西暦581年、北周。幼帝・宇文闡が、大丞相を務める外戚の楊堅に皇位を譲り、新たな王朝・隋が起きる。隋の高祖・文帝楊堅の即位から数日後、敵であるはずの揉冉から祝いの品を携えやって来た使者が口にした「楊堅は、我々と同じ揉冉の血を引く」という言葉に、朝廷はザワつく。使者を殺し、その場は繕ったものの、出自の悪い噂は命取りになりかねない。楊堅は、その昔、まだ幼かった自分を生まれ育った般若寺から護送した“華”姓の護衛兵が黒い噂否定の証人になると考え、直ちにその男を探し出すよう、内密に命じる。禹州。若蘭と玉荷は、華家の似ても似つかぬ姉妹。母は、美人で要領のいい妹・玉荷ばかりを贔屓し、女らしさに欠ける姉・若蘭は嫁の貰い手も無いと嘆くばかり。ところが、そんな若蘭に、算命術で最高の相手が見付かったと、縁談が転がり込む。相手は、将軍府・趙家の息子で、若蘭が子供の頃よくイジメた弱々しい趙宇。この縁談に気の進まない若蘭だが、もっと納得していないのは、妹・玉荷。なぜ美人の自分ではなく、こんな不器量な姉が名家に嫁ぐのか…?!不快な気持ちの納まらない玉荷は、より高みを目指し、大司馬府の芸妓の採用試験に参加する。間も無くして、揉冉との戦いが勃発。若蘭と玉荷の父・華武のもとにも届いた徴兵の知らせ。足を痛めた年老いた父を戦場なんかに送れない。そう考えた若蘭は、友人の潘晴に自分の替え玉になることを頼み、婚礼の前夜、軍服に身を包み、誰にも気付かれぬよう、家をあとにする…。
2016年3月14日、
チャンネル銀河で始まった大陸ドラマ『ムーラン~巾幗大將軍』が、

ひと月もしない4月8日、全40話の放送を終了。
チャンネル銀河の平日午後のこの枠は、毎日2話ずつの進行で、追うのが本当にキツイ…。
同じ枠で4月11日から始まる『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす』に備えた体力温存のため、
『ムーラン』はパスするつもりでいたのに、「念の為…」と初回を録画してしまったがために、
その後もついつい一話、また一話と録画の消化に躍起になり、気が付けばマサカの完走。
(しかも、『琅琊榜』開始までに古い録画は消去したいという強い思いがあったため、猛スピードで完走。
一種の“火事場の馬鹿力”ってやつか。)
★ 概要
南北朝時代の叙事詩<木蘭辭/木蘭詩>に登場して以来、
中国文学の中で脈々と受け継がれている伝説の女性・木蘭(ムーラン)の物語を、


