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映画『おじいちゃんはデブゴン』

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【2015年/中国・香港/99min.】
黒龍江省・綏芬河。
丁虎が、長年勤めた警衛局を退職し、この故郷に戻って早6年。
預かっていた孫が行方不明になったことで、たった一人の娘にも絶縁され、身寄りが無い上、
認知症も進み、最近では簡単な事もすぐに忘れてしまう。
そんな丁虎がホッとできるのは、近所に住む少女・春花と過ごす時間くらい。

いつも明るく活発な春花だが、彼女の父・李政久はろくに仕事をせず、賭け事浸りで、
膨らんだ借金は25万元。
地元ヤクザのボス・崔宗憲から、「任務を成し遂げたら、借金の件は考え直してやる」と言われ、
ウラジオストクに飛び、ロシアンマフィアから、宝石の入ったボストンバッグを盗み出すことに成功。
ところが、ここまで危険を冒したにも拘わらず、借金はチャラにならないと言い放たれ、
怒った李政久は咄嗟にボストンバッグを抱え逃走。そのまま行方をくらましてしまう。
ヤクザのボス・崔宗憲は、李政久を誘き出すために、彼の一人娘・春花を利用しようと思い立ち…。



洪金寶(サモ・ハン)監督&主演作品。
俳優や武術監督、プロデューサーとして、ずーーーっと第一線で活躍し続けている洪金寶だが、
監督業は、1997年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲』が最後で、
約20年ものブランクがあったのだと。

その新作が、間も無く、2017年5月27日(土曜)日本公開。
久し振りの監督作で、力が入っているのだろうか、
公開約ひと月半前の4月上旬、洪金寶サマ自らプロモーションのために来日。
洪金寶の来日は、『SPL/狼よ静かに死ね』(2005年)の時以来で、実に11年ぶり。
それに合わせ、先行上映が行われ、洪金寶が舞台挨拶を行うという。
幸運にも、そのチケットの入手に成功し、観てきたナマ洪金寶による舞台挨拶については、こちらから。
肝心の作品については、すっかり放置していたので、
公開を今週末に控えた今、遅ればせながら、以下に記す。



物語は、預かっていた孫娘が行方不明になってしまったことで、
実の娘に縁を切られた認知症気味の孤独な退役軍人・丁虎が、
近所に暮らす少女・春花との交流を通し、ささやかな幸せを感じるも、
春花の父親・李政久が面倒を起こしたため、巻き込まれそうになった春花を助けようと、
悪に立ち向かっていく勇士をアクションを交えて描くシニア奮闘劇

異議もあるだろうが、ザックリとジャンル分けするなら、アクション映画と呼んでも良いであろう。
アクション映画なのに、主人公が腹筋バリバリに割れた20代ではなく、
年金生活者の翁(おきな)というのがミソ。

具体的には、この主人公・丁虎は66歳。
元々武術の達人だったため、中央警衛局の特工軍人になり、、要人を護衛。
一人娘との仲は良好で、よく孫娘の世話を任されていたが、
丁虎がちょっと目を離し隙に、その孫娘が消え、それっきり。当然娘は激怒し、親子の縁は断絶。
すっかり孤立してしまった丁虎は、定年退職を機に、
長年暮らした北京を離れ、故郷の黒龍江省・綏芬河に戻り、静かに余生を過ごすが、
実は認知症が進行中で、簡単な事もすぐに忘れてしまう。

そんな丁虎を、よく訪ねて来るのが、近所に住む少女・春花。
丁虎は、春花に、消えた孫娘を重ねているのだろう。
彼女と過ごす時は和み、“年の離れたお友達”として交流を続けるのだが、
春花の父であるクズ男・李政久が、ヤクザ者の宝飾品を盗み逃走するという大胆な事件を起こしたため、
春花にまで危険が及ぶ羽目に。
一度孫娘を失っている丁虎は、今度こそ大切な人を守らなければ!と、
ヤクザ者相手に大立ち回りを演じることになる。

アクション映画なのに、主人公がおじいさんなのには、
おじいさんがアクションを披露しなくてはならない、このような止むに止まれる事情が有るわけ。

近年、日本をはじめ、アジア各地で、少子高齢化が進み、
演じる側も、それを観る観衆の側も、高齢になってきているので、
生ヌルいラヴ・ストーリーや青春映画ばかりが制作されたら、
年を重ねた俳優にとってキツイ上、観衆の需要ともズレてきてしまう。

実際、そのズレに目を瞑り続けている台湾のテレビドラマ界は、窮地に陥っている。
有能な若手の人材不足で、30代、40代の俳優にキラキラの王子様を演じさせながら、
偶像劇(アイドルドラマ)を制作し続けているが、見ていて痛々しいのナンのって…。

逆に、2017年4月に始まったテレ朝の昼ドラマ、
高齢脚本家&高齢俳優陣による『やすらぎの郷』が意外にも世間で好評なのは、
制作者側が、年を重ねた今だからこそ作れるドラマを供給していることが、
観衆の需要にも合致している事が大きいのでは。
まさに、高齢化が進む今の時代に相応しいドラマという気がする。

1952年生まれ、御年65歳の洪金寶も、
年金生活者、独居老人、認知症といった同世代のリアルを盛り込みつつ、
本作品を得意なアクション映画に仕上げているところに、
60代半ばになった洪金寶の“成長”が感じられるし、時代にも合っている。





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主な出演は、一人暮らしの退役軍人・丁虎に洪金寶(サモ・ハン)
丁虎に家を貸す朝鮮族の大家さん・朴仙女に李勤勤(リー・チンチン)
近所に暮らす少女・李春花に陳沛妍(ジャクリーン・チャン)
李春花の父・李政久に劉華(アンディ・ラウ)
李政久を追う黒社会のボス・崔宗憲に馮嘉怡(フォン・ジアイー)など。


“動けるおデブ”のパイオニア的存在の洪金寶であるが、
最初に言っておくと、“年を取った洪金寶のかっこいいアクション”だったら…

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私は、洪拳宗師に扮する『イップ・マン 葉問』(2010年)の方がずっと上だと思っている。
特に、葉問との卓上対決!
『おじいちゃんはデブゴン』は、私にとって、ストーリーを楽しむ映画で、
洪金寶のアクションを堪能する映画ではなかった。
もっとも、舞台挨拶の時の御本人のお話によると、
本作品のアクションは、丁虎という人物の背景を考慮して設計したもの。
つまり、丁虎は、現役時代、要人の護衛をしていたので、
“敵が要人に襲い掛かれなくなる”ような技をかけることが身に染み付いているわけ。
だから、敵の腕をへし折るようなアクションが多い。
アクションシーンは、ただ単に見栄えのするカッコイイ決めポーズを披露すれば良いというものではなく、
そこから、その人物の人となりが見えてこなければならないとは、奥が深い。

ちなみに、(↓)こちら、中央警衛局の特工軍人になった若かりし頃の丁虎。

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このシーン、面白~い。恐らくニクソン大統領が訪中した時の画像よねぇ…?
そのニクソンの後方に、人民解放軍の制服を着た若い頃の洪金寶の写真を合成しているの。巧い!

このように、中央警衛局の特工軍人をしていた丁虎は、
『おじいちゃんはデブゴン』という邦題から想像する、強くて愛嬌もあるお年寄りとは、やや異なり、
かなり重い物を背負っている人。
後々、丁虎自身の話から判るのだが、そもそも若い頃に一度した結婚が不幸なものだったらしい。
妻の父は、文化大革命の時、反革命分子のレッテルを貼られ、吊し上げらえた人物で、
妻は、身を守るため、打算で軍人の丁虎と結婚。丁虎を利用しただけで、愛することは無かったという。
幸い、二人の間に生まれた一人娘との関係は良好だったのに、孫娘が行方不明になり、その娘とも絶縁。
孫娘は、変質者に殺されて遺体で発見されたとかではなく、突如消えてそれっきり。
陳可辛(ピーター・チャン)監督作品『最愛の子』(2014年)でも取り上げている、
近年大陸で頻発している児童誘拐事件なのではないかと、想像が巡る。
“デブゴン”という軽い響きとは裏腹に、意外にも中国の近代史や社会問題を盛り込んだキャラ設定なのです。


子役の陳沛妍は、香港の11人組ガールズ・ユニットHoney Beesのメンバー。
Honey Beesは個別の活動もするし、日本のAKBみたいな感じ?
この陳沛妍ちゃんも、2003年生まれの13歳なのに、すでに出演作多数。例えば、(↓)こちら。

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彭浩翔(パン・ホーチョン)監督作品『低俗喜劇』(2012年)で、
杜汶澤(チャップマン・トウ)&田蕊妮(クリスタル・ティン)の娘を演じていたのが、彼女。
大人になったら楊恭如(クリスティ・ヨン)みたいになりそうな雰囲気もあるが、
売れっ子子役だからといって、現時点で、可愛い~♪とは、まったく思わない。そこら辺によくいる感じの顔。
だからこそ、役にリアリティがあるとも言えるし、演技に慣れているから、堂々とはしている。


大陸からは、李勤勤と馮嘉怡。
李勤勤は、50代前半で、プラス10歳くらいの枯れよう。
ほぼ同世代の女優・徐帆(シュイ・ファン)が老け役をやっていると時と感じが似ていた。
この李勤勤扮する大家さん・朴仙女は、朝鮮族という設定。
朝鮮族というと、吉林省・延邊というイメージが強いけれど、
本作品の舞台になっている黒龍江省も朝鮮族が多い地域。
他にも、馮嘉怡扮する黒社会のボスが“崔”という姓だったり、その手下が“金”だったり、春花だって“李”だし、
作中説明は無いが、もしかして彼らは皆朝鮮族の設定…?


本作品のプロデューサーでもある劉華は、特別出演という扱いなので、
話題作り程度にチラッとしか出て来ないものと予想していたら、ガッツリ主要キャストであった。
舞台挨拶の時の洪金寶のお話によると、実際、当初はそんなに出る予定ではなかったらしい。
でも、旧友たちの参加が増えるにつれ、羨ましくなり、あの役はイヤだ、この役もイヤだと選り好みしている内に、
しっかり大きな役を演じることになったそう。
で、演じることになった李政久は、大層なクズ男。
ギャンブルにのめり込み、膨らんだ借金25万元を帳消しにしてもらうため、
ヤクザ者の崔宗憲から危険な仕事を請け負い、成功したのも束の間、崔宗憲から利用されただけだと気付き、
崔宗憲に届けるべき宝飾品を持ったまま逃走し、追われる身となってしまう。
劉華は、本人のイメージ通りの“精悍”だの“高潔”だのといった人物を演じている時より、
お馬鹿やクズを演じている時の方が魅力的(←あくまでも、私の好み)。


劉華で思い出したが、本作品には、崔宗憲の子分・金四役で、杜奕衡(ドゥ・イーフン)も出演。

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長い髪で顔が隠れているので、すぐには気付かなかった。
杜奕衡は、劉華の“御用ボディ・ダブル”なのです。

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雰囲気が似ている。劉華御用ボディ・ダブルとして重用されてきた杜奕衡だが、
近年は“影武者”業ではなく、独立した俳優として活躍。
瓦崗寨の軍師・徐茂公に扮する杜奕衡が見られます。


他にも、本作品には、洪金寶監督のもと集まった豪華な顔ぶれが、
あっちにチラリ、こっちにチラリと贅沢に大勢出演しているので、それを見付ける楽しみも。

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一部挙げておくと、馮紹峰(ウィリアム・フォン)、胡軍(フー・ジュン)、元彪(ユン・ピョウ)、
石天(ディーン・セキ)、麥嘉(カール・マック)、徐克(ツイ・ハーク)、彭于晏(エディ・ポン)等々。
日本公開版は広東語版なので、広東語を喋る(吹き替え)医者役・馮紹峰に、少々違和感。
徐克監督は、色んな作品にカメオ出演しているが、これまでは大抵香港マフィア感ムンムンの役であった。
今回は、珍しく、ショボめのジイ様。
彭于晏が出ていることは元々知っていた。でも、見付けられないまま終映を迎えそうになったので、
もしかして変装し過ぎていて見逃したのか?!と思ったら、最後の最後に登場。




日本に入って来る香港映画が、クライム・アクションに偏っていることに、いい加減ウンザリしている私。
本作品も、クライム・アクションには変わりないのだけれど、
アクション好きがアクションばかりに期待を膨らませると失望する作品だと思う。
息を飲む迫力のアクションシーンを作品最大の見せ場にしているのではなく、
孤独な老人が孫のような少女のために、余生でもうひと踏ん張りする物語の方が、より重要。
アクション映画にそこまで思い入れの無い私には、こういう方が、むしろ良かった。
久々に監督する洪金寶のために旧友たちが集まった“同窓会映画”でもあり、
小難しい事を考えずに、単純に楽しむ感じの作品。

でも、お気楽映画かというと、実はそうでもなく、よくよく考えると、結構ダークでヘヴィかも…。
前述のように、主人公・丁虎には、文革で愛の無い結婚、孫失踪で娘とも絶縁という身内との問題がある上、
孤独な一人暮らしで、認知症も進行。
近所の春花だって、家庭環境はお世辞にも良いと言えず、ギャンブラーの父は借金を作った挙句、
悪足掻きして、ヤクザ者の手で殺され、彼女は孤児になる。
最後は、事件が解決し、取り敢えず、お話は明るく幕を下ろすが、
我々観衆は、丁虎の認知症が、相当なステージにまで進んでしまっていることを知ることになる。
スカーッと単純なハッピーエンディングではなく、後味がややホロ苦いハッピーエンディング…。

『おじいちゃんはデブゴン』という邦題には、かなり批判の声が上がってる様子ですね。
私自身は、『特工爺爺(とっこう・じじぃ)』という原題を生かした方が、インパクトがあるとは思っていたが、
『おじいちゃんはデブゴン』も、“褒めるほど良いとは思わなくても、批判するほどでもない”という感じであった。
だって、昨今の中華アクション映画の邦題って、
“英語=カッコイイ”と思い込んでいる英語コンプレックス世代が付けたかのような片仮名の羅列ばかり。
取り分け、“ドラゴン”、“タイガー”、“カンフー”の使用頻度は、呆れるほど高い。
どの邦題も似たり寄ったりで記憶に残らないが、その点、『おじいちゃんはデブゴン』は、最低限、記憶に残る。
ただ、今回、本作品を鑑賞したら、『おじいちゃんはデブゴン』という邦題から受けるイメージと、
実際の作品に、かなり差があるように感じた。
『おじいちゃんはデブゴン』だと、愉快な老人が主人公の捧腹絶倒B級アクション喜劇を連想するが、
実際には、笑えるようなシーンはあまり無い。
映画を観て、えぇー、想像していたのと違ったー!ガッカリ!という人々が増えないことを祈る。


最後にオマケ。
こちら、私のお気に入り大陸女性フォトグラファー陳漫(チェン・マン)が、
中華版<時尚芭莎 ハーパーズバザー>の企画で撮り下ろした『おじいちゃんはデブゴン』キャストのお写真。

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左から、洪金寶(サモ・ハン)、元秋(ユン・チウ)、元華(ユン・ワー)、元寶(ユン・ボー)。
シビレるぅぅーーっ!!おじちゃん、おばちゃんたちが、カッコよすぎる!
そして、陳漫はやはりセンスがズバ抜けて良い。実は、映画本編より、陳漫のこれら写真の方が好き。
(陳漫については、こちらを参照)



新宿で行われた『おじいちゃんはデブゴン』先行上映・洪金寶舞台挨拶については、こちらから。

大陸ドラマ『歡樂頌 第一季~Ode to Joy1』

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上海の一角に建つマンション“歡樂頌”。
そこの2202号室では、お金持ちとの結婚を狙う30歳の樊勝美、明るい23歳の新米会社員・邱瑩瑩、
そして真面目でちょっと内気な22歳の研修生・關雎爾が女三人でルームシェア。

最近、同じフロアの空き部屋2ツで行われていた改装工事がようやく終了。
2203号室の新たな住人は、アメリカから帰国したばかりの24歳のお嬢様・曲筱綃。
曲筱綃は、引っ越してきて早々、友人を招き、帰国祝いのホームパーティーを開催。
夜だというのに、近隣にお構い無しのドンチャン騒ぎに閉口する2202号室の3人組。
そこで、邱瑩瑩が代表して、2203号室へ出向き、静かにするようお願いするが、あまり効果なし。
3人がゲンナリしていると、有り難い事に、なぜか警察が2203号室へ向かい、厳重注意。
一応その警告に従った曲筱綃であるが、同時に彼女の怒りは爆発。
今度は曲筱綃が2202号室に乗り込み、「さっき、11時でお開きにするって言ったわよねぇ?!
たったの10分も待てなかったの?わざわざ警察まで呼ぶ?!そこまでする…??!」とガナリ立て。
3人が、警察など呼んでいないと説明しても、曲筱綃は聞く耳を持たず、騒動は大きくなるばかり。
そこへ、「通報したのは私よ」と割って入ってきた新たな人物。
理路整然と通報の正当性を語られ、何も返せなくなる曲筱綃。
この人物は、2201号室の新たな住人で、アメリカ育ちのエリート・安迪であった。
歡樂頌22階でご近所さんとなった5人の女性たちの間に、不穏な空気が流れ…。


日本未上陸の大陸ドラマ『歡樂頌 第一季~Ode to Joy1』、全42話を鑑賞終了。
これ、現地での放送中、微博で話題になっていたので、気になり、最初の数話だけお試し視聴したのだが、
他に消化しないといけない録画が山積みで、『歡樂頌』の方はなかなか進まず、
その内、すでに観た部分まで忘れてきてしまい、以後、最初の数話ばかりを繰り返し視聴という悪循環。
そうこうしてる内に、これの続編『歡樂頌 第2季~Ode to JoyⅡ』が
2107年5月11日に放送開始してしまい、目下こちらが微博で話題沸騰中。
私も早く皆さまに追い付き、続編に着手しなくては!と刺激され、今度こそ本気を出し『第一季』を一気に完走。

結果から言うと、とても面白かった…!
ここのところ、時間的余裕が無いのだけれど、これは何かしら自分の記憶に留めておきたいので、
簡単になってしまうが、記すことにする。

★ 概要

プロデューサー・侯鴻亮(ホウ・ホンリャン)×監督・孔笙(コン・ション)によるドラマ。
正確には、監督さんは孔笙だけでなく、簡川訸(ジエン・チュアンホー)との共同。

原作は、阿耐(アナイ)の同名小説<歡樂頌>。
それを脚本にしたのは、作家であり、脚本家としても有名な袁子彈(ユエン・ズータン)。
原作も脚本も共に女性。
この袁子彈がこれまでに手掛けてきたのは、『國歌』、『日出東山』等。
私はいずれも未見だが、説明にザッと目を通した限り、
抗日戦争や毛沢東といった近代史に題材をとったかなりお硬い内容のドラマで、
『歡樂頌』のような現代都市劇の脚本を手掛けるのは、初の試みのようだ。

キャストは、『琅琊榜』に代表される侯鴻亮Pのドラマでお馴染みの面々が多数出演。
時代劇の扮装で見慣れたあーんな人やこーんな人たちの、現代人化した姿が拝めます。

★ 歡樂頌

タイトルの『歡樂頌』は、“Huānlèsòng”と発音。
日本では“歓喜の歌”、“喜びの歌”と呼ばれ、誰もが一度は耳にしたことがある
ベートーヴェンの交響曲第9番・第4楽章を、中国語ではこう呼ぶ。

エド・ハリスがベートーヴェンを演じた2007年の映画『敬愛なるベートーヴェン』も、
台湾でのタイトルは『歡樂頌』らしい。
(大陸では『复制贝多芬』、香港では『貝多芬未緣曲』と、中華圏内でもそれぞれタイトルが異なる。)

本ドラマの“歡樂頌”は、5人の女性主人公たちが暮らす上海のマンションの名称でもある。

★ 物語

物語は、上海に建つマンション“歡樂頌”の22階にある3室、
2202号室でルームシェアする3人、外資系企業勤務のアラサーOL樊勝美、
その妹分二人、コーヒー店で働く邱瑩瑩、実習生の關雎爾、
2203号室に越してくるお嬢様・曲筱綃、
そして、2201号室に暮らすアメリカ育ちのキャリアウーマン安迪という5人の女性が
それぞれに抱える恋や仕事、家族の問題と向き合い、互いに友情を育んでいく様子を描く群像劇

★ キャスト その①:歡樂頌22階に暮らす5人の女性たち

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劉濤(リウ・タオ):安迪~2201号室住人 31歳 アメリカ育ち、コロンビア大学卒のキャリアウーマン

安迪は、高学歴、高収入、おまけに美人。
アメリカ育ちゆえ、ついつい英語が口をついてしまう、少々嫌味なクールビューティー。
まったく死角の無い完全無欠タイプかと思いきや、実は孤児であったと判明。
そこからは、複雑な生い立ちのせいで、人との肉体的接触が苦手で、恋愛経験皆無とか、
生き別れた弟・小明が発見されたと思ったら、知的障碍がある子だったとか、
そもそも精神病の家系であることが判明するとか、鉄の女の脆い部分がポロポロと露見。

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演じている劉濤は、そう、『琅琊榜』の霓凰郡主。劉濤って、現代人の扮装の方が断然美人度が高いと思った。
本ドラマの安迪は、知的で美人で、セレブな男性たちからモテモテなのだが、
日本だと、こういうタイプは、男性からは敬遠されがちで、女性が憧れる女性でしょうかねぇ~。



蔣欣(ジャン・シン):樊勝美~2202号室住人 外資系企業勤務のアラサー 通称“樊姐”“小美”等

樊勝美は、同居する若い二人の女の子たちから慕われる姐御肌のOL。
結婚を焦る30歳で、露骨に玉の輿を狙うガツガツした面も。

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セレブな殿方をオトすための努力は惜しみませんっ…!
なぜ玉の輿に執着するかと言うと、
樊勝美は、地方出身者が、大都会・上海で生きていく厳しさをよく知っているがゆえ。
樊勝美自身、都市戸籍を持たない地方出身者で、南通の実家は、男尊女卑が根深く、かなり保守的。
都会で働く樊勝美は、女性であるがため、両親から軽んじられていても、経済的には頼られ、
男というだけで優遇され続けている無能な兄の尻拭いばかり。
面倒見が良く、シッカリ者に見えた樊勝美が、肉親から理不尽に振り回される物語後半は、
もう気の毒で気の毒で…。

樊勝美を演じている蔣欣は、そう、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』で悪役ながら人気を博した華妃!

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家柄が良く気位の高い華妃があんなにハマっていた蔣欣は、
“表面上華やかな都会人気取りだが、どこか野暮ったい田舎モン”を痛々しく演じるのも上手い!



楊紫(ヤン・ズー):邱瑩瑩~2202号室住人 通称“小邱” ワケ有って会社をクビになりコーヒー店に転職

単純で底抜けに明るい小邱は、その単純さで、ツマラナイ同僚男性に弄ばれ、
結果、恋と仕事の両方を同時に失う。
一時は酷く落ち込んだものの、コーヒー店に再就職したのを機に、仕事への意欲が湧き、
自らの提案で始めたコーヒーのネット通販を成功させるまでになる。
演じているのは、一瞬、大物女優・楊紫瓊(ミシェル・ヨー)と見紛うが、“瓊”の字が抜けた楊紫(ヤン・ズー)。
子役出身で、大人になった最近は、“90後四小花旦(90年代生まれの4大人気若手女優)”の一人に
挙げられることもある楊紫だが、美女とは言い難い。中国より、むしろ、フツーを好む日本に居そうな若手女優。
まったく気取りが無く、すぐ変な顔をしたり、妙な自己流ダンスを踊ったりするから、可笑しくて、可笑しくて、
当初、何とも思っていなかった彼女に、徐々に愛着が湧いてきた。



喬欣(チャオ・シン):關雎爾~2202号室住人 通称“關關”“小關” 真面目で優しい企業実習生

關關は、同じ年の同居人・小邱と無二の親友だが、性格は異なり、おとなしく、真面目なイイ子ちゃんタイプ。
オクテで、恋愛とも無縁だけれど、コンサート会場で偶然言葉を交わした男性に一目惚れ。
後に、その男性が、小曲の恋人・趙啟平だと知り、初恋は心の奥底に静かに埋葬…。

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扮する喬欣は、『琅琊榜』で南楚から突然やって来た蕭景睿の異母妹・宇文念を演じた女優さん。
『琅琊榜』で特別印象に残らなかったこの喬欣、役柄のせいもあるだろうけれど、『歡樂頌』で見ると可愛い。
お姫様ルックだった『琅琊榜』と違い、『歡樂頌』ではもっと地味な眼鏡っ子なのだが、それがむしろ可愛いの。
時代劇の扮装だと分からなかったけれど、現代劇でよく見ると、スタイルも良し。身長170で、美脚。
關關を演じるにあたっては、孔笙監督から、アイライン、マスカラ、アイシャドー、チークを禁じられ、
ほぼスッピンの上、眼鏡まで掛けさせられたというのは、実物が相当美人だから、
本来の彼女を消して、關關に成り切らす策だったのでは?
通っていた中央戲劇學院の先生が、旧友の孔笙監督に紹介した御縁で、
そのまま侯鴻亮Pが代表を務める東陽正午陽光影視との契約に至ったという喬欣は、
キャスト一新で撮られた『琅琊榜』の続編『琅琊榜之風起長林~Nirvana in Fire II』にも続投しており、
事務所に大切にされている秘蔵っ子みたいだし、1993年生まれと、まだまだ若いから、
ルックスと後ろ盾を兼ね備え、これからどんどん伸びていきそう。



王子文(ワン・ズーウェン):曲筱綃~2203号室住人 通称“小曲” お嬢様育ちの気ままな実業家

小曲は、富豪の父をもつお嬢様で、アメリカ帰り。
留学経験者でも、安迪のような“できる女”ではなく、むしろお勉強は苦手なのだが、
意外にも勘が鋭く、世渡りの術も身に付けており、自分で興した事業を成功させていく。
恋にも積極的で、一目惚れした医師の趙啟平に、あからさまな猛アタック。
主要登場人物5人の中で、最もギャーギャー騒ぐウザい女で、ドラマ前半では大嫌いだったのだが、
徐々に、そんな小曲の中にも良い部分が見えてきて、
結局、大好きになれないまでも、嫌いにもなれないキャラであった。

私は、このウザい小曲役の王子文が演じているのを見るのは初めて。…だと思い込んでいたら、
実はチョイ役で出演している映画を観ていた(しかも、一本ではなく、複数本)。

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『大魔術師“X”のダブル・トリック』(2012年)では、あの林雪(ラム・シュー)の妹ヨ (ぜんぜん似てなーい…!)。
ウザくない代わりに、印象にも残っていなかった。
『歡樂頌』のウザい小曲で、すっかり記憶に焼き付いたので、もう二度と忘れないと思う。

★ キャスト その②:5人の女性を取り巻く男たち

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靳東(ジン・ドン):譚宗明~晟煊集團CEO 安迪のボス

“老譚”こと譚宗明は、上海実業界の大物。
アメリカで知り合った安迪を、中国へ呼び寄せ、自分の会社で働かせている。
二人は、上司と部下という上下関係ではなく、良き友。
老譚は、安迪の全てを知り尽くし、面倒を見ているし、安迪もそんな老譚に信頼を寄せている。
ただ、実は、老譚には、安迪に対し、友人以上の特別な想いが…。

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演じている靳東は、はい、『琅琊榜』のあの風流な藺晨です。



祖峰(ズー・フォン):魏渭~ネットで知り合った安迪と恋愛関係に発展 ネット上のニックネームは“奇點”

魏渭は、金融危機で一度は全てを失ったものの、再度成功を手に入れたやり手の実業家。
安迪とは、ネット上で科学を論じ合い、意気投合。その安迪の帰国を知り、オフ会(?)感覚で会った時、
安迪が女性だったと初めて知り、美人の彼女に惹かれ、徐々に恋人関係に発展。
扮する祖峰は、映画『二重生活』(2012年)で演じた刑事ばかりが記憶に残っている。
刑事と言っても、香港映画に出てくるような上質のスーツを着て、英語で指示を出すエリート刑事ではなく、
取り調べ中に容疑者にカツ丼を食べさせ、「故郷(くに)のお袋さん、元気にしているのか?」とか聞いちゃう
叩き上げの刑事ね。だから、『歡樂頌』の役には、当初戸惑ったが、いや、祖峰、セレブ役も結構いけます。



楊爍(ヤン・ソウ):包奕凡~包氏集團の御曹司で副総裁 通称“包總”

裕福な家庭で育った包總は、華やかなオーラを放つ遊び人風情。
口が上手く、初対面で気に入った安迪にも積極的にアプローチしてくるのだが、
ただのチャラ男とも違い、実は聡明なので、安迪も次第に彼を認め、二人は打ち解けてゆく。
包總役の楊爍は、中央戲劇學院で、唐嫣(ティファニー・タン)と同級生の1983年生まれとは信じ難い
老け込みようで(←褒めています)、しかも、見てるだけで胃もたれほど、発するオーラがギッラギラ。
ところが、そのギラギラ感が、クセになる。大陸の30代俳優というより、香港明星に通じるものを感じる。
チマチマしていない豪快な雰囲気が良いわぁ~。
この包總役で、楊爍は、私にとって一気に気になる俳優に格上げされた。



張陸(ジャン・ルー):王柏川~樊勝美の同級生 学生時代から彼女のことをずっと好き

王柏川は、樊勝美と同郷・南通の元同級生。
起業して、上海にやって来て、学生時代は高嶺の花だった樊勝美に接近。
玉の輿狙いの樊勝美は、久し振りに再会した同級生が社長になっていたから、ウッキウキ。
社長の相手に相応しい“都会で成功したイイ女”を装い、王柏川と繰り返し会うようになるのだが、
その後、王柏川がいつも樊勝美と会う時に乗っているBMVが、実は借り物であることを知ってしまう。
樊勝美も王柏川も、“相手に自分を大きく見せたい”という点で同類なのだけれど、
樊勝美は王柏川の嘘が許せず、彼を避けるようになってしまう。
でも、樊勝美が田舎の家族の事で窮地に陥ると、彼女のために奔走するのもまた王柏川。
気心の知れた同郷の者同士で、実はお似合いなのだ。

樊勝美ひと筋の誠実な王柏川を演じている張陸であるが、
私生活では、その後、出てしまいましたよ、スキャンダルが。
女優の張琰琰(チャン・イェンイェン)との浮気報道。張琰琰って、誰ヨ?!って方、(↓)こちらです。

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はい、『琅琊榜』の蒞陽長公主。皇帝の妹で謝玉の妻の、あの蒞陽長公主でございます。
でも、張琰琰は、当時、アメリカ華人の夫とすでに離婚していたシングルマザー、
微博で、張琰琰に嚙みついた王柏川の妻で女優の邵思涵(シャオ・スーハン)も、王柏川との離婚が成立し、
この問題は、後味悪くも、取り敢えず収束した模様。
大柏川自身は『琅琊榜』に出ていないのに、こういう形で『琅琊榜』に絡んでくるのは、
同じ制作会社の作品に繰り返し出ている者同士で、広く横の繋がりが有るからなのかもね。
大陸芸能界も、広いようで狭い。



王凱(ワン・カイ):趙啟平~上海第六醫院勤務の医師

趙啟平は、診察に来た小曲に一目惚れされ、猛アタックされるイケメン医師。
見た目が良いだけではなく、本や音楽など文化的な趣味をもつ趙啟平は、
何の共通点も無いチャラチャラした小曲を相手にしないので、私はホッとしていたのだけれど、
一度一緒にハジケたのを機に、交際開始。結局のところ、趙啟平と小曲は似た者同士。
くっ付いたり、離れたりを繰り返しながらも、周囲が認めるカップル(←もっと言ってしまうと、“バカップル”)。
「なにも小曲なんかと付き合わなくても、趙センセにはもっと良い人が居るでしょーに。…例えば、私とか!」
と私は不満タラタラでドラマを観ておりましたヨ。 そんな趙啟平に扮するは…

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『琅琊榜』の靖王殿下・王凱!
時代劇の豪華な親王ファッションを脱ぎ、白衣にお着換えしても、素敵でございます。

ちなみに、趙啟平は、日本文化にも多少興味があるようで、
奇點と安迪に、日本のエロ系漫画の入手を頼んだり(!)、
「家で音楽を聴きながら、東野圭吾でも読んでいたい」などという台詞もある。
その後、王凱は、その東野圭吾が原作の中華版映画『容疑者Xの献身~嫌疑人X的獻身』に主人公で出演。
無理矢理考えれば、それも“御縁”でしょうか。あと、そう、この『歡樂頌』では、王凱の珍しい日本語も聞けます。
趙センセ、エロ漫画入手に尽力してくれた安迪にいうお礼の言葉は、「ありがとう(日本語)」。



王宏(ワン・ホン):林靖~關關の同郷の先輩

名前は、“林靖(はやし・やすし)”でも日本人ではありません。無錫出身の中国人。
同郷の後輩・關關に気が有り、何かにつけ、彼女の面倒を見たり、誘い出そうとするが、
關關の方にはまったくその気ナシ。とても優しく、誠実な林靖先輩なのに、
お年頃の關關には物足りないのであろう。彼の良さが分からないなんて、關關、まだまだ青い。
演じているのは、『琅琊榜』で梅長蘇の手下・黎綱に扮した、裏方兼業俳優の王宏。

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いわゆる二枚目ではないが、全身から発する森の熊さんのような大らかな雰囲気は、
この『歡樂頌』でも、林靖役にピッタリ。

実は、『琅琊榜』で悪役・夏江を好演した、王宏の実の父で監督の王永泉(ワン・ヨンチュエン)も、
『歡樂頌』に重要な役で出演。

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扮するは、小曲のお金持ちのパパ。夏江とはまったく違う、娘に滅法甘いパパを演じております。

★ 衣装

この『歡樂頌』は現代劇なので、基本的に衣装は市販の物ばかり。
5人の女性主人公たちそれぞれのバックグラウンドや性格に合わせた衣装のセレクトが上手い!



