第8回したまちコメディ映画祭in台東、通称“したコメ”が開幕。
新たな映画祭を勢いで立ち上げても、その後ちゃんと継続的に開催できるのだろうか?!
と最初は半信半疑であったが、ナンだカンだいって、もう8回目になるのか。
昨年は、確か『ゴッド・ギャンブラー レジェンド』(映画祭でのタイトル『ヴェガスからマカオへ』)だか
『西遊記~はじまりのはじまり』だかを観ようかどうか迷っている内に結局行きそびれたら、
上映日にちょうど強烈な台風が襲来。
楽しみにしていた人々や関係者には残念だったとしか言いようがないけれど、私自身はそれで諦めがついた。
今年のラインナップの中で、強いて観たいものを挙げるなら、
特別招待作品として上映される香港映画『全力スマッシュ~全力扣殺』。
但し、本作品は2015年10月10日に日本公開が決まっているので、絶対ではない。
ところが、したコメの『全力スマッシュ』の上映で、
な、な、なんと総勢6人ものキャスト&スタッフが舞台挨拶を行うと発表された。
もー俄然行きたくなっちゃって、前売り券購入。
そんな訳で、開催8度目にして、私はしたコメに初参戦する運びとなった。
(なお、↑今年のポスターは、画風からも分るように、水木しげるの描き下ろし。
浅草雷門に集まった妖怪たちの様子が賑やか!)
★ 浅草
8回目になる2015年のしたコメ、開催初日の9月19日(土曜)は、
昨年とは打って変わり、
晴天に恵まれた。気温も30度近くまで上がり、暑いくらい。

この日私は、他に色々予定を詰め過ぎてしまい、別の場所からの移動だったので、
映画上映のある夕刻に浅草到着。
私は見ていない昼間のレッドカーペット・イベントも、随分盛り上がったようだ。
会場時間よりちょっと早めに浅草に到着したので、
近隣を軽く散策。

外国人も沢山いるけれど、この日は連休中ということもあり、日本人観光客もいっぱい。
何やら人だかりができているので覗いてみたら、中央に艶やかな着物姿の女性がいて、
写真撮影に応じている。
後方から「うわぁ~、芸者さん!これからお仕事かしら」という声が聞こえたけれど、
私はその後もこの女性がこの近辺をゆらりゆらりとお練りしているのを見掛けた。
もしかして、浅草では、観光客を喜ばせる一種のサービスとして、
こういう女性に近辺を巡回をしてもらっているのではないだろうか。地域活性の良いアイディア。
人力車も以前より増えている気がする。しかも、かなりの利用率。
休日の浅草は、とても活気がある。
かといって、ちょっと脇道に反れると、昔ながらの情緒もあり、都内でも未だ独特な地域。
★ 浅草公会堂
会場は浅草公会堂。ここへ行くのは初めて。
仲見世通りをぶらぶらしている時に、すぐ西側に建物が見えたのだけれど、
入り口はオレンジ通り側にしかないようで、少しだけ探してしまった。
開場は、上演開始30分前の夕方5時半。
全席自由席なので、私はその5分ほど前、5時25分くらいに到着。
すると、すでに結構長い列ができていた。
先頭集団は、長年ディープに香港映画を愛し続けている女性たちとお見受けした。
バドミントンを題材にした『全力スマッシュ』を応援するため、
シャトルを烏帽子のように頭頂部にのせている女性もいる。愛が深いですね~。
大して待たずに入場開始。
舞台挨拶は前方で観たくても、映画は後方が好きなので、あまり前過ぎない7列目の席をキープ。
開演するまでの時間、スタッフがプラカードを持って、
“前の座席を蹴らないように”とか“場内飲食禁止”といった注意事項を説明している。
その中に、“
場内禁煙”というのもあったのだが、浅草辺りだと、未だ昭和のストリップ劇場感覚で、

こういうホール内で煙草を吸っちゃうおじちゃんが居たりするのかしら…??
私が想像していた浅草公会堂は、まさに気兼ねせず煙草をバカスカ吸ってしまえるような、
下町の昔ながらの公民館風の場所だったので、思いの外モダンで清潔だったのが、嬉しい驚き。
外壁は昔風だったので、内部だけ改装したのかも知れない。
★ したコメ特別招待作品 香港映画『全力スマッシュ』 登壇メンバー
開演の6時になると、奥浜レイラが登場し、ちょっとした挨拶と説明。
5分ほどで 『全力スマッシュ』の上映が始まり、それも終わった夜7時55分頃、いよいよ舞台挨拶スタート。
画像右から、司会進行役の大場渉太(…かな?)といとうせいこう。
続いて、黃智亨(ヘンリー・ウォン)監督、主演女優兼プロデューサーの何超儀(ジョシー・ホー)、
出演者の邵音音(スーザン・ショウ)、林敏驄(アンドリュー・ラム)、劉浩龍(ウィルフレッド・ラウ)、
そして音楽を担当した日本人の波多野裕介。
本作品の監督は、黃智亨だけではなく、本当は郭子健(デレク・クォック)との共同監督だが、
残念ながら今回は一人で参加。
あと、作中重要な役を演じている鄭伊健(イーキン・チェン)や鄭中基(ロナルド・チェン)も不参加だけれど、
一作品で6人も来てくれるなんて、充分豪華。
何超儀、この日のお召し物は、白いフリンジが全体を覆うジャケットで、
これを見ていたら、私は何となく市川猿之助のスーパー歌舞伎を思い出した。
髪型や顔は、イザベラ・ロッセリーニに似てきた。
邵音音は、雲翔(スカッド)監督作品『ボヤージュ』の初日舞台挨拶のために、8月末に来日したばかり。
その時は、レイトショウだったので、パスしてしまったけれど、まさか3週間で東京に舞い戻ってくださるとは。
圧倒的な存在感は、想像していた通り。
映画の中では、ずんぐりむっくりのオバちゃんに見えるけれど、実物はあんよがスラリ。
華人は美脚が多いですよねぇ~。
林敏驄は、映画の中で、呑んだくれの堕ちたチャンピオンを演じているのだが、
その役と同じように、足元ビーサンで出席。
ビーサンにばかり気を取られ、ちゃんと服まで見ていなかったのだけれど、
今、この画像を見たら、Tシャツの胸に書かれている文字が“虚弱体質”だった。![]()

