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映画『ムーンライト』

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【2016年/アメリカ/111min.】
<1: Little>
フロリダ州マイアミ。
“リトル”というあだ名で呼ばれる内気な少年シャロンは、いじめっ子から逃げているところを、
キューバ人のフアンに助けられ、彼の恋人テレサが待つ家に連れて行かれる。
最初はフアンを警戒し、口もきかなかったシャロンだが、共に過ごす時間が増すにつれ、徐々に心を開き、
彼から多くの事を学ぶようになる。
シャロンの情緒不安定な母親ポーラは、息子がフアンに懐いていることが、面白くなく、
親切なフアンにまで八つ当たり。

<2:Chiron>
ティーンエイジャーになったシャロン。
母のポーラは薬物依存に陥り、薬代を稼ぐため、売春。
フアンはもうこの世に居なくても、テレサはずっとシャロンを優しく迎え入れ、変わらぬ交流が続いている。
しかし、そんなテレサがくれるお小遣いさえ、ポーラの薬代に消えてゆく。
幼い頃からの唯一の友人であるケヴィンは、今では女性関係もお盛んだが、
ある晩、一緒に行ったビーチで、シャロンは彼に身をゆだねることに。
翌朝、学校でいつもシャロンを標的にしている問題児テレルが、
イジメの儀式として、ケヴィンにシャロンを殴るように命じる。
ケヴィンはその命令を拒絶できず、シャロンを一発、二発と殴るのであった。

<3:Black>
ジョージア州アトランタ。
少年院を出てから、故郷を離れ、この街で薬の売人としてのし上がったシャロンは、
“ブラック”の名で、その筋では知られる存在になっていた。
ある日、一本の電話を受ける。ケヴィンからであった。
今はコックとして働いている、料理を振る舞うから是非食べに来い、と言う。
シャロンは久々にマイアミへ戻り、事前の連絡なしに、ケヴィンが働くダイナーに赴き、無言で席に着く。
シャロンの来店に気付いたケヴィンは、彼のあまりにも変わった現在の風貌に、やや戸惑いながらも、
自慢の料理を運び、この数年に起きたことを語り、シャロンにも近況を尋ねる。
そして、売人として成功したことを知り、言う、「君に限って、そうなるとは思わなかったよ」と。
ギコチナイ空気が流れたまま、二人はダイナーを出て、ケヴィンの家へ向かい…。



『ラ・ラ・ランド』独走!と言われていた第89回アカデミー賞で、
その『ラ・ラ・ランド』を抑え、作品賞を受賞した他、助演男優賞、脚色賞にも輝いた作品。

手掛けたのは、本作品が長編監督作品2本目のバリー・ジェンキンス
デビュー作『Medicine for Melancholy』(2008年)は日本未公開で、私は観たことナシ。
久々の新作で、バリー・ジェンキンスの名を世に知らしめた『ムーンライト』は、
タレル・アルヴィン・マクレイニーによる半自伝的戯曲、
<In Moonlight Black Boys Look Blue>(未発表)をベースにした映画。
原案者タレル・アルヴィン・マクレイニーとバリー・ジェンキンス監督が共同で脚本を執筆している。



物語は、薬物依存の母と二人で暮らし、学校ではイジメに遭っている孤独な黒人少年シャロンが、
過酷な環境下、自分の居場所を探しながら、成長していく姿を描く人間ドラマ

有色人種、貧困、同性愛者という、差別の対象に陥り易い三重苦を背負って生きる主人公・シャロンが、
自分のアイデンティティを模索する姿を、少年期、青年期、大人に分け、3部構成で追っていくのが特徴的。

バリー・ジェンキンス監督は、アジア映画などもよく観ているらしく、
本作品を3部構成にしたのは、彼のお気に入り作品の一つ、
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『百年恋歌』(2005年)からいただいたアイディアだと語っている。

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『百年恋歌』は、張震(チャン・チェン)&舒淇(スー・チー)という二人の役者が、
清代、60年代、現代という3ツの時代の男女を演じ分けている作品で、
3人の俳優が、シャロンという一人の主人公の人生における3ツの時代を演じている
この『ムーンライト』とはかなり質が異なる。
2作品の共通点は、単純に“3部構成”という事くらいだが、
『百年恋歌』は私も大好きな作品なので、このインタヴュ記事を読み、アカデミー賞にまったく興味の無い私まで、
バリー・ジェンキンス監督と『ムーンライト』に、俄然興味が湧いてきた。

バリー・ジェンキンス監督は、他にも、好きな監督として、フランスのクレール・ドニの名を出したり、
影響を受けた作品として、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督の『ブエノスアイレス』(1997年)などを挙げている。

以前のアメリカなら、ジム・ジャームッシュとかソフィア・コッポラとか、
非アメリカ映画をマニアックに観ていそうな監督が結構居て、
実際、その手の監督作品からは、ヨーロッパ的、アジア的ニオイや、インディーズの雰囲気が感じられ、
かなり私好みだったのだが、最近はそういう監督があまり出て来ず、
在り来たりなハリウッドの王道が目立つようになってしまったと思っていた。
そうしたら、バリー・ジェンキンス監督の台頭よ。
好きな監督や影響を受けた作品を聞いただけでも、自分の好みに近いと、期待が湧いてしまう。
(もっとも、好きな作品が同じでも、作る作品がまったく私の好みとはズレている
行定勲監督などの例もあるので、“インプット=アウトプット”とは一概に言えない。)


ちなみに、バリー・ジェンキンス監督が言うには、
『ムーンライト』において、クレール・ドニ監督からの影響は間接的なもので、
『ブエノスアイレス』に関しては、もっと直接的にオマージュを捧げている、…とのこと。

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『ブエノスアイレス』は、大・大・大好きな作品なので、
『ムーンライト』を鑑賞するにあたり、そのオマージュとやらは、とても気になった。
御本人が、“直接的”と言っているのだから、私にも分かるだろうと、それを見付ける気マンマン。

そうしたら、中盤で、早速発見。

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主人公・シャロンが、“アメリカ版ゆりかもめ”のような電車に乗るシーンが、
『ブエノスアイレス』で、張震(チャン・チェン)の実家を訪ねるため、台北に渡った梁朝偉(トニー・レオン)が
MRT台北捷運に乗っているラストシーンと酷似。

最初の方でオマージュが出てきてしまったから、あとはもう無いワと思っていたら、
その後、『ブエノスアイレス』で印象的に使われている<Cucurrucucú Paloma>が流れるシーンも。

他にも、深読みしようと思えば、
『ブエノスアイレス』や、その他の王家衛監督作品を彷彿させるカットがわんさか。

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二人向き合いダイナーで食事をするシーンとか、ハイウェイを車で走るシーンとか
(私は車に詳しくないが、燃費が悪そうなレトロでゴツイ大型車であることも共通)、
懐かしソングが流れるジュークボックスとか…。





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主人公のシャロンを演じる3人は、“リトル”と呼ばれる子供時代にアレックス・ヒルバート
ティーンエイジャーの頃はアシュトン・サンダース
そして“ブラック”と呼ばれる大人になった彼はトレヴァンテ・ローズ

元々私が知っていた俳優は一人も居ないのだが、皆さん素晴らしい!
甲乙つけられるものではないけれど、強いて言うなら、
子供のアレックス・ヒルバートと大人のトレヴァンテ・ローズが、取り分け印象に残っている。

アレックス・ヒルバート扮する“リトル”ことシャロンは、本当に細くて小さくて、
言葉を発することなく、いつも下を向いて、しおらしいのナンのって。
ただ佇んでいるだけで、スクリーンから、彼の孤独感がビシバシ伝わってくる。

ティーンになっても相変わらず弱々しく、問題児テレルとその仲間の格好の標的で、イジメられまくり。
大人のシャロンは、当然その延長線上の人物、
つまり、見るからに弱々しいホッソリした体形の、物静かな男性を想像するが、
第3部に実際に登場した大人のシャロンが、まったくの別人だったので、目を疑った。
エスパー伊東がマイク・タイソンに化けたくらい別物!
自分を強く、大きく見せたかったのだろう。
鍛えぬいたボディは、元の3倍くらいになり、眼光鋭く、口を開けばギラギラに光る総金歯!ひえぇぇーーっ…!
耳に付けた大きなダイヤのピアスといい、頭にピッタピタに巻いた黒い布といい…

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装いはまるでフアンのコピー。
幼い頃父親代わりだったフアンが、シャロンにとってのあるべき“大人像”で、
無意識の内に見た目までフアンに近付いていったのかもね。


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ちなみに、よく黒人の男性がしている総金歯、
あれ、健康な歯を削って本当に金を被せているものだと、ずっと思い込んでいたが、
実は、マウスピースのように、簡単にパカッと外せる物であると、この映画で見て、初めて知った。
シャロンもお食事の時にパカッと外したら、下には白く健康な歯がきちんと残っていた。
結構邪魔な物で、食事には不便?“お洒落は我慢”なのですね。
金歯の裝脱着システムが分かり、えらく感動した。




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他の出演者も簡単に見ておくと、シャロンの面倒を見るフアンにマハーシャラ・アリ
フアンの恋人テレサにジャネール・モネイ、シャロンの母親ポーラにナオミ・ハリス
フアンの友人ケヴィン(大人)にアンドレ・ホーランド等々。

こちらも皆々サマも素晴らしいのだが、特に好きなのが、
本作品での演技が認められ、アカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ扮するフアン。
掃き溜めのような街で、しょうもない母親のもと、愛も安心感もなく暮らすシャロンを、
広い心で見守り、人生を教えてくれる大人の男性。
孤独な子供にとって、安らげる“逃げ場”が有ることは、救いになるし、
仮にシャロンほど家庭環境が酷くなくても、尊敬できる親以外の大人との出会いは、
子供の視野を広くしてくれるものだ。

幼いシャロンが、自分の性について、まだ自分自身でも理解しておらず、
同級生たちから罵られた“faggot(オカマ)”の意味も分からず、
フアンに小声でポツリと「“faggot”って何?」と尋ねた時も、
「ゲイの人たちの気分を悪くする言葉だよ。お前はもしかしてゲイかも知れない。
でも、他人に“faggot”なんて呼ばせちゃ駄目だ」と教えるのはフアン。
本当の父親のように、水泳を教えてくれることもあれば、
自分の人生は自分で決めるんだ、人に決めさせるなと、強くも優しくシャロンに誇りをもつこと教えてくれる人。

…かと言って、このフアンは聖人君主とは描かれていない。
彼は薬の売人で、シャロンの母親にも薬を売っているのだ。
我々映画の観衆は、そんなフアンが死んだことを、サラッと台詞だけで知らせれる。
彼が死ぬシーンは無いし、死因が説明されることも無い。“いつの間にか居なくなっていた”という感じなので、
一体何が有ったのか?!と余計に想像を掻き立てられる。






私がこの作品を観ようとしたキッカケは、『ブエノスアイレス』等へのオマージュを知ったことで、
実際、過去の名作を彷彿させる数々のシーンにワクワクもさせられたのだけれど、
だからと言って、本作品は“オマージュのパッチワーク”などには終始せず、
きちんとオリジナルの作品として、魅力的に成立している。

美しい映像は、光や色への並々ならぬコダワリが感じられ、引き込まれるし、
一人の孤独な少年が成長する物語は、肌の色などに関係なく、普遍的に思える部分も多く、切なくなる。
同性愛者の物語でもあるが、直接的な性描写はほとんど無い。
大人になり、すっかり変わり果てたシャロンが、久し振りに再会した初体験のお相手・ケヴィンに、
あの体験が最初で最後であったという意外な事実を打ち明けるシーンでは、
強面の売人になっても、シャロンはシャロンのままだったと分かり、グッと来た。
そして、月光を浴び、黒い肌が艶やかに青く光る“リトル”シャロンのラストシーン…。
反則!出来過ぎっ!それまでの全てが集約されているかのようなラストであった。

『ラ・ラ・ランド』の世間での高評価に共感できない私は、
米アカデミー賞は、やはり自分向けの映画賞ではない!と再認識したが、
『ムーンライト』を観て、アカデミー賞も捨てたモンじゃないと思えてきた。
『ラ・ラ・ランド』エマ・ストーンの主演女優賞受賞には、疑問ばかりが湧いても、
『ムーンライト』マハーシャラ・アリの助演男優賞受賞は大納得だし、作品賞も然り。
バリー・ジェンキンス監督は、この先も発表する作品に注目していきたい監督さんになりました。

江戸と北京~18世紀の都市と暮らし

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2017年2月半ば、両国の江戸東京博物館で始まった特別展、<江戸と北京~18世紀の都市と暮らし>
北京は大好きな街だし、江戸時代も好きなので、この特別展には興味があったのだが、
両国まで行くのが億劫で、グズグズしていたら、あれよあれよと言う間に日が過ぎてしまった。
会期終了が翌日に迫った土曜日、なんとか滑り込み鑑賞。

結果から言うと、私が想像していたよりずっと充実の内容で、会期中に行けて本当に良かった!
こういう展覧会の場合、上野の東京国立博物館くらいじゃなと、
扱える展示品(特に海外からの貸し出し品)に限界があるのではないかと、
私は心のどこかで過小評価していたのであろう。

残念ながら、私がこうしてブログを書いている今現在、この展覧会はもう終わってしまっているし、
館内撮影禁止だったため、画像資料も不充分なのだが、
“こういう面白い展覧会へ行った”という自分への記録として、簡単にここに書き残しておく。

★ 江戸と北京~18世紀の都市と暮らし:概要

江戸の人口が100万人を超え、都市として発達を遂げた18世紀は、
北京が清朝の首都として最も繁栄を極めた時代。
江戸時代の鎖国下においても、長崎を窓口に、中国交易は公認され、
文物の流れが途絶えることが無かったように、日本と中国には長い文化交流の歴史あり。

この<江戸と北京~18世紀の都市と暮らし>は、
18世紀を中心に、江戸と北京の成り立ち、生活、文化等を展観し、比較する展覧会。
清朝の宮廷文化など、いわゆる“高尚な芸術”を紹介する展覧会は、これまでにも数あれど、
都市生活という観点から、江戸と北京を比較する展覧会は、意外と目新しいし、
江戸東京博物館の性質に合っていると感じる。


本展は、以下の3部構成。
第1章: 江戸・北京の城郭と治世
第2章: 江戸・北京の都市生活
第3章: 清代北京の芸術文化


出展リストを見ると、中国の品は、ごく一部が故宮博物院の物で、ほとんどは首都博物館の所蔵品。
北京の首都博物館は、2006年開館と比較的新しいこともあり、
日本人観光客があまり行かない博物館だが、実はとても面白い場所。
かの<地球の歩き方>が、3ツ星を満点とするお薦め度で、
この首都博物館をたったの1ツ星にしているのを見て、私は編集者の感性を多いに疑った。
もっとも、名所だらけの北京で、故宮、頤和園、天壇公園、長城といった超一級の観光地を3ツ星にしたら、
他を低く評価するのも致し方ないのだが…。
首都博物館も、もしアジアの他の都市に有ったら、充分3ツ星評価になっていたはず。

この首都博物館は、青銅器や陶磁器などのコレクションが立派なのだけれど、
地元北京に関する伝統的な民間風俗の展示も有名。
つまり、江戸東京博物館と似た性質も併せ持つ博物館。
そんな事からも、今回のような江戸東京博物館とのコラボ企画は、非常に合っていると感じる。

★ モンチッチ

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で、重い腰を上げ行って参りました、両国の江戸東京博物館。
会場は、建物1階の特別展示室。
まずはチケット購入。特別展のみだと1400円、常設展との共通券だと1600円。
私はこの後ヤボ用が有り、時間が読めなかったので、取り敢えず特別展のみのチケットを購入。
そして会場前まで行ったら…

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中国伝統の花嫁衣裳を身にまとった大きなモンチッチがお出迎え。
えっ、なんでまた懐かしのモンチッチ?!と不思議に思ったら、
この特別展のイメージキャラクターだったのですね。

以下、各章ごとに、ザッと記録。

★ 第1章:江戸・北京の城郭と治世

第1章では、両都市の構造や、そこを治めた将軍、皇帝にまつわる物を紹介。

入ってすぐの展示ケースのみ撮影OK。

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右の画像は、<明清北京朝陽門城樓模型>
北京城の内城9ツの門のひとつ、朝陽門の模型。
左の画像は、<正陽門正脊上銀質圧勝宝盒>。正陽門に収められた鎮具類。
正陽門は、内城9ツの門の内、取り分け重要な正門で、
現在、俗に“前門”と呼ばれ、観光客にもお馴染みの門。
内城や前門については、こちらを参照。


撮影不可になった途端、はい、出ました、大物。

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<明黃色納紗彩雲龍紋男單朝袍>
清宮ドラマでは“④(ヨン)様”の愛称でお馴染み、あの雍正帝の礼服。


そのすぐ横の<鐵嵌末石柄金桃皮鞘腰刀>も素晴らしい。

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雍正帝の第4子で、同じく“④様”である乾隆帝がコレクションしていた刀。
“天字大號”、“月刀”、“乾隆年制”の字が刻まれ、
透かし彫りになっている金属部分には、トルコ石の象嵌が施されており、鞘は南方産黄金桃の樹皮。
鞘に桃の樹皮を使うなんて、意外な気もするが、悪霊退治に効果があるとされていたらしい。

★ 第2章:江戸・北京の都市生活

第2章では、“住まう”、“商う”、“装う”、“歳時”、“育てる”、“遊ぶ”といったテーマ別に、両都市を比較。
この特別展の趣旨に最も相応しい部分で、それゆえ展示品のヴォリュームもここが一番。


目玉は、以下3幅の絵巻。

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日本からは、神田今川橋から日本橋までの賑わいを描いた<熈代勝覧>


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中国からは、康熙帝60歳の祝賀を描く<康熙六旬萬壽盛典圖>の内、
西郊の離宮から紫禁城までを描いた41~42巻。


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乾隆帝80歳の祝賀を描く<乾隆八旬萬壽慶典圖卷>の内、
西直門から紫禁城までを描く下巻。


いずれも長---い絵巻なので上に挙げた画像は、そのごくごく一部。
中国の2作品が、祝賀の様子を描いているのに対し、
日本の<熈代勝覧>は、江戸の日常の賑わいを描いており、
日本橋に近付けば近付くほど、人の数が多くなっている。
当時の日本橋が、江戸の玄関口で、交通や商業の中心だったのが、見て取れる。
<乾隆八旬萬壽慶典圖卷>は、緻密さと色の鮮やかさとビックリ。
象も何頭か描かれてるのだが、その象が、伊藤若冲が描く象にそっくり。
若冲は、子供の頃に一度象を見たことがあると言い伝えられているが、
記憶もおぼろげな珍獣を、こういう中国の絵などを参考に、イメージして、描いていたのかも知れない。


これら絵巻の中にも描かれている行商人が使っていた背負い箱、駕籠、看板といった品々は、
実物も見ることができる。

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昔のお金・元宝を抱いたおサルさん<木猴>は、帽子屋の看板。
清代の北京では、招き猫ならぬ、招き猿?
おサルのモチーフを帽子屋の看板にしていた例は他にも有るらしい。
なぜ“おサル=帽子屋”なのかは不明。


“装う”のコーナーで目を引くのは(↓)こちら。

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<女性婚服> ピンク色が可愛らしい女性の婚礼衣装。
本展イメージキャラクターのモンチッチが着ている服も、これを元にデザインしたのであろう。
一緒に、金属製の長ーい付け爪<金鏨蓮花紋金指甲套>や、
満州族女性版ハイヒール<盆底靴>も展示。いずれも、清宮ドラマニアにはお馴染みの品ですよね。

清宮ドラマでお馴染みと言えば、男性が親指に付けている指輪・扳指と
それを収納するケース・扳指盒の展示もある。扳指については、こちらを参照。
内側に乾隆帝御題詩を刻んだ玉製の<黃玉刻詩扳指扳指>という扳指自体は、珍しい物ではないのだが、
<繡花小件黃>と題された扳指収納ケース・扳指盒は、
私がこれまでに見た物の大半が金属製だったのに対し、
刺繍を施した女性的なデザインの物だったので、可愛らしくて、印象に残った。



“育てる”のコーナーで気になったのは<抓周用品一組>というもの。

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首都博物館では<紅木抓周盤>の名で展示しているみたい。
これだけパッと見せられても、何だかよく分からないお道具箱だが、“抓周”という儀式に使う物。
中に、針、糸、ハサミ、お金、本、筆、スプーン、そろばん等を入れた箱で、
一歳の誕生日の時、子供がこの中から何を掴むかで、その子の将来を占うという。
うーん、それで一生が決まってしまったら、哀しいかもぉ…。
日本にも、“選び取り”という似た儀式をやる地方があるんですってね。

このコーナーの江戸の方では、お食い初め用のお椀やお膳が気になった。
気になったのは、その品自体ではなく、説明書き。
漆のお椀は、男児用には全て朱塗りの物、女児用には内側だけ朱の物を用意すると説明されていたのだ。
日本人をずーーとやってきて、“男児=全朱”、“女児=朱&黒”なんて、知らなかった…!
大人は別に何色を使っても良いのだろうか。



“学ぶ”のコーナーで、忘れてはならない中国らしい制度と言えば科挙。
このコーナーでは、貴州畢節出身の張鳳枝という人物の科挙最終試験答案用紙<殿試卷>で、
その達筆ぶりに驚かされる。頭の良し悪しのみならず、字の上手い下手も重要なのでしょう。
しかし、その答案用紙以上にビックリなのが<夾帶>

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“夾帶”とは、中国語でカンニングペーパーのこと。
プチサイズの巻物に、虫眼鏡が無いと読めないような細かい字がビッシリ!
極細ペンなんて無い時代に、これを筆で書いたんでしょ?!もの凄いテクニック!
しかも、あんなにビッシリだったら、どこに何が書かれているか、普通は分からなくなるはず。
それが分かるのだから、かなりの記憶力。
カンニングに力を注ぐより、普通に勉強をした方が、合格への道が近いという気がしなくもない。

このコーナー、江戸の方の説明によると、日本にも科挙に似た“学問吟味”という制度が有ったのだとか。
学校の日本史の授業で習いましたっけ?お恥ずかしいながら、私、知りませんでした…(汗)。
実施されたのは、1792年から1868年の間に計19回。
受かると、仕事をする上で何らかのメリットは有っても、直接登用には繋がらなかったという。
それが、科挙に似た学問吟味が日本に根付かなかった理由の一つかもね。

★ 第3章:清代北京の芸術文化

最後の章では、緻密で華麗な北京の宮廷芸術や、江戸の知識人が憧れた北京の文人文化、
また民間の工芸品や優れた職人技を紹介。

大きく取り上げられているのは、清代の画家・沈銓こと沈南蘋(1682-?)。
中国絵画好きで知られる第8代将軍・徳川吉宗に招聘され、1731年に来日し、2年近く長崎に滞在し、
絵画の技法を伝え、江戸時代の日本の画家に多大な影響を与えた人物。

(↓)こちらは、その沈銓の作品<芝鹿 圖>

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濃く色付けした下地に、色や輪郭をボカす手法が特徴的。
ふんわりと浮いているようで、今にもこちらに飛び出してきそう。


このコーナーで特に気に入ったには、(↓)こちらの<博爾濟特式彩繡地藏經典>

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この画像ではまったく分からないだろうが、白いシルク地に、赤い糸で経文を刺繍した地蔵経本。
あまりにも刺繍が緻密すぎて、普通の印刷物にしか見えないから、
皆さん、この展示ケースをスルーしてしまっていた。
地の布のみならず、糸もシルク糸なのであろう。赤い文字に光沢があって美しい。

★ ミュージアムショップ

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見学のあとは、ミュージアムショップへ。
ポストカード、クリアファイル、マスキングテープといった定番商品は勿論のこと、
中国の物産の販売や、実演コーナーもあり。
中国風婚礼衣装のモンチッチは、ここでも様々なグッズになって、売られている。

目に飛び込んできたのは、(↓)こちら。

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最近、北京の故宮博物院が“萌え路線”に走り、
萌えグッズの販売で、結構な売り上げを出しているという話は、記事で読んで知っていた。
おおぉ~、これだったか。実物を見たのは、初めて。

まぁ、これだったら北京へ行った時に買えば良いと思い、スルーしたのだが、
私からこの展覧会を薦められ、会期最終日の本日に滑り込みで観に行った母が、
やはり萌え皇帝グッズに食い付き、メモ帳を2冊購入してきて、私に一冊くれるという。

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そんな訳で、千秋風ポーズの康熙帝ではなく、JKっぽい決めポーズの雍正帝の方を頂戴いたしました。

★ ついでの常設展

特別展を約3時間じっくり見ても、ヤボ用までまだちょっと時間があったので、ついでに常設展にも立ち寄る。
通常、常設展のみのチケットは600円なのだが、
私は、すでに払った特別展1400円と、特別展&常設展共通券1600円の差額200円を払うだけで、
チケットを再発行してもらえた。親切!


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常設展では、大きく江戸ゾーンと、明治維新後の東京ゾーンに分け、この街の歴史や文化を紹介。
(常設展は、撮影OK。フラッシュや三脚の使用は駄目。)

ここは、ジオラマ好きにはタマラないスポットですわ。

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実際、ここに居座り過ぎて、時間が無くなった…。


他も軽く触れておくと…

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<助六>の舞台の再現。


中村座前では、お江戸風マジック“和妻”のパフォーマンス。

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大勢の外国人来場者が多い博物館なので、ちゃんと英語通訳付き。


東京ゾーンの方からは、例えば(↓)こちら。

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高度成長期1962年頃、住宅不足解消のために建設されたひばりが丘団地の一室を復元。
テレビ、冷蔵庫、炊飯器は勿論の事、ミキサー、トースター、そしてバヤリースオレンジまで。
うわ、昭和っぽ~い。『Always三丁目の夕日』の世界。


あと、駕籠に乗って、大名気分を味わったり、
15キロもある纏(まとい)を持ち上げ、火消し気分も味わってみた。




話戻って、特別展<江戸と北京>。
仮に美術や工芸に興味の無い人でも、大陸の清宮ドラマニアなら必見!の楽しい展覧会であった。
…なんて言ったところで、本日で終わってしまったので、お薦めしたところで無駄なのだが。
今回逃した方々には、北京の首都博物館をお勧めいたします。
大量のコレクションを有しているし、
江戸東京博物館では禁止だった写真撮影も、首都博物館なら撮り放題なので。
ただ、首都博物館では、一点一点の展示品に対する説明がほとんど無い。
今回、江戸東京博物館では、丁寧な説明書きが添えられていたため、
それぞれの展示品や、その背景にある文化や歴史まで、とてもよく理解できた。
本当に楽しかったわ。ありがとう、江戸東京博物館!


