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『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』張震来日舞台挨拶♪

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ワケありで長年お蔵入りになっていた故・楊昌(エドワード・ヤン)監督の名作、
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)が、25年の時を経て、デジタルリマスター版として蘇り、
よーやくスクリーンに戻ってきたことは、映画ファンの皆さまなら、御存じのはず。

この生まれ変わった『牯嶺街』、日本でのお披露目は、2016年11月初旬、第29回東京国際映画祭でのこと。
映画祭期間中たった一度の貴重な上映ではあったが、
この年の東京国際映画祭は、チケットのweb販売で大きなトラブルがあったし、
みすみす一般劇場公開が決まっていたので、私はパス。
もし、主演男優・張震(チャン・チェン)が来場したら、
チケットを取らなかったことを後悔するだろうなぁ~、とは思っていたが、
日中関係が悪化して以降、中華圏の明星の東京国際映画祭への参加はパッタリ激減したので、
特に張震レベルの俳優ならなおのこと来日は無い!と高を括っていた。
案の定、張震が来ることはなく、私は胸を撫で下ろしたのでありました。

監督や出演者によるQ&Aなど、何か特別なプラスαが無いのなら、
自分の都合に合わせ、映画館でゆったり観るに越したことない。
約4時間もある(…!)超大作を、一般劇場公開に漕ぎ着けたのだから、
ちゃんとチケットを買って、劇場に足を運び、ささやかながら興行成績に貢献もしたいし。




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そのように、2017年3月の公開を心待ちにしていた2月中旬、張震が来日して舞台挨拶を行うと発表。
後日、3月14日(火曜)、新宿武蔵野館の上映後に一回、角川シネマ有楽町での上映前に一回、
計2回の舞台挨拶を開催と詳細が発表された。
新宿武蔵野館の座席数は約130、角川シネマ有楽町だって約230と、いずれも小さな会場。
『牯嶺街少年殺人事件』はもはや伝説になっているから、この作品の元々のファン以外にも、
この機会に是非!と思う初見の人も多いだろうし、張震ファンだって実は地味に多いはず。
配給さん、『牯嶺街』人気を侮っていないか…?!これでは、平日の開催とはいえ、チケット争奪戦は必至。
私は、新宿武蔵野館に狙いを定めたが、チケット発売当日まで、心臓バックバク。
張震愛の深さやファン歴の長さでチケット優遇してくれーっ!と本気で願ったワ。

しかし、長年張震を溺愛する私に、そのような救済措置があるわけもなく、
他の皆々様と平等に迎えたチケット発売開始の瞬間。
事前に自分の中で積んでいたシミュレーションも役に立たず、
アクセス混雑で、上映カレンダーより先に進めず…。
ようやくその先に進めたのは、販売開始から18分が過ぎた頃。
すでに大方埋まっている座席表を見て、焦りが生じ、何も考えられずに適当にクリックを繰り返し、購入完了。
で、間も無くして、チケット完売。

なんとか買えたけれど、そんなこんなで、席は自分の希望からは程遠い。
私にとって映画を観易いのは、極力後方の席。
舞台挨拶が有るなら話は別で、もちろん前方で見たいけれど、それだと4時間の映画鑑賞はキツイ。
そこで、映画鑑賞にギリギリ耐え得るであろう前から5~6列目辺りを狙っていたのだが、
結果、“超前方”になってしまった…。ほぼ“かぶり付きシート”。
張震を間近で拝めるのに、その一方で、4時間の上映をどう持ち堪えようかと考えてしまうなんて、
贅沢な悩みですわね。

その後、角川シネマ有楽町、午後1時の回上映終了後にも追加の舞台挨拶を行うと発表。
結局、舞台挨拶は、一日に2ヶ所で計3回となった。それでもチケットは完売。
週末の開催だったら、チケット争奪戦がもっと激しくなり、ドンくさい私などでは買えなかったに違いない。

そもそも、来日舞台挨拶を、日本での『牯嶺街』公開初日3月11日(土曜)に行わず、
なんともハンパな火曜にズラしたのは…

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張震の愛娘・源原(ユエンユエン)ちゃんの2歳のお誕生日が3月10日だったからかしら…、と想像。
張震には、子煩悩な一面がありそうなので。

★ そして迎えた当日

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そんな訳で、角川シネマ有楽町では、
3月11日にすでに公開されている『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』だが、
今回私が訪れた新宿武蔵野館では、2017年3月18日(土曜)から公開。
本日、3月14日(火曜)は、先行という形で、一回きりの特別上映。

朝からソワソワしてしまい、柄でもなく、張震に簡単なファンレターを書き(!)、
家を早く出て、デパートに寄ってプレゼントまで用意してしまいましたヨ。
まるで乙女に戻ったかのような私mango…。
(いえ、オトメ時代でも、明星にお手紙&プレゼントなんて渡したことないから!)。

映画館に到着したら、記念にプログラムを購入。8百円也。
映画のプログラムを買うのも久し振り。

★ 映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』上映→終映

映画は予告編無しで、午前11時50分開映。
約4時間にも及ぶ大作だが、途中休憩は無し。
朝から極力水分を控えていた甲斐あり、恐れていた“尿意で映画に集中できないっ!状態”は避けられた。
久し振りにスクリーンで再見した『牯嶺街』の素晴らしかったこと…!
(作品の詳細は、また後日。)

映画が終わったのは、午後3時45分頃。
ノンストップの上映だったけれど、舞台挨拶の前には10分の休憩あり。
舞台上の張震に集中するには、念の為おトイレに行っておいた方が良いと判断し、
私は誰よりも早く会場の外に。

そ、そ、そしたら、な、な、なんと、偶然にも、男子トイレに入って行く張震を発見…!
捕まえて、プレゼントを渡そうとしたら、周囲のスタッフに取り押さえられた。
で、「プレゼントは、映画館のスタッフが渡しておきますから」と説得させられた。
ちゃんと渡してくれたかしらー?!やはり本人に直々に渡したかった。
まぁ、あの状況では、しょうがないけれど、本当に渡してもらえたのか心配で、悶々…。
我が人生で、張震に最接近したことだけでも(@武蔵野館トイレ入り口前)有り難いと思わなくては。

★ 『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』主演男優&プロデューサー舞台挨拶@新宿武蔵野館

10分の休憩も済み、午後3時55分、いよいよ舞台挨拶。
まずは、女性スタッフが簡単な説明。
「本人から許可が出たので、写真撮影できます。でも、トークショウの時は話に集中してもらいたいので、
ご遠慮下さい。後ほど撮影の時間をもうけます」とのこと。
バンザイ。やはり写真は撮りたいもん。
今の時代、無意味としか思えない、イベントでの撮影を禁止する日本独自ルール、早く崩壊して欲しい。


そのような説明も終わり、今度こそ本当にスタート。
登壇者は、主演男優の張震(チャン・チェン)以外に、プロデューサーの餘為彥(ユー・ウェイエン)
張震、白の長袖Tに、ブラックデニム、ジャケット、首には大判のバンダナというラフな格好。
“衣装”ではなく、“私服”なのでは。
髪型は、先月、『Mr.Long~龍先生』を携え、
第67回ベルリン国際映画祭に参加した時(→参照)のスタイルに近く、若干“Mr.スポック”が入っている感じ。
餘為彥Pの方は、“中国ロックの父”崔健(ツイ・ジェン)をおとなしくした雰囲気。
キャップを被っていたから、そう見えたのかも。

イベントは、スタッフが投げ掛ける質問に両者が答えるというトークショー形式。
私は、すぐ目の前に立っている張震に興奮し過ぎて、内容をあまり覚えていない。
ささやかな記憶を手繰り寄せ、以下、簡単にまとめておく。


張震
20年以上前の作品『牯嶺街』が公開され、こうして皆さんに会えて、嬉しいです。

餘為彥P
長い映画の鑑賞、お疲れ様でした。



質問
デビュー作でもある『牯嶺街』は、張震さんにとって、どのような位置づけの作品ですか。

張震
重要な作品です。初主演作ですし、これをきっかけに、映画に対する情熱を抱くようになりました。
共演の俳優やスタッフとは、その後も交流の続く友達にもなりました。
日本とも縁のある作品です。
上映された東京国際映画祭に参加したのが、僕にとって初めての海外旅行でした。



質問
現在の張震さんは、あの頃と比べ、どう変化しましたか。

餘為彥P
彼は、25年前とあまり変わっていませんね。昔の方が、むしろ大人っぽかったかも知れません。
当時は、口数が少なかったので。男性は、あまり喋らない方が、大人っぽく見えるものです。
撮影で、学業にも差しさわりがでて、あまり愉快ではなく、
映画の中の小四と感情が重なっていたのでしょう。
今の張震は明るくて、ジョークも言いますよ。



質問
実際の父親や兄が、映画の中で父・兄を演じるのはどうですか?

張震
変な感じで、イヤだったけれど、大きな問題はありませんでした。
父親に激しく叩かれるシーンがあった兄の方が大変で、のちに引きずる影響があったかも知れません。
でも、今思えば、貴重な経験でした。
まぁ、母は入っていませんが、家族が一緒に映像の中に残っているわけですから、楊昌監督には感謝です。



質問
餘為彥プロデューサーは、本作品以外でも、楊昌監督と何度もお仕事をしていらっしゃいますが、
監督との何かエピソードは?

餘為彥P
『牯嶺街』は、楊昌監督が中学生くらいの頃、台湾で実際に起きた殺人事件を扱った映画です。
この事件のことが、大人になってもずっとどこかに残っていたらしく、
楊昌監督は、映画化するために第一稿を書いたのですが、その時は実現しませんでした。
忘れられずにいたら、数年後、楊靜怡(リサ・ヤン)に出会ったことで、撮りたい気持ちが再燃し、
今度こそ映画となりました。
張震に関しては、私は、彼の父・張國柱(チャン・グォチュー)と以前仕事をしたことがありました。
当時9歳だった彼の息子が、ちょうど14歳くらいなっているはずだから、丁度よいと思いました。
この『牯嶺街』は、ただ単に殺人事件を描いただけの作品ではなく、
大陸から渡ってきた我々外省人が抱いていた不安が描かれている作品です。



張震
20年以上前のこの作品をきっかけに、こうしてまた皆さんとお会いでき、嬉しいです。
何度も言うように、この作品は、俳優としての自分にとって特別であるだけではなく、人生においても特別です。
撮影していた日々は、かけがえのない経験です。

餘為彥P
本日来場してくれた方の7割は女性。
楊昌監督と、映画について話し合っていた時、彼の出す意見がとても細やかだったのですが、
そういう細やかさが、女性に受け入れられるのかも知れないと感じます。



日本語もかなり達者であろう張震だが、今回の舞台挨拶では、全て中国語であった。
ただ、質問を聞いている様子から、日本語が分かっている感じは窺えた。

ちなみに、日本では片仮名で“チャン・チェン”と表記される張震。
“中国語には濁音が無い”というのは、
耳の悪い昔の日本人が言い切ったことで定説になってしまったのだと想像する。
張震も、実際の発音は、“チャン・チェン”より“ジャン・ジェン”に近いと思っていたけれど、
本日、餘為彥Pのお話を聞いていたら、さらに違った。
この餘為彥Pの中国語は、日本人が想像する典型的な“台湾のオジちゃんオバちゃん”の発音に近く、
“儿化”のようなこもった音があまり無い。
よって、張震のことも、ほぼ“ザン・ゼン”と呼んでおられた。
日本の張震ファンも、より台湾チックに呼びたかったら、以後、彼のことは“ザン・ゼン”ね。

★ 撮影会

続いて、フォト・タイム♪

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舞台袖に置かれていたポスターを、スタッフと化した(?)張震自らが移動。



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興奮と焦りで、手がブレ、結局、最高!と納得でくいる写真は撮れなかった。残念!


こうして、午後4時15分頃、イベント終了。
本来の予定より、10分ほど短縮されてしまったのが、ちょっと残念。
ただ、有楽町での追加の舞台挨拶が決まった時、時間的に移動がかなり厳しいと感じたので、
新宿での時間短縮は、なんとなく予想していた。
まぁ、舞台挨拶の回数が一回増えたことで、新たに2百人以上がお宝チケットを手にし、
張震を拝める機会に恵まれたのだから、OKといたします。

★ ニアミス…?!

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全てが終了してから、階下に行くと、建物の前に黒塗りのバンと、誰かを待つ運転手さんの姿。
うわぁぁぁぁぁぁぁ、最後にもう一度張震を見られるの?!と、一瞬色めき立ったが、
このお車に乗り込んだのは、餘為彥Pだけであった。
張震は、その前に、別のお車で有楽町に向かったのでしょうか。どなたか目撃した方、いらっしゃいますか。

★ 番外

なお、所属事務所の微博には、(↓)こんなお写真。

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裏で、ポスターにサインする張震。
次に武蔵野館へ行ったら、チェック。




とにかく、あの小さな空間で、張震と御一緒したなんて、夢のようなひと時であった。
そして、未だ夢見心地…。
2017年のラッキーを、3月の時点ですでに全て使い切ってしまったかのようで、コワイ…。
角川シネマ有楽町の方へいらした方は、如何でしたか?

映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は、浮足立っていない冷静な時に、もう一度再見したい。



追記
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どうやら、角川シネマ有楽町の方には、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品、
『黒衣の刺客』(2015年)で共演した妻夫木聡が花束もって駆け付けたようですね~。
張震からは、ブッキーに、幸運を呼ぶジョーズ柄の海パン(?)をプレゼント、
ブッキーは笑って「これを穿いて、『ウォーターボーイズ』の続編が撮れる」と言ったとか。
共演の機会は少なくても、気が合って、張震が日本に来ると、一緒に食事に行く仲だそうです。

最近のちょっとした中華芸能諸々(+お嫁様トレンド)

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幻の名作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)の日本再上映に際し、
来日して舞台挨拶を行った張震(チャン・チェン)を拝みに
新宿武蔵野館へ足を運んだあの日から(→参照)、早2日。
未だどっぷり夢の中で、薄汚い現実社会に目を向けられない私mangoでございます。



そして、もう一人。
私がズブズブに足を突っ込んだまま、長年抜けられないでいる“金城武”という底なし沼…。
日本には出演作が上陸せず、すっかり御無沙汰の金城クンだけれど、中華圏では作品の公開が続いている。
王家衛(ウォン・カーウァイ)プロデュースの『擺渡人~See You Tomorrow』に続き、
この春、公開されるのは、陳可辛(ピーター・チャン)プロデュースの『喜歡·你~This Is Not What I Excepted』。

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タイトルは、『男人手冊』→『你看上去很好吃』と変わり、最終的に『喜歡·你』。


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以前こちらにも記したように、相手役は周冬雨(チョウ・ドンユィ)。
恋と仕事を同時に失う危機に立たされている周冬雨扮する女性シェフ・顧勝男と、
勝男が働くホテルの買収を目論む金城クン扮する国際ホテル財団総裁・路晉のラヴ・ストーリー。
お話自体は単純で、斬新!って程ではないように見受けるけれど、
20歳近く年の離れた“大叔(おじ様)&蘿莉(ロリータちゃん)”の組み合わせが目新しいという。
ま、確かに、金城クンの恋のお相手に、周冬雨ちゃんがキャスティングされるなんて、考えたこと無かった。

金城クンは、過去にすでに3本の陳可辛監督作品に出演しており、
周冬雨ちゃんは、陳可辛がプロデュースしたもう一本の話題作『七月と安生~七月與安生』に出演。
この『喜歡·你』を監督した許宏宇(デレク・ホイ)は、数々の陳可辛監督作品の編集を手掛けてきた人で、
『七月と安生』の編集も担当。
金城クン、周冬雨ちゃん、そして陳可辛P、許宏宇監督は、そんな風に繋がっているわけ。



そんな『喜歡·你』の記者発表会が、
昨日、2017年3月15日、北京四季酒店(フォーシーズンズ北京)の5階バンケットルームで行われ、
主演の金城武と周冬雨が登場。

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金城クンは、監督の要望に応え、瞬時に役に入り込む周冬雨ちゃんの演技を絶賛。
周冬雨ちゃんは、金城くんの体力を称賛。
全館貸し切りにしたホテルで、ぶっ通しで36時間以内に撮影をしなければならなかった時、
金城クンが最後まで疲れ知らずで、しっかりと覚醒していたので、そう思ったらしいが、
いや、もっと他に褒める所あるでしょ。
一応、「まだ金城さんと知り合っていなかった昔、
私、本当に金城さんのカレンダーを買って、部屋に掛けていたんです。
今は一緒に映画も撮れる。女性ファンに怒られちゃいますね~」とも発言している。

女性主人公がシェフという設定なので、『喜歡·你』はちょっとした“美食映画”にもなっているのかもね。
金城クン扮する富豪の路晉は、年上らしい優しく懐の深い紳士という感じではなく、
口が悪く、ケチをつける面倒な男みたいなので、そこら辺の演技も楽しみ。


この映画では、他、孫藝洲(スン・イージョウ)や奚夢瑤(ミン・シー)が共演。

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⑧様の生まれ変わり康司瀚を演じたあの俳優(あまり日本人女性ウケするタイプに思えない)。
奚夢瑤はスーパーモデル。

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一口にモデルと言ってもピンからキリまでだが、奚夢瑤は、CanCamモデル程度ではなく、
ヨーロッパの一流メゾンのショーや広告は勿論のこと、
アジア人でありながら、女の子たちの憧れヴィクトリアズ・シークレットのショーにも出るトップ中のトップモデル。
来世があるなら、私も次回はこのボディで生まれたい…。


この『喜歡·你』、ポップなラヴコメだと、日本に入って来る可能性は低いでしょうか。
日本のスクリーンで、毒舌吐く金城クンが見たい。

★ お嫁入りニュース&お嫁様トレンド

さて、話変わって、お嫁入りのニュース。
前出の孫藝洲(スン・イージョウ)とも『僕たちのプリンセス~全民公主』で共演している
台湾の女優・安以軒(アン・アン)が、36歳にして、この度お嫁サマに。

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お相手は、かねてから噂のあった陳榮煉(チェン・ロンリエン)。
芸能人ではありません。福建省出身で、澳門(マカオ)を拠点にビジネスを展開する実業家。
“百億CEO”などと呼ばれる大富豪。

常々当ブログにも記しているように、台湾女優は毛に無頓着な人が多い。
中でも、私がこれまでに見た中で、最も多毛だったのが、安以軒。
ドラマ『アウトサイダー~鬥魚』で見せた背中が、
ちょっとしたカーペット並みにフサフサだったのが、記憶に鮮明。
大富豪をオトすにあたり、あの毛はどう処理したのだろうか。もしくは、大富豪が毛フェチとか…?
全国の大玉の輿狙いの黒いオトメたち(私を含む)に、参考までに教えて欲しい。

いえ、そんな事より、安以軒の足元。
ウェディングドレスに合わせているのが、スニーカー。
アディダスのStanSmith(スタンスミス)というモデルだそう。
日本だと、だいたい1万2千円くらいで買える物みたい。



この安以軒と限らず、近年、中華圏では、スニーカーを履いて結婚写真を撮る明星が激増。

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まずは、古いところで、2010年に、
香港明星、“小春(こはる)”こと陳小春(ジョーダン・チャン)と結婚した應采兒(チェリー・イン)
この画像だと分かりにくいが、レースをたっぷりあしらったスニーカーを履いている。
この頃は、スニーカーがまだ珍しかったので、
あまり身長差の無い新郎・小春を気遣ってスニーカーにしたのでは…、などとも言われていた。
(應采兒=169センチ、陳小春=178センチ)



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香港繋がりで、鐘麗緹(クリスティ・チョン)
昨年、一回り年下の(!)大陸俳優・張倫碩(チャン・ルオシュン)と3度目の(…!!)結婚をした時のお写真。
赤いスニーカー&鉄アレイ。熱いっ!肉食系の鑑!もー、エネルギーみなぎっております。



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台湾からは、2011年に“人”こと陳建州(ブラッキー・チェン)と結婚した范瑋(ファン・ウェイチー)
新郎はブラック、新婦はシルバーのナイキ。結婚記念日が記された特注品。
190センチ&172センチのスポーティーな大型カップルに、スニーカーはぴったり。



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台湾だったら、舒淇(スー・チー)も。
昨秋、40歳で、香港の馮倫(スティーヴン・フォン)についにお嫁入り。
億単位のお金を注ぎ込む人もいるほど、ド派手婚の多い中華圏の明星にしては珍しく、
さら~っとシンプルに結婚した二人。
ハレの日のお召し物も気負わず、履いているのは、
ステラ・マッカートニーが手掛けたアディダス・ピュアブーストのピンク。
着ているドレスも、なんと懐に優しいあのH&M製(しかも、自腹ではなく、H&Mから贈られた物)。
お金ならたんまりある大物カップル。敢えて派手にせず、自分たちのスタイルを貫いたのが分かります。
とても可愛らしいし、幸せそう。



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日本人でも、台湾を拠点に活動する大嘴巴Da Mouthの千田愛紗が、
昨年、台湾の年下モデルと結婚した際、スニーカーを履いたお嫁サマ姿を披露。
小柄な彼女は、キュートに決まっている。



日本国内だと、どうなのでしょう。
小栗旬と結婚した山田優は、スニーカーを履いていたけれど。
山田優くらい足が真っ直ぐ長ければ良いけれど、
日本人はふくらはぎがシシャモみたいに張っている人が多いから、
スニーカーをお嫁入り衣装にするのは、ちょっとキビシイかも…?

幾米<星空>出版記念トークイベント&サイン会in新宿

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台湾の絵本作家・幾米(ジミー・リャオ)の作品、<星空>の日本版出版記念で、幾米が来日。
2017年3月17日(金曜)、虎ノ門の台湾文化センターで、
日本で初めてのトークショーとサイン会が開催されるというが、あら、行けない、残念!と諦めたら、
その翌日、3月18日(土曜)、新宿南口の紀伊國屋書店でも開催されると知り、そちらへ行くことに。

…とは言っても、着席して観覧できるのは、先着で予約した35名のみ。
予定が定まらず、ぐずぐずしている内に、定員…。

でも、大丈夫。
オープンスペースでの開催なので、立ち見なら、誰でも予約無しに観覧できるし、
本さえ購入すれば、サインももらえる。



ここで、念の為、幾米(ジミー・リャオ)とは…

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1958年生まれ、台湾の著名な絵本作家。
中華圏全土で広く知られ、絵本でありながら、4作品が映画化されている。

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<向左走·向右走>『ターンレフト・ターンライト』 金城武+梁詠(ジジ・リョン)主演
<地下鐵>『サウンド・オブ・カラー 地下鉄の恋』 梁朝偉(トニー・レオン)主演
<戀之風景>『恋の風景』 林嘉欣(カリーナ・ラム)主演
<星空>『星空』 林書宇(トム・リン)監督

さらに、<向左走·向右走>と<地下鐵>は、ドラマ化も。
映画化された4本の内、日本未公開なのは、『星空』だけ。これ、とても観たい映画。
私は、幾米の絵本を何冊か所有しているが、『星空』の原作絵本はまだ持っていなかったので、
今回の機会は丁度良かった。



この紀伊國屋書店のイベントでは、幾米のお話相手に、映画監督の永田琴も来場。
私、永田琴監督は、そんなによく知らず、映画『渋谷区円山町』、ドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』
あと、ネット上で視聴可能なネスレのショートフィルム2作、
『我愛你 in TOKYO』と『その一言がいえなくて~說不出的那句話』しか恐らく観たことがない。

『我愛你 in TOKYO』は、古川雄輝の相手役が程予希(ルゥルゥ・チェン)、
『その一言がいえなくて~說不出的那句話』は台湾で撮影されており、
重要な役で曾沛慈(ツォン・ペイツー)が出演している。
日本の人気コミックが原作のドラマ『イタズラなKiss』 だって、最初に映像化してヒットさせたのは台湾だし、
永田琴監督は、台湾と御縁のある監督ではあるようだ。

★ イベント参加準備

今回のイベントは、新宿南口の紀伊國屋書店のオープンスペースで、午後4時半開場、5時開演。
トーク40分、Q&A30分、その後、絵本購入者を対象にサイン会という流れ。


私は、午後ちょっと用があったので、まずお昼頃紀伊國屋書店へ行って、先に本を購入し、
整理番号の入ったサイン会参加券を入手。

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せっかくの<星空>日本版出版記念イベントなのだから、日本版を買うつもりでいたのだが、
お店で、日本版と輸入版の両方を見たら、輸入版の方が、使用している紙質が、私好みだったので、
結局、輸入版を買ってしまった。
(もう少し具体的に言うと、輸入版で使用している紙の方が、厚めで、若干ざっくり、
適度な光沢がありながらマットなテクスチャー。)


これで取り敢えず準備OK。

★ 絵本<星空>作者・幾米×永田琴監督トークショー

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用を済ませ、急いで紀伊國屋書店へ駆け付けたが、開演の午後5時に間に合わず…。
書店の中に設けられたイベントスペースは多くのお客さんで溢れ、すでにお話が始まっている。

進行を務めているのは永田琴監督。
監督は、<星空>をかなり読み込んでいるらしく、
自身で感じた印象を交えながら、湧いた様々な質問を幾米に投げ掛けている。
残念だったのは、その時点で、私がまだ<星空>を読んでいなかったこと。
読んでいたら、質問の意味をもっと深く理解できただろうに…。


そんな訳で、理解不足の私が、それでも印象に焼き付いたやり取りを、以下、一部挙げておく。

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永田琴監督
私が映画を作る時は、登場人物の名前は大切で、そこからその人物の背景などを具体的に考えますが、
幾米さんの絵本の登場人物には名前がありません。なぜ、名前をつけないのですか。

幾米
敢えてボカして、シンプルにするようにしています。



永田琴監督
赤い色が印象的に使われていますね。

幾米
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『レッド・バルーン』(2007年)を観て、じゃぁ、私も赤を使おうと思いました。
物語の中では、あとに、赤い恐竜が出てくるので、そことも関連付けています。
最後の赤いベレー帽は、『ターンレフト・ターンライト』(2003年)の中で、
金城武とスレ違う女の子が、やはり赤い帽子を被っているので、
あの女の子に繋がるよう、赤いベレー帽を被せました。



永田琴監督
昼間でも、家の中に電気が点いていないのは?

幾米
彼女は双眼鏡でいつも外を見ています。家の中が明るかったら、外からそれがバレてしまいます。
また、彼女の心が暗いことの暗喩にもなっています。



永田琴監督
男の子と女の子が星空を見に行く時、二人とも運動服を着て、ポケットに手を入れているのは、なぜ?