香港の寰宇娛樂(ユニバース・エンターテインメント)が制作したドラマ。
田有良は『新玉觀音~Goddess of Mercy』の監督さん、
李順慈は『傾城の雪~傾城雪/美人如畫』の女性脚本家。
『新玉觀音』は、孫儷(スン・リー)+佟大為(トン・ダーウェイ)+何潤東(ピーター・ホー)が出演する
2003年のヒットドラマ『玉觀音』ではなく、
饒敏麗(ラオ・ミンリー)+高雲翔(ガオ・ユンシャン)+安志傑(アンディ・オン)による2011年度リメイク版。
あまり話題にならなかったようだが、どうなのでしょう。私は未見。
本作品は、木蘭の伝説をモチーフに、独自の解釈で描いたドラマ。
日本語と英語のタイトルは、それぞれ『ムーラン』、『Mulan』であるが、
伝説通りの“花木蘭(Huā Mùlán ホァ・ムーラン)”という名前の女性は、実はこのドラマには登場しない。
本ドラマの主人公の名前は、“花若蘭(か・じゃくらん/ホァ・ルオラン)”。
事実、中国語のタイトルは『木蘭』ではなく、『巾幗大將軍』で、これは“女性の大将軍”を意味する。
(英語タイトルにも、もう一つ『Woman General』というのが有り、こちらの方が中文原題に忠実。)
日本では、視聴者が取っ付き易いように、
すでに馴染みのある“木蘭(ムーラン)”の名をタイトルに使ったのであろう。
余談になるが、パリのキャバレー“ムーラン・ルージュ”は、中国の“木蘭(ムーラン)”とは無関係。
片仮名にすると同じになってしまうけれど、実はスペルからして違い、
“Moulin Rouge”と綴り、フランス語で“赤い風車”の意。
★ 花木蘭
ここで今一度、花木蘭(ホァ・ムーラン)について。
前述のように、最も古い文献では、南北朝時代にすでにその名が確認されているが、
実在の女性ではなく、あくまでも小説や戯曲の中で語り継がれている架空の人物。
設定には所説あるけれど、一般的には北魏(386年-534年)の時代の女性とされる。
京劇、粵劇、秦腔といった中国伝統戯曲の中で描かれているのは勿論の事、
すでに幾度となくテレビドラマにもなっている。
でも、日本で(…という以上に世界的に)一番有名なのは、
かのディズニーが1998年に発表したアニメーション映画『ムーラン』であろう。
そこまで話題にはならなかったけれど、
香港の馬楚成(ジングル・マ)が監督した実写映画『ムーラン』(2009年)も、日本で公開されている。
かく言う私が過去に観た木蘭関連の作品も、それら2本のみ。
ディズニーの『ムーラン』は子供でも楽しめるアニメなので、史実に即して描かれているわけではない。
明代にならないと建設が始まらないはずの紫禁城らしき建物が出てくる等、時代背景はあやふや。
馬楚成監督の『ムーラン』だって、映画独自の様々な解釈が盛り込まれている。
これら2作品は、「異民族との争いが絶えない時代、男勝りでちょっぴりガサツな嫁入り前の娘・木蘭が、
徴兵令の下った年老いた父に代わり、男装して従軍し、
最初の内は失敗を繰り返すものの、徐々に仲間の信頼を獲得。
軍を率いる隊長には女性であることがバレてしまうけれど、深い絆で繋がり、戦いにも勝利し、都に凱旋。
皇帝から功績を讃えられるが、老父のために故郷へ戻る選択をする」という大筋は共通。
映像化以外では、日本語で書かれた小説もあり、
田中芳樹の
<風よ、万里を翔けよ>が、木蘭モノとしては、ここ日本で恐らく最も有名。

私は未読なので未確認だが、これは北魏ではなく、もうちょっと後の隋を時代背景に書かれた小説のようだ。
★ 物語
主人公は、善良で活発だが、女性らしい細やかさにはやや欠ける華家の孝行娘・若蘭。
徴兵令の下った年老いた父を案じ、ようやく決まった嫁ぎ先には、友人・潘晴を替え玉に送り、
自分は父に代わり、男装して“花生”と名乗り出征し、揉冉(※1)を相手に戦火を交え、一定の成果をあげる。
共に戦った隊を率いる楊俊、本来夫になるはずの趙宇と、固い友情で結ばれ、長安に凱旋するが、
そこで待っていたのは、皇位継承者争いや、北周復興をたくらむ不穏な動き。揉冉との関係も未だ一触即発。
さらに、父が抱える文帝楊堅の出自に関する秘密や、後宮に上がった妹・玉荷の貪欲な暴走もあり、
次から次へと困難に見舞われるが、奇策と仲間の協力で、陰謀渦巻く朝廷から遠のき、
家族との穏やかな日々を取り戻すまでを描く、将軍と呼ばれた女性の波瀾に満ちた一代記。
このドラマ『ムーラン』では、時代背景を北魏ではなく、隋に設定しているのが特徴。
外戚の祖父・楊堅(※2)が禅譲させ、皇帝に即位し、隋を開く辺りで幕を上げ、
後に隋の第2代皇帝・煬帝となる楊廣が、皇太子に立てられる頃に幕を下ろす。
つまり、西暦581年から600年の19年間を中心に描いた物語。
(最終回の最後に“数年後”というシーンがちょこっと付くので、正確には605年くらいまでのお話。)
ちょっと前に観たドラマ『隋唐演義 集いし46人に英雄と滅びゆく帝国~隋唐演義』と、時代が一部重なる。
ドラマ『隋唐演義』は、隋第2代皇帝・煬帝楊廣(在位604-618)の時代が中心で、
横暴な煬帝楊廣の悪政で苦しむ者たちが、打倒隋を掲げて戦い、唐を建国するまでを描いているのに対し、
こちらの『ムーラン』では、隋初代皇帝・文帝楊堅(在位581-604)の時代が中心。
特に、楊氏(隋)
宇文氏(北周の残党)、隋(漢民族)
揉冉(異民族)という2ツの対立を軸に物語は展開。