◆◇◆ 江戸と北京~18世紀の都市と暮らし 
Edo and beijing Cities and Urban Life in the 18th Century ◆◇◆

会場:江戸東京博物館 1階特別展示室

会期:2017年2月18日(土曜)~4月9日(日曜)

特別展専用券:1400円  特別展・常設展共通券:1600円


江戸東京博物館は、2017年10月1日から2018年3月31日まで改修工事のため閉館。

北京2016:無用生活空間 WUYONG

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中国アートシーンの今を取り上げ、旅の備忘録を更新。


私が北京を好きな理由の一つは、
そこがアジア屈指、…いや全世界レベルで考えても、他に類を見ないアート・シティだから。
北京のアート・スポットというと、俗に“798艺术区(798藝術區)”と呼ばれる巨大なアート集積地、
大山子艺术区(大山子藝術區)が商業化の批判もある反面、今や外国人観光客の間でも大層な人気。
しかし、それ以外にもアート好きにはタマラないスポットは色々ある。

今回の旅行では、そんなアート・スポットの一つ、77文创园(77文創園)の中に、
2014年オープンした无用生活空间(無用生活空間)へ。

★ 無用と馬可

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そもそも“無用 Wuyong”とは。
“無用”は、1971年、長春生まれの中国人女性デザイナー馬可(マー・コー/マー・クー)による服飾ブランド。



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私がこの馬可を知ったのは、今から十年近く前に、
彼女を追った賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督のドキュメンタリー映画、
その名もズバリ『無用』(2007年)を観たから。


その後もずっと、馬可も無用も、日本ではほぼ無名の存在であったはずだが、
2015年頃、“馬可”、“馬可 デザイナー”といった検索で、当ブログにお越しになる方が、突如ドッと増えた。
不思議に思ったら、朝日新聞の週末別冊版<be>の“フロントランナー”のコーナーで
彼女を取り上げたからであった。

日本のメディアが馬可に注目するようになったのは、
習近平の妻、つまり中国のファーストレディである彭麗媛(ほう・れいえん)のお召し物が現地で話題となり、
それをデザインしているのが、この馬可であると報道されたため。
日本と限らず、中国でも、“無用のデザイナー”としてではなく、“彭麗媛御用デザイナー”として
馬可を知った人は意外と多いのではないかと想像する。
(特に高齢者とか、ファッションやデザインに興味の薄い層は。)

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元々歌手の彭麗媛は、“撮られ慣れ”、“注目され慣れ”していることもあり、堂々としており、
確かに、中高年女性のお手本になるような華やかで上品な着こなし。

但し、このようなお召し物は、馬可が以前から面識のあった彭麗媛からの依頼で、
彼女のため限定でデザインしている、本来の馬可のテイストとは180度異なる物で、販売はしていない。

“本来の馬可テイスト”というのは、上の画像で馬可自身が身にまとっているような服。
主に綿、麻、ウールといった天然素材を、植物由来の天然の染料で染め上げた生地を使用。
少数民族などに伝わる伝統の“手仕事”にもこだわってる。
中国の急発展の陰で、“無用=役に立たない”と切り捨てられてきた物たちに再度光を当て、
反物質主義的な服を作り続けているのが、馬可なわけ。


一般的なお洋服以外にも、例えば…

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こちら、台湾出身の世界的コレオグラファー・林懷民(リン・フワイミン)率いる
コンテンポラリー・ダンス・カンパニー雲門舞集(クラウド・ゲイト)のために、馬可が手掛けた舞台衣装。
こういう方が、彭麗媛のお召し物より、馬可の特徴がより顕著に表現されていますよね。

★ 無用生活空間

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そんな馬可が、2014年、北京の77文創園にオープンしたのが无用生活空间(無用生活空間)

77文創園は、“美术馆后街(美術館の後ろの通り)”という住所を見ても分かるように、
中国美术馆(中國美術館)のちょうど後方に広がる場所に位置し、
旅行者にとっては、郊外にある798などより、ずっと便利で行き易いアートスポット。
地下鉄5号線/6号線の东西(東西)駅から徒歩20分程度。
私は試していないが、地下鉄6号線・南锣鼓巷(南羅鼓巷)駅からも徒歩圏内と見受ける。



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無用生活空間は、77文創園のメインゲートをくぐり、すぐ左側の建物。
元々印刷工場だった1500㎡の空間は、大きく“展厅(展廳)”“家园(家園)”という2ツのエリアから成る。
“展廳”は、伝統の手仕事に関係する企画展を行うアートギャラリーのスペースで、入場自由、見学無料。
一方“家園”は、馬可が提案する無用の精神が詰め込まれた、まんま“家”である。こちらは、要予約。

★ 無用生活空間:家園

なにせ情報が少なく、システムをよく理解していなかったため、
「明日の空いた時間にでもチラッと寄ろうかしら」くらいに軽く考え、思い立ちでホテルに予約を依頼。
そんな私は甘かった…。
時期、曜日など様々な事情によって変わってくるだろうけれど、その時は結構先約が入っていたらしく、
私は希望の日時に予約できず…。
まぁ、それでも、北京滞在中に行けたから良かったが、旅の予定はちょっと狂わされてしまった。
きちんと予定を立てたい人は、念の為、北京到着早々に予約を入れるべし。


とにかく、予約は受けてもらえたので、ある日の夕方、指定の時間に無用生活空間に到着し、扉を開けると、
中のスタッフが「予約の方ですよね?」とすぐに分かってくれ、早速“家園”見学がスタート。
ヒールの靴は厳禁らしく、まずは、用意されたスリッパに履き替え。
(脱いだ自分の靴はロッカーに入れるようになっている。)

見学の際には、一人のスタッフが随行し、内部の説明を行う。
ホテルが「うちの外国人宿泊客が見学を希望」と予約していたので、
私のためには、気を利かせ、英語対応できる若い女性スタッフが待っていてくれた。
とは言うものの、外国人見学者はまだ少ないらしく、
「どこでここの事を知ったの?」とか、「馬可を知っているの?」などと色々質問された。
私個人は、賈樟柯監督のドキュメンタリーで馬可を知った事、
彭麗媛のデザイナーとして馬可を知る人が最近日本でもぼちぼち居る事などを話したら、
彼女は「意外」と軽く驚いていた。
逆に私が驚いたのは、このスタッフの女の子が彭麗媛を歌手だと知らなかったこと。
私が、彭麗媛を誰か別の女性と勘違いしていると思ったらしく、
「いや、彭麗媛は歌手じゃなくて、国家主席の妻」と念を押された。
日本では、“国民的歌手”と紹介されることの多い彭麗媛だが、
現地の中国では、国家主席の妻が元歌手だと知らない若い子がもはや増えているのでしょうか…?


それはそうと、肝心の無用生活空間・家園見学。
内部での写真撮影は禁止されてるので、ここには馬可のインタヴュ記事からお借りした画像を。

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内部は、メディテーションルーム、リビング、キッチン、バスルーム、書斎、ベッドルーム、子供部屋等々で構成。
室内に配置されているのは、天然素材や手仕事で作られた物、古い木材を再利用した家具などばかり。
服のみならず、生活全般でも、馬可の理念を盛り込んだ空間となってる。

展示されている物の多くは購入可能。
値段は敢えて聞かなかったけれど、それなりの額と思われる。
旅行者の場合、仮にお金を払う気が有っても、重い家具などは買えませんよね…?
それでも、何か記念に欲しいなら、手作り石鹸がお手軽で良いかも。
よく覚えていないけれど、それなら確か一個千円くらいだったような…。
私は別に石鹼に興味が無いので買わなかったが(しつこいセールスなどは無いので御心配なく)、
このような場所を無料で開放して、丁寧なガイドまで付けてくれるのだから、
見学料代わりに石鹸一個くらい買うべきだったかも知れないと、あとで少々悪い気がした。


こうして、家園の見学は30~40分くらいで終了。

★ 無用生活空間:展廳

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続いて、“展廳”の見学。
こちらは、誰に付き添われることもなく、一人で自由気ままに見学。写真撮影もOK。
展示は基本的に半年に一度入れ替え。
この時は、“撐起頭上一片天- 傳統手作油紙傘展”と題し、
油紙を使った伝統の傘の展覧会が開催されていた。キュレーターはもちろん馬可。
薄暗いスペースに、お花が咲いたように、色とりどりの傘が浮かぶ光景は、幻想的。
中国は勿論のこと、他にも台湾、ベトナム、日本の傘も。



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説明によると、中国の油紙の傘が日本に伝来したのは唐の時代で、
日本独特の審美眼で改良され、多種多様な“和傘”に発展、またの名は“唐傘”。
江戸時代には、広く民間で使われるようになるけれど、明治維新以降、次第に洋傘に取って代わられていく。
和傘は大きく分類し、野外の茶会・野点で使われる“野点傘”、踊りの時に使う華やかな“舞踊傘”、
実用性の高い“番傘”、傘の中心からヘビの目のように円形に模様を施した“蛇の目傘”の4種類。
一般的に中国の物より長め、内側の竹骨はより細くより密で、表面には漆塗りが施されている。
糊はタピオカなどが使用され、最後は表面に亜麻仁油を塗り、仕上げられる。
現在、日本製の和傘は減少し、岐阜、京都、金沢、淀江、松山などのごく限られた工房で作られているとのこと。

日本に油紙傘が伝わったのは唐の時代だが、お隣・台湾はと言うと、もっと後らしい。
客家人が大陸の生活文化を続々と台湾へ持ち込み始めたのは、清朝乾隆元年から。
油紙傘の製法もその頃台湾へ伝わり、どんどんと発展。
台湾の油紙傘の主要産地は、美濃、屏東、南投。中でも、台湾油紙傘の故郷と呼べるのは美濃。
美濃人には、広東の梅州、潮州に起源をもつ人が多いため、伝えられた技術も広東式。
美濃の客家人が開いた傘工房に、“廣榮興”、“廣興”、“廣進勝”といったように、
“廣(広)”の字を冠しているものが多いのも、彼らが故郷に馳せる想いゆえ。
また、油紙傘が根付いている美濃では、客家の娘が結婚する時、
“紙”と“子”の発音が近いことから、子宝に恵まれることを願い、油紙傘を嫁入り道具にする風習もあり。


当の大陸では、主要産地はいくつか有るが、この展示で特に取り上げているのは湖南。
さらに細かく言うと、湖南の中でも、約6百年の歴史がある石鼓の油紙傘。
石鼓油紙傘は、取っ手に地元の水竹、骨に南竹を使用し、
全体には梅、蘭、竹、菊、カササギ、鶴などを題材にした中国画が自由に描かれている物多し。
この伝統を守ろうという動きがあるのだろうか。
2002年、石鼓傘を伝承する第一人者・趙文超が、実用性より装飾に重きを置いた工芸傘の制作を開始。
2015年からは、現地政府も、油紙傘を展示するギャラリーなどの設立計画を進めているそう。
30畝(≒2ヘクタール)の敷地内に随分立派な油紙傘工業区ができるみたい。


で、(↓)こちら、傘のパーツや、制作に使う素材の展示。

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この企画展とは直接関係の無い(↓)このような絵も。

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ここを訪れた美術学校生が描いた絵が素敵だったので、そのままここに残したそう。
本当に素敵な絵だし、美術好きが集える雰囲気のよいサロン的な空間になっているのが、また良いですね。



“展廳”の展示は、半年に一度入れ替えが行われる。
展示室はひとつだけで、展示品の数は決して多くはないけれど、
それらは馬可のこだわりや理念が感じられる品々で、そこに流れるゆったりした雰囲気もとても心地よい。
そうそう、この無用生活空間では、展示品の説明文なども全て繁体の漢字で書かれている。
そういう細かい部分にも、馬可のこだわりや美意識が感じられます。

とにかく、せっかく無用生活空間を訪れるなら、“展廳”のみならず、予約を入れて“家園”も見るべし。
英語でのガイドを希望するなら、予約時にその旨を伝えましょう。対応してくれるはず。



◆◇◆ 无用生活空间 Wuyong Living Space ◆◇◆
北京市 东城区 美术馆后街 77号 文创园1-101

 010-5753 8089

 10:00~20:00

 入場無料(但し、“家園”の見学には事前の予約が必要)

地下鉄5号線/6号線の东西(東西)駅から徒歩約20分

映画『T2 トレインスポッティング』

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【2017年/イギリス/117min.】
スコットランド・エディンバラ。
20年前、仲間たちを裏切り、金を独り占めして、アムステルダムに逃亡したマーク・レントンは、
久し振りに故郷のこの街の土を踏む。
実家で迎えてくれた父からは、マークの不在中、母が他界したことを聞かされる。
古い仲間の内、お人好しだったスパッドを訪ねると、なんと自殺を試みている最中。
なんとかそれを食い止めたものの、当のスパッドは相変わらずどっぷりヘロイン中毒で、人生を悲観。
メンタルを変えろ、他に夢中になれる事を探せ!と彼を励ますマーク。
そんなスパッドからの勧めもあり、マークは次にサイモンを訪ねる。
叔母からパブの経営を引き継いだサイモンだが、昔と同じようにコカインを常用し、
若いガールフレンドのヴェロニカと組んで、恐喝で荒稼ぎ。
マークの裏切り行為は、20年経っても、忘れることなく、二人の再会には不穏な空気が流れる。

その頃、あのベグビーは、まだ塀の中。
限定的責任能力を主張し、仮出所させろ!と弁護士に詰め寄るも、事は上手く運ばず。
遂には、自ら故意に怪我を負い、病院に入り、そこからまんまと脱走に成功。
マークもスパッドもサイモンも、あの危険な男ベグビーが野に放たれたことなど知る由も無く…。



ダニー・ボイル監督、1996年のヒット作『トレインスポッティング』の続編が、
まさか20年もの時を経て、今になって制作されるとは!

大ヒットした前作は、アーヴィン・ウェルシュの同名小説<トレインスポッティング>の映画化。
脚本を手掛けたのは、多くのダニー・ボイル監督作品の脚本を担当するジョン・ホッジ。
この新作もまた、アーヴィン・ウェルシュが2002年に発表した小説<ポルノ>をベースにしており、
脚本を担当したのはジョン・ホッジ。
私は未読なので、断言は出来ないが、
その原作小説<ポルノ>が、そもそも<トレインスポッティング>の9年後を描いた続編らしい。
タイトルが<ポルノ>なのは、前作の面々が、今度はポルノ映画を撮って儲けようゼ!という物語だからみたい。



ここでまず、1996年の『トレインスポッティング』を簡単におさらい。

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舞台はスコットランド・エディンバラ。
スパッド、シック・ボーイ、ベグビーというジャンキー仲間とつるみ、怠惰な生活を送っていた青年レントンが、
何度目かの挑戦で、ようやく薬断ちに成功し、ロンドンでまともに不動産屋の職に就くが、
古い仲間たちから、上物のヘロインを売ってボロ儲けしようという話を持ち掛けられ、これに便乗。
作戦は成功し、4人は16000ポンドもの大金を手にするが、
祝賀会の翌朝、まだ皆が眠っている隙に、レントンが金の入ったボストンバッグを一人で持ち逃げ。
人のいいスパッドにだけ、4000ポンドを残し、姿をくらます。

この前作『トレインスポッティング』は…

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古田新太が朝ドラ『あまちゃん』でのあのお馴染みの腕組みポーズの参考にしたと言うほど、
ミニシアターブームに沸く日本でヒットし、サブカルチャーに影響を与えた作品。



で、大金の入ったボストンバッグを抱え逃走するレントンのウッハウハの笑顔で幕を下ろしたそんな前作。
続編小説では、9年後を描いているそうだが、映画で描かれているのは、20年後。
映画が幕を上げて早々、その後、レントンはオランダ・アムステルダムに高跳びしていたことが判明。

この続編は、46歳になったマーク・レントン(呼び名は“レントン・ボーイ”から“マーク”へ)が、
故郷エディンバラへ戻り、スパッドや、“シック・ボーイ”ことサイモンと久し振りに再会し、
最初こそ気マズイ雰囲気になるが、徐々に絆を取り戻し、
サイモンが経営するパブを改装し、一緒に風俗店をやろう!と計画が動きだした矢先、
服役中のベグビーが脱走し、20年前に金を持ち逃げしたマークの所在を執拗に探り始めたため、
事態が暗転していく様子を描く、老いてなお残念であり続ける男たちの2度目の青春物語(?)。

前作を観ている者にとって、まず気になるのは、
あんなにハチャメチャだった青年たちが、どういうオトナになり、今何をしているのかという点。
20年前、アムステルダムに逃げたマーク・レントンは、
奪ったお金で、会計士の講習に通い、小さな会社に就職。
オランダ人女性と結婚し、ジェームズとローラという一男一女にも恵まれ、平穏な暮らしを送っている。
一方、マークに裏切られ、エディンバラに残された3人は、スパッドがヘロイン中毒、
サイモンは表向きパブの経営者だが、売春や恐喝で稼ぐヘロイン常用者、ベグビーは20年前から収監中。
仲間を裏切りお金を得た者と、裏切られお金を得られなかった者で、明暗クッキリ。

ところが、後になって、マークが、自分の人生を“盛って”旧友に語っていたことが判明。
実際のマークには、子供はいない。急性冠不全症にかかった上、
勤めていた会社が合併したことで、大した学歴の無い彼はリストラの対象。
故郷に錦を飾りたがるのは万国共通で、マークも自ら飛び出した外の世界で上手くやっていると、
昔の仲間に自分を大きく見せたかったのであろう。でも、本当の事を告白し、気が楽になり、
仲間の方も、マークが未だ残念なマークでいることに、ザマー見ろ!と、
嘲りとも安堵ともとれる気持ちが湧いてきて、両者の間に連帯感が復活。
そこで、マークは、すでに関係がギクシャクしていた妻と離婚し、エディンバラに残ることを決意。

で、前述ののように、原作小説では、サイモンを中心に、ポルノ映画の制作に乗り出すそうだが、
映画では、サイモンが叔母から譲り受け経営しているパブを改装し、風俗店を開店しようとする。
前作からの9年後を描く原作小説とは異なり、映画では20年も後に設定変更したのは、
そこにダニー・ボイル監督の意図した何かがあるのだろうか…?

私が判ったのは、その20年の間に、世の中がガラリと変わったという事。
例えば、作品前半、マークが20年振りに故郷の土を踏むシーン。
「エディンバラへようこそ!」とお出迎えをするキャンペーンガールに、
マークが出身地を尋ねると、返ってきた答えは「スロヴェニア」。
サイモンが肩入れしている若いガールフレンドも、
原作小説だとイギリス人女子大生だが、映画ではブルガリア人。
この20年の間に移民がドッと増えた現実が、映画の中でも分かる。
そういう移民問題も一つの要因となり、EU離脱が決まったイギリスだが、
その選挙で、スコットランドは過半数がEU残留支持。
自分たちの意見が通らなかったスコットランドでは、イギリスからの独立熱が、益々高まったとも言われている。

そこで本作品に登場するのが、、
その風潮に逆らって世間から取り残された連合王国統一派の人々が集まるパブ。
マークとサイモンは久し振りの“お仕事”で、
そのパブに集う人々のバッグやポケットから次々とクレジットカードを盗む。
盗むなら現金でしょー!クレジットカードなんか盗んでも、簡単に使えるわけないじゃない!と思ったら、
マークとサイモンは、それらを使い、いとも簡単に、ATMから現金を引き出すのだ。
なぜそんな事が可能なのかと言うと、
統一派の人々は、カトリックのジェームズⅡ世率いるアイルランド軍と、
プロテスタントのウィリアムⅢ世率いるイングランド軍が戦い、
イングランド軍の勝利で、イングランド王位を決定的にしたボイン川の戦いが起きた“1690”年を、
クレジットカードの暗証番号に設定しているの、…皆がみんな。
「人に悟られ易い数字を暗証番号に使うのはやめましょう!」とよく言うのにねぇ。
ここ、政治色が非常に濃く、ブラックな笑いを誘うシーン。


あと、印象に残った部分の一つは、走るシーン。
前作『トレインスポッティング』や、日本のSABU監督初期作品には、“走る映画”というイメージがある。
登場人物が、とにかく走って、走って、走りまくっている印象。
この続編では、登場人物たちもオッサン化したので(しかも、若い頃から薬漬けなので、身体は恐らくボロボロ)、
さすがにもう走れないだろうと思っていたら…

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続編もやはり“走る映画”であった。不健康に生きてきた中年でも、逃げ足なら速いようだ。






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出演は、オランダから帰郷したマーク・レントンにユアン・マクレガー
ヘロイン中毒で、妻子にも愛想をつかされたダニエル“スパッド”マーフィーにユエン・ブレムナー
パブを経営しながら、ユスリで稼ぐサイモン“シックボーイ”ウィリアムソンにジョニー・リー・ミラー
そして、20年前から収監されっ放しのフランシス“フランコ”ベグビーにロバート・カーライル

主要登場人物を演じた4人の俳優が、20年の時を経て、そのまんま再集結!
一番若いジョニー・リー・ミラーで1972年生まれの44歳、
一番年長のロバート・カーライルは1961年生まれの55歳。
昨今、80歳、90歳まで生きる人なんてザラで、40代、50代なんて、バリバリの働き盛りではあるけれど、
その一方、病気や事故でポックリ逝っちゃう人もいるし、世知辛い芸能界を去って行く人も多いから、
この世代の俳優4人が誰も欠けずに、20年後に再集結するのは、ほぼ奇跡にも思える。

前作がヒットした後、一番出世したのは、間違いなくユアン・マクレガー。
今やハリウッド俳優で、ずっと表舞台に出続けている彼は、
徐々に年を重ねていく過程を見続けているので、一気に老けたという印象は無い。
でも、ハリウッド俳優として見慣れてしまった分、近年はハッとさせられることも少なくなってしまった。
そうしたら、この『T2 トレインスポッティング』よ。
ハリウッド大作で見るユアン・マクレガーより、
原点回帰というか、ホームグラウンドでお馬鹿な40代を演じている彼の方が、ずっと魅力的。
いや、正確に言うと、本作品でも、最初の内は、特別良いとは思わなかったのだが、徐々に良く見えてきて、
最後の最後でガツンとやられた。子供の頃からずっと変わらないままの実家の自室で、レコードに針を落とし、
流れだしたイギー・ポップの<Lust For Life>に合わせ、46のオッサンが一人でヨレッと踊るラストシーン。
このラストシーン、本当にシビレましたワ。


ユアン・マクレガーとは逆で、変化に一番驚かされたのは、スパッド役のユエン・ブレムナー。
近年の出演作もボチボチ観ているはずなのだけれど、彼、こんなでしたっけ?
もしかして、今回、役作りのために激痩せした?中高年になると、きれいに痩せないというが、あれは本当だ。
ユエン・ブレムナーも、顔がシワシワで、オジさんを通り越して、おじいさんみたい。
そのやつれた老けっぷりが、“長年藥漬けで体ボロボロの中年ジャンキー”の雰囲気にぴったり。
中身は相変わらずのお人好し。中年になっても、スパッドは憎めない人。


4人の中で一番の美男子だった“シックボーイ”サイモンは、20年後も一番の美中年。
そんな彼にも、老いはやって来ているようで、
上部から捉えた映像だと、頭頂部の髪が淋しくなっていることが分かる。
なのに、ブロンドを維持するため、未だにマメにヘアダイを欠かさないサイモン。
「毛根痛めるから、いい加減やめなヨ」と助言したくなった。


ロバート・カーライルを見るのは久し振り。
実際4人の中で最年長なので、オッサン化は一番進んでいるが、黙っていればナイス・ミドル。
でも中身は20年前のベグビーのまんまで…

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相変わらずのキレ芸(笑)。あの頃、吠えていた君は、今もやっぱり吠えていた。
もうワケ分かんないの、このオジちゃん。自分が人生の落伍者なのに、
ちゃんと大学でホテル経営を学ぶ息子フランクJr.に、自分と同じ轍を踏まそうとするの。
(Jr.も素直に、父親の悪行に付き合ってあげるのだが、
結局「父さん、ゴメン。僕、そういうのにやっぱり興味がもてない」と大学の勉強に戻ってしまう。)





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女性陣もちょっと見ておくと、
サイモンが想いを寄せる若いブルガリア娘ヴェロニカ・コヴァチにアンジェラ・ネディヤコバ
弁護士のダイアン・コールストンにケリー・マクドナルド等々。

アンジェラ・ネディヤコバは、今回大抜擢された、ブルガリア・ソフィア出身の新進女優らしい。

いや、それより、弁護士ダイアン。
そう、前作で、マーク・レントンが一目惚れした色っぽい美女で、関係を持った後、まだ女子高生だったと判明し、
さすがにマズイと動揺してしまった、あの小悪魔ダイアン。

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当時から冷静で、マークに「ジギー・ポップなんかに夢中になって、部屋に籠っているようじゃ駄目」
→マーク「いや、“ジギー・ポップ”じゃなくて“イギー・ポップ”だから」
→ダイアン「どうせ死んでいる人なんだから、同じ」
→マーク「いやいや、死んでいないよ。最近またコンサートをやったばかり」
→ダイアン「とにかく、前に進まなきゃ」と言っていた彼女は、クズどもとは違い、弁護士になっていたのですね。





本作品は楽しみにしていた反面、失望しそうな予感がチラついていたのも事実。
昨今、続編やリメイクが激増しているのは、映画になりそうなオイシイねたが切れしてしまったため、
そこそこ話題になることが見込める過去のヒット作に頼る傾向があるように見受ける。
『トレインスポッティング』は、“若さゆえ”の感覚が魅力で、
ユースカルチャーに多大な影響を与えた作品なのに、
オッサンになったあのジャンキーたちを今さら再集結させたところで、
過去の栄光に泥を塗るだけになるのでは…、との懸念もチラホラ。
私は、オジちゃん、オバちゃんになったかつての人気アイドルたちが、
茶髪にしたり、ミニスカートを穿いて集結する“同窓会コンサート”なども、冷めた目で見てしまう人間なので。
そんな複雑な気分で、この『T2 トレインスポッティング』も、恐る恐る鑑賞したけれど、
いやぁ~、これは、“続編に名作(ほぼ)ナシ”の定説を覆す面白さ!珍しく良くできた続編。
20年の時を経て、世の中様変わりしても、クズはやっぱりクズだった!というだけの作品が、
なぜこんなにも面白く、愛おしいのだか。
長い時間を置き、監督も出演者も年を重ねた場合、
ノスタルジーか、説教臭くなるかのどちらかに走りそうなところ、
この『T2 トレインスポッティング』は、それらどちらにも陥っていないのが、勝因か。

映画館には、前作公開時に、まだ生まれてもいなかったような若い子が意外にも多く、驚いた。
伝え聞いた“伝説の映画”のその後に触れてみたかったり、90年代カルチャーへの憧れがあるの?
そういう子たちが、これを観て、どう感じるのかは、分からないけれど、
前作をリアルタイムで観て、何らかの影響を受けた人たちなら、楽しめる確率は高いと思う。
若い子たちも、ネットやDVDで前作を鑑賞済みなのかも知れないが、
リアルタイムで観て、肌で捉えた“時代感”のような物は、永遠に分からないわよ、きっと。
続編の『T2 トレインスポッティング』に、より興奮できるのは、早く生まれた者たちの特権ヨ、ふふふ。


最後に、イギー・ポップの<Lust For Life>を。


『トレインスポッティング』と言えばこの曲!って感じ。
(MVの中で、前作『トレインスポッティング』の映像も見られます。)

桜の季節の和菓子5種(+テレビとか日々の雑記諸々)

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近年、北京の故宮が、萌え路線に転じ、萌えグッズの販売で、結構な稼ぎを叩き出していること、
江戸東京博物館の特別展<江戸と北京>でも、それらを少々取り扱い、
私も萌え雍正のメモ帳を入手したことは、一週間前、こちらにチラリと記した通り。

ついでなので、ここに萌え皇帝を、いくつか挙げておく。
左から、清朝歴代皇帝を即位順に…

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康熙帝、雍正帝、乾隆帝、道光帝、同治帝。
弱々しい同治帝も、クローン増殖させると、なぜこんなに可愛いくなるのでしょうか。


他の商品もちょっと見ておくと、

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今やミュージアムショップの人気定番商品、マスキングテープは種類も豊富。


(↓)こちらも定番。

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iphone6用スマートフォンケース。


さらに…

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そんなお電話を支えてくれる明の錦衣衛クンも(若干態度が横柄)。
色々考えるものですね~。感心するワ。




さて、テレビはあまり観たいものが無く、要録画の物はちょっとだけ。

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日曜の朝に放送していたNHK BSプレミアムの『桃源紀行』が、
いつの間にか土曜の朝にお引っ越しをしていた。
お引っ越し後、私が初めて観ようとしてるのは、2017年4月22日(土曜)の放送。
取り上げるのは、福建省の漳州(しょう)。
客家の人々の独特な建築で、俗に“福建土樓”と呼ばれる、土樓群で有名な所です。



あと、再放送番組にはなるが、以前偶然に観て、衝撃を受けた番組が、
日は遡り、4月20日(木曜)、NHK BS1で、再び放送される。
『捨てられる養子たち~Disposable Children』というフランスが制作した
アメリカの養子縁組事情を追った2016年のドキュメンタリーがそれ。

アメリカは、アンジェリーナ・ジョリーのように、肌の色の違う子たちを何人も引き取って育てている
比較的裕福な人が多いように見受ける。
ただ、養父母が離婚したり、事業に失敗し、経済的に厳しくなった場合など、
養子たちはどうなるのだろうと、以前から疑問に思っていた。
そうしたら、案の定問題があるようで、里親制度の解消が簡単なアメリカでは、
毎年里子になる10万人の内、2万5千人もが、まるでペットのように捨てられているという。
ネットやカタログで、そういう子たちを“転売”するシステムまであるみたい。
気軽にポチッと注文し、気に入らなければ返品できるネットショッピング感覚で、もう唖然。
こういう言い方は語弊があるかも知れないが、面白いドキュメンタリーであった。
昨秋に観て、衝撃を受けた割りに、忘れてしまっているので、この再放送で再見。




ところで、明日は気温が26度の夏日になるという。
東京の桜も、今年はこれで見納めになるであろう。
和菓子屋さんの店頭でも、そろそろ桜餅から柏餅に、商品が入れ替わりつつある。
今年食べた桜餅については、約十日前、こちらに3ツだけ出した。
もう食べ納めなので、以下、残りの物もついでに挙げておく。
全部が全部“桜餅”として売られている物ではないが、この時期ならではの桜のお菓子を5種類ほど。

★ 長命寺 桜もち:長命寺 さくら餅

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大きさは、幅約7.5センチ。
こし餡をはさんだ薄皮を半月に折り、塩漬けした桜葉3枚で覆った桜餅。




ひとつめは、向島のお店、長命寺さくら餅(公式サイト)“長命寺さくら餅”
お店の名前が長命寺さくら餅で、売っている商品も長命寺さくら餅。店名=商品名。
関東風の桜餅は、後にこのお店の創業者となる山本新六が、
長命寺の門番をしていた享保2年(1717年)に考案したと言い伝えられている。
言わば、“元祖・お江戸風桜餅”。
このお店、私、桜の季節以外は、普通の和菓子を販売しているものと思い込んでいたのだが、
なんと、一年を通し、桜餅一品勝負なのだと。なんとも思い切りが良い。
その昔、ここが“山本や”と呼ばれていた頃、かの正岡子規が一時2階に下宿していたことでも知られるお店。
(現在、店名は“長命寺 さくら餅”で、“やまもと”という名の株式会社の形態をとっているみたい。)
川端康成も好んで食べたとも言われている。

では、元祖・お江戸風桜餅とは如何なる物か。
生地は、小麦を主原料に、クレープ状に焼いた物。
お菓子作りが好きな人が、家で作る桜餅のような素朴な生地。
混ざり気が無いので、端から乾燥し、硬くなり易いと思う。
色は、昨今、桜色に染めるのが主流だけれど、ここのは白。
中の餡はこし餡で、半月型に整えられている。

一番の特徴は、塩漬けした桜葉を3枚も(…!)使っていること。
これは、あくまでも桜餅本体に香りを移すことと、乾燥防止のためなので、
お店側は、葉を外して、食べることを推奨している。なんとも贅沢な桜葉使い!

