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『マンダレーへの道』趙胤監督Q&A

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2016年11月19日(土曜)に開幕した第17回東京フィルメックス。
オープニング作品、キム・ギドク監督最新作『The NET 網に囚われた男』も観たかったのだけれど、
すでに配給が決まっているようなので、パスして、昨日11月21日(月曜)から参戦。

鑑賞したのは、コンペティション部門に出品されている『マンダレーへの道~再見瓦城 Road To Mandalay』
監督は、16歳の時、台湾へ移民したミャンマー華人の趙胤(ミディ・ジー)。
本作品は、長編監督作品第4弾。
前作『冰毒~Ice Poion』(2014年)でちょっと気になった監督さんだが、実際に作品を観るのは今回がお初。

この最新作は、第73回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ部門に選出された事、
もう直発表される第53回金馬獎で、最佳劇情片(最優秀作品賞)、最佳導演(最優秀監督賞)、
最佳男主角(最優秀主演男優賞)、最佳女主角(最優秀主演女優賞)、
最佳原著劇本(最優秀オリジナル脚本賞)、最佳美術設計(最優秀美術デザイン賞)
という6部門もでノミネートされている事、
『あの頃、君を追いかけた』(2011年)で注目を浴びたものの、
その後薬物使用で逮捕された柯震東(クー・チェンドン)の本格映画復帰作である事と、
興味をソソる話題に事欠かず、機会があるなら、是非観たいと思っていた。

“興味を引かれた”ということが、必ずしも期待の大きさには繋がらないが、
この作品は、結果的に大当たり。チケット取っておいて良かった~。


この日、上映終了後には、趙胤監督によるQ&Aも実施。
話題作なのに、上映を月曜という平日にもってきたのは、
今週末開催の金馬獎で忙しい趙胤監督に来日してもらうためだったのかしら。
もしかして監督と一緒に来るかも?と期待半分で予想していた主演の柯震東は来なかった。
柯震東は、薬物で逮捕以降、大陸で仕事をしづらくなり、
禁韓令/限韓令の影響か、中華明星の参加がパッタリ無くなった今年の釜山国際映画祭にも出席していたので、
フィルメックスに来てもおかしくないと想像していたのだけれど…。

★ 『マンダレーへの道~再見瓦城 Road To Mandalay』 趙胤(ミディ・ジー)監督Q&A

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映画の詳細はまた後日として、
ここには、上映終了後、フィルメックス・林加奈子ディレクターの司会進行、周さんの通訳で行われた
約30分のQ&Aから、私自身の印象に残ったお言葉をいくつか列記。


趙胤監督
私は16歳の時、ミャンマーから台湾へ渡りました。
私の兄や姉は、かつて実際にタイに密入国して、出稼ぎをしていたので、その事を映画にしよと考えました。
こういう出稼ぎは、20~30年前の話でもあり、現在も起きていることです。



質問
映画の中の人々は仲間と集まり中国語を喋ったりしていますが、
ミャンマーやタイには、華人コミュニティがあるのですか?

趙胤監督
映画の中の彼らが喋っているのは、雲南方言から派生したミャンマー版中国語です。
ミャンマーには、約300万~500万人の中国系がいる他、約130もの少数民族がいます。
そういう中国系や少数民族など約300万人がタイへ出稼ぎに行っています。



質問
監督の作品は前3作も全て観ています。
前3作には、もっと自由があったのに、どんどん悲劇的になってきているように感じるのですが…。

趙胤監督
前の3作は、脚本無しで撮りました。この新作は、初めて脚本を用意し撮った作品です。
内容は、1992年に起きた実話に基づいています。



質問
主演の柯震東は、以前はもっとアイドル的な印象でした。一緒にお仕事され、どうでしたか?

趙胤監督
柯震東のことは、友人の紹介で知り、全出演作を観て、才能を感じました。
彼本人にも何度も会ってみて、ピュアな人だと感じ、彼に出てもらうことに決めました。
この作品は、2ヶ月の撮影期間以上に、準備期間を長くかけており、主演の二人には語学の習得の他、
柯震東にはミャンマーの農場で仕事を体験させたり、
蓮青役の女優・吳可熙(ウー・クーシー)にも皿洗いのバイトや工場の仕事を体験させるなど
8~9ヶ月の訓練期間を設けました。



質問
キャストについて他に?

趙胤監督
主演の二人はプロの俳優です。
蓮青役の吳可熙は、私の他の作品にも出演してもらっています。彼女は舞台の女優さんです。
他の出演者の多くは、プロの俳優ではなく素人で、私の兄や姉も出ています。



質問
悲劇的な結末を撮るのに、葛藤や迷いはありませんでしたか?

趙胤監督
実話に基づいているので、葛藤はありませんでした。
3年の出稼ぎをし、結婚をして、その結婚式の3日後に起きた殺人です。
私は、二人の関係者からも話を聞きました。
女性は偽装結婚をしてでも、いずれ台湾へ渡りたいと考えており、
男性は結婚して彼女と故郷ミャンマーで平凡な暮らしを送りたいと思っていたようです。
最初から二人の価値観は違っていたのです。
作品の中にも少し出てきますが、男性が薬をやっていて、おかしくなっていたという人も居ます。



質問
公開予定は?