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素敵なのは、高収入のキャリアウーマン・安迪のお召し物。
30代以上の女性がお手本にしたくなるようなファッションで、視聴者の目を楽しませてくれる。
色なら黒・紺・グレー・白、形ならジャケット+パンツ/タイトスカートといった“できるオンナの戦闘服”が基本。
それでいて、リクルートスーツのような野暮ったさはなく、モード感や女性らしさがあって、本当に素敵。
想像通り、バルマン、ジヴァンシー、アルマーニ、バレンシアガ、ドルチェ&ガッバーナ等を着ているのだが、
他、高級カシミアで有名なブルネッロ・クチネッリの物が意外にも多い。


あと、バッグ、靴、時計といった小物は、ほとんど劉濤の私物。

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エルメスのバッグも全て劉濤自身の物とのことです。


さらに、このドラマの衣装さんの凄いところは、“素敵じゃない”衣装のセレクトも上手いところ。
特に感心したのが、樊勝美の衣装。
樊勝美は、安迪と同世代だが、地方出身者で、収入もずっと低い。
妹分の小邱や關關からは、「さすが樊姐!いつもお洒落で素敵!」と持ち上げられているけれど、
そのヨイショが少々痛々しく思える“頑張っちゃった感”が滲み出たビミョーなお召し物が、非常にリアル!

★ 音楽

オープニングは、インストゥルメンタルの<歡樂頌>
エンディングは、主演女優5人が歌う<總有幸福在等你
お馴染み<歓喜の歌>のアレンジがとても新鮮なオープニングが、私は好きなのだけれど、
当ブログの貼り付けに対応できる動画が見当たらないので、ここにはエンディング曲の方を。
元気が出る軽快なメロディで、ついつい口ずさんでしまう感じの歌。
う~ん、でも本当はオープニング曲の方が好き。フルヴァージョンが有るなら、欲しい。






冒頭の数話を繰り返し観ていた時は、これがなぜ流行ったのだか、面白さがぜんぜん分からなかったのだが、
先へ進んだら、分かった。これ、確かに面白い。
上海を舞台にした女性たちの物語ということで、軽いトレンディ・ドラマのような物を想像していたのだけれど、
実際には、オシャレ演出が売りのバブリーなトレンディドラマとは、随分質が異なる。
タイプの異なる5人の主要登場人物は、それぞれに、「中国なら、こんな人、居そう…」と思わせる女性で、
ドラマを通し、現代中国人女性のリアルな生き様を5パターン見せてもらっている感じ。
かなり“中国あるある”が満載なお話なのです。
原作小説がどのような物なのかは知らないが、
お洒落ドラマとは無縁だった袁子彈に脚本を担当させた意味は分かった気がする。
じゃぁ、お堅い社会派ドラマなのかと言うと、そうでもなく、やっぱりちゃんとお洒落っぽくもあるわけ。
物語自体に引き込まれるし、目でも楽しめる部分があって、バランスが絶妙。
キャストも良くて、若い子から中年まで、年齢に幅が有るから、視聴者によって、贔屓が変わってくるかも。
私は、皆好きだけれど、一人だけ選ぶなら、安迪・劉濤かしら。男性は、王柏川以外ほぼ全員好み(笑)。
本当にあんなイイ男ばかりが生息しているなら、明日にでも上海に引っ越したい。

これ観たせいで、『歡樂頌 第二季~Ode to Joy2』を益々観たくなった。
シリーズ2作品とも、日本に入ってくれば、嬉しいんだけれど…。
中国は、もはや史劇だけではない、現代劇もイケる。
幼稚な台湾偶像劇に辟易している人には、是非お勧めしたい。
あと、『琅琊榜』ファンにもおススメ。
上に記したのは、ごくごく一部で、実際には、『琅琊榜』のこーんな人や、あーんな人が、
『琅琊榜』とは別人になって出ているから、そういうのも見付けるだけでも楽しめます。

『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど』初日舞台挨拶in新宿♪

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『ママは日本へ行っちゃダメと言うけれど。』を、公開初日の2017年5月27日(土曜)に鑑賞。

正直言って、わざわざ満額の1800円を払って初日に観に行きたい作品ではなかったのだけれど、
舞台挨拶が行われることが発表され、…いや、その時点でも、まだ行く気無かったのに、
数日経っても、空席が結構あったため、ついついポチってしまった。
私が席をおさえたのは、新宿とお台場で舞台挨拶が行われる計3回の内、一番早い新宿10時の回。
(他の2回は、同じ新宿で12時半と、お台場の12時45分。)



登壇するのは、本作品を手掛けた谷内田彰久監督、
原作者夫婦の“リンちゃん”こと林薏涵(リン・イーハン)&“モギサン”こと茂木洋路、
そして出演者の中野裕太と簡嫚書(ジエン・マンシュー)の計4名。

私のお目当ては、台湾からやって来る簡嫚書ちゃん。
大ファンというわけではないが、彼女を有名にした台湾公共電視台2010年のドラマ、



その後、チケットは目出度く完売し、公開2日目の初回にも、新宿で追加の舞台挨拶が行われると発表。
そちらの登壇者は、原作者夫婦を除いた3名らしい。

★ 会場

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本日、私が行った会場は、新宿シネマカリテのスクリーン1。
2ツあるスクリーンの内、大きい方だけれど、それでも収容人数が百人に満たない小会場。

私の席は、前から4列目のD列。
争奪戦になることもなく、席は結構選び放題だったので、望めばもっと前も取れたのだが、
映画を極力後方で観たい私は、ギリギリ耐え得るであろう4列目をセレクト。


こういう舞台挨拶は、どういう人が見に来るのか見当がつかなかったのだけれど、
パッと会場を見渡したところ、男女比同じくらいで、年齢も様々。皆さん、誰がお目当てなのでしょ??
台湾人と思しきお客さんもボチボチいた。

★ 来場者プレゼント

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本日は、来場者にプレゼントあり。
頂いたのは、クリアファイル。
映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど』の数々のシーンをイラストにした物。
見ていて気分が楽しくなるイラストです。
プレゼントが有るなんて知らなかったし、しかも、それが可愛いクリアファイルだったので、嬉しい。

ただ、コレ、印刷の向きが、上下逆さまになってしまっているのでは…?!

★ 映画終了

私が行った10時の回では、映画の上映終了後に舞台挨拶。
ステージの準備などがあるから、どうせすぐには始まらないと踏み、
私は取り敢えずおトイレに行くことにして、会場を出た。

すると、出てすぐホールの片隅、主演の二人のパネルが立て掛けてある場所で、
その主演の二人が生身で写真撮影に応じているではないか。

ナマ簡嫚書の可愛らしいこと…!
顔の小ささは想像していた以上。小顔の上をいく極小顔(ごくしょうがお)!
その大きさ、目測、温州みかんMサイズ3個分程度。
かなり高いハイヒールを履き、身長が高くなっている分、顔の占める比率が余計に小さくなっている。
ヒョローンと細ーーい体の上に、ポツンと小さな頭がのっているから、待ち針を彷彿。

私も、彼らにカメラを向ける人々の群れに紛れて、撮ろうと思えば撮れたが、
さすがにそれはルール違反かもと良心が咎め、当初の目的通り、素直におトイレへ。

★ 『ママは日本へ行っちゃダメと言うけれど。』初日舞台挨拶@新宿シネマカリテ

映画の詳細はまた後日として、ここには、舞台挨拶について、ちょっとだけ。本当に“ちょっとだけ”。
引き続き簡嫚書の極小顔に釘付けになった結果、
舞台挨拶の内容が、まったく頭に入って来なかった。



取り敢えず、舞台挨拶の様子は(↓)こんな感じ。

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左から、ベイビーを抱いた“モギサン”こと茂木洋路、“リンちゃん”こと林薏涵(リン・イーハン)、
主演の中野裕太、台湾から来日した同じく主演の簡嫚書、通訳・樋口裕子女士、そして谷内田彰久監督。

良く撮れた写真は無いのだけれど、さらに主演のお二方を。

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簡嫚書は、フリルと刺繍をあしらったピンクのブラウスに、長め丈のグリーンのタイトスカート。
似合っていて、とてもキュート。ちなみに、ネイルもスカートに合わせた深いグリーン。



以下、舞台挨拶のやり取りをごく一部挙げておく。


質問
この映画の好きな所は?

中野裕太
とことんピュアなところ。恋愛映画なのに、キスシーンさえ一度も無くて、プラトニックなんです。

林薏涵
台湾らしいところ。
映画の中に出てくるお母さんも、私のお母さんにソックリ!お母さんは、本当にああいう感じなんです。

谷内田彰久監督
好きなのは、僕が出たシーン2ヶ所です。
(「監督が出ていたシーンに気付いた人?」の問いに、会場では挙手ナシ。)

簡嫚書
監督が出ているのは、重要なシーンではありませんよ。

谷内田彰久監督
ヒントは、水を撒いていた人、足のマッサージをしていて、最後に押した人。
あと、好きなシーンは、コンビニのシーン。
あそこは何回観ても、毎回違って新鮮に見えます。




質問
演じる上で、気を付けた事は?

簡嫚書
リンちゃんからは、とても情熱的で活発な女性という印象を受け、私自身とは違うものを感じました。
皆さん、台湾の女性がみんなああいう感じではないですからね~(笑)。
私は、リンちゃんの活発な感じを表現するために、演技をオーバーにしてみました。

中野裕太
モギサンは、本当にあまり喋らない人なんですヨ。
リンちゃんからは、冴えない感じでやってくれと言われました。
あと、パーマをかけることになったのですが、ちょうどその時、髪がとても短くて…。
美容師さんが、ロットを巻くのも大変な短い髪に芸術的にパーマをかけてくれました。
ただ、短いから、パンチパーマみたいになりました。




中野裕太
モギサンは普段本当におとなしいのに、蛭子さん(蛭子能収)が居る時だけ、嬉しそうに反応するんです。

茂木洋路
蛭子さんは、子供の頃からずっと見ていた人なので、「本当に居るんだ」と。




映画には、“ショウ”と“コージ”というモギサンの友人が登場するのだが、
「今日は、本物のショウとコージも来ているんです」と、客席のリアル“ショウ”&“コージ”が紹介されたり、
途中、ベイビーがちょっとグズッちゃったり、終始和やかでアットホームな雰囲気の舞台挨拶であった。

最後は、「レビューを書いたり、SNSで死ぬほど写真を上げて下さいっ!
この映画は、皆さんのそれに懸かっているので、宜しくお願いします!」と谷内田彰久監督。
そうよね。チケット発売時には、確か撮影禁止という注意事項が記されていた気がするのだが、
facebookで始まった恋を描いた映画なのに、未だ前時代的に撮影を禁止する日本風舞台挨拶を行うのは、
おかしいと思っていた。

当初、約30分と聞いていた舞台挨拶が、18分程度で終わってしまったのは、少々残念だったけれど、
ナマ簡嫚書を見れたので、まぁ良しといたします。
本当にお顔が小さかったわぁ~。そして、細い!やはり、あれくらいじゃないと、芸能人にはなれないのかしら。
(別に今さら芸能界入りを夢見ているわけではないが…。 


本日、新宿シネマカリテ12時半の回、及びユナイテッド・シネマ・アクアシティお台場で御覧になった方々、
そちらは如何だったでしょうか。
お台場の方だと、字幕が日中2ヶ国語で出るらしいので、私、映画はそちらで観たかったかも…。
舞台挨拶は、まだ明日に一度あり。明日行かれる方々、お楽しみに!
映画の詳細は、また後日。

映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

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【2015年/イタリア/119min.】
蔓延する暴力とテロに、人々が抗議の声を上げ、デモ行進するイタリアの首都・ローマ。
中年のならず者エンツォは、高級時計を盗んで逃走。
テヴェレ川に身を隠したところ、水中に沈んでいた放射性物質のドラム缶の中へ落ち、
黒々とした液体にまみれてしまう。
体調を崩し、フラフラになりながらも、郊外トル・ベッラ・モナカ地区にある薄暗いアパートになんとか帰り、
翌日、盗品の時計を引き取ってもらおうと、セルジョを訪ねると、
セルジョの方から、コカインの取り引きという別の儲け話を持ち掛けられる。
早速、二人は、セルジョの計画通り、人気の無い建設中のビルの9階で、若い黒人青年と接触するが、
想定外のトラブルが発生し、怒った青年にセルジョは殺され、
エンツォもまた肩を銃で撃ち抜かれた上、ビルの9階から、ずっと下の地面に突き落とされてしまう。
奇跡的に命拾いしたエンツォは、何事も無かったかのように、地面から起き上がり、帰宅。
浴室の鏡の前に立つと、そこに映った銃弾を受けたはずの肩は、すで蘇生。
エンツォは、自分に何やら不思議な力が備わったことに気付き…。


久し振りにイタリア映画。
手掛けたのは、これが長編初監督作品となるガブリエーレ・マイネッティ
長編はこれがお初でも、短編なら、随分前から発表しているし、
他にも、俳優、作曲家、プロデューサー等、幅広く活動してる1976年生まれの四十路男らしい。

本作品、日本では、2016年5月のイタリア映画祭でお披露目。
その際、監督と主演男優が来日し、ティーチインを行ったそう。どんなお話が出たのでしょう…?
私は、この作品を完全スルーしており、何の情報も無いまま、一般劇場公開となったこの機会に鑑賞。



物語は、ひょんな事から超人的なパワーを得たエンツォという中年のチンピラが、
コカインの闇取り引き中に殺された友の遺した一人娘で、
精神を病んでいるアレッシアの面倒を不本意に見る羽目となるが、
彼女と過ごす内に、徐々に彼女への愛情と正義に目覚め、
自分の持つパワーを利用し、悪に立ち向かって行く姿を描くスーパーヒーロー活劇


まず、タイトルになっている“鋼鉄ジーグ”。
私は、その名になんとなく聞き覚えがある程度で(←それさえ錯覚かも)、まったく知らないに等しい知識。
なんでも、1975年に放送された、永井豪原作のアニメで…

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イタリアでも、1979年、『Jeeg robot d'acciaio』のタイトルで放送されたらしい。

2015年制作のこの映画の邦題『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、正確には“邦題”ではなく“原題”。
本作品には、『Lo chiamavano Jeeg Robot』というれっきとしたイタリア語のタイトルがあるのだけれど、
その伊題の直訳である『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』も、映画のオープニングで堂々と併記されて登場。

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つまり、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、日本の配給会社が、日本での上映にあたり命名したのではなく、
イタリア側が元々付けていたタイトルなの。
日本の映画だって、海外の映画祭などで紹介する際、
日本側で英語のタイトルを事前に用意することが、普通に行われているのを考えれば、
まぁ、驚くほどの事ではないのだが、世界で使用人口の少ないマイナーな言語・日本語を敢えて使い、
しかも“鋼鉄ジーグ”なる単語まで入っていると、ちょっと不思議な感じがして、
日本人はついつい食い付いてしまいますよね。

ただ、じゃぁ、そのアニメ『鋼鉄ジーグ』が、70~80年代のイタリアで、それ程までに大人気だったかと言うと、
ちょっと違う気もしているのだが、実際のところ、どうなのでしょう…??
私は、子供の頃ガンダムやマジンガーが好きだったというイタリア人男性には結構会ったことがあるけれど、
鋼鉄ジーグに夢中になったという話は聞いたことが無い。
もしかして、このガブリエーレ・マイネッティ監督、“主流からちょっとだけズレた所”を突いてきてやしない?



80年代に少年だったであろう物語の主人公・エンツォも、鋼鉄ジーグに特別詳しいようには見受けない。
本作品を、“子供の頃からずっと鋼鉄ジーグをこよなく愛する中年ヲタクが、
ヒーローを気取り世直しをするコメディ”と踏んでいた私は、早い時点で、自分の予想がハズレたことを認識。

鋼鉄ジーグに夢中なのは、犯罪組織の一員で、エンツォと親しいセルジョという男の一人娘、アレッシア。
どうやら性的虐待を受けていたらしく、精神を病み、子供のような純真な心のまま、成長した女性。
なぜか鋼鉄ジーグが大好きで、エンツォに司馬宙(しば・ひろし)を重ね、憧れと親しみの情で慕ってくる。
(どうも元のアニメでは、この司馬宙が変身すると、鋼鉄ジーグになるらしい。)

エンツォは所詮ゴロツキなので、偶然に得た超人的なパワーも、当初、窃盗などに用いるのだが、
アレッシアが犯罪組織に狙われるようになると、彼の中に眠っていたささやかな良心が呼び覚まされ、
アレッシアを守るために闘い、さらには、広く人々のために悪に立ち向かうヒーローとなってゆく。

鋼鉄ジーグ自体は、まぁどうでも良いと言えばどうでも良い感じ。
それより、本作品は、荒んだ環境で育ち、心を閉ざしたまま、ゴロツキに落ちて行った孤独な中年男が、
純真の象徴であるアレッシアと出逢ったのを機に、
人間らしい心を取り戻し、立ち上がって行く再生の物語であり、
また、それを手助けするのが、意外にも非現実的な超人パワーだという現代の御伽噺。





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主な出演は、不思議なパワーを得るエンツォ・チェッコッティにクラウディオ・サンタマリア
鋼鉄ジーグが大好きなアレッシアにイレニア・パストレッリ
地元の小さな犯罪組織のリーダー、“ジンガロ”ことファビオ・カッニッツァーロにルカ・マリネッリ

私は、最近、イタリア映画をとんと観ないので、イタリア人俳優にも暗い。
この3人は、本作品での演技が認められ、2016年、“イタリア版アカデミー賞”ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で、
それぞれ、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞とのこと。おめでとうございます♪
3人とも、その受賞を納得させるだけの魅力炸裂。

クラウディオ・サンタマリアは、20年来の親友であるガブリエーレ・マイネッティ監督からの要請で、
3ヶ月かけ、20キロ増やし、100キロになってエンツォを演じている。
身長180センチに対しての体重0.1トンなので、ブヨブヨの百貫デブという感じではないし、
実際、脂肪のみならず、運動で筋肉もかなり付けたそうだ。
友達のいない引き籠りがちな中年チンピラに、モッサリと大きな体がマッチ。

そう、このエンツォは、外国人が抱きがちな“イタリア人=陽気”というイメージからも、
ヒーローの精悍なイメージからも遠い、引き籠りがちで覇気の無いオッサン(…でも、ケチな犯罪は犯す)。
籠った家でよくしている唯一の趣味と言ったらAV鑑賞くらいだし、
(美食の国・イタリアなので、テーブルに上がる食の数々を楽しみにする観衆も居るかも知れないが…)
エンツォが買い溜めし、日々繰り返し食べているのは…

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スーパーでお徳用4個セットで売られているヨーグルト()程度。

ガブリエーレ・マイネッティ監督もインタヴュの中で、主人公エンツォを描写する際、
「家に帰って、DANONE(ダノン)を食べるくらい」だの、
「ATMを壊し、得たお金で買うのもヨーグルト」だのと語っているが、果たして、あれはヨーグルトなのだろうか?

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確かに、(↑)このポスターを見ても(イラスト?)、黄色いカップの中身はプレーンヨーグルトっぽいのだが、
映画の中で見た物は、これとは色も質感も異なっていた。
アレッシアが指に絡め取った時に見た粘性から、私はあれをクリーム系デザートと推測。

私が推測しているそれは、ヨーロッパでは広く普及しているお手軽デザートで、
イタリアでは、“Budino alla Vaniglia(ヴァニラ・プディング)”、“Budino alla Crema(クリーム・プディング)”、
“Crema alla Vaniglia(ヴァニラ・クリーム)”といった名称で、多くの乳製品メーカーから出ている物。
“Budino(ブディーノ=プディング/プリン)”と言っても、蒸した伝統的なカスタードプリントとは違い、
どちらかと言うと、日本で以前流行った“滑らかプリン(カラメル無し)”やカスタードクリームに近い感じ。

市場に一番出回っているのは、ガブリエーレ・マイネッティ監督も名前を挙げている
ダノンのDanette(ダネット)シリーズの“Crema alla Vaniglia”であろう。

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映画の中に出てくる物とは容器がちがう。エンツォが食べているのは、きっとダノンではない。
日本人が、付箋紙を“ポストイット”と呼ぶように、
ガブリエーレ・マイネッティ監督も、ヨーグルトの代名詞として“DANONE(ダノン)”という名称を使ったのかも。
イタリアでは、小さなメーカーから出ている類似品も非常に多いので、
エンツォのお気に入りを特定するのは困難。
ちなみに、“DANONE(ダノン)”は、イタリアでは“ダノーネ”と呼ばれております。

大幅に反れた話を、エンツォ自身に戻します。
私は、もっと若く、そこそこイケメンの主人公を想像していたので、あのエンツォを最初に目にした時、
「えっ、これが主人公?“ヒーローもの”の主人公にしては地味…」という印象を受けたのだが、
物語が進み、エンツォに徐々に人らしい感情が芽生えてくるのと比例するように、彼が魅力的に見えてきて、
遂には、カッコイイ~!と惚れるレベルに昇格。


徐々に魅力的に見えてくるのは、アレッシアも同じ。
イレニア・パストレッリというこの女優さんは、西洋人にしては歯が大きく目立ち、
美人か不美人かと聞かれれば、正直なところ、不美人。
おまけに、訳の分からない事を延々と喋り続けている不思議ちゃんだから、
まさかエンツォの恋愛対象になるとは思いもしなかった。
でもね、あのまったくの穢れの無さは、エンツォを変える女神に相応しい。


そして、ルカ・マリネッリ扮するジンガロ。
顔の骨格は“イタリア版・伊勢谷友介”といった感じで、吸い込まれるような青い瞳が印象的。
ジンガロは、本作品一の悪役であるけれど、人間味がチラホラと垣間見え、憎み切れないキャラ。
(本作品には、一点の曇りも無い清廉潔白な士も、とことん救いの無い極悪人中の極悪人も存在せず、
グレーな人間ばかりが登場する。まぁ、実際、人って、そんなものでしょう。)
ジンガロが犯罪を犯すのは、世間から注目されたいという欲望が大きいので、
Youtubeで何度も再生され、たちまち有名になったエンツォに嫉妬し、自分も遂には犯罪動画を制作。
結局のところ、目指すは人気ユーチューバー(笑)。

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デヴィッド・ボウイを彷彿させるグラムロッカー気取りで、素肌にラメラメのジャケットを羽織り、
得意の歌を披露したり、何かもう掴み所が無い80年代信奉の悪人。
こんなお馬鹿で、設定は40歳。呆れながらも、そんなジンガロに見入った。

ちなみに、“Zingaro(ジンガロ)”は、本名ではなくニックネームで、イタリア語で“ジプシー”の意。
彼のお仲間も、“Pinocchio(ピノッキオ)”、“Tazzina(タッツィーナ)=小さなカップ”、
“Sperma(スペルマ)=精液”といった具合に、ニックネームで呼ばれている。
なぜ、よりによって“精液”なのでしょう(苦笑)??そう呼ばれるに至った裏話も知りたい。





予想を裏切られた。まさか、イタリア映画界から“ヒーローもの”が出てくるとは…!
ただの“ヒーローもの”だったら、特別興味の無いジャンルなのだが、
これは、ハリウッド映画のような正義感に溢れた“いわゆるヒーローもの”ではなく、
ヨーロッパ映画的なダークなリアリティがちゃんと織り込まれているのが魅力。
ファンタジーとリアルの匙加減が絶妙。

ガブリエーレ・マイネッティ監督は、姉妹がアメリカに住んでいる他、親戚もニュージャージー在住だったり、
自身もNYに留学経験があったりと、少なからずアメリカとは御縁があるのだが、
だからと言って、感性がアメリカナイズし切っているかというと、そうでもなく、
インタヴュ記事を読むと、基本的に、マーベルに代表されるアメコミヒーローには批判的。
でも、『バットマン』なら好きなのは、バットマンが内に葛藤を抱えた人物であるから。
5人のならず者が銀河系を救う『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)も好きらしい。
完全無欠なスーパーヒーローではなく、何かしらの欠陥がある人物に惹かれるのであろう。
私自身は、脆さが有ったり、心に傷を負った人物が、特別好きかどうか、自分でもよく分からないけれど、
正義を振りかざす人は苦手で、アメリカ的なヒーローには惹かれないので、監督の気持ちも分からなくはない。
“ヒーローもの”から離れると、ガブリエーレ・マイネッティ監督は、フェデリコ・フェリーニ監督作品のファンで、
例えば『82/1』(1963年)のグロテスクで歪んだ世界観が好きだという。
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が、“フェリーニっぽい”とはぜんぜん思わないけれど、
人間らしい弱さとか、創造性などという点では、
ガブリエーレ・マイネッティ監督は、フェデリコ・フェリーニ監督に間接的に通じるかも。

アニメ『鋼鉄ジーグ』に関しては、知らなくても、本作品の鑑賞に問題ナシ。
『鋼鉄ジーグ』と限らず、アンナ・オクサの歌など、80年代へのオマージュが感じられる部分が多々有り。


久し振りに“新鮮”と思えるイタリア映画に出逢えた。
瀕死状態と言われるイタリア映画界で、ガブリエーレ・マイネッティ監督は救世主となるかも?
次回作がどのような物になるのか注視。
あと、本筋とは関係ないが、アレッシアが使っているポータブルDVDプレイヤーが気になった。
あれの倍くらいの大きさで、リージョンフリーの物が、格安で売られていたら、欲しい!
(以前、ビックカメラで尋ねたら、「そういうのは、秋葉原ですよ」と言われたのだが、
“秋葉原”と言われても漠然とし過ぎていて、どこへ行って良いのか分からないし、価格の相場も分からない。)

★ オマケ:ダークヒーローの食卓

皆さまも、クリーミーデザート(ただのヨーグルトである可能性も否定できず)を食べ、
ダークヒーロー“鋼鉄ジーグ”エンツォに近付いてみます…?
日本では市販されているか不明なので、自分で作ってみましょう。

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<Budini di Crema alla Vaniglia>
材料(6人分)
牛乳 :80g
生クリーム :250g
砂糖 :100g
ヴァニラ :1袋(もしくは、ヴァニラビーンズ1さや)
板ゼラチン :3枚(6g)

作り方
板ゼラチンを冷水に浸し、ふやかす。
鍋に、牛乳、生クリーム、砂糖、ヴァニラを入れ、火にかけ、沸騰手前まで掻き回し続ける。
鍋を火からおろし、水を切って絞ったゼラチンを加え、完全に溶けるまで混ぜる。
できた液を、カップなどの容器に流し入れ、冷蔵庫で約4時間冷やす。
お好みで飾り付けをして、はい、出来上がり♪

お料理をしない私が言っても説得力無いでしょうが、超簡単!
良い素材を使えば、市販の物より高級な味に仕上がるでしょう。
ヴァニラやゼラチンは、日本だと違う形状で売られている場合もあるので、そこのところは適当に調整を。

北京2016:馬連道①~遵義紅

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ぜんぜん終わる気配の無い昨年の北京休暇備忘録を、久し振りに更新。

中国土産の定番といえば、お茶。
北京の繁華街には、吴裕泰(吳裕泰)、张一元(張一元)といったチェーン展開している老舗のお茶屋さんが、
あちらこちらに点在しているので、時間が無い場合は、そういう所で買うのが便利。
でも、もっと選択肢色々の中から買いたーいっ!というのであれば、马连道(馬連道)

馬連道は、何軒ものお茶問屋が集まるお茶屋街。大陸北方地区では、最大のお茶交易市場。
一国の首都で、こんな規模のお茶屋街は、世界随一ではないだろうか。

★ 馬連道への道

馬連道は、北京市の西南に位置。
市街地からめちゃくちゃ遠いわけではないけれど、
以前は交通の便がお世辞にも良いとは言えず、行くのがやや面倒な場所であった。
私はずっとタクシーやバスを利用していたが、
北京をご無沙汰していた2014年末に地下鉄駅がオープンし、俄然便利に!