幾米
手を描くのは、結構難しいんですよ。

永田琴監督
映画を撮る時、お芝居に慣れていない子は、ポケットに手を入れさせると、お芝居し易くなるんですよ。



永田琴監督
映画では、何度も何度も脚本を書き直し、使えず削る部分も出てきます。
絵を描いて、絵本に使わない物もあるのですか。

幾米
下描きは沢山描きます。そこから使わない物も沢山あります。
正式に描き始め、気に入って描き上げ、それでもどうしても物語に入れられない物も出てきます。
そういう場合は、この物語には合わなかったのだと、諦めます。



永田琴監督
一枚の絵はどれくらいの時間で描き上げるのですか。

幾米
一枚を仕上げる時間というのは、言いづらいですね。
どういう風にしようかと考える時間や、物語の流れを確認する時間もあるので。
ただ、描き始めると、私は筆が速く、彩色の作品で、だいたい1~2日以内に完成させます。
それ以上時間をかけると、飽きてきてしまいます。



永田琴監督
創作の気分転換は。

幾米
毎日規則正しく生活をしています。いつも朝8時から、午後5~6時くらいまで仕事をしています。
時間に余裕がある時は、映画を観に行ったり、飼っている3匹の年老いた猫の面倒を見ています。



永田琴監督
最後にメッセージを。

幾米
ありがとう。(日本語) 



日本では出版されたばかりの<星空>だが、すでに8年前の作品なので、
幾米御本人も、すでによく覚えていないようで、永田琴監督が投げ掛ける質問の多くに、
かなりの頻度で、はにかみながら「忘れた」と馬鹿正直に答える(笑)姿が、お茶目な幾米であった。
自身の作品が3本の映画になったと話しておられたが、それも4本の間違いよねぇ…?
幾米が忘れた一本の映画は、どれでしょう。(←恐らく、まったく話に出なかった『恋の風景』と思われる。)
永田琴監督が、<星空>をあまりにも細部まで読み込み、ご自分なりの見解をもっているので、
幾米も、「随分よく見ていてくれているなぁ~」と感心している様子も窺えた。

ここまでで、すでに時間オーバーの午後6時10分。
続いて、会場のお客さんからの質問に答えるコーナー。
こちらも、記憶に残った物だけ書き残しておく。


質問
映画化された物を観ましたが、どの作品も幾米さんに対するリスペクトが感じられました。
そういうのを、どうお感じですか。

幾米
監督に100%任せ、好きなように撮ってもらっています。
私もクリエーターだから分かりますが、クリエーターは、人から指図されたくないものです。



質問
幾米さんの青の色が好きです。インスピレーションはどのように湧いてくるのですか。

幾米
私の作品は、色が鮮やかです。描いていて、色が鮮明じゃないと、描き終わった気がしません。
それは、亜熱帯の台湾に暮らしていることも関係しているかも知れません。
私がもし北欧に住んでいたら、違っているかも。
インスピレーションは無いと、仕事になりません。
湧いてくるというより、クリエーターは、周りにあるインスピレーションを掻き集めているような感じです。
クリエーターじゃない人は、インスピレーションが有っても、見落としているかも知れません。



私は映画が好きなので、映画の話はもっと聞きたかった。
同じクリエーターとして、監督には口出しせず、好きなように撮らせるとは、なんとも寛大だが、
自分の大切な作品をいじらせるのだから、手掛ける“監督選び”は、それなりに慎重なのではないかと想像。
これまで、杜峯(ジョニー・トー)とか馬偉豪(ジョー・マ)とか林書宇(トム・リン)等々が、
幾米作品を実写映像化してきたわけだが、なぜこれら監督にその権利を与えたのだろうか。
過去の監督作品が好きだからとか、企画を聞いてピンと来たとか、人柄が良さそうとか、何かあるでしょー?!
永田琴監督も、もしかして、その内、幾米作品を映像化することになるかも…?
この度のイベントで、永田琴監督の“幾米作品愛”は、御本人にもキョーレツに伝わったと思うので、
「私に撮らせて!」とお願いすれば、OKのお返事をもらえそうな気がする。

★ サイン会

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トークショーの後はサイン会。
予定より20分ほど押し、午後6時半頃スタート。
サイン会参加券に記された整理番号順に並び、サインをもらい、大抵の人は幾米とツーショット写真を撮影。
先着百名には、最後、2種類のポストカードと、
微熱山丘 SunnyHillsより提供の鳳梨酥(パイナップルケーキ)がもらえる。


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私は自分の写真が嫌いなので、幾米お一人様写真を。
サインには、猫の絵が添えられている。やっぱり猫が好き、…なのですね。




<星空>出版記念幾米トークショーと、私にとっては台湾ウィークであった。

幾米は、一人一人にとても丁寧に対応。シャイで優しいお人柄が滲み出ていた。
イベント全体もとても楽しかった。
永田琴監督も、“なんとなく白羽の矢が立って、やって来たトークのお相手”という感じではなく、
幾米作品への深い愛情が感じられ、その愛あってこその突っ込んだ話を展開していたし、
クリエイター同士で通じる何かが、第三者である客席の我々にも伝わってきた。
台湾文化センターの方へいらした方々、そちらは如何でしたか。
このような機会が有れば、また行きたい。
1998年に絵本作家デビューした幾米は、来年節目の20周年。日本にもまた来ていただきたい。
それ以前に、今回来てくれて感謝!です。

あと、映画『星空』は、やはり観たい!
原作絵本の日本版も出版されたことだし、日本公開に繋がってくれたら、嬉しい。


そうそう、余談になるが、紀伊國屋書店の会場で、双子の倉あんなと倉れいなの姿を見掛けた。
我々がサイン会の列に並んでいた時は、トークショーを終えた永田琴監督と、片隅で雑談していた。
監督と一緒にお仕事をしたことがあるのでしょうか。
彼女たちは、それぞれ“安娜”、“芮娜”の名で、近年、拠点を台湾へ移し、活動している一卵性双生児。
確か、大陸ドラマ『ときめき♡旋風ガール~旋風少女』の続編、『旋風少女 第2季』にも出ているはず。
小柄だけれど、まったく同じ顔の美人さんが二人一緒に居ると、目を引きます。

再上映!映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』4Kデジタルリマスター版

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【1991年/台湾/236min.】
1960年、台湾・台北。
上海から渡ってきた両親と暮らす張震は、5人兄弟の4番目で“小四”と呼ばれ、
建國中學昼間部への入学に失敗し、夜間部に通い始めた少年。
公務員の父は、小四が夜間部で、悪い仲間に影響されるのではないかと心配し、
知人の汪に、昼間部への編入を頼むが、そうすぐには叶わない。
そんな父自身、台湾へやって来て十年以上が過ぎても、先行き不透明で、
言葉には表現できない不安を抱えていた。

親の心配をよそに、友達とつるんで授業をさぼったり、撮影現場に忍び込んだりしている小四は、
学校の医務室で出会った小明という女の子に関心を抱くようになる。
徐々に小明と親しくなっていく小四だが、ある時、彼女に関する噂を耳にする。
小明は、小公園のリーダー格・ハニーの恋人で、
そのハニーは、敵対する不良グループ217のリーダーと小明を奪い合った挙句、殺害し、
台南へ逃亡して、消息が途絶えているというのだ。

一方、小四のクラスに、小馬という司令官の息子が転校してくる。
前の学校で人を斬ったという黒い噂があり、近寄り難い雰囲気の小馬だが、
人違いで不良に絡まれた小四を助けたのを機に、二人は仲の良い友人になっていく。

そんなある日、ずっと行方知れずだったあのハニーが台北に姿を現す…。


2007年6月29日、59歳の若さでこの世を去った(→参照楊昌(エドワード・ヤン)監督の代表作で、
台湾映画史上最高傑作の一本!と称えられながら、長年お蔵入り状態に陥った不遇の名作。



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日本とも御縁のある作品で、第4回東京国際映画祭では、審査員特別賞と国際批評家連盟賞を受賞。
しかし、“日本と御縁”が災いに…。
本作品に関する様々な権利を有していた日本の会社が、バブル崩壊後の2005年に倒産し、
それら権利が黒い会社(!?)の手に渡ってしまったため、
ソフト化も上映も困難になり、実質お蔵入り状態になってしまったと噂されている。
楊昌監督が亡くなった2007年、所縁のある東京国際映画祭が監督の追悼特集を組んだ際も、
一番上映すべき本作品はラインナップから外されていた。

ところが、もう二度と日の目を見ることは無いかも…、と半ば諦めかけていた2016年、
どういう問題解決がなされたのか、マーティン・スコセッシ監督が設立したワールド・シネマ・プロジェクトと
クライテリオン社の共同で、4Kデジタル修復版が制作され、アメリカでソフト化。
地元台湾でも、第53回金馬獎でスクリーンに。
ここまで来たら日本でも…、とほのかな期待を抱いていたら、案の定、第29回東京国際映画祭で上映。
チケット発売時、すでに一般劇場公開が決まっていたので、私は映画祭をパス。

楊昌監督生誕70年、没後10年の節目に当たる2017年3月の公開を心待ちにしていたところ、
主演男優の張震(チャン・チェン)の来日舞台挨拶が発表。
思いが強過ぎて、チケット発売当日は緊張しまくったが、私もお宝チケットの入手に辛うじて成功。
こうして、ただでさえ心待ちにしていた映画を、張震舞台挨拶という大きなオマケ付きで観られる幸運を得た。
ありがたや、ありがたや。(→舞台挨拶については、こちらから。)




舞台は、1960年代初頭の台北。
主人公は、成績優秀でありながら、昼間部への入学に失敗し、建國中學夜間部に通う外省人の少年・小四。
物語は、親の心配をよそに、不良の溜まり場“小公園”という冰菓室に出入りする少年たちとつるむ小四が、
他の多くの男子生徒と同じように、小明という少女にほのかな恋心を抱き、徐々に彼女と親しくなっていくが、
ある時、姿をくらましていた小明の恋人・ハニーが台北に突如戻って来たことで、
ふたつの不良グループ、“小公園”と“217”の対立が激化、
それは、小四と友人、小四と小明の関係にも暗い影を落とし、
ついには殺人事件にまで発展してしまう悲劇を描くダークな青春残酷物語


本作品は、1961年6月、台北の牯嶺街で、
建國中學に通う山東籍の15歳の少女・劉敏が、同校の浙江籍の16歳の少年に殺害されたという
実際に起きた事件をモチーフにしている。

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これは、国民党政府がやって来てから台湾で初めて起きた未成年者による殺人事件で、
加害少年は死刑を宣告されるが、後に判決が覆り、30歳のお誕生日直前に釈放されたらしい。

楊昌監督は、この加害者と2歳しか違わない1947年生まれで、
2歳の時、生まれ故郷の上海から、家族と共に台湾へ渡った外省人。
事件が起きた当時に通っていた学校も、事件当事者と同じ建國中學。
新宿武蔵野館で行われた舞台挨拶でも、余為彥(ユー・ウェイエン)プロデューサーが
「楊昌監督が中学生の頃、台湾で実際に起きた殺人事件が、監督のどこかにずっと残っていて、
映画にしたいと考えていた」と語っていたが、自分と境遇の重なる同世代の少年が起こした惨事が、
中学生だった楊昌監督にとって、色んな意味でいかに衝撃的だったかは、想像に容易い。

そんな訳で、本作品は、一見、恋愛のもつれから起きた痴情事件を描いた作品。
優等生が大胆な事件を起こし、あんな真面目な子がなぜ?!と世間を驚かせる事は、日本でもしばしば。
しかし、牯嶺街の事件の背後にあるのは、当時の台湾独特の事情であり、
本作品も、少年少女の痴情事件を描く一方で、
複雑な歴史に翻弄される人々(さらに言うと、台湾の外省人)を描く戦後台湾の歴史ドラマの側面をもつ。
私が本作品を興味深く観るのも、青春物語の裏に、台湾が歩んだ歴史の一頁を覗けるから。

“台湾独特の事情”とは、終戦と同時に、日本の支配から解放されたものの、
蔣介石率いる国民党政府に接収された事。
1949年頃から、国民党政府と共に大陸から多くの人々が台湾に流れ、ついには定住。
台湾に元々いる“本省人”に対し、“外省人”と呼ばれるこれらの人々は、
昨今、日本統治時代を美化する日本人からは、悪者呼ばわりされることもしばしば有るけれど、
もはや欠かすことのできない台湾の一部だし、外省人の中にも様々な人がいる。

そもそも、後に“外省人”と呼ばれる人々にとって、
大陸から南の小島・台湾へ渡るという事は、かなりの“都落ち”感があったと推測。
本作品が描く、その後の1960年代初頭は、そんな外省人たちにとって、微妙な時期。
良い生活をしている高官や、そこに上手く乗る世渡り上手が存在する一方、
大陸へはもう戻れそうにない、かと言って、台湾でも安定した生活が得られない…、と先が見えず、
不安に襲われる庶民が多数。
本作品も、まさにそんな重苦しい空気が漂う当時の台湾だからこそ起きた事件を描いており、
結果的に起きた事件そのもの以上に、そこに至る背景こそが、作品の核と感じる。


日本人にとっては、作品の中に“未だチラつく日本の影”が見られるのも、興味深い。
外省人の中でも比較的裕福な人は、眷村(けんそん)には暮らさず、日本人が遺した立派な木造家屋に住み、
その屋根裏で見付けた日本刀や日本人女性の写真が、少年たちの興味の対象になっているシーン等がある。
最後に殺人の凶器になるのも、日本のいわゆる“ドス”である。
父親が公務員の主人公・小四の家も、ややお粗末ながら日本式家屋。
夕食時、御近所から漏れ聞こえる音楽は、日本歌謡。
有難迷惑なBGMが流れる中、小四の母が、
「日本と8年戦って、今暮らすのは日本家屋で、耳にするのは日本の歌…」とボソッと呟くシーンも。




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出演は、まず、“小四”こと張震に張震(チャン・チェン)
小四が想いを寄せる女学生・小明に楊靜怡(リサ・ヤン)

『牯嶺街少年殺人事件』は、今や国際映画祭の常連で、中華圏を代表する俳優になった張震が、
14歳にして、初めて主演を飾った記念すべき作品。
(二世俳優である張震は、それ以前にもちょっとした映画出演経験が有るので、
よく“『牯嶺街』がデビュー作”と言われているけれど、正確には、本作はデビュー作ではない。
“初出演作”ではなく、“初主演作”であり、“実質的デビュー作”。)

どこの国でも、大成する子役出身者はあまり居ない。
子供の頃からチヤホヤされ過ぎて、自分を見失ってしまう場合もあるだろうが、
仮に自分をしっかり持っていても、子役と大人の俳優では、求められる物が違うから、
その需要に巧く応じながら大人にシフトすることに失敗して、潰れていくケースも多いのでは。
子役に求められるのは、可愛さだったり健気さだけれど、大人だと、それだけじゃ駄目。
見た目も、特に男性の場合、子供の頃に「カワイイ~」と誉められる人は、
大抵、とっちゃん坊や風の痛いオジさんと化してしまう。
むしろ子供の頃、老けているだの器量が悪いだのと貶される人の方が、カッコイイ大人の男に成長するものだ。

ところがさぁー、40歳の今カッコイイ張震は、14歳の『牯嶺街』で、私の定説を覆す可愛さ。
単純に顔立ちが整っていて可愛いし、
醸す少年らしい雰囲気が、難しいお年頃の小四にぴったり。
小明に、「僕はハニーとは違う。君を守って、安定を与えるから」と言うのだが、
それを見ている第三者の私に、「いやいや、君には無理でしょ」と思わせてしまう幼稚な一生懸命さが良いワ。
あの真っ直ぐな青臭さや危うさは、14歳のあの時にしか出せなかった物だと感じる。


そんな小四が想いを寄せる小明は、学園のマドンナ。
同世代の少年のみならず、もっと年上の男性からもモッテモテ。しかも、自分でもそれを分かっている。
決してウブではなく、すでに“オンナ”の一面をもつ、なかなかの小悪魔。
扮するは楊靜怡。
楊昌監督は彼女と出逢ったことで、『牯嶺街』を撮ろうとしたほど、監督に霊感を与えた女の子。
それだけの事あり、清楚な中に芯があるというか、何か凛とした物を感じさせ、
小四よりすでに精神的にずっと大人な小明に合っている。

本作品での演技が認められ、金馬獎で主演男優賞にノミネートされた張震と同じように、
楊靜怡もまた主演女優賞にノミネートされるも、その後の人生の選択は張震とは違い、
彼女はあっさり芸能界とはサヨウナラ。
アメリカで学び、現地で会計士となり、韓国系アメリカンの男性と結婚し、3人の子をもうけ、NY在住。
普通の新人女優だったら、“楊昌監督に見出されたミューズ”の名にシガミ付きそうなものだけれど、
なんとも潔い楊靜怡。ロスで行われた楊昌監督の葬儀の際、一度だけメディアに登場したのを見たが、
すでに一般人なので、それっきり。

そうしたら張震が昨年、自身の微博に、(↓)このような写真を投稿。

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20年以上の時を経ても、小明の面影ありますね~。でも、映画の中の小明よりずっと幸せそうな笑顔。



非常に登場人物の多い群像劇なので、他の出演者についてはサラッと。
小四の家族は現在も芸能の世界で活躍中の人が多いので、今のお姿と比較しながら。

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公務員の父・張舉に張國柱(チャン・クオチュー)、教員を休職中の母・金先生に金燕玲(エレイン・ジン)
一番上の姉“老大/大姐”張娟に王娟(ワン・ジュエン)、“老二”こと兄・張翰に張翰(チャン・ハン)
二番目の姉“老三/二姐”張瓊に姜秀瓊(チアン・ショウチョン)など。

父と兄は、張震の実際の父と兄。
といったヒットドラマが日本にも入ってきているので、映画を観ない台湾ドラマニアでも知った顔であろう。
ドラマで見る張國柱は、濃過ぎるドーランばかりに目を奪われてしまうが、
私生活で、ふた回りも若い女性と再婚しただけあり、70近い現在も充分イケている素敵なおじ様。
『牯嶺街』に出演したのは、今の張震とほぼ同世代の40代前半だが、今の張震以上の美男子で、
融通が利かず、立ち回りの下手なインテリを演じている。

兄・張翰は、最近、日本では、同姓同名の大陸若手人気俳優の方が注目されがちだけれど、
それでも出演ドラマがボチボチ日本に入って来ている。
ディーン・フジオカ目当てで『王子様をオトせ!~就是要你愛上我を御覧になった方々、
あのドラマでストーカーJerryに扮しているのが、張震のお兄サマです。
私は、張翰出演ドラマだったら、李雲嬋(ロビン・リー)が監督し、今をときめく彭于晏(エディ・ポン)や
張鈞(チャン・チュンニン)も出ている『ハチミツとクローバー~蜂蜜幸運草』が好き。


女子の部では、母親役の金燕玲が、還暦過ぎても、映画で大活躍。
一番上の姉・張娟役の王娟は、台湾偶像劇の母親役が定着し、すっかりオバちゃんのイメージがあるので、
久し振りに観た『牯嶺街』で、小さな弟妹をもつ妙齢の女性を演じているのが不思議な感じ。
もう一人の姉・張瓊役の姜秀瓊は、その後、表舞台から裏方さんの監督に転向。
4人の監督による4話のオムニバス映画『昨日的記憶~When Yesterday Comes』(2011年)の一篇、
彼女が手掛けた『迷路~Healing』では、『牯嶺街』で弟を演じた張震を主演男優に起用。
また、近年は、永作博美を主人公に、『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』(2015年)という
日本映画も撮っている。



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他、印象に残るのは、小四の親友で、歌の上手い“小貓王”こと王茂に王啟讚(ワン・チーザン)
同じく親友の飛機に柯宇綸(クー・ユールン)、転校してきた司令官の息子・小馬に譚志剛(タン・チーガン)
逃亡先の台南から突如戻って来た小公園のリーダー格ハニーに林鴻銘(リン・ホンミン)等々。

この中で、今でも現役バリバリの俳優は、柯宇綸だけ。
彼もまた、張震と同じように二世俳優で、父は俳優で監督の柯一正(クー・イーチェン)。
パパが楊昌監督と親しかったこともあり、『牯嶺街』に出演。
13歳にして、『牯嶺街』はすでに5本目の映画出演だった柯宇綸だが、
映画に全ての情熱を注ぐ楊昌監督と仕事をしたことで、人生にかなりの影響を受けたようだ。
(↓)こちら、2013年3月号の台湾版<美麗佳人 マリクレール>。

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十人の有名人が20年前を振り返るという特集で、柯宇綸が挙げているのは、やはり『牯嶺街』。
大人になった柯宇綸が建國中學の制服を着て撮った再現写真、面白いですね~。
映画撮影当時の柯宇綸は、一歳しか違わない張震より、ずっとちっちゃくて、可愛らしい。


“ちっちゃくて可愛い”と言えば、小貓王(リトル・プレスリー←中華圏では、“貓王”がプレスリーの愛称)!
扮する王啟讚は、柯宇綸と同じ1977年生まれだが、柯宇綸以上のプチサイズ。
この小貓王は、本来、小馬役の譚志剛にやらせる予定だったところ、譚志剛がガンガン成長してしまい、
役に合わなくなってしまったので、代わりに王啟讚がキャスティングされたらしい。
代役とは思えない程のハマリ役で、プレスリーに憧れ、一生懸命英語の歌詞を覚え、
お立ち台にのって、少年らしいソプラノで歌う姿は印象的。
その後も俳優業を続けた王啟讚の出演作で、私が最後に観たのは、
名作ドラマ『ニエズ~孽子』のはずなのだが、記憶ナシ。どこに出ていたのだろう?
結局、彼は芸能界を離れ、車の改造工場を開き、商売に専念しているとのこと。

江湖感漂うハニーは、楊昌監督のお気に入りキャラで、声の吹き替えも監督自らが担当。
私にとっては、お気に入りキャラという程ではないが、
海軍のセーラー服(しかも、すンごいベルボトム!)を着た変テコなチンピラを、
日本では見たことが無かったので、やけに異国情緒を感じ、ずーーっと記憶に焼き付いていた。
演じている林鴻銘は、このハニーで一気に名を馳せたものの、その直後、バイク事故で足に大怪我を負い、
長期間治療に専念している間に、次々とチャンスを失い、芸能界からフェイドアウト。
…が、『牯嶺街』で助監督を務め、後に台湾偶像劇の有名監督となる瞿友寧(チョウ・ヨウニン)が、
林鴻銘を探し出し、同監督が演出した2001年の公視のドラマ『天空之城』に出演させている。
これが、『牯嶺街』後の最初で最後の林鴻銘出演作。
現在は結婚し、子供もいて、台北のコーヒーショップ喜朵咖啡館のオーナーさん(場所は信義路2段18號)。

芸能界引退どころか、この世から去ってしまったのが、
前述のように、本来予定されていた小貓王から小馬の役に変わった子役出身の譚志剛。
その後、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督にも気に入られ、
侯孝賢プロデュースの『少年吔,安啦!~Dust of Angels』(1992年)に主演し、前途洋々と思われたのに、
1993年、不慮の事故で死亡。享年18歳。


他にも、あーんな人やこ~んな人が多数出演。
一部挙げると、小明の叔父さん役で金士傑(ジン・シージエ)
217太保幫の山東の子分・嘴子役で劉亮佐(リウ・リャンズオ)
お医者さんの婚約者・香莉役で陳湘(チェン・シアンチー)
女性警官役で郎祖筠(ラン・ズーユン)等々…。
久し振りに観たことで、えー、こんな人がこんな役で出ていたんだぁ、という驚きがいっぱい。




関羽に青龍偃月刀、李小龍(ブルース・リー)にヌンチャク、スケバン刑事にヨーヨー(!?)といった具合に、
昔から人気キャラにはお約束の武器や道具が付き物で、
『牯嶺街少年殺人事件』の小四が大切にしているお約束は、大きな懐中電灯。
懐中電灯でずっと闇を照らしていた小四自身が深い闇に落ちた時、懐中電灯をドスに持ち替え、
変えられると信じていた理不尽な世界で起こしたあの悲劇…。
鮮血に染まったTシャツで立ち尽くし、一拍置いて、もう後には戻れない現実を目の当たりにし泣き崩れる小四。
嗚呼、青春がヒリヒリと痛い…。

本作品は、長年封印されていた事で、私の中で想いが膨らみ過ぎているのではないかとの懸念もあったが、
やはり台湾新電影の最高峰の一本、…いや、全台湾映画の中でも、最高の一本。
ビリヤード、チンピラ、作業服のような制服、いかがわしい空気、青春、不条理、ロングショットの長回し等々、
私が思い浮かべる“これぞ台湾映画!”が全部詰まっている。
大好きな作品と言っていた割りに、詳細をすっかり忘れていたので、
まるで初見の作品かのように、新鮮な気持ちで観ることもできた。
また、その封印期間に、私も随分大人になり、
以前より歴史に詳しくなって、作品に対する理解が深まったような気がしなくもない。
その代償に、昔はストレートに感じた物が、今は感じられなくなっている可能性も。
映画は観る年齢や時期などによって、受け止め方が変わるものだと思うので、まぁ、それはそれで良いかと。
『牯嶺街少年殺人事件』を傑作と見做す思いは、今も昔も同じ。
(もしかして、日本語字幕は改めた?とても分かり易くなっているのだけれど…。)

現時点で、“外省人モノ”の傑作は…

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映画なら、この『牯嶺街少年殺人事件』と、侯孝賢監督の『童年往事 時の流れ』(1985年)、
ドラマなら『ニエズ~孽子』と勝手に認定させていただきます。
(ドラマは、『ニエズ』と同じ原作者&監督コンビによる『一把青~A Touch of Green』も、
観たら、“外省人モノ”の傑作に加わりそうな予感。)

私と限らず、本作品を大絶賛する声は多いけれど、実のところ、万人向きだとは思わない。
特に、ここ数年で台湾エンタメに魅せられた人が、
世間での高評価に乗せられて、この映画を観たら、恐らく失望すると思う。
昔と今とでは、台湾エンタメの趣きが相当違うから、
『海角七号』(2008年)や『KANO』(2014年)こそが台湾映画だと思っている人や、
ましてや台湾偶像劇が台湾エンタメの全てになっている人が観ても、きっと退屈なはず。

私は、最近の台湾映画に失望することが多いので、今回改めて『牯嶺街少年殺人事件』を観たことで、
あの頃が台湾映画界の黄金時代だったのだシミジミと感じ、
状況が変わってしまった事や、楊昌監督がもうこの世に居ない事を淋しく思うのであった…。
まぁ、嘆いたところで、仕方が無いのだけれど。

『牯嶺街』は、もうちょっと待てば、DVDが出ると信じてよろしいでしょうか…?!出たら絶対に買う。
でも、この手の作品が好きな人には、DVDを待つより、まずは映画館の暗闇で観ることをお勧めしたい。
約4時間という長尺なので、おトイレ問題を考えたら、家でDVD鑑賞の方が断然気楽だけれど、
気楽に流して観たら、もったいない作品。覚悟を決めて観に行くだけの価値あり。



『牯嶺街少年殺人事件』日本再上映に際し、
来日した主演男優・張震とプロデューサー余為彥による舞台挨拶については、こちらから。

映画『哭声/コクソン』

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【2016年/韓国/156min.】
韓国・谷城。
普段は静かなこの村で、残忍な殺人事件が発生し、
警察官のジョングは、珍しく朝っぱらから呼び出しを食らう。
その後も、不可解な死を遂げる村人が続出。
一向に真相が掴めず、得も言われぬ恐怖に包まれた谷城では
「山奥に潜むよそ者が怪しい」、「あの日本人が来てから事件が続くようになった」と噂が広がり始める。
その頃、ジョングの娘・ヒョジンにも異変。
義母の勧めで、厄払いのため祈祷師を呼んだところ、彼は、山に居るよそ者が元凶だと断言。
ジョングは、日本語を喋る神父ヤン・イサムを通訳として連れ、怪しいよそ者との接触を試みるが…。


韓国のナ・ホンジン監督による長編監督作品第3弾。

ナ・ホンジン監督作品は、前2作、『チェイサー』(2008年)も『哀しき獣』(2010年)も嫌いじゃない。
この第3弾は、映画館で予告を観て、前2作以上と予感し、公開を楽しみにしていた。



舞台は韓国・谷城(コクソン)。
物語は、普段は静かな片田舎で奇妙な殺人事件が次々と勃発、
山の奥に潜む謎の日本人が怪しいと噂される中、
事件を担当する警官・ジョングは、娘ヒョジンのただならぬ異変に気付き、
彼女を救うため、その日本人を追い詰めていくが、事態は好転するどころか、益々混乱し、
なかなか真相に辿り着けない恐怖を描くサスペンス・スリラー

日本の配給会社が“サスペンス・スリラー”と位置付けているので、ここでも一応それに従っておくが、
ふぅ~ん、“サスペンス・スリラー”ねぇ…。

事前にあまり情報を入れずに鑑賞した私自身、
本作品を、“奇怪な殺人事件を解明していくミステリー仕立ての犯罪サスペンス”と漠然と考えていた。

ところが、映画が始まり一時間くらいしてからだろうか、
本作品が私の予想とは違う方向にどんどん進んでいる事に気付いた。
作品が予想通りだと、安心感が得られる反面、退屈になりがちだから、
予想を裏切り、新鮮な驚きを与えてくれる分には構わない。
…が、しかし、本作品の裏切りは、私にとって、ポジティヴな裏切りではなく、ネガティヴな裏切り。
嗚呼、裏切られたぁぁぁー…!と、ガクッと拍子抜け。

だって、これ、犯行を解明していく犯罪サスペンスなどではなく、
理屈でも科学でも解明できない超常現象連発のオカルト映画ではないか。
もっと言うと、“韓国現代版『エクソシスト』(1973年)”。
実際、本作品にも、エクソシスト(祈祷師)は登場する。ついでに言うと、殭屍(キョンシー)的要素もあり。


ちなみに、韓国の原題は『곡성 哭聲』
私、韓国語はチンプンカンプンなのだけれど、
“哭聲”は、日本語の“哭声(こくせい)”と同じで、“泣き叫ぶ声”という理解で良いだろうか。
英語のタイトルも、泣き叫んだり、嘆き悲しむことを意味する『The Wailing』なので。
で、その“哭聲”と、韓国語で同じ発音なのが、物語の舞台となる寒村“谷城(곡성 コクソン)”。
架空の村ではなく、実際に、韓国全羅南道の北東部に位置。
つまり、タイトルは、“哭聲”と“谷城”の掛け言葉になっているワケ。




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主な出演は、谷城の警察官・ジョングにクァク・ドウォン、その娘・ヒョジンにキム・ファニ
山の中に潜む怪しげなよそ者に國村隼、事件収束にあたる祈祷師にファン・ジョンミン等々…。

私が思う本作品一番の見所は、3人の名優、クァク・ドウォン×國村隼×ファン・ジョンミンの演技。

主演のクァク・ドウォンは、一般的な“韓国映画の主演男優”のイメージからは程遠いユルさ。
見た目からしてユルく、プルプルのおなかを丸出しにして横たわっている姿は、
まるで岸に打ち上げられた脂がのった(…のり過ぎた)トド。
“体脂肪率ひと桁じゃなければ韓流スタアじゃない!”って感じのかの国では、貴重な存在。
扮するジョングがまた御人好しで、
日本人からすると、父権の印象が強い韓国において、婿養子のように、妻の母親と同居。
職業は一応警察官だが、長閑な田舎町なので、普段は大した仕事が無いのではないかと想像。
村で奇妙な殺人事件が起きたため、珍しく朝っぱらから呼び出しを食らい、慌てて出掛けようとするが、
お姑サマから「まぁ、とにかく、朝ゴハンでも食べてから行きな」と言われたら、
この人、本当に、のそのそと朝ゴハンを食べ始めてしまう。そんなに緊張感なくて、大丈夫なのか?!
私、警察官・ジョングは、この冒頭のシーンで、好きになれた。


そういうユルさとは対極にいるのが、あとの二人の俳優。
ファン・ジョンミンは、祈祷のシーンだけでも、合格点を差し上げられる。

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細長い手足でダイナミックに舞う祈祷は絵になるし、どこかにイッちゃっている不気味さが最高。
あと、ファン・ジョンミンでもう一つ記憶に焼き付くのが、ゲロのシーン。
最初血を吐き、次第にそこに何だか分からない白い吐瀉物が混ざり、ゴーゴーと吐き続ける。
その量と勢いは、マーライオンの如し。
今後、 シンガポールを取材した旅番組で、マーライオンが映る度に、
私は豪快にゲロを吐くファン・ジョンミンを重ねてしまうことでしょう。



そして、國村隼。
國村隼が出演しているのは、私が本作品を観たかった大きな理由の一つ。
國村隼は、本作品での演技が認められ、日本人でありながら、
韓国の映画賞、第37回青龍映画賞で、男優助演賞と人気スター賞をダブル受賞。

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外国人俳優の受賞は、青龍映画賞37年の歴史の中でお初なのだと。おめでとうございます♪
海外でこうして認められ、誰よりも國村隼本人が感激したと思う。
いつか日テレ『アナザースカイ』に出演するとしたら、自分の“アナザースカイ”に韓国を選ぶに違いない。
ま、このように、受賞の話は日本でも報じられていたので、どんな役を演じているのか、益々興味が湧いた。

演じているよそ者は、日本人という設定なので、台詞も日本語。
(韓国の人々とは、日本語を喋るヤン・イサオという神父を介し、意思疎通。)
とは言っても、台詞の量は少なく、醸す雰囲気と存在感で勝負。

鑑賞前、一つ気になっていたのは、(↓)こういうカメラを構えたようなポーズ。

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韓国メディアが、『哭声』に出演した國村隼を報道する際、このような画像をよく使っていたので、
それが何を意味しているのか疑問に思っていた私。
作品を観たら、物語後半に、実際このようなシーンが有った。
薄暗い洞窟で、キョンシー國村隼withカメラ…。確かに印象に残るシーン。
それと、還暦過ぎた國村爺、柔肌顕わな“純白の越中ふんどし姿”も要注目です。





