おデブで自己中心的な夏樂蒂は、化粧品会社Miss Beautyの社長令嬢。
恋人が他の女性と結婚すると知り、お式に乗り込むが、逆に人前でこっぴどくフラレてしまう。
その場に居合わせたバンドの音楽とヴォーカリストの言葉に救われ、なんとか会場をあとにする。
樂蒂は、この事を機にアメリカに留学。
ダイエットにも成功し、5年後、見違えるほどキレイになって帰国するが、自分勝手な性格は相変わらず。
ところが予想だにしなかった出来事が。なんとMissBeautyが倒産、父も忽然と姿をくらましてしまったのだ。
樂蒂は、父が残した手紙から、開発中だった“蒙娜麗莎”が、ライバル会社Jealousに盗まれ
その事が、この一連の不幸を招いたのだと疑念を抱く。
そこで、“蒙娜麗莎”を取り返すべく、正体を隠しJealousに潜入しようとするが…。
2012年10月、
ホームドラマチャンネルで開始した台湾ドラマ『マジで君に恋してる~粉愛粉愛你』が

2013年3月末、全25話の放送を終了。
『絶対彼氏。~絕對達令』等々多くの偶像劇を手掛けている劉俊傑(リウ・ジュンジエ)。
かつて『ラヴスタイリスト~愛情魔髪師』で
カリスマ美容師軍団を取り上げた劉俊傑監督が

本作品では
カリスマ・メイクアップアーティストに焦点を当てたという事で

劉俊傑監督の“美容業界モノ”第2弾と位置付けておこう。
原題『粉愛粉愛你』は英語のタイトル『I Love You So Much』と同意で
つまり、あなたのことが大、大、だ~い好き♪という意味。
なので邦題も満更間違いではないが、昨今の台湾偶像劇の邦題は、ネタが尽きたのか
どれも似たり寄ったりだったり、どこかで聞き覚えのある感じで紛らわしい。
これも、中山美穂主演ドラマ『君の瞳に恋してる!』
広末涼子のデビュー曲<MajiでKoiする5秒前>

って感じで、昭和のトレンディドラマちっく。
★ 物語
父親が経営する化粧品会社Miss Beautyから開発中の“蒙娜麗莎(モナリザ)”を盗み、倒産に追い遣った憎きライバル会社Jealousに、“蒙娜麗莎”を取り返し、復讐する目的で、正体を隠し入社した樂蒂が
Jealousの御曹司で、人気メイクアップアーティストでもある異母兄弟、宇傑、少風と交流していく内に
宿敵との間に恋愛感情が芽生え、“ミイラとりがミイラ”状態。
複雑な心境に陥るが、徐々に様々な誤解が解かれ、困難をも乗り越え
ワガママお嬢様だった樂蒂が人を思い遣る優しい女性に変わって行く姿を追う成長物語であり
多角関係の
恋の行方を描く物語でもあり。

主人公・樂蒂が最初に好きになるのは弟・少風。
次に、ゲイだと信じ込んでいた兄・宇傑がストレートだと判明すると、異母兄弟の間で揺れる三角関係に。
さらに、宇傑の死んだはずの元恋人・汶晞がColaという別人格になって現れ、参戦、四角関係に発展。
また、MissBeautyの令嬢であることをひた隠しにしている樂蒂のみならず
宇傑もミュージシャンとしての正体を隠していたり、本妻の子ではない少風と常家との間に確執が有ったり
もちろん盗まれた“蒙娜麗莎”の行方を追ったりと、物語は広がっていく。
普段デーモン小暮級の化粧をしている人が、スッピンになったら別人で、誰だか判別不可能だろうけれど
宇傑程度だったら、化粧を落としても、「あのバンドの人だ!」って分かるでしょーヨ!とか
台湾で宇傑と一緒に交通事故に遭い、死んだはずの汶晞が、記憶を失ったものの
アメリカで生存していて