さらに、文帝楊堅が純粋な漢族ではないという出自にまつわる言い伝えも盛り込み、
秘密を握る主人公の父・華武が皇帝に狙われるという設定で、物語を複雑化させている。
完全な創作の部分では、やはり有ります、
ラヴ・ストーリー。

主人公・花生(若蘭)、隋の第3皇子・楊俊、本来は若蘭の許婚である趙宇の3人が、
戦場で助け合った義兄弟として、まずは厚い友情で結ばれる。
終盤、花生が実は女性であったと発覚する辺りから、彼女を巡る微妙な恋の三角関係に発展。
趙薇主演映画『ムーラン』でも、主人公・木蘭は、
魏国の第7王子という身分を伏せ、隊を率いる将軍・文泰との間に、恋愛感情が芽生えるが、
最終的にこの将軍は、敵方との和睦を結ぶため、恋を諦め、柔然の公主を娶ることになる。
高貴な王子様が、主人公とは結ばれず、平和のために敵の公主と結婚するのは、本ドラマも同じ。
また、趙薇主演映画『ムーラン』にも、“もう一人の男性”として、主人公の幼馴染み・小虎が登場するが、
彼と主人公はあくまでも友人なので、本ドラマのような三角関係には発展しない。
※1:揉冉
実際に存在したのは“柔然(Róurán じゅうぜん)”で、
こちらは、趙薇主演映画『ムーラン』で、敵の異民族として描かれる。
本ドラマは、時代を隋に置き換えているため、“柔然”と発音が酷似する“揉冉”を、
架空の異民族として登場させたのだろうか。
描かれているエピソードは、実際に起きた柔然の出来事と似た物も多い。
※2:外戚の祖父・楊堅
本ドラマでは、北周最後の幼帝・宇文闡が、
楊堅と獨孤伽羅の娘で、北周宣帝の皇后となった楊麗華が産んだ息子、
つまり、楊堅と血縁のある外孫に設定されているが、
実際には宇文闡の生母は楊麗華ではなく、宣帝の5人いた皇后の一人・朱滿月。
史実では、幼い宇文闡は楊堅に殺されているけれど、
本ドラマでは、楊堅の臣下が楊堅の許可も無いまま、グズる宇文闡を勝手に殺害。
楊堅は、孫を殺され涙を流すヒューマンな祖父に描かれている。
★ キャスト その①:男装の主人公

香港の江若琳は、本ドラマを制作した寰宇娛樂所属の歌手で女優。
バタくさい顔だし、セクシーな印象もあるので、
時代劇で男装の女将軍の役なんて合わないのでは?と案じたが、
大きな口から白い歯を覗かせた笑顔は“美人版LilLiCo”という感じで、なかなか壮快な女将軍。
皆から愛される弟分的な可愛さもあり、
正体を隠すため、咄嗟に名乗った“花生(ピーナッツ)”という名前も、間抜けで、愛らしい。
私が観た過去の2作品の木蘭と比べると、(↓)こんな感じ。
左から江若琳、馬楚成監督作品『ムーラン』の趙薇(ヴィッキー・チャオ)、そしてディズニーのムーラン。
趙薇は、『レッドクリフ』(2008年)で勇ましく戦っている孫尚香が、そのまま木蘭に重る。
快活なイメージは趙薇も江若琳も共通。
期待より不安で見始めた江若琳版女将軍だけれど、魅力的で結果的に納得。
ただ、ドラマの年齢設定に関しては、よくよく考えたら、「…ン??」と疑問が湧く。
物語が幕を開けた時の若蘭は19歳。
終始若くて可愛らしい彼女だが、最終回では、約19年が流れているので、38歳前後になっているハズ。
それから結婚して出産って、あの時代、どうなのでしょう…?
結婚は晩婚も可能だが、寿命が40~50代くらいであったであろう1400年前の隋代で
アラフォーが初産なんて、命懸けの超超超超超高齢出産なのでは…???
今の時代に置き換えるなら、“80歳で初産”、…みたいな。![]()

