当ブログの“男前名鑑”を久々に更新。
取り上げるのは、
大陸の新星・董子健(トン・ツージエン)。

“男前”、“美男”、“二枚目”、“ハンサム”等々、男性の外見的美しさを讃える言葉が
おおよそ当て嵌まらないタイプなので、久々の更新がコレか?!と思われそうだし、
実は出演作を一作しか観ていないのだけれど、その一作で、「この子、この先伸びそう…」とビビッと感じた。
その一作とは、日本でも2016年4月に公開予定の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督最新作『山河ノスタルジア』。
私は、2015年11月に開催の第16回東京フィルメックスで観賞。
その前の月、10月に開催の第28回東京国際映画祭でも、
『少年バビロン~少年巴比倫』、『少年班~The Ark of Mr. Chow 』と董子健出演作は2作品も上映され、
本人も来日を果たしている。
中央戲劇學院に在学中の、このハタチそこそこの学生俳優の出演作が、最近ドドーッと増えているわけ。
さらに、撮影前、雲南へ行き、雲南語を学び、2百ヶ所もノミに食われながら、
寝袋で寝起きする生活を一ヶ月以上続けて役作りをし、
2ヶ月も風呂にも入らず、洗髪もせず、雲南の貸し付け金係りを演じた最新主演作『蘭~De Lan』では
その迫真の演技が認められ、今年第52回金馬獎で、主演男優賞にもノミネート。
郭富城(アーロン・クォック)、超(ダン・チャオ)といった先輩たちと、トロフィーを競うことになった。
授賞式には本人も台北に現れ、レッドカーペットを闊歩。
東京国際映画祭のレッドカーペットではおめかしした七五三の少年のようだったのに、
金馬ではまるで小洒落たヴァガボンドと、まるで別人。![]()

これだけ出演作目白押しなのに、私は中国語で演じている董子健をまだ見たことがない。
私が観たたった一作、『山河ノスタルジア』で扮している到樂(Dollar)は、
オーストラリア育ちの華僑という設定で、英語で演じているのだ。…ぜんぜん痛い英語ではなく、流暢な英語で。
このように、この子は一体何者なんだ?!と興味をソソる要素を沢山持つ新星、それが董子健。
簡単なプロフィールは、(↓)こちら。
氏名 :董子健 (拼音:Dŏng Zĭjiàn)
日本での通名:トン・ツージエン
生年月日:1993年12月19日
出身地 :中国・北京
身長 :176センチ
学歴 :北京海淀區外國語實驗學校→北京耀中國際學校→北京市八十中學→中央戲劇學院在学中
中央戲劇學院で演技を学んでいる学生がなぜ英語ペラペラなのかと思ったら、
子供の頃から北京のインターナショナルスクールで、英語教育を受けていた。
(で、その後重点学校へ入学している。)
デビュー作は、まだ高校生だった2013年に出演した、映画『青春派~Young Style』。
映画初出演にして、初主演。
メガホンをとったのは、日本でも『再生の朝に』(2009年)が公開されている劉傑(リウ・ジエ)監督。
なんでも、当時高校生だった董子健がレストランで食事中、自ら“劉傑監督”と名乗る男から、
映画で主人公を演じて欲しいと声を掛けられたが、その時は詐欺師ではないかと疑ったそう。
つまり、監督直々のスカウトだったのですね~。
このデビュー作で、董子健は、その年、第50回金馬獎の最佳新演員(最優秀新人賞)にいきなりノミネート。
最終的にトロフィを手にしたのは、『志氣~Step Back to Glory』に出演した台湾の童顔巨乳アイドル、
“瑤瑤”こと郭書瑤(グオ・シューヤオ)だったのだが、董子健も中国国内で数々の賞を受賞。
それからたった2年後の今年2015年には、『山河ノスタルジア』でカンヌ国際映画祭に出席したり、
前述のように、東京国際映画祭にも金馬獎にも出席する目覚ましい活躍ぶり。
そんな董子健は、実は二世俳優。
父親は、京劇出身で、多くの張徹(チャン・チェ)監督作品に出演している俳優・董志華(ドン・ジーホア)。
日本で一番観られている董志華出演作は、多分(↓)こちら。
粥麺屋を営む五郎八卦棍の使い手・油炸鬼の役で出演した
周星馳(チャウ・シンチー)監督作品『カンフー・ハッスル』(2004年)。
母親は、父親よりさらに有名なこちら(↓)
王京花(ワン・ジンホア)。
…って誰?!と普通の日本人なら思うでしょう。そう思って当然。王京花は、女優さんではなく、裏方さん。
中国にまだマネージメントというシステムが確立していなかった90年代初頭、
音楽業界で、歌手やバンドを育て、世に送り出すことに成功。
そこから今度は映像の世界に転向し、李冰冰(リー・ビンビン)、范冰冰(ファン・ビンビン)の“ダブル冰冰”や
胡軍(フー・ジュン)ら、今ではお馴染みの明星を数多くスターダムにのし上げた
大陸芸能界では知る人ぞ知る敏腕マネージャー、それが、董子健のママ、“花姐”こと王京花なのだ。
そんな訳で、董子健は新人でありながら、大御所のお姐サマ方とも旧知の仲。
私、当ブログの“勝手に金馬獎ファッションチェック♪”で、すっかりアヴァンギャルドに変身した董子健について
「董子健の身に一体何が?!故郷(くに)のお母ちゃんが泣いていないか心配」と書いたが、
いやいや、董子健の“故郷のお母ちゃん”は、囲炉裏端で夜なべしてマフラー編むようなタイプではなく、
生き馬の目も抜く大陸芸能界で常に勝負してきたやり手だから、
ちょとやそっとの事では動じませんね、絶対に。
このように、董子健には生まれながらに役者のDNAが組み込まれている上、
その素材の活かし方も、芸能界での戦法も熟知している最強の軍師を一番の身近に抱える、
スターへの道を約束された優良株なわけ。
普通、駆け出しの若手は、テレビドラマの脇役などからスタートするものだけれど、
董子健は安っぽい仕事は受けず、娯楽作より文芸作寄りの映画をメインにし、しかもいきなりの主役。
海外の映画祭にもどんどん出て、商品価値を高めていくというのも、天才軍師・花姐の戦略かも知れない。
そして、それはまんまと成功し、デビュー僅か3年弱で、ライバルも多い中華芸能界で頭角を現した。
この先も、薬物とか、つまらないスキャンダルを起こさない限り、この勢いは続き、
若手実力派としての確固たる地位を築くことでしょう。
実際の董子健は、幼い頃から有名な明星たちを身近に感じながら、
裕福な家庭で育った人特有の華があって、物怖じもしないニュータイプの中国人ではないかと想像する。
それでいて、キャリアたった3年にして、作品の中では、自分自身がもつ華やかさを消し、
何者にも化け切る天性の表現力がある。
昨今よく使われる若いイケメンを指す“小鮮肉”などという形容で簡単に片付けられない実力派。
董子健自身「“小鮮肉”の多くは、カッコよくて長身で、歌えて踊れるような人。僕は僕のやり方で行きます」
と言っている。自分自身を分っている、なかなかのお利口さんです。
それでも、キョーレツに不細工な実力派とも違い、憎めない愛嬌もあるから、映画界で重用されるのも納得。
董子健は来るっ!と私が直感した理由、皆さま、お分かりになったでしょうか。
今後、日本のスクリーンでも、彼を見る機会が増えるかも知れません。

この作品の中には、董子健と張艾嘉(シルヴィア・チャン)の40歳差ラヴシーンもあり。
董子健の度胸と自然な演技を見てやってちょーだい。