葉の使用量は、なかなか真似できるものではないが、桜餅自体は、主婦の手作りっぽい素朴な物。
年間通して買えるので、3百年前に生まれた元祖・お江戸風桜餅がどういう物か知りたい方は、お試しを。

★ 桃林堂:桜餅

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大きさは、直径約4.5センチ。
道明寺でこし餡を包み、塩漬けした桜葉一枚で巻いた桜餅。




続いて、桃林堂(公式サイト)“桜餅”
なぜお江戸風の桜餅を売っていないんだ?!と一瞬疑問が湧いてしまったが、
そう、実は、桃林堂の本店は大阪。
我々東京の人間にとっては、上野のお店という印象が強いので、
大阪の和菓子屋さんだということを、すっかり忘れていた。

そんな訳で、お江戸風・長命寺の後は、関西風・道明寺の桜餅。
見た目の特徴は、小ぶりで、ほぼ円形であること。コロコロしていて可愛らしい。
道明寺は、ひと粒ひと粒がしっかりしていて、ベタつきがほとんど無い。
中には、色が濃い目のこし餡。

私は、あまりベタベタした物より、これくらいシッカリした食感の道明寺の方が好きかも。
ただ、とてもお上品に小さいので、一気に3ツくらいは食べたくなる。

★ 宝来屋:道明寺(白・こし餡)

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大きさは、長さ約5センチ、幅約3.5センチの俵型。
白い道明寺でこし餡を包み、塩漬けした桜葉2枚を添えた桜餅。




3ツめは、宝来屋(公式サイト)“道明寺”
宝来屋は、九段に明治元年創業の、れっきとしたお江戸の老舗だが、
私が今回このブログに出したのは、関西風桜餅。
実は、宝来屋では、関東風、関西風、それぞれ2種類ずつ、計4種の桜餅が売られている。
ズバリ“桜餅”の名で売られているのはやはり関東風桜餅で、
こし餡を包んだ白い生地の物と、つぶ餡を包んだ桜色の物の2種。
関西風は“道明寺”の名で出ており、こちらも表の色によって、中の餡が2種類がある。

ひとつは、白い道明寺で、中はこし餡。
前出の桃林堂の物ほどではないにしても、ここのもベタベタし過ぎず、道明寺の食感がちゃんと残っている。
2枚使用した桜葉は、添え方が特徴的。
こういう風に2枚並べて下から包み込むように葉を使っているのは、他で見た覚えが無い。

★ 宝来屋:道明寺(赤・味噌入り白餡)

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大きさは、長さ約5センチ、幅約3.5センチの俵型。
桜色の道明寺で味噌入りの白餡を包み、塩漬けした桜葉2枚を添えた桜餅。




引き続き宝来屋で、今度はもう一つの方の“道明寺”
道明寺の色は、桜色。

道明寺でもお饅頭でも、生地が白とピンクの2種類作られている和菓子は、
中がつぶ餡とこし餡であるのが一般的。
ところが、この桜色の道明寺の中は、なんと味噌入りの白餡!
お店が“味噌入り白餡”と呼んでいるので、私もそう記したが、要は味噌餡である。
味噌餡を使った季節の和菓子というと、柏餅のイメージが強く、桜餅(道明寺)では珍しい。

白餡の柔らかな甘さの中に、ほんのりお味噌の塩分が感じられる餡。
道明寺+味噌餡+桜のコンビネーションって、実は合うのですね~。

桜餅は、近年急にお江戸風贔屓に寝返った私だけれど、
関西風の道明寺でも、宝来屋のこの味噌餡入りは珍しくて、大層気に入った。
桜が散っても、夏間際まで店頭に出ている商品なので、また買いたい。

★ 宝来屋:三色花見だんご

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ひと粒の大きさは、直径約2.5センチ。
丸いすあま3個を、それぞれ桜餡、黄味餡、よもぎ餡で包み、串に刺したお団子。




最後も宝来屋で、“三色花見だんご”
こちらは、桜の季節の限定品。
桜の名所・千鳥ヶ淵に近い宝来屋は、桜の季節は特にお客さんが多いようで、
ある時など、お昼ちょっと過ぎに行ったら、このお団子はすでにその日の分が完売になっていた。
串刺しになっていて扱い易いから、家に持ち帰るのではなく、
買ってすぐ千鳥ヶ淵を散歩しながら食べる人が多いのかしら。

見ての通り、団子三兄弟のような、これぞ串ダンゴ!という感じのお団子。
中に隠れているお餅部分は、すあま。
すあまなので、普通のお餅より歯切れが良い。
ただ、常にすあまが使われている訳ではなく、年によっては、求肥などに変わることもあるらしい。
職人さんの気分次第なのでしょうか。

3ツのすあまのお団子は、桜餡、黄味餡、よもぎ餡と、それぞれ異なる餡で覆われている。
どれも白餡がベースだが、味の違いはきちんと感じられる。
甲乙つけ難いけれど、ひとつだけ一番のお気に入りを選ぶとすると、うーん、桜餡かしら。
最も“この時期ならでは”と感じる餡なので。




以上5種類の中で、一番のお気に入りは、珍しさもあり、宝来屋の味噌餡入り道明寺♪

赤坂大歌舞伎『夢幻恋双紙~赤目の転生』

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2008年、中村勘三郎のひと声で始まった赤坂大歌舞伎。
2012年、その中村勘三郎が57歳の若さでこの世を去っても、御子息たちにより引き継がれ、
今年は、2015年の公演から2年ぶりに第5回目が開催。

行く気はマンマンでも、予定が定まらなかったため、なかなかチケットを購入できず、
思い通りの席は取れなかった。それでも、人気公演のチケットを取り敢えず押さえられて、満足。

★ 赤坂ACTシアター

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会場は、いつものように、赤坂ACTシアター。


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ここ、赤坂大歌舞伎が開催される時は、階段の両脇に色とりどりの幟が並び、綺麗です。



入り口でチケットを切り、中へ。

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今回の公演では、イヤホンガイドが用意されていない。
(実際、ガイド無しで、誰でも理解できるお芝居であった。)
出演者へは、有名な芸能人などから、立派な胡蝶蘭が沢山贈られております。




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今回は花道は無く、役者は、図の青いラインの部分をしばしば通る。
私の座席は、赤丸の所。舞台全体を見渡すのには、悪くない席。
但し、細部を見るには、やはりオペラグラスが必要。

★ 今回の演目

肝心な今年の演目は、『夢幻恋双紙(ゆめまぼろしかこいぞうし)~赤目の転生』という新作歌舞伎。

劇団モダンスイマー ズの作・演出を手掛ける蓬莱竜太(ほうらい・りゅうた)による書下ろし。
蓬莱竜太の、舞台以外の最近のお仕事だと、ジャニーズ加藤シゲアキの小説を、行定勲監督が映画化した
『ピンクとグレー』の脚本を手掛けているようだ。歌舞伎を手掛けるのは、今回がお初。
私は、蓬莱竜太がメインにしている舞台作品を観たことが無いし、映画も観ていない。
つまり、蓬莱竜太のファンどころか、どういう作品を作る人なのか、想像すらできない。
中村勘九郎は、元々蓬莱竜太作品、特に家族を題材にした作品が好きだったこともあり、
歌舞伎を書いてくれと依頼したようだ。
会場のお客さんも、今回は、歌舞伎ファンというより、
もしかして蓬莱竜太の舞台ファンなのでは?と思わせる人々がかなり居るように見受けた。
(あくまでも、私の勝手な推測に過ぎないが。)



蓬莱竜太を起用したこの公演では、セットも畑違いの舞台美術家・松井るみを起用し、新たな試み。

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切り絵をイメージした舞台美術で、従来の歌舞伎の舞台とは、明らかに異なる。


さらに、音楽も、なんとピアノの楽曲が!

★ 配役と上演時間

配役は…
中村勘九郎: 太郎
中村七之助:
市川猿弥: 剛太
中村鶴松:
中村いてう: 末吉
中村亀鶴: 源乃助
片岡亀蔵: 善次郎



上演時間は…
一幕・二幕 :55min.
幕間 :20min.
三幕・四幕 :75min.

開演から終演まで通しで2時間30分。休憩を除くと正味2時間10分。

★ 物語

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物語はザッと以下の通り。

太郎の隣に引っ越してきた歌は気立てがよくて働き者、おまけに美人と評判。
しかし、兄の源乃助は不気味な雰囲気を漂わせており、
太郎も遊び仲間の剛太、末吉、静も怖がって避けている。
太郎が大きくなったある日、寝たきりだった歌の父・善次郎が借金を残してこの世を去る。
源乃助にも見放された歌に援助を申し出たのは太郎。
とはいえ、仕事もなく、太郎は、歌に謝るばかり。
夫婦になって2年が経ち、歌もいよいよ愛想が尽きてきたところ、
太郎は仕事をもらっていた源乃助に突然、斬られてしまう。
目を覚ました太郎は、少し赤くなった目を押さえながら、
自分がクズな男だったせいで殺された夢を見たと、剛太たちに話す。
子ども時代に戻っていた太郎は、今度こそ歌を幸せにすると心に誓う。
やがて夫婦になった歌とも、以前とはまったく違った生活を送るようになり…。


つまり、歌という女性を愛したものの、なかなか彼女を幸せに出来ない男・太郎が、
転生を繰り返し、違う人格になって、人生をやり直す様を3パターン見せる奇妙な恋物語

いつも最初は、主人公・太郎をはじめ、彼の友人たちも皆12歳の子供。
一番目の太郎は、おっとりしていて、いつも寝てばかりで伸びているから、あだ名が“のび太郎”。
幼馴染みたちは、ジャイアンを彷彿させる剛太、スネ夫を彷彿させる末吉、
そして静香ちゃんを彷彿させる静の3人。
そう、これ、なんと歌舞伎で『ドラえもん』をやっちゃっているの。

悪いヤツではないけれど、トロくて、冴えないのび太(太郎)は、大人に成長し、
好きな女性・歌と結婚できたものの、その関係も破綻。
のび太らしい“案の定”という結末なのだが、でも、じゃぁ、もし“のび太らしくない”別の人生が有ったら?と
このお芝居では、他のパターンも見せてくれる。
毎回、人生がリセットされると、12歳に戻って、再スタート。
主人公の性格が変われば、彼を取り巻く人々との関係性にも変化。


一体、この物語はどこに着地するのか?!と気になり、物語の世界に引き込まれた。
失敗の経験を積み転生すれば、より良い人間になり、より良い人生が送れるのかというと、そうでもなく、
待ち受けていたのは、苦い輪廻転生…。
太郎は、転生する度に、右目が赤くなっていくのだが、
歌の兄・源乃助が、やはり右目に包帯のような物を巻いているので、
二人に何らかの関係があることは、早々に察した。
それでも、二人をあのように重ね、巡りに巡って、スタート地点に戻ってくるとはねぇ~。

登場人物たちそれぞれが、転生する度に、別人格になっているから、
毎回変わっていく役者たちの演技も見もの。
特に、オドオドした情けない男から、眼光鋭い容赦ない男まで、幅広く演じる勘九郎の表現力には脱帽。

畑違いの劇作家が書き下ろした新作歌舞伎だと、
2006年、三谷幸喜が手掛けた『決闘!高田馬場』が非常に面白かったのだけれど、
今回のもなかなかであった。
切り絵をイメージした美術も、歌舞伎の舞台に調和。
最後、真っ赤な照明で、セットも役者も黒い影になるところは、藤城清治の影絵のようであった。
ピアノの音色も、不思議と合っている。
言葉は、ほぼ現代の言葉で、「ムカつくよねぇー!」などと言ってしまったりするのだが(笑)、
それでも、ちゃんと“歌舞伎”として成立しているのが凄い。

ただ、これを観たことで、久し振りに古典歌舞伎を観たくなったのも事実。
この『夢幻恋双紙』は、ヴィジュアル的に、良く言えばシック、悪く言えば地味なので、
衣装が美しい華やかなものや、“これぞ歌舞伎!”と思わせる見せ場がある
古典歌舞伎を観たくなってしまったのだ。
でも、それは決して新作歌舞伎『夢幻恋双紙』への批判ではない。
新しい物を観ることで、古い物も観たくなる、相乗効果のようなもの。
勘九郎は、新たな挑戦を恐れず、常に観衆を魅了し続けてきた父・中村勘三郎に
確実に近付いているなぁ~と、また改めて感じたのであった。
声や見た目も益々勘三郎に似てきた。私、やはりこの一家が大好き。

公演は、あと一週間続くので、もしチケットが入手できるのであれば、興味のある方は是非。
歌舞伎初心者でも楽しめるはず。



◆◇◆ 赤坂大歌舞伎 『夢幻恋双紙(ゆめまぼろしかこいぞうし)~赤目の転生』 ◆◇◆
会場:赤坂ACTシアター

2017年4月6日(木曜)~4月25日(火曜)

映画『グレートウォール』

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【2016年/中国・アメリカ/103min.】
いにしえの中国大陸。
火薬を求め、広大な砂漠まで辿り着いた傭兵のウィリアムは、謎の怪物から奇襲を受ける。
その怪物の腕らしき物を切り落とし、仲間のトバールと二人、なんとか命拾いしたものの、
今度は東洋の兵たちから追い詰められ、降伏せざるを得なくなる。
捕らえられた二人が連れて来られたのは、見たこともない巨大な壁が延々と続く場所。
そこで王という軍師が、ウィリアムが持っていた怪物の腕に関心を寄せ、一時、牢で身を拘留されるが、
いよいよ処刑という時、あの怪物が群れをなしてやって来て、激しい戦闘開始。
ウィリアムとトバールも応戦し、戦いは取り敢えず収束。
活躍した二人は、刑を免れ、人々から歓迎を受ける。
聞いた話によると、あの怪物は、2千年前から60年に一度現れ、
全てを食い尽くしていく“饕餮”という恐ろしい生物。
しかも、どんどん凶暴に進化しており、もしこのまま城内への侵入を許せば、人類の滅亡も免れないという。
否応なしにここに留まることになったウィリアムらも、人類と饕餮との戦いに巻き込まれていくこととなり…。



張藝謀(チャン・イーモウ)監督、『妻への家路』(2014年)以来の新作は、
なんと初の英語作品であり、3D作品。

今や世界の映画大国に成長した中国に、ハリウッドがスリ寄り早数年。
米中合作映画がどんどん制作され続けているが、あまり評判になった成功例は無いように見受ける。
張藝謀監督のこの作品にも、私は不安しかなかったのだが、2D版で取り敢えず鑑賞。



物語は、火薬を求めて欧州からやって来たものの、捕らえられてしまったウィリアムとトバールが、
延々と続く巨大な建造物を防御壁に、謎の生物・饕餮と戦う現地の人々を目の当たりにし、
次第にその危険な死闘に巻き込まれていく様を描く歴史アドヴェンチャー

昨今、大陸のドラマ業界では、“玄幻”と呼ばれるファンタジーが大人気だが、
こちらも、長城にまつわる伝説をファンタジックに描いた史劇って感じ(ファンタジー率高し)。

作中には、時代背景を限定する具体的な説明は無いが、北宋(960-1127)と考える人が多いみたい。
確かに、映画の中でも、その王朝の首都が、北宋の首都である汴梁(現在の河南省・開封)とされている。
後半に登場する若き皇帝は、僅か12歳で即位した北宋第4代皇帝・仁宗趙禎(1010-1064)と見る向きが強い。

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もし本当に仁宗帝在位期間の物語ならば、作品の時代背景は1022年から1063年の間ということになる。
(崩御した1063年、仁宗帝は53歳。
映画の中の皇帝はまだ少年っぽいので、1035年以前の物語と考えるのが、妥当であろう。)
宋は、文化的には繁栄したイメージがあるけれど、
外交面では、遼との対立や、西夏からの度重なる侵攻に悩まされていた時代なので、
そういう意味でも、映画と辻褄が合うかも。

ただ、映画の前半、私は目にしてまったのだ、
状況説明をする王軍師のシーンで、テーブルの上に、天文用観測機器のミニチュアが並んでいるのを。
それらはデザイン的に見て、北宋よりずーーーっと後の世、
清朝康熙年間から乾隆年間に作られた物と考えられる。(→参照
張藝謀監督が、そんな事を知らない訳が無いので、この映画では敢えて時代考証にこだわらず、
北宋と限定しない架空の王朝の雰囲気を出したかったのかも知れない。


そんな北宋らしき架空の王朝に、ウィリアムとトバールという2人の西洋人がやって来る。
彼らの目的は、火薬を手に入れること。
火薬は、古代中国四大発明の一つ(あとの3ツは、羅針盤、紙、印刷)。
宋より前の唐代にはすでに発明されていたとされ、
ヨーロッパへは、中国から中東もしくは中央アジアを経由して伝わったとされている。
13世紀、ロジャー・ベーコン(1219?-1292)の著作の中の記述が、
ヨーロッパに残されている火薬に関する最も古い記述なのだとか。

ウィリアムとトバールは、噂でしか知らない、なんだか凄い物らしい火薬とやらの入手をたくらみ、
はるばる東の国までやって来たものの、見付かって、捕えれれてしまうのだが、
そこでまた想像だにしなかった巨大建造物を見てしまう。それが、映画のタイトルにもなっている長城。
日本では俗に“万里の長城”と呼ばれる長城は、外敵の侵攻を防ぐために建造された、言わば巨大な防御壁。

外敵は、本来異民族であるが、本作品では…

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“饕餮(Tāotiè/とうてつ)”という怪物。
饕餮は、本作品オリジナルの怪獣などではない。(じゃなかったら、“王”だの“林”だのという簡単な姓まで
“ワン”、“リン”などとしてしまうレベルの低い日本語字幕で、
“饕餮”のような難しい漢字をそのまま使う訳がない。)

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饕餮は、龍が生んだ9匹の子“龍生九子”の内のひとつとされる伝説上の生き物。
他の8匹は、贔屓(ひいき/びし)、螭吻(ちふん)、蒲牢(ほろう)、狴犴(へいかん)、𧈢𧏡(はか)、睚眥(やず)、
狻猊(さんげん)、そして椒圖(しょうず)。
9匹の子はそれぞれに性格も見た目も異なり、
現在でも、中国の建築物などの中で、我々が知らず知らずの内に目にしている物が多い。
(以前、贔屓に関しては、当ブログでも、チラリとこちらに記したので、参考まで。)
饕餮は、獣の面構えをした凶悪な生き物で、水を好むと言われており、
古い青銅器の装飾などに見ることができる。
そもそも“饕”の字は貪欲や食いしん坊、“餮”は食を貪るという意味があるように、
映画の中の饕餮も、何でもカンでも食べる猛獣で、
人の心の中のダークな部分を暗示する貪欲の象徴として登場しているように感じる。





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出演は、まず、西洋チームから見ていくと、火薬を求めてやって来るウィリアム・ガリンにマット・デイモン
ウィリアムと行動を共にしているペロ・トバールにペドロ・パスカル
彼らより25年も前から東洋の国に居ついているバラードにウィレム・デフォー

ウィレム・デフォーは、私が想像していたより役がやや小さかった。
扮するバラードは、25年前、やはり火薬を求めてやって来て、そのまま居ついてしまった男。
人々に英語なども教えているようで、すっかり受け入れられ、国に溶け込んでいる様子。
ウィレム・デフォーにしては、穏やかな好人物だと思っていたら、
最後の最後で裏切り行為に走り、やはりクセ者・ウィレム・デフォーであった。

本作品の西洋人側主演男優は、マット・デイモンである。
マット・デイモンと中華圏の接点は、
大ヒット香港映画『インファナル・アフェア』(2002年)をリメイクした『ディパーテッド』(2006年)で、
オリジナル版では劉華(アンディ・ラウ)の役に当たるコリン・サリバンを演じたのが記憶に鮮明。

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それから十年、同じ役を演じた劉華と、米中合作映画で共演するとはねぇ~。
本作品で演じているのは、ウィリアムという名の弓の名手なので、かのウィリアム・テルを連想した。
作中、リンゴではなく、食器を射抜くシーンもある。
このウィリアムは、幼い頃に親を亡くし、生きるために軍に入り、
その後は、金のために、あっちの軍へこっちの軍へと渡り歩いてきた人。
言わばフリーランスの傭兵で、仕える主に忠誠心など無いドライな男なのだが、
東洋の国で、“信任 Xìnrèn”の精神を身をもって学び、変わってゆく。
劇中マット・デイモンが幾度となく「シンレン」と言うので、日本の観衆も中国語の単語を一つ覚えましたよね?

余談になるが、2016年6月行われた『グレートウォール』北京プレミアの際、
登壇したキャスト陣が、怪物の名“饕餮”を漢字で書かされる場面があったのだが…

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マット・デイモン、意外と漢字が上手くないか?!少なくとも私より上手い。



続いて、中華圏側のキャスト。

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無影禁軍のベテラン邵殿帥に張涵予(チャン・ハンユー)
邵殿帥のあとを引き継ぐ女将軍・林梅に景甜(ジン・ティエン)
軍事面の参謀・王軍師に劉華(アンディ・ラウ)、若き兵士・彭勇に鹿(ルー・ハン/ルハン)
虎軍將領・吳將軍に彭于晏(エディ・ポン)、鷹軍將領・陳將軍に林更新(ケニー・リン)
鹿軍將領・將軍に黃軒(ホアン・シュエン)、そして時の皇帝(恐らく仁宗帝)に王俊凱(ワン・ジュンカイ)


私、てっきり、張涵予は出ずっぱりだと思い込んでいた。
そうしたら、案外サッサとあの世行き…!

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立派な総帥の役なので、さすがにお葬式は立派であった。
参列者が万里の長城の向こうの方までズラーーーーッ!最後には、無数の天燈が空に放たれる。


女性でありながら、この邵帥から後を任される林梅こそが、本作品の中国側主人公。
演じている景甜は、1988年生まれ、西安出身、北京電影學院卒の28歳。
この世代の大陸明星にしては珍しく、テレビドラマ以上に映画に多く出演しているのは、
本人の主義なのだろうか。
『スペシャルID 特殊身分』(2013年)、『ポリス・ストーリー/レジェンド』(2013年)、
『ゴッド・ギャンブラー・レジェンド』(2014年)といった香港絡みの作品に数本出演しているため、
日本でもそこそこ目にする機会がある。
この度晴れて謀女郎(イーモウ・ガール)にも抜擢されたし、今後益々活躍していくことでしょう。

男優で、最も登場シーンが多いのは、王軍師役の劉華。
主演女優の景甜と劉華の二人が、中国側で英語を喋る役。
劉華は、ちょっとだけ年上の香港映画界の先輩・周潤發(チョウ・ユンファ)とは違い、
ハリウッド進出には積極的ではなかったから、英語で演じているのを見るのは珍しい気がする。

続いて登場シーンが多いのは、韓流アイドルユニットEXOの中国人元メンバー鹿。
大陸で最もギャラが高い若手と言われているスーパーアイドル。
可愛い顔して、ポンッと億単位のお金を稼ぎだしております。
本作品で演じている彭勇は、ファンも納得するであろう健気で一生懸命な男の子。
ただねぇ、アップになると、口元に薄っすらヒゲが生えているの。
ヒゲって、鹿ファンから見てどうなのでしょう。
一般的に、こういうカワイイ系アイドルを好きな人は、鼻毛は当然として、
ヒゲ、スネ毛といった人体に生える毛という毛を忌み嫌う傾向があるようにも見受けるのだが…。

ちなみに、余談になるが、数ヶ月前、こちらに記したように、
鹿のアルバム<Xplore>のジャケットや<微白城市>のMVを撮影した蜷川実花は、
また最近北京へ飛び、今度は…

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ミニアルバム<Imagination>のジャケットを撮っている。
蜷川実花センセの作風は、鹿クンにも気に入られているようです。
そんな鹿クンは、明日4月20日がお誕生日で、27歳に。おめでとうございます。


アイドル枠ではもう一人、大人気アイドルユニットTF BOYSの王俊凱も、皇帝役で出演。
こちらは鹿以上に若いまだ17歳(しかも13歳くらいに見える)。
ここまで行っちゃうと、オバさんには、もう分かりませんワ。


アラサー3将軍を演じる彭于晏、林更新、黃軒は、登場シーン少なし…。
特に私がお目当てにしていたのは、將軍役の黃軒だったのだが、口にした台詞は2~3言程度。
実は、黃軒、張藝謀監督とは因縁アリ。監督の『王妃の紋章』(2006年)に出演予定があったのに、
その役を周杰倫(ジェイ・チョウ)に取られてしまったという苦い過去があるのだ。
『スプリング・フィーバー』(2009年)で黃軒のシーンを全てばっさりカットした婁(ロウ・イエ)監督は、
その後、『ブラインド・マッサージ』(2014年)で彼を主演に抜擢してくれたけれど、
張藝謀監督は、申し訳程度の出演しかさせてくれなかったのね…。
まぁ、黃軒は、ノリに乗っている俳優なので、これからまだまだチャンスがあるでしょう。
取り敢えず、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の日中合作映画『空海 KU-KAI』を楽しみに待つ。
こちらでは、染谷将太とのダブル主演。
(私mango一押しの俳優・黃軒については、こちらを参照。)





クズ映画に違いないと見くびっていたせいもあり、「意外にも面白かった」というのが、率直な感想。
私はファンタジーにもアクションにも、あまり興味が無いので、シラケると覚悟していたのだけれど、
少なくとも、これっぽちも飽きることなく最後まで観た。
似たような怪物が登場する陸川(ルー・チュアン)監督作品
『ドラゴン・クロニクル 妖魔塔の伝説』(2015年)と比べたら、こちらの方が、遥かによく出来ている。

しかし、張藝謀監督作品だと考えると、どうなのでしょうねぇ…??
張藝謀監督は、一体どこに向かっているのだか…。
ただ、“張藝謀監督の迷走”は今回が初めてではなく、例えば『王妃の紋章』を発表した時も、
多くの映画ファンが、張藝謀どうしちゃったんだ?!と半ば呆れて目を丸くしたものだが、
その後、大陸のドラマ映画界では、『王妃の紋章』にインスパイアされたかのようなキンキラキンの作品が
数多く制作されることになった。
つまり、張藝謀監督は、良くも悪くも期待を裏切りるけれど、それをトレンドにしていく力があるのヨ。
もう70歳近いのに、こんな変な映画を撮るなんて、まだ枯れていない証拠かも知れない。

日本語字幕に関しては、単純なエンタメ作品と割り切って観ているので、
今回は大きな不満は無いけれど、かと言って納得もしていない。
恐らく北宋と設定されている時代劇で、登場人物を“リン”だの“ワン”だのと音読み片仮名表記にするなんて、
今時、テレビドラマの字幕だったら、有り得ない。
これ、一応“英語作品”ということになっていて、中国語の部分には、英語字幕が付いているし、
英語翻訳者が、英語から翻訳しているでしょう…?
細かい事だけれど、汴梁の“Palace”を、“皇宮”ではなく、“王宮”なんて訳すのは、如何なものか。
宋の人々の台詞に出てくる“西班牙”を、“スペイン”と訳すのも、現代風で滑稽。
(観に来る客層を考えて、敢えてそうしたのだと寛容に受け止めるが。)
本作品は、“張藝謀監督初の英語作品”とは言っても、実際には、英語と中国語が6:4くらいなので、
まったく中国語が分からない英語翻訳者より、英語がそこそこ分かる中国語翻訳者にやらせた方が、
中国の雰囲気を上手く掴んだ良い字幕になった気がする。
中国語作品の字幕は、映画よりドラマの方がずっと進化している。
映画の配給会社も、いい加減ドラマ界も見習って。

映画『はじまりへの旅』

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【2016年/アメリカ/119min.】
アメリカ北西部、ワシントン州の奥地に広がる森林地帯。
キャッシュ家は、ここで、現代文明ときっぱり縁を切り、自給自足の生活を送る家族。
6人の子供たちは、学校へ通わなくとも、父ベンのもと勉学に励み、
並大抵の子では適わぬ知能を身に付けてる。
しかも、学問に留まらないベンの熱血指導のお陰で、子供たちは体も強靭。
ロープで岩場にも登れるし、ナイフ一本で身を守るサバイバル術にも長けている。

そんなキャッシュ家に、訃報が舞い込む。
実家のあるニューメキシコ州で、双極性障害の治療を続けていたレスリー、
ベンの妻で、子供たちの母親でもある彼女が、自ら命を絶ったという知らせ。
葬儀は、5日後に、レスリーの両親が教会で執り行うという。
しかし、レスリーは仏教徒。彼女の生前の望みは火葬。土葬なんて望んでいない。
ベンは、レスリーの父ジャックに、教会葬をやめるよう、電話で訴えるが、
ジャックは、その訴えを撥ねつけた上、ベンの参列を拒否。もし来たら、警察を呼ぶと、怒り心頭。
ベンは一瞬ためらうが、子供たちの気持ちを汲み、レスリーの救済を決意。
一家は、愛用のバス“スティーヴ”に乗り込み、ミッション遂行のため、一路ニューメキシコ州を目指すが…。



2012年『あるふたりの情事、28の部屋~28 Hotel Rooms』で長編監督デビューを果たした
アメリカの俳優マット・ロスの監督作品第2弾。

前の監督デビュー作は、日本劇場未公開だが、wowowで放送された。
観ておけば良かったと、今更後悔。再放送を待つ。
こちらの第2弾は、監督としては、まだ新人でありながら、
2016年、第69回カンヌ国際映画祭・ある視点部門で監督賞を受賞。
私は、結局、マット・ロス監督作品とは如何なる物か想像できぬまま、本作品を鑑賞。




本作品は超簡単に言ってしまうと、ワシントン州の森の奥深くに暮らす父ベンと6人の子供たちが、
母レスリーの遺体が安置されているニューメキシコ州まで約2400キロの距離を、
“スティーヴ”と名付けられたバスで旅するロードムーヴィであり、
また、十年間俗世との関りを絶っていた彼らが、
その旅を機に、社会との接点を持つようになる様を描く還俗ファミリー物語

このキャッシュ家という一家は、我々日本人が考える“一般的な家族”には当て嵌まらない。
子供たちは学校へは通わず、父ベンが独自のカリキュラムで熱烈教育指導。
その甲斐あって、みんな頭脳明晰。
父の教えは、学術的な事に留まらず、過酷な環境でも生き抜くための強靭な肉体作りや、
危機察知能力も養っていくから、子供たちは並みの野生動物より余程野生的。
頭と体、どちらも鍛え上げられ、バランスがとれている?