★ キャスト その②:主人公を巡る男性二人

陳思成は1999年中央戲劇學院にトップの成績で入学し、2001年にはデビュー。
以後、順調にスタア街道を歩んできた正統派だが、
私が彼を知ったのは、もっと後で、大好きな映画『スプリング・フィーバー』(2009年)。
L&G映画祭で上映された際には、もう一人の出演男優・秦昊(チン・ハオ)と来日もしており、
実は私、彼をナマで見ているし、サインまで持っているのです。(→参照)
サインまで頂いておいて言うのもナンですが、『スプリング・フィーバー』で私を魅了したのは、秦昊の方。
陳思成は、大陸で“イケメン枠”に入れられているのが、どうも理解できないでいたのだが、
実物はなかなかだし、お人柄は良かった。
ま、今でもイケメンだとは思っていないのだけれど、このドラマ『ムーラン』で楊俊を演じている彼を見たら、
現代劇より時代劇の方がハマッているではないか、…と見直した。
時代劇の扮装をすると、あのプクプクのお顔が、
桃太郎とか金太郎といった日本の昔話に出てくる精悍な少年と重なり、えも言われぬ懐かしさと親近感が湧く。
本作で扮している楊俊は、隋朝初代皇帝・文帝楊堅と獨孤后の間に生まれた第三皇子で、勿論実在の人物。
長男・楊勇と次男・楊廣の皇位争いに焦点を当てているドラマ『隋唐演義』では
非常に影が薄いが(そもそも登場していましたっけ?)、本作では兄たちを差し置き重要な役で描かれている。
ドラマの最後では、愛と平和を守るため、異民族の公主と結婚するこの楊俊、
扮する陳思成自身、2014年、異民族・錫伯(シベ)族の女優、佟麗婭(トン・リーヤー)と結婚している。

スルーするつもりでいた本ドラマを、ついつい観てしまった一番の理由は、この袁弘。
『ムーラン』では、ルックス以上に、演技の幅の広さに驚かされ、益々好きになってしまった。
扮する趙宇は架空の人物。名家・趙氏の適齢期の息子で、勉強はできるが武芸はからっきし。
仲人が算命術で占った最高の結婚相手が、昔から自分をイジメ続けてきた男勝りの若蘭だと知り、困惑。
激しく拒絶するも、縁談はまとまり、仕方なく結婚式を挙げるが、彼女と夫婦になるのがどうしてもイヤで、
出征を言い訳に家を出る。…が、実は、若蘭に成りすまし嫁いできたのは、若蘭が送った替え玉・潘晴。
恐らく“若蘭とは大人になってから会っていない”という設定なのだろうけれど、
あんなに毛嫌いしていた相手なのに、新婦の顔が別人である事に気付かないなんて、趙宇ってば鈍すぎる…。
さらに、従軍すると、そこで男装し“花生”と名乗るホンモノの若蘭に再会するのだが、
そこでも趙宇は若蘭に気付かない。そこら辺の展開はやや強引にも感じるが、
寛容になって、そこにさえ目を瞑れば、その後の趙宇と花生(若蘭)のやり取りを楽しめる。
とにかくねぇ、なよなよオドオドしている上、何かにつけ本からの引用で蘊蓄を傾ける理屈っぽい青年を、
ウザさ満載で演じる袁弘は、本作一番の見所ですから!
しかもそのウザい青年が、回を追うごとに、純粋で誠実な青年に見え、愛おしくなってくる。
普段はスラッと長身で素敵な袁弘の身のこなしが、このドラマだとビミョーなのにも注目。
首や手の動かし方に、京劇など中国の伝統戯曲の動きを取り入れているように思えるのだが、どうなのでしょう。
★ キャスト その③:女子の部