趙胤監督
香港では12月1日、台湾では12月9日、
そして来年1月以降、ミャンマー、シンガポール、フランス、イギリスなどでも公開予定です。



質問
ポスターが素敵ですね。

趙胤監督
“アキコ何とか”というアメリカ在住の日系人にお願いしました。
彼女は、ハリウッド作品の多くのポスターを手掛けている有名なアーティストで、
本来、インディーズ映画などでは、とてもギャラが払いきれないのですが、
この『マンダレーへの道』を観て、彼女自身が子供の頃アメリカへ渡った移民であり、女性でもあるためか、
とても気に入ってくれ、ポスターを手掛けてくれました。
今、フルネームを忘れてしまったのですが、インターネットで“アキコ”、“ポスター”、“有名”などと検索すれば、
分かるかも知れません。





趙胤監督は、柯震東のことを友人を介して知ったとのことだが、
確か、薬物使用で謹慎中の柯震東の復帰の道を探っていた彼の所属事務所社長で、
“台湾偶像劇の母”と称される柴智屏(アンジー・チャイ)が、趙胤監督に接触し、
柯震東を監督作に出演させることを打診してきた、…と言われていませんでしたっけ。
つまり、紹介した“友人”は柴智屏?
これまで娯楽作ばかりを手掛けてきた柴智屏であるが、
商業映画とは言い切れない本作品でもプロデューサーの一人に名を連ねているし、
“不肖の息子”柯震東の復帰のためのお膳立てに、骨身を削っているように感じる。

ただ、私個人的には、今週末発表の第53回金馬獎では、
色んな意味で、柯震東には最優秀男優賞が渡らないで欲しいと願っている。
この賞は、私が最近観た作品からのノミニーだったら、
『ゴッドスピード~一路順風』の許冠文(マイケル・ホイ)や、
『ミスター・ノー・プロブレム』の范偉(ファン・ウェイ)の方がずっと相応しいように感じる。
本作品で蓮青を演じ、最優秀主演女優賞にノミネートされた吳可熙が、受賞するなら大納得。


あと、ポスターのデザインを手掛けた日系アメリカ人の“アキコ何とか”(笑)。
ネットで検索すれば判るという趙胤監督の話を聞きながら、
「いや、監督、“アキコ”という名前はそこまでレアな名前ではないから、
“陳”や“王”という姓だけを頼りに、ネット上で華人を探し当てるのと同じくらい困難ヨ」と苦笑い。
…ところが、今、試しに、検索してみたところ、“akiko”、“poster”だけで、ビンゴ!
ナンなの、スゴイではないの、“アキコ何とか”…!全米一有名な“アキコ”かも…?

この“アキコ何とか”は、
正式なフルネームがAkiko Stehrenberger(アキコ・ステーレンバーガー)というアーティストで、
確かに素敵なポスターを沢山手掛けており、見たことがある物も結構ある。

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趙胤監督は、ミヒャエル・ハネケ監督作品やロマン・ポランスキー監督作品のアメリカ版DVDジャケを見て、
素敵だと思い、デザインを手掛けたのが同一のアーティストだと知り、興味をもったようだ。


日本の映画だと…

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三池崇史監督作品『十三人の刺客』のアメリカ版ポスターが、やはりアキコ・ステーレンバーガーの手による。

日本版は、安いテカテカぺらぺらの紙に刷られた典型的な日本のチラシ風情で、アメリカ版はアート。
映画の内容に合っているかどうかは別問題として、単純にデザインの好き/嫌いだけで見たら、
私の好みは断然アメリカ版ポスター。なんか、日本版より、ずっと良い映画という錯覚を起こす。


御本人も美人さんです。

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100%の黄色人種ではないと見受ける。
バルテュスの娘、ハルミ・クロソフスカ=ド=ローラにちょっと雰囲気が似ているかも。
具体的なプロフィールを調べていないので、“Stehrenberger”が親から受けた姓なのか、
例えば結婚した夫の姓なのか、そこら辺は不明。
ちなみに、たまたま読んだインタヴュ記事によると、好みの映画は、インディーズ映画とのこと。
だから、作品の規模の大小に関係なく、本当に『マンダレーへの道』を気に入って、
採算度外視でポスターを創ってくれたのでしょう。

★ 趙胤監督 サイン会

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Q&Aが終了すると、もう夜9時近く。
会場の朝日有楽町ホールが閉館するため、観客は速やかに外に出るよう指示されたが、
ホールの外で、趙胤監督が即席サイン会をしてくれたので、私も頂きました。





東京フィルメックス、『マンダレーへの道~再見瓦城 Road To Mandalay』は、
あと一回、11月26日(土曜)にTOHOシネマズ日劇3で上映あり。
夜9時15分開映とちょっと遅いけれど、興味のある方は、どうぞ。ホント、良い作品。

あと、その26日は、金馬獎の発表。
『マンダレーへの道』は、ノミネートされている6部門の内、どれくらい受賞できるだろうか?行方を見守りたい。

作品についての詳細、感想は、また後日。

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