2016年10月8日の昨晩、台北の國父記念館にて、
第51回金鐘獎 Golden Bell Awardsの発表及び授賞式が開催。
金鐘獎は、日本でしばしば“台湾版エミー賞”と紹介されるテレビ番組に与えられる賞のこと。
両岸三地の中国語作品を中心に競う映画の賞・金馬獎の方は、活気があるけれど、
テレビの賞、この金鐘獎の方は、台湾限定なので、
台湾ドラマが中華圏のエンタメを牽引していた頃はともかく、大陸勢に押され気味の昨今は、
日本人の私の目には、盛り上がりにも面白味にも欠けて見えてしまう。
昨晩は、お式のライヴ中継を覗こうかと考えたが、あまりにも眠かったので、やめて、
今朝、結果だけチェック。
日本人の関心が高いであろうドラマ関連の大きな賞に絞り、結果を以下に。
戲劇節目獎(長編ドラマ賞)
『一把青~A Touch of Green』戲劇節目男主角獎(長編ドラマ部門・主演男優賞)
吳慷仁(ウー・カンレン/クリス・ウー):『一把青』戲劇節目女主角獎(長編ドラマ部門・主演女優賞)
柯佳嬿(アリス・クー):『結婚なんてお断り!?~必娶女人』戲劇節目男配角獎(長編ドラマ部門・助演男優賞)
賀一航(ハー・イーハン):『長不大的爸爸~Baby Daddy』戲劇節目男配角獎(長編ドラマ部門・助演女優賞)
劉瑞(リウ・ルイチー):『失去你的那一天~The Day I Lost U』戲劇節目新進演員獎(長編ドラマ部門・新人賞)
連俞涵(リエン・ユーハン):『一把青』戲劇節目導演獎(長編ドラマ部門・監督賞)
曹瑞原(ツァオ・ルイユエン):『一把青』戲劇節目編劇獎(長編ドラマ部門・脚本賞)
鄭心媚(チェン・シンメイ)・鄭文堂(チェン・ウェンタン)・楊惠文(ヤン・ホイウェン):『燦爛時光~The Best of Youth』
…と言うわけで、今年の金鐘獎・視帝/視后は…
『一把青~A Touch of Green』の吳慷仁(ウー・カンレン/クリス・ウー)と
『結婚なんてお断り!?~必娶女人』の柯佳嬿(アリス・クー)に。
おめでとうございます。

どちらも私好みの俳優さんなので、素直に嬉しいけれど、
主演女優賞も『一把青』からで、楊謹華(シェリル・ヤン)が獲ると予想していたので、
柯佳嬿の受賞は少々意外でもあった。
ま、『結婚なんてお断り!?』は、大傑作!と称えないまでも、
“偶像劇”と呼ばれるジャンルでは、最近観た物の中で一番楽しめたドラマ。
それまで台湾女優らしい空気のように清らかなイメージだった柯佳嬿が、
“ビッチ”と呼ばれてしまうスレた女性に扮する新鮮味、
また、スレていながらも憎めないキャラに仕立て上げられている点は評価。
女優さんのハレの日のお召し物も気になりますよね…?