主人公の妹は、過去の2作品には登場しないこのドラマオリジナルのキャラクター。
姉と妹では月(妹)とスッポン(姉)。美人で女らしい妹を登場させることで、男勝りの姉のガサツさを強調。
さらに、強欲で上昇志向が強いこの美人の妹を後宮入りさせることで、従軍した姉に余計な危険が及んだり、
皇位継承者争いも複雑化していくという重要な役割り。
…が、どう贔屓目に見ても、“月”であるはずの妹より
“スッポン(姉)”の方がずっと美人に見えてしまうのは、このドラマの重大なキャスティング・ミス。
時の権力者・皇帝&皇太子の父子を、次々と落としていく絶世の美女を演じるには、劉梓妍では役不足。
(妹とタッグを組んでいる母親も相当底意地が悪いが、いつの間にか真人間になっている。)

吳佩柔は、このドラマで芸能界入りした1992年生まれの若い女優さんで、私は初めて見る顔。
その後は、張艾嘉(シルヴィア・チャン)の脚本で、杜峰(ジョニー・トー)が監督し、
映画にもなった『華麗上班族~Office』の、ドラマ版の方などにも出ているようだ。
そのドラマでは、映画版で郎月婷(ラン・ユエティン)が演じた“”を演じているみたい。
(もっとも私は映画版も未見。この映画版、日本では2015年の東京フィルメックスで上映されている。)
美人さんだけれど、短くて低い鼻がちょっと残念な感じで、見る角度によっては研ナオコ似。
その残念なお鼻こそが個性的で記憶に残るので、この先も血迷ってお直しなどくれぐれもしないように。
『ムーラン』で演じている潘晴は、元々は北周の大臣の娘。
王朝交代で罪人にされ、酷い目に遭い、匿ってくれた若蘭と親友に。
そして、そんな恩人・若蘭のため、また自分自身のために、若蘭に成りすまし、趙宇に嫁ぐ。
ドラマ前半は善良で、木蘭との友情が生涯続くものだと思っていたら、
いざ嫁いだら欲が出て、趙家の嫁の座に固執する面倒な女になっていく。
…しかし、終盤いつの間にかまた物分かりの良い女性に戻っているいるし、キャラ設定がイマイチ不安定。

私にとって潘虹といえば、謝晋(シェ・チン)監督作品『最後の貴族』(1989年)のヒロインですわ。懐かしい…!
1954年生まれ、いつの間にか還暦を過ぎていて、大御所の貫禄。
この『ムーラン』でも、潘虹の存在感がハンパない。
扮しているのは、嫉妬深く、夫・楊堅に悪い虫がつくことを極度に嫌った皇后として語り継がれている獨孤后。
ドラマの中の獨孤后は、皇帝である楊堅をちゃんと立ててあげ、楯突くことなど無いのだけれど、
黙っていても自然に発するオーラが武則天並みにキョーレツなため、自ずと夫の存在感が薄くなっている。
この獨孤后は、見た目だけでも、なかなかインパクトあり。
あちらでは、「日本の芸者っぽくないか?」と、ちょっとした物議も醸したようだ。
★ キャスト その④:大隋皇族

楊堅は妻の助言に従い、北周の皇帝になった娘・楊麗華のまだ幼い息子、
つまり外孫である宇文闡から体よく皇位を奪い、隋朝を開いた高祖。
そんな訳で、皇帝即位の立役者である妻・獨孤后には、一目置いている。
恐妻家という程ではないし、皇帝の威厳もそれなりに感じられるが、
獨孤后に扮する潘虹の存在感が絶大なため、どうも影が薄い。

杜胤偉は、解放軍藝術學院出身の俳優さんらしい。
…なんて聞くと、日本人の私はやけに勇ましいイメージを思い描いてしまうが、
本ドラマで演じている楊勇は、後々廃されてしまうお気の毒な皇太子。
見た目もどことなく欽ちゃんファミリーの斎藤清六を彷彿させるトホホな感じ。
もっとも、“解放軍藝術學院=勇ましい”は勝手な思い込みで、
『紅楼夢~紅樓夢』で頭角を現した人気若手男優・楊洋(ヤン・ヤン)も同校の卒業生だったりする。