日本と違い、アメリカでは、ホームスクーリングが法的に認められ、
実際に、学校へは通わず、親から教育を受ける子が多いと聞く。
宗教や思想など様々な理由で、うちの子に学校教育なんか受けさせたくない!と思う親もいるであろう。
教育熱心な親や、自身が頭の良い親ほど、学校のレベルでは物足りず、自分で教えたくなるのかも知れない。

画一的な教育を受けさせ、フツーの子に育てるより、独自の教育を受けさせ、個性的な子に育てる方が、
良いと言われれば、良いようにも思うが、うーん、程度の問題?

親の価値観が、ダイレクトに子に伝わり、それがその子の全てになってしまう事の危険性を、
キャッシュ家という風変わり一家を通し、面白おかしく見せてくれるのが、本作品前半。


まず、一家が傾倒しているのは…

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アメリカの高名な哲学者ノーム・チョムスキー(1928- )。

一家にとって、チョムスキー博士のお誕生日は、クリスマスに代わる祝日で、
“ノーム・チョムスキー・デー”として、楽しく祝う。
ノーム・チョムスキーが、彼らのアイドルになっていたり、
ノーム・チョムスキーが説く主張に賛同すること自体には問題ないように感じる。
(少なくとも私は、ノーム・チョムスキーが過激な思想の持ち主などと思ったことはないし。)

問題が有るとしたら、この子たちが、あまりにも“一般”を知らず、社会性に欠けていること。
逞しく見える彼らは、実のところ、純粋培養の世間知らず。
過酷な環境下で生き抜くための身体能力は養われていても、これでは社会の荒波に飲まれてしまう。
例えば、長男“ボウ”ことボウドヴァンは、同世代の異性との接触が無いまま成長したせいか、
アメリカの18歳にしてはかなりのオクテ。
道中たまたま出会ったオトナっぽい女の子クレアにファーストキスを捧げたことで、
全身をエンドルフィンが駆け巡り(!)、いとも簡単にクレアを運命の女性と思い込んで、
跪いて結婚を申し込み(!!)、彼女をドン引きさせる。
ボウ君よ、ちょっと女人と接触したくらいで、いちいちエンドルフィンをドクドク分泌させていたら、
その内悪い女に騙されてしまいますわよ。
今後学ぶべきサバイバル術は、ナイフ使いより、広く処世術や、エンドルフィンの分泌自己制御かも。


このように、旅の途中、外の世界と触れることで、
子供たちの中には、「うちのダディ、なんかおかしくないか?!」と気付く者や、
徐々に蓄積していた不満を爆発させる者が出てきて、
それまで一枚岩だったキャッシュ家が崩壊していくのが、本作品後半。






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出演は、一家の主ベン・キャッシュにヴィゴ・モーテンセン
18歳の長男“ボウ”ことボウドヴァンにジョージ・マッケイ
15歳の双子の姉妹、キーラーとヴェスパーにサマンサ・アイラーアナリス・バッソ
12歳の次男レリアンにニコラス・ハミルトン、9歳の三女サージにシュリー・クルックス
7歳の末っ子ナイにチャーリー・ショットウェル
そして、亡き妻レスリーの父で、子供たちの祖父にあたるジャック・ベルトラングにフランク・ランジェラ


最終的に、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレックに賞を譲ったものの、
ヴィゴ・モーテンセンは、本作品での演技が認められ、第89回アカデミー賞で、主演男優賞にノミネート。
演じている父ベンは、良くも悪くも純なのであろう。信じた道をまっしぐら。本人に悪気が無いから、面倒くさい。
身なりも自由で、TPOなんてお構いなしのオレ流コーデ。

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ゆっくり寛ぎたい時は裸族、葬儀用の一張羅は真紅の喪服。
ベンは身なりも極端で、オン/オフをはっきり分ける人のようです。
(日本上映版では、股間にボカシ処理。安心してください、見えません。)


個性的すぎる親をもつ子は、親が発する気に押され、霞みのように影の薄い子になることが多々あるけれど、
キャッシュ家でも、長男のボウドヴァンがそんな感じ。
演じているのは、子役出身のイギリス人俳優ジョージ・マッケイ。
目と目の間隔が狭い覇気の無い顔立ちからして、キョーレツな親をもつ奥ゆかしい長男役にぴったり。
彼は、自分の家族が普通とは違うことに気付いているし、それを心のどこかで恥じてもいるから、
キャンプ場で出会った女の子クレアに、「パリでヴィクトル・ユーゴーの家の近所に住んでいるんだけれど、
父がスポック博士の本を書くための研究でアメリカに戻って来た」と、ついつい来歴詐称。
しかし、口から出任せのこんな来歴さえ、クレアには高尚すぎて、二人の会話は嚙み合わない。
ボウドヴァンが言った“Dr.Spock(スポック博士)”は、
著名な小児科医のベンジャミン・スポック(1903-1998)の事なのだけれど…

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クレアにとっての“スポック”は、後にも先にも『スタートレック』の“Mr.Spock(ミスター・スポック)”。
逆に、テレビを観ないため、『スタートレック』を知らないボウドヴァンは、
「ああ、あの番組のことね。サイコーだよね」などと知っているフリ。けな気~。
私も子供の頃、フツーへの憧れが強く、親の職業を偽ったり、
テレビを観ていないことを隠していた時期が有ったので、
このチグハグな会話のシーンは、他人事とは思えず、結構好き。

ちなみに、この長男の“Bodevan(ボウドヴァン)”をはじめ、子供たちの名前はどれも珍しいが、
それらは、親のベン&レスリーが、世界中で唯一の名前を!と考えて付けたらしい。
だが、その割りには、彼らのファミリーカーであるバスが、
“Steve(スティーヴ)”というやけに凡庸な名前で呼ばれているのは、何故なのか?
子供にキラキラネームを付けながら、飼い犬を“ポチ”と呼ぶに等しいこの感覚は、私にはよく分からない。
誰か尊敬している学者や革命家から取った名前とか?作中、バスのこの命名に関する説明は無い。
どなたか知っている方がいらしたら、教えて下さい。気になっております。


で、長男ボウドヴァンのすぐ下の双子の姉妹、キーラーとヴェスパーは、
役と同じように双子の姉妹が演じているものと思い込んでいたら、
共に1998年生まれ、同じ年で血縁の無い若手女優2人であった。


下のおチビちゃん二人は、これくらいの年齢だと、まだ性別も判りにくいのだが、
“小さい”というだけで、もう充分可愛らしい。しかも…

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恰好がこれまたキュート。“子供+被り物”って、どうして、こうも可愛いいのだか。
衣装を担当したのは、過去にクエンティン・タランティーノ監督作品『ヘイトフル・エイト』(2015年)などを手掛け、
そのクエンティン・タランティーノ監督と恋の噂もあった女性コスチュームデザイナー、コートニー・ホフマン
まだ続いているのかしら(…下世話でスミマセン)。





鑑賞前に目にしたポスターやスチール写真の雰囲気から、
ウェス・アンダーソン監督っぽく撮った“風変わり一家のお洒落で愉快なロードムーヴィ”を想像したが、
実際には、もう少しシリアスな内容であった。
(あくまでも、“想像していたよりはシリアス”だっただけで、特別ヘヴィな作品ではない。)

そもそもマット・ロス監督自身、十代の頃、キャッシュ家のように、
離婚した教育熱心な母親と、電気も通っていない山奥のコミュニティーで生活していた経験があったり、
今でも、自分の子供たちと“ノーム・チョムスキー・デー”を祝ったりしているらしい。
映画の中のキャッシュ家は、極端に表現されており、
確かに、お金も無いのに食べ物を得るために、万引きするなど論外ではあるけれど、
“そこそこ”だったら、現代文明に背を向け、オノレが信じた道を生きるのも、まぁ“アリ”かと。

少々話はズレるが、作中、エスペラント語を喋る双子の片割れ・キーラーを見て、
「うちのおじいさんはエスペラント語を喋る」と言っていた同級生を思い出した。
その家は、裕福ないわゆる知識階層で、
おじいさんは戦争反対を訴え、戦中、政治犯として投獄されていたらしい。

映画の幕の下ろし方は、少々綺麗すぎるようにも感じる。
だって、お舅さんジャックと、せっかく折り合いがついたのに、
その後、子供総動員で、レスリーの遺体を土から掘り起こし、持ち逃げした上、
勝手に火葬して、その灰を飛行場のおトイレに流しちゃうって、どーヨ?!
それが、いくらレスリー本人の希望だったとしても、レスリーの親にバレたら、
大変な問題に発展することは想像に容易い。
本作品は一応ハッピーエンディングで幕を下ろしたが、
もし“その後”があるなら、婿VSお舅さんドロドロの闘争勃発は避けられないことでしょう。

あと、あんなに大学に行きたがっていた長男ボウドヴァンが、結局ナミビアへ旅立ってしまったのもねぇ…。
おじいさんも授業料は心配要らないと言ってくれていたし、せっかく有名校に軒並み合格したのだから、
大学に進学しておけば良いのに…、と俗物の私は思ったのでした。

大陸美女名鑑:張天愛

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近頃、“張天愛 太子妃”、“張天愛 妖猫伝”、“太子妃 空海”といった
張天愛(チャン・ティエンアイ)関連と思われる検索ワードで、当ブログにお越しになる方々が案外多い。



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張天愛主演ドラマ『太子妃狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』が日本に上陸したとはいえ、
視聴がかなり限定されるCSでの放送なので、こういう反響はちょっと意外。

実は私、『太子妃狂想曲』が現地で話題になった2015年、早速張天愛を検索したのだが、
彼女はあまりにも急に有名になった女優さんなので、当時は引っ掛かる情報がほぼ皆無であった。
今でも彼女に関する情報は決して多くはなく、しかも真偽のほどが不確かと感じる物も多いので、
スルーしようかとも思ったのだけれど、とても勢いがあって、まだまだ伸びしろを感じる女優さんだし、
知りたい人も多いようなので、張天愛で久々に当ブログの“大陸美女名鑑”を更新いたします。

 情報の真偽が未だ錯綜しているので、内容に責任はもてないからっ!と先にお伝えいたします。
全てを鵜呑みにしないように!



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まずは簡単なプロフィールを。

氏名        :張天愛 (拼音:Zhāng Tiānài)
日本での通称:チャン・ティエンアイ
英語名          :Crystal Zhang
本名              :張嬌 (Zhāng Jiāo)

生年月日  :1990年10月28日
出身地        :黒龍江省・哈爾濱(ハルピン)
身長     :165センチ
学歴     :北京電影學院・進修班


まず年齢だが、“1988年生まれ”説もあることを記しておく。
「女の年齢はただの数字」とも言いますし、そこら辺を深く突っ込むのは無粋でございます。
(私自身、普段そういう事は煙に巻いているので、年齢には寛容。ま、本当に1990年生まれかも知れないし。)

最終学歴は、お馴染み北京電影學院なのだが、通っていたのは“進修班”。
どっぷり本科生ではなく、研修生だったのであろう。

と言うのも、張天愛には、その前に、日本への留学期間がある。
張天愛は、かつてインタヴュで、「高校生の時に日本へ行った」、「日本では、高校と大学に通った」、
「大学で専攻していたのは服飾デザイン」、「この時の経験が、私に独立した生活能力を養ってくれたと思う」、
「当時日本では髪を色とりどりに染めるのが流行っていて、
同級生たちと同じように、私も染めていたのだけれど、帰国する度に、母からお小言を言われ、
美容院へ連れて行かれ、染め直された」などと語っている。
しかし、暮らしていた場所の地名や学校名、滞在期間などは不明。
両親が仕事で忙しかったため、日本に住む親戚に預けられていたという未確認情報が有ったり、
「日本へ留学させたり、北京電影學院の授業料が払えるくらいだから、裕福な家庭の出なのでは?」と
推測するファンも居る。
(家族に関しては、張天愛が彼らを守るため、インタヴュでもあまり語りたがらず、謎が多い。)


留学を終え、帰国後は、北京電影學院に通い始め、同時にモデルのお仕事を開始。
初めての演技のお仕事は、2008年、
韓承桓(ハン・スンファン)監督が手掛けたショートフィルム『落櫻~Cherry Blossom』。
この韓承桓は韓国人だが、北京電影學院で学び、中国語にも精通し、
大陸でのお仕事を多く手掛けている監督さん。

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『落櫻』は、初恋の約束を守るため、北京からソウルへ渡った張天愛扮する女の子・麗娜が、
民という善良な青年と出会い、彼に助けられながら、初恋のお相手を探し出そうとするが、
彼はもう死んでいた(!)という話みたい。ビターな初恋残酷物語?
このショートフィルムで共演したのは、金秀賢(キム・スヒョン)。
数年前、『星から来たあなた~별에서 온 그대 來自星星的你』がヒットし、中華圏でブレイクした金秀賢だが、
当時はまだ研修生で、張天愛と同じように無名の新人。二人とも、この数年で一気に人気者になりました。
張天愛は、金秀賢について、「とても良い俳優さんで、彼から学ぶ事は沢山ありました。
機会があれば、また共演したい」と語っている。



『落櫻』の後も、仕事のオファーが絶えず、芸能界をトントン拍子で渡り歩いてきたかというと、そうでもない。
我々日本人が注目すべきお仕事と言うと、ドラマ『二炮手~The Legendary Sniper』くらいか。

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孫紅雷(スン・ホンレイ)&海清(ハイ・チン)主演のいわゆる抗日ドラマ。
張天愛が演じているのは、中国東北部の訛りがある日本軍軍医・淩織羽。
なんと日本語の台詞もあり、張天愛本人の声だというから、試しに聞いてみたが、
うーん、まぁ、普通の中国人の日本語という感じでしょうか。
興味のある方は、ご自身で探して、聞いてみて下さい。
ま、一応、この役で、2015年、第2回店影視節文榮獎の最佳女配角獎(最優秀助演女優賞)を受賞。

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文榮獎は、2014年創設の賞なので、まだ“権威ある賞”という感じではないかも知れないが、
張天愛が受賞した2015年の主演男優賞と主演女優賞は、それぞれ、
『偽裝者~The Disguiser』の胡歌(フー・ゴー)と
『紅いコーリャン~紅高梁』の周迅(ジョウ・シュン)という大物である。
(この結果だけ見ると、えっ、抗日絡みばかり?!とドン引きする日本人も居るかも知れないけれど、
実際『偽裝者』はとてもよく出来た面白いドラマだし、抗日とは関係無い作品も数多く受賞している。
ノーベル賞作家の小説が原作で、映画版が有名な『紅いコーリャン』も相当な名作と想像。)



このように、そこそこ働いてはいたものの、デビューからブレイクまでの6年間に受けた主だった仕事は、
6本のドラマと2本の映画。しかも、脇のチョイ役ばかり。
ギャラも安く、キツかったであろう。
張天愛、2013年頃には、お馴染み中国最大のショッピングサイト淘寶Taobaoに…

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“小愛的魔法衣帽間”の店名で出店し、お洋服やファッション小物などを販売。
(恐らく日本通であろう張天愛は、化粧品など、日本の製品の代行販売もしていたみたい。)
モデルをしていただけあり、女子の好みに敏感で、評判は上々。本業より儲かっていたらしい。


しかし、張天愛の夢はあくまでも女優。
その夢を掴むために、本気のダイエット計画を実施。
食生活の改善に加え(←最初の一年は、トマトと胡瓜の水煮ばかりを食べ続けたという)、
本人が“魔鬼級”と表現する凄まじい運動を続け、
デビュー当時58キロあった体重を、2年かけ、15キロ落とすことに成功!

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確かに、『落櫻』の頃に比べ、輪郭がスッキリし、少々野暮ったかったお顔が、垢抜け顔に。


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ナイスなボディをキープするために、勿論今でも運動は欠かさない。

他、美容では、保湿と美白に取り分け注意。
フェイシャルマスクはケチってはならない!
予防に勝る治療ナシ!夏と限らず一年中、室内でも日焼けには気を付けるべし!
ビタミンを豊富に含む新鮮な果物は“美容の神器”!
運動で大量に汗をかき、内側からデトックス!等々と張天愛サマは仰っております。
美は一日にしてならず。



6年間のこのような潜伏期間を経て、2015年、いよいよ訪れたビッグチャンス。

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侶皓吉吉(ルー・ハオジジ)監督の目に留まり、
ドラマ『太子妃狂想曲<ラプソディー>~太子妃升職記』の主人公・張芃芃に大抜擢!
いや、その時は誰もがそのチャンスを“ビッグチャンス”だとは思っていなかったのかも知れない。
なにせ、ネット配信の低予算ドラマなので。
ところが、そんなB級なドラマが、同時期に放送された超A級なドラマ
『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』より話題になってしまったという嬉しい番狂わせが発生。
このドラマで、現代のチャラ男の心を持ったまま古代の太子妃になるという妙な役を演じた張天愛も、
一躍スタア女優の仲間入りを果たしたのであった。



今では、淘寶で小遣い稼ぎをすることもなく(笑)、本業の女優で大忙し。

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ドラマでは、人気の楊洋(ヤン・ヤン)と共演の『武動乾坤~Martial Universe』、
映画では、香港の劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督が手掛ける歴史超大作
『建軍大業~The Founding Of An Army』や、
台湾の王大陸(ダレン・ワン)や香港の任達華(サイモン・ヤム)との共演作
『鮫珠傳Legend Of The Naga Pearls』などが近々の公開を控えている。

『建軍大業』は、人民解放軍の建軍90周年を祝う映画で、プロパガンダ臭があるので、
日本市場向けとは言い難いが、中華圏のスタア総出演で豪華。

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張天愛が演じるのは、“宋家の三姉妹”の次女・宋美齡で、
その夫である蔣介石は、台湾の霍建華(ウォレス・フォ)が扮する。
これ、東京・中国映画週間で上映してくれないかしら…。
ちなみに、シリーズ第1弾の『建国大業』(2009年)は、その中国映画週間で上映された時に私も観た。


まぁ、気になる出演作は色々あるけれど、私の期待が一番大きいのは、(↓)こちら。

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当ブログに幾度となく出している『空海 KU-KAI~妖貓傳』。
夢枕獏の小説<沙門空海唐の国にて鬼と宴す>を、陳凱歌(チェン・カイコー)監督が映画化、
日本の染谷将太&中国の黃軒(ホアン・シュエン)ダブル主演の日中合作映画。

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この映画に、日本からは、染谷将太以外にも、阿部寛と松坂慶子が参加。

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張天愛が演じているのは、胡玉樓の妓生、胡姬の玉蓮。
映画が原作小説に近ければ、空海役の染谷クンとの絡みもあるはず。
私は、白樂天を演じる黃軒を見るのを楽しみにしているんだけれどね…。
(mango一押しの俳優・黃軒については、こちらの“大陸男前名鑑”を参考に。)

この『空海』は、中国で2017年12月22日に公開。
日本でも確実に公開されるが、いつになるでしょう…?
張天愛も、日本語ができるなら、プロモーションで来日してくれれば良いのにねー。




最後に、張天愛の私生活にもチラリとだけ触れておくと(触れられたくないだろうが…)
過去には、李子峰(リー・ズーフォン)との交際歴あり。

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2012年には、バリ島でプロポーズされるも、その後破局。
破局の原因は、李子峰の二股発覚と噂されたが、双方の事務所は、それを否定。結局原因は分からぬまま。
とにかく、この破局で張天愛が受けたショックは大きく、
これを機に、元々使っていた“張嬌”という名を“張天愛”に改名したとも言われている。

念の為補足しておくと…

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李子峰は、モデル出身の俳優。
モデルだから、スタイルは抜群なのだが、醸す雰囲気が若干チャラいのよねぇ~、彼。
(勿論、それはあくまでも偏見に満ち満ちた見た目からのイメージで、実際は超硬派かも知れません。)
最近日本で放送された出演作は、范冰冰(ファン・ビンビン)主演ドラマ『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』
この中で李子峰が演じているのは、“唐の喜び組”武則天の男寵・張易之(7世紀-705)。
登場シーンは僅かだが、李子峰自身が醸すホスト的雰囲気にやけに合った絶妙なキャスティングであった。





皆さま、取り敢えずは、最終回まで残り僅かとなった
LaLaTV『太子妃狂想曲<ラプソディ>』をお楽しみくださいませ♪
張天愛が、美人でも、ただのお飾りにはならず、ぶっ飛んだ演技をできるのは、
ずっと売れっ子アイドルで来た人とは違い、“どうせ今まで売れていなかった”という割り切りもあるのかしら。
失う物が無い強さとでも言おうか…。肝の据わった面白い女優さんですわ。
ドラマの中で、逆立ちしたり、ネット通販をやっている太子妃も、実際の張天愛と重なっっちゃう。
よく無駄な経験は無いというが、張天愛も、下積み時代の経験が、まんま太子妃に投影されているようで。

今回、ここでは、張天愛のみを取り上げたが、『太子妃』はB級のクセに出演者が粒揃いで、
男性陣も美男が贅沢にワッサワサ使われている。
このドラマを観るだけでも、今の大陸芸能界が、いかに人材豊富かが分かります。

素朴な和菓子3種(+テレビ雑記)

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<時尚芭莎(ハーパース バザー)>のための胡歌(フー・ゴー)&霍建華(ウォレス・フォ)や(→参照)、
はたまた金城武の撮影(→参照)のみならず、結構な頻度で日本に出張に来ている
私のお気に入り中国女性フォトグラファー陳漫(チェン・マン)が、
最近も(…と言っても一週間ほど前)また来日。

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トヨタからの招待を受け、トヨタ本社を訪問した模様。
豊田章男社長が直々に出迎え、何だかよく分からないけれど、数量限定の本だとか、
山崎×白州ウイスキー(どうも豊田社長用のオリジナルブレンドっぽい)だとか、
坂本龍一サイン入りCDだとか諸々を贈られ、VIP待遇。
近々、陳漫が、トヨタの広告写真を手掛けるのだろうか。
もしそうなら、中華圏限定ではなく、日本でも見たい!私、陳漫の写真は、とても好き。
トヨタが世界のアートシーンを一応分かっていて、
ちゃんと“陳漫を選ぶ”という感性があったことにも、少し安堵したワ。

あっ、ついでに(↓)こちら。陳漫が最近出してきたお写真。

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雑誌には採用されなかった金城クンin東京(撮影by陳漫)。 ス・テ・キ。

フォトグラファー陳漫については、以前簡単に記したこちらを参照。)




さて、テレビ。黄金周もせっせと録画。

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一本目は、明日、4月29日(土曜)の朝に放送の、NHK BSプレミアム『桃源紀行』
日曜から土曜にお引っ越しした後、初めて観た福建省・漳州を紹介した先週の放送は、
映像が綺麗で内容も良く、想像していたより面白かった。
今回取り上げるのは、中国・雲南省の普洱(プーアール)。そう、普洱茶の産地として知られる、あの普洱。
普洱茶は、「薬臭い…」と嫌う日本人も多いけれど、私は大好きなので、今回の放送も楽しみ。




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翌4月30日(日曜)は、BS日テレの『本当の魅力を知りたい!一歩踏み込む本気旅in香港』
タイトル通り、視聴者のイメージを変える一歩踏み込んだ香港の楽しみ方を紹介する旅番組らしい。
タレントの相沢まきと愛菜が訪れるのは、
繁華街をちょっと離れたところにあるヨーロッパのような街並み、
昔ながらのスタイルを守る絶品飲茶、そして、自然保護区で見られる地球の歴史が刻まれた島々など。
“一歩踏み込む本気旅”というより、“香港定番スポット”の予感がし、
なんとなく、どこで撮影したのか想像がついてしまうし、レポーターにもあまり惹かれないのだけれど、
香港の映像は見るだけで、気分が上がるから、まぁいいか。




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月を跨ぎ、日が飛んで、5月3日(水曜)&4日(木曜)は、NHK BS1の『地球タクシー』
世界のある街で、タクシーを乗り継ぎ、ドライバーと交流しながら、
様々な角度からその土地を捉えていく、ちょっと変わった紀行番組。
これ、普通の旅番組とは切り口がまた違って、なかなか良い番組。
この週は、2夜連チャン。黄金周スペシャルなのか?
第1夜の3日(水曜)は、ニューヨーク。
タクシードライバーの90%以上が移民で、トランプ政権に揺れる大都会をタクシー紀行。
翌4日(木曜)は、アジアに移ってシンガポール。
マレーシアから独立し、半世紀の間にGDPを100倍にした煌びやかな未来都市で、
そこに生きる人々と触れ合い、 シンガポールの光と影を浮かび上がらせているらしい。




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そして、子供の日の5月5日(金曜)、HNK Eテレが、なんと、『香川照之の昆虫すごいぜ!』第2弾を放送。
カマキリ先生に扮した香川照之が、体を張ってトノサマバッタを熱く解説した第1弾が好評につき、
いよいよ第2弾が制作されたのか…!攻めますね、NHK。
私、昆虫なんてぜんぜん興味無いのだけれど、第1弾にはついつい見入ってしまった。
ジャンルを問わず、何かを純粋に愛するヲタクって、滑稽や不気味を通り越して、もはや神々しく、
あの真剣さには、感動をおぼえる。
カマキリ先生、今回はモンシロチョウをテーマに授業をしてくれるらしい。
離婚発表後初の着ぐるみかしらー。




お菓子は、和の物を3ツ。素朴な定番おやつばかり。

★ くらづくり本舗:くらづくり最中 福蔵

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大きさは、だいたい6センチ角×厚さ3センチ。
皮に、つぶ餡と求肥を詰めた最中。



ひとつめは、創業明治20年、埼玉・川越の和菓子屋さん、
くらづくり本舗(公式サイト)“くらづくり最中 福蔵”

重量感たっぷりのどっしり四角い最中。
皮は、表と裏にそれぞれ“福”と“蔵”の文字。
中のつぶ餡は、甘め。
米飴を混ぜて作る蒸し餡にもやや近い感じで、水飴で甘さをつけた餡特有のねっとりした質感と甘さがある。
餡に隠れている求肥は柔らかで、結構大きい。

形、大きさ、そしてつぶ餡と求肥の組み合わせも、紀の国屋の人気商品“相国最中”に似ている。
一番の違いは餡で、こちらの方が甘い。
食べ応えがあり、これはこれで美味しいが、紀の国屋・相国最中と、くらづくり本舗・福蔵の二者択一なら、
私個人的には、餡が甘くてもあっさりとした相国最中の方を選ぶかも。

★ 富久屋:プレミアムいちご大福

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大きさは、直径約5センチ。
丸々一個の苺を、白餡と共に、お餅で包んだ大福。




こちらも埼玉のお店で、創業明治45年の富久屋(公式サイト)から“プレミアムいちご大福”
随分前に一度食べたことがある物。

ここの苺大福の一番の特徴は、白餡を使っていること。
苺を味を殺さないよう、餡の量を極力控えるお店も多いけれど、これには充分な量の白餡が包まれている。
苺はジューシーで、爽やかな酸味が、餡の甘さと調和。
外のお餅は、柔らか過ぎず、適度な弾力あり。

私、苺大福は、断然白餡派なのだけれど、白餡を使った苺大福を売ってるお店は案外少ないので、
これは貴重で、嬉しい。
(普通の小豆餡を使った苺大福の方がより広く出回っているということは、
世間では、そちらの方が支持されているという事?)
富久屋では、1月限定で、普通の白いお餅の代わりに、黒ゴマを練り込んだお餅を使った
“黒ごま いちご大福”というのを販売しているそうなので、そちらもいつか機会があったら、試したい。

★ 小池菓子舗:あわまんじゅう

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大きさは、直径約5センチ。
粟のお餅で、こし餡を包み、蒸し上げたお饅頭。



最後は、小池菓子舗(公式サイト)“あわまんじゅう”
福島県のお店らしいが、東京のデパートの催事場でお馴染みのお菓子。

普通のもち米ではなく、もち米に粟を混ぜたお餅を使ったお饅頭。
もっちりした食感で、粟特有のプツプツの食感もちゃんと残っている。
中には、素朴なこし餡。

粟大好き!雑穀サイコー!
これ、デパートで、湯気を立てて実演販売をしているのを見ると、ついつい買ってしまう。
でも、店頭で食べることはまず無く、家に持ち帰るため、
冷めちゃうし、ちょっと置くと、硬くもなってしまうのだけれど、
電子レンジでチンすると(←ちゃんと蒸し器で蒸すに越したことない)、
まるで蒸したてのようにモッチリ感が蘇り、美味。

映画『シチリアの恋』

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【2016年/中国/100min.】
2013年10月、中国・上海。
大学で知り合った中国人の小悠と、韓国人の俊浩は、付き合って3年になる恋人同士。
今は一緒に暮らし、同じ建築事務所に勤務。
この幸せがずっと続くものと当たり前のように思っていた小悠に、
ある日、俊浩が「イタリアへ帰って、夢だったオペラを学ぶ!」と唐突に宣言し、上海を発ってしまう。
俊浩が謝罪してくれば、許して仲直りしようと思っていた小悠だが、
俊浩は、たった一通のメールも寄こさなければ、電話にも出ない。
不安が募り、何も手に付かず、家に籠り切りの小悠のもとに、信じ難い知らせが入る。
それは、俊浩がシチリアの山で事故に遭い、亡くなったという知らせであった…。



当初、わざわざ観る必要ナシ!と自分の中で捨てていた本作品が、
香港の關錦鵬(スタンリー・クワン)プロデュースによる
台湾の林育賢(リン・ユゥシェン)監督久々の新作である事に気付き、急遽鑑賞。

林育賢監督作品が日本で公開されるのは、『ウエスト・ゲートNo.6』(2007年)以来なのでは。
林育賢監督作品だったら、私はドキュメンタリー作品の『ジャンプ!ボーイズ』(2005年)が好きで、
その次の『ウエスト・ゲートNo.6』には、あまりビビッと来なかった。
彭于晏(エディ・ポン)がドラマから映画俳優へ移行するターニングポイントになった作品と言っても良いであろう
『翻滾吧!阿信~Jump Ashin!』(2011年)は、ずっと観たいと思いながら、実は未見のまま。
結局、今回は、私にとって、『ウエスト・ゲートNo.6』以来久々の林育賢監督作品ということになる。




物語は、上海で一緒に暮らしていた中国人の恋人・小悠に突然別れを告げ、
シチリアで亡くなった韓国人青年・俊浩が隠し続けていた秘密を徐々に紐解きながら、
彼女に対する彼の深い想いを描くちょっぴりホロ苦いラヴ・ストーリー

アイドル映画特有の、かなり無理矢理な話である。
上海の大学で、中国人の女の子と、韓国人留学生が知り合い、恋に落ちるのは、大いに有り得る話。
恋人同士の二人が、やがて大学を卒業し、同棲して、同じ建築事務所に勤めるのも、結構。
でもさぁ、その韓国人男性・俊浩の実家がシチリアだなんて、随分強引よね(笑)。

なんでも、俊浩はまだ9歳の時に、父を脳腫瘍で亡くしたため、姉・秀貞と共にシチリアへ移住し、
22歳で上海に留学するまで、そこで暮らしたらしい。
父親が亡くなった時、母親もすでにいなかったのだろうか。
孤児になった幼い姉と弟が、シチリアで養子になったという設定か?
それにしては、養父母の影がまったく無く、苗字も韓国姓“朴”のまま。
逆に、まだ子供だった姉と弟が二人だけで見知らぬ異国で生き延びてきたと考えた場合、
経済的に困窮している様子が微塵も無いのは、少々不可解。


これはあくまでもアイドル映画、リアリティを追及するなんて無粋。はい、分かっております。
なので、“実家がシチリア”には目を瞑るとしても、じゃあ、“父と同じように脳腫瘍発症”は如何なものか。
ポスターの印象から、シチリアを舞台にした若い男女の爽やかラヴ・ロマンスを想像していたので、
まさか本作品が、かなり“今さら感”のある難病モノだったとは想定外。

映画の原題『謊言西西里』は、“シチリアの嘘”の意。
不治の病を発症した俊浩は、恋人・小悠を悲しませたくなくて、善意の嘘をつき、シチリアへ帰郷。
そして、案の定早々に亡くなり、お葬式まで執り行われたにも拘わらず、
なぜか上海へ舞い戻り、小悠を見守るという超常現象(?!)が発生。
しかし、実は、これ、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)のように、
幽霊になって恋人のそばに居続けるファンタジーではない。
俊浩がちゃんと生身の人間である点が、多少新しい?


