学んだことになっている。えっ、そうなの?
出演者中、最も知名度が低い女優だと思っていたが、
なんと日本版wikiにも、“在日中国人の気功師タレント(…!)”と紹介されているではないか。確かに…

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日本で、宮廷式気功ダイエット等の本やDVDを複数出しており、気功関連のサイトでも紹介されている。
それらの写真を見ると、『お昼12時のシンデレラ』の雙宜とは、顔がかなり違うのだが(笑)、
プロフィールを見ると彼女だし、リンクされている本人ブログへ飛んだら、
“今の顔”で日本語でブログをやっていて、『お昼12時のシンデレラ』について書いている記事もある。
へぇー、杉ちゃんの親友は、立教大学を出て日本語を喋れる気功師だったのですねー。意外。
今後も日中双方での活躍をお祈りいたします!

★ 衣装

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台湾偶像劇とこのドラマの大きな違いの一つが、男性の衣装。
台湾偶像劇の男性主人公は、台湾ドメスティックブランドを中心に、画面越しにも安物と判る物を着ているが、
このドラマの男性主人公・封騰が着ているのは、ディオール、ヴァレンティノ、イヴ・サンローラン、
ジバンシー、プラダ、ルイ・ヴィトン、ドルチェ&ガッバーナ、ディースクエアード、ニール・バレット、
アレキサンダー・マックイーン、バーバリー等々、ヨーロッパの一流メゾンの物ばかり。
腕時計もひとつではなく、フランク・ミューラー、ウブロ、ブレゲ、クエルボ・イ・ソブリノス
といった高級時計が袖口からチラリチラリ。

ここまで一流メゾンの最新作を着まくってしまうと、六本木ヒルズにオフィスを構える成金青年実業家のような
痛ましい“頑張っちゃった感”が出て、私は苦手だが(特にクロムハーツは、堅気の総裁には御法度)、
少なくとも、台湾偶像劇より高級品を使っていることは、画面越しにも伝わってくる。
単純に、台湾より大陸の方が、メーカーが積極的に服を提供してくれるのだと思い込んでいたら、
なんとその多くはレンタルではなく、お買い上げの品だという。
ドラマ制作者側が張翰に用意した約20万元に加え、張翰が50万元(≒950万円)の身銭を切って、
香港などで衣装を購入し、毎話脚本を読んだ後に自らシーンに合ったコーディネイトをしたという。
趣味の良し悪しはさて置き、ドラマの衣装が自腹とは、ちょっとした驚き。
衣装代を経費で落とすとか色々処理方法は有るのだろうが、
それにしても売れっ子俳優じゃないと、なかなかここまでは出来ませんわ、多分。


張翰コダワリのコーディネートは基本的にどうも好みに合わなかった私だが、
強いて言うならば、バッチリ決め過ぎちゃった張翰よりは…

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スポーツウェアや家で寛いでいる時のニットなど、カジュアルなお召し物の方がお似合いに感じた。



とにかく、このドラマの衣装は、片っ端から高級品をバブリーに使いまくっているというわけではなく、
特に女性の衣装などを見ると、スタイリストもちゃんと考えてスタイリングしている事が分る。
例え提供される高級品が有っても、それらはあくまでも封月や麗抒といったセレブリティのためであり、
主人公・杉杉や従姉の柳柳は、露店で値切って買ったような野暮ったくて安っぽい服ばかり着ている。

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ラビットやフェイクファーをあしらった“野暮ったい系ガーリー”なコーディネイト多し。
実際に中国の20代前半のOLはこういう感じだという現実味がとてもよく出ている服装。

ちなみに、セレブな封月や麗抒がショッピングに行くのは、大抵フェラガモ。
フェラガモのバッグや靴もしばしば身に付けているので、撮影に協力的だったのであろう。

★ RIO

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スポンサーと言えば、こちら。またまた出たーーーっ、RIO…!!
カラフルなアルコポップRIOが、このドラマでも飲まれまくっているのだ。
中国人(←ドラマの中限定)、どんだけ好きなんだ、RIO。
食事との相性など無視で、家でも外でも、登場人物たちはいつもRIOを瓶ごとラッパ飲み。
カロリーの摂取過多が気になります。

★ テーマ曲

テーマ曲は、オープニングが主演男優・張翰が歌う<風之諾言>
エンディングが何潔(ハー・ジエ)の<身不由己>
曲の良し悪し以前に、このドラマも、オープニングでもエンディングでも
キャストやスタッフ等作品情報を全て消去し、歌の歌詞の日本語訳だけを映像と共に流している事に失望。
歌の中文歌詞さえ出ていないから、カラオケ映像にすらなっておらず、
有っても無くてもどうでもいいイメージ映像がダラダラと流れているだけ。
昨今どういう訳かこのような中華ドラマが日本で急増している。
配給会社は余計な事をしないで欲しい。色々工夫しないで、“まんま”を流してくれるだけで良いのです。