うぅぅーん、世間での高評価が、理解できず…。
私は、ハードルを上げ過ぎてしまったようだ。
最初からオカルト映画だと分かっていたら、きっとここまで失望しなかった。
元々、オカルト、ホラー、そしてSFさえも、私にとっては、どうでもいいジャンル。
怖いからではなく、非現実的な話には、まったく惹かれないから。
例のゲロのシーンとか、目が赤くなるシーンとか、思わず吹き出してしまいそうなシーンは有ったけれど、
真剣にスクリーンに食い付いている周囲の観客に申し訳ないので、笑いをぐっと嚙み殺した。

これ程度の内容で、2時間半は長いっ…!
この前に観た尺4時間の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の方が、むしろ短く感じた。あちらは必要な4時間。
2時間に感じる4時間の映画もあれば、4時間に感じる2時間半の映画もアリ。

まぁ、観衆をただただ脅かせば良いオカルト映画ではなく、
「勝手な思い込みや先入観で、仮想敵を作ってはいけない」というメッセージは発信しているように感じる。
世界がどんどん内向きになり、異民族や異教徒といった、自分とは異質の存在を排除し始めた今だからこそ、
ナ・ホジン監督は、その危険性を、この作品を通し、伝えたかったのかなぁ~と想像。
特に、日韓関係はピリピリで、互いを敵視しがちなので、
わざわざ日本人俳優を起用し、このような作品を撮ったことは、意味が有る。
…でも、オカルト映画という形にはしなくて良かったと思うワ。 ホント、興味ないし、オカルト…。
まったく興味の対象外でありながら、辛うじて観られたのは、
クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、そして國村隼という3人の俳優の名演技のお陰でございます。

どら焼き3種(+テレビ雑記)

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チャンネル銀河で放送中の主演ドラマ『秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛~秀麗江山之長歌行』も
終了間近の大陸明星・袁弘(ユエン・ホン)が、自身の微博にて、
『ロンドンハーツ』内“動けるおデブ女王決定戦”で、蜜蜂カラーのお召し物を着て、
キレッキレのダンスを披露する渡辺直美の動画に反応しておられた。
(奥方から「いつか私がこんな風に太っても、それでも愛せるか」と聞かれ、
「ダンステクニックが基準値に達したら、考えられるかも…」と返した模様。
確かに渡辺直美のダンステクニックは、男前のハートをも掴むレベル。



さて、『秀麗伝』だけではなく(←飛ばし飛ばしでしか観ていない)、
NHK Eテレ『テレビで中国語』、2016年度のレッスンも、明日3月28日(火曜)の放送で終了。
毎年、最後の放送は卒業スペシャルで、その年の生徒が日本を飛び出し、
現地でネイティヴ相手に一年学んだ成果を披露。
行き先は基本的にずっと大陸であったが、日中関係が最も劣悪な時は、当たり障りの無い台湾であった。
2016年度の生徒・川島海荷はどこへ卒業旅行に行くのかと密かに楽しみにしていたら…

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あらら、なんと、台湾よりさらに“安近短”な横浜中華街でお茶を濁すという。
昨秋から、日テレ『ZIP!』に毎朝レギュラー出演するようになったから、
海外まで行く時間的余裕がないのであろう。
卒業スペシャルは、ちょっとした旅番組のようで、結構好きだったので、少々残念だが、仕方が無い。

そして、4月から始まる2017年度の生徒は…

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森迫永依(もりさこ・えい)。
…って、誰?? この番組の生徒で、まったく知らない芸能人が登場するのは、恐らく初めて。

と思ったら…

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実写版『ちびまる子ちゃん』の子!この子、森迫永依という名前だったのか。
すっかり成長して、ぜんぜん誰だか分からなかった。
と言っても、まだまだ若く、1997年生まれで、現在19歳。
父親が日本人、母親が中国人のハーフらしい。へぇー、まる子ちゃん、実はインターナショナル。
混血でも、日本育ちだと、片親の母語はちんぷんかんぷんで、日本語しか喋れないという人も多い。
彼女の場合、「中国語を思うように使えない」と言っているという事は、ボチボチなら出来るのでは。

他の出演者を見ると、講師は引き続き三宅登之先生。
ここのことろずっと出ていた段文凝の名は無い。
代わりに登場するのが、イーラン。

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彼女の事も知らなかったけれど、北京出身で、近年日本を拠点に活動する中越ハーフのモデルらしい。
随分綺麗な子を投入しましたね。『テレビで中国語』史上一のルックスかも。

続投か、はたまた選手交代かを、私が一番気にしていた王陽サンが引き続き出演することも確定。ホッ…!
王陽サン、感じいいし、彼が担当する“イマドキ中国語”のコーナーは、
そこそこの中国語を解するの視聴者でも楽しめる内容で、為になり、好きなのよ。
2017年度も王陽サンを出して!と、NHKにリクエストしたかったのだけれど、その方法が分からず、放置。
私がリクエストせずとも、結局続投決定と知り、安堵。
あと、ディーン・フジオカの中国語歌詞の歌<午夜天使的翅膀>が番組テーマ曲として使われるのが、
ちょっとした話題とのこと。




他、要録画の番組は…

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3月29日(水曜)、NHK BSプレミアム『中国王朝 よみがえる伝説~悪女たちの真実』
悪女と非難されてきた女性たちの実像に迫るシリーズの最終回。
トリを飾るのは、趙姫(紀元前280-紀元前229)。
「趙姫って誰よ?」という、そこのアナタ様、趙姫は、あの秦の始皇帝のママでございます。

私が、“趙姫”と聞き、真っ先に思い浮かべるのは、(↓)こちら。

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陳凱歌(チェン・カイコー)監督による映画『始皇帝暗殺』(1998年)では、鞏俐(コン・リー)が演じております。

元々は妓女で、富商・呂不韋に身請けされるも、
呂不韋から、今度は、人質になっていた秦の公子、莊襄王・子楚へ譲られ、後の始皇帝・政を出産。
(子楚に譲られた時、すでに呂不韋の子を身籠っていた→つまり、政の実の父親は呂不韋という説アリ。)
政の出世と共に、彼女の地位も高まるが、その間も呂不韋と不倫を続けるわ、
“なんちゃって宦官”嫪毐とも密通するわと、お盛んで、嫪毐との間には、2人も子を出産。
しかも、そんな間男・嫪毐が起こした反乱にまで加担。
このような事情から、貞操観念が低い上、野心が強いという悪女の印象のある趙姫。

この度の『中国王朝』では、最近の研究で明らかになった、そんな趙姫の素顔に迫る。
彼女の男性遍歴は、秦では合法で、非難されるような事ではない、
反乱も実は始皇帝が仕組んだ謀略だった可能性が否定できない、…という事らしい。

趙姫は、このシリーズで前に取り上げた二人、西太后と楊貴妃に比べ、
日本での知名度が低いのではないかと思っていた私だけれど、それは中高年層の話で、
むしろ若い層だと、人気コミック<キングダム>の影響で、秦の時代や趙姫を知る日本人もそこそこ居るようだ。
そんな訳で、趙姫をこのシリーズのトリにもってきたのは、正解なのかも。
あまりにも有名な西太后や楊貴妃と違い、取り上げる番組が少ないので、
<キングダム>を知らない私でも楽しみ。




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続いて、NHK 『ドキュメント72時間』
香港の重慶大厦(チョンキンマンション)で撮影された3月17日の回は、
放送前から予感していた通りの傑作で、たいそう気に入った。
同日、BS TBSで放送した『地球絶景紀行』の香港・澳門特集より、
よほど斬新な切り口のドキュメンタリーであると感じた。
なのに、たったの30分の放送ではもったいない!と思っていたら、
3月29日(水曜)深夜、正確には3月30日(木曜)の午前0時15分から、
あの香港編の44分スペシャルバージョンが放送されるという。
この番組、4月に5年目に突入するそうで、その節目を記念した“春の72時間祭り”という特別放送。
香港編のロングバージョンの他、昨年視聴者に人気の高かった2本、
“横浜 オールナイトでとんかつを”と“北のどんぶり飯物語”も同時に放送。




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月を跨ぎ、4月1日(土曜)は、NHK『海外出張オトモシマス!』
よく海外出張する人に御供して、普通の旅番組とはひと味違った切り口で、
現地の文化を紹介する紀行バラエティ。
これまで、フィンランドに北欧雑貨の買い付け、フランスにワインの買い付けに行く人に御供。
今回は、番組初のアジアで、“タイの田舎で珍品!?レコード探し”と題し、タイランドを取材。
DJユニット・Soi48が、60年代、70年代にヒットしたタイのヴィンテージ・レコードを求め、
東北部の農村へ行くのにオトモ。
前2回は、想像し易い出張だったが、タイ音楽を探しにタイの田舎というのは、想像しにくい出張。
ファンキーな祭りや、屋台グルメも紹介されるそう。どれ程度ファンキーなのでしょう、そのお祭り。




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翌4月2日(日曜)は、BS日テレの『高嶋政宏の旅番長』
旅が大好きな俳優・高嶋政宏が、行きたい場所へ、そして、彼自身がしてみたいテーマで旅をする新番組。
記念すべき初回は、カンボジアのアンコールワット。
首都プノンペンから、アンコール遺跡群のあるシュムリアップまでの約500キロを、
トゥクトゥクに乗って、寄り道をしながら旅するんですって。
どうやら、元々は旅チャンネルの番組で、本当の意味での“新番組”ではないようだ。
私は、どうせ旅チャンネルの放送を観ていないので、OK。
高嶋政宏に関しては、以前会ったことがあるという旧友が、
“マニアックに自分の好きな物がある面白い人”と評していた。
独自の視点で旅を紹介してくれそうで、アイドルが紹介する生半可な旅番組より、ずっと興味あり。




お菓子は、どら焼きばかりを3種。
私にとってどら焼きは、実のところ、わざわざ食べたいおやつではない。
いつも“有れば食べる”という程度。
特に、ドラえもんが食べているような伝統的などら焼きには、興味が無く、
敢えて食べるなら、ちょっとアレンジされた物の方が好み。
今回のどら焼きも、3ツの内2ツは、いわゆる“どら焼き”とは異なる。

★ 巖邑堂:どらやき

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大きさは、直径約7.5センチ。
つぶ餡を手焼きの生地ではさんだどら焼き。




創業明治5年(1872年)、浜松の老舗・巖邑堂(公式サイト)“どらやき”
“巌窟王(がんくつおう)”の“巖”に、“巴”に似て非なる“邑”…?!
難しい漢字を使った店名からして由緒ありそうだけれど、なにぶん読めない…!
正解は、“がんゆうどう”とのこと。
とことん手作りにこだわり、支店も出さずに経営を続けている名店らしい。
ただ、このどら焼きは、都内のデパートや通販でも買える商品なので、
全国のどら焼きファンから高く評価されているのだとか。

どら焼きのスタンダードが、うさぎやのどら焼きだとしたら、
この巖邑堂のどら焼きは、それより若干小ぶりで、その分厚みがある。
見たまんまにふっくら食感の生地には、ほんのり黒糖の甘み。
中には餡子がたっぷり。
所々にちゃんと小豆の粒が感じられる餡は、
黒糖入りの生地と一緒に食べた時、クドくならないよう、バランスを考えた甘さになっている。

どら焼きの命とも言える餡がとても美味。
ドーンと“巌”と書かれた紙の包みも、シンプルなのにインパクトがあって良い。

★ 雪華堂:七福どら焼き

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大きさは、直径約8.5センチ。
七福神に見立てた7種の甘納豆を生地ではさんだ贅沢どら焼き。




こちらは、お江戸の老舗。
創業明治12年(1879年)、甘納豆で有名な赤坂の和菓子屋さん、雪華堂(公式サイト)“七福どら焼き”
これは、雪華堂が売る唯一のどら焼きではない。
雪華堂では、甘納豆を使ったどら焼きを数種販売しており、これはその内の一つ。

袋を開封して、ビックリ。
最も一般的などら焼きは、小豆の餡がはさまれているが、
これは、色んな物が生地からはみ出るほどゴロゴロはさまっており、ポッテリしている。
“七福どら焼き”の名の通り、七福神に見立てた7種類の甘納豆を入れているのだ。
それら7種とは、大納言、うぐいす豆、とら豆、お多福豆、白花豆、黒豆、栗。
さすが甘納豆の名店だけあり、どのお豆もそれぞれにふっくら炊けているし、
食べる場所によって、違った味が楽しめる。

まるで宝袋のようなどら焼き。パッケージも、可愛い。
有りそうでいて、その実他では見たことがない斬新などら焼きなので、近年開発された商品なのかと思いきや、
母曰く、「私が高校生の時、すでに有った」。
母が高校生の時って、何十年前よ?!それって、確かな情報なのか…?
まぁ古いか新しいかは定かではないが、
これはどら焼きに特別思い入れの無い私でも、また食べたいと思った。
…いや、どら焼きに特別な思い入れが無いからこそ、
スタンダードなどら焼きとは違うこの“七福どら焼き”が気に入ったのかも。

★ 森八:宝達

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大きさは、幅約10センチ。
つぶ餡を生地で半円形に包み、金箔をあしらったどら焼き。




最後は加賀の老舗、森八(公式サイト)“宝達”
森八は、創業寛永2年(1625年)、4百年近くお菓子を作り続ける老舗中の老舗。
このお菓子“宝達”は、“ほうたつ”と読む。加賀藩の御用金山・宝達山に由来する名。

前出の2ツのどら焼きは、2枚の生地で餡をはさんだ定番のどら焼きだけれど、
これは、丸く焼いた一枚の生地に餡をのせ、半分に折りたたんだ形。

袋に“もち皮 どら焼き”と添え書きしてあるように、その生地自体、通常のどら焼き生地と異なり、
薄くても、モッチリ、シットリしているのが特徴。
原材料を見ると、小麦粉は勿論のこと、もち米や山芋も入っている。
あと、“白あん”という表示もあるのだが、どこに…?白餡も皮に練りこまれているのだろうか。
中に挟まれている餡は、ほどほどに甘いつぶ餡。

近年、こういうモッチリ皮のどら焼きは、色んなお店から出ているので、もはや珍しくはないけれど、
さすが加賀の老舗の物だと、ちょっと上品な感じがする。
あと、半円形だと、大口開けずに食べ易い。

加賀発ひと口和菓子2種(+テレビ雑記)

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wowowの先行放送で、林更新(ケニー・リン)主演ドラマ
『三国志 趙雲伝~武神趙子龍』の第1話を観たのだが、ど、ど、どうなの、コレ…?!
“とんでもドラマ”の予感。うーん、第2話以降を続けて観たいという気持ちが湧いてこない。
邦題の付け方からは、“三国志推し”を感じるが、三国志ファンが観たら、失望しそう。
趙雲(林更新)の鉄仮面の一部がパカッと外れて、手裏剣のような武器になったのには、意表を突かれ、
一瞬目を疑ったのち、笑わせていただいたけれど。きっとあれには、ボスの劉備もビックリ。
wowowは自社制作ドラマのレベルは非常に高いのに、大陸ドラマのセレクトに“有問題”。
数有る中で、なぜよりによってコレなのか。
脇を固めるK-Popアイドル二人、少女時代・潤娥(ユナ)と金勳(ジョンフン)をエサに
加入者を増やそうという目論見か?
本放送は2017年3月11日(土曜)スタート。第1話は無料放送なので、興味のある方はお試しを。



『三国志 趙雲伝』より私にとっては興味深い、今後の要録画予約番組を何本か。

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まず、3月9日(木曜)、NHK BSプレミアムの人気番組『世界入りにくい居酒屋』
今回取り上げるのは、中国・広州。
春節直前に訪れたのは、街の中心から車で約一時間、寂れた郊外にあるお店。
ここを30年以上切り盛りしてきたのは、
改革開放政策を受け、長年の夢であった食堂経営に乗り出したという73歳のおかみ。
提供されるのは、ザボンの皮の炒め物、すり鉢で丹念にすりおろしたハスの蒸し物、
薬食同源の代表選手・薬膳漢方スープといった昔ながらの田舎料理。
カメラは、懐かしい味を求めてやって来る帰省客で賑わう春節直前の風景を捉えているらしい。

この番組が、前回、大陸を取材したのは、激辛料理で有名な成都。
今回は、“食は広州にあり”と言われる美食の本場。こちらもまた楽しみ。
“ザボンの皮の炒め物”は見たことも、ましてや食べたことも無いのだけれど、どのようなお料理なのでしょう。
私、柑橘系ピールは大好き。
でも、お砂糖をまぶしてドライにした物や、チョコレートがけにした物など、お菓子としてしか普段は食べない。
その炒め物は想像すら出来ない。番組で要チェック。




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続いて、3月11日(土曜)、こちらもNHK BSプレミアムで、
『絶景!中国・天空の“宗教都市”~知らざるチベット仏教の世界』という番組。
中国奥深くに奇跡のように残された天空の“宗教都市”の全貌を、
世界で初めて4Kカメラで撮影したドキュメンタリー。
現時点で、詳細、分からず。いくつかのキーワードから推測するに、
チベット最大級の寧瑪(ニンマ)派の僧院・喇榮五明佛學院(ラルンガル・ゴンパ)がある
色達縣・洛若鄉を取材したような気が…。
我々の日常とは違う幻想的な精神世界を、美しい映像に収めた番組なのかも?
私のテレビだと、4K効果が望めないという問題が…(苦笑)。録画は父に頼むしかない。




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ちょっと飛んで、3月17日(金曜)、BSTBSの『地球絶景紀行』
今週は、香港・マカオ2時間スペシャル♪
100万ドルの夜景が眩い香港、東西の文化が融合する澳門(マカオ)、
都会の景色とは対照的な昔ながらの水上家屋が残る漁村・大澳(タイオー)、
知られざる大自然・東平洲(トンピンチャウ)などを訪ね、新しい香港・澳門の魅力を紹介する2時間。

番組HPには“ホーピンチャウ”と記載。そんな所ありましたっけ?と疑問に思い、
当ブログでは勝手に“東平洲”で記載。
私が知らないだけで、本当に“ホーピンチャウ”という場所があるのかも知れません。
なにせ“知られざる大自然”ですから!正解の確認は番組で。)




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同日、3月17日(金曜)、その後は、NHKの『ドキュメント72時間』
ある場所に3日間カメラを据え、そこを行き交う人々をひたすら捉えるという、
有りそうであまり無い、ごくごくシンプルなドキュメンタリー。
私、この番組、結構好きなのよねぇ~。
しかも、今回は久々の海外取材で、“香港 チョンキンマンションへようこそ”という香港編。
舞台は、迷路のように入り組んだ建物内に、両替所、飲食店、格安ゲストハウス等がひしめき合い、
様々な国の人々が行き交う、ちょっと怪しげな雑居ビル、かの重慶大厦(チョンキンマンション)。
移民排他のニュースが世界を駆け巡る昨今だからこそ、
多民族が入り乱れて暮らす重慶大厦で、共存の在り方を考える3日間。
放送前からすでに名作の予感…。これは、かなり楽しみ…!
併せて、映画『恋する惑星』(1994年)も観たくなってしまう。




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ついでなので映画も。
日にち遡って3月13日(月曜)、NHK BSプレミアムで『あの子を探して』(1999年)を放送。
4月に『グレートウォール』の公開を控えている張藝謀(チャン・イーモウ)監督のメガホンによる
第56回ヴェネツィア国際映画祭・金獅子賞受賞作。
『グレートウォール』はどうしても秀作という気がしない。
あぁ、あの頃の張藝謀監督作品は良かった…(遠い目)。
『あの子を探して』は、謀女郎(イーモウ・ガール)も謀男郎(イーモウ・ボーイ)も、
歴代一不細工で(←スミマセン!)、まるでドキュメンタリーのような作風。
農村の子をひたすらピュアに描くのではなく、ちゃんと強かさも見え隠れしているのが良い。
私は、同じ年に発表されたもう一本の張藝謀監督作品で、日本でもヒットした『初恋のきた道』より、
こちらの『あの子を探して』の方が好み。




お菓子は、雅に加賀のお菓子ばかりを2ツ。

★ 森八:千歳

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大きさは、幅約4センチ。
こし餡を求肥で包み、和三盆糖でまぶした伝統の銘菓。




一つ目は、創業寛永2年(1625年)、4百年近く続く加賀藩御用菓子司、森八(公式サイト)“千歳”

16世紀、森八家の始祖・亀田大隅の時代、
一向宗徒の兵糧に起源を発し、“千歳鮓”と称されていた古典的名菓。
その後、代々改良を重ね、“紅きは旭日の瑞相を表し、白きは鶴の毛衣を象る”ということで、
現在の雅な祝い菓子に完成。
…と言うことで、箱には紅白2色のお菓子が詰められている。
色が違うだけで、味は紅白で差なし。

表の生地は求肥。“求肥”と聞くと柔らかな物を想像しがちだが、これはしっかり噛み応えのあるお餅。
中は、小豆と米飴で作られた餡。
甘味に米飴を使ってる効果だと思うが、甘みがかなり強い。
しかも、お砂糖で作る通常の餡とはまた違う懐かしい感じの甘さ。

求肥がしっかりしていて、咀嚼回数が多くなるし、中の餡が甘めなので、
小ぶりでも、そこそこ食べた気になる。
味には無関係だが、紅色の方は、色が濃すぎる気が。
私個人的には、もっと薄いピンクの方が、上品で好き。

★ 音羽堂:加賀紫雲石

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大きさは、幅約3.5センチ、厚さ約2センチ。
柔らかく炊き、蜜漬けにした大粒の大納言小豆を、寒天で寄せたお菓子。




もう一つは、音羽堂(公式サイト)“加賀紫雲石”

こちらは、いわゆる“錦玉”。
表面の糖衣は、まるで薄ーい磨り硝子。
それこそが、このお菓子の特徴で、通常の錦玉に比べ、糖衣が薄く柔らか。
大納言小豆はホクホクに炊かれ、それを繋ぐ寒天は、歯がすっと入り、ツルンとした食感。

私は、表面がパリッと硬い錦玉の否定派ではなく、むしろ好きなのだけれど、この薄皮のも美味。
甘さは控えめ。加賀のお菓子は上品ですね~。
常温で20日もつから、贈り物にも良いかも。

映画『愚行録』

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【2017年/日本/120min.】
育児放棄の容疑で収監された妹・光子を久し振りに訪ねた田中武志。
光子の3歳になる娘・千尋は、保護された時、ガリガリに痩せ、治療中の今も生命が危機的状態。
助かっても、何かしらの障碍が残ってしまう可能性が高いという。
しかし、その状況を把握しているのかいないのか、心待ちにしていた兄との再会に会話が弾む光子。
担当弁護士の橘は、光子自身に幼少期似た経験があるのではないかと疑い、
彼女の精神鑑定を武志に勧める。

一方、<週刊テラス>の記者として働く武志は、“田向家殺人事件”を取材したいと編集長に申し出る。
人々の関心も失せた一年前の一家惨殺事件など、週刊誌ネタとしてもはや賞味期限切れだが、
身内の問題で沈む武志を気遣い、GOサインを出す。

“田向家殺人事件”。
それは、誰の目にも幸せに映った4人家族が、自宅で何者かにより無残にも殺害された未解決事件。
武志はまず、田向家の主人・浩樹の同僚を訪ねる…。


後回しになっていた『愚行録』をようやく鑑賞。
こちら、貫井徳郎の同名小説を、石川慶監督が映画化した作品。

石川慶?石川遼(いしかわ・りょう)なら知ってるけれど、石川慶(いしかわ・けい)は知らなかった。
それもそのはずで、本作品が長編監督デビュー作。
1977年生まれ、東北大学物理学科卒業後、
Państwowa Wyższa Szkoła Filmowa, Telewizyjna i Teatralna im. Leona Schillera w Łodzi
(ポーランド国立映画大学)で演出を学んだというから、随分な進路転換。
(それとも、石川慶監督の中では、物理と映画はリンクするのだろうか。)
これまで撮ってきたのは主に短編映画で、他、テレビのドキュメンタリーやCM等も手掛け、
満を持して発表した長編デビュー作『愚行録』は、
2016年、第73回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門に入選。

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(↑)こちら、『愚行録』御一行様inヴェネツィア。
(ちなみに、満島ひかりのお召し物はグッチ。)

私は、原作小説未読な上、石川慶監督の作風も知らなかったが、
この『愚行録』には、漠然と“私好み”の匂いを察知し、是非観たいと思っていた。




物語は、週刊誌記者・田中武志が、一年前に起きた“田向家殺人事件”を記事にするため、
関係者を取材して回る内に徐々に浮かび上がってくる
被害者夫婦の実像、関係者それぞれの人間性や心の闇に迫ると共に、
田中武志自身が抱える肉親の問題を追い、紐解いていくミステリー

“田向家殺人事件”とは、田向(たこう)という姓の一家が、自宅で何者かに惨殺された未解決事件。
田向家は、主の田向浩樹がエリートサラリーマン、妻の友季恵は美しく、夫婦には二人の子がおり、
人から恨みを買うようには思えない、絵に描いたような幸せな家族。

そんな彼らが誰になぜ殺されたのか?
週刊誌記者・田中武志の取材は、被害者・田向浩樹の同僚に始まり、夫婦それぞれの大学時代へと遡っていく。
そこで見えてくるのは、田向夫妻の成り上がり列伝!
稲大生だった夫・田向浩樹は、有名企業に就職するため、女生徒をも利用、
妻・友季恵は、文応大学で、見下されがちな外部生だったにも拘わらず、内部生のグループに昇格。
平凡な家庭に生まれ育った夫妻各々が、後に“勝ち組”に入るため、いかなる努力を積み、
またその裏で(例え悪意は無く、自分にとっての正当だったとしても…)
どのように他者を踏みにじってきたかが見えてくる。

友季恵が通う文応大学が、なんとなく慶応っぽいなぁと思ったら、
原作小説では、本当にズバリ“慶応”らしい。
という事は、稲大は、早稲田なのだろうか。原作者の貫井徳郎も、早稲田出身とのことだし。


そして、物語のもう一つの軸になっている週刊誌記者・田中武志の肉親の問題とは、
彼の妹でシングルマザーの光子が、育児放棄で逮捕されたこと。
光子の3歳の娘・千尋は、ろくに食べ物も与えられず、保護された時、一歳児程度の体重しかなく、瀕死状態。
しかし、光子には、罪の意識すら感じられない。
もしかして、光子自身、幼い頃、似た経験をしたのではないかという疑問から、
徐々に彼女の過去と、心に負った深い傷が明かされてゆく。


物語の2ツの軸は、週刊誌記者・田中武志という人物が共通しているだけで、一見それぞれが独立。
が、終盤、まさかそれら2ツの軸が、あのように繋がるとは…!




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兄妹を演じているのは、週刊誌記者・田中武志に妻夫木聡、その妹・田中光子に満島ひかり

本作品は、ブッキー扮する田中武志が乗るバスのシーンで始まり、
バスのシーンで終わる“妻夫木聡バス映画”。
最初からキョーレツであった。
近くにおばあさんが立っているのに、座ったままの若い田中武志に、ある男が席を譲るよう催促する。
田中はしおらしく席を立ち、おばあさんに席を譲るが、バスがちょっと揺れた次の瞬間、床に倒れ込み、
周囲の誰もが、実は田中が足の不自由な青年だったと知ることとなる。
当然、席を譲るよう催促した男は、気まずい顔…。
が、実際のところ、田中の足はピンピンに元気。
無駄な口論などせず、可哀そうな被害者を演じ、黙して相手を窮地に追い込むとは…!
温厚そうに見え、実は歪んでいる田中武志の内面を表現した秀逸なシーン。

その後の田中武志は、取材対象の話を聞く“聞き役”。口数が少なく、控えめ。
いつの間にか、最初のシーンで見せた卑劣な一面など忘れていたら、
終盤になって、サラリとやってのける重犯罪&“濡れ衣工作”。
あれだけの事をやらかしておきながら、最後のバスのシーンでは、計算高く卑劣だった最初のシーンとは違い、
むしろ自然に温厚に振る舞っているから、余計に不気味。
ブッキー、最近では、こういうダークな役がすっかり板に付きましたねー。


満島ひかりは、最初の方に登場するものの、
その後、物語が田向家殺人事件に移っていくので、パッタリ出なくなる。
主人公の一人と認識していたため、出演シーンの少なさを意外に感じていたら、
後半になって、俄然増してくる存在感!
特に、精神科医での独白のシーンに引き込まれた。




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脇のキャストもちょっとだけ見ておこう。
本作品は、田向夫妻を巡る人々の群像劇でもあり、出演者はそれなりに多い。
そんな中から、現時点で記憶に残っている人を数人だけ挙げておくと、
殺害される田向浩樹に小出恵介、後に彼の妻となる夏原友季恵に松本若菜
夏原友季恵の大学時代の同級生・宮村淳子に臼田あさ美
光子を担当する弁護士・橘美紗子に濱田マリ等々…。

ファンが多いので言いにくいが、小出恵介にはギラギラしたハングリーさを感じてしまい、どうしても苦手。
今回演じた田向浩樹は、私が普段彼に感じるギラギラの上昇志向が不可欠な人物で、適役だと思った。

後に彼の妻になる友季恵に扮する松本若菜は、これまで、脇でチラッと出ているところしか見たことなく、
演技をたっぷり見たのは、今回が多分お初。
中流家庭の出身でありながら、上品で感じの良いお嬢様に見えるキャンパスの花。
男子生徒には人気でも、同性からは嫌われるタイプかと思いきや、友季恵は女生徒からも人気。

同性に嫌われるタイプなら、田向浩樹に遊ばれる会社の後輩“山本さん”が忘れられない。

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画像左の女性。松本まりかという女優だそう。
新入社員を違和感なく演じているが、すでに32歳。
典型的な“アニメ声”で、ベターっと男に媚びるから、
「普通の声で喋れぇーーーっ!」と、どれだけイラっとさせられたことか。
ただ、男性には遊ばれ、女性には嫌われる分かり易い“山本さん”はまだ可愛いもので、
むしろ、男女を問わず誰からも何となく好かれる夏原友季恵の方が、
より面倒なオンナであると思い知らされた。


臼田あさ美は、私の中で、キャピキャピの若い頃で成長が止まっていたので、
バイトの女の子を叱るカフェ経営者・宮村淳子を演じるオトナな彼女を見て、ちょっと驚いた。
実際、私生活でも、すでに30過ぎの既婚者になっていたそうで。
じゃあ、こういう役が増えてきて当然だわね。
かと言って、大学生時代の宮村淳子にも若作りの痛々しさは無いし、2ツの年齢を自然に演じている。

“成長”だったら、濱田マリもで、関西弁でトボける明るい濱田マリはすっかり鳴りをひそめ、
質素な人権派弁護士になり切っているから、最初の数秒、彼女だとは気付かなかった。





原作小説がどういうものか知らないけれど、
映画では、あれだけの内容を2時間の中に盛り込み、
しかも、バラバラに見えたそれぞれのエピソードをまとめ上げ、きれいに着地させた巧い作品。
原作を読んでいないからこそ、その着地点が見えず、
先が気になり、物語の世界にどんどん引き込まれていった。
“田向家殺人事件”と、育児放棄の光子に、あんな接点があったとはねぇー。
さらにその後、週刊誌記者・田中武志の封印された闇の部分まで垣間見え、
最後の最後までスクリーンから目が離せなかった。
出演者の演技も良かったし、トーンを落とした映像も雰囲気があって良し。
石川慶監督にとっては、これが長編デビュー作だが、
“粗削りでも初々しい”という感じではなく、すでに完成されている。私、褒め過ぎかしら。
次回作はどういうテーマで撮るのでしょう。

最後に、喫煙者の皆さん、本作品からの教訓です、
“ポイ捨ては人生を狂わせかねない”と心に刻んでおくべし!

