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生誕300年記念 若冲展

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<生誕300年記念 若冲展>鑑賞のために、上野の東京都美術館へ。
とーーっても楽しみにしていた展覧会ではあるけれど、大混雑の情報に尻込みし、なかなか行けないでいた。
ただ、これ、会期が約一ヶ月と短いので、いつまでもグズグズしていると、前売り券を無駄にしかねない。
会期終了前一週間は混みそうだし、その前は予定がつかないし…、と悩みに悩んで、
仕方なく、一番避けたかったゴールデンウィーク中に行ってしまった…。
でも、一応“ゴールデンウィーク中の平日”狙い。吉と出るか凶と出るか…??

★ 概要

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伊藤若冲(1716-1800)は、江戸時代中期の絵師。
京の裕福な青物問屋の長男に生まれ、23歳の時、父の死に伴い、後を継ぐが、
絵を描くこと以外興味はなく、酒をたしなむこともなければ、妻も娶らず、商売にも不熱心。
40歳になった宝暦5年(1755年)、家督を弟に譲り、早々と隠居し、作画に集中。
晩年は、京都・伏見深草の石峯寺の五百羅漢石像や天井画などの制作に力を注ぎ、
寛政12年(1800年)、85歳の天寿を全うすると、同寺に葬られる。

日本でここまでの若冲が注目されるようになったのは、
アメリカ人収集家ジョー・プライスのコレクションが話題となり、逆輸入的に人気に火が付いた
かなり近年という印象がある。

そのお蔭で、ここ十数年の間に、若冲の作品はしばしば日本で展示され、
我々も直に鑑賞できる機会が増えたわけだが、
今回の東京都美術館の展示は、生誕300年記念という事で、特に力が入っている。

初期から晩年までの代表作を約80点紹介するこの展覧会で、
一番の目玉とされているのは、若冲が相国寺に寄進した3幅の<釈迦三尊像>と
宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する30幅の<動植綵絵>。
これらが一堂に会するのは、東京では初めてのこと。

展示会場は地下1階に始まり、地上1階、2階の3フロア。
地下1階会場は“画遊人、若冲①”、1階は<釈迦三尊像>と<動植綵絵>、
そして2階は“画遊人、若冲②”、“米国収集家が愛した若冲”という大まかに4ツのパートで構成。

★ 東京都美術館

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私が現地に到着したのは、開館50分前の午前8時40分。
予定より早く着いたとニンマリしたのも束の間、
建物の前にすでに長くのびた列が目に飛び込んできて、ガックリ…。上には上が居るものです。
伝え聞いた話によると、先頭の男性が並び始めたのは、朝8時より前だったとか。

列は2ツ。ひとつは、すでにチケットを持っている人の列。
もうひとつは、まずチケットを買わなければならない人の列。
後者は、チケット購入後、改めてもうひとつの列に並び直さなければならない。
ふぅ~、前売り券を準備しておいて良かったぁ。



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午前9時頃、列が動き出したので、「もしかして、もう入館できるの?!」と一瞬期待したが、
建物前の門が開き、敷地内に移動できただけであった。
敷地内でも、人、人、人の列は相変わらず延々と続く。
この時点で、チケット窓口も開いた模様。
もうひとつの列に並んでいた人々も順にチケットを買い始め、こちらの列にやって来る。



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午前9時20分頃、どうやら早めに開館したらしく、建物内へ移動。

そこからは、もうほとんど待たされること無く、入館。
結局、私が会場内に入ったのは、本来の開館時間の午前9時半。
よって、並んだ時間は50分であった。
日や時間帯によっては、入館するためだけに2~3時間とも聞くし、まぁ悪くない待ち時間だったのでは。

チケットを切った後、希望者には、音声ガイドの貸し出し有り。
当初借りるつもりでいたのだが、「一刻も早く中に入って鑑賞せねば!」と気がはやり、
レンタルに要する数分さえ惜しくなって、やめてしまった。
ちなみに、今回声でガイドしてくれるのは、中谷美紀嬢。