★ 『全力スマッシュ』ティーチイン
今回は、ステージ上のライティングが丁度良かったのかしら…?
7列目から適当に撮った割りに、
鮮明に映っている写真が多い。

ここには数枚しか載せていないけれど、ご興味のある方は、拡大して御覧くださいませ。
それはそうと、「映画終了後約15分の舞台挨拶」と聞いていたのに、たっぷりのティーチインであった。
ムードメーカーはサービス満点の邵音音と林敏驄の二人で、終始ふざけ合っていて、会場に笑いが絶えない。
質問が有ろうと無かろうと、常に複数人が同時に喋っているから、内容がまったく頭に残らないのだが、
“なんだかよく分からないけれど楽しかった”という記憶だけは刻まれた。
そんな訳なので、ここには沢山あったやり取りの中で、特に印象に残った話だけをいくつかピックアップ。

バドミントンのトーナメントで最後に優勝するというラストも有り得たと思いますが
なぜあのようなラストにしたのですか?

人生には色んな事があるけれど、最後の言葉“また今度(後會有期)”に、人生には続きがある、
努力することが大切だという思いを込めました。

ちょっと下品なんですけれど、あのゲロはどうなっているんですか?(質問者は子供)

こういうシーンを入れれば、子供たちが絶対に喜んでくれると思っていました。
撮影は大変でした。まず、毎日9時から5時までジョギング。走って、走って、走りまくります。
ただ走るだけではなく、食べながら走って走って、絶えず走ります。
これをずっと続けると、一年後には吐けるようになります。
まぁ、今のは全部ウソですが。最終的には監督のCG。
もっとも隣のこの人(=邵音音)を見ると吐きたくなりますが。

(波多野さんは、スーザンさんのお嬢さんと結婚していらっしゃるんですよね、という投げ掛けに対し…)
はい、義理のお母さんなんです。日々の生活でも面白い人なんですヨ。
この二人(邵音音&林敏驄)、ずっとこんな感じで、漫才のコンビのようです。

劉浩龍さんは、本当はハンサムなのに、エキセントリックな役を演じていますよね?

髪を切らされたり、ヒゲを生やさせたり、モリモリにさせられたり、
しかも、冬の撮影で、皆ちゃんと服を着ているのに、僕だけランニングでした。

邵音音さんは、郭子健監督作品に必ず出ていますよね?

はい。郭子健監督だけではなく、黃智亨監督も、以前からの付き合いです。
黃智亨も、実は『燃えよ!じじぃドラゴン』に、脚本、アニメ、CGで関わっています。
私が若手のどの監督が好きというのではなく、全ての若手の監督が私のことを好きなんです!

好きなシーンや、大変だったシーン等、思い入れのあるシーンはどれですか?

スマッシュを決めるシーンはCGなので、撮影する時にはシャトルが無いんです。
なので、シャトルがあたかも有るかのように、どこに視線を向けるか、大変でした。

どのシーンも全部好き。私、速く走れていたでしょう?!

最後、いよいよ僕が試合に出場しなければならないというシーン。
監督から「観客が笑いながら感動する演技を」と言われました。

最後の3人の義兄弟のシーンですね。
あのシーンを撮った日は、香港で一番寒い日だったのに、やはり僕だけ衣装がランニングでした。

「コーヒーorティー?」のシーン。
あのシーンに流れている曲は、広東オペラ風なのですが、
よくよく聴くと、広東語で「くたばれ!」と歌っているんです。

皆さんが挙げたシーンは全部僕も好きです。
でも、エンディングの歌のところは特に好きです。
ティーチインが終わったのは
夜8時半。

15分と聞いていた舞台挨拶が、結局30分以上のティーチインになったのだ。
ここに挙げたティーチインの内容は、ごく一部(…しかもかなりいい加減)。
中でも私にとって印象的だったのは、ゲロの話と波多野氏が実は邵音音の娘婿だったという話。
香港映画にゲロは付き物だが、映画祭のティーチインでゲロに触れたのは、
2006年東京国際映画祭『イザベラ』のティーチイン以来。
あの時、彭浩翔監督は「ゲロはフツーのこと」と言っておられた。(→参照)
邵音音の娘婿が波多野氏というのは、森山良子の娘婿が小木博明というのとは
またちょっと違う感覚だけれど、「え、えーっ…!?」という驚きが。
元々嫁姑と違って、お婿さんというのは姑と上手くやっていけるものだが、
邵音音のようななエキセントリックなお姑サマだったらなおのこと、普通の衝突なんて起きえない気がする。
それどころか、婿殿まで規格外な人生を共有できそうで、楽しいかもね。
登壇者は皆仲が良さそうで、会場もアットホームな雰囲気で、とても楽しく、良いイベントであった。
したコメには興味があるけれど、行ったことはないという方も、機会があれば是非。お薦めです。
映画『全力スマッシュ』は、2015年10月10日(元)体育の日に日本公開。
私の感想は、また後日。