映画『お嬢さん』

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【2016年/韓国/145min.】
1939年、日本統治下の朝鮮半島。
“藤原伯爵”を名乗る男ナムは、華族の令嬢・秀子が相続した莫大な遺産を狙う朝鮮の詐欺師。
幼少期に両親を亡くした秀子は、後見人である叔父・上月の屋敷で暮らす孤独な女性。
そんな秀子をトリコにし、名古屋へ渡って結婚式を挙げ、彼女の財産を我が物にしようと考えた藤原伯爵。
まずは協力者にスッキを選択。
窃盗団の中で育てられた孤児のスッキは、得た財産の一部を報酬としてもらう約束で、この計画に便乗。
早速、純朴な下女に成りすまし、上月家へ。
ここでスッキは“珠子”という名を与えられ、令嬢・秀子に仕えるよう命じられる。
着々と遂行される計画。しかし、実際に秀子を紹介されたスッキは、思わず息を飲む。
藤原伯爵からは何も聞いていなかった、秀子がこんなに美しい女性だったなんて。
しかも、屋敷の中で孤独に育った秀子は、容貌のみならず、心まで清らかで美しい。
計画が進み、藤原伯爵の魔の手が秀子にのびるのを目の当たりにし、
スッキは嫉妬にも似た感情を抱くようになり…。



韓国のパク・チャヌク監督最新作は、
イギリスの作家サラ・ウォーターズの小説<荊の城~Fingersmith>の映画化。

19世紀のロンドンが舞台の小説を韓国に置き換えるとどうなるのだろう?という興味があり、
予習で原作小説を読んでおきたかったのだけれど、間に合わなかったぁー…!残念!!
結局、原作未読のまま映画鑑賞。



舞台は、1939年、日本統治下の朝鮮半島。
物語は、窃盗団に育てられた孤児・スッキが、藤原伯爵と名乗る詐欺師から持ち掛けられた計画にのり、
令嬢・秀子に彼を近付ける手助けをするため、自ら下女となり、秀子に仕えるようになるが、
不覚にも、スッキ自身がターゲットである秀子に惹かれてしまったのを機に、計画が二転三転し、
騙し騙されの複雑な駆け引きになっていく様を官能美を交えて描くミステリー


Q.そもそも秀子お嬢様はなぜ狙われるのか?A.超お金持ちだから。
華族の令嬢・和泉秀子は子供の頃に両親を亡くし、莫大な財産を相続。
まだ幼かったので、叔母夫婦に引き取られるが、その叔母も死に、叔母の夫・上月のもと成長。
この上月、秀子の財産目当てで、血縁は無いとはいえ姪っ子である彼女を娶ろうと画策中。
そんなオイシイ話を上月なんかに持って行かれてなるものか!と、秀子お嬢様争奪戦に参戦するのが、
“日本の藤原伯爵”を名乗る、実は日本人でも伯爵でもない詐欺師。
藤原伯爵は、秀子に近付くため、手始めに孤児のスッキを上月家へ送り込む。
スッキは上月家で“珠子”と名付けられ、秀子付きの下女になり、孤独な彼女の心の隙にまんまと入り込むが、
想定外だったのは、スッキもまた秀子に惹かれてしまったこと。
つまりは、“ミイラ取りがミイラ”になってしまったワケ。

…と、だいたいここまでが、第1部。
実はこの作品、3部構成になっている。
私を『お嬢さん』の世界に充分引き込んでくれた第1部は、実は物語の序章でしかなく、
以降、登場人物たちの思惑が、別の視点で描かれ、彼らの関係性も二転三転していく。

エロ要素ばかりが注目される本作品であるが、
最後まで観ると、男性からの支配とか性とか、様々な束縛から女性たちが解放され、自由に飛び立っていく
なかなか清々しい同志片の純愛映画であり、青春映画でもあると感じる。



また、本作品の特徴を一つ挙げると、作品の性質上、日本語が多い。
こんなに日本語が多い韓国映画を観たのは、多分初めて。
韓国人俳優の日本語が下手で聞き取れない、なぜ日本語の台詞にも日本語字幕を付かなかったのか、
といった批判的な声も、日本の観衆の間からは結構出ているようですね。
確かに聞き取りにくい箇所もいくつか有ったのは確かだが、
私は皆さまの御意見とは逆で、韓国人俳優たちの日本語が達者なことに単純に驚いた。
同じく日本語が多い台湾映画『KANO』(2014年)を観た時は、台湾人俳優たちの日本語がボロボロで、
まったく聞き取れず、なぜ日本語字幕を付けなかったんだ?!と憤ったが、『お嬢さん』は許容範囲。
しかも、『お嬢さん』の中で使われている日本語の台詞は、
『KANO』とは比較にならないほど長く、内容も複雑。
よく言われているように、日本語と韓国語は似ているのであろう。
韓国人俳優が喋る中国語の発音は悲惨だと感じるが、日本語だと上手いもん。


それに、日本語が完璧であることは、本作品にとって重要ではない。
本作品は、不完全であることさえ、完璧な作品世界を創り上げるための一要素であるかのように感じる。
それは、リュ・ソンヒが担当した美術やチョ・サンギョンが担当した衣装にも言える。

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和洋折衷の豪邸も、お嬢さんのお召し物も、タメ息が出る美しさ。
ただ、時代考証に則しているかというと、それは必ずしも“YES”ではない気が。
実際のあの時代、あの場所は忠実には再現されておらず(昭和っぽくない、強いて言うなら大正以前っぽい)、
欧米の昔の映画に見られるような、“なんちゃってオリエンタル”な要素が僅かに散りばめられている。
しかし、無知からそうなったのではなく、“狙ってそうした”としか思えない。
敢えて遊びを入れ創り上げられた『お嬢さん』の世界観は非常に独創的。
現実社会から離れ、映画の中の不可思議で耽美な世界に酔う。
(衣装では、子供の頃からずっと秀子に手袋を付けさせている理由が知りたい。)





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主な出演は、和泉秀子お嬢様にキム・ミニ、秀子の下女になる“珠子”ことスッキにキム・テリ
財産目当てで秀子に接近する藤原伯爵にハ・ジョンウ、秀子の後見人である叔父・上月にチョ・ジヌン


主演のキム・ミニは、つい最近、第67回ベルリン国際映画祭にて、これとはまた別の映画、
ホン・サンス監督作品『On the Beach at Night Alone 밤의 해변에서 혼자』での演技が認められ、
見事主演女優賞を受賞。

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ベルリンで韓国人女優がこの賞を受賞するのは初めてのことで、大変な名誉なわけだが、
(↑)この画像でも、ガッチリお手々を繋いでいるホン・サンス監督との不倫関係で非難ゴーゴーのため、
韓国国内は必ずしも祝福ムード一色ではないようですね。
私ももし韓国人なら、「妻子ある22も年上の監督と不倫だなんて、どんだけガッツイているのよ、この女!」
くらいの悪口は言ったかも知れないが、日本人目線だと“所詮他国のスキャンダル”というクッションがあるし、
『お嬢さん』を観てしまうと、それくらいスレた所のある不良だから、秀子を演じられたと思えてしまう。
映画の中の秀子は、前半こそ穢れを知らない孤独な令嬢だが、実のところ、相当計算高い策士。
裸にもならないといけないし、大胆なベッドシーンもあるので、身体が綺麗なことも重要。
一般女性程度のボディだと、妙な現実味が滲み出てしまうが、キム・ミニくらいスタイルが良いと、絵になり、
セックスシーンさえ幻想的で、変なイヤラシさが無い。
あと、ずーっとおしとやかだった秀子が、いきなり下女を装い、ズーズー弁(日本語)で
「オラの大切な下女が狂っちまった」と呟いた時には、吹き出しそうになった。
まぁ、キム・ミニに関しては、人間性と俳優としての資質は必ずしも一致しないという好例でしょうか。
(素か?とも思えるちょっと不良っぽいキム・ミニを、そのまま見られる作品だったら、
まるでドキュメンタリーかのように撮られた『女優たち』も面白い。)


映画では、この秀子の子供時代も少し描かれる。

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日本語が上手いから、もしかして日本の子役?とも思ったけれど、チョ・ウニョンという韓国の子役らしい。
この子、日本で子役に言わせたら社会問題になるであろう、かなりキワドイ日本語の台詞も口にしている。
おかっぱ頭が似合っていて、可愛らしい。

ちなみに、“秀子(ひでこ)”という主人公の名は、パク・チャヌク監督がファンであることを公言している
日本の往年の女優・高峰秀子(1924-2010)から頂戴したとのこと。



キム・テリは、これまでCMや短編作品の経験はあっても、長編商業映画の経験はなく、
この度オーディションで選ばれた、実質“新人”の女優さんらしいが、新人とは信じ難い演技を披露。
扮するスッキは、地味で素朴な下女に見えるけれど、実は有名な女泥棒が産んだ娘。
孤児になり、窃盗団の中で育てられたから、
のほほんと生きてきた女の子とは違い、若くても世間をよく知っている。
藤原伯爵が秀子と結婚し、財産をせしめた暁には、ちゃんと分け前を受け取るはずであったが、
実際に秀子に会ったら、あまりの美しさにポーとし、その後どんどん彼女に惹かれていってしまう。

キム・テリは、キム・ミニに比べ、良くも悪くも野暮ったいから、下女の役にぴったり。
でも、純朴な下女を演じられる若手女優なら沢山いても、スッキを演じられる女優はそうそう居ないであろう。
スッキは見た目こそ純朴でも、スレた策士の顔を覗かせたり、お嬢様に床での振る舞いを直々に伝授。
このキム・テリ、顔立ちは似ていなくても、“大胆さ”という点では、池脇千鶴に近いニオイを感じる。
今後、どういう女優さんに成長していくでしょうか。


ハ・ジョンウ扮する日本人・藤原伯爵は、本当は日本人ではなく、ましてや伯爵のわけもなく、
済州出身のただの作男。優雅な伯爵を装い、世間知らずの令嬢・秀子を恋の罠にかけ、名古屋で結婚し、
彼女の財産をゴッソリ頂戴してしまおうと企む悪い男。
…が、女心をも利用する冷血な悪人という感じではなく、どこか抜けていて、嫌いになれないキャラ。
“日本統治時代朝鮮半島版ジョナサン・クヒオ大佐”って感じ。
ハ・ジョンウは、極悪人を演じると凄みがあるが、こういう抜けた男も上手い。
主要登場人物の中で、一番ユーモアがある。


チョ・ジヌンは、ハ・ジョンウと2歳しか違わないアラフォーなのに、今回は、すっかり老け役。
演じている男は、“上月(こうづき)”という日本の姓を名乗ってはいるけれど、彼もまた日本人ではない。
日本文化を崇拝し、社会的地位欲しさに、家柄の良い秀子の叔母と結婚。
今度は姪っ子の秀子をも娶ろうと目論むが、莫大な財産のみならず、美しい秀子本人にも興味津々。
単純な肉欲だけではなく、秀子に官能本を朗読させる会を催すところ等に、変態度の高さが窺える。
朗読させていた本って、<金瓶梅>よねぇ…?!お話の中に、西門慶が出てきていたし。


他、脇で(↓)こんな女優も出ていた。

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上月家に仕える佐々木夫人(←実は上月の元妻)にキム・ヘスク、秀子の叔母にムン・ソリ
ムン・ソリは、久し振りに見たら、一瞬誰だか分からないくらいスッキリしていた。かなり痩せたのでは?





パク・チャヌクは基本的に好きな監督だが、フィルモグラフィの中にも、好きな作品とそうでもない作品はあるし、
『オールド・ボーイ』(2003年)で受けた衝撃は、以降、あまり感じられないでいた。
しかし、この『お嬢さん』では、久々にガッチリ心を掴まれた。
物語自体の面白さ、美術や衣装の美しさ、俳優の演技…、どこを取っても私好み。
もしかして『オールド・ボーイ』以上?パク・チャヌク史上最高傑作か?!とさえ思える。

同志片としてみても、傑作。
気のせいか、男×男の同志片に比べ、女×女の同志片には秀作が少ないように感じる。
『お嬢さん』は、女×女の同志片の中でトップレベル。

韓国語はチンプンカンプンだが、『お嬢さん』という邦題は、
恐らく原題の『아가씨』をそのまま直訳したのであろう。
私は、このタイトルから、小津安二郎監督1930年の同名作品『お嬢さん』を思い浮かべた。
邦題を命名する際、小津安二郎監督作品を意識したかどうかは分からないけれど、
とにかく、シンプルでキャッチーな良い邦題だと思う。
ちなみに、英語のタイトルは、『お嬢さん』とは逆の『The Handmaiden(小間使い)』。


映画館には、男性客多し。…しかも、かなり高齢の。
アジア映画を上映する映画館で、ここまで多くの高齢男性客を目にしたのは、
“映画史上初の3Dエロ映画”を謳う『3D SEX & 禅』(2011年)以来。
お父サマ方にとっては、“堂々と観に行けるエロ映画”という括りなのだろうか。
ただね、この『お嬢さん』は、お父サマ方のエロ需要を満たすためだけの映画などではない。
『3D SEX & 禅』がお馬鹿なB級エロ映画なのに対し、こちらは芸術性も高いので、
美意識の高い女性などでも楽しめるはず。

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』張震来日舞台挨拶♪

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ワケありで長年お蔵入りになっていた故・楊昌(エドワード・ヤン)監督の名作、
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)が、25年の時を経て、デジタルリマスター版として蘇り、
よーやくスクリーンに戻ってきたことは、映画ファンの皆さまなら、御存じのはず。

この生まれ変わった『牯嶺街』、日本でのお披露目は、2016年11月初旬、第29回東京国際映画祭でのこと。
映画祭期間中たった一度の貴重な上映ではあったが、
この年の東京国際映画祭は、チケットのweb販売で大きなトラブルがあったし、
みすみす一般劇場公開が決まっていたので、私はパス。
もし、主演男優・張震(チャン・チェン)が来場したら、
チケットを取らなかったことを後悔するだろうなぁ~、とは思っていたが、
日中関係が悪化して以降、中華圏の明星の東京国際映画祭への参加はパッタリ激減したので、
特に張震レベルの俳優ならなおのこと来日は無い!と高を括っていた。
案の定、張震が来ることはなく、私は胸を撫で下ろしたのでありました。

監督や出演者によるQ&Aなど、何か特別なプラスαが無いのなら、
自分の都合に合わせ、映画館でゆったり観るに越したことない。
約4時間もある(…!)超大作を、一般劇場公開に漕ぎ着けたのだから、
ちゃんとチケットを買って、劇場に足を運び、ささやかながら興行成績に貢献もしたいし。




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そのように、2017年3月の公開を心待ちにしていた2月中旬、張震が来日して舞台挨拶を行うと発表。
後日、3月14日(火曜)、新宿武蔵野館の上映後に一回、角川シネマ有楽町での上映前に一回、
計2回の舞台挨拶を開催と詳細が発表された。
新宿武蔵野館の座席数は約130、角川シネマ有楽町だって約230と、いずれも小さな会場。
『牯嶺街少年殺人事件』はもはや伝説になっているから、この作品の元々のファン以外にも、
この機会に是非!と思う初見の人も多いだろうし、張震ファンだって実は地味に多いはず。
配給さん、『牯嶺街』人気を侮っていないか…?!これでは、平日の開催とはいえ、チケット争奪戦は必至。
私は、新宿武蔵野館に狙いを定めたが、チケット発売当日まで、心臓バックバク。
張震愛の深さやファン歴の長さでチケット優遇してくれーっ!と本気で願ったワ。

しかし、長年張震を溺愛する私に、そのような救済措置があるわけもなく、
他の皆々様と平等に迎えたチケット発売開始の瞬間。
事前に自分の中で積んでいたシミュレーションも役に立たず、
アクセス混雑で、上映カレンダーより先に進めず…。
ようやくその先に進めたのは、販売開始から18分が過ぎた頃。
すでに大方埋まっている座席表を見て、焦りが生じ、何も考えられずに適当にクリックを繰り返し、購入完了。
で、間も無くして、チケット完売。

なんとか買えたけれど、そんなこんなで、席は自分の希望からは程遠い。
私にとって映画を観易いのは、極力後方の席。
舞台挨拶が有るなら話は別で、もちろん前方で見たいけれど、それだと4時間の映画鑑賞はキツイ。
そこで、映画鑑賞にギリギリ耐え得るであろう前から5~6列目辺りを狙っていたのだが、
結果、“超前方”になってしまった…。ほぼ“かぶり付きシート”。
張震を間近で拝めるのに、その一方で、4時間の上映をどう持ち堪えようかと考えてしまうなんて、
贅沢な悩みですわね。

その後、角川シネマ有楽町、午後1時の回上映終了後にも追加の舞台挨拶を行うと発表。
結局、舞台挨拶は、一日に2ヶ所で計3回となった。それでもチケットは完売。
週末の開催だったら、チケット争奪戦がもっと激しくなり、ドンくさい私などでは買えなかったに違いない。

そもそも、来日舞台挨拶を、日本での『牯嶺街』公開初日3月11日(土曜)に行わず、
なんともハンパな火曜にズラしたのは…

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張震の愛娘・源原(ユエンユエン)ちゃんの2歳のお誕生日が3月10日だったからかしら…、と想像。
張震には、子煩悩な一面がありそうなので。

★ そして迎えた当日

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そんな訳で、角川シネマ有楽町では、
3月11日にすでに公開されている『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』だが、
今回私が訪れた新宿武蔵野館では、2017年3月18日(土曜)から公開。
本日、3月14日(火曜)は、先行という形で、一回きりの特別上映。

朝からソワソワしてしまい、柄でもなく、張震に簡単なファンレターを書き(!)、
家を早く出て、デパートに寄ってプレゼントまで用意してしまいましたヨ。
まるで乙女に戻ったかのような私mango…。
(いえ、オトメ時代でも、明星にお手紙&プレゼントなんて渡したことないから!)。

映画館に到着したら、記念にパンフレットを購入。8百円也。
映画のパンフを買うのも久し振り。

★ 映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』上映→終映

映画は予告編無しで、午前11時50分開映。
約4時間にも及ぶ大作だが、途中休憩は無し。
朝から極力水分を控えていた甲斐あり、恐れていた“尿意で映画に集中できないっ!状態”は避けられた。
久し振りにスクリーンで再見した『牯嶺街』の素晴らしかったこと…!
(作品の詳細は、また後日。)

映画が終わったのは、午後3時45分頃。
ノンストップの上映だったけれど、舞台挨拶の前には10分の休憩あり。
舞台上の張震に集中するには、念の為おトイレに行っておいた方が良いと判断し、
私は誰よりも早く会場の外に。

そ、そ、そしたら、な、な、なんと、偶然にも、男子トイレに入って行く張震を発見…!
捕まえて、プレゼントを渡そうとしたら、周囲のスタッフに取り押さえられた。
で、「プレゼントは、映画館のスタッフが渡しておきますから」と説得させられた。
ちゃんと渡してくれたかしらー?!やはり本人に直々に渡したかった。
まぁ、あの状況では、しょうがないけれど、本当に渡してもらえたのか心配で、悶々…。
我が人生で、張震に最接近したことだけでも(@武蔵野館トイレ入り口前)有り難いと思わなくては。

★ 『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』主演男優&プロデューサー舞台挨拶@新宿武蔵野館

10分の休憩も済み、午後3時55分、いよいよ舞台挨拶。
まずは、女性スタッフが簡単な説明。
「本人から許可が出たので、写真撮影できます。でも、トークショウの時は話に集中してもらいたいので、
ご遠慮下さい。後ほど撮影の時間をもうけます」とのこと。
バンザイ。やはり写真は撮りたいもん。
今の時代、無意味としか思えない、イベントでの撮影を禁止する日本独自ルール、早く崩壊して欲しい。


そのような説明も終わり、今度こそ本当にスタート。
登壇者は、主演男優の張震(チャン・チェン)以外に、プロデューサーの余為彥(ユー・ウェイエン)
張震、白の長袖Tに、ブラックデニム、ジャケット、首には大判のバンダナというラフな格好。
“衣装”ではなく、“私服”なのでは。
髪型は、先月、『Mr.Long~龍先生』を携え、
第67回ベルリン国際映画祭に参加した時(→参照)のスタイルに近く、若干“Mr.スポック”が入っている感じ。
余為彥Pの方は、“中国ロックの父”崔健(ツイ・ジェン)をおとなしくした雰囲気。
キャップを被っていたから、そう見えたのかも。

イベントは、スタッフが投げ掛ける質問に両者が答えるというトークショー形式。
私は、すぐ目の前に立っている張震に興奮し過ぎて、内容をあまり覚えていない。
ささやかな記憶を手繰り寄せ、以下、簡単にまとめておく。


張震
20年以上前の作品『牯嶺街』が公開され、こうして皆さんに会えて、嬉しいです。

余為彥P
長い映画の鑑賞、お疲れ様でした。



質問
デビュー作でもある『牯嶺街』は、張震さんにとって、どのような位置づけの作品ですか。

張震
重要な作品です。初主演作ですし、これをきっかけに、映画に対する情熱を抱くようになりました。
共演の俳優やスタッフとは、その後も交流の続く友達にもなりました。
日本とも縁のある作品です。
上映された東京国際映画祭に参加したのが、僕にとって初めての海外旅行でした。



質問
現在の張震さんは、あの頃と比べ、どう変化しましたか。

為彥P
彼は、25年前とあまり変わっていませんね。昔の方が、むしろ大人っぽかったかも知れません。
当時は、口数が少なかったので。男性は、あまり喋らない方が、大人っぽく見えるものです。
撮影で、学業にも差しさわりがでて、あまり愉快ではなく、
映画の中の小四と感情が重なっていたのでしょう。
今の張震は明るくて、ジョークも言いますよ。



質問
実際の父親や兄が、映画の中で父・兄を演じるのはどうですか?

張震
変な感じで、イヤだったけれど、大きな問題はありませんでした。
父親に激しく叩かれるシーンがあった兄の方が大変で、のちに引きずる影響があったかも知れません。
でも、今思えば、貴重な経験でした。
まぁ、母は入っていませんが、家族が一緒に映像の中に残っているわけですから、楊昌監督には感謝です。



質問
余為彥プロデューサーは、本作品以外でも、楊昌監督と何度もお仕事をしていらっしゃいますが、
監督との何かエピソードは?

為彥P
『牯嶺街』は、楊昌監督が中学生の頃、台湾で実際に起きた殺人事件を扱った映画です。
この事件のことが、大人になってもずっとどこかに残っていたらしく、
楊昌監督は、映画化するために第一稿を書いたのですが、その時は実現しませんでした。
忘れられずにいたら、数年後、楊靜怡(リサ・ヤン)に出会ったことで、撮りたい気持ちが再燃し、
今度こそ映画となりました。
張震に関しては、私は、彼の父・張國柱(チャン・グォチュー)と以前仕事をしたことがありました。
当時9歳だった彼の息子が、ちょうど14歳くらいなっているはずだから、丁度よいと思いました。
この『牯嶺街』は、ただ単に殺人事件を描いただけの作品ではなく、
大陸から渡ってきた我々外省人が抱いていた不安が描かれている作品です。



張震
20年以上前のこの作品をきっかけに、こうしてまた皆さんとお会いでき、嬉しいです。
何度も言うように、この作品は、俳優としての自分にとって特別であるだけではなく、人生においても特別です。
撮影していた日々は、かけがえのない経験です。

為彥P
本日来場してくれた方の7割は女性。
楊昌監督と、映画について話し合っていた時、彼の出す意見がとても細やかだったのですが、
そういう細やかさが、女性に受け入れられるのかも知れないと感じます。



日本語もかなり達者であろう張震だが、今回の舞台挨拶では、全て中国語であった。
ただ、質問を聞いている様子から、日本語が分かっている感じは窺えた。

ちなみに、日本では片仮名で“チャン・チェン”と表記される張震。
“中国語には濁音が無い”というのは、
耳の悪い昔の日本人が言い切ったことで定説になってしまったのだと想像する。
張震も、実際の発音は、“チャン・チェン”より“ジャン・ジェン”に近いと思っていたけれど、
本日、余為彥Pのお話を聞いていたら、さらに違った。
この余為彥Pの中国語は、日本人が想像する典型的な“台湾のオジちゃんオバちゃん”の発音に近く、
“儿化”やそり舌のようなこもった音があまり無い。
よって、張震のことも、ほぼ“ザン・ゼン”と呼んでおられた。
日本の張震ファンも、より台湾チックに呼びたかったら、以後、彼のことは“ザン・ゼン”ね。

★ 撮影会

続いて、フォト・タイム♪

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舞台袖に置かれていたポスターを、スタッフと化した(?)張震自らが移動。
すでに結構な大物なのに、相変わらず、スカしたところの無いイイ人。



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興奮と焦りで、手がブレ、結局、最高!と自分で納得いく写真は撮れなかった。残念!


こうして、午後4時15分頃、イベント終了。
本来の予定より、10分ほど短縮されてしまったのが、ちょっと残念。
ただ、有楽町での追加の舞台挨拶が決まった時、時間的に移動がかなり厳しいと感じ、
新宿での時間短縮を、なんとなく予期していたため、心の準備があり、大打撃には至らなかった。
まぁ、舞台挨拶の回数が一回増えたことで、新たに2百人以上がお宝チケットを手にし、
張震を拝める機会に恵まれたのだから、OKといたします。

★ ニアミス…?!

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全てが終了してから、階下に行くと、建物の前に黒塗りのバンと、誰かを待つ運転手さんの姿。
うわぁぁぁぁぁぁぁ、最後にもう一度張震を見られるの?!と、一瞬色めき立ったが、
このお車に乗り込んだのは、余為彥Pだけであった。
張震は、その前に、別のお車で有楽町に向かったのでしょうか。どなたか目撃した方、いらっしゃいますか。

★ 番外

なお、所属事務所の微博には、(↓)こんなお写真。

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裏で、ポスターにサインする張震。
次に武蔵野館へ行ったら、チェック。




とにかく、あの小さな空間で、張震と御一緒したなんて、夢のようなひと時であった。
そして、未だ夢見心地…。
2017年のラッキーを、3月の時点ですでに全て使い切ってしまったかのようで、コワイ…。
角川シネマ有楽町の方へいらした方は、如何でしたか?