イメージ 1

開業したのは、地下鉄7号線・湾子(灣子)駅。
お茶屋街最寄りの駅だけあり、構内もお茶の伝統や雅な世界を感じさせるデザイン。


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馬連道へはD出口。


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D出口を出ると、もう目の前が馬連道。
あとは、この通りを南下していくだけ。
ほんのちょっと歩いただけで、すぐに、通りの両脇に軒を連ねるお茶屋さんが見えてくる。

★ 遵義紅

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まずは、通りを南下していくと右手に見えてくる赤い建物・遵义红(遵義紅)へ入ってみる。


そもそも、遵義紅(Zūnyìhóng)とは?
遵義(じゅんぎ)は、貴州省にある都市の名。そこで生産されているのが遵義紅。
貴州は近年お茶産業の発展に力を入れている省で、都勻毛尖、湄潭翠芽、寶石という3大緑茶が有名だが、
遵義紅は名前からも想像がつくように紅茶。
市場に出回り始めたのは比較的最近のことで、
貴州が開発とブランド化を進めているだけあり、お茶博の紅茶部門で賞を獲るなど、
注目度が高まっているお茶。

北京の馬連道にある、その名もズバリ“遵義紅”というこのお店は、2014年末にオープン。
貴州のお茶産業発展計画の一環なのであろう。
言うなれば、都・北京で貴州の遵義紅をプロモーションするアンテナショップ。


入り口を入ると…

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大きな湯飲み茶碗&急須がお出迎え。
当然茶葉の販売もあるのだが、私はそれらをスルーして、奥の階段から2階へ上がってみる。

★ 遵義紅茶城2階お食事処

2階は、貴州料理を提供するお食事処になっているという情報を事前に得ていた私。
これまで、馬連道エリアでは、あまり行きたいお食事処が無かったので、
「今後の参考に」という程度の気持ちで、グルメサイトでの評価も上々のこのお店を覗いてみたかった。



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完全な“レストラン”という感じではない。
フロアの壁際では、お茶を展示販売しており、中央がお食事できるスペースになっている。


私が行ったのは、半端な時間で、お客さんは一組だけ。
レジの女性もヒマそうで、「お食事していきます?」と私に話しかけてきたので、
もう、ついでだから何か食べちゃおうか!って気になり、別におなかも空いていないのに、席についてしまった。

★ 黔菜

「四川人不怕辣、湖南人辣不怕、貴州人怕不辣
(四川人は辛さを恐れず、湖南人は辛くとも恐れず、貴州人は辛くないことを恐れる)」とも言われるほど、
貴州は、四川、湖南と並び、中国の中でも特別辛い物を好む地域。

俗に“黔菜(Qiáncài けんさい)”と呼ばれる貴州料理は、
中国四大料理のひとつ、四川料理の系統に属し、実際、四川料理に似ているようにも感じるのだが、
四川が“麻辣”と呼ばれるシビレる辛さを特徴とするのに対し、貴州はスッパ辛い“酸辣”を好む傾向。

★ オーダー

四川料理を出すお店は日本にも沢山あるけれど、貴州料理は珍しいので、
行き当たりバッタリのこんな機会にお試しも悪くない。私、辛いのも酸っぱいのも好きだし。



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メニューは写真入りで分かり易い。
問題は、1ポーションの量が多いこと(←まぁ、一般的に中華料理はそういうものだが)。
しかも、何か頼もうとする度に、お店の女の子が「それ、すっごく辛いですよ」と脅すので、
次から次へと却下となり、結局2品だけオーダー。



イメージ 8

注文も済み、ひと息。
お茶は、貴州の緑茶(無料のサービス茶)。
お料理が辛いので、どんどん飲んでしまうのだが、減るとグラスに継ぎ足してくれる。

★ 開胃茄丁

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貴州にも、辛くないお料理は有ります。
この“开胃茄丁(開胃茄丁)”もそんな一つ。ひと皿、36元也。

頭に“開胃(食欲を刺激する)”と付いているので、前菜程度の物を想像していたら、結構な量であった。
その後に続く“茄丁”からも分かるように、メインはダイス状にカットしたお茄子。
赤い物は肉厚のパプリカだと思ったら、トマト。酸味より甘みの強いトマト。
これは嫌味の無い味で、美味しい。大抵の日本人は好きな味だと思う。
唐辛子も入っているので、まったく辛くないわけではないけれど、ちょっとピリッとする程度。
その僅かなピリ辛効果で、このお料理の名前通り、食が進む。

★ 米豆腐

イメージ 10

もう一品は、“米豆腐”。ひと皿、28元也。
お店の女の子に「すごく辛い」と何度も念を押されたので、怖くなり、辛さ控えめで注文。


そこまで脅かされながらも、なぜこれを頼んだかと言うと、
映画では見たことがあっても、実際に食べたことは無かったから。

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「きみの手、米豆腐より白いね」 ←口説き文句にも土地柄が(笑)。
文革期を描いた謝晉(シエ・チン)監督のこの『芙蓉鎮』(1986年)で、
劉曉慶(リウ・シャオチン)扮する主人公が営んでいるのが、米豆腐屋さんなの。
この映画を観た時、「豆じゃなくてお米なら、もはや豆腐ではない…」とも思った。

米豆腐は、お米と食用の石灰を混ぜ、豆腐状にした物。
貴州と限らず、四川や湖南などでも食べられる小吃で、地域により多少の差はあるらしい。

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今、改めて調べたら、『芙蓉鎮』の舞台は湖南省。
映画の中の米豆腐は、ダイス状にカットした物がお椀の中にコロコロと入っていたけれど、
このお店で出てきた物は、棒状。
ちなみに、映画で、主人公と恋に落ちる右派の男を演じているのは、かの姜文(チアン・ウェン)。


私がお店で食べた棒状の米豆腐、食感はツルン。
大豆で作った本物の豆腐よりは固く、歯切れも良い。
気にして食べると、後味にほんのりお米の味を感じなくもない。
何も付けずに、米豆腐だけで食べたら、もしかして米の研ぎ汁を固めたようなボケた味かも…?

今回私は辛さ控えめで作ってもらったけれど、やはりそれなりに辛い。
このタップタップの漬け汁、見ての通り、真っ赤だから。
唐辛子の味がダイレクトに来る。


大好物とは言わないが、こういうツルンとした食感の物は好きなので、悪くないと思った。
ただ、お店の女の子は、
「本当の米豆腐はもっと美味しい。もし機会があるなら、苗乡楼(苗郷樓)で食べてみて」と。
その子が言うには、このお店では、買ってきた米豆腐を使っているけれど、
苗郷樓ではちゃんと手造りしており、本場の味なのだと。
そもそも本場の味を知らないので、これでも充分だと思った私、
どう違うのか尋ねたところ、本当の米豆腐の食感は、もっと柔らかなんですって。


この女の子、天燕ちゃんというのだが、自分が働く店内で、客に他店を薦めて大丈夫なのか…?
とても人懐っこく、ずっと私の横で、お喋りをしているから、後で上司に叱られるのではないかと、少々心配に。
でも、くれた名刺を見たら、役職が“主管”であった。
小柄で若々しく見えるので、18歳くらいの出稼ぎ労働者だと勝手に想像していたら、実際には25歳だという。


馬連道へ来た目的は、お茶を買うことで、
遵義紅は“ちょっと寄り道”程度のはずが、すっかり油を売ってしまった私。
お喋りも切りのいいところで、お会計。
お支払いしようとしたら、レジの女の子が、なぜかちょっとオマケしてくれた。
満額払おうとしたけれど、「いいから、いいから」と。
そもそも2品しか注文せず、サービス茶ガンガン飲んだのに、申し訳ない。
天燕ちゃんをはじめ、北京馬連道・遵義紅の皆さま、ありがとうございました!
親切な良いお店なので、貴州料理をお試ししたい方は、どうぞ。
(天燕ちゃん曰く、米豆腐のお薦め店は苗郷樓とのことだが、
こちらの遵義紅も、グルメサイト等での評判はまずまず。)



さて、次に、私は、いよいよ茶葉を買いに行きます。
“北京2016:馬連道②”に続く。



◆◇◆ 遵义红 ◆◇◆
北京市 西城区 马连道路 9-22号 遵义红茶城2层

 010-63476166

 10am~9pm (←間違っている可能性あり、要確認)

 地下鉄7号線・湾子(灣子)駅
D出口から出て、馬連道路を南下 徒歩8~10分程度

ちょっとした和菓子3種(+テレビ雑記)

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先ほど、テレビをつけたら、ニュース番組で、
「SNSでの拡散に期待して、館内での撮影を許可する美術館が増えている」、
「美術館側の思惑は当たり、話題作りや集客に役立っている」という情報を取り上げているのをたまたま観た。
日本もようやくそういう時代になってきたのねぇ~と感慨にふけったが、
その一方で、「シャッター音がうるさい、美術鑑賞は静かにしたい」という人の意見も紹介されていた。

そうなのよ、問題はシャッター音。
その昔、「携帯のシャッター音は、盗撮防止のため、消せないように製造されている」、
「そういう携帯が使われているのは、世界でも、痴漢の多い日本と韓国だけ」と聞いた記憶がある。
私は入れていないけれど、昨今では、シャッター音を消せるアプリが多数有るというし、
そもそも、本気で盗撮したい人は、どんな手段を使ってでも盗撮するだろうから、
シャッター音が消せない電話を作り続けるなんて、無意味にしか思えない。
少数の変態のために、大多数の普通の人々に、ガシャガシャと騒音を立てさせ続ける気か?!
例えば、海外の美術館やレストランで、静寂の中、カシャッ!とシャッター音が響き渡ったら、
迷惑だし、カッコ悪いし、しかもその張本人が日本人(or韓国人)だとバレバレ。
韓国でも、相変わらず、シャッター音が消せない電話が使われ続けているのだろうか。
こういう事で、思考が停止したままなのは、世界でももはや日本だけという気も…。
日本もいい加減、シャッター音有る/無しの選択が可能な電話に切り替える時期なのでは??



この先放送予定の要録画番組も何本か。

イメージ 1

一本目は、2017年6月4日(日曜)、BS TBSで放送の『松坂桃李 遥かなるシルクロードの旅』
漢武帝(紀元前157-紀元前87)の命を受け、西域に赴き、
結果、東西交易の発展に大きく貢献した漢代の外交家で、
司馬遷の<史記>にも記されている張騫(ちょうけん ?-紀元前114)の足跡を
松坂桃李が西安から西へ西へと辿って行くという紀行番組。
松坂桃李に、張騫やシルクロードは無縁にも思えるけれど、
そもそもパパが命名した彼の“桃李”というお名前が、
<史記>の中で、司馬遷が将軍・李廣(紀元前184-紀元前119)を評した言葉、
「桃李不言,下自成蹊(桃李言わざれども下自ずから蹊を成す)」に由来するとのことなので、
そういう御縁で、レポーターに白羽の矢が立ったのでしょうか。
この番組、収録は、実は2015年らしい。2年もお蔵入りだった理由は?
何はともあれ、2年越しに蔵出しとなり、喜ばしい。




イメージ 2

続いて、6月6日(火曜)、NHK BSプレミアムの『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』
今回は、“兵馬俑は見ていた!~巨大遺跡に翻弄された人々”と題し、
20世紀最大の発見とされる兵馬俑の発見に携わるエピソードを紹介。
1974年、陝西省西安市臨潼で、地元の村民・楊志發(よう・しはつ)が、
井戸を掘ろうとして、偶然発見したというのは、有名な話。
歴史的価値のある物が次々と破壊されていた文革の真っ只中で、
この新発見の遺跡を守ろうとした人々の驚きの行動や、
その発見から始まった楊志發の数奇な人生、また、第一発見者ゆえの苦悩などにも迫るという。

兵馬俑と言えば、発見されて間も無い頃の現地の映像を、以前観たことがある。
その頃はまだ国の管理がまったく及んでいなかったため、
近隣の農民たちが、掘ればいくらでもザクザク出てくるプチ土像などを、フェンス越しに外国人に売り、
小遣い稼ぎをしている様子を捉えた映像であった。
あの頃、ドサクサに紛れ、秦代のお宝を二束三文で手に入れた外国人、沢山居そう。
(不謹慎だが、少々羨ましくも…。)




イメージ 3

6月6日(火曜)はチャイナな日で、NHK BSプレミアムでは、『アナザーストーリーズ』の後、
もう一本中国関連の番組、『2度目の上海~おこづかい3万円で充実旅』を放送。
今回旅をするのは、出演したスティーヴン・スピルバーグ監督作品
『Ready Player One』の公開が来年に控えている森崎ウィン。『2度目の〇〇』シリーズには初登場。
そんな森崎ウィンが、東洋と西洋、レトロとモダンが混ざり合った独特な街・上海で、
口の中がバン!となる麺や、謎の黄金粥を味わったり、キッチュで可愛い雑貨を買ったり、
夜は国際的なミュージシャンが集まるジャズバーで音楽とカクテルを楽しんだり、
はたまた水郷の村への小旅行もするという。
私は、北京と上海だったら、断然北京派で、上海へ行くくらいなら香港をセレクトしてしまいがちなのだが、
それでも今回の上海特集は楽しみ。
口の中がバン!となる麺とは、如何なる麵なのでしょう…??!



あと、ここのところずっと再放送を流している東京MX2の『明日、どこいくの!?~明天去哪儿!?』
テレビ番組表を見ると、6月3日(土曜)の放送に“新”のマークが付いている。
リニューアルして再スタート?ただ、放送前日の今日の時点でも、未だ情報がまったく無い。
このやる気の無い、さすがは、東京MX。
もし本当に再放送ではないのなら、新シリーズのレポーターは、
引き続き“U(ユー)”こと曾宇璦(ツォン・ユーアイ)なのだろうか。
あまり期待せずに、一応録画の予約だけ。



お菓子は、以下に和の物を3ツ。

★ 開運堂:真味糖

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大きさは、だいたい長さ6センチ×幅2.5センチ×厚さ1.2センチ。
卵白や蜂蜜で作った生地に、鬼くるみを混ぜ込んだお干菓子。





ひとつめは、信州・松本の老舗、開運堂(公式サイト)“真味糖”
開運堂は、開運グッズ屋でなく、ましてや占いの館でもありません。
明治17年(1884年)、呉服商からお菓子屋さんに職替えし、約130年になる松本の老舗。
呉服からお菓子とは、随分思い切った商売替え。なぜなのだろう。
日本がどんどん西洋化する明治、先見の明をもつ店主が、「この先いつか和装は廃れる…」と予見し、
お菓子屋さんに鞍替えしたとか…?
もしそうなら、その時の決断で、その後130年も続いているのだから、大したものである。

真味糖は、その開運堂の看板菓子の一つ。
読み方は、“しんみとう”。
主原料は、卵白と蜂蜜。そこに胡桃を混ぜ込み、乾燥させた物。
原材料からも分かるように、これ、まるで“和風ヌガー”なのだ。

噛むとサクッとした食感だが、生地の粒子が細かく滑らかで、口の中で溶け易い。
甘さは強め。蜂蜜の甘みが、ダイレクトに感じられる。
香ばしい胡桃が、ちょっとしたアクセント。


洋風のヌガーは、「甘過ぎる…!」と嫌う日本人が多いけれど、
そういう人は、こちらの和風ヌガーも苦手なのではないかと想像。
ただ、甘さが強い分、一個が小さくても、しっかり食べた気にさせてくれる。
濃いお抹茶の他、ブラックコーヒーにも合う思う。

★ あさ川:妹ほっかり

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大きさは、約7.5センチ。
芋餡を時雨種で包み、蒸し上げ、シナモン風味に仕上げたお菓子。





続いて、茨木の和菓子屋さん、あさ川(公式サイト)“妹ほっかり”
こちらも歴史があり、創業は明治5年(1872年)、“水戸の梅”で有名な茨木の老舗。
あっ、今、心の中で、“IBARAGIの老舗”と言ってしまったが、
“IBARAKIの老舗”と言わないといけないんでしたっけ。
NHKの朝ドラ『ひよっこ』が放送開始間も無い頃、木村佳乃が目にいっぱい涙を溜めながら、
「“いばらぎ”じゃありません!“い・ば・ら・き”ですっ!」って言っていたのを思い出した。

この“妹ほっかり”は、有名な“水戸の梅”と比べると、随分素朴な印象のお菓子。
サツマイモを使い、形も小さなサツマイモに見立てている。
サツマイモは、地元・茨城県産の紅あずまを使用。
程よい甘さで、シットリした質感の芋餡。

その芋餡を包んでいる“時雨”とは、餡に上新粉などを混ぜた物。
小麦粉で作った皮と違い、とても軽い。
そこにまぶされたシナモンは、良い香り。


これは、“和風スウィートポテト”。
洋風のスウィートポテトと違い、バターやクリームを使っていない分、あっさりしているし、
そもそも小ぶりなので、おなかに重くない。

★ 笹屋伊織:檸檬大福

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大きさは、一番長い場所で約6・5センチ。
レモン果汁を練り込んだ白餡と、レモン果肉を、餅で包んだ大福。




最後は、笹屋伊織(公式サイト)“檸檬大福”
夏の間中買えると思い込んでいたが、どうやら5月末で販売を終了した模様。

夏の間中有ると思い込んでいたのは、これが夏らしいフルーツ大福だから。
使っているフルーツは、レモン!
形も、まん丸ではなく、レモンの形に成形されている(ビミョーだけれど)。

お餅が非常に柔らかなので、求肥粉とか羽二重粉とか、何かブレンドしているのではないかと想像し、
原材料表示を見たら、国産もち米のみ。
へぇー、それで、こんなに柔らかなお餅になるとは。

餡のベースは、手亡豆と白小豆。
練り込まれたレモン果汁の味は、ほとんど感じないが、通常の白餡よりサッパリしているかも。
そして、その白餡の中には、レモンの果肉がそのまま入っている。
レモンは、あくまでもレモンで、酸っぱい…!
このキリッとした酸味が、全体を引き締めている。


大福は、ちょっと暑苦しいイメージのお菓子なのだけれど、これはサッパリしていて、夏向き。
それだけに、これから本番を迎える夏に販売が無いのは、少々残念。
ちなみに、画像に映っている折り鶴は、お菓子に付いてきた物。
笹屋伊織で、お菓子を買い、箱に隙間ができると、その隙間が折り鶴で埋められていることがある。

ちょっとした和菓子3種(+テレビ雑記)

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先ほど、テレビをつけたら、ニュース番組で、
「SNSでの拡散に期待して、館内での撮影を許可する美術館が増えている」、
「美術館側の思惑は当たり、話題作りや集客に役立っている」という情報を取り上げているのをたまたま観た。
日本もようやくそういう時代になってきたのねぇ~と感慨にふけったが、
その一方で、「シャッター音がうるさい、美術鑑賞は静かにしたい」という人の意見も紹介されていた。

そうなのよ、問題はシャッター音。
その昔、「携帯のシャッター音は、盗撮防止のため、消せないように製造されている」、
「そういう携帯が使われているのは、世界でも、痴漢の多い日本と韓国だけ」と聞いた記憶がある。
私は入れていないけれど、昨今では、シャッター音を消せるアプリが多数有るというし、
そもそも、本気で盗撮したい人は、どんな手段を使ってでも盗撮するだろうから、
シャッター音が消せない電話を作り続けるなんて、無意味にしか思えない。
少数の変態のために、大多数の普通の人々に、ガシャガシャと騒音を立てさせ続ける気か?!
例えば、海外の美術館やレストランで、静寂の中、カシャッ!とシャッター音が響き渡ったら、
迷惑だし、カッコ悪いし、しかもその張本人が日本人(or韓国人)だとバレバレ。
韓国でも、相変わらず、シャッター音が消せない電話が使われ続けているのだろうか。
こういう事で、思考が停止したままなのは、世界でももはや日本だけという気も…。
日本もいい加減、シャッター音有る/無しの選択が可能な電話に切り替える時期なのでは??



この先放送予定の要録画番組も何本か。

イメージ 1

一本目は、2017年6月4日(日曜)、BS TBSで放送の『松坂桃李 遥かなるシルクロードの旅』
漢武帝(紀元前157-紀元前87)の命を受け、西域に赴き、
結果、東西交易の発展に大きく貢献した漢代の外交家で、
司馬遷の<史記>にも記されている張騫(ちょうけん ?-紀元前114)の足跡を
松坂桃李が西安から西へ西へと辿って行くという紀行番組。
松坂桃李に、張騫やシルクロードは無縁にも思えるけれど、
そもそもパパが命名した彼の“桃李”というお名前が、
<史記>の中で、司馬遷が将軍・李廣(紀元前184-紀元前119)を評した言葉、
「桃李不言,下自成蹊(桃李言わざれども下自ずから蹊を成す)」に由来するとのことなので、
そういう御縁で、レポーターに白羽の矢が立ったのでしょうか。
この番組、収録は、実は2015年らしい。2年もお蔵入りだった理由は?
何はともあれ、2年越しに蔵出しとなり、喜ばしい。




イメージ 2

続いて、6月6日(火曜)、NHK BSプレミアムの『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』
今回は、“兵馬俑は見ていた!~巨大遺跡に翻弄された人々”と題し、
20世紀最大の発見とされる兵馬俑の発見に携わるエピソードを紹介。
1974年、陝西省西安市臨潼で、地元の村民・楊志發(よう・しはつ)が、
井戸を掘ろうとして、偶然発見したというのは、有名な話。
歴史的価値のある物が次々と破壊されていた文革の真っ只中で、
この新発見の遺跡を守ろうとした人々の驚きの行動や、
その発見から始まった楊志發の数奇な人生、また、第一発見者ゆえの苦悩などにも迫るという。

兵馬俑と言えば、発見されて間も無い頃の現地の映像を、以前観たことがある。
その頃はまだ国の管理がまったく及んでいなかったため、
近隣の農民たちが、掘ればいくらでもザクザク出てくるプチ土像などを、フェンス越しに外国人に売り、
小遣い稼ぎをしている様子を捉えた映像であった。
あの頃、ドサクサに紛れ、秦代のお宝を二束三文で手に入れた外国人、沢山居そう。
(不謹慎だが、少々羨ましくも…。)




イメージ 3

6月6日(火曜)はチャイナな日で、NHK BSプレミアムでは、『アナザーストーリーズ』の後、
もう一本中国関連の番組、『2度目の上海~おこづかい3万円で充実旅』を放送。
今回旅をするのは、出演したスティーヴン・スピルバーグ監督作品
『Ready Player One』の公開が来年に控えている森崎ウィン。『2度目の〇〇』シリーズには初登場。
そんな森崎ウィンが、東洋と西洋、レトロとモダンが混ざり合った独特な街・上海で、
口の中がバン!となる麺や、謎の黄金粥を味わったり、キッチュで可愛い雑貨を買ったり、
夜は国際的なミュージシャンが集まるジャズバーで音楽とカクテルを楽しんだり、
はたまた水郷の村への小旅行もするという。
私は、北京と上海だったら、断然北京派で、上海へ行くくらいなら香港をセレクトしてしまいがちなのだが、
それでも今回の上海特集は楽しみ。
口の中がバン!となる麺とは、如何なる麵なのでしょう…??!



あと、ここのところずっと再放送を流している東京MX2の『明日、どこいくの!?~明天去哪儿!?』
テレビ番組表を見ると、6月3日(土曜)の放送に“新”のマークが付いている。
リニューアルして再スタート?ただ、放送前日の今日の時点でも、未だ情報がまったく無い。
このやる気の無い、さすがは、東京MX。
もし本当に再放送ではないのなら、新シリーズのレポーターは、
引き続き“U(ユー)”こと曾宇璦(ツォン・ユーアイ)なのだろうか。
あまり期待せずに、一応録画の予約だけ。



お菓子は、以下に和の物を3ツ。

★ 開運堂:真味糖

イメージ 4

大きさは、だいたい長さ6センチ×幅2.5センチ×厚さ1.2センチ。
卵白や蜂蜜で作った生地に、鬼くるみを混ぜ込んだお干菓子。





ひとつめは、信州・松本の老舗、開運堂(公式サイト)“真味糖”
開運堂は、開運グッズ屋でなく、ましてや占いの館でもありません。
明治17年(1884年)、呉服商からお菓子屋さんに職替えし、約130年になる松本の老舗。
呉服からお菓子とは、随分思い切った商売替え。なぜなのだろう。
日本がどんどん西洋化する明治、先見の明をもつ店主が、「この先いつか和装は廃れる…」と予見し、
お菓子屋さんに鞍替えしたとか…?
もしそうなら、その時の決断で、その後130年も続いているのだから、大したものである。

真味糖は、その開運堂の看板菓子の一つ。
読み方は、“しんみとう”。
主原料は、卵白と蜂蜜。そこに胡桃を混ぜ込み、乾燥させた物。
原材料からも分かるように、これ、まるで“和風ヌガー”なのだ。

噛むとサクッとした食感だが、生地の粒子が細かく滑らかで、口の中で溶け易い。
甘さは強め。蜂蜜の甘みが、ダイレクトに感じられる。
香ばしい胡桃が、ちょっとしたアクセント。


洋風のヌガーは、「甘過ぎる…!」と嫌う日本人が多いけれど、
そういう人は、こちらの和風ヌガーも苦手なのではないかと想像。
ただ、甘さが強い分、一個が小さくても、しっかり食べた気にさせてくれる。
濃いお抹茶の他、ブラックコーヒーにも合う思う。

★ あさ川:妹ほっかり

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大きさは、約7.5センチ。
芋餡を時雨種で包み、蒸し上げ、シナモン風味に仕上げたお菓子。





続いて、茨木の和菓子屋さん、あさ川(公式サイト)“妹ほっかり”
こちらも歴史があり、創業は明治5年(1872年)、“水戸の梅”で有名な茨木の老舗。
あっ、今、心の中で、“IBARAGIの老舗”と言ってしまったが、
“IBARAKIの老舗”と言わないといけないんでしたっけ。
NHKの朝ドラ『ひよっこ』が放送開始間も無い頃、木村佳乃が目にいっぱい涙を溜めながら、
「“いばらぎ”じゃありません!“い・ば・ら・き”ですっ!」って言っていたのを思い出した。

この“妹ほっかり”は、有名な“水戸の梅”と比べると、随分素朴な印象のお菓子。
サツマイモを使い、形も小さなサツマイモに見立てている。
サツマイモは、地元・茨城県産の紅あずまを使用。
程よい甘さで、シットリした質感の芋餡。

その芋餡を包んでいる“時雨”とは、餡に上新粉などを混ぜた物。
小麦粉で作った皮と違い、とても軽い。
そこにまぶされたシナモンは、良い香り。


これは、“和風スウィートポテト”。
洋風のスウィートポテトと違い、バターやクリームを使っていない分、あっさりしているし、
そもそも小ぶりなので、おなかに重くない。

★ 笹屋伊織:檸檬大福

イメージ 6

大きさは、一番長い場所で約6・5センチ。
レモン果汁を練り込んだ白餡と、レモン果肉を、餅で包んだ大福。




最後は、笹屋伊織(公式サイト)“檸檬大福”
夏の間中買えると思い込んでいたが、どうやら5月末で販売を終了した模様。

夏の間中有ると思い込んでいたのは、これが夏らしいフルーツ大福だから。
使っているフルーツは、レモン!
形も、まん丸ではなく、レモンの形に成形されている(ビミョーだけれど)。

お餅が非常に柔らかなので、求肥粉とか羽二重粉とか、何かブレンドしているのではないかと想像し、
原材料表示を見たら、国産もち米のみ。
へぇー、それで、こんなに柔らかなお餅になるとは。

餡のベースは、手亡豆と白小豆。
練り込まれたレモン果汁の味は、ほとんど感じないが、通常の白餡よりサッパリしているかも。
そして、その白餡の中には、レモンの果肉がそのまま入っている。
レモンは、あくまでもレモンで、酸っぱい…!
このキリッとした酸味が、全体を引き締めている。


大福は、ちょっと暑苦しいイメージのお菓子なのだけれど、これはサッパリしていて、夏向き。
それだけに、これから本番を迎える夏に販売が無いのは、少々残念。
ちなみに、画像に映っている折り鶴は、お菓子に付いてきた物。
笹屋伊織で、半端な数のお菓子を買い、箱に隙間ができると、その隙間が折り鶴で埋められていることがある。

浅野忠信in中国映画『羅曼蒂克消亡史』

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すっかり忘れておりました、浅野忠信が中国映画に出ていたことを。
その映画とは、程耳(チェン・アール)監督による『羅曼蒂克消亡史~The Wasted Times』


現地・中国では、もう5ヶ月も前の2016年12月に公開。
香港でも、2017年3月末にすでに公開。
香港から遅れることさらに2ヶ月、この5月19日、今度は台湾で公開されるため、
台湾でプロモーションが展開され、私も芸能ニュース等で目にする機会があり、
ようやくこの映画の存在を思い出した。


物語は、簡単に言ってしまうと、暗雲立ち込める30年代の魔都・上海を舞台に、
裏社会のボスを中心とした人々それぞれが抱える思惑をサスペンスフルに描いた群像劇らしい。




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主要キャストは、葛優(グオ・ヨウ)、章子怡(チャン・ツィイー)、浅野忠信。

葛優扮する上海灘の大物・陸先生は、これまでにもしばしば映像作品に登場している
実在の大物極道・杜月笙(1888-1951)がモデル。
他の多くの主要登場人物も、実在のモデルがいるとのこと。

