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『最愛の子』陳可辛監督Q&A

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第16回東京フィルメックスで、特別招待作品として上映の『最愛の子~親愛的 Dearest』を観賞。

とても観たい作品ではあるが、みすみす2016年1月に一般劇場公開が決定済み。
フィルメックスでは、公開未定の作品を選びたいところだけれど、
せっかく確実に行けると分っている祝日の上映だったので、チケットを入手。
その後、(まぁ、なんとなく予想はしていたが…)陳可辛(ピーター・チャン)監督の来日が発表されたので、
チケット入手も無駄ではなかったと納得。

私がナマで陳可辛監督のお話を聞くのは、
勿論その9年の間にも、監督作品は発表されている訳だが、
日本の景気後退と共に、中華電影関連のイベントが激減し、監督や俳優をナマで拝める機会は珍しくなった。
それどころか、そもそも中華電影の日本公開自体が減ったので、
東京・中国映画週間で上映されただけで、日本ではお蔵入り状態。
以前だったら、陳可辛監督作品は、比較的日本で公開され易かったのにねぇ…。


とにかく、そんなわけで、有楽町朝日ホールへ行ってきた。
映画の詳細はまた後日として、ここには予定通り上映終了後に行われた陳可辛監督のQ&Aについて。

★ 映画『最愛の子』 陳可辛監督Q&A

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司会進行役は、フィルメックスのプログラムディレクター市山尚三、通訳は周サン。
周サンだから広東語かと思いきや、陳可辛監督が英語で喋りだし、結局最後まで英語であった。
もしかして何の前触れもなく英語だったとか…?周サンがやりにくそうに見えたので、そう思った。
英語だと、監督の言っている事がダイレクトに分るから、それはそれで有り難いけれど、
例えチンプンカンプンでも、せっかくなので、たまには広東語の響きに触れたいという欲求もあり、
どちらが良いかビミョー…。


今回のQ&Aは、市山尚三氏と陳可辛監督とのプロローグ的なやり取りはほとんど無く、
いきなり会場からの質問を受け付けという形式。
…ところが、陳可辛監督のトークがやたら長いため、質問に受け答えするというより、
監督の独演会に近い状態であった。
なので、その中から、気になったお言葉を以下にいくつかピックアップしておく。



この作品は、実話が元になっています。
テレビで、誘拐の報道を観た時、力強いものを感じて、この題材で映画を撮ろうと思いました。


誘拐()には、背後に、貧富の差や地方の遅れた教育等、現在の中国が抱える様々な問題があります。
過去30年行われてきた一人っ子政策もそうです。
女児が生まれてしまうと、男児を欲しがる傾向があったり、人手を欲しがったりします。
中国では年間約20万人もの子供が誘拐され、一万元程度で買われています。


誘拐された子供は、養母のもとで育ち、やがて実の親に見付けられます。
そして、その実の親元に戻ることになりますが、
養母に慣れている子供にとっては、また新たに誘拐されるようなもので、辛い経験です。


私くらいの年齢になると、物事を一方からだけではなく、両方向から見るようになります。
子供を誘拐された親は大変ですが、養母も悪い人ではない。むしろ、とても良い母親です。
子供を見掛け、バスから降りてきた養母を、寄ってたかって叩く人々は、まるでモンスターです。


メディアを通して社会問題を発信しても、人々はなかなか関心をもってくれません。
映画という形で観てもらうことで、人々が問題に気付き、その問題が注目されるようになることがあります。


この映画の中の趙薇(ヴィッキー・チャオ)はノーメイクです。
化粧をしないで映画に出るのは、彼女にとって初めてでした。ファンデーションすら塗っていません。


現在の中国は良い俳優が揃っています。
伝統的な訓練を受け、スキルがあり、それでいて著名というバランスの俳優が、どの世代にも居ます。


この年になると、純粋な娯楽作品は、もう撮りたくなくなります。
人生を描きながら、娯楽性も加味した作品をと考えています。


中国には、戸籍の無い子供が8百万人()も居ます。
そういうテーマも撮りたいです。


次回作では、テニスプレイヤーの李娜(リー・ナ)を取り上げます。
中国も日本も、個人の社会ではなく、集団の価値観が大切にされます。
でも、1982年生まれの李娜は、“我々”ではなく“私”で考える個人主義です。
彼女のような一人っ子世代、“80後”の若い世代は違います。
『李娜』は、2017年に発表予定です。
それまで、また長らく日本へ来られませんね。



補足。
:Q&Aでは、全て“養子にする(adopt)”、“養子(adoption)”に訳されていたが、
陳可辛監督が繰り返していたのは、“abduct”、“abduction”だったので、私はここに“誘拐”と記しておく。

:確か“eight million”と聞いたはずなので、ここには“8百万”としたが、
Q&Aでは“8千万”と訳されていた。“eighty million”だったのかしら…?
何語でも私の耳は数字向きではないので、自信が無い。要確認。
ただ、いくら中国が問題山積みでも、人口13億人で、戸籍の無い子が8千万人は、
いくらなんでも、いささか多過ぎる気が…。



このQ&Aで質問数が少なかったのは、陳可辛監督の話が長いということもあるが、
質問者が質問以上に個人の感想を長く述べ過ぎたきらいも無きにしも非ず。
いきなり質問するのも失礼だから、取り敢えず感想を伝えなくては、という気持ちもよく分るけれど、
ほどほどにして、より多くの質問をサクサク受けてくれた方が、話は広がり易いかもね。

『ラヴソング』からの陳可辛監督作品ファンで、作中の張曼玉(マギー・チャン)も良かったという女性が
「この映画で、(張曼玉のように)ヴィッキー・チャオもこれから有名になると思った」と述べ、
会場がドヨメいた事もやたら記憶に残った。
映画祭というのは、自分では普段選ばない未知の映画と出逢う機会でもあり、
会場に居るのは、必ずしもコアな中華電影マニアだけではないから、そういう感想が出ても不思議ではない。
ただ、そのような感想は手短に済ませ、サッサと質問に移っていただきたかった。

でも、まぁ、興味のあった作品を観て、さらに陳可辛監督直々のお話も聞け、全体的には満足。
馮小剛(フォン・シャオガン)監督などもそうだけれど、ずっと娯楽作品できた監督も、
ある程度の年齢に達すると、人生とか社会を考える、
重厚感のある作品にシフトしていきたくなるものなのですね。
新作『李娜』は、話を聞いただけだと、今回の『最愛の子』に比べ、
社会問題を提起するような作品にはなりにくいような気がするが、どうなのだろう。。
また、まだ30代前半で、多くの人々に知られている李娜を、どの女優が演じるのかも、ちょっと気になる。


映画『最愛の子』は、2016年1月16日、シネスイッチ銀座他で公開とのこと。
詳細は、また後日。

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