映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は、浮足立っていない冷静な時に、もう一度再見したい。



追記
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どうやら、角川シネマ有楽町の方には、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品、
『黒衣の刺客』(2015年)で共演した妻夫木聡が花束を抱えて駆け付けたようですね~。
ブッキーは、繰り返し「張震はイイ人」と発言(←私もそう思う)。
張震からは、ブッキーに、幸運を呼ぶジョーズ柄の海パン(?)をプレゼント、
ブッキーは笑って「これを穿いて、『ウォーターボーイズ』の続編が撮れる」と言ったとか。
共演の機会は少なくても、気が合って、張震が日本に来ると、一緒に食事に行く仲だそうです。



追記:2017年3月22日
映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』についてブログ更新。こちらから。

最近のちょっとした中華芸能諸々(+お嫁様トレンド)

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幻の名作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)の日本再上映に際し、
来日して舞台挨拶を行った張震(チャン・チェン)を拝みに
新宿武蔵野館へ足を運んだあの日から(→参照)、早2日。
未だどっぷり夢の中で、薄汚い現実社会に目を向けられない私mangoでございます。



そして、もう一人。
私がズブズブに足を突っ込んだまま、長年抜けられないでいる“金城武”という底なし沼…。
日本には出演作が上陸せず、すっかり御無沙汰の金城クンだけれど、中華圏では作品の公開が続いている。
王家衛(ウォン・カーウァイ)プロデュースの『擺渡人~See You Tomorrow』に続き、
この春、公開されるのは、陳可辛(ピーター・チャン)プロデュースの『喜歡·你~This Is Not What I Excepted』。

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タイトルは、『男人手冊』→『你看上去很好吃』と変わり、最終的に『喜歡·你』。


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以前こちらにも記したように、相手役は周冬雨(チョウ・ドンユィ)。
恋と仕事を同時に失う危機に立たされている周冬雨扮する女性シェフ・顧勝男と、
勝男が働くホテルの買収を目論む金城クン扮する国際ホテル財団総裁・路晉のラヴ・ストーリー。
お話自体は単純で、斬新!って程ではないように見受けるけれど、
20歳近く年の離れた“大叔(おじ様)&蘿莉(ロリータちゃん)”の組み合わせが目新しいという。
ま、確かに、金城クンの恋のお相手に、周冬雨ちゃんがキャスティングされるなんて、考えたこと無かった。

金城クンは、過去にすでに3本の陳可辛監督作品に出演しており、
周冬雨ちゃんは、陳可辛がプロデュースしたもう一本の話題作『七月と安生~七月與安生』に出演。
この『喜歡·你』を監督した許宏宇(デレク・ホイ)は、数々の陳可辛監督作品の編集を手掛けてきた人で、
『七月と安生』の編集も担当。
金城クン、周冬雨ちゃん、そして陳可辛P、許宏宇監督は、そんな風に繋がっているわけ。



そんな『喜歡·你』の記者発表会が、
昨日、2017年3月15日、北京四季酒店(フォーシーズンズ北京)の5階バンケットルームで行われ、
主演の金城武と周冬雨が登場。

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金城クンは、監督の要望に応え、瞬時に役に入り込む周冬雨ちゃんの演技を絶賛。
周冬雨ちゃんは、金城くんの体力を称賛。
全館貸し切りにしたホテルで、ぶっ通しで36時間以内に撮影をしなければならなかった時、
金城クンが最後まで疲れ知らずで、しっかりと覚醒していたので、そう思ったらしいが、
いや、もっと他に褒める所あるでしょ。
一応、「まだ金城さんと知り合っていなかった昔、
私、本当に金城さんのカレンダーを買って、部屋に掛けていたんです。
今は一緒に映画も撮れる。女性ファンに怒られちゃいますね~」とも発言している。

女性主人公がシェフという設定なので、『喜歡·你』はちょっとした“美食映画”にもなっているのかもね。
金城クン扮する富豪の路晉は、年上らしい優しく懐の深い紳士という感じではなく、
口が悪く、ケチをつける面倒な男みたいなので、そこら辺の演技も楽しみ。


この映画では、他、孫藝洲(スン・イージョウ)や奚夢瑤(ミン・シー)が共演。

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⑧様の生まれ変わり康司瀚を演じたあの俳優(あまり日本人女性ウケするタイプに思えない)。
奚夢瑤はスーパーモデル。

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一口にモデルと言ってもピンからキリまでだが、奚夢瑤は、CanCamモデル程度ではなく、
ヨーロッパの一流メゾンのショーや広告は勿論のこと、
アジア人でありながら、女の子たちの憧れヴィクトリアズ・シークレットのショーにも出るトップ中のトップモデル。
来世があるなら、私も次回はこのボディで生まれたい…。


この『喜歡·你』、ポップなラヴコメだと、日本に入って来る可能性は低いでしょうか。
日本のスクリーンで、毒舌かます金城クンが見たい。

★ お嫁入りニュース&お嫁様トレンド

さて、話変わって、お嫁入りのニュース。
前出の孫藝洲(スン・イージョウ)とも『僕たちのプリンセス~全民公主』で共演している
台湾の女優・安以軒(アン・アン)が、36歳にして、この度お嫁サマに。

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お相手は、かねてから噂のあった陳榮煉(チェン・ロンリエン)。
芸能人ではありません。福建省出身で、澳門(マカオ)を拠点にビジネスを展開する実業家。
“百億CEO”などと呼ばれる大富豪。

常々当ブログにも記しているように、台湾女優は毛に無頓着な人が多い。
中でも、私がこれまでに見た中で、最も多毛だったのが、安以軒。
ドラマ『アウトサイダー~鬥魚』で見せた背中が、
ちょっとしたカーペット並みにフサフサだったのが、記憶に鮮明。
大富豪をオトすにあたり、あの毛はどう処理したのだろうか。もしくは、大富豪が毛フェチとか…?
全国の大玉の輿狙いの黒いオトメたち(私を含む)に、参考までに教えて欲しい。

いえ、そんな事より、安以軒の足元。
ウェディングドレスに合わせているのが、スニーカー。
アディダスのStanSmith(スタンスミス)というモデルだそう。
日本だと、だいたい1万2千円くらいで買える物みたい。



この安以軒と限らず、近年、中華圏では、スニーカーを履いて結婚写真を撮る明星が激増。

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まずは、古いところで、2010年に、
香港明星、“小春(こはる)”こと陳小春(ジョーダン・チャン)と結婚した應采兒(チェリー・イン)
この画像だと分かりにくいが、レースをたっぷりあしらったスニーカーを履いている。
この頃は、スニーカーがまだ珍しかったので、
あまり身長差の無い新郎・小春を気遣ってスニーカーにしたのでは…、などとも言われていた。
(應采兒=169センチ、陳小春=178センチ)



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香港繋がりで、鐘麗緹(クリスティ・チョン)
昨年、一回り年下の(!)大陸俳優・張倫碩(チャン・ルオシュン)と3度目の(…!!)結婚をした時のお写真。
赤いスニーカー&鉄アレイ。熱いっ!肉食系の鑑!もー、エネルギーみなぎっております。



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台湾からは、2011年に“人”こと陳建州(ブラッキー・チェン)と結婚した范瑋(ファン・ウェイチー)
新郎はブラック、新婦はシルバーのナイキ。結婚記念日が記された特注品。
190センチ&172センチのスポーティーな大型カップルに、スニーカーはぴったり。



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台湾だったら、舒淇(スー・チー)も。
昨秋、40歳で、香港の馮倫(スティーヴン・フォン)についにお嫁入り。
億単位のお金を注ぎ込む人もいるほど、ド派手婚の多い中華圏の明星にしては珍しく、
さら~っとシンプルに結婚した二人。
ハレの日のお召し物も気負わず、履いているのは、
ステラ・マッカートニーが手掛けたアディダス・ピュアブーストのピンク。
着ているドレスも、なんと懐に優しいあのH&M製(しかも、自腹ではなく、H&Mから贈られた物)。
お金ならたんまりある大物カップル。敢えて派手にせず、自分たちのスタイルを貫いたのが分かります。
とても可愛らしいし、幸せそう。



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日本人でも、台湾を拠点に活動する大嘴巴Da Mouthの千田愛紗が、
昨年、台湾の年下モデルと結婚した際、スニーカーを履いたお嫁サマ姿を披露。
小柄な彼女は、キュートに決まっている。



日本国内だと、どうなのでしょう。
小栗旬と結婚した山田優は、スニーカーを履いていたけれど。
山田優くらい足が真っ直ぐ長ければ良いけれど、
日本人はふくらはぎがシシャモみたいに張っている人が多いから、
スニーカーをお嫁入り衣装にするのは、ちょっとキビシイかも…?

幾米<星空>出版記念トークイベント&サイン会in新宿

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台湾の絵本作家・幾米(ジミー・リャオ)の作品、<星空>の日本版出版記念で、幾米が来日。
2017年3月17日(金曜)、虎ノ門の台湾文化センターで、
日本で初めてのトークショーとサイン会が開催されるというが、あら、行けない、残念!と諦めたら、
その翌日、3月18日(土曜)、新宿南口の紀伊國屋書店でも開催されると知り、そちらへ行くことに。

…とは言っても、着席して観覧できるのは、先着で予約した35名のみ。
予定が定まらず、ぐずぐずしている内に、定員…。

でも、大丈夫。
オープンスペースでの開催なので、立ち見なら、誰でも予約無しに観覧できるし、
本さえ購入すれば、サインももらえる。



ここで、念の為、幾米(ジミー・リャオ)とは…

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1958年生まれ、台湾の著名な絵本作家。
中華圏全土で広く知られ、絵本でありながら、4作品が映画化されている。

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<向左走·向右走>『ターンレフト・ターンライト』 金城武+梁詠(ジジ・リョン)主演
<地下鐵>『サウンド・オブ・カラー 地下鉄の恋』 梁朝偉(トニー・レオン)主演
<戀之風景>『恋の風景』 林嘉欣(カリーナ・ラム)主演
<星空>『星空』 林書宇(トム・リン)監督

さらに、<向左走·向右走>と<地下鐵>は、ドラマ化も。
映画化された4本の内、日本未公開なのは、『星空』だけ。これ、とても観たい映画。
私は、幾米の絵本を何冊か所有しているが、『星空』の原作絵本はまだ持っていなかったので、
今回の機会は丁度良かった。



この紀伊國屋書店のイベントでは、幾米のお話相手に、映画監督の永田琴も来場。
私、永田琴監督は、そんなによく知らず、映画『渋谷区円山町』、ドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』
あと、ネット上で視聴可能なネスレのショートフィルム2作、
『我愛你 in TOKYO』と『その一言がいえなくて~說不出的那句話』しか恐らく観たことがない。

『我愛你 in TOKYO』は、古川雄輝の相手役が程予希(ルゥルゥ・チェン)、
『その一言がいえなくて~說不出的那句話』は台湾で撮影されており、
重要な役で曾沛慈(ツォン・ペイツー)が出演している。
日本の人気コミックが原作のドラマ『イタズラなKiss』 だって、最初に映像化してヒットさせたのは台湾だし、
永田琴監督は、台湾と御縁のある監督ではあるようだ。

★ イベント参加準備

今回のイベントは、新宿南口の紀伊國屋書店のオープンスペースで、午後4時半開場、5時開演。
トーク40分、Q&A30分、その後、絵本購入者を対象にサイン会という流れ。


私は、午後ちょっと用があったので、まずお昼頃紀伊國屋書店へ行って、先に本を購入し、
整理番号の入ったサイン会参加券を入手。

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せっかくの<星空>日本版出版記念イベントなのだから、日本版を買うつもりでいたのだが、
お店で、日本版と輸入版の両方を見たら、輸入版の方が、使用している紙質が、私好みだったので、
結局、輸入版を買ってしまった。
(もう少し具体的に言うと、輸入版で使用している紙の方が、厚めで、若干ざっくり、
適度な光沢がありながらマットなテクスチャー。)


これで取り敢えず準備OK。

★ 絵本<星空>作者・幾米×永田琴監督トークショー

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用を済ませ、急いで紀伊國屋書店へ駆け付けたが、開演の午後5時に間に合わず…。
書店の中に設けられたイベントスペースは多くのお客さんで溢れ、すでにお話が始まっている。

進行を務めているのは永田琴監督。
監督は、<星空>をかなり読み込んでいるらしく、
自身で感じた印象を交えながら、湧いた様々な質問を幾米に投げ掛けている。
残念だったのは、その時点で、私がまだ<星空>を読んでいなかったこと。
読んでいたら、質問の意味をもっと深く理解できただろうに…。


そんな訳で、理解不足の私が、それでも印象に焼き付いたやり取りを、以下、一部挙げておく。

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永田琴監督
私が映画を作る時は、登場人物の名前は大切で、そこからその人物の背景などを具体的に考えますが、
幾米さんの絵本の登場人物には名前がありません。なぜ、名前をつけないのですか。

幾米
敢えてボカして、シンプルにするようにしています。



永田琴監督
赤い色が印象的に使われていますね。

幾米
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『レッド・バルーン』(2007年)を観て、じゃぁ、私も赤を使おうと思いました。
物語の中では、あとに、赤い恐竜が出てくるので、そことも関連付けています。
最後の赤いベレー帽は、『ターンレフト・ターンライト』(2003年)の中で、
金城武とスレ違う女の子が、やはり赤い帽子を被っているので、
あの女の子に繋がるよう、赤いベレー帽を被せました。



永田琴監督
昼間でも、家の中に電気が点いていないのは?

幾米
彼女は双眼鏡でいつも外を見ています。家の中が明るかったら、外からそれがバレてしまいます。
また、彼女の心が暗いことの暗喩にもなっています。



永田琴監督
男の子と女の子が星空を見に行く時、二人とも運動服を着て、ポケットに手を入れているのは、なぜ?

幾米
手を描くのは、結構難しいんですよ。

永田琴監督
映画を撮る時、お芝居に慣れていない子は、ポケットに手を入れさせると、お芝居し易くなるんですよ。



永田琴監督
映画では、何度も何度も脚本を書き直し、使えず削る部分も出てきます。
絵を描いて、絵本に使わない物もあるのですか。

幾米
下描きは沢山描きます。そこから使わない物も沢山あります。
正式に描き始め、気に入って描き上げ、それでもどうしても物語に入れられない物も出てきます。
そういう場合は、この物語には合わなかったのだと、諦めます。



永田琴監督
一枚の絵はどれくらいの時間で描き上げるのですか。

幾米
一枚を仕上げる時間というのは、言いづらいですね。
どういう風にしようかと考える時間や、物語の流れを確認する時間もあるので。
ただ、描き始めると、私は筆が速く、彩色の作品で、だいたい1~2日以内に完成させます。
それ以上時間をかけると、飽きてきてしまいます。



永田琴監督
創作の気分転換は。

幾米
毎日規則正しく生活をしています。いつも朝8時から、午後5~6時くらいまで仕事をしています。
時間に余裕がある時は、映画を観に行ったり、飼っている3匹の年老いた猫の面倒を見ています。



永田琴監督
最後にメッセージを。

幾米
ありがとう。(日本語) 



日本では出版されたばかりの<星空>だが、すでに8年前の作品なので、
幾米御本人も、すでによく覚えていないようで、永田琴監督が投げ掛ける質問の多くに、
かなりの頻度で、はにかみながら「忘れた」と馬鹿正直に答える(笑)姿が、お茶目な幾米であった。
自身の作品が3本の映画になったと話しておられたが、それも4本の間違いよねぇ…?
幾米が忘れた一本の映画は、どれでしょう。(←恐らく、まったく話に出なかった『恋の風景』と思われる。)
永田琴監督が、<星空>をあまりにも細部まで読み込み、ご自分なりの見解をもっているので、
幾米も、「随分よく見ていてくれているなぁ~」と感心している様子も窺えた。

ここまでで、すでに時間オーバーの午後6時10分。
続いて、会場のお客さんからの質問に答えるコーナー。
こちらも、記憶に残った物だけ書き残しておく。


質問
映画化された物を観ましたが、どの作品も幾米さんに対するリスペクトが感じられました。
そういうのを、どうお感じですか。

幾米
監督に100%任せ、好きなように撮ってもらっています。
私もクリエーターだから分かりますが、クリエーターは、人から指図されたくないものです。



質問
幾米さんの青の色が好きです。インスピレーションはどのように湧いてくるのですか。

幾米
私の作品は、色が鮮やかです。描いていて、色が鮮明じゃないと、描き終わった気がしません。
それは、亜熱帯の台湾に暮らしていることも関係しているかも知れません。
私がもし北欧に住んでいたら、違っているかも。
インスピレーションは無いと、仕事になりません。
湧いてくるというより、クリエーターは、周りにあるインスピレーションを掻き集めているような感じです。
クリエーターじゃない人は、インスピレーションが有っても、見落としているかも知れません。



私は映画が好きなので、映画の話はもっと聞きたかった。
同じクリエーターとして、監督には口出しせず、好きなように撮らせるとは、なんとも寛大だが、
自分の大切な作品をいじらせるのだから、手掛ける“監督選び”は、それなりに慎重なのではないかと想像。
これまで、杜峯(ジョニー・トー)とか馬偉豪(ジョー・マ)とか林書宇(トム・リン)等々が、
幾米作品を実写映像化してきたわけだが、なぜこれら監督にその権利を与えたのだろうか。
過去の監督作品が好きだからとか、企画を聞いてピンと来たとか、人柄が良さそうとか、何かあるでしょー?!
永田琴監督も、もしかして、その内、幾米作品を映像化することになるかも…?
この度のイベントで、永田琴監督の“幾米作品愛”は、御本人にもキョーレツに伝わったと思うので、
「私に撮らせて!」とお願いすれば、OKのお返事をもらえそうな気がする。

★ サイン会

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トークショーの後はサイン会。
予定より20分ほど押し、午後6時半頃スタート。
サイン会参加券に記された整理番号順に並び、サインをもらい、大抵の人は幾米とツーショット写真を撮影。
先着百名には、最後、2種類のポストカードと、
微熱山丘 SunnyHillsより提供の鳳梨酥(パイナップルケーキ)がもらえる。


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私は自分の写真が嫌いなので、幾米お一人様写真を。
サインには、猫の絵が添えられている。やっぱり猫が好き、…なのですね。




<星空>出版記念幾米トークショーと、私にとっては台湾ウィークであった。

幾米は、一人一人にとても丁寧に対応。シャイで優しいお人柄が滲み出ていた。
イベント全体もとても楽しかった。
永田琴監督も、“なんとなく白羽の矢が立って、やって来たトークのお相手”という感じではなく、
幾米作品への深い愛情が感じられ、その愛あってこその突っ込んだ話を展開していたし、
クリエイター同士で通じる何かが、第三者である客席の我々にも伝わってきた。
台湾文化センターの方へいらした方々、そちらは如何でしたか。
このような機会が有れば、また行きたい。
1998年に絵本作家デビューした幾米は、来年節目の20周年。日本にもまた来ていただきたい。
それ以前に、今回来てくれて感謝!です。

あと、映画『星空』は、やはり観たい!
原作絵本の日本版も出版されたことだし、日本公開に繋がってくれたら、嬉しい。


そうそう、余談になるが、紀伊國屋書店の会場で、双子の倉あんなと倉れいなの姿を見掛けた。
我々がサイン会の列に並んでいた時は、トークショーを終えた永田琴監督と、片隅で雑談していた。
監督と一緒にお仕事をしたことがあるのでしょうか。
彼女たちは、それぞれ“安娜”、“芮娜”の名で、近年、拠点を台湾へ移し、活動している一卵性双生児。
確か、大陸ドラマ『ときめき♡旋風ガール~旋風少女』の続編、『旋風少女 第2季』にも出ているはず。
小柄だけれど、まったく同じ顔の美人さんが二人一緒に居ると、目を引きます。

再上映!映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』4Kデジタルリマスター版

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【1991年/台湾/236min.】
1960年、台湾・台北。
上海から渡ってきた両親と暮らす張震は、5人兄弟の4番目で“小四”と呼ばれ、
建國中學昼間部への入学に失敗し、夜間部に通い始めた少年。
公務員の父は、小四が夜間部で、悪い仲間に影響されるのではないかと心配し、
知人の汪に、昼間部への編入を頼むが、そうすぐには叶わない。
そんな父自身、台湾へやって来て十年以上が過ぎても、先行き不透明で、
言葉には表現できない不安を抱えていた。

親の心配をよそに、友達とつるんで授業をさぼったり、撮影現場に忍び込んだりしている小四は、
学校の医務室で出会った小明という女の子に関心を抱くようになる。
徐々に小明と親しくなっていく小四だが、ある時、彼女に関する噂を耳にする。
小明は、小公園のリーダー格・ハニーの恋人で、
そのハニーは、敵対する不良グループ217のリーダーと小明を奪い合った挙句、殺害し、
台南へ逃亡して、消息が途絶えているというのだ。

一方、小四のクラスに、小馬という司令官の息子が転校してくる。
前の学校で人を斬ったという黒い噂があり、近寄り難い雰囲気の小馬だが、
人違いで不良に絡まれた小四を助けたのを機に、二人は仲の良い友人になっていく。

そんなある日、ずっと行方知れずだったあのハニーが台北に姿を現す…。


2007年6月29日、59歳の若さでこの世を去った(→参照楊昌(エドワード・ヤン)監督の代表作で、
台湾映画史上最高傑作の一本!と称えられながら、長年お蔵入り状態に陥った不遇の名作。



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日本とも御縁のある作品で、第4回東京国際映画祭では、審査員特別賞と国際批評家連盟賞を受賞。
しかし、“日本と御縁”が災いに…。
本作品に関する様々な権利を有していた日本の会社が、バブル崩壊後の2005年に倒産し、
それら権利が黒い会社(!?)の手に渡ってしまったため、
ソフト化も上映も困難になり、実質お蔵入り状態になってしまったと噂されている。
楊昌監督が亡くなった2007年、所縁のある東京国際映画祭が監督の追悼特集を組んだ際も、
一番上映すべき本作品はラインナップから外されていた。

ところが、もう二度と日の目を見ることは無いかも…、と半ば諦めかけていた2016年、
どういう問題解決がなされたのか、マーティン・スコセッシ監督が設立したワールド・シネマ・プロジェクトと
クライテリオン社の共同で、4Kデジタル修復版が制作され、アメリカでソフト化。
地元台湾でも、第53回金馬獎でスクリーンに。
ここまで来たら日本でも…、とほのかな期待を抱いていたら、案の定、第29回東京国際映画祭で上映。
チケット発売時、すでに一般劇場公開が決まっていたので、私は映画祭をパス。

楊昌監督生誕70年、没後10年の節目に当たる2017年3月の公開を心待ちにしていたところ、
主演男優の張震(チャン・チェン)の来日舞台挨拶が発表。
思いが強過ぎて、チケット発売当日は緊張しまくったが、私もお宝チケットの入手に辛うじて成功。
こうして、ただでさえ心待ちにしていた映画を、張震舞台挨拶という大きなオマケ付きで観られる幸運を得た。
ありがたや、ありがたや。(→舞台挨拶については、こちらから。)




舞台は、1960年代初頭の台北。
主人公は、成績優秀でありながら、昼間部への入学に失敗し、建國中學夜間部に通う外省人の少年・小四。
物語は、親の心配をよそに、不良の溜まり場“小公園”という冰菓室に出入りする少年たちとつるむ小四が、
他の多くの男子生徒と同じように、小明という少女にほのかな恋心を抱き、徐々に彼女と親しくなっていくが、
ある時、姿をくらましていた小明の恋人・ハニーが台北に突如戻って来たことで、
ふたつの不良グループ、“小公園”と“217”の対立が激化、
それは、小四と友人、小四と小明の関係にも暗い影を落とし、
ついには殺人事件にまで発展してしまう悲劇を描くダークな青春残酷物語


本作品は、1961年6月、台北の牯嶺街で、
建國中學に通う山東籍の15歳の少女・劉敏が、同校の浙江籍の16歳の少年に殺害されたという
実際に起きた事件をモチーフにしている。

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これは、国民党政府がやって来てから台湾で初めて起きた未成年者による殺人事件で、
加害少年は死刑を宣告されるが、後に判決が覆り、30歳のお誕生日直前に釈放されたらしい。

楊昌監督は、この加害者と2歳しか違わない1947年生まれで、
2歳の時、生まれ故郷の上海から、家族と共に台湾へ渡った外省人。
事件が起きた当時に通っていた学校も、事件当事者と同じ建國中學。
新宿武蔵野館で行われた舞台挨拶でも、余為彥(ユー・ウェイエン)プロデューサーが
「楊昌監督が中学生の頃、台湾で実際に起きた殺人事件が、監督のどこかにずっと残っていて、
映画にしたいと考えていた」と語っていたが、自分と境遇の重なる同世代の少年が起こした惨事が、
中学生だった楊昌監督にとって、色んな意味でいかに衝撃的だったかは、想像に容易い。

そんな訳で、本作品は、一見、恋愛のもつれから起きた痴情事件を描いた作品。
優等生が大胆な事件を起こし、あんな真面目な子がなぜ?!と世間を驚かせる事は、日本でもしばしば。
しかし、牯嶺街の事件の背後にあるのは、当時の台湾独特の事情であり、
本作品も、少年少女の痴情事件を描く一方で、
複雑な歴史に翻弄される人々(さらに言うと、台湾の外省人)を描く戦後台湾の歴史ドラマの側面をもつ。
私が本作品を興味深く観るのも、青春物語の裏に、台湾が歩んだ歴史の一頁を覗けるから。

“台湾独特の事情”とは、終戦と同時に、日本の支配から解放されたものの、
蔣介石率いる国民党政府に接収された事。
1949年頃から、国民党政府と共に大陸から多くの人々が台湾に流れ、ついには定住。
台湾に元々いる“本省人”に対し、“外省人”と呼ばれるこれらの人々は、
昨今、日本統治時代を美化する日本人からは、悪者呼ばわりされることもしばしば有るけれど、
もはや欠かすことのできない台湾の一部だし、外省人の中にも様々な人がいる。

そもそも、後に“外省人”と呼ばれる人々にとって、
大陸から南の小島・台湾へ渡るという事は、かなりの“都落ち”感があったと推測。
本作品が描く、その後の1960年代初頭は、そんな外省人たちにとって、微妙な時期。
良い生活をしている高官や、そこに上手く乗る世渡り上手が存在する一方、
大陸へはもう戻れそうにない、かと言って、台湾でも安定した生活が得られない…、と先が見えず、
不安に襲われる庶民が多数。
本作品も、まさにそんな重苦しい空気が漂う当時の台湾だからこそ起きた事件を描いており、
結果的に起きた事件そのもの以上に、そこに至る背景こそが、作品の核と感じる。


日本人にとっては、作品の中に“未だチラつく日本の影”が見られるのも、興味深い。
外省人の中でも比較的裕福な人は、眷村(けんそん)には暮らさず、日本人が遺した立派な木造家屋に住み、
その屋根裏で見付けた日本刀や日本人女性の写真が、少年たちの興味の対象になっているシーン等がある。
最後に殺人の凶器になるのも、日本のいわゆる“ドス”である。
父親が公務員の主人公・小四の家も、ややお粗末ながら日本式家屋。
夕食時、御近所から漏れ聞こえる音楽は、日本歌謡。
有難迷惑なBGMが流れる中、小四の母が、
「日本と8年戦って、今暮らすのは日本家屋で、耳にするのは日本の歌…」とボソッと呟くシーンも。




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出演は、まず、“小四”こと張震に張震(チャン・チェン)
小四が想いを寄せる女学生・小明に楊靜怡(リサ・ヤン)

『牯嶺街少年殺人事件』は、今や国際映画祭の常連で、中華圏を代表する俳優になった張震が、
14歳にして、初めて主演を飾った記念すべき作品。
(二世俳優である張震は、それ以前にもちょっとした映画出演経験が有るので、
よく“『牯嶺街』がデビュー作”と言われているけれど、正確には、本作はデビュー作ではない。
“初出演作”ではなく、“初主演作”であり、“実質的デビュー作”。)

どこの国でも、大成する子役出身者はあまり居ない。
子供の頃からチヤホヤされ過ぎて、自分を見失ってしまう場合もあるだろうが、
仮に自分をしっかり持っていても、子役と大人の俳優では、求められる物が違うから、
その需要に巧く応じながら大人にシフトすることに失敗して、潰れていくケースも多いのでは。
子役に求められるのは、可愛さだったり健気さだけれど、大人だと、それだけじゃ駄目。
見た目も、特に男性の場合、子供の頃に「カワイイ~」と誉められる人は、
大抵、とっちゃん坊や風の痛いオジさんと化してしまう。
むしろ子供の頃、老けているだの器量が悪いだのと貶される人の方が、カッコイイ大人の男に成長するものだ。

ところがさぁー、40歳の今カッコイイ張震は、14歳の『牯嶺街』で、私の定説を覆す可愛さ。
単純に顔立ちが整っていて可愛いし、
醸す少年らしい雰囲気が、難しいお年頃の小四にぴったり。
小明に、「僕はハニーとは違う。君を守って、安定を与えるから」と言うのだが、
それを見ている第三者の私に、「いやいや、君には無理でしょ」と思わせてしまう幼稚な一生懸命さが良いワ。
あの真っ直ぐな青臭さや危うさは、14歳のあの時にしか出せなかった物だと感じる。


そんな小四が想いを寄せる小明は、学園のマドンナ。
同世代の少年のみならず、もっと年上の男性からもモッテモテ。しかも、自分でもそれを分かっている。
決してウブではなく、すでに“オンナ”の一面をもつ、なかなかの小悪魔。
扮するは楊靜怡。
楊昌監督は彼女と出逢ったことで、『牯嶺街』を撮ろうとしたほど、監督に霊感を与えた女の子。
それだけの事あり、清楚な中に芯があるというか、何か凛とした物を感じさせ、
小四よりすでに精神的にずっと大人な小明に合っている。

本作品での演技が認められ、金馬獎で主演男優賞にノミネートされた張震と同じように、
楊靜怡もまた主演女優賞にノミネートされるも、その後の人生の選択は張震とは違い、
彼女はあっさり芸能界とはサヨウナラ。
アメリカで学び、現地で会計士となり、韓国系アメリカンの男性と結婚し、3人の子をもうけ、NY在住。
普通の新人女優だったら、“楊昌監督に見出されたミューズ”の名にシガミ付きそうなものだけれど、
なんとも潔い楊靜怡。ロスで行われた楊昌監督の葬儀の際、一度だけメディアに登場したのを見たが、
すでに一般人なので、それっきり。

そうしたら張震が昨年、自身の微博に、(↓)このような写真を投稿。

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20年以上の時を経ても、小明の面影ありますね~。でも、映画の中の小明よりずっと幸せそうな笑顔。



非常に登場人物の多い群像劇なので、他の出演者についてはサラッと。
小四の家族は現在も芸能の世界で活躍中の人が多いので、今のお姿と比較しながら。

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公務員の父・張舉に張國柱(チャン・クオチュー)、教員を休職中の母・金先生に金燕玲(エレイン・ジン)
一番上の姉“老大/大姐”張娟に王娟(ワン・ジュエン)、“老二”こと兄・張翰に張翰(チャン・ハン)
二番目の姉“老三/二姐”張瓊に姜秀瓊(チアン・ショウチョン)など。

父と兄は、張震の実際の父と兄。
といったヒットドラマが日本にも入ってきているので、映画を観ない台湾ドラマニアでも知った顔であろう。
ドラマで見る張國柱は、濃過ぎるドーランばかりに目を奪われてしまうが、
私生活で、ふた回りも若い女性と再婚しただけあり、70近い現在も充分イケている素敵なおじ様。
『牯嶺街』に出演したのは、今の張震とほぼ同世代の40代前半だが、今の張震以上の美男子で、
融通が利かず、立ち回りの下手なインテリを演じている。

兄・張翰は、最近、日本では、同姓同名の大陸若手人気俳優の方が注目されがちだけれど、
それでも出演ドラマがボチボチ日本に入って来ている。
ディーン・フジオカ目当てで『王子様をオトせ!~就是要你愛上我を御覧になった方々、
あのドラマでストーカーJerryに扮しているのが、張震のお兄サマです。
私は、張翰出演ドラマだったら、李雲嬋(ロビン・リー)が監督し、今をときめく彭于晏(エディ・ポン)や
張鈞(チャン・チュンニン)も出ている『ハチミツとクローバー~蜂蜜幸運草』が好き。


女子の部では、母親役の金燕玲が、還暦過ぎても、映画で大活躍。
一番上の姉・張娟役の王娟は、台湾偶像劇の母親役が定着し、すっかりオバちゃんのイメージがあるので、
久し振りに観た『牯嶺街』で、小さな弟妹をもつ妙齢の女性を演じているのが不思議な感じ。
もう一人の姉・張瓊役の姜秀瓊は、その後、表舞台から裏方さんの監督に転向。
4人の監督による4話のオムニバス映画『昨日的記憶~When Yesterday Comes』(2011年)の一篇、
彼女が手掛けた『迷路~Healing』では、『牯嶺街』で弟を演じた張震を主演男優に起用。
また、近年は、永作博美を主人公に、『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』(2015年)という
日本映画も撮っている。



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他、印象に残るのは、小四の親友で、歌の上手い“小貓王”こと王茂に王啟讚(ワン・チーザン)
同じく親友の飛機に柯宇綸(クー・ユールン)、転校してきた司令官の息子・小馬に譚志剛(タン・チーガン)
逃亡先の台南から突如戻って来た小公園のリーダー格ハニーに林鴻銘(リン・ホンミン)等々。