浅野忠信は、その陸先生の妹の夫で、
日本料理店を経営しながら、裏で陸先生の片腕として働く日本人の渡辺。
章子怡は、陸先生の兄貴分・王の妻で、社交界の花。

浅野忠信扮する渡辺は、主要登場人物の中で唯一実在のモデルが居ない
本作品オリジナルのキャラクター。
日本人でありながら、上海語が喋れるという設定なので、浅野忠信は3ヶ月上海語の特訓を受けたらしい。
どうやら、この作品での彼は、変態度(?)が高いらしく、章子怡を地下室に監禁し、強姦もするとのこと。
極悪非道な嫌われ役かと思いきや、その変態日本人・浅野忠信が現地ではなかなか評判で、
「変態でカッコイイ」、「この映画の真の主役は浅野忠信」、「中国人より上海語が上手い!」等々
絶賛のコメントを多く目にする。
(実際には、浅野忠信自身の上海語は、一部使われているだけで、あとは吹き替えみたいだけれど。)



他の出演者もザッと見ておくと…

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杜淳(ドゥ・チュン)、鍾欣潼(ジリアン・チョン)、倪大紅(ニー・ダーホン)、袁泉(ユアン・チュアン)、
閆妮(イェン・ニー)、韓庚(ハン・グン/ハンギョン)等々、なかなか豪華な顔ぶれ。

私、杜淳が、大陸でイケメン枠に入れられているのが、どーーーしても納得できないのだけれど、
この映画では、車夫の役らしいので、ホッとした(イケメン御曹司とかじゃなくて、本当に良かった)。

ちなみに、葛優の妹で、浅野忠信の妻を演じているのは、松峰莉璃。
大ヒットドラマ『偽裝者~The Disguiser』で、日本の特攻“南田洋子”(笑)を演じた、あの松峰莉璃!
(大陸を拠点に活動する日本人女優・松峰莉璃に関しては、以前チラリと記したこちらを参照。)




で、この度、この『羅曼蒂克消亡史』が台湾で公開されるにあたり、程耳監督が渡台。
同じく華誼兄弟の制作で、台湾での公開を控えている『ロクさん~老炮兒』の管虎(グアン・フゥ)監督と共に、
昨日、5月11日、台北で、“江湖對談(江湖対談)”なる共同記者会見を開催。

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2作品とも江湖を題材にしているから“江湖対談”ということらしい。
画像で、左の大きい方が管虎監督、右の小さい方が程耳監督。
(実物の程耳監督は、この画像を見て、我々が受ける印象よりは、小さくないはず。
なにせ、管虎監督が身長190センチなので、横に並ぶと誰でも必要以上にプチサイズに見えてしまうわけ。)

この会見によると、程耳監督は、浅野忠信出演作を随分観ていて、以前からずーーっとファンで、
まさか出演オファーを受けてもらえるとは思っていなかったらしい。
実際に一緒にお仕事をした浅野忠信は、やはりカッコよく、芸術家タイプ。
撮影の無い時は、部屋に籠り、絵を描いたり、歌を書いたり、ギターを弾いたり。
普段特別な要求をしてこない浅野忠信が、一度だけ言ってきたのは、「部屋を替えてくれ」というお願い。
大きな部屋にはどうも慣れない、もっと小さな部屋にして欲しい、との要求だったらしい。
女性スタッフはみんな浅野忠信に魅了され、
クランクアップの時には、ツーショットを撮るため、長蛇の列ができたのだと。



“日本絡み”と言えば、蜷川実花も、程耳監督から熱望され、
北京にて、(↓)このようなポスターを何パターンか撮っております。

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程耳監督は、映画とかアートとか、日本のカルチャーが好きなのかもね。




最後に、映画『羅曼蒂克消亡史』のトレーラーを。







浅野忠信と章子怡が出ていれば、日本でも公開に希望をもてる…?
(私個人的には、章子怡以上に葛優、次いで、倪大紅や閆妮が見たいかも。)
最悪、東京・中国映画週間でなら上映するかしら。
未見の『羅曼蒂克消亡史』の良し悪しは何とも言えないが、
昨年、その東京・中国映画週間で観た『ロクさん』は面白かったので、こちらも日本での一般劇場公開希望。
『ロクさん』は絶対もう一度観たい!
“華誼兄弟・江湖系列”ってことで、2本一緒に日本に入れるというのは、如何でしょう。

映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』

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【2016年/日本・台湾/94min.】
2011年3月、日本の栃木県・宇都宮。
東北を襲った大地震は、ここ宇都宮にもかなり影響。
父と暮らす家に帰ったサラリーマンの茂木は、物が散乱する自室を目にする。
ひと息つき、facebookにアクセスすると、台湾から送られてきた「日本加油!」という中国語のメッセージ。
茂木が「ありがとう台湾」と返すと、今度は日本語で返信。
なんでも、この人物は、台湾の大学で日本語を学ぶ林薏涵という女の子。
二人は、互いを、“リンちゃん”、“モギサン”と呼び、SNSでしばしば交流するように。

ある日、茂木は、友人からの電話で、連休に行くタイ旅行の手配をまだしていなかったことを思い出す。
慌ててパソコンに向かうが、タイへの直行便はすでに空席ナシ。
「台湾へ来たら、いつでも案内しますよ」というリンちゃんの言葉が、脳裏をふと過り、
茂木は、台北行きの航空券3枚を手配。

親友のコージとショウを引き連れ、台湾へ下り立った茂木。
3人は、慣れない土地で、地下鉄を乗り継ぎ、リンちゃんと落ち合うため、市街地へ。
「茂木さぁ~ん!」日本語の呼び掛けに振り返ると、そこには初めて会うリンちゃんの姿が…。


谷内田彰久監督が手掛ける日台合作映画。
ぜんぜん知らない監督さん。
この珍しい苗字に、“内山田洋とクールファイブ”をダブらせ、勝手に“たにうちだ”と読んでいたが、
実際には“やちだ”と読むそうだ。
TBSのドラマ『拝啓、民泊様。』が代表作らしいけれど、私は、それも未見。


原作は、茂木洋路&林薏涵(リン・イーハン)という日台国際夫婦による同名のフォトブック。
(日本では、新潮社から発売。)

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まったくのオリジナルだと思っていた映画のポスターも、実はこのご夫婦の写真を模した物だったのですね~。

本は、茂木夫妻が開設しているfacebookの人気ページ
“雖然媽媽說我不可以嫁去日本(ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど)”をまとめた内容らしい。

そもそも、そのFacebookには、すでにかなりの固定ファンが存在していたようだ。
谷内田彰久監督のインタヴュを読むと、映画は、緻密なマーケティングの元、制作されていると感じる。
純粋芸術とは程遠い、計算に計算を重ねて企画された映画だと思うと、どこか気分が乾いてしまうのだが、
ある意味、とても現代的な企画モノだとも思える。



物語は、facebookを通し知り合った二人の男女、
台北在住の大学生“リンちゃん”こと林薏涵と、宇都宮在住のサラリーマン“モギサン”こと茂木洋路が、
その後も日台で別々に暮らしながらも、心の距離を徐々に縮め、結婚に至るまでの経緯を
実話に基づいて描いたラヴ・ストーリー

事の始まりは、2011年3月に東北を襲った大地震。
その際、リンちゃんがモギサン宛てに「日本加油!」とコメントを寄せたのが、二人の最初の接点。
リンちゃんは、大学で日本語を専攻し、ある程度の日本語ができたため、SNS上での交流が始まり、
モギサンが友人と休暇で台湾を訪れたことで、リアルに御対面。
二人とも、お互いに好印象を抱いたものの、その時点では、恋の炎がパアーッと燃え上がることは無し。
それでも、ちょっとした娘の変化を察知した母親は、娘を傍に置いておきたい一心で、
リンちゃんの以前の交際相手を呼び寄せ、復縁の後押し工作を開始。
モギサンは、リンちゃんの周囲にチラつく元カレの影にソワソワしてしまい、
遂に勇気の一歩踏み出し、その甲斐あって、二人は遠距離恋愛を始めるのだけれど、
諦めの悪い母親が、最後の障壁として、またまた二人の前に立ちはだかる…、って流れ。

一切の変化球ナシで、予想していた通りに物語が進むので、ネタバレも何も無い。
映画に、もし、観衆を食い付かせるパターンが2種類あるとして、
一つは、ハラハラどきどきさせてくれる、まったく先の読めない未知の物、
もう一つは、「それ、ある、ある!」と確認作業をさせる分かり切った物だとすると、本作品は後者。

実際のリンちゃんとモギサンが現在ハッピーな事は、皆が分かり切っていることだし、
彼らがごく普通の人で、時代や国に翻弄される波乱万丈など無かったことも、察しがつく。
そういう自分の周りにも居そうな普通の人が、facebookという身近なツールを使って知り合い、
それでいて、“国を跨いで実際に会う”という、ちょっと勇気のいる行動に出たことで、恋を成就させているから、
多くの人は、“誰もが手を伸ばせば届きそうな小さな幸せのドラマ”を、
親近感とささやかな羨望をもって、楽しく傍観できるのでは。





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主人公を演じているのは、“モギサン”こと茂木洋路に中野裕太
“リンちゃん”こと林薏涵に簡嫚書(ジエン・マンシュー)

やや草食系のおとなしいモギサンと、ざっくばらんで積極的なリンちゃん。
二人とも、人々が思い描く今どきの日本男児&台湾女子のイメージに近いかも。

その昔、青森県住宅公社職員が、横領した巨額の金をチリ人女性に貢いだ事件が起きた時、
テレビである東北人男性が、「寒く閉ざされた東北の男性はおとなしいので、
明るいラテン系の女性に惹かれ易い」とコメントしていたのを、思い出した。
性格や人間性に、地域差や県民性が本当に関係するのかは、私には分からないけれど、
おとなしいモギサンには、南国の女性・リンちゃんがお似合い。“割れ鍋に綴じ蓋”カップルである。

最後だって、モギサンは、リンちゃんに言われるがまま、彼女の母親に
「ちんばーにゅうあーじゃおげいうぉー(請把女兒交給我)」と、意味も分からず結婚の申し込み。
言わば、意に反した“押し切られ婚”。でも、押し切られたモギサンを気の毒だとは思わない。
むしろ、押し切ってくれるような逞しい台湾人女性に出逢えて良かったですね、と言いたい。

中野裕太のことは、特別よく知らない。
私には、俳優としてより、NHK『地球アゴラ』でキビキビと司会をする姿が印象に残っていたし、
顔が混血っぽい上(実際には100%日本人らしい)、高学歴、マルチリンガルなどと言われていたので、
おとなしいモギサン役に、なぜ彼が抜擢されたのか、分からなかった。
実際に映画を観ると、普段の野性味は抑えられ、違和感なく“モギサン”であった。
但し、ゴロンと寝転がった時に見えたヘソ毛の濃さは、
草食系のモギサンではなく、ワイルドな中野裕太そのものであった。


この映画で、中野裕太より日本で注目を集めそうなのが、相手役の簡嫚書。
私が簡嫚書を知ったのは、彼女のデビュー作『あの日を乗り越えて~那年,雨不停國』
彼女の文学少女ちっくな雰囲気が合った秀作ドラマである。
ただ、その後は、特別良いと思える簡嫚書出演作には出会えず。
特に偶像劇『シュガーケーキガーデン~翻糖花園』にはガッカリ。
出演映画が日本で公開されるは、
地味に特集上映された『ピース!時空を越える想い~大稻埕』(2014年)以来?

この新作『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど』は、
“リンちゃん”林薏涵本人が挙げた候補者の中に、簡嫚書の名前があって、起用に至ったらしい。
本人に似ているかどうかは別として、本作品が、“簡嫚書プロモーション映画”、
“簡嫚書鑑賞映画”と称しても良いほど、簡嫚書の魅力炸裂作品になっている事からも、
成功のキャスティングだったと言えそう。
こんな可愛い女の子から、タドタドしい日本語で、「〇〇さん、台湾来ないですか?」などと言われたら、
日本人男性の3割は、尻尾を振って台湾へ飛んで行ってしまうと思います、…たとえ借金をしてでも。

但し、日本人男性が求めるのは、あくまでも“台湾の素朴で愛らしい女の子”なので、
いつの間にかボディのタトゥが4ヶ所に増えている簡嫚書が、日本市場向きかどうかは不明。
(本作品では、内3ヶ所のタトゥがバッチリ見えている。役柄や作品の性質上、さほど気にはならない。
それにしても、台湾明星の彫り物率は高過ぎる…。)
顔立ちから受ける印象で、人々は勝手に“簡嫚書=可愛い系”という思い込みをしてしまうけれど、
実際には監督業などにも乗り出しているし、案外男勝りのシッカリ者なのではないかと想像。




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他の出演者も少し見ておくと、リンちゃんの母親に王彩樺(ワン・サイファー)
その母親の麻雀仲間で医師に羅北安(ルオ・ベイアン)、リンちゃんの元恋人に李逸朗(ドン・リー)
モギサンにアドバイスする居酒屋の台湾人女将・明美ちゃんに林美秀(リン・メイシュー)
モギサンの父親に蛭子能収など。


元々、台湾側は、リンちゃんのママ役に、林美秀を提案してきたらしいが、
キャラクターを考慮した結果、王彩樺に決定。
林美秀に比べ、日本での露出が少ない王彩樺は…

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『あの頃、君を追いかけた』(2011年)で、主人公・柯景騰のママを演じた
自称“台湾の浜崎あゆみ”の女優さん。
リンちゃん・林薏涵が言うには、王彩樺扮するママは、実際の彼女のママにソックリなのだと。

で、ママ役から外れた林美秀が演じているのは明美ちゃん。
台湾人なのに“明美”と名乗り、宇都宮で小さな居酒屋を経営。
日本在住にしては日本語が酷いのだけれど(笑)、そこは林美秀のぶっちゃけキャラでカバー。
この明美ちゃんは、映画用に作られた架空の人物かと思いきや、ちゃんとモデルになった人がいるのだと。
宇都宮で台湾料理の店・酔愛菜(すいあいさい)を営む黄淑琴という台湾人女性で、
実際に“明美”という日本名を名乗っており、モギサンの恋を後押ししたらしい。

リンちゃんの元交際相手は、台中在住という設定だが、演じている李逸朗は、香港明星。
日本人監督の作品に参加するのは、今回で2度目らしい。何に出ていた…?一本目って、何…?!

蛭子能収も“2度目”。
『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2015年)に引き続き、今回が2度目の“台湾映画(?)”出演。



他、日本人キャストは、台湾を拠点に活動する日本人俳優がかなり起用されている。例えば…

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モギサンの親友・コージに岡本孝、もう一人の親友・シュウに大谷主水
そして、モギサンの同僚・アサノに与座重理久

台湾から日本に戻り大成功したディーン・フジオカ以外にも、実は台湾を拠点にする日本人俳優は多い。
ここに取り上げた3人の出演作は、あまり日本に入って来ていない気がする。
私が観たのも日本未上陸ドラマ『春梅 -HARU-』で、それには岡本孝と与座重理久が出ている。

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これは、日本統治時代の台湾を描いたドラマで、
岡本孝は龍門警部、与座重理久は脱走兵をそれぞれ演じている。

今回の映画は、もっと軽いお話なので、ずっと明るい彼らが見られる。
モギサン、コージ、シュウが3人で台湾旅行をするシーンは、
“日本にいかにも居そうな20~30代サラリーマン”という雰囲気がよく出ていた。





物語の先が簡単に読めてしまう、テレビの2時間ドラマのような単純な作品。
舞台挨拶があったからまだ良かったけれど、純粋に映画鑑賞だけなら、1800円は高い。
でも、まぁ、傑作とは思えなくても、何も考えずにボケーッと観るには悪くはないのでしょうか。
同行者と気まずい雰囲気にもならないだろうから、デート・ムーヴィに向いているかも?
あっ、でも、女性がアグレッシヴに攻め、結婚まで持ち込む話なので、
取り敢えず結婚話を避けたい男性は、交際中の女性と観に行かない方が良いかも知れない。
日本人が求めがちな“台湾らしい台湾”や、日本の観光地も網羅されているので、
台湾好き日本人、日本好き台湾人のどちらもが紀行映画としても楽しめそう。
あとは、やはり簡嫚書であろう。彼女の可愛さでもっている“簡嫚書堪能映画”と呼んでも過言ではない。

ちなみに、谷内田彰久監督曰く、台北のMRT文湖線のシーンは、
『ブエノスアイレス』(1997年)を意識し、同じ場所で撮ったとのこと。
だからと言って、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品ファンが、本作品に王家衛テイストを求めてしまうと、
かなりの確率で失望すると思う。
『ブエノスアイレス』オマージュだったら、やはりバリー・ジェンキンス監督の『ムーンライト』(2016年)の方が、
観て、おぉぉぉ~っ!となるハズ。


『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』初日舞台挨拶については、こちらから。

北京2016:馬連道②~馬連道茶城

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马连道(馬連道)は、何軒ものお茶問屋が集まる、大陸北方地区最大のお茶屋街。
以前は交通の便が悪かったが、2014年末に地下鉄駅がオープンし、俄然行き易い場所になった。

地下鉄駅開業後、初めてとなる馬連道をブラブラし、
まずは貴州料理が食べられる遵義紅に立ち寄り、軽く腹ごしらえしたまでは、


で、食後はというと、お茶を買うという、馬連道にやって来た本来の目的を果たすべく、
马连道茶城(馬連茶城)へ向かう。

★ 馬連道茶城

馬連道には、数多くのお茶屋さんがひしめき合っているが、
手っ取り早く色んな物を見たかったら、马连道茶城(馬連道茶城)

馬連道茶城は、馬連道のランドマーク的存在の“お茶のデパート”。
先に寄った遵義紅からだと、南北に走るメインストリート马连道路(馬連道路)を5分程度南下するだけ。
新たに開業した最寄り駅、地下鉄7号線の湾子(灣子)駅からでも、15分も歩けば、到着。
真っ直ぐな道を、ただただ南下するだけだから、どんな方向音痴の人でも大丈夫。




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駅を背に、南下していくと、右手に見えてくるのが馬連道茶城。
建物の前には、お茶に関する知識を網羅した書<茶經>を記し、
“茶聖”と呼ばれる唐代の著名な茶学者、かの陸羽(733-804)の像。

補足しておくと、陸羽が生まれたのは、
“傾国の美女”楊貴妃に溺れたことで有名な玄宗(685-762)が皇帝の座についていた頃の唐。
そういう時代に、お茶の文化が確立していくなんて、華やかで豊かな唐を想像し、ワクワクしてしまう。


唐代に想いを馳せている場合ではありませんでした、建物の中に入ります。

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建物は4フロアから成り、各階の売り場面積は、約7000平米。
お茶売り場は1~3階で、最上階はなぜか撮影機器売り場。
お茶屋さんは、壁に囲まれた立派な店舗を構えているのも有れば、小さなスペースの所もあり、様々。
なんでも、中国全土から約300の茶商が集まり(…と言っても、お茶なので、福建省辺りが多いかも)、
約500種類の茶葉が取り引きされているのだとか。



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しかも、この茶城では、茶葉のみならず、お茶に関する物なら大抵売られている。
中国茶樓を開きたい人は、ここへ来れば、開店に必要な物は取り敢えず全て揃うでしょう。


外国人がこういう小さな店舗のひしめき合う建物の中へ入ると、
しつこい呼び込みにあうのではないかと心配する日本人も居るかも知れないが、
私はここで、そういう目に遭ったことは一度も無く、いつも放置され、好きなように見放題。

★ 焯蘭茶葉

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今回は、絶対に〇〇茶を買う!という明確な目的が無かったので、取り敢えず内部をブラブラ散策。
そして、3階のとある一角で、棚に積まれたコロコロ丸いお茶の数々に吸い寄せられ、
焯兰茶叶(焯蘭茶葉)というお店に決定。


早速、気になったお茶の試飲スタート。
販売員の周さんという若い女性は親切で、こちらから頼んだわけでもないのに、
試飲するお茶全てについて、それぞれお茶の名前は勿論のこと、産地、生産年、値段を書いてくれた。
しかも、漢字には拼音まで付けて!
私の発音がよほど酷く、「この人、拼音付けてあげなきゃ、駄目だわ」と思ったのでしょうか。


ちなみに、中国でお茶を買う場合、値段は重さ単位。その値段は大抵、一斤(500g)単位で記されている。
〇〇万円などと聞き、驚くこともあるかも知れないが、それはあくまでも一斤の値段なので、
高級茶でも、少量だったら、さほど懐を痛めずに手に入れられる。

今回、私が買おうとした丸く加工されたお茶も同様。
丸いボール状になってはいても、自然な物で、それぞれ少しずつ大きさが違うので、
“1個=〇〇元”という値段設定はされておらず、量り売り。
ただ、その一斤が一体何個くらいになるのかとか、逆に一個だったら値段はいくらなのかとか、
素人にはなかなか推測しにくい。
そのような場合でも、尋ねれば、すぐに秤で計って、
「例えば、この一個だったら10元」といった具合に教えてくれます。



以下、具体的に気に入ったお茶を挙げておく。

★ 陳皮普洱+陳皮白茶

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店頭で目に飛び込み、気になったお茶は、“陈皮普洱(陳皮普洱)”“陈皮白茶(陳皮白茶)”
名前からも分かるように、陳皮(みかんの皮)の中に茶葉を詰め込んだ物。
何種類か試させてもらい、陳皮普洱の方は、雲南省産2011年の普洱茶を詰めた物、
陳皮白茶は、福建省福鼎産2010年の白茶を詰めた物をセレクト。
値段は、前者が150元/1斤、後者が180元/1斤。

こういうお茶は、硬く乾燥した果皮を割り、少しずつ使う。
一般的な中国茶と同じで、お湯の温度は、
基本的に、茶葉の発酵の度合いが高くなればなるほど、お湯は高温。
なので、普洱茶の場合は、100度に沸騰させたお湯を注ぐ。

陳皮を使ったこの手のお茶は、以前、香港で、かなりの年代物を買ったら、結構な値段だったのだけれど、
ここのは、このクオリティでこの値段なら、お得感があると思えた。

★ 小青柑

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“小青柑”は、前出の物と同じように、果皮に茶葉を詰めた物なのだが、ずっと小ぶり。
画像では想像しにくいけれど、直径3センチ程度の愛らしいプチサイズ。
使っているのは、陳皮ではなく、“小青柑 Xiǎoqīnggān”という柑橘系のフルーツ。
これが何なのかサッパリ分からない。英語では何て言うかと尋ねたが、周さんは、知らないという。
ネットで調べても分からず、日本へ帰国後、日本在住中国人に聞いたが、やはり分からなかった。
日本に同様の柑橘が存在するかさえ不明だが、私が思うに、カボスかライムの一種という気が…。

とにかく、その小青柑という小ぶりの柑橘フルーツを使っているのが、これ。
中に詰められているのは、こちらも普洱の老茶。
周さんの説明では、近年市場に出回りだした比較的新しい商品で、最近流行っているという。
前出の陳皮普洱との明確な違いは、柑橘特有の爽やかな良い香りが感じられること。


ちなみに、(↓)こちらが、中に茶葉を詰める前のフレッシュな小青柑。

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このお茶、昨今本当に出回っているようなので、果実もお茶用にほぼ特化して栽培されている気がする。


そんなお茶、小青柑は、大きな陳皮普洱と違い、割る必要がなく、
一個を丸ごと蓋碗や茶壺にポンと入れ、お湯を注ぐだけだから、超お手軽。
一個で大体15~20杯は飲めるという。
値段は、450元/1斤也。

★ 糯米普洱

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こちらの“糯米普洱”は、自分では当初ぜんぜん興味がなく、
周さんに勧められ、消極的に試飲したら、案外気に入ったお茶。
その名の通り、普洱茶に糯米(もち米)を混ぜ、
直径2.5センチ×厚さ1センチ程度の小さな丸い形に固めた物。
この形で、金色のアルミに包まれているから、チョコレートみたい。

主になっている普洱茶は、雲南省産2013年の物。
糯米は、所々に、ポツンポツンと白く入っているのが見てとれる程度。
別に、大量に混ぜ込まれているわけではない。
そんな半端に少量の糯米を混ぜたところで、何か意味あるの?!と疑っていた私だが、
飲んでみたら、糯米がちゃんと味に影響していた。

言うなれば、玄米茶の普洱茶ヴァージョンって感じ。
糯米の効果で、普洱茶の味が明らかにまろやかになっていて、これも美味。
勧められなければ、自分では選ばなかったであろうお茶。
もちろん、これも“買い”。こちらは、150元/1斤也。

★ お買い物終了

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周さん、商売上手で、押し付けがましくない程度に、これも飲め、あれも試せと勧めてくるけれど、
おトイレの心配があるので、適当なところで終了。
私が選んで買った物以外に、福建省産の“兰贵人(蘭貴人)”をオマケに付けてくれた。
良いお買い物ができて、満足、満足。




時間が無い人や、お茶への思い入れがさほど強くない人は、わざわざ馬連道まで行く必要ないかも知れない。
老舗の有名なお茶屋さんが、北京中心部のあちらこちらに支店を出しているので、
そういう所を利用すれば充分かと。
お土産に良さそうな最初から綺麗にパッケージされたお茶などは、
むしろ、そういうお店の方が品揃えが良いかも。
でも、お茶が好きな人なら、馬連道は、行く価値のある場所。
この規模のお茶屋街は、他の国ではお目に掛かれないし、地下鉄駅ができ、行き易くなったので、
一度試しにいらしてみては如何でしょう。



◆◇◆ 北京马连道茶城 Maliandao Tea City ◆◇◆
北京市 宣武区 马连道路 11号 

 地下鉄7号線・湾子(灣子)駅
D出口から出て、馬連道路を南下 徒歩15分程度


今回私がお買い物をした焯兰茶叶(焯蘭茶葉)というお店は、馬連道茶城の3階、20号という場所。

大陸ドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』①

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英宗朱祁鎮が天下を治める明代中期。程朱学が隆盛で、女性の地位が軽んじられている時代。
杭允賢は、太医院の院判にまで登り詰めた譚複の孫で、医術が大好きな女の子。
その祖父・譚複は、かつて何者かに嵌められ、汚名を着せられたまま自害。
その後、知人の助けもあり、一家は大赦を受け、“譚”から“杭”と改名し、身分を隠すように生きている。
譚複の息子・杭剛の願いは一つ、いつか犯人を見付け出し、父の冤罪を晴らすこと。
そのため、軍職に就き、長年北の辺境に駐屯し、一家はこの度ようやく都に帰郷。

都での生活がまだ間もないある日、杭剛の娘・允賢は、父の名代で徐府へ。
そこで行われている徐侍郎の母の古稀の祝宴に参加したものの、居心地の悪さを感じ、
侍女の紫蘇を伴い、屋敷の裏の花園へ行き、偶然にも鉄皮石斛を見付ける。
人参より効力があると言われる貴重な薬草・鉄皮石斛を見付け、喜んだのも束の間、
傷だらけになった青年が、追っ手を振り切り、その場に逃げ込んできて、允賢らを驚かす。
何とか青年を助けようとする允賢だが、事件に巻き込まれては大変と紫蘇に説得され、
仕方なく、青年に大切な鉄皮石斛を譲り、宴に戻る。

実はこの青年は、時の皇帝・英宗朱祁鎮の異母弟・郕王。
英宗は、僅か9歳で皇帝に即位したこともあり、幼い頃よりずっと傍で仕えてきた太監で、
今や東廠の主管である王振に寄せる信頼は並々ならぬもの。
その状況に危機感を募らせる孫皇太后は、英宗を廃し、異母弟・郕王を新皇帝に擁立しようと目論むが、
孫皇太后のその動きに王振が気付いたため、郕王は王振の配下から命を狙われ、
傷だらけになりながら、なんとか徐府に逃げ込んできたのだ。

一方、允賢が祝宴に戻ると、本日の主役である徐家の大奥様が突如中風の発作を起こし、倒れ込む。
一家の忌まわしい過去から、医術を学ぶ事を固く禁じられている允賢だが、
徐家の大奥様を助けたい一心で、家訓を破って治療にあたり、
その甲斐あって、見事大奥様は意識を取り戻す。
しかし、允賢はまだ知らない、この日の出来事がゆくゆく災いになるとは…。


2016年、うちには入らない衛星劇場で放送された大陸ドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』が、
約一年後の2017年4月初旬、チャンネル銀河にやって来たので、今度こそ私も視聴。
それから2ヶ月後の6月上旬、全50話の放送を終了。

軽く記録しておく程度に留めるつもりが、衣装に関して書き始めたら、ダラダラと長くなってしまったため、
今回は2部構成にいたします。

『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』①
物語やキャストなどについて。

衣装や音楽などについて。


では、早速、前編から。

★ 概要

香港出身のヒットメーカー李國立(リー・クォックリー)監督による唐人影視制作のドラマ。

脚本は、『後宮の涙~陸貞傳奇』でお馴染みの女性人気脚本家・張巍(チャン・ウェイ)

現地での初回放送は、2016年。

★ 物語

物語は、儒教思想が根深く、良家の娘が働くなど有り得なかった明代、
医師の家系に生まれ、子供の頃から医術に慣れ親しみ、人助けをしたいと思っていた女の子・允賢が、
時の皇帝・祁鎮と、その弟・祁という二人の男性と出逢い、允賢を愛する彼らに助けられながら、
世間の風潮に逆らい、女医として頭角を現していくと同時に、
朝廷の権力争いに巻き込まれながらも、その中枢で生きていく姿を描く明代の女性の波乱の人生ドラマ


物語の大きな柱は2本。
主人公・允賢が、医術を極め、民に尽くす名医となるまでの成長物語の要素と、
皇族に愛されたばかりに、陰謀渦巻く世界で生きていくこととなる宮廷ドラマの要素。


物語の時代背景は、明朝第6第/8代皇帝・英宗朱祁鎮が天下を治めていた頃。
英宗は、父帝の崩御に伴い、明朝第6代皇帝に即位するも、まだ幼かったこともあり、
元々教育係だった太監・王振(?-1449)を信頼し切り、結果、王振の専横を許し、
土木の変(1449年)では捕虜となってしまった皇帝。
捕虜となっているその間に、異母弟・朱祁が、明朝第7代皇帝・景泰帝に即位。
景泰帝は、英宗が送還されてくると、名ばかりの太上皇の尊号を与え、軟禁。
一応、英宗の息子・朱見深を太子にするが、その後、それさえも廃し、自分の息子・朱見濟を立太子。
ところが、この息子・朱見濟が死亡。間も無くして、景泰帝自身も病に伏し、
英宗に近い臣下たちがクーデター、いわゆる“奪門の変”(1457年)を起こしたことで、
英宗が明朝第8代皇帝に返り咲き、病状が悪化した景泰帝は死亡(暗殺説もあり)。
英宗の息子・朱見深もまた太子の座につく。この朱見深は、のちの第9代皇帝・成化帝。
成化帝と言えば、そう、19歳も年上のオバちゃん万貴妃を娶ってしまうあの皇帝。
つまり、『女医明妃伝』は、『王の後宮~後宮』へと続いていくお話なのです。

★ 談允賢+杭皇后

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ドラマはフィクションだが、主人公・允賢には、談允賢というモデルになった女医がいる。

談允賢(1461-1556)は、西漢の義姁(?-?)、晉朝の鮑姑(?-?)、北宋の張小娘子(?-?)と共に
“中国古代4大名女医”に挙げられる実在の女医。
祖父・談復、祖母・茹氏も名医という無錫の医師家庭に生まれ、幼い頃より、祖母のもと医学を学び、
成長すると、“楊”という姓の男性に嫁ぐが、気血失調を患い、自ら治療し、一男三女を出産。
我が子の病なども全て自分で診察、治療にあたり、
祖母が亡くなると、それら数々の臨床経験を活かし、本格的に医師の道へ。
儒教思想の根深い保守的な明代では、
婚姻関係の無い男女は一定距離を保たなくてはならないという考えから、
取り分け上流階級の女性が、男性医師の診察を嫌い、結果、誤診で病状を悪化させることも多々あり。
談允賢は、そういう女性たちから圧倒的な支持を得て、女医として名を馳せていく。
1510年、50歳の時、祖母から伝授された病理学と、自分の臨床経験をまとめ、<女醫雜言>を編纂。
現存する一冊は、今でも北京の中國中醫科學院圖書館が所蔵。
このように、中国医学界に少なからず貢献した談允賢は、1556年に死去。享年95歳!
さすが名医!御長寿!早死にが当たり前の当時、その年まで生きたら、妖怪レベル!