楊廣の役は、この前に観た『隋唐演義』の富大龍(フー・ダーロン)のトゥマッチな演技が、
良くも悪くも強く印象に残っているため、本ドラマの馬浴柯が淡白に感じられた。
見た目が皇族っぽくないのも、少々気になる。恐らく、細く生やした口ヒゲのせいであろう。
チンピラや日雇い労働者を演じる時の寺島進みたいな口ヒゲで(顔の作りは、チビノリダー伊藤淳史系)、
ノーブル感に欠けるのよねぇ。
この楊廣は、一般的には暴君と評されているが、本ドラマだと、弱々しい外見と同じように、
内面も多少ズル賢い部分は有っても、極悪人という程ではない。
最終的には、弟・楊俊を想う優しい兄の顔を見せたり、皇太子の座を手に入れても、虚無感に陥ったりと、
血の通ったまともな人間として描かれている。
★ テーマ曲

エンディング曲は、姚貝娜(ヤオ・ベイナー)が歌う<愛如水中月>。
どちらも音大で声楽を学んだ80年代生まれの実力派歌手。
特に有名な姚貝娜は、昨2015年、33歳という若さで、乳癌により亡くなり、かなりニュースになった。
彼女は、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』のオープニング曲<紅顏劫>なども歌っているので、
日本でも中華ドラマニアなら、その歌声を一度は耳にしていることでしょう。
特別ファンではなかった私でも、姚貝娜の早すぎる死には、少なからず衝撃を受けた。
御冥福をお祈りいたします。
…と、姚貝娜について色々語っておきながら、ここにはオープニング曲の<不繡牡丹繡江山>の方を。
別にこの歌がお気に入りなのではない。
オープニング映像、冒頭の人物紹介で袁弘が映るほんの数秒を目当てに、
毎回録画を早送りにせず、観ていた。
顔を微妙に傾け、右手を上げるあのポーズの袁弘に、目が釘付け。
現代劇には無い、伝統芸能っぽい動きじゃない…??
元々ちょっとは知っている木蘭(ムーラン)の話がベースだし、
時代設定が隋なので、数ヶ月前に観たドラマ『隋唐演義』のスピンオフみたいな感覚で、それなりに楽しめた。
でも、私にとってのこのドラマの見所は、木蘭だからとか、隋だからという以上に、
一に袁弘、二に袁弘、三四が無くて五に袁弘!ってほど、袁弘だったかも。
時に素っ頓狂でコミカルだったり、時に素直な愛されキャラだったりと、
これまでに見てきた凛々しい二枚目とは違う一面に触れ、俳優・袁弘の実力に感嘆。
あと、物語の中には、ジャガイモや漢方で使う千金子を発見するシーンが有るのだが、
そういう発見や豆知識が、もっと盛り込まれていたら、知的好奇心をくすぐられ、さらに良かったのにと思う。
このドラマのそのような発見は、史実に裏をとっていないようなので、残念。
例えば、ジャガイモのくだり。兵糧不足に悩んでいた時、炊事係の花生と趙宇が、
見たこともない実を見付け(今でいうジャガイモ)、試しに茹でて毒味したら、これが案外イケるので、
“土球”と命名し、皆に振る舞ったところ、集団食中毒が発生。
毒を盛ったと疑われるが、よくよく調べたら、その実の芽に毒性があったことが判明する、というエピソード。
実際にジャガイモが中国に伝来した時期は、ハッキリとは分からず、1700年前後という説が有力らしい。
隋だと、いくらなんでも早過ぎるだろうか。
もし花生と趙宇が、本当に隋代でジャガイモを食べていたら、歴史が覆えるのにね。
『ムーラン』が終わったことで、
チャンネル銀河では、2016年4月11日(月曜)、

私の大本命『琅琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす~琅琊榜』がいよいよ登場…!!!
これは、ホントーーーーッに楽しみ…!!!!!