この中で、今でも現役バリバリの俳優は、柯宇綸だけ。
彼もまた、張震と同じように二世俳優で、父は俳優で監督の柯一正(クー・イーチェン)。
パパが楊昌監督と親しかったこともあり、『牯嶺街』に出演。
13歳にして、『牯嶺街』はすでに5本目の映画出演だった柯宇綸だが、
映画に全ての情熱を注ぐ楊昌監督と仕事をしたことで、人生にかなりの影響を受けたようだ。
(↓)こちら、2013年3月号の台湾版<美麗佳人 マリクレール>。

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十人の有名人が20年前を振り返るという特集で、柯宇綸が挙げているのは、やはり『牯嶺街』。
大人になった柯宇綸が建國中學の制服を着て撮った再現写真、面白いですね~。
映画撮影当時の柯宇綸は、一歳しか違わない張震より、ずっとちっちゃくて、可愛らしい。


“ちっちゃくて可愛い”と言えば、小貓王(リトル・プレスリー←中華圏では、“貓王”がプレスリーの愛称)!
扮する王啟讚は、柯宇綸と同じ1977年生まれだが、柯宇綸以上のプチサイズ。
この小貓王は、本来、小馬役の譚志剛にやらせる予定だったところ、譚志剛がガンガン成長してしまい、
役に合わなくなってしまったので、代わりに王啟讚がキャスティングされたらしい。
代役とは思えない程のハマリ役で、プレスリーに憧れ、一生懸命英語の歌詞を覚え、
お立ち台にのって、少年らしいソプラノで歌う姿は印象的。
その後も俳優業を続けた王啟讚の出演作で、私が最後に観たのは、
名作ドラマ『ニエズ~孽子』のはずなのだが、記憶ナシ。どこに出ていたのだろう?
結局、彼は芸能界を離れ、車の改造工場を開き、商売に専念しているとのこと。

江湖感漂うハニーは、楊昌監督のお気に入りキャラで、声の吹き替えも監督自らが担当。
私にとっては、お気に入りキャラという程ではないが、
海軍のセーラー服(しかも、すンごいベルボトム!)を着た変テコなチンピラを、
日本では見たことが無かったので、やけに異国情緒を感じ、ずーーっと記憶に焼き付いていた。
演じている林鴻銘は、このハニーで一気に名を馳せたものの、その直後、バイク事故で足に大怪我を負い、
長期間治療に専念している間に、次々とチャンスを失い、芸能界からフェイドアウト。
…が、『牯嶺街』で助監督を務め、後に台湾偶像劇の有名監督となる瞿友寧(チョウ・ヨウニン)が、
林鴻銘を探し出し、同監督が演出した2001年の公視のドラマ『天空之城』に出演させている。
これが、『牯嶺街』後の最初で最後の林鴻銘出演作。
現在は結婚し、子供もいて、台北のコーヒーショップ喜朵咖啡館のオーナーさん(場所は信義路2段18號)。

芸能界引退どころか、この世から去ってしまったのが、
前述のように、本来予定されていた小貓王から小馬の役に変わった子役出身の譚志剛。
その後、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督にも気に入られ、
侯孝賢プロデュースの『少年吔,安啦!~Dust of Angels』(1992年)に主演し、前途洋々と思われたのに、
1993年、不慮の事故で死亡。享年18歳。


他にも、あーんな人やこ~んな人が多数出演。
一部挙げると、小明の叔父さん役で金士傑(ジン・シージエ)
217太保幫の山東の子分・嘴子役で劉亮佐(リウ・リャンズオ)
お医者さんの婚約者・香莉役で陳湘(チェン・シアンチー)
女性警官役で郎祖筠(ラン・ズーユン)等々…。
久し振りに観たことで、えー、こんな人がこんな役で出ていたんだぁ、という驚きがいっぱい。




関羽に青龍偃月刀、李小龍(ブルース・リー)にヌンチャク、スケバン刑事にヨーヨー(!?)といった具合に、
昔から人気キャラにはお約束の武器や道具が付き物で、
『牯嶺街少年殺人事件』の小四が大切にしているお約束は、大きな懐中電灯。
懐中電灯でずっと闇を照らしていた小四自身が深い闇に落ちた時、懐中電灯をドスに持ち替え、
変えられると信じていた理不尽な世界で起こしたあの悲劇…。
鮮血に染まったTシャツで立ち尽くし、一拍置いて、もう後には戻れない現実を目の当たりにし泣き崩れる小四。
嗚呼、青春がヒリヒリと痛い…。

本作品は、長年封印されていた事で、私の中で想いが膨らみ過ぎているのではないかとの懸念もあったが、
やはり台湾新電影の最高峰の一本、…いや、全台湾映画の中でも、最高の一本。
ビリヤード、チンピラ、作業服のような制服、いかがわしい空気、青春、不条理、ロングショットの長回し等々、
私が思い浮かべる“これぞ台湾映画!”が全部詰まっている。
大好きな作品と言っていた割りに、詳細をすっかり忘れていたので、
まるで初見の作品かのように、新鮮な気持ちで観ることもできた。
また、その封印期間に、私も随分大人になり、
以前より歴史に詳しくなって、作品に対する理解が深まったような気がしなくもない。
その代償に、昔はストレートに感じた物が、今は感じられなくなっている可能性も。
映画は観る年齢や時期などによって、受け止め方が変わるものだと思うので、まぁ、それはそれで良いかと。
『牯嶺街少年殺人事件』を傑作と見做す思いは、今も昔も同じ。
(もしかして、日本語字幕は改めた?とても分かり易くなっているのだけれど…。)

現時点で、“外省人モノ”の傑作は…

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映画なら、この『牯嶺街少年殺人事件』と、侯孝賢監督の『童年往事 時の流れ』(1985年)、
ドラマなら『ニエズ~孽子』と勝手に認定させていただきます。
(ドラマは、『ニエズ』と同じ原作者&監督コンビによる『一把青~A Touch of Green』も、
観たら、“外省人モノ”の傑作に加わりそうな予感。)

私と限らず、本作品を大絶賛する声は多いけれど、実のところ、万人向きだとは思わない。
特に、ここ数年で台湾エンタメに魅せられた人が、
世間での高評価に乗せられて、この映画を観たら、恐らく失望すると思う。
昔と今とでは、台湾エンタメの趣きが相当違うから、
『海角七号』(2008年)や『KANO』(2014年)こそが台湾映画だと思っている人や、
ましてや台湾偶像劇が台湾エンタメの全てになっている人が観ても、きっと退屈なはず。

私は、最近の台湾映画に失望することが多いので、今回改めて『牯嶺街少年殺人事件』を観たことで、
あの頃が台湾映画界の黄金時代だったのだシミジミと感じ、
状況が変わってしまった事や、楊昌監督がもうこの世に居ない事を淋しく思うのであった…。
まぁ、嘆いたところで、仕方が無いのだけれど。

『牯嶺街』は、もうちょっと待てば、DVDが出ると信じてよろしいでしょうか…?!出たら絶対に買う。
でも、この手の作品が好きな人には、DVDを待つより、まずは映画館の暗闇で観ることをお勧めしたい。
約4時間という長尺なので、おトイレ問題を考えたら、家でDVD鑑賞の方が断然気楽だけれど、
気楽に流して観たら、もったいない作品。覚悟を決めて観に行くだけの価値あり。



『牯嶺街少年殺人事件』日本再上映に際し、
来日した主演男優・張震とプロデューサー余為彥による舞台挨拶については、こちらから。

映画『哭声/コクソン』

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【2016年/韓国/156min.】
韓国・谷城。
普段は静かなこの村で、残忍な殺人事件が発生し、
警察官のジョングは、珍しく朝っぱらから呼び出しを食らう。
その後も、不可解な死を遂げる村人が続出。
一向に真相が掴めず、得も言われぬ恐怖に包まれた谷城では
「山奥に潜むよそ者が怪しい」、「あの日本人が来てから事件が続くようになった」と噂が広がり始める。
その頃、ジョングの娘・ヒョジンにも異変。
義母の勧めで、厄払いのため祈祷師を呼んだところ、彼は、山に居るよそ者が元凶だと断言。
ジョングは、日本語を喋る神父ヤン・イサムを通訳として連れ、怪しいよそ者との接触を試みるが…。


韓国のナ・ホンジン監督による長編監督作品第3弾。

ナ・ホンジン監督作品は、前2作、『チェイサー』(2008年)も『哀しき獣』(2010年)も嫌いじゃない。
この第3弾は、映画館で予告を観て、前2作以上と予感し、公開を楽しみにしていた。



舞台は韓国・谷城(コクソン)。
物語は、普段は静かな片田舎で奇妙な殺人事件が次々と勃発、
山の奥に潜む謎の日本人が怪しいと噂される中、
事件を担当する警官・ジョングは、娘ヒョジンのただならぬ異変に気付き、
彼女を救うため、その日本人を追い詰めていくが、事態は好転するどころか、益々混乱し、
なかなか真相に辿り着けない恐怖を描くサスペンス・スリラー

日本の配給会社が“サスペンス・スリラー”と位置付けているので、ここでも一応それに従っておくが、
ふぅ~ん、“サスペンス・スリラー”ねぇ…。

事前にあまり情報を入れずに鑑賞した私自身、
本作品を、“奇怪な殺人事件を解明していくミステリー仕立ての犯罪サスペンス”と漠然と考えていた。

ところが、映画が始まり一時間くらいしてからだろうか、
本作品が私の予想とは違う方向にどんどん進んでいる事に気付いた。
作品が予想通りだと、安心感が得られる反面、退屈になりがちだから、
予想を裏切り、新鮮な驚きを与えてくれる分には構わない。
…が、しかし、本作品の裏切りは、私にとって、ポジティヴな裏切りではなく、ネガティヴな裏切り。
嗚呼、裏切られたぁぁぁー…!と、ガクッと拍子抜け。

だって、これ、犯行を解明していく犯罪サスペンスなどではなく、
理屈でも科学でも解明できない超常現象連発のオカルト映画ではないか。
もっと言うと、“韓国現代版『エクソシスト』(1973年)”。
実際、本作品にも、エクソシスト(祈祷師)は登場する。ついでに言うと、殭屍(キョンシー)的要素もあり。


ちなみに、韓国の原題は『곡성 哭聲』
私、韓国語はチンプンカンプンなのだけれど、
“哭聲”は、日本語の“哭声(こくせい)”と同じで、“泣き叫ぶ声”という理解で良いだろうか。
英語のタイトルも、泣き叫んだり、嘆き悲しむことを意味する『The Wailing』なので。
で、その“哭聲”と、韓国語で同じ発音なのが、物語の舞台となる寒村“谷城(곡성 コクソン)”。
架空の村ではなく、実際に、韓国全羅南道の北東部に位置。
つまり、タイトルは、“哭聲”と“谷城”の掛け言葉になっているワケ。




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主な出演は、谷城の警察官・ジョングにクァク・ドウォン、その娘・ヒョジンにキム・ファニ
山の中に潜む怪しげなよそ者に國村隼、事件収束にあたる祈祷師にファン・ジョンミン等々…。

私が思う本作品一番の見所は、3人の名優、クァク・ドウォン×國村隼×ファン・ジョンミンの演技。

主演のクァク・ドウォンは、一般的な“韓国映画の主演男優”のイメージからは程遠いユルさ。
見た目からしてユルく、プルプルのおなかを丸出しにして横たわっている姿は、
まるで岸に打ち上げられた脂がのった(…のり過ぎた)トド。
“体脂肪率ひと桁じゃなければ韓流スタアじゃない!”って感じのかの国では、貴重な存在。
扮するジョングがまた御人好しで、
日本人からすると、父権の印象が強い韓国において、婿養子のように、妻の母親と同居。
職業は一応警察官だが、長閑な田舎町なので、普段は大した仕事が無いのではないかと想像。
村で奇妙な殺人事件が起きたため、珍しく朝っぱらから呼び出しを食らい、慌てて出掛けようとするが、
お姑サマから「まぁ、とにかく、朝ゴハンでも食べてから行きな」と言われたら、
この人、本当に、のそのそと朝ゴハンを食べ始めてしまう。そんなに緊張感なくて、大丈夫なのか?!
私、警察官・ジョングは、この冒頭のシーンで、好きになれた。


そういうユルさとは対極にいるのが、あとの二人の俳優。
ファン・ジョンミンは、祈祷のシーンだけでも、合格点を差し上げられる。

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細長い手足でダイナミックに舞う祈祷は絵になるし、どこかにイッちゃっている不気味さが最高。
あと、ファン・ジョンミンでもう一つ記憶に焼き付くのが、ゲロのシーン。
最初血を吐き、次第にそこに何だか分からない白い吐瀉物が混ざり、ゴーゴーと吐き続ける。
その量と勢いは、マーライオンの如し。
今後、 シンガポールを取材した旅番組で、マーライオンが映る度に、
私は豪快にゲロを吐くファン・ジョンミンを重ねてしまうことでしょう。



そして、國村隼。
國村隼が出演しているのは、私が本作品を観たかった大きな理由の一つ。
國村隼は、本作品での演技が認められ、日本人でありながら、
韓国の映画賞、第37回青龍映画賞で、男優助演賞と人気スター賞をダブル受賞。

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外国人俳優の受賞は、青龍映画賞37年の歴史の中でお初なのだと。おめでとうございます♪
海外でこうして認められ、誰よりも國村隼本人が感激したと思う。
いつか日テレ『アナザースカイ』に出演するとしたら、自分の“アナザースカイ”に韓国を選ぶに違いない。
ま、このように、受賞の話は日本でも報じられていたので、どんな役を演じているのか、益々興味が湧いた。

演じているよそ者は、日本人という設定なので、台詞も日本語。
(韓国の人々とは、日本語を喋るヤン・イサオという神父を介し、意思疎通。)
とは言っても、台詞の量は少なく、醸す雰囲気と存在感で勝負。

鑑賞前、一つ気になっていたのは、(↓)こういうカメラを構えたようなポーズ。

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韓国メディアが、『哭声』に出演した國村隼を報道する際、このような画像をよく使っていたので、
それが何を意味しているのか疑問に思っていた私。
作品を観たら、物語後半に、実際このようなシーンが有った。
薄暗い洞窟で、キョンシー國村隼withカメラ…。確かに印象に残るシーン。
それと、還暦過ぎた國村爺、柔肌顕わな“純白の越中ふんどし姿”も要注目です。





うぅぅーん、世間での高評価が、理解できず…。
私は、ハードルを上げ過ぎてしまったようだ。
最初からオカルト映画だと分かっていたら、きっとここまで失望しなかった。
元々、オカルト、ホラー、そしてSFさえも、私にとっては、どうでもいいジャンル。
怖いからではなく、非現実的な話には、まったく惹かれないから。
例のゲロのシーンとか、目が赤くなるシーンとか、思わず吹き出してしまいそうなシーンは有ったけれど、
真剣にスクリーンに食い付いている周囲の観客に申し訳ないので、笑いをぐっと嚙み殺した。

これ程度の内容で、2時間半は長いっ…!
この前に観た尺4時間の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の方が、むしろ短く感じた。あちらは必要な4時間。
2時間に感じる4時間の映画もあれば、4時間に感じる2時間半の映画もアリ。

まぁ、観衆をただただ脅かせば良いオカルト映画ではなく、
「勝手な思い込みや先入観で、仮想敵を作ってはいけない」というメッセージは発信しているように感じる。
世界がどんどん内向きになり、異民族や異教徒といった、自分とは異質の存在を排除し始めた今だからこそ、
ナ・ホンジン監督は、その危険性を、この作品を通し、伝えたかったのかなぁ~と想像。
特に、日韓関係はピリピリで、互いを敵視しがちなので、
わざわざ日本人俳優を起用し、このような作品を撮ったことは、意味が有る。
…でも、オカルト映画という形にはしなくて良かったと思うワ。 ホント、興味ないし、オカルト…。
まったく興味の対象外でありながら、辛うじて観られたのは、
クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、そして國村隼という3人の俳優の名演技のお陰でございます。

どら焼き3種(+テレビ雑記)

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チャンネル銀河で放送中の主演ドラマ『秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛~秀麗江山之長歌行』も
終了間近の大陸明星・袁弘(ユエン・ホン)が、自身の微博にて、
『ロンドンハーツ』内“動けるおデブ女王決定戦”で、蜜蜂カラーのお召し物を着て、
キレッキレのダンスを披露する渡辺直美の動画に反応しておられた。
(奥方から「いつか私がこんな風に太っても、それでも愛せるか」と聞かれ、
「ダンステクニックが基準値に達したら、考えられるかも…」と返した模様。
確かに渡辺直美のダンステクニックは、男前のハートをも掴むレベル。



さて、『秀麗伝』だけではなく(←飛ばし飛ばしでしか観ていない)、
NHK Eテレ『テレビで中国語』、2016年度のレッスンも、明日3月28日(火曜)の放送で終了。
毎年、最後の放送は卒業スペシャルで、その年の生徒が日本を飛び出し、
現地でネイティヴ相手に一年学んだ成果を披露。
行き先は基本的にずっと大陸であったが、日中関係が最も劣悪な時は、当たり障りの無い台湾であった。
2016年度の生徒・川島海荷はどこへ卒業旅行に行くのかと密かに楽しみにしていたら…

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あらら、なんと、台湾よりさらに“安近短”な横浜中華街でお茶を濁すという。
昨秋から、日テレ『ZIP!』に毎朝レギュラー出演するようになったから、
海外まで行く時間的余裕がないのであろう。
卒業スペシャルは、ちょっとした旅番組のようで、結構好きだったので、少々残念だが、仕方が無い。

そして、4月から始まる2017年度の生徒は…

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森迫永依(もりさこ・えい)。
…って、誰?? この番組の生徒で、まったく知らない芸能人が登場するのは、恐らく初めて。

と思ったら…

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実写版『ちびまる子ちゃん』の子!この子、森迫永依という名前だったのか。
すっかり成長して、ぜんぜん誰だか分からなかった。
と言っても、まだまだ若く、1997年生まれで、現在19歳。
父親が日本人、母親が中国人のハーフらしい。へぇー、まる子ちゃん、実はインターナショナル。
混血でも、日本育ちだと、片親の母語はちんぷんかんぷんで、日本語しか喋れないという人も多い。
彼女の場合、「中国語を思うように使えない」と言っているという事は、ボチボチなら出来るのでは。

他の出演者を見ると、講師は引き続き三宅登之先生。
ここのことろずっと出ていた段文凝の名は無い。
代わりに登場するのが、イーラン。

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彼女の事も知らなかったけれど、北京出身で、近年日本を拠点に活動する中越ハーフのモデルらしい。
随分綺麗な子を投入しましたね。『テレビで中国語』史上一のルックスかも。

続投か、はたまた選手交代かを、私が一番気にしていた王陽サンが引き続き出演することも確定。ホッ…!
王陽サン、感じいいし、彼が担当する“イマドキ中国語”のコーナーは、
そこそこの中国語を解するの視聴者でも楽しめる内容で、為になり、好きなのよ。
2017年度も王陽サンを出して!と、NHKにリクエストしたかったのだけれど、その方法が分からず、放置。
私がリクエストせずとも、結局続投決定と知り、安堵。
あと、ディーン・フジオカの中国語歌詞の歌<午夜天使的翅膀>が番組テーマ曲として使われるのが、
ちょっとした話題とのこと。




他、要録画の番組は…

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3月29日(水曜)、NHK BSプレミアム『中国王朝 よみがえる伝説~悪女たちの真実』
悪女と非難されてきた女性たちの実像に迫るシリーズの最終回。
トリを飾るのは、趙姫(紀元前280-紀元前229)。
「趙姫って誰よ?」という、そこのアナタ様、趙姫は、あの秦の始皇帝のママでございます。

私が、“趙姫”と聞き、真っ先に思い浮かべるのは、(↓)こちら。

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陳凱歌(チェン・カイコー)監督による映画『始皇帝暗殺』(1998年)では、鞏俐(コン・リー)が演じております。

元々は妓女で、富商・呂不韋に身請けされるも、
呂不韋から、今度は、人質になっていた秦の公子、莊襄王・子楚へ譲られ、後の始皇帝・政を出産。
(子楚に譲られた時、すでに呂不韋の子を身籠っていた→つまり、政の実の父親は呂不韋という説アリ。)
政の出世と共に、彼女の地位も高まるが、その間も呂不韋と不倫を続けるわ、
“なんちゃって宦官”嫪毐とも密通するわと、お盛んで、嫪毐との間には、2人も子を出産。
しかも、そんな間男・嫪毐が起こした反乱にまで加担。
このような事情から、貞操観念が低い上、野心が強いという悪女の印象のある趙姫。

この度の『中国王朝』では、最近の研究で明らかになった、そんな趙姫の素顔に迫る。
彼女の男性遍歴は、秦では合法で、非難されるような事ではない、
反乱も実は始皇帝が仕組んだ謀略だった可能性が否定できない、…という事らしい。

趙姫は、このシリーズで前に取り上げた二人、西太后と楊貴妃に比べ、
日本での知名度が低いのではないかと思っていた私だけれど、それは中高年層の話で、
むしろ若い層だと、人気コミック<キングダム>の影響で、秦の時代や趙姫を知る日本人もそこそこ居るようだ。
そんな訳で、趙姫をこのシリーズのトリにもってきたのは、正解なのかも。
あまりにも有名な西太后や楊貴妃と違い、取り上げる番組が少ないので、
<キングダム>を知らない私でも楽しみ。




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続いて、NHK 『ドキュメント72時間』
香港の重慶大厦(チョンキンマンション)で撮影された3月17日の回は、
放送前から予感していた通りの傑作で、たいそう気に入った。
同日、BS TBSで放送した『地球絶景紀行』の香港・澳門特集より、
よほど斬新な切り口のドキュメンタリーであると感じた。
なのに、たったの30分の放送ではもったいない!と思っていたら、
3月29日(水曜)深夜、正確には3月30日(木曜)の午前0時15分から、
あの香港編の44分スペシャルバージョンが放送されるという。
この番組、4月に5年目に突入するそうで、その節目を記念した“春の72時間祭り”という特別放送。
香港編のロングバージョンの他、昨年視聴者に人気の高かった2本、
“横浜 オールナイトでとんかつを”と“北のどんぶり飯物語”も同時に放送。




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月を跨ぎ、4月1日(土曜)は、NHK『海外出張オトモシマス!』
よく海外出張する人に御供して、普通の旅番組とはひと味違った切り口で、
現地の文化を紹介する紀行バラエティ。
これまで、フィンランドに北欧雑貨の買い付け、フランスにワインの買い付けに行く人に御供。
今回は、番組初のアジアで、“タイの田舎で珍品!?レコード探し”と題し、タイランドを取材。
DJユニット・Soi48が、60年代、70年代にヒットしたタイのヴィンテージ・レコードを求め、
東北部の農村へ行くのにオトモ。
前2回は、想像し易い出張だったが、タイ音楽を探しにタイの田舎というのは、想像しにくい出張。
ファンキーな祭りや、屋台グルメも紹介されるそう。どれ程度ファンキーなのでしょう、そのお祭り。




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翌4月2日(日曜)は、BS日テレの『高嶋政宏の旅番長』
旅が大好きな俳優・高嶋政宏が、行きたい場所へ、そして、彼自身がしてみたいテーマで旅をする新番組。
記念すべき初回は、カンボジアのアンコールワット。
首都プノンペンから、アンコール遺跡群のあるシュムリアップまでの約500キロを、
トゥクトゥクに乗って、寄り道をしながら旅するんですって。
どうやら、元々は旅チャンネルの番組で、本当の意味での“新番組”ではないようだ。
私は、どうせ旅チャンネルの放送を観ていないので、OK。
高嶋政宏に関しては、以前会ったことがあるという旧友が、
“マニアックに自分の好きな物がある面白い人”と評していた。
独自の視点で旅を紹介してくれそうで、アイドルが紹介する生半可な旅番組より、ずっと興味あり。




お菓子は、どら焼きばかりを3種。
私にとってどら焼きは、実のところ、わざわざ食べたいおやつではない。
いつも“有れば食べる”という程度。
特に、ドラえもんが食べているような伝統的などら焼きには、興味が無く、
敢えて食べるなら、ちょっとアレンジされた物の方が好み。
今回のどら焼きも、3ツの内2ツは、いわゆる“どら焼き”とは異なる。

★ 巖邑堂:どらやき

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大きさは、直径約7.5センチ。
つぶ餡を手焼きの生地ではさんだどら焼き。




創業明治5年(1872年)、浜松の老舗・巖邑堂(公式サイト)“どらやき”
“巌窟王(がんくつおう)”の“巖”に、“巴”に似て非なる“邑”…?!
難しい漢字を使った店名からして由緒ありそうだけれど、なにぶん読めない…!
正解は、“がんゆうどう”とのこと。
とことん手作りにこだわり、支店も出さずに経営を続けている名店らしい。
ただ、このどら焼きは、都内のデパートや通販でも買える商品なので、
全国のどら焼きファンから高く評価されているのだとか。

どら焼きのスタンダードが、うさぎやのどら焼きだとしたら、
この巖邑堂のどら焼きは、それより若干小ぶりで、その分厚みがある。
見たまんまにふっくら食感の生地には、ほんのり黒糖の甘み。
中には餡子がたっぷり。
所々にちゃんと小豆の粒が感じられる餡は、
黒糖入りの生地と一緒に食べた時、クドくならないよう、バランスを考えた甘さになっている。

どら焼きの命とも言える餡がとても美味。
ドーンと“巌”と書かれた紙の包みも、シンプルなのにインパクトがあって良い。

★ 雪華堂:七福どら焼き

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大きさは、直径約8.5センチ。
七福神に見立てた7種の甘納豆を生地ではさんだ贅沢どら焼き。




こちらは、お江戸の老舗。
創業明治12年(1879年)、甘納豆で有名な赤坂の和菓子屋さん、雪華堂(公式サイト)“七福どら焼き”
これは、雪華堂が売る唯一のどら焼きではない。
雪華堂では、甘納豆を使ったどら焼きを数種販売しており、これはその内の一つ。

袋を開封して、ビックリ。
最も一般的などら焼きは、小豆の餡がはさまれているが、
これは、色んな物が生地からはみ出るほどゴロゴロはさまっており、ポッテリしている。
“七福どら焼き”の名の通り、七福神に見立てた7種類の甘納豆を入れているのだ。
それら7種とは、大納言、うぐいす豆、とら豆、お多福豆、白花豆、黒豆、栗。
さすが甘納豆の名店だけあり、どのお豆もそれぞれにふっくら炊けているし、
食べる場所によって、違った味が楽しめる。

まるで宝袋のようなどら焼き。パッケージも、可愛い。
有りそうでいて、その実他では見たことがない斬新などら焼きなので、近年開発された商品なのかと思いきや、
母曰く、「私が高校生の時、すでに有った」。
母が高校生の時って、何十年前よ?!それって、確かな情報なのか…?
まぁ古いか新しいかは定かではないが、
これはどら焼きに特別思い入れの無い私でも、また食べたいと思った。
…いや、どら焼きに特別な思い入れが無いからこそ、
スタンダードなどら焼きとは違うこの“七福どら焼き”が気に入ったのかも。

★ 森八:宝達

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大きさは、幅約10センチ。
つぶ餡を生地で半円形に包み、金箔をあしらったどら焼き。




最後は加賀の老舗、森八(公式サイト)“宝達”
森八は、創業寛永2年(1625年)、4百年近くお菓子を作り続ける老舗中の老舗。
このお菓子“宝達”は、“ほうたつ”と読む。加賀藩の御用金山・宝達山に由来する名。

前出の2ツのどら焼きは、2枚の生地で餡をはさんだ定番のどら焼きだけれど、
これは、丸く焼いた一枚の生地に餡をのせ、半分に折りたたんだ形。

袋に“もち皮 どら焼き”と添え書きしてあるように、その生地自体、通常のどら焼き生地と異なり、
薄くても、モッチリ、シットリしているのが特徴。
原材料を見ると、小麦粉は勿論のこと、もち米や山芋も入っている。
あと、“白あん”という表示もあるのだが、どこに…?白餡も皮に練りこまれているのだろうか。
中に挟まれている餡は、ほどほどに甘いつぶ餡。

近年、こういうモッチリ皮のどら焼きは、色んなお店から出ているので、もはや珍しくはないけれど、
さすが加賀の老舗の物だと、ちょっと上品な感じがする。
あと、半円形だと、大口開けずに食べ易い。

映画『楊貴妃 Lady Of The Dynasty』

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【2015年/中国/122min.】
第9代皇帝・玄宗が天下を治める唐朝。
はるばる東ローマ帝国から使臣としてやって来た音楽家のタキトゥスは、
都・長安の賑わいや贅を尽くした宮廷に、唐の繁栄をみる。
ところが、謁見した玄宗の顔には悲哀の色。多くの犠牲者を出した戦いを終えたばかりだったのだ。

早速執り行われた犠牲者を弔う儀式。
玄宗の寵姫・武惠妃は、その席で、舞いを披露する楊玉環という美しい娘に目を留め、
彼女を、玄宗の第18皇子である我が子、壽王・李瑁の妃に決める。
間も無くして宮中に上がった玉環は、李瑁にも気に入られ、幸福な日々を享受するが、
若い二人が気付かぬ裏で、後継者を巡る争いが激化。
武惠妃は、我が子を思うあまり、太子・李瑛、鄂王・李瑤、光王・李琚を罠に掛け、
結果、3人は、父帝・玄宗から、死を賜ることに。
しかし、邪魔者が居なくなったのも束の間、武惠妃は重い病に倒れた上、
彼女が企てた陰謀まで、玄宗の知るところとなり、重苦しい空気の中この世を去る。
その頃から、李瑁と玉環の関係にも徐々に歪みが生じはじめ…。



ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の“未体験ゾーンの映画たち2017”で鑑賞。

この映画、2009年にプロジェクトが立ち上がってから、著名な大物監督の名が挙がっては消え、
出資者もどんどん入れ替わるという二転三転。
2011年、タイトルは『盛唐危機』、監督は『猟奇的な彼女』(2001年)で知られる韓国の郭在容(クァク・ジェヨン)、
中国、韓国、日本による合作になると発表。
2012年にはクランクインし、遣唐使役で小栗旬、楊貴妃の幼馴染み役で韓国の溫朱萬(オン・ジュワン)、
玄宗皇帝役でかの“ラストエンペラー”尊龍(ジョン・ローン)も出演と公表されるが、
たったの一ヶ月程度で撮影が中止され、郭在容監督が離脱。
唐朝に対する郭在容監督の理解不足だの、監督と出演者の不和だの、様々な噂が流れたけれど、真相不明。

頓挫しまくりのこの作品が、監督やキャストの入れ替えを経て、ようやく撮影再スタートを切ったのは2013年。
今回の上映にあたり、日本の宣伝では、“張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品”ということになっているが、
実のところ、十慶(シーチン)監督作品である。


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十慶は、本名・程十慶(チェン・シーチン)。
1959年生まれ、中國人民大學中文系卒業。
大富豪・李嘉誠(り・かせい)の息子・李澤楷(リチャード・リー)が創業した香港の通信企業最大手、
PCCW 電訊盈科の中国地区総裁であり、作家、脚本家。
広い人脈をもち、中国第5世代の監督たちとも交流があり、
張藝謀監督のお世辞にもヒットしたとは言えない幻の迷作(?)
『ハイジャック/台湾海峡緊急指令』(1988年)では、脚本を担当。
比較的最近だと、徐靜蕾(シュー・ジンレイ)監督作品『あの場所で君を待ってる』(2015年)の
脚本チームに参加しているらしい。

この『楊貴妃』は、そんな異色のビジネスマン作家・十慶の初監督作品。
“導演(監督)”とはまた別に、“導演組”として、前出の張藝謀と、
同じく長年の友人である田壯壯(ティエン・チュアンチュアン)監督の名もクレジット。
50代で初監督では心許無いと、両巨匠が助太刀を買って出てくれたのだろうか。
持つべきものは、大物の友!実際には、誰がどこにどれ程度手を加えているのでしょうねぇ??