このように、女医として後世に名を残した談允賢であるが、
ドラマで描かれているように、皇族男性二人から言い寄られたかと言うと、答えは「NO」。
明朝第6第/8代皇帝・英宗朱祁鎮(1427-1464)は、現実には、談允賢が3歳の時に崩御。
その弟、明朝第7代皇帝・景泰帝朱祁(1428-1457)に至っては、
死亡時、談允賢はこの世に誕生さえしていない。
女医・允賢と二人の皇族とのロマンスは、まったくのフィクションということになる。


実は、このドラマの主人公・允賢は、
女医の談允賢と、景泰帝(朱祁)の2番目の皇后であった杭皇后(?-1456)を合体させた人物。
この杭氏は、朱祁がまだ郕王だった頃に側室となり、朱見濟を出産。
土木の変で、郕王が皇帝に即位し、景泰帝となると、汪氏を皇后、杭氏を貴妃に冊封。
景泰帝が、異母兄の子・朱見深を廃し、杭貴妃が産んだ我が子・朱見濟を太子に立てようとした時、
反対した汪皇后を廃したことで、杭貴妃は皇后に格上げされている。
1456年に亡くなると、肅孝皇后と諡されるが、
英宗が皇帝に返り咲くと、実子・朱見深が廃太子にされた恨みから、肅孝皇后の諡号を剥奪し、陵墓も破壊。
そんなこんなで、明代の正史には、汪氏に関する記載は有っても、
この杭氏については、側室になったことも、皇后に封じられたことも記されていないらしい。
歴史から抹消されたお姫様なので、“杭氏は実は女医だった”というドラマらしいフィクションも
ロマンがあって良いのでは(現実には、医女がそんな高い地位につくのは不可能だろうが)。

★ キャスト その①:主人公

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劉詩詩(リウ・シーシー):杭允賢/譚允賢~宣武将軍・杭鋼の娘 医術を学ぶのが大好きな女の子

允賢は、父からどんなに禁じられても、医術を学び、
また、その医術を生かし、分け隔てなく誰をも救おうとする良心をもった女性。
まさか身分違いの皇族だとは知らずに、朱祁鎮と恋に落ち、
彼の正体を知ってからも、“君を守る”、“好きな事を続けろ”という彼の言葉を信じ、将来を誓い合うのだが、
実際には色々と障害があり、朱祁鎮自身も変わってしまい、允賢を疑ったり、声を荒げたり…。
しかし、衝突が起きる度、その後、朱祁鎮が「すまなかった、君を愛するがゆえ、我を忘れてしまった…」
などと謝罪し、抱擁し、元の鞘。もー、これさぁー、典型的なDVD夫の飴と鞭ではないか!
こんな朱祁鎮とズルズルと続いている允賢に、軽くイラ立つ私。

“安定の劉詩詩”という感じで悪くはないのだが、その“安定”は“マンネリ”とも言い換えられる。
こういう役は、劉詩詩を一躍人気女優にした『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』以来、
『風中の縁~風中奇緣』でも、本作品でも、彼女の定番になってしまっている。
定番の役とは即ち、風変わりな女の子(『宮廷女官 若曦』では清代に迷い込んだ現代人、
『風中の縁』では狼に育てられた女性、そして『女医明妃伝』では封建時代の女医)が、
タイプの異なる二人のセレブ男性から言い寄られ、モッテモテ♪という役。
3本とも全て、監督・李國立×主演・劉詩詩による唐人ドラマなのヨ。
3回も同じような役を演じてしまった場合、評価されるのは最初の一本『宮廷女官 若曦』のみで、
その後の作品は、“ちょっとアレンジを施した『宮廷女官 若曦』”に過ぎず、二番煎じ感、三番煎じ感が否めない。
仏の顔も三度まで、mangoの顔も三度までよ。次は、ガラリと生まれ変わったNEW詩詩で頼むわ。

余談になるが、『風中の縁~風中奇緣』は同じ原作者・桐華(トンホァ)による関連作
『雲中歌 愛を奏でる~大漢情緣之雲中歌』と何かと比較され、
現地でも、ここ日本でも多くの人々が『風中の縁』に軍配を上げているけれど、私個人的には、反対意見で、
『雲中歌』の方がマシだと思っている(“秀作”と称えているでのはなく、あくまでも“マシ”。)
理由は、上に述べた通りで、『風中の縁』は、あくまでも“アレンジした『宮廷女官 若曦』”に過ぎず、
既視感があり、このドラマだけがもつ新鮮で決定的な特徴が見付けられなかったが、
『雲中歌』の方は最低限“チャラい”という顕著な特徴が感じられたから。

★ キャスト その②:允賢に想いを寄せる二人の皇族義兄弟

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霍建華(ウォレス・フォ):朱祁鎮(1427-1464)~明朝第6第/8代皇帝・英宗

このドラマは、霍建華目当てで観る女性ファンも多いことでしょう。
美男の霍建華が、明朝の皇帝なんて、優雅で素敵♪と思うかも知れないが、
この英宗が、太監・王振にベッタリで、失策を重ねた皇帝であることは、歴史がすでに教えてくれている。
ドラマ前半は、ツマラナい事ですぐに逆上。
色々波乱があって、人が変わったのか、後半は謙虚になるが、その分、覇気も無い。
確かに霍建華は美男であるが、『女医明妃伝』は彼の素敵っぷりを堪能したいなら、あまり相応しくない。
これと同時期、劉詩詩とのもう一本の共演作『四人の義賊 一枝梅~怪俠一枝梅』が
LaLaTVで放送されていたのだが、そちらで演じている堕ちた錦衣衛・離歌笑の方が、
髪ボサボサ、服ボロボロでも、余程魅力的。
皇帝役の霍建華だったら、清の乾隆帝を演じる話題作『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』に期待!




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黃軒(ホアン・シュエン):朱祁(1428-1457)~朱祁鎮の異母弟 郕王から明朝第7代皇帝・景泰帝に

私のお目当ては、大多数の女性視聴者の皆さまとは異なり、霍建華ではなく、こちらの黃軒であった。
近年、一気にブレイクした黃軒の出演作は、まだ日本にあまり入って来ていないから、有り難い。
でもね、このドラマの皇族異母兄弟は、どちらも若干問題アリ。
ドラマ前半は、兄のキレ芸にウンザリさせられるだけではなく、弟のマザコンにも辟易。
母親と妻の板挟みになった時、妻に向かって「君はどうしていつも母さんを悪者にしたがるんだ?!
母さんがそんな意地の悪い事を言うわけないだろ!」と母親の肩を持つ男性が現代でも居るでしょ。
ドラマ前半の朱祁は、まさにそんな男。母親のガメツさも薄々気付いてはいるのだが、
息子にとって母はやっぱり母で、いざとなると、身分が低く、ずっと虐げられてきた可哀そうな母親を庇いだす。
このドラマを観ていると、ついつい允賢に自分を重ね、朱祁鎮から理不尽に怒鳴られている気分になるから、
「いつもお義母様の肩ばかりもって!」と夫に憤慨する世の奥様方の気持ちが、よく分かりましたわ。
この朱祁、ドラマ後半になると、今度は皇后・汪美麟を慈悲深いと信じ、彼女の企みに振り回されっ放し。
性格も傲慢になり、かつての義兄よりキレまくり、良い所ナシ。
黃軒ファンの私でさえイラっとしたのだから、普通の女性なら殺意だって湧くであろう。

そんな黃軒に関しては、こちらの“大陸男前名鑑:黃軒”を参考に。
日本で黃軒出演作を鑑賞できるのは嬉しいのだが、このドラマを配給した会社には、憤りも感じている。
“黃軒 Huáng Xuān”を敢えて片仮名で表記するなら、“ホアン・シュエン”であり、“ホアン・シュアン”は誤り。
『ブラインド・マッサージ』の配給会社や、レコードチャイナのような情報サイトでは、
ちゃんと“ホアン・シュエン”としているが、黃軒出演ドラマをいち早く日本に入れたこの配給会社が誤って
“ホアン・シュアン”と表記したばかりに、それが定着しつつある。
自分たちが発信する情報は、例え誤りでも、そのまま拡散してしまう事を自覚し、
ちゃんと責任をもってもらいたい。間違うのは仕方が無くても、せめて、それに気付いたら、即刻正すべし!

★ キャスト その③:その他

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袁文康(ユエン・ウェンカン):也先(?-1454)~瓦剌(オイラト)の首長 蒙古第28代大汗(大ハーン)

也先(エセン)もれっきとした実在の人物。
交易の拡大を求め、明領に侵攻し、明軍と交戦し、
明の皇帝・英宗を捕虜にした“土木の変”(1449)を起こし中心人物。
但し、漢族の女医に夢中になったなどという言い伝えは無い。
私と限らず、明の皇族男性二人に期待し、このドラマを観始める女性視聴者が多いと思うが、
皇族男性が期待を越えられなかったのに対し、ノーマークだった也先が大穴で、とても良いのです。
心を落ち着かせ、改めてよく見ると、横を刈り上げているのに、モミアゲだけヒョロンとロングで、しかも三つ編み、
さらに太い眉毛が不自然に吊り上がっているという奇抜かつ滑稽なヘアメイク。なのに不思議とカッコイイ。
私、元々はこういう“草原の民”っぽい男性とか、俺についてこい!タイプには、興味ないはずなのだけれど、
この也先となら、遊牧生活もアリかしら…、と柄にもなく思ってしまいましたわ。

扮する袁文康本人も、私はこれまでノーマークで、過去の出演作で観ているのは、
馮小剛(フォン・シャオガン)監督作品『戦場のレクイエム』(2007年)くらい。

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この映画では、国共内戦に駆り出される教師・王金存を演じている。
埃っぽい戦場が不似合いなあの草食系教師が、蒙古の肉食系に激変するとはねぇ…。
霍建華が乾隆帝を演じるドラマ『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』には、太医の役で出てるらしい。
そちらでは、どんな袁文康を見せてくれるでしょうか。


李呈媛(リー・チョンユアン):錢皇后(1426-1468)~英宗朱祁鎮の皇后

18歳の時、皇后に冊封されて以降、一途に英宗を愛し、
土木の変で英宗が捕虜になると、来る日も来る日も泣き続け、右目を失明したと言い伝えられる皇后。
そのエピソードは、ドラマにも描かれている。ドラマでは、捕虜を解かれ、瓦剌から戻った英宗朱祁鎮が、
錢皇后の異変に気付き、「どうしたんだ、目が変だぞ」と驚くのだが、
いやいや、変なのは、目ではなくて、鼻でしょー。『お昼12時のシンデレラ~杉杉來了』の項で書いたが、
錢皇后役の李呈媛は、近年韓国人女優の間でトレンドの“ツンと上を向いた小ぶりの鼻”のせいで、
せっかくの個性が台無し!
鼻のお直しは、目以上に不自然で、多くの場合バレるから、やらないに越したこと無い。

そんな李呈媛、この『女医明妃伝』の放送がチャンネル銀河で始まったばかりの2017年4月上旬…

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京都に来ておりました~。たとえ“鼻が韓流”でも、やはり美人。京都の街を歩いていたら、目立ちそう。

ちなみに、実際の錢皇后は、太子・朱見深の生母ではない。
錢皇后は、明朝初の“太子を産まないまま擁立された皇后”。
実際に朱見深を産んだのは、周貴妃。子の無い錢皇后と太子を産んだ周貴妃との間に勃発する長い争いは、
『王の後宮』に描かれているので、そちらでどうぞ。

もう一つ補足しておくと、この『女医明妃伝』で朱見深に扮し、最終回チラッと登場するのは、こちら(↓)

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この可愛い少年が、成長すると、19歳も年上のオバさん万貴妃を娶ってしまうのです、史実では。


金晨(ジン・チェン):汪美麟(1427-1506)~景帝朱祁の廃皇后

金吾衛三品指揮使・汪泉の孫であった実際の汪氏は、1445年、郕王朱祁に嫁ぎ、郕王妃となり、
土木の変で朱祁が皇帝になったことで、自動的に皇后に格上げ。産んだ子は、女児ばかり二人。
朱祁が甥っ子・朱見深を廃し、杭貴妃が産んだ我が子・朱見濟を太子にしようとした時、猛反対をし、
朱祁のお怒りに触れ、汪氏は皇后を廃され、代わって杭貴妃がその座に格上げ。
ドラマの中の汪美麟は、当初、あくどい策略家の父親とは違い、純粋に朱祁に恋をする乙女だったのだが、
せっかく嫁いでも、朱祁の心を占めているのは允賢だけで、自分は振り向いてもらえないため、
日に日に増す允賢に対する憎しみから、ブラック化が加速。
演じている金晨は、スラリとスレンダーなボディの上に、
ゆで卵のようなツルンとした小さなお顔がポツンと乗っていて、可愛らしいのだけれど、
ルックスが可愛らしいからこそ、元々ふてぶてしい孫太后らオバちゃんたちより、タチの悪いクズに見えてくる。
ホント、この汪美麟にはイライラさせられたワ。




後半は、衣装や音楽などについて。

大陸ドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』②

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2017年4月初旬、チャンネル銀河でスタートした大陸ドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』が、
約2ヶ月後の6月、全50話の放送を終了。


今回、ドラマの詳細は、以下のような2部構成で記載。

物語やキャストなどについて。

『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』②
衣装や音楽などについて。


今回は、いよいよ後半です。

★ この度の毒物

陰謀渦巻く宮廷ドラマには、敵を害する数々の毒薬が登場。
我々も、いざという時に備え(←どんな“いざ”でしょう …笑)、ドラマを通し、漢方の知識が学べる。
例えば、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』以降、不妊や流産を引き起こす作用があるとして、
麝香(じゃこう)はもうすっかりお馴染みの毒薬。

この『女医明妃伝』は、主人公が女医なので、作中、漢方の知識が散りばめられているかと思いきや、
期待ほどではなかった。
第1話で、人参より効力のある貴重な薬草として鉄皮石斛が出てきたり、
終盤、汪美麟が允賢を害するために金剛石(ダイヤモンド)を使ったのは、記憶に残る。
食べ物に混ぜ込まれた粉末状の金剛石は、胃の中を荒らし、死に至らしめるのだと。
しかも、無味無臭で、証拠も残らないという。
(天然鉱物の中で随一の固さを誇るダイヤモンドを、
明代の技術で、どうやって粉末にできたのか?という疑問が残るが…。)


…が、それら以上に印象的だったのが、(↓)こちら。

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聖女果(プチトマト)。
朱祁は、愛してもいない皇后・汪美麟に、表面上優しく接し、
安南(ベトナム)から献上された貴重な品だと言い、汪美麟に聖女果を贈る。
朱祁の心遣いに喜び、汪美麟は、来る日も来る日も聖女果を食べ続けるのだが、
実はこの聖女果、汪美麟を妊娠させないための避妊薬だった…、というオチ。

プチトマトで妊娠できないというのは、いくらなんでも無理があるのでは。
中国のプチトマト農家からクレーム来ないのか…?!
陰性の食物で体を冷やすから、女性には良くないということだろうか。

★ 明の男の身だしなみ

映画やドラマでは、時代を感じられる衣装も、注目ポイントですよね?
目を楽しませてくれるのは、往々にして女性の衣装であるが、
この『女医明妃伝』で、私の目が行ったのは、男性の頭部。

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礼儀の回帰を重んじた明朝では、
服装に関しても、蒙古による前王朝・元の制度を破棄し、漢族の習俗を元に一新。
その一つが、“烏帽 Wūmào”とか“烏紗帽 Wūshāmào”と呼ばれるお帽子の復活。
直訳すると、“ブラック・ハット”、“ブラック・ガーゼ・ハット”って感じか。
つい撫で撫でしたくなる黒くコロンとした形。

(↓)こちら、お馴染み豊臣秀吉公。

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日本で、この手の男性用被り物、及びアレンジされた物を“烏帽子(えぼし)”と呼ぶのは、
元を辿ると大陸に行き付くからなのでしょうね~。


例えば、唐代の文人の肖像などを見ても分かるように、
中国では、元々職業に関係なく、烏紗帽は男性に被られていたようだが、
それが、官職に就いている男性専用のお帽子になったのは、どうやら明代らしい。
それ以降、現代に至るまで、中国語の“烏紗帽”という単語は、“官職”、“官位”の代名詞としても使われている。

天子にお仕えする官吏のみならず、お仕えされる天子も被っているけれど、天子の物には豪華版も。
明代のそのような皇帝特有のお帽子は“烏紗翼善冠 Wūshāyìànguān”と呼ばれる。

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画像右2ツは、北京にある明の十三陵の一つ、萬曆帝(1563-1620)の定陵から出土された烏紗翼善冠。
本ドラマで黃軒が演じている代宗は、萬曆帝より7代も前の皇帝だが、
衣装の烏紗翼善冠は、実際に発掘されたこういう物を参考にデザインされているのであろう。

ドラマには出て来ないけれど、萬曆帝の陵墓からは、(↓)このような、さらなる豪華版も出土されている。

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金糸を編んで作ったゴージャスなお帽子、その名も“金翼善冠”!
一級の芸術品ですわ。明代の工芸技術の高さに舌を巻く。


以上のようなお帽子は、日本の皆さまも、他の映像作品や肖像画などで、すでに見慣れていることでしょう。
そうなのです、私が烏紗帽以上に気になったのは、その烏紗帽を被っていない時の…

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「頭に網タイツ?!」と若干変態趣味があると疑わせる殿方の頭部。
明代を背景にした別のドラマ『傾城の雪~傾城雪/美人如畫』を視聴した時も、
私は同様に殿方の頭部の網タイ(?)に目が釘付けになったものの、
その時は“昭和の物書き風ネット”と表現し、それ以上突っ込むことは無かった。

ところが、“網巾 wǎngjīn”と呼ばれるコレは、明の初代皇帝・朱元璋(1328-1398)が広めた、
実のところ、明代を象徴するそこそこ重要なアイテムであった。

網巾は、明代以前から細々と存在。ロン毛で髷を結っていた昔の男性の中には、髪の乱れを防ぐため、
頭のてっぺんから髷が飛び出るように網巾を被っていた人もいたらしいが、
ヒットアイテムと呼べる程の流行には至らなかった模様。
初めてその網巾を見た朱元璋は、これを明の統治に利用しようと思い付き、
全国津々浦々の成人男性に網巾の着用を命令。学校の制服とか、清代の辮髪のような役割か?
素材は、最も一般的な物が、お馬さんの毛(←網タイのようなストレッチ性は期待できなさそう)。
こちらは、烏紗帽と異なり、貴賤に関係なく、全ての成人男性が、以後3百年近く着用し続けた
まさに明代を象徴する被り物なわけ。



この網巾ブームは、明朝の影響を特に強く受けていた朝鮮とベトナムにも流布。
韓ドラを観る人には、網巾はお馴染みのアイテムのはず。
例えば、(↓)こちら、李氏朝鮮を背景にした韓ドラ『太陽を抱く月~해를 품은 달 擁抱太陽的月亮』。

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金秀賢(キム・スヒョン)の頭部にも、やっぱり網巾。
(頭部どころか、全身ほぼ“まんま明朝ルック”。李氏朝鮮が、いかに明の影響を強く受けていたかが窺える。)


お姐サマ方の永遠の心の恋人・勇浚(ぺ・ヨンジュン)だって、被っています。
初めてエロスに臨んだ映画『スキャンダル』(2003年)では…

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ぺ様の頭部には、やっぱり網タイ、…もとい、網巾。


韓国では網巾を“망건(manggeon マンゴン)”と呼び、なんと今でもその製法が受け継がれており、
1980年には、指定重要無形文化財に登録。

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本場・中国では、伝統が途絶えてしまったようなので、
網巾を装着して本格的に“明朝ごっこ”をしたい人は、韓国で入手を。

★ テーマ曲

テーマ曲、オープニングは徐佳瑩(ララ・スー)の<大雨將至>
エンディングは劉惜君(リウ・シージュン)の<直到那一天>
ここには、エンディング曲の方を。透明感のある声が綺麗です。






このドラマ、前述のように、なんか既視感がある。
もし『宮廷女官 若曦』を観ていなかったら、まぁまぁ高く評価したかも知れないが、
現実には、私は『若曦』を観てしまっている訳だから、どうしても新鮮味に欠ける。

ラヴ・ストーリーとしては、あまり評価できず。
主人公・允賢を巡る二人の男性が、揃ってクズというのは、恋物語としては致命的。

でも、史劇としてなら悪くない。
“中国古代4大名女医”の一人、明代の談允賢という女性について知ることが出来たし、
土木の変(1449年)から奪門の変(1457年)に至る、英宗と景泰帝の争いを
お気楽なエンターテインメント作品として観られたのは、良かった。
明朝の“その後”を知りたい方は、『王の後宮~後宮』をどうぞ。

朱祁に扮した黃軒(ホアン・シュエン)については、まったく納得しておりません、…色んな意味で。
文芸青年の匂いがする黃軒は、あまりチャラい作品では見たくない。
染谷将太とダブル主演の日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』に期待。
そして、配給会社には、“ホアン・シュアン”などといういい加減な表記は直ちに訂正しろ!と言いたい。

このドラマで初めて黃軒を見た人は、きっと黃軒が大嫌いになったことでしょう。分かります。
クズだし、しかも、最終回なんて、目の周りクマだらけで、顔も土色だしね(←いくらなんでも病的すぎた)。
でも、近年ブレイクしたのには、それなりの理由がある。
今後まだまだ伸びる実力派だと確信しているので、皆さまも、今の内に、黃軒について知っておきましょう。




チャンネル銀河、平日夜11時のこの枠は、2017年6月12日(月曜)より、
侯夢瑤(ホウ・モンヤオ)&高雲翔(ガオ・ユンシャン)主演の『皇貴妃の宮廷~多情江山』を放送。
似たような邦題が多過ぎて、混乱…(汗)。
清朝第3代皇帝・順治帝(1638-1661)の時代を描いた物語なので、
ちょうど『宮廷の泪 山河の恋~山河戀·美人無淚』から続いていく時代。
香港の袁詠儀(アニタ・ユン)扮する順治帝の母・孝莊太后も結構大きく取り上げられているようだ。
清宮ドラマだったら、私は、乾隆年間を描いている『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』が
待ち遠しいのだが、差し当たり、こちらの『皇貴妃の宮廷』も観ておきます…?

初夏にぴったり!ツルルン和菓子2種(~訃報とかテレビとか諸々)

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今朝、台湾の芸能ニュースを覗いたら、珍しく、ドラマの宣伝でもアイドルのスキャンダルでもなく、
人の良さそうな中年男性の写真で溢れかえっている。
この男性は、『天空からの招待状』(原題『看見台灣』)の齊柏林(チー・ポーリン)監督。
『天空からの招待状』は、台湾を空撮で捉え、
台湾が直面している環境破壊の問題などを提起しているドキュメンタリー作品。
2013年、台湾で公開されると、ドキュメンタリーとしては異例のヒットとなり、
その年の金馬獎で、最佳紀錄片(最優秀ドキュメンタリー賞)を受賞。

つい最近、2017年6月8日、齊柏林監督は、その『天空からの招待状』の第2弾、
『看見台灣 II』のクランクイン発表記者会見を実施。
その直後の昨日、6月10日、花蓮の上空でその『看見台灣 II』を空撮中、
正午近く、そのヘリコプターが墜落し、齊柏林監督をはじめ、アシスタント、操縦士、乗組員3人全員が死亡。
そのヘリコプターはブラックボックスを装備していなかったため、事故の要因を解析するのは困難らしい。

もうビックリである。齊柏林監督は、今の時代、死ぬには若過ぎる52歳。
元々は國道新建工程局の公務員で、仕事で航空写真を約20年撮り続けている内に、
台湾がみるみる荒んでいくのを目の当たりにし、思うところあり、一念発起。
公務員の職を捨て、『天空からの招待状』を撮った人物。

『天空からの招待状』には、簡単に特定できる発電所、企業、観光地などがかなり映し出されており、
それらに対し、暗に疑問を呈しているのだから、
『天空からの“招待状”』ならぬ、『天空からの“挑戦状”』とでも呼びたくなる、
実は結構辛辣な社会派ドキュメンタリーである。
“空気を読む”という不気味な習性が染み付いていて、問題になることを避けたがる日本では
なかなか作りにくいタイプのドキュメンタリー作品だとも思った。

ヘリコプターの墜落事故は、日本でもたまにニュースで見るけれど、
「そんな事、本当に起こるんだぁ…」と、当たり前の事を今さら思い知らされた。
なにせ昨日の今日なので、『看見台灣 II』がどうなるかは、発表されていない。
着手したばかりなら、撮り溜めもあまり無いだろうし、
撮影に特殊な技術を要するから、誰か別の監督が引き継ぐのも難しいだろうし、
このままお蔵入りの可能性が高いだろうか。
今はただただ齊柏林監督の御冥福を祈ります。本当に残念…!




変わって、明るいお話。
『瑯琊榜之風起長林~Nirvana in Fire II』が、先月9日、ついにクランクアップ。
それから約ひと月後の今月8日に発表された40秒のティザー予告を、皆さまは御覧になりましたか?



戦場などの血生臭いシーンを中心に編集されているので、
これだけだと敬遠する女性視聴者も居るかも知れないが、映像のレベルの高さは、誰でも感嘆するはず。
もはや映画ではないか…。これがテレビドラマとは、中国の進化の著しさには、驚嘆しかない。
『瑯琊榜之風起長林』も日本に入って来ることに期待!
『瑯琊榜之風起長林』のキャストについては、以前に記した、こちらを参照。

皆さまは、どーヨ?御覧になりたいドラマは有りますか。
私は、今、日本上陸を期待するドラマを3本だけ挙げろと言われたら…

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やはりその『瑯琊榜之風起長林』と、『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』、
軽めのところだったら、『歡樂頌~Ode to Joy』の続編『歡樂頌2~Ode to Joy II』かしら。
全部日本に入ってきたら、すごく嬉しいのに…。




近々放送の日本のテレビ番組で要チェックは…

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まずは、明日、6月12日(月曜)、BSジャパンで放送の『エンターザ・ミュージック』
観たことのない番組。
毎回ゲストを招き、司会進行役の指揮者・藤岡幸夫とジャンルを超えた対談や演奏をする音楽番組らしい。
で、この晩のゲストは、二胡奏者の巫謝慧(ウェイウェイ・ウー)。
あるイベントで生演奏を聴いたことがる。とても素敵であった。
そんな訳で、この番組を初めて録画。




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もう一本は、翌6月13日(火曜)、NHK BSプレミアムで放送の『2度目の旅』シリーズで、
今回は『2度目のマレーシア~おこづかい2万円で充実旅』
モデルの呂敏が、首都クアラルンプールへ飛び、
絶品ポークヌードルやバクテー、名物スウィーツといった食を堪能したり、
レトロな街並み散策から、ジャングルまで体験。
さらに、マレー鉄道に乗って、世界遺産の古都・マラッカにまで出向くらしい。
先週の『2度目の上海』は面白かったけれど、今週のマレーシアも良さそう。

なお、その『2度目の上海』も、同日朝8時に再放送あり。
ちなみに、その『2度目の上海』の中で紹介されたお茶屋さんビル、天山茶城については、
当ブログにも少しだけ記してあるので、(すでに情報が古いが…)こちらを参照。




今年、東京は、6月7日(水曜)に梅雨入りしたらしい。
それから早数日が経過したものの、あまり梅雨っぽい雨には降られていない気がする。
超冷え症ということもあり、人が言うほど蒸し暑いとも思っていないので、
コッテリ濃厚なスウィーツも何の問題も無く美味しくいただけるのだが、
世間の一般的な皆々サマのために、今回は、蒸し暑い今の時期に相応しいであろう
サッパリした和の甘味を2種類お届けいたします。

★ 美濃忠:垂水の蕨

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容器の大きさは、だいたい長さ16センチ×幅6センチ×深さ3センチ。
きな粉と黒蜜を添えていただくわらび餅。



一つめは、創業安政元年(1854年)、名古屋の老舗・美濃忠(公式サイト)“垂水の蕨”
私にとって、美濃忠と言えば、黄身餡を包んだ“雪花の舞”で、これは食べたことが無い。

一応“わらび餅”として売られているが、材料は蕨粉と寒天のミックスで、
四角いプラスティック容器に流し入れ、固められている。
美濃忠の広告では、これをキューブ状にカットし、深さのある器にコロコロと入れている。
私は、もっとザッと1/3にカットし、お皿にドカンッ!
1/3カットだと、よく正方形の容器に入れ売られている胡麻豆腐くらいの大きさになる。

きな粉と黒蜜をかけ、いざ実食。
歯切れがよく、ノド越しつるん。

サッパリしていて美味しいけれど、これは、食感といい、味といい、わらび餅ではなく、ほぼ寒天である。
あんみつ等のあの寒天を、ドカンと大きく作った物という印象。

★ 笹屋伊織:紫陽花

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大きさは、直径約4.5センチ。
中にこし餡を包み、上部は羊羹の花2ツで飾り、紫陽花をイメージした水饅頭。




もう一つは、笹屋伊織(公式サイト)“紫陽花”
梅雨に入った今の時期にピッタリな紫陽花は、6月限定の生菓子。

紫色の花型羊羹でおめかししているけれど、要は水饅頭である。
本葛と寒天を主原料に作られた生地は、滑らかな食感で、ツルンとそのまま丸呑みできてしまいそう。
中のこし餡も滑らか。

ただの水饅頭と言ってしまえば、それまでだが、ちょっとしたデコレーションのお陰で、
ジメジメの梅雨に、気分がちょっとだけ華やぎます?