出演者のほとんどが華人で、主な舞台が上海でありながら、主人公の一人が韓国人なので、
劇中使われる言語も気になるところだが、中国語6:韓国語4くらいであった。
俊浩の恋人・小悠は韓国語が分かるという設定なので、俊浩は韓国語、小悠は中国語で喋り、会話が成立。
さらに俊浩は、“韓国語が分かる”という設定ではなさそうな人たちにも、韓国語で喋っている。
さらにさらに、9歳からドップリ暮らしているイタリアでも、イタリア語が口をつくことは無く、韓国語。


そのイタリア・シチリアで実際に撮影を行っているのは、本作品の一つの売り。
…が、イタリアのシーンは極めて少ないし、本作品を観ることで
「うわぁ~、シチリアへ行きたーい…!」と旅情を掻き立てられる魅力的な映像も、正直言って無かった。
(看板に偽りあり。この物語は、どう考えても、『シチリアの恋』ではなく、『上海の恋』。)




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主演の男女二人を演じているのは、中国人の女の子・顧小悠に周冬雨(チョウ・ドンユィ)
韓国人留学生の朴俊浩に李準基(イ・ジュンギ)

2010年、張藝謀(チャン・イーモウ)監督に見出され、『サンザシの樹の下で』でデビューし、
6年後、『七月與安生~Soul Mate』で、ついに金馬獎・主演女優賞を手にするまでに成長した周冬雨。
ノリに乗っている彼女だが、日本での公開作品は、『サンザシの樹の下で』以来、これがまだ2本目。
日本で観られる数少ない周冬雨出演作が、なぜよりによってコレなのだか…。
我が儘言ったり、膨れっ面したり、コロコロ笑ったと思ったら、目にいっぱい涙を溜めたりと、
観衆が求めるキュートな周冬雨ちゃんを演じてくれてはいるけれど、いかんせん、作品自体が弱い。
私は、周冬雨主演作品だったら、『七月與安生』と
金城武と共演している『喜歡·你~This Is Not What I Expected』が観たい!
『七月與安生』は、『七月と安生』という邦題で、
2017年3月、第12回大阪アジアン映画祭でなら上映されている。
評判の良い作品だし、一般劇場公開の運びとなることを願う。

ちなみに、周冬雨が、映画でキス・シーンを披露するのは、本作品がお初。
この映画は、周冬雨ちゃんの、“銀幕ファースト・キス作品”なのです。
『サンザシの樹の下で』では、白い木綿のパンツを一生涯穿いていそうな雰囲気の純朴な少女だったけれど、
こうやって徐々に大人のオンナに成長していくのですねぇ。シミジミ…。


もう一人の主演、韓国人俳優・李準基にとっての“お初”は、中国映画への出演。
林育賢監督は、文化の違いなどに対する心配から、出演を渋っていた李準基に会うため、
自ら3度も韓国へ赴き、彼を口説き落としたらしい。文字通りの“三顧の礼”。
そんな李準基は、1982年生まれで、もう35歳だったのですねー。
この映画では、大体22歳から25~26歳の俊浩を演じている。
李準基ファンは、彼が実年齢より約十歳も若い男の子を演じているのを見て、どーなの…??!
一番若いシーンだと、まだ大学生。同じ大学に通う小悠を好きになり…

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学食でみんなを総動員したフラッシュモブで交際申し込み…!
30代も半ばで、“学食フラッシュモブ”は小っ恥ずかくてキツかろう。

この俊浩、学生時代はチャラい感じなのだが、小悠に対しては一途で、真剣に交際を続け、
遂には「小悠、君は僕の女王様。僕は君の運転手で、料理人で、掃除人で、修理工で、そして永遠のATM」と
自分が小悠様にお仕えする僕(しもべ)であるばかりか、お金をも献上すると宣言し、プロポーズ。
ちょっと、ちょっと、俊浩サイコーではないの。私もできることなら、俊浩と結婚したい。

しかし、そんなサイコーな俊浩に、脳腫瘍という病魔が襲い掛かる。(キターッ!韓流のお約束・発病っ!)
取り敢えず手術を受けるのだが、“命の次に髪が大事”って感じの韓流スタアが、
これ程度の娯楽映画一本のために、本当に髪を剃るわけも無く…

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ニット帽を被って“開頭手術しました感”を演出。
で、(↓)一度だけ見せるツルツル頭は、特殊メイクで処理。

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映画では、かなり“引き”の映像なので、自然に見えるが、実はこんなだったのですね~。
うわぁ~、まるで“手縫いのバレーボール”。

台詞は、前述のように、韓国語が多く、あとは簡単な中国語が少々で、イタリア語は喋らない。
シチリアでは、韓国人の姉との会話がメインなので、イタリア語を口にしない事は問題無いのだが、
スパゲッティをズズッとすすって食べるのは、問題…。9歳からどっぷりイタリア育ちで、あれはない。
日本と韓国の俳優は、スパゲッティを食べているところを見てしまうと、幻滅させられることが多いのです…。
いかにもズズッと食べそうな冴えないオッサン俳優だったら、「やっぱりね」と流せるのだが、
世間で“イケメン”と評されている明星だと、ギャップに萎え、百年の恋も冷める。
イ・ビョンホンもキムタクも福山雅治も皆“ズズッ!”であった…(3人とも、私は別に元々ファンではないが)。
周りが教えるべきだと思うが、ある程度有名になってしまうと、誰も何も言えなくなってしまうのだろうか。




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他の出演者も簡単に見ておくと、小悠の隣人・田博に阮經天(イーサン・ルアン)
小悠と俊浩が勤める建築事務所の経営者で、二人の良き理解者でもある馬帥に邢佳棟(シン・ジャードン)
その事務所の同僚・Lubiに熱依扎(レイザ)などなど。

私のお目当ては、李準基より阮經天であった。
阮經天は、林育賢監督の『ウエスト・ゲートNo.6』に出た御縁での登板だったのか、
“特別出演”という感じで、あまり登場シーンは多くはなかった。
本作品は、あくまでも小悠と俊浩のラヴ・ストーリーだし。
それでも、私にとっては、俊浩より、阮經天扮する田博の方が、大人っぽい雰囲気でずっと好みであった。
(実際には、李準基と阮經天は、共に1982年生まれの同じ年。)
今回は小さな役でも、この田博と小悠の“次の恋の予感”を匂わし、映画は幕を下ろす。

『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の寧嬪でお馴染みの哈薩克(カザフ)族の女優・熱依扎は、
なんか既視感があると思ったら、知らず知らずの内に、この前に観た出演作
『あの場所で君を待ってる』(2015年)を重ねていた。
外国絡みの映画に、革ジャン着て、ショートヘアで出演しているのが、共通点。


あと、これ、犬映画です。

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俊浩が小悠に贈ったフレンチブルドッグの戇戇が、可愛い。
周冬雨は、新作の『喜歡·你』でも、犬と共演しているみたい。そちらの共演犬は、恐らくブルテリア。






俳優でも裏方でも、大陸を目指す人が激増している近年の台湾テレビ映画業界。
大陸に拠点を移し、成功した台湾人監督の筆頭は、“ちん・まさみち”こと陳正道(レスト・チェン)であろう。
私にとってのマサミチ最高傑作はずっと台湾映画『花蓮の夏』(2006年)であり、
大陸へ移ってからは、娯楽作品ばかりを撮るようになってしまったのが、本当に残念でならないのだけれど、
マサミチが器用な監督で、何を撮っても上手いのは事実。
自分好みかどうかは別としても、マサミチが撮った大陸娯楽作品は、
『101回目のプロポーズ』(2013年)にしても、『20歳よ、もう一度』(2015年)にしても、確かに面白い。

林育賢監督は、7歳年下のマサミチと比べてしまうと、「うーン…」って感じ。
企画に恵まれなかったとも言えるが、“腕”の問題も多いにあると感じる。
本作品は、バリバリのアイドル映画であることは想定内だったけれど、難病モノであることは想定外。
李準基を出演させるからには、李準基ファンが喜びそうな韓流テイストにしなければ!と考えたとしても、
それで“難病モノ”にするのは、安直だし、古臭い。
“発病→愛するがゆえ嘘をつき→雲隠れ”という点は、中韓合作映画『最後の晩餐』(2013年)にも似ている。
勢いのある若手人気女優を起用し、わざわざシチリアで撮影を行っても、
それらが魅力になっていないのも、演出力の問題かと…。

まぁ、これ、もし李準基が出演していなかったら、日本で公開されることなどなかった映画であろう。
観られなければ、どういう作品か気になってしまっただろうから、取り敢えず観ることができて良かった。
そういう意味では、李準基サマに感謝だが、
これも、大陸での公開がもう少し遅かったら、限韓令/禁韓令の影響で、お蔵入りになっていたかもね。

大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』①

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現代の北京。
今夜もパーティーへ出向き、ナンパに精を出す女好きの張鵬。
そこへ乗り込んで来たのは、かつて張鵬に弄ばれた女性たち。
彼女たちが発するただならぬ殺気に気付き、逃げようとする張鵬だが、有ろう事か、プールに転落。
先に落ちた女性のハイヒールで頭部を蹴られ、意識が薄らぐ中、みるみるプールの奥深くへ…。

どれくらいの時間が経過したのだろうか。張鵬は目を覚まし、幸運にも自分がまだ生きていることを知る。
ところが、張鵬の居る場所は、見覚えの無い部屋。
傍らで、張鵬が意識を取り戻したことを、心底喜んでいる女の子にも見覚えなんか無い。
さらに張鵬を驚愕させたのは、自分の姿形が、すっかり女性に変わってしまっていたこと!
傍らに居るこの女の子、籬によると、張鵬はこの国の太子妃で、名を“張芃芃”といい、
籬は昔からずっと自分に仕えている侍女らしい。

なぜこんな事に!そうだ、もう一度死ねば、現代に戻れるに違いない!
そう思いつき、張鵬は何度も自害を試みるが、全て失敗。
現代に戻ることは、そう容易いことではないと悟り、ここで太子妃・張芃芃として生きる覚悟を決める張鵬。
いざ決心したら、ここも案外悪い所ではない。
だって、張芃芃が取り仕切るこの場所は、美女選り取り見取りの後宮なのだから。
心はプレイボーイのままの張芃芃は、嬪妃たちを呼び集め、楽しくワイワイ。
後宮の中に、これまでには無かった女性たちの和やかな交流が生まれる。
夫である太子・齊晟も、張芃芃の人格がガラリと変わったことを不思議に思い始め…。



2017年4月初旬、LaLaTvでスタートした大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』が、
その月の下旬に、全19話の放送を終了。
まさかこのドラマが日本に入って来るとは思いもしなかった。
せっかくだからこの機会に!と意気込んだものの、時間的余裕が無く、なかなか録画に手を付けられず…。
しかし、いざ観始めたら、テンポが良いのでサクサクと進み、
結局、リアルタイムで御覧の皆さまよりちょっと遅れた程度でゴールイン。

期待と不安が背中合わせの“怖いもの見たさ”で鑑賞し始めたのだが、結果から言うと、思いの外楽しめた。
ツッコミ所も満載だし、色んな意味で“語りたくなるドラマ”。
ブログの字数制限だの掲載画像容量に引っ掛かってしまいそうなので、
これも、以下のような3部構成で記録を残す。

大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』①
ドラマ全般について。

キャストについて。

その他、美術、衣装、音楽について。


興味のある方は、お時間に余裕のある時に、気長にお読み下さいませ。
では、早速、ひとつめの項目より。

★ 概要

本作品は、2015年、大陸のLETV 樂視網でネット配信されたドラマ。
女性作家・鮮橙(シエンチェン)による同名小説<太子妃升職記>のドラマ化で、
ネット配信の低予算作品でありながら、結果的に、同時期放送の超大作
『ミーユエ 王朝を照らす月~羋月傳』以上に話題をさらったダークホース。

私が、このドラマが“まさか日本に入って来るとは思わなかった”理由の一つは、
そう、まさに、これがネット配信のドラマであったから。
現地では、一話20分強×35話で配信されていたので、日本の放送枠には合わないと思った。
日本のテレビ放送向けに、編集し直したのだろうか。


この意外なヒット作のメガホンをとったのは、1980年生まれの侶皓吉吉(ルー・ハオジジ)監督。

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数多くの著作が映像化されている人気作家・海岩(ハイイェン)の息子。
お顔が若干森進一化しているのは、2003年、古天樂(ルイス・クー)の小麦色の肌を目指し、
旅先のモルディヴで日焼けを試みたところ、焼け過ぎ、水疱、出血を伴う重度の火傷を負ってしまい、
回復の整形手術を施したものの、失敗し、顔面が硬直。
当時は、俳優をメインに活動していたため、自殺を考えるほど絶望。
家族の支えなどがあって、立ち直り、名前も、元々使っていた侶蕭から→侶皓、
→そして、現在使っている珍しい“侶皓吉吉”に改名している。

『太子妃狂想曲』は、そんな侶皓吉吉の単独監督作品第2弾。
これがマサカの大ヒットとなり、いきなり人気クリエイターの仲間入り。
(共同監督なら以前にもやっているし、フォトグラファーとしてもすでに一定の成功は収めている。)


本作品のヒットで、ビッグプロジェクトに関わるようになり、
藝術總監(アート・ディレクター)として『將軍在上~Oh My General』に参加。
(元々は、監督をするはずだったのに、どのタイミングでアートディレクターに変わったのだか…??)

この『將軍在上』が、どれくらいビッグプロジェクトなのかと言うと、
テレビドラマでありながら“電影級”を謳っており、例えば、衣装は日本のワダエミが担当。

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侶皓吉吉は、ワダエミを“一生的偶像”、“唯一的女神”と称賛。
高齢になり仕事量をセーヴしている大先生を、三顧の礼をもって口説き落としたらしい。

日本からは、ワダエミのみならず…

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『レッドクリフ』(2008年)の“パ・パ・パ・パッパラッパ♪”でお馴染みの岩代太郎が音楽で、
また、ベテラン美術監督の小澤秀高も美術指導で参加している模様。



話戻って、『太子妃狂想曲』。
このドラマは、裏方の侶皓吉吉監督のみならず、
出演俳優たちにとっても、結果的に、予想だにしなかった出世作となっている。
本ドラマには、著名な俳優はほとんど出ておらず、大半は新人。
配信開始当初、ほぼ無名だった彼らは、ドラマの人気と比例して、知名度みるみる右肩上がり。
その多くが、このドラマを機に、人気俳優の仲間入りを果たしている。

★ 物語

ひょんな事から、古代の王朝・南夏にタイムワープしたばかりか、
男性の心を持ったまま、美人の太子妃・張芃芃に化けてしまった現代のチャラ男・張鵬が、
奔放な振る舞いで、男女を問わず、人々を翻弄もすれば魅了もし、
気が付けば、骨肉の争いに巻き込まれ、太子・齊晟とその弟・九王の間で揺れるが、
やがて齊晟と純粋な愛情で結ばれるまでを描くラヴ・ストーリー



“穿越”と呼ばれるタイムワープの物語が、中国で人気になって幾久しい。
男女が入れ替わる話だって、古くは大林宣彦監督の『転校生』(1882年)から、
記憶に新しいヒット作『君の名は。』(2016年)まで、一体これまで何本の作品が作られてきたことか。
このドラマは、もはや定番のそれら2ツの要素を合体させたに過ぎないが、
元の人物・張鵬が、女好きのチャラ男で、
よりによって、古代王朝の高貴な太子妃・張芃芃になってしまうという、極端に差がある設定が新しい。

女好きが女になってしまうなんて、悲劇にも思えるが、そうでもない。
だって、張芃芃(=張鵬)が居るその場所は、美女の宝庫・後宮なのですから!
自分自身、姿形が女性になったのだから、
もう堂々と後宮の美女をはべらせ、ハーレム気分を味わえてしまうわけ。

そのように、このドラマは、男性の心のまま女性になった張芃芃の
自由奔放な後宮ライフを描いているのかと思いきや、
その内、張芃芃は、見た目と中身が融合していき、皇族の男性たちとも情を交わしていくようになる。
そう、これ、時代もジェンダーも常識も超越しちゃった、色んな意味でボーダレスなラヴ・ストーリー!なの。

そんな究極の愛の形(?)を面白可笑しく描いたハチャメチャ喜劇なのだと思っていたら、
徐々に皇族の骨肉の争いが激化していき、さらに外敵との戦いも勃発し、意外にもシリアスなドラマに展開。

意外と言えば、『太子妃狂想曲』のタイトル通り、太子妃としての張芃芃のお話なのだと思い込んでいたら、
早くもドラマ中盤で、太子・齊晟が皇帝に即位し、それに伴い張芃芃も皇后に昇格したのは、ちょっと意外。
あら、だったら『皇后狂想曲』じゃない!と思ったけれど、
改めて考えてみたら、このドラマの原題は『太子妃升職記』。“升職”は“昇格”、“昇進”の意。

そんな風に張芃芃が位を上げていくサクセス・ストーリーの側面も無きにしも非ずだが、やはりメインはラヴ。
現代で遊びまくっていたチャラ男が、古代で運命のお相手と巡り合い、
チャラかった自分を葬り去る“改心のラヴストーリー”とも言えるし、
神様が、チャラ男にお灸をすえるため、古代へ送り込んだ“天罰の穿越ドラマ”とも言えそう。

★ 時代背景


一種の時代劇なので、時代背景は気になるところ。

この物語の舞台は、“南夏”という架空の王朝。
ドラマ第1話で、侍女の籬が、“中国”という国名は勿論のこと、
唐/武周の武則天(624-705)も知らないことから、それ以前の時代であることは確か。
あちらでは、南北朝(420-589)の要素を取り入れていると考える人が多いようだ。
南北朝時代の有名な皇帝には、宋武帝・劉裕(363-424)、魏太武帝・拓跋(408-452)、
陳霸先(503-559)、周武帝・宇文邕(543-578)等々がいるが、
本ドラマの皇帝と同じ“齊晟”という名の皇帝は存在しない。

また、ドラマ後半、戦いが勃発し、皇帝齊晟が親征していくのは、“漠北”ならぬ“北漠”。
もし“漠北”なら実在し、戈壁(ゴビ砂漠)の北、外蒙古のこと。

念の為補足しておくと、実際の南北朝時代、主だった民族は、
漢人、匈奴人、鮮卑人、羌族、氐族などだったらしい。





次の大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』②では、キャストについて。

大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』②

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2017年4月、LaLaTvで放送された大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』
ひと月の間に、全19話を終了。


あれこれ語りたくなるドラマで、ブログの容量に引っ掛かってしまうため、
以下のような3部構成でドドーンと掲載。

ドラマ全般について。

大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』②
キャストについて。

その他、美術、衣装、音楽について。


興味のある方は、お時間に余裕のある時に、気長にお読み下さいませ。
この②では、キャストについて。
このドラマのキャストは、低予算作品とは信じ難いレベルの高さ。美男美女含有率は、A級ドラマ並み。

★ キャスト その①:チャラ男の心を宿したプリンセス

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張天愛(チャン・ティエンアイ):張芃芃~現代のチャラ男・張鵬から古代の太子妃に

お調子にのって女遊びを続けていたところ、案の定女たちから恨みを買い、プールに突き落とされ、死にかけ、
意識を取り戻すと、自分がなぜか大昔で美女に化けていて、
人々から“張芃芃”と呼ばれ、かしずかれているという、時代も性別も超越してしまったプリンセス。



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元のチャラ男・張鵬を演じているのは、金田明夫を若くしたみたいな顔の
張林煥(チャン・リンホアン)こと張志遠(チャン・ジーユエン)
1987年生まれのモデルで、バツイチの子持ち。離婚の原因は妻から受けた家庭内暴力で(…!)
約5年半の婚姻生活の間で、少なくとも5百回はビンタを食らい、流血事件も起きたと嘆いている。
女難に遭うという意味では、ドラマでも私生活でも同じ??

チャラ男という生き物は、物事をあまり深く考えないので、基本的にポジティヴ。
張鵬も、大昔に飛ばされ、張芃芃という太子妃に化けてしまったという受け入れ難い惨事以上に、
自分が今居る場所が、美女選り取り見取りの後宮である事に喜びを見出し、ウッハウハ。
しかも、見た目は美女になっても、内面はあくまでも男のままなので、
ホンモノの女性たちとは違い、ネチッこい嫉妬などはせず、開けっ広げでサバサバしているから、
本来興味の無い同性の男性たちをも惹き付けてしまう。性別の垣根を超えモッテモテの張芃芃。
声は、張芃芃として振る舞っている通常は女性の声で、心の内は男性の声で吹き替え。
普段は、吹き替えに批判的な私だけれど、このドラマの場合、中国の吹き替え文化が効果的に作用。


太子妃になった張鵬、つまり張芃芃を演じている張天愛については、語り出すと長くなるので、
こちらの“大陸美女名鑑:張天愛”をご参考に。
このドラマを機に一気に注目を浴びるようになった女優さんなので、
どんな演技をするのか、気になっていたのだけれど、実際に見て、人気の理由を納得。
若い美人は“お飾り”に納まってしまうことが多いが、
張天愛は、“中身が男(しかもチャラ男)”という特殊な役ゆえ、
美しい容貌とギャップのある、豪快で開放的、時にスレッ枯らしにさえ感じる演技が、見ていて清々しい。
猫を被ったカワイ子ちゃんより、吹っ切れて飛ばしている美人の方が、同性から支持されるものなのです。
大胆で度胸もあるし、これからまだまだ伸びると予感させる女優さん。

★ キャスト その②:南夏ロイヤルファミリー

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盛一倫(ション・イールン):齊晟~太子、後に皇帝に即位

太子は、陰険な太子妃・張芃芃とは不仲で、趙王の妃である優しい江映月を寵愛していたが、
中身が張鵬になったことで、性格が著しく好転した張芃芃に、少しずつ惹かれていく。
惹かれたところで、表現下手なため、ついついツッケンドンな態度をとってしまい、
張芃芃に気持ちが伝わらず、関係はギクシャク。そう、齊晟は、世に言う“ツンデレ”タイプ。
私、別にツンデレに興味無いし、最初の内は、齊晟を特別良いとは思わなかったのだけれど、
見続けている内に、ベラベラ喋らず、昔気質でストイックな彼が、
徐々に素敵に見えてくるというマジックにかかってしまいましたわ。ドラマ制作者の思うツボ!

演じているのは、1992年生まれ、杭州出身の新星・盛一倫。
高校卒業後、北京でファッションデザインを勉強中、モデルの仕事を始め、
2012年、ショートフィルムに出演したことで、演技に興味が湧き、北京電影學院で研修生としてお勉強。
2015年、初めての大役、本ドラマの齊晟で、太子妃・張天愛と同様、一躍人気者の仲間入り。
楊洋(ヤン・ヤン)を大人っぽくしたような、スッキリ古風な顔立ちだから、時代劇の扮装がお似合い。
(私はオヤジ贔屓なので、個人的な趣味からすると、彼はまだ若くて線が細すぎる。
最低でももう数年は寝かせ、熟成するのを待ちたい、って感じ。)

時代劇で素敵に見えた明星の、現代のお召し物姿を見て、ウゲッ!と失望することって有りますよね?
盛一倫はどうでしょう。彼を画像検索すると、ドドーッと出てくるのが、(↓)このようなお写真。

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西海岸or2丁目でモテそー。
迷彩だの星条旗だのというド派手なパンツに、クタビレたぬいぐるみを合わせるという斬新なコーディネイト!
こういう感性、私にはよく分からないけれど、面白いから、もう“あり”って事にしておこうかしら。
ただ、もう売れたから、こういうお仕事は受けなくても良いと思います。
もし私がマネージャーなら、盛一倫は当面のところ肌見せNGにして、ストイックな硬派路線で売るわ。

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ほら、フツーにしていた方が素敵。整った綺麗な顔だし。

とにかく、お仕事は絶好調で、侶皓吉吉が次に手掛ける『將軍在上』でも主演を張る。

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共演は、こちらも人気急上昇の若手女優・馬思純(マー・スーチュン)。
二人とも、ワダエミの衣装がとてもお似合い。このドラマも、日本で観られる機会が来るでしょうか??