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本作品は、ズバリ、楊貴妃こと楊玉環(719-756)の伝記映画

唐朝第9代皇帝、玄宗・李隆基(685-762)の寵姫で、
元々は名君と誉高かった皇帝が、その美しさに溺れたがため、唐を衰退させた
“傾国の美女”として語り継がれている、あの楊貴妃の物語。

玄宗の当時の寵姫・武惠妃にスカウトされ、武惠妃が産んだ玄宗の第18子、壽王・李瑁の妃となるが
武惠妃が死ぬと、玄宗に見初められ取り敢えず出家しほとぼりが冷めてから後宮に戻り
元々は義父であった玄宗の貴妃に冊封玄宗メロメロで、楊貴妃の又従兄・楊國忠まで異例の大出世
楊國忠と対立する安禄山が挙兵し“安史の乱”勃発唐軍劣勢につき、楊國忠の進言で、玄宗らは出奔
ところが、今度は兵たちの不満が楊國忠にその不満は楊國忠のみならず、楊貴妃にも向き
玄宗も守り切れず、楊貴妃、無念のあの世行き。享年37歳。
…という史実として言い伝えられている流れは、この映画も基本的に踏襲。

映画は、東ローマ帝国からやって来た司教で音楽家のタキトゥスの目線で語られ始めるが、
次第に“タキトゥス目線”は、どうでも良くなってくる(つまり、軸があまりシッカリしていない)。
また、タキトゥスに代表されるように、当時の唐には多くの異国人がおり、
世界有数の国際都市であったことに異論はないけれど、
タキトゥスは英語、玄宗ら唐の人々は中国語で勝手に喋り、会話が普通に成立している様子は、
慣れるまで違和感がある。


気になる楊貴妃の描き方は、
親子ほど年の差のあるジジィを、美貌と色気でタラシ込んで、骨抜きにした小悪魔という感じではなく、
純粋に愛に生き、また、玄宗からの愛を利用することも無く、謙虚な面をもつ女性。

最初に嫁いだ壽王との愛もホンモノで、壽王と仲睦まじく過ごし、彼の子を身籠るが、
そのおなかの子を、思惑有って故意に駄目にしたのは壽王で、玉環(=楊貴妃)は深く傷付く。
次にお舅サンである玄宗に輿入れしても、彼が最高権力者だからといって、簡単になびいたりしない。
(玄宗も、権力を楯に無理強いなどせず、彼女から愛されるのを待つジェントルマン。)
ようやく玄宗に心を開き、相思相愛になっても、身内の出世をおねだりすることなどしない。
また、もし自分が男児を生み、玄宗がその子を太子に封じたら、他の皇子や嬪妃たちに申し訳ないと、
母になる夢を泣く泣く諦め、玄宗にも内緒で、密かに避妊薬()を服用し続ける健気さ。
大陸時代劇では、後宮のライバルを流産や不妊に追い込む毒薬として、麝香がよく出てくるけれど、
この映画で、玉環が避妊薬として服用し続けるのは、柿蒂。中医で用いる乾燥させた柿のヘタで、
ざっと調べたところ、しゃっくりを止める効果があると言われているらしい。本当に避妊薬になるのか?!)


本作品は楊貴妃の伝記映画なので、ラストは彼女の死をもって幕を下ろす。
一般的には、高力士の進言を受け入れざるを得なかった玄宗から賜った絹を使い、
仏堂で首を吊って死んだと言い伝えられているが、本作品の死亡方法はオリジナルのお色気ヴァージョン。
愛する玄宗と国を思う気持ちから、自ら身を引く覚悟を決めた楊貴妃は服毒し、
それを内緒にしたまま玄宗と人生ラストの契りを籠み最中に毒が回り、玄宗の腹の上で、息絶え絶え
さすがの玄宗も、楊貴妃が服毒して行為に及んでいたことに気付き
涙ながらに、絹で楊貴妃の首を絞め、彼女を楽にしてやる、…という“悲恋の床上死”!

楊貴妃の妖艶な悶え顔のアップは勿論のこと、玉のような汗を吹いた美しい背中を映し出すなど、
昭和なロマンポルノちっくな演出に、喜ぶ観衆も居れば、戸惑う観衆も居ることでしょう。
(私→笑いを噛み殺した。)

なにぶん検閲の厳しい中国映画なので、限界は有るものの、
この手のお色気演出は、本作品のひとつの特徴と言えよう。
編集でばっさりカットされているけれど、この映画で、楊貴妃が玄宗と初めて肉体関係をもつシーンは、
現地で話題となり、“馬震 Mǎzhèn”という流行語まで生まれている。
カットされる前の編集では、な、な、なんと、二人は器用にも全力疾走する馬の背中で行為に至るのだ…!
なんてアクロバティック!さすがは中国、雑技団か…!?
ちなみに、“馬震”という流行語は、車上での性行為を表す“車震 Chēzhèn”をもじっていると推測。
現地では、「陛下、どうやって玉環のズボンを脱がせたんだ?」、「馬が可哀相…」等々、様々な御意見が。
ナンなんでしょうね、この映画。




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主人公、楊貴妃こと楊玉環に扮するは、范冰冰(ファン・ビンビン)

これまでに何度も映像化されている楊貴妃。演じた女優は数知れず。
日本でも“世界三大美女”の一人として広く知られているため、日本人女優にも演じられており、古くは…

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溝口健二監督作品『楊貴妃』(1955年)で京マチ子が演じている。
(ポスターに書かれた宣伝文句が“皇帝と町の娘の悲恋物語!”。
楊貴妃、決して高貴なお家柄ではないと言え、“町娘”呼ばわりは如何なものか。)


最近だと、GUのCMで、世界三大美女の他の二人、クレオパトラとヘレネと共に…

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波留が楊貴妃に扮し共演。

さらに…

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NHK『最後のレストラン』では、楊貴妃役に、なんと、山村紅葉という意表を突いたキャスティング…!
(美の基準は時代で変わるし、“楊貴妃、実はデブ説”も根強いので、山村紅葉は案外リアルに適役かも。)


本場中国だと、もっと色んな女優さんに演じられているわけで、范冰冰も、楊貴妃役はこの映画で2度目。
約十年前にも、テレビドラマ『楊貴妃~大唐芙蓉園』で楊貴妃を演じているのだ。

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まだ20代半ばと若かった頃に演じた楊貴妃より、30代半ばの現在の方が、むしろ格段垢抜けて、お美しい。


范冰冰で、記憶に新しい作品というと、
最近日本でも放送されたドラマ『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』がある。

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おとなしい夫を尻に敷き、自ら政治の表舞台に立ち、皇帝にまで上り詰めた武則天(624-705)と、
名君だった超年上夫を美貌で骨抜きにした若い楊貴妃では、女性としてのタイプは異なれど、
同じ唐朝を生きた伝説の人なので、スタイリングなどの雰囲気には、通じるものがありますね~。

ドラマ『武則天』は、「胸の谷間が破廉恥!」という廣電總局からのお咎めがあり、
放送は、谷間を隠した修正版となってしまったが(→参照
こちらの映画『楊貴妃』では、“寄せて上げて”の豊満な胸が見放題。
『武則天』で「隠すな、見せろーーーっ!」と悔しい思いをした人は、是非『楊貴妃』で、その埋め合わせを。


ついでに、唐朝メイク豆知識。

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ドラマ『武則天』では皇后に冊封される時、映画『楊貴妃』では大婚の時、
主演の范冰冰は、両頬に赤い点を描くお化粧を施している。
あれは、元々、後宮の女性たちが、口に出して言いにくい
「私、今、生理中(→だから夜伽NG)」という事を視覚的に伝えるサインとして使われていた物が、
時を経て、流行のメイクになったとの説あり。
韓国だと、伝統的な婚礼衣装でお式を挙げる新婦さんは、今でも頬に赤い丸を付けているが、
あれも、大陸から伝わった風習の名残りではないかと想像。




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他の出演者もザッと見ておくと、楊玉環が最初に嫁ぐ壽王・李瑁に吳尊(ウー・ズン)
壽王の父で、時の皇帝である玄宗・李隆基に黎明(レオン・ライ)
玄宗の寵姫で、壽王の生母である武惠妃に陳冲(ジョアン・チェン)
高力士に吳剛(ウー・ガン)等々…。

当初の予定通り、もし尊龍(ジョン・ローン)が玄宗役で出ていたら…

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『ラストエンペラー』(1987年)以来、陳冲とロイヤルカップル複合だったのに。それも見てみたかった。

玄宗は、范冰冰のドラマ版『楊貴妃』で演じた趙文瑄(ウィンストン・チャオ)がイイ線いっていて、
印象に残っていたので、黎明には、あまりピンと来なかった。
でも、黎明ももう50だし、今後はこういう役が増えてくるかもね。

吳尊はかなり痩せた…?
なにせ“ブルネイの貴公子”だから、妻帯者になっても優男っぷりは健在で、
良くも悪くも父帝・玄宗より影の薄い皇子・壽王に合っている。

高力士は、登場シーンの量の割りに、記憶に焼き付いた。
演じている吳剛の、怪しい存在感ゆえであろう。


他にも、将軍の役で文章(ウェン・ジャン)や、
出家した楊玉環が入る道觀の道長役で秦怡(チン・イー)も出ていた。
秦怡は、1922年生まれ、御年95歳の大・大・大ベテラン!
まだまだバリバリの現役女優で、同じく唐朝を背景にした陳凱歌(チェン・カイコー)の新作で、
日中合作映画の『空海 KU-KAI~妖貓傳』にも出ている。(→参照



大ベテランの活躍と言えば、裏方さんでも。
本作品は、日本が出資から降り、小栗旬の出演も白紙となってしまったけれど
(そもそも出資予定だったのが、小栗旬所属のトライストーン・エンタテイメントだったみたい)、
そんな事とは関係なく、衣装は日本のワダ・エミが担当。
中華圏でも引っ張り凧のワダ・エミは、かつて『HERO』(2003年)と『LOVERS』(2002年)で張藝謀監督と、
『呉清源~極みの棋譜』(2006年)と『ウォーリアー&ウルフ』(2009年)では田壯壯監とコラボ。
巨匠たちとのこのような実績もあり、あちらで信頼され、尊敬もされているのであろう。
1937年生まれ、すでに御年80歳なので、仕事量は減らしているだろうけれど、まだまだ現役。
この『楊貴妃』の後にも、今度は大陸ドラマ『將軍在上』の衣装を手掛けている(↓)。

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余談になるけれど、ワダ・エミに衣装を任せられるという事からも、大陸のテレビドラマはもはや映画レベルで、
そのスケールが、経済的にも質的にも、凄い事になっているのだと、改めて思い知らされる。
『將軍在上』は、『太子妃狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』で頭角を現した新人監督で、
著名な作家・海岩(ハイイェン)の息子でもある侶皓吉吉(ルー・ハオジジ)の新作ドラマ。
30代の侶皓吉吉監督は、祖母世代のワダ・エミを“一生的偶像”、“唯一的女神”と称賛。
ワダ・エミは、当初ドラマの衣装を手掛ける気など無かったようだが、“三顧の礼”に折れた模様。
最悪と言われる日中関係をよそに、
個人対個人の信頼から、このような関係を築けるクリエイターたちに、私は共感いたします。

そんなワダ・エミに対し、『楊貴妃』の十慶監督が出したリクエストは、
「唐の時代に則して欲しい」という簡単なもの。あとは、お任せだったのだと。
現地で一番語られているのは、婚礼衣装。

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長ーーいトレインが目を引くこのお召し物は、実際、下半身部分が30メートルもあり、
貴重な雲錦をたっぷり40斤(=20キロ)も使用し、作られたもの。
かなりのボリュームなので、真冬だったにもかかわらず、撮影終了時、范冰冰は汗だくだったという。

ちなみに雲錦は、中国の国家級無形文化遺産にも登録されている伝統の絹織物の最高峰で、
四川の蜀錦、蘇州の宋錦と共に“中国三大名錦”に挙げられる南京の特産。
一説には、この布、張藝謀監督が『HERO』で張曼玉(マギー・チャン)の衣装に使おうとしたが、
ワダ・エミが、お宝の放出を拒み、使えなかったのだとか。
しかし、ワダ・エミも高齢になり、大作に関わる機会が少なくなった事と、主演の范冰冰を気に入った事で、
今回、ようやく大切にしていた雲錦を使い、婚礼衣装に仕立てたのだと。
(と言う事は、ワダ・エミは、個人所有の雲錦を、本作品に提供したという意味か。)





上映30分前に映画館に到着したら、すでに残席が4席ぽっきり。
選択肢がほとんど無く、スクリーン間近の観づらい席になってしまったけれど、
あと数分遅かったら、チケットを入手できなかったと考えると、席を確保できただけ、マシ。
企画上映で、上映回数が限られている事もあるが、それにしても、この作品が、ここまで人気とは予想外。
范冰冰は最近ここ日本での知名度がガンガン上がっているし、扱っている題材も有名な楊貴妃、
日本の宣伝で名前を使っている“張藝謀監督効果”も大きいであろう。

しかし、様々な情報に煽られ、御覧になった皆さまは、これに本当に満足しているのだろうか。
この『楊貴妃』、一流のスタッフと豪華キャストで制作されながらも、そこはかとなく漂うB級感…。
私、もう少し芸術性の高い作品を勝手に想像しておりました。
この演出の安っぽさ、テレビの2時間ドラマなら許せても、映画となるとキツイ。
張藝謀、田壯壯、両巨匠にとって、本作品は、自身のフィルモグラフィの中で、どういう位置付けなのだか。
今、試しに両監督のwikiを覗いたら、中文版でも英文版でも、この作品は“監督作品”に入っていないどころか、
他の関連事項でも完全にスルーされている。
勿論それはあくまでもwikiにおける情報であり、御本人たちがどう捉えているのかは不明だけれど、
この作風だと、特に田壯壯監督は、自分の中で『楊貴妃』はもう無かった事にしているのではないかと想像。

私が、この作品で、唯一“発展させれば使える”と感じた部分は、エロ要素くらい。
いっそ、検閲の厳しい大陸での上映は諦めて、“豪華なエロ映画”にしたら、カルト的に人気が出そう。
しかも、物好きな若者のみならず、男性高齢者も狙えるはず。
私、『3D SEX &禅』(2011年)や『お嬢さん』(2016年)を上映する映画館で、多くの高齢男性を目にし、
“堂々と観に行けるエロ映画”の需要はかなり有ると感じた。
“エロ”+“時代劇”なんて、高齢男性向けに最強の組み合わせ。
もっとも、最初から“エロ時代劇”を謳っていたら、范冰冰が出演してくれるわけが無いけれどね。

ガッカリな作品ではあるが、唐朝自体は、日本に大きな影響を与えた興味深い王朝だし、
この先、時代背景が重なる『空海 KU-KAI~妖貓傳』の公開も控えており(→参照)、
楊貴妃、玄宗、高力士などなど、両作品に登場するキャラも居るので、
ちょっとした予習のつもりで『楊貴妃』も観ておいて良いかも。
基本的に楊貴妃の伝記には則しているので、楊貴妃とあの時代を知るためと割り切れば、悪くない。
東京での上映は、明日3月31日(金曜)の一回を残すのみ。
それを逃した場合、ちょっと待てば、2017年5月、DVDが出ます。

草間彌生展~わが永遠の魂

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2017年2月下旬、国立新美術館で始まった展覧会<草間彌生展~わが永遠の魂>
寒い中、六本木まで足を運ぶのが面倒で、先送りになっていたけれど、
3月末、ようやく重い腰を上げ、鑑賞して参りました。

★ 草間彌生

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今さらですが、草間彌生(くさま・やよい)とは。

1929年(昭和4年)、長野県松本市生まれ、
御年88歳の現在も精力的に創作を続ける現代日本を代表する前衛芸術家。

種苗業を営む裕福な家に生まれ、幼い頃より絵を描き始める。
少女時代に統合失調症を発症し、度々襲われる幻覚や幻聴を絵に表したり、
それらから身を守る儀式として、水玉をモチーフに多用。

京都市立美術工芸学校(現・京都市立銅駝美術工芸高等学校)卒業後は、松本の実家へ戻り、絵画を制作。

1957年、渡米。
ニューヨークを拠点に、作品を制作、発表し続けるも、体調を崩し、1973年に帰国。
それからは東京を拠点に、絵画、立体作品、小説などを制作し続け、
現在に至っているのは、皆さま御存知の通り。



元々海外でも作品が紹介されていた草間彌生だが、
2012年、当時マーク・ジェイコブスがデザイナーを務めていたルイ・ヴィトンが、
草間彌生とのコラボ商品を発表したことで、世界中でよりメジャーになり、商業的価値も増したと言えよう。

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ほら、ジョージ・クルーニーだって、彌生ちゃん仕様。

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動物の擬態(?)、保護色(??)の如く、背景の水玉と同化するクルーニー様。



もっと近場のアジアでも、もちろん知られている。

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私が好きな中国の女性フォトグラファー、陳漫(チェン・マン)も、2013年に、草間彌生を撮っている。
微妙に色の違うウィグをいくつか持っているのかしら。この赤もキュート。
(陳漫に関しては、こちらを参照。)


台湾のイラストレーター、保羅先生(Mr.ポール)は、(↓)このようなイラストを。

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“拔罐の彌生”(笑)!
草間彌生お馴染みのモチーフ水玉を、カッピング療法(拔罐)に重ねる東洋的な発想に拍手。

★ 草間彌生展~わが永遠の魂:概要

そんな草間彌生をフィーチャーし、国立新美術館でこの度開催の<草間彌生展~わが永遠の魂>は、
日本国内で過去最大級の個展。

大規模個展ならではで、ここへ行けば“アーティスト草間彌生”をザックリ丸ごと知ることができる
草間彌生の集大成的展覧会。
古い物では、まだ少女時代に描いたスケッチに始まり、
故郷の松本時代、ニューヨーク時代、東京時代と、大きく3ツの時代に分け、草間彌生の足跡を追える仕組み。

写真などで見慣れた“いかにも草間彌生”な作品を、実際に見られる喜びもあるけれど、
今回の展覧会では、日本初公開作品も大きな目玉。
それは、草間彌生が2009年から取り組んでいる<わが永遠の魂>シリーズ。
約500点に上る膨大なコレクションの中から、今回は選りすぐりの132点を公開。

★ いざ、国立新美術館へ

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混んでいるとは小耳に挟んでいたものの、はっきりした様子は分からないので、取り敢えず早めに現地へ。
私が到着したのは、9時25分頃。
まだ、国立新美術館のメインゲートは閉まっており、敷地内へは入れない。
係員の指示に従い、同美術館で開催中の2ツの展覧会、草間彌生展、ミュシャ展に関係なく、
“チケットをすでに持ってる人”と“当日券を買わなければならない人”という2グループに分かれ、整列。
私は、すでにチケットを持っていたので、前者の列へ。

9時30分、ゲートがオープン。
“チケットをすでに持ってる人”グループで、建物前まで進み、ここで、草間彌生展とミュシャ展に分かれる。

私は勿論草間彌生展の方。
今度は、このグループだけで、係員に誘導され、会場となる企画展示室1Eの前へ。

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あとは、開館を待つだけ。
その間、係員や周囲の人に声掛けし、おトイレに行くこともできるし、
寒い日だったけれど、室内なので、待ち時間が大して苦にならなかった。
(しかも、開館時間がちょっとだけ繰り上げられた。私が、中へ入ったのは、確か9時52~53分頃。)

★ 見学スタート

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入ってすぐ、ひとつめの展示室で出迎えてくれるのは、
比較的新しい2014年の作品で、<声明は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時>

草間彌生が富士山を描くとこうなります!下方に広がっているのは、河口湖畔らしい。
カンヴァスを3枚合わせ、横幅が約6メートルにもなる大作。
オレンジ色の富士山に、エネルギーを感じる。

★ 大展示室

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続く大展示室は、草間彌生が2009年から取り組んでいる連作、
<わが永遠の魂>を一挙132点展示している部屋。
高さ5メートル、奥行き50メートルの大ホールを埋め尽くす色の洪水は圧巻。


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実は全部が全部同じ大きさではないらしいが、近年は120号(194cm×194cm)が主流。
まず、正方形のカンヴァスに均一に色を塗り、その上にアクリル絵の具で描いていくらしい。
なんかプリミティヴアートとか、アフリカ辺りのフォークアートのような印象も受けた。
計算無く内から湧き出てくる物が表現されていると思わせる点で、まさに“primitive(原始的)”。



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会場の中央を飾るのは、<真夜中に咲く花>、<明日咲く花>、<明日咲く花>という3点の立体作品。
巨大なお花たちにも、やはり水玉や目といったお馴染みのモチーフが取り入れられている。
ポップで可愛いけれど、よくよく見ると毒々しい、“グロ可愛い”立体作品。


そうそう、ここは、会場内で唯一撮影が許されている展示室。
老いも若きもパチパチ撮りまくり。
カラフルなこの空間は、気分を上げてくれ、私も結構撮りました。

★ 作品色々

次の第2展示室からは、撮影不可。
ここからは、松本時代→ニューヨーク時代→東京時代と、順を追って作品を鑑賞できる。


気になる作品は数あれど、最初にハッとさせられたのは、
今回の展示品の中で最も古い1939年の作品、草間彌生10歳の時のスケッチ。

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<無題>となっているけれど、母親の肖像らしい。
画用紙の隅に“5年 草間弥生”と書かれている。小学校の授業で描かされた物なのだろうか。
まず驚かされるのは、10歳にして、このデッサン力。やや右寄りにした構図にもセンスあり。
そして、この時すでに、顔にも背景にも水玉模様。
普通の10歳が、母親の似顔絵を描く時、顔中を水疱瘡のような水玉で埋め尽くす?!
しかも、この頃すでに描き始めていた水玉を、草間彌生は90歳近くなった今でも描き続けているのだ。
そもそも80年近く前の小学生の絵が、残されているのも驚き。戦争もあったのに。
「うちの彌生ちゃんは絵が上手い」と、親が大切に保管していたのだろうか。


若い頃の作品には、我々が想像しがちな“草間彌生”とは異なる沈んだ色調の物も多い。
その淀んだ色の中に、ふつふつと内に籠ったマグマのような感情を見て取れる。
その後、アメリカ時代になると、もう現在の草間彌生の片鱗が見え隠れ。
現在に近付けば近付くほど、我々がよく目にする“これぞ草間彌生!”な作品が増えてくる。


例えば、こちら、1995年の作品、<よみがえる魂>

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水玉の変化球ヴァージョンをモノトーンで表現。
実物は、印刷物で見るより、ずっと素敵な作品。


南瓜も、草間彌生で絶対に外せないモチーフですよね…?

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1999年のお馴染みの作品<かぼちゃ>


南瓜モチーフのもっと新しい作品で、気に入ったのは、(↓)こちら。

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2016年の連作<南瓜>
レリーフのような半立体作品で、南瓜も背景もタイルでびっちり詰め尽くされている。
メタリックに輝く色彩が、お馴染みの南瓜を新鮮に見せてくれる。



他、忘れ難いのが、(↓)こちらのインスタレーション<生命の輝きに満ちて>

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無数のLEDが吊り下げられた、四方が鏡で構成された暗い部屋。
刻々と色の変わるLEDと、鏡の相乗効果で、ただの四角い部屋が幻想的な世界に。
草間彌生が見る幻覚の中に、自分が迷い込んだ錯覚に陥る。



一通り鑑賞し終わると、また最初の大展示室に戻る。この順路はとても良いと思った。
10歳の少女時代から芸術家・草間彌生のお仕事を徐々に追い、
最後の最後でもう一度あの大作を鑑賞し直すことで、
それらが如何に長年の積み重ねで生まれてきた物で、まさに“集大成”であるかが分かり、
やけに腑に落ちるのだ。

★ ミュージアムショップ

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今度こそ大展示室をあとにし、ミュージアムショップへ。
決して広いとは言えない空間は、人、人、人で埋め尽くされていた。
ただ、30分、40分待ち当たり前と聞いていたレジでは、まだ午前中だと、特別待たされることは無く、スムーズ。



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人を掻き分け、ひとつずつ商品を見るのが面倒になり、ポストカード、トランプ、お菓子のみ購入。
買ったポストカードの内の一枚は、
<わが永遠の魂>シリーズから、特に気に入った黒を背景にした<人類の愛のすべて>
トランプは、背面が草間彌生の肖像写真で統一され、文字面は一枚一枚全て絵柄が異なる。

★ オブリタレーションルーム

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買い物を済ませ、美術館の公共スペースに出ても、まだ一つ<オブリタレーションルーム>が残っている。
これも体験型のインスタレーションで、立派な作品。
入り口で配られるシールを、室内で自由に貼るというもの。
水玉シールで真っ白な空間を“oblitaration(抹消)!”という試み。
小さな子供たちも楽しそうにシールをペタペタ貼っていた。

★ 屋外展示

最後は屋外へ。

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2007年の作品<南瓜>
六本木の片隅にどかんと座った虫食い南瓜の愛くるしいこと!
気分を楽しくしてくれる愛嬌のある姿に、パブリックアートの意味を感じる。
空が曇っていたのだけが残念。真っ青な空の下だったら、黄色い南瓜がもっと映えただろうに。


屋外の展示は、もう一つ。

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美術館敷地内の木々も、彌生ちゃん仕様におめかしした<木に登った水玉2017>という作品。
水玉の布を巻いただけで、木がなんでこんなに可愛くなるのでしょう。

私が行った日は底冷えする3月末であったが、もうちょっとすると、ここには桜がいっぱい咲くので、
とても華やいだ期間限定の素晴らしい“作品”になるはず。

★ オマケ

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美術鑑賞後、六本木でのランチのアテが外れたので、
久し振りに新宿タカノフルーツパーラーで、おやつ。
今の季節のお薦めは、どうやら苺みたいだけれど、私は敢えて“せとかパフェ”。
爽やかな柑橘系フルーツ、大好き。せとかの次は、清見オレンジになるようだ。






芸術家にも“努力型”と“天才型”があるなら、
草間彌生は間違いなく後者だと、改めて思い知らされた個展であった。
草間彌生の作品には、何か“直感的”な閃きや、計算されていない物がもつ不思議なパワーを感じる。
草間彌生自身が予測不能で、アヴァンギャルド過ぎる唯一無二の存在だしね。
あんな変な人(←褒めております)と、同時代に生きられるなんて、ちょっと嬉しい。


◆◇◆ 草間彌生展~わが永遠の魂 YAYOI KUSAMA:My Eternal Soul ◆◇◆
会場: 国立新美術館 企画展示室1E

会期: 2017年2月22日(水曜)~5月22日(月曜)

10:00~18:00 (金曜~20:00 / 火曜休館)

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』

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【2016年/イギリス・フランス・ベルギー/100min.】
イギリス・ニューカッスル。
介護していた妻アンに先立たれた59歳の大工ダニエル・ブレイクは、
自分まで心臓病に侵され、医者から働くことを止められてしまう。
止むを得ず、国からの援助を受けようとするが、コンピューターが使えず、申請すらままならない。
結局、理不尽に振り回された挙句、ダニエルに下されたのは、受給不適合の判断。
その頃、ダニエルは、役場で同じように援助を断られ、追い返されようとしている若い女性と出会う。
このケイティという女性は、2人の幼い子供を抱え、ロンドンからやって来たシングルマザー。
この街で新たな生活を始めようとするケイティ一家だが、粗末なフラットは、あっちもこっちもガタガタ。
大工のダニエルは、家を修繕してやり、その後も何かにつけて、ケイティをサポート。
親子ほど年の離れた二人は、次第に良き友人関係を築くようになる。
しかし、ケイティの金はあっさり底をつき、それを親切なダニエルには打ち明けられないでいる内に、
彼女は精神的にどんどん追い詰められてゆき…。



2016年、第69回カンヌ国際映画祭で、パルム・ドールに輝いた
イギリスのケン・ローチ監督、『ジミー、野を駆ける伝説』(2014年)以来の新作。
“ジミー”の次は“ダニエル”なのね。

ケン・ローチ監督が、カンヌの最高賞パルム・ドールを受賞するのは、
『麦の穂をゆらす風』(2006年)に続き、2度目。
ケン・ローチ監督作品は基本的に好きなので、受賞の有無に関わらず観続けているけれど、
パルム・ドールを獲ってしまったら、余計に気になってくる。



物語は、心臓病を患い、医者から仕事を止められた59歳の大工ダニエル・ブレイクが、
複雑な社会制度に阻まれ、国からの援助が受けられずにいた時、
幼い二人の子を抱え困窮する若いシングルマザーのケイティと出会い、
彼女を励まし、一家と交流を深めていくが、弱者に厳しい現実はなかなか変えられず、
次第に追い詰められていく様を描く社会派ヒューマン・ドラマ

ケン・ローチ監督と言えば、“労働者階級モノ”。
これまでずっと社会の底辺に生きる労働者たちをリアルに描き続けてきた監督は、
この新作では、困っている国民に寄り添わないズサンな社会保障制度に怒りの問題提起。