映画『修羅の剣士』

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【2016年/中国・香港/108min.】
剣神と称えられる三少爺にいつか挑み、武林の頂点に立ちたい…。
ずっとそう思い続けてきた燕十三は、ついに神劍山莊の門を叩く。
ところが、そこで、神劍山莊の莊主である三少爺の父・謝王孫から、信じ難い言葉を聞いてしまう。
なんと、三少爺は、すでに死んでしまったというのだ。

実のところ、三少爺こと謝曉峰は、ひっそりと身を隠すように市井に生きていた。
“阿吉”と名を変え、曉月樓という妓楼で下男として雇われ、黙々と下働きをしていたある日、
妓女・小麗が、金を払わないチンピラ客とトラブルに。
彼らの小刀がブスブスと体に刺さっても、仁王立ちのままの阿吉に、
相手も気味が悪くなり、遂には金を置いて、退散。

曉月樓を去った阿吉は、糞尿担ぎを始め、仲間の苗子と親しくなり、彼が母親と暮らす粗末な家に招かれる。
苗子には、都会で働き、いつも金を送ってくれる妹がいるという。
苗子が“公主”と呼ぶ自慢の妹が、その晩、村の実家に久し振りに帰宅。
驚いたことに、その公主は、曉月樓の小麗であった。
小麗は阿吉に、もう二度と曉月樓には戻りたくないと打ち明けるが、そんな事が許される訳がない。
案の定、間も無くして、曉月樓の荒くれ者が小麗を連れ戻そうとやって来て、村はひと騒動。
幸い、偶然通りすがった凄腕の剣客・燕十三のお陰で、この騒動は一件落着。

燕十三の強さに感嘆した苗子は、早速阿吉を連れ、燕十三を訪ね、
“役立たず”と呼ばれている弱々しい阿吉に剣術を教えてくれと懇願。
熱心な苗子に根負けし、燕十三は阿吉に剣の秘技を伝授、
まさか、この阿吉が、あの三少爺だとは思いもせずに…。



克徐(ツイ・ハーク)プロデュースによる爾冬陞(イー・トンシン)監督最新作を鑑賞。
爾冬陞監督作品が日本に入って来るのは、恐らく『大魔術師“X”のダブル・トリック』(2012年)以来。

今回の作品は、古龍(ク・ルン)1975年の小説<三少爺的劍>の映画化。
古龍は、<流星·蝴蝶·劍>、<陸小鳳傳奇>等々、多くのの著作が映像化されている人気武俠小説家。
<三少爺的劍>も例外ではなく、すでに数回映像化。

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内、1977年、香港の邵氏電影(ショウ・ブラザーズ)が発表した映画『三少爺的劍~Death Duel』で
主人公を演じたのは爾冬陞。
つまり、爾冬陞は、若かりし日の自身の主演映画を、約20年の時を経て、今度は監督として蘇らせたわけ。

原作小説も1977年版映画も、日本には未上陸で、私は未見。
元々武俠に特別興味があるわけではないので、
強いて言うならば、主演男優と爾冬陞監督の名前に惹かれ、取り敢えず観たって感じ。



本作品は、神劍山莊莊主の息子で、“神剣”と称えられる一流の剣術の腕をもちながらも、
人生に絶望し、姿をくらまし、今は“阿吉”と偽名を使いひっそり生きている“三少爺”こと謝曉峰、
その三少爺といつか対戦することを夢見ている凄腕の剣客・燕十三、
三少爺が阿吉として働く妓楼の妓女・小麗、そして三少爺の元恋人・慕容秋荻という4人を軸に
それぞれの愛憎、孤独感、復讐心などを交錯させながら展開する武俠映画

謝曉峰を巡る二人の女性が登場するけれど、作品はラヴ・ストーリーより、
謝曉峰と燕十三という二人の男性の心情や対戦の方に重きが置かれている。

そもそも、原作者・古龍(1938-1985)自身、江湖感漂う無頼漢の印象で、
酒、女、金のエピソードが絶えずあった人のように見受けるし、
彼の小説で、ロマンティックに男女の恋愛が綴られている物はあまり無いようだ。
私も別にラヴストーリーを求めていた訳ではないので、構わないのだが。


物語の幕が上がって早々、三少爺と剣を交えたいと願い続けている燕十三は、神劍山莊を訪れる。
ところが、そこで燕十三が、三少爺の父・謝王孫から知らせれたのは、三少爺の死。
ずーーーっと三少爺と闘うことを夢見てきたのに、物語の冒頭で、燕十三は人生の目標を失ってしまう。

実際には、三少爺は健在で、“阿吉”と名を変え、みすぼらしい恰好をして、妓楼で下働きをしている。
話が進むにつれ、以前には慕容秋荻という結婚を誓い合った恋人がいた事や、
その彼女の前から二度も姿を消し、彼女を傷付けたまま、それっ切りになっている事、
さらに話が進むと、父親の思惑に振り回され、10歳から殺生をさせられ、
三少爺自身、深く傷付き、武林から遠ざかった事、
そんな息子を恥じた父が、三少爺を死んだことにしてしまった事などが、次々と判っていく。

三少爺が死んだと信じ込んでいる燕十三は、まさか三少爺本人とは気付かぬまま、
阿吉と名乗る青年と出会い、有ろう事か、自分の剣術を彼に伝授。
阿吉=三少爺と判明してからは、驚きつつも、三少爺が再び剣を手に立ち上がれるよう指南もし、
二人は、友情と呼ぶには淡白でビミョーな絆(…でも、実際にはやはり熱いであろう友情)で結ばれ、
それでも、真剣勝負をするというクライマックスに向かっていく。
長らく剣を手にしていなかったとはいえ、やはり滅法強く、それでいて殺生をしたがらない三少爺が、
友となった燕十三をどう対処するのか?という結末は、とても気になり、観入った。





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主な出演は、阿吉という偽名を使って生きている“三少爺”こと謝曉峰に林更新(ケニー・リン)
三少爺といつか対戦する日を待ち望んでいる燕十三に何潤東(ピーター・ホー)
阿吉が働く曉月樓の妓女・小麗に蔣夢婕(ジャン・モンジエ)
そして、三少爺の元恋人で天尊の首領・慕容秋荻に江一燕(ジャン・イーイェン)



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爾冬陞監督が、かつて自分が演じた思い入れのある三少爺役を託したのは、
ドラマ『宮廷女官 若曦(ジャクギ)~步步驚心』の“十四爺”愛新覺羅胤禵で大ブレイクの林更新であったー。
林更新クン、14から3へ。
『若曦』で見て、長身でスタイルが良く、スクリーン映えする!と私に思わせた林更新は、
実際その後ドラマ以上に映画に出演しているけれど、脇の小さな役が多く、
ハマり役だった『若曦』の⑭様を越える作品には出会えていないように見受けたし、
ドラマを観ない映画ファンには、知名度も人気もイマイチに感じていた。
『タイガーマウンテン 雪原の死闘』(2014年)といった徐克監督作品にチラリチラリと出ていたことが
無駄にはならず、その徐克がプロデュースする本作品で、ついに主役。おめでとうございます。
ただ、本作品の日本公開で、電影ファンの間でも林更新がついにブレイク!とはならない気が。
『若曦』の⑭様ほどインパクトのある役ではないし、そもそも作品自体が弱く、ヒットが望めないと思うので。
けれど、ボサボサの髪でボロを着て、黙々と糞尿担ぎをしていた阿吉から、
シャキッと身なりを整え、華麗に剣をさばく三少爺になると、やはり素敵で、それなりのギャップ萌えはある。
林更新主演ドラマ『三国志 趙雲伝~武神趙子龍』がwowowで放送開始して以降、
当ブログには、林更新検索がコンスタントに有るし、日本でもジワジワと注目されるようにはなっているようだ。
(皆さまが検索して見ていくのは、こちらの“大陸男前名鑑:林更新”
記してからすでに数年経っているので、情報がもはや古いが、参考までにどうぞ。)


インパクトという点では、何潤東が演じる燕十三の方が強い。だって、顔面総タトゥ。

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ティム・バートン監督作品の中にポンと投げ込んでも馴染みそうなキャラクター。
爾冬陞監督も、この顔面総タトゥのデザインには、随分構想に構想をかさねたそう。
簡単に見え、実は結構面倒なもので、何潤東が毎回撮影の前、刺青メイクに費やした時間は3時間。
どうも、特殊なエアブラシのような物と筆で描き、最後はなんとヘアスプレーを顔に噴射し、定着させるらしい。
敏感肌の俳優は、燕十三を演じられませんヨ。
この燕十三、悪役かと思いきや、案外イイ人で(いや、実際、途中まではボチボチ悪い役)、
ちょっとコミカルであさえあった。


女性では、2010年度版ドラマ『紅楼夢~紅樓夢』の林黛玉役でデビューした蔣夢婕に注目。
のっぺりした童顔とピュアな雰囲気が、昨今大ブレイクの周冬雨(チョウ・ドンユィ)にも通じる女優さん。
この『修羅の剣士』は時代劇なので、私は心のどこかで、
映像美と世界観が好きな『紅楼夢』での蔣夢婕路線を期待してしまったのだが、
いざ観たら、『紅楼夢』の儚げな林黛玉よりは、
どちらかと言うと、『宮廷の秘密~王者清風』で演じた跳ねっ返り・宋田田に近いと感じた。
三少爺との恋は、予想していたほどは進展しなかった。
本作品では、恋愛の描き方がアッサリしている事もあり、蔣夢婕はあまり大きな印象を残さないが、
彭浩翔(パン・ホーチョン)監督の新作『春嬌救志明~Love off the cuff』にも出演しているので、
これから日本でもどんどん注目度が高まっていくかも?


江一燕扮する慕容秋荻は、三少爺に愛憎入り混じる感情を抱いている女性で、
蔣夢婕扮する小麗より、複雑で難しい役だと感じる。
(原作小説では、この慕容秋荻は、ただの恋人ではなく、どうも三少爺と結婚して、子供まで産んだようだ。)
江一燕の薄幸顔を見て、気分が重くなるのは、あの役を傍観する者の正しい反応なのかも知れないが、
最後までどーーしても慕容秋荻という女性に魅力を感じたり、好きになることはできなかった。

ちなみに、“江一燕”を検索にかけると、第2検索ワードで“熊本”と出てくるのを不思議に思っていたら…

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高良健吾や八代亜紀といった熊本出身の有名人と共に、熊本わくわく親善大使とやらに任命されていた。
日本絡みの作品にもボチボチ出ている女優さんで、
私は、2011年、東京・中国映画週間のオープニングセレモニーでナマを見た。(→参照
役で印象に残っているのは、陸川(ルー・チュアン)監督作品『南京!南京!』(2009年)で演じた娼婦。
日本では案の定封印されたあの映画では、薄幸顔がとても活かされていた。


他、気になった出演者は、
その慕容秋荻に想いを寄せる天尊の竹葉青に扮する顧曹斌(エドワード/グォ・ツァオビン)

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まだ演技経験は少ないモデルさん。“棘のある栗原類”って感じの個性派モデル。
ただの二枚目俳優にはできないアクの強い役もこなせそうですね。





この作品は、林更新が主演という以外に特別惹かれる点が無く、大して期待せず、
…いや、もっと正直に言ってしまうと、「どうせ駄作でしょ」と見縊っていたせいか、
傑作!大好き!と思わないまでも、まぁそこそこ楽しめた。

ワザとらしいまでに花々が咲き誇っている美術とか、ややレトロな映像は、
爾冬陞監督自身が主演した1977年の『三少爺的劍』や、
昔の武俠映画へのオマージュと受け止めて良いのよねぇ…?
妓楼のシーンに登場する妓女たちのヘアメイクも印象的で、
こちらには、18世紀ヨーロッパ風のいかがわしさや、デカダンを感じた。

少々気になってしまったのは、日本語字幕。
登場人物の名前を、片仮名表記ではなく、全て漢字表記にしてる点は高く評価。
…が、例えば、“三少爺”を“第三の士”と訳してしまうのは、如何なものか。
あと、特に史劇では、“孔明(こうめい)”といった具合に、
漢字の名前に、日本語の訓読みでルビを振るのが一般的だが、
本作品のルビは、中国語の発音をカタカナで振っている。
私にとって一番大切なのは、名前が漢字で表記されている事なので、
それさえ守ってくれたら、文句は言わないが、それにしても、本作品のルビはあまりにも適当ではないか?!
主人公“吉 Jí”は“チ”になっているが、それは“チー”か“ジー”であろう。
ライバル“燕十三Yān Shísān”は、“エン・シサン”とされているが、“イェン・シーサン”とすべし。
一番分からないのは、三少爺の元恋人・慕容秋荻の“慕容 Mùrón”という姓。
“ムーロン”が、どこでどう間違って“ムユン”になったのだか…??
ここまで適当にするくらいなら、他の史劇に倣って、訓読みで“ぼよう”とルビを振るべきだったのでは?
慕容は別にレアな苗字ではなく、中国の史劇にもしばしば登場する。
『天龍八部』の慕容復(ぼよう・ふく)などは、かなり有名だと思うが。

さらに細かい事を言ってしまうと、台詞の中の単語、例えば、“武林”を“武術界”と訳すのは良しとして、
“江湖”も“武術界”にしてしまっているのは、うーン…。
他にも、ビミョーと感じる部分や、武俠映画の雰囲気を台無しにする訳が所々にアリ。
物語を理解する上で障害になる決定的な誤訳が無くても、こういうビミョーな訳や、名前のルビを見て、
もしかして、中国語日本語両方に通じている人がチェックする体制が無いのでは?と疑問が湧いた。

大陸ドラマ『四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)~怪俠一枝梅』

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悪政と大洪水の被害で、人々が困窮する明代の中国。
5年前、罠に嵌められ、逆賊にされ、妻まで亡くし、
以降、魂の抜け殻となり、酒浸りの日々を送っている元錦衣衛長官・離歌笑のもとに、
かつての弟分・應無求が、久し振りに訪ねて来る。
離歌笑が去った後、彼に代わり、錦衣衛長官の座についたこの應無求は、難題を抱えていた。
洪水の被災民のために用意された十万両もの黄金が、輸送中に奪われてしまったのだ。
証拠は無くても、犯人が奸臣・嚴嵩であることは明らか。
離歌笑に、なんとか嚴嵩から黄金を取り戻して欲しい、早急に被災民に届けたいと訴える應無求。
この訴えを無下に断った離歌笑であるが、苦しむ民の姿がチラつき、心が揺らぐ。
師匠・鄭東流から、「そろそろ目覚める時期だ」と背中を押され、遂に黄金奪還を決意。

しかし、こんな大仕事、一人では出来ない。
離歌笑は應無求に、仲間が必要な事、その人選は自分ですること、
一人につき2500両の報酬を用意する事を要求し、應無求もこの条件を承諾。
離歌笑は、錦衣衛にも捕まらなかった大泥棒・柴胡、千面相が得意な賀小梅、
そして、盗めない物は無いという女盗賊・燕三娘を集め、早速、仕事に取り掛かる。

それぞれにスゴ技をもつ4人は、絶妙なチームワークで、救援金の黄金を見事に奪還。
それを應無求に託し、任務を完了。
チームもこれで解散というその時、なぜか4人は、名判官・海瑞の命で捕らえられ、天牢に繋がれてしまう。
罪状は、黄金の略奪。朝廷からの要請で、民のために黄金を取り返したハズなのに、何故…?!
離歌笑は、弟分・應無求に嵌められたことにようやく気付くが…。



2017年5月、LaLaTVで始まった大陸ドラマ『四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)~怪俠一枝梅』が、
ひと月半後の6月中旬、全30話の放送を終了。
同時期、チャンネル銀河で放送されていた『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』を優先したため、
こちらはちょっと遅れてのゴールイン。

★ 概要

李國立(リー・クォックリー)監督による、唐人影視、2010年度制作のドラマ。

日本では、私が今回視聴したLaLaTVがお初ではなく、すでに数年前に入ってきているはずだが、
具体的にいつだったのかは不明。
(絶対にそんなはずないと信じたいけれど…)もし入って来たのが、ここ4~5年だとしたら、
許せないレベルの日本語字幕。
例えば、一番の悪役としてドラマに登場する“イェン・ソン”という奸臣と、その息子“イェン・シーファン”は、
明朝・嘉靖年間に実在した嚴嵩(げんすう 1480-1567)&嚴世蕃(げんせいばん 1513-1565)という父子であり、
それを“イェン・ソン”、“イェン・シーファン”などと表記してしまうのは、
<三国志>の諸葛亮を“ジュー・グォリャン”と記すのと同じくらいの酷さ。
中国語作品の日本語字幕は、ここ数年で劇的に改善されてきているので、
このドラマも、日本に入って来たのが、最近だったら、もっとマシな字幕になっていたはず。

そもそも、タイトルの“イージーメイ”も、日本では“一枝梅(いっしばい)”である。

★ 一枝梅

タイトルにもなっているその“一枝梅”は、明代の文人・凌濛初の短編小説<二刻拍案驚奇>や、
<歡喜冤家>の中に登場する義賊のキャラクター。実在の人物ではなく、民間伝承の架空の義賊。
小説の中の盗賊キャラが人気を博し、一人歩きを始めるという意味合いでは、
フランスのアルセーヌ・ルパンが近いだろうか。

中華圏では、1940年に關興(ウォン・フェイフォン)主演で映画化されたのを始め、
それ以降も、本ドラマと同じ『怪俠一枝梅』のタイトルで、幾度となく映像化されている。

その人気は中華圏に留まっていない。
<歡喜冤家>は李氏朝鮮時代の朝鮮半島にも伝わり、同地でも一枝梅は同様に人気キャラとなり、
その後、二次創作的に韓国の小説や漫画の中にも登場するようになったみたい。


そんな訳で、日本で最も知られた一枝梅関連作品は、もはや中国ではなく、韓国の(↓)こちらであろう。

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2008年度の李準基(イ・ジュンギ)主演韓国ドラマ『イルジメ 一枝梅~일지매』。
私は未見なので、確信をもって言うことはできないが、
李氏朝鮮時代を背景に、政治闘争に巻き込まれ父が何者かに殺されるのを見てしまった8歳の少年が、
やがて“一枝梅”と名乗り、父の復讐のため、悪に立ち向かい、義賊となっていく姿を描いたドラマのようだ。


2010年度版大陸ドラマ『一枝梅』の場合、“一枝梅”は男性主人公のニックネームではなく、
その男性主人公を中心に、志を同じくする計4人が組んだ義賊ユニット(?)のユニット名(…!)。

★ 物語

奸臣が幅を利かせ、民が困窮する明代を舞台に、逆賊の汚名を着せられた元錦衣衛の離歌笑が、
腕っぷしの強い大盗賊・柴胡、千面相の女形・賀小梅、何でも盗める女盗賊・燕三娘という訳アリの3人と
“一枝梅”というチームを組み、弱きを助け、強気をくじくために奮闘する姿を描く痛快任侠物語

ドラマ前半は、民に降りかかる様々な事件に一枝梅が挑む。
それぞれのエピソードは、2話程度で解決。
さらに、一枝梅メンバー一人一人の背景が徐々に明かされ、
彼らが過去から現在に至るまで引きずる問題に皆で取り組み、4人の絆は家族のように強固なものに。
細かいエピソードは多々有れど、最初から最後まで一貫して根底にあるのは、
朝廷で権勢を振るう奸臣・嚴嵩の横行と、嚴嵩の臣下・應無求の離歌笑に対する私怨。
最終的には、それらを全て解決する勧善懲悪の物語となっている。



ドラマは、あくまでもフィクションであるが、登場する数人の実在の人物から、
時代は、第12代皇帝・世宗朱厚熜(1507-1567)が天下を治めていた頃の明朝だとハッキリと判る。

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日本では、明朝嘉靖年間と呼ばれる1521年から1567年の間で、さらに言うと、その後半期。
この世宗は、複雑な経緯で皇帝に即位したこともあり、自分の意に沿わない臣下を次々と排除した上、
道教にのめり込み、朝政を疎かにしたと言い伝えられる“スピリチュアル皇帝”。
青詞に精通している嚴嵩に信頼をおき、彼を内閣大学士に任命し、
自分は引き籠って道教に夢中になっていたため、嚴嵩とその息子・嚴世蕃の専横を許してしまった暗君。

混迷の時代にヒーローは生まれ易いもので、一枝梅も、奸臣・嚴嵩が権勢を振るい、忠臣が排除され、
民が困窮している時代だからこそ生まれた正義の味方と言えそうですね。

★ キャスト その①:四人の義賊・一枝梅

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霍建華(ウォレス・フォ):離歌笑~錦衣衛の元指揮官 5年前の事件で江湖に

ドラマ冒頭では、ただのウラブレた呑んだくれの離歌笑。
実は、正義感の強い元錦衣衛で、5年前、政敵に嵌められた師匠・鄭東流を救おうとして、
逆賊にされ、追われた上、愛妻を亡くすという悲劇に見舞われ、魂の抜け殻となってしまっている。
そんな離歌笑が、5年の眠りから覚め、義賊に!仲間と共に悪を成敗し、人々を救うと同時に、
自分自身の過去とも向き合い、立ち直っていく姿も描かれている。
演じているのは、霍建華。今回、日本では、もう一本の主演作『女医明妃伝 雪の日の誓い』が同時期に放送。
そちらの『女医明妃伝』で演じているのは、明朝第6第/8代皇帝・英宗朱祁鎮。
美形の霍建華には、エレガントな皇帝役がお似合いにも思うけれど、こちらのヨゴレた離歌笑の方が魅力的。
霍建華ファンの皆さまには、こちらの『一枝梅』の方をよりお薦めしたい。



劉詩詩(リウ・シーシー):燕三娘~一枝梅の紅一点 盗みのテクは超一流

勝ち気で、一見怖いもの無しの燕三娘は、実は母に捨てられたトラウマに苛まれている女の子。
ドラマでは、その母親との確執や、離歌笑に対するほのかな恋心も描かれる。
劉詩詩は、前出のドラマ『女医明妃伝 雪の日の誓い~女醫·明妃傳』の主演女優。
彼女もまた霍建華と同じで、『女医明妃伝』よりこちらの方が、快活で魅力的。
李國立監督とのコラボ作品だと、どうしても、『若曦』を引きずった役をやらされる傾向が…。
この『一枝梅』も、李國立監督作品なのだが、実は『若曦』より前のドラマなのです。



馬天宇(マー・ティンユー):賀小梅~本名・賀雲虎 千面相の達人 医術にも精通

小梅は、歌や舞いが好きな京劇の女形。変貌自在な千面相の技をもち、
事あるごとに、都合よく他人に成りすまし(←有り得ないレベルで酷似)、難題を解決。
女形の小梅に扮した馬天宇は、現地で、“張國榮(レスリー・チャン)の再来!”と話題に。

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いくら何でも、亡くなり、レジェンドとなった大物・張國榮と同列に語るのは、どうかとも思っていたが、
確かに、本ドラマの馬天宇の気ままな子猫のような可愛さは、
『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993年)で程蝶衣に扮した張國榮を彷彿。
(そもそも、こういうメイクを施さなくても、馬天宇の顔立ちは張國榮に近い。)
普段、童顔男子に興味なの無い私でも、このドラマの馬天宇は、役が合っていて良いと思った。



釋行宇(シー・シンユー):柴胡~錦衣衛にも捕まらなかった大泥棒

柴胡は、腕っぷしが強く、単純な、“筋肉バカ”タイプ。
頭は決して良くはないけれど、その分、計算高くない善良な男。
生涯一人身かと思いきや、過去に女房がいたことや、いつの間にか娘が生まれていたことが判明。
演じている釋行宇は、現実にも一枝梅メンバーの中で一番の武術の達人。

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映画『少林寺』(1982年)に憧れ、12歳で嵩山少林寺に出家し、そこで11年を過ごしたリアル武僧。
確かに、釈迦牟尼を意味する“釋”は僧侶の姓で(←日本の釈由美子も、先祖が出家しているため“釈”姓)、
“行宇”という名も出家した際に与えられた法号(←言われてみれば、“いかにも”な名前)。
その後、還俗して、アクションスタアの道を歩み始めた彼が、最初に注目されたのは、こちら(↓)

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周星馳(チャウ・シンチー)監督主演で大ヒットした『カンフーハッスル』(2004年)。
この映画で、無口な十二路譚腿の使い手、苦力強を演じているのが釋行宇。
その後も、釋行宇は香港映画で見る機会が多く、テレビドラマで見るのは、今回が初めて。
霍建華や馬天宇のような美男ではないが、個性的でイイ味出している。
それにしても、王寶強(ワン・バオチャン)にしても、この釋行宇にしても、
中国って、リアル少林僧が居るから、アクションのレベルも自ずと高くなるわけですよねぇ。
釋行宇は、数年前、“釋延能”に改名し、その後また改名し、今は“釋彥能(シー・ヤンネン)”を使っている。

★ キャスト その②:その他

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蕭正楠(エドウィン・シウ):應無求/包來硬~錦衣衛長官 離歌笑に激しい私怨

應無求は、元々は“包來硬”という名の貧しくも誠実な青年。
一途に愛する幼馴染み・如憶を娶り、質素でも穏やかに暮らしたいと、ささやかな夢を抱いていたが、
当の如憶が、突如現れた離歌笑に心奪われ、嫁いでしまったため、離歌笑に理不尽な怨みを募らせると共に、
貧しく何者でもない自分を悔やみ、権力への並々ならぬ執着に囚われていく。
私が大っ嫌いな卑屈な苦労人タイプ!(ただ、シャワーのように顔に放尿される忘れ難いシーンがある。
あんな事をされたら、誰でも卑屈になるかしら…?)
扮する蕭正楠は、香港明星。出演作の多くは香港ドラマなので、
私が演じている彼を見たのは、多分、『織姫の祈り~天涯織女/衣被天下』くらい。
そう言えば、『織姫の祈り』でも、好きな女性から“友達”と見做されてしまうイイ人タイプで、
一度卑屈になってDV夫と化していた。



立民(ドン・リーミン):嚴嵩(480-1567)~朝廷で権勢をふるう奸臣

歴史に汚名を残した実在の奸臣・嚴嵩は、皇帝を上手く言いくるめ、賄賂や横領で私腹を肥やし、
国を荒廃させる本ドラマ一の悪役だろうけれど、これくらい分かり易い悪者だと、
意外にも大した嫌悪感が湧いてこない。いいわぁ~彼、LOVE嚴嵩♪とはぜんぜん思わないが、
私は屈折した應無求のような人間の方に、より虫唾が走る。
嚴嵩を演じているのは、そう、『宮廷女官 若曦』で、康熙帝お付きの太監・李全に扮していたあの立民。
2作品で、立民が別人!あんなに腰の低かった李全が、こんなにガメツイ奸臣・嚴嵩に化けるとは…!



廖啟智(リウ・カイチー):鄭東流~私塾で孤児に指導 実は錦衣衛の元長官で離歌笑の上官

鄭東流はドラマの最初の方では、“孤児を集め、呑気に私塾をやっている御隠居さん”という感じなのだが、
話が進むにつれ、実は、元々は錦衣衛の長官という立派な肩書きがあった人だと判ってくる。
そんな彼を“ジョン氏”と記してしまう日本語字幕、ほんと、サイテー…。
この字面を見て、日本人がパッと思い浮かべるのは、“鄭氏”ではなく、
レノンとかトラボルタと同じ“John氏”ですから…!明朝の趣きも何も有ったものではない。
そんなMr.Johnに扮しているのは、香港映画でお馴染みのバイプレイヤー廖啟智。
いかにも“香港映画!”という感じのクライムサスペンスだの警察モノだので見慣れた廖啟智が、
明代の扮装をしているだけで、やけに新鮮!
しかも、時に世俗を離れた御隠居さん風情、時に威厳のあるの賢人と、コントラストのある演技が素晴らしい。
この『一枝梅』は、香港映画以上に、廖啟智の実力と魅力を引き出しているドラマに思えた。

ちなみに、この廖啟智と、前出の柴胡役・釋行宇は、現在日本で絶賛公開中の映画、
陳木勝(ベニー・チャン)監督作品『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』にも出演。

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特に釋行宇は、『一枝梅』の柴胡とはガラリと違う強面を演じており(腕っぷしが強い点は毎度の釋行宇)、
廖啟智を殺してしまっております…(苦笑)!