しかもかの地で宇傑の弟・少風と知り合いうなんて、奇跡と偶然が重なり過ぎじゃなぁーい?!とか
そもそも超貴重な物質“バイオ・ダイアモンド”とやらをベースに作る“蒙娜麗莎”って、どんだけのモンよ?!
もったいぶった割りに、雑誌編集長にそれを使った時、大した効果が感じられなかったのですが…、等々
ツッコミ所を挙げたらキリが無いけれど、そんな矛盾だらけで大雑把な脚本も台湾ならではで御愛嬌。
★ メインキャスト① : 夏樂蒂(李佳穎)

日本人ウケしそうな、ちっちゃくて可愛らしい雰囲気の李佳穎だが、今のところ日本で放送された
彼女の有名な出演作は、龔(園川通子)に扮した『桃花タイフーン!~桃花小妹』くらいか。
本ドラマ、見所のひとつは、李佳穎の変装。 物語最初の方では、小柄な彼女が特殊メイクで百貫デブに。
他にも、ショーに出演するためド派手メイクを施したり、正体を隠してライバル社に入社するため男装したり。
女の子らしい顔立ちの彼女に、♂男装はさすがに無理がある。
“成長して会社員になった不二家のポコちゃん”に見えなくもないが。
童顔でキュートな李佳穎は、お相手役の男性2名より年下の24歳という設定で、この樂蒂を演じているが
実際はなんと30歳で、馬志翔(マー・ジーシアン)との交際も順調に続いていると言われている結構なオトナ。
年相応の女性への切り替えが、今後の課題かも。
★ メインキャスト② : 常宇傑(藍正龍)

本ドラマで変装と言えば、李佳穎ばかりでなく、藍正龍も。
扮する宇傑は、化粧品会社の大切な跡取りだが、一時期家を出て、本気で
音楽の道を目指していた。

やっている音楽は案外普通のポップミュージックなのだけれど、見た目はヴィジュアル系。
スッピンでも充分濃いぃー顔の藍正龍が、ばっちりアイラインを入れると
まるでバリ島など神秘的な南の島で、神に捧げる舞踏とか祈祷とかする人みたい(…?)。
今回は最終回までずっとこの厚化粧で通すのかと恐る恐る観ていたら、あれはステージ用のメイクで
物語の大半は、通常の顔であった。
劇中何度も流れる<淚光翅膀>は、樂蒂に勇気を与える大切な曲で
覆面シンガー宇傑率いるバンドkidultのオリジナルソングという設定だが
実際に歌っているのも、宇傑に扮する藍正龍。
藍正龍贔屓の私が聴いても、お世辞にも「歌唱力抜群!」とは言い難い。

★ メインキャスト③ : 常少風(周湯豪)

今回の目玉キャストは、誰を差し置いても、ドラマ初お目見えのシンガー周湯豪。 美男です。
演じている姿を初めてジックリ見たら、潘瑋柏(ウィルバー・パン)を甘くしたような男前という印象を受けた。
声の質や喋り方も、ちょっと潘瑋柏に似ているような。
周湯豪は、いわゆる二世俳優で、母親は歌手で女優の比莉(ビリー)。
『おいしい関係~美味關係』で、仏頂面の周渝民(ヴィック・チョウ)も
唯一頭が上がらない師匠・金刀婆婆に扮しているあのオバちゃん(おばぁちゃん?老け役が多い)女優。
美人女優というより個性派女優といったルックスの比莉から、随分端整な息子が生まれてきたものだ。
実の母子とは信じ難いが、意識して見ると、周湯豪のフトした表情には、たまに比莉の面影がある。
デビュー前、まだアメリカに留学していた周湯豪には、
韓国SuperJuniorへのお誘いが有ったが

10年という長い契約に比莉が待ったをかけ、御破算となったと言われている。
★ その他のキャスト

さっぱり系の林逸欣は、可愛い系の李佳穎より、むしろ好きな顔立ち。
役の設定も、最初の方はサバサバしていて好感がもてるけれど、どんどんイヤな女になっていく…。
それでも最後にはあっさり改心し、宇傑を解放するのは、やはり極悪人不在の台湾偶像劇ならでは。