ここには、上記の2曲ではなく、挿入歌の<Roll the dice>を。
英語曲だが、作詞作曲、演唱まで全て、大陸の女性シンガーソングライター高姍(ガオ・シャン)による。
高姍は北京大学卒のエリートなのだと。


曲のセンスが洗練されているし、声が独特。英語の発音もまったく痛くない。
大陸にもついにこういうタイプの女性シンガーソングライターが出てきたか。






主人公・杉ちゃんと封騰では、ただでさえ越え難い格差が有るのに、
さらに、封月という小姑が存在したり、封月とも親密な才色兼備・麗抒が恋のライバルだから、
杉ちゃんに次々と試練が降りかかるドロドロのメロドラマに展開していくのではないかと、
恐る恐る鑑賞していたが、結局は、全体的に、ホンワカした杉ちゃんのキャラクターを表したかのような、
ほのぼのとしたユルいラヴ・ストーリーであった。

当初、封月は、兄に相応しい令嬢を紹介したがっていたので、
小姑根性を発揮し、杉ちゃんを見下し、兄との恋を邪魔するのかと思いきや、
実は封月自身、格下の言清と逆玉の輿婚をしており、人を財力や家柄で差別しない人格者だったし、
恋のライバル麗抒の攻撃も、大して激しくならないまま収束。
でも、何の取り柄も無い杉ちゃんが、総裁に見初められたら、女性の同僚たちはヒガんで、
社内イジメが起きるでしょー、と予想したが、これもハズレ。
日本と違い、ネチネチしておらず、同僚たちは協力的なのだ。
イジメるどころかにこやかに「総裁夫人になっても私の事を忘れないで、ヨロシクね」と
早い内から上層部とのコネクションを作って、将来の保身や出世の手立てを講ずるのは、大陸時代劇と同じ。
中国4千年の歴史の中で、中国人に培われたDNAがなす処世術なのだと、お国柄を感じた。
ネチッこいイジメよりは、建設的かつ現実的ですわ。

終盤、杉ちゃんが柳柳と高級宝飾店をオープンして、
あっと言う間に借金1千万元(≒2億円)を完済したのは、いくらなんでも都合が良過ぎる展開。
安物ジュエリーさえ無縁だった田舎モンの二人が高級宝飾店を開くなんて、
現実なら、借金を膨らませるだけの無謀な計画だと思いますが…。
最終回、商売も覚え、シッカリ者に変わった杉ちゃんが、「私はもう仕事はいい。封夫人で充分」と
専業主婦宣言ともとれる発言をしたのは、やや意外。
かつての中国には、“男女平等、女性もバリバリ働く”というイメージが有ったけれど、
経済状況が良くなるにつれ、専業主婦が増えていると聞く。
逆に、経済状況の悪化と共に、女性も働けと奨励するようになった昨今の日本でこのドラマを撮ったら、
主人公・杉ちゃんを“結婚も手に入れたバリバリのキャリアウーマン”に仕立てて終わるような気がする。


このドラマはぜんぜん期待しないで観て、
実際、傑作と呼べるほどではなく、平均的な出来かも知れないけれど、
出演俳優の地声を使うなど、これまでの大陸偶像劇とは違う新鮮味があり、案外楽しめた。
“張翰主演御曹司モノ”として考えても、『シンデレラの法則』よりこちらの方がずっと良い。
一番の欠点を挙げるなら、“消えモノ”だろうか。
『お昼12時のシンデレラ』とタイトルでもランチタイムを売り文句にしているにもかかわらず、
劇中“大富豪・封家の専属シェフが作るお弁当”として登場するお弁当が、
どう贔屓目に見ても、ことごとくマズそうだったのは、問題である。

ドラマ自体は良くても、日本側で手を加えた部分はぜんぜん駄目。
前述のように、オープニングとエンディングの処理が駄目だし、日本語字幕も駄目。
頼むから、片仮名表記はやめて。“杉杉”程度の漢字も避けなければならないのなら、
日本中の杉田さんや杉本さんは、どうしたら良いの…??!



ホームドラマチャンネルでは、この『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』の最終回を待たずに、
2015年9月13日(日曜)より、毎週日曜3話ずつ、すでに再放送を開始している。

また、木曜深夜の『お昼12時のシンデレラ』の後枠では、今晩9月24日から
謝欣穎(ニッキー・シエ)主演の台湾ドラマ『カノジョの恋の秘密~金大花的華麗冒險』を放送。
相手役の男優は、吳慷仁(クリス・ウー)と溫昇豪(ウェン・シェンハオ)。
何てことない台湾偶像劇という予感はするが、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の秘蔵っ子・謝欣穎と
映画など非娯楽作品にも対応できる吳慷仁が共演している点は、見所になるかも。

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