于朦朧(アラン・ユー):齊翰~皇子 太子・齊晟の弟 通称・九王 

九王は、太子妃・張芃芃に想いを寄せ、兄である太子・齊晟とはライバル関係。
九王も太子と同じように、クールで高貴ではあるが、太子より繊細で柔らかな雰囲気。
『流星花園』で言うと、花澤類のような立ち位置で、微妙な関係の張芃芃をそっと支えてくれる人。

演じている于朦朧は、太子役の盛一倫より年上の1988年生まれ。
新疆維吾爾自治區烏魯木齊(新疆ウイグル自治区ウルムチ)出身(民族は漢族)。
日本だと子供に付けることはまずない“朦朧(Ménglóng/もうろう)”という変わった名前は、どうも本名みたい。
(画数の多い難しい漢字だが、“もうろう”と入力すると一発で“朦朧”と変換されるため、
実は我々日本人にとっては、全出演者の中で最も扱い易い便利な名前。)
香港の吳彥祖(ダニエル・ウー)や、“ブルネイの貴公子”吳尊(ウー・ズン)を若くした感じにも見え、
彼もまた日本人女性に好まれそうな顔(&やはり2丁目ウケ良さそう)。
本ドラマの後には、楊冪(ヤン・ミー)+趙又廷(マーク・チャオ)主演で、意外なヒットになったドラマ
『三生三世十里桃花~Eternal Love』にも出演と、幸運にも話題作への参加が続いている。
『太子妃』と『三生三世』の2本で、すでに“古裝美男”、“古裝男神”とも称されている。



江奇霖(ジャン・チーリン):趙王~皇子 太子・齊晟の兄 妃は江映月

趙王は、“フィーリングカップル5vs5”の5番席の“オチ”担当の人みたいな立ち位置(←昭和育ち限定ネタ)。
正統派美男の兄弟の中で、一人だけズレた存在。
自分の妃・江映月が、弟の齊晟と関係していることをちゃんと知っているが、
寛大なのか、無関心なのか、のらりくらり(←実は内心傷付いている…)。
中国語で“妻を寝取られた男”を意味する“戴帽子(緑の帽子を被る)”という表現通り、
趙王はよくグリーンの頭巾を被っているため、張芃芃から嘲笑される始末。
ただ、趙王自身は、“戴帽子”という慣用表現を知らない様子。
色で視覚的に地位などを表す封建時代の中国では、
古代から、緑は卑しい身分の人間に使われがちな色だったようだが、
“戴帽子”の表現は、どうやら、ずーーっと後世の清代くらいから使われるようになったみたい。
あちらでは、緑の帽子を被ることは、我々日本人が想像している以上に滑稽らしく…

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日本では緑の帽子がトレードマークのクロネコヤマトさえ、
中国では帽子の色をベージュに変えているのは、有名な話。

そんな寝取られ亭主・趙王は、弟たちと違い、正統派美男ではないし、少々馬鹿っぽくもあるが、
素直で面白く、しかも実は案外聡明で、私、結構好き。もしかして、3兄弟の中で一番好きかも。

扮する江奇霖は、1985年生まれ、実際にも3人の中で一番年長の30超え、四川省涼山出身の彝(イ)族。
私、この彼が、男性2人組ユニット・青島飛魚の片割れ“七零”で…

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『僕のSweet Devil~海派甜心』の中で羅志祥(ショウ・ルオ)の大学の友達・巴雙を演じていたなんて、
まったく気付かなかった…!改めて思えば、確かに、“七零Qīlíng”≒“奇霖Qílín”。(↑画像右端)

今は、(↓)こんな感じ。

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『僕のSweet Devil』の頃から随分大人っぽくなり、垢抜けもした。なんか日本人っぽいかも。
中華圏って、正統派イケメンは沢山居るけれど、こういう“ムサ苦しい系イケメン”は、あまり居ない気がする。
今後、どういう活動をしていくのか楽しみに見守りたい。

★ キャスト その③:その他

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海鈴(ハイリン):籬~張芃芃に仕える侍女

籬は、御主人様・張芃芃に忠実な侍女。屈託がない明るいイイ子。
演じている海鈴は、1992年生まれで、2014年に芸能界入りを果たしているけれど、
広く知られるようになったのは、やはりこの『太子妃狂想曲』。
このドラマの中で、籬を演じている彼女は、若い頃の章子怡(チャン・ツィイー)にも見え、可愛らしい。
ただ、スラリとスタイルいいなぁ~と思っていたら、やはり身長が170あるようなので、
実物は、カワイイ系というよりキレイ系かも。


安泳暢(アン・ヨンチャン):江映月~趙王の妃でありながら齊晟と関係

江映月は、本来張芃芃と徒党を組むべき彼女の遠縁だが、齊晟を巡り、対立関係。
いや、張芃芃は広い心で江映月を受け入れているのだが、江映月の方が勝手にライバル心をメラメラ。
江映月役の安泳暢は、中央戲劇學院に在籍中の学生でありながら、本作品でデビューを果たし、
その後もコンスタントにお仕事のオファーが有るということは、
恐らく人を魅了する何かを持っている女優さんなのだろうけれど…

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私は、江映月に、美容研究家の故・鈴木その子センセをどうしても重ねて見てしまい、なんか駄目であった…。
蝋人形or亡霊っぽい質感の白塗りメイクのせい…?



郭俊辰(グオ・ジュンチェン):楊嚴~重臣・楊豫将軍の息子

楊嚴はロイヤルファミリーの一員ではなく、重臣の息子なのだが、
慕っている九王にいつもくっ付いている少年。
この郭俊辰も、本作品でデビューを果たした新人で、1997年生まれの、まだティーンエイジャー。
デビュー後に北京電影學院に進学し、現在も在籍中の学生。
『旋風少女 第2季』にも出演し、もう若手人気アイドル俳優道まっしぐら。
若過ぎて、妄想でさえ「お付き合いしたい♪」などと不埒な欲望を私に湧かせない郭俊辰だけれど、
このドラマで演じている楊嚴は確かに可愛い、鼻血を流している姿さえ可愛い。
『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』の飛流を比べてしまうと、私は飛流派だが、
でも、楊嚴も飛流に通じる小生意気な可愛さがある。





次で最後。
大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』③では、、美術、衣装、音楽などについて。

大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』③

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2017年4月、LaLaTvで放送された大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』
ひと月の間に、全19話を終了。


あれこれ語りたくなるドラマで、ブログの容量に引っ掛かってしまうため、
以下のような3部構成でドドーンと掲載。

ドラマ全般について。

キャストについて。

大陸ドラマ『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』③
その他、美術、衣装、音楽について。



興味のある方は、お時間に余裕のある時に、気長にお読み下さいませ。
今回はいよいよ最終章。

★ 美術

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製作費の多い少ないは、セットや小道具に顕著に表れるもの。
実際、本作品は、お金のかかった超大作と比べ、明らかにチープなのだが、
それが“ポップ”、“キッチュ”と表現できる安っぽさで、ちゃんと作品の“個性”として成立している。
勝因は、お金が無いのに“それっぽく”見せようなどと背伸びせず、無いものは無いと割り切り、
時代考証なども無視して、これまでの一般的な史劇の常識に囚われない
“画”で見せるという発想の転換をしたことであろう。
“画”の見せ方をもう少し具体的に言うと、色のコンビネーション。
予算上使えない凝った細工の調度品などは、サッサと諦め、何もかも簡単にべったりとペイントし、
それら色の組み合わせで、画面を成り立たせている。

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中国伝統建築まで、真っピンクやグリーンにペイントしてしまう大胆さ…!
(撮影終了後には、また元の色に塗り直し?このままじゃ、他の史劇の撮影に使えないし。

使われているのはヴィヴィッドな色ばかり。
香港からマレーシア一帯の50~60年代庶民派住宅っぽい色使いに見えたり、
もしくは、中国風と言うより、南欧風にさえ見える。そう感じたのは…

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スペインの奇才ペドロ・アルモドバル監督の、取り分け初期の頃の作品の色使いを連想したからかも。

★ 衣装

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衣装のコンセプトも、美術に通じる。
時代考証には縛られず、時間と手間のかかる刺繍などはほとんど施さず、“色”で見せる衣装。

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色とりどりの無地のシフォンを重ねた女性の衣装は西洋的で…

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私は、アルベルタ・フェレッティのコレクションをふと重ねた(←褒め過ぎだけれど)。

でもね、実際に侶皓吉吉監督が目指した衣装は、ミラノの最先端モードではなく、こちら(↓)

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新古典主義の画家ジョン・ウィリアム・ゴッドワード(1861-1922)が描いた女性たち。
そのインタヴュ記事を読み、「なるほど、そこだったか!」と、やけに納得。
私の中でモヤモヤしていた疑問に、はっきりした回答を出してもらった感じ。
(ジョン・ウィリアム・ゴッドワードはイギリスの裕福な家庭の出身だが、
モデルの一人であったイタリア人女性と恋仲になり、家族に縁を切られ、イタリアへ駆け落ち。
彼が描く女性たちは、イタリア渡航前も後も、イタリアの古典的な雰囲気がありますね~。)



男性の衣装にも西洋の匂いがして…

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足元が、古代ギリシャ人やローマ人を彷彿させるサンダルだったりする。


男性の衣装で、私がもっと気になったのは、甲冑。
戦場で身を守る甲冑は、本来、肌を極力覆うべきかと思うが、
このドラマの甲冑は、有ろう事かマサカのノースリーヴ…!!

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東急ハンズのパーティーグッズコーナーとかで売られているコスプレ用筋肉スーツかと思ったぁ~…!
太子、涼しい顔しているけれど、これ、相当変ヨ。


あと、皆さま、日本の放送を観ていると、
太醫たちの頭部に血が滲んだような赤いシミが有るのが、気になりませんか?

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日本の放送では、ボカシ処理されているが、実は宮仕えに相応しい高級品でありました(笑)。

★ テーマ曲

オープニングは、インストゥルメンタル曲をバックに、短く簡単な映像(←簡単でも印象に残るナイスなOP。)
エンディング曲は、<可念不可說><漩渦>の2パターン有った?(要再確認)
ここには<漩渦>の方を。本編の吹き替え声と違うので、気付きにくいが、歌っているのは齊晟役の盛一倫!
バラードもイケるこの歌唱力は意外。太子は、顔が良いだけではなく、ノドも良かったのですね。







こういうタイムワープのドラマを観ていると、最後には元の時代に戻るのか、
戻るなら、タイムワープ先の時代とどのように決別し、どのように元の場所へ戻り、物語を完結させるのか、
…といった事が気になってくる。
『太子妃狂想曲』では、最終回の第19話で、放送終了時間間近になっても、
張芃芃がいつまでも古代に居座っているから、ええぇー、もしかして現代に戻らないままThe End?!と焦った。
実は最終回だけ、他の回より、放送時間が長く(←でしたよね?)、結局は現代に帰って、張鵬の姿に戻り、
そこで、運命のお相手・齊晟らしき医師と時空を超えて再会するのだけれど。

張鵬は、ドラマ冒頭では女好きなチャラ男古代で太子妃・張芃芃になっても、中身は女好きなチャラ男のまま
徐々に外見と同じように心も女性化し、同性である男性もイケるようになり
完全に女性となって、齊晟と相思相愛!…といった経緯を経て、
普通の+男女の恋物語として、ドラマは着地したものと視聴者に思わせておき、
最後の最後、あの現代のシーンで、やっぱり+同性愛を匂わせるという軽いドンデン返しを用意し、
幕を下ろしたのが、大変よろしい。
これが、現在ホームドラマチャンネルで放送中の台湾偶像劇『アニキに恋して~愛上哥們』だと、
表面上同性愛モノ風にしていても、結局はイイ年した男女のイチャイチャをひたすらタレ流しているだけという
生ヌルさが退屈だし、気色悪くもある。


このドラマは、期待と同じくらい、「こんなの本当に流行ったのか?!」という疑いの気持ちで観始め、
実際、自分の好みにドストライク!という作品ではないのだが、意外にも楽しめてしまった。
スピーディーに展開していく物語の面白さは勿論あるけれど、
それ以上に私を唸らせたのは、もしかして、このドラマに関わった“人々そのもの“なのかも知れない。
厳しい検閲に縛られている中で、あれこれ策を巡らせ、よくこんな奇抜なドラマを作ったナ、と。
100%の自由を与えられた人より、縛りがある中に居る人の方が、工夫をするし、
鍛えられて、感性が研ぎ澄まされていく傾向はあると思う。
(大陸では、若い感覚の『太子妃狂想曲』のような奇抜なドラマが制作される一方、
最近では政治腐敗を描く社会派ドラマ『人民的名義~In The Name Of Pepole』も大ヒットしているし、
とにかく守備範囲が広く、しかも、作りが巧妙。)

“縛り”は、当局の検閲のみならず、予算も。
昨今、大陸のドラマや映画は超大作化が進み、お金ばかりかけて中身空っぽとの批判も多いが、
お金なんか無ければ無いで、それでも面白い物を作れてしまうと証明してしまったのよ、このドラマは。

そういう諸々が出来てしまうのは、結局のところ、“人材豊富”という点に行きつくのだが。
人が多いのは、やはり大陸の強み。
14億近い中から、篩にかけられ残った人は、それはそれは凄いに決まっている。
『太子妃狂想曲』なんか低予算ドラマで、起用されている大半は、当時ほぼ無名だった若手俳優ばかりなのに、
なんであんなに粒揃いなの…?!脇役の俳優だって、アジアの他国へ行けば主役級の人材ではないか…。
有名俳優の名前で観衆の注意を引くのではなく、まず作品ありきで、
そこから有望な若手が生まれていくという形も好感度がもてる。
このドラマで、スタア誕生の瞬間(しかも複数の新星の)を見せてもらった気がしましたわ。
彼らの今後の活躍も、遠く日本から見守らせていただきます。
取り敢えずは、確実に日本に入って来る日中合作映画で、
太子妃・張天愛も出演している『空海 KU-KAI~妖貓傳』の公開が楽しみ。

柏餅5種(+『如懿傳』女優続々クランクアップ等々…)

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2016年8月にクランクインした周迅(ジョウ・シュン)&霍建華(ウォレス・フォ)主演の話題のドラマ、
『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』の撮影も、そろそろ終わりに近付いている模様。




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この黄金周の間、まず鄔君梅(ヴィヴィアン・ウー)、
次いで張鈞(チャン・チュンニン)が立て続けにクランクアップ。
(張鈞は、役作りのために3キロ増量したらしいが、それでも充分細いので、
その3キロに意味があったのか、私にはよく分からない。

張鈞は、同郷の同世代の女優・桂綸鎂(グイ・ルンメイ)と比べ、一時期停滞しているように感じていたが、
『武則天 The Empress~武媚娘傳奇』でひと皮剥け、評価も上がり、
より大きな仕事に関われるようになったのではないだろうか(『武則天』自体は、不出来なドラマであったが…)。

この『如懿傳』で、張鈞が演じた珂里葉特·海蘭のモデルは愉貴妃(1714-1792)で、
周迅扮する主人公・烏拉那拉·如懿(1718-1766)と生涯親友であり続ける重要な役。
ドラマの最初から最後まで登場する数少ない人物であるため、
張鈞の撮影も8ヶ月以上に及ぶ長丁場だったという。お疲れ様でした!


ちなみに、このドラマの原作者は、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』と同じ流瀲紫(リウ・リエンズ)。
『如懿傳』は、清朝・雍正年間を描いた『宮廷の諍い女』の続編、姉妹編という位置づけで、
雍正帝の次の世代、清朝・乾隆年間を背景にしたドラマ。


そんな訳で、2作ではダブる人物も居て、数日前にクランクアップしたばかりの鄔君梅が演じた役こそが…

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『宮廷の諍い女』で孫儷(スン・リー)が演じた主人公・鈕祜祿·甄嬛。
孫儷の“その後”が鄔君梅になるワケ。
(念のため補足しておくと、鄔君梅は、『ラストエンペラー』で溥儀の側室・文繡を演じた有名女優。)

で、『宮廷の諍い女』で陳建斌(チェン・ジェンビン)が演じた雍正帝の方は、
『如懿傳』では、張豐毅(チャン・フォンイー)。オッサンからオッサンへバトンタッチ。
張鈞は、『武則天』で張豐毅の嬪妃の一人だったのに、
『如懿傳』だと張豐毅(雍正帝)の息子・霍建華(乾隆帝)のお嫁サマに。
頭を整理して観ないと、混乱しちゃいそう。

なお、『如懿傳』の監督は、清朝・光緒年間を描いた『蒼穹の昴~蒼穹之昴』を手掛けた汪俊(ワン・ジュン)。
清朝は大好きだし、特に乾隆帝は全盛期の皇帝なので、このドラマは本当に観たい!




『瑯琊榜之風起長林~Nirvana in Fire II』の方も、多くの俳優がクランクアップし、横店での撮影部分も終了。
主演に大抜擢の若手・劉昊然(リウ・ハオラン)君は、依然撮影しているようだけれど、
ゴールが見えてきているようだ。こちらのドラマも、興味津々!

ちなみに、アメリカ留学中の『琅琊榜』宗主・胡歌(フー・ゴー)は、
3月上旬に学校に入学したものの、2週間で姿を消し、失踪か?!と俄かに騒がれもしたが、
4月下旬に友人らしき人物と撮った写真が出回り、生存を確認。

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あちらのネット上では、若干太ったことと、スポーツ刈りになったことが話題。
スポーツ刈り、上等。坊主、サイコー。どこが悪い?!手入れが楽だから、刈ったんじゃないの?
私個人的には、毎朝、鏡の前で30分かけ命懸けで髪をセットする男の方が、よっぽど苦手。




さて、本日は5月5日ということで、端午の節句の柏餅をドーンと5ツ!
例年、一番食べるこし餡の柏餅は、今年ぜんぜん食べていない。
今年は、味噌餡の柏餅を食べる機会が多かった。皆さまも、柏餅をお召し上がりになりましたか?

★ たねや:柏餅(みそ餡)

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大きさは、幅8センチ弱。
中に味噌餡を包んだお餅を、柏葉でくるんだ季節菓子。




ひとつめは、たねや(公式サイト)の物。
ここの柏餅は、過去に食べた記憶ナシ。恐らく今回が初めて。

たねやでは、柏餅をバラでは売っておらず…

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こし餡、つぶ餡、みそ餡をセットにして箱売り。
一つだけ、お餅に古代米の赤米を使った物がある。ヨモギは定番だが、赤米は珍しい。
雑穀が好きなので、それを食べようと思ったら、中がつぶ餡だったので、やめた。
(別につぶ餡が大嫌いというわけではない。
でも、他に選択肢があるなら、柏餅の場合、他の餡を選ぶことが多いかも。)

で、結局、選んだのは、味噌餡。
白いんげん豆をベースに、白味噌を混ぜ込んだ餡は、柔らかな甘さの中に、ほんのり塩気。
近江米を使ったお餅は、弾力があり、それでいて瑞々しい。

一個45グラムと小ぶりなので、一気にペロッ。
今回は、味噌餡の物を一個しか食べなかったが、これだったら、3個全部一人で食べられた。
あぁ、赤米の物も試しておけば良かった…。

★ 笹屋伊織:柏餅(みそ)

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大きさは、幅約6センチ。
中に味噌餡を包んだお餅を、柏葉でくるんだ季節菓子。




笹屋伊織(公式サイト)の柏餅は、毎年最低でも一回は必ず食べている気がする。
こし餡、つぶ餡、味噌餡の3種類が売られており、この度食べたのは、味噌餡。

笹屋伊織の柏餅の一番の特徴は、米粉に浮粉を混ぜたお餅を使っていること。
浮粉は、広東点心の定番、エビの蒸し餃子“蝦餃(ハーカオ/ハーガウ)”の
半透明の皮を作る時などにも用いられる小麦粉のでんぷん。

伝統的な柏餅の場合、お団子と同じように、
上新粉を使ったのっぺり、ドッシリとしたお餅らしいお餅を使うけれど、
笹屋伊織の柏餅は、その浮粉の効果で、通常のお餅よりやや透明感があり、質感も瑞々しい。
意識したのか偶然なのか、形もちょっと蝦餃に似ている。

中の餡は、たねやの物より黄色味が強く、西京味噌そのものの色に近い。
きちんと甘く、お味噌の塩分も効いているから、味がボケていない。


普通のお餅より軽く、瑞々しいから、この柏餅には、味噌餡やこし餡のようなデリケートな餡が合う。
つぶ餡だと、お餅が負けてしまう気がする。
(そう思って、つぶ餡だけ未だ試したことが無い。実際には、一番美味しかったりして。)
蝦餃にも似たコロコロした形は愛嬌があるのだが、たねやの柏餅以上に小さく、
激甘党の私には、物足りなさが残る。せめて、もう一回り大きくして。
お餅を巻いている柏葉が、新鮮で活き活きしているのは、印象に残る。
他の地方は知らないけれど、東京で買う柏餅は、大抵葉が乾燥気味なので。

★ 虎屋:柏餅(みそ餡)

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大きさは、幅約
中に味噌餡を包んだお餅を、柏葉でくるんだ季節菓子。




虎屋0422-22-2083)からも、味噌餡の柏餅を。
羊羹で有名なあのとらやではなく、吉祥寺の街角にひっそり佇む和菓子屋さん。
私はここの桜餅が大好きなのだけれど、柏餅を食べるのは初めて。
売られているのは全3種類。
中の餡によって、外のお餅の色が異なり、白=こし餡、緑=つぶ餡、ピンク=味噌餡。
取り敢えずこし餡を試したかったのだが、売り切れにつき、ピンクの味噌餡を。

ここのは、昔ながらの“正しい柏餅”!
上新粉を使った、お団子のようなお餅は、弾力のあるお餅らしいお餅。
中には、まろやかな味噌餡がたっぷり。


気取ったアレンジの無い、こういう正統派柏餅も、やはり良し。
量も気取っておらず、今回食べた物の中で、一番の大きさ。
これぞ端午の節句!柏餅食べたーっ!という気にさせてくれる。

ちなみに、柏葉は、笹屋伊織の物と同じように、ここのも新鮮。
以前、「桜餅の桜葉を食べるように、柏餅の柏葉も食べる人がいる」と聞き、にわかに信じ難かったのだが、
虎屋の柏葉を見て、もしかして食べられるかも…、とふと思いたち、試しに食べてみた。
意外にも、まったくクセが無い。それは、これといった特徴が無いという意味でもあり、
桜葉と違い、塩漬けされているわけではないし、独特な香りも無いので、不味くはないけれど、美味しくもない。
食すのは可能だが、わざわざ食べたい程の物でもないかしら…。
本当に柏葉を付けたまま柏餅を食べる人が居るの…??!

★ 亀屋:柏餅(みそ餡)

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大きさは、幅約7センチ。
中に味噌餡を包んだお餅を、柏葉でくるんだ季節菓子。




虎の次は亀。こちら、亀屋042-385-8181)の柏餅は、戴き物。
こし餡、つぶ餡、味噌餡でセットになっている中から、味噌餡を。
色は、前出の虎屋と同じように、白=こし餡、緑=つぶ餡、ピンク=味噌餡。
(今回戴いた物はどうやらセット売りみたいだが、恐らくバラ売りもしている。)

ここのも、上新粉を使った昔ながらの正統派柏餅。
ピンクの色は、虎屋の物より淡く、上品。
特徴は、上新粉のお餅が水分を多く含んでいること。
そのため、若干ベタつきがあり、葉から剥がしにくいのだが、食感はとても柔らか。
中の味噌餡は、甘さも塩気も丁度よし。

★鶴屋吉信:柏餅(粒あん)

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大きさは、直径約5センチ。
道明寺でつぶ餡を包み、柏葉でくるんだ季節菓子。




鶴屋吉信(公式サイト)の柏餅は、つぶ餡とこし餡の2種類。
こし餡の方は食べたことがあるので、今回は、初めてつぶ餡をセレクト。

鶴屋吉信の柏餅の特徴は、見ての通り、道明寺を使っていること!
桜餅なら、“関西風=道明寺”だけれど、柏餅は、一般的に、関西でも上新粉の普通のお餅よねぇ…??
それとも、それは私の思い込みで、関西では道明寺の柏餅が普及しているのだろうか。

関西の柏餅事情は分からないが、とにかく、ここ東京ではかなり珍しい。
その道明寺は、柔らか過ぎず、適度に弾力があるのが良い。
ただ、道明寺は普通のお餅と比べ、粘性があるため、葉から剝がしにくいのが難点。
桜餅の場合だと、桜葉を付けたまま食べる人も多いので、問題無いけれど、
この道明寺の柏餅の場合、柏葉付きで食べる人は、あまり居ないような気が…。

中の餡は、一見素朴でありながら、味は上品。
良い小豆を使っているのだろう。上手く炊けていて、小豆がちゃんと美味しい。

★ お皿

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ちなみに、お皿は、例年通り、この時期限定使用の桃太郎柄。
桃太郎、来年までサヨウナラ。

映画『イップ・マン 継承』

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【2015年/中国・香港/105min.】
1959年、香港。
詠春拳の宗師・葉問の家では、長男・葉準を佛山へ送り、次男・葉正が今では小学生。
元気が有り余っている葉正は、同級生の張峰と武術の取り組みをし、問題を起こすこともしばしば。
そんな事もあり、ある日、葉問は、張峰の父親・張天志と知り合う。
話せば、車夫として働くこの張天志は、葉問と同じ詠春拳の門下。
「是非、手合わせを」と申し出る張天志に、葉問は返事を濁す。

一方、闇で決闘場を運営するフランクは、
土地開発でひと儲けするため、志仁小学校の土地を買収しようと目論んでいた。
志仁小学校は、そう、葉問の息子・葉正が通う小学校。
フランクから2週間で片を付けるよう命じられた手下の馬鯨笙は、
早速小学校に乗り込み、契約書にサインするよう校長を恫喝。
治安が乱れ、すっかり無法地帯となった香港では、警察も動かず、教員たちは右往左往。
駆け付けた葉問のお陰で、なんとか窮地を脱する。
しかし、馬鯨笙がこれで土地買収を諦めるわけもなく…。



香港の葉偉信(ウィルソン・イップ)監督による
『イップ・マン 序章』(2008年)、『イップ・マン 葉問』(2010年)に続く、葉問(イップ・マン)シリーズ第3弾!



作品は、タイトル通り、ズバリ、葉問(1893-1972)の物語。

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近年、ちょっとした葉問ブームで、葉問関連の映画が何本も制作されたので、
日本でも今や多くの人々に名が知られている葉問。
改めて、簡単に説明しておくと、
葉問は、詠春拳の宗師で、李小龍(ブルース・リー)のお師匠さんとしても有名な実在の武術家。


葉偉信監督の葉問シリーズでは、
1935年から香港へ移住する直前まで、広東省佛山時代の葉問を描いているのが第1弾『イップ・マン 序章』
戦後、香港へ移住し武館を開く1950年からの数年の紆余曲折を描いているのが第2弾『イップ・マン 葉問』
そして、5年ぶりの新作となるこの第3弾『イップ・マン 継承』では、1959年からの約一年を描いている。

第1弾は、時代背景が戦時下ということで、葉問の敵は、日本の帝国軍人。
イギリス統治下の香港へ舞台を移した第2弾では、その敵が宗主国のイギリス人に取って代わる。
このように、これまでの葉問は、中国武術や中国人としての誇りを守るため、
国家を背負って、大きな敵と戦っていたのだが、
この第3弾で、彼が一番守りたかったのは、家族というもっと身近な存在。

次男・葉正が通う小学校が、悪徳ディベロッパーの土地買収工作に巻き込まれたのを機に、
葉問は、PTAのお父さんがボランティアで通学路の巡回をするような感覚で、
学校周辺のパトロールをしたり、悪徳ディベロッパーを退治。
(子供の学校の保護者に、あんな強い父親がいたら、他の親たちも安心。)

息子も勿論可愛いが、本作品で葉問が一番大切にしているのは、
妻・張永成(?-1960)とのかけがえの無い時間であろう。
世の為、友の為に駆けずり回ってきた葉問は、本人に悪気が無くても、家族を二の次にしてしまう傾向があり、
妻・張永成が抱える悩みや不満にもなかなか気付いてやれない鈍感な夫。
気付いた頃には“時すでに遅し”で、張永成は癌に蝕まれ、余命僅か。
葉問は、これまでずっと苦労をかけてきた妻・張永成に寄り添い、
彼女との残された時間を慈しんで過ごすようになる。
本作品は、葉問を題材にしたアクション映画ではあるけれど、
同時に、妻との夫婦愛も、もう一本の重要な柱になってる。


まぁ、アクションやストーリーも良いのだが、
私がこのシリーズで好きなのは、麥國強(ケネス・マック)が手掛ける美術。
アクション映画の一番の売りはアクションであり、美術にハッとさせられる作品は、そう多くは無いのだけれど、
麥國強が手掛ける葉問シリーズの美術は、とても素敵。
シリーズ第1弾『葉問 序章』では、資産家のボンボンである葉問の佛山の御自宅が、息を飲む美しさ。
その後その邸宅は、日本軍に接収され、葉問自身、経済的にドン底に落ち、
第3弾の本作では、立派なお屋敷なんか出てこないのだが、
50~60年代の香港の雰囲気や、キッチュでレトロなインテリアが、非常に魅力的。

他、裏方さんでは、日本の川井憲次が、第1弾、第2弾からの続投で、本作品でも音楽を担当している。





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出演は、詠春拳の宗師・葉問に甄子丹(ドニー・イェン)
もう一人の詠春拳の達人・張天志に張晉(マックス・チャン)
小学校の土地の買収を目論むフランクにマイク・タイソン
フランクの手下・馬鯨笙に譚耀文(パトリック・タム)、警察の肥波に鄭則仕(ケント・チェン)
そして、葉問の妻・張永成に熊黛林(リン・ホン)など。

甄子丹出演作を観るのは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)以来。
『ローグ・ワン』は、“遂にアジア人が『スター・ウォーズ』シリーズに登場!”、
“それを成し遂げたのが、甄子丹!”というインパクトは大きかったけれど、
甄子丹扮するチアルート・イムウェは、あくまでもあの作品のメンバーの中の一人であるため、
“甄子丹堪能作品”としては、物足りなかった。甄子丹を堪能するなら、絶対葉問でしょー!?