視后に封じられた柯佳嬿、昨晩の装いは、(↓)こんな感じ。
レッドカーペットで身にまとっていた木馬柄のガウンは、
中国人デザイナー韓璐璐(ハン・ルールー)のブランド、HAN LU LUのお品。
合わせている靴は(まったく見えないけれど…)ジミー・チュウ、ジュエリーはハリー・ウィンストン。
受賞の時はお着換えしており、アメリカのブランド、バッジェリー・ミシュカの
シルバーの蝶々が舞うお召し物を着用。
どちらも白が基調。
白は、清潔なイメージの柯佳嬿にお似合いですね♪
ちなみに、交際3年と噂される謝坤達(シエ・クンダー)は、自身のfacebook上で、
柯佳嬿のこの受賞に対し、「我一直都知道就是妳(僕はずっと君だと分かっていたヨ)」と記しておられます。
★ 一把青~A Touch of Green
柯佳嬿も良いのだけれど、
私が今年の金鐘獎で一番注目していたのは、やはり『一把青~A Touch of Green』なのです。
『一把青』は、原作・白先勇(バイ・シエンヨン)×監督・曹瑞原(ツァオ・ルイユエン)という
あの名作『ニエズ~孽子』を生んだゴールデンコンビによる新作ドラマ。
私の中で、『ニエズ』は未だに台湾ドラマの最高峰。
近年、台湾ドラマの秀作になかなかお目に掛かれないため、
『ニエズ』に並べるドラマは、もう『一把青』くらいしか無いのではないかと思い始めている。
もちろん、原作小説もとっくの昔に読了。
原作は短編小説なので、それをどう膨らませて31話のドラマにしたのかは不明。
国民党・空軍に所属する男性たちと、彼らに嫁いだ女性たち、いわゆる外省人にフォーカスを当て、
第二次国共内戦辺りから台湾が歩んだ道を描く歴史大作になっているのであろう。
そんな『一把青』、金鐘獎での評価も高く、13部門もでノミネート。
そして、結果、昨晩、
戲劇節目獎(長編ドラマ賞)、戲劇節目導演獎(長編ドラマ部門・監督賞)、

戲劇節目男主角獎(長編ドラマ部門・主演男優賞)、戲劇節目新進演員獎(長編ドラマ部門・新人賞)、
美術設計獎(美術デザイン賞)、燈光獎(照明賞)の6部門で受賞し、今年の金鐘獎の大勝者となった。
もっとも、このドラマは、制作中から大きく期待されていた割りに、視聴率では惨敗に終わっている。
映画もそうだけれど、近年、台湾人の好みは、軽い方、軽い方へと流れていき、
箸にも棒にも引っ掛からないような娯楽作に席巻されている。
(よく分からないのは、台湾も日本と同じで少子高齢化が進んでいるのに、
人口の多くを占める中高年層が観応えのある歴史モノなどにあまり興味を示さないことだ。)
結局、作る側は、観る人のレベルに合わせるしかないわけで、
台湾に増えた駄作は、いわば台湾の民度の写し鏡ヨ。目覚めよ、台湾人!
まぁ、もっとも、日本も他国のことなんか言えないけれど。
今年の金鐘獎の結果を見て、台湾には少なくとも視聴率だけではなく、
質そのもので作品を評価する良心が残されていると感じた。
(これは、ヒット映画『KANO』がとことん賞を逃した金馬獎でも感じたこと。)
あぁー、私も『一把青』を日本語字幕付きで観たーい…!
なんで日本は、台湾ドラマというと、偶像劇しか入って来ないのだか…。
ここ数年で台湾ドラマを観始めた日本人にとっては、偶像劇のあのポップな作風がまだ新鮮だろうし、
家事と同時に“ながら視聴”できると喜ぶ主婦層が居たり、
疲れて帰宅後、何も考えずにボーッと観られる気軽さが、OLにウケるのも分かる。
なので、“偶像劇絶滅!”は叫ばないが、私は観過ぎて、もう飽きたわ…。
“テレビの前に座して観る!”と気合を入れなければならないようなガッツリ観応えのある物じゃないと、
興味をソソられない体質になってしまった。
特に近年は質の向上が目覚ましい大陸ドラマとの比較で、台湾偶像劇が益々つまらなく感じるようになった。
台湾も、別に駄作ばかりが作られているわけではない。
日本に入って来るのが偶像劇ばかりで、他に選択肢が無いのが問題。
これ以上、台湾ドラマのイメージを下げないためにも、
『一把青』のような秀作が日本に入って来るように!と切に願います。
あと、鄭文堂(チェン・ウェンタン)監督も好きなので、
彼が演出、脚本を手掛けた歴史ドラマ、『燦爛時光~The Best of Youth』も観てみたい。
さらに広く言うと、公視のドラマなら全般に興味あり。