佟麗婭(トン・リーヤー):荊如憶~離歌笑の亡き妻

如憶の父・荊同衛将軍もまた嚴嵩に嵌められ、破滅した被害者。
ドン底に落ちた如憶をいつも支えてくれたのは包來硬(後の應無求)だが、彼のことは兄としか思えず、
旅の途中、偶然助けてくれた離歌笑に心奪われ、ゆくゆく彼に嫁ぐ。
離歌笑を一途に愛し、嫁いでからは、彼を陰でけな気に支える出来た女房。
ゴメンなさい、私、こういう聖女タイプ、得意じゃない。この如憶というキャラには、あまり魅力を感じなかった。
いつも、「自分を犠牲にしてでも、夫を助けたい」とヒロイン気取りで勝手な行動に出るが、
結局足手まといになっている。捕らわれ、殺された最期も、自業自得としか思えない。
錫伯(シベ)族の女優・佟麗婭は、『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』の続編、
『瑯琊榜之風起長林~Nirvana in Fire II』にも出ております。そちらでは、どんな感じでしょう。

★ アニメーション

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ドラマ『四人の義賊 一枝梅』の特徴の一つは、所々にアニメーションが挿入されていること。
私は、オリエンタル・テイストのアニメが好きなので、これ、結構気に入った。

誰が描いているのか気になり、ドラマのエンディングをチェックすると、
“漫畫設計”として、徐奕明(シュー・イーミン)という名がクレジットされている。
では、その徐奕明とは如何なる人物かと興味が湧き、軽く調べてみたが、
そのような名のアニメーターも漫画家もイラストレーターも見当たらない。

最も可能性のある“徐奕明”サンは、
唐人制作のドラマなどで、ポスプロ・スーパーバイザーなどをしている人物かなぁ~、と。
もし、アニメやイラストを専業でやってる人ではないのだとしたら、随分センスが良いですね。
絵でも食べていけそうなレベル。

★ テーマ曲

テーマ曲、オープニングは胡歌(フー・ゴー)が歌う<天地梅花開>
エンディングは鄭嘉嘉(ウェンディズ・チェン)による<天堂鳥>
オープニング曲は、胡歌と知らずに聴いたら、誰が歌っているのか分からないほど
普段の胡歌の歌声と違って感じたのは、私だけ?曲調は、なんか昭和のヒーロー物っぽい。
鄭嘉嘉は、ドラマのエンディングに曲が流れる際、片仮名で“ウェンディ・チェン”とクレジットされているが、
“Wendy(ウェンディ)”ではなく、“Wendyz(ウェンディズ)”ですから…!香港のシンガーソングライター。
これといい、日本語字幕といい、本当にいい加減…。
ここには、その“Wendy”ではなく、“Wendyz”の鄭嘉嘉が歌う<天堂鳥>の方を。






これ、まったく期待せずに観始めたら、案外面白かった。
どっぷりハマった!傑作に認定!…とはまったく思わないけれど、
何も考えず、ボケーッと気負わずに観るには丁度良い雰囲気で、
しかも、一つのエピソードが2話程度で完結するから、飽きずにサクサクと進んで行ける。
アニメのキャラのように、登場人物一人一人のキャラ設定も単純明快。
霍建華と劉詩詩に関しては、『女医明妃伝』より、むしろこちらのお気楽ドラマの方が、魅力的でさえあった。


LaLaTV、平日朝8時半のこの枠は、引き続き、李國立監督の唐人制作ドラマで、
2017年6月12日からすでに、『織姫の祈り~天涯織女/衣被天下』が放送されている。
またまた劉詩詩が出演しているけれど、実在の人物をモデルにした主人公を演じているのは、
台湾の張鈞(チャン・チュンニン)なので、少し新鮮かも。
私は、これ、すでに視聴済みなので、追う必要ナシ。
録画の消化に追われる日々から解放され、ちょっとホッとしております。

勝手に上海國際電影節ファッションチェック2017♪

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昨日、2017年6月17日、第20回上海國際電影節(上海国際映画祭)が開幕。
迷走を続ける東京国際映画祭とは逆に、上海国際映画祭の勢いは年々増すばかり。
オープニングのレッドカーペットも、華やかで見ていて楽しい。

そんな訳で、毎度の“勝手にファッションチェック”行っちゃいます。

★ 我が愛した男たち

上海国際映画祭には、私が愛してやまない男たちも出席しております。


まず、張震(チャン・チェン)

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『ブレイド・マスター』(2014年)の続編『繡春刀·修羅戰場~BROTHERHOOD OF BLADES』チームと登場。
この続編で新たに参加した楊冪 (ヤン・ミー)は、
ズハイル・ムラドの淡いミントグリーンのガウンで、紅一点、チームに花を添えております。
前作からの続投で、音楽を担当している川井憲次も参加していますねー(右から2番目のおじさん)。
前作の『ブレイド・マスター』は、路陽(ルー・ヤン)監督が、
司馬遼太郎の<沖田総司の恋>から着想を得たと明言しているので、
日本人としては、ついつい注目してしまう作品なのだが、
だからと言って、まさか続編が制作されるほどとは思わなかった。どうなのでしょう、この続編。ヒットしそう?



台湾の男前をもう一人、陳柏霖(チェン・ボーリン)

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ウォルト・ディズニー・スタジオが初めて手掛ける中国語作品『假如王子睡著了~Miss Taken』に出演。
内容はまだ分からず。ラヴコメっぽい。
相手役は、『人魚姫』(2016年)でブレイクした新たな“星女郎(シンチー・ガール)”林允(リン・ユン)。
18歳も年上の馮紹峰(ウィリアム・フォン)と恋の噂が出た小悪魔は、若干21歳。
陳柏霖も引っ掛かりそうな気がしなくもない…(苦笑)。
ちなみに、その小悪魔のお召し物はグッチです。キュート。


大陸男前は、黃軒(ホアン・シュエン)

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染谷将太とダブル主演の陳凱歌(チェン・カイコー)監督最新作
『空海 KU-KAI~妖貓傳』の公開を年末に控えている黃軒であるが、
今回は、それより前の国慶節に公開される馮小剛(フォン・シャオガン)監督作品『芳華~Youth』組と参上。
黃軒はグッチのスーツだが、女性たちは、郷愁漂うこれぞチャイナな緑のお召し物。
これは、『芳華』が70~80年代の文工団を描いた映画だからであろう。
巨匠たちからも引っ張りだこで、飛ぶ鳥を落とす勢いの黃軒、この『芳華』も観たい!
(そんな黃軒については、こちらの“大陸男前:黃軒”を参照。)

★ 女明星

目を楽しませてくれるのは、やはり女性スタア。ここに、何人かピックアップ。


一人めは周迅(ジョウ・シュン)

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ドラマ『如懿傳~Ruyi's Royal Love in the Palace』で共演した霍建華(ウォレス・フォ)とは、
許鞍華(アン・ホイ)監督最新作『明月幾時有~Our Time Will Come』でも共演。
この日のお召し物は、確認するまでもなく、一目瞭然のシャネル。
素材はニット?シンプルで素敵だけれど、普通の人が着たら、デブに見えてしまいそう…。
映画『明月幾時有』は、日本軍に陥落された1941年からの約5年間の香港を舞台にした物語。
許鞍華監督最新作というだけでも期待が湧くし、内容も非常に興味深いが、
抗日戦争期を扱っているというだけで、反日だと大騒ぎが起きる昨今の日本の風潮では、どうなることやら…。
周迅、霍建華以外に、彭于晏(エディ・ポン)も出ているし、人気スタアの競演!という部分に、一縷の望み。
(ちなみに、許鞍華監督は、日本のハーフ。)



続いて、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)

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出演作は、彭順(オキサイド・パン)監督最新作『猜猜我是誰』。
「私が誰だか当ててみて~」などというタイトルだけ見ると、なんだか楽し気だが、
彭順監督作品なので、そんな訳はない。実際に起きた詐欺事件を扱った犯罪映画みたい。
桂綸鎂は、バンコクでの撮影中、8針も縫う怪我をしたのだと。
上海のレッドカーペットに現れた彼女が着ているのは、周迅と同じように、シャネル。
寄せて上げたりせず、もう堂々と貧乳なのが、よろしい。
(モード感を出したかったら、巨乳より断然貧乳である。
桂綸鎂は、そこのところをちゃんと理解しているファッショニスタ。)



他の女性もザッと見ておきましょう。
今回、女性は、全体的にペイルカラーが目立つ。

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蔣夢婕(ジャン・モンジェ)

蔣夢婕は、『猜猜我是誰』で桂綸鎂と共演。
日本では、現在、出演作『修羅の剣士』が公開中。


王麗坤(ワン・リークン)

『情遇曼哈頓』で共演の高以翔(カオ・イーシャン)にエスコートされ、
トニー・ウォードのミントグリーンのガウンで登場。スレンダーな彼女にお似合い。清楚。


秦海璐(チン・ハイルー)

袖のデザインが特徴的な白のアレクシ・マビーユを身にまとった秦海璐は、
今回なんと監督さんとして上海国際映画祭に参上。
初監督作品は『一意孤行』。現時点で、どのような作品かは不明。
やはり、監督処女作ということで、ウェディングドレスのような白をチョイスしたのだろうか。


張靜初(チャン・チンチュー)

張靜初は、ブルーグレーのMikael D(ミカエル・ディー)。
薄汚い人(?)が着たら、下半身が巨大モップに見えてしまいそうだが、
ほっそりした張靜初が着ると、豪華かつエレガント。
彼女が出演しているのは、馮倫(スティーヴン・フォン)監督作品『俠盜聯盟~The Adventures』。
フランスやチェコで撮影された作品で、昨晩は、共演のジャン・レノも登場し、張靜初と共に舞台に立っている。
(張靜初は、大陸女優の中でも、取り分け英語が上手い。留学経験さえ無いとは信じ難いレベル。
中国は、国内学習だけで英語ペラペラという人が多くて、驚かされる。)
この作品には、馮倫のお嫁サマになられた舒淇(スー・チー)も出演しているが、昨晩は欠席。


張天愛(チャン・ティエンアイ)

一躍人気女優の仲間入りをした張天愛。
映画出演もドッと増え、我々日本人は、日中合作映画『空海 KU-KAI~妖貓傳』の上陸を待ちたいところだが、
今回の上海国際映画祭では、『父子雄兵~Father and Son』、『鮫珠傳~Legend Of The Naga Pearls 』、
両作品を携え、モノトーンのオスカー・デ・ラ・レンタでシックに登場。ノリに乗っております。
(そんな張天愛については、こちらの“大陸美女名鑑:張天愛”を参照。)

★ 日本

今回の上海国際映画祭では、SABU監督がコンペティション部門、想田和弘監督がドキュメンタリー作品部門、
アニメーター小林準治氏がアニメーション部門の審査員になっている他、
多くの日本映画が上映され、それに伴い日本の監督や俳優も参加。

中でも、メディアに一番取り上げられているのは、上戸彩

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映画版『昼顔』で共演の斎藤工、西谷弘監督と登場。
上戸彩ちゃん、以前は松潤みたいだった出っ歯を全取っ換えしてから、綺麗になりました。
日本の若いお嬢さん方は、まだ分かっていない、
綺麗になりたかったら、“整形より歯列矯正”ということを肝に銘じておくべし!

★ その他:こんな所にも日本人

上戸彩や田中麗奈ばかりに注目していたら、意外なところに、さり気なく林遣都も混ざり込んでいた。

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彼が出演しているのは、鈕承澤(ニウ・チェンザー)がプロデュースする
蔣卓原(ジャン・ジュオユエン)監督作品『青禾男高~Fist & Faith』。

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共演は、張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品『グレートウォール』への出演で、
日本での注目度も俄然高くなった景甜(ジン・ティエン)や、
人気急上昇の若手・歐豪(オウ・ハオ)。彼もまた『空海 KU-KAI~妖貓傳』に出演しております。

一番上の画像をよく見ると、左端には、NHK朝ドラ『べっぴんさん』で、
明美に求婚して、フラれた足立武役の中島広稀も映っているではないか。


さらにアップで見てみます。

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この日、景甜は不参加で、ここに映っている紅一点は、“夏恩”という若手女優。
彼女に関しては、情報がほとんど無いので、真っ新な新人さんかも。
それにしても、変わった衣装。日本の学ラン風の制服で、胸に“青禾男高”のネーム入り。
青禾という男子校を舞台にした青春映画?
他、黒木メイサも重要な役で出ているようなので、日本公開もアリ…?



この第20回上海国際映画祭は、2017年6月26日まで開催。
賑やかで楽しそう~。行ける人が羨ましい。

映画『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』

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【2016年/中国・香港/120min.】
ひとつの時代が幕を閉じ、混沌とする1914年の普城。
貧しくも、穏やかなこの村で、小さな食堂を営む李鐵牛のもとに、
教師をする従妹の白玲が、数人の幼い生徒たちを伴い、逃げ込んで来る。
なんでも、各地で殺戮と強奪を繰り返している北洋軍閥の将軍の息子・曹少璘が、
彼女が暮らす石頭城にもやって来て、罪の無い村人たちを片っ端から殺害したというのだ。

命拾いした生徒を連れ、なんとか逃げ延びた白玲が、李鐵牛の家に身を寄せ、しばらくしたある日、
閑散とした彼の食堂に、一人の男がやって来て、ネギ抜き牛肉麺を注文。
たまたま店に来た白玲は、テーブルで麺を待つその客を見て、凍り付く。
忘れもしないその男は、石頭城で村人を皆殺しにしたあの曹少璘だったのだ…。



陳木勝(ベニー・チャン)監督最新作を鑑賞。
プロデュース作品なら、『小さな園の大きな奇跡』(2015年)が約半年前に日本に入ってきているが、
監督作品となると、『レクイエム 最後の銃弾』(2013年)以来。



本作品は、軍閥が割拠する混沌とした民国初期、普城という小さな村の自警団団長・楊克難が、
その普城で、いきなり3人の村人を殺害した悪名高き曹瑛将軍の息子・曹少璘を
下手に捕えてしまったがばかりに、軍閥という理不尽で大きな相手を敵に回すも、
村と村人を守るため、正義の名のもと、無謀とも思える闘いに挑む武俠アクション

“悪人vs善人”、“権力者vs民衆”という非常に分かり易い対立。
軍閥の将軍の二代目・曹少璘は、気に食わなければ、女子供も殺す冷血非道な男。
一方、楊難克は三代に渡り、普城の自警団団長を務めてきた善良な熱血漢。
どんなに相手が大きな存在でも、屈することなく、
危機に直面した村と村人を守るため、命を投げ打ってでも、闘おうとうする。

…ところが、「楊難克はやっぱり頼りになる!有り難う!皆で一緒に闘おう!」と士気が上がって、
村人たちも立ち上がるかというと、いや、立ち上がらないのだ。
村人たちが選んだのは、正義のための無謀な負け戦より、悪に屈してでも静かに暮らすこと。
だから、闘う気マンマンの楊難克に、どうか闘わないで!私たちを不幸に巻き込まないで!と懇願。

そう、その日その日を地道に生きている庶民にとって、正義は時に有り難迷惑。
両極端な非道か正義ではなく、白黒つかない妥協案だって有るはず。
私は、村人たちの気持ちを理解したのだが、
妥協した彼らの一縷の望みは無残にも打ち砕かれ、甚大な被害をこうむり、結局闘いを余儀なくされる。



時代背景の民国初期は、陳木勝監督が、過去に『新少林寺 SHAOLIN』(2010年)でも描いている時代。
『新少林寺』もこちらの新作も、共に軍閥が割拠する同じ時代ではあるが、
前者は史実を元にしたお話で、後者はまったくの創作。
2作品で時代がカブッたのは、あくまでも偶然で、
陳木勝監督が、民国初期に特別強い思い入れがあるわけではないないようだ。
陳木勝監督曰く、民国初期は、中国が最も混乱していた頃だから、語るに足るエピソードが非常に多い、と。

そんな訳で、本作品はまったくのフィクションであり、ヒントになった史実は、どうやら無さそう。
舞台となる普城も、実在しない架空の村である。
ただ、中華圏では、この普城を香港の暗喩と受け止める人もボチボチ居るように見受ける。
私個人的には、中国関連だと、何でも政治に絡め、深読みしたがる近年の傾向には、疑問も感じている。
そもそも、そんなに分かり易い暗喩だったら、もはや暗喩ではないし。
ま、ブレーキが利かなくなった横暴な権力者というのは、どこの国にも、いつの時代にも居るので、
どうにでも捉えられる普遍的なお話という気がする。
言う事をきく人間を周囲に侍らせ、権力を乱用する二代目が暴走する普城は、
現在の日本だって、充分当て嵌まる(我が国で暴走中のあの男も、正義の味方に成敗してもらいたい…)。
もしかして、陳木勝監督も、普城という村の名前に、
“普=ごく一般的な”、“城=街”という意味を込めて名付けたのではないかと想像。


では、その架空の普城、実際のロケ地は?
中国史劇の撮影場所というと、真っ先思い浮かべるのは横店だが、本作品が撮られたのは浙江省紹興
2014年12月から5ヶ月かけ、紹興の2万平米の土地に、当時の江南の街をイメージした普城を建設。
使用した建材の90%以上は、解体された古い家屋のリサイクルで、
建物のどの部屋にも家具を配備したり、屋台も実際に煮炊きできるように作るなど、
細部にも拘った、もう本当の“村”らしい。建設時期が梅雨に重なり、かなり大変だったらしいが、
それでも、なお、一つの村を5ヶ月で作ってしまうとは、「・・・・・(ポカーン)。」
あの巨大な人民大会堂をたった10ヶ月ポッキリで建ててしまった中国なら、充分有り得る。

(↓)こちら、その紹興“普城”についての簡単な動画。


本当に、紹興に、民国初期の村が一つ出現しちゃっております。びっくり。





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主な出演は、普城の自警団団長・楊克難に劉青雲(ラウ・チンワン)
軍閥の曹瑛将軍の息子・曹少璘に古天樂(ルイス・クー)
流れ者の馬鋒に彭于晏(エディ・ポン)
馬鋒の兄弟子で、今は曹少璘の下で働く上校の張亦に吳京(ウー・ジン)

楊克難と曹少璘は、対立する分かり易い正義と悪。
無関心を装う流れ者の馬鋒と、理想より現実を受け入れ、曹少璘の下で働く張亦は、グレーな存在。


私のお気に入り香港オヤジ劉青雲は、今回、2メートルの長いムチを使ったアクションに挑戦。

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処刑用のムチは、史劇でよく目にするが、
ムチを主人公のお約束アイテムにした中国アクション映画は、今、他にパッと思い浮かばない。
劉青雲は、今回、役作りのために、ムチさばきを特訓。
前方に投げ出すのは簡単でも、自分の方に戻って来る時が怖くて、どうしても目が泳いでしまうため、
視線も訓練する必要があったという。


古天樂扮する敵・曹少璘のアイテムは銃。

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普通の黒い銃ではなく、お金持ち仕様(?)のド派手なゴールド。
古天樂が、劉青雲と共演するのは、本作品で13回目だって。
香港映画は、キャストがカブることが多いので、13回は多いようで、実は少なくも感じる。
そんな古天樂が、今回演じてる曹少璘は、本作品一の悪役。
ただの馬鹿なのか、サイコパスなのか分からない怖さアリ。どちらにしても、最後まで救いの無い外道であった。
取り分け記憶に焼き付いているのは、狂言自殺にしては鬼気迫った首吊り自殺を計るシーン。
顔を赤くし、口の中から止めどなくブクブクと出てくる白い泡に目が釘付け。

あと、曹少璘の致命傷となる“銃弾返し”も面白かった。
映画を観た人は、分かりますよね?刀に受けた銃弾を、あんなに上手いこと返せるものだろうか。
テコの原理(?)で撥ね返せるのは、中国ならではのシナリがある刀だからで、日本刀では難しそう。


この映画では、メインになっている善の象徴・楊克難vs悪の象徴・曹少璘だけではなく、
サイドストーリー的に描かれる彭于晏扮する馬鋒と、吳京扮する張亦の対立も結構重要。
この二人は、正義と現実の捉え方が異なり、違う道へ進んだものの、元々は同門の弟子同士。
仲が良かった頃の回想シーンでは…

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清朝の遺物・辮髪で登場。恐らく、清朝崩壊直後と推測。
伸ばしかけの“モンチッチ辮髪”前頭部が、ズラ感満載で不自然だったのは、本作品一番の残念ポイント。
(意外にも深い辮髪に関しては、こちらの“辮髪(べんぱつ)大特集♪”を併せてどうぞ。)

でも、不幸にも敵対関係になってしまった元義兄弟の最終バトルは、
不自然な辮髪を忘れさせるほど印象的な闘い。

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紹興だけに、“酒壺バトル”!
元々陳木勝監督は、別の対戦シーンを構想。ところが、紹興で撮影している内、
現地では、空になった酒壺を積んで天日干しにする伝統的習慣があることを知り、
このアイディアを思い付いて、対戦の構想を一新。
近隣の醸造所から、数万個の酒壺を運び込み、それを現場に設置するだけでも、まず一週間。
積み上げた酒壺は、3階建ての建物ほどの高さが有り、その上でアクションを行うのは、非常に危険なため、
この酒壺バトルのシーンは、撮影に一ヶ月が費やされているのだと。
その甲斐あって、印象的なシーンになっている。




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他の出演者では、楊克難の親友で、普城自警団の団員でもある廖甲長役の廖啟智(リウ・カイチー)
普城村長・劉誠の護衛として雇われる王威虎役の釋延能(シー・ヤンネン)についつい目が。
それと言うのも、この二人が出演している大陸ドラマ『四人の義賊 一枝梅~怪俠一枝梅』を、
つい最近観終えたばかりだから。
趣きの異なる二作品で比べるのは間違っているだろうけれど、
正直言って、この二人は、『一枝梅』で演じている役の方が、より魅力的であった。
でも、釋延能が、元“リアル少林武僧”たる力強いアクションを披露しているのは、
こちらの『コール・オブ・ヒーローズ』の方かも。
それにしても、“釋延能 Shì Yánnéng”を“シー・ヤンネン”と表記するのは、酷過ぎて、どうしても慣れない。
ナンなの、“ヤンネン”って。中国人というより北欧人っぽい。
日本でも、彼の熱心なファンの方々は、“シー・イェンノン”と呼んでいるようなので、
私もなるべくそちらを使おうと思います。


あと、そう、そう、もう一人忘れ難いのが子役。

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劉青雲の娘・楊襄を演じている劉嘉藝(リウ・ジャーイー)という子。
一度見たら忘れられない非常に個性的な顔立ち。
14億近い人口を抱える中国では、これくらいキョーレツな個性が無いと、埋もれてしまうというのは、分かる。
…が、この子が、周冬雨(チョウ・ドンユィ)に似ていると言われているのは、どうなのかしらぁ…。

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まぶたが腫れぼったい同系の顔に見えなくもないが、
言うなれば、郷ひろみと我修院達也のような、“似て非なるもの”という気が…。
周冬雨よりは、“実写版クレヨンしんちゃん”って感じ。
(2007年生まれとのことだが、“芸歴40年、浪速のベテラン女芸人”といった雰囲気も。)





私は、熱心なアクション映画ファンではないので、
年の暮れに、この作品を2017年度のベスト10に入れることは、まず無いと思う。
でも、これまでの陳木勝監督作品と同じように、
アクションに特別興味が無い人が観ても入り込めるテンポの良いストーリー展開で、
飽きることのない2時間ではあった。

ちなみに、この映画、日本では、広東語版で上映。
冒頭にまず登場する彭于晏が、普段とは明らかに違う声で、広東語を喋っているのには、当初、戸惑った。
香港明星の劉青雲や古天樂は、もちろん地声だし、彭于晏の吹き替え声にも、その内、慣れたけれど。
私は、本来、香港映画なら“広東語で観たい派”なのだが、
大陸との合作がこうも進んだ昨今、物語の設定によっては、広東語が不自然と感じることもある。
例えば、最近だと、『おじいちゃんはデブゴン』(2015年)。
舞台が大陸北方なのに、皆が当たり前のように広東語を喋っているのには、違和感を覚えた。
香港電影ファンのための広東語存続か、作品のリアリティかで、
北京語/広東語の選択は、悩ましいところですわね。
この『コール・オブ・ヒーローズ』の場合、舞台が架空の村なので、結局のところ、広東語OKかしら。

ついでに、本作品で声を吹き替えられているその彭于晏についても言及しておくと、
本人の希望通り、台湾偶像劇から脱却し、映画の世界へのシフトに見事成功したことは、良かったと思うが、
アクション映画の出演ばかりが目立っているのは、
特別アクション映画好きってほどではない私には、ちょっと残念。
なので、許鞍華監督最新作『明月幾時有~Our Time Will Come』への出演は、
方向性に変化が感じられ、期待が湧く。ひと皮剥けた彭于晏に出逢えるでしょうか…?

第28回金曲獎で方大同がついに歌王!

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2017年6月24日の昨晩、台北の小巨蛋で、
“台湾のグラミー賞”とも称される第28回金曲獎 Golden Melody Awardsの授賞式が開催。


当初、中継を観るつもりでいたのだが、非常ーーーーーっに強い睡魔に襲われ、
“ちょっと仮眠”のつもりが、朝まで爆睡。
遅ればせながら、今朝、受賞結果をチェックしたら…

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私mango一押しの方大同(カリル・フォン)がアルバム<JTW 西遊記>で、
本年度の最佳國語男歌手獎(最優秀中国語男性シンガー賞)を獲っていた…!
ぎゃぁーーーーっ!大同クン、おめでとうございます!!

方大同のノミネートは、今回で6度目。過去5回は受賞に至っていない。
今回は、“6度目の正直”だったワケ。
昨年は、自身のオリジナル音楽レーベル・賦音樂 FU MUSICを設立し、
自分の世界観をより積極的に押し出せるようになり、
前作から2年以上の時を経、満を持して<JTW 西遊記>を発表し、
この受賞に至ったわけだから、感無量に違いない。
来月7月14日には、34歳になるし、金曲獎歌王は、約3週間前倒しの最高のお誕生日プレゼント!


あ゛ーっ、私ってば、そんな時に限って、深い眠りに陥ってしまうなんて…。

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見逃しても、今の時代、有り難い事に、動画がいくらでも出回っているので、
大同クンの名前が呼ばれ、林俊傑(JJ リン・ジュンジエ)からトロフィーを授与され、
受賞のスピーチをするその瞬間を、遅ればせながら見ることはできたのだが、
やはり、こういうのは、ライヴで見たいのがファン心理。
まぁ、今更グチッても仕方が無いですね。
私という疫病神が見ていなかったから、受賞できたのかも知れないしねー。


ここには、方大同のそのアルバム<JTW 西遊記>から、何か一曲。
別にどれでも良いのだが、金曲獎にちなみ、台湾でMVが撮影された
王詩安(ダイアナ・ワン)とのデュエット曲<All Night>を。


二人とも可愛い。
(最後、眼鏡を外すが、方大同は、基本眼鏡標準装備でお願いしたい。一ファンのささやかなお願い。



ちなみに、今回、この賞を方大同と競ったのは、周杰倫(ジェイ・チョウ)、郭頂(グオ・ティン)、
盧廣仲(クラウド・ルー)、林宥嘉(ヨガ・リン)、黃明志(ネームウィー)、大支(ドッグG)であった。

方大同は、金曲獎に出席するため、今年はママを伴い、渡台していたそうで、祝賀会の席で撮られた…

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珍しいママの写真も出てきております。
息子のハレの舞台に立ち会え、ママも台湾まで行った甲斐がありましたね~。

★ 第28回金曲獎:受賞リスト(簡略版)

第28回金曲獎、他の賞も、日本人が注目しそうな部分に絞り、受賞結果を挙げておく。

最佳國語男歌手獎(最優秀中国語男性シンガー賞)
方大同(カリル・フォン):<JTW 西遊記>

最佳國語女歌手獎(最優秀中国語女性シンガー賞)
艾怡良(イヴ・アイ/アイ・イーリャン):<說 艾怡良>

最佳國語專輯獎(最優秀中国語アルバム賞)
<自傳 history of Tomorrow>:五月天(Mayday)

最佳樂團獎(最優秀バンド賞)
草東沒有派對 No Party For Cao Dong

最佳演唱組合(最優秀ヴォーカルユニット賞)
Mr. Miss(杜凱、劉戀):<先生小姐>

年度歌曲獎(年度楽曲賞)
<大風吹>:草東沒有派對 No Party For Cao Dong

最佳新人獎(最優秀新人賞)
草東沒有派對 No Party For Cao Dong:<醜奴兒>

最佳專輯製作人獎(最優秀アルバムプロデューサー賞)
荒井十一:<vavayan 女人>


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画像は、今年の歌后に冊封された艾怡良(イヴ・アイ/アイ・イーリャン)と、歌王・方大同のツーショット。
艾怡良に関しては、正直なところ、“整形で話題になった歌手”程度の認識であったが、
この度、改めて曲を聴いてみたら、癒しに誘ってくれる、気持ちのよい歌声の持ち主であった。


受賞者リストの中には、日本人の名前を入っております、荒井十一。…って誰?
どうやら、父は日本人、母は香港人、妻は台湾原住民、そして北京に長らく暮らすという
広くアジア人的な香港の音楽プロデューサー兼ドラマー・荒井壯一郎(あらい・そういちろう)のことのようだ。
ちゃんと調べていないので、改名したのか、2ツの名前を使い分けているのか、不明。
“十一”の日本語の発音も、現時点で分からない。まんま“じゅういち”?それとも、“といち”??
(授賞式では、北京語の発音で“ホアンジン・シーイー”と呼ばれていた。)
彼は、莫文蔚(カレン・モク)のアルバム<不散,不見>で、2015年、第26回金曲獎にて、同じ賞を受賞済み。
今回は、排灣(パイワン)族の女性シンガー阿爆(アバオ)のアルバム<vavayan 女人>で受賞。
このアルバムは、最佳原住民語專輯獎(最優秀原住民語アルバム賞)も受賞している。


あと、リストに目を通し、気になるのが、草東沒有派對 No Party For Cao Dongの名が目立つこと。
2016年、アルバム<醜奴兒>でメジャーデビューした4人組。
年度歌曲獎(年度楽曲賞)を受賞した草東沒有派對の<大風吹>は、(↓)こちら。


かなり好きな感じ。今後、注目していこうと思います。


それと、今年の金曲獎授賞式で、多くの日本の方々は…

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GLAYが参加したことに注目しているようですね。
ステージで、<The Other End Of The Globe>と<誘惑>の2曲を披露し、
内、<誘惑>では、長年親交のある五月天Maydayメンバー怪獸(モンスター)がギターで参加し、
会場を盛り上げたとのこと。



では、改めて、受賞の皆さま、おめでとうございました!
(私は、やっぱり、方大同の受賞が一番嬉しい。またコンサートに行きたい!是非東京で!)