アクションは当然良いけれど、この作品での甄子丹は、実は演技も良いのです。
武術家としては100点でも、夫としては失格で、家庭を顧みない葉問。
“家庭を顧みない”と言っても、外に女を作ったり、ギャンブルに溺れておきながら、
大威張りでちゃぶ台を引っ繰り返す暴君のような夫という意味ではなく、
友人知人のために一生懸命尽くすあまり、ついつい身近な家族を後回しにしてしまう昔気質な人情派。
女心に疎く、妻・張永成の悩みや不満にも気付かない。
張永成からお小言をぶつけられると、言い返すこともせず、気まずそうに浮かべる穏やかな表情が、印象的。
やや恐妻家なのであろう。微妙な表情が本当に優しそう。こういうギラギラしていない甄子丹は、とても良い。


その張永成は、黙って葉問を支える糟糠の妻なのだが、実はしっかり者で、夫を尻に敷いているようにも見える。
扮する熊黛林は、モデル出身で、身長約180センチのナイスボディ。
一作目の時は、張永成を演じるには現代的で綺麗すぎ、リアリティがなく、大丈夫か?!と心配もしたが、
回を重ねるにつれ、良くなり、この第3弾で遂に“熊黛林版張永成”が完成したように感じた。
ただ、私は、ドラマ『王子様の条件~拜金女王』で魅力炸裂だった“コメディエンヌ・熊黛林”が好きなので、
葉問シリーズの“影で夫をしっかり支える昔ながらの献身的な良妻”という設定だと、ちょっと歯がゆい。

ちなみに、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)監督の『イップ・マン 最終章』(2013年)にも描かれているが、
実際の張永成は、佛山に一時帰郷していた1951年、香港辺境が封鎖されてしまい、
佛山に足止めを余儀なくされ、その後も夫・葉問とは再会を果たせぬまま、1960年に亡くなっている。
つまり、本作品に描かれている張永成晩年の夫婦愛の物語は、完全なフィクション。

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葉問は、張永成に付き添い病院へ行くことも、一緒にダンスを習うことも、家族写真を撮ることもなかったわけ。
後悔先に立たず、である。実際には、最後まで妻に尽くせなかった葉問の“こうでありたかった”という理想を、
甄子丹が、天国の葉問に代わり、映画の中で、再現しているかのよう。


葉問の対戦相手では、今回、日本でもお馴染みのマイク・タイソンが登場!
葉問とマイク・タイソン扮するフランクの、詠春拳VSボクシング対決が、
本作品一番の見せ場なのだと想像していたら、実際には“中盤の山”であった。

終盤に用意されている作品一の山場は、張晉扮する張天志と葉問の詠春拳VS詠春拳!
葉問も張天志も、遡れば梁贊(1826-1901)の孫弟子、つまり同門なのだが、
車夫をしている張天志は、すでに武術家として名を馳せ、人々から尊敬もされている葉問に、
憧れと尊敬、そして嫉妬が入り混じった複雑な感情を抱いている様子。
ついには、自分こそが正統派詠春拳を受け継ぐ者だ!葉問は亜流だ!と息巻き、闘いを挑むわけ。
幼い頃より本格的に武術を身に付け、“第二の甄子丹”の呼び声高い張晉と、甄子丹の詠春拳対決には、
偽りがなく、迫力満点!


当ブログの来訪者様には、ドラマは観ても、映画俳優には詳しくない、
ましてやアクション俳優など興味ナシ、張晉って誰よ?!という方々も結構いることでしょう。

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張晉は、妊娠中に『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の撮影に臨み、
黒い皇后・烏拉那拉宜修を演じた香港女優・蔡少芬(エイダ・チョイ)の御主人ですヨ。
当時は蔡少芬の方が有名で、格下夫と陰口を叩かれることもあったけれど、
今では超人気アクション俳優。蔡少芬は、あげまんだったようです。


ドラマ絡みでもう一つ言っておくと、汪直に扮した『王の後宮~後宮』で、
悪役ながら、主演の馮紹峰(ウィリアム・フォン)を食う演技で、女性視聴者のハートを掴んだ譚耀文が、
この映画では、ただのクズを演じ、私をイラっとさせて下さった。


そして、もう一人、忘れてはならないキャラクターが李小龍(ブルース・リー)。
第2弾『イップ・マン 葉問』は、蔣岱言(ジャン・ダイイェン)扮するまだ幼いプチ李小龍が
詠春拳武館を訪ねてきて、幕を下ろすが、
この第3弾では、成長し、「オレを弟子にしろ」と再び葉問を訪ねて来る。

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青年になった李小龍を演じているのは陳國坤(チャン・クォックワン)
今回も弟子入りには至らないが、葉問に得意のダンスを教えてあげるシーンなどもある。





私にとって、“葉問モノ”の最高峰は、やはり王家衛(ウォン・カーウァイ)の『グランド・マスター』(2013年)で、
この先もそれを越える作品は出て来ないと予感しているが、
葉偉信監督×甄子丹コンビの葉問シリーズは、エンターテインメント性が高く、これはこれで良し。
ストーリー性が有るし、美術など視覚面でも優れているから、
アクション映画に特別深い思い入れが無い私のような人でも楽しめるアクション映画だと思う。
それに、甄子丹のように本当に武術に精通している人が見せる中国伝統武術って、
指の先まで、型の一つ一つが本当に美しいのよ。あれは、もはや芸術。

そして、この葉問シリーズ、すでに『葉問4~Ip Man 4』の制作が決まっており、
2018年のクランクインが予定されている。

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もはや“渥美清=寅さん”みたいに、“甄子丹=葉問”になり、甄子丹のライフワーク。
次回作には、タイのトニー・ジャーが出るとか、李小龍との絡みがもっと描かれるとか
色々言われているけれど、どうなのでしょう。
日本で観られるのは、早くても2~3年先になりそう?
現地での原題は、『葉問1』、『葉問2』、『葉問3』、『葉問4』と、単純に数字をふっているが、
『イップ・マン 序章』、『イップ・マン 葉問』、『イップ・マン 継承』と、
何かしら漢字2文字を付けて付けてきた日本では、次、どんな漢字をくっ付けるのでしょう。

浅野忠信in中国映画『羅曼蒂克消亡史』

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すっかり忘れておりました、浅野忠信が中国映画に出ていたことを。
その映画とは、程耳(チェン・アール)監督による『羅曼蒂克消亡史~The Wasted Times』


現地・中国では、もう5ヶ月も前の2016年12月に公開。
香港でも、2017年3月末にすでに公開。
香港から遅れることさらに2ヶ月、この5月19日、今度は台湾で公開されるため、
台湾でプロモーションが展開され、私も芸能ニュース等で目にする機会があり、
ようやくこの映画の存在を思い出した。


物語は、簡単に言ってしまうと、暗雲立ち込める30年代の魔都・上海を舞台に、
裏社会のボスを中心とした人々それぞれが抱える思惑をサスペンスフルに描いた群像劇らしい。




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主要キャストは、葛優(グオ・ヨウ)、章子怡(チャン・ツィイー)、浅野忠信。

葛優扮する上海灘の大物・陸先生は、これまでにもしばしば映像作品に登場している
実在の大物極道・杜月笙(1888-1951)がモデル。
他の多くの主要登場人物も、実在のモデルがいるとのこと。

浅野忠信は、その陸先生の妹の夫で、
日本料理店を経営しながら、裏で陸先生の片腕として働く日本人の渡辺。
章子怡は、陸先生の兄貴分・王の妻で、社交界の花。

浅野忠信扮する渡辺は、主要登場人物の中で唯一実在のモデルが居ない
本作品オリジナルのキャラクター。
日本人でありながら、上海語が喋れるという設定なので、浅野忠信は3ヶ月上海語の特訓を受けたらしい。
どうやら、この作品での彼は、変態度(?)が高いらしく、章子怡を地下室に監禁し、強姦もするとのこと。
極悪非道な嫌われ役かと思いきや、その変態日本人・浅野忠信が現地でなかなか評判で、
「変態でカッコイイ」、「この映画の真の主役は浅野忠信」、「中国人より上海語が上手い!」等々
絶賛のコメントを多く目にする。
(実際には、浅野忠信自身の上海語は、一部使われているだけで、あとは吹き替えみたいだけれど。)



他の出演者もザッと見ておくと…

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杜淳(ドゥ・チュン)、鍾欣潼(ジリアン・チョン)、倪大紅(ニー・ダーホン)、袁泉(ユアン・チュアン)、
閆妮(イェン・ニー)、韓庚(ハン・グン/ハンギョン)等々、なかなか豪華な顔ぶれ。

私、杜淳が、大陸でイケメン枠に入れられているのが、どーーーしても納得できないのだけれど、
この映画では、車夫の役らしいので、ホッとした(イケメン御曹司とかじゃなくて、本当に良かった)。

ちなみに、葛優の妹で、浅野忠信の妻を演じているのは、松峰莉璃。
大ヒットドラマ『偽裝者~The Disguiser』で、日本の特攻“南田洋子”(笑)を演じた、あの松峰莉璃!
(大陸を拠点に活動する日本人女優・松峰莉璃に関しては、以前チラリと記したこちらを参照。)




で、この度、この『羅曼蒂克消亡史』が台湾で公開されるにあたり、程耳監督が渡台。
同じく華誼兄弟の制作で、台湾での公開を控えている『ロクさん~老炮兒』の管虎(グアン・フゥ)監督と共に、
昨日、5月11日、台北で、“江湖對談(江湖対談)”なる共同記者会見を開催。

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2作品とも江湖を題材にしているから“江湖対談”ということらしい。
画像で、大きい方が管虎監督、小さい方が程耳監督。
(実物の程耳監督は、この画像を見て、我々が受ける印象よりは、小さくないはず。
なにせ、管虎監督が身長190センチなので、横に並ぶと誰でも必要以上にプチサイズに見えてしまうわけ。)

この会見によると、程耳監督は、浅野忠信出演作を随分観ていて、以前からずーーっとファンで、
まさか出演オファーを受けてもらえるとは思っていなかったらしい。
実際に一緒にお仕事をした浅野忠信は、やはりカッコよく、芸術家タイプ。
撮影の無い時は、部屋に籠り、絵を描いたり、歌を書いたり、ギターを弾いたり。
普段特別な要求をしてこない浅野忠信が、一度だけ言ってきたのは、「部屋を替えてくれ」というお願い。
大きな部屋にはどうも慣れない、もっと小さな部屋にして欲しい、との要求だったらしい。
女性スタッフはみんな浅野忠信に魅了され、
クランクアップの時には、ツーショットを撮るため、長蛇の列ができたのだと。



“日本絡み”と言えば、蜷川実花も、程耳監督から熱望され、
北京にて、(↓)このようなポスターを何パターンか撮っております。

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程耳監督は、映画とかアートとか、日本のカルチャーが好きなのかもね。




最後に、映画『羅曼蒂克消亡史』のトレーラーを。







浅野忠信と章子怡が出ていれば、日本でも公開に希望をもてる…?
(私個人的には、章子怡以上に葛優、次いで、倪大紅や閆妮が見たいかも。)
最悪、東京・中国映画週間でなら上映するかしら。
未見の『羅曼蒂克消亡史』の良し悪しは何とも言えないが、
昨年、その東京・中国映画週間で観た『ロクさん』は面白かったので、こちらも日本での一般劇場公開希望。
『ロクさん』は絶対もう一度観たい!
“華誼兄弟・江湖系列”ってことで、2本一緒に日本に入れるというのは、如何でしょう。

映画『メットガラ~ドレスをまとった美術館』

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【2016年/アメリカ/91min.】
2014年。
NYメトロポリタン美術館・服飾部門のキュレーター、アンドリュー・ボルトンは、
8ヶ月後の来年5月に開催予定の新たな企画、“鏡の中の中国”展の準備に取り掛かる。
これまで、西洋のデザイナーたちにインスピレーションを与え続けてきた神秘の国・中国。
彼らが中国から影響を受け創作した作品を求め、パリへ飛んだアンドリュー・ボルトンは、
イヴ・サンローランの膨大なアーカイヴの中から、名作の数々をピックアップ。
北京では、故宮の建福宮で、“鏡の中の中国”展開催の記者会見を行ったり、インタヴュにも応じたり。
地元NYに戻ると、美術館で打ち合わせ。
メトロポリタン美術館が誇る東洋美術の素晴らしいコレクションと共に、
ファッションを展示をすることに、難色を示す同僚も少なからず。
通常の3倍の規模で開催するこの展覧会では、仕事が山積みな上、
思うように事が運ばず、時間ばかりが過ぎてゆき…。


2017年4月半ばに日本で公開されてから、ずっと観に行かねば!と思っていた
アンドリュー・ロッシ監督作品を、ようやく鑑賞。

…と言っても、これまで日本に作品が入って来ていないアンドリュー・ロッシ監督のことは知らない。
『Eat This New York』(2014年)を発表して以降、ずっとドキュメンタリー作品を撮り続け、
特に、<ニューヨークタイムズ>紙編集部に一年間密着して撮った作品、
『Page One: Inside the New York Times』(2011年)がかなり高く評価された監督さんみたい。


そんなアンドリュー・ロッシ監督のこの新作で邦題にもなっている“メットガラ”とは、そもそも。
メットガラの様子は、近年、日本のごく普通の情報番組の中などでも流れるので、
名前くらいは知っていても、具体的には何なのかよく認識しておらず、
漠然と“一年に一度、セレブが奇抜な格好で集まるイベント”と思っている日本人も多いのでは。

まず、“Met(メット)”は、ニューヨークにあるMetropolitan Museum of Art(メトロポリタン美術館)の通称。
そこの服飾部門・Costume Instituteが、
毎年、一年分の運営資金を集めるために行う“Gala(祭典)”が、“Met Gala(メットガラ)”。
より正式には“Costume Institute Gala ”だが、“Met Gala”、“Met Ball”と呼ばれることが多い。
本作品の原題『The First Monday in May』からも想像がつくように、
毎年ほとんどの場合、5月の第一月曜に開催。

メットガラは、服飾部門がメトロポリタン美術館で行うその年の服飾関連展覧会の
言わばオープニングイベント。
なので、展覧会の内容とリンクしており、展覧会のテーマがそのままメットガラのテーマとなり、
セレブたちは、そのテーマに沿ったお召し物で、集まる。

例えば、今年、2017年5月4日から9月4日までメトロポリタン美術館で開催されているのは
“Rei Kawakubo/Comme des Garçons: Art of the In-Between”と題された川久保玲をフィーチャーした企画展。

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よって、2017年5月1日に行われた今年のメットガラのテーマもズバリ“川久保玲”。
与えられたテーマがあまりにも具体的すぎ、逆にイメージが捉えにくくなってしまったのか、
なんでこれが川久保玲なの?と首をかしげたくなるセレブが今年は多かったように感じた。
解釈は人それぞれなので、別に構わないのだけれど…。



長い前置きはこれくらいにして、本作品について。
本作品は、2015年、メトロポリタン美術館・服飾部門が企画した
中国をテーマにした“鏡の中の中国~China:Through the Looking Glass 中國:鏡花水月”という展覧会の
準備段階から開催までの約8ヶ月を追ったドキュメンタリー作品

そう、私が本作品を観たかった一番の理由は、
メトロポリタン美術館のこの企画展に、並々ならぬ興味があったから…!

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その企画展、及び、その年のメットガラに関しては、当ブログで、以前こちらに記した通り。


で、本作品はと言うと、
メットガラに集まるセレブ達を、ただ単にカメラに収めただけの、ワイドショー的な作品ではない。
“鏡の中の中国”展の企画、準備、そして迎えるオープニングイベント、
世界が注目するたった一夜のメットガラに至るまでの裏のお仕事を追った“お仕事ドキュメンタリー”なのだ。
ワイドショーと言うよりは、“超豪華版『情熱大陸』”って感じかも。


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パリや北京へ飛び、打ち合わせや交渉をしたり、
美術館へ送られてきた服を丁寧に扱い、展示方法を決めたり。
通常の3倍の規模の企画展だし、それぞれの人の意見をスリ合わせないといけないから、
準備期間に8ヶ月は少な過ぎる忙しさ。

最も重要な展示室のみならず、ゲストを迎えるエントランスの飾り付け一つ決めるのにもコダワリ。
当初、階段の両脇に2体のドラゴンを設置するという案が出ていたのだが、
安っぽいチャイニーズレストランみたいだとか、ウォータースライダーみたいだとか批判的な意見が多く…

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結局、青花瓷をイメージした巨大なオブジェがホールにドカーン!
壺の周囲を埋め尽くしてるのは、25万本の白いバラ。ドラゴンよりずっとシックで素敵。
このエントランスに一歩足を踏み入れただけでも、すでに非日常の世界に迷い込んだ気分にさせてくれそう。





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ここで、とにかく、このドキュメンタリーに登場する重要人物を3人だけ挙げておこう。
“鏡の中の中国”展を指揮するメトロポリタン美術館キュレーター、アンドリュー・ボルトン
メトロポリタン美術館服飾部門を主宰する編集者アナ・ウィンター
そして、“鏡の中の中国”展のアーティスティック・ディレクター、映画監督・王家衛(ウォン・カーウァイ)


3人の中でさらに本作品の“最重要人物”となると、キュレーターのアンドリュー・ボルトンであろう。
アンドリュー・ボルトンは、ランカシャー出身のイギリス人。
パンク・ムーヴメントには乗り遅れ、その後来たニューロマンティックに少なからず影響を受け、
17歳で、メトロポリタン美術館服飾部門のキュレーターになりたいと漠然と夢を抱き、それを実現させた人。

未だ19世紀的な思考が根深く、ファッションが純粋芸術から見下され、正当に評価されない中、
2011年、急逝したアレキサンダー・マックイーン(1969-2010)の回顧展、
“Alexander McQueen: Savage Beauty”を企画。
これが、ファッション関連の展覧会としては異例の大当たり!
しかし、その成功が、アンドリュー・ボルトンにとっては負担にも。
何かにつけ、アレキサンダー・マックイーン展を引き合いに出し、比較されるようになってしまったわけ。
いつもそれを超える新たな何かを生み出そうとしていて、彼は、2014年、“鏡の中の中国”展を企画。

“鏡の中の中国”展は、西洋のデザイナーが中国からインスピレーションを得て創造した服を中心に、
インスピレーションの源となった中国の映画や美術品などで構成。
作中、名前の挙がった映画は…

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ベルナルド・ベルトルッチ監督『ラストエンペラー』(1987年)、
張藝謀(チャン・イーモウ)監督『紅夢』(1991年)、
陳凱歌(チェン・カイコー)監督『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993年)、
そして、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督『花様年華』(2000年)。
どれも私が大好きな美しい映画ばかり!

アンドリュー・ボルトンは、西洋人が抱きがちな、間違ったステレオタイプの中国にはならぬよう、
細心の注意を払いつつ、批判をも恐れず、革新を興そうとするの。
彼のファッションに対する純粋な愛と情熱が伝わって来るし、仕事に対する真摯な態度には、敬服するばかり。


アナ・ウィンターは、言うまでもなく、アメリカ版<VOGUE>の名物編集長。
ちなみに、彼女もまたイギリス人である。
『プラダを着た悪魔』(2006年)のモデルになるほど怖い鬼編集長のイメージがあるアナ・ウィンターは、
まぁ、実際かなり厳しい人で、怖いんだろうけれど(笑)、
本作品を観ると、怖くても、人々がついてきて、成功者となっただけのことはあると、改めて感心させられる。
取り分け優れていると感じるのは、ビジネス・センス。
なんでも、彼女がこれまでにメットガラで集めたお金は、約1億2千万ドルにも上るとのこと。
但し、ただ単にお金集めが得意なだけではなく、
ちゃんと根底には、ファッションに対する熱い想いが感じられるので、見ていて不快にはならないし、
こういう人が居てこそ守られる文化もあるのだと思える。
登場シーンの大半で、スターバックスのLサイズのカップを手にしているのは、“いかにも”でクスッ。
ファッションのみならず、スターバックスへの貢献も大きいアナ・ウィンター。


前出の『花様年華』を手掛けた王家衛監督は、この展覧会のアーティスティック・ディレクター。
アドバイザーのような立ち位置。
毛沢東の肖像や人民服を、仏像と一緒に展示することに対し、
「政治的意味合いは関係なく、中国人や仏教徒に対し冒涜になりかねない」と
西洋人には考えの及ばない事を、華人目線で意見したり、
同じ華人に対しても、例えば「中国の古い伝統ばかりに重点を置くのは如何なものか」と疑問を投げ掛ける
香港の大実業家・曹其峰(サイラス・チョウ)に対し、「伝統無くして、現在はない」と説き伏せたり、
多くの品を展示しようとするアンドリュー・ボルトンには、
「沢山見せることは、何も見せないのと同じ」と、王家衛監督らしい独自の美学を語ったり。
言葉は少なく、喋り方もゆったりとおとなしいが、一言一言が的確(ちなみに、監督は英語で喋っております)。
王家衛監督の“裏のお仕事現場”を覗ける機会はなかなか無いので、
映画の現場ではないけれど、ちょっと嬉しかった。




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本作品には、多くの有名デザイナーも登場するので、ごく一部を挙げておくと、
カール・ラガーフェルド、ジョン・ガリアーノ、ジャン=ポール・ゴルチエ、そして郭培(グオ・ペイ)

“ファッションはアートか否か”という疑問に、デザイナーたちが答えているのは興味深い。
自らがファッションをクリエイトする彼らが、皆基本的に「アートではない」と答えるのだ。
「ココ・シャネルだって、自分をアーティストとは思わず、ドレスメイカーだと思っていたはず」
「アートなら美術館に並べられ、ランウェイは歩かない」とカール・ラガーフェルドは言う。
特に、ジョン・ガリアーノのようなタイプのデザイナーは、
自身の創作をアートと考えるのではないかと思っていたので、意外にも謙虚な職人気質に、軽く驚いた。
(久し振りに見たジョン・ガリアーノの、ボトックスやヒアルロン酸を打ち過ぎたかのような顔にも、軽く驚く。)

ジャン=ポール・ゴルチエが、2001年にチャイニーズ・コレクションを発表した裏には、
『花様年華』の影響があったというのも、初耳。
とにかく『花様年華』が好きで、何度も繰り返し観たらしい。


上に挙げた4人の内、郭培だけは、知らない日本人も多いであろう。郭培は中国の女性デザイナー。
中華明星御用達の有名デザイナーなので、中華芸能をそこそこ知っている人なら、
知らず知らずの内に郭培の作品を目にしているはず。例えば、(↓)こちら。

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黃曉明(ホアン・シャオミン)&楊穎(アンジェラベイビー)の可愛い結婚写真を覚えている方も多いでしょう。
この婚礼衣装はデザインby郭培。
他にも、劉詩詩(リウ・シーシー)や陳妍希(ミシェル・チェン)も、中国式婚礼衣装は、郭培に依頼。
ちなみに、黃曉明&ベイベーの婚礼写真の撮影は、
当ブログにしばしば登場する私のお気に入り女性フォトグラファー陳漫(チェン・マン)による。

“鏡の中の中国”展では、多くの展示品が、中国から影響を受けた西洋の有名デザイナーの服なのだが、
そこに混ざって、この中国人・郭培の服も展示。
青花瓷をイメージした白地に青の紋が入った美しいドレスの前で足を止め、
「これはジョン・ガリアーノでしょ」と言ったジャン=ポール・ゴルチエが、
説明書きに記された“Guo Pei”の名を目にし、「グオ・ペイ…!?」と一言だけ口にし、
驚いた表情をしたのは、印象的であった。

そんな郭培の名を中国の外の世界にも知らしめたのは、展示品以上に、(↓)こちらであろう。

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メットガラで、リアーナが身にまとったインペリアル・イエローのゴージャスなガウン!
これは、郭培の“一千零二夜”と呼ばれるシリーズのオートクチュール。

リアーナは、その後お着換えをして、歌のパフォーマンスを披露。
(ギャラは、超高額らしい。電話での交渉の様子も、作品の中で少し見られる。)

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パフォーマンスの時のリアーナでは、頭部に付けられた京劇風の飾りが気になった。
アップで映されなかったので分からないが、ホンモノの“點翠”だろうか。
“點翠”は、金属にカワセミの羽を貼った中国伝統の工芸品。
點翠の鮮やかな青い色は、エナメルなどの色ではなく、自然なカワセミの羽の色。
以前、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』のエントリで少しだけ触れているので、参考に。

念の為補足しておくと、ステージに沢山出ている“黎汉娜(Líhànnà)”は、“リアーナ”の漢字表記。
でも、多分、“蕾哈娜(Lěihānà)”がより広く使われているように見受ける。


ちなみに、中国人デザイナーでは、作中、本人こそ登場しないが、
もう一人、勞倫斯許(ローレンス・シュー)の名前が出てくる。

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勞倫斯許は、2014年のカンヌ映画祭で、范冰冰(ファン・ビンビン)が着て話題になった
“東方祥雲”と名付けられたガウンをデザインした男性デザイナー。
“鏡の中の中国”展でも展示された“東方祥雲”は、藤原紀香もパクッています。
…しかも、パクったくせに低クオリティなのが、情けない。紀香のパクリ問題に関しては、こちらを参照。





ひとつの展覧会が開催されるまでの裏での奔走を興味深く観た。
知識は勿論のこと、並々ならぬ情熱とアイディアが無いと出来ないお仕事。
学芸員軽視の発言をした山本幸三地方創生相にも、観に行くようお勧めしたい。

基本的に“お仕事ドキュメンタリー”というものは、一般の人々が知らないお仕事の世界を紹介するもので、
“見えない所での努力”や“裏での地道な作業”が綴られていくものである。
本作品も、それに当て嵌まり、キュレーターらのお仕事ぶりには、頭が下がるばかり。
でも、これは、ひたすら地味なド根性モノとは、ぜんぜん違う。
ファッション、アート、映画、中国と、私が好きな物ばかりが詰まったドキュメンタリーには、華やかさもあり、
あっという間の夢のような一時間半であった。

メットガラに集まるセレブリティに関しては、賑やかしのパーティーピープルだったり、
ステイタスとして参加しているのであって、美術には大して造詣も興味も無いと見受ける人も結構居る。
(ジャスティン・ビーバーとか …笑。 彼には、あまり喋らせるとマズイという危うさを感じた。)
ただ、一般の人には到底手が出ない高額チケットを買い、
“運営資金を集める”という美術館側の一番の目的に貢献している上、
メディアから注目されることで、展覧会やメットガラの価値を上げることにも貢献しているのだから、
彼らの存在は非常に大きい。
世界が注目するセレブも大富豪もあまり居ない日本では、こんなイベントはまず開催できない。


少々不思議に思ったのは、本作品には、メットガラ当日、あの会場にいた中華明星たちが、
見事にこれっぽっちも映っていなかったこと。

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中国がテーマのメットガラだから、当然、あの日、あの会場には、
中華圏から駆け付けた豪華な面々が豪華なお召し物で大勢参上していたのだ(↑上の画像はごく一部)。
作中、名前が出たのは、オープニングの挨拶が予定されていた鞏俐(コン・リー)だけ。
でも、その鞏俐さえも、姿を現すことはない。
権利の問題が有るのだろうか。それとも、ただ単に、スタアの映像ばかりを増やして、
キュレーターの裏のお仕事を紹介するという作品の焦点がボケるのを避けたいという監督の意向?
もしくは、もっと複雑な裏事情があるの?