お馴染み董至成は今さら気になる存在ではないのだが、役名の“吳英雄”に食い付いた。
『ブラック&ホワイト~痞子英雄』で趙又廷(マーク・チャオ)が演じた主人公と同じ名。

台湾偶像劇で、威厳のあるおばあさん役の70%は、この唐と、周湯豪のママ比莉のふたりで
独占しているように思える。 台湾偶像劇界バア様役の双璧。

典型的な口うるさいオバちゃんに扮する“蠻牛太太”こと蔡湘宜だが、モッチモチのお肌は、どう見ても20代。
若い内から老け役かぁ~と思いながらプロフィールを見たら、41歳であった。 アラフォーであのお肌は優秀!
★ 小道具
このドラマでイヤでも一番目に付く小道具はカルバン・クラインのセカンドラインCKの時計、アクセサリー類だが、他にも協賛メーカーが。
まず気になったのが、
樂蒂のハイヒール。

真っ赤な靴底が目を引く女性らしいハイヒールは、そう、クリスチャン・ルブタン♪
さすがは樂蒂、没落したとはいえ根はお嬢様。 …と言いたいところだが、…ン?
このドラマ、お手頃価格の衣装を使っている割りに、靴ばかりが高級過ぎやしないか?!
と疑ったら、案の定、台湾ドメスティックブランドと思われるAnn'Sという靴屋さんの物であった。
日本でも、この種のコピーを堂々とやっているメーカーは非常に多いので、台湾の事ばかり言えないが
まぁ、オリジナリティがあるとは言い難く、“ほぼパクリ”ですわね。![]()

次に、メークアップアーティストとして活躍する登場人物たちの大切な仕事道具、メイク・ブラシ。
中でも、毛先を
ハート型にカットしたメイク・ブラシは注目アイテム。

いかにも女子好みしそうな可愛らしさだが、あの特殊な形って、お化粧する時に何かメリットが有るのか…?!
製造/販売元は、台湾の毛筆の老舗・林三益。 その林三益が、長年培った毛筆の知識、製造技術を生かし
2008年に興したのが化粧筆ブランドのLSY LAMSAMYICKで、このハート型のメイク・ブラシもそこの物。
日本で高級メイク・ブラシの一大産地と言えば熊野だが
熊野もまた農閑期の毛筆づくりから始まったと聞くし、台湾LSYのメイク・ブラシも侮れないかも…?
値段はザッと見たところ、熊野筆と変わらないので、台湾の物価を考慮すると、結構な高級品と言えそう。
★ テーマ曲

ここにはせっかくなので、目新しい周湯豪が歌うエンディング曲<億萬分之一的機率>の方を。
歌っているだけではなく、作曲したのも周湯豪クン。
毎回エンディングにも、樂蒂と宇傑のツーショットが流れるし
このふたりが結ばれてハッピーエンディング♪というオチは目に見えている。 なのに、
えぇぇーっ、

最後の最後で樂蒂が宇傑を選ばないという台湾偶像劇のオキテをも破る大ドンデン返し…!
辛い時ずっとそばで支えてくれた少風を選んだ樂蒂は、義理堅いとも言えるが
だったら宇傑を取り戻そうと一生懸命だったあの一連の行為はナンだったのか。
視聴者の予想を裏切るこういう唐突なエンディングは、(仮に腑に落ちなくても)案外新しいかも…?
このドラマ、最初の方はテンポが良く、楽しかったけれど、終盤がダレて、ちょっと退屈であった。
総合すると“並”。低レベルの比較になってしまうが、 同時期放送の『アリスへの奇跡~給愛麗絲的奇蹟』と
『五月に降る雪~記得・我們有約』があまりにもイケていなかったので、それらよりはずっとマシに感じた。

『五月に降る雪』で幻滅させられたばかりの張博(チャン・ボーユー)監督作品で、期待はしていないけれど
『蒼穹の昴~蒼穹之昴』で珍妃に扮した美人の張檬(チャン・モン)も出ているみたい。