最後に、第28回金曲獎の動画を貼っておく、…一応。


レッドカーペットだけでも2時間、全行程通しで観たら6時間半…。
台湾のイベントって、どうしてこうも長いのでしょうか…。
すぐに全部観られるとは思えない。当分このまま削除されないことを祈る。
GLAYを観たい人は、3時間半の辺りを。

映画『レイルロード・タイガー』

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【2016年/中国/124min.】
1941年、戦時下の中国山東省南部・魯南地区。
棗莊駅の運搬係りとして働く馬原のもと集まった労働者たちは、列車を襲撃しては逃走し、
日本軍を手こずらせ、いつしか“飛虎隊”と呼ばれるように。
しかし、所詮は素人のゲリラ部隊。いつも思うような結果が出せる訳ではない。
そんなある日、馬原らは、追っ手から命からがら逃げて来た八路軍の負傷兵・大國を助ける。
なんでも、日本軍の運輸に甚大なダメージを与えられるであろう韓莊大橋の爆破を命じられたものの失敗、
多くの仲間を失い、彼一人こうしてなんとか逃げてきたと言うのだ。
もう虫の息の大國は、ろくに動くことさえままならない。
大國に代わって、その任務を成し遂げようではないか…!
素人集団の飛虎隊は、韓莊大橋爆破計画という危険な大仕事に初めて挑もうと立ち上がるが…。



『ラスト・ソルジャー』(2010年)、『ポリス・ストーリー/レジェンド』(2013年)に続く、
監督・丁晟(ディン・シェン)×主演・成龍(ジャッキー・チェン)コンビによる第3弾。

過去2作品は、『ラスト・ソルジャー』はイマイチ、『ポリス・ストーリー/レジェンド』はまぁまぁであった。
成龍主演に縛られなければ、実際に起きた俳優・吳若甫(ウー・ルオフー)誘拐事件を、
劉華(アンディ・ラウ)主演で撮った『誘拐捜査』(2015年)は、結構面白かった。
だからと言って、丁晟監督は、私にとって、何がナンでも新作をチェックしたい程の監督さんではない。


今回の新作には、元ネタあり。
大陸随一の石炭の産地として知られる山東省・棗莊を、1938年、日本軍が占領後、
貧農出身の炭鉱夫・洪振海(ホン・ジェンハイ 1910-1941)をリーダーに、抗日ゲリラ部隊が結成され、
主に鉄道を利用したゲリラ戦を展開したという史実があるらしい。
この話を元にした小説が、1954年に発表された劉知俠(リュウ・チーシャ)の<鐵道游擊隊>。
『レイルロード・タイガー』の原作でもあるこの小説は、過去に幾度となく映像化されているので、
中国では、そこそこ知られた抗日英雄伝なのではないかと想像。


そんな訳で、本作品は、戦時下の棗莊附近で、
日本軍の物資を盗むなど、小さな抵抗を続けていた馬原を中心とした庶民の男たちのチーム“飛虎隊”が、
負傷した八路軍兵士・大國から、運輸で大きな役割を果たしている韓莊大橋の爆破を託され、
日本のプロ軍人を相手に、初の大仕事に奮闘する様子を
アクションや笑いを交えて描く、中国素人部隊の手に汗握るレジスタンス活劇…!


小説<鐵道游擊隊>を映像化した過去の作品は観たことが無いのだが…

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ポスターやスチール写真などからは、昔ながらの相当生真面目に撮られた抗日英雄伝という印象を受ける。

『レイルロード・タイガー』は、成龍主演作なので、
人々が想像する通り、笑いを交えたハチャメチャなエンターテインメントに仕上げている点が、
これまでの<鐵道游擊隊>映像化作品とは異りそう。


あと、成龍と言えば、アクションであるが、そこに期待しちゃうとねぇ、うーん、肩透かしを食らうかも。
過去の丁晟監督作品を観ている人なら分かると思うが、
丁晟監督は、いわゆる“アクション映画監督”とは違う。
伝統武術の素養を要する肉vs肉!みたいなカラダを張ったアクションは少なめで、銃撃戦などが多い。




出演者をザッとチェック。

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まず、中国側。飛虎隊隊長・馬原に成龍(ジャッキー・チェン)
馬原のもと飛虎隊に集まる隊員は、仕立て屋の青年・大海に黃子韜(ファン・ズータオ)
大奎に桑平(サン・ピン)、銳歌に房祖名(ジェイシー・チャン)
のちに飛虎隊に加わる麺屋の経営者・范川に王凱(ワン・カイ)
飛虎隊に韓莊大橋の爆破を託す負傷兵・大國に王大陸(ワン・ダールー)など。

成龍は、もうお年なので、本作品では、派手に一人で立ち回るようなことは、あまりない。
成龍の存在が色んな意味で頂点であることには変わりないが、若い衆を見守り、まとめるリーダーで、
本作品は、成龍を主軸にした“群像劇”といった印象。

現地では、成龍以上に、
韓流ユニットEXOの元メンバー“TAO”こと黃子韜をお目当てにする女の子が多いみたい。
同じように“元EXO”である鹿(ルー・ハン/ルハン)や吳亦凡(クリス/ウー・イーファン)に比べ、
映像作品への出演がまだ少ないから、『レイルロード・タイガー』は、黃子韜をスクリーンで拝む貴重な機会。
そんな彼、黃子韜は、鹿や吳亦凡以上に、見た目に韓流色が濃く出ていて、苦手なタイプだったのだが、
本作品は、戦時下の話ということで、金髪とアイラインを封印。そうしたら、案外好青年で、イイ感じ。
声や喋り方も、おっとりとしていて可愛らしい。
でも、若いお嬢さん方は、金髪&ばっちりアイラインの黃子韜クンの方が、やっぱり良いわけ?!(笑)


私のお目当ては、若い黃子韜ではなく、もっと熟した王凱!
実は凄腕スナイパーと噂される麺屋のオーナー。
登場早々、自分は狙撃の名手なんかじゃないと、指が細く長い綺麗な手を見せるシーンがある。
王凱の場合、上半身裸の入浴シーンなんかより、お手々を見せる方が、ファンにとってはサービスシーン。
あのシーンは、やはり王凱ファンを意識した演出か…?

今回、王凱と初共演した成龍が、「王凱は、撮影初日、台詞を喋るのがゆったり過ぎた!2日で適合したけれど」
と言っていたので、早口で捲し立てる台詞が多いと予想していたのだけれど、
実際には、特別勢いよく喋るシーンは無く、まぁ、普通。
台詞なら、喋る速度や勢いより、私は日本語に食い付いた。
王凱の日本語は、ドラマ『歡樂頌~Ode to Joy』で、「ありがとう」のひと言を聞くことができるが、
本作品では、「座れ!」に始まり、「君と同じだ」、「手を上げろ」、「失礼だ」、「閉めろ!」と、
今パッと思い出せるだけでも、5パターンの日本語を口にしておられた。


中国語作品は、“ドラマは観ず、映画だけ”という日本人が注目するのは、王凱以上に王大陸?
主演作『私の少女時代』(2015年)が大ヒットしたのを機に、
下積み時代お世話になった台湾の事務所を解約し、“大陸”という名前通り、大陸に進出した王大陸。
地元台湾では、“恩知らず”と叩かれもしたが、私は、そういう“恩”とかナショナリズムとか関係なく、
単純に、王大陸は大陸で通用するのか?という疑問を抱いた。
大沢樹生や松村雄基のような、ちょと古臭い、90年代のニオイがする王大陸は、
『私の少女時代』の役がたまたま合っていたものの、他でツブシが効くのか?!という疑問。
進出するのは勝手だが、容姿でも演技力でも、ハイレベルがザックザクと腐るほどいる大陸芸能界で、
王大陸程度の俳優がやって行くのは厳しいのではないか…、と。
彼の場合、かなりのコネクションが有っての大陸進出で、採算通り、コンスタントに仕事はしているけれど、
逆に言うと、そのコネの割りに、人気には繋がっていないようにも見受ける。
『レイルロード・タイガー』では、実は出演シーンが少ないので、一概には言えないが、
話題になっているのは黃子韜、次いで王凱であり、王大陸に関しては、あまり語られていない。
それでも、王凱と共に、丁晟監督の次回作にも続投。
その新作とは、あの『男たちの挽歌』第4弾、『英雄本色4』!
オリジナルの吳宇森(ジョン・ウー)監督版に敬意を払いながら、現代風にアレンジしたリメイク作品とのこと。
王大陸が演じているのは、誤報でなければ、オリジナル版で周潤發(チョウ・ユンファ)が演じた馬克(マーク)。
『男たちの挽歌』や周潤發の馬克は、我々日本人が思っている以上に、中華圏での人気が絶大。
それを、王大陸が、あの演技力のままやったら、今度こそ大バッシングが起きそうな予感も…。大丈夫…?!



出演シーンが少ない王大陸とは逆に、意外にも沢山出ていたのが、成龍の息子・房祖名。
『レイルロード・タイガー』は、2014年、お薬で御用となった房祖名(→参照)の復帰作。
彼が映ったスチールなどは、ほとんど出回っていなかったので、
この作品は、大衆の拒否反応を和らげるための“プレ解禁”で、申し訳程度に出演させ、
この先、徐々に復帰させていく目論見なのだと思っていたら、なんの、なんの、実は主要キャストの一人!
以前と同じ、屈託のない房祖名で、父・成龍との絡みもある。もう絶対に再犯なんて事が無いよう祈ります!


最近、スクリーンで目にする機会が増えた桑平は、本作品にも飛虎隊隊員・大奎役で出演。
横に並ぶと、182センチの王凱が小さく見える桑平の身長は、なんと196センチ!
首都体育學院卒の元ボクサーで国家一級運動員という異色の経歴をもつ俳優。
桑平が演じている、おつむは弱いが力持ちの羅士信は、結構好き。
この映画で演じている大奎も、その羅士信に近いキャラ。




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続いて、日本側出演者。日本軍の憲兵隊隊長・山口に池内博之
棗莊駅の駅長・佐々木に矢野浩二、日本軍の女性長官・由子に張藍心(ジャン・ランシン)など。

この映画、池内博之がせっかく出演した成龍作品だから、日本で公開してくれないかしらぁ~と期待する反面、
“抗日”という言葉にやたら敏感な昨今の風潮で、お蔵入りの可能性も高いと見ていたが、
なんとか日の目を見て、良かった、良かった。

池内博之が演じる帝国軍人というと、『イップ・マン 序章』(2008年)の三浦将軍が記憶に鮮明。
丁晟監督も、『イップ・マン』で見た池内博之を気に入り、直接出演オファーをしてきたとの事なので、
本作品で演じている山口にも、当初、あの三浦将軍の雰囲気をイメージしていたら、
実際には、もっとコミカルであった。
『イップ・マン』に限らず、池内博之には、いつも気難しい顔をしている印象があったので、
へぇー、こんなコメディもやるんだぁ~と、新たな一面を見せてもらった感じ。
飛虎隊最大の敵で、本作品一の悪役だが、現地での評判も上々と見受ける。

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役を離れれば、和気藹々。撮影中、お誕生日を祝ってもらったのだろうか。
甄子丹(ドニー・イェン)に続き成龍と、2大アクションスタアとの共演を果たすなんて、
羨む日本人俳優がいっぱい居そう。
吳宇森(ジョン・ウー)監督が手掛ける『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年)のリメイク、
『追捕 MANHUNT』の公開も控えているし、日本に納まらない益々の活躍に期待。


佐々木駅長役の矢野浩二は、中国でずーーっと頑張ってきた日本人俳優。

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2005年制作のドラマ版『鐵道游擊隊』では、岡村という日本軍憲兵隊長を演じている。
これ、『レイルロード・タイガー』で池内博之が演じている山口に当たる役かしら…?
今回演じている佐々木は、日本鬼子という感じではなく、むしろ気の弱い駅長。
緊張し過ぎると、つい引きつった笑みを浮かべ、相手を苛立たせてしまうこういう人、実際にも居る。
池内博之に比べ、役は小さいが、認知度は高いので、現地では、
「演技が上手い!」、「良い俳優なのに、出演シーンが少なすぎる!」という意見から、
「こんな映画に出て、日本で右翼に攻撃されやしないか…」といった心配の声まで出ている。
確かに、矢野浩二は、日中関係に色々と翻弄され、領土問題勃発以降は、中国で仕事がしづらくなり、
活動拠点を日本に移さざるを得なくなったわけだが(日本ではまったく報道されていないが、
その母国・日本では、妙な愛国日本人から、反日呼ばわりされ、ブン殴られるという事件も起きている)、
また徐々に状況が好転してきているのか、黃軒(ホアン・シュエン)主演の話題の超大作…

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ドラマ『九州·海上牧雲記~Tribes and Empires-Storm of Prophecy』にも南枯祺という役で出たみたい。
これ、予告を観る限り、スケールや映像のレベルが、
『レイルロード・タイガー』など比較にならないほどスゴイ。
もう、ついでなので、その『九州·海上牧雲記』の映像、貼っちゃいます!


改めて言いますが、これ、映画ではありませんので。
中国のドラマって、もうこういうレベルにまで来ちゃっているのです。
矢野浩二は、6分37秒の所でチラッと映るギロチンに首を掛けている男だと思う。
これ、黃軒主演だし、観たーいっ…!



日本軍の女性長官・由子に扮しているのは、日本人ではなく、中国人の張藍心。
成龍に見出され、『ライジング・ドラゴン』(2012年)でスクリーンデビューを飾った元テコンドー選手。
身長177センチで、長ーい美脚という抜群のスタイルと、キレのあるアクションで注目された。

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確かに、こんなボディのアスリートがいたら、芸能界が放っておかないであろう。
日本のCanCamモデル程度では、恥ずかしくて横に並べない…。

今回はその抜群のボディを軍服で覆い隠し、日本軍人を演じている。
日本の女性軍人で、名前が由子(ユウコ)、しかも共演者が王凱なので、
ドラマ『偽裝者~The Disguiser』で松峰莉璃が演じた南田洋子(ミナミダ“ヨウコ” …笑)を重ねてしまった。

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画像は、『偽裝者』で南田洋子を演じる松峰莉璃、及び、血まみれでも手が美しい王凱とのオフショット。
中国の皆々様も薄々気付いているとは思うが、
当時の日本は、女性が軍の上官になれるほど、男女平等ではないんだけれどね。
『レイルロード・タイガー』や『偽裝者』のように、
中国の作品が、リアリティを無視して、女性軍人をしばしば登場させるのは、作品を華やかにするための演出?


映画の最後には、大物が特別出演。
スペシャルヒントは、『私の少女時代』と同じ。…ネタバレも同然ですね(笑)。




こういう作品というのは、基本的に単純なので、
馬原らが乗り込んだ列車が、韓莊大橋まで走り、その上でドカーンと大爆発を起こし、橋を崩壊させ、
スカッとThe END!という展開を予想していたら、
列車が燃料切れで、韓莊大橋の手前で止まってしまうという想定外が起きた。
実は、そこに至るまでは、結構退屈してしまい、幾度か睡魔にさえ襲われたのだが、
その想定外で、急に興味が湧いてきた。
ラストで、橋が爆破されるのは、ほぼ間違い無いであろう。
では、列車が止まってしまった状態から、どう爆破に繋げるのか?!という点が気になり、
終盤でようやく作品にのめり込んで行けた。

これ、大陸より、むしろ台湾で高評価を得ているので、何故だろと疑問に思っていたのだが、
実際に観ても、よく分からなかった。台湾人は、申し訳程度でも王大陸が出ている事が嬉しかったの…? 
大陸では、房祖名をこの作品でコソコソと復帰させたことに、拒絶反応を示す人がかなり居るようで、
「成龍まで、こんなクダラない抗日神劇に出て、薬をやった息子を復帰させるなんて!」といった
手厳しい意見が溢れている。親が有名人なら簡単に社会復帰できる薬物使用者に対する嫌悪感に加え、
“抗日神劇”に食傷気味で、作品の評価がイマイチになったと見受ける。

私個人的には、“可もなく不可もなし”くらい。
私がこれまでに観てきた丁晟監督作品の中では、
本作品が一番コメディ要素が強いので、観易いことは観易いが、
あまりコメディやアクションに期待すると、そうでもなく、まぁ、平均的な出来という印象。 

ちなみに、映画の幕が上がってから早々に出てきた日本語は、案の定「やめてぇ~」であった。
(日本のAVが人気の中華圏では、「やめてぇ~」は広く知られた日本語デス。


成龍主演作は、『絕地逃亡』(2016年)が、
『スキップ・トレース』という邦題で、すでに2017年9月の日本公開が決まっているらしい。
そちらは、『レイルロード・タイガー』と違い、堂々と宣伝をし易そう。
(逆に言うと、宣伝しにくい内容にも拘わらず、『レイルロード・タイガー』を日本に入れ、観せてくれたことに、
より有り難味を感じる。)
カンフーとヨガを合体させた斬新な中印合作映画『功夫瑜珈~Kung Fu Yoga』も、
もう日本公開が決まっているんでしたっけ?これは、楽しそう。

夏向きフルフル和菓子5種(+テレビとか日々の雑記諸々)

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胡歌(フー・ゴー)、エンポリオ・アルマーニ2017F/W新広告がお披露目。

今年3月、アメリカ留学してから消息を絶っていた胡歌。
4月下旬、知人とのオフショットらしき写真が、久し振りに出回り、
スポーツ刈りに変わっていた髪型が、ちょっとした話題に。(→参照
この新広告も、あの時の髪形と同じですね。さらに髭を蓄え、野性味をプラス。
この胡歌にしても、以前の金城武にしても、日本の西島秀俊にしても、
アルマーニのイメージキャラクターを務める東洋人俳優には、何か似たニオイを感じる。
私、ジョルジオとオトコの趣味が合うかも…(笑)。
(ちなみに、私が確認している限り、ジョルジオ・アルマーニのボーイフレンドは、常に西洋人。)




さて、1997年7月1日、香港の主権がイギリスから中国に返還され、明日で早20年。
そんな訳で、香港を取り上げる番組がボチボチある。見付けては録画し、徐々に消化中。

取り敢えず観た中で、意外と面白かったのが、NHK BSプレミアム午前中の“プレミアムカフェ”枠で、
“シリーズ香港ストーリー”として、6月26日(月曜)から28日(水曜)まで連日流した過去の香港関連番組。
中でも、1995年に初回放送された『アグネス・チャン、羽仁未央の香港ドリームをもとめて』は、興味深く観た。
何らかの事情で香港に惹かれ、夢を追ってかの地へ渡った日本人女性たちを取材した番組。
後に来る韓流ブームほどではないにしても、かつて日本に起きた香港明星ブームを思い出した。
2002年、そんなブームを捉えた…

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ズバリ『香港明星迷』なるドラマが放送されたのを、覚えている方はいらっしゃるでしょーか…?!
鄭伊健(イーキン・チェン)に夢中なキャリアウーマンを薬師丸ひろ子が演じ、その鄭伊健本人も特別出演、
脚本を手掛けたのは山田太一だから、今思えば、結構贅沢なドラマだったのかも知れない。
当時は駄作と切り捨てたが、一年くらい前だろうか、CSで再放送しているのをたまたま観たら、
懐かしさが手伝ったのか、意外にも面白く感じてしまった。


揺れる香港、どうなるでしょうね。
私も大好きな香港が、一国二制度と健全な民主主義を維持し続けられることを、遠く日本から祈ります。
…ただ、香港にも大陸にも行ったことの無いネトウヨが、中国憎しの感情に駆られ、
こういう機会に乗じて、大騒ぎするのは、ホント、見苦しくて、ゲンナリさせられる。
他人事ではない!大きな敵からアジアを守る!などと日本が正義を振りかざし、出しゃばると、
ロクな事にならないのは、歴史が証明済み。
ごくごく平凡な台湾大好きオバちゃんが、ヒマを持て余し、必死に中国disツイートをしまくっているのを目にし、
日本の黒歴史が重なり、背筋がゾッとした。ああ、あの時代も、フツーの人がこうやって扇動されたのだナ、と。

そもそも民主主義が揺らいでいるのは、日本も同じなので、他人様の事に首を突っ込んでいる場合ではない。
国境なき記者団が毎年発表している“報道の自由度ランキング”で、
2002年18位だった香港が、2017年に73位にまで急落したと騒いでいる日本人が居るけれど、
そういう人は、そのランキングで我らが日本が堂々の72位だという衝撃事実を知っているのだろうか。
香港の急落の要因は明らかだが、本来一党独裁などではなく、自由であるはずの日本が
“香港並み”という事の方が、私には余程重いワ…。



香港ではなく、上海だが、6月27日(火曜)、たまたま観たNHK『クローズアップ現代+』の…

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“‘火花’中国を行く~又吉直樹が見た‘90后’”という特集も、とても良かった。
<火花>の中国語版が出版されたのを機に、作者の又吉直樹が上海を訪れ、
書店や私立大学で、直接読者と交流する様子を紹介。
日本語学科の学生はみんな日本語で質問しておられた。
語学が苦手な日本の学生と、学習方法のどこが違うのでしょう…??

その後、スタジオで、<火花>を中国語に翻訳した毛丹青、俳優・矢野浩二を交え、
世論調査などを元に、日中関係をトーク。
想像していたとはいえ、“外向き”中国と“内向き”日本の落差が顕著で、これには考えさせられた。
ハッキリ言って、民衆のレベルでは、日本の方がよっぽど“情報鎖国”で、洗脳が強いと感じている。
最近の日本には、憂う事が多過ぎて、考えると、ドヨーンと暗くなるばかり。ふぅ~…。
日曜の都議会選挙、ちゃんと行かなきゃね…。




気を取り直して、これから放送される要録画番組をば。

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7月1日(土曜)、NHK BSプレミアム『チョイ住みin香港』
初対面の二人が、現地のアパートで、暮らすように滞在する様子をカメラが捉える一風変わった旅番組、
『チョイ住み』シリーズ、新作の舞台は香港!放送を返還の日に合わせたのかしら。
今回のコンビは、ブロガーのはあちゅうと、タレントの南明奈。
あっきーなは知っているけれど、はあちゅうという人は知らない。
彼女たちが、お家賃の高い香港で、どんな部屋を借りたのか気になり、番組公式サイトを覗いたら、
バスルーム2ツ+ベッドルーム3ツの銅鑼湾(コーズウェイベイ)の物件で、
一泊28923円(4月のレートで)と紹介されている。
この条件で、この値段は、香港の物件としては、お得感があるのでは?もっと高いかと思った。
(一ヶ月の家賃が87万円のアパートだと考えると、家賃の割りにショボく、香港はやはり高いと感じるが、
ホテルと比べると、かなり安く思える。)
とにかく、香港というだけで、この番組は楽しみ♪




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翌、7月2日(日曜)は、BS日テレの『桜庭ななみの台湾ときめき旅』
2015年、台湾に語学留学、2016年には、台湾ドラマデビューを果たし、
中国語で日台ハーフ役を演じた女優・桜庭ななみが、懐かしさと新しい刺激を求めて旅する番組、…とのこと。
伝統の布袋戯を紹介するのが、ちょっと目新しいだけで、
あとは、魯肉飯、刀マッサージ、迪化街でショッピング、十份でランタン、龍山寺近くの夜市と、
まぁ在り来たりの台湾旅番組という印象だが、
もし桜庭ななみが覚えた中国語を披露するなら、それがどれくらのレベルなのか興味津々。

ちなみに、桜庭ななみが出演した台湾ドラマというのは、(↓)こちら。

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2016年に放送され、話題となった『植劇場』シリーズの中の一遍、
在台日本人・北村豐晴が監督した『戀愛沙塵暴~Love of Sandstorm』。
未見なので、断言はしないが、吳慷仁(ウー・カンレン)、柯淑勤(コー・シューチン)、
樊光耀(ファン・グァンヤオ)といった実力派が主演するドラマで、桜庭ななみは主要キャストではないと思う。
でも、中華圏進出はジワジワと進めているようで、
かの吳宇森(ジョン・ウー)監督が手掛ける『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年)のリメイク、
『追捕 MANHUNT』にも出演を果たしている。
『追捕 MANHUNT』は確実に日本で公開されるが、ドラマの方はどうでしょう…?
『植劇場』は、8遍から成る長---いシリーズなので、
桜庭ななみ効果に期待して、彼女が出演する『戀愛沙塵暴』だけ入って来る、…って事だったら、ちょっと残念。
他に、脚本・徐譽庭(シュー・ユーティン)×監督・王小棣(ワン・シャオディー)なんていうのも有るので。
北村豐晴の過去の監督作品は、映画『一万年愛してる』(2010年)も、ドラマ『ショコラ~流氓蛋糕店』も、
私の好みには合わなかったので、今回の『戀愛沙塵暴』も、北村豐晴監督や桜庭ななみの名前には惹かれず、
他の主要俳優の演技になら興味あり。




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7月5日(水曜)は、フジ『おじゃMAP!!』
一度も観たことの無い番組。この日はスペシャル企画2本立てとのことなので、録画を予約。
企画の一本は、夫に先立たれ、子供と残されてしまった女性の、新しいパートナーとの再婚式を、
香取慎吾と“ザキヤマ”山崎弘也がプロデュースするというもの。
実のところ、それには興味が無くて、私が録画するのは、
“3万円で行けちゃう!意外に知られていない超穴場・香港ディズニーランドを大満喫SP!”
というもう一本のスペシャル企画のため。
ま、ディズニーランドも大して興味が無いし、ザキヤマ+ヒロミ+森星というメンツにも惹かれないのだけど、
香港ならではの激旨グルメスポットも紹介されるらしいので、そういう部分に期待。


ここ数日は、何かにつけ“香港”なので、
最低でも一度は、テレビから流れて来る王菲(フェイ・ウォン)の<夢中人>を聴くことになるでしょうねー。
あれが流れてくると、もはや私は、パブロフの犬のように反射的に香港に思いを馳せ、
気分が高揚する体質になっております。
ついでなの、ここにも、久し振りに、その<夢中人>を貼っておく。


『恋する惑星』(1994年)観たくなる!




お菓子は、夏に涼やかなノド越しの良い和の甘味を、ドーンと5種類。

★ 泉寿庵:涼嗜~黄橘

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容器の大きさは、だいたい20センチ×7センチ×深さ3センチ。
天然柚子と白餡を、吉野葛で合わせ固めた涼菓。




一つめは、泉寿庵(公式サイト)の涼嗜(りょうすずみ)シリーズから、
すでに幾度となく食べている“黄橘(きだち)”
涼嗜シリーズというのは、葛を使った棹状の、いわゆる葛羹で、
味が何種類かある内、こちらは、夏季限定の物。

“黄橘”の名から、想像がつくように、柑橘系の味。
使っているのは、四国産の天然柚子。
それを白餡、葛粉、澱粉、蕨粉などと共に練り合わせている。

画像で見ての通り、白っぽい層と、黄色っぽい層の2層構造。
気にして食べると、白い層の方が、よりツルッと滑らかで、黄色い層の方が柔らかと、若干食感が異なる。
どちらにしても、弾力性のあるプルンッ!という食感ではなく、トロンに近い。


まろやかな白餡に、さっぱり爽やかな柚子が合っている。
問題は、容器。
当ブログに何度も書いているが、プラスティック容器に、本体がベッタリくっ付いていて、出すのが非常に困難。
包丁だけでは取り出せないから、イヤでも手でお菓子本体に触れなければならない。
それでも、なかなか容器から剥がせず、その内、お菓子の表面がどんどんボコボコに…。
この容器、本当にどうにかならないだろうか…?改良を望みます。

★ 泉寿庵:餡わらび

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容器の大きさは、だいたい13センチ角×深さ4センチ。
蕨粉などで固めた小豆に、きな粉を添えていただく涼菓。



続いて、こちらも泉寿庵の物で、“餡わらび”
これは、見るのも、ましてや食べるのも、初めて。

こし餡をでんぷんで固めたお菓子で、よく“小豆豆腐”という名で売られている物と同じ。
商品名は“餡わらび”だが、凝固のために使われてるでんぷんは、
正確には、本蕨粉以外にも、蓮粉や葛粉など。

色は、綺麗な藤色。
その色から受ける印象通り、上品な餡の味わい。
食感は、滑らか、かつ柔らか。

きな粉は、うーン、どうなのでしょう。本当に必要なのだろうか。
黒蜜などと一緒にきな粉を添える場合は、きな粉が蜜の水分を吸い、食べ易くなるけれど、
小豆豆腐のようなお菓子に、きな粉だけを振りかけても、なんか、ただただ粉っぽくて、
食べながら、ゲホゲホとムセてしまった…。
ただ、きな粉が無いと、同店の涼嗜シリーズの“紫臙(しえん)”という商品と、
あまり大きな差が無くなってしまうので、差別化のためには、やはりwithきな粉、…は必然なのだろうか。

★ 萩野屋:わらび餅

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容器の大きさは、だいたい10センチ×7・5センチ×深さ3.5センチ。
きな粉をまぶした一口大のわらび餅。




“わらび”繋がりで、荻野屋0537-22-3435)の“わらび餅”
静岡県・掛川駅近くにある“街の和菓子屋さん”という感じの小さなお店らしい。

わらび餅にも、色々なタイプが有るけれど、
ここのは、一口大にちぎって、最初からきな粉がまぶされており、別に添えられている黒糖蜜をかけて食べる。

昨今減ってきている本蕨粉のみで作られたこのわらび餅は、トロッと滑らかな舌触り。
かと言って、グニャグニャに柔らかい訳でなく、適度な弾力も感じられる。

きな粉は、焙煎が深い京黄粉。
前出の餡わらびと異なり、最初からまぶされているので、
わらび餅の水分を吸い、ちょっとシットリしていて、食べ易くなっている。
(おにぎりの海苔と同じで、そのシットリがイヤ!食べる直前に自分で掛けたい!と思う人も居るかも?)


「おいしゅうございました」と誉めた上で、敢えて難を言わせていただくと、
わらび餅の量に対し、添えられている黒糖蜜の量が少なかった。
普通の日本人には、これが適量なのかも知れないけれど、なにぶん私は日本人離れした激甘党。
もっとたっぷり黒糖蜜を掛けて食べたら、きっと満足度がさらに上がったに違いない。

★ たねや:わらび餅

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大きさは、直径約4センチ。
別添のきな粉をかけていただく、中にこし餡を包んだわらび餅。




こちらもわらび餅で、たねや(公式サイト)“わらび餅”
5月、6月の限定商品。バラ売りは無いようで、2個入りか4個入りの箱売り。

こちらは、前出の荻野屋の物と違い、中に餡を包んだお饅頭型。
別に、袋入りのきな粉が付いているので、それをかけて頂く。

この手のわらび餅は、白っぽい色をしていることが多いが、これは漂泊していないコンニャクのような色。
想像していたよりは、シッカリした歯切れの良いわらび餅は、薄い皮で、その分、中に餡がたっぷり。
この中のこし餡は、水分量といい、固さといい、密な感じといい、
お馴染み山田屋の“山田屋まんじゅう”に似ている。
そう、このわらび餅は、皮をわらび粉に変えた山田屋まんじゅうという感じ。
きな粉は、有っても無くても、どちらでも良いと思った。

★ 鈴懸:麩乃餅

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大きさは、直径約4・5センチ。
生麩の生地でこし餡を包み、笹の葉で巻いたお菓子。




最後は、鈴懸(公式サイト)“麩乃餅”
商品名は“ふのもち”と読む。要は、麩まんじゅである。
これまでの上の4ツがでんぷん系なのに対し、これは毛色の異なるグルテン系なので、“番外”ということで。

生地の生麩は、ツルンとした舌触りで、なおかつ食感はモチッとした適度の弾力。
中には、鈴懸定番の、藤色の上品なこし餡。
皮が薄いから、餡の量は結構たっぷり。


普通のお饅頭だと、夏はちょっと暑苦しいけれど、
麩まんじゅうは、生麩特有のツルンとした食感や、それを包む笹の葉が涼しげ。
つぶ餡の麩まんじゅうを売るお店もあるけれど、
私個人的には、こういうツルンとした重くない生地には、こし餡の方が合うような気がしている。
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