★ <釈迦三尊像>と<動植綵絵>

絵師の人生や作風の変化が鑑賞者に分かり易いよう構成されているのだから、
本当だったら、地下1階から順路に従い鑑賞するのが理想。
でも、この展覧会で、どこが一番混雑するかは、想像に容易い。
そこで、自分の意に沿わなくても、入館後、真っ先に1階へ直行。
私と同じ事を考える人は多く、1階はすでに結構な混雑…。



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その会場では、真正面に3幅の<釈迦三尊像>
それらを左右から囲むように円形に30幅の<動植綵絵>が飾られている。
誰も居ない会場で、真ん中に立ち、自分を囲む30幅の<動植綵絵>をぐるーっと見渡したら、壮観に違いない。
取材に来た芸能人などは、きっとそういう事もさせてもらえたのだろう。いいなぁ~。

できるだけ来場者をバラけさせたいのか、会場内では係員がしきりに
「並ぶ必要はありません、お好きな所から御自由に御覧ください」、
「右から、左からなどという決まりはありません」と言っていたが、
せっかくのこの機会、やはり全てを最前列で観たいので、私は入り口を入ってすぐ右側の列につき、
前の女性の後を追うように、逆時計回りでノソノソと会場内を一周することにした。
たまにガンガン押してくる人もいて、ちょっとストレスにはなるけれど、
当初望んでいた通り、ちゃんと全作品最前列で鑑賞。所要時間は約一時間であった。


どれも素晴らしいのだが、その中から何点かをピックアップ。

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左から、<群鶏図>、<老松白鳳図>

この2作品は、当展示会の広告にも使われているため、注目度が高く、作品の前には黒山の人だかり。
私にとって鳥類、特にニワトリは、ゴキブリと同じくらい気味の悪い生き物で、
絵のモチーフとしても本当は好きではないのだけれど、
若冲の<群鶏図>は、細かな描写といい、色彩感覚といい、さすがに圧倒されるばかり。
<老松白鳳図>の鳳凰のゴールドに輝く羽の描写も素晴らしい。



私の印象に取り分け残った作品も、絞りに絞って6点。

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上段左から、<池辺群虫図>、<芍薬群蝶図>、<蓮池遊魚図>
下段左から、<桃花小禽図>、<梅花皓月図>、<雪中錦鶏図>

上段の3点は、蛙、蝶々などの昆虫、魚、蓮や瓢箪といった私好みのモチーフを描いていることもあり、
単純に大好きな作品。
下段の<桃花小禽図>や<梅花皓月図>は、桃花と梅花の繊細で上品な表現に心惹かれる。
<雪中錦鶏図>は、好みの作品とは言い難いが、空からポタポタと降るボタン雪の表現が絶妙。



30幅の中に多種多様な動植物を描いた若冲であるが、
“日本の花”でまず連想するお花で、同じ江戸時代、浮世絵などではよくモチーフになった桜が無いのは、
不思議と言えば不思議。若冲が<動植綵絵>で描いたのは、
牡丹、芍薬、蓮、梅、桃、松といった中国美術によく見られるモチーフの他…

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左から、<薔薇小禽図>、<棕櫚雄鶏図>

バラは、江戸時代にちょっとした園芸ブームが起きたようだが、私にとっては、西洋をイメージするお花。
棕櫚(シュロ)も、京都というより、もっと南国のイメージ。
若冲は、海外の珍しい物なども積極的に取り入れる好奇心旺盛な人だったのであろう。

★ その他

1階が終わったら、地下1階と2階も、もちろんじっくり鑑賞。
<釈迦三尊像>、<動植綵絵>以外の名作も、かなり展示されている。その中から、ほんの数点を。



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この<百犬図>の展示が、5月8日(日曜)までの限定だったのも、
私が無理してゴールデンウィーク中に東京都美術館に足を運んだ一因。

あるお姐サマが、「えぇー、犬だけ~?!猫ちゃんは居ないのぉ~?!」と失望の声を上げておられた。
特別美術に造詣の無い人でも、気軽に美術鑑賞を楽しめるのは、とても良い事だとは思うけれど、
メディアの大プッシュで、こういうレベルの人まで会場に大挙して押し寄せ、大混雑が起きていると思うと、
ゆっくり静かに鑑賞したかった身としては、複雑な気持ち(苦笑)。