まぁ、それは良いとして、とにかく、メトロポリタン美術館の“鏡の中の中国”展は、やはりこの目で観たかった!
このドキュメンタリーを観たら、それだけのために弾丸でニューヨークへ行っても、無駄ではなかったハズだと、
遅ればせながら、少々後悔もした。
2015年8月半ばまでを予定していた会期は、好評につき、延長され、
結果的に、アレキサンダー・マックイーン展を抜く、大成功を収めたらしい。
多少規模が縮小されても構わないから、東京でも巡回展をやってくれれば良いのに…。
映画が公開されたことだし、もし開催されれば、美術館に多くの人が足を運ぶと思います。



2015年、メトロポリタン美術館で開催された特別展、
“鏡の中の中国~China:Through the Looking Glass 中國:鏡花水月”の概要、
及び、その年のメットガラについては、こちらから。


『メットガラ~ドレスをまとった美術館』の公開を記念して、
渋谷のル・シネマにて、王家衛監督特集開催決定。

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上映されるのは、『恋する惑星』『天使の涙』、『ブエノスアイレス』、そして『花様華年』の4作品。
どれも大好きで、何度も観ているし、DVDも持ってるけれど、映画館のスクリーンで観たい!
行けるかどうか分からないけれど。この場合、一番混むのは、やはり『花様華年』なのかしら…。

台湾ドラマ『アニキに恋して~愛上哥們』

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訪れた寺で、隠れていた敵の奇襲に遭うも、ある少年の機転で一命を取り留めたヤクザの杜光柱は、
この少年が親を亡くし、寺で暮らしていると知ると、
楓の季節にちなみ、彼に“杜子楓”の名を与え、自分の家に引き取ることを即決。
子楓は、杜光柱とその妻・鳳姐から、我が子同然に愛され、すくすく成長。
やがて遊園地を経営する企業家となる。

一方、女の子たちからモテモテのイケメン琵亞諾は、大きな秘密をずっと抱え続けている。
実は、この世に生を受けた25年前、
両親が占い師から「女の子なら早死にする。26歳まで男の子として育てなさい」と助言された通り、
男の子として育てられてきた女の子だったのだ…!
家族で必死に秘密を守り続けてきたが、そのリミットも、あと100日程度。

ある日、いつものように、友人の廣超と、移動販売車でホットドッグを売っていた亞諾は、
大勢のチンピラから攻撃を受ける一人の青年を見掛け、持ち前の正義感で、彼を救出。
遊園地を経営する子楓というその青年は、
助けてもらったお礼に、園内でホットドッグを売る権利を贈ろうとするが、
「見返りを求めて助けたわけじゃない」と、その申し出を突っ撥ねる亞諾。
ところが、この子楓が、ヤクザの息子ということで、避けられ、子供の頃からずっと孤独に生きてきたと知り、
彼の親友になろうと決意。
早速、亞諾と子楓は、廟へ出向き、子楓の家族が見守る中、義兄弟の契りを交わす…。


2016年9月末、ホームドラマチャンネルで始まった台湾ドラマ『アニキに恋して~愛上哥們』が、
年を跨いだ2017年5月、全30回の放送を終了。
漠然と、自分には合わないドラマだとイヤな予感はしていたが、懸念していた以上に合わず、
30話が60話にも感じてしまった…。

以下、少々毒を吐かせていただくので、このドラマや出演者のファンは、決して読まぬこと。
勝手に読んで、気分を害しても、当方責任は負いません。

★ 概要

本ドラマを手掛けたのは、陳戎暉(チェン・ロンフイ)監督。
私がこれまでに観た陳戎暉監督作品は、
どちらも私の好みにはこれっぽっちもカスらず、
今のところ、(あくまでも私にとっては)“駄作率100%”という驚異の高確率を誇る監督だが、
好きなタイプと予感しながらも未見のままになっている『僕らのメヌエット~妹妹』を手掛けたのもまた、
この陳戎暉監督作品なのである。


この『アニキに恋して』は、現地台湾では、2015年秋に放送開始。
偶像劇の全盛もとっくの昔に終焉し、、“氷河期”とまで言われているようになった台湾ドラマ界で珍しくヒット。
同時に放送された『結婚なんてお断り!?~必娶女人』などを抑え、視聴率No.1を独走したドラマでもある。

★ 物語

26歳まで男性として生きないと早死にするという占い師のお告げに従い、
女性でありながらずっと男装して生きてきた25歳の女の子・亞諾が、
好きになった男性・子楓にも事実を隠したまま“同性カップル”となるも、
紆余曲折を経て、26歳で晴れて“異性カップル”になるまでを描くラヴ・ストーリー


ザックリ言うと、『花ざかりの君たちへ』や『美男(イケメン)ですね』等と同系列のお話。
つまり、女性であることを隠し、男装している主人公と交流するようになった男性が、
同性であるはずのその主人公にどういう訳か惹かれてしまい、
「なんだ、コイツ、男のくせに可愛いぞ?!」、「マズイ!俺はゲイだったのか?!」と戸惑うが、
最終的に、主人公が異性であったと判明し、フツーの男女の恋愛として着地するというパターン。

女性主人公が、自分の性別を隠し、男装する理由は、作品によって様々。
この『アニキに恋して』の主人公・亞諾の場合、
両親が占い師から言われた「男の子だったら成功したはずなのに、女の子では災難の連続。
26歳まで男性として生きなければ、早死にする」というお告げに従ったがため。
こうして男の子として育てられた亞諾が、実は女の子と知っているのは、本人と両親と、ごくごく身近な人だけ。
(公立の学校に入学する場合、戸籍はどうしたんだ?等々、無数の疑問がとめどなく湧くが、
所詮台湾偶像劇と割り切り、細かい事には目を瞑りましょう。)

子供の頃から男の子として育てられているから、
当の亞諾自身、男として生きることに、特別不自由は無かったのだが、25歳にして、遅ればせながら、
男性に恋をするというオトメ心が芽生えてしまったがため、番狂わせが生じてしまう。

ドラマでは、この亞諾&子楓カップル以外にも、子楓の親友・青陽と謎めいた女の子・娜娜、
子楓の妹・子涵と亞諾の親友・廣超というカップルの恋の行方が描かれる他、
嫉妬から来る裏社会後継者たちの仁義なき戦いや、子楓の養父・杜光柱の失踪の謎が、
サスペンスフルに描かれていく。(←嘘。そこも所詮台湾偶像劇、結果丸分かりで、緊張感も無くユルユル。)

★ キャスト その①:恋するアニキたち

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雅姸(メーガン・ライ):琵亞諾~占い師のお告げで男装して生きる25歳の実は女性

主人公・亞諾は、まさか女性とは思われず、
女の子たちから「キャーッ、あの人イケメン~!」と黄色い声を上げられてしまう男装の麗人。
そんな亞諾役に、雅妍が抜擢されたのは、なんとなく理解できる。
雅妍は、身長174センチ、肉感的というよりスレンダーで、お尻も小さい中性的な体形だから、男装向き。
さらに、男性らしく見せるため、普段より声を低めにしたり、武術にもチャレンジ。

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『逆転!赤ずきん』でも、主人公は武術の達人で、木人樁に“小葉(イップ君)”と名付け、大切にしていたが、
この『アニキに恋して』でも、主人公・亞諾は、木人樁を使い、身体を鍛錬。
陳戎暉監督は、詠春拳&木人樁にかなりの思い入れがあると見た。
あわよくば、甄子丹(ドニー・イェンを使って『葉問5』を監督したい!と夢見ているでしょー?!
(アクションシーンの撮り方が下手で、ショボイから、今のままだとその夢は叶わないと思う。)


このように、恵まれた体形に加え、男らしく見えるよう役作りを頑張った雅姸であるが、
ズラ感満載の髪で台無し!

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まるでバービーのボーイフレンド、ケンのような、レトロな50~60年代風人形の頭部。
これでは毛髪ではなく、ヘルメット。パカッと外せそう。

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(↑)“カツラを被って女装した”という設定のシーンの方がよほど自然なのは、マズイ。
雅姸は、この前に出た映画『等一個人咖啡~Café·Waiting·Love』(2014年)のために、
約10年間伸ばし続けてきた髪をばっさりカットしたはずなのに、その後また伸ばし、
このドラマのためには、切らなかったわけね。他のお仕事との兼ね合いが有ったのかも知れないが、
あの安っぽいショートのズラには興醒め…。

百歩譲って、そのズラ問題には目を瞑ったところで、このドラマの亞諾には、まったく惹かれる所が無かった。
昭和54年(1979年)生まれで、直に40に手が届く雅妍に、
非現実的な男装の25歳を演じさせるのは、痛々し過ぎる。
男装した中年女が、遅い初恋に胸躍らせ、伏目がちにデレデレする姿は、見ていて本当にキツかった…。



陳楚河(バロン・チェン):杜子楓~極道の御曹司で遊園地経営者

子楓は極道の御曹司(正確には養子)。
養父が失踪した後は、裏稼業からは一切手を引き、遊園地を経営している。
演じている陳楚河の出演ドラマが、日本に入って来たのって、
彼を有名にした『ハートに命中!100%~命中注定我愛你』以来じゃない?
(映画なら、『カンフー・ダンク』と『トレジャー・オブ・エンペラー 砂漠の秘宝』が入って来ている。)
『ハートに命中!100%』では、優しく誠実なお金持ちという役柄もあり、
良い印象で記憶に残っていた陳楚河なので、この『アニキに恋して』で久し振りに見て、
えっ、陳楚河ってこんな変でしたっけ…?!と目を疑った。なんか、まるで田舎の安ホスト…。

鼻の形や口元など、顔の造作も気になってしまうが、一番の問題は、雅姸と同様、髪型にあると思う。
偶像劇を観ながら常々感じている事だが、台湾は、男性を担当する美容師のセンスに大いに問題アリ!
どんだけ盛って固めれば気が済むのか…。
ヘアスプレーの消費量を調べたら、台湾は間違いなく、世界ランキングの上位に食い込むに違いない。
高温多湿の亜熱帯ゆえ、髪を固めまくるのは、必然なのかも知れないが。)

本ドラマでの陳楚河のヘアを3種類並べてみます。

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左から順に、濡れネズミ状態→強風に吹きっ晒し状態→そして定番の盛り盛りヘア。
これでトキメけと言われても、困難。アラフォー陳楚河、すでに毛根に力が無く、ぐったりした髪を、
無理に明るく染めたり盛ったりしたら、益々衰退の道まっしぐらヨ。見ていて痛ましいから、やめて欲しい。

まったく魅力を感じられない陳楚河だが、このドラマのオファーを受けた事は、褒めて差し上げたい。
だって、陳楚河の亡き父は、台湾の大物極道。

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スゴイでしょ。父上の葬儀が国葬並みに立派な事からも、その筋でいかに大物だったかが分かる。
本ドラマで演じている子楓と同じように、陳楚河も本来の家業とは違う道に進んでいるし、
この役は何かと陳楚河本人を連想させるのだ。
制作者も、陳楚河の背景を念頭に置いた上で、敢えて陳楚河をキャスティングしたものと察する。
話題作りにはなるけれど、自虐的とも言えるそんな役のオファーを、よく受けたナ、と感心。

陳楚河のそこら辺の事情については、更新していないので、やや古い情報だが、
こちらの“台湾男前名鑑:陳楚河”を参考に。

★ キャスト その②:主人公より美男な主人公の幼馴染みたち

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邵翔(ショーン・シャオ):楚哲瑞~亞諾の幼馴みの獣医

哲瑞は、亞諾が女性であると偶然知ってしまうも、気付いていないフリを続けながら、
何かと彼女を助ける優しい人。亞諾にとっては兄のような存在だが、哲瑞は彼女に恋心。
鈍い亞諾と違い、子楓はそんな哲瑞の気持ちを察知し、二人は恋のライバル関係に。
演じているのは邵翔。陳戎暉監督の前作『幸せが聴こえる』では、ゲスな男を演じていたが、
今回は穏やかなイイ人で名誉回復(?)。
髪型も髪色も、台湾偶像劇には珍しく、“極めてフツー”という点も、高評価。
見た目でも性格設定でも、本作品全男性登場人物の中で、一番私好みであった。
…なのに、ドラマ終盤、“国境なき獣医師団に参加した”という設定で、人知れずフェイドアウト(苦笑)。



王家梁(エディソン・ワン):吳翰昇~子楓の幼馴染み

こちらの翰昇は子楓の幼馴染み。
父親同士が義兄弟の契りを結んでおり、息子世代にも固い絆の継承を望んでいるが、
当の翰昇は、自分より優秀で人望も厚い子楓に嫉妬心をメラメラ。
子楓を引きずり下ろすためなら、どんな汚い手も使い、殺人のような重犯罪まで犯してしまう。
そういう事実を知った父・吳萬豪が、息子を救うため、全ての罪を被り、出頭した事でようやく目覚め、
皆ゴメン!父ちゃんは悪くない!やったのは俺だ!と自首。
はい、来ました、台湾偶像劇お得意の“終盤でいとも簡単に改心”(笑)。
翰昇は本ドラマ一の悪役だが、演じている王家梁はなかなか美男。主演の陳楚河より、よっぽど素敵。



畢書盡(Bii ビー・シュージン):衛青陽~子楓の幼馴染み

青陽も子楓の幼馴染み。子楓が心から信頼する数少ない親友。
冷静沈着で、コーヒーを入れるのが得意な青陽だが、彼もまた極道の息子で、両親は謎の失踪。
扮するは、台韓混血の歌手・畢書盡。
陳戎暉監督の前作『幸せが聴こえる』では、K-Popアイドルを意識したかのような目バリをバッチリ入れ、
冒頭にちょこっとだけの特別出演だったけれど、今回は大きな役。
私にとって、畢書盡は、あまり興味の無いタイプで、関心は低く、
“鹿(ルー・ハン/ルハン)似に整形”と、よく噂されていた事しか知らない。かつてのお顔は、(↓)こんな感じ。

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私は、20代で自然に一重瞼から二重になった人を実際に数人知っているので、何とも言えないが、
畢書盡の場合は、元々が韓国寄りの顔立ちなので、うーん、疑惑は確信に近いかも。
まぁ、もし、ママの実家に遊びに行ったついでに、ちょこっと手を加えたのだとしても、
二重瞼と目頭切開程度で、あとは自力で垢抜けたのでは?大工事はしていない気がする。
仮に無意識でも、いじった結果、鹿に似てしまったことの方が、プチ整形より問題なのでは。

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確かに同じカテゴリーに属す顔立ち。よりによって、スーパーアイドルに似せてしまったら、
人気も知名度も及ばない畢書盡の価値や需要は益々下がってしまいます。
ただ、日本の台湾偶像劇視聴者層には、オリジナルの鹿を知らない人も居るだろうし、
カワイイ系男子を好む女性は多いので、『アニキに恋して』で畢書盡贔屓になるファンも出てくるかも。
このドラマでは、主演の陳楚河があまりにも変テコなので、元々カワイイ系男子に興味の無い私でさえ、
“田舎の安ホスト<鹿コピー”。

★ キャスト その③:その他

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陳語安(チェン・ユアン):楊娜娜~子楓や青陽の叔父的存在である南刑天の娘

娜娜は謎めいた女の子。会ったことのない実父・南刑天に、母と自分を捨てた罪を償わせるため、突如現れる。
南刑天は、自分に娘がいたことなど知らなかったからビックリ。
本人には、母娘を捨てた意識など無かったが、娜娜という娘の存在を知ったからには、
彼女を大切にしよと誠心誠意接するが、娜娜は心を閉ざし、反発。
ようやく誤解が溶け、父娘で和解すると、今度は娜娜が発病(←このドラマも軽く“難病モノ”であった…)。
陳語安は、小生意気な女の子の役がとても合う。
これが定着してしまうと、その内、視聴者から「またか…」と思われてしまう懸念あり。



楊銘威(ヤン・ミンウェイ):廖廣超~亞諾の親友 杜家の運転手となり、子涵に恋心

廣超は親友・亞諾と移動ホットドッグ店をやっていたが、商売道具の車を失ったのをキッカケに、
亞諾が子楓に雇われた御縁で、杜家の運転手となり、高嶺の花である子楓の妹・子涵に首ったけ。
正統派のイケメンではないが、明るくイイ人だから、
安ホストのような主人公・子楓よりよほどマシ(私、どれだけ嫌いなんだ、子楓)。
扮する楊銘威は、以前、『恋にオチて! 俺×オレ~愛上兩個我』のエントリで記したように、
実家は、台北を訪れる日本人観光客にもお馴染みの小龍包の有名店・杭州小籠湯包。

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で、その『恋にオチて! 俺×オレ』で高飛車なお嬢を演じている方志友(ベアトリーチェ・ファン)と
2015年4月に出来ちゃった結婚しております。楊銘威は、ああ見えて、今では女児をもつパパなのです。
実家の小籠包屋には、芸能界のお友達もぼちぼち来ているみたいだし、
皆さまも、奇跡の遭遇に賭け、杭州小籠湯包へ行ってみます?
つい先日、あの“インリン・オブ・ジョイトイ”こと垠凌(インリン)も、テレビでこのお店を紹介しておりました。



陶嫚曼(マンディ・タオ):杜子涵~子楓の妹

子涵は子楓の妹。正確に言うと、子楓の養父母の実子なので、子楓とは血縁の無い妹。
亞諾に一目惚れし、猛アタックするも、撃沈。そんな亞諾が兄・子楓と付き合っていると知ってしまい、
当初、同性同士の恋愛に驚くが、次第に二人を応援するようになり、
彼女自身は、自分に夢中な運転手の廣超を徐々に受け入れるようになっていく。
過剰なお色気を振りまくバカ女タイプなのだけれど、明るく快闊な人物で、私は好き。

そう、そう、子涵より登場シーンはずっと少ないが、このドラマにはもう一人バカ女が出てくる。

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周曉涵(アマンダ・チョウ)扮する亞諾の従妹・范小菁。
亞諾の正体を知っている数少ない人物で、女性としての亞諾を開花させようと、あれこれ指南。
イイ年して、初恋に揺れる男装女子をウジウジ演じている雅姸が、私はどーーーしても駄目なので、
くったくのないお馬鹿を演じているこれら2人の方がずっと魅力的に感じた。

★ テーマ曲

オープニングは、青陽を演じている畢書盡が、
陳勢安(アンドリュー・タン)、陳彥允(イアン・チェン)、李玉璽(ディノ・リー)と共に歌う<心時代>
エンディングは溫嵐(ランディ・ウェン)の<底線>
畢書盡ファンの皆さまのために、ここにはオープニング曲の<心時代>を。





男装している女性が、ヤクザの御曹司と恋に落ちる話と聞き、
自分の好みには合わないドラマであると、最初から何となく予感はしていた。
でも、本ドラマが現地でヒットしたのは、紛れもない事実。
自分の好みに合う/合わないは別にして、何かしら引っ掛かる部分は有るだろうと期待。
ところが、5話観て、良さが分からず、10話観て、まだまだ退屈、
一体いつになったら面白くなるのだろう??と疑問に思いながらも視聴を続け、捨てるタイミングを失い、
結局これっぽっちも良さが分からぬまま、全30話をコンプリート。
これで、陳戎暉監督が手掛けるドラマは3連敗。見事、“駄作率100%”の監督になって下さった。
これがヒットしてしまう台湾の感覚は、本当に分からない…。
男装したアラフォー女優と、ホスト風情のアラフォー男優が、
延々とイチャイチャし続けるだけのドラマの何が面白いのだか。
そんなものを見せられても、トキメクことなどできず、むしろ「イヤな物を見てしまった…」と、後味の悪いこと…。
ハッキリ言って、気色悪かった。
物語自体も、亞諾と子楓が、互いの気持ちを確認し、交際を初めてからは、同じ事の繰り返しで、退屈至極。
脚本が良くないなら、せめて目の保養でもさせてもらいたいが、“偶像劇”なのに偶像不在。
肝心なアニキに恋できない。台湾芸能界の人材不足は、相当深刻である。
子楓の養父・杜光柱役の庹宗華(トゥオ・ツォンホア)や、養母・鳳姐役の劉瑞(リュウ・ルイチー)ら、
ちゃんと演技で見せられるベテランが居たから、辛うじて救われた。

子楓は、亞諾が女性だととっくに見抜いていた、…という終盤のあの展開もナンなのよ?!
(しかも、事実を知ったのは、“亞諾と哲瑞の話を偶然立ち聞き”というヒネリの無さに、ガックリ…。)
台湾は、アジアの中でも取り分けLGBTに対する理解が寛容だったり、
同志片の名作も数多く出してきた国なのに、このドラマが、結局のところ、在り来たりの男女の恋愛物語、
…いや、在り来たりだったら、まだマシだったのだが、
男装中年女性&ホスト風情中年男性の痛い純愛に終始していたなんて、もうガッカリよ。

これだったら、現地で同時期に放送され、視聴率で完敗した『結婚なんてお断り!?』の方がずっと良かった!
実際、その年の第51回金鐘獎では、『結婚なんてお断り!?』が多数ノミネートされ、
内、主演女優賞を獲得しているが、こちらの『アニキに恋して』は賞レースにカスリもしていない。
『アニキに恋して』を認めたのは、テレビ局・三立が、同局の番組を自画自賛する華劇大賞くらい。
炎亞綸(アーロン)に叩かれるまでもなく、三立は終わっている…。

もう何年も前から言い続けているけれど、不出来な偶像劇なら、日本に入って来なくて良い。
日本において、台湾ドラマが、韓ドラのようなブームが起きないまま、沈んでいったのは、
やはり質にも問題が有ると感じる。こんな物で簡単に満足させられるほど視聴者は馬鹿ではない。
幼稚な偶像劇ばかりが日本に入ってきたら、台湾ドラマ全体に“低品質”のイメージが定着してしまう。
いい加減、偶像劇には見切りをつけて、公視などの観応えのある高品質ドラマを入れるようにして欲しい。

ちなみに、この『アニキに恋して』は、台湾偶像劇のお約束が満載のドラマなので、
こちらの“中華ドラマあるある”を併せてどうぞ。


ホームドラマチャンネル、火曜深夜のこの枠は、2017年5月23日より、
陳喬恩(ジョー・チェン)&王凱(ワン・カイ)主演の大陸ドラマ
『記憶の森のシンデレラ stay With Me~放棄我,抓緊我』を放送。
陳喬恩はどちらかと言うと苦手な女優だが、王凱目当てで視聴確定!
王凱で、アニキのお口直しをさせていただきます。

ケーキ2種(+テレビとか日々の雑記諸々)

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吳宇森(ジョン・ウー)監督の微博が、超久し振りに更新されている。
出されているのは、福山雅治、張涵予(チャン・ハンユー)、戚薇(チー・ウェイ)らとの画像が多く、
2016年11月から2107年1月辺りに撮られた物が主。
彼らは、吳宇森監督が手掛ける『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年)の中華版リメイク、
『追捕~Manhunt』のメインキャストであるが、敢えて今こういう画像を出してきた意図や如何に…?
現地では、確か2018年の春節に合わせて公開されることが、とっくの昔に決まっているはず。
ちょっとしたプロモーションが始まったということ…??
トンデモ映画の予感が無きにしも非ずで、観るのが少々怖くもあるけれど、
日本での公開を待たせていただきます。



久し振りと言えば、私は最近、関西方面へ一年ぶりの出稼ぎ(?)に。
新幹線が混んでいて、JR東京駅の切符売り場で、窓口の女の子から
「皆さんで並んだ席は取れません。バラバラになっても良いですか?」と尋ねられたら、
「まったく構わない。僕は綺麗な女性の隣にしてくれ」と同行のイタリア人が“いかにもイタリアンな”返答。
「どこに綺麗な女性がいるか、ちょっと分からないんですが…」と、
イタリア男の対応に不慣れな窓口の女の子を面食らわせた。

結局、そのイタリア人は、新幹線で中年オヤジの隣に座らされ、新神戸に到着。
最初に向かったのは、今回宿泊の“神戸オリエンタルホテル”というホテル。

ここ2~3年、関西のホテルは盛況で、思うように予約できなくなっているらしい。
昨年、妥協の予約で泊まった某ホテルなんて、客室に入った途端、アンモニア臭が鼻をつき、ゲンナリ。
(もっとも、連泊している間に、鼻が慣れ、アンモニア臭も大して気にならなくなった。
自分で思っている以上に自分には環境適応能力が備わっていたことを確認。)

同行のイタリア人は、「部屋が狭い」だ、「古臭い」だ、「食事がマズイ」だと、そのホテルに文句タラタラ。
で、今年は、それよりもっとマシな所と考え、
ネット上のレビューなどにも目を通し、オリエンタルホテルを予約したようだ。
いつも彼らに宿泊料金を尋ねることは無いのだけれど、
今回、彼らが手にしていた清算書がチラッと目に入ったら、
そこに記されていた私の部屋の代金は、確か一泊150ユーロくらい。
その価格から、ホテルのレベルを“ぼちぼち上質なビジネスホテル”と推測し、
今年も大して期待せずに、いざ行ったら、良い意味で予想を裏切るホテルであった。



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小さく、さり気ない佇まいのエントランスを入り、エレベーターで建物最上階の17階まで一気に昇ると、
そこにあるのは見晴らしの良いロビー。隠れ家的な作りのプチホテルって感じ。



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客室は、ロビー階より下。私の部屋は11階。
窓からの景色は特別良くないけれど、部屋は落ち着いたインテリアで、居心地の良い空間。
ベッドが低いこともあり、圧迫感が無く、部屋が実際より広く感じられる。



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アメニティは、おフランスの自然派スキンケアブランドomnisens(オムニサンス)。
オムニサンスは、今回、初めて使ったのだが、甘い中にも(←決してヴァニラのような甘ったるさではない)、
茶葉を思わせる爽やかな余韻を残す香りで、とても気に入った。
突起状に成型したマッサージソープなどもあり、ユニークなラインナップ。

今回、写真はほとんど撮っていないのだけれど、お風呂場とおトイレは完全に分かれているし、
そのお風呂場には、バスタブや普通のシャワーヘッド以外に、レインシャワーも設置されているし、
その他の部屋の備品も充分で、他のホテルでは見掛けないジュエリーボックスまで有った。
私は、普段、他のホテルでは、部屋にあるお皿などを利用し、時計や宝飾品をひとまとてめに置いており、
別にそれで不便を感じたことは無いのだが、物を痛めないジュエリーボックスは、やはり有り難い。


ちなみに、場所は、旧居留地。古い西洋建築が残る整然とした街並みで、静かなとても良い環境。
上海よりは小規模な天津の租界をふと重ねた。
ほんの数分、足を延ばせば、中華街も。

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横浜中華街にあるコカコーラの自動販売機にも、“可口可乐”と中国語が書かれていましたっけ?




ついでに、要録画テレビをちょっとだけ。

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一本目は、明日、2017年5月22日(月曜)、テレビ東京の『未来世紀ジパング』
“カラクリか?ホンモノか?中国経済の真相”と題した久し振りの“中国異変”シリーズを放送。
食の安全、コピー商品、マナー違反など、
これと言って目新しさを感じない題材を取り上げているようだが、どうなのでしょう。
中国の優れた部分からは目を背け、重箱の隅ををつつくように、
ネガティヴな部分ばかりを嬉しそうに語り、優越感に浸っている日本人を見ると、
現実を直視できない日本が、このまま益々衰退の一路を辿ってしまうのではないかと、
本当に不安になってしまうのよ、私は。
明日の『未来世紀ジパング』が、ちゃんと日本人を覚醒させる内容であることを願う。




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同日、その約30分遅れで、NHK Eテレの『100分de名著』
古今東西の名著を毎月一冊、25分×4回、計100分で解説するというこの番組が、
5月に取り上げているのは、陳寿(233-297)の<三国志>。
“演義”ではなく“正史”を取り上げている点に興味をもち、今月はずっと録画を続けている。
マニアックに三国志を愛している人には物足りない内容かも知れないけれど、
三国志初心者には嚙み砕いた解説が有り難い。

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それにね、番組内で多用されているドラマ『三国志 Three Kingdoms~三國』と映画『レッドクリフ』の映像に、
やけに興奮させられてしまうのです。
普段、教育テレビに登場することの無い金城武、張震(チャン・チェン)、梁朝偉(トニー・レオン)、
張豐毅(チャン・フォンイー)、陳建斌(チェン・ジェンビン)等々が、もうガンガン映るわけ。
例えば、孫権に焦点を当てていた先週の第3回では、張震以外にも、周瑜の紹介で『レッドクリフ』の梁朝偉と、
ドラマ版で周瑜を演じている黃維(ビクター・ホァン)が半々くらいで登場。
彼を日本のテレビで見るのは、梁朝偉以上に珍しい。
で、明日5月22日放送の最終回では、劉備と孔明に焦点を当てる。
金城クン出まくりだと嬉しいのだが、番組の予告を見る限り、
ドラマ版の陸毅(ルー・イー)の方が多く使われているみたい。

ちなみに、“太郎”という名前を取り上げ、
5月18日(木曜)、NHKで放送した『人名探求バラエティー 日本人のおなまえっ!』では、
日本人の“太郎”という名前の由来は、古代中国に遡るとし、
大陸ドラマ『楊家将伝記 兄弟たちの乱世~少年楊家將』の映像が使われ、
彭于晏(エディ・ポン)だの陳龍(チェン・ロン)だのが映っておりました。
こちらの再放送も、5月22日(月曜)の深夜、正確には、5月23日(火曜)午前0時10分より。




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最後の一本は、5月24日(水曜)、BS TBSの『地球絶景紀行』
今週は、“恋人伝説が彩る島 海南島”と題し、中国・海南省を取り上げ、
“東洋のハワイ”と呼ばれる海南島と、恋人たちの聖地・蜈支洲(ウズシュウ)島という二つの島を巡る。
絶景のみならず、グルメも紹介するみたい。
そして、旅の最後には、日本の名僧・空海ゆかりの地へ。
…って、どこでしょう??比較的新しい三亞の空海紀念苑?
染谷将太&黃軒(ホアン・シュエン)主演の陳凱歌(チェン・カイコー)監督最新作
『空海 KU-KAI~妖貓傳』の公開がそう遠くない将来に控えているので、
私は、恋人の聖地より、こちらの方が興味あるかも。




お菓子は、今回、洋モノで、ケーキを2ツ。

★ パティスリー・ユウササゲ:アルデッシュ

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大きさは、直径約5センチ、高さ約4.5センチ。
マロン・ムースの中に、胡桃生地、キャラメル・ガナッシュ、チョコレート生地、
紅茶風味のムース・ショコラを隠し、全体をナッツ入りチョコレートで覆い、
トップを栗の生クリームで飾ったケーキ。




ひとつめは、パティスリー・ユウササゲ(公式facebook)“アルデッシュ”
知りませんでした、ユウササゲ。
ルコント、オテル・ド・ミクニ、プレジール等でお仕事をしてきた捧雄介(ささげ・ゆうすけ)というパティシエが、
独立して千歳烏山に出したお店らしい。
珍しい苗字だし、片仮名で記した店名は、なんか“ユザワヤ”と“ゲゲゲの鬼太郎”を足したような印象ね。

それはそうと、肝心のケーキ。
栗をメインにしたケーキと想像していたのだが、実際に食べると、もっとずっと複雑な味。
栗の味のみならず、ナッツやチョコレートのコクが、巧いこと混ざりあい、口の中に広がる。
キャラメル特有の焦げた苦味も効いている。
食感も同様で、単調ではなく、柔らかな物から硬い物まで、幅がある。
特に、下部に入った胡桃や、表面のチョコレートに混ぜられたアーモンドが、良いアクセント。

これを選んだのは、見た目が、大好きなラ・ヴィ・ドゥースの“メルベイユ”に少し似ていたから。
実際に食べると、メレンゲを主にしたメルベイユとは、まったくの別物だったのだけれど、
これはこれで美味。また買いたい。

★ ヴィタメール:コクシネル

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大きさは、直径約6センチ、高さ約5センチ。
クレーム・ブリュレで和えたスポンジ生地を台に、
中にショコラ・ムースを隠したフランボワーズ・ムースを盛り、てんとう虫に見立てたケーキ。




もうひとつは、ヴィタメール(公式サイト)“コクシネル”
フランス語でてんとう虫を意味する“coccinelle コクシネル”という名前の通り、
てんとう虫の形をしたケーキ。

台になっているスポンジ生地は、緑色。ピスタチオが混ぜられているのだろうか。
そこに挟まれているクレーム・ブリュレは、甘く、まろやか。
上にのっているフランボワーズのムースは、酸味が弱く、こちらもやはりまろやかな甘み。
全体を覆っている真っ赤なフランボワーズ・・ソースの方が、
酸味が強く、これのお陰で、全体が引き締まった味になっている印象。

チョコレートが人気のヴィタメールなので、
中に隠れたショコラ・ムースをはじめ、チョコレートは勿論あちらこちらに使われている。
てんとう虫の背中の黒い水玉は、丸くカットしたチョコレート。
その上から、ソースを被せることによって、内側からぼんやり浮き上がったような黒い水玉になっている。
マーガレットのようなお花も、ホワイト・チョコレート製。


味よし、見た目よし。
フランボワーズとチョコレートは、間違いの無い組み合わせ。
真っ赤なケーキが得意なヴィタメールが作った、真っ赤なてんとう虫はキュート。
販売は、5月末までの限定です。
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