主人公のダニエルは、真面目に働き、納税の義務も果たしてきた59歳の大工さん。
働けるものなら働きたいが、心臓病を患い、それが不可能になってしまう。
そこで、国からの援助を得ようとするが、
お役所の審査で、就労可能と判断され、援助金の支給を断られてしまう。
その審査に不服申し立てをする一方で、取り敢えず求職者手当を得るため、
実際には働けないのに、形ばかりの就職活動をし、
自分が“求職者”であるという馬鹿げたアピールの必要性に迫られる。
困った事に、実直なダニエルは、雇用主に気に入られてしまい、採用の通知を受けるけれど、
それを曖昧な理由で断り、「じゃぁなんで職探しなんてしているんだ!」と雇用主を怒らせてしまう始末。

本来、困っている国民を救済するために存在する社会保障制度が、ただの飾り物になっており、機能せず…。
いや、緊縮財政で社会保障費が削られたため、実際には援助金など支給できないのに、
“飾り物”として制度を残しているのだろう。“支給しない”という前提ありきで、それを覆さないよう、
心臓の悪いダニエルも、“手足が動く健常者”と審査されてしまう。


作品に登場するもう一人の社会的弱者は、二人の子を抱えるシングルマザーのケイティ。
ロンドンでの生活が立ち行かなくなり、ニューカッスルに越してきたものの、
彼女もまた社会保障を受けられず、家計は火の車。
食うにも困る状態で、ケイティはどんどん精神的に追い詰められていく。
そんなケイティ一家とお役所で偶然出会ったダニエルは、
自分自身が救済を必要とする身でありながら、彼女に手を差し伸べ、励ましていく。

子供の貧困、特に母子家庭の貧困は、日本でも最近よく報道されているので、身近に感じる。
表向き“豊かな国”で、空腹に喘ぐなんて、切ない。
そういう人たちのために存在するフードバンクは、
以前アメリカを取材したドキュメンタリーで見たことがあるが、よく知らない。

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この映画の中では、ボランティアの女性が、ケイティの家族構成を考慮し、
様々な食材をビニール袋に詰めてくれている。
その女性にケイティは、小声で「生理用品が欲しい」と耳打ちするのだけれど、残念ながら入手に失敗。
寄付は食品がほとんどで、生理用品のような物は、なかなか入って来ないらしい。なるほど。
命を繋ぐために最低限必要なのは確かに食べ物だが、
生活していく上で無いと困る物って他にも結構有るものだ。
大地震の後、被災地の救援物資に関しても、同じような事が言われていたのを思い出した。




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主な出演は、59歳の大工ダニエル・ブレイクにデイヴ・ジョーンズ
シングルマザーのケイティ・モーガンにヘイリー・スクワイアーズ
ケイティの娘デイジー・モーガンにブリアナ・シャン、息子ディラン・モーガンにディラン・マキアナン

メジャーな俳優をあまり起用しないケン・ローチ監督であるが、今回も全員初めて見る顔。
よく知られた俳優と違い、その人に対する先入観を持たず、“役”として見られる利点は大きい。

主演のデイヴ・ジョーンズは、スタンダップ・コメディをやるコメディアンらしい。

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確かに、“ちょっとシニカルなイギリス的コメディアン”という雰囲気。

長年その分野で活躍してきたデイヴ・ジョーンズは、ある日、プロデューサーから
「ケン・ローチ監督が、北東部を舞台にした新作映画のために、主人公を演じる君と同世代の男を探している。
君に合っていると思う。君の履歴をキャスティング担当者に是非送って」と言われ、
躊躇しながらも、言われた通り送付したものの、何の音沙汰も無かったのに、
その後制作会社に呼ばれ、訪ねたら、そこにケン・ローチ監督が待っていて、二人でお喋り。
ケン・ローチ監督は、デイヴ・ジョーンズのこれまでのキャリアについては別に知りたがらず、
サッカーや、家族、出身地などについてお喋りしたという。

このデイヴ・ジョーンズは、主人公ダニエルと同じ、ニューカッスル出身で、労働者としての経験もある人。
ケン・ローチ監督は、毎度のように、作り物ではない現実味を役に醸せる人が欲しかったのであろう。
もちろん、デイヴ・ジョーンズが本来コメディアンであることも無駄にはなっていないように感じる。
イギリスのコメディ事情に詳しいわけではないので、勝手な思い込みかも知れないが、
あちらのスタンダップ・コメディアンは、政治批判などもネタにするし、
日本の一般的なお笑い芸人よりずっとアナーキーなイメージがある。
デイヴ・ジョーンズが扮するダニエルも、“自分も大変なのに他人を助けるイイ人”、
“ただただしおらしい弱者”には収まっておらず、反骨精神がある。
超アナログ人間で、「マウスを動かして」と説明され、手にしたマウスを
パソコン本体の前で本当に動かしてしまうシーンだけは、誇張し過ぎているようにも感じた。
80歳なら有り得るけれど、59歳であそこまでパソコン音痴の人なんて、今時居るかしら…。


ケイティ役のヘイリー・スクワイアーズは、1988年生まれ、
ゲイリー・オールドマン等を輩出したRose Bruford College(ローズ・ブルフォード・カレッジ)で演技を学び、
女優として活動する傍ら、脚本も手掛けているそう。
これまでにもボチボチ出演作は有っても、有名監督の作品で大きな役を得て、ここまで注目を集めたのは、
この『わたしは、ダニエル・ブレイク』が初めて。
彼女もまたサウスロンドンの労働者階級出身で、
身長はイギリス人らしからぬ5フフィート2インチ(≒157.5cm)というプチサイズ。
ハリウッド女優のような華やかさには欠けても、ケン・ローチ監督作品にはドンピシャ。
20代なのに、顔に疲労に色が滲み出ていて、おばあさんにも見える彼女に、
大きな問題に直面し、疲弊しきったケイティのリアリティを感じる。
特に印象に残ったのは、フードバンクのシーン。
ここで、一瞬一人になったケイティは、空腹に耐えかね、
缶詰を開け、おもむろに手掴みで中のベイクド・ビーンズをむさぼるように食べてしまうのだ。
映画全編を通し、ここが一番ハッとさせられたシーン。


ケイティの子供は、下の弟ディランはまったくの白人だが、
上のお姉ちゃんデイジーには黒人の血が見て取れる。
姉弟で、父親が違うことは、一目瞭然。
まだ十代だったケイティは、母親の忠告には耳を貸さず、
運命の人と信じた男との間にデイジーを産むが、彼との関係は破綻し、
次にまた運命を感じた男性との間に今度はディランを産んで、また破局…。
こういう十代の女の子は、日本にも多い。




この『わたしは、ダニエル・ブレイク』を充分秀作と認定した上で敢えて言うと、
ケン・ローチ監督作品としては、やや物足りなさを感じた。
ケン・ローチ監督作品には、救いなんか無くて良い!と、ついつい思ってしまう。
過去の作品では、あまりの悲惨さが想定外で、
「えぇーっ、そんなにズタズタでいいの?!」と驚かされることもしばしば有ったけれど、
本作品は、物語が私の予想通りに展開し、意外性が感じられなかった。
監督ももう80歳だし、救いの無い悲惨な現実より、未来に希望をもてる理想を描きたかったのだろうか。
私が特に非現実的と感じたのは、本作品に登場する人々の多くが、善人である点。
例えば、ケイティが万引きで捕まるスーパーマーケットの係り員。
ケイティが置かれた厳しい状況を察した彼は、彼女を警察に突き出すことなく、
それどころか、万引きした生理用品をそのままそっと彼女に与えるのだ。

市井の人々がことごとく善人なのに対し、お役人たちが“悪”の象徴のように描かれている点も、
善悪の境界線が分かり易すぎるというか、ステレオタイプのドラマになってしまっているという印象。
私が日本に暮らす日本人なので、共感しにくいだけかも知れない。
日本も昔は人々のためにならない型に嵌った“お役所仕事”が有ったけれど、
昨今、上層部の官僚や政治家には、勘違いしてつけ上がる人間がゴロゴロ居たとしても、
下の方の人々は実直に仕事をしている印象がある(勿論、どこにも例外はアリ)。
昨今の日本で、ゲンナリさせられるのは、むしろ“お客様は神様”が身に付いてしまっている一般の人々の方。
公務員に、「貴様、誰の税金で食っているんだヨ!」と理不尽なイチャモンを付けたりね。
弱者を切り捨てる政策には同意できなくても、その一方で、不正受給の問題が有ることも考えてしまう。

また、母子家庭における貧困の問題は、世界中の先進国で共通と見受けるが、
ケイティのような女性を、ダニエルのように「立派な母親」と手放しで称えるだけの広い心は、私には無いかも。
別にシングルマザーを批判してるのではない。
学が無く、職が無く、金が無く、ついでに男を見る目も無いのに、
十代でポンポンと子供を産んだら、どうなるのかという想像力に欠けた女性を、
心臓病で働けなくなったダニエルと同列の“社会的弱者”として扱うことには、少々抵抗がある。

ごく平凡な人間にも、ちゃんと尊厳があるんだ!それをちゃんと認めて欲しい!
と訴えかける本当に良い作品で、しっかり楽しませていただいた。
…が、2016年のカンヌなら、次点のグランプリを受賞した『たかが世界の終わり』の方が、
より“カンヌらしい”作品という印象で、感動的かどうかは別として、私の記憶には鮮烈に焼き付いた。

桜餅3種(+テレビ/映画雑記)

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お江戸、及びその周囲にお住いの皆さま、2017年4月4日(火曜)の昨日、
久し振りの監督&主演作『おじいちゃんはデブゴン』のプロモーションで来日中の
あの洪金寶(サモ・ハン)をスペシャルゲストに迎えた東京MX『5時に夢中!』は御覧になりましたかー?!
“あんな大物がMXなんかに出ちゃった”という話題作りは、
2016年6月のジョディ・フォスターにはじまり(→参照)、今回が2度目であろう。
(実際、映画と何の関係も無いアイドルやお笑い芸人を呼んでやるイベントより、よほど話題になっている。)
ジョディ・フォスターの時は、番組中盤のほんの数分の出演だったので、
今回も同じような感じを想像していたら、洪金寶が、冒頭から出ていたので、びっくり。
その後、5時43分くらいまで、出ずっぱり。『5時に夢中!』史上最も豪華な放送であった。
通訳を介すので、会話のキャッチボールはどうしても滞りがちだったけれど、
家ではよく上海料理を食べる、顔の色艶が良いのはラードを食べているから、日本食はお刺身もラーメン好き、
日本ではお菓子を爆買いするつもり、3箱分買って一つは自分用、あとの2ツは孫用、
(日本のAVは観たことがあるか?の問いに)ある、アクション映画を撮らなければAVを撮っていただろう、
でも、AVを撮っていても徐々にアクションになってしまいそう、…なんて事を語っておられた。
アクロバティックなエロ映画“動作色情片(アクションAV)”、いいんじゃない?それ、ウケると思います。



この先もまだ有ります、要録画番組。

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一本目は、4月7日(金曜)、TBS『ぴったんこカンカン』
“三婆女子会ツアーin 香港”と題し、大竹しのぶ、渡辺えり、キムラ緑子が、安住紳一郎アナと香港へ飛び、
グルメを楽しんだり、テーマパークでパンダと触れ合ったり、
オープントップトラムの貸し切りツアーなども体験するそう。
見ていてイラっとしてくるアイドルのキャピキャピ香港レポより、
オバちゃん女優の香港旅の方が、もはや私にはシックリきて、精神衛生上良い気がする。
どうやら、この“三婆女子会ツアーin 香港”は、2週連続で放送されるみたい。




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同日、4月7日(金曜)、その後は、NHK BSプレミアムで『岩合光昭の世界ネコ歩き』
特別猫贔屓ではないので、これまで数えるほどしか観たことのない番組だが、
今回は舞台が香港なので、録画を予約。
漢方薬店の猫、ヘビ料理屋の猫、夜景を楽しむ猫などなど、
活気ある街で大らかに暮らす猫たちを、岩合光昭がカメラに収めているのだと。
私は、猫自体が目的でこの番組を観るというより、
猫を通し、その背景に広がる香港の街を楽しむという感じだろうか。
猫が好きで、なおかつ香港も好きな人なら、外せない番組ですね~。





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翌4月8日(土曜)も、引き続きNHK BSプレミアムで『絶景 巨大石柱林~中国・張家界を鳥観する』
高層ビル並みの巨大な石柱が見渡す限り3000本以上広がる湖南省の張家界は、
映画『アバター』のモデル地とされ、多くの観光客を集めているが、実はその多くは未開放地区だという。
今回、この番組では、地元政府の許可を得て、ドローンを使い、上空からの撮影に成功したのだと。
雄大かつ幻想的な絶景を楽しめそう。





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4月9日(日曜)は、映画を。BSフジで放送の『容疑者Xの献身』がそれ。
東野圭吾の原作を、福山雅治主演で、ドラマ演出でお馴染みの西谷弘監督が撮った映画。
正直言って、一生観る必要のない映画だと思っていた。
観なければ!と急に考えを改めたのは…

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これが『嫌疑人X的獻身~The Devotion of Suspect X』のタイトルで、
中華圏でも映画化され、最近現地で公開されたばかりだから。
メガホンをとったのは、『左耳~The Left Ear』で監督デビューを果たした台湾の蘇有朋(アレック・スー)。
主演は、王凱(ワン・カイ)と張魯一(チャン・ルーイー)。
フジが今このタイミングでわざわざ日本版を放送するのは、
もしかして中華版が日本に入って来る予定があるの??深読み&期待し過ぎ…???
とにかく、この機会に、日本版を観ておき、もしかして有るかも知れない中華版公開に備え、予習しておく。


ちなみに、中華版の主演男優・王凱は、現在『英雄本色4~A Better Tomorrow4』を撮影中。
一昨日の4月3日(月曜)には…

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その『英雄本色4』の日本ロケのため、北京首都空港から、東京に向け、飛び立っており、
早速、都内で、撮影しているところがボチボチ目撃されている。
洪金寶も王凱も居る東京、どんだけ素敵なのヨ…!


ついでなので、作品に関するちょとした補足情報。
『英雄本色』の一作目は…

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周潤發(チョウ・ユンファ)、張國榮(レスリー・チャン)、狄龍(ティ・ロン)出演で
大ヒットを記録した吳宇森(ジョン・ウー)監督1986年の作品、かの『男たちの挽歌』。

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第4弾となる新作では丁晟(ディン・シェン)監督がメガホンをとり、
王凱、王大陸(ダレン・ワン)、馬天宇(マー・ティエンユー)の3人が義兄弟を演じる。
(上の画像は、青島でクランクインした時の物で、左から丁晟監督、馬天宇、王凱、王大陸。)

丁晟は、成龍(ジャッキー・チェン)主演作『ポリス・ストーリー/レジェンド』(2013年)の監督さん。
丁晟監督の昨年公開された前作、やはり王凱や王大陸が出ている成龍映画『鐵道飛虎』は、
日本の池内博之も参加しているが(→参照)、抗日戦争期を背景にしているので、
愛国度が増し、ピリピリしている昨今の日本では、もしや公開は難しいのでは…と懸念もしたけれど、
『レイルロード・タイガー』の邦題で、2017年6月16日、無事日本公開決定。

同じ丁晟監督作品だし、日本で撮影しているし、元の『男たちの挽歌』が超有名だし、
『英雄本色4』も、日本上陸を期待してしまって良いですか…?
日本の中華ドラマニアの皆さまにも広く知られるようになった“靖王殿下”王凱、
いよいよ映画ファンにも知られる存在になっていきそう。

話はちょっと戻るけれど、『嫌疑人X的獻身』で王凱と共演の張魯一は、
日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』の玄宗皇帝。(→参照
張魯一もまた出演作が日本で紹介される機会が増えていきそう。



そうそう、、テレビをもう2本。

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4月11日(火曜)は、NHK BSプレミアムで『2度目のバリ島』
リポーターの細田善彦が、中心部の喧騒を離れ、
郊外の村や山で、2度目ならではのホンモノのバリ島を堪能。
大衆食堂“ワルン”でバリの3大名物を味わったり、激安スパで薬草オイルマッサージを体験したり、
地元の人しか知らないパワースポットに出向いたり…。
それらを、お小遣い3万円で楽しむそう。激安スパって、どれくらい激安なのでしょう。


あと、BS日テレの『旅してHappy』、4月12日(水曜)から新シリーズで、
桝渕祥与が紹介する台湾・台南編になるとのころ。
私は桝渕祥与という人を知らないのだが、どうも大食いタレントみたい。
台南の紹介も、食が中心になるのかしら?
放送は、正確には13日(木曜)未明なので、要注意。





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ところで、東京に桜の季節が到来!
特に今日の東京は暖かだったので、春気分を満喫。洪金寶や王凱にも、東京の桜をお楽しみいただきたい。
そして、桜の季節と言えば、桜餅。
本当は他にも色々食べているのだけれど、今回ここには取り敢えず3ツを。

★ 青柳正家:さくら餅

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大きさは、だいたい5センチ×4センチ。
薄く焼いた生地で、こし餡を四角く包み、さらに塩漬けした2枚の桜葉で巻き上げた桜餅。



向島のお店、青柳正家(公式サイト)“さくら餅”
菊最中で有名なお店だけれど、実は桜餅も絶品なのです。

一般的なお江戸風桜餅は、楕円形に焼いた生地で、餡をクルッと巻いた形状。
しかし、ここのは、ふくさで四角く包んだ小箱のよう。
その生地がまた、一般的なお江戸風桜餅の生地とは比べ物にならないほどシットリ。
原材料表示を見ると、小麦粉以外に、羽二重粉、上南粉、蓮粉が配合されている。
これが、独特なシットリのワケなのであろう。
中に包まれているのは、藤色で上品な餡。
上品な餡たっぷりの菊最中で有名なお店だから、餡の味も間違いナシ。

う~ん、美味なり。
青柳正家と言えば、日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』に出演の染谷将太が、
中国での撮影を終了した際、あちらのスタッフに、お礼の品として贈ったのが、
写真で見る限り、どうやら青柳正家の包みなのだ。(→参照
贈り物は、贈り主のセンスが現れるもの。
染谷将太が、青柳正家を贈り物にする人だとは思っていなかったので、意外なセレクトに彼を見直した。
具体的にどのお菓子を選んだのかも知りたい。
この桜餅は生菓子なので、海外土産には出来ないが、本当美味しいから~!

★ 虎屋:桜もち

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大きさは、だいたい5センチ角。
中に求肥を隠したこし餡を生地で四角く包んだ上に、桜の花を飾り、
さらに、塩漬けした大きな桜葉2枚で上下からはさんだ桜餅。




2ツめもお江戸風で、吉祥寺お店、虎屋0422-22-2083)の“桜もち”
羊羹で有名なかのとらやではありません。
吉祥寺ダイヤ街の片隅にこじんまりと佇む知る人ぞ知る和菓子屋さん。
吉祥寺の和菓子屋さんというと、羊羹を求める人々で行列ができる小ざさばかりが有名だが、
この虎屋は、そのすぐ近く。

虎屋の桜餅も、青柳正家と同じように、生地がしっとりと柔らかで、中には藤色の上品なこし餡。
さらに特徴的なのは、そのこし餡の中に、とろけるように柔らかな求肥が隠れていること。
求肥入り桜餅は、珍しいと思う。

こちらも美味!
前出の青柳正家の物と、この虎屋の物は、お江戸風桜餅の双璧。
道明寺を使った関西風一辺倒だった私を、コロッとお江戸風贔屓に変えたのが、これら2ツなので。
これ以上があるなら、是非試したい。

★ 老松:紅桜餅

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大きさは、長さ約5センチ、幅約4センチの俵型。
桜の花と葉のペーストを混ぜ込んだ白餡を、桜色の外郎生地で包み、
2枚の桜葉で上下からはさんだ桜餅。




最後は、創業明治41年(1908年)、京都に4代続く和菓子屋さん、老松(公式サイト)“紅桜餅”
老松は、京都の老舗らしく、通常の桜餅は、道明寺を使った関西風。
こちらの紅桜餅は、新宿伊勢丹だけの限定商品。

これを伊勢丹の広告で是非買いたい!と欲した理由は、
お江戸風のクレープ状生地でも、関西風の道明寺でもなく、外郎(ういろう)で作られた珍しい桜餅だから。

実際に食べてみたら、外郎という感じではない。この生地は、すあまである。
中の餡には、桜の花と葉が混ぜ込まれているそうだが、うーン、それも感じられず。
通常の白餡と、あまり変わりかないように思う。
塩漬けの桜葉が2枚添えられているので、その葉の香りで、桜の季節は感じられるけれど、
食感は、桜餅より柏餅に近い。

小田原の老舗・ういろうの“菊ういろう”が、桜葉入りの白餡を、外郎生地で包んだお菓子で、
春らしく、美味しかったため、あれに近い物を期待してしまったのだが、違った。
この紅桜餅は、不味くはないけれど、普通の和菓子という印象。
老松の通常の桜餅が270円なのに対し、こちらは389円と、約4割増しの価格設定だが、
その価値を感じられなかった。一度食べて、どういう物か分かったので、もう買わないと思う。
4月11日(火曜)まで新宿伊勢丹で販売されているので、
珍しい桜餅に興味のある方は、この機会にお試しを♪

『おじいちゃんはデブゴン』洪金寶来日舞台挨拶♪

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日本で上映されるわけないと思っていた洪金寶(サモ・ハン)監督主演作『特工爺爺』が、
『おじいちゃんはデブゴン』のタイトルで、2017年5月27日公開と聞き、それだけでも軽く驚いたが、
3月末、その公開に先駆け、新宿武蔵野館で4月6日に先行上映が行われ、
なんとそこに洪金寶御本人がやって来て、舞台挨拶をするとの発表があり、もっとビックリ。

景気の良かった頃は、ミニシアター系の小品でも、海外スタアの来日舞台挨拶が行われることも有ったけれど、
近年は激減。まさか洪金寶レベルの大物がやって来るとは、嬉しい想定外。

でも、午後4時15分の回の後と、6時55分の回の前、2回の舞台挨拶を予定しているとはいえ、
日本で成龍(ジャッキー・チェン)と並ぶ人気を誇ったあの洪金寶に、
130席程度しかない新宿武蔵野館は小さ過ぎやしないか…?
せめて、シネマート新宿くらいのキャパは欲しいところ。

新宿武蔵野館で舞台挨拶と言えば、3月半ばに、
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)25年ぶりの再上映に際し、
来日した張震(チャン・チェン)を拝みに行ったのが(→参照)、まるでまだ昨日の事のよう。
張震は、私の長年の御贔屓なので、チケット争奪戦では緊張しまくり、それでもなんとか入手に成功し、安堵。

嗚呼、あの緊張再びか…。いや、日本での知名度を考えたら、洪金寶は張震以上にハードルが高い。
日が迫っていたので、チケット発売は、開催のたった3日前。
“ダメ元”で、一応挑戦だけすることにした。

チケット発売のその瞬間、新宿武蔵野館のサーバーは、案の定のアクセス集中で、ぜんぜん中に入れない。
反復運動で、クリックを続けていたところ、発売開始約12分で、座席選択に進めたという幸運。
これは『牯嶺街少年殺人事件』の時より、かなりマシ。
しかし、その時、座席はすでに7割が埋まっていたので、焦ってしまい、
『牯嶺街少年殺人事件』での教訓をまったく生かせず、
またしても、ジタバタしながら、理想とは程遠い席をキープしてしまった。
どうせ“ダメ元”だったのに、なぜ心をもっと平静に保てなかったのよ、私。
でもこれでナマ洪金寶に謁見は確定。席が理想とは違っても、現状を受け入れ、満足することにいたします。

★ 迎えた当日

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私がチケットを取ったのは、午後4時15分の回の方。
張震は、“できることならお付き合いした相手”なので、
『牯嶺街少年殺人事件』舞台挨拶の時は、オトメ心が蘇り、妙な動悸、息切れを感じてしまったが、
洪金寶は父親感覚なので、会うのに感じるのは単純な嬉しさだけ。
ウッキウキ気分で新宿武蔵野館へ。

『おじいちゃんはデブゴン』の公開は5月27日なので、映画館にはまだポスターなどは貼られておらず、
いつも通りの新宿武蔵野館。
これから大物を迎えてイベントやります!というお祭り気分を盛り上げてくれる仕掛けなどは無い。
でも、来場者は皆さまからは、不思議な高揚感が伝わってくる。
やっぱ洪金寶は、みんなのアイドルなのですね~。
あと、女性が多かった『牯嶺街少年殺人事件』の時と違い、今回は男性もかなり居るのが特徴的。

★ 『おじいちゃんはデブゴン』監督&主演・洪金寶舞台挨拶

前から6列目の自分の席に着席し、まずは映画鑑賞。
午後6時ちょっと前に終了し、舞台挨拶の準備。
単館の小品にしては珍しく、取材の人が、ゾロゾロとかなりの人数入って来た。注目度の高さが窺えます。

司会進行役は、映画パーソナリティの伊藤さとり。
洪金寶が前回来日した『SPL/狼よ静かに死ね』(2005年)公開の時にも、司会をしたらしい。

簡単な前説があり、いよいよ洪金寶サマ降臨!
ジャケットの下はストライプのシャツ。
大きなおなかに巻かれたウエスタン調のベルトは、洪金寶がしていると、チャンピオン・ベルトのようにも見える。


以下、印象に残ったお言葉を、ザッと残しておく。

洪金寶
若い頃から、こんな年寄りになるまで、応援し続けてくれ、皆さんには感謝しています。



伊藤さとり
SPL/狼よ静かに死ね』以来11年ぶりの来日ですが、久し振りの日本は如何ですか。

洪金寶
確かに久し振りですが、日本のことはずっと気にかかっていて、香港でも日本料理ばかりを食べていましたよ。
日本には良い印象があります。
人が親切だし、これまで一緒に仕事をした日本人も、皆真面目な良い人たちでした。
日本でも映画を撮りたいですね。



伊藤さとり
アクション指導や出演はされても、監督をなさるのは久し振りですよね?

洪金寶
彭于晏(エディ・ポン)とやった映画『黃飛鴻之英雄有夢~Rise of the Legend』の後、
この『おじいちゃんはデブゴン』の脚本を見せられました。
それを読み、良い話だと言ったら、「じゃぁ、監督をやってみない?」と言われ、
本当にやることになったのですが、
最初の脚本だと、アクションシーンが少なかったので、アクションをもっと加えました。



伊藤さとり
どういうアクションに拘りましたか。

洪金寶
どうやって相手の腕をへし折ろうかと、拘りました。
私が演じる丁虎は、殺し屋ではなく、要人を守るボディガードをやっていた男です。
要人を守るためには、相手が攻撃できないようにしなければならない。
そういう背景から、アクションを設計しました。



伊藤さとり
劉華(アンディ・ラウ)は、出演だけではなく、制作にも関わっていますよね。

洪金寶
彼は元々この作品のプロデューサーでした。
友人たちが沢山出演することになったら、劉華の方から、自分も出て演じたいと言ってきたのです。



伊藤さとり
出演者の顔ぶれが本当に豪華ですよね。

洪金寶
「一日遊びに来ない?」と自分で一人一人に電話したら、
皆「いいよ、ヒマだから」と快く受けてくれました。
石天(ディーン・セキ)や麥嘉(カール・マック)は、私が頼まなければ、出てくれない人でしょうね。



伊藤さとり
そういう旧友の皆さんとは、お食事したり、色々楽しまれたのですか。

洪金寶
彼らは役者なので、演じ終えたら、ヒマになりますが、私は監督なので、ずっと忙しかった。
もちろん一緒に食事をしたり、食べながらお喋りしたりは、しました。



伊藤さとり
観客の皆さんが、『おじいちゃんはデブゴン』をもう一度観る時、より楽しむポイントは?

洪金寶
時間通りに来て、最初から最後まできちんと観ること!



伊藤さとり
次回作の構想はありますか。

洪金寶
準備している企画があって、7月か8月にはクランクインしたいと思っています。
詳細に関しては、“面白い作品”としか言えません。



ここで、日本で洪金寶の吹き替えをずーーーっと担当している声優の水島裕が、
花束を抱え、スペシャルゲストとして登場。

水島裕
日本では、サモハンと水島はセット販売になっておりますので。
20代の頃に最初の吹き替えをやらせて頂いてから、約40年です。
僕が吹き替えを担当する人は、ルークスカイウォーカーのマーク・ハミルにしても、
『フレンズ』のマシュー・ペリーにしても、皆いなくなってしまうんですよ。
サモハンさんだけは、居続けてくれるので、嬉しいです。

洪金寶
水島さんを引退させないために、働き続けます。

水島裕
お願いします。一言だけでもいいから、映画に出て下さい。

洪金寶
出資者さえ居れば、出続けますよ。



御本人も仰ているように、日本だと、“洪金寶=水島裕”と思う人が多いみたいだけれど、
私は子供の頃から吹き替えで洪金寶作品を観た記憶が無く、
(ファンが多いようなので、とても言いづらいのだが…)実はこの水島裕という声優さんを知りませんでした…。
40年洪金寶の吹き替えを担当していると聞いて、年齢を察し、驚いた。随分お若く見えますねー。



この後は、撮影タイム。
取材の人たちの後には、我々にも撮影のお許し。但し、与えられた時間は、30秒ポッキリ!

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私の出来高たったの3枚。
しかも、焦り&緊張から、全てブレブレ。しかも、しかも、内一枚は、まるで心霊写真。
30秒なんて、有って無いようなもの。
ファンは愛が大きいから、下手な取材記者よりよほど良い宣伝をするのに…。

★ 出待ち

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こうして、約30分の夢のひと時は終了。
洪金寶は、次の回でも、上映前に舞台挨拶を行うので、
控え室から会場入り口までほんの1~2メートルの距離を移動する彼を一目見ようと、多くの人々が待機。
ここは確実に洪金寶を拝める場所なので、私も一緒に待ってみた。

で、実際、見ることはできたのだがぁ…

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ここでも撮った写真はブレブレであった…。





楽しかったわぁ~!
私、ナマ洪金寶は、今回がお初であった。
実物の洪金寶サマは、顔周りのお肉を削ぎ落したら、恐らくかなりの小顔と推測。
白髪が素敵な60代のおじ様で、大物オーラをビンビン発し、それでいて、優しくて、気さく。
益々好きになってしまいましたヨ。
洪金寶サマは、香港映画界の生けるレジェンドであり、皆の永遠のアイドルです!
6時55分の回で御覧になった方々は、いかがでしたか。何か興味深い話は出ましたか?
映画『おじいちゃんはデブゴン』に関しては、また後日!
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