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若冲と言うと、色鮮やかな細密画のイメージが強いけれど、シンプルな墨画も良い。
この<葡萄図>は、若冲コレクターとして知られるアメリカ人、ジョー・プライス(1929年-)が、
まだ若かった1953年、ニューヨークのマジソン街の古美術店で見て、心奪われ、
メルセデス・ベンツを買うつもりで持っていたお金で、初めて買った若冲作品。
葡萄に化けたメルセデスが、その後さらにお宝的価値を高めていくのだから、
ジョー・プライスの審美眼は、20代半ばですでに大したもの。



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画像左の墨画<竹虎図>は、エツコ&ジョー・プライス・コレクションの<虎図>と構図はほぼ同じ。
筆の特質を生かしたラインで表現された、虎の尻尾が力強く、見事。




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<象と鯨図屏風>
横幅3.5メートル以上。若冲晩年の大作。シンプルでダイナミック。
若冲の象さんは、どこかコミカルで愛嬌がある。
観察して細部に至るまで精密に描いたニワトリなどと違い、象さんは実物を見たことが無かったのであろう。




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<鳥獣花木図屏風>
こちらの屏風も、あまりにも有名。

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画面を約1センチ角に区切り、その中に色を置く“桝目描き”の技法で描かれた作品。
江戸時代のデジタルアート!

★ ミュージアムショップ

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約2時間半で、全ての作品鑑賞を終えたら、会場をあとにし、出口手前のミュージアムショップへ。
が、ここも混み混み…。作品鑑賞だけで、精根尽きてしまったため、今回珍しくショップをスルーしてしまった。





初期から晩年までの作品を網羅し、若冲をザッと丸分かりできるから、
若冲初心者からコアなファンまで、幅広く楽しめる展覧会。
気に入った作品は色々有れど、本展の目玉である<動植綵絵>30幅を一気見できた感動はやはり大きい。
若冲の真骨頂とも言える超絶技巧のハイパー細密画には、タメ息も30連発。
重要なのが“よりリアルに表現する事”だけだったら、今の時代、CGで本物と見紛う作品だって作れる。
でも、そのようなCG作品が薄っぺらく、平坦に見えてしまうのに対し、
若冲の細密画に厚みや温度が感じられるのは、なぜなのだろうか…。

欲を言ったらキリが無いけれど、心にも時間にももっとゆとりを持って鑑賞できたら、なお良かった。
前述のように、美術展が高尚なものではなく、誰もが気軽に楽しめるというのは、良い事だが、
それにしても、去年まで絶対“若冲”なんて漢字読めなかったでしょ?!って感じの人で溢れかえっていた。
この展覧会、メディアが煽り過ぎだってばー(苦笑)。
この状況で、<動植綵絵>を“好きな場所から自由に観て”というのも、どうなのだろう…?
美術鑑賞慣れしていない人が多いせいか、グイグイ押してきたり、無理に割り込んだり、
ウィンドウに手をついて、他者の視界を遮るような行為をする人も多数。
東京都美術館は、色々検討した結果、“鑑賞は御自由に”方式に決めたのだろうけれど、
ここまでマナーの悪い人が多いと、楽しいはずの美術鑑賞もストレスになってしまうから、
“最前列で観たい人は並んで時計回りに移動、前の人の肩越しでも良い人は御自由に”といった具合に
ハッキリとルールを決めてくれた方が、この場合むしろ良かった気がする。

会期は残り十日のみ。これから益々混みそう。
入館までの待ち時間をちょっとでも短縮したかったら、最低限、事前に前売り券は用意しておいた方が…。
あと要注意は、65歳以上の人が無料になる5月18日(水曜)のシルバーデー。大混雑必至。
どうせお金を払わなければならない65歳未満にとっては、絶対に避けるべき“魔の水曜日”になりそう。




◆◇◆ 生誕300年記念 若冲展 ◆◇◆
東京都美術館

会期:2016年4月22日(金曜)~5月24日(火曜)

9:30~17:30/毎週金曜~20:00 (4月25日・5月9日 休館)

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